Progress Report 3:幼な妻甘々調教




Progress Report 2 →

 ペースが落ちてきて、7月中に脱稿するか田舎、怪しくなってきました。30枚ほど進んだと思ったら、半分くらい書き直したくなったり。書き直します。校訂後にさらにあれこれ弄って Fine Tuning する趣味はありません。チマチマ弄ったところで、90点が91点になるくらいのもの。それよりは、次を書きます。そうすれば、すくなくとも90+80=170点です。

 盆休みに、新妻を連れて帰省したら、嫁の破廉恥な格好(下着無し、ノースリーブ股下3cmワンピース)に父親が激怒したので、予定を早めて退散。ついでに東京へ寄って、SM用品店で本格的な鞭とかを買い込んで帰宅したところです。

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鞭打折檻

 三つどころか、僕はさらに二点を加えて購入した。ひとつは分厚い皮革に鋲を埋め込んだスパンキングパッドと、プラスチック製の教鞭だ。
 この教鞭などは、教育用品を扱っている店で買えば半値以下だろう。なにしろ、SM用品は需要の少なさもあって、馬鹿高い。掛け針(和裁用品で、洗濯バサミとリンク機構を組み合わせたような、布を咥える小道具)に釣りの錘を吊るした代物を乳首責め具として二個二千円で売っている。市販品を別々に買って数分の作業で手作りすれば、百円以下だ。
 もっとも、他のSM用品を買わなかったのは、ケチったからではない。手枷や手錠は趣味ではないし、首輪も鎖も縄も、荒物屋のほうが品揃え豊富だ。ボディハーネスなどは海外から取り寄せたカタログの写真を手本にして睦菜に手作りさせる計画でいる。
 しかし……専門店で購入すれば、いよいよのっぴきならない領域に踏み込むのだと、睦菜に覚悟をうながす効能はある。その覚悟をいやが上にも決めさせる意味で、睦菜の肌を叩く道具はボストンバッグに詰めて、本人に持たせた。
 意気揚々(は僕だけで、睦菜は悄然)と帰宅したときには夕方になっていた。
 先に風呂を沸かさせてひとりではいり、リビングルームでくつろぐ。台所で立ち働く睦菜の裸エプロン姿を、食傷気味に鑑賞する。菊枝は自分に与えられた部屋にこもっている。主婦なら台所仕事をひとりで切りまわすのは当然だが、まさか家政婦がそばで手をこまねいているのも不自然だ。新婚生活も一か月を過ぎて睦菜も家事には慣れ、最近では菊枝の出番は、夜の性技指導と、買い物や井戸端会議のお目付け役がもっぱらとなっている。
 菊枝も交えて三人で夕食を済ませ、睦菜が入浴しているあいだに菊枝が後片付けをする。
 そして、いよいよ――懲罰、それも厳罰の幕が開く。
 応接セットを隅に押しやって広げた空間の真ん中に、全裸の睦菜を正座させる。
 菊枝は乳房を丸出しにした黒のブラジャーとパンティストッキング直穿きの女王様スタイルで、睦菜の後ろに立っている。僕は、あえて普段着でソファに座って睦菜と向き合う。二人のあいだの床には、今日買った五点のSM用品と、これまでに使っていた靴ベラ、布団叩き、革ベルト、縄束が並べてある。スリッパは、僕が履いている。
「今日は珍しく、睦菜のほうから懲罰をおねだりしたね」
 まずは、言葉で辱めにかかる。
「睦菜は、懲罰に値するどんな罪を犯したのかな?」
 睦菜は全身を薄く染めて(いまだに全裸は羞ずかしいらしい)うなだれ、その視線は、目の前に並べられた――自分の肌に叩きつけられる小道具類に落とされている。
「旦那様の言いつけに逆らいました」
「どんなふうに?」
「……お店の人が見ているところで、スカートを捲ってお尻を出せませんでした」
 か細い声で答えながら、ちらちらと後ろを気にしている。
「なぜ、僕がそんな命令をしたんだったかな」
「……いろんなムチを試すためです」
 静かな部屋の中で面と向かって、それでも聞き耳を立てなければ聞き取れないほどの声だった。
「家に帰ってからなら、試しても良かったんだね」
「はい」
 安堵の息とともに返事をした。言葉で嬲られるのが終わったと察したのだろう。僕としても、その推察を裏切ったりはしない。
「では、期待どおりに試し打ちを始めよう――立て。立って、懲罰を受ける姿勢を取れ」
 びくっと、睦菜の肩が震えた。いよいよ叩かれるという恐怖ではない。僕の言葉づかいに戸惑っている。これまでなら、「立ちなさい」と優しく言ってきた場面だ。
 それでも睦菜は素直に立って、両手を頭の後ろで組んだ。股間を叩かれるために両足を開き、ぐらつかないように踏ん張った。懲罰を受ける姿勢と今は言ったが、捕虜の姿勢と言う場合もある。罰を与えるのではなくメコ筋を可愛がってやるときなどだ。
「まずは、これまでに使ってきた道具の痛みを思い出させてやろう」
 スリッパを手にして立ち上がる。
「こっちにケツを向けろ」
 睦菜の全身が、またぴくりと震えた。
「今夜の旦那様……怖いです」
 睦菜が本気で怯えている。
 最近の睦菜は、懲罰のときにもあまり怯えを見せなくなっていた。覚悟とか狎れではなく、諦めている。今の睦菜は――痛みへの予感よりは、僕の豹変におののいている。
「今夜だけじゃない。これからもずっと、怖いぞ」
 にらみつけられて、睦菜はおずおずと後ろ向きになった。そのあいだも、頭の後ろで組んだ手は保っている。
「スリッパの痛みを思い出せ」
 パアン!
 力いっぱいに叩いたが、睦菜は微動だにしない。新婚旅行のときに比べたら、たいした進境だ。とはいえ、一か月でこれでは、先々のエスカレートが思いやられる。自重しなくては。
 スリッパを靴ベラに持ち替えて、手加減無しで尻に叩きつける。
 ぶんっ、パッシイン!
「きひいっ……」
 柄の長さだけスイングが加速されるし、打撃面積はスリッパの四半分。衝撃はスリッパの比ではない。
「つぎは布団叩きだ」
 ひゅん、パチイン!
「くうう……」
 柄は長いが、打撃面積が広いし肉もあまりひしゃげない。スリッパ以上靴ベラ以下だ。
 最後に、縄束。水で濡らせばかなりの威力だが、乾いたままだと意外に空気抵抗が大きくて威力が削がれる。
 ぶんっ、バシャアン!
「きゃあっ……!」
 しかし、手首のスナップを利かせると打撃の速度がぐんと上がる。
 しかし、しょせんは尻だ。痛みは高が知れている。そうでなくては比較が難しいのだが。
「さて、いよいよだぞ」
 今日買ったばかりのうちから、最初に選んだ板製のスパンキングボードを手に取った。小さなハート形を幾つも刳り抜いてあるやつだ。
 ぶゅゅん、バシン!
 思いっきり、尻がひしゃげた。
「…………」
 睦菜は表情を動かさなかったが、内心では拍子抜けしているはずだ。スリッパと比べても、痛さはあまり変わらない。
 しかしサディスト側には、スリッパでは味わえない愉しさがある。睦菜の尻がいっそう赤く腫れたが、白いハートが転写されている。それと、空気が穴を通り抜けて風切り音が微妙に震える。急降下爆撃機ユンカース87に装備されたサイレンと同じような威嚇効果がある。
 分厚い皮革に鋲を打ったスパンキングパッドに持ち替える。
 ぶゅん、バチイン!
 びくんと、尻が前方へ逃げた。鈍角とはいえ金属鋲が肌に食い込むし、皮革のしなりが痛みに粘っこさを与える。その分、打撃の瞬間の痛みは和らぐが。
「さて。尻を叩くときは、どっちを使ってほしいかな?」
 睦菜が僕を振り返りかけて、途中で思いとどまった。
「わたしが決めてもいいのですか?」
 何度も注意されて、最近は一人称が『睦菜』で定着している。それが人称代名詞に戻ったのは、驚きの表出だろう。
「叩かれるのはきみだからね。たまには希望をかなえてあげよう」
 数秒、睦菜は考え込んでいた。そして、意外な返事をした。
「……後のほうにしてください」
「へえ。わざわざ痛いほうを選ぶんだね?」
「だって……そうでないと、懲罰になりません」
 殊勝なことを言う。
 しかし、そういった態度はサディストの嗜虐を焚きつけてくれる。
「よし。皮革製のパッドを、尻叩き専用にしよう」
 しかし、せっかく買った品をお蔵入りにするのはもったいない。
「板製のほうは、乳房専用にしてやろう」
「あ……」
 睦菜が溜め息のような声を漏らした。驚きなのか諦めなのかまでは、判然としない。予想していなかった言葉だったのは確実だ。なにしろ僕自身、咄嗟の思いつきなのだから。
 睦菜は、嬲られるための姿勢を崩していない。僕の許可が出ていないのだから当然だが、同時に、これしきで懲罰が終わるはずもないと心得ている。事実、始まってもいない。
 僕は、つぎの品を手に取った。一本鞭だ。狭い室内で振り回せる長さだ。僕の技量では、二メートルも三メートルもある、家畜用鞭(ブルウィップ)を効果的には扱えないのも事実だが。
「これは、スパンキング用の板とは桁が違うぞ」
 ぶゅんっと、素振りをくれてやる。これまで耳にしたことのない鋭い風切り音に、睦菜の全身がぴくんと震えた。
 ゆっくりと鞭を振り上げて、軽く引きずる感覚で斜めに打ち下ろす。手首のスナップはじゅうぶんに利かせて。
 ぶゅんっ、パシイイン!
「痛いっ……!」
 切羽詰まった悲鳴ではなかった。
 薄赤く腫れた尻に、鮮やかな線条が刻まれた。一晩寝ても蒸しタオルでも消えない、禍々しくも美しい刻印。これを使うときは、TPOに気をつけねば。
「つぎはバラ鞭だ」
 びゅんっ、パアアン!
「く……」
 赤く腫れた尻に太い革紐の角が擦れて、数本の線条が刻まれる。一本鞭の痕に比べれば不鮮明だ。これくらいなら、ショートパンツの裾からはみ出ていても目立たない(と、睦菜を強引に言いくるめられる)。
 最後は教鞭。以前から、使ってみたいとは思っていた。笞(硬い一本形状の物は、この字を当てる)としては弱いが、先端にある団栗様の膨らみが、打撃を一点に集中させる。繊細な突起にピンポイントで当たれば、凄まじい威力を発揮するのではないかと――想像するまでもなく、じきに確かめられる。
 それにしても。教材には、SMに使えそうな小道具が多い。黒板で使う大きな三角定規は、先端でつつくのも良し、パンティの上から(もちろん直接にでも)食い込ませるのも、趣きがある。スパンキングでは、物差しやT定規に譲るが。コンパスは、クリトリス(あるいは膣)を中心にして双つの乳首に円を描ける。縄跳びは、緊縛はもちろん、グリップを双穴に突っ込むという使い方もできる。チョークを尿道に……いや、妄想が過ぎた。しかし睦菜が、つい数か月前まではそういう環境にいたと思うと、彼女の同級生は今もそうなのだと思うと、背徳の淫愉を禁じ得ない。
 妄想に終止符を打って――いや、妄想を具現化させて。
 しゅん、ビシイッ!
「痛いっ!」
 一本鞭に比べると、悲鳴には余裕があった。しかし僕としては、鞭よりも手応えが直に伝わってくるので愉しい。
「今の三つでは、どれがいちばん痛かったかな?」
 睦菜は迷わずに答えた。
「最初のが、特に痛かったです」
「では、いちばん楽だったのは?」
 これにも間髪を入れず返事をする。
「指示棒です」
 最近ではそういう言い方をするのかと、勉強になった。会社での会議にも使うことを考えれば『教』の文字は当てはまらないし、民主教育に『鞭』の字は不適切かもしれない。それはともかくとして。
「そうか。この三つは、どこ専用とはせず、罪の重さによって使い分けることとしよう」
 鞭と笞はダイニングテーブルに片付けて、部屋の隅に押しやってある応接テーブルから(叩くためではなく縛るための)縄束を手に取った。
「試し打ちは、これで終わりだ。お仕置きを始める。手を後ろにまわせ」
 懲罰を受けるのは罪人だから、縛られていて当たり前。そんな理屈を、睦菜は(内心はともかく)受け容れている。と同時に、同じ罰を与えられるのなら縛られていたほうが楽だと、身体で納得している。
 手の動かせるのに鞭打たれる部位を庇わずにいるのは、意志の力を要求される。メコ筋打ちは二度しかしていないが、最初のときはテーブルの上で逆海老に縛られるのを嫌がったので、床の上でブリッジをさせてやった。もちろんブリッジは一発で潰れて、二打罰の追加。捕虜の姿勢でも、すぐに両手で股間を押さえて崩折れた。
 腕をいっぱいにねじ上げて高手小手に縛り、胸縄で乳房を絞り出す。ダイニングの椅子を持って来て、後ろ向きにして背中にあてがい、椅子の脚に足首を縛りつけた。睦菜が足を開いたままでいる努力をしないですむように、膝を背もたれの両端につないでやる。
 それまでは羞恥が勝って薄桃色に染まっていた肌から血の気が引いていく。この姿勢で縛られるのは、(今のところは)もっとも厳しい罰であるメコ筋打ちを意味すると、察したのだろう。おおむねはその通りだが、今夜の主目標はメコ筋ではない。
「猿轡が必要かな?」
「お願いします。睦菜に猿轡を噛ませてください」
 ためらわずに、教え込んだ作法通りに返事をする睦菜。家の中とはいえ、大声で叫べば隣家にも聞かれる。だから悲鳴を封じられる安逸にも、睦菜は狎れてしまっている。言葉を発せないつらさも、今夜は教えてやるつもりだ――などとはおくびにも出さずに、手製のボールギャグを睦菜に噛ませた。
 スーパーボールという玩具が数年前に流行って、今も子供に大人気だが、実に使い勝手が良い。直径五センチほどのボールに穴を開けて(見た目を美しくするために)工事現場などで使うトラロープを通せば、関西(kinky)用品よりも、よほど優れたボールギャグになる。今日の店にもボールギャグは売られていたが、中空のプラスチック球に呼吸のための穴が幾つも開けられているから、(意味をなさないにしても)声が漏れるし、やたらと涎が垂れて跡始末が面倒だ。もっとも、開口が無いと窒息の危険を伴うから、たとえばひと晩放置する場合などには適さないのだが。
 小から大のスーパーボールを順番に金属棒で串団子にした物も、いずれは作るつもりでいる。唯一残された処女穴を拡張するときには、これを使う。その他にも――小さめの物を柔軟なロープで数珠つなぎにすれば、縄褌よりもはるかに刺激的だろう。
「んん、んんん……」
 睦菜の鼻声で我に還った。
 猿轡を噛まされると、睦菜は決まって小さな声で呻く。たしかに声を封じられたと、自分に言い聞かせているのかもしれない。諦めと甘えの綯い混ざった、媚びるような呻き声だ。
「人前で僕の言いつけに逆らったんだからね。僕やお菊さんだけがいる場所での反抗に比べたら、罪はずっと重い」
 僕は迷うことなく教鞭を懲罰の道具に選んだ。
「とはいえ、この一か月間はおおむね恭順だったし、第三者のいる場所で公然と逆らったのはこれが初めてだ。だから今日のところは、おまえがいちばん楽だと言った教鞭で赦してやろう」
 判決を言い渡しながら、教鞭の先端の膨らみで乳首をつつく。
「んん……」
 睦菜は僕を上目遣いに見上げて、こくんとうなずいた。寛大な処置(では、ないのだが)への感謝を表わそうとしたのかもしれない。そうでなくても、拒否の意図など無いということだ。
「左右交互に十発ずつだ」
 睦菜が安堵めいた表情を浮かべた。これまでも、乳ビンタが十発以下だったことはない。せいぜいその倍なら、革ベルトに比べて華奢に見える教鞭なのだから、たいしたことはないとでも勘違いしているのだろう。
 乳房の中ほどに先端を当てて、腕を伸ばした分だけ下がって。
「いくぞ」
 鞭を振りかぶって斜めに打ち下ろした。
 しゅん、ビシイッ!
「ん゙む゙ゔっ……?!」
 上体が大きく揺れて、ガタタッと椅子が動いた。予想していたより痛みが激しくて、たじろいだのだ。
「あら、せっかく縛っていただいたのに、じっとしてられないの?」
 菊枝が椅子に跨った。重しになるだけではなく、睦菜の両脇に手を差し入れて上体を押さえた。
「ありがとう。これで狙いをつけやすくなる」
 バックハンドで右の乳房を打ち据えた。
 しゅん、ビシイッ!
「む゙ゔゔっ……!」
 上体は微動だにせず、乳房だけがぷるるんと弾んだ。
 いっそう慎重に狙いをつけて。今度は打ち据えるのではなく、教鞭を右から左へ振り抜いた。
 しゅん、ピシイイッ!
 教鞭は乳暈のすぐ外側に当たって、乳首を薙ぎ払った。
「ん゙ま゙あ゙ーっ!」
 睦菜が、のけぞって絶叫する。
 これまでも革ベルトで乳首を狙って打ったことはある。しかしベルトの幅に打撃が分散するから、痛みも乳房全体に広がる。ピンポイントに激痛が集中するのは、睦菜にとって初めての体験だろう。
 僕はいっそう慎重に狙って、バックハンドで右の乳首も薙ぎ払った。
 しゅん、ピシイイッ!
「む゙も゙お゙お゙っ!」
 ふたたび睦菜がのけぞって、くぐもった悲鳴を噴いた。
 悲鳴の大きさを参考に力を加減しながら、十発を打ち終えた。乳房には短く薄い鞭痕が刻まれているだけだが、乳首は熟したグミの実のように赤黒く膨れている。指でつまむと、いつもの硬くしこった手触りではなく、熟しきった果実のようだった。
「頑張ったね」
 果実を潰してしまわないように、親指と人差し指の腹でやさしく転がしながら、いたわりの言葉を掛けてやる。
「じゅうぶんに罰せられたと思うかな?」
 はっと、睦美は顔を上げて。すぐに目を伏せた。こくんと小さくうなずく。
「黙っていては、わからない。じゅうぶんに反省しているのか?」
 こくこくと、睦美がうなずく。しかし、僕は重ねて問いかける。
「これ以上の罰は赦してほしいのなら、そう言いなさい。沈黙は反抗と同じだ」
「んんん、んん、んんん!」
 睦菜は激しくかぶりを振る。
「そうか。ちっとも反省していないのか。乳首だけで赦してやるわけにはいかないね」
「んんんっ、んんん!」
 睦菜はいっそう激しく呻いて、いっそう激しくかぶりを振る。
「それとも、お豆にも罰がほしくて、わざと反抗しているのかな?」
 睦菜は呻くのをやめて、僕をにらみつけた。頬が紅潮しているのは、理不尽への怒りだろう。この勁(つよ)い精神は尊重してやらねばならない。調教とは、理不尽を無批判に受け容れさせることではないと、僕は思っている。理不尽を押し通されることを怒り、しかし撥ね返せない自分の無力に打ちひしがれる。つまり、愛奴には人間であり続けてほしいということだ。もちろん、それは僕の哲学であり、睦菜にも菊枝にも打ち明けるつもりなどない。
「そうか。そんなにお豆を鞭打ってほしいのか。ずいぶんと淫乱になったものだね」
 事前には打ち合わせていなかったのだが、菊枝は僕の意図を察して。左手で睦菜の腰を抱え込み、右手を股間に這わせた。すっかり縮こまっているクリトリスをほじくり起こして、一か月前の睦菜だったら悲鳴をあげただろう激しさで――つまみ、こねくり、包皮をしごく。そんな乱暴な愛撫にも反応するまでに、睦菜は馴らされ開発されている。
「こんなに尖がってますわ。あ、そうだわ」
 菊枝は自分の髪を数本抜いて、僕に手渡した。
「これを巻きつけてやったら、いかがかしら」
 なるほどと思った。いったん教鞭をテーブルに戻して、髪の毛を実核の根元に縛りつけた。
「ん゙も゙お゙っ……む゙ゔゔゔ……!!」
 髪を振り乱して狂乱する睦菜。クリトリスをくびられるだけでも、相当な刺激だ。ますます充血して、ミニチュアサイズのペニスさながらになる。手を放しても、包皮は元に戻らない。
「ん゙む゙む゙む゙……も゙お゙お゙っ!」
「うるさいぞ」
 ぱちんと、軽くビンタを張ってやった。
「声を出すな。静かにしていれば、三発だけで赦してやる」
 ぴたりと、呻き声が止まった。
「んん……?」
 すがりつくような目つきというものを、僕は初めて見た。愛おしさが込み上げてくる。しかし始末の悪いことに、嗜虐の炎も激しく燃え上がる。
「悲鳴をあげるごとに、二発を追加するぞ」
 睦菜の返事を待たずに、僕は教鞭を下段に構えた。じゅうぶんに間合いを測る。
 重しとして椅子に座っている菊枝が、両手で睦菜の腰を支えた。睦菜は椅子に縛りつけられたまま、ウィリアム・テルの息子さながらに凝固する。
 しゅんっ、ブシッ!
「……!!」
 打たれた瞬間に、睦菜は爪先立った。わずかでも激痛から逃れようとしての、無意識の動きだろう。
 ふうっと、睦菜が大きく息を吐いた。耐えられたという安堵の思い。
 しかし、今の一発はクリーンヒットではない。空振りをしないよう、淫裂の中心を狙ったのだ。教鞭は淫裂をこすって勢いを削がれてから、クリトリスを叩くというよりもこすり上げた。とはいえ、巻きつけておいた髪の毛が吹き飛んだのだから、決してやわな一撃ではない。
 しかも、小指の先よりも小さな突起に、ペニスと同じ数の神経が密集している。睾丸を蹴られた痛みが女に理解できないのと同様、クリトリスを虐められる辛さは僕には想像もつかない。
※クリトリスにはペニスの二倍もの神経が集まっているという知見は、二十世紀末以降のものです。
 とはいえ、出産という原初の試練に耐えるように作られている女の身体だ。クリトリスへの責めなど、高が知れているだろう――というのは、男の身勝手な想像でしかないが。
 急速に萎えて皮をかむったクリトリスを直接狙うのは難しいので、二撃目も最初と同じところを狙った。
 しゅんっ、ピシッ!
 ドングリの先端が、かろうじてクリトリスを掠めた。しかし、当たってはいる。ピンポイントへのショックは、むしろ大きい。睦菜は反射的に爪先立って、それから前へ倒れかけた。が、菊枝に引き止められた。
「お菊さん、顔を引き起こしてくれ」
 睦菜をのけぞらせておいて。三撃目は上から打ち下ろした。
 しゅんっ、ビシイン!
 ドングリがクリトリスを直撃して、肉にめり込んだ。
「も゙っ……!!」
 睦菜の膝から力が抜けて、その場に崩折れかけるが――膝を巻く縄と菊枝がつかんでいる髪の毛で、宙ぶらりんめいた姿勢で止まった。
 ちょろちょろっと、股間から水が滴った。フローリングに水溜りができていく。男と違って、小便を途中で止めるのは難しい。今の睦菜には、その気力もないだろう。
 僕は着ていた服を脱いで、絨毯にかぶせた。
「んんっ、んんん、んっ……」
 これまでになく切迫した様子で、睦菜が呻く。顔を真っ赤にしている。ただならぬ様子に、ボールギャグを取ってやった。
「ごめんなさいっ……!」
 叫んで。泣きじゃくる。
「縄を……ほどいて。掃除、します……お願いです」
 言葉を封じたまま返事をしろと言われたときよりも、よほど取り乱している。僕の理不尽な仕打ちよりも、自身の失態を愧じている。
 もしかすると、睦菜は天性のマゾヒストではないだろうか。いや……たった一枚きり買った宝くじが一等に当たるような僥倖に恵まれるはずがないとすれば。女性が誰しも裡に秘めているマゾ性向が、この一か月の調教で引き出されたと考えるほうが、合理的だ。
 いずれにしても。睦菜への愛おしさが、ますます募る。睦菜への嗜虐に、いっそう執着する。
「お菊さん。睦菜に跡始末をさせてやってください」
 僕はソファに座って、煙草に火を点けた。
 菊枝が縄をほどいて、睦菜を椅子から解放してやった。しかし、後ろ手に縛った縄は残している。小水にまみれた僕のシャツをつまんでバスルームへ持って行く。そして、水を汲んだバケツと雑巾を持って来て、床に座り込んでいる睦菜の前に置いた。
「あの……?」
 睦菜が、僕と菊枝とを交互に見上げる。
 予想外の展開でも、すべては僕の掌の上といったふうを装って、紫煙をくゆらす。
「掃除をするんでしょ。いっそのこと、舐めて取ったら?」
 睦菜が顔を引き攣らせた。怒りに蒼褪めて……また、頬を紅潮させると。
 床に身を投げ出して、ほんとうに小水を舐め始めた。
「おいおい……」
 菊枝は、僕が思っていたよりもサディスチンだ。これまでに何人かマゾネコを放し飼い(同棲には至らない)にしていたが、三か月と続かなかったというのも、頷ける。
「お菊さんが、せっかく雑巾を持ってきてくれたんだぞ。ちゃんと使いなさい」
 聖水プレイもいずれはと考えていたが、それは僕の『聖水』だ。彼女自身の汚水を舐めさせることまでは考えていなかった。しかも、調教一か月目にして。
 睦菜は床に這いつくばったまま上体をもたげて。納得した顔つきになって、バケツの縁に掛けられている雑巾を口に咥えた。床に落として、雑巾の一端を咥えたまま頭を左右に動かしたが、ほとんど拭けていない。
 僕がサディスティックなアドバイスをする以前に、睦菜は雑巾に顔を押しつけて、雑巾で床を拭くとも顔を拭くとも判然としない動作を始めた。自分の小水を顔になすり付けているにも等しい。
 雑巾がじゅうぶんに小水を吸い取ると、また口に咥えてバケツに浸けた。そこで、途方に暮れる。上体を起こして床に座り直し、今にもバケツに顔を突っ込みそうな風情。さすがに菊枝がバケツから雑巾を拾い上げ、絞ってから床に投げた。睦菜が、いそいそと雑巾に顔を突っ込む。
 それを何度か繰り返して、床は綺麗になった――と言いたいところだが、薄い染みが大きく広がったに過ぎない。絨毯を敷いていたら、床は汚れずに絨毯だけを取り換えて済んでいたところだ。這い這いをする赤ん坊が絨毯から抜ける遊び毛を吸い込んだら喘息になると、婦人雑誌か何かから聞きかじった知識をふりかざして、前妻が撤去してくれたおかげで、まあ、フローリングの修繕代金くらい、かまいはしないが。
 最後に菊枝が雑巾をよく絞って、それで睦菜の顔を拭いてやった。タオルを使わないのだから、恥辱プレイだ。
「よく頑張ったね」
 僕はソファから立って、睦菜を抱き起こしてやった。そのまま唇を近づける。
 睦菜が、あわてて顔をそむけた。
「汚いです」
 短い婚約時代には何度かキスをしたが、結婚してからは一度もしていない。愛奴をそこまで甘やかすなど、とんでもない。
「たしかに、汚いね」
 僕の言葉に、緊縛された裸身が腕の中で強張った。
「自分の小便を舐めたり、僕のペニスを咥えたり。だから、これは飛び切りの褒美だよ」
 睦菜が僕を振り返った。小さく唇を開けて、目蓋を閉じている。
 僕は睦菜に口づけをしてやった。だけでなく、舌で口中を貪った。強張っていた睦菜の裸身が、軟らかく蕩けていく。
 鞭に対するバイブよりも、よっぽど効き目のある飴だった。
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 WORDでは、ポイントしてしたりフォントの色を薄くしたり
「恥ずかしがって、かろうじて聞き取れるような声で訴えている」
のを表現していますが。ブログ掲載時には、そこまで手を入れません。製品版をお楽しみに、です。

 今回は、別の表紙絵(構図案)でお茶を濁します。
※構図
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