Progress Report 2:昭和集団羞辱史『売春編:ちょんの間』

 ヒロイン(明美)が初日に『ちょんの間』デビュー失敗して、跡継ぎ娘で(高校に)在学中ながら現場で実地研修にも励んでいる勝江が、前々から女将(母親)に提案していたアイデアを明美を使って試してみることになります。
 章のタイトルは「疑似強」でしたが、曖昧ですので「縄 見 世」に変更。文字間に半角スペースを挟んで、他の章と同じ4文字の体裁にしています。

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   縄 見 世


「簡単に言うと、エッチな『ごっこ遊び』ね」
 明美の部屋で、勝江はそんなふうに説明した。見世に出るのはあくまでも明美だが、勝江が介添え役として一緒に座敷を務めるという。
「あたいが接客も受け持つから、揚羽は借金の形(カタ)に拐われた商家のお嬢様。ひたすら怯えるお芝居をしてればいいの。あ、もちろん――本番のときは、ちょっとだけ抵抗してね。それもできなくて為すがまま、でもいいわ。でも、お客のすることにホイホイ協力しちゃ駄目。まあ、そこらはあたいがうまく仕切ってあげる」
 つまり。明美は拐われたヒロインを演じて、客に犯されるという――現代ふうに言うなら本番有りのイメクラである。芝居に迫真性を持たせると同時に、明美が下手な演技をしないですむように、縄で縛るという。
 そう聞かされて明美は驚き不安になると同時に、安心もした。すべてをベテランの勝江にまかせて、自分は縛られて身動きできない身体を弄ばれていればいい。苦しいけど楽チンかもしれないと思った。それに。悪人に捕らわれて縄で縛られるなんて、時代劇の女優さんみたい。
 昨日の三度続けてのしくじりを挽回(※)するためにも頑張ろう。またしくじったら、もうお店にいられない。その決意が表情に表われていたのだろう。
   ※「汚名挽回」が誤用であるという説は昭和五十年代以降に現われたものである。現代でも「疲労回復」という言葉に違和感を持つ読者は少ないと思う。
「あのね。気負うことはないの。一世一代の正念場なんかじゃないんだから。一年三百六十五日、これで稼いでくんだからね。あ、休みを取るから一年二百日くらいか」
 キリキリシャンとしている勝江さんでも冗談を言うんだな――と、肩の力が抜けた明美だったのだが。
 午後四時になって娼売が始まって。いよいよ縛られる段になると、やはり緊張する。
 こういった演出には、最初から半裸で見世にでる『江楼』が適しているだろうということになったのだが、勝江はどういう役柄なのか、『縁奇』でも見かけないほどきっちり和服を着付けて、それで右肩を抜いている。剥き出しの二の腕には、鯉の滝登りを描いたシールが貼られている。駄菓子屋で売っている子供向けの転写シールだった。
 一方の明美は赤の腰巻一枚きり。それも腰紐が無く、端を腰回りに織り込む昔風のものだった。
 見世ごとに仕切られた控室。生理明けの椋鳥が、興味津々で勝江と明美を眺めている。
 小机の上に勝江が、半裸の女性モデルを表紙に使っている角背の雑誌を広げた。女性を縛る手順が図解されている。金物屋で売っているような細い綿ロープを手にして。
「両手を後ろにまわして手首を重ねて」
 明美の手首に縄を巻いて結び留める。そして、長い縄尻を胸にまわした。乳房の上をひと巻きして、背中に戻した縄で手首を吊り上げた。
「痛かったら言ってね。でも、きついくらいは我慢して」
「……はい」
 痛いのときついのとはどう違うのかと明美が判断に迷っているうちに、ロープは乳房の下も巻いた。勝江は二本目の綿ロープをほぐして、腋の下に通す。乳房の上下を巻く縄をひとまとめに絞った。
「あ……くうううう」
 縄が乳房に食い込んできて、明美は痛みを覚えたのだが。なんだか心臓まで絞られているような、不思議な感覚が生じた。その感覚は、微妙に甘かった。と同時に、腰の奥でさざ波が揺れた。
 腋の下を縛った縄が背中でひとつにまとめられて、縄尻が長く余った。
「他人を縛るほうが簡単だわ」
 勝江が小さくひとりごちた。明美は、その意味を深く考えなかった。
「それじゃ、お先に」
 椋鳥に挨拶をして、勝江が縄尻を握った。
「そら、とっとと歩きな。親父の借金のせめて利息分くらいは、おまえの身体で稼いでもらうよ」
 すでに『ごっこ』が始まっていた。
 顔見世用の椅子は勝江が奥に片付けて、明美を板の間に横座りさせた。腰巻の裾を乱して、太腿まで露出させる。自分は、入口の脇にある椅子に座って、遣手婆も兼ねるつもりらしい。
 足を止めて覗き込んでいた三人ほどが、板付きの開幕と見て、さっそくに暖簾をくぐった。
「なんだか面白そうなことをしてるね」
「まさか、嫌がる子を無理矢理に――じゃ、ないだろうな」
 勝江が答える前に、三人目が明美に尋ねかけた。
「これ、遊んでるんだよね?」
 昔ながらに、拐われた女の子が無理強いに身体を売らされている。自由と平等の民主国家でそんな犯罪は行なわれていないだろうと思いながらも、まさかという疑いも拭いきれないのではないかと、明美は推測した。自分だって、即日採用社の林課長から詳しく話を聞くまでは、子供が拐われてサーカスに売られるなんて話まで、ありそうなことだと思っていたくらいだ。きちんと答えないと、またお店に迷惑を掛けてしまう。でも、冗談半分でこんな羞ずかしいことをしてるとも思われたくない。
「遊んでなんかいません」
 明美はきっぱりと答えた。
「お仕事だから、やってるんです」
 言ってから、すぐにしまったと思った。仕事だから嫌々やってるというふうに聞こえなかっただろうか。
「そうともさ。親父が博奕で作った借金を綺麗にするまでは、これがおめえの仕事なんだよ」
 勝江が立ち上がって、床に伸びていた縄尻をぐいと引いた。
「あっ……」
 つんのめって、男たちの前に身を投げ出す形になった。
「さあ、おめえからも旦那衆にお願いしねえか。何十人にも弄ばれた薄汚れた身体を、どうか買ってくださいってな」
「おいおい。その子は昨日が御目見えだろ。いくら『ちょんの間』たって、ひと晩に何十人てのは勘定が合わない」
「やだなあ、お客さん。お芝居と現実をゴッチャにしないでよ」
「や、こりゃ参った。あまりに真に迫ってたもんでね」
「で、どうすんの? 現実で言うとね。この子、いろいろと不慣れだから、お座敷でもあたいが付き添うんだけどね。コーチ料を含めて、三十分千五百円。もちろん……」
 まだ突っ伏している明美の腰巻を、ぺろんとめくった。
「きゃっ……」
「オールヌードも込みだから、安いもんでしょ」
「面白いな」
 三人ともに乗ってきたのだが。いちばん歳上らしい男が、とんでもないことを言い出す。
「けどさ。俺たち三人、ツレなんだよ。順番待ちしてりゃ一時間半だぜ。三人まとめてお願いできねえか」
「うーん、流石にそれはねえ。そこまで規則を破ると、あたいがお仕置きされちゃう」
 数秒ほども考えてから、勝江がポンと手を拍った――のは芝居なのか、実際にその場で名案を思いついたのか。
「最初と最後のご挨拶とか省けば、よその店と同じ十五分で埒が明くよね。御座敷を二つにして、三人のうち二人はそっちで待っててもらうってのは、どう? 三人で四十五分で――口開けサービス、二千円ポッキリ」
「決めた」
「輪姦(まわ)すみたいで、可哀そうな気もするな。ほんとに、それでいいの?」
 さっきも明美に尋ねた男が、わざわざしゃがみ込んで明美の目を見詰めた。
 自分の返事でお客さんの気持ちが決まる。そう思ったときには、自分でも呆れるくらいにお芝居どっぷりの台詞を口にしていた。
「お願いです。わたしを買ってください。お兄さんたちに見限られたら、またお仕置きされます」
 お仕置き云々は、もちろん勝江の言葉が頭に残っていたからだ。
「そうかい。じゃあ、お兄さんたちが助けてあげよう。もちろん、お礼は身体で返してもらうからね」
 男たちも、勝江と明美の芝居に引きずり込まれたようだった。
「そうと決まったら、さあ、娼売娼売。さっさと立ちな」
 いつの間に用意していたのか二尺の竹尺で、剥き出しになったままの尻をピシャリと叩いた。その動きが見えていたので、
「ひいい……ぶたないでください」
 あまり痛くもないのに、哀れっぽく訴えて立ち上がった。
「そら、ついといで。お客さん方。立ち止まったりしたら、遠慮なく尻を叩いてやってくださいね」
 勝江が先に立って、縄尻を股間から前へまわして引っ張った。
「きゃ……」
 明美の悲鳴に、すこし本気が混じった。わざわざこんなことまでしなくてもいいのに。腰巻が縄でたくれるし、強く引っ張られると股間に食い込んで痛い――のだけれど。階段を一歩上がるたびに、腰の奥がじいんと痺れる。
 六畳間の座敷も、布団が延べてあるし小さな座卓も置かれているしで、五人だと窮屈だった。
「それじゃ、支度をしてきますから。その間に順番を決めておいてくださいね。あ、湯文字は引っぺがしてもいいけど、縄はそのままにお願いします。縛るのって、けっこう手間なんだから」
「それじゃ、ジャンケンだ。引っぺがすのも、勝ったやつの権利な」
 勝江が襖を閉じると同時にジャンケンが始まる。
 明美は布団のへりに横座りになって、身の置き場に困っていた。もしこれが『ごっこ』じゃなかったら、わたしは逃げようとするんじゃないかな。まっすぐ襖めがけて突進したら逃げ出せる。そんなことを考えて、すぐに否定した。逃げ出しても、縛られているんだからすぐに捕まる。それとも。逃げたりしたらお父つぁんが――もうすこしで噴き出してしまうところだった。
(やだ。お父つぁんだなんて。ヒロインになりきってる)
 なんだか、昨日とは違って心にゆとりがあった。自分であれこれ段取りを考えたりせず、勝江と客たちに一切をまかせてしまう。考えていた以上に気楽だった。
「アイコでしょ、ほい」
 ジャンケンの決着がついて、勝ったのは年長の男だった。上着だけを脱いで。
「腰巻を取るぞ。いいんだな」
 念を押したのは、追加料金を心配したのかもしれない。
(オールヌード込みの値段だって言ってあるのに)
 しかし、そんな野暮を返す必要はない。羞ずかしそうに身を縮めて顔をそむけていればいい。
 客もそれ以上はなにも言わず、腰巻に手を掛けた。紐がないので、ちょっと引っ張っただけでハラリとほどけた。
「へええ。薄いな。ほんものの娼妓みたいだ」
 売春防止法が施行されたのは五年前だから、この男はかつての遊郭を知っているのかもしれない。当時の娼妓は古くからの伝統を受け継いで、淫叢の手入れを怠らなかった。実はこの元『新奇楼』でも、女将の指導でそのようにしている女子従業員も何人かいるのだとは――じきに明美も知ることになるのだが。いずれにしても彼女の股間には、冬の田圃よりも叢は淡かった。
「おや。さっそくに可愛がってもらってるのかい」
 勝江が戻ってきて、座卓に盆を置いた。
「それじゃ、先にこの妓(こ)の支度をすませますね」
 縄で縛って裸に剥いて、これ以上の支度が必要なのかと訝る三人の客の目の前で、勝江はチューブからゼリーを絞り出した。
「そら。もっと股をおっ広げな」
 横座りの膝をつかんで開かせる。
「……羞ずかしい」
 明美のか細い訴えは演技ではない。思ったままを(この場にふさわしいセリフだからと思ったので)素直につぶやいただけだ。股縄で刺激された腰の奥の痺れが、膣口をこねくられる刺激で甦った。
「なるほど。道理で最初から濡れてたわけだ」
 明美の味方(?)をしてくれている男が、すこし醒めた声で感心する。
 それを聞き付けたのか。勝江が明美の肩を芝居がかって突き飛ばす。明美は抵抗することなく、布団の上に転がった。
「それじゃ、時計をセットするからね。十五分でお願いしますよ。おっと、その前に」
 上着を脱いでいる男の前にひざまずいてズボンとパンツをずり下ろす。
「この妓は手が使えないからね。特別サービスだよ」
 軽く手でしごいて目いっぱいに怒張させて、ゴムをかぶせた。
「それじゃ、お邪魔物は退散いたしますよ」
 まだ服を着たままの二人を追い立てて座敷から出て行く勝江。
 とたんに、客の雰囲気がガラリと変わった。
「へへへ。親父さんの借金を返すのを手伝ってやるぜ。ありがたく思えよ」
 そんなことを言いながらのしかかってきて、一気に貫いた。
「あ……」
 声は出したけれど――背中で重ねた手首に体重が掛かる痛みをやわらげようとして腰を浮かし気味にしていたのがよかったのかもしれない。膣を押し広げられ身体の中芯まで貫かれる痛みはほとんどなかった。そして、粘っこいくすぐったさが腰の奥の痺れと共振して、これまでに感じたことのない感覚を生み出していた。気持ちいいのとは違う。いや、つたない快感なのかもしれない。けれど、ほんとうは夫婦の関係でなければしてはいけないことをしているという、それでお金を稼ごうとしている罪の意識が、その感覚を苦いものにしていた。
 明美は、客が早く射精してくれることだけを願って耐えている。けれど昨日とは違って、文句は言われない。
 客は、借金の形に拐われた少女を犯しているという幻想に没入しているらしい。
「つらいか? 恨むなら親父を恨めよ」
 そんなことをつぶやいたり。
「そんなに男に抱かれるのが厭か。これならどうだ?」
 腰は休みなく動かしながら右手を結合部に差し入れてきた。そして、男性器が出入りしているより上のほうを指でまさぐっていたが。
 不意に、腰の浅いあたりでなにかが爆ぜた。
「ひゃああっ……!」
 びくんっと瑕疵が跳ねた。男の指が動くたびに、得体の知れない感覚が立て続けに爆ぜる。背骨まで衝撃が突き抜ける。
「ひゃああっ……ああっ、あっ、あっ……やめ……やめて!」
 ほんとうはやめてほしくなかった。衝撃は、はっきりと甘美だった。それだけに怖かった。衝撃が繰り返されるたびに、身体が分解していくような錯覚があった。
「未通女殺しの豆とは、よく言ったもんだ」
 客は手を引き抜いて、それまでまさぐっていたあたりに下腹部を押しつけてきた。指に替わって剛毛が、それまで衝撃を発生していた部分を刺激する。爆ぜるような凄まじさは消えたが、じゅうぶんに鋭い甘美が腰骨を揺すぶる。
「あっ、あっ、あっ……」
 明美は切迫した声で喘いでいた。もしかすると、これが勝江さんの言っていたオーガズムというものかもしれない――ぼんやりと理解が生じた。けれど実際には、オーガズムの遥か手前、宙ぶらりんなままで明美は放り出された。
「ふう……安い買い物だったな」
 男が立ち上がった。ゴムをはずして自分で跡始末をして。まだ目覚まし時計は鳴らない。
「跡始末をどうするか、聞いておくんだったな」
 ズボンだけ穿いて上半身は裸のまま廊下に身を乗り出して、隣に声を掛けた。
「終わったけど、女の子はほっといていいのか?」
 すぐに勝江が入ってくる。
「そのままでいいわよ。どうせゴムなんだから。それにしても、お客さん凄いわね。ちゃんと豆のことを知っていて、三日前まで処女だった子をあれだけ哭かすんだもの」
 勝江の言葉はもちろんお世辞を交えているが、半ばは本心だったろう。この時代、クリトリスの存在を知らない男も少なくはない。知っていても、女性が苦痛を感じない繊細さで刺激できる男は、もっと少ない。
「あまり味を覚えられると、娼売がおろそかになって、それも困りもんだけどさ」
 明美をうつ伏せにさせて、尻を高く突き上げた形に据える。
「ずっと同じ体位じゃ、とくに手首が痛いでしょ。つぎは、これでいこうか」
 最初の客が身支度を調えて出て行くと、入れ替わりにつぎの客が姿を現わす。勝江のゴム装着サービスを受けて、最初の客以上に猛然と明美に襲いかかった。
 客が興奮したのは、明美が縄で縛られているからだけではなかった。正常位以外の体位をすんなりと受け入れる女性は、娼婦も含めてそんなに多くはなかった。だからこそ、雄二は明美が売れっ妓になれるようにと騎乗位まで仕込んだのだろうが。
 二人目の客は明美におおいかぶさり、両手で乳房をこねくりながら猛然と荒腰を使って、五分以上を残して終わってしまった。
 客は満足して帰ったが、『豆』をいじってもらえなかった明美は、なまじ快感を知ってしまっただけに、憤懣やるかたない思いで客を見送ったのだった。
 そして三人目は正常位に戻って。やはり明美を欲求不満に取り残して埒を明けたのだった。
 三十分千円(オールヌードはサービス)のところ、勝江の介添え込みで千五百円。割り戻しは正規の料金分が明美、追加分は勝江の約束になっている。三人が四十五分で二千円の変則的な金額も同じ計算で、明美が六百七十円で勝江が三百三十円。実際のところ逆の比率に決められても、明美は不満に思わなかったろう。三人続けてしくじって、それを一気に挽回できたのだから。

 その日は、午後四時から休憩を取りながら八時間をフルに働いて五回転。ちょんの間にしては回数が少ないのは、緊縛のせいだった。勝江が「他人を縛るのは初めて」と言っていたとおり、必要以上に肌を締めつけがちで、一時間もすると鬱血してくる。そのたびに縄を解いて一時間は休んで、また縛られる。それでも、最初に三人まとめて『お仕事』をしただけでなく、常連の二人がかち合ったとき、これは勝江からの提案で二人で四十分千八百円というのがあったから、五回転でも八人の相手ができた。
 二日目にして、ようやくのデビューであった。これからも『お仕事』を続けていく自信もついた。
 ふつうに接客できるようになったらやめるという『ごっこ遊び』だったが、そうもいかなくなった。今日は順番がまわってきそうにないと判断した何人かの常連が、翌日とか三日後に予約を入れたのだった。『ちょんの間』で予約というのも珍しい話だったが、勝江が貼りきってその場で予約を受け付けてしまった。そうなると、断わるわけにもいかない。
「まったくねえ。あまり派手にやると、御上(おかみ)がうるさいんだよ。うちは飲食店だよ。芝居小屋じゃないんだから」
 茶菓子しか出さないし、形ばかりのメニューに書いてあるのはビールと乾き物と新発売のインスタントコーヒーだけ。しかも、相場の三倍以上の値段。それでもきちんと届け出をしているから、警察も保健所も実態には目をつぶっている。
「いいじゃない。酒場にだって流しのギター弾きとか来るでしょ。同じことよ」
 もしも勝江が跡取り娘としてふんぞり返っていれば、女将も雷を落とせただろうが。当人も身体を張っているのだから強くも言えない。
「しょうがないね。それじゃ、あと半月くらいは許したげるよ。でも、予約なんか取るんじゃないよ」
 やはり明美に意見を求めることもなく決まってしまった。もっとも明美としても、段取りとかサービスとかを考えずに、縛られて転がって男の好きなように嬲られているだけのほうが楽だくらいには思っている。そういった受け身の姿勢の奥に潜む自分の性向については、まだ気づいていなかった。

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構図2

 やっぱり、筆者はSMシーンを描きたいんだなと、あらためて痛感。この章の27枚は6時間で書きました。これまでの5割増しくらいのスピードです。
 この章でも伏線していますが、勝江は「他人を縛るのは初めて」なのです。しかも、当時は扱っている書店が少なかったSM雑誌を縛り方の教科書にしているし。
 実は、「自分がされたいことを他人にしている」というドMなのです。やがては住込み男性従業員を婿養子に迎えて店を継ぐのですが、それは亭主にまかせっきりにして、自分は大阪の十三で(令和の時代にも現存している)日本最古のSMクラブを開く――というのは、嘘です。ここの作品はフィクションです。実在する(した)如何なる人物・団体・地域・年齢とも関係はありません。

 実在するこちらのアマゾンさんには、(ひとつだけ苦い体験も含めて)良い思い出しかありません。いえ、そのうちまたお世話にならないとも限りませんので、「思い出」という単語は不適切かもしれませんね。
 しかし、50年ちかい昔にアマゾンを創設したママ。いまだにプレイングマネージャーでいらっしゃる。

 化け物かよ?!


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