妄想世界(少女への拷問と調教)への扉:New Type

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合意/自発
甘々/純愛
年増/人妻
男の娘/少年
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上記の中には、作品全体がそれをテーマ/モチーフとしているものだけでなく、
ひとつ(乃至幾つか)の章で取り上げているだけというものも含まれています。

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テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Progress Report 2:『特別娼学性奴』

 どうも、平日というやつはいけません。勤務中にぼけっとしてると(出来る環境なのです)、どんどん妄想が膨らんでいって……
 まあ、ゲームと一緒ですけどね。立ち上がりが、もっとも楽しめて(ゲームと違ってS/Lはしませんけど)。後半は作業ゲーになっていく。小説だと、序盤あたりを書き込んで、途中からどんどん走り出す。頭デッカチ尻スボミ。いや、読者を最終ページに向けて疾走させるベクトル感覚(Ⓒ平井和正)とも言えるかもしれないのではないかと思わぬこともないのであろうか。


 ええと。
 Spiteful (意地悪な)は、紹介済み。
 Substitute (代用品)で、ドライバーの柄でスクールメイドの処女膜を破って。でも、陰茎を挿入したのではないから(太いタンポンと同じだから)処女を奪ったのではありませんことよ。労働者階級の娘の処女にはなんの価値もありませんけれど。
 Subsidence (没落は意訳だな)で、パパは行方不明、ママはジャマゆきさん。
 裁判所に申し立てて死亡宣告をしてもらうと、嗣子(直系男子のみ)無き子爵家は廃絶。破産宣告しても同じ。というわけで、家屋敷からパンティ一枚に至るまで処分しても残る50万ポンド(話の都合で増減します)を、親切な人物から借りて、その返済方法も親切な人物から斡旋してもらって。さらに、娘が学ぶメイスレッド学園の新理事長の好意で、新しく設けられた奨学制度の第1号。実は、親切な人物と新理事長は同一人物で、かつて伯爵家令嬢メリーをフッド子爵と競ったドレッド・ノートン子爵。ママはノートンに騙されたのか、ママが娘を(ノートンの名を伏せることで)騙したのかは、書き進むうちに決まるでしょう。作者が決めるのではなく、話の流れで決まるのです。
 この章で、ヒロインはパパの顧問弁護士にパンティ一枚まで没収されて、特別奨学生契約を結ぶしかなくなって。股下ゼロcmの裸ジャンスカ制服(制服は貸与するが下着は契約範囲外)で、そんな格好でうろつけば襲われるぞと貞操鎖を装着させられて。SchoolMale、SchoolMaidともども物置小屋を新しい宿舎に与えられて。二人からの仕返しが、じわじわと始まって。


 画像は、ちょっと違うけれど、鎖貞操帯のイメージです。
貞操鎖

 ようやく1日が終わって。次の日が
 Shame(恥辱)です。


 その途中までを御紹介。書き立てのほやほや。

========================================
Shame

 環境が激変して。チャーリイとジニアも、熟睡できるはずがありません。二人とも夜明け前には目を覚ましました。けれど、すぐには手錠を外してくれません。高い所から見下ろしているくらいなら、まだしも。
 チャーリイは床まで下りてきてわたくしの横にしゃがみ込みました。ばかりか。不届きにも、わたくしの乳房を撫でたりつかんだりし始めました。
「やめなさい、チャーリイ」
 たしなめましたけれど、彼の手は止まりません。わたくしは、重ねて叱ったりはしません。絶対に従わないだろうと、予測できたからです。叱れば叱るほど、主人としての威厳が損なわれます。
 今のチャーリイは、小さな子供と同じです。珍しい物をあれこれいじっているのです。
「ひゃんっ……」
 乳首をつままれて、不快な電撃が走りました。ええ、不快なのです。
「へえ。こんなちっこい胸でも感じてるんだ」
 チャーリイは調子に乗って、指の腹で乳頭をくすぐったり、あるいは半割りのオレンジを胸板から引き剥がすみたいにつかんだり。
 そのたびに、細く鋭い不快感や、乳房全体に染み通るような不快感に襲われます。うっかり声を漏らした結果がこれなのですから――わたくしは声を出すまいと、懸命に堪えました。
 ぼぐっ……お腹に重たい衝撃を受けました。
「ぐぶふっ……」
 また、バッグを落とされたのです。それも、昨夜よりずっと高い位置から。
「そんな平らな胸が、あなたの好みなの? それじゃ、わたしのは二度と触らせてやらないからね」
 女同士です。声に含まれている嫉妬の響きは、容易に聞き分けられます。なんとしたことでしょう。あれだけ厳しく管理していたのに、いつの間にか二人は(どこまでかは分かりませんが)通じていたのです。
「怒らないでくれよ。ちょっと、お嬢様をしつけていただけさ」
「そんなのは、先生方に任せておけばいいのよ。そんな平原で遊んでいないで、わたしの丘で遊んでよ。なんだったら、密林を探検……あ、そうか。出来ないんだっけ」
「勘弁してくれよ。前が突っ張らかるのは痛いんだから」
 状況が状況ですから、そんな換喩(metonimy)だらけの会話も、およそは分かります。わたくしの胸が平原ですって? 平原にオレンジは生りません――この修辞はねじれています。
 それ以上の悪戯はされずに、張り付けから解放してもらえました。わずか十秒で制服を着て、隣のブースで恥辱をかみ締めながら用を足して、校舎の裏伝いにガレージへ行き、もう目覚めて男子寮の窓から外を眺めている顔が無いのを確かめてから大急ぎで股間を洗いました。
 物置小屋まで戻って、ずいぶんと迷いましたが、中に入りました。使用人が中でのんびり過ごして主人が外で待つなんて不自然ですし、さっきの会話から察するに、二人だけにしておくと良からぬことをしでかしそうです。使用人の不始末は主人の責任でもあるのですから、きちんと監督しなければなりません。分かっています。もはや、二人ともわたくしの言うことなんか聞く耳をもたないのでしょう。けれど、だからといって責任を放棄するわけにはいきません。それに、彼らがわたくしを主人と思わないにしても、『第三者』の目の前で不純異性交遊(illicit sexual relations)に耽ったりはしないでしょう。
 はなはだしく居心地の悪い二時間が過ぎて、朝食の時間になりました。また、二人について行く形でカフェテリアの裏手へ行って、昨日と同じコックから朝食を恵んでもらいました。
「え……?」
 思わず疑問の声を漏らしたのは、二人に比べて明らかに食事の量が少なかったからです。絶対的な量の不足が不満だったのではありません。差異をつけられたことに納得がいかなかったのです。
「おまえさんは食が細いから、それでじゅうぶんだろ」
 昨夜は半分くらいを残した、そのことを言っているのです。
 たかだか食事の量くらいのことで、労働者といさかいを起こすなんて、わたくしの誇りが許しません。
「ありがとうございます(Thank you,sir)」
 昨夜よりは滑らかに、感謝の言葉を言えました。誇りを失ったのではありません。事務的手続き、あるいは呪文みたいなものだと、割り切っただけです。
 食事の途中で、わたくしたちのグループの担任(advisor)であるレイカー氏が来て、教室ではなくフッド記念講堂へ行くようにと告げました。二人は心得顔。何事だろうといぶかしく思ったのは、わたくしだけのようです。
 フッド記念小講堂へ行くと、担任に関係者通用口へ案内されました。通用口から控室を通って袖へ行き、そこで待機です。
 袖からは座席が見えませんが、収容人数と聞こえてくる私語から推察すると、セカンダリーの生徒が集められているようです。
 一時限目のチャイムが鳴ると、わたくしたちとは反対側の袖から、校長が姿を現わしました。
「おはよう、生徒諸君。本日は、当学園で初めて試みる奨学制度(Scholarship System)について説明します」
 生徒の皆さんはお行儀よく校長の話を聞いていますが、きっと何の関心も持っていないでしょう。学費の心配なんて無縁ですものね――わたくしたち三人を除いては。
「近世までは学僕という制度がありました」
 校長が後ろの黒板に大きく“Scool Servant”と書きました。
「学校の雑役夫として働きながら、その合間に無償で授業を受ける生徒のことです。新しく設ける奨学制度も、この仕組みと似ています。在学中の生徒で、学費を工面できなくなった三人に、この新しい制度を適用することにしました」
 レイカー氏に引率されて、わたくしたちは演壇の中央へ進みます。進みたくなくても、進まざるを得ません。生徒たちと向かい合って立っても、ひとりひとりの顔なんか見分けがつきません。とにかく、スカートの裾が気になって仕方がありません。下から見上げられているのです。
「奨学生の三人も、こちらを向きなさい」
 ほっとした気分になって、まわれ右をします。股間を見上げられるよりは、お尻を見られるほうが、まだしもです。もっとも、六つと半ダースの違いですけれど。
「新しい奨学制度は、公式には特別奨学制度と称します」
 最初に書いた文字の下に“Special Scholarship Sysytem”の文字が加わりました。
「しかし、生徒も教師も心得ておいてもらいたいのは、その制度の運用形態です」
 校長が三行目に“expert Scholarship Student”と書きました。何かの分野の専門家を養成する目的の奨学金制度という意味でしょう。だから、学園が就職先を世話してくれるのだと、理解しました。
 ところが。校長は三行目の左端に“S”の文字を書き加えて、最初の三文字にアンダーラインを引きました。“Sexpert”
「あっ……」
 わたくしは息を飲みました。昨日の校長の発音は、聞き違いではなかったのです。こんな単語は初めて見ましたけれど、容易に想像がつきました。SEXのエキスパート。
 娼婦です!
 それで、この破廉恥極まりない制服の意味が明白になりました。娼婦は客を引くために、ずいぶんと露出的な服装をするのだと、男性向けのいかがわしい雑誌に書いて……あると、噂に聞いたことがあります。こんな超ミニスカートとか、裸身に毛皮のコートだけをまとうとか。
 わたくしは、この場から逃げ出そうかと考えました。大声で校長に抗議しようかとも考えました。けれど、どちらも危うく思いとどまりました。
 ひとつには、学園を逃げ出しても、身を寄せる所が無いのです。こんな破廉恥な服装で外を歩かなければならないという事実は無視するとしても。
 二つ目には、他の二人が平然としているのに、わたくしひとりが取り乱すことへの羞じらいです。
 この二つは、実際的な困難と個人的な見栄の問題です。けれど、それ以上にわたくしを縛るものがあります。契約書への署名です。うかつに署名してしまったとはいえ、契約が成立したことに変わりはありません。契約をやぶるなど、ならず者のすることです。貴族の名誉に懸けて、そんな真似は出来ません。
 それに、セキスパートが娼婦だというのは、わたくしの勘違いでしょう。伝統と格式を誇るメイスレッド学園が娼婦を養成するはずがありませんもの。
「……さて、ここで諸君に覚えておいてもらいたいのは、アイリス・フッドと他の二人は明確に事情が異なっているということです」
 自分の考えにかまけて、校長の話を聞いていませんでした。
「チャーリイ・アクティとジニア・コルベットには、労働者階級とはいえ両親が健在です。親元から若干の金銭的援助を受けられます。しかし、アイリス・フッドは事実上の孤児となり、まったくの無一文となったのです。彼女は、学園の慈悲と生徒諸君の善意とによってのみ生きていけるのです。したがって、彼女に対してその見返りを求める権利が学園と生徒諸君にはあるのです」
 酷い言われようです。けれど、ここまでの長広舌は、わたくしにとどめの一撃を加えるための前準備に過ぎなかったのだと、思い知らされました。
「したがって……」
 校長は、チャーリイとジニアに、袖へ引っ込むように命じました。わたくしひとりが壇上に立たされています。
 校長はチョークでわたくしを指し示してから黒板に向き直り――四行目に、それまでより大きな文字で、すべてを大文字で書き記しました。
 “SEX SLAVE STUDENT”
 講堂全体がどよめきました。
 わたくしは――立ったまま卒倒したのでしょう。気がついてみると、グループが集まる教室に居たのです。
========================================
 尺が伸びてきたので、最後の一行で、Warpします。

テーマ : 18禁・官能小説
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Progress Report 1.01:『さんすう』レベルのミス!

あわててててて!
ひでえ!
ミスはすでに直してある。


 何がどうしたかというと。
 某国を参考にした学制です。
 Y1。こう書けば(グルグルで)某国は一目燎原の火ですが。Y1で5歳なら、ヒロインはY7で、5+7=12だな、と。
 阿保か。手をグウにして「1」。一本ずつ開いていって、「2、3、4……」。小1レベル。はい、「7」まで数えたら、親指一本だけが再度折られていますね。今日になって気づきました。
 リクエストの12±xの範囲ですが、筆者の感覚としては、恋足(こいたす)にはちょい早い。かといってY8にすると、いろいろ不都合で一括置換は犯罪ですから面倒です。
 ので。7月生まれ(誕生日の1か月半後に入学)から10月生まれ(入学は誕生日の11か月後)に変更。
 やれやれでした。
 せっかく、6th formなる制度を見つけて、Sexpertと聞かされたアイリスが、6th partのことかしらと勘違いするという天の配剤的エピソードが丁稚揚がったのです。オジャンにして貯まるもんか、俺の貯金。


 しつこく、同じ画像。今度はラージサイズの一点物。

小公女1

 うん、これは使いましょう。ていうより、教鞭で全裸メコ筋縦打ちがあるのですから。お仕置の前に甘やかしてやりましょう。ちなみに、画像の如く後ろ手に縛ったりはしませんし、開脚させましょう。
 青い血のプライドに掛けて、アイリスは(目に入ったゴミのせいで涙をあふれさせながら)不本意な快感に翻弄され、恥辱に胸をねじられながら、激痛には腰の奥を痺れさせるのです。


 今はまだ、裸股下0cm袖繰エヴァ風ジャンスカの恥辱に悶えているところ。
 この後、下僕下女ともども寮舎から追い出され、物置小屋をあてがわれ、二人はベッド、アイリスはベッドの間で、これまで二人に使っていた手錠で大の字にされて、それ以上の悪戯はされずに朝まで眠れず、母様の特別なお仕事ってなんだろうと薄々気づいて……さて、翌朝は登校ぎりぎりまで放置されるか。連帯責任を恐れて、あっさり解放されるか。尺次第?
 いずれにしても。フッド記念小講堂にY7からY9を集めて。あれこれ説明するシーンとか万由旬を経て兜率天に至るのです。百億の恥と千億の辱。

Progress Report 1:特別娼学性奴

 初っ端から、あれこれ変更です。
 Sadistin は、長くなってきたので、2章に分割。Spiteful と Substitute です。スクールメイドの処女を興味本位で(substitute=代用品)で破るのを独立させました。
 次に名前。
  スクールメイル(下僕)ラック・ワンブス→チャーリイ・アクティ
  虐められるアメリカ娘 ケイティ・アーズ→キャティ・ストック
 元の名前がアングロ・サクソンぽくないので。ワンブスについては、そのままにして、有色人種のクォーターあたりにすれば、ますますクラスメートから孤立するかと思ってもみましたが。メイスレッド学園はパパ上のマイティ・フッドとママ上のメリー・レパルス(旧姓)の母校です。たとえ娘の下僕とはいえ、有色人種を入学させるなんて、とんでもない。
 まあ、チャンティクリアはブラックスワンの姉妹艦だから、いいか。


 ここで、豆知識。
 その昔。大英帝国海軍では、戦列艦>フリゲイト>スループ(3檣はシップ・スループ、2檣をブリッグ・スループ)でしたが。フリゲイトが大型化してスループとの間に空隙ができたので、そこを埋めるためにフランスあたりで採用されていた名称のコルベットを入れたのです。コルベット・スティングレイとの関係は知りません。
 ところが。第2次大戦中だっけ。駆逐艦の下位バージョンとしてスループの名称が復活し、さらに日本でいうところの駆潜艇相当としてコルベットも復活しました。この場合は、帆船時代と逆で、コルベットのほうが小さいです。
 さらに蛇の後足。江戸時代末期の開陽丸(新選組が蝦夷地脱出に使った船)は甲鉄コルベット、舷側に鉄(鋼ではない)を張ったコルベットでした。
 相変わらず遊んでいます。

 さて、肝心の本文紹介。冒頭からいきましょう。

==============================

Spiteful

 チッ……
 目覚まし時計の針が重なる音で目を覚まして、ベルが鳴り始める前にスヌーズしました。
 春の朝の柔らかな陽光が満ちるベッドルーム。快適な目覚めです。わたくしはすぐにベッドを出て、隣の寮室へ行きました。
 わたくしの部屋と違って、ベッドが二つと机も二つ。それだけでも狭いのに、ベッドとベッドの間にはカラーボックスが並べられています。寝るときまでお互いの顔を見るのが恥ずかしいとかで、三か月前にチャーリイ・アクティが買って来たのですけれど。四つのボックスを足元へ寄せて、顔が見交わせる配置で落ち着きました。考え無しですね。
「おはようございます、お嬢様(My lady)」
 ベッドの中からわたくしを見上げて、チャーリイが挨拶をします。致し方のないことです。だって、彼の右手と右足は手錠でベッドの脚につないであるのですから。
「おはようございます、お嬢様」
 ジニア・コルベットも挨拶を寄越します。彼女は、左手と左足をベッドにつないであいます。
「おはよう」
 挨拶を返してやりながら、二人の手錠を外してやりました。朝晩面倒な儀式ですけど、これも高貴な者の務(Noblesse oblige)めです。だいいち、使用人が間違いをしでかしたら、わたくしの落ち度になります。
 あら。使用人ではありませんでした。二人はわたくしの学友――スクールメイルとスクールメイドです。同じY7ですけど、実はチャーリイは二つ年上。レディの護衛ですから、たくましくなくてはなりませんものね。
 だから、チャーリイには性的欲求が兆していると思います。ジニアも、ぼつぼつそういう年頃でしょう。三年ちかくも一緒の部屋に住んでいながら、今さらのようにパーティションを欲しがったりするのは、そのせいだと思います。
 もっとも、間違いなんて起きるはずがありません。二人を拘束するのは就寝のときだけですけれど、廊下への出入口はドアを取り払ってあります。男女が二人きりで同室のときはドアを開けておくのがマナーですから、いちいち開閉する手間を省いてあるのです。廊下のいちばん奥とはいえ、いつ他人にのぞき込まれるかわかったものではない環境で、いやらしいことなんか出来っこないですね。女子寮に男子を住まわせる特例を認めてもらうには、これくらい徹底する必要があるのです。
 わたくしはベッドルームへ戻って、仕切りのドアを閉めました。それから、元は廊下だった部分に通じるドアを出て、向かい側のセクションにあるサニタリールームへ行きます。そうです。わたくしの寮室には、専用のリビングルームとサニタリールームがあるのです。男女合わせて七百八十名の生徒の中で、わたくしひとりだけの特権です。
 当然のことですわ。学園には男爵を親に持つ生徒が三人と、準男爵や騎士は二十何人かおりますけれど、子爵はわたくしだけ。しかも、この学園はわたくしの父母の母校ということもあり、有象無象の成金連中など足元にも及ばないほど多額の寄付をしているのです。フッド記念講堂もありますの。別に自慢するつもりはございませんけれど。
 わたくしは朝の生理的欲求を満たしてから、シャワーを浴びました。腰まで届くブルネットは、ざっと水気を拭っただけで、バスタオル一枚でベッドルームへ戻ります。
「ジニア」
 声を掛けると、ジニアが礼儀正しく部屋へ入って来ます。わたくしが猶予をあげている間に、自身の身支度は整えています。
 ジニアはわたくしの髪をドライヤーで乾かしながらブラッシングをして、ていねいに編み下ろしてくれます。
「これでよろしいでしょうか」
 ブルネットに映えて、かつ学生らしく清そな白のリボンを差し出します。
「よろしいわ。あなたのセンスも、洗練されてきたわね」
 使用人を褒めてやるのも、主人の心得です。
 わたくしが立ち上がると、ジニアはかいがいしく着替えを手伝います。子供っぽくはないけれどけっしてセクシーではない、おそろいのブラジャーとパンティ。淑女のたしなみのスリップ。ハイソックス。きれいに洗って、ふわっとした感じにアイロンを掛けたブラウス。校章を左胸に刺しゅうした水色のジャンパースカート。真っ赤な紐ネクタイ。
 身支度が調うと、ドレッサーの小さな鏡ではなく、壁にはめてある姿見で全身をチェックします――けれど、着付けの具合よりも身体の輪郭に目が行ってしまいます。
 チビってほどではないですが、わたくしは同級生の中では小柄なほうです。でも、胸の膨らみはY8の先輩にだって負けていません。目下の悩みは、バストよりもヒップの数字が(少しだけです)大きいことですけれど。母様みたいにほっそりしていると、結婚してから苦労することになります。なにしろ、二人目を授かるために、スポーツジムに通って体質改善に励んでいるんですもの。
 でもまあ。私の後ろに控えているジニアを鏡の隅っこに見ると、わたくしの自慢も悩みもぺちゃんこになってしまいます。わたくしより頭半分背が高くて(女性で長身は如何なものかと思いますけど)、わたくしとジニアが並ぶと、クラスの男子の視線はわたくしの顔ではなくジニアのバストとヒップに集中するんですから。将来はきっと、殿方を悩殺するような下司な女性になることでしょうよ。
 あら、いけない。朝ご飯を食べている時間がなくなります。カフェテリアでは皆さんが順番を譲ってくださるから、長い行列に並ぶ必要はありませんし、そんなにたくさん食べるわけでもないです。けれど、淑女のマナーを守ってお食事をするには、相応の時間がかかるものなのです。
「学校へ行きます」
 ジニアに声を掛けて、わたくしは廊下へ出ました。ジニアは、わたくしのバッグを持って、自分のバッグを取りに、あたふたと自分の部屋へ戻ります。わたくしの斜め後ろには、ちゃんとチャーリイがついています。
「おはようございます、ミス・フッド」
 部屋から出てきた上級生が、立ち止まって挨拶をします。身分を弁えて、なれなれしくアイリスなんて呼び掛けたりはしません。
「おはようございます。良い朝ですわね」
 この人はY12のネリッサ・グラフトン。ほとんど毎朝、出会います。顔なじみの方には、それなりの言葉を掛けて差し上げるべきでしょう。
 挨拶を交わしている間に、ジニアも追いついて来ました。三人で階段を下ります。この様子を『お姫様の出陣』なんておっしゃる方々も、何人かはいらっしゃいます。Y7以上の女子だけで百四十人もいるのですから、わたくしを良く思っていない方だっていないことはないでしょう。身分高き者を崇拝せず富める者を嫉妬する輩は、どこにだっているものです。もちろん、下級生は皆さん、わたくしの崇拝者に決まっていますけれど。

 朝食を終えて教室に入ると、十二人のクラスメートのうち一人を除いて、起立して朝の挨拶をしてくださいます。椅子に座ってそっぽを向いているのは、キャティ・ストックだけです。
 彼女の頭に飾られているヘアブローチが、わたくしの目を引きました。細長い花の形をした金色は、彼女の金髪に埋もれて、ちっとも見映えがしていません。
 わたくしはキャティの前に立ちました。彼女はわたくしを見上げただけで、何も言いません。わたくしから挨拶されるのを待っているのでしょう。
「素敵なヘアブローチね。もっと良く見せてくださらないかしら」
 キャティが立ち上がりました。ジニアと同じくらいに背が高いです。
「いやよ。髪が乱れるわ」
 けんか腰です。この人は、いつもこうなのです。石油のほうが青い血よりも貴いとでも思っているのでしょう。
「ジニア」
 キャティをにらみ返したまま、低いけれどしっかりした声で命じました。でも、他のクラスメートが素早く動きました。マリー・デストンが斜め後ろから、ヘアブローチを素早くむしり取ったのです。
「痛いっ、なにするのよ」
 マリーはキャティを無視して、ヘアブローチをわたくしに差し出します。
 手に取って見ると、やはり意匠はアイリスでした。
「返しなさいよ」
 キャティが右手を突き出しました。
 先程からの数々の無礼に、腹が立ちました。それよりも、このわたくしを髪飾りにするなんて。きっと、分かってやってて、得意満面なのでしょう。
 わたくしは、指の力を抜きました。
 カツン。ヘアブローチが床に落ちます。それを、靴のかかとで踏んづけてやります。
 ぐじゃっと潰れる感触が小気味良いです。
 バチイン!
 目から火花が飛び散りました。ほほが熱いです。
「なにするのよ。五百ドルもするのよ。パパからのプレゼントなのよ!」
 やはり成金の娘です。真っ先にお金のことを言います。しかも、アメリカドル。ポンドだと、二百五十くらいかしら。子供の玩具としては高価ですし、大人の装身具としては安物ですわ。
「赦さない!」
 キャティが、また手を振り上げます。
 わたくしは顔をかばいかけて、その手を止めました。わたくしは貴族の娘です。困難にも真正面から立ち向かいます。でも、取っ組み合いのけんかなんてはしたない真似は御免です。こういうときのために、チャーリイを学友にしてあるのです。
 ところが、チャーリイがキャティを取り押さえる前に、男子のオッター・デアリングがキャティを羽交い締めにしました。
「放してよ!」
「もう暴れるなよ」
「暴れてなんかない。先に手を出したのは、向こうでしょ」
 キャティは、オッターから逃れようと、もがきます。そうなると、オッターも意地になって、ますますキャティを――あら、背中から抱き締めるみたいな形になりました。わざとかしら。キャティも、発育が早いほうですから。
 もみ合って(もまれて、かしら)いるところに、ヴィクター・トリアス先生が来られました。
「これは、なんの騒ぎだ。オッター、女の子を虐めるんじゃない」
「違います。キャティが、ミス・フッドを殴ったので、オッターが止めていたところです」
 マリーが事情を説明します。
「なんと。淑女にあるまじき蛮行。しかも、貴族令嬢に暴力を――植民地の平民ごときが」
 そうです。たとえ世界一の軍事力と財力を誇ろうと、所詮は本国に反旗を翻した連中なのです。すくなくとも、上流社会の人たちは、腹の底ではそう思っています。
「手を出しなさい」
 トリアス先生 (Mr.Trious)が厳しい声でおっしゃって、脇に抱えていた教鞭を右手に持ち替えられました。手の平をたたくなんて、授業中に騒いだ子へのお仕置きと同じです。
「先生(Sir)。そんな罰じゃあ軽すぎると思います」
 マリーがわたくしの内心を代弁してくれました。
「ふむ……」
 トリアス先生はわたくしに視線を向けます。わたくしは、微妙にそっぽを向いて知らん顔。こういうときは、言葉で表わさない限り、どんな仕種でも肯定の意味になるでしょう。
 トリアス先生は、キャティに向き直って、いっそう厳しい声でおっしゃいました。
「教壇に上がって、黒板に向きなさい」
 けげんな表情を浮かべて、それでも言われた通りにしたキャティは、次の言葉に驚いたようです。わたくしも、びっくりしました。
「スカートをまくって、尻を出しなさい」
 うわわわわ、です。お尻たたきなんて、せいぜいY3までです。それも、座っている先生の膝の上です。ズボンやスカートをめくったりはしません。立たせておいてお尻をじかにだなんて、このメイスレッド学園では、戦後初めてではないでしょうか。いえ、そんな大昔のことは知りませんけど。
 キャティはトリアス先生を振り返って。それから、なぜかわたくしをにらみつけてから。黒板に向き直ると、スカートをたくし上げました。裾を握る手が震えています。いい気味です。
 キャティは、学生にあるまじきひわいなパンティを身に着けています。浅い二等辺三角形で、ヒップの上半分が露出しています。
 トリアス先生は、教鞭を持っていないほうの手を伸ばして……
「きゃあっ……?!」
 キャティが両手でお尻を押さえてしゃがみ込みました。
「しゃんと立っていなさい」
 トリアス先生は落ち着き払っています。
「いやです。なぜ、パンティを脱がそうとするんですか」
「わたしは、尻を出せと言ったぞ」
 戦後初めてどころか、ウィンザー朝始まって以来かもしれません。
「いやですっ!」
 金切り声です。
「チャーリイ」
 トリアス先生は、わたくしのスクールメイルに声を掛けました。
「彼女を押さえておきなさい」
 右隣の席に座っているチャーリイが、目顔で問い掛けてきました。ちなみに、左隣はジニアです。わたくしが軽くうなずいて承認を与えると、しぶしぶといった感じで立ち上がって、教壇へ行きました。
 ジニアと同じくらいの背があるキャティも、ふたつ年上の男子と比べると、まるで大人と子供――というのは言い過ぎですが、肩を押さえ付けられると、身動き取れないようです。
 トリアス先生は、キャティの脇腹に手を差し込むと、ジャンパースカートの布ベルトを抜き取りました。両腕を背中へねじ上げて、そのベルトで手首を縛ります。
「いやああっ! なにするんですか?!」
「静かにしなさい。隣の教室に迷惑です」
 スカートをまくり上げて、手首を縛っている布ベルトに絡めました。
 ぎゃんぎゃん喚いているキャティのパンティをずり下げて、お尻を丸出しにしました。
「いい加減に黙らないと、この布を引き千切って口に詰めますよ」
 ひぐっと、しゃっくりを飲み込んで、キャティがおとなしくなりました。
 トリアス先生がチャーリイに命じて、キャティを立たせました。あらためて教鞭を手に取りました。
「お願いです。たたかないでください」
 キャティが、泣きながら訴えます。
「そんなに嫌なら、校長先生のところへ連れて行きましょう。直ちに退学の手続をしなさい」
「いやですっ!」
 またヒステリックが、ぶり返しました。
「いやです。絶対に辞めません!」
「ならば、素直に罰を受けるのです」
「いやです、絶対にいやですっ!」
 トリアス先生がため息をつきました。
 わたくしもあきれてしまいます。パンティを履いていてもお尻の半分は露出しているのに、残り半分をさらけ出すのは、なぜ嫌なのでしょうか。もっとも――どうしても退学したくないというほうは、理屈の上では理解できます。
 庶民にとっては、寄宿学校(Boarding school)に入るのは、大変に名誉なことです。あ、庶民といっても、労働者のことではないですよ。寄宿学校の学費は労働者の年収以上なのですから、子弟を入学させられるはずがありません。わたくしが言っている庶民とは、お金はたくさんあるけれど身分の無い――当人一代限りの騎士叙任すら賜っていない、キャティの父親みたいな人のことです。入学が大変な名誉であれば、退学なんて、それを上まわる不名誉です。
 わたくしなどは、有り得ないことですけれど、退学しても――父様に無理をしていただいて上位の学校へ転入するか、子爵令嬢の名前に傷が付くのに甘んじて下位の学校(大歓迎してくれるでしょうね)へ行くか、なんとでもなります。それも一時のこと。本当に大切なのは出身校の格ではなく、Y11とY13の学年末に行なわれる全国統一試験の成績なのです。
 けれど、植民地ではそうではないのでしょう。学校の格付けを重視するとなると――栄誉あるメイスレッド学園を追い出されたキャティを受け入れてくれる同格の寄宿学校なんて、ありますでしょうか。
 キャティはわがままを飲み込んでおとなしくなりました。トリアス先生が教鞭の先をお尻に当てると、ぴくっと全身を震わせました。
 トリアス先生が教鞭を後ろへ引いて。
 びしっ!
 豊満なヒップに教鞭の先が食い込みました。
「きゃああっ!」
 本当に両隣のクラスまで壁を突き抜けて届くような悲鳴です。教鞭は細いプラスチックの棒ですけど、先端が団栗のように膨らんでいます。きっと、団栗を投げつけられるよりも痛いことでしょう。
 びしっ!
「痛いっ!」
 びしっ!
「くっ……」
 だんだん痛みに慣れてきたみたいです。
 びしいっ!
 肉を打つ音が大きくなりました。
「きゃああっ!」
 悲鳴も一発目以上に大きいです。
 びしいいっ!
「いやああああっ!」
 悲鳴に泣き声が混じっています。最初の三発では、横長の丸い小さなあざが残っただけでしたが、この二発では、左右のお尻に一本ずつの赤い線が刻まれました。
 わたくしは、ちょっぴりだけ、キャティが可哀想になってきました。
「トリアス先生。早く授業を始めてください」
 彼は、教鞭を持つ手を止めました。キャティのスカートを下ろしてやり、手も解いてやりました。
「では、席に戻りなさい」
 キャティはパンティをずり上げてから正面に向き直って――泣き腫らした目で、またわたくしをにらみつけました。
 わたくしの心の中から、ちょっぴり可哀想が消えうせました。
「トリアス先生。わたくし、まだストックさんから謝罪を受けていません」
 先生が何か言う前に、キャティが言い返します。
「あなたに謝ることなんか、これっぽっちも無いわよ!」
 わたくしはトリアス先生に向かって、はっきりと首を横に振りました。
「キャティ、フッド嬢(Miss Hood)に謝りなさい」
「先生は事情を御存知ないから、あたしが悪いと決めつけてらっしゃいますけど……」
「フッド嬢は、きみをたたいたのかね?」
「それは……でも」
「反省していないのだね」
「だって、あたしのヘアブローチを……」
「授業が終わるまで、教壇の隅に立っていなさい」
 トリアス先生が彼女の背後へまわって、また手首を縛りに掛かります。
「やめてっ……」
 彼女は抵抗しましたけれど、トリアス先生の次の言葉でおとなしくなりました。
「では、校長室へ行きましょう」
 乾きかけていた彼女の目から、大粒の涙がこぼれます。
 トリアス先生は、手を縛っただけでなく、スカートをまくり上げ、パンティも膝まで引きずり下ろしました。そして、キャティにとっては屈辱きわまりない指導をします。
「きみも、そこで授業を受けるのです。黒板に向き直りなさい」
 つまり、むき出しのお尻をクラスメートの目にさらしていなさいという意味です。
 キャティは、もう文句を言いませんでした。わたくしを物凄い形相でにらみつけてから、後ろ向きになりました。
 涙を流しているのかは見えませんでしたが、授業中ずっと、キャティの全身が小刻みに震えていました。膝の震えを見ていると、よくもあれで立っていられるものだと、妙な関心をしたほどでした。
 ――授業が終わると、キャティは教室から逃げ出しました。
 お昼休みに、わたくしは父様に電話をしました。簡単な挨拶と近況報告(楽しく学んでおりますわ。クラスメートも教師の皆様も、本当に良くしてくれています)を済ませると、おねだりです。
「クラスメートのキャティ・ストックを御存知でしょうか。彼女にヘアブローチをプレゼントしたいの。生徒名鑑を見てください。長い金髪に映えるような、エメラルドがいいかしら。どんなのにするかは父様におまかせしますけど、一千ドルより高くても安くても困ります」
 五百ポンドなら、貴族令嬢のわたくしが身に着けても見劣りはしませんでしょう。それよりも大切なことは、わたくしが、うっかり壊してしまったキャティのヘアブローチの倍の値段だということです。
==============================

 この後、寮へ戻って。チャーリイが護衛の役目を果たせなかった罰で、キャティと同じに下脱ぎさせて。キャティのお尻を盗み見してたときにはエベレストだったのに、いまはチョモランマ。
 とっくにY7履修範囲を済ませて先に進んでいるアイリスは、図書室でいろんな本を読んでいます。上の学年で習う性教育の副読本とか、家庭の医学百科とか、6th formの生徒向けの医学書とか。とうぜん、勃起現象も知っていて。直に触れるのは汚らわしいから、長い柄の靴ベラとかで、つんつん。
 そして。男の子は女の子より頑丈だから、お尻ペンペンでは足りない。
 男性って、睾丸をたたかれるとすごく痛がるそうだけど、どんなになるのかな?
 靴ベラでバチイン。
 ここまでが、Spitefulの章です。


お尻懲罰1

 実は、このシーンでアイリスが思ったあれこれが、後に彼女を呪縛するのです。
  縛られなくても、命じられた姿勢を崩したりしません。
  キャティみたいに無様に悲鳴をあげたりしないわよ。
  泣くもんですか。わたくしは、誇り高い貴族なのよ。
  などなどなど。
  いっそのこと、章題を Boomerang にしようかと思うくらいです。でも、Sで始まらないので。



 さて、今日(OFF)は Subsitituteくらいは書き上げましょう。


テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Progress Report 0:特別娼学性奴

Urgent Report[-1]→

 WILL様からのリクエスト第6弾。いよいよ執筆開始です。
 先にお断わりしておきますが、今回はいわゆる「マゾ堕ち」はしませんさせません。
 最後まで貴族令嬢のプライドを保って、それなのに最下層の性奴扱いされて、恥辱屈辱にまみれながら、肉体的反応はしますが、それ以上にプライドを踏み躙られることに、もしかしたら最後まで当人は自覚しない愉悦を覚えるという。ううむ。うまく描写できるか不安になってきました。
 三人称なら、憐れなヒロインを見て加虐者が愉しんでいればいいんですけど。ヒロイン一人称で、ヒロインが最後まで反発しながら、その実――だいたい、こうやって説明する文章でさえ、うまく書けていないのですから。
 それでも、チャレンジ一念生。


 ちょっと、息抜き。『小公女、エロ』で検索すると……ぐへへ。
 上段中央のシーンは、どこかで使おうかな?
エロ小公女

 下の実写画像は、ヒロインが「藤咲セイラ」だから掛かったみたいです。


 あと、重大なポイント。
 今回は、きわめてソフト路線です。木馬も焼鏝も出てきません。ピアスもタトゥも無し。恥辱メインです。
 しかも。SSSに堕ちてから1か月くらいは、処女のままです。濠門長恭作品では最長不倒記録のはずです。


 では、恒例のPLOT紹介。


 Y7というのは、Y1~Y11が義務教育で、Y12とY13が 6th form という、大学受験予備校というか高校というか。
 義務教育は5歳からで、日本より1年早く始まります。

========================================
S is for...
Special School Servant
Sexpert Scholarship Sutudent
Sex Slave Student
特別娼学性奴

ヤード・ポンド
『小公女』を読んでいることにして、随所で対比?
Yes sir /ma'am は、使わない。教師に貴族はいないから。
教師や生徒からの呼び掛けは、ミス・フッド。
ジニアとラックは My lady お嬢様。
ケイティだけは、レディ・アイリス。本来は伯爵令嬢以上。
物価は現在の30% £1=¥400(現在¥160)。学費は大雑把にサラリーマンの年収の3倍。


アイリス・フッド Y7 7月
 ひとり娘。社交ダンス部と美術(絵画)部。馬術部志望だったが、母の反対(処女膜伝説)。運動部系は、肌を晒すなんて。
 母親譲りのブルネット。編み下ろしにしていたが、ジニアを使役できなくなってからは長いツインテ(表紙予定画像から逆フィードバック)。
 母と同じで小柄の細身。同学年(たいてい半年くらい上)と比べて乳房が膨らんでるのは、逞しい父の影響? わずかに生えてる。
 ヒップの数字ががバストより大きいのは嫌。でも、きっと子供を何人も産める。
 ママは2人目(男子)に挑んで体質改善にスポーツジム。まだ若いから、きっと叶うよね。
 べた甘の父親が、4学年まで自宅で家庭教師。
 母はY8で父と付き合い始めた。ので、恋愛にも興味津々。図書室で正しい知識を得ている。膣、陰唇、陰核、陰茎、睾丸、陰嚢……

父親 マイティ・フッド子爵  35
   ロイズのアンダーライター
   多額の債務を抱えて行方不明。

母親 メリー 32 旧姓レパルス
   卒業してすぐ結婚
   破産しない。すれば、爵位を失う。
   まだ若いから、マイティ存命なら男児出産の可能性。
   私物一切は債権者に(下着一枚に至るまで)譲渡しないといけない。

弁護士 パイク・ハボクック

専属学友(school maid & male)
 ジニア・コルベット Y7 10月
  大柄。BQB。
 ラック・ワンブス  Y7 12月
  実は二つ年上(ボディガード)
  二人は、アイリスとドア続きの隣室で相部屋。廊下側のドアは開けっ放し。寝るときは、間違いが起きないよう、アイリスがベッド拘束。恥ずかしいので、ラックがカラーボックス。

取巻  Y10  メル・ブリーク
     Y8  ローナ・トレント
    同Y7  マリー・デストン  「同」は同クラス
    同Y7  ライラ・ロイヤー
    同Y7m オッター・デアリング mはmale
    他Y7  キャティ・ストック 「他」は他クラス
    他Y7m ハーディ・リンクス

Y6以下は全員が崇拝者なのです。
上級生の大半は、わたくしを敬して遠ざけているのでしょうね。
同級生は、ほとんどの者がわたくしにかしずいています。
一部の者の反感なぞ、力ある者の宿命ですから、平気ですわ。

被害者 同Y7  ケイティ・アーズ アメリカの成金。


メイスレッド学園
 全寮制 1学年~13学年
 基本は2人部屋。低学年は4人。
 1クラス12人×5クラス×13Y=780人
 教員150人、職員50人が住込。
 清掃業者、給食業者など50人は通い。厳重な守秘義務。
 物資搬入などは通用門で職員が差配。
 学僕は19世紀の制度だから、今は無い。
 ボーディングスクールとしては上の下。
 子爵の子弟が最上級。まれに伯爵。爵位継承権者はアイリスひとり。
 年間の学費はサラリーマンの年収の数倍。ボーディングスクールでは当然。
 父母の出身校。
 経営者(理事長)が交代。かつて母を父と争ったドウ・セットシャー子爵(マイティと同学年)。アイリスはそこまで知らない。
校長  ケリー・キプリング
校医  ミルダ・フォーブ 
女教師 アリス・グロー
    ガディラ・マッカラン
ソープ カガリ・アカギ
花電車 リュウナ・ヒシノ
男教師 ヴィクター・トリアス
    アトラス・イリス
    ジャス・レイカー
    マック・アルペイン
    ラルフ・カビン


 制服はジャンパースカート(冬は紺で夏は水色)に紐リボン。冬は上にブレザー。
 男子は校章入りワイシャツに蝶ネクタイ。ズボンの色は女子と同じで、8年生から長ズボン。冬のブレザーはデザイン違い。

 1982年4月(学年の後期)
 ナイフランド紛争で、株価暴落。
 父親、現地へ行く途中で行方不明。母親は「ジャマゆき」
 土地は無くし、妻や娘に爵位継承権は無い。
 しかし、身体を流れる青い血は変わらない。
 6月上旬に悲劇は始まる。



sadistin   4月中旬
・オープニングは、目覚めて隣室の二人の解錠から。Noblesse oblige。
 突き当たりの廊下をふさいで、二人部屋二つを独占。特別にサニタリールーム。
 二人は大急ぎで共用トイレ。身支度の世話。ここでヘアーとか身体つきとか一気。
 髪飾り(アイリスの意匠に見えるが百合)。取巻きが取り上げる。返してと言われて、わざと落として踏みにじる。
 「500ドルもするのよ」金に賎しい。
 ビンタ食らう。取巻きが取り押さえて、そこに教師。
 尻叩き。ケイティは、取巻きと教師の忖度合戦で、下脱ぎ立たされ。
 護衛を怠ったラックは後で股間キック。
 パパに電話をして、ケイティ(金髪巻毛)に似合いそうな髪飾りを。千ドルで。£レートに言及。
・数日後。メルの「姉のお友達」の体験談。
 最初は、すごく痛い。
 どれくらいかを、ジニアで実験。
 ラックのを見て、ジニアを見て。ラックがいっそう大きくなって、悪戯心。カラーボックスをラックが組み立てたドライバー。
 処女膜と処女性は無関係。馬術部に言及。
「どんなふうに痛いの?」
 答えられない。
 見ていて勃起させたラックも脱がして。手は気色悪いので、足で。
 その前に。まず、ラックを勃起させて
「ふうん。こんな大きいのが入るのねえ。あ、オトナはもっと大きいのかな?」とか。
・10日後
 髪飾りが届く。
 「このほうが、あなたには似合うでしょうよ」
 ケイティの机に置く。ケイティは敵意のこもった目で、無様なカーテシー。
 「あいがとうございます。レイディ・アイリス」煮えくり返る腹が透けている。

subsidence 6月下旬
 ナイフランドの推移はフォークランドと違う。
・3人が校長に呼ばれて、先にラックとジニア。1時間も待たされて。
 弁護士から母の手紙。下着まで『財産没収』
 全裸で校長からの説明を聞く。上の空。
 新制度はSexpart Scholar student
 sextant(六分儀)からの連想で、sixth formに関係あると誤解。
 弁護士の悪意。ろくに読ませずサイン。
 渡されたのは制服と紐ネクタイの代わりに犬の首輪「SSS,IRIS」
 ブラウスも下着も靴も「制服貸与」の範疇外。必要なら自弁で←無一文。
 制服は超ミニ(股下ゼロcm)プリーツジャンスカ。必然的に裸ジャンスカ。
 「きみは処女だね」
 T字形鎖貞操帯。環が太いから、大も可能。陰核が環に嵌まる位置で安定。若干意識してしまうが、まだ快感には至らない。
 他の2人が入室。2人は、これまでフッド家から給金。今後は親元から仕送り。
 ジニアはパンティ+ノースリーブブラウス。ノーブラ(鉛筆理論)。首輪。超ミニジャンスカだが股下5cm。
 ラックはノースリーブで裾結び。首輪。股下ゼロ半ズボン前V開きベルト有り。パンツはペニスぎりぎりローレイズ。
 家名は捨てる。boy & girl
・3人ひとまとめに物置小屋へ。ジニアとラックの荷物で狭い。オンボロベッドは二つ。アイリスは床に毛布。制服が皺になると二人に全裸強要される。左右に並んだベッドの間に大の字拘束で寝かされる。これまでの仕返し。
・初日。3人ばらばらに。アイリスだけが元のクラス。教壇の隅に机。クラスメートと斜めに向き合う。
 「雑用でもなんでも言いつけてかまいません。皆さんのメイドと思いなさい」
 経緯を詳しく説明。アイリスと他の二人との違いも。実家からの仕送りなど。
 超ミニをまくられて、ビンタを返す。たちまち尻叩き。後ろ向き立たされ。後ろに組んだ手で裾を持ち上げさせられる。昼まで。じんわり濡れる。胸キュン。
 昼食。カフェテリア出入禁止。適当に盛り付けられたトレーを裏口で受け取って、その場で。木箱のテーブル。
・学年全体で年度末テスト上位(男子4人、女子2人)に、デート権。
・数日後。取巻きだったマリーの虐め。
「裸足じゃないの。これを差し上げるわ」
 目の前で履き替えたキャンバスシューズを差し出す。
「受け取りなさい」顔に押し付ける。払いのけたら、わざと隣の子の顔にぶつける。
「先生。アイリスが暴力を振るいました」
 問答無用。全裸。
「無精髭を明日までに剃りなさい」
 抗議しても、ほかの[まともな]生徒は隠している。
 T字鎖を外してメコ筋縦打ち。汚れた鞭を舐めて綺麗に。乳房で拭かれる。生徒が慣れるまで、教師は意図的に過激?
 ズックは、最大限の感謝で受け取らされる。カーテシーはしない。
 全裸ズックで整列休め。放課後まで。昼は他教室からも。視線意識して濡らしてしまう。
・その夜、ジニアとラックの手で強制剃毛。腋も。また濡らして、からかわれる。
・学年末に12歳。初潮はまだ。土日は3人で校内清掃。清掃業者を削減。

suppression 7月中旬
・本人も生徒も、まだ戸惑っている。
・学年末テストの答案返却。零点。補習。
 抗議。員数外。ジニアとラックはノーチェックで及第点ぎりぎり。
 抗議の罰。
 ツインテで後ろ手縛り。文句を言った口にチョークを咥えて、悔し泣きしながら。惨めなほど濡れる。
 I will never disobey any teacher and student.
 SSSの立ち位置が、生徒にも明確に。
 補習。ひとりだけ別教室。教鞭ツンツンから生乳もみもみくらいか。
・熱心な取り巻きだったハーディとオッターがデート権利。
 土曜はオッター。半日の校内デート。給食業者に作らせたランチボックス。
 ポッキーゲームで抱きすくめてキス。無防備な乳房こねくりまわして尻をなでるくらい。陰核クリクリで、初あへり?
 日曜はハーディ。レスリング部。
 CACC。全裸(T字貞操帯)。敵はシングレット。
 先輩3人も一緒にスパーリング。「恥ずかし固め」くらいで赦してやろうかな。
 バリバイ・デサド皇太子がエクスターシャをぶちのめしたようなハード系は駄目です。
 ハヴェントY8、ラムゼイY9、スウィフトY10 たぶん、ファミリーネーム。

shame 7月下旬~8月中旬(夏休)
 乾パンと缶詰の日々も。
・フッド記念講堂。7年前に父が寄贈。小さいから小集会用。汚れが目立ってきている。
 古くて小さいから、使われていない。苔むしている。
 外壁の高圧水洗浄。汚泥はシャベルで掬ってネコ車。近くのコンテナにまとめておけば、業者が早朝に収集。濡れるから腰巻ひとつ。
 1日目。鎧窓を閉めて、洗浄の準備。
 2日目。腹痛。水を飲みに離れたのを咎められ、機械につながれかけるが、拒否。
 プライドに掛けても、離れられない。
 「そこにいくらでも水はある」
 質の悪い水道水が汚いタンクで、さらに。
 垂れ流してジェット洗浄はプライドが。限界突破で泣き崩れる。それでも、自身を洗浄。
 3日目。不意打ちで理事長視察。初対面。
 理事長にカーテシー強要される。違う意味で濡れる。
 躾のし直し。全裸のときは小陰唇カーテシー。ペニスへのカーテシー。破瓜。
「私は、どんなふうに痛いか言えるわよ」
恥辱が快感。血塗れお掃除フェラ。
 「メリー。おまえの娘は、ここまで堕ちたぞ」
 三巴の過去が明らかに。教師が辛く当たっていたのも差し金。
 寄付の餌。
「母親よりも稼げるぞ。すべて学園の金庫に入る。そういう契約」
 翌日も出血。初潮。ピル。Y字鎖に。
・サマーキャンプで戻って来る生徒も。
 手伝わされて、遊ばれて。教師が挿入&イラマ。突っ込まれると、ラビアが擦れる。
 生徒も真似する。膣挿入+陰核で快感。絶頂ではない。肉体的官能のみ。
・性感開発と称して、ヘアピンを乳首は横向き、陰核は縦向き。あるいは脱がせてプロペラ。

Study 8月下旬
 新学年新学年からのSSS本格稼働の準備。
 初代はアイリス、ジニアYのまま、ラックYのまま
 アビリア(Y11)、ウラニア(Y10)、フュリー(Y10)、ヌビアン(Y11牡褐色小柄童顔)。全員貞操帯無し。
 すれた印象。感化院あたりから?
 SSSなんて、失敗するわよ。
 学年相応の教養を身に着けさせる。アイリスが臨時教員。小公女の影響かなあ。
「元子爵令嬢だってね」
 父の爵位は健在。それに、伯爵の孫娘。でも、この人たちに言っても無駄。
「今は、あなた方と同じ。あなた方より年少ですけど、ここでのキャリアは長いから、分からないことがあったら、遠慮無く」
「冗談じゃない。あんたは親無しの、パンツひとつ買えない無一文じゃないの」
「おまけに、処女を守る貞操帯だって?」
「あたいたちのが、ずっと先輩だよ」
 同じ扱いだなんて、誇りが許さない。特別扱いされてて、ありがたいくらい。高貴な者が逆風なのは、物語の定番だわ。
 二人が異様に幼い。ジニアは可愛がられる。
 3日ごとの小テスト。低めに設定した合格点に達さないと「教え方が悪い」
 アイリスが罰を受ける。赤点を取った当人はお咎め無し。
 罰は、書きながら考える。1日食事抜き/3点クリップ/股縄タイヤ引き校庭一周/串刺しスクワット
 (過激にならないようにね?)
 ただし、ひどいと感化院へ逆戻り。アッパーミドルの妾になる道が鎖されるので、それなりに必死?

submission 9月上旬
・SSSの本格稼働。
 新学年。Y8になる。12歳2カ月。
 Y9以上の成績優秀男子のみ権利。
 Y12と13の6th formは、週末に街へ行く者が多い。
 男子宿舎の外にプレハブ宿舎。雑魚寝。
 寝るときは、間違いが起きるように拘束。ドアは開け放しておくのが、未婚の男女が同室のときのマナー。実際に夜這い。
「手足自由なら、あれこれしてあげられるのにさ」
 カフェテリアの裏にテント設営。
・新学期早々の参観日もふつうに出席。親も平然どころか、奴隷カーテシー「躾が行き届いてますね」
 お忍び視察の大臣が、最初の募金活動。
 ボンデージファッションで女王様初体験。ごっこ遊び。気持ち悪い。
 二番目がケイティの父親。娘の仇討ち。メコ筋縦打ちも手紙で知っている。再現、教師は手加減してくれていたと痛感。
 他のSSSも、それぞれ2~3人。
・わりと、男子からちやほや(?)されてる。のが面白くなくて、ケイティの時間差意趣返し。返してあげる。髪飾りを机の上に。昼休みが終わるまで放置。教師が入って来てから、ケイティが払い落として踏みにじって。
「この娘が、わたしの髪飾りを壊しました」
 弁解無用。黒板の前で逆立ち。教鞭突っ込んでは縦打ち。3点目玉クリップインク瓶吊るし。見苦しいから、ラビアWクリップ。放課後まで、廊下。
・他のSSSに比べて、異様に過酷。
「nobless obligeと思え」
「ラックとジニアは帰る家がある。新人連中も、おまえという最下層を見ていれば、脱走など思わんだろう」本音。

skill 10月上旬
 放課後の課外活動時間。SSSはポルノ観賞。
・臨時講師。1か月。ソープ技。
 放課後のクラブ活動として。
 各SSSの指で、フェラ見本。自分で。相互で。先生に。最後は男教師とY12、Y13が練習台。バブル・ダンスも同じ。
 アイリスも熱心に受講。負けん気。
 花電車は翌年かな。

sodomy 10月後半
・わずかな時間を盗んで、図書室など転々として勉強。成績の維持。
 理事長再来。
 イチジク浣腸を取り出したが、やめる。
 ヴァギナと違って出血したら治らない。丁寧にほぐされて、快感。
 お掃除フェラを要求。汚濁。口を近づけて異臭。
 これだけは赦してと懇願。嗚咽。
「どんな罰でも受けます」
 医務室からダブルバルーン取り寄せ。
「放課後まで我慢しろ」
 ただし。自分でピンチを外せる。元子爵令嬢が自らの言葉に背くとは思わんがな。
 上の空で授業。
 放課後。校庭の真ん中。全校生徒の前で。全裸。自分で解錠。中腰で。両手で顔を覆って。終わって号泣。SSS総出で水をぶっ掛ける。自分の手で清拭。
 貞操帯無しになる。

showtime 11月上旬。
 自尊心があるから、羞恥に悶える。
 羞恥の感情があるから、悦辱に転化する。
 講堂で性教育実習(Y7以上)。アイリスだけ。
 女子のためのオナニー実演。
 教師による本番、3穴も。
 最後に、クラスヘッドが一人ずつ。
 Y9~Y11(15人)。辞退は次席。
 下の学年から 失敗しても恥でない。
 上級生は相談して3穴チャレンジ。

succession/success 2年後
 Y10でもY13の卒業証書。
 母親がパトロン咥え込んで、娼館経営。
 マダムとして3人をスカウトに来る。
 解放は、理事長とは裏取引?
 裸ジャンスカで校門に立つ3人。アイリスだけ裸ミニジャンスカ。他の2人は普通の制服。
 在校SSS総出。
 ロールスロイスから降り立つシースルー・ロングドレスの母親。以前通りの気品+上記した肌。
 三人同じ扱い(アイリスにとっては大昇格)で、娼婦と娼夫。嫌なら、学校に留まって、もう1年~3年。
 選択の自由。
 学校から貸与されている制服を返却して。卒業メダルの代わりの首輪ひとつで。小陰唇をつまんで、カーテシー。
 二人の動向は気にせず、ロールスロイスに向かって歩む。スモークフィルムが、ちょっぴり残念――なんて思わない。


succession/session 2年後
 母親がsex skill supervisorとして着任。フッド記念講堂でY7以上。
 母は、マゾっぽいボンデージファッション。乳房マンコ露出。パイパン&タトゥ。
 SSS代表でアイリス。自発的に全裸。
 陰唇屈膝礼(ラビアカーテシー)。差し出された足にキス。そのまま上へ。性器にキスしたところで立ち上がらされて、抱き合ってキス。母にリードされてレズ披露。



 ヒロインは幼少時には学籍だけ置いて、父母の元で家庭教師から英才教育を受けていました。
 原文を邦訳したという想定の本作品では、常用漢字すべてと、鞭笞磔枷浣(腸)などのSMジャンル必須の漢字を使います。
========================================
 上の一文は、設定年令の婉曲表現です。販売サイト自主規制対策です。Y7て書いたら、婉曲も直截もないですけど。でも、コノ物語ハふぃくしょんデス、現実のイングランドじゃないですから。

 先のUrgent Report [-1]から、study, skill ,sodomy, sucsessionと増殖しています。
 studyは、submissionが長尺になったので分割。sodmyは、いきなりAV同時(Oは前戯みたいなもの)では可哀想なので日を改めて。skillは、まあintermissionですか。sexpartになるための必修講座です。描くのはソープ技術だけです。花電車は割愛。
 しかし、ソープと花電車。何回書いたんだろうなあ。『
ママと歩むSlave Road』『悦虐へのエチュード』『海女無残花』『大正弄瞞』『姪奴と甥奴』「幼な妻甘々調教』『昭和集団羞辱史(浴場編)』他にもあったかも。
 Midship!
 そして。最後の succession は、ブログへのWILL様の
 「ジャマゆきさん」した母親の一発逆転が成るか――というコメントがヒントです。
 筆者としては、ヒロインを天涯孤独にするための方便で「行きっ放し」のつもりでしたが。
 『非国民の烙淫(後編)』みたいな、アドベンチャーゲームなどではお馴染みの、Truth ENDとBAd ENDです。
 どっちも、濠門長恭流ハッピーエンドかな?


※先のUrgernt Report[-1]からの大きな変更点は、パパ上の扱いです。
 よくよく考えるまでもなく、パパ上はインドまで遠征しているわけではありません。国内で死んだら、ヒロインも葬儀に列席しますわな。服喪とかもあって。そこから、学園まで連れ戻すプロセスが必要になります。無駄な尺です。それと、生命保険。アンダーライターは保険のプロです。最悪の事態を想定して保険金額を設定してたら、波乱ゼロ丈です。
 ので、設定変更。パパ上が生きていれば、ママ上はまだまだ出産適齢期。子爵位継承権者の男児を望めるでしょう。つまり、ママ上が借金返済に挑む動機が強化されます。
 ついでに。イジメ被害者が「500ドルもするのよ」と口走るのは、アメリカの成金の娘だからです。ラヴィニアが重なってたり。


 すでに、PLOTの長さから本編は300枚規模になっています。さて、実際に書いて、どうなりますことやら。

今回のAffiliateは、”小公女”ではロクなのが掛からないので、趣を変えて

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ジャンル : アダルト

Progress Report Final:生贄王女と簒奪侍女

 5月22日脱稿。14万8千文字(原稿用紙換算430枚)
 とっとと校訂して――7月1日発売予定です。
 すでに、心は次作『特別娼学性奴:Special School Servant / Sex Slave Studen』に馳せております。
 ので、アイキャッチも適当に。

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 こういうふうに寝かせて固定してから十字架を立てるんですが。作中でも、かなり忠実に描写しているつもりですが。校訂の際に確認しておきましょう。

 今回は最後っ屁で。全登場人物・組織・地名のネタばらしです。

本文中では書かなかった家名、旧姓、養親なども(括弧表記)します。

★フィションク準王国→この物語はフィクションです
ドエム河→美しく青き……
ツタッペル丘陵→つるぺた
国王 マノット・コモアール・コモニレル→妻の肛門に挿れることもある
先后 ジョイーティ(メジマキンヌ)→生真面目な貞女
前后 メソビア(インランド)→淫乱な遊び女
王女 モジョリン・コモニレル→喪女/家名はしょうがないね
王女 エクスターシャ・コモニレル→肛門に挿れてエクスタシー
侍女 アクメリン・リョナルデ→リョナでアクメ
侍女 イレッテ・ズコバック→入れてズコバコ
侍女 ミァーナ・オッケイン→三穴OK

親善(同盟交渉)使節団
正使 ロテイト・クレジワルド→狂言回し(ワルド=word)
副使 (チョイス)ヤックナン→チョイ役

★近隣諸国 リャクンシー王国/タンコシタン公国→侵略に虎視眈々

★海賊団アルイェット→無敵艦隊アルマダ(まだ=yet)
ヴァギナン船長 ミズン・モシュタル→水もしたたる
パイオーツ船長 ヒゲン・モテワッコ→髭のこわもて
オシリーヌ船長 (ボーズ・アバレン)→暴れん坊
手下 チョデイン→ちょっと出
女 オゴネア→大姐御
女 カッサンドラ(モデオイン)→おっかさんでもド淫乱
女 マイラ(テネシー)→イラマしてね

★メスマン首長国→オスマン帝国
首都 アリエザラム→有り得ざらぬ
首長 セセイン・シュンク・ボギャック→暴虐な専制君主
宰相 オザーリカ→お飾り
太子 バリバイ・デサド・セセイン→バイでリバでサド
寵姫 サナンドオ→サド女
寵姫 ハイビシャナ→高飛車な
寵姫 クリシナット→クリット無し
侍女 ベシメキア→別式女
侍女 スマゾネア→アマゾネス
寵童 タマーシャナ→玉無しやな
奴隷 ニンサコ イシラガ ンレド→奴隷小頭三人
兵士 モクーリャ アジミール→ヤリもく、味見る
炭鉱 ドロージュ→重労働
持主 バリ・シャデイン→出しゃばり

★教会派遣査問団
所属組織 聖ヨドウサ修道院→サド養成
枢機卿 キャゴッテ・ゼメキンス→焼鏝責め好き
修道僧 ホナー リカード ガイアス→ほリカドなGayasu
兵士長 レオ・モサッド→おれもサド

★都市 マライボ→サラエボ+疣魔羅
統治者 (ナッシュ)デバイン伯爵→出番無し
被疑者 ショウザンの娘、ジョイエ→冤罪少女
被疑者 ワイマーツの妻、ニレナ→哀れな新妻
その他 イディナ→出ない
その他 ガカーリイ商会→言い掛かり

★都市 ズブアナ→リュブリナ+穴にズブ
重罪人 ゴケット ヒューゴ ロシヒト→人殺し強盗火付け
魔 女 マイ・セシゾン→真性マゾ

★教皇庁 デチカン→バチカン+デカチン


その他端役候補(未採用)
ミッジ・カスギール、オライナ・ケッカネン
エキス・トーラン、ハヤック・ソノーチ
ツィヤック、モシモーシュ
ジウ/メイヤー (yaJIUma)
アンナ・ハインライン、ニアーナ・ヨガリンヌ
キュリアン・エピック、セツィーナ・ギーシュ
ノーノ・コマチオ/ルアーナ
パパイン/モデリード/プカーディ

 書いているときは、おふざけが、ほとんど気になりません。
 読者諸賢におかれましては如何でしょうか。

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Urgent Report [-1]:R is for Request

 『生贄王女と簒奪侍女(後編)』も終章を書き進んで、あと10枚くらいでEND。のタイミングで、お馴染みWILL様からのリクエストが来ました。吉原では三会目からが「馴染」になります。WILL様はダブル馴染ですな。戯言はともかく。
 頂いたリクエストは、下記の通り


========================================
*ストーリイのリクエスト
 →寄宿学校で絶大な権力と財力を持っていたお嬢様が、最下層のマゾ奴隷へと落ちる
*時代設定のリクエスト
 →身分、人種差別が公然と行われていた時代
(国や具体的な時代の指定はありません)
*シチュエーションのリクエスト
 →かつては高貴な身分と傅かれ我儘に振る舞ってい少女が最下層の身分に落ちマゾに目覚めていく
*キャラ設定(外見、性格)
 ・少女(人種はお任せします)
  高貴な身分と絶大な財力を持つ生まれながらのお嬢様
年齢はx2歳前後の外見は愛らしい小柄な美少女で家が学校に多額の寄付をしているため、教師ですら彼女には逆らえない
  高慢な性格で、使用人や奴隷は人間として見ておらず、同級生や教師も見下していたが、ある日、身分と財産の全てを失い、奴隷以下の立場になる
  サディスティックな性格と思われていたが本質は蔑まれることに悦びをおぼえる真正のマゾ
*人間関係のリクエスト
 →かつて少女に虐げられていた使用人・奴隷や、少女の取り巻きだった同級生、少女の我儘に振り回されていた教師
*特定の責めのリクエスト
 ・同い年くらいの使用人や奴隷を甚振る少女
  些細な粗相をした使用人を裸にして鞭打ったり、戯れに物で処女を奪ったりする
(少年の奴隷がいる場合は性器をおもちゃにして遊んだりもする)
 ・全てを失った少女は温情という名目で学校で働かされることになる
裸同然の服でなれない重労働をしたり、かつて自分が行ったような性的ないじめを使用人や奴隷達、教師や生徒から受けるが、何故か興奮する自分に困惑していく
 ・かつての同級生の前で見せ物として自慰や性行為を行う少女
  取り巻き達に笑われバカにされながら絶頂にたってしてしまう
========================================

 一読、思ったのは。
 『小公女』と『1/16の牝奴隷』を足して2で割ったら出来上がりじゃん――でした。うわああああ。畏れ多きことを。


 国や具体的な時代の指定はないとおっしゃいましても。「高貴な身分」ですから、制度としては廃されていても御貴族様でしょうね。社会主義国家のエリートでは、イメージが合わない。ていうか「多額の寄付」とかしませんし。
 そして、日本でも拙いです。「男女七歳にして席を同じうせず」ですもの。たとえ宿舎が別の建物に分かれているとしても。いや、現在の現実にはごく少数存在してるみたいですけど。日本の古典的な貴族(公家華族)は、線が細いし貧しくていらっしゃいますし。明治以降の大名華族や新華族は、誇りとかNoblesse obrigeから外れてる感じだし(個人的見解)。
 やはり、領地を切り取っていった攻撃的な狩猟民族がよろしい。
 というわけで、旧大陸に限定されます。
 といっても、イタリアは――筆者の感覚では、陽気なラブコメか残酷なマフィアか。
 そして。ドイツとフランスは――『11月のギムナジウム』と『風と木の詩』です。二絶大のイメージに引きずられます。

  註記
  御中<御大<極大 は、そのベクトル上に濠門長恭クンの座標があります。
  御中<御大<絶大 は、読者視点です。逆立ちY字バランスしたって、濠門長恭クンには描けません。たとえAI絵師を使ったとしても。

 というわけで。必然的にイングランドです。
 外国物を書くときに悩む言語の問題が、すこしは緩和されます。筆者とて、TOEICで10点くらいは取れます。


 そして時代は。電マやポラロイドやピルを使いたいです。ケイタイで24とか、ネットで助さん角さんしてほしくないです。というわけで、20世紀後半ですな。身分や人種差別が公然ではありませんが、隠然というかガラスの仮面檻というか。

 と、ここまで、脊髄反射的に定まりました。あとは一瀉千里。
 リクエストを最初に見たのが、19日(OFF)の午後。20日は勤務日でしたが、退勤までにはタイトルも章題も固まっていました。


Special School Servant
特別娼学性奴
Sex Slave Student

章題は
sadistin
subsidence
shame
submission
showtime


S尽くしで御座います。参照:『An Amateur Assasine Arrested And Assaulted

 設定の掘り下げも。
 父親は子爵様で、ロイズのアンダーライター。紛争だかテロだかで想定外の保険金支払が生じて、破産必至。なんとか挽回しようと1日48時間の奮闘のあまり、脳溢血でぽっくり。母親は伯爵令嬢。両家の名誉にかけても個人破産などせずに、相続した1千万ポンド以上の借金を合法的労働によって返済すべく、西ドイツへ出稼ぎ。「飾り窓の女」です。「ジャマゆき」さんです。
 ヒロインの我儘放題は父の甘やかし。下賤の者を蔑むのは母の影響。そして、母には幼少の頃から貴族の振る舞いを厳しく躾けられています。
 それを利用したエピソードまで浮かびました。腰布一枚でも、カーテシーを強いられるのです。
「両手で、もっと裾を持ち上げなさい」「足は後ろへ引くのではなく横に大きく開きなさい」


 さて。後はエピソードを膨らませていけばプロットの完成です。
 どころか、表紙も構想してしまいました。こんなの↓

表紙絵構図

 さあ。執筆中の『生贄王女と簒奪侍女(後編)』を、今日は紙飛行機全国大会の予選があるので、明日か明後日には脱稿して。校訂して。表紙絵は出来ています。
『王女と侍女』表紙絵合成

 6月1日には執筆開始です。
 あ、そうそう。この作品では、登場人物の語呂合わせはしません。
 でも、レパルスとかフォーミダブルとかヴァリアントとかフッドで統一したりして。






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Progress Report 7:生贄王女と簒奪侍女

 いよいよ第四コーナーを回って、最後の追い込み。後編を終わって、終章に突入しました。
 疾走するベクトル感覚(Ⓒ平井和正……ちょい違)を緩めてじっくり腰を据えて書き込むか、このまま突っ走るか。尾道どの道、今日(OFF)で目処を着けて、明後日のOFFは40秒×5なら決勝進出ですが。その次のOFFの25,26で脱稿でしょう。


 今回は、後編の最後を御紹介……ですが。爆裂弾は転がるわ、ロケット兵器は飛び交うわと、PLOT段階では考えてもいなかったスペクタクルアクションになっちゃいました。いえね。いきなり飛び出した近代兵器でもないですよ。前編でも後編でも、「大砲がこの地に伝わるのは半世紀後」とか書いて――西方社会では知られていなくても、中近東ならばという微弱な(巧まずして)伏線はありましたし。狼煙通信で赤い煙とか描写して、ケミストリーの発達を暗示したり。うん、そういうことにしときます。
 しかし、好き勝手に書いてるなあ……


========================================

  処刑執行直後の救出

 アクメリンは円環の晒し台から降ろされ、地上に寝かされている十字架に鎖で縛りつけられた。釘で手足を固定するのは古の処刑作法であるが、救世主と同じでは畏れ多いとして、基督教では(明文規定こそないが)禁止されている。
 アクメリンを磔けた十字架が立てられて。十字架のまわりに薪が並べられていく。積み上げるというほど多くはない。
 死刑を司るのは聖職者であっても、実際に手を下すのは下人である。ゼメキンス子飼の三人がマライボとズブアで執行に携わったのは――あれは処刑ではなく、強弁すれば教会の慈善事業であるから、話は異なっている。
 下人は被差別的な扱いを受けているか、罪人の烙印を捺された者がほとんどである。だから、肌の浅黒い者が混じっていても、人目を引かない。下人の一人が、小さな樽から石炭の粉のような物を撒きながら、十字架を取り囲んだ薪のまわりをぐるりと巡っても――ゼメキンスは教会が手配した者だと考えるし、教会から公式に任命された処刑執行人はゼメキンスの独走かと苦々しく黙認する。つまりは、指揮系統のねじれにつけこまれたわけだが、話を先へ進めよう。
 準備万端調って。フィションク準王国第二王女たるエクスターシャ・コモニレルを魔女として処刑する旨が宣せられて。刑吏が松明を持って十字架の前に進み出て。その火が薪に転じられた途端。
 しゅぼおおおおおおおおおっ……!
 真っ赤な火の輪が薪の外側に奔って、同時に十字架をおおい尽くす白煙が噴き上がった。
 群衆から驚きの声が上がったが、悪魔の所業か神の御業かと、戸惑いが大勢を占めている。天に向かって噴き上げる煙に注意を奪われて、下人のひとりが梯子を抱えて煙の中へ駆け込んだのも、下級兵士の服装をした男が別の方角から突入したのも、ほとんどの者は気づかなかった。
 下級兵士の服装をした男は、手早く上着を脱ぎ捨てた。男は梯子を駆け登って、十字架の頂部に立った。下の者から投げ上げられた奇妙な道具を受け止めて、それを口に当てた。
 上腕ほどの長さの末広がりの筒が三本、左右に広がっている。それは拡声筒というよりも、悪魔の牙のように見えた。
「聞け、人の子らよ!」
 筒に反響して歪んだ声が、広場に轟き渡った。人の子という場合、基督教徒にとって第一義的には救世主を示すが、複数形で使えば――話者が人外の存在であることを暗示する。少なくとも、群衆も貴顕もそのように受け取った。聖職者は、もうすこしだけ分別があったかもしれない。
「我はメスマン君主国よりの使者である」
 噴き上がった煙はすでに薄れ、十字架の頂部に立つ男の全貌が群衆の目に曝されている。裸の上半身に描かれた東方風の文様が、三連の拡声筒と相俟って、男を人外の存在に見せかけている。
「この娘は、フィションク王国から我が君に献上された寵姫である。故に、我が君は奪われた寵姫を取り返す。人の子らよ、我が君の所有物を掠取した罪に慄くがよい!」
 群衆の中から二人の男が走り出る。梯子を支えていた下人が途中まで登って、アクメリンを縛している鎖を手斧で断ち切った。ずり落ちるアクメリンの裸身を、駆け寄った二人が受け止める。
「何をしている、衛兵。あやつらは異教徒だ。成敗せよ! 魔女を奪われるな!」
 エクスターシャが実はアクメリンであり、魔女ではないと知悉しているゼメキンスが、真っ先に我に還って拡声筒に負けぬほどの大音声で怒鳴った。
 群衆の整理に当たっていた衛兵が、てんでに槍や短剣を構えて十字架目がけて突進した――その刹那、下の二人がアクメリンを地面に放りだすと、懐から握り拳の倍ほどの大きさの玉を取り出し、突き出ている短い紐を小さな箱に押しつけてから、殺到する衛兵に向かって転がした。
 ひと呼吸をおいて。
 バガアンッ!
 バガアンッ!
 玉が破裂して、炎と煙が噴き上げる。飛び散った破片で傷ついた兵士もいたが、驚天動地の出来事に兵も群衆も逃げ惑う。
 水で薄めた葡萄酒と干し肉を挟んだ麺包を売っていた屋台馬車が、いつの間に支度を調えていたのか、二頭の馬をつなぎ天板はかなぐり捨てて、馬体で群衆を掻き分けながら、処刑台の手前へ馳せつけた。
 十字架から飛び降りた立役者とその相方がアクメリンを馬車に放り込み、みずからも乗り込む。爆裂弾を投じた二人は馬車の先に立って、群衆に向かって突進した。
 聖なる書物の記述もかくや。人の海がまっぷたつに割れて――馬車は、無人の野を突っ走るごとく。広場を突っ切り、大門に続く広路を駆け抜ける。
 大門を護る衛兵からも、広場の方角から噴き上げる煙は見えていた。なにやら騒動が持ち上がっているらしいのも聞こえていた。しかし、その渦中の阿鼻叫喚は知らない。こちらへ向かって駆けてくる人馬を認めれば、広場の騒ぎと考え合わせて、それなりの迎撃体制を敷く。大門を閉じて、手前に十人を配置して、城の上には五張の長弓。
 しかし、先手を取ったのは馬車のほうだった。荷台に立ちはだかった二人が半弓を射た。鏃が異様に太い。その鏃の後ろから白煙が噴き出した。
 シュウウウウウ……白煙を引きながら弧を描くこともなく一直線に飛翔した矢は弓兵から逸れたが、その後方で爆裂弾同様に破裂した。
 パアアン!
 パアアン!
 肝を潰した弓兵が、呆然としているうちに、馬車が間合いを詰める。先頭を駆ける二人が両手に、棍棒にしては細く木刀にしては太い得物を握った。
 ブシュウウ……二本の棒から、赤い煙と黄色い煙が噴き出す。まさに、地獄の劫火と硫黄の煙を撒き散らす悪魔の軍勢――と、兵士たちの目には映った。
 算を乱して逃げ惑う兵士を蹴散らし、前衛の二人が開け放った大門を、悠々と馬車は駆け抜けた。そのまま街道を東へと進む。いつしか、馬車の前後には十騎ばかりが隊列を組んでいた。服装はまちまちだが、その服装にふさわしい態度を取り繕おうとはしていない。明らかに統制の取れた部隊であった。
 アクメリンは荷馬車の上で意識を取り戻したが、そのときには手足を緩く縛られたうえで袋に押し込められていた――ので、救け出されてどこかへ運ばれているのか、焼け死んで墓地へと運ばれているのかも、最初のうちは分からなかった。やがて袋から出されて縄を解かれて、気付けの酒を与えられたあたりで、生き永らえたとは知ったのだが。しかし、アクメリンの問い掛けには無言が返されるのみだった。
 昼は袋に詰められて馬車で運ばれ、夜は袋から出されても馬車の荷台を天板でふさがれて、地面に降り立てるのは、朝晩二回の排泄のときだけ。
 アクメリンを拐ったのか救出したのか、その男たちが交わす会話に耳を澄ましても、異教徒国の言葉らしく、一言半句も理解できなかった。
 この男たちは西方の言葉を話せないのだろうと、アクメリンは半ば確信するに至った。しかし、それにしても。人語を介さない家畜や愛玩動物にさえ、なにくれと話し掛けるのが人の習性であってみれば。何か含むところがあるのも、間違いはないであろう。
 不安はあったが、アクメリンは逃げようなどと考えなかった。
 魔女として焚刑に処されていたはずの、この身。あるいは――簒奪など試みなかったとしても、海賊どもに大嵐の海に連れ出されて海神への生贄にされていたかもしれない。いずれにしても、ここにこうして生きているのが間違いに思える。
 アクメリンは意識を失っていたので、広場での騒動は見聞きしていないが、男たちが異教徒ならば――メスマン首長国の君主が寵姫を奪還しようと事を起こしたのかもしれない。と、かなりに正鵠を得た推測もしていた。それならば、紆余曲折はあったものの、終わり良ければ全て善し……でも、なかった。生贄の牝山羊を奪われたデチカンが、どう出るか。フィションクにどう対処するか。ひいては、リョナルデ家がどうなるか。それが気懸かりではあった。
 しかし、そのことを含めて、アクメリンはあれこれ思い悩むことはやめた。我が身は無力なれど、それなりに我が身を犠牲にして父母兄姉を護ろうとしたのだ。ここらあたりで、一切を(我らのか異国のかはともかく)神の御手に委ねてもよいのではないかしら。曲がりなりにも死線を乗り越えて、そんなふうに達観――せざるを得なかった。
 袋詰めにされはしたが、傷の手当てもきちんとされていた。医術は東のほうが、西よりもはるかに進んでいる。正確には、西方では古典国家の時代から万事が退歩している。
 四日目からは、アクメリンは馬車の荷物ではなくなって、馬の背で運ばれた。逃げられぬように、手首を鞍壷に縛りつけられ、落ちぬように馬腹をまわして足首も縛られたが。
 しかし、なによりもアクメリンが驚きながら喜んだのは――裸身を隠すための布を与えられたことだった。傷は風に当てておいたほうが治りが早いと信じられていたから、衣服と呼べるほどの代物ではなかった。乗馬の妨げにならないように丈の短い腰巻と、乳房が揺れて傷に障らないための胸巻。
 すっかり全裸に狎らされていたアクメリンは、久しぶりに女の羞恥を取り戻した。そして、それは――当時の人間にしてはそれほど短命ともいえない彼女の生涯において、恥部を隠すという贅沢に与れた、最後の日々であった。

 一行はアクメリンを乗せた馬を追い立てて。一か月ほどもかけて、アクメリンが歩かされたり引きずられたりした道を六日で駆け抜けた。
 アルイェットのある半島からさほど遠くない海岸から小舟で漕ぎ出して、沖繋りしている二檣三角帆の快速船でメスマンへと渡った。
 そこからは、また馬で――アクメリンは救出されて二週間と経たないうちに、メスマンの首都アリエザラムの土を(裸足で)踏んだのだった。
 そして、せっかくの布切れを剥ぎ取られて、直ちに投獄された。
========================================

魔女焚刑
 残念ながら、上のようなシーンはないです。

 終章は、前編のヒロイン(エクスターシャ)と後編のヒロイン(アクメリン)が牢獄の中で再会して。
 あっさりと公開処刑され……る直前。
「誰か、この女たちに死罪よりも厳しい罰を与えようと思う者はいるか」
 という名目で、競売が始まります。
 あちこちに焼印を捺され、乳首とクリにはでかい穴を明けられ、鞭痕も半永久的に残りそうなアクメリンは
「金貨十枚から始める……声が掛からんな。では、八枚……五枚でどうだ。誰も名乗り出ぬなら処刑しかないぞ」
 で、買い取られて。買主(飼主になります)は、買い取った女罪人をどんなふうに処罰するか、群衆に納得させなければなりません。鉱山でケコロ(蹴って転がして抱く)くらいでは、ブーイングの嵐。昼は男と同じに重労働を課して、ノルマを達成できなければ、飯抜きと鞭打ちと、他にも鉱夫からリクエストがあれば、その罰も追加。
 まあ『偽りの殉難香世裸責』の二番か三番煎じです。
 一方のエクスターシャは、
「二十枚……三十枚……」と競り上がるところへ。
「金貨百枚だ」と、暴虐な専制君主セセイン・シュンク・ボギャックの歳の離れた甥で暫定太子である、バイでリバでサドなバリバイ・デサド・セセインが鶴の一声。
「わたしは、ぜったいにまけません」と宣言して、ぶちのめされ気絶しても降参しなかったエクスターシャを、負けを認めるまで毎日痛め付け、さらには君主の寵姫を弄辱した罪を(寵姫たちに玩具にさせて)償わせる――と宣告して、拍手喝采。
 それぞれ、新たな悦虐と淫虐の場へ連行されるシーンで、一巻の終わりと相成る予定です。


 さて、書き始めるとしましょう。





 

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服の下は裸

 なにを当たり前のことを――と、お思いでしょうが。

 BOOTHで『いじめられっ娘二重唱(前編)』について、下記のメッセージか届いたのが4/14
 ああ、fc2規制で一部お菓子な文字列があります。


BOOTH事務局です。
BOOTHをご利用いただきありがとうございます。

BOOTHで販売されている以下商品につきまして、
商品画像、または商品紹介文等のテキストの一部に、
要修正商品の対象となる表現が含まれていることを確認いたしました。

修正いただき、弊社にて問題がないことが確認できれば、引き続き販売いただくことが可能です。
下記依頼内容をお読みいただき、修正の対応をご検討いただけますと幸いです。

商品名: いじめられっ娘二重唱(前編)
https://manage.booth.pm/items/1433433/edit

対象となる項目と内容:
==========================
商品画像の一部:
・該当なし

商品紹介文等のテキスト※の一部:
・自動車に対する性的搾取及び虐待
・レイpu(同意のない性的行為)
・過度な暴力、残虐行為
・虐待
==========================
※商品紹介文等のテキストとは
商品名、商品紹介文、タグ、ショップ名 が対象となります


その商品紹介ページが……おっと、変更しちまってる。ので、保存してある紹介文の原稿で。


[お品書き]
U15/処女/性的虐待/集団レiプ/性器接着/半裸通学/強制アルバイ春/女体ピアノ/全裸運動会/雪遊び

ロリマゾシリーズの集大成ともいうべき大長編です。

[粗筋]
 イジメを告発して、かえってクラスメートから白眼視され、フリースクールに避難していた薫子は、一貫教育女子校への外部進学の条件である「課外活動の実績」作りのため、2学期から卒業までを山村留学することになった。
 そこで薫子は、知的障害をもつ下級生(香純)が男子生徒から性的虐待を受けている現場を目撃する。
 その少女の父親は、役場の公金を横領して、村の実力者の妻と駆け落ちをしていた。示談で済ませるために、母親は都会の熟女ソープでタコ部屋暮らし。娘は、村の実力者の妻の「身代わり」をさせられ、学校でも男子生徒ばかりか教師にまで性奴隷として扱われていた。
 薫子は少女に同情し、深入りをしてはいけないと思いつつも、少女を庇ううちに、自らも性的虐待の対象にされた。
 教師の監督下における集団暴行。強制アルバイ春。精液ドレッシングの弁当。股下ゼロcmでノーパンの制服。
 どんな性的虐待も「おともだちがあそんでくれるの」と受け容れる香純とは違い、徹底的に反抗する薫子には、より厳しい調教が課せられる。

 前編では、薫子まで性的虐待を受けるようになった経緯から、香純が受けたと同じ『説得』という名目の拷問に屈するまでが物語られます。



 戦死恥部な問題は画像絡みが多いと判断して、商品紹介文い下記の文言を追加しました。
  ★註記
  この作品は文字のみによる小説です。表紙絵以外に挿絵などの画像はありません。


 5/9に再審査結果が来ました。アウトでした。内容は上記と同じ。

 あれこれ書き変えるのは面倒。ていうか、抵触しないようにすると内容が伝えられない。
 ので、こんなふうに改変しました。これなら文句あるまい!
 まあ、再々審査待ちですけどね。

これでどうじゃ!

 ここで、記事のタイトルです。
 中身(裸)はともかく、表を取り繕わなきゃならんということです。

 だけどなあ。
 何万人も死ぬ戦争とかは、「過度な暴力、残虐行為」ではないのかしら?
 遊郭に身売りされる話なんて、「reイプ(同意のない性的行為」ではないのかしら?
 まあ、裸の部分(作品そのもの)には、少なくとも濠門長恭クンの書くレベルでは、まだ規制が掛かってないから、東南北シャアない大中大中ショウがないとしときますか。

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Progress Report 6:生贄王女と簒奪侍女

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 ちまちまと書き進めています。
 勤務中の休憩とか手隙のときのほうが破瓜が逝ったりします。フリーセルも紙飛行機も無いですから。
 ともかくも。『拷虐の四:浄化儀式』を尻切れトンボで終わらせて。『拷虐の五:重鎖押送』に取り掛かりましょうか。
 ということで、Part4(2万8千文字)を一挙公開。たぶん、後で手を入れるでしょう。

========================================

  拷虐の四:浄化儀式

 拷問小屋に入ってきたのは、見知らぬ三人の男たちだった。ひとりは役人らしい、こざっぱりした服装。あとのふたりは、素肌に布の胴着と継当てだらけの半袴。中流以下の家庭に雇われている使用人か、もっと若ければ徒弟といったところだが、場所柄を考えれば拷問吏だろう。
 ひとりの囚人が引き出されて、鎖で宙吊りにされた。ゼメキンスがアクメリンに施すような、残酷だが趣向に富んだ吊り方ではない。
「ゴケットよ。おまえが押入りの犯人だというのは、目撃証人もおるから、動かぬところだ。仲間の名を言え。そうすれば、重追放で済むように弁護してやる。おまえひとりで罪をかぶるつもりなら、斬首は免れないぞ」
 役人の説得に、ゴケットと呼ばれた男は沈黙で答える。
「そうか。まずは鞭打ちからだ」
 役人は拷問小屋の隅に置かれた小机に座って。拷問吏のひとりが、鞭を握ってゴケットの背後に立った。
 その鞭を見て、アクメリンは囚人に同情した。マライボでゼメキンスがアクメリンに使った鞭と、形も長さも似ている。だが、鞭の先から半分には短い針が編み込まれていた。苦痛も大きいに決まっているが、あんな凶器で叩かれたら肌が裂けてしまう。
 ぶゅんん、バヂイン!
「ぎゃああっ……!」
 男だけあって、腹の底から揺すぶられるような野太い悲鳴。
 ぶゅんん、バヂイン!
 ぶゅんん、バヂイン!
 ぶゅんん、バヂイン!
 たった四発で、ゴケットの背中は切り刻まれて、切り裂かれた肌がべろんと垂れた。
 ぶゅんん、バヂイン!
 ぶゅんん、バヂイン!
 次の二発で、それが千切れ飛んだ。
「待ってくれ!」
 ゴケットが、早々に音を上げた。
「なあ……おれが重追放なら、相棒も首を斬られたりはしねえよな?」
「弁護はしてやるが、約束はできんぞ。御裁きは市長殿がなさるんだからな」
「…………」
 ぶゅんん、バヂイン!
 ぶゅんん、バヂイン!
「やめてくれ! 言うよ、言うから!」
 ゴケットはあっさりと降参して、共に押し入った男と、外で見張りをしていた女の名前を挙げた。それで、彼の取調は終わり。血だらけの背中をそのままで服を着せられ、別の小役人の手で外へ引き出された。裁判は仲間と揃って受けるはずだから、拷問設備のない獄舎へ移されるのだろう。
 小休止を挟んで、次に引き出されたのはロシヒトという、面構えからして堅気ではない中年の男だった。酒の上の諍いで隣人を殺して、それは男も認めている。殺そうとして危害を加えたのか、喧嘩が過ぎて殺してしまったのか。故意の有無が問われていた。男にしてみれば、死刑か重追放かの岐路である。
 ロシヒトは先のゴケットと同じ鞭打ち切裂きの拷問に掛けられて――三十発を超えたところで息絶えた。失血による死ではなく、心臓が破裂したのかもしれない。遺骸は服を着せられて運び出された。それからどう処理されるのかは、アクメリンには分からないし、知りたくもなかった。
 拷問で殺してしまったのだから、後の処理もいろいろある。役人は小机の上で何枚かの書類を認め、その間、二人の拷問吏は、若い娘の裸体をじっくり見物する役得に与った。
 最後に、ヒューゴという青年への拷問が始まる。姉の亭主の家に放火した嫌疑が掛けられているが、先の二人と違って目撃者はいない。すでに幾度も拷問に掛けられていて、身体じゅう傷だらけだ。
「僕があいつを憎んでいたのは、誰だって知っている。この手で殺してやりたかった。でも、姉さんが寝ている家に火を点けるなんて、そんな馬鹿なことをするはずがない」
 青年の真摯な訴えを聞くうちに、これは冤罪に違いないとアクメリンは信じた。冤罪といえば、彼女自身もそうなのだが――自身の悪だくみが招いた結果だから、まったくの無罪ではない。
 青年も、先のふたりと同様に宙吊りにされた。しかし、鞭ではなかった。膝の高さほどに煉瓦が四か所に積み上げられて、その上に一辺が二歩長ばかりの正方形の鉄板が置かれた。四つの大きな火皿に石炭が灼熱されて、鉄板の下に差し入れられた。しばらくすると、鉄板の表面で煙が燻り始める。拷問吏が手桶に半分ほどの水をぶちまけると、あまり蒸気は上がらず、小さな水の玉がぱりぱりと音を立てながら転げ回った。鉄板は赤く灼けてはいないが、水が沸騰するよりはるかに高温になっている。
「火を点けたのは、おまえだな」
「そんなに、僕を罪に落としたいのか。どんなに責められたって、僕は無実だ」
 青年を吊っている鎖が緩められて――鉄板の上に裸足が着いた。
「熱いッ!」
 青年が跳ねた。が、すぐに足の裏が鉄板に落ちる。
「熱いッ……くそッ……僕は無実だ!」
 叫びながら、ぴょんぴょん跳びはねる。跳び上がるために踏ん張ることすらできず、片足ずつ上げては、熱さに耐えかねて足を踏み替える。凄まじい速さで踊っているような仕草だった。
「熱い、やめてくれ、うあああっ!」
 すぐに青年の足元から青白い煙が立ち昇り始める。悲鳴の合間に、じゅうっと肉の焼ける音が混じる。
 さらに鎖が緩められて。その重みで腕が垂れて身体の釣合を崩して、青年が転倒した。
「ぎゃああっ……助けて!」
 灼けた鉄板の上を転げ回って、あわや転落の寸前に鎖が引き上げられた。ぐきっと鈍い音がして、肩の一方がはずれたらしく、身体が一方に傾いた。
 振り子のように揺れる身体を役人が押さえて止めて。拷問吏が二人がかりで、また青年を鉄板の上に吊り下ろす。
「やめろ! 僕は無実だ!」
 叫びながら踊り狂う青年。
 はっと、役人が入口を振り返った。威儀を正して、きらびやかな法服に向かって頭を下げた。
「申し訳ありません。まだ片付かない罪人が残っておりまして」
 ゼメキンスは鷹揚に頷いて。
「左様か。世俗の罪を明らかにするのも大切じゃからの。されど……」
「はい、心得ております」
 青年への拷問は直ちに中断されて。二人の拷問吏に抱えられて、全裸のまま拷問小屋から連れ去られた。役人が青年の衣服を火皿に投げ入れる。
「ふむ……」
 青年には二度と服を着せる必要がない――罪を自白させて死刑に処すか、さもなければ拷問で責め殺すという役人の意思を、ゼメキンスは読み取っただろうが、それには何も言わない。地方都市の行政にまで枢機卿猊下が口を挟むのは筋違いである。しかし、もっと細々とした事柄には口も手も出す。
 下役人に青年を引き渡して戻ってきたふたりが鉄板を片付けに掛かると。
「そのままにしておきなさい。まさか、この地にカンカン踊りの舞台があったとは知らなんだ」
 せっかくの道具立てだから、アクメリンも舞台に立たせるという意味だ。
註記:この拷問は、日本では『猫踊り』と称されている。
また、拷問ではなく『ええじゃないか』や『風流(ふりゅう)』の系譜である『看看踊(かんかんのう)』がある。
これらと『フレンチ・カンカン』を混ぜこぜにして『カンカン踊り』とした。
 聞いていたアクメリンは即座に理解して――震え上がった。青年の苦悶を目の当たりにしている。肉の焦げる臭いまで嗅いでいる。これまでの拷問が遊びにしか思えないくらいに残酷で苦痛に満ちている。
 水平の吊りから下ろされて、あらためて腕を垂らしたまま後ろ手に縛られる。
「なぜ、私に……わらわを、責めるのじゃ。わらわは王女エクスターシャであると、認めておるではないか?」
 ゼメキンスの脚本に従っているのに責められる理由がわからなかった。
「おまえは基督者か?」
 あっと思った。ゼメキンスは、王女を異端者として、信仰を捨てて異教に奔った者として処罰するのだと、最初から言っていた。いきなり決めつけられはしたが、彼女自身はそれを自白していない。
 どう答えれば拷問を免れるだろうか。それを考える。信仰を捨てていないと答えれば、灼けた鉄板の上に立たされる。基督者であることを棄てたと答えれば――デチカンで焚刑に処せられるにしても、とにかく今日は焼かれずに済む。
「わらわは、神の教えを裏切った。嫁ぐ異郷の地の神を受け容れた」
 せいぜい王女らしい言葉遣いで、ゼメキンスが望む通りの『自白』をしたつもりだったが。彼の求める答は、遥かに大きかった。
「異教徒に嫁ぐのは、父親の差し金じゃな。つまりは、父親も異端者。国王が異端者なら、国そのものが教会に背いていると考えて間違いあるまい」
 十字軍。アクメリンの脳裡を、その言葉が掠めた。
 十字軍は、なにも東方の異教徒に向けて発せられるとは限らない。聖地の奪回が目的とは限らない。西方社会全体に布令を出さなくても十字軍は起こせる。具体的には――リャンクシー王国とタンコシタン公国に勅許を与えれば、両国は共同してフィションク準王国を滅ぼすだろう。そこに、教会あるいは西方社会全体にとって、どのような利益があるのかまでは、政治とは無縁の男爵隷嬢などには見当もつかないのだが。
 フィションクが滅びれば、リョナルデ家も共に滅びる。一族郎党、殺されなくても庶民どころか奴隷にまで堕とされかねない。淫奔な女を後妻に迎える王家などに、アクメリンはたいして忠誠心を持ち合わせてはいないけれど――実家が没落するとなると。
「違う……!」
 咄嗟に否定はしたものの、後の言葉が続かない。
「違うとな。何が違うというのじゃ?」
 エクスターシャ個人とメスマン首長国とのつながりを……そんな虚構は、砂で造った城壁よりも脆い。それでも……
「父は、メスマンに傭兵を頼んだだけじゃ。メスマンは裏切りを恐れて人質を求めた。父王の体面もあって、輿入れの形を取ったが、基督の教えは棄てたりせぬ。わらわは……メスマンに求められて、異郷の神に帰依はしたが……」
「では、神を謀ろうとしたのか。異教徒に成り下がるより、いっそう邪悪な異端ではないか」
「…………」
 神の教えに関して、田舎貴族の小娘が枢機卿に太刀打ちできるはずもない。
 アアクメリンが言葉に詰まると、ゼメキンスは拷問を始めるための台詞を口にした。
「真実を自白するには、厳しい尋問が必要らしいの」
 ぢゃりりりと鎖が鳴って、アクメリンの腕が斜め後ろへじ引き上げられていく。アクメリンは自然と後退さるのだが、鉄板の手前に立つガイアスが尻を押し返す。
 その場でアクメリンの腕が水平よりも高くねじ上げられ、上体が前へ倒れていく。やがて、上体を起こしても倒しても鎖を引っ張ってしまう均衡点に達して。アクメリンはつま先立ちになり、ついには足が床から浮いた。
「きひいっ……肩が抜ける!」
 アクメリンの訴えを無視して、鎖は引かれ続ける。
 アクメリンの足が鉄板より高く浮いてから、ガイアスがゆっくりと手を放す。
 それでも、アクメリンの身体は振り子のように大きく揺れて、肩にいっそうの力が掛かる。
「きゃああっ……」
 悲鳴は、苦痛のせいだけではない。目に見えている何もかもが大きく揺れるのは――ぶらんこ遊びとは似ていても、大きな恐怖だった。
 ホナーとリカードが、長い棒でアクメリンの裸身を押し返して、揺れを止めた。その不快な痛みを気にするどころではない。
 ちりちりと焼けるような熱気に、アクメリンは包まれた。
 ホナーが手桶の水を鉄板に撒いた。
 ジュワアアッ……ヒューゴのときと違って、凄まじい水蒸気が立ち昇った。
 ぎゅっと心臓を捻じ千切られるような恐怖。実はずっと鉄板の温度が下がっているからこその現象なのだが、錬金術(現代の化学と物理) の知識など持たないアクメリンには、それが分かるはずもない。
註記:物理学的基礎体力の無い読者は『ライデンフロスト』で検索してください。筆者は読者に、嗜虐癖、被虐妄想(ヒロインへの感情移入)、倒錯性愛指向の共有を期待していますが、科学的素養の共有までは求めていません。上から目線。
 もっとも、肉の表面がすぐに焼け焦げるか、しっとりした肉感を保ちながら中まで火が通るかの違いしかないのだが。
「よろしい――下ろせ」
 ちゃり、ちゃり、ちゃり……徐々にアクメリンの足が鉄板に近づいていって。
「熱いッ……」
 つま先が触れるや否や、アクメリンは足を跳ね曲げた。鎖が止まる。
「しゃんと立て。それとも、脛肉を焼かれたいか」
 ゼメキンスの言う通りだった。足を曲げたまま吊り下ろされれば、灼けた鉄板の上に座り込む形になってしまう。皮膚の分厚い足の裏を焼かれるほうが、苦痛は幾らかでも小さいだろう。
 アクメリンは、断崖絶壁から身を投げるほどの決心で、脚を伸ばした。熱いというより、焼床鋏(やっとこ)で肉をつねられたような激痛。
「痛いッ!」
 先に痛みを感じたほうの足を跳ね上げた。途端に、鉄板を踏んでいるほうの足にいっそうの熱痛が奔って、踏み替える。すると、勢いよく下ろしたせいで、足の裏を身の重み以上に押しつけてしまう。
 じゅっ……足の裏に、肉の焼ける音が伝わって、アクメリンは恐慌に陥った。
「いたいッ……あつッ……ひいいッ!」
 アクメリンは悲鳴を上げながら、狂ったように足を踏み替える。あまりの激しさに乳房が揺れ、亜麻色の長い髪が宙に踊る。
 肩に負担を掛けるのを覚悟して、後ろへねじられた腕を支えにして腰を曲げれば、両足が宙に浮くのだが、それを思いつく裕りもない。もっとも、そうしたところで、さらに鎖を緩められるだけなのだが。
「いやあッ……あつい、いたい……ゆるして……」
 国王が神に背き、国を挙げて異教に帰依した。そう証言すれば、赦してもらえるだろうか。そんな考えが頭を掠めて、あわてて打ち消す。我が身が焼き滅ぼされるのは――王女の身分を簒奪して、異郷の国王の妾に成り下がろうとした、あまりに厳し過ぎはするけども、その罰と諦めもつく。けれど、家族には何の罪も無い。
「あああっ……あつい……いやあああっっ!」
 デチカンで処刑されるのだから、この場で殺されるはずがない。もしも足が焼けてしまえば、荒野を歩かされることも見世物として市街を引き回されることもなくなる。そういった小賢しい打算は脳裡に浮かばず。足の裏の熱痛から逃れるだけのために、アクメリンは跳ね踊り続けた。息が切れて悲鳴も途絶え、心臓は胸全体に轟くほどに早鐘を打ち……全身から飛び散る汗が鉄板に落ちて蒸発する音が、踊りの激しさに不釣合なささやかな伴奏となって。
 五分、あるいは十分も経っただろうか。ふっと身体が軽くなったのを、アクメリンは感じた。苦しさが、すうっと消えた。足の裏には熱痛が突き刺さっているけれど、駆け足よりも早く足を踏み替えていれば、いつまでも持ち堪えられそうな気になってきた。
 アクメリンは悲鳴を叫ぼうともせずに踊り続ける。身体を動かせば動かすほど軽くなってゆき、楽になってゆく。いや、心地好くなる。そして、頭は――雲は散り霧も消えて、どこまでも透き通っていって、故郷の家族も自身の運命も、次はどんな拷問に掛けられるのだろうかという恐怖さえも消え失せて。アクメリンは無心に踊り続ける。その顔には、苦悶ではなく見誤りようもない恍惚が浮かんでいた。
註記:(今回はしつこいな)ニュートンが発見する以前から林檎は地面に向かって落下していたと同様に、中世においてもランナーズ・ハイは存在した。それは、おそらく神の恩寵もしくは悪魔憑きと理解されたであろうが。
「ふうむ……」
 ゼメキンスが難しい顔で首を横に振った。
「こやつ、もしや本物の魔女かもしれぬ。じゃとすれば、二十年ぶりじゃわい」
 これまでにゼメキンスが主導して断罪してきた魔女の数だけでも十指に余る。そのことごとくが、ただ一人を除いて無実であったという、重大な告白ではあった。
「とは――以前にうかがった、シセゾン家のマイでしたか。彼女以来の?」
 聖ヨドウサ修道院でゼメキンスの片腕を務めていたことのあるガイアスが訳知り顔で水を向けた。
「うむ。ホナーとリカルドには話しておらなんだな。マイという娘は子爵家の次女――よほどの証拠がなければ魔女審問に掛けることなど出来ぬのじゃが」
 アクメリンの踊り狂う様を注意深く観察しながら、ゼメキンスは手短かに話す。
 マイは、子供を産める身体になって半年も経たぬうちに女になったという。それからは、弟ほどの年齢から父親よりも歳上まで、貴族だけでなく使用人とも、娼婦もかくやといわんばかりの男漁りに耽ったという。父親の意見も折檻も、聞く耳も沁みる身も持たぬ。ついには(当然ながら)女子修道院へ送られたのだが。
 マイは修道院で、我が身を鞭打つ修行にのめり込んだ。我が手では生ぬるいし鞭を避けようとするからと、先輩に頼んで縄で縛られ鞭打ってもらい――いつしか、男女の交わりにおける男性の役割までも求めるようになっていった。明らかに修行からの逸脱であり、神の教えに背く行ないであった。修道院は彼女に対して魔女の疑いを持ち、審問の技術に定評のある聖ヨドウサ修道院に処置を委ねた。
「きゃああっ……!」
 疲れを知らぬが如くに踊り狂っていたアクメリンだが、体力の消耗は極限に達していた。足をもつらせて、灼けた鉄板の上に倒れ込む――寸前を、鎖に引き留められた。
 膝を突く寸前を、ぢゃららららっと鎖に引き上げられて。修道僧が手加減したのか、アクメリンの身体がヒューゴより柔らかかったからか、肩を脱臼することもなかった。
「あああああ……」
 頭をのけぞらせて、恍惚と呻くアクメリン。全身が汗に絖っている。
 手が滑車に届くほどに吊り上げて、ガイアスが足の裏の火傷を調べる。
「生焼けです。食べると腹に虫が湧くでしょう」
 ホナーとリカードが苦笑する。
「歩かせるのは難しいかな?」
 ガイアスも無駄口はやめてゼメキンスに答える。
「数日は。以後も十日ばかりは、裸足はよろしくないかと」
 ゼメキンスは肩をすくめただけだった。
 足の裏の火傷にも、万能薬たる錬金術の秘薬と薬草を混ぜた泥が塗られて、火酒を染ませた布が巻かれた。細菌の存在を知らず消毒の概念が無くとも、経験則による手当ては、それほど的を外していない。錬金術の秘薬の正体にもよるが。
 アクメリンは、三人の男たちが押し込まれていた檻に放り込まれた。中腰で三歩は歩ける広さだから、マライボに比べればずいぶんと待遇は改善されている。
「針による探査も、まるきり効かなんだ」
 途切れていた回想を、ゼメキンスが唐突に再開した。是非とも後輩に語り継いでおきたいという熱意の表われだろうか。
「念のために目隠しをして、手が肌に触れぬよう気をつけて刺したのじゃが、どこを刺しても痛みを訴える」
「……?」
 それが普通なのではと、ホナーもリカードも拍子抜けした顔。
「ところが、その娘はとんでもないことを言いおった。もっと全身をくまなく深く刺して、魔女の証がどこにもないと、潔白を証してください――とな」
 針による探査が終わったとき、マイの肌のどこに一本の指を当てても、針傷に触れぬところは無くなっていた。彼女はほじくらずとも見分けられる悪魔の淫茎を持っていたが、そこに針を突き刺されると、ひときわ凄絶な悲鳴を上げた。
「ところが、切なそうな余韻を嫋々と引きずりよる。このアクメ……こほん、エクスターシャと同じようにな」
 ゼメキンスは図らずも、捕らえた娘がエクスターシャの身代わりだと承知していることを暴露しかけたが、それは三人の修道僧もとっくに承知しているだろう。きっちり言い直したのは、体裁というやつである。話を戻す。
 マイは、さまざまな審問に掛けられたが、そのすべてに耐え抜いた。のではなく、悦んだといったほうが当たっているだろう。
 鞭打たれれば泣き叫びながら、みずから脚を開いて股間を曝し胸を突き出して鞭を誘った。木馬に乗せれば、わざと暴れて股間を傷つけ、血液に染まった粘い蜜をこぼした。乳首と悪魔の陰淫を焼鏝で潰されたときは、聞き誤りようのない喜悦の声と共に失神した。女穴も尻穴も『苦悶の梨』に引き裂かれてさえ、凄絶な咆哮には艶があった。
「父御(修道院長)も、本物の魔女と対峙したのは、それが初めてじゃった」
 偽の王女への拷問など児戯に等しい過酷な責めが十日の余も続けられて、マイは命を落とした。死してなおマイは魔女の姿を隠し通して、その死顔はさながら聖母マリアのようであったと――ゼメキンスは述懐した。
「そのような苛烈な拷問に耐えたことこそ、魔女である動かぬ証拠ではあったがな」
 水に浮かんで生き延びれば魔女、沈んで溺れ死ねば魔女ではないという理屈と通底した、どう転んでも被疑者は助からない論理だった。
「この娘がマイに劣らぬほどの魔女であるか、すぐに露見する詐欺を目論んだ小悪魔に過ぎぬかは――これから、じっくりと見定めてくれよう」
 気を失っている檻の中のアクメリンを見詰めながら、ゼメキンスが呟く。次の拷問をどんな苛虐にするか、想を改めているのだろう。
「まずは夕餉じゃ。こやつにも、黴の生えた麺包と肉片がこびりついた骨くらいは与えておけ。親切に食べさせてやるまでもないぞ」
 アクメリンの世話係みたいな形になっているガイアスが、おどけた仕種を交えて胸に十字を切った。
 ――檻の中で失神から覚めたアクメリンは、床に転がされている麺包と骨、そして水を入れた椀に気づいた。渇きを癒そうと椀を手に取って半分ほども飲み、人心地の欠片なりとも取り戻して、ふっと考えた。空腹を感じるどころではないし、そうだとしても、こんな塵芥も同然の代物など口にしたくもない。けれど、手を付けなかったら――それを口実に、飢え死に寸前まで食べ物を与えてもらえなくなるのではなかろうか。そんな卑屈な考えをするまでに、アクメリンの心は挫かれていた。
 アクメリンは乾き切った麺包を水にふやかして食べ、骨もわずかにこびりついている肉片を歯でこそぎ取った。惨めさに涙するくらいに、残飯は美味だった。悔し涙をこぼすくらいには、心を喪っていなかった。
 そうして、さらに時は過ぎて。ついに四人の拷問者が戻って来た。リカードの持つ角灯に、四人の姿が悪鬼羅刹めいて浮かび上がる。その顔が赤く見えるのは、灯りのせいだけでもないだろう。彼らは救世主の肉だけでなく、その血もしこたま聞こし召したに違いない。
 酔っ払って手加減を間違えるのではないだろうかと――アクメリンは取り越し苦労をする。生かしてデチカンへ連行して、裁判で公式に王女を弾劾する手筈が――狂ったところで、アクメリンにとっては苦しむ時間が短くなるだけだというのに。
 しかしゼメキンスには、すくなくとも今夜のところは、拷問を再開する意図は無いらしかった。
「魔女の嫌疑は晴れておらぬし、施した封印も効き目が薄いようじゃ。もしも、おまえが清めの儀式をみずから進んで受け容れるなら、今宵は安らかに憩わせてやろう」
 どうじゃなと問われて。
 清めると称してこれまでに為された仕打ちを思い返せば、何を求められているかは、もはや乙女とはアルイェットからデチカンよりも隔たっているアクメリンには、明白だった。問題は、どのような『安らぎ』を与えられるかだった。楽をさせてやると言って、十字架を逆さに馬で引きずったり、絡繰が全身を凌辱する馬車に乗せたり――今にして思えば、馬車はたしかに(惨めだけど凄絶な)快感だったけれど。
 しかし何をされるにしても、ゼメキンスに逆らえば、いっそう酷い目に遭わされるだけだ。
「どうか、わらわを清めてたもれ」
 王女として振る舞う必要を思い出すくらいには、気力も甦っていた。
 アクメリンは檻から引き出されて――縛られもしなかったし、枷で拘束もされなかった。かつてない扱いに、手持ち無沙汰を持て余して仕方なく両手で前を隠して立ちすくんでいると。目の前の床に手桶と金属の筒が置かれた。筒は浣腸器だった。この時代には(拷問や羞恥責めの器具ではなく)ありふれた医療器具だから、マライボで見たそれと大同小異であっても、何の不思議もない。
 マライボのときと同様に、四人が手桶に放[尺水]したが、ゼメキンスがわざとらしく首を傾げる。
「これでは量が足りぬな。増やしてくれぬか、王女殿下?」
 ちっとも遠回しな言葉ではなかった。そして、その行為に対する羞恥心は相当に薄れていた。アクメリンがわずかにためらったのは、聖職者のそれに被嫌疑者である自分のそれを混ぜても良いのかという畏れだった。
 とはいえ。理性では「まさか」と否定していても、女の本能は男の性的嗜虐を察知している。従わないとどうなるかは、恐怖が覚えている。
 アクメリンは手桶をまたいでしゃがんだ。四人が手桶を、つまりアクメリンを取り囲んでいるので、無意識の媚が、アクメリンをゼメキンスに正対させた。枢機卿猊下に尻を向けるなんて失礼はできないという常識的な意識も働いた。貴いお方に向かって放●する非礼は常識の範疇外だった。
 アクメリンが立ち上がると、この拷問部屋にも備え付けられている水責め用の大桶から、ホナーが別の手桶で水を足した。さらにリカードが小さな壺の中身を垂らす。白く懸濁した何かの油――と理解するだけの素養は、アクメリンにはなかった。リカードは短い棒で手桶を掻き回してから、後ろへ下がった。
 四人が無言でアクメリンの挙措を見詰めている。
 アクメリンは浣腸器を手に取って、手桶の『水』を吸い上げた。把手をいっぱいに引いても半分も入らなかった。
 しかし。吸い込んだはいいが、そこで途方に暮れた。浣腸器の中ほどをつかんで手を後ろへ回してみたものの、嘴管を尻穴にあてがうのも手探り。押し込むのは難しい。もし成功したところで、手をいっぱいに伸ばしても把手に届かない。
 アクメリンは顔を上げて助けを求めるようにゼメキンスを見たが、嗜虐の笑みに跳ね返された。
 アクメリンは四つん這いになって再度試みたが、浣腸器を水平に保つのも難しい。
 どうすれば……ふっと思いついたのは薪だった。小屋に納めてあるときは寝かしているが、使う前には立てて斧で割る。貧乏貴族の娘だから、見て知っている。エクスターシャには想像もつかないことだろう。こんな境遇に落ちても、まだ王女と張り合っている。
 アクメリンは把手を床に着けて、浣腸器を垂直に立てた。その上に腰を下ろすと、嘴管は自然と尻穴に当たった。さらに、じわっと腰を沈めると――把手が押されて、液体が漏れ出る。慌てて、急に腰を落とした。
 ずぶうっと、嘴管が尻穴を貫く。
「痛いっ……」
 小さな悲鳴は、自身への甘えだった。どんなにささやかな呟きであっても、鞭や木馬と同じ言葉を使うのは大仰に過ぎると自覚していた。
 嘴管は深々と尻穴を抉って、生ぬるい汚水を腹の奥へ注入した。押子が筒の奥に突き当たって止まった。その瞬間から、猛烈な便意に襲われた。しかし。
「まだまだ残っておるぞ。入れてしまわんか」
 アクメリンは大急ぎで空の浣腸器を満たして、二本目を注入する。勢い余って、尻穴のまわりから汚水が飛び散ったが、そこまではゼメキンスも咎めない。
 すでに便意は限界を超えていた。
「お許しくださいっっ……」
 まだ突き刺さったまなの浣腸器を噴き飛ばして。
 ぶじゃあああっ……ぶりりり……
 水も固形物も一挙に迸らせた。
「あああ……」
 床にうずくまって、両手で顔をおおった。かえって羞ずかしさが募る。手も足も拘束されて、他人の手で浣腸されて、目をつむるしか羞恥から逃れられないほうが、よほどましだと、アクメリンは知った。
 そして。手も足も自由なのに、他人の手を払いのけられない屈辱も。アクメリンはさらに二回、これは清水を注入されては噴出を繰り返させられた。
 どこの拷問部屋もそうなっているのだろう。床にこぼされた水(と、汚物)は、わずかな傾斜に沿って奥へ集められ、小さな開口部から外へ流れ出た。
 排泄に伴う軽い虚脱に陥っているアクメリンは、分厚い木の板で作られた拷問台の前へ引っ張られた。そこにはホナーが、自分の腕を枕にして仰臥していた。股間も寝ている。
「清めてほしいと、みずから願い出たのであろう。どうすれば良いか、分かっておるはずじゃ」
 分かっていなかった。けれど、その言葉で分かってしまった。アクメリンはホナーの横に跪いて、右手を股間へと伸ばした。
 その手を、傍らに立っていたゼメキンスが細い木の笞で叩いた。
「横着をするな。口を使え」
 アクメリンは唇を噛んだ。身体を様々な形にねじ曲げられて、三つの穴に男根を突っ込まれるのは、受け身である。けれど、みずから挿れにいくなんて……久しぶりに、かあっと羞恥が燃え上がった。
 しかし。拒めば、酔いの勢いにまかせた凄まじい拷問が始まるに決まっている。アクメリンは顔をホナーの腰の上に伏せた。むわあっと男の体臭が鼻を衝いて、息を詰めた。
 初めてじっくりと眺める男性の器官。もちろんアクメリンは、手鏡に自身の股間を映して観察するようなはしたない真似はしたことがない。彼女が目にしたことのある女性の器官は、マライボで拷問されていたジョイエとニレナの二人だけ。ジョイエはともかくニレナのそこは、複雑怪奇な形状をしていた。肥大した割れ目の縁から皺の寄った二枚の肉片がはみ出ていて、その上端の合わせ目からは、悪魔の淫茎だという小さな突起が覗いていて……
 それに比べると、なんと単純な形だろうか。ただ一本の棒。先端は蕾のようにすぼまっているが、太く長く勃起して、中から傘の開いていない茸みたいな赤黒い本体が現われると、醜悪で狂暴に見える――のは、それが女を辱しめる凶器だと知っているからだろう。
 さらにしばらくためらってから、アクメリンは男の股間に顔を埋めた。手を使うなと言われたのだから、犬の真似をするしかなかった。
 とうとう咥えてしまった。けれど、そこからどうすれば、このでろんとした腸詰肉より柔らかい棒を怒張させられるかが分からない。マライボの拷問小屋でされたときのことを思い出して、頭を上下に揺すってみた。口の中で肉棒がぐにょぐにょ蠢くが、それ以上の変化は起きない。ホナーが必死に聖句を暗誦しているなど、アクメリンには分からないし、知ったところで、勃起現象が起きない事実との関連は分からないだろう。膣穴への(過激な)刺激で逝くことは覚えても、男の放水はさんざん見せつけられていても、勃起する過程を目撃したのは、せいぜい二三回なのだ。
 焦っていると、頭をつかまれた。
「そんなのでは、勃たない。舌を使え、唇もだ」
 唇で包皮を押し下げて、茸の傘の縁を舌で舐めろ。裏側にある縦筋もだ。歯に唇をかぶせて、先端から根元まで呑み込みながら甘噛みをしろ。唇をすぼめて、水を啜り込むように息を吸え。先端の割れ目を舌先でくすぐれ。
 娼婦でも使わないような技を、次々とホナーが命令する。
 アクメリンは言われるがままに、口全体で男根を愛撫した。その甲斐あって、腸詰肉がしなやかな木の棒に変じて、ついには火傷しそうに熱い鉄杭にまでなった。
 男の体臭がいっそう濃密になってくるが、なぜか不快感は消え失せて、股間に熱い滴りを感じる。
 ぴしやんと尻を叩かれて、次の所作を求められていると理解した。寝ている男と媾合うにはどうすれば良いかは、ついさっき、自身に浣腸を施した経験が役に立った。
 アクメリンは男に向かい合って、腰の上にしゃがんだ。怒張の根元を右手に持って、覗き込みながらその上に腰を落としていく。先端が淫裂を割るのが、見えた。怒張が股の奥でぬらっと滑る感触があって、穴に嵌まり込んだのが分かった。
「はああ……」
 男の腰に座りこんで、アクメリンは息を吐いた。羞ずかしいという感情より、うまく出来たという達成感が大きかった。
 ホナーが、また尻を叩いた。
「じっとしていては清められんぞ。入口から奥の院まで、くまなく抜き挿しするのだ」
 アクメリンは腰を浮かして怒張を抜去し、すぐに挿れ直して奥まで突き通した。それを何度もくり返すうちに、いちいち抜いてしまうとやりにくいと分かり、自然と腰遣いを覚えていった。
「次は、拙僧を勃たせてもらおう」
 リカードが頭髪をつかんで、アクメリンの上体を押し下げた。
 目の前に突き付けられた、これも萎びた男根をアクメリンは咥えて、ホナーに教わったばかりの仕種を繰り返す。その間、腰の動きは止まっているが、ホナーは何も言わないし尻を叩きもしない。
 じゅうぶんに勃起すると、リカードはアクメリンの背後から拷問台に上がり、両手で腰をつかんで尻穴に怒張をあてがった。
 色責め馬車でさんざんに経験したことだから、アクメリンは驚かない。前にホナーを挿れたままリカードに後ろを貫かれて、さすがに軽く呻いたが、苦悶の響きはない。むしろ、ふたつの穴を同時に貫かれることに充足を覚える。
 そして、ガイアスまでもがアクメリンの前に立った。
 ああ、そうかと――アクメリンは自然と理解した。言われる前に、みずから上体を倒してガイアスを咥えた。
 リカードに両手首をつかまれて後ろへ引き上げられると、アクメリンの上体は宙に泳いで、それだけみずからの意思では身体を動かしにくくなった。手綱に操られている馬を、アクメリンは連想した。
 リカードが大きな動作で腰を動かし始めた。アクメリンの身体が前後に揺すられて、口中のガイアスも跨っているホナーも、自然とアクメリンを責める。
 過激な調教で性感を開発されているアクメリンは、官能に火を点じられた。模造男根と違って生身の肉棒は、適度の弾力で穴をいっぱいに満たす。馬車と違って、肉棒の動きは一致しているのだが、それを物足りないとは感じなかった。排泄の穴だけではなく、言葉を発し命の源を摂り入れる穴までも犯されているという思いが、背徳と屈辱を燃えがらせて――悦辱へと変貌していく。
「もぼおおお……おお、おおお……」
 自然と漏れるくぐもった呻きは、はっきりと艶を帯びている。
 アクメリンの下になっているホナーが右手を伸ばして、焼印の先端で根元を焼かれ釘で傷つけられている淫核を摘まんだ。
「むぶううっ……!」
 怒張を咥えたまま、アクメリンが激痛に呻いた。しかしホナーは、いっそう強く摘まむと――爪を立てながら強く捻じった。
「ぎゃ……ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっ!」
 アクメリンは悲鳴をあげたのだが、ガイアスに頭をつかんで腰を押しつけられて、くぐもった叫びになった。
「あ゙あ゙あ゙あ゙……や゙え゙え゙え゙え゙え゙っっっ!」
 しかし、リカードはいっそう激しく尻穴に抽挿を繰り返す。ガイアスは肩に手を掛けてアクメリンの裸身を激しく揺すぶる。
 三つの穴をこねくられ抽挿されるうちに、淫核が純粋な快楽の器官としての働きを取り戻して、激痛をそのまま快感にすり替えていく。
「み゙い゙い゙い゙い゙い゙っ……いいいっっっ!!」
 苦痛と快感とが綯い交ぜになりながら、頂を抜けて、さらに雲の上へと押し上げられるアクメリン。こうしてアクメリンは、相反する感覚がひとつの官能に止揚される境地を教え込まれたのだった。
 びくんびくんびくんと、アクメリンの背中が痙攣して。やがて、全身から力が抜けた。三人の男たちはそれを見届けてから――三つの穴に白濁をぶちまけた。
 意識を失ったアクメリンは、拷問台から転がし落とされても、地獄か天国か定かでない暗黒の中を漂っている。跡始末もされないまま檻に放りこまれて、それで清めの儀式は終わったのだが。

 翌日には、昨夜に与えた快楽の代償だといわんばかりの、激痛一辺倒の加虐が待ち構えていた。
 これまでと違って、拷問は朝のうちから始まった。アクメリンは拷問部屋の壁に立てかけた分厚い板を背にして両手両足を広げて立たされた。喉、手首、肘、胸の下、腰、太腿、膝、足首――関節という関節を、大小の鎹に挟まれて板に縫いつけられた。まさに、ぴくりとも身体を動かせない。
「おまえが魔女であることには疑義が残っておるが、神の教えを捨てた異端者であることは、自身で認めておるな?」
 今さらの尋問に、アクメリンはどう答えるのが得策――もっとも苦痛が少ないかを考えてみたが。ゼメキンスの意向に逆らうべきではないという、当然の結論に行き着いただけだった。
「……そうじゃ。わらわは、異郷の神の教えに帰依したのじゃ。しかし、今では悔い改めておる」
「遅い!」
 ゼメキンスが一喝する。
「一度でも神を裏切った者は、二度三度と裏切るに決まっておる」
「…………」
「よって、デチカンでの裁判に俟つまでもなく、おまえは異教徒として断罪される。その判決文を、おまえの身体に刻んでおいてやろう」
 リカードが、手に持っていた長い鉄棒をアクメリンに向かって突きつけた。鉄棒の先には鉄板が取り付けられていて――鏡文字が浮かび上がっている。頭の中で正字に読み替えなくても、アクメリンにはすぐ読めた。乳首に吊るされていた文字“Heretic”だ。それが異端者という意味だとも、すでに知っている。
「あああ……」
 アクメリンは絶望を呻いたが、拒否の言葉は口にしなかった。素直に受け容れるか、拷問の果てに受け容れさせられるか――雁字搦めに拘束されているのだから、その二者択一すら、許されていない。
 まだ組まれたままになっているカンカン踊りの舞台下からリカードが火皿を取り出し、石炭を足して火を熾し始める。
「わらわは、もはや死罪は免れぬのじゃな……」
 エクスターシャとしての言葉遣いを強いられるうちに、絶望の嘆きさえ素に戻らなくなっている。
「祖国を道連れにしてな。なんと、豪勢な死出の旅路よ」
「陛下は無実じゃ。神を裏切ったのは、わらわひとりの考えじゃ!」
 ゼメキンスは狡そうに嗤う。
「それについては、デチカンで改めて審問する。今は、おまえの処置だけじゃ」
 国を挙げての背教をエクスターシャが証言するまで、拷問は繰り返されるのかと、アクメリンは絶望に絶望を重ねる。
「凸凹があっては、焼印の文字が崩れるな」
 ゼメキンスの言葉を受けて、リカードが二本の細い鎖を取り出した。一端には小さな鉄球がぶらさがり、反対側は鎖の輪がC形に開いている。その輪が、釘に貫通されてふさがっていないアクメリンの乳首に通された。
「ひいいい……」
 乳首が引き伸ばされ、乳房全体が年増女のように垂れた。
「まさか……?!」
 凸凹がどうのこうのという話から、この仕打ち。焼印がどこに捺されようとしているのか、分かりたくなくても悟ってしまう。
 ゼメキンスが火床から焼印を取り出した。鉄板に浮かび上がる文字は、煙も出ないほどに白熱している。
「しかし……おまえは異教徒らしからぬ形(なり)をしておるな」
 ゼメキンスは焼印を腋の下に近づけた。そこにも濃密に繁茂している亜麻色の毛が、ぱっと燃え上がった。
「熱いっ……」
 股間の毛を焼かれたときは炎が上へ逃げたが、腋の下で火を燃やせば二の腕まで焼かれる。さいわいに、すぐ燃え尽きたので火傷にまではならずに済んだのだが。
 ゼメキンスは、下腹部にも焼印を近づけた。焼かれて後に芽吹いていた草叢も、また焼け野原と化してしまう。こちらは、短い毛を焼こうとして、肌に触れるほど近づけたので、ぽつぽつと火脹れになってしまった。
「体毛を無くすなど、異教徒の嗜みは我らには理解しがたい」
 嘯きながら、ゼメキンスの眼は有るべき物が無い部分から離れない。そういう嗜癖もあるのだろうか。
「もう一度熱くしましょうか?」
 冷めすぎるのを懸念して、リカードが声を掛ける。
「いや、これくらいのほうが、傷の治りが早かろう」
 ゼメキンスは半歩下がって、焼印を持ち変えた。柄を立てて、刻印の鉄板を乳房の真上にかざす。
「あああ、あ……」
 アクメリンは顔を背けて瞼を固く閉じた。
 焼印が上乳に押しつけられて、じゅうっと肉を焦がす。
「ぎゃあああああっっっ……!」
 アクメリンの喉から迸った悲鳴は、純粋の苦痛を訴えていた。
 十字架の焼印と同様の手当てが施されてから、アクメリンは檻へ戻された。
「これで、この娘が異端者であることは、誰の目にも明らかとなった」
 ゼメキンスが部下に話しかける――態を装って、アクメリンの様子をちらちら窺っている。
「このような明白な印が見つかれば、直ちに魔女と判明するのじゃがな」
「デチカンで審問する手間が省けますね」
 ホナーが相槌を打つ。
「それは、ない。フィションクの背教などという大事件は、教皇聖下の御裁断に委ねねばならん」
「しかし、この娘が魔女であれば――フィションク国王は魔女に誑かされた、いわば被害者になるのではありませんか?」
 ガイアスが台本に従って、アクメリンに絶望的な希望を示唆する。
「ふむ。魔女に騙されていたと悔い改めれば、慈愛あふれる聖下のことゆえ、フィションク準王国そのものの罪は不問に付すかもしれぬな」
「とはいえ、この娘が自白したとしても、それだけでは魔女と決めつけられないのでは?」
「精神の錯乱ということも考えられるからの」
「では、明白な魔女の証拠があれば、よろしいのですね」
「左様。この烙印のごとく、誰の目にも見える証拠がな」
 焼印は、己れが異端者であるというアクメリンの自白に基づいて施されたものであり、証拠にはならない。しかし、そんな理屈に気づくだけの明晰さを、すでにアクメリンは失っている。
「たとえば、このような刻印でしょうか?」
 リカードが、火床から別の焼印を取り出した。短い鉄棒の先に、太い針金で五芒星が形作られている。
「うむ。上下を逆さにした逆五芒星は悪魔の象徴たる牡山羊を表わすから、またとない証拠じゃ」
「十字架で悪魔を封印し、昨夜は清めの儀式を執り行ないました。この娘の体内に悪魔が潜んでおるとすれば、もはや隠れてはおれなくなって、これまでは見つからなかった印も浮かび上がるのではありませんか」9
「かもしれぬな。午後からは、それを調べてみるのも悪くなかろう」
 昼食にはまだ早いのに、アクメリンを新たな拷問に掛けることもなく、四人は拷問部屋から立ち去った。
 アクメリンは床に転がって、真新しい火傷の刺すような痛みに、あお向けになってみたり、横になってみたり。そして、ふと気づく。檻の出入口に、わずかな隙間があった。まさかと思って押してみると――開いた。
 檻から出たところで、どうにもならない。拷問部屋から逃げても、獄舎の外までは逃げられない。いや、脱走できたとしても、裸ではどうにもならない。でも、何か身にまとうものがあれば。
 もしも、檻から出ているところを見つかったら、拷問と変わりない折檻を受けるだろうけれど――どうせ、拷問はされるのだし。
 アクメリンはためらいながらも、檻を出た。物色の目で周囲を見回して。火床に突っ込まれたままになっている焼印に目が止まった。まだ、石炭は赤い。
 ついさっきのゼメキンスの言葉が甦る。はっきりとした悪魔の刻印があれば。逆五芒星は悪魔の象徴。魔女に誑かされたのであれば、フィションクは罪を減じられる。
 連日の虐待に加えて、逆十字以上に明白な反逆者の烙印まで気編まれて刻まれて。アクメリンの心は打ち砕かれ、正常な判断力はとっくに失われている。唐突な会話、施錠を忘れた檻、火の不始末――見え透いた罠にも気づかない。それとも。罠だと分かっていても、やはりそうしただろうか。
 アクメリンは焼印に手を伸ばした。紛れもない、五芒星の焼印。アクメリンは柄を逆手に短く持つと、心の準備もあらばこそ、太腿の付根にそれを押しつけた。
 じゅううっ……と、白い煙が立ち昇る。
「ぐゔゔっ……」
 焼印の形を崩しては台無しになりかねないとの想いが手を縛って、数秒、アクメリンは灼熱痛に耐えた。五芒星を形作る針金が、肌に埋没するほどに食い込んだ。
 そっと引き剥がして、焼印を火床に戻す。大桶から手で水を掬って火傷を冷やしたのは、昔に見た記憶か、錬金術の秘薬の代用か。さいわいに、大筋としては正しい手当てになっている。
 アクメリンは檻の中へ戻って、出入口の鉄格子を閉じた。外側の留金を手探りで掛けて、開いたままで引っ掛かっていた錠前を正しく下ろした。
「ふうう……」
 アクメリンは大きな溜息をついた。安堵ではない。ゼメキンスがこの刻印を見つけて、どう判断するか。それが大きな不安として残っている。
 それでも。女の身でありながら、家族を守るためとはいえ、国を救うために我が身を犠牲にするのだという、それまでは知らなかった形の高揚と陶酔に包まれていた。圧倒的な大軍に向かって、祖国の栄誉を背負って突撃する騎士。絵物語の主人公になった気分だった。きらびやかな甲冑の代わりに傷だらけの裸身を曝してはいるけれど。
 ――やがて。じゅうぶんに陽が傾いてから。四人の絶対的な正義の使徒が、異端者にして魔女の嫌疑まで掛けられている邪悪な女を糾問に訪れる。
「ややっ……これは?!」
 檻から引き出されたアクメリンを見て、ガイアスが芝居がかって叫ぶ。
「枢機卿猊下の予測された通り、悪魔が正体を現わしましたぞ」
 ガイアスの指差す先を覗き込んで、ゼメキンスも台本を進める。
「これ、エクスターシャよ。このような刻印が露わになっては、もはや白を切れまいぞ。どうじゃな」
 ここが正念場――これは、まったくの独り相撲どころか、ゼメキンスの描いた台本に転がされているだけなのだが。アクメリンは、自身が思い描いている通りの魔女を演じた。
「わらわは、魔女ではないと否定した覚えなどない。そなたらが勝手に騒いでおっただけであろうが」
 もしかしたらアクメリンの記憶違いかもしれないが、それならそれで、魔女の虚言ということになる。しかし、記憶は正しかったようだ。それとも、エクスターシャを偽る娘が今また魔女と自白したことで、ゼメキンスは満足したのか。
「ならば、この焼印を身に纏うことに異議は無いな?」
 リカードが新たに持ち込んだ箱の中から三本目の焼印を取り出した。その文字は“Marga”――聖なる言葉で魔女を意味する。
「好きにするが良い」
 次々と増えていく刻印。それはそのまま、生きながら肉体を破壊されていくような恐ろしさに、アクメリンは、みずからの足で犠牲の祭壇へ歩む山羊を連想した。祭壇は栄光に輝いている。
「ならば、その覚悟を問うてやろう。そこに立て。ぴくりとも動くな。動くと文字が崩れて読めなくなるぞ」
 読めねば確たる証拠にならぬ――そう脅している。
 因果関係を倒置した詭弁を真に受けて、アクメリンは壁に背中を着けて直立する。その目の前で、リカードが火を熾こして焼印を加熱する。
 恐怖を長引かせるように、鈍く赤みを帯びた焼印をゼメキンスが腹に――腰のくびれのすぐ下の丸みを帯びた部分にゆっくりと近づける。
「十字架の封印と重ならぬように注意せねばな」
 宗教的なこじつけなのか、ただの見映えなのか。
 焼印は乳房よりも長く押しつけられていたが。
「ぐううううっ……」
 じゅうぶんに覚悟をしていたアクメリンは、全身を硬直させて呻くだけで試練を乗り越えた。
「異端者、魔女、そして逆十字の刻印。正面はずいぶんと賑やかになったが、背中が淋しいの。そうは思わぬか、エクスターシャよ?」
「……思わぬ。されど、そう思うのなら、好きにするが良い」
 アクメリンとしては、虚勢を張り続ける他に為す術を知らない。
 リカードが、さらに焼印を取り出す。文字は二つに分かれていて、“Mere”,“trix”――つなげれば娼婦あるいは淫乱女の意味になる。それを、わざわざアクメリンに説明してやるゼメキンス。
「わらわを……そこまで貶めるのか」
 アクメリンの声から虚勢が剥落していた。無理強いとはいえ、模造男根で終日責められて気を遣り、拷問に怯えてではあってもみずから進んで男に跨がったのだから、『淫乱』は全き冤罪とまでは言い切れない。そこまで弱気に、自虐に、アクメリンは追い込まれていた。海賊どもの娼婦に堕落しながらも、仄聞した限りでは、それなりに逞しく暮らしていたエクスターシャを、今では羨ましく思ってしまう。などと、忸怩たる想いに囚われている間にも。
 火床の中で二つの焼印が熱せられる。アクメリンは、壁に向き合って張りつく姿勢を取らされた。
「おまえたちも経験を積むがよかろう」
 焼印をホナーとリカードに持たせる。
「尻のように丸みのある部分に焼き付けるときは、まず内側の端を当てて、滑らぬように気をつけ、常に柄の向きに押しつけながら、印影の面を丸みに沿って転がすのじゃぞ」
 この二人とて、初めて焼印を捺すわけでもなかろう。あるいは、アクメリンの恐怖を募らせようとしての言葉かもしれない。
 ホナーとリカードがアクメリンの両側へ斜めに向かい合って立って。二本の焼印の柄を軽く交叉させて――文字を浮き彫りにした鉄板の縁を、尻の割れ目の内側すれすれに近づける。
 ちりちりと熱気を肌に感じて、アクメリンの尻の肉が、ぎゅうっと引き締まる。
「これ、エクスターシャよ。もそっと力を脱け。文字がゆがんでしまう」
 筋肉を緩めるには、多大な意志を要した。
 尻肉の笑窪が消えるとすぐさま、焼印が押しつけられた。
 じゅううっ……
「ぐゔゔっ……」
 二枚の鉄板が尻の丸みに沿って外側へ転がってゆき、縁の直線を焼き付けてから、後ろへ引かれた。
「ひいいい……」
 床にへたり込むアクメリン。槍に刺された傷の花畠の中で、枠に囲まれた“Meretrix”の赤黒い文字がひときわ鮮やかだった。
 前も後ろも火傷をしていては、身体を横たえれば文字が崩れる。アクメリンは両手を縛られて宙吊りにされた。太腿の悪魔の刻印にも触れぬようにと、木枷で開脚させられた。カンカン踊りのような、後ろ手をねじ上げる吊し方にしなかったのは、台本通りに動いた主演女優への褒美だったかもしれない。
 褒美は、もうひとつあった。夕餉である。せいぜい三日前に焼いたばかりの、まだ軟らかさがいくらかは残っている麺包と、昼の残り物らしい肉汁たっぷりの肉をふだんの三倍ほども与えられて、手を縛られているときは当然になっている(身体をまさぐられながらの)口移しではなく、ガイアスの手から食べさせてもらった。ガイアスは片方の手に皿を持っていたから、アクメリンは食事に専念できて、それを物足りなく思いはしなかったけれど、奇妙に落ち着かなかったのも事実だった。
 こうして、ズブアナでの二日目は終わった。
 そして三日目には――これまでに受けた仕打ちの全てを積み重ねても届かないほどの、苦痛と恥辱とをゼメキンスは用意していた。時間があったのに前日に行なわなかったのは、過度の負担でアクメリンの心臓が止まるのを怖れてのことだったと思われる。
 前日に使われた分厚い木の板が床に置かれて、アクメリンはその上に鎹で磔けられた。昨日とは違って、直角を超えて開脚させられ、腰の下に丸太をあてがわれて、股間を高く突き上げた姿勢にされた。
 まだ別の部位に焼印を捺されるのかと、怯えながらも諦めているアクメリン。開いた淫唇の上端に露出している淫核を摘ままれて、不意打ちの快感に、ぴくっと腰を震わせる。それ以上は身体を動かせない。
 ホナーが糸巻を手にして、アクメリンの脚の間にしゃがみ込んだ。
 弓なりに反った腰の向こうで何をされているのか、アクメリンからは見えないが。釘に実核を貫かれた傷が盛り上がって、そこで押し留められている包皮が強引に引き伸ばされ、実核のすぐ上を糸できつく縛られるのを、鋭敏な感覚で逐一感じ取った。傷が痛いのとくすぐったいのと、そして不本意な快感と。しかし、その三位一体の官能に身をまかせるには、恐怖と不安が大き過ぎた。
 ゼメキンスが磔板の横に膝を突いて、アクメリンの股間に手を伸ばす。剃刀を持っているのが、アクメリンからちらっと見えた。ゼメキンスが腕を小さく動かした――刹那、冷たい感触が股間の中心を奔って。一瞬後に、凄まじい激痛が爆発した。
「わ゙ぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっ!!」
 アクメリンは、声の限りに絶叫した。
 激痛は淫核に発したと、それは分かるのだが、何をされたかが分からなかった。つねられたなどという生易しい痛みではない。釘を刺されたのとは違って、それほど激痛が尾を引かない。
 ゼメキンスが身を起こした。入れ替わりに、今度はガイアス。小さな壺から軟膏を指で掬い取って、アクメリンの股間――激痛の根源に塗り込める。
 その指の動きで新たな痛みが引き起こされて、アクメリンは呻吟しながら、淫核に何かをされたことだけは確信した。
 手当てが終わると腰の下の丸太が取り除かれたが、全身を鎹で固定されているので腰は宙に浮いたままとなり、かえって関節に余計な力が掛かって――鈍い痛みが、ずっと続くことになった。
 木の板に磔けられたまま、アクメリンは夕暮まで放置された。ガイアスの手で食事を与えられてからは、全身を反らせて手足をひと括りにされた逆海老で宙吊りにされて、深夜になってから腕を後ろで水平まで吊り上げた形で立たされた。眠りかければ膝が折れて身体の重みが肩に掛かって、その痛みで目が覚める。アクメリンはほとんど眠れずに一夜を明かさなければならなかった。
 そして、さらに二日間は拷問も凌辱もなかった。後日の過酷な拷問に備えて休養させるのと、火傷が落ち着くのを待っているのだろう。半日ごとに拘束の姿勢を変えられたが、せいぜいがX字形に手足を水平に引っ張られて俯せで宙に浮いた姿にされたくらいで、身体に極端な負担は掛からなかった。アルイェットから拉致されて以来、もっとも穏やかな二日間ではなかったろうか。

 しかし、ズブアナでの一週間目。久しぶりにアクメリンは陽の下へ引き出された。全裸に、王族の身を明かす額冠と首飾と指輪だけを着けた姿で。拘束はされなかったが、材木や板を束ねたものを肩に担がされて、鞭で追われながら、街の中心にある広場まで歩かされた。
 どの街でも、広場は憩いの場であるよりも集会の場であり、処刑場でもある。
 広場の真ん中で、アクメリンは担いで来た材木をみずからの手で組み立てさせられた。材木の端に明けられている矩形の穴に、別の材木の突起を嵌め込んで楔を打ち込めば、人の力では変形させられない頑丈な構造になる。修道僧の指図で、アクメリンが木槌ひとつで組み上げたのは――みずからの処刑台だった。逆V字形の脚に腰の高さで支えられた、三つの穴を刳り貫いた二つ割の板。その穴に首と手首を拘束されて、足は脚に縛りつけられれば――二つの穴を後ろへ突き出し、残る穴も男の腰の高さになる。
 組立をしている間も数百人の群衆がアクメリンを取り巻いていたが、いよいよ準備が調うと、男ばかりが百人にちかくも行列を作った。青年から壮年ばかり。列の前のほうは身分ある者や裕福そうな者が多い。
 組み立てているときから予感はあったのだが、こうなってみると、これから始まる処刑は命を奪うものではなく、被処刑者を女として辱めるものだと――処女でさえも理解しただろう。
 これで、エクスターシャよりも多くの人数を経験することになる。アクメリンは屈辱を覚えると同時に、みじめな優越感に浸った。
 処刑台のまわりには移動可能な木の柵で囲いが作られ、前後に入口と出口とが設けられた。入口の内側にはホナーが賽銭箱を持って立ち、出口にはリカードの前に小卓が置かれて御守やら何やらが積み上げられた。マライボで見世物にされたときと似たような拵えだが、違うのは――柵の中に入るのを許されるのが、一度に二人だけという点だった。
「この女は王女の身でありながら、悪魔と契約を結び、異教に奔った罪深い魔女である。処刑はデチカンにて執り行なうが、その前に、この女をいささかなりとも、敬虔な信徒の皆によって浄めていただきたい」
 枢機卿猊下の御言葉に、柵の前に列を成している男どもも、柵を取り巻いている野次馬も、一応は真面目くさって聞き入っているが、目つきは教会の中でのそれとは違っている。列の前のほうに並んでいる男は、だぶだぶの袴がはっきりと山になっている。
「女に救いの、こほん、魔羅を差し伸べんと欲する信徒には、いささかの寄進をお願いしたい」
 くだけ(過ぎた)物言いに、戸惑ったような小さな笑いが広がる。勤労奉仕をする者にさらなる寄付を求めるなど、有り得ない。教会公認の強制売春だと、大っぴらに認めたも同然だ。
「寄進は銅貨五枚以上をお願いするが……」
 その値段の安さに、アクメリンは傷つけられた。銅貨五枚では、一日の糧すら購えない。娼婦の相場など知らないが――海賊どもの慰み物になっている女たちだって、金貨や宝石などを貢がれることだってあるというのに。
「銀貨三枚以上を寄進される方には、木簡の善行証を教皇庁の名において発行致す。金貨二枚以上なら、教皇聖下の代行人たる余の直筆を進呈しよう」
 後世に教会を堕落させる一因となった免罪符よりも、はるかに性質(たち)が悪い。ゼメキンスの私腹を肥やすだけの小規模にとどまっているから、まだ救いはあるが。
 街の男たちは、若い(しかも高貴な)娘に、自分の嬶にはもちろん娼婦相手に仕掛ければ袋叩きにされかねない変態的な行為も神様公認でしてのけられるのだし、誰も死なないのだから女子供でも安心して見物できるし、もちろん街の教会も余録に与れる。いいことずくめであった――アクメリンひとりを除いては。
 最初の二人は、騎士らしい身なりの者と裕福な商人風。どちらも金貨を(競い合うように)五枚も寄進した。二人とガイアスとが、短く言葉を交わして。騎士がアクメリンの後ろに、商人が前に立った。ホナーとリカードが持ち場を離れて、アクメリンのまわりを衝立で囲った。
「銀貨三枚以上を寄進された方には、希望があればこのように告解の場と同じような密室にして進ぜる。中で何が行なわれたかは、余人の与り知らぬこととなる。おのれを誇りたければ、衝立は不要じゃが」
 言葉の意味を正しく理解して、笑いが広がった。
 衆人環視ではなくなった『密室』の中で、二人の男は下半身を露出した。どちらも猛り勃っている。
 いきなり女穴を貫かれて、とっくに予期も覚悟もしていたから、アクメリンはわずかに顔をしかめただけだった。すんなりと挿入ったことに、アクメリンは疑問を持たなかった。すでに何度も犯されているのだから当たり前だとしか思わない。陵辱を拒絶ではなく受容する心持ちが穴を潤していたなどとは、考えも及ばない。とはいえ。
「ほほおお。濡れておった。なるほど、売春婦と焼印を捺されるだけのことはある」
 この商人は聖なる言葉を、すくなくとも単語を理解できる教養があるらしい。
「そのようだな」
 唇にあてがわれた怒張を、口を開けてすんなりと咥えるアクメリンを見下ろして、騎士も同意する。
「いくら王女様とはいえ、所詮は売春婦に金貨五枚は張り込み過ぎた。すこしは元を取らせてもらおうか」
 商人は怒張を抜き去って、もっと上にある穴に挿れ直した。すでに怒張が潤滑されていたから、アクメリンはやはり低く呻いただけ。
「尻といい口といい、厳しく咎められる行為を、まさか枢機卿猊下から督促されるとは」
「しかも、天国が約束されるのですからね」
 囲いの板が、外から軽く叩かれた。
「後がつかえています。早く浄めてやっていただきたい」
 ガイアスに促されて、二人は口を閉ざし腰を動かし始めた。
 ぱんぱんぱんぱん……
 ずじゅぶぶじゅぶ……
 二つの音がひとつになって、板囲いに小さく反響し始める。
 高貴な娘を犯しているという興奮か、遮蔽されているとはいえ数百人の面前で行為に及んでいるという背徳に煽られてか、二人はともに二十合ほどでアクメリンを浄め終えた。
 板囲いとはいっても、胸から上は見えている。二人が身繕いを終えるや、すぐに衝立は下げられて。二人はそれぞれに枢機卿猊下直筆の善行証書を拝受して柵の外へ出た。
 リカードが桶の水を手に掬って、浄められた部分を手早く清める。
 そして、次の二人がアクメリンの前後に立って――ひとりが衝立を要らないと言うと、もうひとりも見栄を張って、たいした持物でもないのにおのれを誇ろうとする。当人も自覚しているらしく、なかなか勃起しない。
「そのまま咥えさせなさい。この女は、万事心得ております」
 ガイアスにけしかけられて、その男は萎えた逸物をアクメリンの唇に押しつける。アクメリンはそれを咥えると、ずぞぞーっと音を立てて啜った。その刺激と、若い娘にそんな淫らな奉仕をされているという想いとで、たちまちに排泄器官は交接器官にと変貌する。
 後ろから(今度は女穴を)突かれる動きは首枷に遮られて前まで伝わらない。そもそも、首を自由に動かせない。アクメリンは唇と舌を懸命に動かして、男を射精に導こうと努めた。
 喜んで奉仕しているのでもなければ、行為を愉しんでいるのでもない。不慣れな算術に頭を巡らせた結果だった。列に並んでいる人数は百を超えている。二人一組としても五十おそらく六十組になる。一組に十分が掛かるとして、ひと休みもせずに十時間以上。一方、日没まで十時間ほどか。
 どんな集まりでも、日没になれば解散する。そのときに列が残っていたら――それを責められるのを怖れたのだった。拷問、正確には懲罰というべきだろうが、それを逃れるための淫乱な振る舞い。そんなふうに、アクメリンは自身でも信じている。
 二組目が終われば、すぐに三組目、四組目。そこで金貨は終わりになって銀貨が続く。衝立を望むのと露出願望を果たすのは半々だった。
 首枷から後ろは、一方に偏らないようにガイアスが適宜助言しているが、口は常に犯される。口中に放たれた物は何にしろ吐き出さないように調教されているから、銀貨の組が始まった頃には、喉にいがらっぽさがわだかまり、じきに吐き気も催してきたのだが。それを見越してだろう、朝から食事も水も与えられていないので空嘔吐きにしかならない。
 しかし吐き気は――女穴と尻穴を交互に犯されるうちに、不本意にも引き出される官能で緩和されて。じきに、ふたつの穴を同時に満たしてはもらえないのが、物足りくさえ感じるようになってくる。
 そんなふうに、凌辱の中に惨めな愉悦を見出だしていたのも、二十組目あたりまでだった。ふたつの穴は中が痺れたようになって、怒張の出挿りは分かるけれど、細かな引っ掛かりとかは感じられない。痛くもつらくもないけれど、ただそれだけ。
 そして口は――舌が攣って、思うように動かせない。
 男は荒腰を遣い、亀頭を上顎にこすりつけたり喉奥まで突いて、どうにか射精に達する。その間に、下半身のほうでは三人が入れ替わったりする。
 これでは日暮れまでに埒が明かないと、ゼメキンスも判断したのだろう。陽が城壁にも達しないうちに、浄化という名目の公開輪姦を打ち切った。
「希望する者には番号札を配るゆえ、明朝に参集願いたい」
 アクメリンは晒し台に拘束されたまま、広場に放置された。ただし、野次馬が勝手に浄めの儀式を行なえぬよう、腰に巻いた太い鎖が股間を縦に割った。
 すっかり陽が落ちてからは、昨日までよりも質が落ちたとはいえ、一応は食事も与えられ、足首を晒し台の脚に縛りつけている縄だけはほどいてもらえたので、不自然な姿勢でも幾らかは眠れ、あまり消耗することもなく翌朝を迎えたのだった。
 ――上体を直角に折り曲げて枷に固定されているアクメリンの横に、新たな晒し台が組み立てられた。台などという大袈裟な物ではない。逆L字形の柱が一本、それきりだった。頂部の横木に滑車が取り付けられ、太い縄が垂らされて先端に丸い輪が作られる。アクメリンは後ろ手に手首だけを縛られて、縄の下に立たされた。縄の輪に首を通される。
 まさか、この場で殺されるのだろうか――とは、怯えない。焚刑にしても、手足に釘を打ち込まれて放置される磔刑にしても、長いこと苦しみ悶えながら絶命する。縛り首なんて慈悲深い殺し方をしてもらえるのなら、ありがたいくらいだった。
 列の先頭に並んでいた二人の男が、柵の中に入って来て、アクメリンの前後に立った。銅貨五枚以上(実際には見栄を張って銀貨一枚を寄進している)の口だから衝立は無く、二人とも他人に見せて恥ずかしくないだけの逸物を勃てている。
 この街の下吏が二人、リカードの合図で縄を引いた。
「くっ……」
 喉を絞められ宙吊りになるアクメリン。ほとんど瞬時に、すうっと目の前が薄暗くなった。息は出来ないが、すぐには苦しくならない。魂が身体から遊離するような、奇妙な感覚が生じた。このまま死ぬのかな。そう思う間もあらばこそ。
 前に立っていた男が、アクメリンの脚を割って膝を抱え上げ、M字形に開脚した中に腰を割り込ませる。同時に、後ろの男も尻を抱えた。
 首の縄が緩んだ。アクメリンは二人の男に抱えられて、息が出来るようになった。
 腋の下に縄を通すか、いっそ台の上に立たせれば簡単なものを、このような演出は見世物を面白くするためか、アクメリンに恐怖を与えるためか、その両方だろう。
 二人の男は勃起を穴にあてがおうとするが、手放しでは狙いが定まらない。
「失礼致す」
 リカードが跪き、二人の怒張を手に持って穴にあてがった。
 アクメリンは、前後の穴に亀頭が押し挿ってくるのを感じた。どちらも穴と棒の角度が合っていないので、棒のほうがぐねぐね動くのも分かる。
「うん、うん……」
「くそ、この……」
 後ろの男がアクメリンを揺すぶって、強引に棒を穴の奥まで突っ込もうとする。前の男も、揺さぶりに合わせて腰を突き上げてくる。
 ぎちぎちみしみしと穴肉が軋みながら、アクメリンの身体が少しずつ沈んでいく。
 ずっぷりと嵌まったところで、また縄が引かれた。男たちが腰を激しく動かし始める。身体の重みの半分くらいは縄に吊り上げられて、アクメリンはまた目の前が薄暗くなっていき、息が詰まる。そして、魂が漂い出すような――快不快でいえば、むしろ快に寄っている。カンカン踊りをさせられたときの、頭が透き通っていくような感覚に似ている。違うのは、二つの穴を激しく刺激されて……官能が高まっていくのだが。
 じきに息苦しさをはっきりと覚えて。無意識のうちに、アクメリンは足をばたつかせる。それで身体が揺れて、腰に渦巻く官能も高まって――また、それが生じた。苦痛と快感の融合。
「…………!」
 アクメリンは頭を激しく振り立てて、口は息を吸おうとぱくぱく喘いで。それが続けば、窒息して死ぬのと絶頂を極めるのと、どちらが先かというところまで達したのだろうが。
「うおおおおっ……」
 前の男が吠えながら精を放って、アクメリンの膝を抱えていた腕をはなした。
 がくんと、アクメリンが宙吊りになったと同時に縄が緩められて、地面に向かって倒れ込む。
「うおっと……」
 後ろの男が、覆いかぶさるようにアクメリンと共に倒れる。
「ぐぶふっ……!」
 アクメリンは、さながら押し潰された蛙。
 倒れた男はすぐに起き上がったが、怒張の先は白濁にまみれている。倒れる直前か、倒れた衝撃かで、この男もアクメリンを浄めていたようだ。
 倒れたままのアクメリンを、ガイアスが手早く後始末をする。
「これは、ちと形を考えねばな」
 ゼメキンスがつぶやいた。手間が掛かり過ぎるし、くり返しているうちにはアクメリンを殺してしまいかねないと危ぶんだのだろう。
 しかし、浄めの儀式そのものは続けられた。前側の男が脚を抱え上げるのはそのままに、後側の男はアクメリンの腋の下に腕を入れて、羽交い絞めの要領で身体を持ち上げる。首に巻いた縄は、ほとんど使わなくて済む。というよりも、アクメリンを追い込むための道具と化した。
「これでも気を遣るとなれば、いよいよもって、こやつは真性の魔女に相違ない」
 これも、近くにいるガイアスにした聞き取れない呟きだった。
註記:言わずもがなですが。ガイアスが考える真性の魔女とは、「ジョ」を「ゾ」に置換した概念です。日本語ならではのお遊びです。註記までメタってどうするんですかね。
 二組目は、すんなりと終わった。アクメリンの首に巻かれた縄が締まることはなく、単純に身体を持ち上げての二本刺しというだけの――それでも、群衆には見応えのある見世物ではあったが。
 本来は、昨日にあぶれた者たちの処理だったが。銅貨五枚くらいならと、新たに列に加わった者も少なくはなく、結局はご百人を超える頭数というよりは本数となっている。
 その十本目が終わって。ゼメキンスがひとり勝手に頷いたのは――アクメリンが挿入と抽挿行為そのものからは、ほとんど快感を得ていないと見極めたからだった。
 それはしかし、当然ではあろう。アクメリンが処女を奪われてから三週間と経っていない。色責め馬車で朝から晩まで抽挿されたこともあるが、まったく陵辱されず苦痛だけを与えられて過ごした夜のほうが、圧倒的に多い。狎らされているのは媾合に対してではなく拷問に対してなのだ。
 拷問に狎らされて、そこに直截の快感とはいわないまでも苦痛以外の何かを感じるのであれば、それはゼメキンスが考えるところの本物であろう。彼は、それを確かめようとした。
 次の組が始まってすぐに。ガイアスの指示で後ろの男が、二の腕で腋の下を持ち上げたままアクメリンの頭を首が折れ曲がるまで押し下げた。同時に縄が引かれる。
「くうっ……?!」
 首を絞められて、しかし、さっきとは違って――目の前の男の顔がはっきり見えている。息だけが苦しい。いや、まったく出来ない。
 二人の男が再び腰を動かし始めた。
「くっ……くふっ……んっ……」
 その上下動でわずかに縄が緩んだ隙に、ごくわずかに呻き声が漏れる。しかし、息を吸おうとすると喉が潰れてしまう。たちまち、アクメリンの顔が赤く染まっていく。
 頭が、がんがん痛む。一方で、二つの穴は激しく突き上げられこねくられる。死に直面しながらも、腰のあたりに温かな疼きがわだかまっていく。そして――目の前が暗くなっていって。それが訪れた。
 すうっと、頭が軽くなった。透き通った感覚が延髄から背骨を駆け下りていって、腰の疼きに達した瞬間。
(……!!!)
 身体が砕け散るような尖烈な快感が生じた。
 膝を抱えられてM字形に開いていた脚がぴいんと突っ張って、脹脛も太腿も小刻みに痙攣する。垂直に立った上半身と合わせて、さながら大輪の三弁花(トリリアム)。
 アクメリンは恍惚の中へと溶け込んで――逝きかけたところで、首の縄が緩んだ。
「かはっ……」
 ひゅうひゅうと喉を鳴らして何度も息を吸った。その間に恍惚は霧消して、割れるような頭の痛みだけが残っていたが、それも次第に薄れていった。
 気がつけば、アクメリンは地面に投げ出されていた。全身の筋肉が痙攣したとき、穴のまわりの筋肉も例外ではなく、その律動と締め付けに二人の男は堪えられなかったのだ。///1st
 次の組の二人が、同じように羽交い絞めにしてアクメリンを立たせる。ガイアスが穴を清めて、首ではなく顎を吊るように縄を掛けた。縄が引かれると首が伸びるだけで、それはそれで身体の重みの過半を吊れば頸椎を痛める危険もあるが、羽交い絞めでアクメリンを支える補助にしか使われないから――アクメリンは不快な思いをしただけだった。そんな形で犯されても、恍惚は訪れなかった。ただ嵌入されて抽挿されるだけなら、すでに穴は馴らされ切っている。
 ――十組ばかりを、男を射精させるためだけの道具として、アクメリンは扱われた。
 そして、また縄を掛け直されえう。
 今度は首を吊られると、アクメリンは戦慄した。しかし、殺されないだろうとも分かっている。戦慄には、甘い香りが伴っていた。
 期待とまではいわないにしても予想通りに首を絞められて、アクメリンは再び三弁花(トリリアム)を咲かせた、前よりも少しだけ長く。前を犯していた男はアクメリンを浄められなかった。寸前で大量の水を浴びせられたせいだった。さすがにアクメリンは脱分゜まではしなかった――しようにも、穴はふさがれていたから。
 しかし、それも。何度も三弁花を咲かさせた後に。地面に投げ出されてから、やらかしてしまったのだった。
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 かなりシーケンスが変わったというか、即興というか。
 自分で自分に焼印を捺すなんて、まるきり予定外でした。
 まあ、焼鏝責め好きクンの本音は、フィションク準王国を告発したりすると大騒動になるので、エクスターシャ王女をスケープゴートにして、その過程であれこれ愉しめば良し。ということらしいです。
 どうにかこうにか、苦痛と快感をアウフヘーベンするところまで辿り着――けないのを、首に縄を掛けて引っ張って来ましたが。
 ゼメキンスの回想で二十年前の「本物の」魔女、マイ・セシゾン/真性マゾを登場させたのも、重い尽きですが。
 いいもんね。元々は、本命小説を書く片手間の小遣い稼ぎに始めたSM小説。本命なんざ、前世紀で馬群に呑まれちまって、酒は呑み続けて、今じゃSM小説がライフワークにして趣味にしてレーゾンデートルなんだから。好き勝手に書くさ。分かるやつだけ付いて来い来いだからね。格好よく言えば、読者に媚びない。なんて、文学青年の欠片は、粉々にしてカルシウム摂取じゃ意味不明

Neck Hanging_V


 現在まで約320枚。たぶん500枚には納まるでしょう。

テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

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濠門長恭

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