Progress Report Fimal:女神様と王女様と、いとこの(下)僕

 ふわあ。やっと、終わりました。思えば、構想3か月/執筆3か月。
 1月下旬にPIXIV小説でリクエスト(有料)をもらって、一旦は辞退して、でも4月に再リクエストしてもらう予定で他の作品を書きながらPLOTを練って、3月末に再リクエスト/受注して書き始めて、5月2日に脱稿して。3日と4日が休日の予定だったのに勤務先都合で5日も休みになって。推敲3回+BF丁稚揚げして、たった今(2022/05/05 13:50)PIXIVに投降を終えたところです。
 3月末に書き始めて5月初頭に脱稿。足掛け3か月。嘘は言っていませんね。

 少年がSMショーの初舞台でマゾに開眼する話ですが、実はその前の章(ストーリイ上では1か月前)では幼いサディスチン姉妹がマゾ役で同じ舞台に出演するのです。そして、こっちの方に力が入ってしまいました。(2万6千文字:1万8千文字)。

 そこで今回は姉妹がマゾ役の方を御紹介いたします。

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SMショー

 2学期が始まった。僕のほうはすぐに実力テストがあって、美竹さんは前期の期末テスト。
 そして、結果の発表。僕の危具は的中して、美竹さんは目標にまったく届かなかった。目標の平均点460に対して430、へん差値65に対して58。未達成の罰はメコ筋への鞭打ち30発はともかく(じゃないけど)、クリトリスへのオキュウが7個。美竹さんは自分で自分に罰を言い渡しながら、泣きじゃくってた。
 なんだか甘えたような泣き方だった。もしかしたらメス穴を濡らしてるんじゃないかと疑るくらいには、僕も美竹さんのことを分かるようになっている。
 ほんとに濡らしていたかは(残念だけど)分からなかった。
「せんねんキュウは跡が残らないというが、それはふつうに使ってのことだ。小さなクリトリスへ立て続けに7個となると、焼け落ちてしまうかもしれん。美鈴は、どう思う?」
 伯父さんに尋ねられて、美鈴ちゃんは固まってしまった。こういうときにどんな返事を求められているかは、僕にも想像できる。美鈴ちゃんは30秒くらい黙っていたけど、それは考えているのではなくて決心に必要な時間だったろう。
「あたし……お姉ちゃんの罰を半分引き受けます。まだ皮をかむってるから……モグサでもいいです」
 顔は真っ青、声も震えていた。でも、美竹さんと同じで、なんとなく甘い響きがあった。
 伯父さんが満足そうにうなずいた。
「よかろう。姉思いの妹にめんじて、クリキュウは許してやっても良い。ただし、次のキンシツ会にはふたりそろってトリを務めるのが条件だ」
 ふたりそろって、伯父さんの前にひれふした。
「ありがとうございます。どんな厳しいショーでも、立派に務めて見せます」
「すこし、均くんを教育してやろうと思っての処置だ。彼にも感謝しなさい」
 いきなり話を振られて、僕はぽかんとするしか反応できない。
「ありがとうございます、均さま」
 W美姉妹に土下座されて、目を白黒赤青黄色。
「あの……どういうことですか??」
「そのときになれば分かるさ」
 答えてもらえなかった。
 メコ筋への鞭打ち30発は、その場で執行された。美竹さんは、やっぱりパンティをサルグツワにしたけど、うめき声までは止められなかった。数え役は、また僕が指名されたので、間違えないように注意を集中していたけど……うめき声が、やっぱり甘酸っぱく聞こえたので、わざと間違えてあげようかと、何度も考えてしまった。もちろん、実行はしなかった。

 訳が分からないまま、9月も下旬になった。それまでに一度、洋服屋に連れて行かれて採寸された。洋服屋といっても赤山とかじゃなくて、オーダーメード専門の高級店。1週間ほどで届けられたのは、タキシード。背広みたいなやつで、薄い生地のつりバンド付き腹巻(?)をして、ちょうネクタイを結ぶ。それをスーツケースに入れて、一家そろって東京へ行った。
 着いた先は、小ぢんまりとしたホテルだった。エントランスには、見落としてしまいそうなくらいひっそりと『錦瑟会様貸切』の看板が立ててあった。それを見たときは「へえ?」くらいにしか思わなかったけど、クロークというんだっけ、スーツを着た人が3人並んでる受付で、後ろにある料金表を見て驚いた。いちばん安い部屋(大人2人)で5万円。たしか、小学校5年のときに連れてってもらったドリームワールドの近くのホテルで、宿泊料金が親子3人の部屋で1万2千円だった。それだけのお金があれば新しいテレビゲーム機を買ってもらえるのにと思ったから、よく覚えている。その4倍以上。ウルトラ高級ホテルだ。
 ボーイさんに荷物を持ってもらって、案内されたのは2LDKくらいの部屋。ベッドルームだけじゃなくて、リビングみたいなスペースもついてる。それが、伯父さんと僕のツインルームだそうだ。伯母さんとW美姉妹は別の部屋。料金表にはファミリールームというのもあったけど、そちらは最低でも15万円だから2部屋に分けたほうが安上がりなのかな。
「まだ時間があるから、テレビでも観てなさい」
 これから何をするのか、まったく教えてくれずに、伯父さんは部屋から出て行った。伯母さんたちの部屋を訪れようとしたけど、追い返された。
「美竹たちは、いろいろと支度があるの。ごめんなさいね」
 なんだかなあ。別そうから帰ってからこっち、みんな微妙によそよそしいんだよなあ。仕方がないので、面白くもないテレビでも観るしかない――と思ったら、有線放送なのかな。洋画専門とかアニメばっかりとか、チャンネルが20以上もあったので、退屈はしなかった。どころか、まだ上映中のはずの『スター・ワーズ6』にかじりついていた。もう英語も習ってるんだからと、字幕版にしたけど、結局は字幕を読んでばかりだった。
 だけど、最後までは観れなかった。伯母さんが来て、僕の着替えを手伝ってくれた。
 ちょうネクタイは幼ち園の発表会で身に着けた記憶はあるけど、ワイシャツ(ほんとは違う名前らしい)の上に腹巻をかぶせてベルトでつるなんて、妙ちくりんなファッション。くつも光沢のある黒いのにはき替える。
 支度が出来上がると、W美姉妹を従えて伯父さんが迎えに来た。伯父さんもタキシード。伯母さんは、ノースリーブで胸元も広く開いてる薄青のワンピース。上半身がぴっしりしてるけどスカート部分はふんわり。カクテルドレスといって、タキシードと同格の礼装だとか。なのにW美姉妹は……マントというかポンチョというか、首からふくらはぎまで、ふくろをかぶってるみたいな服装。腕もふくろの中に隠れてる。そして、裸足。しかも、長い鎖のついた首輪をしていた。
「あの……?」
「美竹は、きみが連れてきなさい」
 僕が質問しかけるのに言葉をかぶせて伯父さんは、美竹さんの首輪から延びてる鎖を僕に押しつけた。
「……! ……?」
 何がどうなってるのか見当もつかないけど、伯父さんについてくしかない。
 伯父さんは僕を左側に並ばせて歩き始める。その後ろに美鈴ちゃんと美竹さん。伯母さんはふたりの後ろ。まるで、連行される犯罪人(でも奴隷でも家蓄でも)を見張ってるみたいだと思ったのは、鎖からの連想だ。
 エレベーターのところにボーイさんが立っている。僕たちの姿を見ると、うやうやしくおじぎをして、ボタンを押してくれた。W美姉妹の奇妙な格好を見ても、まるきり無表情で無言。
 2階で降りると、広いパーティー会場だった。
 入口のところに、なぜか塩田先生がぽつんと立っていた。
「わざわざお呼び立てして申し訳ない」
 伯父さんが声をかける。先生は伯父さんと僕を見比べて、きまり悪そうにうつむいた。
「いえいえ。乗車券まで手配していただいては、お断わりするのも失礼ですから。ですが、これは一体どういう集まりなのですか?」
「百聞は一見にしかずと言いますから。ともかく、こちらへどうぞ」
 伯父さんと僕とで先生をはさむ形になって、会場へ入った。
 小さなテーブルがたくさん、ちょっと見には不規則に並べられている。ひとりや5人以上のテーブルもあるけど、半数はカップルで残りは子供連れかな。私立の制服ぽいのを着た小さな子もいるし、中年のカップルと若夫婦みたいなテーブルもあった。
 ここでも伯父さんは偉いんだろう。最前列中央のテーブルに案内された。でも、イスは4脚だけ。正面の幕に向かって並べられている。僕と塩田先生が真ん中に座って、僕の右が伯父さん。塩田先生の左が伯母さん。
 W美姉妹の席が無いなと思ってたら……テーブルの両端に分かれて、のろのろぎくしゃくと(その理由は後で分かった)床に座り込んじゃった。体育座り。たくれ上がったポンチョは、案内したボーイさんが直してくれた。すそが床まで広がって、まるでてるてる坊主。
 床に座ってる人なんて、他のテーブルにはいない。ますますナゾが深まる。
 ぱらぱら残っていた空席も10分ほどでうまった。部屋の照明がすこし暗くなって、テーブルにキャンドルが灯される。そして、幕の下りた舞台にバニーガールのお姉さんが登場した。タイトルは忘れたけど、テレビで観た洋画を思い出した。カジノでもお客は正装してて、ウェイトレスはバニーガールだった。
「皆様、遠路はるばるお越しいただき恐縮です。これより、錦瑟会昭和58年度9月例会を開さいいたします。本日は会長の土幸様は御欠席ですが、常任理事であらせられる沢渡様が御臨席です」
 バニーガールさんが、白手ぶくろの指をそろえて伯父さんを指した。伯父さんと伯母さんが、ゆっくり立ち上がる。僕も、伯父さんにつつかれて、あたふたと。塩田先生も、きょろきょろしながら立ち上がった。
「お若いお連れ様は甥御の沢渡均様です」
「回れ右、礼」
 耳元でささやかれて、またあたふた。
「もうおひと方は、均様の担任教師でいらっしゃいます。会員様ではございませんが、沢渡様のお計らいで臨席いたしております」
 塩田先生はガチガチに最敬礼。そうか、位負けしてるんだ。みんなタキシードとかイブニングの正装。学校の制服も正装として扱われるそうだし。先生だけが、たぶんとっておきのよそ行きだろうけど、サラリーマンみたいな背広とネクタイ。
「本日は、おじょう様の美竹様と美鈴様もお見えです」
 W美姉妹も、妙ちくりんな格好が許す限りの優雅な動作で立ち上がり、参加者に向き直って――片足を後ろに引いて背をのばしたまま身体を沈めた。西洋のお姫様みたい。女神様と王女様にふさわしい仕草だけど、これってレディーズマナー講座で学んだのかな。
「なお、本日のショーにて、おふた方はトリを務められます」
 盛大な拍手が起こって、ふたりはもう一礼。
 思い出した。期末テストの成績が(とんでもない)目標に達さなかった罰として、そんな約束をしてたっけ。
 ふたりが座ると、またボーイさんが音も無く飛んで来て、ポンチョのすそを直した。
 しばらくはクラシックの静かな曲が流される中を、ボーイさんが料理とお酒を配っていった。ラスクみたいなやつの上に、クリームとかサラダとかフルーツを盛り付けたのが、ちんまりとみっつ。これってフルコース料理の前菜かな。
 僕の前にもワイングラスが置かれた。他の3人の(は、赤ワインかな)と違って鮮やかな青色であわが立っている。
「きみも飲みなさい。ごく薄いアルコールだから、だいじょうぶだ」
 そりゃ、父さんのビールをオチョコで飲んだことくらいはあるけど。アルコールがどうこう以前に、テーブルマナーを知らない。のは、塩田先生も同じみたい。伯父さんがワインをひと口飲むと、同じようにひと口。ぼくも伯父さんを真似した。
 お皿の両側にフォークとナイフが3本ずつ。さらに大きなスプーン。お皿の向こう側にも小さいのが1組。は、使わずに。伯父さんはケーキみたいなラスクみたいなやつを手でつまんで食べた。そして、ひざの上に広げたナプキンの端で手をふいた。ので、僕と塩田先生も。なんか、こういうの落語にあったね。
 そうだ、W美姉妹はどうなってるんだろうと振り返って見ると。お行儀よく座って正面の舞台を見つめてる――だけ。料理もワインも無かった。
「伯父さん。美竹さんたちは食べないんですか?」
「ショーをひかえているからね。きみは若いから知らんだろうが、戦闘機は燃料満載では動きが鈍って、まともに空戦機動を行なえない」
 分かったような分からないような返事だった。
 伯父さんが(ということは、僕と先生も)半分くらい食べたところで、お皿が下げられて、スープが運ばれてきた。会場に流れていた静かなクラシックが、テンポの速い(サンバかコンガか知らないけど、なんとなくラテンっぽい)音楽に替わった。音量は小さい。
 またバニーガールのお姉さんが登場。
「前座を務めていただきますのは、仮会員になられました村社様です。御年48。奥様は41歳でございます。なお、出場される娘さんも、けい法第176条および第177条に定める性的同意年令に達しておりますことを申し添えておきます」
「錦瑟会のメンバーは、社会的ステータスの高い者ばかりだ。身代わりを立てられぬような違法行為は犯さぬように慎んでおる」
 あ、それでか。次の誕生日に美鈴ちゃんは伯父さんにバージンをささげるとか言ってたのは――バニーさんが言った性的同意年令ってやつだ。身代わりを立てられるような違法行為は犯すのかなって疑問が浮かんだけど、深く考えないことにした。僕の感覚では、父と娘でセックスすることのほうが、万引きよりずっと不道徳だ。そして僕も、その不道徳をなしくずし的に受け入れてしまってる。
 バニーさんが引っ込むと幕が左右に分かれて。舞台には大きなベッドがひとつきり。三方と天井には大きな鏡が張られていて、ベッドをいろんな角度からながめられるようになっている。
 舞台の上手から中年の夫婦が、下手から3人兄妹が登場。背丈や顔つきから判断すると、兄妹弟の順だと思う。真ん中の妹は美竹さんくらいで、末っ子の弟が僕と同じくらいかな。くやしいけど、3人ともちゃんと毛が生えてる。
 みんな、全裸。全員に注目されて、男3人のチンチンは委縮している。
 ベッドの前に立って、夫婦が抱き合ってキスを始めた。お母さんは身体を密着させながら背のびをして、股間をお父さんのチンチンにすりつけてる。
 お兄さんが客席に横を向けて仁王立ち。弟は正面を向いてる。妹がお兄さんに向かい合ってひざまずいて、フェラチオを始めた。右手で弟のチンチンをしごいてる。
 1分もすると『主砲発射用意ヨシ』の体勢になった。夏休みの終わりにノンフィクションの海戦記を読んだので、現国の暗ゆを復習してみた。
 お母さんと兄弟がベッドに上がった。お母さんが四つんばいになって、お兄さんが後ろから入れて。うわわ……弟は奥さんの正面でひざ立ちをして、フェラチオをしてもらってる。そしてお父さんは小さな娘を抱き上げて……下から突き上げるようにしてクシ刺し。
 お兄さんが後ろから突くたびにお母さんが前後にゆれて、弟のチンチンは自然にピストンされる。お父さんは中腰になってひざで上下にゆっさゆっさ。
 ぱんぱんぱんぱん……
 じゅっぷじゅずず……
「あん、あん、あん……パパ、ちもちいいおお」
 妹は舌足らずに快感を訴えている。
「見とれていないで、すこしは食べなさい」
 伯父さんにうながされて、テーブルに視線をもどしてスプーンでスープを飲んだ。音を立てないように飲むのがマナーだってことくらいは知ってる。セックスでは、音も声も出すのがマナーなんだろうな。
「いったい……これは、どういうことですか?!」
 塩田先生も我に返って、伯父さんに詰問口調。
「うるわしい家族愛の一幕ですよ。血縁のきずなに安住することなく、男女の――とは限りませんが、肉体のきずなを重ねる。それでこそ、終生の変わらぬアイジョウ、愛をもって縄で縛りつける関係が築けるというものです。まあ、縄に象徴される支配と被支配の関係を持ち込んだのは、ほかならぬこのワシだがね」
「バカな……近親相かんではないですか」
「法律では近親かんは禁止されておらんよ、すくなくとも日本ではね」
 ほんとに伯父さんは――法律に違反しなければ、なんでもOKなんだな。
「塩田さんは、キンシツ相和すという言葉を知っておるかね。キンもシツも楽器のコトだが。大きなチャイニーズハープすなわちキンと小さなチャイニーズハープすなわちシツの合奏は妙なる調べを生み出す。そしてニシキのようにうるわしい家族愛。このふたつからキンシツ会は生まれたのだよ」
 最初はていねいだった伯父さんの口調が、僕たちに話すときと同じに変わってきた。
「ここにいる会員を、どう思うね?」
「まさか、みんな近親相かんを……?」
「そういうことを聞いておるのではない。年収がきみの20倍以下の者など、ここにはひとりとしておらんよ。ワシらは、見ず知らずの親せきやら銀行証券会社やらユスリタカリやら――背信と裏切りに取り囲まれておる。真(まこと)に心を許せるのは血族でしかない。あるいは、絶対の忠誠をちかった女房か……順子、この人に見せてやりなさい」
「はい、御主人様」
 伯母さんはイスに座ったまま、するするとドレスを脱いでパンティをずり下げた。横長のハート形の焼き印と ”Tuyosi”のイレズミが現われて、塩田先生の目はそこに吸い寄せられた。
 伯母さんがいきなりストリップを演じても、ざわめきすら起きなかった。
「いい機会だ。均くんにも教えておこう。ワシは、もともとサディストだった。強い者が弱い者を支配する。これは、野生の動物もかくミサイルのボタンを持つ物も、まったく同じだ。父親から継いだ会社を守るためだけにも、ワシはサディストにならざるを得なかった。夫婦生活だけは別物という器用な真似は、ワシには出来ん」
 ほおおっという小さなどよめきが上がった。舞台を見上げると――お父さんに妹が向かい合ってまたがっていて、弟がお尻の後ろでお父さんをまたいで中腰。あれって、アナルセックスをしてる。そして、お兄さんはひざ立ちになって、妹の頭を両手でつかんでゆすぶってる。フェラチオだ。ということはメス穴、アナル、口。すべての穴にチンチンを突っ込んでることになる。自分より大きな男性3人に囲まれて、妹は嵐の中の小舟みたいにほんろうされている。
お母さんはというと――娘の横に座って、お兄さんの金玉がお父さんの顔に当たらないよう片手で支えながら、もう一方の手で娘のクリトリスをいじっていた。
 ずっちゅずっちゅずっちゅ……
 ずうっぷずうっぷずうっぷ……
 ぬぷにゅぬぷにゅぬぷにゅ……
「もお゙お゙お゙、お゙おお゙お゙……!」
 大きなハープと小さなハープにボーカルまで加わった、激しいセッションが繰り広げられている。
「取引先といえば聞こえはいいが、丸木商会がコバンザメのように食らい付いていた大きな会社の専務が、当時のキンシツ会の世話役でな。ワシは可愛がられて、養女の順子をもらい受けた。ワシもキンシツ会へ加入させてもらって――ただの男女関係もまた、裏切りや不ていが付き物だからな。サドマゾによる女の支配を持ち込んだというわけだ。なに、養女とはいえ娘に焼き印を押すような人物だったからな。鞭と縄へのきょ否反応は無かったよ」
 カチャン。塩田先生がナイフを取り落とした音。
「あっ、これは失礼を」
 イスを引いて立ち上がったけど、床に手をのばす前にボーイさんが音も無く飛んできて、テーブルに新しいナイフを置いた。
「こちらを、どうぞ」
 ドリブルでディフェンスをかわすよりも素早い身ごなしでフォークを拾い上げて、ボーイさんは音も無く立ち去った。
「失敗しても大然自若、軽く手を挙げてギャルソンを呼び、後始末をまかせる。マナーの基本として覚えておきなさい」
 僕に教えてくれているようで、その実、先生をあざ笑っている。
 パチパチパチ……
 拍手の音で、また舞台に目を向けると――5人のくんずほぐれつは終わって、まるで演劇のフィナーレみたいに横一列に並んでお辞儀をしていた。
「村社様御一家のうるわしい家族愛を拝見させていただきました。村社様を正式の会員としてお迎えくださる方は、今一度の拍手をお願いします」
 バニーさんの言葉で、みんなが立ち上がって、ひときわ盛大な拍手を送り始めた。伯父さんと伯母さんも。僕も腰を浮かしかけたけど。
「座っていなさい。きみは会員ではない」
 塩田先生が、バツの悪そうな顔で腰を下ろした。W美姉妹は、ずっと座ったままで拍手もしていない。
「それでは、次の演目まで母と娘のほのぼのとしたじゃれ合いをご鑑賞ください」
 バニーさんが、小さなバスケットをベッドに置いた。お父さんと兄弟は舞台から去って――お母さんと娘は、またベッドへ。お母さんが、バスケットから奇妙な形をした物を取り出した。50センチくらいの一直線の棒。2本のチンチンを根元で接着したような形をしてる。真ん中には丸いグリップみたいのがあるけど、そう思ってみると玉ぶくろそっくりだった。
 まあね。半年もの間、あれこれエッチなことを体験してきたし、美竹さんが美鈴ちゃんにピンクローターを入れるところも見ちゃってるし。その道具をどう使うかは、簡単に想像がついた。
 想像通り。ふたりはベッドに向かい合って座り、まず母さんが模型チンチンの半分を自分に入れてから、互いに交差させた足を絡め合って下腹部を近づけて、娘に反対側のチンチンを突っ込んだ。そして、玉ぶくろを握ってピストン運動を始めた。
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
「いいわあ……カズミ、もっともっと泣いてちょうだい」
 ふたりとも、すごく感じてる。
 天井の鏡を見上げると、押し引きのたびに玉ぶくろがクリトリスに当たっている。
 また口(とフォークとナイフ)を動かすのを忘れてながめているうちに、幕が左右からゆっくりと閉じた。
 音楽のボリュームが上がったのは、舞台裏で大道具(といってもベッドしかなかったけど)を片付ける物音を消すためだと思う。
 しばらくの間、幕は下りたままだった。
 魚の切り身にシチューをかけて、宝石みたいにカットした色とりどりの野菜が添えられてるのを伯父さんと同じペースで食べて、半分くらいになったとき、音楽が消えた。
 同時に、幕がするするっと左右に開いて。演劇の背景が現われた。ビル街の夜景。天井からミラーボールが降りてきて、カラフルな光の粒を床一面にまき散らす。
 ジャンジャジャ、ジャンジャジャ♪
 ヒットチャート急上しょう中の3人組アイドルの新曲のイントロ。
 背景を突き破って、3人の女の子が登場。ものすごくセクシーというかエッチな衣装。完全にはだが透けて見えるピンクのミニスカートとチョッキ。チョッキは胸元が大きくえぐられてて、形の良い乳房が丸出し。しかもノーパン。
 そんな格好で3人が激しく踊り出した。
「I love you, I love you ほれたの♪」
 歌いながら踊ってる。まさか……本物?
 別にファンってわけじゃないので3人の顔はぼんやりとしか覚えてないけど、その限りではそっくりだ。ダンスの振り付けもそっくり。
 3分ほどで歌と踊りは終わって、3人が並んで観客にお辞儀。でも、ショーは終わりじゃなかった。
 タンタンタンタン、ターンタカタカタンタン♪
 これは題名を思い出せないけど、ときどき耳にする曲。に合わせて、3人が横並びで同じ振り付けで踊り出した。ラインダンスのカンカン踊りってやつ。
 乳房を手で持ち上げてゆらしながらステップを踏んで、足を大きく振り上げて――うわ、真横に振り回す。縦スジがカパッと割れるのが丸見え。そのまま後ろ向きになって、足を開いて立って、お尻を突き出す。これも丸見え。お尻をぷるぷる震わせてから、両手を床に。丸見えが二重丸見えになっちゃう。
 こんなのをファンが目撃したら、泣き出すか鼻血ブーかの、どちらかだ。僕はどっちでもなく、わりかし平然と見物してた。縦スジなんて見慣れてる。
 といっても。他の人たちはどんな顔して見物してるか観察する余ゆうなんかなくて、ダンスが終わるまで目がクギ付けになってたのも事実。
 最後はデングリ返りして割れ目を見せつけるポーズで――幕が閉じた。
 バニーさんが現われて、手にさり気なくレコードジャケットを持って舞台を横切った。会員限定の場でも、はっきり名前を出すのはまずいんだろうなと、僕は推察した。
 魚料理が下げられて、ワイングラスを平べったくしたような金属容器に盛られたアイスクリームが出てきた。これは、奥の方に置いてある小さなスプーンで食べる。これでデザートか。全然物足りないな――というのは、僕の早とちり。
 アイスクリームはすぐに下げられて、わりかしボリュームのあるビフテキが出された。これがメインディッシュてやつかな。だけど、伯父さんも伯母さんもナイフとフォークを置いたままにしているので、僕も落語の熊さん(だっけ、与太郎だっけ?)。
 今度はバニーさんが登場する前に幕が開いた。背景なんかはなくて、すごく殺風景。舞台の奥に、奇妙な格好をした大道具が置かれている。ゆりかごみたいな弓形の脚で水平に支えられている大きな三角柱とか、女性のマネキン人形とか、人間がすっぽり入れるくらいの大きな額縁とか、垂直に立てられた木の板とか。木の板には、何種類かの鞭が並べられていた。舞台の手前には何かよくわからない小道具を乗せたワゴン(車輪付きの台)が置いてある。
 ひとつずつスポットライトが当てられて。観客の興味と恐怖とをあおってから、バニーさんの登場。
「皆様。ただ今より本日のメインイベントでございます。主演は、沢渡様のビチクとビレイ…失礼いたしました、ミタケ様とミスズ様です。
 W美姉妹が、すっと立ち上がった。伯父さんと伯母さんがふたりの横に立って、ポンチョをはぎ取った。
 ほおおっと、ため息が会場にもれた。僕は、ため息なんてもんじゃない。ふたりとも全裸だった。そして両手を背中にまわして手じょうをかけられていた。手を使わないで体育座りをするんだから、動きが不自然だったはずだよ。
 バニーさんが舞台から下りて伯父さんから鎖を受け取ると、ふたりを舞台に引き上げた。
 W美姉妹は、ほとんど無表情。こういう状況だから、さっきのアイドル3人組みたいに作り笑いを浮かべるのは不自然だけど。そんなにおびえているようにも見えない。
「承ったところによりますと、美竹様はテストで悪い点を取りましたので、厳しいお仕置きを受ける代わりに、本日の残ぎゃくショーに出演することを志願されたそうです。妹さんは、お姉さんの負担を減らしてあげようとしての姉妹愛出演だそうです」
 紹介が終わると、舞台の端から男の人が登場した。黒いタイツをはいて、上半身は裸。身長は180センチくらいある。筋肉質で、なぜか坊主頭だった。
「佐渡様は、衆人環視の中で実の子を鞭打つのはしのびないとして、プロフェッショナルに処けいを委ねられました。アダルトビデオで御活躍中の責め師、シマイチヒカル殿です」
 バニーさんが、ふたりの鎖と小さなカギをシマイチさんに引き渡した。
 大男を前にして、美竹さんは表情を変えない。美鈴ちゃんは……シマイチさんを見上げて、ひとみがキラキラしてる。のは、ミラーボールのせいだろう。
 シマイチさんはふたりの手じょうを右手だけ外して、それを首輪の後ろに留めた。ふたりの左腕が不自然にねじられる。それから、首輪の鎖をつなぎ合わせた。
 シマイチさんが車輪付きの台から、クリスマスツリーの飾り付けに使うような球を取り上げて、それを小さなクリップでふたりの乳首とクリトリスに着けていった。文房具の目玉クリップ。バネが強いし金属だし。敏感な突起は、ふつうの子だったら泣いちゃうくらいに痛いはず。でも、クリトリスを鞭で(優しく、だったけど)打たれて喜ぶようなマゾだから、今も感じてるのかな。
 それぞれの身体にみっつの球を取り付け終えると、シマイチさんはふたりの右手に長い鞭を握らせた。
 ずっと横で見守っていたバニーさんから、シマイチさんがマイクを受け取った。バニーさんは、マネキン人形を舞台の中央へ押し出して、クリスマスツリーの飾り球をひとつ、ブラウスのボタンに引っかけた。
「ふたりのおじょうさんには、鞭による決闘をしてもらいます」
 シマイチさんは、W美姉妹に持たせたのと同じ鞭を手にすると、その先っぽをつまんで観客に向けてかざした。
「御覧のように、鞭の先端は小さなラグビーボールのようになっています。成人男性が力いっぱい鞭打っても、はだがさけたりはしません」
 ひゅん、バチイン!
 シマイチさんがマネキンに向かって鞭を振るった。音は大きいけど、ブラウスは破れなかった。
「10円玉と同じ重さの鉛を仕込んであるので、痛みは大きいでしょうが」
 その鞭で相手の飾り球を割るのだと、シマイチさんは説明した。
「ふたりは鎖でつながれているので、逃げ隠れは出来ません。左手は使えないので、身体をかばうことも出来ません。それでも、そのような行為を試みると、相応のペナルティを与えます。なお、鎖より上で鞭を振ると、即座に負けとします。顔、とくに目を保護するためです」
 飾り球は薄い強化ガラスで作られていて、割れても丸い破片となるので危険は無いそうだ。それをシマイチさんが実演した。
 ひゅん、ガシャ!
 ガラス球が割れた瞬間、赤い煙が噴き出した。煙が薄れて――マネキンの白いブラウスは、白いままだった。
「染料などを仕込むと、血みどろのイメージを演出できるのですが、今回は高圧ガスとしました。その理由は……」
 シマイチさんがパチンと指を鳴らすと、照明がすべて消えた。そして、舞台がほのかに青白く光って。
 ふたりの下腹部のハート形がピンク色にくっきりと浮かび上がった。美竹さんは、乳首と(包皮を切除した)クリトリスも真っ赤に光っている。河原で水遊びしたときなんかは、クリトリスはビラビラの中に隠れてた。ということは――今は性的に興奮してるんだ。
 ふたりはじっと立ってるはずなのに、タトゥがふわふわとくねっているように見えるのは、最初に飲んだお酒のせいかもしれない。
「おおお……」
 いくつかのテーブル(だけ)から、どよめきが起きた。その数が少ないということはつまり、大半のお客は、W美姉妹にUVタトゥが入れられているのを知っていたんだ。そこから得られる結論は――ふたりにとって、こんなショーに出演するのは、これが初めてじゃないってことだ。
 もしかすると。レディーズマナー講座とかモデルとか、いろんな理由で不在だったとき、実はキンシツ会に出演していたのかもしれない。
 会場が、すこしだけ明るくなった。でも、舞台の上は暗く沈んで、ふたりの裸身がうっすらと青白く浮かび上がっている。そして、鮮やかなUVタトゥ。
「みっつとも割られたほうの負け。負けた者には、厳しい鞭打ちが待っています。勝者には、会合が終わるまで、たとえ失神しても休むことなく快感が与えられ続けます。なお、戦意そう失や、片八百長、鎖より上での鞭などの違反行為があった場合は、ペナルティとしてあの木馬に乗せます」
 スポットライトが、ソリで支えられた三角柱を照らし出す。言われてみると、木馬のようにも見えた。
「金属の頂点はギザギザにとがっています。あれをまたがせて木馬をゆすれば……」
 シマイチさんは肩をすくめた。
「二度と使い物にならなくなるかもしれません。実は、あまりに凶悪なので、これまで使った試しがないのです。どうかな、おじょうさん方。あれのコケラ落としをしてみないか?」
 ふたりは身を寄せ合って、恐ろしそうに木馬を見つめるだけで、返事はしなかった。のが、雄弁な返事だ。
「勝負が始まる前からおどかしても、よくありませんね。では……」
 シマイチさんが、バニーさんの位置まで下がった。
「3本勝負、始め!」
 舞台の中央に取り残された美竹さんと美鈴ちゃん。互いに顔を見合わせてから、鎖がいっぱいに張るまで左右に離れた。といっても、3メートルかそこら。
「お姉ちゃんだからって、容しゃしないんだから。だいたい、お姉ちゃんがテストで悪い点を取ったのが、いけないんだからね」
「罰を半分こしたいって、お父様におねだりしたくせに。このマゾっ子。バージンのくせに、生意気なのよ」
 ふだんの美竹さんからは想像できない、悪口雑言。でもないか。僕に口止めリンチをしたときや夜の散歩でも、こんな口調だったし。てことは、(本気半分の)演出かな。
「やああっ!」
 美鈴ちゃんの奇襲攻撃。でも、鎖は鞭が届く距離よりはわずかに長くて、空振りに終わった。
「く……」
「下手くそね。一本鞭の使い方を教えてあげる」
 鞭を引きもどそうとしてもたついてる美鈴ちゃんに向かって2歩踏み込んでから、美竹さんが水平に鞭を振るった。
 バチイイン!
 鞭は腰に当たって絡み付き、先端がお尻をたたいた。
「痛いっ……」
 美鈴ちゃんの悲鳴は、そんなに痛そうじゃなかった。観客へのサービスかな。
 だけど。美竹さんは、鞭の先が美鈴ちゃんのはだをこするにまかせて振り抜いて、すかさずバックハンドで打ち込む。
 バチイン!
「……」
 美鈴ちゃんが、無言で後ろに下がろうとする。のを、美竹さんは上体を後ろへ反らせて引きもどした。
「きゃっ……!」
 もんどりうって、あお向けに転がる美鈴ちゃん。あわてて起き上がろうとする背後に美竹さんが回り込んで。
 バチイン、バチイン!
 お尻へ2連撃。
 今の攻撃、まったく球をねらっていない。ネズミを持て遊ぶネコを連想した。
 アワ踊りを仕込まれたのは、たしか美竹さんが4年前で美鈴ちゃんは1年。愛縄、セッカン――つまりサドマゾの調教そのものが、そのころから始まっていたんだとすると、鞭の扱いもそれだけのキャリアの違いがあるんだろう。
「美竹!」
 シマイチさんが、美竹さんを呼び捨て。あの人がサド役で美竹さんはマゾ役だから当然――とは、割りきれない。W美姉妹は、僕をいじめるときだって、呼び捨てにはしなかった。
「遊ぶんじゃない。真面目にやれ」
 美竹さんは、黙って1歩下がった。鎖で美鈴ちゃんとつながれてるから、それだけしか下がれない。鞭をだらんと垂らして、美鈴ちゃんが起き上がるのを待った。
 お尻への鞭だから、そんなにダメージはない。と、思う。僕は細い鎖で軽くたたかれた経験しかないから断言できないけど。
 美鈴ちゃんは鞭を握りしめて、美竹さんの動きをうかがいながら、用心深く立ち上がった。鞭をサイドスローのフォームに構え――た瞬間、美竹さんの鞭が鎖の高さぎりぎりを水平に走った。
 パパンッ!
 鋭い破れつ音がして、赤いガスが美鈴ちゃんの上半身をかくした。
「きゃああっ……!」
 乳首の球をふたつとも割られた美鈴ちゃんは鞭を取り落とすと、胸をかばってうずくまった。
「美鈴、勝負を捨てるのか。三角木馬に乗りたいのか?」
 シマイチさんの声で、美鈴ちゃんがあわてて立ち上がった。
 残るひとつ、股間の球を守るためか、へっぴり腰になって姿勢を低くして。鞭が届く間合いを見定めて、鞭を繰り出した。
 美竹さんは鞭に向かって踏み込んで。アンダースローで鞭を跳ね上げた。
 パン!
 パン!
「痛いっ……!」
 美竹さんの左胸からガスが噴き出たと同時に、美鈴ちゃんの股間も赤いガスで包まれて。美鈴ちゃんは鞭を取り落として、手で股間を押さえながらぺたんと座り込んだ。
 相討ちだけど、美竹さんにはまだふたつ残っているのに対して、美鈴ちゃんはゼロ。
「勝負あった」
 シマイチさんが宣言した。ふたりの手じょうをはずし、鎖はそのままにして首輪のほうをはずした。美竹さんは、バニーさんに手を引かれて舞台のすみへ。
 まだうずくまっている美鈴ちゃんの前に、シマイチさんが大きな額縁を舞台の奥から引き出してきた。額縁は小さな車輪のついた台形の板で支えられている。
 シマイチさんは美鈴ちゃんの腕をつかんで台形の上に立たせると、額縁のすみから鎖で垂れている革手じょうに、両手をバンザイの形でつないだ。そして、片足ずつ宙に浮かせて、両足にも革手じょうを着けた。美鈴ちゃんは、額縁の中でX字形にハリツケられた。
 舞台が明るくなって、バニーさんがマネキン人形を観客のほうへ押し出した。シマイチさんはふたつの鞭を持って、マネキンの横に立つ。
「敗者への罰は鞭打ちですが、使う鞭は敗者自身に選ばせてやります」
 観客に向かって説明する。
「このふたつの鞭のうちのいずれかです。こちらの鞭は……」
 1mくらいの細いベルトが3本束ねられていた。
「バラ鞭に見えますが、完全に重なってはだに当たるので一本鞭と同じです。薄いからしなやかで、3本分の重さがあるから打撃力は大きいのです。とはいえ……」
 シマイチさんは身体をひねりながら腕を後ろに引いた。
 しゅうん、バチチイン!
 全力の一撃がマネキン人形の乳房に当たった。美竹さんが伯父さんからお尻を鞭打たれたときよりも、ずっと大きな音だった。
「このように、あまりはだを傷つけません」
 しゅうん、バチチイン!
 しゅうん、バチチイン!
 同じ部分に3発の鞭を受けても、マネキン人形のブラウスはボタンが飛んだだけで、破れたりはしなかった。
 シマイチさんが別の鞭に持ち替えた。前のよりすこし短くて1本だけ。幅は2倍くらい。
「離れて見るとわかりにくいでしょうが、表面に短いトゲを植えてあります」
 黒い皮革の表面に銀色の点が無数に散らばっている。あれがトゲなんだろう。
 シマイチさんは、さっきよりも小さなスイングでマネキン人形を鞭打った。
 ひゅ、バヂッ!
 ブラウスが引き千切られた。マネキン人形のはだにも、灰色の筋が残った。
「トゲにはいやらしい細工などほどこしていませんから、適切な治療を受ければ3か月ほどで傷は消えます。今回のぎせい者は若いですから、もっと早く治るでしょうね」
 シマイチさんが、額縁の中にハリツケられている美鈴ちゃんに向き直った。
「最初の鞭なら50発、トゲ付きの鞭ならたったの20発。どちらで処罰されたいかね?」
「最初のでお願いします」
 美鈴ちゃんは即答した。当然だと思う。トゲ付きの鞭で20発だなんて、全身の皮膚がはぎ取られる。同じ所を何度も打たれたら、筋肉だって千切れてしまうかもしれない。
「よろしい。では、鞭打ちの回数はぎせい者自身に数えてもらいましょう。もしも数え間違えたら、最初からやり直しとします」
「美鈴。何をされても……」
「黙らせろ」
「カウント……むぶうう」
 バニーさんに口を押さえられて、美竹さんはしゃべれなくなった。
「言っておくが、くだらんアドバイスを言うごとに鞭の数を10ずつ増やすぞ」
 美竹さんにクギを指してから、シマイチさんはバニーさんにうなずきかけた。
 バニーさんが額縁を150度くらい回して、美鈴ちゃんの背中が観客から斜めに見えるようにした。シマイチさんが美鈴ちゃんの後ろに立っても、じゃまにならない。
「では、処罰を始めます」
 宣言してから。シマイチさんは、マネキン人形をたたいたときと同じ動作で美鈴ちゃんのお尻を鞭打った。
 しゅうん、バッチイン!
 マネキン人形より柔らかで弾力のある人体を鞭打つ音は、なんとなくしめった感じだった。
「数えろ。数えないと、最初からやり直しになるぞ」
「ひとつ!」
 美鈴ちゃんがあわてて、さけぶように数えた。中間テストの目標に届かなった罰と似てる。でも、冷静(じゃなかったけど)な第三者が数えるより、鞭打たれる本人が数えるほうがつらいと思う。おちおち悲鳴もあげていられない。
 しゅうん、バッチイン!
「ふたつ!」
 しゅうん、バッチイン!
「みっつ!」
 しゅうん、バッチイン!
「よっつ!」
 数える声がそのまま悲鳴になっているように、僕には聞こえた。
 8発目でシマイチさんは立ち位置をすこし変えた。
 しゅうん、バッチイン!
「ここのつ!」
 これまでは右のお尻に当たってから左へ流れていた鞭が、最初から左のお尻に当たった。
 14発目で左右のお尻の鞭跡が、均等になった。モモのようだったお尻が、熟したカキみたいになってる。
 しゅうん、バッチイン!
「きゃあっ……じゅうご!」
 しゅうん、バッチイン!
「じゅうろく!」
 シマイチさんが斜めに振るった鞭は、美鈴ちゃんの背中に大きなバッテン(X)を刻み付けた。
 背中のほうが、お尻よりずっと痛いんだ。
 バニーさんが額縁を半回転させた。舞台は50センチくらい高くなってるし観客は座っているから――最前列の特等席からだと、割れ目の裏に隠れている小さなビラビラも、その内側のピンク色の肉も、縁が柔らかくデコボコしてるメス穴も、何もかもが見えてしまう。メス穴の回りが片くり粉を溶いたみたいな露で濡れているのも。
 美鈴ちゃん、鞭打たれながら感じてるんだ。やっぱり、美鈴ちゃんの本性はマゾなんだ。僕が強く出れば、服従してくれるかな。子ネコちゃんを夜の散歩に連れ出せるかな。喜んでくれるならいいけど、いやだって泣かれたりしたら……それがウソ泣きだとしても、僕には無理強いなんて出来そうもない。
 シマイチさんが鞭を構えた。思い切り身体をひねって腕を後ろへ引いて。
 しゅうんん、ズバッシインン!
 ささやかな乳房が胸にめり込んだように見えた。
「ぎゃああーっ!」
 男の人が叫んでいるような悲鳴だった。
 しゅんっ、バシイン!
 悲鳴が終わらないうちに、バックハンドで鞭が乳房を逆方向になぎ払った。
「きひいいい……」
 シマイチさんが手首のスナップで鞭を跳ね上げ、丸めて手に持った。ゆっくりと美鈴ちゃんに近づく。
「数えなかったな」
 楽しそうに残こくに、ニタリと笑った。
「あ……じゅうしち、じゅうはち」
「遅い。イチからやり直しだ」
「……はい」
 美鈴ちゃんのことだから、向こう見ずに文句を言うんじゃないかと、僕はヒヤヒヤしてたけど、ビックリするくらい素直でしおらしかった。マゾだからというよりも、こういうショーとかで伯父さん以外のサドに責められて、どう振る舞えばいいか学習してる?
「しゅしょうな心がけだな」
 シマイチさんは鞭を左手に持ち替えて、美鈴ちゃんの割れ目を中指でくすぐった。突き立てたりしないのは、美鈴ちゃんが処女だと知っているからだろう。でも、容しゃはなかった。それとも、優しかったと言うべきだろうか。
 割れ目を下から上へ掘じくってクリトリスを探り当てると、中指を小刻みに震わせた。
「あんん……くうう、んんん」
 美鈴ちゃんが甘くうめく。
『今泣いたカラスがもう笑った』というコトワザを思い出した。いや……鞭打たれても興奮してたんだから、むしろ『追い風にホを上げる』かな。
しゅしょうな心がけへの短いごほうびタイムが終わって、残こくショーが再開された。
 シマイチさんが距離を測って美鈴ちゃんの正面に立った。でも、鞭は垂らしたまま。と思った次の瞬間――鞭がヘビのように床すれすれを走って、美鈴ちゃんの足元で激しく跳ね上がった。
 バチイインン!
 反射的に美鈴ちゃんは腰を引こうとしたけど、空中にハリツケられている。ガチャッと鎖が鳴っただけだった。もしも幅の広い革手じょうでなくて金属の手じょうとか縄だったら、アザになるくらい深く手足に食い込んでいただろう。
 美鈴ちゃんは口を開けたまま全身を突っ張っていた。
「……ひとつ!」
 叫ぶと同時に全身から力が抜けて、足をつないでいる鎖がすこしゆるんだ。
 シマイチさんが、満足そうにうなづいた。そして、数え間違いをさせようという意図なのか、続けざまに鞭を浴びせ始めた。
 しゅううん、ズバッシインン!
「ふたつ!」
 ひゅんんっ、パチイン!
「みっつ!」
 ぶゅうんん、バヂイインン!
「よっつ!」
 もう額縁を回転させたりせず、シマイチさんが前後左右に動き回って、休むことなく鞭を浴びせ続ける。
 鞭の強弱も当たる部位も、ばらばら。フォアハンドとバックハンドとを交互というわけでもない。横8字形に鞭を振り回してお腹にバッテンを刻んだり、フォアハンドで乳房をなぎ払うとそのままくるりと身体を回転させて連打なんて曲芸もひろうした。
 変則的な打ち方も、美鈴ちゃんは正しく数えた。鞭の動きではなく、たたかれた数に注意を集中すれば、そんなに難しいことじゃないと思う。だけど……
 31発目が軽く太ももに当たって。
「さんじゅうに!」
 次の鞭も太ももに向かって水平に飛んだけど、途中で向きを変えた。
しゅんん、パシ、バジイイン!
 床をたたいて跳ね上がり、鞭の先から20センチくらいが割れ目に食い込んだ。
「かはっ……!」
 息が詰まって悲鳴をあげることすらできず、空中で固まってしまった美鈴ちゃん。
 息を整える余ゆうを与えずに、パシンパシンと太ももに鞭が飛んだ。大して痛くないだろうけど、致命的な2発だった。
「また、イチからやり直しだな」
 シマイチさんはサドってだけでなく意地悪だ(両者は違うと思う)。最初が18発でミスをさせて、今度は32発。足せば最初に宣告した50発だもの。ぐう然じゃない。
「やだあああああっ!!」
 美鈴ちゃんが絶叫して、それまでこらえていた涙がほほを伝う。
「もう、やめてよお……いつまでたってもおわんない。みすず、しんじゃうよお……」
 わがまま王女様の片りんもない……んじゃなくて、そのまま退行したみたいな印象を受けた。いたいけな子供を鞭打つなんて、サドでもためらうんじゃないだろうか。なんてのは、僕が甘ちゃんだから思うことだろう。赤ちゃんを宙に投げ上げて、きゃっきゃと喜んでいるところをじゅう剣でクシ刺し。なんてソ連兵の話を聞いたことがある。
「許してほしいのか?」
 シバイチさんがネコなで声で美鈴ちゃんに尋ねた。
「ゆるして……ください」
「もうひとつの鞭だと20発だが、これまでの努力にめんじて10発ですませてやる。数えなくてもいい。どうするかな?」
 1発ではだがさける鞭を10発。すこしでも判断力が残っていたら、絶対に選ばない。でも、美鈴ちゃんは選んでしまった。
「はい、そうしてください」
 シバイチさんは黙って美鈴ちゃんから離れ、バニーさんから凶悪な鞭を受け取った。
 ひゅん、バッヂイン!
 マネキン人形に向かって一撃。ブラウスがちぎれ飛び、人形の素材がえぐり取られて破片が宙に飛び散った。
「…………!!」
 美鈴ちゃんが目を真ん丸にして、その光景を見つめている。けれど、選たくを取り消す機会は与えられなかった。
「10回も絶叫したら、のどが破れますから――声を出せないようにしてやります」
 シマイチさんはボールギャグで、美鈴ちゃんの口をふさいでしまった。
「んんん……んん、んんん!」
 美鈴ちゃんが頭をぶんぶん振るのを気にも留めず、シマイチさんが舞台の左寄りに立った。バニーさんが、美鈴ちゃんの背中をそちらへ向けた。
 ひゅん、バヂイン!
「ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーっ!!」
 ボールギャグのすき間から、猛獣がほえるような悲鳴がもれた。
 背中に無数の引っかき傷が斜めに走った。ぷつぷつと、血玉が浮かぶ。
 ひゅん、バヂイン!
「ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーっ!!」
 シマイチさんは鞭を左手に持ち替えて、背中に血文字のXを描いた。
 同じようにして、お尻にも左右2発ずつ。熟したカキのようになっていたのが、つぶれたカキに変わってしまった。
 だけど……マネキン人形のダメージから予想していたよりも、傷は浅い。
 不思議がっているひまもなく、額縁が半回転させられた。これからは、もっと無惨な光景が繰り広げられる。
 僕はこれまで、美鈴ちゃんに同情しながら、でも食い入るように見つめてきた。他の人たちは、どうなんだろう。ふと気になって、あたりをこっそりうかがうと。
 僕と同じように(それ以上に熱心に)食事の手を止めて舞台を見つめている人が半分くらい。舞台をながめながら平然と食事をしている人も何人かいた。逆に、料理とにらめっこをしている人もいた。熱心に見つめている人は、男ならサドだろう。女の人はもしかしたら、自分が鞭打たれるところを空想しているマゾもいるかもしれない。そして、平然としているのは(もっと残こくなことも体験している)筋金入りのサドかもしれない。
 シマイチさんが鞭を構えた。
「んんん、んんーっ!」
 美鈴ちゃんが、激しく頭を横に振る。むだなあがきをして、鎖がジャラジャラ鳴った。
 ひゅん、バヂイン!
 ひゅん、バヂイン!
 乳房が右に吹っ飛び左に吹っ飛んだ。乳首をさけて、その上下に幅の広い鞭(とトゲ)跡が刻まれた。
「ま゙も゙お゙っ!!」
 美鈴ちゃんがわめいて、がくんと頭を垂れた。
 シマイチさんは肩をすくめて。意識の無い美鈴ちゃんの太ももを鞭打った。
 ひゅん、バヂイン!
 太ももにも無数の引っかき傷と血玉が浮かんだ。
 ばぢん……バックハンドで、ずっと軽く、反対側の太ももへ鞭。なのに今度は、ずっと深い引っかき傷がついて、そこから血が滴り始めた。
 シマイチさんが舞台の手前ぎりぎりまで出て来て、鞭を横一線にしてパチンと鳴らした。そして、鞭の両面を何度も裏返す。
「ああーっ!」
 僕は、思わず大声を出していた。
「お分かりになられましたね。後ろのほうで観ていらっしゃる方のために、説明してあげてください」
 僕は安心をみんなにも知ってほしくて、イスを倒しそうな勢いで立ち上がった。
「トゲは、鞭の片面にしか生えていません。裏側にもトゲがあるように見えるけれど、ええと……寝ています」
「正確には、植えたトゲが抜けないように折り曲げて圧着してるのです。もちろん、並の一本鞭よりは破壊力がありますが……」
 シマイチさんは、鞭の裏側でマネキン人形を鞭打った。
 ひゅんん、バヂイン!
 力いっぱいでも、ブラウスはちょっと破れただけだった。
「このおじょうさんは1週間も休めば、クラスメートの前で着替えをできるようになるでしょう」
 良かった……へなへなと、僕はイスに座り(ほとんど倒れ)込んだ。
 なんで、こんなトリックを使うんだろうと疑問に思ったと同時に、答えも見つけていた。演出だ。観客に、実際以上の残こくさをさっ覚させるため。そして、美鈴ちゃんに恐怖を与えるため。もしかすると、この恐怖を乗り越えて、美鈴ちゃんはマゾとして成長するのかもしれない。それが良いことか悪いことかは、ともかくとして。
「敗者への処罰は、これで終わります」
 舞台のソデから、シマイチさんと同じ(ボウズ頭じゃないけど)上半身はだかで黒タイツの男の人が2人現われて、美鈴ちゃんを額縁から下ろした(引きはがしたというほうが正しいかな)。二の腕をつかんで、美鈴ちゃんを引きずりながら退場。こういうのも演出だと思う。
「では、勝者にほうびを与えてやりましょう」
 舞台の奥にスポットライトが当てられた。すっかり忘れてたけど、美竹さんはそこでずっと、妹への処罰を見物させられてたんだ。
 美竹さんは、にこやかは言い過ぎだけど、柔らかい表情でシマイチさんの前に立った。鞭のトリックを見て、この人には(そんなに)ひどいとこはされないって安心したんだろう。
 美竹さんは美鈴ちゃんと同じように、額縁にハリツケにされた。
「お姉さんは妹さんと異なり、すでにお父上のごちょう愛を受け、会員様のみならず各方面のしん士しゅく女にも可愛がっていただいていると聞き及びます」
 伯父さんとの付き合いも半年になるから、とんでもハプニング驚がくの事実がさらりと暴露されるのにも慣れてはきたけど。乱交とかってのは、しかも『しん士しゅく女』だから不特定多数とのレズもってのは、もうクリビッテンギョーなんて茶化す気力もない。
 女神様のぐう像が、音を立ててくずれてく。
「したがって、バイブもデンマも心置きなく使い放題で責められます」
 しばらく舞台のすみに放置されていた台を、バニーさんが押し出してきた。巨大サイズのコケシを、シマイチさんが取り上げた。その形状とこの場の性質から、それがどう使われるかは予測できるけど……僕よりずっと大きな塩田先生の5割増しの伯父さんより、ふた回りくらいも巨大なコケシが、美竹さんの『中』に入るんだろうか。
 シマイチさんが、また僕を見た。コケシから延びている電気コードを、バニーさんが引っ張ってきたコンセントにつなぐ。
 ブブブブブ……コケシの頭が、激しく振動し始めた。これ、ピンクローターの親玉だ。
「デンマは、上から局部に当てるのが正しい使い方ですが……」
 シマイチさんが額縁に近づいて、美竹さんの割れ目を指でうがった。
「妹がひどい目に合わされて興奮するなんて、いけないお姉ちゃんですね」
 シマイチさんがかざした指は、スポットライトをぬらぬらと照り返していた。
「これなら、ローションも要らないでしょう」
 シマイチさんは左手で割れ目を広げると、デンマの頭を押しつけた。ぐりぐりとえぐりながら、押し込んでいく。
「きひいいいっ……痛い。さけてしまいます!」
 理路整然としゃべれるんだから、ほんとは余ゆうがある。激痛の極限では悲鳴すら発せられなくなるのは、美鈴ちゃんで見たばかりだ。
 デンマが、胴体の半分くらいまで美竹さんの中にうまった。割れ目の縁に、スイッチの部分が見えている。シマイチさんはデンマが細くなっている部分にヒモを巻いて、美竹さんの太ももに縛りつけた。手を放しても抜け落ちない。
 シマイチさんは、次にデンマよりは小さなチンチンの模型を取り上げた。これって、バイブってやつかな。使い道は(メス穴がふさがってるんだから)確定してるんだけど。やっぱり「入るのかな」って疑問がある。まあ、僕だっていきなり塩田先生のチンチンを入れられたんだから、4年も調教を受けてる美竹さんなら……だいじょうぶだった。
 美竹さんは低くうめきながらお尻をくねらせ(たのは、入れやすくなるように協力したんだろう)ながら、根本まで飲み込んでしまった。これもヒモで太ももにつながれた。
 シマイチさんは手品師みたいに、次から次へと小道具を取り出す。ガラスの小さなツリガネ。中にバネじかけの弁みたいなのがあって、ツリガネの天辺からは短いゴム管と長い電線が出ている。それがふたつと、同じような仕かけのある小さな試験管がひとつ。
 ツリガネのひとつが、乳首にかぶせられた。大きな注射器がゴム管につながれて、ピストンが引かれるとツリガネの中が真空になるから、乳首がふくらんで長く引き延ばされた。乳首が弁を押し返す。ゴム管のつなぎ目に細工がしてあるんだろう。ゴム管を引き抜いても、乳首は元にもどらなかった。
 両方の乳首にツリガネを吸い付かせると、試験管は当然のようにクリトリスへ向かった。
「あああ、あん……」
 美竹さんが甘くうめいた。チンチンを吸われるのを想像すれば、美竹さんの声は当然だと納得出来る。
 さらに――銀色をした5センチ平方くらいのテープが両わきの下にはられて、ソケイ部には2センチ幅くらいのがはられた。これにも細い電線がつながれてる。
 最後に、シマイチさんはプラモデルのリモコンボックスみたいのをみっつ、額縁に引っかけた。
「電源容量的にはひとつで間に合うのですが、それぞれがばらばらのリズムで、ことに左右の乳首が異なるビートを刻むと、男でさえも、もだえ狂います。電流経路は心臓を通りませんから安全です」
 ツリガネと銀テープの電線をペアにして、リモコンにつないでいった。
 シマイチさんが美竹さんの身体にあれこれ細工をしてるうちに、フルコースの最後に出されたケーキとコーヒーも片付けられていった。
「皆様、お待たせ致しました。いよいよ、クイズ・タイムショーック、失礼、電気ショックのお時間です」
 ギャグのつもりらしいけど、受けは良くなかった。でも、シマイチさんは平然と先へ話を進める。
「時間も押して参りましたので、出題と同時に解答も明かしてまいります。電気マッサージ器、電動アナルバイブ、低周波マッサージ器。このうち、最も女が喜ぶのは、どれでしょうというのが問題ですが……」
 シマイチさんが身をかがめて、デンマのスイッチを入れた。
 そうか。電気マッサージ器だから、電マなんだ。なんてことは、どうでもいい。
 美竹さんは、鎖の許す限りへっぴり腰になって、電マの刺激からのがれようとしている。つらそうに顔をゆがめている。
「そこそこ出来上がっていても、女体は強すぎる刺激にはきょ否反応を示します」
 シマイチさんは電マを止めた。後ろへ回って――たぶん、アナルバイブのスイッチを入れたんだろう。
 三竹さんが、お尻をもじもじさせ始めた。さっきとは逆に、足の鎖が垂れ下がるくらいまで全身を突っ張ってる。
「アナルも、他への刺激との相乗効果で感じる女が大半です。では、他の部位とはどこか。皆さんは、もうお分かりでしょうね」
 シマイチさんがアナルバイブを止めて、表へもどってきた。
「乳首とクリトリス。これは処女だろうと第二次性徴前だろうと、女に共通のスイートスポットです」
 シマイチさんが、みっつのリモコンを次々に操作した。
 とたんに――美竹さんの身体が、ぴくぴくとけいれんし始めた。
「ああああ、いやあああ……こんなの……」
 全身をくねらせながらけいれんしてる。乳房をぷるぷる震わせ、腰を前後にゆすってる。
「低周波マッサージ器は、皮膚の下の筋肉に電気刺激を与える道具ですから、性感帯には強すぎます。最弱でじゅうぶん。最強になどすれば、むしろ強い苦痛を与えます。実験してみたいところですが、罰ではなく、ほうびですので……」
 シマイチさんが、リモコンにさわった。
「うああああ、ああっ……いやあ。やめてくださいいい」
 美竹さんのけいれんが激しくなった。やめてと訴える声にビブラートがかかっている。そして、切なさそう。もしも美竹さんの訴えを聞き入れたら絶対にうらまれる。それくらいは、僕でも分かる。
「この程度でも、経験の少ない女は、アクメに達したと思い込むでしょうが……このおじょうさんは、愛ぶだけでは物足りないようです」
 シマイチさんが、また電マのスイッチを入れた。今度は反応が違っていた。全身が反りかえった。そして絶叫。
「ぎびひいいいっ……いっちゃいますううう!」
「いいや、まだまだ」
シマイチさんはアナルバイブのスイッチも入れた。
「だめだめだめ……お父様、ごめんなさい。美竹、オマンコもおしりもサネも……ぜんぶ、いっちゃいますううう!」
 ふくらはぎがキュウッと引き閉まり、足の指が直角に曲がってつま先が縮んだように見えた。
「うあああ、いいいいい……」
 うめきながら、ぴくんぴくんと、けいれんを繰り返してる。シマイチさんも伯父さんも他の観客も、美竹さんの発作を静かにながめてる。から、危険なことは起きていないんだろう。
「余いんに浸らせてやるのが情けというものでしょうが、このマゾメス――失礼、お父上がいらっしゃるのでしたね」
「構わん。美竹をいん乱なマゾメスに仕込んだのは、父親のワシだからな。情けをかけてもうらまれるだけだぞ」
「恐縮です。では、このマゾメスは放置しておきます。すこしでも正気づけば、またアクメじごくにたたき込まれるといういうわけです」
「じごくを突き抜ければ天国だな」
「おっしゃる通りです」
 シマイチさんは深々と一礼すると、美竹さんを額縁の中に残したまま、舞台から立ち去った。
 それが合図だったのか、何人ものバニーさんがフロアに入ってきた。ワゴンを押したバニーさんが、真っ先に僕たちのテーブルに来た。
「スコッチモルトなら何でも構わん。スリーフィンガーで。この子には、そうだな……ピンクレディーを。塩田さん、何か飲みますかな」
「え、恐縮です。では……ええと?」
 バニーさんからメニューを渡されて、シドドモロロ。あてずっぽうみたいにしてソルティドッグというのを頼んだ。
 バニーさんが伯父さんの前に背の低いコップを置いて、透き通った茶色のお酒を注いだ。ウイスキーかな。それから、銀色のツボみたいのにいろんな液体(表現としては間違ってない)を入れて、シャカシャカ空中で振り回して、逆三角形を高い脚で支えたカクテルグラス(というんだっけ?)に注いで僕の前に置いてくれた。ピンク色のすごくきれいなお酒(だよね)。最後に、伯父さんのと同じ形でもっと大きいコップの縁に白い粉をまぶしてから、大きな氷と透明な液体と黄色い液体とを入れて長いスプーンでかき回して、塩田先生の前に置いた。
 その間に、別のバニーさんが伯父さんの指図で、チーズとクラッカーとナッツをテーブルに並べる。
「では……」
 伯父さんがコップを目の高さにかかげて、軽くうなずいた。飲むというよりなめるような感じで、コップを傾けた。
 塩田先生も真似をして――でも、ごくごくと飲んだ。
「均くん。きみも飲みなさい」
 僕は落語をせずに、持ち上げたコップをそのまま口に運んだ。甘いけど、ポマードみたいなにおいがした。UFOの味はしなかった。
「さて……塩田先生。本日のショーをご覧になって、どのように思われましたかな」
 伯父さんが、さり気なく切り出した。
 もしかしたら、これは『試験』なのかもしれない。最初の公開セックス・ショーで、仮入会した人が正会員に認めてもらったのと同じような。
「ええ、そうですね。他人様の趣味をどうこう言うつもりは、ありませんが……」
「趣味ではない」
 伯父さんが先生をしかりつけた。
「The way of lifeだ。生き様などという浮わついた言葉は好かん」
「……」
 塩田先生は黙り込んだ。反感を表情に隠そうともしない。
「最も深い人間の交わりを趣味などと言うところから察するに、均との関係も、きみにとっては遊びに過ぎんようだな」
「……サッカーに全力で打ち込んでいる子も」
「とぼけてもムダだ。部室やプールで行なっている、マンツーマンの特訓のことを、ワシは言っておる」
 コツン……塩田先生がコップを置いた音。ガチャンでもおかしくなかった。
「どうして、それを……?」
「取引先の会社の課長、同県のキンシツ会員のまた従兄弟の友人。手繰る糸は、何本もある。金があれば、糸はいくらでも太くできる。夜の散歩は楽しかったかね、均くん」
 塩田先生も僕も、真っ青。先生とのホモは、だれかスパイが告げ口したとしても、夜の散歩は……伯父さんのおひざ元でのことだもの、感づかれても不思議じゃないな。
「この子の将来にまで、きみは責任を引き受けられるかね。そうでないなら、サッカーの領分からはみ出るような真似は慎んでいただこう」
 塩田先生は青ざめていた顔を今は真っ赤にして、うつむいている。
「あああっ……いやあ! もうゆるして……とめて。だめだめだめ……お父様、ごめんなさい。いく……美竹、いっちゃいますううう!」
 正気づいて、またすぐアクメに追い上げられて、美竹さんが悲鳴をあげた。いや、『喜鳴』というべきだ。
「さて、均くん……」
「え、あ……はい!」
「ワシは、きみを責めるつもりなどない」
 W美姉妹とのエッチな遊びをしかられるんじゃなさそうだ。まあ、あれは僕が被害者みたいなものだから、しかられるとしたら、ふたりのほうだと思うけど。
「ふたりを見ていて、どう思ったかね」
「どうって……」
 いろんな思いがこんがらがって、言葉に出来ない。落ち着こうと思って、ピンクレディーを(コップが小さいので)ひと息に飲んだ。のどごしは冷たくて甘いのに、お腹の中がカアッと熱くなった。そうだ、これはお酒だった。
「さんざんきみをからかって、生意気にもサディスチンを気取っていた美鈴が、手放しで泣きわめいておったな。セクシー衣装で年下のきみをからかっていた澄まし屋の美竹が、アクメに見も世もなくよがり狂う様子を見て、きみはどう思ったのかな」
 いっそう具体的に尋ねられて、でも思考は、ますますこんがらがる。ざまを見ろなんて、これっぽっちも思わなかった。でも、かわいそうだとも思わなかった。ハートのタトゥが躍動するのを美しいと思った。額縁にハリツケられたふたりは、そのまま絵画だった。そして……苦痛に泣き叫ぶ美鈴ちゃんも、強制された快感にホンロウされる美竹さんも、美しくて素敵で……うらやましい!
 ふたりとも、ものすごくつらそうなのに……伯父さんはじごくを突き抜けたら天国だって言ったけど、それは真実だと思う。
 そして美竹さんは女神様なんかじゃなくて、美鈴ちゃんも王女様ではなくて……ふたりとも、天使だったんだ。黒い羽根と尻尾を持った、エッチでサドでマゾな天使。
「あああっ……ほんとに、もうダメ。いやよいやよいやよ……またいっちゃううう」
 額縁の中でもだえる美竹さんは、ほんとに尻尾を生やしてる。そして僕には……羽毛をまき散らしながら羽ばたく羽根まで見えるような気がした。お酒が僕の頭をゆすっている。
「きみも、美鈴を泣きわめかせてみたいとは思わないかね。美竹をきみのペニスでアクメに追い上げてやりたいとは思わないかね」
 コンプレックス(チンチン)に触れられて、ちょっと頭が冷めた。
 まったく全然ちっとも、そんなことを思わないというとウソになる。でも……実際問題として、僕には無理だと思う。サドがマゾをいじめるのは、したい放題にしているように見えて、すごく相手のことも考えているし、事故にならないような工夫もしている。トゲを植えたベルトのトリックがそうだし、夜の散歩の前に、どこの家でだれが起きているか、ちゃんと調べてあったのもそうだ。それに、伯父さんやシマイチさんみたいにうまく鞭を扱えそうにない。
 マゾは、痛かったり恥ずかしかったりはするけど、気楽だな。気楽という言い方は、サドにもマゾにも失礼だ。マゾは、ひたすらサドを信頼して身も心も委ねていればいい。
 そう思った瞬間に……額縁の中にハリツケられて、W美姉妹にいじめられている僕自身の姿が頭の中に浮かんだ。美鈴ちゃんに鞭打たれて泣いている僕。それを見ているお客さんたちが、「男のくせに」とか言ってあざ笑ってる。美竹さんにチンチンをいじめられてボッキさせちゃって、みんなが僕のそこを指差して「小さい」とか「ブタの尻尾」なんてゲラゲラ笑ってる。
 伯父さんに厳しくセッカンされるシーンも想像した。塩田先生より大きなチンチンでアナルを犯されるのも、痛いけど気持ち良さそうだ。
 そうだ、マゾは気持ちいいんだ。サドは……女の子を鞭でたたいて、面白いかもしれないけど、気持ち良くはならないよね。
 こんがらかっていた思考が、ひとつの大きなうずになっていく。ピンク色のお酒のうずに飲み込まれていく……
「まったく、おまえには失望させられた」
 伯父さんの悲しそうな声で、うず巻きは飛び散った。うずにおぼれながら、僕は心の中の言葉を声に出していたんだろうか。
「日常で女の尻に敷かれるのは、男の度量だ。しかし、愛縄で女に支配されたいと願うようなやつに、戦場は任せられん」
 戦場って……仕事のことだろう。男は外に出たら7人の敵がいるってコトワザがある。
 伯父さんも、あまり減っていないお酒をぐいと飲み干した。
「とは言え……SMクラブでは、新人にはマゾをさせてプレイの要領を覚えさせてから女王様に仕込むというからな。とことんマゾを体験するのも、均くんの肥やしになるかもしらんな」
『おまえ』がまた『均くん』にもどった。
「いいだろう。来月の例会では、均くんと美竹たちがステージに上がれるよう、手配してやろう」
========================================
女神様と王女様

 ちなみに。BF丁稚揚げで、少女(に見えるネエチャン)が、女神様とか王女様のコスプレをしている実写エロ画像を探したのですが、見事に見つかりませんでした。そこで、女神様や王女様に見えているのは少年だけで、その本質は小悪魔だよ――というコンセプトのBFにしちゃいましたまうえ。

 さて。
 今年の出来高は、5月5日までに1,253枚。 このペースでいけば、年末までに3,600枚いけそうです。
=1,253/(VALUE(2022/05/05)-VALUE(2021/12/31)*365=3,658


 なお、この作品を電子書籍としてリリースするのは、2023年5月以降です。

DLS affiliate キーワード:小悪魔,少年
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テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

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本編拝見させていただきましたが、素晴らしい出来でした。
詳細な感想は後日ファンレターにてご報告いたしますが、とにかく素晴らしい満足度です。

今後の作品も期待しております!
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