Progress Report Final:公女巡虐
終章は賞味期限付きで記事にしていますから、締め括りは後書でも掲載しておきましょう。
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後書き
いやはやナントモ永井豪。
TRPGのエピソード(ではないが、似たようなモン)で、マッピングしてたら方眼紙からはみ出して、やっと転位の罠に掛かったと気づいても after festival てエピソードがありましたが。そんな気分です。
いえ、罠ではなくCGです。恣意にして自意。
修道院パートは皿っと流す。むしろ救出劇を、浮浪児盗賊団の夜討ちとか派手にしてアカルイミニマムにする予定でしたが。それでは『生贄王女と簒奪侍女』の二の馬脚だと思い直したのが発端ですかしら。
PLOTの段階では、継母は修道院パートで登場せずフィクサーに徹する案もありましたのに。被虐名まで授かって、継母の奇妙な愛情 MamaMother strange love by Stanley Kublic まで吐露するとは。
しかもしか、『へのへのもへじ』のはずの父親まで土壇場で登場。おいしい役回り。まさに、デウス・エクス・ヒョウタン新造語。直訳すれば「瓢箪から神」。
最近は、前半で責めのあれこれを出し尽くして息切れするパターンが多かったのですが、久し振りの、だんだん良く鳴るホッケとシシャモ。いつもいつもFw190は飽きたので。
ええ、いつものように、終章に向けて全力疾走中に『後書き』ならぬ『途中書き』をしてるので、ハイテンション・プリーズなのです。教官、私はドジでのろまな亀です!
こほん。すこし下げてンション。
ともあれ、ブログで吹いた五百枚になりました(時制は未来)。
ケツのでかい安産型になりました。尻は大きい方がよろしい。シバキ甲斐があります。胸は小ぶりがよろしい。鞭ビシバシで腫れたビフォーアフターが一目燎原の火です。
どうも、テンションサーマルです。上昇気流に乗って降りてこない。
ので、MAC。Manual Wadai Change。
実は、この話。無実の罪とか罠とかではなく、ちゃんと(?)悪いことをしたヒロインが正義の名の下に拷問される話を書きたかったんですけどね。そういうのが濠門長恭クンの作品にはなかったので。つまり、盗賊パートがメイン。
の筈だったんだけどな。結局は義賊になっちゃうし。ヒロインは、全作品中ぶっ千切りのハードなドMになっちゃうし。
ドロンジョ征伐の話は、またいずれということで。
[後書きの後書き]
さてさて。今回の後書きは、いつもに輪を掛けて駄洒落地口のヒッパレーでした。まあ、これが作風にも反映して「淫惨な内容の割に明るく安心して読める」と、極一分からは好評です。爺が自慰惨でした。では、オーラス一本場の執筆を続けます。
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修道院パートは、プロット拡張というか、カッコ良くいうと作中人物に好き勝手にさせた、別の言い方だと、思いつくままアレコレぶち込んだわけです。修道院だけで3章、3万9千文字は120枚です。
書き殴ったおかげで、あちこちツジの奥さんが合わなかったりして、修正におおわらわ。
まあ、今日・明日の休日で、ダウンロード販売用のあれこれ準備までいくかしら。
それから、実質的には章の途中で中断した『宿題を忘れたらお尻たたき、水着を忘れたら裸で泳ぐと、HRの多数決で決めました。』の17章(おまたコンダラ)の続きを18章(ふたりコンダラ)としてちょこっと書いて。
今度こそ、三度目の電気掃除機で『昭和集団羞辱史/物売編(夜)』にかかりましょう。こやつは200枚程度の中編2本立てなので、年末までには前半が仕上がれば、 2023年もめでたく3千枚突破です。
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後書き
いやはやナントモ永井豪。
TRPGのエピソード(ではないが、似たようなモン)で、マッピングしてたら方眼紙からはみ出して、やっと転位の罠に掛かったと気づいても after festival てエピソードがありましたが。そんな気分です。
いえ、罠ではなくCGです。恣意にして自意。
修道院パートは皿っと流す。むしろ救出劇を、浮浪児盗賊団の夜討ちとか派手にしてアカルイミニマムにする予定でしたが。それでは『生贄王女と簒奪侍女』の二の馬脚だと思い直したのが発端ですかしら。
PLOTの段階では、継母は修道院パートで登場せずフィクサーに徹する案もありましたのに。被虐名まで授かって、継母の奇妙な愛情 MamaMother strange love by Stanley Kublic まで吐露するとは。
しかもしか、『へのへのもへじ』のはずの父親まで土壇場で登場。おいしい役回り。まさに、デウス・エクス・ヒョウタン新造語。直訳すれば「瓢箪から神」。
最近は、前半で責めのあれこれを出し尽くして息切れするパターンが多かったのですが、久し振りの、だんだん良く鳴るホッケとシシャモ。いつもいつもFw190は飽きたので。
ええ、いつものように、終章に向けて全力疾走中に『後書き』ならぬ『途中書き』をしてるので、ハイテンション・プリーズなのです。教官、私はドジでのろまな亀です!
こほん。すこし下げてンション。
ともあれ、ブログで吹いた五百枚になりました(時制は未来)。
ケツのでかい安産型になりました。尻は大きい方がよろしい。シバキ甲斐があります。胸は小ぶりがよろしい。鞭ビシバシで腫れたビフォーアフターが一目燎原の火です。
どうも、テンションサーマルです。上昇気流に乗って降りてこない。
ので、MAC。Manual Wadai Change。
実は、この話。無実の罪とか罠とかではなく、ちゃんと(?)悪いことをしたヒロインが正義の名の下に拷問される話を書きたかったんですけどね。そういうのが濠門長恭クンの作品にはなかったので。つまり、盗賊パートがメイン。
の筈だったんだけどな。結局は義賊になっちゃうし。ヒロインは、全作品中ぶっ千切りのハードなドMになっちゃうし。
ドロンジョ征伐の話は、またいずれということで。
[後書きの後書き]
さてさて。今回の後書きは、いつもに輪を掛けて駄洒落地口のヒッパレーでした。まあ、これが作風にも反映して「淫惨な内容の割に明るく安心して読める」と、極一分からは好評です。爺が自慰惨でした。では、オーラス一本場の執筆を続けます。
2023年11月
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修道院パートは、プロット拡張というか、カッコ良くいうと作中人物に好き勝手にさせた、別の言い方だと、思いつくままアレコレぶち込んだわけです。修道院だけで3章、3万9千文字は120枚です。
書き殴ったおかげで、あちこちツジの奥さんが合わなかったりして、修正におおわらわ。
まあ、今日・明日の休日で、ダウンロード販売用のあれこれ準備までいくかしら。
それから、実質的には章の途中で中断した『宿題を忘れたらお尻たたき、水着を忘れたら裸で泳ぐと、HRの多数決で決めました。』の17章(おまたコンダラ)の続きを18章(ふたりコンダラ)としてちょこっと書いて。
今度こそ、三度目の電気掃除機で『昭和集団羞辱史/物売編(夜)』にかかりましょう。こやつは200枚程度の中編2本立てなので、年末までには前半が仕上がれば、 2023年もめでたく3千枚突破です。
Progress Report 9:公女巡虐(賞味期限付)
夫魚
伊太利語には男性名詞と女性名詞がありました。ので、修道女の語尾をそれっぽく訂正します。娼婦のほうは花の名前なので、すべて女性名詞らしいですね。ああ、よかった。
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継母の嗜虐愛
でも、まだ続きがありました。
皆が一斉に肩衣を脱ぎました。へええ、です。というのは、誰も月の障りが訪れていないらしいのです。算数は苦手ですが、月のうち一割くらいは出血しますから、一人くらいは当日の筈です。
「今日の当直を言い渡します」
多分いちばん年嵩の牝馬(カヴァラ)という名の寮長が、声を張りました。
「猫(ガッタ)と烏(コルヴァ)は、反省しなさい。何を反省するのか分からなければ、辛子の懲罰を追加します」
修道女は聖職者ではないので、他人に祝福は与えられません。どんなに言葉の意味を捻じ曲げても、それは同じなのでしょう。
「マイアーレは引き続きフランカの訓練。ガリーナは新人のエレナを担当しなさい。残りの者は、自己研鑽に励むこと」
最初に名指しされた二人は、それぞれの寝床で“V”字形の姿勢になります。他の女性(最年少の私が先輩を『娘』と表現するのは失礼です)が、二人を鎖と枷で拘束しました。
傷だらけの女性は、寝台で俯せになりましたけれど、他の人たちは……カヴァラさんが比較的に若い人を二人、自分の寝台へ呼び付けました。隣り合った寝台を動かして、三つをひとつにしています。
後に残ったのは五人。特に相談するでもなく、二人と三人に分かれました。同じように寝台を寄せ合って。
なんてことでしょう。男と女がするみたいに、くんずほぐれつを始めました。
「わたくしたちも始めますわよ。さあ、手伝ってくださいな」
まるでどこかの令嬢みたいな口調で、ガリーナさんが私に話し掛けます。
言われるがままに寝台をくっ付けました。縄も鎖も枷も着けられていない身体は、なんと自由に動かせることでしょう。でも、衣服を身に着けていないみたいに不安です。いえ、実際に素裸なのですけど。
要領の分からない私がもたもたしているうちにも、あっちでもこっちでも、くんずほぐれつが激しくなっています。
カヴァラさんたちの三人組は横臥して三角形になっています。カヴァラさんの割れ目を舐めている女性は、カヴァラさんが割れ目を(舐めるどころか)頬張っている人に割れ目を啜られています。『踊る花の館』でも、こんな遣り方は誰もしなかったと思います。でも、これって……何人でも何十人でも出来ますね!
もうひとつの三人組は、もっととんでもないことをしています。開いた脚を交差させて股間を近づけ、三方に突き出した張形の中心を一人が握って、臼を挽くみたいに捏ね回しています。前戯も無しに。
二人の組は、これはお馴染みの形です。脚を交差させて股間を互いに擦り着けながら、固く抱き合い乳首を触れ合わせて接吻を交わしています。あれでは女の芽への刺激が足りません。のけぞって後ろへ手を突く形が最適です。事の始めの挨拶なのでしょう。
そしてマイアーレさんは、俯せになったフランカのお尻に顔をうずめています。鞭傷を舐めてあげているようです。
「驚いたでしょうね」
ガリーナさんが、私を背後から抱きしめながら、耳元で囁やきました。
「女と女で淫らな真似をするなんて。でも、これは姦淫ではないのよ。だって女は、挿入できるオチンポを持っていないんですもの」
それは、そうですけど。
「聖書ではソドムの行ないを厳しく禁じているけれど、女同士の戯れについては、一文字も書かれていません。つまり、禁じてはいませんことよ」
もう、聖書の話はたくさんです。
「ふふ……怖いの? すぐに気持ち良くなりますことよ。ほら……」
ガリーナさんの手が肩から前へ滑って、乳房を撫で下ろし、乳首にちょんと触れてから指が通り過ぎました。くすぐったくさえありません。滑り下りた手は、今度は下から上へ動きます。
それを何度か繰り返しながら、私を寝台へ腰掛けさせて。掌で乳房を押し上げるようにして、指の腹で乳首を転がします。
ああ、もう……じれったい。
ガリーナさんは私を、まさか処女とは思っていないでしょうが、ろくに性の歓びも知らない素人娘として扱っています。おまえは伯爵令嬢なんかじゃなくて娼婦だと言われるよりも、もっと自尊心が傷付きます。
いいわよ。ダリア姐さんの実力を見せてあげる。
私は手を伸ばして、右に座っているガリーナさんの核心をいきなり襲いました。
「あっ……?」
ぴくんとガリーナさんが腰を震わせました。ここぞとばかりに、指でくにゅくにゅくちゅくちゅ。身体をひねって左手で肩を抱き、唇も奪います。
「んむう……?!」
舌を絡められて、ガリーナさんは戸惑っています。その戸惑いを官能に変えてあげましょう。息が苦しくなるまで口中を貪って、口を合わせたまま、ガリーナさんの鼻に息を吹き込みます。もちろん右手の指は五本とも動かして、莢をしごき雌しべをつつき、とどめにきゅるんと剥き下げてあげました。
「ぷはあっ……」
私が身を引いても、ガリーナさんはとろんとした眼差しで余韻に浸っています。
「あなた……誰に、こんなことを教わりましたの?」
心底不思議そうに私の顔を見ます。
「ローザ、ジーグリ、クリサンテ、カメリア……みんな『踊る花の館』の売れっ妓だよ。あたいはダリアって舞台名で踊って、男に抱かれて、お客様の求めに応じて朋輩たちとも絡んでたのさ」
言葉遣いは、盗賊団の姐御にしました。ガリーナさんが妙に上品ぶった物言いをしていることへの反発です。
「そうでしたの。わたくしは、てっきり、あなたも貴族の出かと思っていました」
それも当たっていますけどね。でも……「も」ということは、この人「も」貴族令嬢? そして、それを隠す必要も無い?
『踊る花の館』とは、ずいぶん勝手が違います。それは、この修道院の真の姿を知ったときから分かっていたことです。金で縛られているとはいえ『お仕事』をちゃんと勤めて日中の雑務も少しだけしていれば後は自由な娼婦ではなく、実際に縄や鎖で縛られ鞭打たれ日中も自由を奪われている女囚それとも性奴隷なのです。
そんなことは、後で考えましょう。今は……
「それじゃ遠慮はいりませんわね。凡俗を相手の娼婦ごときに後れを取ったとあらば、わたくしの矜持が許しませんことよ」
ガリーナさんが私の腰を抱きかかえるようにして、右手を股間へ差し入れてきました。
「ひゃああっ……?!」
甘い稲妻が腰を貫きました。女の芽を虐められてそうなるのは慣れっこですが、すごく甘いのに太くなくて、無数の針が雌しべの奥まで突き刺さってくるような感じです。
「あっ……いやあっ!」
女の穴を穿たれて、中で指を曲げて、どこかしらをつつかれると、腰が砕けました。
「ああっ……駄目! 恐い……」
快感が立て続けに腰を砕けさせて、半分は嘘、半分は本心を私に叫ばせました。私は、もうガリーナさんを虐めるどころではなくなっています。
ガリーナさんが私を遥かに凌いでいるのは、考えてみれば当然です。私の娼婦経験は、たった三月です。しかも、女同士は座興。何年も(夜毎に?)経験を積んできた人に勝てるわけがないです。
でも……物足りないです。マセッティ様の刷毛責めより甘くて、ふわふわして、それだけに砕けやすい砂糖菓子。快感が凄まじいだけに、もっとしっかりと噛み締めたいです。
「つねって……雌しべに爪を立てて……うんと痛く虐めてください!」
快感ではなく苦痛を、素直におねだりするのは、これが初めてです。それだけ、かつてない高みが見えているのです。その頂上から翔び立ちたい。
「なんてことでしょう。見習の初日から仕上がっているなんて……」
驚きながらも、ガリーナさんは望みを叶えてくれました。腰を抱いていた手も股間へ滑らせて、芽が千切れるくらいにきつく爪を立てながらひねってくれました。しかも、乳首に噛みつきながら。
「ぎびい゙い゙い゙……死んじゃうよおお!」
目くるめく飛翔、目くるめく墜落。マセッティ様の拷問にも比すべき絶頂を、私は極めました。
ここまで乱れたのは、第一にはガリーナさんの指ですけれど。ひと月以上も御無沙汰だったことと、聖書の勉強で頭が混乱していたせいもありそうです。
「凄いわね、この娘」
自分のことを言われたと分かって、私は余韻から頭をもたげました。
声の主はカヴァラさんです。
「どこまで仕上がっているか、試してあげましょう」
修道女の間での力関係も分からないうちから寮長に逆らうのは得策ではありません。それに、もっと快感か苦痛を与えてもらえそうです。
なので、指定された寝台におとなしく“V”字形に拘束されました。
「ガッタ、コルヴァ。あなたたちは、自分が犯した罪を理解していますか?」
カヴァラさんは、最初に指名した二人に反省を求めます。
「ガッタ。あなたは罪を自覚していまか?」
「妾(わらわ)は、何も罪を犯しておらぬ。罰したければ好きにするが良い」
この一人称は高貴な女性、それも人妻が使います。三十歳前後に見受けられますから、かつては夫のある身だったのでしょう。では、何故こんなところに。死別でしょうか。まさか、夫の手で?
「そうですか。では、あなたは外面だけではなく身体の内面でも反省なさい」
「これしきのことで妾が泣くと思ったら、大間違いですわよ」
負け惜しみを聞き流して、カヴァラさんはコルヴァさんにも同じ質問を繰り返します。
「教えてください。悪いところがあれば直します。辛子だけはお赦しください……」
コルヴァさんはすすり泣き始めました。
「では、あなたの悪いところを教えてあげます。そのように懲罰や祝福を本気で拒むこと――それが、ここでは最大の罪なのですよ」
「でも、ほんとうに厭なのです。つらいのです。恐いのです」
コルヴァさんは私より五つ六つ年上ですが、ここへ入れられてから日も浅いのかもしれません。
「まったく……それで、よくも誓願を立てたものですね。ガッタのように、いっそう過酷な懲罰をそそのかせとまでは求めませんけれど。そんなでは、じきに心が死んでしまいますよ」
カヴァラさんは、コルヴァさんにも『外と内からの反省』を命じました。そして、私に振り向きました。
「エレナ。もちろん、あなたもですよ」
私を見下ろす眼差しは、ブルーノ様やマセッティ様、そして院長様や司祭様とそっくりです。付け加えるなら、お継母様とも。カヴァラさんの心は、今は女ではなく、男性に同化しているのです。
「ありがとうございます。うんと虐めて可愛がってください」
ここでの作法は知らないので、心のままに返事をしました。私にとって「虐める」と「可愛がる」は同義なので、それもきちんと伝えました。
カヴァラさんが、淫戯の相手に選んだ二人に命じて、反省だか懲罰だかの準備をさせました。蓋付きの壺、箆、羊皮紙、そして三本の張形。
最初はガッタさんです。壺から箆で掬い取られたのは、黄色く粘っこい辛子です。良く練られていて、粒は混じっていません。それだけ刺激が強いです。予想していた通り、それを割れ目に塗り込めていきます。ガッタさんは天井を見上げて無表情。
「強情ですね。これでもですか」
カヴァラさんの指が割れ目の上端あたりで微妙に動きました。
「ああああ……痛い、熱い。妾は無実の罪で罰されておるのじゃ」
甘ったるい悲鳴です。私の悲鳴も、他人の耳にはあのように聞こえるのでしょうか。
カヴァラさんは箆を襤褸布で三度拭い、三度辛子を掬いました。ガッタさんの股間には黄色い辛子が盛り上がっています。そこに羊皮紙が被せられました。辛子は放置すると辛味が揮発します。それを防ぐ――ひと晩ずっと反省させるための処置でしょう。
そして張形です。壺に浸けられて真っ黄色になったそれが、無雑作に股間へ突き刺さされました。
「きひいいいっ……」
純粋の悲鳴です。
「あああああ、ひどい……妾は悪くないのに……酷い仕打ちじゃ」
恨んでいるふうではありません。悲運を嘆いている――いえ、酔っています。
張形の末端に革紐を巻いて、それを太腿に巻き付けて絶対に抜けないようにしてから。カヴァラさんはコルヴァさんに取り掛かります。
「いやあっ……熱い、沁みる! 赦してください!」
最初から大騒ぎです。今度は指の微妙な動きも見えました。
「ぎひいいいっ……死ぬううう!」
女の芽に塗り込められると、寝台を軋ませてもがきます。悲鳴もガッタさんの十倍くらいの大きさです。
「うるさいですね」
フランカが噛まされていたのと同じ猿轡が、コルヴァさんに着けられました。寝台の側面にある枷で腰の動きも封じられて。最後に辛子まみれの張形が挿入されました。
コルヴァさんは、くぐもった呻き声をあげながら、ぼろぼろ涙をこぼしています。きっと、その涙は甘くないと思います。
そして、いよいよ私の番です。
「望むなら、あなたも声を封じてあげます。まだ見習なのですから、すこしは甘やかしてあげましょう」
本来なら熟考するところですが、「甘やかす」という言葉に反発しました。コルヴァさんみたいに見苦しい様を晒したくないです。ガッタさんみたいな負け惜しみも性に合いません。
「要りません。もしも私の悲鳴がお耳障りでしたら、寮長様の判断で封じてください」
もしもカヴァラさんに嗜虐心があるなら、きっと心地良い音楽になるだろうという自信があります。
「そうなの。後悔しなければ良いのですけれど」
最初のひと掬いが、割れ目の周辺に塗られました。冷たいけれど、たいした刺激ではありません。そしてふた掬い目は花弁の裏側へ。
「くううっ……」
傷口に塩を擦り込まれるよりは柔らかですが、じんわりと沁み込んでくる痛さがあります。塩は傷口から滲む体液で薄まり流れていきますが、辛子はそうもいかないでしょう。それとも、淫らな汁が洗い流すでしょうか。
つるんと莢を剥かれました。そして……
「きひいいいっ……いい!」
最後は歓喜の悲鳴です。女の芽が燃え上がっているようです。激痛で縮こまるのが分かります。なのに、最大に勃起したところを粗い刷毛で擦られるよりも強い快感が腰を貫きます。
「あらあら。蜜があふれてきますね。ガッタよりも激しい」
念のためにと、四掬い目が割れ目を封じるように盛り上げられました。そして、羊皮紙をかぶせられます。縦に切り込みがあるのが見えました。張形を通すためです。
その張形は――女の穴の入口を先端で捏ね回してから。奥に突き当たるまで一気に押し込まれました。
「くっ……」
もっと太い張形を捻じ込まれたことだって何度もあります。たいしたことはない――と高を括っていたのはひと呼吸の間だけ。股間全体がじわじわと熱くなって、ついには燃え上がりました。
「あああああ……熱い、痛い……もっと虐めてください!」
本心です。割れ目を鞭打たれる鮮烈な痛みには遠いのです。前後の穴を同時に貫かれる膨満感もありません。
「ふふ、頼もしいですね。明日の朝も同じことを言えたら、院長様に申し上げて、祝福を与えていただきましょう」
中途半端な激痛(と快感)の中に私を放置して。他の皆さんも就寝の支度に掛かりました。半数の人が寝台にX字形に仰臥して、残った人に手足を拘束してもらいお腹を枷で押さえ付けてもらいます。それを繰り返して、最後にカヴァラさんだけが残りました。
カヴァラさんは同じ形でも俯せになりました。手足は自由ですが、そのまま動きません。やがて、ひとりの若い男性が部屋へ入ってきました。聖職者の身なりですから、二人の助祭様のどちらかでしょう。
彼はカヴァラさんの手足を拘束してから――下半身を露出して(どちらの穴かまでは分かりませんが)彼女にのしかかりました。
羨ましいなと思いました。もしも、私の修道院入りが決まったとき囁かれていた通りに、将来は修道院の女としての筆頭、つまり寮長になって。年下の娘を虐めて可愛がりたくなる心裡は、なんとなく分かります。権力のある者が弱者を甚振るのは快感でしょう。
唐突ですが――私に、将来の目標が出来ました。
カヴァラさんの言葉通り、熱く沁み込んでくる痛みは一晩中続きました。それでも、私は――痛みに目を覚ますことはあっても、微睡みました。苦痛の中の睡眠には慣れっこですから。
翌日は、また告解室で司祭様から聖書の真実をいろいろと教わりました。聖書には、独特の暗喩が鏤められています。
「誰某は彼女を知った」というのが性の交わりを意味するというくらいは、すこし教養のある大人なら知っています。実際には、もっと淫微で分かりにくい表現がたくさんあります。たとえば「差し出した」というのは、女性の行為であれば「みずからを」という言葉を補えば意味が明白になります。行為者が男性の場合は、「彼の娘」「彼の妻」「彼の姉妹」あるいは「彼の女奴隷」です。
聖書に良く出てくる葡萄や無花果や柘榴も、実に意味深です。ことに無花果と柘榴は何に似ているかというと……聖書に倣って、明言は避けます。ただ、女性がそういう果実を捧げる場面では「彼女の」という言葉を補えば、意味が明確になるのは確かです。
司祭様の(ということは、この修道院の)解釈では、近親姦も男が女に向ける嗜虐も大いに奨励されているのです。
強引な解釈だなと思う部分もありますし。そもそも、巻物に聖なる言葉で書かれている内容を司祭様が正しく翻訳してくださっているかも怪しいのですが、反論できるだけの素養が私にはありません。拝聴しているうちに、だんだん真実に思えてきました。辛子で腫れている女の穴も花弁も芽も、ますます熱く火照って涙を流します。
そうして。私の悦虐は神様の定めた摂理に反するどころか適っているのだと、そうも思うようになりました。これが、皆さんのおっしゃる「仕上がった」というものなのでしょうか。
先輩見習修道女のフランカは、すでに幾度も講義を受けているので、日常の作業、ことに重労働を割り当てられました。背中で祈りを捧げる姿に縛られたまま、腰に鎖を巻いて前から後ろへ回して鋤をつないで曳かされたり、同じ要領で荷車を曳かされたり。
私は明後日には入会の誓願を立てて、性隷として第二の洗礼を受ける予定になっている――その資格があると、院長様に申し渡されています。そして新米修道女として、結局はフランカと同じ重労働に従事させられます。
先々のことは考えても仕方がありません。
午後からは、賓客が私たち修道女に祝福を与えてくださるところを見学しました。賓客は俗人であっても、司教である院長様から聖別の儀を受けて、一時的に資格を与えられる――ずいぶんと勝手な理屈です。
私とフランカはお継母様、いえファジャーノ様に引率されて『祝福の間』へ入りました。世俗的な言い方をすれば拷問の間です。
そこには、上半身は裸ながら、どこかで見た肖像画に似ているようないないような殿方が、院長様直々の助言を受けながら、修道女に祝福を与えておられました。助祭さまと警備兵が一人ずつ隅に控えています。
ファジャーノ様は貴賓に向かって、花弁の片方を横へ引っ張りながらそちら側の膝を外へ曲げて、変則的な屈膝礼を執りました。フランカは両膝を着いて頭を垂れます。私は迷いましたが、フランカは平民の出だろうと判断したので、ファジャーノ様に倣って、もっと変則的な屈膝礼にしました。ただ片脚を横へ曲げて膝を折っただけです。だって、花弁を摘まもうにも、両手を背中へ捩じ上げられています。
「こちらは、元修道女で、還俗してクリスタロ侯爵の養女となり、ラメーズ伯爵の後妻に迎えられたファジャーノです。その隣が、彼女の継娘にして見習修道女のエレナ。もう一人の見習がフランカです。見習の二人、ことにエレナは、いずれ殿下に祝福を与えていただくこともございましょう」
フランカは付け足しみたいな院長様の紹介です。
殿下はたいして興味も無さそうに、大きな鉄の箱に向き直りました。
「おまえたちもご相伴に与りなさい――よろしいですわね、殿下」
私とフランカは、殿下の左右に並ぶ形で水槽の窓に顔を寄せました。
中では私より二つ三つ年上の修道女が首まで水に浸かりながら、梯子のような物を登っています。両手は太い鎖で後ろ手に縛られ、両足には短い鎖で鉄球を引きずりながら。まだ全員の名前を覚えていませんが、たぶん兎(コニーギャ)さんです。
登り続けているのに、いっこうに水から出られません。梯子の踏桟が下へ動いているのです。踏み桟は梯子の裏表に並んでいて、上と下でつながって大きな歯車で折り返しています。そして踏桟は細長い飼葉桶のようになっていて、コニーギャさんが(結局は)その場で足踏みをするごとに水を汲み上げています。汲み上げた水は鉄の水槽の上に吊るされた大きな桶に貯まるのですが、桶の横からは二本の湾曲した太い筒が伸びていて、彼女の頭上から水を浴びせています。
もし足を止めたら水底まで沈むし、水槽の水も増えて溺れ死ぬのです。命懸けの不毛の重労働です。
「こんなの……見たことがない」
フランカがつぶやきました。
「これは殿下が発明なさって、王都で作らせた物を寄進してくださったのだ」
殿下とも呼ばれるお方なら、国政にも関わっておられましょう。その叡智を国民のために使っていただきたいものです。
「ふむ、限界のようじゃの」
覗き窓の向こうで、コニーギャさんが足を踏み外しました。後ろ手の鎖に引っ張られて仰向けに倒れて、立ち上がろうともがいていますが、起き上がれません。
「レミジオ!」
院長様の声に、助祭様が水槽に駆け寄り、素早く半裸になって脇の梯子から水槽に飛び込みました。兵士が天井の滑車から垂れている鎖を下ろします。
助祭様は鎖の先端の大きな鈎をコニーギャさんの後ろ手鎖に引っ掛けて。兵士が一人で軽々と釣り上げました。滑車は大小が組み合わさっているので、梃子みたいに働くのでしょう。
でもコニーギャさんは、たまったものではありません。後ろ手のまま吊り上げられるのは肩が脱臼しそうになります。足の錘で、なおさらです。
「ああああ……痛い……」
この人も仕上がっています。苦悶の中に気怠い響きが混じっています。それとも、ただ疲れ果てているだけでしょうか。
「水位を下げろ」
殿下のご命令で大桶が水槽に沈められて、かなりの量の水が汲み出されました。
「あの女は、しばらく踊らせておけ。余は、この若き未熟な二人に洗礼の手ほどきをしてやりたい――これじゃ」
殿下は左右の手を交互に上げ下げしました。それだけで、院長様に意味は通じたようです。
私とフランカはいったん拘束を解かれて、コニーギャさんと同じに太い鎖で後ろ手に縛られました。ずうんと重たくて、踏ん張っていないと転びそうです。
私たちの前に大きな鉄塊が置かれました。真ん中に環が取り付けられていて、もっと太い鎖が通されています。私たちは首に鉄枷を嵌められて、鎖の両端につながれます。鎖が短いので、二人のうちどちらかがしゃがむか、二人とも中腰でいなければなりません。
院長様と殿下が私たちの身支度(?)を調えている間にコニーギャさんは、突き出た棒の先に“L”字形の腕が生えた台の上に、別の滑車で吊り降ろされて――予想していた通り、股間を“L”の上向き部分で突き刺されました。手足には軽く装飾性の強い環を嵌めているだけで、まったく拘束されていませんけれど、串刺しから逃れるには、張形が抜けるまで高く跳び上がるか、台もろともに倒れるかしかありません。腰が伸びた姿勢から跳ぶなんて無理ですし、重たい台を倒すのも難しいでしょう。倒れたら倒れたで、穴の奥を突き破られるかもしれません。
兵士が分厚い鉄の円盤を手で回し始めました。コニーギャさんの腰がゆっくりとくねります。
女の穴は常に、“L”の垂直な部分の真上です。台から突き出ている支柱を躱すために、支柱に近い側の脚を上げなければなりません。回転につれて足を踏み換える必要があります。
回転が速くなってくると、自然と手を振って身体の釣合を取ります。
しゃん、しゃん、しゃん、しゃん……軽やかな鈴の音が石壁に響きます。熱した鉄板の上で踊らされたときと似ています。けれどコニーギャさんの顔に浮かんでいるのは、苦痛の奥から滲み出る悦虐ではありません。淫らに腰を振らされる恥辱の火照りと、女の穴を抉られ捏ね繰られる純粋の快感です。恍惚です。
もっとも。重たい鉄球を引きずりながら無限に梯子を登らされた疲労が溜まっていますから、そう長くは続かないでしょう。続けさせられても、じきに倒れて台から転落するかもしれません。うまく受け止めてもらえれば良いのですけど。
他人の心配をしているどころではありません。鉄の塊が滑車で吊り上げられ、私とフランカの腋にも縄が巻かれて、もろともに宙吊りです。
兵士が素裸になって、水槽に立て掛けられた梯子の上に立っています。彼の股間はそっくり返っています。さすがは施虐修道院の一員です。
フランカが耳元に囁やきます。
「あたいも祝福を受けるのは初めてだけど、一度だけ見たことがあるよ。ゆっくり十(とお)数えてから、あたいの真似をしなよ」
盗賊団の姉御顔負けの言葉遣いです。とにかく、小さく頷いておきます。
私たちは水槽の上へ押し出されて。
がらら……ざぶん。一気に水中へ沈められました。鉄塊に首を引っ張られ、両手を縛る鎖に押さえ付けられて、二人とも水底にへばり着きます。
すぐに兵士が飛び込んできて、錘に引っ掛かっている鎖の鈎と私たちを吊っていた縄を抜き取り――助け起こしたりはしてくれずに上がっていきました。
娼館の女将さんに逆さ吊りにされて水に浸けられたときよりはつらくないですが、立ち上がって水面から顔を出さなければ、いずれ溺れ死にます。
ところが、立ち上がるどころか。鎖を横に引っ張られて、胸が鉄塊に押し付けられました。さらに鎖が強く引っ張られます。
水でぼやけた視界の中で、フランカが立っているのが見えました。そうです。鎖が短いので、ふたり一緒には立てないのです。
「十(とお)数えてから」フランカの言葉を思い出しました。
ゆっくりと、九つまで数えたところで、フランカがしゃがんで、さらに顔を鉄塊の環に押し付けました。
私の番です。鎖の重さに逆らって身体を起こし、両足を踏ん張って……どうにか立てました。
「ぶはっ……はあ、はあ、はあ」
空気を貪ります。
フランカが肩で足をつつきました。替われという合図です。
私は大きく息を吸い込んでからしゃがみ込んで、フランカの真似をして鉄の環に顔というよりは喉を押し付けて、少しでも鎖を伸ばしてあげます。
フランカが、よたよたと立ち上がって。私が十を数え終わるか終わらないうちに、私に譲ってくれました。
上から吊るされている大桶には、大量の水が汲まれています。もしも、あれを流し込まれたら……ふたりとも溺れ死ぬでしょう。
そんなことは殿下も院長様も絶対になさらないだろうと信じて、とにかく次のひと息を何回も何十回も繰り返して――無事に引き上げてもらえました。
殿下と院長様に対する絶対の信頼と忠誠の礎石が、私の心の底に置かれました。と同時に、フランカとは生死を共にした仲間といった紐帯で結ばれたのです。これは、私だけの思い入れかもしれませんけれど。
――殿下の最後の祝福は、疲れ果てた身体をほんとうに鞭打たれながら、恍惚として踊り続けたコニーギャさんに与えられました。拷問台に磔けられて、恍惚に恍惚を重ねる彼女の乱れっぷりをしっかりと見学させてもらってから、私たちは祝福の間を後にしました。私は太腿にまで淫らな汁で濡らしてファジャーノ様に褒められたのですが、フランカはそれほど感銘を受けたようには見えませんでした。
それにしても。以前のお継母様だったら、きつくお叱りになって鞭のお仕置きをくださっていたところを、今は褒めてくださるのですから……戸惑うばかり。と、控え目に表現しておきます。
寮へ戻って。昨夜と同じ要領で夕食を摂って。今夜は誰も反省を命じられず、私も昔懐かしい“X”字形の姿勢で眠りに就きました。
そうして、施虐修道院で三日目の朝を迎えました。
今夜の私は『内省の夜』だから粗相があってはいけないという理由で、断食をさせられます。水分もできるだけ我慢しなければなりません。それなのに。誓願の前に必須の儀式なのに、その内容は誰も教えてくれません。まあ、半日後には分かるのですから、気には病みませんけれど。
もう見習修道女の正装もせず、略装つまり全裸で寮に籠もって、聖書を読んで過ごしました。もちろん、聖なる言語ではなく日常語に翻訳されたものです。
そんじょそこらの教会だと、主要な部分の抄訳があれば良いほうなのに、ここでは原典も翻訳も全巻が揃っています。王族や諸侯の庇護を受けているだけのことはあります。この様子では花代、こほん、お布施の額も高級娼館である『踊る花の館』の何倍なのか何十倍なのか、とにかく桁違いでしょう。
それはさて措くとして。司祭様に教わった『裏読み』をすると、聖書ではなく性書、それも近親姦と嗜虐に満ち溢れた物語になります。ほんとうに、これは原典の正確な翻訳なのでしょうか。おそらく、ここの原典に照らせば正しいでしょう。でも、世界にひとつしか無い原本と一致している保証はありません。
私は神学者ではありません。女です。ですから「女は男に虐げられることに悦びを見い出せ」という巻物の記述を素直に信じます。
それでも、聖書なんて退屈です。修道女の皆様は生活に必要なお仕事をしているか祝福を受けていて、祝福の傷を養生していた椋鳥(ストルナ)さんも助祭様の(どの方面かは分かったものではありませんが)お手伝いです。だだっ広い部屋の中に、私ひとり。せめてファジャーノ様がいらっしゃれば、今なら打ち解けていろいろとお話もできるでしょうに。どこにおいでなのかすら分かりません。
退屈と『内省の夜』への好奇心と不安とを持て余すうちに陽も落ちて。私はマルコ助祭様に案内されて、略装で(しつこいけれど全裸です)礼拝堂へ赴きました。
そこには院長様と司祭様、そしてファジャーノ様がお待ちでした。
床に大男用の棺(ひつぎ)みたいな箱が安置されています。蓋は開けられていて、黒い鞠のような物が敷き詰められています。
その前で、私は奇妙な形に拘束されました。腕は柔らかな布帯で緩めに体側へ縛り付けられ、太腿と足首も縛られました。そして、両手に革袋をかぶせられました。口に詰物をされて布で口を覆われ、耳を粘土でふさがれます。そして最後に、真っ黒な分厚い目隠しです。見ることも話すことも聞くことも、身体に触れることすら出来ません。
そして抱きかかえ上げられて、柔らかな物の上に寝かされました。棺に入れられたのです。
不意に、心臓が早鐘のように拍ちだしました。正体の分からない不安に包まれました。
ごとん……蓋の閉じる響きを、微かに肌に感じました。
コン、コン、コン……釘を打つ響き。
「んむううううっっ……!」
生き埋めにされた恐怖が蘇りました。凄まじい恐慌に襲われました。
なんとしてでも脱出しなければ!
「む゙も゙お゙お゙お゙お゙お゙っっっ!!」
身体を起こそうとして頭を蓋にぶつけました。身体を捻って肩で押し上げます。膝で蹴り上げます。蓋は動きません。
全身でもがいて、身体を棺に打ち当てます。がたんがたんと揺れて、床を打ちます。
不意に揺れなくなりました。いよいよ、土をかぶせられたのです。
嫌だ! 死にたくない……誰か助けて!
誰かの手が私に触れました。目隠しが外され、口の詰物を抜き取られました。
「うわあああん……」
小さな子供のように泣きじゃくりました。
「こわいよお、しにたくないよお……!」
耳が聞こえるようになりました。
「いったい、どうしたというのだ?」
院長様が困惑を浮かべて、私の目を覗き込まれました。
それで、すこし落ちつきました。私は、まだ生きています!
「あの、あの……」
「エレナ、落ち着きなさい。ここには、あなたに……致命的な危害を加える人なんていないのよ」
お継母様が抱き締めてくださいます。
ああ、そうだった。思い出しました。私は『内省の夜』という儀式に望んでいたのです。
「私……口封じで生き埋めにされて殺されかけたことがあるんです。その恐怖が押し寄せて来て……それで……」
お継母様の腕が手が、強く優しく私を包んでくださいます。
「種明かしは禁じられているのだけれど……明日の朝には終わるのよ。耐えなさい」
「いやあっ……!」
理性ではなく感情でもない、魂の叫びです。
「もう、修道女になんか、なりたくない。戻して……処刑台に戻して!」
闇の中で痛みも感じずに、暗闇で独りでじわじわと死んで行くくらいなら、衆人環視の中、槍で刺し殺されるか焼き殺されるほうが、ずっとましです。そんなことにはならないと分かっているのに、全身の震えが止まりません。
皆様、困り果てた顔で私を見下ろしています。
「院長様」
お継母様が院長様を振り仰ぎました。
「私も一緒に閉じ込めてください。この子は、改めて自身と向き合うまでもなく、被虐による肉と魂の悦びを知っています。絶対的服従への安堵を知っています」
「いや、伝統を破るべきでは……」
「面白いかもしれぬな」
司祭様の言葉を院長様が遮りました。
「母親が娘を導くのは珍しいことではないが、『内省の夜』を……うむ、『訣別の夜』……いや、十八で生んだ娘が十五。でなくとも継娘なら、二十幾つもあり得るか。よし、この試みがうまく運べば『双照の夜』と名付けよう」
院長様は独り合点に頷くと、私の拘束のすべてを解いてくださいました。
急遽、葡萄酒が用意されて、それを水で薄めたものを、何杯も飲まされました。お継母様もです。喉の渇きが潤されるとともに、断食のせいで、お腹が熱く燃え上がります。
革帯が床に並べられて、そこに私が仰臥します。お継母様が逆向きに覆いかぶさってきました。これは淫らな戯れの形です。
神聖な儀式のさいちゅうに不謹慎な――とは思いません。この施虐修道院に、淫らで残虐ではない生活も祈りも存在しないのですから。
固く抱き合う形でふたりをひとまとめにして、革帯でぐるぐる巻きにされました。顔を股間にうずめて、頭を上げられないように縛られました。さしずめ、お継母様の太腿が目隠しで、口は女性器でふさがれます。手で自分の身体に触れられないのも、前と同じです。
そうして、横臥の姿勢で棺に入れられました。今度は蓋をされても釘付けにされても、心は落ち着いています。
暗闇の中で、お継母様の形が、しっかりと温かいです。甘酸っぱい乾酪の匂いが心を掻き乱しますけれど。
一昨日みたいにご奉仕しても良いのかしらと、迷っていると。
ぞろりと、割れ目の内側を舐められました。
「み゙ゃんっ……」
不意打ちに悲鳴をくぐもらせると、お継母様の腰がぴくんと跳ねました。吐息が女の芽を直撃したのでしょう。
お継母様は我が意を得たりとばかりに、舌も唇も歯も使って、鼻先まで動員して、私を虐めに掛かりました。
感動です。あんなに(私には)傲慢で厳しかったお継母様が、私の淫らな部分を食べてくださるなんて。
私も負けていられません。三か月の娼婦生活で得た経験と一昨日にガリーナさんから教わった遣り方を総動員して、お返しします。どちらが先に逝かされるか勝負です。それとも、先に達っしたほうが勝ちでしょうか。どちらにしても、引き分けになれば素敵です。
手を使えないのがもどかしいのですが。背中をぎゅっと抱き締めて、そして抱き締められているのも、なんだか普通の恋人同士みたいで悪くありません。世間一般の常識では、二重に背徳的ですけれど。
乳首もなんとか刺激できないかなと、身体を揺すってみましたが、お継母様のお腹に密着しているので無理でした。
そんなことはしなくても、お継母様の舌技は素敵です。私は、たじたじです。でも、お継母様は坂道を登りながら、私が遅れそうになると立ち止まって手を引いてくださったので――なんとか同時に断崖絶壁から手を取り合って墜落できました。
飛翔とまではいきませんでした。生さぬ仲とはいえ母娘という薬味も、太い男根には敵いません。鞭も無いし、お尻の穴も置いてけぼりですもの。淡い砂糖菓子でしかありません。
でも、それは肉の悦びについての感想です。魂の悦びについては、これまでとは異なる充足がありました。もっとも、以前の厳しいお継母様を懐かしむ気持ちもあります。
あまり長く余韻にたゆたうこともなく、いつしか私たちはおしゃべりを始めていました。といっても、相手の下のお口に話しかけるのですから、勝手が違います。顔が見えない分だけ、素直になれたと思います。
「院長様が十八と十五とか、まして継娘とかおっしゃってたでしょ。お腹を痛めて産んだ娘でも、生贄に差し出すって意味なの?」
こりっと、女の芽を噛まれました。甘噛みではなく、お仕置きめいた痛みです。
「生贄ではありません。娘の幸せを願ってのことです。腕力があって権力もあって逞しい祝福の棒をお持ちの殿方に、虐げられ庇護される幸せをエレナは知っているでしょうに」
お継母様のおっしゃることは分かりますが、大切な部分が欠けているように思います。魚のような目をした人には、虐められても恨みが募るだけです。媾合えば身体は反応しますが、官能はありません。そして、瞳に淫欲と嗜虐の焔が燃えていれば、私はその方が男であろうと女であろうと、心を揺さぶられます。お継母様、いえファジャーノ様や寮長様に可愛がっていただいて、それを確信しました。『踊る花の館』の女将さんは駄目です。保身のために、花を枯らそうとしたのですから。
「……あればねえ」
一瞬の物思いの裡に、言葉を聞き漏らしました。
「なんて、おっしゃったの?」
「ベルタに、すこしでも被虐への憧れがあったら――そう言ったのです」
割れ目に向かって囁くのですから、聞き漏らしても不思議はないと思ってか、咎める口調ではありません。
「おまえときたら、十になるやならずの頃から兆していましたから――つい、我が子を差し置いて躾けてしまいました」
では、独り遊びへの厳しいお仕置きも、恥辱の“X”字磔も、私の悦虐を育むためだったのですね。もちろん、恨んだりはしません。だって、お継母様のおっしゃる通り、女の真実の幸せを得たのですから。
「あの……まさか、私が誘拐されたのも?」
「いいえ」
言下に否定なさいました。
「もしも、あの子の目論見通りにお前が殺されていたら、婚約を解消して、ここへ送り込むところでした。まったく素質の無い女など存在しませんから……たとえ見習期間が三か月を超えようとも」
裏を読めば、素質に欠けるように見える娘でも三か月もあれば悦虐に目覚めるということです。
「お継母様は、そこまでお考えだったのですね」
「それが義務でもあるのです」
王族は畏れ多いですし、常日頃から手厚い庇護を受けていますから例外ですが、修道女を落籍させるには数千グロッソもの寄進を求められます。侯爵だろうと大商人だろうと、身代が傾きます。ただし、その家の娘を将来に入会させると誓約すれば、良家の子女を闇売買する程度の金額まで下がります。大抵は、身請けした修道女に産ませた娘か幼い養女を迎えて、その家の娘にふさわしい教育を施します。私のように後妻に直った修道女が、前妻の娘を――という例は珍しいそうです。
「誰だって、自分が産んだ子供がいちばん可愛いものです」
つまり、修道女は皆が仕上がっていて、悦虐の幸せを信じて、いえ、体感しているのです。
「フランカは、やっつけ仕事ですけれどもね」
予定していた娘が病没して、やむを得ず適当に見繕った身替りを差し出したのだとか。娘を簡単に売るような下層民なら、あの言葉遣いも納得です。
知れば知るほど驚くことばかりです。その中でいちばん驚いたのは――お継母様がほんとうに私の幸せを願っていてくださったことです。
それも、一時ではなく生涯に渡って、です。というのも、花の命は短いのですが、修道女は娼婦と違って、落籍されることなく引退した者には、聖エウフェミア基金からじゅうぶんな年金が支給されるのです。十数年に及ぶ祝福で痛め付けられた身体で、どれだけ長生きできるかは分かりませんが、誰であれ寿命は神様しかご存知ないのです。
その他にもいろいろとお話をうかがい、私も、お継母様が放った密偵でも承知していない冒険の詳細をあれこれと語りました。お母様は、とても羨ましそうな相槌を(私の下のお口に向かって)打ちながら、聞いていてくださいました。
ふっと話が途切れたとき。私は当然の疑問に行き当たりました。
「ねえ、お継母様。お父様とは……?」
さすがに気恥ずかしくて、語尾が立ち消えました。
「旦那様が私を見初めてくださったのは、ここ聖エウフェミア女子修道院です」
それだけで答えになっています。
「私も、世間一般では旦那様とは別の寝床に就く歳ですけれど……私のここでの振る舞いが旦那様に対するそれとはまったく異なっているというわけではないのですよ」
つまり現役だということです。
「真夏にも、私が胸元も手首も隠れる服しか着ないのは、そのためです」
これを、世間一般ではお惚気と呼ぶのでしょう。
しばらく安らかな沈黙が続いて。だんだんと、私は安らかではなくなってきました。薄めた葡萄酒をたくさん飲んだ結果が差し迫ってきたのです。とても、朝までは我慢できそうにありません。
牢獄では、日常的に垂れ流していました。でも、ここは仮初にも神様の御前です。それ以前に、私の割れ目はお継母様の口でふさがれているのです。
「催してきたの?」
私が腰を文字尽かせていたので察したのでしょ。お継母様が、「喉が渇いたの」みたいな口調で尋ねます。
「あの……我慢します」
出来もしないことを約束するなんてつらいです。
「かまわないのよ。全部飲んであげます。零したりしたら、大変なことになりますから」
棺に詰められている黒い丸い球は、海綿を絹布で包んだものだそうです。高価な海綿と絹を台無しにするだけではありません。水を吸って玉が膨れると、棺の底に何十か所も開けてある空気穴をふさぎかねません。そうなると、二人揃って窒息します。
殿方のお小水を飲まされたことはありますけれど、その反対はありません。まして、相手はお継母様です。
「出しなさい。私も出します。全部飲み干してちょうだいね」
言葉が終わると、生温かい水がちょろちょろっと口の中に注がれました。殿方とは微妙に味も舌触りも違っています。すこしだけしょっぱいのに、甘く感じられます。これは、お継母様への親近感からくる錯覚かもしれません。微妙に粘っこいのは、淫らな蜜が混じっているせいでしょう。
ちっとも嫌悪を感じずに。支配されているという辱悦も無く、飲まされているのではなく飲んであげているという歓びの裡に、私は一滴余さず飲み干したのです。
いよいよ、私の番です。お腹の力を緩めて……いるつもりですが、どうしても流れが生じません。なのに、出そうと決心したので、尿意だけが急速に高まっていきます。つらいです。苦しいです。悦びのない苦しみです。
お継母様の舌が割れ目に押し挿ってきて、女の穴より上のあたりをつつきました。と同時に堤防が決壊して、お継母様のせせらぎとは違って、何もかもを押し流すような奔流が生じました。
「あああ……ごめんなさい」
お継母様は言葉を返すことも出来ず、割れ目をぴたりと唇でふさいで、本流を飲み干してくださいます。
互いに互いを辱めた――いえ、男根で貫くよりも深い契りを交わした。そんな気分になりました。
私とお継母様はきつく抱き合って、闇の中へ溶け込んでいったのです。
三位一体の典
棺から出されたときは、生まれ変わったような心持ちでした。私だけが寮へ戻されました。
晴れの洗礼典ということで、必要最小限の仕事を除いて、修道女の過半数がまだ寮にとどまっています。
私は朝食として、汁にふやかした少量の麺麭と果物だけをいただきました。断食の後で普通の食事を摂ると戻してしまうそうです。
食事の後は身支度です。大きな盥で身体を清めて、それから叢を剃ってもらいました。
修道女は『踊る花の館』の娼婦と同じように手入れはしていますが、無毛の人はいません。ごく短い生えかけの人は少なくありません。それは賓客にそいう祝福を与えていただいたからです。軽い火傷を負っている人もいます。焼鏝や蝋燭を使うか剃刀を使うかは人それぞれですが、手入れの行き届いた芝生よりは不毛の丘陵を望まれる賓客のほうが多く、それも御手ずからなさる方が大半だそうです。
豪奢な庭園をお望みの賓客もいらっしゃいますが、問題はありません。高い地位にある殿方は、相応に多忙です。ひと月もふた月も前から予定を組んで、万障繰り合わせてのご訪問ですから、準備に怠りはありません。
そういう次第で、洗礼を受ける娘は「自然のまま」にあるのが通例ですが。私だけは、素敵な飾りを下腹部に焼き付けています。見栄えを良くするために無毛で礼典に望むことになったのです。
けっこう煩わしい作業です。というのも、焼印の文字と枠が盛り上がっているので、剃刀では傷付けかねません。蝋燭で火傷をしても宜しからぬということで、その部分には毛抜を使いました。お陰様で、新しい種類の痛みを堪能できました。毛根の大半が焼き潰されているのが残念でした。
一本ずつ抜いていくのは退屈な作業です。それをしてくれた牛(ムーロラ)さんと金糸雀(カナリーナ)さんは、修道院の日常のあれこれについて教えてくれました。私がいちばん興味を持ったのは、冬の過ごし方です。
真冬でも、裸同然の服装は変わらないのです。ちっとも興奮しない虐待です。もっとも、この地の西は地平線のすぐ向こうが海になっているので、そんなには冷え込まないのだとか。そして、修道院の建物のほとんどは壁が二重になっていて、その隙間を暖炉の熱い空気が巡るようになっているから、室内では震えるほど寒くはないそうです。床は冷たいのですが、冬だけは裸足でなくて木靴を許されます。どうしても戸外での作業が必要なときは、これこそ修道院での本来の修行なのだと諦めるしかありません。
中には、酔狂で残忍な賓客がいらっしゃって。ご自分は外套にくるまりながら、寒風の中で修道女に祝福を与えるのがお好きだという鬼畜……失礼しました。凍えた肌を打つ鞭の痛みは、格別に厳しいとか。さすがの私も、体験してみたいとは……思わないとしても、体験させられることでしょう。
そんなことを妄想ではなく予感したせいで、二人にからかわれるほど濡らしてしまいました。
そうして準備万端調って。私は見習修道女の正装――全裸ですが、昨日までの私のための枷と鎖ではなく、フランカと同じに後ろ手に祈りを捧げる形に縄で縛られた姿で、先輩修道女に両側から乳首を引っ張られて、礼拝堂へ赴きました。フランカを除いて皆さん、被り物で髪を隠しているので修道女らしく見えます。視線を下げると台無しですけれど。
礼拝堂へ足を踏み入れて。先輩方が左右へ分かれる中、乳首に導かれて祭壇へ歩みます。
そこに待ち受けているのは、院長様を始めとする四人の聖職者とお継母様、そして……
「お父様?!」
ほとんど悲鳴です。
「しっ……」
乳首をつねられました。
昨夜のお継母様のお話では、お父様もここがどういうところかご承知の上で、私を送り込もうとなさっていたのですから、実の娘の晴れ舞台を我が目でご覧になりたいのでしょう。ですが……司祭様に教わった聖書の真実が気に掛かります。近親姦を忌むどころか推奨しているのですから。
まして、お父様は腰布一枚となれば、なおさらです。
私の懸念(期待かもしれません)をよそに、儀式が始まります。
十字架も絵画も聖書すら取り払われて白い敷布だけが掛けられた聖壇から二歩ほど離れて、私は縛られたままで跪きます。先導の二人が他の修道女の列へ戻って。
「ラメーズ伯爵マッキ・コルレアーニが長女、エレナ。この者は、隷従の安らぎを知り、恥辱を誉れと成し、苦痛の悦びを知り、姦淫の愉しみを知る女として、今まさに生まれ変わらんとする。よって、ここに洗礼の秘蹟を授ける」
院長様とお父様が、私の前に向かい合って立ちました。お父様が腰布を取りました。神様の御前だからなのか、実の娘には淫欲を催さないのか、うなだれています。
お父様のそこを見るのは初めてですが、娼婦として評価するなら、人並みです。もちろん、ちゃんと勃起するという前提で。
ですが、これがお母様を耕して私の種を植え付けた鋤かと思うと、感慨もひとしおです。
院長様がお父様(の股間)に向かって十字を切り、美術品として貴族の客間に飾っておくのがふさわしい水差しに指を浸して聖水(でしょうね)を振り掛けました。
「汝は聖別された。この娘に聖水を注いでやりなさい」
お父様が男根を手で捧げ持つ――までもありません。太く長くなりながら鎌首をもたげます。むしろ手で押さえて、筒先を私に向けようと苦労なさっています。
昨夜はお継母様の小水を飲み、今日はお父様のを浴びるのです。私は頭を垂れて、受洗を待ちました。
ほどなくして――ちょろちょろっと頭に生温かい聖水が注がれました。髪を濡らし顎を伝って、腿に雫が垂れます。
「頭(こうべ)を上げよ。口を漱(すす)げ」
院長様のお言葉にしたがって顔を上げ口を開けました。
ところがお父様は……
「わ゙、ら゙……」
ほんとうに嗽(うがい)をしたみたいになって、口を開けたまま目を閉じました。だって、お父様は筒先を振って、顔一面に浴びせてきたのです。顔だけでなく、全身に浴びせます。
私には何であれ、口に放出された殿方のものを吐き出す習慣がありません。娼館では、そういうふうに躾けられ、牢獄では強制されています。まして礼拝堂の中では非礼です。かといって、飲み下す勇気もありません。お継母様のが平気だったのは、暗闇の中で二人きりでしたし、切羽詰まっていたからでもありました。今は数多くの目があります。ここの修道女は誰しも同じような洗礼を受けているのでしょうが、それでも恥ずかしいです。
全身ぐしょ濡れになって。そこで儀式が停滞しています。
「聖水を飲み干しなさい」
院長様に𠮟られて、ようやく決心がつきました。お父様のだと思わなければ、むしろ平気でした。
お父様が退き、院長様が私の前にお立ちになりました。
「この女は、ここに生まれ変わり、新しい名を得た。すなわち、蛙(ラーナ)である」
私は、ひどく落胆しました。他の人たちは家畜や鳥の名前なのに。
失望の裡に、私は立ち上がりました。院長様が十字架の先端で、私の左右の乳首と口と股間に触れて十字を切りました。わたしは、その十字架に接吻しなければなりません。
先輩方が寄って来て、桶に何倍もの水を頭から浴びせます。水は石床に落ちて、外へと流れます。牢獄と同じで、目には見えない傾斜が付けられているのでしょう。
最後に見習修道女の正装を、つまり縄をほどいてもらって、濡れた髪も簡単に拭ってもらって。私は院長様の前に跪きます。
「では、ラーナよ。汝は祝福に満ちあふれた聖エウフェミア女子修道院での暮らしを望むや?」
ここからは誓願の儀です。誓いの言葉は、今朝から何度も繰り返して、大筋は覚えています。一言一句も間違えてはならないのではなく、覚悟の程を披瀝すれば良いのです。自分で工夫してもかまいません。
では、誓いを立てます。
「私、ラーナは、以下の如くに誓願致します。
「私は、主が創り給いしアダムの息子たちに隷従してそれを安寧と為し、彼らに与えられる苦痛を悦び、恥辱を誉れとし、すべての穴に彼らを迎え容れて淫らに悶えたく、ここ聖エウフェミア女子修道院への入会を望みます。
「私は、この心と身体を、すべてのアダムの息子たちに捧げます。彼らが私を愛でる限りは、ここに留まります。彼らのうちの誰かに強く望まれるか、誰にも愛でられなくなったときには、速やかにこの地を去り、この地で行なわれた秘蹟については固く口を閉ざして余生を送ります。
「私が誓願に違背することあれば、主よ、直ちに私を滅ぼしてください。
「アーメン」
先ほど十字架が触れた順番で女の敏感な部分を使って十字を切りました。
「汝の誓願は受け入れられた。向後は、聖エウフェミア女子修道会の一員として清貧と淫乱と隷従の日々を過ごせ」
こうして、私はいわば女囚兼娼婦となりました。これで儀式は終わったのでしょうか。お継母様は、ただの立会人だったのでしょうか。
いいえ、やはりそうではありませんでした。
「秘蹟にふた親のいずれかが立ち会うのは珍しくないが、父と子と性隷とが揃うのは稀である。せっかくの機会であるから、これより至高の秘蹟たる三位一体の典礼を執り行なうものとする。神の子を祭壇へ」
二人の助祭様に、また乳首を引かれて、私は祭壇に横向きに仰臥しました。頭は端からはみ出てのけぞり、お尻宙に浮いています。
頭の側に、お継母様が立ちました。私の目の前には、妖しく絖る亀裂があります。それが私の顔に押し付けられました、昨夜よりもずっと強く。
私は促されなくても、舌を伸ばします。お継母様は私の双つの乳首を優しく転がしたり厳しくつねってくださいます。左右別々にそれをされると、惑乱してしまいます。
あ……女の芽にも指が。これは……お父様です。実の父親に女として可愛がっていただく。数日前まででしたら、如何に私でも、おぞましく思っていたかもしれません。やはり、司祭様の教育で、私は変わっています。私は背徳の甘い蜜の味を知ったのです。
ああ、そうかと――三位一体の真の意味を悟りました。文字通りに、父と娘と性の奴隷とが一体となるのです。
その至高の瞬間へ向けて、お父様とお継母様の指が、私を追い上げていきます。
「ん゙む゙ゔ……んんんっ」
禁忌の蜜は濃厚です。たちまちに、全身が燃え上がります。頭に官能の霞が立ち籠めます。
「ん゙も゙お゙お゙お゙っ……!」
二人が示し合わせて、同時に三つの突起をつねりました。私はいきなり宙に投げだされて。そしてすぐに引き戻され、さらに追い上げられます。
不意に、お父様の指が消えました。お継母様も手を止めました。お父様が私の脚を肩に担ぎました。
いよいよです。
すっかり馴染んだ、でも初めての感触が、ずぐうっと押し入ってきます。根元まで突き挿さりました。私が濡れ過ぎているので、ちょっと物足りないです。でも、心は満足しています。
お父様がお継母様を引き寄せているのが気配で分かります。きっと接吻をなさるのでしょう。
これで、三人は閉じた三位一体となりました。
あっ……大切なことを忘れています。院長様もお父様も、その必要を認めなかったのかもしれませんけれど。お父様は羊の腸を使っていません。私も酢で洗っていません。お父様の子を授かってしまったら、どうしましょう。
まだ、私の悦虐の旅は始まったばかりです。早々に還俗なんてしたくないです。
そうだ。お父様に実の娘(には違いありません)として引き取っていただいて。じゅうぶんに世間の常識とか道徳を教え込んでもらいましょう。背徳と禁忌の蜜を味わうには、良識にまみれていなければなりません。そして、年頃になったらここへ入れて。私の手で(だけでなく全身を使って)仕込んであげましょう。
そんな遠い将来の妄想に耽っているどころではなくなりました。お父様が女の芽に爪を立てながら激しく腰を打ちつけてきます。私は苦痛と快感の坩堝にほうりこまれました。
お継母様も割れ目でお口を蹂躙しながら乳首を虐めてくださいます。
「ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ……」
私は至福に包まれながら、かつてない高みへと、どこまでも追い上げられていくのでした。
[完]
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はい、脱稿しました。ので、「ダッコちゃん」です。

とりあえずご報告まで。
祝杯あげたり、紙飛行機作ったり、ゲームしたりと忙しいので、クロールです。微妙に違いますが「抜き手」とも言います。
伊太利語には男性名詞と女性名詞がありました。ので、修道女の語尾をそれっぽく訂正します。娼婦のほうは花の名前なので、すべて女性名詞らしいですね。ああ、よかった。
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継母の嗜虐愛
でも、まだ続きがありました。
皆が一斉に肩衣を脱ぎました。へええ、です。というのは、誰も月の障りが訪れていないらしいのです。算数は苦手ですが、月のうち一割くらいは出血しますから、一人くらいは当日の筈です。
「今日の当直を言い渡します」
多分いちばん年嵩の牝馬(カヴァラ)という名の寮長が、声を張りました。
「猫(ガッタ)と烏(コルヴァ)は、反省しなさい。何を反省するのか分からなければ、辛子の懲罰を追加します」
修道女は聖職者ではないので、他人に祝福は与えられません。どんなに言葉の意味を捻じ曲げても、それは同じなのでしょう。
「マイアーレは引き続きフランカの訓練。ガリーナは新人のエレナを担当しなさい。残りの者は、自己研鑽に励むこと」
最初に名指しされた二人は、それぞれの寝床で“V”字形の姿勢になります。他の女性(最年少の私が先輩を『娘』と表現するのは失礼です)が、二人を鎖と枷で拘束しました。
傷だらけの女性は、寝台で俯せになりましたけれど、他の人たちは……カヴァラさんが比較的に若い人を二人、自分の寝台へ呼び付けました。隣り合った寝台を動かして、三つをひとつにしています。
後に残ったのは五人。特に相談するでもなく、二人と三人に分かれました。同じように寝台を寄せ合って。
なんてことでしょう。男と女がするみたいに、くんずほぐれつを始めました。
「わたくしたちも始めますわよ。さあ、手伝ってくださいな」
まるでどこかの令嬢みたいな口調で、ガリーナさんが私に話し掛けます。
言われるがままに寝台をくっ付けました。縄も鎖も枷も着けられていない身体は、なんと自由に動かせることでしょう。でも、衣服を身に着けていないみたいに不安です。いえ、実際に素裸なのですけど。
要領の分からない私がもたもたしているうちにも、あっちでもこっちでも、くんずほぐれつが激しくなっています。
カヴァラさんたちの三人組は横臥して三角形になっています。カヴァラさんの割れ目を舐めている女性は、カヴァラさんが割れ目を(舐めるどころか)頬張っている人に割れ目を啜られています。『踊る花の館』でも、こんな遣り方は誰もしなかったと思います。でも、これって……何人でも何十人でも出来ますね!
もうひとつの三人組は、もっととんでもないことをしています。開いた脚を交差させて股間を近づけ、三方に突き出した張形の中心を一人が握って、臼を挽くみたいに捏ね回しています。前戯も無しに。
二人の組は、これはお馴染みの形です。脚を交差させて股間を互いに擦り着けながら、固く抱き合い乳首を触れ合わせて接吻を交わしています。あれでは女の芽への刺激が足りません。のけぞって後ろへ手を突く形が最適です。事の始めの挨拶なのでしょう。
そしてマイアーレさんは、俯せになったフランカのお尻に顔をうずめています。鞭傷を舐めてあげているようです。
「驚いたでしょうね」
ガリーナさんが、私を背後から抱きしめながら、耳元で囁やきました。
「女と女で淫らな真似をするなんて。でも、これは姦淫ではないのよ。だって女は、挿入できるオチンポを持っていないんですもの」
それは、そうですけど。
「聖書ではソドムの行ないを厳しく禁じているけれど、女同士の戯れについては、一文字も書かれていません。つまり、禁じてはいませんことよ」
もう、聖書の話はたくさんです。
「ふふ……怖いの? すぐに気持ち良くなりますことよ。ほら……」
ガリーナさんの手が肩から前へ滑って、乳房を撫で下ろし、乳首にちょんと触れてから指が通り過ぎました。くすぐったくさえありません。滑り下りた手は、今度は下から上へ動きます。
それを何度か繰り返しながら、私を寝台へ腰掛けさせて。掌で乳房を押し上げるようにして、指の腹で乳首を転がします。
ああ、もう……じれったい。
ガリーナさんは私を、まさか処女とは思っていないでしょうが、ろくに性の歓びも知らない素人娘として扱っています。おまえは伯爵令嬢なんかじゃなくて娼婦だと言われるよりも、もっと自尊心が傷付きます。
いいわよ。ダリア姐さんの実力を見せてあげる。
私は手を伸ばして、右に座っているガリーナさんの核心をいきなり襲いました。
「あっ……?」
ぴくんとガリーナさんが腰を震わせました。ここぞとばかりに、指でくにゅくにゅくちゅくちゅ。身体をひねって左手で肩を抱き、唇も奪います。
「んむう……?!」
舌を絡められて、ガリーナさんは戸惑っています。その戸惑いを官能に変えてあげましょう。息が苦しくなるまで口中を貪って、口を合わせたまま、ガリーナさんの鼻に息を吹き込みます。もちろん右手の指は五本とも動かして、莢をしごき雌しべをつつき、とどめにきゅるんと剥き下げてあげました。
「ぷはあっ……」
私が身を引いても、ガリーナさんはとろんとした眼差しで余韻に浸っています。
「あなた……誰に、こんなことを教わりましたの?」
心底不思議そうに私の顔を見ます。
「ローザ、ジーグリ、クリサンテ、カメリア……みんな『踊る花の館』の売れっ妓だよ。あたいはダリアって舞台名で踊って、男に抱かれて、お客様の求めに応じて朋輩たちとも絡んでたのさ」
言葉遣いは、盗賊団の姐御にしました。ガリーナさんが妙に上品ぶった物言いをしていることへの反発です。
「そうでしたの。わたくしは、てっきり、あなたも貴族の出かと思っていました」
それも当たっていますけどね。でも……「も」ということは、この人「も」貴族令嬢? そして、それを隠す必要も無い?
『踊る花の館』とは、ずいぶん勝手が違います。それは、この修道院の真の姿を知ったときから分かっていたことです。金で縛られているとはいえ『お仕事』をちゃんと勤めて日中の雑務も少しだけしていれば後は自由な娼婦ではなく、実際に縄や鎖で縛られ鞭打たれ日中も自由を奪われている女囚それとも性奴隷なのです。
そんなことは、後で考えましょう。今は……
「それじゃ遠慮はいりませんわね。凡俗を相手の娼婦ごときに後れを取ったとあらば、わたくしの矜持が許しませんことよ」
ガリーナさんが私の腰を抱きかかえるようにして、右手を股間へ差し入れてきました。
「ひゃああっ……?!」
甘い稲妻が腰を貫きました。女の芽を虐められてそうなるのは慣れっこですが、すごく甘いのに太くなくて、無数の針が雌しべの奥まで突き刺さってくるような感じです。
「あっ……いやあっ!」
女の穴を穿たれて、中で指を曲げて、どこかしらをつつかれると、腰が砕けました。
「ああっ……駄目! 恐い……」
快感が立て続けに腰を砕けさせて、半分は嘘、半分は本心を私に叫ばせました。私は、もうガリーナさんを虐めるどころではなくなっています。
ガリーナさんが私を遥かに凌いでいるのは、考えてみれば当然です。私の娼婦経験は、たった三月です。しかも、女同士は座興。何年も(夜毎に?)経験を積んできた人に勝てるわけがないです。
でも……物足りないです。マセッティ様の刷毛責めより甘くて、ふわふわして、それだけに砕けやすい砂糖菓子。快感が凄まじいだけに、もっとしっかりと噛み締めたいです。
「つねって……雌しべに爪を立てて……うんと痛く虐めてください!」
快感ではなく苦痛を、素直におねだりするのは、これが初めてです。それだけ、かつてない高みが見えているのです。その頂上から翔び立ちたい。
「なんてことでしょう。見習の初日から仕上がっているなんて……」
驚きながらも、ガリーナさんは望みを叶えてくれました。腰を抱いていた手も股間へ滑らせて、芽が千切れるくらいにきつく爪を立てながらひねってくれました。しかも、乳首に噛みつきながら。
「ぎびい゙い゙い゙……死んじゃうよおお!」
目くるめく飛翔、目くるめく墜落。マセッティ様の拷問にも比すべき絶頂を、私は極めました。
ここまで乱れたのは、第一にはガリーナさんの指ですけれど。ひと月以上も御無沙汰だったことと、聖書の勉強で頭が混乱していたせいもありそうです。
「凄いわね、この娘」
自分のことを言われたと分かって、私は余韻から頭をもたげました。
声の主はカヴァラさんです。
「どこまで仕上がっているか、試してあげましょう」
修道女の間での力関係も分からないうちから寮長に逆らうのは得策ではありません。それに、もっと快感か苦痛を与えてもらえそうです。
なので、指定された寝台におとなしく“V”字形に拘束されました。
「ガッタ、コルヴァ。あなたたちは、自分が犯した罪を理解していますか?」
カヴァラさんは、最初に指名した二人に反省を求めます。
「ガッタ。あなたは罪を自覚していまか?」
「妾(わらわ)は、何も罪を犯しておらぬ。罰したければ好きにするが良い」
この一人称は高貴な女性、それも人妻が使います。三十歳前後に見受けられますから、かつては夫のある身だったのでしょう。では、何故こんなところに。死別でしょうか。まさか、夫の手で?
「そうですか。では、あなたは外面だけではなく身体の内面でも反省なさい」
「これしきのことで妾が泣くと思ったら、大間違いですわよ」
負け惜しみを聞き流して、カヴァラさんはコルヴァさんにも同じ質問を繰り返します。
「教えてください。悪いところがあれば直します。辛子だけはお赦しください……」
コルヴァさんはすすり泣き始めました。
「では、あなたの悪いところを教えてあげます。そのように懲罰や祝福を本気で拒むこと――それが、ここでは最大の罪なのですよ」
「でも、ほんとうに厭なのです。つらいのです。恐いのです」
コルヴァさんは私より五つ六つ年上ですが、ここへ入れられてから日も浅いのかもしれません。
「まったく……それで、よくも誓願を立てたものですね。ガッタのように、いっそう過酷な懲罰をそそのかせとまでは求めませんけれど。そんなでは、じきに心が死んでしまいますよ」
カヴァラさんは、コルヴァさんにも『外と内からの反省』を命じました。そして、私に振り向きました。
「エレナ。もちろん、あなたもですよ」
私を見下ろす眼差しは、ブルーノ様やマセッティ様、そして院長様や司祭様とそっくりです。付け加えるなら、お継母様とも。カヴァラさんの心は、今は女ではなく、男性に同化しているのです。
「ありがとうございます。うんと虐めて可愛がってください」
ここでの作法は知らないので、心のままに返事をしました。私にとって「虐める」と「可愛がる」は同義なので、それもきちんと伝えました。
カヴァラさんが、淫戯の相手に選んだ二人に命じて、反省だか懲罰だかの準備をさせました。蓋付きの壺、箆、羊皮紙、そして三本の張形。
最初はガッタさんです。壺から箆で掬い取られたのは、黄色く粘っこい辛子です。良く練られていて、粒は混じっていません。それだけ刺激が強いです。予想していた通り、それを割れ目に塗り込めていきます。ガッタさんは天井を見上げて無表情。
「強情ですね。これでもですか」
カヴァラさんの指が割れ目の上端あたりで微妙に動きました。
「ああああ……痛い、熱い。妾は無実の罪で罰されておるのじゃ」
甘ったるい悲鳴です。私の悲鳴も、他人の耳にはあのように聞こえるのでしょうか。
カヴァラさんは箆を襤褸布で三度拭い、三度辛子を掬いました。ガッタさんの股間には黄色い辛子が盛り上がっています。そこに羊皮紙が被せられました。辛子は放置すると辛味が揮発します。それを防ぐ――ひと晩ずっと反省させるための処置でしょう。
そして張形です。壺に浸けられて真っ黄色になったそれが、無雑作に股間へ突き刺さされました。
「きひいいいっ……」
純粋の悲鳴です。
「あああああ、ひどい……妾は悪くないのに……酷い仕打ちじゃ」
恨んでいるふうではありません。悲運を嘆いている――いえ、酔っています。
張形の末端に革紐を巻いて、それを太腿に巻き付けて絶対に抜けないようにしてから。カヴァラさんはコルヴァさんに取り掛かります。
「いやあっ……熱い、沁みる! 赦してください!」
最初から大騒ぎです。今度は指の微妙な動きも見えました。
「ぎひいいいっ……死ぬううう!」
女の芽に塗り込められると、寝台を軋ませてもがきます。悲鳴もガッタさんの十倍くらいの大きさです。
「うるさいですね」
フランカが噛まされていたのと同じ猿轡が、コルヴァさんに着けられました。寝台の側面にある枷で腰の動きも封じられて。最後に辛子まみれの張形が挿入されました。
コルヴァさんは、くぐもった呻き声をあげながら、ぼろぼろ涙をこぼしています。きっと、その涙は甘くないと思います。
そして、いよいよ私の番です。
「望むなら、あなたも声を封じてあげます。まだ見習なのですから、すこしは甘やかしてあげましょう」
本来なら熟考するところですが、「甘やかす」という言葉に反発しました。コルヴァさんみたいに見苦しい様を晒したくないです。ガッタさんみたいな負け惜しみも性に合いません。
「要りません。もしも私の悲鳴がお耳障りでしたら、寮長様の判断で封じてください」
もしもカヴァラさんに嗜虐心があるなら、きっと心地良い音楽になるだろうという自信があります。
「そうなの。後悔しなければ良いのですけれど」
最初のひと掬いが、割れ目の周辺に塗られました。冷たいけれど、たいした刺激ではありません。そしてふた掬い目は花弁の裏側へ。
「くううっ……」
傷口に塩を擦り込まれるよりは柔らかですが、じんわりと沁み込んでくる痛さがあります。塩は傷口から滲む体液で薄まり流れていきますが、辛子はそうもいかないでしょう。それとも、淫らな汁が洗い流すでしょうか。
つるんと莢を剥かれました。そして……
「きひいいいっ……いい!」
最後は歓喜の悲鳴です。女の芽が燃え上がっているようです。激痛で縮こまるのが分かります。なのに、最大に勃起したところを粗い刷毛で擦られるよりも強い快感が腰を貫きます。
「あらあら。蜜があふれてきますね。ガッタよりも激しい」
念のためにと、四掬い目が割れ目を封じるように盛り上げられました。そして、羊皮紙をかぶせられます。縦に切り込みがあるのが見えました。張形を通すためです。
その張形は――女の穴の入口を先端で捏ね回してから。奥に突き当たるまで一気に押し込まれました。
「くっ……」
もっと太い張形を捻じ込まれたことだって何度もあります。たいしたことはない――と高を括っていたのはひと呼吸の間だけ。股間全体がじわじわと熱くなって、ついには燃え上がりました。
「あああああ……熱い、痛い……もっと虐めてください!」
本心です。割れ目を鞭打たれる鮮烈な痛みには遠いのです。前後の穴を同時に貫かれる膨満感もありません。
「ふふ、頼もしいですね。明日の朝も同じことを言えたら、院長様に申し上げて、祝福を与えていただきましょう」
中途半端な激痛(と快感)の中に私を放置して。他の皆さんも就寝の支度に掛かりました。半数の人が寝台にX字形に仰臥して、残った人に手足を拘束してもらいお腹を枷で押さえ付けてもらいます。それを繰り返して、最後にカヴァラさんだけが残りました。
カヴァラさんは同じ形でも俯せになりました。手足は自由ですが、そのまま動きません。やがて、ひとりの若い男性が部屋へ入ってきました。聖職者の身なりですから、二人の助祭様のどちらかでしょう。
彼はカヴァラさんの手足を拘束してから――下半身を露出して(どちらの穴かまでは分かりませんが)彼女にのしかかりました。
羨ましいなと思いました。もしも、私の修道院入りが決まったとき囁かれていた通りに、将来は修道院の女としての筆頭、つまり寮長になって。年下の娘を虐めて可愛がりたくなる心裡は、なんとなく分かります。権力のある者が弱者を甚振るのは快感でしょう。
唐突ですが――私に、将来の目標が出来ました。
カヴァラさんの言葉通り、熱く沁み込んでくる痛みは一晩中続きました。それでも、私は――痛みに目を覚ますことはあっても、微睡みました。苦痛の中の睡眠には慣れっこですから。
翌日は、また告解室で司祭様から聖書の真実をいろいろと教わりました。聖書には、独特の暗喩が鏤められています。
「誰某は彼女を知った」というのが性の交わりを意味するというくらいは、すこし教養のある大人なら知っています。実際には、もっと淫微で分かりにくい表現がたくさんあります。たとえば「差し出した」というのは、女性の行為であれば「みずからを」という言葉を補えば意味が明白になります。行為者が男性の場合は、「彼の娘」「彼の妻」「彼の姉妹」あるいは「彼の女奴隷」です。
聖書に良く出てくる葡萄や無花果や柘榴も、実に意味深です。ことに無花果と柘榴は何に似ているかというと……聖書に倣って、明言は避けます。ただ、女性がそういう果実を捧げる場面では「彼女の」という言葉を補えば、意味が明確になるのは確かです。
司祭様の(ということは、この修道院の)解釈では、近親姦も男が女に向ける嗜虐も大いに奨励されているのです。
強引な解釈だなと思う部分もありますし。そもそも、巻物に聖なる言葉で書かれている内容を司祭様が正しく翻訳してくださっているかも怪しいのですが、反論できるだけの素養が私にはありません。拝聴しているうちに、だんだん真実に思えてきました。辛子で腫れている女の穴も花弁も芽も、ますます熱く火照って涙を流します。
そうして。私の悦虐は神様の定めた摂理に反するどころか適っているのだと、そうも思うようになりました。これが、皆さんのおっしゃる「仕上がった」というものなのでしょうか。
先輩見習修道女のフランカは、すでに幾度も講義を受けているので、日常の作業、ことに重労働を割り当てられました。背中で祈りを捧げる姿に縛られたまま、腰に鎖を巻いて前から後ろへ回して鋤をつないで曳かされたり、同じ要領で荷車を曳かされたり。
私は明後日には入会の誓願を立てて、性隷として第二の洗礼を受ける予定になっている――その資格があると、院長様に申し渡されています。そして新米修道女として、結局はフランカと同じ重労働に従事させられます。
先々のことは考えても仕方がありません。
午後からは、賓客が私たち修道女に祝福を与えてくださるところを見学しました。賓客は俗人であっても、司教である院長様から聖別の儀を受けて、一時的に資格を与えられる――ずいぶんと勝手な理屈です。
私とフランカはお継母様、いえファジャーノ様に引率されて『祝福の間』へ入りました。世俗的な言い方をすれば拷問の間です。
そこには、上半身は裸ながら、どこかで見た肖像画に似ているようないないような殿方が、院長様直々の助言を受けながら、修道女に祝福を与えておられました。助祭さまと警備兵が一人ずつ隅に控えています。
ファジャーノ様は貴賓に向かって、花弁の片方を横へ引っ張りながらそちら側の膝を外へ曲げて、変則的な屈膝礼を執りました。フランカは両膝を着いて頭を垂れます。私は迷いましたが、フランカは平民の出だろうと判断したので、ファジャーノ様に倣って、もっと変則的な屈膝礼にしました。ただ片脚を横へ曲げて膝を折っただけです。だって、花弁を摘まもうにも、両手を背中へ捩じ上げられています。
「こちらは、元修道女で、還俗してクリスタロ侯爵の養女となり、ラメーズ伯爵の後妻に迎えられたファジャーノです。その隣が、彼女の継娘にして見習修道女のエレナ。もう一人の見習がフランカです。見習の二人、ことにエレナは、いずれ殿下に祝福を与えていただくこともございましょう」
フランカは付け足しみたいな院長様の紹介です。
殿下はたいして興味も無さそうに、大きな鉄の箱に向き直りました。
「おまえたちもご相伴に与りなさい――よろしいですわね、殿下」
私とフランカは、殿下の左右に並ぶ形で水槽の窓に顔を寄せました。
中では私より二つ三つ年上の修道女が首まで水に浸かりながら、梯子のような物を登っています。両手は太い鎖で後ろ手に縛られ、両足には短い鎖で鉄球を引きずりながら。まだ全員の名前を覚えていませんが、たぶん兎(コニーギャ)さんです。
登り続けているのに、いっこうに水から出られません。梯子の踏桟が下へ動いているのです。踏み桟は梯子の裏表に並んでいて、上と下でつながって大きな歯車で折り返しています。そして踏桟は細長い飼葉桶のようになっていて、コニーギャさんが(結局は)その場で足踏みをするごとに水を汲み上げています。汲み上げた水は鉄の水槽の上に吊るされた大きな桶に貯まるのですが、桶の横からは二本の湾曲した太い筒が伸びていて、彼女の頭上から水を浴びせています。
もし足を止めたら水底まで沈むし、水槽の水も増えて溺れ死ぬのです。命懸けの不毛の重労働です。
「こんなの……見たことがない」
フランカがつぶやきました。
「これは殿下が発明なさって、王都で作らせた物を寄進してくださったのだ」
殿下とも呼ばれるお方なら、国政にも関わっておられましょう。その叡智を国民のために使っていただきたいものです。
「ふむ、限界のようじゃの」
覗き窓の向こうで、コニーギャさんが足を踏み外しました。後ろ手の鎖に引っ張られて仰向けに倒れて、立ち上がろうともがいていますが、起き上がれません。
「レミジオ!」
院長様の声に、助祭様が水槽に駆け寄り、素早く半裸になって脇の梯子から水槽に飛び込みました。兵士が天井の滑車から垂れている鎖を下ろします。
助祭様は鎖の先端の大きな鈎をコニーギャさんの後ろ手鎖に引っ掛けて。兵士が一人で軽々と釣り上げました。滑車は大小が組み合わさっているので、梃子みたいに働くのでしょう。
でもコニーギャさんは、たまったものではありません。後ろ手のまま吊り上げられるのは肩が脱臼しそうになります。足の錘で、なおさらです。
「ああああ……痛い……」
この人も仕上がっています。苦悶の中に気怠い響きが混じっています。それとも、ただ疲れ果てているだけでしょうか。
「水位を下げろ」
殿下のご命令で大桶が水槽に沈められて、かなりの量の水が汲み出されました。
「あの女は、しばらく踊らせておけ。余は、この若き未熟な二人に洗礼の手ほどきをしてやりたい――これじゃ」
殿下は左右の手を交互に上げ下げしました。それだけで、院長様に意味は通じたようです。
私とフランカはいったん拘束を解かれて、コニーギャさんと同じに太い鎖で後ろ手に縛られました。ずうんと重たくて、踏ん張っていないと転びそうです。
私たちの前に大きな鉄塊が置かれました。真ん中に環が取り付けられていて、もっと太い鎖が通されています。私たちは首に鉄枷を嵌められて、鎖の両端につながれます。鎖が短いので、二人のうちどちらかがしゃがむか、二人とも中腰でいなければなりません。
院長様と殿下が私たちの身支度(?)を調えている間にコニーギャさんは、突き出た棒の先に“L”字形の腕が生えた台の上に、別の滑車で吊り降ろされて――予想していた通り、股間を“L”の上向き部分で突き刺されました。手足には軽く装飾性の強い環を嵌めているだけで、まったく拘束されていませんけれど、串刺しから逃れるには、張形が抜けるまで高く跳び上がるか、台もろともに倒れるかしかありません。腰が伸びた姿勢から跳ぶなんて無理ですし、重たい台を倒すのも難しいでしょう。倒れたら倒れたで、穴の奥を突き破られるかもしれません。
兵士が分厚い鉄の円盤を手で回し始めました。コニーギャさんの腰がゆっくりとくねります。
女の穴は常に、“L”の垂直な部分の真上です。台から突き出ている支柱を躱すために、支柱に近い側の脚を上げなければなりません。回転につれて足を踏み換える必要があります。
回転が速くなってくると、自然と手を振って身体の釣合を取ります。
しゃん、しゃん、しゃん、しゃん……軽やかな鈴の音が石壁に響きます。熱した鉄板の上で踊らされたときと似ています。けれどコニーギャさんの顔に浮かんでいるのは、苦痛の奥から滲み出る悦虐ではありません。淫らに腰を振らされる恥辱の火照りと、女の穴を抉られ捏ね繰られる純粋の快感です。恍惚です。
もっとも。重たい鉄球を引きずりながら無限に梯子を登らされた疲労が溜まっていますから、そう長くは続かないでしょう。続けさせられても、じきに倒れて台から転落するかもしれません。うまく受け止めてもらえれば良いのですけど。
他人の心配をしているどころではありません。鉄の塊が滑車で吊り上げられ、私とフランカの腋にも縄が巻かれて、もろともに宙吊りです。
兵士が素裸になって、水槽に立て掛けられた梯子の上に立っています。彼の股間はそっくり返っています。さすがは施虐修道院の一員です。
フランカが耳元に囁やきます。
「あたいも祝福を受けるのは初めてだけど、一度だけ見たことがあるよ。ゆっくり十(とお)数えてから、あたいの真似をしなよ」
盗賊団の姉御顔負けの言葉遣いです。とにかく、小さく頷いておきます。
私たちは水槽の上へ押し出されて。
がらら……ざぶん。一気に水中へ沈められました。鉄塊に首を引っ張られ、両手を縛る鎖に押さえ付けられて、二人とも水底にへばり着きます。
すぐに兵士が飛び込んできて、錘に引っ掛かっている鎖の鈎と私たちを吊っていた縄を抜き取り――助け起こしたりはしてくれずに上がっていきました。
娼館の女将さんに逆さ吊りにされて水に浸けられたときよりはつらくないですが、立ち上がって水面から顔を出さなければ、いずれ溺れ死にます。
ところが、立ち上がるどころか。鎖を横に引っ張られて、胸が鉄塊に押し付けられました。さらに鎖が強く引っ張られます。
水でぼやけた視界の中で、フランカが立っているのが見えました。そうです。鎖が短いので、ふたり一緒には立てないのです。
「十(とお)数えてから」フランカの言葉を思い出しました。
ゆっくりと、九つまで数えたところで、フランカがしゃがんで、さらに顔を鉄塊の環に押し付けました。
私の番です。鎖の重さに逆らって身体を起こし、両足を踏ん張って……どうにか立てました。
「ぶはっ……はあ、はあ、はあ」
空気を貪ります。
フランカが肩で足をつつきました。替われという合図です。
私は大きく息を吸い込んでからしゃがみ込んで、フランカの真似をして鉄の環に顔というよりは喉を押し付けて、少しでも鎖を伸ばしてあげます。
フランカが、よたよたと立ち上がって。私が十を数え終わるか終わらないうちに、私に譲ってくれました。
上から吊るされている大桶には、大量の水が汲まれています。もしも、あれを流し込まれたら……ふたりとも溺れ死ぬでしょう。
そんなことは殿下も院長様も絶対になさらないだろうと信じて、とにかく次のひと息を何回も何十回も繰り返して――無事に引き上げてもらえました。
殿下と院長様に対する絶対の信頼と忠誠の礎石が、私の心の底に置かれました。と同時に、フランカとは生死を共にした仲間といった紐帯で結ばれたのです。これは、私だけの思い入れかもしれませんけれど。
――殿下の最後の祝福は、疲れ果てた身体をほんとうに鞭打たれながら、恍惚として踊り続けたコニーギャさんに与えられました。拷問台に磔けられて、恍惚に恍惚を重ねる彼女の乱れっぷりをしっかりと見学させてもらってから、私たちは祝福の間を後にしました。私は太腿にまで淫らな汁で濡らしてファジャーノ様に褒められたのですが、フランカはそれほど感銘を受けたようには見えませんでした。
それにしても。以前のお継母様だったら、きつくお叱りになって鞭のお仕置きをくださっていたところを、今は褒めてくださるのですから……戸惑うばかり。と、控え目に表現しておきます。
寮へ戻って。昨夜と同じ要領で夕食を摂って。今夜は誰も反省を命じられず、私も昔懐かしい“X”字形の姿勢で眠りに就きました。
そうして、施虐修道院で三日目の朝を迎えました。
今夜の私は『内省の夜』だから粗相があってはいけないという理由で、断食をさせられます。水分もできるだけ我慢しなければなりません。それなのに。誓願の前に必須の儀式なのに、その内容は誰も教えてくれません。まあ、半日後には分かるのですから、気には病みませんけれど。
もう見習修道女の正装もせず、略装つまり全裸で寮に籠もって、聖書を読んで過ごしました。もちろん、聖なる言語ではなく日常語に翻訳されたものです。
そんじょそこらの教会だと、主要な部分の抄訳があれば良いほうなのに、ここでは原典も翻訳も全巻が揃っています。王族や諸侯の庇護を受けているだけのことはあります。この様子では花代、こほん、お布施の額も高級娼館である『踊る花の館』の何倍なのか何十倍なのか、とにかく桁違いでしょう。
それはさて措くとして。司祭様に教わった『裏読み』をすると、聖書ではなく性書、それも近親姦と嗜虐に満ち溢れた物語になります。ほんとうに、これは原典の正確な翻訳なのでしょうか。おそらく、ここの原典に照らせば正しいでしょう。でも、世界にひとつしか無い原本と一致している保証はありません。
私は神学者ではありません。女です。ですから「女は男に虐げられることに悦びを見い出せ」という巻物の記述を素直に信じます。
それでも、聖書なんて退屈です。修道女の皆様は生活に必要なお仕事をしているか祝福を受けていて、祝福の傷を養生していた椋鳥(ストルナ)さんも助祭様の(どの方面かは分かったものではありませんが)お手伝いです。だだっ広い部屋の中に、私ひとり。せめてファジャーノ様がいらっしゃれば、今なら打ち解けていろいろとお話もできるでしょうに。どこにおいでなのかすら分かりません。
退屈と『内省の夜』への好奇心と不安とを持て余すうちに陽も落ちて。私はマルコ助祭様に案内されて、略装で(しつこいけれど全裸です)礼拝堂へ赴きました。
そこには院長様と司祭様、そしてファジャーノ様がお待ちでした。
床に大男用の棺(ひつぎ)みたいな箱が安置されています。蓋は開けられていて、黒い鞠のような物が敷き詰められています。
その前で、私は奇妙な形に拘束されました。腕は柔らかな布帯で緩めに体側へ縛り付けられ、太腿と足首も縛られました。そして、両手に革袋をかぶせられました。口に詰物をされて布で口を覆われ、耳を粘土でふさがれます。そして最後に、真っ黒な分厚い目隠しです。見ることも話すことも聞くことも、身体に触れることすら出来ません。
そして抱きかかえ上げられて、柔らかな物の上に寝かされました。棺に入れられたのです。
不意に、心臓が早鐘のように拍ちだしました。正体の分からない不安に包まれました。
ごとん……蓋の閉じる響きを、微かに肌に感じました。
コン、コン、コン……釘を打つ響き。
「んむううううっっ……!」
生き埋めにされた恐怖が蘇りました。凄まじい恐慌に襲われました。
なんとしてでも脱出しなければ!
「む゙も゙お゙お゙お゙お゙お゙っっっ!!」
身体を起こそうとして頭を蓋にぶつけました。身体を捻って肩で押し上げます。膝で蹴り上げます。蓋は動きません。
全身でもがいて、身体を棺に打ち当てます。がたんがたんと揺れて、床を打ちます。
不意に揺れなくなりました。いよいよ、土をかぶせられたのです。
嫌だ! 死にたくない……誰か助けて!
誰かの手が私に触れました。目隠しが外され、口の詰物を抜き取られました。
「うわあああん……」
小さな子供のように泣きじゃくりました。
「こわいよお、しにたくないよお……!」
耳が聞こえるようになりました。
「いったい、どうしたというのだ?」
院長様が困惑を浮かべて、私の目を覗き込まれました。
それで、すこし落ちつきました。私は、まだ生きています!
「あの、あの……」
「エレナ、落ち着きなさい。ここには、あなたに……致命的な危害を加える人なんていないのよ」
お継母様が抱き締めてくださいます。
ああ、そうだった。思い出しました。私は『内省の夜』という儀式に望んでいたのです。
「私……口封じで生き埋めにされて殺されかけたことがあるんです。その恐怖が押し寄せて来て……それで……」
お継母様の腕が手が、強く優しく私を包んでくださいます。
「種明かしは禁じられているのだけれど……明日の朝には終わるのよ。耐えなさい」
「いやあっ……!」
理性ではなく感情でもない、魂の叫びです。
「もう、修道女になんか、なりたくない。戻して……処刑台に戻して!」
闇の中で痛みも感じずに、暗闇で独りでじわじわと死んで行くくらいなら、衆人環視の中、槍で刺し殺されるか焼き殺されるほうが、ずっとましです。そんなことにはならないと分かっているのに、全身の震えが止まりません。
皆様、困り果てた顔で私を見下ろしています。
「院長様」
お継母様が院長様を振り仰ぎました。
「私も一緒に閉じ込めてください。この子は、改めて自身と向き合うまでもなく、被虐による肉と魂の悦びを知っています。絶対的服従への安堵を知っています」
「いや、伝統を破るべきでは……」
「面白いかもしれぬな」
司祭様の言葉を院長様が遮りました。
「母親が娘を導くのは珍しいことではないが、『内省の夜』を……うむ、『訣別の夜』……いや、十八で生んだ娘が十五。でなくとも継娘なら、二十幾つもあり得るか。よし、この試みがうまく運べば『双照の夜』と名付けよう」
院長様は独り合点に頷くと、私の拘束のすべてを解いてくださいました。
急遽、葡萄酒が用意されて、それを水で薄めたものを、何杯も飲まされました。お継母様もです。喉の渇きが潤されるとともに、断食のせいで、お腹が熱く燃え上がります。
革帯が床に並べられて、そこに私が仰臥します。お継母様が逆向きに覆いかぶさってきました。これは淫らな戯れの形です。
神聖な儀式のさいちゅうに不謹慎な――とは思いません。この施虐修道院に、淫らで残虐ではない生活も祈りも存在しないのですから。
固く抱き合う形でふたりをひとまとめにして、革帯でぐるぐる巻きにされました。顔を股間にうずめて、頭を上げられないように縛られました。さしずめ、お継母様の太腿が目隠しで、口は女性器でふさがれます。手で自分の身体に触れられないのも、前と同じです。
そうして、横臥の姿勢で棺に入れられました。今度は蓋をされても釘付けにされても、心は落ち着いています。
暗闇の中で、お継母様の形が、しっかりと温かいです。甘酸っぱい乾酪の匂いが心を掻き乱しますけれど。
一昨日みたいにご奉仕しても良いのかしらと、迷っていると。
ぞろりと、割れ目の内側を舐められました。
「み゙ゃんっ……」
不意打ちに悲鳴をくぐもらせると、お継母様の腰がぴくんと跳ねました。吐息が女の芽を直撃したのでしょう。
お継母様は我が意を得たりとばかりに、舌も唇も歯も使って、鼻先まで動員して、私を虐めに掛かりました。
感動です。あんなに(私には)傲慢で厳しかったお継母様が、私の淫らな部分を食べてくださるなんて。
私も負けていられません。三か月の娼婦生活で得た経験と一昨日にガリーナさんから教わった遣り方を総動員して、お返しします。どちらが先に逝かされるか勝負です。それとも、先に達っしたほうが勝ちでしょうか。どちらにしても、引き分けになれば素敵です。
手を使えないのがもどかしいのですが。背中をぎゅっと抱き締めて、そして抱き締められているのも、なんだか普通の恋人同士みたいで悪くありません。世間一般の常識では、二重に背徳的ですけれど。
乳首もなんとか刺激できないかなと、身体を揺すってみましたが、お継母様のお腹に密着しているので無理でした。
そんなことはしなくても、お継母様の舌技は素敵です。私は、たじたじです。でも、お継母様は坂道を登りながら、私が遅れそうになると立ち止まって手を引いてくださったので――なんとか同時に断崖絶壁から手を取り合って墜落できました。
飛翔とまではいきませんでした。生さぬ仲とはいえ母娘という薬味も、太い男根には敵いません。鞭も無いし、お尻の穴も置いてけぼりですもの。淡い砂糖菓子でしかありません。
でも、それは肉の悦びについての感想です。魂の悦びについては、これまでとは異なる充足がありました。もっとも、以前の厳しいお継母様を懐かしむ気持ちもあります。
あまり長く余韻にたゆたうこともなく、いつしか私たちはおしゃべりを始めていました。といっても、相手の下のお口に話しかけるのですから、勝手が違います。顔が見えない分だけ、素直になれたと思います。
「院長様が十八と十五とか、まして継娘とかおっしゃってたでしょ。お腹を痛めて産んだ娘でも、生贄に差し出すって意味なの?」
こりっと、女の芽を噛まれました。甘噛みではなく、お仕置きめいた痛みです。
「生贄ではありません。娘の幸せを願ってのことです。腕力があって権力もあって逞しい祝福の棒をお持ちの殿方に、虐げられ庇護される幸せをエレナは知っているでしょうに」
お継母様のおっしゃることは分かりますが、大切な部分が欠けているように思います。魚のような目をした人には、虐められても恨みが募るだけです。媾合えば身体は反応しますが、官能はありません。そして、瞳に淫欲と嗜虐の焔が燃えていれば、私はその方が男であろうと女であろうと、心を揺さぶられます。お継母様、いえファジャーノ様や寮長様に可愛がっていただいて、それを確信しました。『踊る花の館』の女将さんは駄目です。保身のために、花を枯らそうとしたのですから。
「……あればねえ」
一瞬の物思いの裡に、言葉を聞き漏らしました。
「なんて、おっしゃったの?」
「ベルタに、すこしでも被虐への憧れがあったら――そう言ったのです」
割れ目に向かって囁くのですから、聞き漏らしても不思議はないと思ってか、咎める口調ではありません。
「おまえときたら、十になるやならずの頃から兆していましたから――つい、我が子を差し置いて躾けてしまいました」
では、独り遊びへの厳しいお仕置きも、恥辱の“X”字磔も、私の悦虐を育むためだったのですね。もちろん、恨んだりはしません。だって、お継母様のおっしゃる通り、女の真実の幸せを得たのですから。
「あの……まさか、私が誘拐されたのも?」
「いいえ」
言下に否定なさいました。
「もしも、あの子の目論見通りにお前が殺されていたら、婚約を解消して、ここへ送り込むところでした。まったく素質の無い女など存在しませんから……たとえ見習期間が三か月を超えようとも」
裏を読めば、素質に欠けるように見える娘でも三か月もあれば悦虐に目覚めるということです。
「お継母様は、そこまでお考えだったのですね」
「それが義務でもあるのです」
王族は畏れ多いですし、常日頃から手厚い庇護を受けていますから例外ですが、修道女を落籍させるには数千グロッソもの寄進を求められます。侯爵だろうと大商人だろうと、身代が傾きます。ただし、その家の娘を将来に入会させると誓約すれば、良家の子女を闇売買する程度の金額まで下がります。大抵は、身請けした修道女に産ませた娘か幼い養女を迎えて、その家の娘にふさわしい教育を施します。私のように後妻に直った修道女が、前妻の娘を――という例は珍しいそうです。
「誰だって、自分が産んだ子供がいちばん可愛いものです」
つまり、修道女は皆が仕上がっていて、悦虐の幸せを信じて、いえ、体感しているのです。
「フランカは、やっつけ仕事ですけれどもね」
予定していた娘が病没して、やむを得ず適当に見繕った身替りを差し出したのだとか。娘を簡単に売るような下層民なら、あの言葉遣いも納得です。
知れば知るほど驚くことばかりです。その中でいちばん驚いたのは――お継母様がほんとうに私の幸せを願っていてくださったことです。
それも、一時ではなく生涯に渡って、です。というのも、花の命は短いのですが、修道女は娼婦と違って、落籍されることなく引退した者には、聖エウフェミア基金からじゅうぶんな年金が支給されるのです。十数年に及ぶ祝福で痛め付けられた身体で、どれだけ長生きできるかは分かりませんが、誰であれ寿命は神様しかご存知ないのです。
その他にもいろいろとお話をうかがい、私も、お継母様が放った密偵でも承知していない冒険の詳細をあれこれと語りました。お母様は、とても羨ましそうな相槌を(私の下のお口に向かって)打ちながら、聞いていてくださいました。
ふっと話が途切れたとき。私は当然の疑問に行き当たりました。
「ねえ、お継母様。お父様とは……?」
さすがに気恥ずかしくて、語尾が立ち消えました。
「旦那様が私を見初めてくださったのは、ここ聖エウフェミア女子修道院です」
それだけで答えになっています。
「私も、世間一般では旦那様とは別の寝床に就く歳ですけれど……私のここでの振る舞いが旦那様に対するそれとはまったく異なっているというわけではないのですよ」
つまり現役だということです。
「真夏にも、私が胸元も手首も隠れる服しか着ないのは、そのためです」
これを、世間一般ではお惚気と呼ぶのでしょう。
しばらく安らかな沈黙が続いて。だんだんと、私は安らかではなくなってきました。薄めた葡萄酒をたくさん飲んだ結果が差し迫ってきたのです。とても、朝までは我慢できそうにありません。
牢獄では、日常的に垂れ流していました。でも、ここは仮初にも神様の御前です。それ以前に、私の割れ目はお継母様の口でふさがれているのです。
「催してきたの?」
私が腰を文字尽かせていたので察したのでしょ。お継母様が、「喉が渇いたの」みたいな口調で尋ねます。
「あの……我慢します」
出来もしないことを約束するなんてつらいです。
「かまわないのよ。全部飲んであげます。零したりしたら、大変なことになりますから」
棺に詰められている黒い丸い球は、海綿を絹布で包んだものだそうです。高価な海綿と絹を台無しにするだけではありません。水を吸って玉が膨れると、棺の底に何十か所も開けてある空気穴をふさぎかねません。そうなると、二人揃って窒息します。
殿方のお小水を飲まされたことはありますけれど、その反対はありません。まして、相手はお継母様です。
「出しなさい。私も出します。全部飲み干してちょうだいね」
言葉が終わると、生温かい水がちょろちょろっと口の中に注がれました。殿方とは微妙に味も舌触りも違っています。すこしだけしょっぱいのに、甘く感じられます。これは、お継母様への親近感からくる錯覚かもしれません。微妙に粘っこいのは、淫らな蜜が混じっているせいでしょう。
ちっとも嫌悪を感じずに。支配されているという辱悦も無く、飲まされているのではなく飲んであげているという歓びの裡に、私は一滴余さず飲み干したのです。
いよいよ、私の番です。お腹の力を緩めて……いるつもりですが、どうしても流れが生じません。なのに、出そうと決心したので、尿意だけが急速に高まっていきます。つらいです。苦しいです。悦びのない苦しみです。
お継母様の舌が割れ目に押し挿ってきて、女の穴より上のあたりをつつきました。と同時に堤防が決壊して、お継母様のせせらぎとは違って、何もかもを押し流すような奔流が生じました。
「あああ……ごめんなさい」
お継母様は言葉を返すことも出来ず、割れ目をぴたりと唇でふさいで、本流を飲み干してくださいます。
互いに互いを辱めた――いえ、男根で貫くよりも深い契りを交わした。そんな気分になりました。
私とお継母様はきつく抱き合って、闇の中へ溶け込んでいったのです。
三位一体の典
棺から出されたときは、生まれ変わったような心持ちでした。私だけが寮へ戻されました。
晴れの洗礼典ということで、必要最小限の仕事を除いて、修道女の過半数がまだ寮にとどまっています。
私は朝食として、汁にふやかした少量の麺麭と果物だけをいただきました。断食の後で普通の食事を摂ると戻してしまうそうです。
食事の後は身支度です。大きな盥で身体を清めて、それから叢を剃ってもらいました。
修道女は『踊る花の館』の娼婦と同じように手入れはしていますが、無毛の人はいません。ごく短い生えかけの人は少なくありません。それは賓客にそいう祝福を与えていただいたからです。軽い火傷を負っている人もいます。焼鏝や蝋燭を使うか剃刀を使うかは人それぞれですが、手入れの行き届いた芝生よりは不毛の丘陵を望まれる賓客のほうが多く、それも御手ずからなさる方が大半だそうです。
豪奢な庭園をお望みの賓客もいらっしゃいますが、問題はありません。高い地位にある殿方は、相応に多忙です。ひと月もふた月も前から予定を組んで、万障繰り合わせてのご訪問ですから、準備に怠りはありません。
そういう次第で、洗礼を受ける娘は「自然のまま」にあるのが通例ですが。私だけは、素敵な飾りを下腹部に焼き付けています。見栄えを良くするために無毛で礼典に望むことになったのです。
けっこう煩わしい作業です。というのも、焼印の文字と枠が盛り上がっているので、剃刀では傷付けかねません。蝋燭で火傷をしても宜しからぬということで、その部分には毛抜を使いました。お陰様で、新しい種類の痛みを堪能できました。毛根の大半が焼き潰されているのが残念でした。
一本ずつ抜いていくのは退屈な作業です。それをしてくれた牛(ムーロラ)さんと金糸雀(カナリーナ)さんは、修道院の日常のあれこれについて教えてくれました。私がいちばん興味を持ったのは、冬の過ごし方です。
真冬でも、裸同然の服装は変わらないのです。ちっとも興奮しない虐待です。もっとも、この地の西は地平線のすぐ向こうが海になっているので、そんなには冷え込まないのだとか。そして、修道院の建物のほとんどは壁が二重になっていて、その隙間を暖炉の熱い空気が巡るようになっているから、室内では震えるほど寒くはないそうです。床は冷たいのですが、冬だけは裸足でなくて木靴を許されます。どうしても戸外での作業が必要なときは、これこそ修道院での本来の修行なのだと諦めるしかありません。
中には、酔狂で残忍な賓客がいらっしゃって。ご自分は外套にくるまりながら、寒風の中で修道女に祝福を与えるのがお好きだという鬼畜……失礼しました。凍えた肌を打つ鞭の痛みは、格別に厳しいとか。さすがの私も、体験してみたいとは……思わないとしても、体験させられることでしょう。
そんなことを妄想ではなく予感したせいで、二人にからかわれるほど濡らしてしまいました。
そうして準備万端調って。私は見習修道女の正装――全裸ですが、昨日までの私のための枷と鎖ではなく、フランカと同じに後ろ手に祈りを捧げる形に縄で縛られた姿で、先輩修道女に両側から乳首を引っ張られて、礼拝堂へ赴きました。フランカを除いて皆さん、被り物で髪を隠しているので修道女らしく見えます。視線を下げると台無しですけれど。
礼拝堂へ足を踏み入れて。先輩方が左右へ分かれる中、乳首に導かれて祭壇へ歩みます。
そこに待ち受けているのは、院長様を始めとする四人の聖職者とお継母様、そして……
「お父様?!」
ほとんど悲鳴です。
「しっ……」
乳首をつねられました。
昨夜のお継母様のお話では、お父様もここがどういうところかご承知の上で、私を送り込もうとなさっていたのですから、実の娘の晴れ舞台を我が目でご覧になりたいのでしょう。ですが……司祭様に教わった聖書の真実が気に掛かります。近親姦を忌むどころか推奨しているのですから。
まして、お父様は腰布一枚となれば、なおさらです。
私の懸念(期待かもしれません)をよそに、儀式が始まります。
十字架も絵画も聖書すら取り払われて白い敷布だけが掛けられた聖壇から二歩ほど離れて、私は縛られたままで跪きます。先導の二人が他の修道女の列へ戻って。
「ラメーズ伯爵マッキ・コルレアーニが長女、エレナ。この者は、隷従の安らぎを知り、恥辱を誉れと成し、苦痛の悦びを知り、姦淫の愉しみを知る女として、今まさに生まれ変わらんとする。よって、ここに洗礼の秘蹟を授ける」
院長様とお父様が、私の前に向かい合って立ちました。お父様が腰布を取りました。神様の御前だからなのか、実の娘には淫欲を催さないのか、うなだれています。
お父様のそこを見るのは初めてですが、娼婦として評価するなら、人並みです。もちろん、ちゃんと勃起するという前提で。
ですが、これがお母様を耕して私の種を植え付けた鋤かと思うと、感慨もひとしおです。
院長様がお父様(の股間)に向かって十字を切り、美術品として貴族の客間に飾っておくのがふさわしい水差しに指を浸して聖水(でしょうね)を振り掛けました。
「汝は聖別された。この娘に聖水を注いでやりなさい」
お父様が男根を手で捧げ持つ――までもありません。太く長くなりながら鎌首をもたげます。むしろ手で押さえて、筒先を私に向けようと苦労なさっています。
昨夜はお継母様の小水を飲み、今日はお父様のを浴びるのです。私は頭を垂れて、受洗を待ちました。
ほどなくして――ちょろちょろっと頭に生温かい聖水が注がれました。髪を濡らし顎を伝って、腿に雫が垂れます。
「頭(こうべ)を上げよ。口を漱(すす)げ」
院長様のお言葉にしたがって顔を上げ口を開けました。
ところがお父様は……
「わ゙、ら゙……」
ほんとうに嗽(うがい)をしたみたいになって、口を開けたまま目を閉じました。だって、お父様は筒先を振って、顔一面に浴びせてきたのです。顔だけでなく、全身に浴びせます。
私には何であれ、口に放出された殿方のものを吐き出す習慣がありません。娼館では、そういうふうに躾けられ、牢獄では強制されています。まして礼拝堂の中では非礼です。かといって、飲み下す勇気もありません。お継母様のが平気だったのは、暗闇の中で二人きりでしたし、切羽詰まっていたからでもありました。今は数多くの目があります。ここの修道女は誰しも同じような洗礼を受けているのでしょうが、それでも恥ずかしいです。
全身ぐしょ濡れになって。そこで儀式が停滞しています。
「聖水を飲み干しなさい」
院長様に𠮟られて、ようやく決心がつきました。お父様のだと思わなければ、むしろ平気でした。
お父様が退き、院長様が私の前にお立ちになりました。
「この女は、ここに生まれ変わり、新しい名を得た。すなわち、蛙(ラーナ)である」
私は、ひどく落胆しました。他の人たちは家畜や鳥の名前なのに。
失望の裡に、私は立ち上がりました。院長様が十字架の先端で、私の左右の乳首と口と股間に触れて十字を切りました。わたしは、その十字架に接吻しなければなりません。
先輩方が寄って来て、桶に何倍もの水を頭から浴びせます。水は石床に落ちて、外へと流れます。牢獄と同じで、目には見えない傾斜が付けられているのでしょう。
最後に見習修道女の正装を、つまり縄をほどいてもらって、濡れた髪も簡単に拭ってもらって。私は院長様の前に跪きます。
「では、ラーナよ。汝は祝福に満ちあふれた聖エウフェミア女子修道院での暮らしを望むや?」
ここからは誓願の儀です。誓いの言葉は、今朝から何度も繰り返して、大筋は覚えています。一言一句も間違えてはならないのではなく、覚悟の程を披瀝すれば良いのです。自分で工夫してもかまいません。
では、誓いを立てます。
「私、ラーナは、以下の如くに誓願致します。
「私は、主が創り給いしアダムの息子たちに隷従してそれを安寧と為し、彼らに与えられる苦痛を悦び、恥辱を誉れとし、すべての穴に彼らを迎え容れて淫らに悶えたく、ここ聖エウフェミア女子修道院への入会を望みます。
「私は、この心と身体を、すべてのアダムの息子たちに捧げます。彼らが私を愛でる限りは、ここに留まります。彼らのうちの誰かに強く望まれるか、誰にも愛でられなくなったときには、速やかにこの地を去り、この地で行なわれた秘蹟については固く口を閉ざして余生を送ります。
「私が誓願に違背することあれば、主よ、直ちに私を滅ぼしてください。
「アーメン」
先ほど十字架が触れた順番で女の敏感な部分を使って十字を切りました。
「汝の誓願は受け入れられた。向後は、聖エウフェミア女子修道会の一員として清貧と淫乱と隷従の日々を過ごせ」
こうして、私はいわば女囚兼娼婦となりました。これで儀式は終わったのでしょうか。お継母様は、ただの立会人だったのでしょうか。
いいえ、やはりそうではありませんでした。
「秘蹟にふた親のいずれかが立ち会うのは珍しくないが、父と子と性隷とが揃うのは稀である。せっかくの機会であるから、これより至高の秘蹟たる三位一体の典礼を執り行なうものとする。神の子を祭壇へ」
二人の助祭様に、また乳首を引かれて、私は祭壇に横向きに仰臥しました。頭は端からはみ出てのけぞり、お尻宙に浮いています。
頭の側に、お継母様が立ちました。私の目の前には、妖しく絖る亀裂があります。それが私の顔に押し付けられました、昨夜よりもずっと強く。
私は促されなくても、舌を伸ばします。お継母様は私の双つの乳首を優しく転がしたり厳しくつねってくださいます。左右別々にそれをされると、惑乱してしまいます。
あ……女の芽にも指が。これは……お父様です。実の父親に女として可愛がっていただく。数日前まででしたら、如何に私でも、おぞましく思っていたかもしれません。やはり、司祭様の教育で、私は変わっています。私は背徳の甘い蜜の味を知ったのです。
ああ、そうかと――三位一体の真の意味を悟りました。文字通りに、父と娘と性の奴隷とが一体となるのです。
その至高の瞬間へ向けて、お父様とお継母様の指が、私を追い上げていきます。
「ん゙む゙ゔ……んんんっ」
禁忌の蜜は濃厚です。たちまちに、全身が燃え上がります。頭に官能の霞が立ち籠めます。
「ん゙も゙お゙お゙お゙っ……!」
二人が示し合わせて、同時に三つの突起をつねりました。私はいきなり宙に投げだされて。そしてすぐに引き戻され、さらに追い上げられます。
不意に、お父様の指が消えました。お継母様も手を止めました。お父様が私の脚を肩に担ぎました。
いよいよです。
すっかり馴染んだ、でも初めての感触が、ずぐうっと押し入ってきます。根元まで突き挿さりました。私が濡れ過ぎているので、ちょっと物足りないです。でも、心は満足しています。
お父様がお継母様を引き寄せているのが気配で分かります。きっと接吻をなさるのでしょう。
これで、三人は閉じた三位一体となりました。
あっ……大切なことを忘れています。院長様もお父様も、その必要を認めなかったのかもしれませんけれど。お父様は羊の腸を使っていません。私も酢で洗っていません。お父様の子を授かってしまったら、どうしましょう。
まだ、私の悦虐の旅は始まったばかりです。早々に還俗なんてしたくないです。
そうだ。お父様に実の娘(には違いありません)として引き取っていただいて。じゅうぶんに世間の常識とか道徳を教え込んでもらいましょう。背徳と禁忌の蜜を味わうには、良識にまみれていなければなりません。そして、年頃になったらここへ入れて。私の手で(だけでなく全身を使って)仕込んであげましょう。
そんな遠い将来の妄想に耽っているどころではなくなりました。お父様が女の芽に爪を立てながら激しく腰を打ちつけてきます。私は苦痛と快感の坩堝にほうりこまれました。
お継母様も割れ目でお口を蹂躙しながら乳首を虐めてくださいます。
「ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ……」
私は至福に包まれながら、かつてない高みへと、どこまでも追い上げられていくのでした。
[完]
========================================
はい、脱稿しました。ので、「ダッコちゃん」です。

とりあえずご報告まで。
祝杯あげたり、紙飛行機作ったり、ゲームしたりと忙しいので、クロールです。微妙に違いますが「抜き手」とも言います。
Progress Report 8':公女巡虐
登場人物の名前変更です。
普通の家名を洗礼名に変更しました。
修道院長 オスティ→ドミニコ
司祭 アルフィオ→サバス
修道女も大幅に入れ替えましたが、これはまだblogの記事にしていないので関係ありませんが。
継母(OG)のファジャーノは、そのまま。あとの19人も、ご紹介。
寮長女:カヴァラ(牝馬)
修道女:マイアーレ(豚)、ガッタ(猫)
アシノ(驢馬)、カーニャ(牝犬)
ムッカ(牛)、ペコラ(羊)
ムーロ(騾馬)、コニーギョ(兎)
ピッショーネ(鳩)、クワーギア(鶉)
ストルノ(椋鳥)、コルヴォ(烏)
アキローネ(鳶)、パッセロ(雀)
ガリーナ(雌鶏)、カナリーノ(金糸雀)
シーノ(白鳥)
見習娘:アナトラ(家鴨) 受洗後に名付けられる。
ちなみにヒロインの伯爵令嬢元娼婦元盗賊元死刑囚であるエレナ・コルレアーニはラーナ(蛙)になります。他の修道女がすべて家畜や鳥なのに、ただ一人だけ「それ以下」の名前。類稀なる悦虐資質への称賛です。
アイキャッチがないと寂しいので。

普通の家名を洗礼名に変更しました。
修道院長 オスティ→ドミニコ
司祭 アルフィオ→サバス
修道女も大幅に入れ替えましたが、これはまだblogの記事にしていないので関係ありませんが。
継母(OG)のファジャーノは、そのまま。あとの19人も、ご紹介。
寮長女:カヴァラ(牝馬)
修道女:マイアーレ(豚)、ガッタ(猫)
アシノ(驢馬)、カーニャ(牝犬)
ムッカ(牛)、ペコラ(羊)
ムーロ(騾馬)、コニーギョ(兎)
ピッショーネ(鳩)、クワーギア(鶉)
ストルノ(椋鳥)、コルヴォ(烏)
アキローネ(鳶)、パッセロ(雀)
ガリーナ(雌鶏)、カナリーノ(金糸雀)
シーノ(白鳥)
見習娘:アナトラ(家鴨) 受洗後に名付けられる。
ちなみにヒロインの伯爵令嬢元娼婦元盗賊元死刑囚であるエレナ・コルレアーニはラーナ(蛙)になります。他の修道女がすべて家畜や鳥なのに、ただ一人だけ「それ以下」の名前。類稀なる悦虐資質への称賛です。
アイキャッチがないと寂しいので。

Progress Report 8:公女巡虐
最終章……の筈でしたが。ここら辺はPLOTをきっちり立てずに、書きながら固めていく予定でした。そしたら双胴船(カタマラン)になっちまいました。ていうか、思いつくまま、あれもこれも闇鍋にしちゃいまして。1万5千文字を超えても終わらない。ので、オーラスの連チャン。2本場までもってくことにしました。
========================================
淫虐の修道院
聖エウフェミア女子修道院は、ものものしい煉瓦の壁に囲まれていました。壁の端から端までは百歩を超えています。聞くところによりますと、三十人ちかい人たちが、ほぼ自給自足の生活を営んでいるとのこと。中には畑や家畜小屋もあるのですから、これくらいの広さは当然でしょう。
馬車は正門の前に止まりました。お継母様が前の馬車から降り立ち、私も護衛の騎士に促されて、鎖に足を取られないよう身体を横にして馬車を降りました。
固く閉ざされている正門が、歴史の重みを感じさせる軋みとともに細く開かれました。お継母様が案内も待たずに歩み入るので、私も続きます。聖職者以外は男子禁制ですから、護衛の人たちはその場にとどまっています。入ると同時に、また門が閉ざされました。
「え……?」
門を開閉している人を見て、驚きました。男性です。動きやすい服装をして腰に短剣を帯びていますから、兵士でしょうか。塀に囲まれていても女性だけでは物騒ですから、警備の兵士が少数居てもそんなに不思議ではありませんけれど、ちょっと意外でした。
正面の建物から姿を現わした二人も男性です。二人とも、聖職者が身にまとう黒い長衣ですから、こちらはちっとも不思議ではありません。女性は聖職者になれませんし、ミサには聖職者が欠かせないのですから。お二方は、胸に提げている十字架の大きさが違います。
お継母様が、大きな十字架の人の前に跪きました。
「お久しぶりでございます、オスティ院長様。そして、アルフィオ司祭様」
お継母様は、お父様の後妻となる前は、この修道院に入っていられたのです。もう十五年以上の昔です。オスティ院長様は五十を過ぎてらっしゃるようですから分かりますが、アルフィオ司祭様は三十そこそこ……ああ、そうでした。つい先年も、お継母様は訪れてらっしゃいました。でしたら「お久しぶり」ですね。
「おいでなさい、エレナ」
お継母様が、私をお二方に紹介してくださいました。
私もお継母様を真似て跪き、胸に十字を切りました。
「私のような者を、由緒ある修道院に迎えてくださって、感謝しております」
嬉しくない好意に感謝なんかしたくありませんけれど、ラメーズ伯爵令嬢としては、こう振る舞うしかありません。
オスティア院長様は鷹揚に頷かれると、無言で踵を返しました。
「ついて来なさい」
アルフィオ司祭様がそっけなくおっしゃいます。
私はお継母様の後ろに従って、正面の建物に入りました。層煉瓦造りの二階建てです。真っ直ぐな廊下の奥にある部屋へ招じ入れられて、そこは院長様の執務室のようです。
「ファジャーノからの手紙によれば、おまえにはくだくだしい説明は不要だそうだな」
院長様の言葉遣いは、これが聖職者かと疑うほど横柄です。
「見れば信じるという格言があったな」
院長様が、執務机の上に垂れている長い房を引っ張りました。チリンチリンと鐘の音がして。すぐに三人の女性が入って来ました。
「まあっ……?!」
三人の姿を見て、私は驚愕を叫んでいまいました。
三人のうち二人は、修道女が衣服の上に着用する肩衣を――素肌にまとっています。長い布に首を出す穴を明けて襟を着けた、衣服というよりは縦の帯です。この人たちの肩衣は極端に幅が狭くて、乳房の間にたくれています。膝丈ですから女性器は隠れていますが、太腿は剥き出しなので、どんなにお淑やかに歩いても見えてしまうでしょう。
そして、もう一人は……全裸です! 後ろ手に縛られています! 猿轡まで噛まされています! 全身に鞭の跡が刻まれています!
肩衣の二人はわずかに頭を下げて、けぶるような眼差しを机のあたりにさまよわせています。全裸で縛られている――私と同い年くらいの娘は、はっきりと頭を垂れて、睫毛が涙に濡れています。
「紹介しておこう。マイアーレとガリーナだ」
肩衣の二人が、軽く頷きました。
ほんとうに二人の名前なのでしょうか。豚(マイアーレ)と雌鶏(ガリーナ)だなんて。そう言えば、先ほどは雉(ファジャーノ)がどうとか。
「これはフランカ。まだ見習で肩衣は許されておらん。俗名のままだ。被虐の愉悦を覚えるべく、日々、苦行に励んでおるところだ。今は無言の行の最中だ」
猿轡のことを言っているのでしょう。
「未だ信仰が足りぬゆえ、つねに神への祈りを捧げられるようにしてある。フランカ、後ろを向け」
私と同い年くらいの娘は、顔を伏せたまま後ろ向きになりました。
「…………?!」
見たこともない拘束の仕方です。腕は真上へ捩じ上げられて、掌を合わせる形にされ、向かい合う指を紐でくくられています。これが、つまり神様への祈りということでしょうか。肩が水平よりもせり上がって、見た目に痛々しいです。
「院長様。私もファジャーノの形に改めさせてください」
「そう言うと思って、用意してあるぞ」
私は、さらにひとつ、有りうべからざる光景を目の前にしました。お継母様が、殿方の前で衣服を脱ぎ始めたのです。それも、下着も腰布も脱ぎ捨てて……全裸になったのです。
四人目の女性が、平たい箱を持って来ました。この人も、全裸に肩衣です。箱を机に置くときに私の前に立ったのですが……肩衣の後ろ側は腰までしかありません。お尻が丸出しです。そして、そこには数日前のものと思われる無数の鞭痕が浮かんでいます。
そんなありふれた(?)光景に驚いている場合ではありません。
お継母様が、箱から肩衣を出して身に着けたのです。それは他の修道女(?)たちと同じ色ですが、後ろ側はもちろん、前側もおへそまでしか丈がありません。下半身は丸出しです。それだけでも、淑女なら身に着けるのはもちろん見ただけで卒倒するでしょう。ところが、お継母様は平然と――なぜか「嫣然と」という表現が頭に浮かびました。箱から十字架を取り出して、首から下げたのです。身に着けるには、極端に大きな十字架です。横木の両端の装飾には小さな穴が明いていて――そこに乳首を嵌めたのです。金色の小さな留め金具で十字架の上から乳首を締め付けて、抜けなくしました。そして、十字架の下端にある同じような穴に、女の芽を嵌め込んだのです。
「おまえは、すでに人の妻。貞操を守る装身具も誂えておいたぞ」
「ありがとうございます、院長様」
お継母様が取り上げたのは、“V”字形をした銀の……何と呼べば良いのでしょうか。とにかく、“V”字形の交点には男根が屹立しています。お継母様はがに股になって、それを女の穴へ挿入しました。そして、手を放すと――“V”字形は勝手に(ではなく、お継母様が筋肉を引き締めたのでしょう)内側へ動いて、浅く湾曲した装身具は、ぴったりと股間に張り付きました。
「エレナ。母が正装しているというのに、その姿はなんとしたことです。神様の御前(みまえ)に一切を曝け出しなさい」
言葉の意味は分かりますし、殿方の前で裸を曝すくらい慣れっこです。でも、出鱈目な言葉に従いたくはありません。
「無闇に肌を曝すことを、神様は禁じておいでです。まして、ここは修道院の中……?」
語尾が立ち消えたのは、こんな修道院があるはずも無いからです。
「神がご自身に似せて人を創られたとき、人は衣を着ておらなかった」
院長様が、たしなめるように言いました。
「人が身を包むようになったのは、神の教えに背いて禁断の果実を食べたからだ。いわば、衣服は原罪の象徴。疾く罪を脱ぎ捨てよ」
もっともらしく聞こえます。私には反駁できません。でも、詭弁だと思います。
「そうか。おまえは脱ぐよりも脱がされるのが好みなのだな」
どきりとしました。そんなふうに言われたのは初めてですが、私の本性を暴く言葉です。お会いして、まだ半時間と経っていないのに、ほとんど言葉を交わしていないのに。院長様は手紙がどうとかおっしゃってましたが、仮にお継母様が密偵を使って私の行状の逐一を調べたとしても、私の心の裡までは分からないはずです。
瞬時の物思いに囚われている間に、私は左右から腕を摑まれていました。院長様が、抜き身の短剣を手に、息が吹き掛かるほど間近に迫ります。
左手で私の衣服を摑んで……
ぴいいいいっ。上から下まで一気に切り裂きました。上着の下はお継母様と違って腰布一枚です。それと、足を束縛する鉄環と鎖。
「ふむ。ファジャーノは、年下相手だと祝福を与える側か」
「この娘は、私の娘よりも素質がある――いえ、生まれながらに悦虐の性(さが)を備えておりますもの」
「だから、生さぬ仲の娘に実の娘とは異なる愛情を注いでおるわけだ」
「ベルタには素質がありません。出来れば実の娘にこそ、残虐に愛でられる悦びを知ってほしかった――これは本心ですのよ」
遠回しな言い方をしていますけれど。お継母様も、虐められる悦びを知っておいでのようです。縛られている娘のように、無理強いに教え込まれたのかもしれません。でも、たしかに……『素質』がなければ目覚めることもないでしょう。
「女であれば、誰しも素質を秘めておる。しかし――この娘のようにみずから目覚めるとは、稀有のことかな」
長話の間、私は両腕を掴まれて腰布一枚の裸で立ち尽くしているしかありまでんでした。
その最後の一枚も剥ぎ取られました。
無毛の股間に刻まれた焼印を見ても、院長様には驚いた様子もありません。
「類稀なる素質を持ち、ラメーズ伯爵夫人の推薦があっても、特別扱いは出来ぬ。入院の誓願を立てておらぬ娘として扱う」
ただし、男の味も鞭の痛みも知り尽くしている点は考慮してやる――と、付け加えました。並みの娘よりは過酷に扱うという意味でしょう。
私は修道女の手で、鉄の首輪を嵌められました。この人たちが修道女かはすこぶる怪しいのですが、他に適切な呼び方も思いつきません。院長様は、紛れもなく院長です。ここが修道院であろうと施虐院(今思いついた造語です)であろうと。
首輪には、後ろではなく前から鎖が垂れています。それが股間を割って後ろへ引き上げられ、首輪の後ろにある環で折り返されました。腕を背中へ捩じ上げられて手首が交叉する形にされて、二つの環が組み合わさった十字形の枷を嵌められました。
首輪も手枷も半割になっていて、小さなボルトで合体させます。縄と違って、手が使えなければ絶対に自分では外せません。
鎖がいっそう引っ張られて、割れ目にきつく食い込みます。並みの娘だったら、処女でなくても悲鳴を上げるでしょう。もちろん私だって痛いのですが、久しぶりの虐待に、腰が砕けそうになっています。
腕もさらに捩じ上げられて、手枷が鎖につながれました。腕を掴んでいた手が放されると、自然と手首が下がろうとして、さらに鎖が割れ目を抉ります。そんなに細くないですから切れたりはしないでしょうが、私でも歩くのはつらいです。
それなのに。院長様と司祭様が部屋から出て行かれると。
「おいでなさい」
お継母様が鎖の前を引っ張ります。
「痛い……引っ張らないでください」
私をお仕置きするのが趣味みたいなお継母様ですが、原因は私にあるのですから、憎いとは思ったことがありません。こんな嗜虐者の巣窟みたいな所へ私を連れて来たのがお継母様であっても――です。むしろ感謝したいくらいです。
いえ、そういう話ではなく。だから、つい甘えてしまったと言いたかったのです。
「あら、そう」
拍子抜けするくらいにあっさりと、お継母様は鎖から手を放してくださいました。お願いして、それを聞いてくださったのですから、感謝するべきでしょうが……落胆は早計でした。お継母様は、私の乳首を摘んで、思い切りつねったのです。
「ひいい……痛い」
私の泣き言には耳もかさず、さらに引っ張ります。私は前へ歩むしかありません。
ちゃりん、ちゃりりん。足を束縛する鎖を鳴らさないようお淑やかに――なんて気を配る余裕はありません。股間の痛みを和らげるよう、へっぴり腰のがに股で、お継母様について行きます。
先を行くのは院長様と司祭様。四人の女性は姿を消しました。
表口へと戻る途中で、廊下は右へ一本、左へは二本の枝分かれがあります。その二本の向こうには幾つもの扉があります。
そのひとつが開けられて……とても見覚えのある室内です。煽情的で淫猥な赤っぽい色調の壁紙、男女の絡みや女性の受難を描いた卑猥な絵画、そして三人でも四人でも取っ組み合いが出来そうな(実際にするに決まっています)広くて豪奢な寝台。これはそのまま『踊る花の館』の貴賓室です。
ここは、修道院を隠れ蓑にした売春宿なのでしょう。そして、フランカという見習娘の装い(?)を見るところ、ブルーノ様のような性癖の殿方を積極的に迎え入れているのでしょう。
私の推測は当たっていました。分かれ道を引き返して、反対側の廊下の突き当りは、さっきの複数あった貴賓室をひとつにまとめたくらいの広い部屋になっていました。石畳の床と剥き出しの壁、手の届かない高さにある鉄格子を嵌めた明かり取りの窓。
アンブラの牢獄を彷彿とします。いえ、遥かに恐ろしいです。三角木馬も、磔柱も、手足を引っ張る拷問台も、針を植えた拷問椅子もあります。天井には十を超える滑車が吊るされ、複雑な組滑車まであります。大きな鉄の箱には、中央を向いた面に幾つものガラスが嵌められています。水色がガラスの色でないとすれば、これは水責めの仕掛です。水責めの目的は拷問ではなく、中で苦しみ藻掻く女を『お客様』が鑑賞するのです。だから覗き窓が設けられているのです。
その他にも、三角木馬をさらに残酷にした四角錐の台とか、棺のような箱とか。
火桶もありますし、壁に掛けられた鞭や枷や焼床鋏(やっとこ)も種類が豊富です。
明らかに、苦痛よりも女体に快楽を(心に屈辱を)与えるのを目的とした責め道具もあります。たとえば前後に揺れる橇を備えた首の有る木馬。背中は丸みを帯びていますが、怒張した男根の五割以上も太くて長い張形が二本、そびえ立っています。木馬の首には小さな巻取機から三筋の細い鎖が垂れています。鎖の先の小さな摘み金具を女性の突起に付けて木馬を揺らすのだと思います。
もっと凄いと、見ただけで分かる道具もあります。平たい大きな箱から太い棒が突き出ていて、先端には“L”字形の角材が取り付けられています。箱の端からも短い棒が立っていて、こちらは弾み車らしい分厚い鉄の円盤で終わっています。私が目を奪われているとお継母様が、その円盤をゆっくりと回しました。円盤が三回転ほどもすると、角材が一回転します。“L”の横棒の先端が垂直の棒とつながっているのですから、“L”の縦棒は円を描きます。つまり――箱の上に立って“L”の縦棒を前後どちらかに挿入していれば、腰が淫らにくねるのです。角材の縁で穴を抉られながら。円盤を自分で回すという使い方も出来ます。手で回すのでしたら、程良い加減に出来るしょうが、逆に腰をくねらせて回すとなると、穴を角材に押し付けるのですから――私だったら絶頂に達してしまうかもしれません。試してみたいです。
小道具も同じように、快楽と恥辱を目的とした物が揃えてあります。羽箒とか張形とか。
けれど、最も肝腎な鉄格子の独房がありません。代わりに、小さな檻が四つ置かれています。そのひとつには、裸の女性が手足を広げて鎖につながれています。
「こやつは驢馬(アシノ)だ。これは懲罰でも拷問でもなく、みずからに望ませた信仰に基づく苦行だ」
乳房にこびり付いた無数の小さな赤い斑点は、みずから望ませるための針による説得の痕跡でしょうか。
「本来は自分で身体を動かして転がらねばならないのだがな」
その檻は他の三つと違って、球形をしています。司祭様が軽く押すと転がり始めました。周辺を囲った浅い枠にぶつかると、反対側へ転がります。たいした苦痛ではないのでしょう。女性は微かに呻いただけでした。
こんなのが苦行なら、私だって説得されなければ望まないでしょう。それとも、こうやって転がされ続けるのは、経験豊富な(?)私でも想像できない苦痛なのでしょうか。
「本来なら、ここで軽く苦行をさせて当院についての理解を深めさせるのだが、おまえには、その必要は無いな。むしろ、苦行を体験させないのが、いちばんの苦行になるのではないかな」
院長様のお言葉に、お継母様がくすりと嗤いました。何もかも見透かされているようで、落ち着きません。こんな光景を眼前にして、こんなふうに拘束されていて、落ち着くもあったものではありませんけれど。
院長様と司祭様が、球形の檻に錘を取り付けました。閉じ込められているアシノの胴回りに当たる部分です。アシノは上下逆さにされて――両手はさっきよりも垂れています。拘束している鎖に余裕があるのです。たしかに、自分で転がるには身体を動かす余裕が必要です。
檻の周囲六か所に錘を付け終わると、お二方は檻を回し始めました。司祭様が鉄格子をつかんで押しやり、院長様はあちこちへ動いて、檻がひとつ所で回るように突き戻しています。
「あああああ……お赦しください。目が回ります!」
お二方は、檻が回るままにして、手を放しました。
「苦行の間も先ほどの貴賓室も、おまえたちが暮らす場所ではない。寮も案内しておこう」
私はまたも、乳首を引っ張られて拷問いえ苦行の間から連れ出されました。
表口から外へ連れ出されて、ぐるっと建物を半周して。そこには狭い裏庭を挟んで、石造りの平屋が建っていました。すべての窓に鉄格子が嵌まっていて、なんとなく牢獄を連想しました。事実、そこは修道女たちの獄舎でした。雑居房です。
建物を強固にするために間仕切りの壁はありますが、扉の無い大きな開口部で、全体が大広間となっています。
そこには五人の修道女が居ました。皆、素裸の上に幅の狭い肩衣です。お尻は剥き出しです。五人とも、真新しいか数日を経ているかの違いはあっても、鞭痕を刻まれています。仕事は――二人が糸を紡ぎ、二人が轆轤(ろくろ)を回して、残る一人は裁縫をしています。
五人は一斉に立ち上がって、院長様たちを迎えます。十字を切ってから、肩衣の裾をつまんで横に引っ張り(股間が丸見えになります)腰を屈めて屈膝礼を執りました。院長様が頷いて横柄に手を振ると、五人は仕事に戻りました。ご主人様と女奴隷――そんな印象です。
大広間の一画を三十ほどの寝台が占めています。殿方と二人で寝るには狭い寝台です。寝台には薄汚れた感じの敷布が掛けられていますが、すぐ下は簀子です。つまり、布団は許されていないのです。そして、寝台の四隅と両側に、鎖でつながれた枷が置かれています。
寝台のひとつだけが使われています。首輪でつながれた全裸の娘が、片手を寝台から垂らして俯せになって……気絶しているのでしょうか。背中とお尻を生々しい鞭傷がびっしりです。緑色の膏薬が薄く塗られています。
「牝犬(カーニャ)、鳩(ピッショーネ)。ここへ来い」
糸を紡いでいた二人が呼び付けられました。もう間違いはありません。ここの女性たちは、犬とか猫とか豚とかの蔑称で呼ばれているのです。お継母様の雉(ファジャーノ)は、むしろ優雅でさえありますけれど。
「それぞれの寝台に寝ろ。カーニャは安眠の姿勢、ピッショーネは反省の姿勢だ」
二人は肩衣を脱ぎ全裸になって、隣り合った寝台に仰臥しました。そして、カーニャは手足を“X”字形に広げました。ものすごく覚えのある姿勢です。お継母様は、ここでの体験を私に反映させていたのです。
ピッショーネは両手で足首をつかんで、お尻の穴まで天井に向かって晒す“V”字形です。間近に見ると、全身に様々な痕が鏤められています。鞭だけでなく、鎖、枷、そして焼鏝。どれも、いずれは消える程度にとどまっています。
私は安心が九分と失望が一分です。ここでは真正の拷問は行なわれていないのでしょう。自白しなければ責め殺すのもやむなし――ではなく、末長く虐めて愉しむのです。
司祭様が、それぞれの手足に枷を嵌めていきます。胴の下には鎖につながれた鉄板を敷いて、浅く曲げた鉄棒を反対側からお腹の上に載せ、ボルトで留めました。
「犯した罪によっては、さらに祝福を追加するときもある」
院長様が胸の十字架を外して、ピッショーネの股間に突き立てました。
「ありがとうございます、院長様」
ピッショーネの声は、本気で悦んでいるように聞こえました。
院長様は十字架をしばらく抜き差ししてから、その部分をピッショーネの口に挿れました。彼女は熱心に、まるで男根に対するように舐めて、みずから零した滴りで汚れた十字架を綺麗にしました。
「もちろん、もっと厳しい祝福もある」
司祭様も十字架を外しました。それを手に持って。
バチャン!
「きひいいっ……!」
細い鎖で割れ目を叩きました。
「乳首に祝福を与えることもあるし、尻穴を清めることもある。それは――おまえが入院の誓願をしてから、自身の身体で知れば良かろう」
また、外へ引き出されました。もう必要はないと思ったのか、ただ飽きてしまったのか、お継母様は乳首で引き回すのをやめてしまいました。鎖すら引っ張ってくれません。私は自分の意思で歩かなければならないのです。駄々をこねてみようかなとも思いましたが、先々にも愉しみ(並みの娘なら恐怖)が待っているに違いないので、せめて股間の鎖の強烈な刺激を堪能しながら、素直に歩みます。
しばらくは退屈でした。畑や畜舎の見学です。それぞれ数人ずつの修道女が、さほどの屈託も無さそうに働いています。ありふれた農村の光景です。全員が素裸という点を除けば。いえ、訂正します。二人だけは拷責――ここでは祝福と言うのですね。明らかにそれと分かる装具を身に着けて、つらそうに身体を動かしていました。
奴隷労働を監督する役目の人は見当たりませんでした。決められた課業を達成できなければ連帯責任で祝福を与えられるのか、これを悦びとするまでに仕込まれているのか、それは分かりません。いずれ身を以て知ることになるのですから、もっと興味のあることに関心を向けます。
それは年齢です。いちばん若い修道女は、私より一つかせいぜい二つくらい下です。それより若いと、殿方の淫欲をそそらないのでしょうか。それとも、この施虐院の過酷な祝福に耐えられないからでしょうか。いずれにせよ、院長様(あるいはお客様たち)は、それなりの節度をお持ちらしいです。
誰しも今よりは若くなれないのですから、ほんとうに関心があるのは『上限』です。ざっと見たところでは三十半ば、せいぜい四十手前でしょうか。化粧も無しで、乳房やお尻の弛みも隠せないのですから、小娘の見立ても、そうは外していないでしょう。
お継母様のよう幸運に恵まれなくても……二十年から先のことなど、今から気に病んでも仕方のないことです。
退屈な見学が続いた後には、久しぶりの官能が待っていました。
礼拝堂へ連れて行かれて。
「おまえには、これくらいは虐めてやらんと引導を渡してやれぬだろうて」
手枷と首輪を外されました。何がこれくらいなのか、どきどきします。
院長様と司祭様が、衣服をすべて脱ぎ去りました。年配の院長様も勃起させています。お若い司祭様はいうに及ばずです。うわあ、そっちです。
あれ、でも……?
お二人は向かい合って床に座りました。互いに、相手の左の太腿に右足を乗せて、さらににじり寄りました。
ああ、そうか。二本の男根が並んで(年齢相応の角度で)勃っています。
お二人は細長い袋を男根にかぶせて、その上から油のようなものを垂らしました。
「娼婦の技を見せてもらおう」
お安い御用です――とも言えません。前後の穴を同時に使っていただくことに異存はありません(むしろ大歓迎です)が、奇妙な仕掛が薄気味悪いです。
「あの……それは、何なのでしょうか?」
司祭様が不思議そうな顔をしました。
「娼婦のくせに知らんのか」
「いや、娼婦だから知らんのだろう。そうそう使い心地の良い物ではないからな。客が怒る」
院長様が教えてくださったところによると――これは羊の腸だそうです。これをかぶせていれば、子種が女の穴に入るのを防げる。つまり妊娠の心配が無いのです。油を垂らしたのは、ごわごわした袋の滑りを良くするためだとか。
それと、もう一点。事前にお尻の中を綺麗にしておかなくても良いのです。少なくとも、殿方に不都合はありません。
納得はしましたけれど、使い心地が悪いというのが気がかりです。張形には張形の良さがあるのですから、生身と張形の中間みたいなこれが良くないとも思えません。悪いというのは、殿方のほうです。快感を犠牲にしてまで女と媾合う意味が分かりません。私の気持ちまで重くなります。
でも、久しぶりの媾合いです。お継母様の眼の前だからといって、ためらいはありません。かつてどころか今でさえ、お継母様は被虐修道女そのもののようですから。同類の先輩です。
では、気を取り直して……そこで、二本を同時に挿入しなければならないと、気づきました。木馬の背中に生えた木の棒ならまだしも、肉の棒はどんなに硬くても動いてしまいます。うまく出来るでしょうか。
どちらをどちらへ挿れろとは、言われませんでした。それなら、天を衝いている司祭様が後ろです。それだけ硬いでしょうから。お偉い院長様にお尻を向けて礼を失する恐れもありません。
私はお二方を跨いで中腰になり、背中から右手をまわして司祭様の怒張を握りました。腰を沈めていって、お尻の穴にあてがいます。同時に、左手で院長様を女の穴へ導きます。
「うんっ……」
穴のまわりから力を抜いて、さらに腰を沈めました。
ずぶっ……にゅるん……
「あはああっ……」
油の滑りが良く効いて、至極簡単に嵌まりました。ひと月以上も御無沙汰していた感触です。愉悦の吐息が漏れました。
この形では、お二方が下から突き上げるのは難しいでしょう。私が動かなくては。でも、すぐには動けませんでした。これまでずっと傍観者だったお継母様が、“V”字形の貞操帯(でしょうか?)を抜き取ったのです。赤く絖った割れ目と、それを取り巻く……極端に細長い繁みです。娼婦みたいに手入れをなさっているのでしょう。そういえば――それくらいはちっともたいしたことではないように思えるくらいに衝撃の連続でしたので、目にしても心が動くどころではありませんでしたが。修道女も様々に手入れをして(されて?)いました。狭く短く刈り込んだ股間もありましたし、無毛もありました。そこに焼鏝の跡も。さすがに消えない焼印は見かけませんでしたけれど。
「私の失礼には、後ほど祝福をお与えください」
後で罰してくださいという意味でしょう。お継母様は院長様の頭を跨いで、私の眼前に股間を突き付けました。
「二本だけだと、お口が寂しいでしょ」
何を求められているかは明白です。娼館で経験も積んでいます。でも、でも……相手はお継母様です。血のつながりがないとはいえ、母として十五年に渡って接してた人なのです。
「厭です……いえ、あの……畏れ多いです」
拒否の言葉に、ためらいと譲歩が交じってしまいます。
「儂からも命じる。ファジャーノに奉仕せよ」
院長様までが、当然のようにけしかけます。
「神よ。この淫売に祝福を与え給え」
「きひいっ……」
司祭様が、私の女の芽をつねりました。莢を剥いて雌しべに爪を立ててひねくります。
「儂からも祝福を与えよう」
院長様が二つの乳首を同じようにつねって、思い切り引き伸ばしました。
「くううううっ……痛い!」
私は歯を食い縛って、甘い激痛に酔い痴れました。ところが、私が降参しないうちに三つの突起から指が離れました。
「ああっ……もっと虐めて、いえ、祝福を……」
「ならば、ファジャーノに奉仕せよ」
私は禁忌の念をかなぐり捨てて、目の前の割れ目に接吻をしました。
「みずから祝福を求めるとは……まったく、いつもとは逆ですな」
司祭様の声には苦笑いが混じっています。ええ、そうですとも。私は並みの娘とは正反対で――虐められると悦ぶのです。でも、あなた方は、そういうふうに修道女を仕込もうとしているのではないですか。
余計なことを考えただけ、奉仕がおろそかになっていたようです。お継母様がじれたように私を叱ります。
「子供の遊びではありません。もっと真剣になりなさい」
院長様が乳首を軽く摘まんで、すぐに指を離します。司祭様が女の芽をくすぐります。こんなじれったい愛撫は厭です。もっと鮮烈な激痛を……
私は割れ目にかぶりついて、本気で奉仕を始めました。割れ目の縁を何度も舐めて、内側の花弁を甘噛みして、鼻まで割れ目にうずめて舌をうんと伸ばして、女の穴を掻き回します。女の芽を虐めれば簡単なのですが、装身具の留め金で蓋をされています。
「ああっ……上手だわ。いったい、どこまで仕込まれているのかしら。淫らな娘ね」
かつては、そう蔑まれることに恥辱を感じていましたが、今では誉め言葉にしか聞こえません。三か月の娼婦生活で仕込まれたすべてで、お継母様を追い上げてみせます。
ずちゅうう、ずぞぞぞ……花弁が震えるように息を吸ったり、穴を膨らますように吹き込んだり、また啜り込んだり。
私の熱心さを愛でて、院長様も司祭様も祝福を与えてくださいます。
「きひいいいいっ……痛い……」
わざと悲鳴を上げます。それで、お継母様の割れ目も震えるのです。
「いい加減で腰を遣わんか」
女の芽を引っ張られました。腰を浮かすと、乳首を下へ引っ張られます。それで腰を落として、縮れ毛で肌が擦れるまで深く咥え込みます。こんなふうに支配され操られるのが、私には似合っています。でも、じきに――突起を引っ張られて動いているのか、突起で指を引っ張っているのか分からなくなって、どんどん動きが速くなっていきます。
お継母様も私の頭を押さえこんで、股間に密着させてくださいます。
羊の腸の袋のせいで、殿方は射精の気配もありません。私が先頭に立って坂を駆け登り、同時にお継母様を引き上げている。でも、お継母様は遅れ気味です。
そして、とうとう。私だけが目もくらむ断崖絶壁から宙に身を投げたのです。
ほんとうに性の狂宴を愉しむつもりなら、私を余韻に浸らせたりせずに、いっそうの祝福を与えてくださるのでしょうけれど……お継母様は身を引いて、院長様は私を横へ突き飛ばしました。
「さて……この娘は、もはや見習を経ずとも誓願をする資格を有しておる」
院長様が身繕いをしながらおっしゃいます。
「されど、そこまでの例外を認めるのもよろしからぬ。よって、ただいまより明後日の夕刻までを見習として遇する。そして爾後を『内省の夜』とする」
『内省の夜』とは何なのかは誰も教えてくれませんが、見習の意味は直ちに我が身で知りました。
裏庭へ連れ出されて井戸水(聖別されているそうです)で身体の汚れ――主にお尻まわりを清められて。フランカと同じような姿にされました。腕を背中高く捩じ上げられて、掌を合わせた形で縛られたのです。指も一本ずつを紐で縛られました。丸い革の袋に詰め物をした猿轡を噛まされ、革紐で頬を縊られました。これでフランカと同じになりましたが、私にはさらなる苦行が追加されました。
まず、乳房の根元を首から垂らした縄でぎちぎちに縛られました。お継母様に比べると同じ乳房という言葉を使うのが恥ずかしくなるくらいですが、形としてはお継母様より美しかった膨らみが、小さな鞠みたいに無様になりました。縄はそのまま下へ向かい、大きな結び瘤が作られて、それが割れ目に埋め込まれました。お尻をくぐって縄が引き上げられ、二の腕の高さで左右に分けられ、乳房を外へ引っ張ります。
「これが、おまえに与える十字架だ」
そう見えなくもないのでしょう。
私としては十字架よりも、背中で手を祈りの形に捻られているせいで、肩が脱臼しそうなくらいに痛いです。
まさしく苦行の姿で、礼拝堂に付属する告解室へ入れられました。硬い丸椅子に座ると、ますます縄が股間に食い込んできます。お尻の穴も擦られます。苦痛が増して、垂れる蜜も濃くなってきます。
私と向かい合うのは司祭様。顔を隠す仕切などありません。代わりに小机がふたりを隔てています。
「ここで暮らせばすぐに分かることだが、いちおう説明はしておこう」
修道院の成り立ちについて、ひと通りの説明をしてくださいました。
在籍している修道女は見習のフランカを含めて十九人。私で二十人になる予定です。これに対して殿方は八人。院長様(司教様です)と司祭様と二名の助祭様。そして雑用を兼ねた衛兵が四人。
売春宿にしては大きいな――くらいに思っていたら、大間違いでした。歩いて半時間と掛からないところに小さな村があって、そこの数少ない村人は、すべて修道院が雇っているのだそうです。そこは、修道院を訪れる賓客の従者が宿泊する場所でもあります。娼館にこそこそ通うのではなく、護衛兵と小姓や小間使い、人によっては料理人まで引き連れて、堂々の訪問あるいは視察だそうです。滞在も数日に渡ります。『踊る花の館』とは桁が違います。
その賓客ですが。基本的には、この修道院の庇護者と援助者(どう違うのかは教えてもらえませんでした)、ときにはその貴顕たちからの紹介者だそうです。身元はしっかりしています。
だから、院内の様子は絶対に壁の外には(配下の村も含めて)知られないだけの配慮が払われています。万一にも修道女が脱走しようものなら、たとえ近衛騎士団を動員してでも探し出して、即時の密殺です。
さいわいに、そういった不祥事は創設以来三十六年間、一度も起きていないそうですが――私にはどうでも良いことです。それよりも。王侯貴族や大商人であれば変な病に罹っていないでしょうから、とても安心です。
ここまでは雑談めいたお話でした。司祭様も四角四面に座ってばかりではおられずに、私の背後から身をかぶせて乳房を弄ったり、縦に股間を割っている縄を揺すったりして、遊んでくださいました。先程は、引導を渡されたのは私だけで、院長様も司祭様も埒を明けておられませんから、そのせいかもしれません。
けれど、講義といいますか本格的な勉強(?)が始まると、司祭様が席を立つことはなくなりました。
最初に教わったのは、この修道院に名を冠している聖エウフェミア様の殉教についてでした。
彼女は異教の神への供物を拒んで投獄され、十九日にも及ぶ拷問にも屈さず信仰を捨てませんでした。その様子を写した絵画を見せられ、微に入り細を穿つった説明もいただきました。爪を剥ぎ指を折り女性器まで破壊するという、アンブラで私か受けた拷問など児戯に類する凄まじいものでした。最期は闘技場の中で異教の群衆の見世物にされながら、熊に強奻されて絶命したそうです。
そんな彼女を、私は羨ましいとは思いません。死刑の恐怖から救出されたとき――実は私を非公式に解放するための狂言だったと、今では理解していますが――私はすこしだけ変わったのです。死んだり不具になったりしない程度に末長く虐めていただくのがいちばんの幸せではないかと。
聖エウフェミア様の事績の次は聖書の勉強です。小机に巻物が展げられましたが、私には読めません。同じ文字を使い綴りも似ていますが、聖なる言語を理解できるのは聖職者と一部の学者だけです。司祭様は巻物の文字を読み下しながら、順に翻訳してくださいました。そして、適宜に注釈とか解説を補ってくださったのですが……まさに、目から鱗が落ちる驚天動地の思いになりました。
聖書の始めの方に、アダムとイブの息子たちが妻を得る話があります。
「神はアダムを造り給い、その肋骨から伴侶たるイブを造り給うた。他には人間をお造りになっていない。では、二人の間に産まれた息子たちは、どこから妻を娶ったのだろうか」
そんなことは考えたこともありません。
「答はここに書いてある」
巻物の中ほどが開かれました。アダムとイブの息子たちは、彼らの姉妹と結ばれたのだそうです!
教会の教えでは、近親姦は殺人にも匹敵する罪です。それを全人間の始祖が犯していたなんて。世界の表と裏、上と下がひっくり返ったような衝撃です。
でも、世界の始まりにはアダムとイブしか居なかったのですから……筋道立てて考えれば、そうとしかなりません。
司祭様は別の巻物を展げて、追い打ちを掛けてきます。
すべての動物がひとつがいずつしか生き延びなかったノアの方舟も同じこと。それどころか、ソドムに降り注ぐ硫黄の火から逃れて山に隠れた父娘は――娘が父を酒に酔わせて、みずから父に乗ったのです。
茫然自失です。何が正しいか分からなくなりました。並みの娘なら、女は男から苦痛を与えられることこそ真の悦びだと説かれれば、そのまま受け容れるかもしれません。
でも、私はそこまで自己を見失いません。苦痛が悦びなのではなく、女を苦しめることで淫らな悦びに浸る男を得て、自分がその男にとって肋骨以上の存在であると実感できる。それが女の悦びなのです。すくなくとも私は、そうなのだと思っています。
肩の痛みも乳房を搾る縄も股間への食い込みも忘れてしまうほどの衝撃の裡に、この日の勉強は終わりました。
見習修道女の装いのまま寮へ連れ戻されて、そこで縄をほどいてもらえました。
「おまえは見習の身であるから、神の御前に一切を曝し出しておれ」
全裸のままで過ごせという意味です。フランカも私と同じ姿です。
すぐに夕食の時刻になりました。寮の横にある粗末な厨房で、当番の修道女が作った食事です。
寝台の敷布に小さな布が重ねられて、そこに皿が置かれます。修道女は床に跪いて――囚人なら当たり前の手掴みではなく、きちんと食器を使って食べます。私とフランカ、そして過酷な祝福の傷で静養していた鶉(クワーギア)さんの三人だけは全裸で、残りの十二人は肩衣を着けたままです。
私を含めて二十人にまったく満たないのは――あの広い拷問の間で泣き叫んでいるか、それが終わって賓客の豪勢な食事のご相伴(彼女の食卓は床だと思います)に与っているかのどちらかに決まっています。
娼売が出来る十七人のうち十二人もがお茶を引くなんて、大赤字もいいところと思いましたが、すぐに考え違いに気づきました。『踊る花の館』でも、娼婦の身体を傷付けるような遊びをするお客からは数日から一週間分の花代を取っていました。ここの賓客はそういう遊びをする人ばかりでしょうから、これ以上は娼婦(ではありませんでした。修道女)の身が保たないでしょう。
清貧を旨とする修道院(というのが、ここでも当てはまるかすこぶる怪しいですが)にしては、この食事は豪勢ではないのはもちろんですが、貧しくない平民の食卓よりは豊かなくらいです。ほとんどが自家製ですから、とても新鮮です。
考えようによっては、何年も拷問ではなく祝福に耐える体力を維持して、しかも嗜虐者の眼鏡に適う女体でなければならないのですから、少しくらいの贅沢は必然でしょう。
食事が終わって、皆で後片付けをして。部屋の隅の蓋付きの桶で用を済ませて。就寝前のお祈りも済ませました。これまでの生涯でも十指に入る波乱万丈の一日も、ようやく終わろうとしています。私は疲れ果てた気分です。
継母の嗜虐愛
でも、まだ続きがありました。
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なのです。修道院での第1日はまだ続きます。
ちなみに、1本場の章題を英訳すると……MamMother Strange Love by Stanley Kublic になります?
でもって、2本場は『三位一体の日』です。
父と娘と性隷の3Pです。
1本場と2本場は「賞味期限付」にしますので、お見逃し無きよう。

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淫虐の修道院
聖エウフェミア女子修道院は、ものものしい煉瓦の壁に囲まれていました。壁の端から端までは百歩を超えています。聞くところによりますと、三十人ちかい人たちが、ほぼ自給自足の生活を営んでいるとのこと。中には畑や家畜小屋もあるのですから、これくらいの広さは当然でしょう。
馬車は正門の前に止まりました。お継母様が前の馬車から降り立ち、私も護衛の騎士に促されて、鎖に足を取られないよう身体を横にして馬車を降りました。
固く閉ざされている正門が、歴史の重みを感じさせる軋みとともに細く開かれました。お継母様が案内も待たずに歩み入るので、私も続きます。聖職者以外は男子禁制ですから、護衛の人たちはその場にとどまっています。入ると同時に、また門が閉ざされました。
「え……?」
門を開閉している人を見て、驚きました。男性です。動きやすい服装をして腰に短剣を帯びていますから、兵士でしょうか。塀に囲まれていても女性だけでは物騒ですから、警備の兵士が少数居てもそんなに不思議ではありませんけれど、ちょっと意外でした。
正面の建物から姿を現わした二人も男性です。二人とも、聖職者が身にまとう黒い長衣ですから、こちらはちっとも不思議ではありません。女性は聖職者になれませんし、ミサには聖職者が欠かせないのですから。お二方は、胸に提げている十字架の大きさが違います。
お継母様が、大きな十字架の人の前に跪きました。
「お久しぶりでございます、オスティ院長様。そして、アルフィオ司祭様」
お継母様は、お父様の後妻となる前は、この修道院に入っていられたのです。もう十五年以上の昔です。オスティ院長様は五十を過ぎてらっしゃるようですから分かりますが、アルフィオ司祭様は三十そこそこ……ああ、そうでした。つい先年も、お継母様は訪れてらっしゃいました。でしたら「お久しぶり」ですね。
「おいでなさい、エレナ」
お継母様が、私をお二方に紹介してくださいました。
私もお継母様を真似て跪き、胸に十字を切りました。
「私のような者を、由緒ある修道院に迎えてくださって、感謝しております」
嬉しくない好意に感謝なんかしたくありませんけれど、ラメーズ伯爵令嬢としては、こう振る舞うしかありません。
オスティア院長様は鷹揚に頷かれると、無言で踵を返しました。
「ついて来なさい」
アルフィオ司祭様がそっけなくおっしゃいます。
私はお継母様の後ろに従って、正面の建物に入りました。層煉瓦造りの二階建てです。真っ直ぐな廊下の奥にある部屋へ招じ入れられて、そこは院長様の執務室のようです。
「ファジャーノからの手紙によれば、おまえにはくだくだしい説明は不要だそうだな」
院長様の言葉遣いは、これが聖職者かと疑うほど横柄です。
「見れば信じるという格言があったな」
院長様が、執務机の上に垂れている長い房を引っ張りました。チリンチリンと鐘の音がして。すぐに三人の女性が入って来ました。
「まあっ……?!」
三人の姿を見て、私は驚愕を叫んでいまいました。
三人のうち二人は、修道女が衣服の上に着用する肩衣を――素肌にまとっています。長い布に首を出す穴を明けて襟を着けた、衣服というよりは縦の帯です。この人たちの肩衣は極端に幅が狭くて、乳房の間にたくれています。膝丈ですから女性器は隠れていますが、太腿は剥き出しなので、どんなにお淑やかに歩いても見えてしまうでしょう。
そして、もう一人は……全裸です! 後ろ手に縛られています! 猿轡まで噛まされています! 全身に鞭の跡が刻まれています!
肩衣の二人はわずかに頭を下げて、けぶるような眼差しを机のあたりにさまよわせています。全裸で縛られている――私と同い年くらいの娘は、はっきりと頭を垂れて、睫毛が涙に濡れています。
「紹介しておこう。マイアーレとガリーナだ」
肩衣の二人が、軽く頷きました。
ほんとうに二人の名前なのでしょうか。豚(マイアーレ)と雌鶏(ガリーナ)だなんて。そう言えば、先ほどは雉(ファジャーノ)がどうとか。
「これはフランカ。まだ見習で肩衣は許されておらん。俗名のままだ。被虐の愉悦を覚えるべく、日々、苦行に励んでおるところだ。今は無言の行の最中だ」
猿轡のことを言っているのでしょう。
「未だ信仰が足りぬゆえ、つねに神への祈りを捧げられるようにしてある。フランカ、後ろを向け」
私と同い年くらいの娘は、顔を伏せたまま後ろ向きになりました。
「…………?!」
見たこともない拘束の仕方です。腕は真上へ捩じ上げられて、掌を合わせる形にされ、向かい合う指を紐でくくられています。これが、つまり神様への祈りということでしょうか。肩が水平よりもせり上がって、見た目に痛々しいです。
「院長様。私もファジャーノの形に改めさせてください」
「そう言うと思って、用意してあるぞ」
私は、さらにひとつ、有りうべからざる光景を目の前にしました。お継母様が、殿方の前で衣服を脱ぎ始めたのです。それも、下着も腰布も脱ぎ捨てて……全裸になったのです。
四人目の女性が、平たい箱を持って来ました。この人も、全裸に肩衣です。箱を机に置くときに私の前に立ったのですが……肩衣の後ろ側は腰までしかありません。お尻が丸出しです。そして、そこには数日前のものと思われる無数の鞭痕が浮かんでいます。
そんなありふれた(?)光景に驚いている場合ではありません。
お継母様が、箱から肩衣を出して身に着けたのです。それは他の修道女(?)たちと同じ色ですが、後ろ側はもちろん、前側もおへそまでしか丈がありません。下半身は丸出しです。それだけでも、淑女なら身に着けるのはもちろん見ただけで卒倒するでしょう。ところが、お継母様は平然と――なぜか「嫣然と」という表現が頭に浮かびました。箱から十字架を取り出して、首から下げたのです。身に着けるには、極端に大きな十字架です。横木の両端の装飾には小さな穴が明いていて――そこに乳首を嵌めたのです。金色の小さな留め金具で十字架の上から乳首を締め付けて、抜けなくしました。そして、十字架の下端にある同じような穴に、女の芽を嵌め込んだのです。
「おまえは、すでに人の妻。貞操を守る装身具も誂えておいたぞ」
「ありがとうございます、院長様」
お継母様が取り上げたのは、“V”字形をした銀の……何と呼べば良いのでしょうか。とにかく、“V”字形の交点には男根が屹立しています。お継母様はがに股になって、それを女の穴へ挿入しました。そして、手を放すと――“V”字形は勝手に(ではなく、お継母様が筋肉を引き締めたのでしょう)内側へ動いて、浅く湾曲した装身具は、ぴったりと股間に張り付きました。
「エレナ。母が正装しているというのに、その姿はなんとしたことです。神様の御前(みまえ)に一切を曝け出しなさい」
言葉の意味は分かりますし、殿方の前で裸を曝すくらい慣れっこです。でも、出鱈目な言葉に従いたくはありません。
「無闇に肌を曝すことを、神様は禁じておいでです。まして、ここは修道院の中……?」
語尾が立ち消えたのは、こんな修道院があるはずも無いからです。
「神がご自身に似せて人を創られたとき、人は衣を着ておらなかった」
院長様が、たしなめるように言いました。
「人が身を包むようになったのは、神の教えに背いて禁断の果実を食べたからだ。いわば、衣服は原罪の象徴。疾く罪を脱ぎ捨てよ」
もっともらしく聞こえます。私には反駁できません。でも、詭弁だと思います。
「そうか。おまえは脱ぐよりも脱がされるのが好みなのだな」
どきりとしました。そんなふうに言われたのは初めてですが、私の本性を暴く言葉です。お会いして、まだ半時間と経っていないのに、ほとんど言葉を交わしていないのに。院長様は手紙がどうとかおっしゃってましたが、仮にお継母様が密偵を使って私の行状の逐一を調べたとしても、私の心の裡までは分からないはずです。
瞬時の物思いに囚われている間に、私は左右から腕を摑まれていました。院長様が、抜き身の短剣を手に、息が吹き掛かるほど間近に迫ります。
左手で私の衣服を摑んで……
ぴいいいいっ。上から下まで一気に切り裂きました。上着の下はお継母様と違って腰布一枚です。それと、足を束縛する鉄環と鎖。
「ふむ。ファジャーノは、年下相手だと祝福を与える側か」
「この娘は、私の娘よりも素質がある――いえ、生まれながらに悦虐の性(さが)を備えておりますもの」
「だから、生さぬ仲の娘に実の娘とは異なる愛情を注いでおるわけだ」
「ベルタには素質がありません。出来れば実の娘にこそ、残虐に愛でられる悦びを知ってほしかった――これは本心ですのよ」
遠回しな言い方をしていますけれど。お継母様も、虐められる悦びを知っておいでのようです。縛られている娘のように、無理強いに教え込まれたのかもしれません。でも、たしかに……『素質』がなければ目覚めることもないでしょう。
「女であれば、誰しも素質を秘めておる。しかし――この娘のようにみずから目覚めるとは、稀有のことかな」
長話の間、私は両腕を掴まれて腰布一枚の裸で立ち尽くしているしかありまでんでした。
その最後の一枚も剥ぎ取られました。
無毛の股間に刻まれた焼印を見ても、院長様には驚いた様子もありません。
「類稀なる素質を持ち、ラメーズ伯爵夫人の推薦があっても、特別扱いは出来ぬ。入院の誓願を立てておらぬ娘として扱う」
ただし、男の味も鞭の痛みも知り尽くしている点は考慮してやる――と、付け加えました。並みの娘よりは過酷に扱うという意味でしょう。
私は修道女の手で、鉄の首輪を嵌められました。この人たちが修道女かはすこぶる怪しいのですが、他に適切な呼び方も思いつきません。院長様は、紛れもなく院長です。ここが修道院であろうと施虐院(今思いついた造語です)であろうと。
首輪には、後ろではなく前から鎖が垂れています。それが股間を割って後ろへ引き上げられ、首輪の後ろにある環で折り返されました。腕を背中へ捩じ上げられて手首が交叉する形にされて、二つの環が組み合わさった十字形の枷を嵌められました。
首輪も手枷も半割になっていて、小さなボルトで合体させます。縄と違って、手が使えなければ絶対に自分では外せません。
鎖がいっそう引っ張られて、割れ目にきつく食い込みます。並みの娘だったら、処女でなくても悲鳴を上げるでしょう。もちろん私だって痛いのですが、久しぶりの虐待に、腰が砕けそうになっています。
腕もさらに捩じ上げられて、手枷が鎖につながれました。腕を掴んでいた手が放されると、自然と手首が下がろうとして、さらに鎖が割れ目を抉ります。そんなに細くないですから切れたりはしないでしょうが、私でも歩くのはつらいです。
それなのに。院長様と司祭様が部屋から出て行かれると。
「おいでなさい」
お継母様が鎖の前を引っ張ります。
「痛い……引っ張らないでください」
私をお仕置きするのが趣味みたいなお継母様ですが、原因は私にあるのですから、憎いとは思ったことがありません。こんな嗜虐者の巣窟みたいな所へ私を連れて来たのがお継母様であっても――です。むしろ感謝したいくらいです。
いえ、そういう話ではなく。だから、つい甘えてしまったと言いたかったのです。
「あら、そう」
拍子抜けするくらいにあっさりと、お継母様は鎖から手を放してくださいました。お願いして、それを聞いてくださったのですから、感謝するべきでしょうが……落胆は早計でした。お継母様は、私の乳首を摘んで、思い切りつねったのです。
「ひいい……痛い」
私の泣き言には耳もかさず、さらに引っ張ります。私は前へ歩むしかありません。
ちゃりん、ちゃりりん。足を束縛する鎖を鳴らさないようお淑やかに――なんて気を配る余裕はありません。股間の痛みを和らげるよう、へっぴり腰のがに股で、お継母様について行きます。
先を行くのは院長様と司祭様。四人の女性は姿を消しました。
表口へと戻る途中で、廊下は右へ一本、左へは二本の枝分かれがあります。その二本の向こうには幾つもの扉があります。
そのひとつが開けられて……とても見覚えのある室内です。煽情的で淫猥な赤っぽい色調の壁紙、男女の絡みや女性の受難を描いた卑猥な絵画、そして三人でも四人でも取っ組み合いが出来そうな(実際にするに決まっています)広くて豪奢な寝台。これはそのまま『踊る花の館』の貴賓室です。
ここは、修道院を隠れ蓑にした売春宿なのでしょう。そして、フランカという見習娘の装い(?)を見るところ、ブルーノ様のような性癖の殿方を積極的に迎え入れているのでしょう。
私の推測は当たっていました。分かれ道を引き返して、反対側の廊下の突き当りは、さっきの複数あった貴賓室をひとつにまとめたくらいの広い部屋になっていました。石畳の床と剥き出しの壁、手の届かない高さにある鉄格子を嵌めた明かり取りの窓。
アンブラの牢獄を彷彿とします。いえ、遥かに恐ろしいです。三角木馬も、磔柱も、手足を引っ張る拷問台も、針を植えた拷問椅子もあります。天井には十を超える滑車が吊るされ、複雑な組滑車まであります。大きな鉄の箱には、中央を向いた面に幾つものガラスが嵌められています。水色がガラスの色でないとすれば、これは水責めの仕掛です。水責めの目的は拷問ではなく、中で苦しみ藻掻く女を『お客様』が鑑賞するのです。だから覗き窓が設けられているのです。
その他にも、三角木馬をさらに残酷にした四角錐の台とか、棺のような箱とか。
火桶もありますし、壁に掛けられた鞭や枷や焼床鋏(やっとこ)も種類が豊富です。
明らかに、苦痛よりも女体に快楽を(心に屈辱を)与えるのを目的とした責め道具もあります。たとえば前後に揺れる橇を備えた首の有る木馬。背中は丸みを帯びていますが、怒張した男根の五割以上も太くて長い張形が二本、そびえ立っています。木馬の首には小さな巻取機から三筋の細い鎖が垂れています。鎖の先の小さな摘み金具を女性の突起に付けて木馬を揺らすのだと思います。
もっと凄いと、見ただけで分かる道具もあります。平たい大きな箱から太い棒が突き出ていて、先端には“L”字形の角材が取り付けられています。箱の端からも短い棒が立っていて、こちらは弾み車らしい分厚い鉄の円盤で終わっています。私が目を奪われているとお継母様が、その円盤をゆっくりと回しました。円盤が三回転ほどもすると、角材が一回転します。“L”の横棒の先端が垂直の棒とつながっているのですから、“L”の縦棒は円を描きます。つまり――箱の上に立って“L”の縦棒を前後どちらかに挿入していれば、腰が淫らにくねるのです。角材の縁で穴を抉られながら。円盤を自分で回すという使い方も出来ます。手で回すのでしたら、程良い加減に出来るしょうが、逆に腰をくねらせて回すとなると、穴を角材に押し付けるのですから――私だったら絶頂に達してしまうかもしれません。試してみたいです。
小道具も同じように、快楽と恥辱を目的とした物が揃えてあります。羽箒とか張形とか。
けれど、最も肝腎な鉄格子の独房がありません。代わりに、小さな檻が四つ置かれています。そのひとつには、裸の女性が手足を広げて鎖につながれています。
「こやつは驢馬(アシノ)だ。これは懲罰でも拷問でもなく、みずからに望ませた信仰に基づく苦行だ」
乳房にこびり付いた無数の小さな赤い斑点は、みずから望ませるための針による説得の痕跡でしょうか。
「本来は自分で身体を動かして転がらねばならないのだがな」
その檻は他の三つと違って、球形をしています。司祭様が軽く押すと転がり始めました。周辺を囲った浅い枠にぶつかると、反対側へ転がります。たいした苦痛ではないのでしょう。女性は微かに呻いただけでした。
こんなのが苦行なら、私だって説得されなければ望まないでしょう。それとも、こうやって転がされ続けるのは、経験豊富な(?)私でも想像できない苦痛なのでしょうか。
「本来なら、ここで軽く苦行をさせて当院についての理解を深めさせるのだが、おまえには、その必要は無いな。むしろ、苦行を体験させないのが、いちばんの苦行になるのではないかな」
院長様のお言葉に、お継母様がくすりと嗤いました。何もかも見透かされているようで、落ち着きません。こんな光景を眼前にして、こんなふうに拘束されていて、落ち着くもあったものではありませんけれど。
院長様と司祭様が、球形の檻に錘を取り付けました。閉じ込められているアシノの胴回りに当たる部分です。アシノは上下逆さにされて――両手はさっきよりも垂れています。拘束している鎖に余裕があるのです。たしかに、自分で転がるには身体を動かす余裕が必要です。
檻の周囲六か所に錘を付け終わると、お二方は檻を回し始めました。司祭様が鉄格子をつかんで押しやり、院長様はあちこちへ動いて、檻がひとつ所で回るように突き戻しています。
「あああああ……お赦しください。目が回ります!」
お二方は、檻が回るままにして、手を放しました。
「苦行の間も先ほどの貴賓室も、おまえたちが暮らす場所ではない。寮も案内しておこう」
私はまたも、乳首を引っ張られて拷問いえ苦行の間から連れ出されました。
表口から外へ連れ出されて、ぐるっと建物を半周して。そこには狭い裏庭を挟んで、石造りの平屋が建っていました。すべての窓に鉄格子が嵌まっていて、なんとなく牢獄を連想しました。事実、そこは修道女たちの獄舎でした。雑居房です。
建物を強固にするために間仕切りの壁はありますが、扉の無い大きな開口部で、全体が大広間となっています。
そこには五人の修道女が居ました。皆、素裸の上に幅の狭い肩衣です。お尻は剥き出しです。五人とも、真新しいか数日を経ているかの違いはあっても、鞭痕を刻まれています。仕事は――二人が糸を紡ぎ、二人が轆轤(ろくろ)を回して、残る一人は裁縫をしています。
五人は一斉に立ち上がって、院長様たちを迎えます。十字を切ってから、肩衣の裾をつまんで横に引っ張り(股間が丸見えになります)腰を屈めて屈膝礼を執りました。院長様が頷いて横柄に手を振ると、五人は仕事に戻りました。ご主人様と女奴隷――そんな印象です。
大広間の一画を三十ほどの寝台が占めています。殿方と二人で寝るには狭い寝台です。寝台には薄汚れた感じの敷布が掛けられていますが、すぐ下は簀子です。つまり、布団は許されていないのです。そして、寝台の四隅と両側に、鎖でつながれた枷が置かれています。
寝台のひとつだけが使われています。首輪でつながれた全裸の娘が、片手を寝台から垂らして俯せになって……気絶しているのでしょうか。背中とお尻を生々しい鞭傷がびっしりです。緑色の膏薬が薄く塗られています。
「牝犬(カーニャ)、鳩(ピッショーネ)。ここへ来い」
糸を紡いでいた二人が呼び付けられました。もう間違いはありません。ここの女性たちは、犬とか猫とか豚とかの蔑称で呼ばれているのです。お継母様の雉(ファジャーノ)は、むしろ優雅でさえありますけれど。
「それぞれの寝台に寝ろ。カーニャは安眠の姿勢、ピッショーネは反省の姿勢だ」
二人は肩衣を脱ぎ全裸になって、隣り合った寝台に仰臥しました。そして、カーニャは手足を“X”字形に広げました。ものすごく覚えのある姿勢です。お継母様は、ここでの体験を私に反映させていたのです。
ピッショーネは両手で足首をつかんで、お尻の穴まで天井に向かって晒す“V”字形です。間近に見ると、全身に様々な痕が鏤められています。鞭だけでなく、鎖、枷、そして焼鏝。どれも、いずれは消える程度にとどまっています。
私は安心が九分と失望が一分です。ここでは真正の拷問は行なわれていないのでしょう。自白しなければ責め殺すのもやむなし――ではなく、末長く虐めて愉しむのです。
司祭様が、それぞれの手足に枷を嵌めていきます。胴の下には鎖につながれた鉄板を敷いて、浅く曲げた鉄棒を反対側からお腹の上に載せ、ボルトで留めました。
「犯した罪によっては、さらに祝福を追加するときもある」
院長様が胸の十字架を外して、ピッショーネの股間に突き立てました。
「ありがとうございます、院長様」
ピッショーネの声は、本気で悦んでいるように聞こえました。
院長様は十字架をしばらく抜き差ししてから、その部分をピッショーネの口に挿れました。彼女は熱心に、まるで男根に対するように舐めて、みずから零した滴りで汚れた十字架を綺麗にしました。
「もちろん、もっと厳しい祝福もある」
司祭様も十字架を外しました。それを手に持って。
バチャン!
「きひいいっ……!」
細い鎖で割れ目を叩きました。
「乳首に祝福を与えることもあるし、尻穴を清めることもある。それは――おまえが入院の誓願をしてから、自身の身体で知れば良かろう」
また、外へ引き出されました。もう必要はないと思ったのか、ただ飽きてしまったのか、お継母様は乳首で引き回すのをやめてしまいました。鎖すら引っ張ってくれません。私は自分の意思で歩かなければならないのです。駄々をこねてみようかなとも思いましたが、先々にも愉しみ(並みの娘なら恐怖)が待っているに違いないので、せめて股間の鎖の強烈な刺激を堪能しながら、素直に歩みます。
しばらくは退屈でした。畑や畜舎の見学です。それぞれ数人ずつの修道女が、さほどの屈託も無さそうに働いています。ありふれた農村の光景です。全員が素裸という点を除けば。いえ、訂正します。二人だけは拷責――ここでは祝福と言うのですね。明らかにそれと分かる装具を身に着けて、つらそうに身体を動かしていました。
奴隷労働を監督する役目の人は見当たりませんでした。決められた課業を達成できなければ連帯責任で祝福を与えられるのか、これを悦びとするまでに仕込まれているのか、それは分かりません。いずれ身を以て知ることになるのですから、もっと興味のあることに関心を向けます。
それは年齢です。いちばん若い修道女は、私より一つかせいぜい二つくらい下です。それより若いと、殿方の淫欲をそそらないのでしょうか。それとも、この施虐院の過酷な祝福に耐えられないからでしょうか。いずれにせよ、院長様(あるいはお客様たち)は、それなりの節度をお持ちらしいです。
誰しも今よりは若くなれないのですから、ほんとうに関心があるのは『上限』です。ざっと見たところでは三十半ば、せいぜい四十手前でしょうか。化粧も無しで、乳房やお尻の弛みも隠せないのですから、小娘の見立ても、そうは外していないでしょう。
お継母様のよう幸運に恵まれなくても……二十年から先のことなど、今から気に病んでも仕方のないことです。
退屈な見学が続いた後には、久しぶりの官能が待っていました。
礼拝堂へ連れて行かれて。
「おまえには、これくらいは虐めてやらんと引導を渡してやれぬだろうて」
手枷と首輪を外されました。何がこれくらいなのか、どきどきします。
院長様と司祭様が、衣服をすべて脱ぎ去りました。年配の院長様も勃起させています。お若い司祭様はいうに及ばずです。うわあ、そっちです。
あれ、でも……?
お二人は向かい合って床に座りました。互いに、相手の左の太腿に右足を乗せて、さらににじり寄りました。
ああ、そうか。二本の男根が並んで(年齢相応の角度で)勃っています。
お二人は細長い袋を男根にかぶせて、その上から油のようなものを垂らしました。
「娼婦の技を見せてもらおう」
お安い御用です――とも言えません。前後の穴を同時に使っていただくことに異存はありません(むしろ大歓迎です)が、奇妙な仕掛が薄気味悪いです。
「あの……それは、何なのでしょうか?」
司祭様が不思議そうな顔をしました。
「娼婦のくせに知らんのか」
「いや、娼婦だから知らんのだろう。そうそう使い心地の良い物ではないからな。客が怒る」
院長様が教えてくださったところによると――これは羊の腸だそうです。これをかぶせていれば、子種が女の穴に入るのを防げる。つまり妊娠の心配が無いのです。油を垂らしたのは、ごわごわした袋の滑りを良くするためだとか。
それと、もう一点。事前にお尻の中を綺麗にしておかなくても良いのです。少なくとも、殿方に不都合はありません。
納得はしましたけれど、使い心地が悪いというのが気がかりです。張形には張形の良さがあるのですから、生身と張形の中間みたいなこれが良くないとも思えません。悪いというのは、殿方のほうです。快感を犠牲にしてまで女と媾合う意味が分かりません。私の気持ちまで重くなります。
でも、久しぶりの媾合いです。お継母様の眼の前だからといって、ためらいはありません。かつてどころか今でさえ、お継母様は被虐修道女そのもののようですから。同類の先輩です。
では、気を取り直して……そこで、二本を同時に挿入しなければならないと、気づきました。木馬の背中に生えた木の棒ならまだしも、肉の棒はどんなに硬くても動いてしまいます。うまく出来るでしょうか。
どちらをどちらへ挿れろとは、言われませんでした。それなら、天を衝いている司祭様が後ろです。それだけ硬いでしょうから。お偉い院長様にお尻を向けて礼を失する恐れもありません。
私はお二方を跨いで中腰になり、背中から右手をまわして司祭様の怒張を握りました。腰を沈めていって、お尻の穴にあてがいます。同時に、左手で院長様を女の穴へ導きます。
「うんっ……」
穴のまわりから力を抜いて、さらに腰を沈めました。
ずぶっ……にゅるん……
「あはああっ……」
油の滑りが良く効いて、至極簡単に嵌まりました。ひと月以上も御無沙汰していた感触です。愉悦の吐息が漏れました。
この形では、お二方が下から突き上げるのは難しいでしょう。私が動かなくては。でも、すぐには動けませんでした。これまでずっと傍観者だったお継母様が、“V”字形の貞操帯(でしょうか?)を抜き取ったのです。赤く絖った割れ目と、それを取り巻く……極端に細長い繁みです。娼婦みたいに手入れをなさっているのでしょう。そういえば――それくらいはちっともたいしたことではないように思えるくらいに衝撃の連続でしたので、目にしても心が動くどころではありませんでしたが。修道女も様々に手入れをして(されて?)いました。狭く短く刈り込んだ股間もありましたし、無毛もありました。そこに焼鏝の跡も。さすがに消えない焼印は見かけませんでしたけれど。
「私の失礼には、後ほど祝福をお与えください」
後で罰してくださいという意味でしょう。お継母様は院長様の頭を跨いで、私の眼前に股間を突き付けました。
「二本だけだと、お口が寂しいでしょ」
何を求められているかは明白です。娼館で経験も積んでいます。でも、でも……相手はお継母様です。血のつながりがないとはいえ、母として十五年に渡って接してた人なのです。
「厭です……いえ、あの……畏れ多いです」
拒否の言葉に、ためらいと譲歩が交じってしまいます。
「儂からも命じる。ファジャーノに奉仕せよ」
院長様までが、当然のようにけしかけます。
「神よ。この淫売に祝福を与え給え」
「きひいっ……」
司祭様が、私の女の芽をつねりました。莢を剥いて雌しべに爪を立ててひねくります。
「儂からも祝福を与えよう」
院長様が二つの乳首を同じようにつねって、思い切り引き伸ばしました。
「くううううっ……痛い!」
私は歯を食い縛って、甘い激痛に酔い痴れました。ところが、私が降参しないうちに三つの突起から指が離れました。
「ああっ……もっと虐めて、いえ、祝福を……」
「ならば、ファジャーノに奉仕せよ」
私は禁忌の念をかなぐり捨てて、目の前の割れ目に接吻をしました。
「みずから祝福を求めるとは……まったく、いつもとは逆ですな」
司祭様の声には苦笑いが混じっています。ええ、そうですとも。私は並みの娘とは正反対で――虐められると悦ぶのです。でも、あなた方は、そういうふうに修道女を仕込もうとしているのではないですか。
余計なことを考えただけ、奉仕がおろそかになっていたようです。お継母様がじれたように私を叱ります。
「子供の遊びではありません。もっと真剣になりなさい」
院長様が乳首を軽く摘まんで、すぐに指を離します。司祭様が女の芽をくすぐります。こんなじれったい愛撫は厭です。もっと鮮烈な激痛を……
私は割れ目にかぶりついて、本気で奉仕を始めました。割れ目の縁を何度も舐めて、内側の花弁を甘噛みして、鼻まで割れ目にうずめて舌をうんと伸ばして、女の穴を掻き回します。女の芽を虐めれば簡単なのですが、装身具の留め金で蓋をされています。
「ああっ……上手だわ。いったい、どこまで仕込まれているのかしら。淫らな娘ね」
かつては、そう蔑まれることに恥辱を感じていましたが、今では誉め言葉にしか聞こえません。三か月の娼婦生活で仕込まれたすべてで、お継母様を追い上げてみせます。
ずちゅうう、ずぞぞぞ……花弁が震えるように息を吸ったり、穴を膨らますように吹き込んだり、また啜り込んだり。
私の熱心さを愛でて、院長様も司祭様も祝福を与えてくださいます。
「きひいいいいっ……痛い……」
わざと悲鳴を上げます。それで、お継母様の割れ目も震えるのです。
「いい加減で腰を遣わんか」
女の芽を引っ張られました。腰を浮かすと、乳首を下へ引っ張られます。それで腰を落として、縮れ毛で肌が擦れるまで深く咥え込みます。こんなふうに支配され操られるのが、私には似合っています。でも、じきに――突起を引っ張られて動いているのか、突起で指を引っ張っているのか分からなくなって、どんどん動きが速くなっていきます。
お継母様も私の頭を押さえこんで、股間に密着させてくださいます。
羊の腸の袋のせいで、殿方は射精の気配もありません。私が先頭に立って坂を駆け登り、同時にお継母様を引き上げている。でも、お継母様は遅れ気味です。
そして、とうとう。私だけが目もくらむ断崖絶壁から宙に身を投げたのです。
ほんとうに性の狂宴を愉しむつもりなら、私を余韻に浸らせたりせずに、いっそうの祝福を与えてくださるのでしょうけれど……お継母様は身を引いて、院長様は私を横へ突き飛ばしました。
「さて……この娘は、もはや見習を経ずとも誓願をする資格を有しておる」
院長様が身繕いをしながらおっしゃいます。
「されど、そこまでの例外を認めるのもよろしからぬ。よって、ただいまより明後日の夕刻までを見習として遇する。そして爾後を『内省の夜』とする」
『内省の夜』とは何なのかは誰も教えてくれませんが、見習の意味は直ちに我が身で知りました。
裏庭へ連れ出されて井戸水(聖別されているそうです)で身体の汚れ――主にお尻まわりを清められて。フランカと同じような姿にされました。腕を背中高く捩じ上げられて、掌を合わせた形で縛られたのです。指も一本ずつを紐で縛られました。丸い革の袋に詰め物をした猿轡を噛まされ、革紐で頬を縊られました。これでフランカと同じになりましたが、私にはさらなる苦行が追加されました。
まず、乳房の根元を首から垂らした縄でぎちぎちに縛られました。お継母様に比べると同じ乳房という言葉を使うのが恥ずかしくなるくらいですが、形としてはお継母様より美しかった膨らみが、小さな鞠みたいに無様になりました。縄はそのまま下へ向かい、大きな結び瘤が作られて、それが割れ目に埋め込まれました。お尻をくぐって縄が引き上げられ、二の腕の高さで左右に分けられ、乳房を外へ引っ張ります。
「これが、おまえに与える十字架だ」
そう見えなくもないのでしょう。
私としては十字架よりも、背中で手を祈りの形に捻られているせいで、肩が脱臼しそうなくらいに痛いです。
まさしく苦行の姿で、礼拝堂に付属する告解室へ入れられました。硬い丸椅子に座ると、ますます縄が股間に食い込んできます。お尻の穴も擦られます。苦痛が増して、垂れる蜜も濃くなってきます。
私と向かい合うのは司祭様。顔を隠す仕切などありません。代わりに小机がふたりを隔てています。
「ここで暮らせばすぐに分かることだが、いちおう説明はしておこう」
修道院の成り立ちについて、ひと通りの説明をしてくださいました。
在籍している修道女は見習のフランカを含めて十九人。私で二十人になる予定です。これに対して殿方は八人。院長様(司教様です)と司祭様と二名の助祭様。そして雑用を兼ねた衛兵が四人。
売春宿にしては大きいな――くらいに思っていたら、大間違いでした。歩いて半時間と掛からないところに小さな村があって、そこの数少ない村人は、すべて修道院が雇っているのだそうです。そこは、修道院を訪れる賓客の従者が宿泊する場所でもあります。娼館にこそこそ通うのではなく、護衛兵と小姓や小間使い、人によっては料理人まで引き連れて、堂々の訪問あるいは視察だそうです。滞在も数日に渡ります。『踊る花の館』とは桁が違います。
その賓客ですが。基本的には、この修道院の庇護者と援助者(どう違うのかは教えてもらえませんでした)、ときにはその貴顕たちからの紹介者だそうです。身元はしっかりしています。
だから、院内の様子は絶対に壁の外には(配下の村も含めて)知られないだけの配慮が払われています。万一にも修道女が脱走しようものなら、たとえ近衛騎士団を動員してでも探し出して、即時の密殺です。
さいわいに、そういった不祥事は創設以来三十六年間、一度も起きていないそうですが――私にはどうでも良いことです。それよりも。王侯貴族や大商人であれば変な病に罹っていないでしょうから、とても安心です。
ここまでは雑談めいたお話でした。司祭様も四角四面に座ってばかりではおられずに、私の背後から身をかぶせて乳房を弄ったり、縦に股間を割っている縄を揺すったりして、遊んでくださいました。先程は、引導を渡されたのは私だけで、院長様も司祭様も埒を明けておられませんから、そのせいかもしれません。
けれど、講義といいますか本格的な勉強(?)が始まると、司祭様が席を立つことはなくなりました。
最初に教わったのは、この修道院に名を冠している聖エウフェミア様の殉教についてでした。
彼女は異教の神への供物を拒んで投獄され、十九日にも及ぶ拷問にも屈さず信仰を捨てませんでした。その様子を写した絵画を見せられ、微に入り細を穿つった説明もいただきました。爪を剥ぎ指を折り女性器まで破壊するという、アンブラで私か受けた拷問など児戯に類する凄まじいものでした。最期は闘技場の中で異教の群衆の見世物にされながら、熊に強奻されて絶命したそうです。
そんな彼女を、私は羨ましいとは思いません。死刑の恐怖から救出されたとき――実は私を非公式に解放するための狂言だったと、今では理解していますが――私はすこしだけ変わったのです。死んだり不具になったりしない程度に末長く虐めていただくのがいちばんの幸せではないかと。
聖エウフェミア様の事績の次は聖書の勉強です。小机に巻物が展げられましたが、私には読めません。同じ文字を使い綴りも似ていますが、聖なる言語を理解できるのは聖職者と一部の学者だけです。司祭様は巻物の文字を読み下しながら、順に翻訳してくださいました。そして、適宜に注釈とか解説を補ってくださったのですが……まさに、目から鱗が落ちる驚天動地の思いになりました。
聖書の始めの方に、アダムとイブの息子たちが妻を得る話があります。
「神はアダムを造り給い、その肋骨から伴侶たるイブを造り給うた。他には人間をお造りになっていない。では、二人の間に産まれた息子たちは、どこから妻を娶ったのだろうか」
そんなことは考えたこともありません。
「答はここに書いてある」
巻物の中ほどが開かれました。アダムとイブの息子たちは、彼らの姉妹と結ばれたのだそうです!
教会の教えでは、近親姦は殺人にも匹敵する罪です。それを全人間の始祖が犯していたなんて。世界の表と裏、上と下がひっくり返ったような衝撃です。
でも、世界の始まりにはアダムとイブしか居なかったのですから……筋道立てて考えれば、そうとしかなりません。
司祭様は別の巻物を展げて、追い打ちを掛けてきます。
すべての動物がひとつがいずつしか生き延びなかったノアの方舟も同じこと。それどころか、ソドムに降り注ぐ硫黄の火から逃れて山に隠れた父娘は――娘が父を酒に酔わせて、みずから父に乗ったのです。
茫然自失です。何が正しいか分からなくなりました。並みの娘なら、女は男から苦痛を与えられることこそ真の悦びだと説かれれば、そのまま受け容れるかもしれません。
でも、私はそこまで自己を見失いません。苦痛が悦びなのではなく、女を苦しめることで淫らな悦びに浸る男を得て、自分がその男にとって肋骨以上の存在であると実感できる。それが女の悦びなのです。すくなくとも私は、そうなのだと思っています。
肩の痛みも乳房を搾る縄も股間への食い込みも忘れてしまうほどの衝撃の裡に、この日の勉強は終わりました。
見習修道女の装いのまま寮へ連れ戻されて、そこで縄をほどいてもらえました。
「おまえは見習の身であるから、神の御前に一切を曝し出しておれ」
全裸のままで過ごせという意味です。フランカも私と同じ姿です。
すぐに夕食の時刻になりました。寮の横にある粗末な厨房で、当番の修道女が作った食事です。
寝台の敷布に小さな布が重ねられて、そこに皿が置かれます。修道女は床に跪いて――囚人なら当たり前の手掴みではなく、きちんと食器を使って食べます。私とフランカ、そして過酷な祝福の傷で静養していた鶉(クワーギア)さんの三人だけは全裸で、残りの十二人は肩衣を着けたままです。
私を含めて二十人にまったく満たないのは――あの広い拷問の間で泣き叫んでいるか、それが終わって賓客の豪勢な食事のご相伴(彼女の食卓は床だと思います)に与っているかのどちらかに決まっています。
娼売が出来る十七人のうち十二人もがお茶を引くなんて、大赤字もいいところと思いましたが、すぐに考え違いに気づきました。『踊る花の館』でも、娼婦の身体を傷付けるような遊びをするお客からは数日から一週間分の花代を取っていました。ここの賓客はそういう遊びをする人ばかりでしょうから、これ以上は娼婦(ではありませんでした。修道女)の身が保たないでしょう。
清貧を旨とする修道院(というのが、ここでも当てはまるかすこぶる怪しいですが)にしては、この食事は豪勢ではないのはもちろんですが、貧しくない平民の食卓よりは豊かなくらいです。ほとんどが自家製ですから、とても新鮮です。
考えようによっては、何年も拷問ではなく祝福に耐える体力を維持して、しかも嗜虐者の眼鏡に適う女体でなければならないのですから、少しくらいの贅沢は必然でしょう。
食事が終わって、皆で後片付けをして。部屋の隅の蓋付きの桶で用を済ませて。就寝前のお祈りも済ませました。これまでの生涯でも十指に入る波乱万丈の一日も、ようやく終わろうとしています。私は疲れ果てた気分です。
継母の嗜虐愛
でも、まだ続きがありました。
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なのです。修道院での第1日はまだ続きます。
ちなみに、1本場の章題を英訳すると……MamMother Strange Love by Stanley Kublic になります?
でもって、2本場は『三位一体の日』です。
父と娘と性隷の3Pです。
1本場と2本場は「賞味期限付」にしますので、お見逃し無きよう。

Progress Report 6:公女巡虐
盗賊への拷問
あまり派手にやらかすと、役人も本気で取り締まるようになるので、じゅうぶんに気をつけていたつもりです。こちらの狙い目を感づかれないために、娼館帰りを狙うのは新月の前後に限らず、小雨の日も張り込んだりしました。高額な盗品を売りさばくときは、アンブラの故買屋だけでなく、アガータやブロンゾにまで出向きます。王都は警備が厳しいので近づきませんが、その北東(アガータからは南東)にあるギアダまで遠征することだってあります。美人局の場所も一回ずつ変えました。乞食や浮浪者まで含めれば五千人以上が防壁の中に住んでいる街ですから、尻尾をつかまれることもないだろうと楽観していたのですが、思わぬ見落としがありました。私娼です。
その日は、中央の広場に近いあたりで網を張っていました。広場の一画には、常に数人の私娼がたむろしています。そこは避けて、これから女を買いに行こうとする、あるいはめぼしい女を見つけられずに引き返す男を狙ったのです。十年後はどうか分かりませんが、今の私なら簡単に客を捕まえられます。
では、なぜ素直に娼売をしないかというと、ひとつにはせいぜい二百ラーメという相場です。しかも、安物買いをするような連中は、どんな病気を持っているか知れたものではありません。でも私の都合は、大きな理由ではありません。盗賊団を名乗るペピーノたちの自尊心を傷つけたくなかったのです。私としても、食べるに困らず小金で欲望を満たそうという連中の鼻を明かしてやりたい――貴族令嬢とは真反対の地に立っていました。
さっそくに鴨が来ます。スカートを片方、太腿のあたりまでたくし上げて。
「ご主人様、私を買ってください」
場末の私娼は、もっと蓮っ葉な物言いをしますが、若さを純朴と卑屈に置き換えて、こんなふうに誘います。この鴨も、ころりと引っ掛かりました。
「幾らだい?」
「できますなら一グロッソで」
この三か月で十回『狩り』に出て、獲物は六人。六人とも値切ってきたのですが、今日の鴨は、すっと金袋を取り出しました。
しめた――と、ガイオが物陰から飛び出して、私を鴨に向かって突き飛ばしながら金袋をひったくりました。
「きゃああっ!」
鴨に抱き着いて、一緒に転びます。鴨は慌てて、私を突き飛ばし……ません。逆に、私を抱き締めてきました。
「わああっ! どけよ!」
ガイオの叫び声。そちらを振り向くと、四、五人の人影が行く手をふさいでいました。
ガイオはその一人に肩からぶち当たって、転びはしたもののすぐに立ち上がり、一目散に逃げて行きます。人影はガイオを追い掛けようとはせず、私を取り囲みました。
「へへん。捕まえたよ。小娘のくせに、とんだ悪党だね」
私は鴨と思っていた男の手で石畳に押さえつけられて、縄で後ろ手に縛られました。
何が起こっているのか、理解できません。とんだドジを踏んだということだけは分かっています。
「おれらの娼売を荒らしやがって。役人に突き出してやる」
前々から目をつけられていて、罠に掛かったようです。
「ごめんなさい。もう二度と、こんなことはしません」
謝るだけでは赦してもらえないのは分かっています。とっさに考えて。
「これからは、皆さんと同じ稼ぎをさせてください。もらったお金は、全部差し上げます」
返事は、脇腹への痛烈な蹴り込みでした。
「てめえのほうが稼げると自惚れてるんだろ。役人に突き出す前に、ちっとばかり焼きをいれてやろうか」
「おい、ちょっと待て」
「なんだよ。おれらに意見しようってのかい。紐のくせに」
「そうじゃねえよ」
私を捕まえた男が、顔を近づけてじっと見つめます。
「ここじゃ分からねえ。もっと明るいところ……あそこだ」
男は私を引きずり起こして、広場の中央へ引っ張ります。
私はされるがままです。救けを求めても、やって来るのは夜警の下役人でしょう。ガイオが聞きつけて戻ってきたら、大人にちかい腕力があっても、これだけの人数には適いません。おそらく、この男は短剣くらい隠しているでしょうし。
広場の中央にある小さな人造の池。その水面に顔を近づけさせられました。月明かりが反射して、私の顔が浮かび上がっているはずです。
男が、あらためて私の顔を観察して。
「長い金髪ってだけじゃねえ。年恰好も、聞いてる通りだ。こいつは……餓鬼どもを束ねて掻っ払いをさせてる女だぜ」
うまく立ち回っていたつもりです。街では噂にも立っていないはずです。でも、裏の社会ではそうでなかったのかもしれません。もしかしたら、ペピーノたちが知らないだけで、盗っ人にも職人組合があって、そちらではここ三か月の荒らしぶりを不愉快に思っていたのかもしれません。
こうなったら観念しましょう。一生を幽閉されて過ごすのも、致し方ありません。
この三か月で慣れていた蓮っ葉な物言いを、淑女のそれに改めて。
「私が悪事に身を染めているのは、焉むに止まれぬ事情があっての故です。私はラメーズ伯爵、マッキ・コルレアーニの長女です。ラメーズに使いを遣ってください。十分な恩賞を与えられるでしょう」
池の中へ蹴り落されました。
「うわっ……ぷ?!」
慌てて立ち上がろうとしましたが、スカートが足に絡みついて、手は縛られていますから、上体を起こすのさえ困難です。藻掻いていると、髪の毛をつかんで引き起こされました。
「正気に還ったか?」
「嘘ではありま……」
また水に沈められました。
「たわ言を真に受けて命を落とすほど、こちとらも馬鹿じゃないぜ」
まあ……苦し紛れのその場しのぎと思われても当然でしょう。真実であれば、下手をすると誘拐犯と断じられかねない。そうも考えるでしょう。この男を説得するのは諦めます。役人なら半信半疑、いえ、わずかでも疑義が生じれば、問い合わせくらいはしてくれるでしょう。ラメーズまで早馬で使いを出して、真偽の確認に誰かがやって来る。それまでの数日間は囚人と同様に扱われるかもしれませんけれど。
私はずぶ濡れのまま引き立てられて、夜警の詰め所へ連れて行かれて。また縄付のまま歩かされて、倉庫が立ち並ぶ一画に設けられた牢獄へ入れられました。
どうせ取り調べは明るくなってからです。下っ端の牢番に訴えたところで、さっきの男と同じ結果になるでしょう。然るべき役人に申し開きをします。
縄はほどかれましたが、乾いた衣服は与えられませんでした。ずぶ濡れのままでいると、どんどん身体が冷えてきます。さいわいに独房でしたので、鉄格子の向こうから他の囚人に見られてはいますけれど、素裸になりました。衣類は絞って鉄格子に干して。身体を丸めて一夜を明かしました。これが冬だったら凍え死んでいたことでしょう。
明け方の冷え込みで目を覚ましました。牢に入れられて衣服も着られず、裸でうずくまっているというのに眠りこけるとは、私も図太くなったものです。
もう乾いたかしら――と、鉄格子を見ると。そこに掛けておいたはずなのに、見当たりません。牢内にも。盗まれたのかもしれません。でも、誰に?
他の囚人から手が届くはずもないし。
「誰かいませんか?」
小声で呼ばわってみましたが。
「うるせえ。牢番に言いつけるぞ」
その牢番が来ないのは、眠りこけているからでしょう。大声を出せば、寝起きの不機嫌でやって来るかもしれませんが、得策ではありません。向こうから来てくれるまで待ちます。
身体が冷えれば、小水も近くなります。牢獄の奥には、砂を半分ほど入れた小さな桶が準備されています。まわりの囚人が目を覚まさないうちに済ませておきます。朽縄も枯葉も無いので不潔ですけれど。
徐々に牢獄の中が明るくなって、全体の様子がはっきり見えるようになりました。
たったひとつしかない扉の向かい側の壁は、街の防壁そのもののようです。牢獄自体の壁は三方。その壁に沿って、十四個の独房がびっしりと並べられています。真ん中は広く開けられて、おどろおどろしい拷問道具が置かれています。防壁の部分にも、囚人を拘束する鉄枷や鉄鎖が植え込まれています。
防壁の天井に近いあたりには、鉄格子を嵌めた明り取りの穴が四か所あります。その小窓から見える空がすっかり青くなってから。牢番がやって来て、がんがんと鉄格子を叩いて回ります。そして、黴の臭いのする小さな固いパンとを三つと小さな桶を差し入れます。桶には泥臭い水が満たされています。
「新入りに言っとくが、これが一日分だからな」
「あの……ここに掛けていた私の服をご存じないでしょうか?」
牢番は私の裸身を眺めながら、にたりと嗤いました。
「囚人には余計な物をもたせちゃいけないからな。没収したぜ」
「濡れたから乾かしていただけです。返してください」
牢番は肩をすくめて背を向けました。
「どうせ、拷問のときは素っ裸に剥くんだ。手間が省けるってもんだぜ」
まわりの囚人たちも、含み笑いのような吐息を漏らしました。
あらためて、彼らの様子を観察します。男が三人と女が一人。男は襤褸布のような衣服を身にまとっていますが、女は腰布一枚です。女は私の倍までは行っていない、おそらく三十前でしょう。その裸身は、鞭傷や痣で埋め尽くされています。私は戦慄しました。全身が冷たく重たい鉛のように感じられます……けれど、その内奥に灼熱した石炭がぽつんと生じて。じわじわと鉛を熔かしていく感覚も、たしかに存在するのです。けれど。娼館での折檻で、懲りているはずです。罪人への拷問は、それ以上に凄まじいでしょう。一粒の砂糖を圧し潰す塩の山です。
牢番くらいでは話にならないと判断して。尋問までは騒ぎ立てないことにしました。
――食事が配られてから一時間も経った頃、ついにその時が訪れました。
黒い長衣に身を包み頭に四角い布の帽子を頂いた役人が、三人の拷問吏を引き連れて牢獄に姿を現わしたのです。なぜ後ろの三人が拷問吏と分かるかというと。
素肌に革の胴衣という出で立ちよりも。目と口だけを出した黒い頭巾で顔を隠しているからです。拷問を受けた囚人が釈放されたら、その囚人が善良な民ではなく悪党の一味だったとしたら。拷問吏に復讐を企んでもおかしくはありません。顔を知られるのは、拷問吏にはきわめて不都合なのです。それは役人も同じでしょうが、彼は護衛も無しで外を歩いたりはしません。
「そこの官吏に物申します」
私は立ち上がって、淑女に許される範囲で声を張りました。もちろん、両手で要所を隠す仕種も忘れません。
場違いな物言いに、役人が私を振り返ります。
「私は、ラメーズ伯爵、マッキ・コルレアーニの長女、エレナです。悪党に拐わかされ、よんどころない仕儀にて売笑婦の真似事をせざるを得ず、それゆえに投獄さました。罪は賠償金にて償います。至急、ラメーズへ遣いを出してください。裁判所の命じる賠償金と併せて、あなたにも多大な恩賞が下されるでしょう」
役人の返事は、ただ一言でした。
「黙らせろ」
拷問吏が一人、牢のカギを開けて入ってきました。
「私に手を触れるのを……」
ばしん。
頬に痛烈な平手打ちを食いました。目の前で星が飛び交い、頬が焼けるように熱くなり、耳がキインと鳴りました。痛みを感じたのは、その後でした。
拷問吏は片手で私を羽交い絞めにして、縄を私に噛ませました。頭の後ろできつく結びます。
「あいをうう……?!」
何をするのですか。そう詰問したくても、奇妙な呻き声にしかなりません。
「もうすこし懲らしめてやれ。後ろ手吊るしで立たせておけ」
後ろ手に縛られて、鉄格子の外へ引き出されました。手首の縄が鉄格子のいちばん上に通されて、引き上げられます。垂れていた腕がだんだん吊り上げられ、肩が捻じられます。自然と上体が前へ倒れていきます。やがて、これ以上は身体が傾いても手首は上がらない位置にまで達して……身体が吊り上げられそうになります。つま先立ちになったところで、ようやく止めてくれました。縄尻が鉄格子に結び付けられて、私は不自然な姿勢で立ち続けねばなりません。
「女だからといって容赦はせんと教えてやる。リタを引き出せ。今日は焼鏝だ」
「いやあああああっ! あんだけ酷いことをしたのは一昨日じゃないか。まだ傷がふさがってないんだよっ!」
「だから、焼いてふさいでやろうというのだ」
「あああ……どうか、お赦しください!」
「白状するか?」
「あたしじゃない。金庫の開け方だって知らないんだ!」
リタという女が訴えている間にも。彼女は枠に簀子を張っただけの寝台のような物に、鎖と枷でYの字形に俯せで拘束されました。その横では火桶に石炭がくべられ、鞴で白熱させられています。先端が平たくなった鉄棒が、何本も火桶に突っ込まれました。
「やめてください! 死んじゃうよ!」
「安心しろ、死にはせん。いや、醜い引き攣れなども残らん。あまり深く焼いては、かえって痛みを感じぬからな」
「俺たちだって、醜い女にゃ勃つ物も勃たねえや」
拷問吏のひとりがうそぶきました。
「できれば、こっちの伯爵令嬢は肌がきれいなうちに……」
びしっ!
役人が手にしている鞭で拷問吏をたたきました。
「余計なことを言うな。叱られるのは儂だぞ」
役人は鞭を灼熱した鉄棒に持ち替えて、私に近寄りました。
「どうせ、おまえは貴族が物事をどのように考えるから知らんだろうから、教えておいてやる」
鉄棒の先を、私の折れ曲がった上体すれすれに近づけます。熱気で肌がチリチリします。
「もしも、おまえが詐称する通りの身分だったとしよう。それでも、ラメーズ伯爵だったかな。彼は問い合わせを受けても否定するに決まっている」
娘が娼婦に堕ちているなど、家門の名誉を木っ端微塵に粉砕するほどの不祥事。爵位を剥奪されかねない。娘は見殺しにするしかない。隠密裏に解決しようとしても、アンブラ子爵に致命的な弱みを握られるのは避けられない。しかもラメーズ家とアンブラ家は、それほど友好的な関係にはない。
言われてみれば、至極当然のことです。私は自分可愛さのあまり、そんなことも見えていなかったのです。身分がばれれば連れ戻されて、一生を幽閉されて過ごさねばならない。そのことだけしか考えていなかったのです。
「つまりだ。儂が上に報告すれば、囚人のたわ言を真に受けた大馬鹿者。まかり間違って、ほんとうに使者など立てようものなら、免職で済めば行幸。儂が投獄されかねんわ」
私が切札と信じていたのは、ただの鉋屑だったのです。
「だから、もうつまらぬことは言わずに、殊勝に罪を認めて――仲間の居場所も白状することだな。そうしたら、おまえだけは命を救けてやってもいいぞ」
つまり、ペピーノもガイオも、もしかしたら若い衆も……死刑。
あまりの衝撃に、否定の身振りすら忘れていたと気づいたのは、リタへの焼鏝による拷問が始まってからでした。この役人は、私を捕らえた男の申し立て――美人局だけではなく、子供たちを使った盗賊団の女頭目だという申し立てを信じている。少なくとも疑いを持っているのです。
拷問吏のひとりが灼熱した鉄棒を持って、リタの横に立ちました。役人は、みずからの手は汚さない主義のようです。
「金庫から金を盗んだのは、おまえだな?」
「違います! あたしじゃない。奥様は、あたしだって決めつけてるけど……あたしが憎いからなんです!」
「それは何度も聞いた。なぜ、奥方はおまえを憎んでいるんだ」
「それは……」
役人が拷問吏を振り返ると、拷問吏は鉄棒の焼け具合を見てから頷きました。先端の平たい部分も、すでに陽の明かりの中では黒くなっています。
「やれ」
鉄棒の平たい部分がリタのお尻に押し当てられて……じゅっと肉の焼ける音と煙が上がって。
「ぎゃあああっ……!」
悲鳴が途切れるよりも早く、鉄棒が肌から離れました。細長い四角がお尻に刻まれています。きっと、ひどい火傷が残ります。きれいな肌に戻るという役人の言葉は信じられません。
「次……」
「待って、待ってください。言います……あたしが旦那様に可愛がっていただいてるのを、奥様がお知りになったんです。だから……」
「なんと。不義密通を働いておったのか。これは斬首ではすまんな。罪を償う十字架に磔けて火焙りだ」
この言葉は、いっそう私を打ちのめしました。三か月間の娼婦暮らしは、それだけでも火刑に値するのです。
「もっとも……主人の金を盗んだと白状するなら、新たな罪の自白は聞かなかったことにしてやっても良いぞ?」
「…………」
「しゃべりたくないのか。ならば、そうしてやろう」
別の拷問吏が襤褸布を持って来て、リタの口に押しこみました。布の端を頭の後ろで結んで、吐き出せないようにしました。
「自白したくなっても出来ない。これは、どんな拷問よりも苦しいぞ」
私に向かって言っています。こんなふうに脅されれば、実際に拷問される前に白状してしまう者もいるでしょう。
でも、それが目的なのかと――疑念が生じました。望む通りの自白をさせて、次の囚人の尋問に取り掛かったほうが手っ取り早いのではないでしょうか。
私は顔を上げて、役人の目を直視しました。とたんに、鉛の中で立ち消えそうになっていた石炭が、かあっと熾りました。彼の目はぎらついていたのです。毒蛇や蝦蟇の瞬きしない冷たい瞳ではなく、ブルーノ様と同じような、群衆がニナに向けたと同じような、嗜虐の眼差し。
もしかすると、私は……妄想の中にしかなかった被虐に、今まさに直面しているのでしょうか。自身の命を代償として。
リタの反対側のお尻に二本目の鉄棒が押し当てられて、くぐもった悲鳴が牢獄を満たしました。
「そう言えば、こっちの娘は面白い趣味をしておるな。いささかむさ苦しくなってはおるが」
役人の視線は、私の股間に向けられています。
下生えを剃るなんて、まともな女性はけっしてしません。淫らです。なので、私は気に入ってしまって、その必要が無くなった今でも、十日に一度くらいは剃っていたのです。
「火焙りだけは免罪してやっても良いが、相応の償いはさせてやろう」
枠と簀子の寝台の端に付いている大きな車輪を拷問吏が回すと、寝台も一緒に回って――リタは仰向けにされました。
「これは拷問ではなく贖罪だからな」
我慢できないといった残忍で好色な(ブルーノ様とそっくりな)表情を浮かべて、役人が焼鏝を握りました。
「む゙ゔゔっ……ま゙め゙え゙え゙!」
これまでと違って、焼鏝の平たい部分は真っ赤に灼けています。
役人は、押し付けるのではなく平たい部分を肌に滑らせました。じゅうっと肉の焼ける音がして、ぱっと縮れ毛が燃え上がりました。
「ま゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
耳をふさぎたくなります。でも……私もあんなふうにされたら。腰の奥深くに埋没した石炭が、鉛を熔かし始めます。焼鏝の火桶よりも、もっと熱くなっています。
役人は焼鏝を数度、下腹部の丘に滑らせてから、ようやく火桶に戻しました。すでに縮れ毛は燃え尽きて、一昨日の拷問で傷ついている肌の上には黒い燃え滓が散らばるばかりです。
リタは口の詰め物を引き抜かれると、嗚咽しながら自白を始めました。
「もう、焼鏝は厭です……火焙りもお赦しください。旦那様の金庫からお金を盗んだのは、あたしです」
「しかし、鍵が掛かっておったはずだぞ。どうやって開けたのだ?」
「それは……」
リタは途方に暮れた目で役人を見上げました。
この人は犯人じゃない。私は直感しました。罪を認めたのですから、金庫の開け方を隠す必要は無いはずです。実は開け方を知らない――犯人ではないと考えるのが、筋道が通っています。
「もしかすると、鍵は掛かっていなかったのかな?」
「そうです。旦那様が鍵を掛け忘れて……それで、出来心が湧いたのです」
役人が満足そうに頷きました。
「なるほど。では、傷が癒えてから、あらためて尋問しよう。今と寸分違わぬ供述をすれば良し。さもなくば、一切は嘘ということだから、さらに拷問をしてくれるぞ」
「あああっ……そんな非道な!」
リタは泣き崩れました。
拷問吏は心を動かされた様子もなく、火傷の部分に泥のような(おそらく)膏薬を塗ってから、リタを独房へ戻しました。
それから、私を拷問の場に引き出したのです。
私はいったん手首の縄を解かれて、あらためて天井の滑車から垂れる鎖に吊るされました。さらに、左右の離れた位置にある滑車で両足を吊り上げられました。Vの字の真ん中を上体が真っ直ぐに立てられている――まるで下向きの矢印です。
もしも鞭打ちなら、この形では股間ばかりを責められます。九尾鞭でしょうか。もっと残酷な鞭でしょうか。
そうではありませんでした。
「ウーゴ。きれいな肌のうちに愉しんでおきたいと言っておったな」
「えへへ……聞き流してやっておくんなさい」
これから残虐な拷問を始めようという雰囲気ではありません。
「おまえらは、良く働いてくれておる。褒美として望みを叶えてやるぞ」
「へ……?」
「このような形で女を吊るしたのは、そのためだ。ただし、並みの形で犯すのではないぞ。罪人への懲らしめだということを忘れるな」
拷問吏たちが三人、頭を寄せ合って何事か相談を始めて。ウーゴと呼ばれた男と、いちばん図体の大きな男とがズボンを脱ぎました。大男は身体に比例して、怒張もウーゴの五割増しくらいはありそうです。
「あまり気乗りはしねえが、マゼッティ様のご命令とあっちゃ仕方ねえ。嬢ちゃんよ、ちいっと我慢しな」
唾を吐いて男根にまぶすと――私を後ろから抱えるようにして蕾のほうへ突き挿れてきました。
「ん゙む゙ゔゔゔーっ!」
娼館では、こちらを所望されるお客様もいらっしゃいましたが、こんなに太いのは初めてです。みちみちと穴の縁が軋みます。初めてここを犯されたときよりも、熱くて痛いです。その熱で、腰の奥の鉛がさらに熔かされていきます。
大男が挿入し終えると、ウーゴの番です。大男が腰を沈めて、私を引き下げます。腕を鎖で吊られたままなので、肩に痛みが奔ります。そこへ突き挿れてきます。別種の苦痛を与えられながら犯されるなんて、初めてだと思います。
「む゙み゙い゙い゙い゙……!」
ウーゴが腰を突き上げるようにして抽挿を始めました。肩の痛みと蕾の灼熱に苛まれながら、局所的な快感が芽吹いてきます。女の芽を虐めてもらわなくても、穴だけで感じるように、娼館での三か月で徐々に仕込まれています。苦痛と快感とが綯い交ぜになる感覚は、久しぶりです。
でも、それは長く続きませんでした。ウーゴが果ててしまったのです。大男は私を抱えるだけで腰を遣わなかったので、蕾はまだ張り裂けそうな痛みに苛まれてます。
ウーゴの後を、すぐに三人目が埋めました。彼も動こうとはしません。
「んんっ……?」
ずぬううっと引き抜かれる感触があって、お尻が楽になりました。物足りないなんて感じている場合ではないです。そして、予想していなかった凄まじい責めが始まりました。
すでに埋まっている穴に、大男が背後から割り込もうとするのです。
「む゙い゙、む゙い゙……ま゙あ゙あ゙あ゙っ!」
とうてい挿入るはずがないです。それでも、しつこく突き上げてきます。とうとう、私の腰をつかみ直して、前後左右にゆすりながら、私を押し下げようとします。肩がびききっと攣って、穴がみしみし軋みます。
ついに、ずぶっと突き抜ける激痛が奔りました。
大男は、ますます力を込めて、私を揺すぶります。ずぐぅ……ずぐぅ……小刻みに押し挿ってきます。そして、とうとう、根元まで挿入ってしまいました。お尻に彼の縮れ毛が擦れます。これまで味わったことのない膨満感です。
「はああ……」
思わず息を吐きました。でも、ほんとうの責めは、ここから始まったのです。二人が同時に腰を遣い始めました。限界を超えて押し広げられた穴が軋み、激痛がうねくります。それなのに、膨満感が充足感にすり替わっていきます。熔けた鉛が腰の奥を灼きます。
いっそ、蕾まで三人目に貫かれたら……それは体位として不可能ですが、せめて張形を突っ込んで欲しい。そんなことをされれば、穴も蕾も壊されてしまうかもしれないというのに……本気で願ってしまうのです。
「あ゙え゙っ……! む゙ゔゔゔゔゔゔっ!」
呆れたことに、私は雲を突き抜けて宙に放り出されたのでした。
余韻に浸る贅沢など与えられず。ついに拷問が始まりました。
今度は天上の滑車を使って、鉄格子の前で吊られていたのと同じ姿にされました。つま先立ちではなく、足は床から浮いています。全体重が、捻じ上げられた肩に掛かります。
役人のマセッティが、私の肌に横から目を近づけて、ためつすがめつします。
「ふうむ……九尾鞭か」
驚きを通り越して、ぞっとしました。娼館で受けた折檻の鞭傷の痕は、ほとんど残っていません。明るい陽の下で目を近づけて透かし見るようにすると、肌の色と区別がつかないくらいの薄い筋が見えます。鞭に編み込まれた鉤による短い木の枝のような傷痕は、それがあると知っていなければ見分けられません。それを薄暗い牢獄の中で、こうも正確に見破るとは。
「おまえは、いったい何をしたのだ?」
「私が拐わかされて売り飛ばされた先は娼館でした。酷い扱いを受けて逃げようとしたのですが、捕まって折檻されました」
もっともらしい嘘を考える暇も無く、事実を曖昧に答えるしか思いつきませんでした。
「ふむ。だから、二本挿しも愉しんでおったのか」
気を遣ることをそう言うのなら、たしかにそうでしょう。
「娼館を摘発するのは儂の役儀ではない。しかし、苛酷な折檻を受けたという事実は考慮せねばならんな」
どういう意味なのでしょう。
「さて……まだ、おまえの名前すら訊いていなかったな」
「ダリアです」
本名のエレナは、すでに名乗って否定されていましたから、娼館での名前を答えました。
「どこのダリアだ? 親の名前は?」
「ラメーズです。父はデチモ、母はザイラ。姉のジーナは伯爵家の女中です」
後で同じことを聞き返されても間違えないよう、侍女の家族を騙りました。
「ふむ、伯爵家にな……ジルド。娘の胸の裡を探れ」
いちばんの大男が私の背後に覆いかぶさるようにして、双つの乳房を握りました。太い指を食い込ませながら、ぎりぎりと握り潰しにかかります。
「くううう……」
巨漢だけあって、凄まじい力です。乳房がひしゃげ、紫色に染まっていきます。体重をのし掛けられているので、肩が抜けそうです。
「名前は、なんといったかな?」
「ダリアです」
乳房が左右反対向きに捻じられていきます。このまま捥ぎ取られるのではないかと恐怖するほどの激痛です。
「親兄弟の名前は? 父親の職業は?」
「デチモ、ザイラ、ジーナ……父はやはり伯爵家に仕えていましたが隠居して、代わりに姉が奉公しています」
「うむ」
マセッティが頷くと、ジルドは手を放してくれました。
「おまえは通りすがりの男に、金を対価に股を開くともちかけて、情夫にその財布をひったくらせたそうだが――そやつの名前はなんという?」
これは、答えてはいけません。職業や住処に嘘を重ねていくうちに、必ず見破られるでしょう。
私が沈黙を続けていると、マセッティが含み笑いを漏らしました。
「初っ端から愉しませてくれるな。ウーゴ、鞭の用意を」
ウーゴが房鞭を持って、私の横に立ちました。
私は、ほっとしました。長く鋭い一本鞭でも、殺人の凶器にもなる九尾鞭でもありません。
ウーゴは鞭を垂らしたまま、打つ気配がありません。ジルドが横合いから腰をつかみました。そのまま引っ張ります。
「いくぜ、兄貴」
掛け声とともに、ぶん回しながら突き放しました!
牢獄の壁が斜めに走ります。肩にいっそうの激痛が奔ります。私は独楽のように回されながら振り子のように揺られているのです。
視界の片隅でウーゴが鞭を振りかぶって。
しゅっ、バッジイイン!
「きひいいっ……!」
脇腹に当たっただけですが、拳骨で殴られたような衝撃でした。回転しながら揺られている勢いで、みずから鞭を迎えに行く形になったのもありますが、やはり腕なのでしょう。毎日のように拷問を繰り返している男の鞭は、娼館のへなちょこ野郎とは大違いです。
しゅっ、バッジイイン!
「ぎゃはあっ……!」
しゅっ、バッジイイン!
「あうっ……!」
しゅっ、バッジイイン!
「ひいいいっ……!」
乳房、お尻、太腿、背中、お腹……所かまわず滅多打ちです。打たれる部位ごとに悲鳴が強弱高低長短さまざまに変化します。
生きた心地もありませんが、それなのに、いつの間にか腰の奥の鉛はすっかり熔けて、ぐつぐつと煮え滾っています。
お遊びでも躾でもない、ずっと憧れてきた本物の拷問を受けているという想いが、鞭の激痛を切なく甘美なものに変えてくれます。
しゅっ、バッジイイン!
「きひいっ……あ、あああ……」
しゅっ、バッジイイン!
「あああっ……はああん……」
悲鳴に吐息が混じるだけでなく、いっそうの被虐を求めて、拷問吏を挑発するような言葉まで口にしていました。
「言うもんですか! 命を懸けても、私の情夫(おとこ)は守り抜きます!」
至福が全身を貫きました。身体を張って命を懸けて、愛しい男を庇う。なんて素敵な悲劇なのでしょう。ペピーノやガイオを、そんなに愛しく想っていのかしら――疑問は蹴飛ばしてやります。ふたりとも、私が男にしてやったのですから。
「やめろ」
マセッティが苛立った声で命じました。ぴたっと鞭が焉んで。正面に回り込んだジルドが、まだ揺れている私のお腹に拳を突き入れました。
「ごぶふっ……うえええ!」
お腹が破裂したような衝撃。私は口から苦い水をあふれさせました。
私は床に下ろされ、剥き出しの防壁の手前に据えられている椅子のところへ連れて行かれました。間近にみると、拷問のためだけに拵えられた椅子です。
肘掛にも背もたれにも座面にも、短い針が植えられています。そんなに沢山ではありませんが、それがかえって恐ろしいです。座れば、針は確実に肌を貫くでしょう。身体の各部を拘束するための鉄枷と革帯がいたるところに取り付けられています。
それよりも不気味なのは、座面から屹立した金属の棒です。先端は細く丸められていて、根元も細くなっています。先端から三分の一くらいのところがもっとも膨らんでいて、ジルドの怒張よりも太いでしょう。なぜ、そんな比較を連想したかというと――その椅子に座れば、ちょうど女の穴の位置になるだろうからです。男は女より大柄ですから、お尻の蕾が真上に来るでしょう。
「ふふん。娼婦だけあって、察しがいいな」
マセッティが、初めて私の肌に触れました。股間に掌を当てて、指を三本まとめて挿れてきたのです。その指を中で閉じたり開いたりします。
「締まりは良いほうだな。しかし、こいつには敵うまいぞ――カルロ」
ウーゴとジルドの陰に隠れている感じの三人目の拷問吏はカルロというらしいです。彼は腰を屈めて、拷問椅子の横にある小さな環を回しました。
「…………?!」
座面の棒が三つに割れて、花弁のように開いていきます。中には芯棒が通っていて、そこから梃子で花弁を押し出しているのです。もしも、この椅子に座らされて女の穴にこの棒を挿れられて……
足が震えて立っていられなくなり、思わず椅子の肘掛に手を突いて――チクッと痛みを感じて、あわてて手を引きました。
「座れ」
マセッティが冷酷に言います。いえ、愉しんでいる声音です。
あああ……この椅子に座らされて、再び立ち上がることは出来るのでしょうか。いえ、この仕掛が開いたまま無理やりに立ち上がらされたら、確実に女の機能は破壊されます。頭に靄が掛かって、一瞬ごとに濃くなっていきます。
それを逡巡と見て取るのが普通でしょう。カルロが正面に立って私の手首をつかみました。ウーゴとジルドが、両側から私を抱え上げます。私は椅子の真上に運ばれて、閉じた金属の花弁に向かって下ろされていきます。
花弁の先端が女の割れ目を押し開きます。私は左右に揺すぶられて、花弁の先端が穴に嵌まり込みました。
「くっ……」
ちょっと挿入っただけで、つっかえます。ウーゴとジルドはさらに激しく私を揺すって、強引に沈めていきます。
「くううう……痛い!」
みちみちと穴が押し広げられていくのが、強まる苦痛で分かります。
「へえええ、驚いたね。やめてくれって泣き叫ばなかったのは、この娘がはじめてだぜ。それに、手を振りほどこうともしない」
「黙っておれ。小娘をつけあがらせるだけだ」
マセッティに叱られて。三人は無言で職務を果たします。
閉じた花弁の最も太い部分が穴に収まると、あとはむしろ呑み込むようにして挿入っていきます。そして、お尻から太腿に掛けて鋭い痛みが突き刺さってきます。
つぷっ、つぷっ……と、針が肌を突き通していく感触が、痛いよりも気味悪いです。
そうして、ついに。私は拷問椅子に深々と座らされました。分厚い革帯が腰を巻き首を絞めます。うんと開脚した形で太腿も拘束されました。鉄枷が手首と足首を針に押し付けます。
次は、いよいよ……私の中で閉じている花弁が開花するのでしょう。それとも鞭打ちでしょうか。苦痛に身悶えれば、全身に突き刺さっている針が肉を引き裂きます。
どちらでもありませんでした。鉄板の両端を脚で支えた台が、胸元に差し込まれました。鉄板で乳房を下から持ち上げる高さに、台が調整されました。さらに、同じ大きさの鉄板が乳房の上に載せられて、四隅が太いボルトで下の鉄板とつながれました。
「さて。おまえの情夫の名前を教えてくれぬかな?」
「…………」
私は沈黙を貫きます。
この二枚の鉄板がどのように私を苛むか、およその見当はつきます。これまで想像したこともない、ちょっとでも似た体験もしていない――まったく新しい苦痛でしょう。恐怖に心を塗り潰されながらも、腰の奥では鉛が煮え滾っています。
「指で回せ」
ウーゴとジルドが、ゆっくりと四本のボルトを指で摘まんで回していきます。それにつれて乳房が圧迫されて――痛みが生じます。乳房は平らに押し潰されていき、それにつれて痛みも強くなってきます。
「く……」
呻き声を漏らしたときには、乳房は膨らまし損ねたパンみたいに潰れていました。
「これ以上は回せませんです」
ウーゴが手を放すと、ジルドも倣いました。
「では、ボルト回しを」
細長い棒です。先端は平たくて、ボルトの頭を型抜きしたような穴が開いています。
「指で回す百倍の力で締め付けられるぞ」
「…………」
「強情な娘だな。よろしい、質問を変えよう。おまえは、どこに住んでいる?」
何を訊かれても沈黙で答えるのみです。堤防は水漏れが始まれば、じきに決壊するのです。
「二回転」
マセッティの短い言葉に続いて、ボルトがゆっくりと回されていきます。
「ぐううう……」
予期していたことですが。鞭打たれる爆発的な鋭い痛みとも、針を突き通されるおぞましい痛みとも、まったく違う激痛です。手で握り潰される鈍く重たい苦痛と似ているところもありますが、こんなに乳房全体が軋むほどの激痛ではありません。
「マセッティ様。おいら、手持無沙汰なんですがね?」
カルロは、花弁を開く環に手を掛けています。
「おお、そうだったな。では、三回転だ」
キチキチと歯車の噛み合う音が穴の縁をくすぐって、そのかすかな音からは想像もつかない凶暴な花弁が開く――のを、股間に感じます。苦痛も花開きます。
「女性器は鍛え抜いているようだな。もう三回転」
「……ぐううう」
乳房と股間の両方を、これまでに味わったことのない激痛に咬まれて、全身に脂汗が滲みます。苦痛に身をよじることも出来ません。わずかでも身体を動かせば、椅子に植えられた針が肉を抉りります。
「自白の真実性を増すために、そろそろ猿轡を噛ませてはいかがでしょうか」
ウーゴが進言しましたが、マセッティは不要と断じました。
「情夫の名前、隠れ家。どうせ二人きりではあるまい。最後の一人まで仲間の名前と素性を吐かせねばならん。その間、苦痛は増える一方だぞ。どうだ。白状することは幾らでもあるのだから、ひとつやふたつは教えてくれぬか」
マセッティは私に語り掛けながら。手にしている笞の先で、わたしのおへそをくじります。どうということもないはずなのに、女の穴を犯されているような心持ちになってしまいます。
もう、今でさえも限界を超えていると思うのに……意識を保っています。いっそ、ひと思いに責められて安らぎの中へ逃げ込みたい。そういう想いは、たしかにありました。ですが、それと同じくらいに……この男を怒らせたら、どいういことになるのか。恐怖への好奇心もありました。嘘です。極限まで虐められてみたいと思ったのです。自白させることが沢山あるのなら、殺したりはしないでしょう。
私は顔を上げて唇だけを動かしました。
「うん……?」
狙い通りに、彼は顔を寄せてきました。
私は、唾を吐き掛けてやりました。
案に相違して、彼は怒りませんでした。手の甲で唾をふき取ると、私の頬に叩きつけたのです。そして……
「悲鳴が途絶えるまで、回し続けろ」
三人は困惑したように顔を見合わせて――結局は上役の命令に従いました。
ぎりっ……きりっ……小刻みにボルトが捻じ込まれていきます。穴の奥で花弁が開いていきます。
「ぐうううう……!」
私は歯を食い縛って、意地でも悲鳴を上げまいと耐え抜きます。
そして、私は根競べに勝ったのです。
「手を止めろ」
マセッティが溜息交じりに命令しました。
私としては、勝利のささやかな快感よりは、安息へ逃げ込めなかった失望のほうが強いです。そして、なおも腰の奥では、被虐への想いが煮え滾っています。
「押しボルトを持ってこい」
マセッティは、拷問を中断するのではなく、新たな責めを目論んでいるようです。
十本ほどのボルトが、胸の上の鉄板に並べられました。鉄板同士を締め付けるボルトよりも短く細く、先端が尖っています。
このときになって気づいたのですが、鉄板には、このボルトに合いそうな穴が二列に並んでいます。
その穴のひとつに、マセッティが押しボルトを捻じ込みました。
圧迫されて感覚が失せた乳房に、はっきりと鋭い痛みを感じました。鉄板の厚みを超えてボルトが捻じ込まれ、乳房を突き通そうとしているのです。
「さすがに、この傷は九尾鞭よりも深く醜く残るぞ」
女にとっては、命を奪われるよりも、顔を傷つけられ乳房を醜く抉られるほうが、ずっと深刻です。
ふっと、ブルーノ様の顔が浮かびました。乳房をこよなく虐めてくださったお方。ぺちゃんこに圧し潰されて醜い穴を穿たれた乳房でも、虐めてくださるのかしら――と。
二本目のボルトが、反対側の同じ位置に捻じ込まれました。マセッティは両手にボルトの頭を摘まんで、じわじわと捻じります。
ぶつっ、ぶつっと……ボルトが皮膚を破る激痛が乳房を揺すぶりました。
「いぎゃああああっ……!」
その衝撃で、ついに堤防にひびが入りました。そして、一気に決壊したのです。
「痛いいたいいたい……!」
マセッティは、なおも捻じ込んできます。ぐりっ、ぐりっと、肉が抉られまし。
「ひいいいいい……負けるもんか!」
それがペピーノたちを庇う想いなのか、いっそうの残虐を我が身に加えてほしいからなのか、自分でも分かりません。叫んでいないと、激痛に気が狂いそうです。
「虐めてください。もっともっと……絶対にしゃべるものですか!」
頭に真っ赤な霞が掛かってきました。激痛に苦しみながら、腰が疼いています。
ボルトが左右の乳房に一本ずつ追加されて、全部で四本。
マセッティが二本ずつ交互に捻じ込みます。鉄板の隙間から血がにじみます。その鉄板も、ウーゴとジルドがさらに締め付けます。花弁は、いまにも穴を引き裂きそうです。
「チッ……この娘には、まともな拷問は通用せぬな」
舌打ちをした割りには、朦朧とした意識でも判別できるくらいに愉しそうな声です。
「これ以上の責めは、せっかくの逸材を台無しにしてしまう。いったん中止だ」
マセッティの言葉の意味は分かりませんでしたが……私は拷問に耐え抜いたという満ち足りた気分のまま、意識を失ったのです。
気がついたときには独房へ戻されていました。手足に鉄環を嵌められ、鎖で宙吊りにされていました。両手は開いて天井の隅に、両足は床の隅に。つまり、斜めの仰向けです。慈悲ではなくて。部屋が狭いので、水平には吊れないのでしょう。
火酒の強い臭いがするのは、全身に塗られている泥のせいです。薬草を煎じた臭いも混じっています。そうしてみると、この膏薬はそれなりに高価なのではないでしょうか。
さすがは、商都アンブラです。銅山を有して比較的に裕福なラメーズでも、囚人が怪我をしたときは水で洗ってやるだけと聞いています。
リタも吊るされていましたが、両手を別々に鎖で引き上げられているだけで、膝立ちという楽な姿勢でした。自白した褒美なのかもしれません。
弱々しい陽射しは、夕暮れが近いと告げています。すでに牢獄の中央、拷問の間には人影がありません。そして、男の人が囚われていた斜め向かいの独房が空っぽです。
マセッティは拷問の職人ですから、誤って殺すようなヘマは打たないでしょう。裁きの場に引き出されて処罰されたのでしょう。投獄されて拷問に掛けられるような罪人は十のうち九までが死刑ですけれど。
死刑。私もその運命に直面しているのだと、今さらながらに思い至りました。自分の身体さえ見えない触れない闇の中に放り出されたような恐怖が込み上げてきます。天も地も無い闇の中で、自身も闇に溶け込んで行くような恐怖。
その一方で、悔いは無いという想いも兆しています。修道女、いえ伯爵令嬢として然るべき貴族と結婚したとしても。そして百年生きたとしても、けっして体験できないであろう冒険を幾つもしたのです。妹の姦計に陥って誘拐されて犯されて。娼婦として三か月を暮らして。盗賊団の姉御として三か月を過ごして。百人にちかい男たちと肌を合わせて。普通の女性なら生涯未通の穴まで開発されて。しかも、二人の童貞を奪ったのです。世の中に男女の数が同じなら、他の女性の取り分まで奪った計算になります。
それはもちろん。人並みに子供を産み育てるという穏やかな幸せを得られなかったという未練は残りますが、贅沢というものです。波乱万丈の悲劇と穏やかな幸福とは両立しません。子供を育てるというだけなら、この三か月にちょっぴり味わいましたし(ちっとも、穏やかではなかったです)。
そして何よりも……拷問の末に責め殺されるか、衆人環視の中を引き回されて処刑されるか。妄想さえも凌駕する被虐の死を遂げるのです。人は必ず死ななければならないのなら、恍惚の死は最大の幸福のはずです。
それにしても、なぜ……想念は、そこで中断されました。外に通じる扉が開いて、三人のうちではいちばんの下っ端らしいカルロが入って来ました。扉のすぐ横の仕切から牢番が現われて、ぺこぺこしています。
二人は、私の独房へ入って来ます。
足の鎖を床から外して、私を俯せに回転させてから、天井へ吊り上げました。
「くっ……」
背骨が逆海老に反って、みしみし軋みます。すぐに手首の鎖を床につなぎ直されたので、頭に血が下がって不快ですが、背中はすこし楽になりました。
「なんだって、こんな面倒なことをするんですかい」
牢番は不平たらたらです。
「おまえは、まだ日が浅かったな。拷問に掛けた囚人は翌日まで宙吊り。それも一日に三度は吊り方を変えるのが、ここの決まりだぜ」
吊って床から離しておくのは、拷問の傷に土毒が忍び込んで悪化するのを防ぐためだが、無理な姿勢を長く続けさせると鬱血が生じて手足が腐るから、適宜に吊り直すのだと――どうせ、マセッティから受け売りでしょう。
「そんでもって、これは仕事じゃなくて、おいらの趣味だがな」
そう断わってから、牢番に手伝わせて、足の鎖を縮めました。全身がぴんと引き伸ばされて、手足に鉄環が食い込みます。肩と股の関節が軋みます。
カルロが、床に転がっているパンを拾い上げました。
「腹が減ったろう。喉も乾いてるんじゃねえか?」
言われたとたんに空腹と、それ以上の渇きを覚えました。朝のうちは食欲がなくて、そのまま拷問に引き出されて。夕方まで気を失っていたのですから。
「食わせてやろうか。それとも、先に水が欲しいか?」
言葉に合わせて、鼻先にパンと水桶を近づけては遠ざけます。
まさか、囚人に慈悲を垂れるのが、この男の趣味ではないでしょう。
「お願いです。水を飲ませてください」
カルロの思惑に乗ってやります。しゃべるのも困難なほどに喉が渇いているのは事実なのですし。
「パンと水が欲しけりゃ、先にこっちを食べな」
予想した通りです。カルロは膝を突いて怒張をひり出し、私の顔にぺちぺちと打ち付けます。
口を使うなど、お安い御用です。でも、鎖に逆らって背中を反らし腕を宙で突っ張って顔を上げなければ――自らに苦痛を強いなければ、男根に届きません。それに、わずかなパンと水のために(かつてはひと晩に五グロッソも稼いでいたのに)股を開くよりも淫らな振る舞いをしなければならないなんて。私は胸を締め付けられ腰を疼かせながら、カルロを咥えました。
無理な体勢ですから、首を動かせません。雁首を舐めまわし鈴口を舌先でつつき、唇を震わせて亀頭を刺激しました。
「売女だけあって、すげえな。でも、おいらはこういうのが好きだぜ」
私の頭をつかんで、激しく腰を動かし始めました。口の中をこねくられ、喉の奥を突かれます。
早く終わってほしいとは思いませんが、売女の凄さを披露したくなって、舌も唇も動かしました。売女は蔑みの言葉ですが、なぜか誉め言葉に聞こえたのです。
カルロはすぐに終わりました。今日は少なくとも二回目だというのに、一週間も溜め込んでいたかと思うほどの量でした。
「水が欲しけりゃ、こいつも飲めよ」
言われるまでもありません。そんな失礼な真似をしたら、女将さんに叱られます……て、ここは娼館ではありませんでした。でも、躾けられた習性を無理に変える必要もないでしょう。
私が厭がる風情も見せずに飲み込んだので、カルロは満足したようです。でも、まだ水は飲ませてもらえません。
「あんたもやれよ」
牢番をけしかけます。
「いや……マセッティの旦那に叱られるから」
「ばあか。逆だよ」
マセッティは、男女を問わず囚人をもっとも辱めるのは口淫だと信じているのだそうです。
「だから、二か月前――ああ、あんたは知らねえか。歳を偽ってるとしか見えねえ男の餓鬼がぶち込まれたときなんざ……まあ、いいや」
マセッティは、口だけは初物に拘るそうですが、娼婦に初物もないです。それなら、下賤の者にどんどん犯させるのが、もっとも効果的だ。そういう考えなのだと、カルロは牢番を安心させます。
「それによ。旦那はけっこう臆病なんだぜ。この女は絶対に噛まないって確信するまで手――いや、チンポは出さねえんだ。おいらたちゃあ、闇夜に先頭を突っ走る損な役回りさ」
こんな無学な輩でも反語を使うのだと、それを驚きました。
「そんじゃ、まあ……えへへ。嬢ちゃん、頼むわ」
牢番なんて、他に使い道のなくなった老人の仕事です。この男も、五十はとっくに過ぎているでしょう。咥えてみると、カルロが骨付き肉なら、こいつは上質のパンです。味ではなく硬さを言っています。簡単に噛み千切れそうです。そんなことは、しませんけれど。
「激しく腰を遣うと、痛めかねないんでね」
尻の下に短い丸太を敷いて腰を浮かし、太腿の上に私の肩を乗せました。
「娼売で鍛えた技で頑張ってくれや」
首を動かせるようになったので、お望みの通りに――しゃぶって舐めて啜って、前後にしごいてやりました。それでも逝く気配を見せなかったので、雁首を歯の裏側でこすってやって、どうにか射精に漕ぎ着けました。カルロの十倍くらいは時間が掛かりましたが、けっこう私も夢中になっていたみたいです。お仕事に励んでいる間は、そんなに背骨の痛みを感じませんでしたから。
首も顎も疲れ果て、舌も痺れて。せっかくカルロが口元にあてがってくれた水桶から水を啜るのも、思うにまかせませんでした。
「面倒くせえな」
カルロは水を口に含んで寝そべって、口移しで飲ませてくれました。親切からの行為でないことは、舌を挿し入れてきたことでも分かります。
さすがにパンまで口移しにはしませんでしたが。わざわざ噛み千切ってから指ごと口に挿れてくれたので、そういうのも彼の趣味なのでしょう。三つあるうち二つを食べただけで、お腹がいっぱいになりました。男汁を飲んだ後は食欲が失せるのです。それでも、苛酷な拷問に耐え抜くためにも体力をつけておこうと、頑張って三つめも食べました。
食べ終わると、カルロは私を斜めに吊っている鎖を緩めてくれました。かえって背中は反ってしまいますが、強く引っ張られないから、差し引きではすこし楽になりました。
その姿で、私は一夜を明かさなければならないのです。
リタは膝立ちで吊られたまま、姿勢は変えられませんでした。鬱血の恐れがないのでしょう。
私は、鬱血なんかどうだっていいです。鉄板に圧し潰されボルトで貫かれた乳房の傷が脳天にまで突き抜けてきますし、肌を切り裂かれはしなかったものの、全身の鞭傷も疼きます。金属の花弁で拡張された女の穴も悲鳴を上げています。
とても眠れるものではありません。
カルロが来る直前に湧いた疑問が、また頭をもたげます。
なぜ、私はマセッティの残虐な拷問に胸をときめかせてとまでは言いませんが締め付けられ、腰を熱く疼かせたのでしょうか。これに比べたら、よほど生ぬるい女将さんたちの折檻には、全身が鉛になったかと思うほどに心が死んでいたのに。
女将さんのときには、私が妄想していたよりも責めが過激で、あたかも一粒の砂糖が塩の山に圧し潰されたのだと考えたのですが。その理屈なら、今日はもっともっと心を凍てつかせていたはずなのに。
その答を私は知っているように思います。
目です。マセッティの目は、加虐の欲望にぎらついていました。同時に、淫欲に燃え上がっていました。ブルーノ様と、まったく同じです。
それに対して女将さんの目は冷たくて――折檻を愉しむのではなく、それが必要であり効果的だと考えていただけです。娼売に差し支えがなければ、入手できるなら、喉を潰す毒を私に服ませていたかもしれません。文字も書けないように指を切り落とすことだって、してのけたでしょう。
私は、加虐者の悦びを写す鏡だったのです。
では、ニナの処罰は……群衆です。強盗や火付け人殺しのような凶悪な罪人には石を投げつけ声高に罵る彼らは、ただただニナの裸身を目で貪るばかりでした。今にして思えば、彼らの目も熱く燃えていました。処刑としての公開輪姦は、言うに及ばずです。
そうです。性欲の対象として扱われ虐げられることに、私は悦びを見い出していたのです。なぜなら、劣る存在である女が、そのときだけは、男にとって掛け替えのない存在になれる……いえ、それはどうでしょうか。子を生むことだって、女にしか出来ません。すべての女は、すべての男にとって掛け替えのない……分からなくなってきました。こんな苦しい形で宙吊りにされ拷問の余韻に呻吟しながら、まともに考えられるはずもありません。
今もなお腰の奥で埋もれ火が熱を発しているという事実――それが、私なのです。
……しばらくすると、別の疑問が浮かびました。私はなぜ、こうも平然と運命を、おそらく死刑に処せられるという間近に迫った未来を受け容れられるのかという。
けっして、心穏やかではありません。恐怖に心が凍りつきます。けれど。取り乱す気配もありません。究極の妄想が現実になろうとしている悦び……とは違うように思います。だって、死んでしまっては、そこから先の悦びは得られませんもの。
そういう欲望は捨てて、実現しようとしている悲劇の果実で満足しているのでしょうか。
根を詰めて考える気力も無く、しばらくは全身の痛みに埋没していました。
そのうちに、水を貪り飲んだ報いが訪れました。泥臭いとは思っていましたが、実際に腐っていたようです。お腹が痛いとかではなく、いきなり蕾を押し破られそうになりました。小水のほうも切迫しています。
これまでの私でしたら、決壊してしまうまで我慢を続けていたでしょう。苦しみから悦びを得るためではなく、ただ羞恥の故にです。
でも、今は。あっさりと努力を放棄しました。
派手な音を立てて、前後の穴から小水と汚物が噴出しました。斜め下向きに吊られているので、生温かい汚物が背中を伝います。おぞましいという感覚はあまり無くて、楽になった心地よさに脱力しました。
そして、第二の疑問への答が閃いたのです。
私は犯罪者なのです。子供たちの飢えを満たすためとはいえ、盗みは犯罪です。しかも、後々に備えてとか、柔らかいパンを与えてやりたいとか、いわば贅沢のために盗みを重ねました。その首謀者は私なのです。拷問されるのも当然なら、処刑されるのも当然なのです。
つまり、十のうち十まで、私が悪いのです。マセッティ様は清廉潔白。職務としての拷問に『愉しみ』を交えても非難されるべきではありません。厭々お仕事をするよりは、愉しみながらのほうが良いに決まっています。
私はマセッティ様に愉しんでいただきながら、安心して(?)泣き叫んでいれば良いのです。そう簡単に悲鳴を上げたり、まして慈悲なんか乞いませんけど。
考えがまとまって心が落ち着いたのでしょう。いつの間にか私は、浅い微睡みに痛みを憩わせていました。
翌日は朝一番に、全身に水をぶっ掛けられて汚れを洗い流されました。牢屋の床は良く考えられて作られています。水はわずかな傾斜に沿って部屋の中央へ流れ、そこからは浅い溝で防壁まで導かれて、せいぜい鼠が出入りできるくらいの小窓から外へ流れ出るのです。
後始末の後は、宙吊りにされたまま一日を過ごしました。カルロが言っていた通り、早朝と正午と夕暮れとに、吊り方を変えられました。
午前中は右手と右足、左手と左足を一緒に括られて直角以上に開脚させられ、V字形に。
午後は手足四本を背中でひとまとめに括られて、一本の鎖で吊るされました。手足は伸び切り、腰も背骨も逆海老に折れ曲がって、拷問椅子よりも苦しいくらいでした。
夜になって、いったんは床に下ろされ手足も自由にしてもらって、自分の手でパンを食べました。水はやはり変な臭いがしたので、喉を潤すだけにとどめました。
わずかに人がましい扱いを受けた後、ごく普通に頭上で両手を縛られて真っ直ぐに吊るされたときは、これでようやく休めると安堵したものです。
この日は、私は土毒(そんなものがあればですが)から絶縁されて宙吊りで過ごしただけですが、牢獄ではいろんなことがありました。
一人残っていた男の囚人が、老婆殺しを自白したのです。女の私には痛さも恐ろしさも実感できない拷問でした。
先端が四本の鋭い爪になっていて、途中が丸く膨れている大きな鋏のような器具で、男根と玉袋をひと掴みにされたのです。爪は根元に食い込んでいました。
「このまま捻じ切ってしまうぞ」
脅しではなく、実際に半回転もさせたのです。肉が引き裂かれて血まみれになりました。男は野獣のように吠えました。
そこへマセッティ様が猫撫で声で囁いたのです。
「強盗と殺人でも死刑とは決まっておらんぞ。悔い改めて、二度とアンブラに近づかぬと誓うなら、百鞭と三日晒しだけで済むように、儂が裁判官に嘆願してやるぞ?」
この言葉で、男は落ちました。
冷静に考えれば、平民の中級役人の言葉を騎士階級の裁判官が容れるはずもありません。だからマセッティ様も嘆願してやるとしか言わなかったのです。
午後早くに三人の新たな囚人が連れて来られましたが、拷問の仕掛でさんざん脅しつけられ、重罪犯(私とリタのことです)への過酷な扱いを遠目に見せつけられてから、外へ連れ去られました。
ここには牢獄が二つあるのです。ひとつは、拷問道具を揃えた重罪犯の独房。もうひとつは広さは同じくらいですが、男女別に仕切られただけの雑居房です。
雑居房には、常に四、五人の男女が入れられているそうです。周辺の村と合わせてもアンブラの領民は二万人くらいでしょう。ラメーズは半分くらいですが、囚人の数は滅多に十人を下回らないと聞いた覚えがあります。
だからといって、ラメーズのほうが治安が悪いとは言えません。銅山は伯爵家の直轄ですから、職人組合がありません。組合なら内々で処理する小さな罪を犯した者まで厳格に処罰されるという事情もあります。
政治向きの話は、女には興味がありません。身近な出来事が大切です。
リタがいきなり釈放されたことは、私にも大きな喜びでした。訴えが取り下げられたのだそうです。彼女が不貞を働いていたのはその雇い主でしたし、彼女を訴えたのはその妻らしいです。拷問の様子でも、彼女は(盗みに関しては)無実のように思えました。奥さんが冷静になったか、旦那様に叱られたか、彼を謝らせたか――そういうことなのでしょう。
とにかく。重罪犯の牢獄には、私ひとりだけになったのです。偶然かもしれませんが、マセッティが意図的に仕組んだような気がしないでもありません。むくつけき男を拷問するよりも、簡単に嘘の罪まで認めるような女よりも、若いくせに強情な娘を甚振るほうが、彼の好みに合うでしょうから。
どんな残酷な拷問をされるか、そしてマセッティがどれほど興奮するか。私は、冷たくて重たい鉛と化した身体の内奥に石炭を赤く熾しながら、牢獄での二夜目を過ごしたのでした。吊りからは解放されても、マセッティの『格別の慈悲』で、五つの穴がある板枷に手足を拘束されて、膝を曲げてうずくまった姿勢で。真ん中の穴には首を嵌めるのでしょうが、板枷が床に着いているときには、真正面から股間を嬲るのに好都合です。牢番も三人の拷問吏も、可愛がってくれませんでしたけれど。
入牢して三日目も、拷問はされませんでした。水を全身に浴びせられて、まだこびりついている膏薬を洗い流されてから板枷を外されて、両手は鉄格子から鎖で吊り上げられましたが、足を投げ出して座っていられる高さでした。それではお行儀が悪い――男の目を愉しませないのではないかと考えて、横座りで過ごしました。忘れたのかわざとなのか、汚物入れの桶は壁際に放置されたままでした。立ち上がって身体を斜めにしながら足を伸ばせば届くのですが、引き寄せるのは難しく、倒してしまったら悲惨なことになりますから、使いませんでした。どうせ、水を浴びせてもらえます。
四日目には、新しい重罪犯が投獄されたのですが。マセッティは昼から夕方まで拷問を続けて、あっさりと白状させてしまいました。そうしてみると、やはりマセッティは、軽罪犯への尋問とかいった『雑務』を片付けてから、私への拷問に専念するつもりなのです。
そして五日目。怯えながらも心待ちにしていた拷問が始まりました。その日の朝は水は飲ませてもらえましたが、食事を与えられませんでした。腐りかけの水にもすこしは慣れて、お腹をくだしたりはしなくなっています。けれど、パンを与えてもらえなかった理由が、恐ろしいものでした。
「せっかく食った物を吐き出しちゃもったいないだろ」
お腹を殴られるのでしょうか。それとも水責めにされて、大量の水を吐くことになるのでしょうか。
まったく違いました。
リタが焼鏝で責められたときと同じ、骨格だけの寝台に、鎖と枷で仰向けに拘束されました。リタのときは手を広げて脚は閉じたYの字形でしたが、私はX字形です。
「痛いばかりが拷問ではないぞ」
三人の拷問吏が私を取り囲みました。両手に小さな刷毛を持っています。腋の下や足の裏をくすぐり始めました。
くすぐったくて、身をよじります。
筆は腋の下から二の腕。足の裏から内腿へと進んでは、また元に戻ります。拷問で受けた傷の上を刷毛先がくすぐると、痛いような痒いような感覚が混じって、いっそうくすぐったく感じます。
「くふっ……あっ……」
どうしても声が漏れてしまいます。悲鳴には程遠い、およそ場違いな高い声です。
どうせ、刷毛は三点の突起と割れ目に集中するのだろうと予測していましたが、なかなかそこまで到達しません。
「あっ……んんん」
ついに乳房の麓をくすぐられたときは、蕩けるような声になってしまいました。
乳房と腋の下、割れ目の花弁と太腿。六本の刷毛が忙しく、けれど繊細に動きまわります。これまでに男から受けたどんな愛撫よりも、ピエトロでさえ足元にも及ばないような、繊細さとしつこさです。
私は乳首も女の芽も触れられていないというのに、穴にも挿入どころか刺激すらされていないというのに――快楽の坂をじりじりと押し上げられていきます。
「もう……もう……」
赦してではありません。焦らさないでと訴えたいのです。言葉にしないのは、私が悦んでこの責め(?)を受けているとは思われたくないからです。どうせ、いつかは刷毛先が頂点に達するでしょう。焦らされれば焦らされるだけ、快感は爆発的になるはずです。
「何かしゃべる気になったかな?」
マセッティの冷酷な声。もしも私が沈黙を貫けば、刷毛は私の身体から遠ざかるのでしょう。けれど、快感を得たいがために仲間を売るなんて真似は絶対にしません。私は、そこまで愚かではありあません。
「そうか……」
刷毛の動きは止まりませんでした。それどころか、今度はあっさりと三つの頂点を攻略してくれたのです。
「あああっ……すご……何か来る……お、墜ちちゃう……!」
私は全身を反り返らせました。手足に鉄枷が食い込んできますが、その痛みさえスパイスです。
私の身体も魂も宙に浮いて、それでも刷毛先は執拗に私を責め続けます。
「あああああ……もう……いやああああ!」
反語を絶叫した瞬間、不意に刷毛が消え去りました。と同時に。
ひゅん、バチイン!
ひゅん、バチイン!
ひゅん、バチイン!
三点に激痛が奔りました。
「いぎゃあああああっ……!」
笞で打たれたのです。
宙を彷徨っていた私は、文字通りに叩き落されました。高く昇っていただけに、落下の勢いは凄まじく、どれだけ落ちても地面にぶつかりません。無限の奈落をどこまでも落ちていく……それは、凄絶な快感でした。
ひゅん、バチイン!
ひゅん、バチイン!
ひゅん、バチイン!
さらに笞を叩き込まれます。乳房を太腿を股間を滅多打ちにされて、ようやく私は地面に叩きつけられました。
「仲間の名前を言うだけでいいのだぞ?」
私は顔をそむけました。顎をつかんで引き戻されます。
反射的に――というのは嘘で、くすぐるよりも残酷な拷問をされたくて、マセッティの顔を目掛けて唾を吐いたのですが、予期していたらしく簡単にかわされました。
刷毛の愛撫による快感は凄まじいのですが、砂糖を練り込んで膨らませ過ぎたお菓子に感じられます。ふわふわしていて、物足りないのです。硬く焼けすぎていても、骨付き肉が好きです。噛んでいるうちに香ばしい肉汁が口いっぱいに拡がります。
マセッティが身を引くと、今度は三本の刷毛によるくすぐりが再開されました。同時に、私が昂ぶりを示すと笞も襲い掛かります。さっきよりも軽い打擲です。私にしてみれば荒々しい愛撫と変わりありません。
じきに三本の笞は三人の片手に替わりました。乳房を握り潰しながら乳首をくすぐる。穴をこねくりながら芽を愛撫する。苦痛と快感とが、まったく同時です。私はさっきよりも高く押し上げられていきます。
これは拷問なのだろうかという疑問が、朦朧とした意識の中に生じました。最高の快楽を与えられているのですから。それとも、絶頂からさらに高みへと押し上げ続けられれば、いずれは極限の苦痛に変じるのでしょうか。鞭打たれて悦ぶのと正反対ですが、逆転という意味ではまったく同じです。
結局、そんな逆転は起こらずに、私はどんどん高く押し上げられて行って、また突き落とされて。今度は一本鞭で全身を鞣し上げられました。
「しぶとい小娘だ。ここまでとする」
正午を告げる鐘の音が聞こえてくると、マセッティは拷問の終了を宣しました。おそらく、三時間は責め続けられていたと思います。
マセッティと三人の部下が牢獄を去り、私は拷問台に磔けられたまま、地べたに叩きつけられた、その余韻にたゆたいます。
――けれど。マセッティが「ここまで」と言ったのは、午前の拷問は、という意味でした。晩春の長い陽が傾く前に、四人は戻ってきました。
私は三つ穴の板枷で、肘を曲げた両手を顔の高さに固定されました。そして、四本の脚で支えられた三角形の材木の前に立たされました。
大人の胴まわりほどもある材木は鉋で整形されています。稜線は、ちょうど仔馬の背中くらいの高さです。首のない木馬といった趣です。ですが、楔のような稜線から垂れているどす黒い血痕が、これは遊具ではなく拷問台だと、雄弁に語っています。
ウーゴとジルドが二人がかりで私を抱えあげて、木馬を跨がせました。
「痛いいっ……!」
割れ目の奥まで切り裂かれるような激痛に、私は悲鳴を上げました。
腰を浮かそうにも、足は宙に浮いています。もがいたら、板枷の重みで身体が傾いて転げ落ちそうになって、太腿で木馬を挟みつけて立て直しました。ますます稜線が食い込んできます。
午前中のお遊びみたいな拷問どころか、初日に座らされた拷問椅子よりも遥かに激越で鋭い痛みです。腰の奥が熱くなるどころではないです。それなのに……胸は苦しみや悲しみとは違う感情に締め付けられています。
魂の喜悦とでもいうのでしょうか。囚人を残虐に拷問することに悦びと興奮を覚えるマセッティの手で虐められている。彼の悦びが、私の魂に写し出されているのです。
もっともっと虐めてください。もう厭だと私が本気で泣き叫ぶまで、手を触れずともあなたが射精してしまうほどに、残虐に嬲って弄んで甚振ってください。
もとより、マセッティ様はそのおつもりでした。マセッティ様が直々に房鞭を手に私の横に立たれ、ジルドは彼の体格に似つかわしい木の大鎚を持って木馬の真後ろに立ちました。
ぶゅん、バッヂイイン!
「ひぎいいいっ……!」
たかが房鞭に悲鳴を上げたのではありません。背中を打たれて、反射的にのけぞって、股間を稜線に押し付けてしまったのです。
ぶゅん、バッヂイイン!
「きゃああっ……!」
ゴンンッ!
「がはあっっ……!」
鈍い衝撃と鋭い痛みとがひとつになって、脳天まで突き抜けました。ジルドが大木槌で木馬の端を叩いたのです。
「きひいいい……」
これは肉まで切り裂かれたでしょう。こんなことを繰り返されては、女の道具が壊されてしまいます。マセッティ様は、口さえ使えれば他には用が無いのでしょうか。
さらに十発ばかり、背中から腰にかけて鞭打たれ、木槌も二回木馬を揺すぶりました。そこでようやく、マセッティ様が後ろへ下がりました。
これで赦されるのだと、ほっとしました。残酷に虐めていただきたいと思っていても、加虐者が満足してくだされば、それ以上に責められたいとは思わない――そうとでも自分の心を推し量るしかない、不思議な感情です。
でもマセッティ様は、ちっとも満足なさっていませんでした。
火桶が持ち出されて、石炭に火が点じられました。鞴の風で、たちまち白熱します。
「これのために、尻は無傷で残しておいたのだからな」
無傷でなんか、あるものですか。今日は責められていなくても、五日前の拷問椅子で穴だらけにされた傷は癒えていません。
リタのときと同じように、火桶から引き抜いた焼鏝を宙ですこし冷まして、赤味が消えてからお尻に近づけます。押し付けられる前から、熱気で肌がチリチリします。
「動くなよ。火傷が広がると、瘢痕が残るぞ」
そんなこと、どうでもいです。瘢痕になるより先に処刑されるでしょう。
ジュッッ……!
「ぐうううっ……」
お尻に灼熱が襲い掛かったと同時に、股間にも激痛が走りました。反射的に腰を跳ねたのだと思います。
焼鏝はすぐに肌から離されましたが、凄まじい熱痛は、そこに居座っています。
ジュッッ……!
太腿も焼かれました。今度は事前に全身の筋肉を引き締めていたので、股間の激痛だけはまぬがれました。
三回四回とお尻に焼鏝が押し付けられましたが、もう冷めているのでしょう。最初ほどの灼熱は感じませんでした。
「あああ……」
悲鳴の余韻に快感が……いえ、快い感覚ではありません。充足感といえば近いでしょうか。虐められて苦しんでいる私を見てマセッティ様が悦んでいるという、それ。ひどく惨めですが、そんな私を私が憐れんでいるのです。
マセッティ様は二本目の焼鏝に替えて、木馬の反対側に移りました。そして、まだ焼かれていないお尻と太腿にも火傷を与えてくださったのです。
「これほど責めても、白状もせず赦しも乞わず……強情にも程がある」
嘆きと怒りの言葉ですが、深い満足の響きを、私は聞き取りました。
「焼印を持って来い」
カルロが鉄棒を何本も抱えて来て、一本ずつを私に見せつけてから火桶に挿します。鏡文字です。
13、17、666、ladr、prst、pcct、oscn。アルファベットは、母音を足してやれば――泥棒(ladro)、娼婦(prostituta)、罪人(peccatore)、淫乱(osceno)と読めます。他にも該当する単語はありますが、私に恥辱を与えるという目的なら、これしかないはずです。
「これは、ひと撫ででは済まさんぞ。主の御前に立つときもくっきりと残るように、肌の奥の肉まで焼き付けてやる」
あああ……死体になってまで恥辱が続くのです。それを享受できる私は消滅しているというのに。私は心の底から震え上がりました。
「今日のところは、取りやめても良いぞ」
「…………」
それでも、ペピーノとガイオを売ることは出来ません。子供たちを路頭に迷わすなんて、擦り切れかけている良心でさえも許さないでしょう。
「何もしゃべる必要はないぞ。しゃべれなくなるのだから」
私は三角の木馬から降ろされて、床に跪かされました。木枷は外されましたが、すぐに後ろへ手を捻じられて小さな板枷を嵌められました。
マセッティ様はズボンをずり下げて、萎びた男根を私の顔に突き付けます。裸の若い娘を目の前にして、お好みの嗜虐も堪能されたというのに……侮辱です。
「どうすれば良いか、分かっているな」
元娼婦に愚問です。私は根元まで咥えました。舐め回し、舌先でつつき、歯に唇をかぶせてしごきます。すこしは大きくなりましたが、あまり硬くないです。頭がくらくらしても堪えて前後に揺すり続けても、効き目がありません。
ペピーノやガイオなら続けて相手に出来るくらいの時間を掛けても、進展はありません。顎が疲れてきました。目まいがして気分が悪くなりかけています。もしかすると、マセッティ様は不能なのでしょうか。まだ白髪も生えていないというのに。
「出すぞ。しっかり飲め。こぼせば焼印だぞ」
え……だって?
じょろろろろ……口中に水があふれます。なんということを!
娼婦を蔑んで便器と呼ぶ男もいますが、マセッティ様は文字通りに私を便器にしているのです。
「んん……ぐふ……」
飲むしかありません。小水独特の饐えた臭いはしないです。でも、しょっぱいのとも苦いのともちがうえぐみがあります。なによりも、排泄物を飲まされているという屈辱感が強いです。でも、これでマセッティ様が満足されるのなら……腰の奥が、きゅうんとよじれます。
飲み終わって頭を引こうとしたら、髪の毛をつかんで引き戻されました。何もしていないのに、口の中で男根が怒張します。といっても、せいぜいペピーノくらいです。成人男性としては「稍小」です。
マセッティ様は腰を遣わず、私の頭を激しく揺さぶります。
「んぐ……むうううう」
髪を引っ張られて痛いです。馬車に揺られるより気分が悪いです。それでも、出来る限りは舌を動かして、マセッティ様の求めに応じます。
努力の甲斐あって、今度は速やかに射精してくださいました。言われる前に、ごくんと呑み込みました。口直しです。
今度こそ本当に満足なさったマセッティ様は、約束通り焼印は赦してくださいました。火傷には拷問吏に例の泥膏薬を塗らせて、傷口に土毒が入らないよう宙吊りにしてくださいました。
でも、これまでと一二を争う厳しい吊り方でした。俯せにされて、独房の四隅から手足を強く引っ張られました。そして、ぴんと伸び切った背中に大きな石の板を括り付けられました。背骨が軋み、腕も脚も引き抜かれそうな苦痛です。これは、私が何か粗相をした罰なのか、ただマセッティ様のお遊びなのか、それとも穏やかに継続する拷問なのか、マセッティ様は何もおっしゃいませんでした。
夜遅くなってから、単純な逆さ吊りに変えてもらって、ずいぶんと楽になりました。頭に血が下がって激しい頭痛と目まいに襲われますし、内臓が胸を圧迫して息苦しくなります。でも、マセッティ様は慈悲深くていらっしゃいます。両手は自由にしてくださいましたので、身体をうんと折り曲げて腿にしがみついていれば、しのげます。腕と腹筋が疲れたら、また逆さ吊りに戻れば良いのです。
こんな状態では、いかに私が図太くても安眠はできません。逆さ吊りでとろとろっと微睡んでは苦痛に目を覚まして身体を折り曲げる。この繰り返しで翌朝を迎えたのでした。
翌日は夜まで、様々な姿勢で宙吊りにされて。私は生まれて初めて、空中で月に一度の穢れを迎えたのでした。
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一挙3万文字です。ハイライトシーンです。しかも。
拷問は続くよ、どこまでも~♪
翌日からは傷を癒して。『犠牲者の恍惚』でHard Torture Again! なのであります。
苛酷な拷問というPLOTは不変ながら、捕まるシーケンスはブッツケ大変更。こういうことを商業誌でやらかすと、大目玉なら救いがあるというもの。切られますね。ふん、こちとら同人作家だもんね。しかし。あれこれ(見当外れもあるにせよ)アドバイスをくれる担当者/編集者がいないってのは……しんどいですな。まあ、売れ行きから出来を判断するしかないです。

上の画像。 似たようなシーンはあるけど、ドンピシャではないです。
これは楽屋裏の話ですが。仕出人物の名は、ちょこまか変更しています。うっかり同じ名前を使ったり、AとBは字面が似てるとか、まあ、製品版までにはきちんとします。キッチンは使わずにコンビニ弁当。
いや、まあ。
なお、西洋各国の人名については、こちらのサイトでお世話になっております。小説に使うのは自由という、ありがたいサイトです。
「ヨーロッパ、男性、名前」とか検索するとトップに出てきます。
欧羅巴人名録
Progress Report 1:公女巡虐
今回も、すべて掲載するけど、冒頭とアカルイミニマムは残して、途中は「消費期限有り」の順次非公開でいきます。
その暴投。『巨人の星』じゃあるまいし。
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育まれた悦虐
「エレナお嬢様、就寝の時刻でございます」
教会の鐘が鳴るとすぐに、侍女のジーナが告げました。
私は無言で立ち上がります。ジーナが衣服を脱がせてくれて、私は腰布一枚の姿になります。亜麻布ですが、形はひどく変わっています。股間を隠す逆三角形の布と三本の紐だけ。下生えこそ隠せますが、尻は剥き出しです。これは、男に身体を売る女が「仕事」のとき身に着ける下着だと、お継母様はおっしゃいました。このような破廉恥な下着を身に着けることで、己れの淫乱な性格を常に意識していなさいと。
私の性格を矯正しようとしての処置なのですが、どう考えても逆効果です。
私は寝台に仰臥して、手足をX字形に広げます。手首と足首そして膝の上に、寝台の隅から伸びた鎖につながれた枷が嵌められていきます。枷の内側にはベルベットが張られていますから、夜毎に拘束されても肌に痕は残りません。もちろん、枷を外そうとして私が藻掻いたりしなければ――ですが。
私を拘束し終えるとジーナは、腰布というよりも股隠しの布の紐をほどいて、女性器を剥き出しにしました。腰布も布団も、身体に熱がこもって淫らな気分を誘われるから、この姿で寝なければならないのです。冬には、毛布を掛けてもらえますけど、今はまだ初秋です。
すべての処置を終えると、ジーナは慇懃に挨拶をします。
「では、お嬢様。お休みなさいませ」
ランプの明かりを消して、ジーナが退出します。
月明かりの部屋に独り、寝返りも打てず仰臥して。すぐには寝付けるものではありません。日常生活では、むしろお父様よりも身近な絶対的支配者であるお継母様の指図で、このような羞ずかしい形にされているのだと思うと……お継母様への反感が胸にわだかまっているにも係わらず、腰の奥にじれったい感覚が募っていきます。
侍女の監視の目を盗んで自らを慰めたのが十日前。割れ目の上端に隠れている実核が、刺激を求めて硬く凝っています。
そう――そういう悪戯が出来ないようにと、私は夜毎に四肢を拘束されているのです。
私が浅墓でした。でも、こんな気持ちの良いことは、妹のベルタにも教えてあげたくて……まさかお継母様に告げ口されるなんて。お継母様が、あれほどにお怒りになるなんて。
事の発端は、ちょうど一年前でした。お継母様がお嫁入りのときに持参された宝石箱を、侍女の一人が盗んで売り払ったのです。ニナは逃亡を図りましたが、悪運尽きて捕らえられ、処刑されることになりました。
換金すれば千銀貨(グロッツ)以上にもなる財宝を盗んだのです。首切りか、火刑に処されても当然です。けれどお継母様は慈悲の心を発露なさって、彼女を助命したばかりか賠償の機会さえ与えられたのです。もちろん、まったくの放免ではありません。
私たちラメーズ伯爵家の者も、処罰に立ち会いました。
彼女は短い腰布一枚の裸身にされて、首と両手を一枚の板枷で拘束されました。そんな羞ずかしい不名誉な姿で引き回されて、街を一周するのです。
「ああ、お赦しください。せめて、裸なりとも隠させてください」
ニナは泣いて懇願しましたが、返事は痛烈な鞭でした。ニナは悲鳴を上げ、それから泣きじゃくりながら、縄に曳かれて歩き始めました。
裸になえうという行為は、どれ自体が神様の摂理に反する行為です。裸身を他人の目に晒すなど、殿方でさえ羞恥を覚えます。まして、ニナは未婚の乙女。もしも選択が許されるなら、裸で引き回されるよりは着衣のまま首を切られるほうを選ぶでしょう。
その、死にもまさる恥辱の光景を眺めていて、私は胸がふさがりました。同情でも憐憫でもありません。ニナの拘束された裸身、数条の鞭痕に彩られた裸身。それを美しいと思ったのです。
あらかじめ布告されていたので、道筋には大勢の見物人が集まっていました。罪人の引き回しには付き物の野次も飛ばず、彼ら(数は少ないですが、女性も居ました)は固唾を呑んで、ニナの裸身を見つめています。無数の視線に突き刺されて、ニナの全身が薄桃色に染まっていきます。
それが、いっそう美しく見えました。私も、あんなふうに引き回されてみたい。自分がそう思っていることに、不意に気づきました。もちろん、伯爵家令嬢たる私は――お父様が謀反を企てでもしない限りは、そんな目に遭わされることはないでしょうけれど。
街を一周したニナは、広場で晒し者にされました。
処刑台上には二本の柱が立てられています。そこへ木枷が載せられて、太い釘で打ち付けられました。ニナは、上体を不自然に折り曲げた姿勢です。さらに、両脚を無理強いに開かせられて、柱の根元に縛り付けられました。滑稽なほど後ろに突き出された尻。重みで垂れ下がった乳房。
そして。羞恥の根源をかろうじて隠していた布片すら剥ぎ取られたのです。女にとって、これ以上は無い辱め。けれどそれは、処罰の下準備でしかなかったのです。
彼女には、五十発の鞭が与えられました。尻や背中はもちろん、下から掬い上げるようにして乳房も打ち据えられました。どころか。ニナの真後ろから鞭を跳ね上げて、股間まで打たれたのです。
手加減はされていたのでしょう。肌に赤い条痕は刻まれるものの、派手な音の割には、肌が裂けて流血したりはしませんでした。それでも、ニナは大声で泣き叫びました。
わたしは、もう……ニナから目を放せませんでした。いいえ。あそこに磔けられているのが自分だったらと――そんな妄想に耽っていたのです。
鞭打ちが終わった後も、ニナは赦されません。処刑台の四隅を守っていた兵隊が、これ見よがしに散っていきます。
「これより一週間、この女を晒し者にする。憐れんで水や食べ物を与えても、あるいは他の事をしても、咎めたりはせぬ。また、夜に篝火は焚かぬ」
兵士長が大声で布令ました。ざわめきが見物人の間に広がります。夜陰に紛れて良からぬことをしても咎めない。いえ、良からぬことをしろと、けしかけているも同然です。
「一週間後になお、この女が生きていれば、広場の片隅に小屋を設けて住まわせるものとする。五十銅貨(ラーメ)を払えば、誰でも小屋を訪れて構わぬ」
当時、私はすでに子を産める年齢でした。男女がひとつ寝台で何をするか、およその知識としては知っています。つまり、そういうことです。それにしても――千グロッツは五十万ラーメです。お母様の宝石を償うには、一万回以上のそういうことをしなければならないのです。衣食住の費えを考えれば、何万回になることでしょう。ひと晩に何回くらい、女はそういうことを受け入れられるのかまでは知りませんけれど、十回としても十年以上です。
十年以上も、最下級の娼婦、いえ奴隷として扱われる。それを思うと、腰の奥が疼いてしまいました。
――家に戻っても、妖しい興奮は続いていました。それをどう処理して良いものか、見当もつかないまま夜になって。腰のもやもやをなんとかしたいと思って、両脚を突っ張り腿を引き締めたのです。
「あっ……?!」
声が出てしまいました。もやもやしている、もうちょっと上のあたりに稲妻が奔ったのです。神様の怒りではありません。もっと繊細で甘美な……これまでに感じたことのない純粋な快感でした。二度三度と繰り返してみました。同じように稲妻が奔ります。だんだん太くなって。
これはどういうことなのでしょうか。私は、はしたなくも寝間着の中に手を入れて、稲妻が奔ったと思しき個所を探ってみました。
そうして、見つけてしまったのです。女の子の割れ目が上端で閉じ合わさっているあたりに、小さな疣のようなものがありました。そこに指を触れると、もっともっと太くて甘美な稲妻が奔ります。雷鳴が轟きます。
私は好奇心と快感に任せて、その疣をいろんなふうに弄りました。小さな疣の中には、もっと小さな実核があります。それが皮膚に包まれているのです。皮だけを摘まむと、きゅるんと実核が動きます。
「ああっ……ああああっ……?!」
本能的に、これは貪ってはいけない快感だと悟りました。声を殺すために、敷布を咥えました。そして、さらに弄ります。
弄っているうちに、硬く尖ってきます。皮を剥き下げると実核が露出します。それを直に触ると……甘美な稲妻と同時に、鋭い痛みが奔りました。でも、それがスパイスとなって、さらに快楽が増すのです。
弄っているうちに、それでも物足りなくなって。胸につかえている感情もどうにかしたくて――左手で乳首も弄っていました。そこにも稲妻が奔ります。
股間の疣から発する稲妻が背骨を駆け登って、乳首から乳房全体に広がる稲妻とひとつになって……
「むうううっ……んんん!」
身体が宙に投げ出されたような感覚。私は、幼い絶頂を知ったのです。
――翌朝。私は満ち足りた目覚めを迎えました。と同時に、昨夜の所業は背徳に通じるのではないかという惧れも生じました。
できれば共犯者を作りたいという心理と。こんな気持ち良いことを独り占めにしてはいけないという気持ちと。なんとなく疎遠な妹と仲良くなりたいという想いと。それらが綯い合わさって。妹のベルタに教えてあげたのです。
「ふうん。じゃあ、今夜にでも確かめてみようかな」
無邪気な返事でした。無邪気過ぎて――このことをお継母様(ベルタにとっては産みの母親です)に告げたのです。
「エレナ! なんという恥知らずな行ないに耽っているのですか」
お継母様はこれまでに見せたことのない形相で、私を叱りました。後ろにはベルタを連れています。さらに、私の侍女のジーナとエルザも呼び付けました。
「おまえのしたことは、神様の教えに背くことです。厳しく罰さねばなりません」
お継母様は、私に衣服をすべて、下着まで含めて脱ぐように命令なさいました。
独りで裸になるのさえ恥ずかしいのに、継母様と妹、さらに侍女の眼の前で……
「お継母様、ごめんなさい。もう決して誤ちは繰り返しません。赦してください」
ぱしん!
お継母様は、手に持ってらした乗馬鞭で、私が前で組み合わせていた手をお叩きになりました。ごく軽い叩き方でしたし、婦人用の軽い乗馬鞭です。でも、この十三年間で初めて叩かれたのです。
私は驚愕とともに、お継母様の怒り、己れが犯した罪の重さに打ちひしがれました。私は、おろおろしながら衣服を自分の手で脱ぐしかありませんでした。侍女も手伝ってはくれません。
「まあ、もう生えているのね。色気づくのも無理はないわね」
前の年に初潮を迎えましたが、そのしばらく前から、下腹部の産毛が次第に縮れてきていました。髪の色と同じ淡い金色ですが、それでも肌に紛れたりはしません。それはそれで羞ずかしいことでもあり、いつでも結婚できる身体になったのだという誇らしさもありましたけれど。
お継母様の言葉で、昨夜の悪戯は男女の交わりと、どこかでつながっているのだと知りました。
お継母様は、私を寝台に仰臥させて、脚を開くように命じられました。
いくらなんでも、そんなはしたない真似はできません。赦してくださいと懇願すると、二人の侍女に命じて、私の脚を強引に開かせました。私付きの侍女でもコルレアーニ家の奉公人であることに変わりはありません。そして、屋敷内の一切は女主人が取り仕切って、お父様でも滅多なことでは口を差し挟めません。
お継母様は寝台の横に立って、乗馬鞭先で私の股間を――疣の部分をつつきます。
「ふん。おまえのこれは大きいね。淫乱の証拠だわ」
罵られているのに、鞭の先は冷たくて硬いのに、稲妻が奔ってしまいます。声は抑えても、腰がひくつきます。
「こんな目に遭っても、まだ淫らなことを考えているのね。反省なさい!」
声と同時に鞭が引かれて、股間に打ち下ろされました。
ひゅっ、パシン!
「きゃあああっ……!」
神様の怒りの稲妻です。股間を真っ二つに切り裂かれたような鋭い痛みでした。
「あうううう……」
でも。痛みが薄れるにつれて、腰の奥に甘い痺れが湧いてきました。
ひゅっ、パシン!
「きゃああっ……!」
ひゅんっ、バッチイン!
「いぎゃあああっ!」
それまでの二発とは比べ物にならない強い打擲に、私は絶叫していました。
お継母様は、冷ややかに私を見下ろしています。
「これで、少しは懲りたことでしょう」
その場は赦してもらえましたが、お仕置はそれで終わりではありませんでした。
その日から、朝から晩まで、必ず侍女のひとりが私の部屋で待機――実は監視するように取り計らわれました。そして夜も。寝ているときに悪戯ができないようにと、両手を布団の上に出して、手首を絹のハンカチで括られたのです。
でも、禁止されればされるほど、いけないことをしてみたくなります。それに……妹の見ている眼の前で、全裸にされて侍女に押さえ付けられて、お継母様に鞭打たれるなんて、ニナほどではないにしても屈辱ですし。鞭の痛みを追って湧いてくる甘美は、自分でする悪戯よりも、毒を含んでいるだけに濃厚です。
三日ほどはいい子にしていましたけれど。ハンカチで括られているだけですから、その気になればほどけます。でも、自分で結ぶのは難しいです。
両手が自由なまま寝ているところを侍女に見つかってしまい、今度は五発の鞭でした。手首は縄で縛られるようになりました。
それでも。手を縛られたままでも、寝間着の下に(両手もろともに)入れられます。細かな指遣いは難しくても、刺激はできます。もどかしさが、むしろスパイスにもなりました。
これも、あっさりと見破られました。お継母様に指先の臭いを嗅がれたのです。
鞭は七発でした。ひと打ちごとが、前よりも厳しいものでした。私は泣き叫びましたが、これまでとは違って、悪戯をやめるとは誓いませんでした。絶対にやめられないと悟ったからです。
そうして、とうとう……両手を広げた頭の上で鉄枷につながれてしまいました。
でも、まだ脚が残っています。最初に快感を感じたときのように、両脚を突っ張って腿をこすり合わせて。指で弄るような深い快感は得られませんが、軽く宙に浮くくらいにまではなります。
これも、数日で発覚しました。腰布に、言い逃れようのない染みが着いているのですから。
お継母様は、乗馬鞭をお使いになりませんでした。細い木の枝で、私の股間を打ち据えたのです。乗馬鞭より痛くないと不満に思ったのですが、とんでもない考え違いでした。乗馬鞭の先端は馬の肌を傷つけないように配慮されていますが、木の枝にはそんな工夫がありません。鋭く尖った先端は股間の疣を切り裂き(は、しませんでしたが)割れ目の奥にまで届きました。
そんなことが繰り返されて――半年ほどで、全裸を寝台でX字形に磔けられるという、今の形に落ち着いたのです。これでは、さすがに何もできません。昼間に、同じ部屋で見張っている侍女の目を盗んで、ほんのちょっとだけ指で弄って、それで我慢するしかありません。
ですけれど。自分で自分を弄って快感を得たいのか、それをお継母様に見つかって厳しくお仕置されて激痛とその後に続く(指で弄るよりもささやかですけれど、胸の奥に沁み込みます)快感を得たいのか、どちらなのか分からなくなってしまいました。というのも――半年前にお継母様が聖エウフェミア女子修道院にひと月ほど滞在されていたときは、悪戯をしたいという欲求は、そんなに起こらなかったのです。
聖エウフェミア女子修道院というのは、王都の近郊にある小さな施設ですが、王族や諸侯の庇護を受けています。お継母様は、そこの出身です。もちろん、修道女がいきなり結婚はできませんから、還俗してクリスタロ侯爵の養女となってから、お父様と結婚なさったのです。
お継母様がいわば里帰りされたのは、お父様の名代として、何かの式典に参列なさるため――ということになっていますが、そうでなかったのだろうと推測しています。
お継母様は、私を修道院へ入れようとなさっているのです。こんな淫らな娘は、どこへ嫁いでも伯爵家の名を貶める。ベルタの嫁ぎ先のブロンゾ子爵家に聞こえでもしたら破談になりかねないと――面と向かって私に言い放つのです。
まともな貴族の娘なら、十代の半ばで結婚するのが普通です。なのに、私には婚約者すら居ないのです。お継母様のせいです。
お継母様の思い通りになんかなりたくないです。修道院だなんて、絶対に厭です。清貧な生活に甘んじるのは構いませんが、神様の花嫁なんて真っ平です。だって、神様は生身の女性を肉体的に可愛がってはくださいませんから。
それくらいなら、お父様より年上どころか私の年齢の四倍もある(半世紀近い隔たりです)お爺様や、私の体重の三倍もある醜男と政略結婚させられるほうが、悲惨なだけに、悲劇の主人公でいられます。あ、数字が具体的なのは――そういう人物が実在しているからです。
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やっぱりですね。初っ端から読者を惹きつけるということは意識しております。ので、いきなり全裸ベッド磔です。
あ、今回は「地中海の東端に突き出た半島」が舞台ですので、そう簡単には英語を使いません。固有名詞はともかく、普通名詞では横文字を極力避けます。
まあ。人名とか架空の地名とかで、見当はつくでしょうけどね。
初っ端の回想シーンは、縄吉さんのフォトコラでも、特にお気に入りのやつの西洋バージョンです。この画像には、ブログ記事でも体感型バーチャル性活(つまりは自家発電)でも、何度もお世話になっております。

実際のところ、10/22現在は、第3章執筆中です。PLOTでは「娼婦への折檻」でしたが、尺が長くなるので、前半を「娼館での生活」に分割しました。それは、いずれ股の奇怪に。
その暴投。『巨人の星』じゃあるまいし。
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育まれた悦虐
「エレナお嬢様、就寝の時刻でございます」
教会の鐘が鳴るとすぐに、侍女のジーナが告げました。
私は無言で立ち上がります。ジーナが衣服を脱がせてくれて、私は腰布一枚の姿になります。亜麻布ですが、形はひどく変わっています。股間を隠す逆三角形の布と三本の紐だけ。下生えこそ隠せますが、尻は剥き出しです。これは、男に身体を売る女が「仕事」のとき身に着ける下着だと、お継母様はおっしゃいました。このような破廉恥な下着を身に着けることで、己れの淫乱な性格を常に意識していなさいと。
私の性格を矯正しようとしての処置なのですが、どう考えても逆効果です。
私は寝台に仰臥して、手足をX字形に広げます。手首と足首そして膝の上に、寝台の隅から伸びた鎖につながれた枷が嵌められていきます。枷の内側にはベルベットが張られていますから、夜毎に拘束されても肌に痕は残りません。もちろん、枷を外そうとして私が藻掻いたりしなければ――ですが。
私を拘束し終えるとジーナは、腰布というよりも股隠しの布の紐をほどいて、女性器を剥き出しにしました。腰布も布団も、身体に熱がこもって淫らな気分を誘われるから、この姿で寝なければならないのです。冬には、毛布を掛けてもらえますけど、今はまだ初秋です。
すべての処置を終えると、ジーナは慇懃に挨拶をします。
「では、お嬢様。お休みなさいませ」
ランプの明かりを消して、ジーナが退出します。
月明かりの部屋に独り、寝返りも打てず仰臥して。すぐには寝付けるものではありません。日常生活では、むしろお父様よりも身近な絶対的支配者であるお継母様の指図で、このような羞ずかしい形にされているのだと思うと……お継母様への反感が胸にわだかまっているにも係わらず、腰の奥にじれったい感覚が募っていきます。
侍女の監視の目を盗んで自らを慰めたのが十日前。割れ目の上端に隠れている実核が、刺激を求めて硬く凝っています。
そう――そういう悪戯が出来ないようにと、私は夜毎に四肢を拘束されているのです。
私が浅墓でした。でも、こんな気持ちの良いことは、妹のベルタにも教えてあげたくて……まさかお継母様に告げ口されるなんて。お継母様が、あれほどにお怒りになるなんて。
事の発端は、ちょうど一年前でした。お継母様がお嫁入りのときに持参された宝石箱を、侍女の一人が盗んで売り払ったのです。ニナは逃亡を図りましたが、悪運尽きて捕らえられ、処刑されることになりました。
換金すれば千銀貨(グロッツ)以上にもなる財宝を盗んだのです。首切りか、火刑に処されても当然です。けれどお継母様は慈悲の心を発露なさって、彼女を助命したばかりか賠償の機会さえ与えられたのです。もちろん、まったくの放免ではありません。
私たちラメーズ伯爵家の者も、処罰に立ち会いました。
彼女は短い腰布一枚の裸身にされて、首と両手を一枚の板枷で拘束されました。そんな羞ずかしい不名誉な姿で引き回されて、街を一周するのです。
「ああ、お赦しください。せめて、裸なりとも隠させてください」
ニナは泣いて懇願しましたが、返事は痛烈な鞭でした。ニナは悲鳴を上げ、それから泣きじゃくりながら、縄に曳かれて歩き始めました。
裸になえうという行為は、どれ自体が神様の摂理に反する行為です。裸身を他人の目に晒すなど、殿方でさえ羞恥を覚えます。まして、ニナは未婚の乙女。もしも選択が許されるなら、裸で引き回されるよりは着衣のまま首を切られるほうを選ぶでしょう。
その、死にもまさる恥辱の光景を眺めていて、私は胸がふさがりました。同情でも憐憫でもありません。ニナの拘束された裸身、数条の鞭痕に彩られた裸身。それを美しいと思ったのです。
あらかじめ布告されていたので、道筋には大勢の見物人が集まっていました。罪人の引き回しには付き物の野次も飛ばず、彼ら(数は少ないですが、女性も居ました)は固唾を呑んで、ニナの裸身を見つめています。無数の視線に突き刺されて、ニナの全身が薄桃色に染まっていきます。
それが、いっそう美しく見えました。私も、あんなふうに引き回されてみたい。自分がそう思っていることに、不意に気づきました。もちろん、伯爵家令嬢たる私は――お父様が謀反を企てでもしない限りは、そんな目に遭わされることはないでしょうけれど。
街を一周したニナは、広場で晒し者にされました。
処刑台上には二本の柱が立てられています。そこへ木枷が載せられて、太い釘で打ち付けられました。ニナは、上体を不自然に折り曲げた姿勢です。さらに、両脚を無理強いに開かせられて、柱の根元に縛り付けられました。滑稽なほど後ろに突き出された尻。重みで垂れ下がった乳房。
そして。羞恥の根源をかろうじて隠していた布片すら剥ぎ取られたのです。女にとって、これ以上は無い辱め。けれどそれは、処罰の下準備でしかなかったのです。
彼女には、五十発の鞭が与えられました。尻や背中はもちろん、下から掬い上げるようにして乳房も打ち据えられました。どころか。ニナの真後ろから鞭を跳ね上げて、股間まで打たれたのです。
手加減はされていたのでしょう。肌に赤い条痕は刻まれるものの、派手な音の割には、肌が裂けて流血したりはしませんでした。それでも、ニナは大声で泣き叫びました。
わたしは、もう……ニナから目を放せませんでした。いいえ。あそこに磔けられているのが自分だったらと――そんな妄想に耽っていたのです。
鞭打ちが終わった後も、ニナは赦されません。処刑台の四隅を守っていた兵隊が、これ見よがしに散っていきます。
「これより一週間、この女を晒し者にする。憐れんで水や食べ物を与えても、あるいは他の事をしても、咎めたりはせぬ。また、夜に篝火は焚かぬ」
兵士長が大声で布令ました。ざわめきが見物人の間に広がります。夜陰に紛れて良からぬことをしても咎めない。いえ、良からぬことをしろと、けしかけているも同然です。
「一週間後になお、この女が生きていれば、広場の片隅に小屋を設けて住まわせるものとする。五十銅貨(ラーメ)を払えば、誰でも小屋を訪れて構わぬ」
当時、私はすでに子を産める年齢でした。男女がひとつ寝台で何をするか、およその知識としては知っています。つまり、そういうことです。それにしても――千グロッツは五十万ラーメです。お母様の宝石を償うには、一万回以上のそういうことをしなければならないのです。衣食住の費えを考えれば、何万回になることでしょう。ひと晩に何回くらい、女はそういうことを受け入れられるのかまでは知りませんけれど、十回としても十年以上です。
十年以上も、最下級の娼婦、いえ奴隷として扱われる。それを思うと、腰の奥が疼いてしまいました。
――家に戻っても、妖しい興奮は続いていました。それをどう処理して良いものか、見当もつかないまま夜になって。腰のもやもやをなんとかしたいと思って、両脚を突っ張り腿を引き締めたのです。
「あっ……?!」
声が出てしまいました。もやもやしている、もうちょっと上のあたりに稲妻が奔ったのです。神様の怒りではありません。もっと繊細で甘美な……これまでに感じたことのない純粋な快感でした。二度三度と繰り返してみました。同じように稲妻が奔ります。だんだん太くなって。
これはどういうことなのでしょうか。私は、はしたなくも寝間着の中に手を入れて、稲妻が奔ったと思しき個所を探ってみました。
そうして、見つけてしまったのです。女の子の割れ目が上端で閉じ合わさっているあたりに、小さな疣のようなものがありました。そこに指を触れると、もっともっと太くて甘美な稲妻が奔ります。雷鳴が轟きます。
私は好奇心と快感に任せて、その疣をいろんなふうに弄りました。小さな疣の中には、もっと小さな実核があります。それが皮膚に包まれているのです。皮だけを摘まむと、きゅるんと実核が動きます。
「ああっ……ああああっ……?!」
本能的に、これは貪ってはいけない快感だと悟りました。声を殺すために、敷布を咥えました。そして、さらに弄ります。
弄っているうちに、硬く尖ってきます。皮を剥き下げると実核が露出します。それを直に触ると……甘美な稲妻と同時に、鋭い痛みが奔りました。でも、それがスパイスとなって、さらに快楽が増すのです。
弄っているうちに、それでも物足りなくなって。胸につかえている感情もどうにかしたくて――左手で乳首も弄っていました。そこにも稲妻が奔ります。
股間の疣から発する稲妻が背骨を駆け登って、乳首から乳房全体に広がる稲妻とひとつになって……
「むうううっ……んんん!」
身体が宙に投げ出されたような感覚。私は、幼い絶頂を知ったのです。
――翌朝。私は満ち足りた目覚めを迎えました。と同時に、昨夜の所業は背徳に通じるのではないかという惧れも生じました。
できれば共犯者を作りたいという心理と。こんな気持ち良いことを独り占めにしてはいけないという気持ちと。なんとなく疎遠な妹と仲良くなりたいという想いと。それらが綯い合わさって。妹のベルタに教えてあげたのです。
「ふうん。じゃあ、今夜にでも確かめてみようかな」
無邪気な返事でした。無邪気過ぎて――このことをお継母様(ベルタにとっては産みの母親です)に告げたのです。
「エレナ! なんという恥知らずな行ないに耽っているのですか」
お継母様はこれまでに見せたことのない形相で、私を叱りました。後ろにはベルタを連れています。さらに、私の侍女のジーナとエルザも呼び付けました。
「おまえのしたことは、神様の教えに背くことです。厳しく罰さねばなりません」
お継母様は、私に衣服をすべて、下着まで含めて脱ぐように命令なさいました。
独りで裸になるのさえ恥ずかしいのに、継母様と妹、さらに侍女の眼の前で……
「お継母様、ごめんなさい。もう決して誤ちは繰り返しません。赦してください」
ぱしん!
お継母様は、手に持ってらした乗馬鞭で、私が前で組み合わせていた手をお叩きになりました。ごく軽い叩き方でしたし、婦人用の軽い乗馬鞭です。でも、この十三年間で初めて叩かれたのです。
私は驚愕とともに、お継母様の怒り、己れが犯した罪の重さに打ちひしがれました。私は、おろおろしながら衣服を自分の手で脱ぐしかありませんでした。侍女も手伝ってはくれません。
「まあ、もう生えているのね。色気づくのも無理はないわね」
前の年に初潮を迎えましたが、そのしばらく前から、下腹部の産毛が次第に縮れてきていました。髪の色と同じ淡い金色ですが、それでも肌に紛れたりはしません。それはそれで羞ずかしいことでもあり、いつでも結婚できる身体になったのだという誇らしさもありましたけれど。
お継母様の言葉で、昨夜の悪戯は男女の交わりと、どこかでつながっているのだと知りました。
お継母様は、私を寝台に仰臥させて、脚を開くように命じられました。
いくらなんでも、そんなはしたない真似はできません。赦してくださいと懇願すると、二人の侍女に命じて、私の脚を強引に開かせました。私付きの侍女でもコルレアーニ家の奉公人であることに変わりはありません。そして、屋敷内の一切は女主人が取り仕切って、お父様でも滅多なことでは口を差し挟めません。
お継母様は寝台の横に立って、乗馬鞭先で私の股間を――疣の部分をつつきます。
「ふん。おまえのこれは大きいね。淫乱の証拠だわ」
罵られているのに、鞭の先は冷たくて硬いのに、稲妻が奔ってしまいます。声は抑えても、腰がひくつきます。
「こんな目に遭っても、まだ淫らなことを考えているのね。反省なさい!」
声と同時に鞭が引かれて、股間に打ち下ろされました。
ひゅっ、パシン!
「きゃあああっ……!」
神様の怒りの稲妻です。股間を真っ二つに切り裂かれたような鋭い痛みでした。
「あうううう……」
でも。痛みが薄れるにつれて、腰の奥に甘い痺れが湧いてきました。
ひゅっ、パシン!
「きゃああっ……!」
ひゅんっ、バッチイン!
「いぎゃあああっ!」
それまでの二発とは比べ物にならない強い打擲に、私は絶叫していました。
お継母様は、冷ややかに私を見下ろしています。
「これで、少しは懲りたことでしょう」
その場は赦してもらえましたが、お仕置はそれで終わりではありませんでした。
その日から、朝から晩まで、必ず侍女のひとりが私の部屋で待機――実は監視するように取り計らわれました。そして夜も。寝ているときに悪戯ができないようにと、両手を布団の上に出して、手首を絹のハンカチで括られたのです。
でも、禁止されればされるほど、いけないことをしてみたくなります。それに……妹の見ている眼の前で、全裸にされて侍女に押さえ付けられて、お継母様に鞭打たれるなんて、ニナほどではないにしても屈辱ですし。鞭の痛みを追って湧いてくる甘美は、自分でする悪戯よりも、毒を含んでいるだけに濃厚です。
三日ほどはいい子にしていましたけれど。ハンカチで括られているだけですから、その気になればほどけます。でも、自分で結ぶのは難しいです。
両手が自由なまま寝ているところを侍女に見つかってしまい、今度は五発の鞭でした。手首は縄で縛られるようになりました。
それでも。手を縛られたままでも、寝間着の下に(両手もろともに)入れられます。細かな指遣いは難しくても、刺激はできます。もどかしさが、むしろスパイスにもなりました。
これも、あっさりと見破られました。お継母様に指先の臭いを嗅がれたのです。
鞭は七発でした。ひと打ちごとが、前よりも厳しいものでした。私は泣き叫びましたが、これまでとは違って、悪戯をやめるとは誓いませんでした。絶対にやめられないと悟ったからです。
そうして、とうとう……両手を広げた頭の上で鉄枷につながれてしまいました。
でも、まだ脚が残っています。最初に快感を感じたときのように、両脚を突っ張って腿をこすり合わせて。指で弄るような深い快感は得られませんが、軽く宙に浮くくらいにまではなります。
これも、数日で発覚しました。腰布に、言い逃れようのない染みが着いているのですから。
お継母様は、乗馬鞭をお使いになりませんでした。細い木の枝で、私の股間を打ち据えたのです。乗馬鞭より痛くないと不満に思ったのですが、とんでもない考え違いでした。乗馬鞭の先端は馬の肌を傷つけないように配慮されていますが、木の枝にはそんな工夫がありません。鋭く尖った先端は股間の疣を切り裂き(は、しませんでしたが)割れ目の奥にまで届きました。
そんなことが繰り返されて――半年ほどで、全裸を寝台でX字形に磔けられるという、今の形に落ち着いたのです。これでは、さすがに何もできません。昼間に、同じ部屋で見張っている侍女の目を盗んで、ほんのちょっとだけ指で弄って、それで我慢するしかありません。
ですけれど。自分で自分を弄って快感を得たいのか、それをお継母様に見つかって厳しくお仕置されて激痛とその後に続く(指で弄るよりもささやかですけれど、胸の奥に沁み込みます)快感を得たいのか、どちらなのか分からなくなってしまいました。というのも――半年前にお継母様が聖エウフェミア女子修道院にひと月ほど滞在されていたときは、悪戯をしたいという欲求は、そんなに起こらなかったのです。
聖エウフェミア女子修道院というのは、王都の近郊にある小さな施設ですが、王族や諸侯の庇護を受けています。お継母様は、そこの出身です。もちろん、修道女がいきなり結婚はできませんから、還俗してクリスタロ侯爵の養女となってから、お父様と結婚なさったのです。
お継母様がいわば里帰りされたのは、お父様の名代として、何かの式典に参列なさるため――ということになっていますが、そうでなかったのだろうと推測しています。
お継母様は、私を修道院へ入れようとなさっているのです。こんな淫らな娘は、どこへ嫁いでも伯爵家の名を貶める。ベルタの嫁ぎ先のブロンゾ子爵家に聞こえでもしたら破談になりかねないと――面と向かって私に言い放つのです。
まともな貴族の娘なら、十代の半ばで結婚するのが普通です。なのに、私には婚約者すら居ないのです。お継母様のせいです。
お継母様の思い通りになんかなりたくないです。修道院だなんて、絶対に厭です。清貧な生活に甘んじるのは構いませんが、神様の花嫁なんて真っ平です。だって、神様は生身の女性を肉体的に可愛がってはくださいませんから。
それくらいなら、お父様より年上どころか私の年齢の四倍もある(半世紀近い隔たりです)お爺様や、私の体重の三倍もある醜男と政略結婚させられるほうが、悲惨なだけに、悲劇の主人公でいられます。あ、数字が具体的なのは――そういう人物が実在しているからです。
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やっぱりですね。初っ端から読者を惹きつけるということは意識しております。ので、いきなり全裸ベッド磔です。
あ、今回は「地中海の東端に突き出た半島」が舞台ですので、そう簡単には英語を使いません。固有名詞はともかく、普通名詞では横文字を極力避けます。
まあ。人名とか架空の地名とかで、見当はつくでしょうけどね。
初っ端の回想シーンは、縄吉さんのフォトコラでも、特にお気に入りのやつの西洋バージョンです。この画像には、ブログ記事でも体感型バーチャル性活(つまりは自家発電)でも、何度もお世話になっております。

実際のところ、10/22現在は、第3章執筆中です。PLOTでは「娼婦への折檻」でしたが、尺が長くなるので、前半を「娼館での生活」に分割しました。それは、いずれ股の奇怪に。
Progress Report 0:公女巡虐
下の記事「不勉強でした」にある「画面騎乗イラマからの~」シーンを早急に書きたいばかりに、急遽スタートです。
シリアルナンバーはSMX514です。
「あれこれ」単発物が51番から始まって59番まできて、3桁にしたという。
====================
地中海北東の半島にあるラテリア王国。
近隣も含めて。1グロッツ(銀貨)=500ラーメ(銅貨)。重量では1:100だが、銀貨は大きい。1ラームは50円検討。馬1頭は50グロッツ。金貨は無い。価値が低い。
ラメーズ伯爵 マッキ・コルレアーニ 名称通り銅鉱山所有。
前妻 産褥(ということになっている)で死亡22
長女16 エレナ 乳母はとっくに解雇。
源氏名ダリア 受虐名ムルスas騾馬
侍女25 ジーナ
侍女25 エルザ
後妻(子爵令嬢)ロザンナ38
次女15 ベルタ マッキの実子?。
ソルディン子爵家長男と婚約。
長男13 ディーノ
次男 7 レナート
Chorus floles館
エロ衣装で踊ってパートナー
踊れない娘は給仕だが安い
娼館のマダム ペオニーナasボタン
先輩娼婦 ヴィオラasスミレ
逃亡失敗娼婦 ギプソフィラasカスミソウ
盗賊の少年頭目 ペピーノ
拷問吏 ジルド、ニノ、ウーゴ
聖エウフェミア女子修道院
男性5名 女性19名+エレナ
女子の一部はレズのサティスチン(年齢、キャリア無関係。素質)
ロザンナも、かつては。養女を経て後妻。夫は知らない。
パトロンが修行の手伝い。
女性は僧職に就けない。
修道院長以下の幹部は男性。
修道院長 名前未定
寮長(女)名前未定
修道尼:犬、猫、豚、馬、牛、猪、羊、山羊、驢馬、騾馬、鶏、鶉、鳩、雉
(ラテン語で)
Synopsis
・育まれた悦虐/初秋
就寝前。下穿き(紐パン)のうえに寝間着。お付きの侍女によるベッド大の字拘束。
悶々として寝付けない。昼も監視が厳しくて、十日も自分を慰めていない。加えて。鎖と枷による拘束が連想を惹起する。
2年前。
腰布一枚で一体枷引回し。処刑台上に2本の柱。枷を載せて固定。足も開脚拘束。全裸。
尻と背中に鞭。あとは放置。
凌辱が続く。一週間を耐えれば助命して娼奴。どうなったか知らない。
股間がじんじんして、自然と自慰を覚える。
妹に教えて継母に告げ口されて。
クリ鞭の罰。妹も見物させられて、以後、姉を見下す。
最初は手首を絹のハンカチで縛っていたが、ほどくのでだんだん厳しく。股を擦り合わせる自慰も見つかって、最終的には大の字。
・誘拐と凌辱と
継母は縁談潰し。
父親は修道院に難色。
↑追加は、U18対策。
妹は婚約。
修道院へ行かせると宣告。
将来的に修道院長になれば、子爵婦人より地位が上と妹が嫉妬。
子爵家へ挨拶に。姉の同行を妹が主張。
途中でエレナの馬車だけが脇道へ逸れて、あっさり誘拐。
馬の背に括り付けられて山の中。
三穴通姦。
「始末しろと言われてるだけ。殺すのは可哀想」
・娼婦への折檻
遠方の娼館。女将はエレナの正体は知らない。ズタボロ衣服で良家の子女とは。
賊の申告で非処女だから「なんでもあり」
たいていはノーマルなSEX。性感はあまり無いのに、「金で買われている」という意識で胸が疼く。
大枚をはたいた客。X字拘束で剃毛(これの休業補償)。
顔面騎乗イラマからの乳虐メコ虐。クリつねりで激痛と快感と。
しかし。深い傷は残さないように配慮。しょせんは「遊び」。遊ばれるのも悪くはないけど。
噂に聞く子爵家の婚儀。妹への疑念。
辿り着いても門前払いの公算大でも脱走。予定どおりに捕まって連れ戻される。
伯爵令嬢の主張を取り消せば赦される。
・盗賊への拷問
元通りの娼婦生活。
娼館で女将主導の誘拐。伯爵の部下が探索。ばれたら死刑確実。
袋詰め。馬車で運ばれる。
夜道。火矢の襲撃。ガキンチョ盗賊団。エレナを見つけて。
「仲間になるか、この場に置き去り」
娼婦の手管で少年頭目を篭絡。
「おまえは、俺の女房だ」
実態は盗賊団というより孤児院。寄付に頼る代わりに強奪。
幹部連が遠くの街まで盗品を捌きに。
夜道で川にはまった馬車。風で落ちた果実。
チビどもが我先。監督として付き添う。
実は罠。チビどもを逃がして捕まる。
逃すときは全裸で注目を一身に?
隠れ家など追及の拷問。
娼館での折檻と違って、白状できない。
それでも。いざとなれば身分を明かして……せせら笑われただけ。
100%合法に拷問される、自分が悪い。別種の悦虐。
・広場での処罰
(望まない救出)
処刑。
磔用の十字架に腕を広げて全裸緊縛。
前屈み。天を仰げない。
引回し。野次馬の中に仲間。こちらを見ていない男が数人。
「動いては駄目。見張がいる!」
殴られて猿轡。
広場。胴にも繩。開脚して横木の端から吊る。動かせるが自重で沈んで開脚。
そのまま放置。
夜。松明を掲げて一騎突入。
見張が対応しているうちに、徒歩の本命数人が梯子で救出。
「エレナ様!」
必要なら経緯説明。
匿われて半月の療養。
当初から予定の修道院へ。
もう、一生分の冒険と被虐。これからは余生……?
・淫虐の修道院
継母と男性修道士の出迎え。
「ずいぶんと遠回りしたものね」
男性がいる理由をちょい説明。
院長室へ。
シスターが呼ばれる。3人。
2人は裸スカラプリオ(幅狭)。
1人は全裸パイパン、無言の行の猿轡、神に一切の隠し事をしない後ろ手、常に祈りの合掌枷。全身鞭傷。
「おまえにふさわしい場所だろ。せっかくの心尽くしが台無しになるところ」
「 継母様はご存知の上で……修道院とは、どういう関係で?」
院長が説明するか( 分かり切った)謎のままにするかは、書きながら。
修道院に入るか、瞑想しなさい。
同じ拘束、猿轡、目隠し、耳栓。分厚いフェルトを貼った箱に入れられる。
妄想で濡らしながら耐え抜く。
消耗していないのに驚く。
「いったでしょ。この子には必要無いって」
自分の意志で修道院入りすると即答。改めて洗礼。「聖水」を浴びながら、悦虐の未来に歓喜。
====================
実は前作『ジュリア~背徳の恍惚』のリクエストを受ける前に、大筋は決めていて。
だから、冒頭でオナニー封じのX字磔(外国ですから「大の字」は不都合)を、リクエストで使い回したのです。というか、この写真が元ネタです。

あれこれ迷った点が二つ。
ひとつは、ヒロインの年齢。いえ、自動ポルノ電々の問題ではなく。
過激な拷問に耐えられるには、肉体がそれなりに性熟していないといけません。と、思うようになってきました。
ので、最初は威風堂々の18歳にしたのですが。どうも気が乗らない。
あれこれ迷いながら、16歳にしました。
二点目は人称。
これまでの例から考えれば、ヒロイン視点の三人称ですが、これも。前作(ロリマゾ)に引きずられた形で、一人称。が、しっくりきました。
自ら被虐を望む。ヒロイン一人称。ですが、U15ではないので「ロリマゾ・シリーズ」には該当しません。
わざわざ朱記する内容ではないよう。
それにしても、何か書いていないと落ち着かない。
「人生を無駄にしている」という強迫観念ですかね。
という訳で、鋭意恣意的に執筆中です。
たまにはお仕着せアフィリエイト
シリアルナンバーはSMX514です。
「あれこれ」単発物が51番から始まって59番まできて、3桁にしたという。
====================
地中海北東の半島にあるラテリア王国。
近隣も含めて。1グロッツ(銀貨)=500ラーメ(銅貨)。重量では1:100だが、銀貨は大きい。1ラームは50円検討。馬1頭は50グロッツ。金貨は無い。価値が低い。
ラメーズ伯爵 マッキ・コルレアーニ 名称通り銅鉱山所有。
前妻 産褥(ということになっている)で死亡22
長女16 エレナ 乳母はとっくに解雇。
源氏名ダリア 受虐名ムルスas騾馬
侍女25 ジーナ
侍女25 エルザ
後妻(子爵令嬢)ロザンナ38
次女15 ベルタ マッキの実子?。
ソルディン子爵家長男と婚約。
長男13 ディーノ
次男 7 レナート
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盗賊の少年頭目 ペピーノ
拷問吏 ジルド、ニノ、ウーゴ
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男性5名 女性19名+エレナ
女子の一部はレズのサティスチン(年齢、キャリア無関係。素質)
ロザンナも、かつては。養女を経て後妻。夫は知らない。
パトロンが修行の手伝い。
女性は僧職に就けない。
修道院長以下の幹部は男性。
修道院長 名前未定
寮長(女)名前未定
修道尼:犬、猫、豚、馬、牛、猪、羊、山羊、驢馬、騾馬、鶏、鶉、鳩、雉
(ラテン語で)
Synopsis
・育まれた悦虐/初秋
就寝前。下穿き(紐パン)のうえに寝間着。お付きの侍女によるベッド大の字拘束。
悶々として寝付けない。昼も監視が厳しくて、十日も自分を慰めていない。加えて。鎖と枷による拘束が連想を惹起する。
2年前。
腰布一枚で一体枷引回し。処刑台上に2本の柱。枷を載せて固定。足も開脚拘束。全裸。
尻と背中に鞭。あとは放置。
凌辱が続く。一週間を耐えれば助命して娼奴。どうなったか知らない。
股間がじんじんして、自然と自慰を覚える。
妹に教えて継母に告げ口されて。
クリ鞭の罰。妹も見物させられて、以後、姉を見下す。
最初は手首を絹のハンカチで縛っていたが、ほどくのでだんだん厳しく。股を擦り合わせる自慰も見つかって、最終的には大の字。
・誘拐と凌辱と
継母は縁談潰し。
父親は修道院に難色。
↑追加は、U18対策。
妹は婚約。
修道院へ行かせると宣告。
将来的に修道院長になれば、子爵婦人より地位が上と妹が嫉妬。
子爵家へ挨拶に。姉の同行を妹が主張。
途中でエレナの馬車だけが脇道へ逸れて、あっさり誘拐。
馬の背に括り付けられて山の中。
三穴通姦。
「始末しろと言われてるだけ。殺すのは可哀想」
・娼婦への折檻
遠方の娼館。女将はエレナの正体は知らない。ズタボロ衣服で良家の子女とは。
賊の申告で非処女だから「なんでもあり」
たいていはノーマルなSEX。性感はあまり無いのに、「金で買われている」という意識で胸が疼く。
大枚をはたいた客。X字拘束で剃毛(これの休業補償)。
顔面騎乗イラマからの乳虐メコ虐。クリつねりで激痛と快感と。
しかし。深い傷は残さないように配慮。しょせんは「遊び」。遊ばれるのも悪くはないけど。
噂に聞く子爵家の婚儀。妹への疑念。
辿り着いても門前払いの公算大でも脱走。予定どおりに捕まって連れ戻される。
伯爵令嬢の主張を取り消せば赦される。
・盗賊への拷問
元通りの娼婦生活。
娼館で女将主導の誘拐。伯爵の部下が探索。ばれたら死刑確実。
袋詰め。馬車で運ばれる。
夜道。火矢の襲撃。ガキンチョ盗賊団。エレナを見つけて。
「仲間になるか、この場に置き去り」
娼婦の手管で少年頭目を篭絡。
「おまえは、俺の女房だ」
実態は盗賊団というより孤児院。寄付に頼る代わりに強奪。
幹部連が遠くの街まで盗品を捌きに。
夜道で川にはまった馬車。風で落ちた果実。
チビどもが我先。監督として付き添う。
実は罠。チビどもを逃がして捕まる。
逃すときは全裸で注目を一身に?
隠れ家など追及の拷問。
娼館での折檻と違って、白状できない。
それでも。いざとなれば身分を明かして……せせら笑われただけ。
100%合法に拷問される、自分が悪い。別種の悦虐。
・広場での処罰
(望まない救出)
処刑。
磔用の十字架に腕を広げて全裸緊縛。
前屈み。天を仰げない。
引回し。野次馬の中に仲間。こちらを見ていない男が数人。
「動いては駄目。見張がいる!」
殴られて猿轡。
広場。胴にも繩。開脚して横木の端から吊る。動かせるが自重で沈んで開脚。
そのまま放置。
夜。松明を掲げて一騎突入。
見張が対応しているうちに、徒歩の本命数人が梯子で救出。
「エレナ様!」
必要なら経緯説明。
匿われて半月の療養。
当初から予定の修道院へ。
もう、一生分の冒険と被虐。これからは余生……?
・淫虐の修道院
継母と男性修道士の出迎え。
「ずいぶんと遠回りしたものね」
男性がいる理由をちょい説明。
院長室へ。
シスターが呼ばれる。3人。
2人は裸スカラプリオ(幅狭)。
1人は全裸パイパン、無言の行の猿轡、神に一切の隠し事をしない後ろ手、常に祈りの合掌枷。全身鞭傷。
「おまえにふさわしい場所だろ。せっかくの心尽くしが台無しになるところ」
「 継母様はご存知の上で……修道院とは、どういう関係で?」
院長が説明するか( 分かり切った)謎のままにするかは、書きながら。
修道院に入るか、瞑想しなさい。
同じ拘束、猿轡、目隠し、耳栓。分厚いフェルトを貼った箱に入れられる。
妄想で濡らしながら耐え抜く。
消耗していないのに驚く。
「いったでしょ。この子には必要無いって」
自分の意志で修道院入りすると即答。改めて洗礼。「聖水」を浴びながら、悦虐の未来に歓喜。
====================
実は前作『ジュリア~背徳の恍惚』のリクエストを受ける前に、大筋は決めていて。
だから、冒頭でオナニー封じのX字磔(外国ですから「大の字」は不都合)を、リクエストで使い回したのです。というか、この写真が元ネタです。

あれこれ迷った点が二つ。
ひとつは、ヒロインの年齢。いえ、自動ポルノ電々の問題ではなく。
過激な拷問に耐えられるには、肉体がそれなりに性熟していないといけません。と、思うようになってきました。
ので、最初は威風堂々の18歳にしたのですが。どうも気が乗らない。
あれこれ迷いながら、16歳にしました。
二点目は人称。
これまでの例から考えれば、ヒロイン視点の三人称ですが、これも。前作(ロリマゾ)に引きずられた形で、一人称。が、しっくりきました。
自ら被虐を望む。ヒロイン一人称。ですが、U15ではないので「ロリマゾ・シリーズ」には該当しません。
わざわざ朱記する内容ではないよう。
それにしても、何か書いていないと落ち着かない。
「人生を無駄にしている」という強迫観念ですかね。
という訳で、鋭意恣意的に執筆中です。
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Progress Report Final:SMX358
Progress Report 8:SMX358
今回は最終章のラストスパート直前までをご紹介。エンディングの10枚(になるか尺が伸びるか)ほど、ワンシーンは、ブログでは非公開とします。
ちなみに、ここまでで290枚ほど。300枚は超えますね。このくらいの長さが、筆者の適量なのかも。短編じゃないし、長編としては(単行本には)短いし。まあ、商業出版でも電子書籍だと長短まちまちですし。紙媒体でも、似たのを2本抱き合わせる手もあります。
実際問題、これだけ書き散らして発表しても声が掛からないのですから……PDFとして記憶装置の片隅に埋もれている作品が数十年数百年後に再発見されて再評価される……書いていて、アンダーバスト+15cmですな。
アンダーバスト+15cm=Cカップ。胸C。むなしい。
筆者は、己れの力量を見誤ってはいません。世間では祖父とSMで周知路線がメインですから、逆張りもいいとこですが、それはともかく。
商業出版されておかしくないレベルだと自負しています。
しかし。それではデビューできないのです。出来ませんでした。FでもMでも。
売れっ子作家が書いた作品Aと、無名の作家が書いた作品A’とが、同程度の出来だとすれば。編集者はAを選ぶに決まっています。企画の時点で、最低でもどれくらい売れるか予想できますから。
新人がデビューするには、既存の作家に無い「何か」が必要なのです。
古い(筆者としては生々しい)話ですが。新井素子がデビューしたとき
「そこらの女子高生が使っている文体」と酷評する向きもありましたが。その文体で小説を書いたのは、彼女が初めてです。
まあ。デビューのハードルは近年格段に低くなっています。ニャロウとかで何百万PVいけば、即です。
とはいえ。読者受けするジャンルを書こうとは思いません。書いたところで上滑りするとは分かっていますが。それ以上に。古臭い文学青年じみてはいますが、内的必然性というやつです。
ああ、やめやめ。こんな辛気臭い話、やんぴ。
気分転換に、平日なら勤務中の時間から酒を啖ってやる。んで、明日は3時起きで書きジャブろう。(書き殴ると文章が荒れるからジャブくらいで)。
========================================
二体の生贄
そして火曜日。私への聖礼典は午後から始まります。町長様にしても頭取様にしても、お仕事があります。偉い人たちですから、御自分の裁量で早上がりは出来ますが、朝は出勤していないと不都合があるらしいです。
今日、私を虐めて/もう自分に嘘をつくのはやめました/くださるのは、もちろん父様と、先に挙げたおふた方と牧場主様。と、もうおひとり。フェビアンヌさんです。教区長様の名代として馬無し馬車で駆け付けてくださいました。運転手さんも一緒ですが、彼は教区長様のいらっしゃらない場では奥様の裸を見ることすら許されていないのだそうです。サロンで時間を潰して、ついでに裏サロン(この言葉の意味も、だいたい分かるようになりました)で遊んできなさいと、フェビアンヌさんから臨時のお小遣いをもらって、町へ出掛けて行きました。
前の二回と比べると小人数ですが、狭い小集会所に大道具を据え付けたので、かろうじてブルウィップを振り回せる空間が残るだけです。
ジャックには、絶対に近づいてはいけないと、父様が厳重に言い渡しておいて。聖礼典が始まります。
私が全裸にさせられたのは当然ですが、フェビアンヌさんも上半身だけ裸になりました。下半身はこの前と同じで、脚に密着した乗馬ズボンと拍車付きのブーツです。
私の聖刻は、一寸見には分からないくらい薄くなっていますが、フェビアンヌさんのは真新しいです。ということは、今日は聖礼典を施してもらう必要が無い。私だけで、すべての鞭と聖なる肉棒を引き受けなければなりません。といっても、たった四本です。鞭は五本かもしれませんけれど。
ここまで考えて、ずいぶんと変わってしまった自分に呆れました。四本のペニスを受け挿れるなんて……乱交、いえ輪姦です。娼婦ならともかく、ふつうの女性だったら、生涯に一度たりとも体験することさえ絶対にありません。なのに、わたしときたら……先週はひと晩で十人もの男性に犯されたのですから。
「まだ、木馬は使ってらっしゃらないのね。これを乗りこなせないようじゃ、一人前のマゾヒストにはなれないわよ」
「それでは、姐さんがお手本を示しちゃどうかな。せっかく乗馬の支度をしているのだから」
「きょうのあたしは、夫の名代だよ。サディスチンって知ってる?」
私は知りません。でも、皆様はご存じのようです。
そんな遣り取りがあって、私が三角木馬に乗せられることになりました。
「ロデオと違って、手放しで乗るのがルールなのよ」
そんな理屈で、私は縛られました。背中にねじ上げられた手首に鎖が巻き付き、さらに胸まで回されて乳房を上下からぎちぎちに絞られました。足を踏ん張っていないと、鎖の重みで転んでしまいそうです。
鎖が滑車で巻き上げられて、私は木馬を跨らせられました。
ちゃり、ちゃり、ちゃり……少しずつ下ろされていきます。木馬の表面が内腿を擦ります。そして、鋭い稜線がクレバスを割って。
「くうう……痛い」
鞭で叩かれるような爆発的な痛みではありません。吊り下ろされるにつれて、鈍い痛みがだんだん強く鋭くなっていきます。私を吊っている鎖が弛むと、全体重ばかりか身体を縛っている鎖の重みまでが股間に集中します。
「痛い……痛い痛い!」
叫んでしまいました。涙がこぼれます。でも、私は赦しを乞いません。無駄だと分かり切っているからです。それに……ほんとうに赦してほしいのか、自分の本心が分からないのです。この激痛を向こうには、神様の恩寵か淫魔の悪戯かは知りませんが、至福の境地が待っているような予感がしているのです。
「驚いたわね」
フェビアンヌさんが――呆れているのではなく、褒めてくださっているように聞こえました。
「初めて乗せられて、下ろしてくれって懇願しなかった女はいなかったわよ。このあたしも含めてね」
「それだけ、こいつは淫魔に魅入られてるってことかね」
「違うわ」
牧場主様の質問をフェビアンヌさんがきっぱりと否定しました。
「この子は天使の恩寵に浴しているのよ。被虐天使の恩寵にね」
「では、エクソシストはもはや不要ですね」
もしも真実に気づく前の私でしたら、父様の言葉を天上の調べのごとくに聞いていたでしょうけれど。今の私は、失望しか感じませんでした。でも、それは早とちりでした。
「その代わり――愛娘を天使に捧げなければなりませんね」
「そうね。たとえば……」
フェビアンヌさんが、私の後ろへまわって両手で腰をつかみました。
「こんなふうにね!」
すごい力で私を揺すりました。びちちっと、クレバスの奥が裂けるような鮮烈な激痛が奔ります。
「ぎゃわあああっ……ああっ……はあああ」
フェビアンヌさんが手を放すと、激痛が薄らいでいって、そこに甘い疼きが忍び寄ります。これが、被虐天使の恩寵なのでしょう。
「なるほど。では、これも天使様への奉仕かな」
牧場主様がブルウィップを持って私の斜め前に立たれました。
ぶううん、バッジイイイン!
「きゃあああっ……あああ」
鎖に縊り出された乳房を水平に薙ぎ払われて、やはり激痛と甘美とが全身を駆け巡りました。
ぶううん、バッジイイイン!
ぶううん、バッジイイイン!
ぶううん、バッジイイイン!
悲鳴を上げる暇さえないほど立て続けに――木馬が食い込んでいる部分を鞭打たれ、背中を打ち据えられ、お尻を鞣されました。鞭打たれた瞬間には、どうしても身体が跳ねてしまいます。いっそう股間が切り裂かれて……内腿も木馬の表面も、赤く染まっていきます。
「あああ、あああああ……」
頭に霞が掛かります。赤と金色が絡み合った……恍惚の色です。
「ううむ。これほどの娘は、あの売春館にもおらんぞ。もはや、この娘自身が被虐天使というべきだ」
町長様が手放しで褒めてくださって……いるのでしょう。少なくとも、侮辱なさっているようには聞こえません。
そして、わたしは――幸せです。父様たちが淫魔に憑りつかれていようと、私が淫魔に捧げられる天使であろうと……きっと、それも神様の大いなる御計画なのでしょう。私は息絶えるまで虐められて、天国に召されるのです。それとも、業火に焼かれ続けるのでしょうか。その業火の奥にも、甘美が潜んでいるのではないでしょうか。
ばあん!
不意にドアが開け放たれて、ジャックが転げ込んできました。
「この餓鬼――いや、お坊ちゃんですかね。覗き見してやがりましたぜ。コックをしごきながらです」
町へ出掛けているはずの運転手さんです。そっぽを向いてしゃべっているのは、奥様の半裸を見ないためでしょうか。運転手さんはすぐにドアを閉めて、どすどすとわざと(でしょう)大きな足音を立てて去って行きました。
父様が、ことさらに怒った顔を作って、床に倒れているジャックの前に立ちはだかりました。
「決して近づくなと言い付けておいたぞ」
「あ、あの……ごめんなさい。こないだから、姉ちゃんが大人の人たちにいじめられてたから……心配になって……」
「ケツ丸出しでコックをしごきながらか?」
今も、ジャックの半ズボンは膝まで下がったままです。弁解の余地はありません。
父様がコックなんて下品な言葉を口にするなんて、ちょっとショックです。農場で飼っている雄の鶏だって、そうは呼ばないのに。
「娘の身体に近づけなくなった淫魔は、この子に目を付けたのかもしれませんね。詳しく調べてみましょう」
父様が言うのを聞いていて、これは仕組まれた罠ではないかと、疑うどころか確信しました。拷問道具を運ぶのにジャックを手伝わせたのも、運転手さんを町へ出掛けさせたのも――ジャックの好奇心をあおって覗き見させるためだったのです。完全に外から見えないようにしたはずのカーテンが、庭に面した一か所だけ閉じ切っていないなんて、あからさまが過ぎます。
「わしには、そういう趣味は無いぞ」
「同じくだな」
牧場主様も町長様も、男の子を虐める趣味は持ち合わせていないようです。フェビアンヌさんが招かれたのか押し掛けたのか、その理由が分かったような気がします。
といっても、荒仕事は男性の分担です。頭取様が父様を手伝って、ジャックを全裸にして梯子の拷問台に縛り付けました。
「ごめんなさい……これからは、いい子になります。ゆるしてよお……!」
「うるさい。黙らせろ」
牧場主様の言葉を待っていたかのように、フェビアンヌさんが動きました。私が脱いだ衣服の中からドロワーズを引っ張り出して、口に詰められる大きさに引き裂いたのです。もう、これで二着のドロワーズを破られました。最近は穿く機会が減っていますが、だから不要になったのではありません。むしろ、穿いている間は出血とかおりもので汚れやすく……なにをのん気なこと、言っているのでしょう。
襤褸布の詰め物を突き付けられて、ジャックは硬く口を閉じています。
口を開けろなんて、フェビアンヌさんは言いません。デリンジャーよりも小さくなっている彼のピストルを片手でつかむというより指の中に包み込むと、その指をくにゅくにゅと動かしたのです。
「あっ……むぶうう」
叫びかけた口に素早くボロ布が押し込まれました。ジャックは声を封じられたけれど、同時に、ピストルはコルトくらいになりました。もちろんバントラインスペシャルではありません。というか、デリンジャーも比喩です冗談です。大人だって、平常時はデリンジャーくらいのサイズですもの。
ジャックは、冗談どころではありません。まだペニスをしごかれ続けています。ミルクコーヒー色の肌を赤く染めて、懸命に腰をよじっています。もがけば、かえって刺激が強くなるだけなのに。
一分もしないうちに、ジャックが腰を痙攣させました。
「むうう……」
呻いて。ジャックの全身から力がぬけました。
「ちぇっ」
フェビアンヌさんが舌打ちしました。
「空砲かあ。さすがのあたしも、お子様と遊ぶ気にはなれないわよ」
「とはいえ、縮れ毛が芽生えていますな」
市長様と牧場主様の灰汁の強さに圧されている頭取様が、顔はそむけたまま、指だけでジャックの股間を差しました。
「ふん、剃るまでもあるまい」
牧場主様が、銀色の小さな箱を取り出しました。煙草の点火器具です。キャップを引き抜いて、内蔵されている小さな円形の燧石を親指で勢い良く回しました。
ボッ……マッチの何倍も大きな炎が燃え上りました。それをジャックの股間に近づけます。
「む゙ゔゔ、うう……」
ジャックは身をよじって逃れようとしますが、拷問台に拘束されているのですから、無駄な足掻きです。
「ジャック、おとなしくしてなさい。ピストルまで焼かれちゃうわよ」
牧場主様の手元が狂うのを恐れて、忠告してあげたのですが。大人たちと一緒になって弟を虐めているみたいな言い方になってしまいました。
でも、ジャックは私の言葉を素直に聞いてくれました。
あっという間に、炎がささやかなジャックの縮れ毛を燃やし尽くしました。
「んんっ……」
はたで見ているよりも熱くないのか、ジャックは微かに身じろぎしただけです。
「では、針による魔女判定か。どうも、気が乗らんな」
町長様も頭取様も顔を見合わせています。
「あたしに遊ばせてもらえるかしら」
フェビアンヌさんが、ハンドバッグの中から針のケースを取り出しました。こんな物を持参しているのですから、最初からジャックを虐めるつもりだったのでしょう。でも、すぐには針を使いませんでした。
「これから何をするか、教えてあげるわね」
しばらく放置されていた私に、男の人たちが群がります。木馬から下ろされ、鎖の縛めもほどかれて、ジャックの横に立たされました。
「手は頭の後ろで組んでいなさい」
わけが分からないまま(虐められるのだということだけは分かっています)命じられたポーズを取りました。
「お姉ちゃんだから、泣いたりしないわよね?」
フェビアンヌさんが針を、私の右の乳首に近づけます。
「…………」
私は歯を食い縛りました。
ぷつっ……最初の針が、左の乳首を水平に貫きました。
「くっ……」
大袈裟な悲鳴は上げません。ジャックを怖がらせるだけです。それに……どうせ、ジャックは泣き叫ぶでしょう。フェビアンヌさんの目論見通りになるのは悔しいですが、姉としての貫禄(?)を示したい気持ちもありました。
ぷつっ……ぶすう!
「きひいっ……」
垂直に刺された二本目は堪えましたが、乳房の奥まで刺し通された三本目には、すこしだけ悲鳴をこぼしました。
左の乳首にも同じ仕打ちをされて。予想していた通りの命令が来ました。
「もっと脚を開いて腰を突き出しなさい」
「あ、あああ……」
凄絶な激痛の予感に、声が震えます。なのに、ヴァギナの奥が熱くなってきます。淫らな汁がにじむのが分かります。激痛を突き抜けた彼方にある至福。それを、身体が覚えているのです。
フェビアンヌさんの冷たい指が、淫魔のペニスをつまんで……
ぶつっ……!
「きひいっ……!?」
乳首を指されたのと同じくらいの痛みしかありませんでした。覚悟していたよりも痛くなかったです。視線を下に落として、その理由が分かりました。中身を押し込むようにして、莢だけを突き刺してくださったのです。ほっとしましたけれど、ちょっと不満も/なんでもないです。木馬に切り裂かれて、股間はすでに血まみれです。
なのに、二本目は――容赦なく、中身もろともに突き刺してくださいました。
「びい゙い゙い゙い゙っ……!」
歯を力いっぱい噛みしめて、ぎちぎちと軋りました。
クロスして刺された針に指を添えて、フェビアンヌさんが淫魔のペニスを引っ張ります。その先端に三本目の針が……
「かはっ……!」
悲鳴を上げたくないから、あらかじめ息を吐いておきました。だから、絶叫しても声にはなりませんでした。
「はあ、はあ、はあ……」
息をするたびに針が小さく揺れて、新たな鋭い痛みを送り付けてきます。
「あら、困ったわね」
フェビアンヌさんは愉しそうに嗤っています。表情と台詞とが一致していません。
「もう、こんな針しか残ってないわ」
フェビアンヌさんがケースから抜き出したのは、四インチを超える長さの、針金よりも太い針です。
「これは、おまえに刺した針の十倍は痛いわよ。でも、使うしかないかな?」
受け入れてもらえる可能性のある答えは、ひとつきりです。
「私に刺した針を抜いて、ジャックに使ってやってください」
自分が楽になって、その痛みを弟に押し付ける。でも、ジャックの痛みを軽くしてやるには、それしか方法はありません。
「あら、名案ね」
拒否されると思っていたので、私はほっと……しませんでした。何倍ものしっぺ返しが企まれている。それくらい、これまでの経験で分かります。
「それじゃ、おまえの手で、小さな可愛い弟のコックに針を刺してやりなさい」
「…………?!」
ひどい……残酷です。私自身は、どんな痛いことだろうと羞ずかしいことだろうと、何をされたって我慢します。至福の境地が……なんでもないです。
でも、私の手で弟を苦しめるなんて。これまででもっとも残酷な拷問です。
なのに。独占欲とでもいうのでしょうか。他人の手で苦しめられるくらいなら、この私の手で虐めてあげたい。そんな恐ろしい考えが忍び寄ってきたのです。
私はジャックよりも体格が良く力も強いです。どちらかがどちらかを支配するなら、虐めるなら……ああ、そうか。フェビアンヌさんと私との関係が、そのまま私とジャックの関係に鏡写しです。
ぐにゅんと、心臓がねじ曲げられました。胸に込み上げてくる感情が、これまでとは違います。
「ねえ、ジャック……」
私はフェビアンヌさんが持っている太くて長い針をつまんで、ジャックのペニスに軽く押し付けました。
「こんな太い針を、この女の人に突き刺されたい?」
ジャックが、ぶんぶんと頭を横に振ります。
私は乳首から針を一本抜いて、ジャックの目の前にかざします。
「それとも、こっちをお姉ちゃんが刺してあげようか。お姉ちゃんが平気だったのは、ジャックも見てたでしょ?」
ぞくぞくっと、背中が震えました。男の人が、そしてフェビアンヌさんが、か弱い女の子である私を虐める妖しい悦びが、すこしだけ理解できたように思いました。
ジャックは首を横に振り掛けて、ふっと気迷いの表情を浮かべました。私の目をじっと見つめます。そして……
ああ、なんということでしょう。彼にも淫魔が憑りついているのです。首を振る代わりにペニスが鎌首をもたげたのです。私が鞭や針を目の前にして淫魔のペニスを固くしこらせるのと同じように。
「そう……それじゃ、お姉ちゃんが虐めてあげる」
本来なら、魔女判定をしてあげると言うべきなのでしょうが。誰ひとり――父様さえも、訂正してくれません。聖礼典の虚構を捨て去り、敬虔な信徒の仮面さえもかなぐり捨てた淫魔の使徒たち。私と弟は、淫魔に捧げられる被虐天使なのです。これまでにないくらいに、気持ちが昂ぶっています。乳首も淫魔のペニスも、ジャックに負けないくらいに硬く尖っていきます。
私は右手に針を持ったまま、ジャックのペニスに手を伸ばしました。聳え立っているのではなく、お腹に密着しています。
どれくらい固いのかな。勃起したペニスを三つの穴には何度も挿れていただきましたが、手に握ってみたことはありません。
表面はわずかに軟らかいけれど、鉄の芯が通っている感じです。力を入れて、下へ曲げてみます。
ジャックはびくっと腰を震わせましたが、おとなしくしています。
どういう具合に針を刺したら痛みが少ないでしょうか。フェビアンヌさんが私でお手本を示してくれたように、スラッグ弾を避けて莢だけを突き刺すのが良いでしょう。
でも、それはできませんでした。
「そのまま、包皮を剥いてグランスを露出させなさい」
命令されては、従うしかありません。簡単に剥けました。地肌の色とは違うピンク色の小さなスラッグ弾が顔を出します。
自分の身体に針を刺されたときの経験から、中心まで貫かれるとつらいのは分かっています。周辺部の張り出している部分を狙って、一気に突き刺しました。
「ま゙わ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
びくんっと腰が跳ねて。その動きがいっそうの激痛を招いて、ジャックは背中を弓なりに反らして腰を突き上げたまま凍りつきました。まだ声変わりしていない甲高い悲鳴が、口に詰められた私のドロワーズの切れ端に吸い込まれていきます。
たちまち、ペニスが萎んでいきます。それで筋肉(が、ペニスにもあるのでしょうか)が縮んで傷口をふさぎ、出血はごくわずかです。
「九本の針を、全部突き刺してやるのよ」
私は自分を高い所から見下ろしているような錯覚に捉われました。私が見守る中で、私は何も考えずに、自分の乳首から二本目の針を抜きました。
「それじゃ刺しにくいでしょ。大きくしてやりなさい」
莢をつまんでいる指を、くにゅくにゅと動かします。大きさはまるで違いますが、自分のやフェビアンヌさんを弄るのと同じ要領です。でも、ちっとも大きくなりません。
「お上品なことしてないで。舐めてやりなさい」
ふらふらっと跪いて。針を突き刺した部分を避けて、舌を這わせました。
「おや、興奮しとるようですな」
牧場主様の声が遠くから聞こえます。
「長年慈しんできたお子さんたちが、破廉恥で淫らで残酷な振る舞いをしているのですよ。養い親として平気なのですか?」
議長様の非難に、牧場主様が反駁なさいます。
「わしと同じということだ。牧師さんは、この餓鬼どもを人間とは思っておらんのだ。人語を介する家畜と野獣。それが本心なのだ」
「違う」
父様が、きっぱりと否定なさいました。
「あなたは、猿の毛を剃って赤裸にして、それが面白いのですか。猿を鞭打って、興奮しますか。山羊のケツにコックを突っ込んで満足できますか。この子たちは人間だからこそ、天使にも昇格できるのです」
人間が天使になるだなんて、牧師様のお言葉とは思えませんけれど。私とジャックを愛してくださっているからこそ、このような残酷な目に遭わすのだということは分かりました。いえ、羞恥と苦痛の彼方にある至福の境地に導いてくださるのです。
私とフェビアンヌさんは、それを知っています。きっとジャックも体験することでしょう。
私は真心を込めて、ジャックのペニスをしゃぶりました。啜りました。私の誠意と父様の愛情とが伝わったのでしょう。ペニスが半分くらいは硬く大きくなりました。これだけあればじゅうぶんです。
予告無しで。先端を口に咥えたまま、二本目の針を突き刺しました。最初に突き刺したのと反対側の部分です。
「ま゙わ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
ジャックは最初と同じくらいに絶叫して、最初と同じくらいに腰を跳ねました。
また萎んだので、また舐めてやります。グランスの両側に針が刺さっているので、裏筋を中心に舌を這わせました。おCこの出る穴も舌の先でつついてやりました。牝の本能でしょうか――自然と思いついて、ボールを揉んでやりました。
じきに硬くなってきます。私は三本目の針を乳首から抜きました。ジャックへの贖罪と自分の愉しみ/これも訂正しません/とで、乳房の奥深くへ向かって突き刺さっている針ではなく、水平に貫いているのを選びました。それを……ちょっと考えてから、グランスの上面から中心へ向かって深く突き立てます。苦痛が大きければ、それだけ至福の境地への道が近くなるからです。
「も゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙っ……!!」
一瞬で声変わりしたのかと思ったほど野太い絶叫でした。
「ペニスだけじゃなく、ナッツも調べないと駄目よ」
そうでした。魔女判定です。淫魔が潜みそうな部分には隈なく針を突き刺さなければなりません。
勃起させる必要がないので、四本目と五本目は立て続けに左右のボールに刺しました。袋の中で小さな玉がくにゅんと逃げるので、皮を貫通しただけです。それでも、ジャックは(グランスほどではありませんが)苦痛を悲鳴で訴えます。
これくらいの悶え方では至福の境地は遠いと思います。だから六本目は、萎えたままのペニスをつまんで引っ張って、裏筋の真上に突き刺しました。
「ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!」
失敗しました。いえ、大成功なのかも。刺したところから噴水のように血が迸りました。
私は、むしろ呆気に取られていましたが、フェビアンヌさんがうろたえました。
「ストップ! やり過ぎよ!」
私を突きのけて、ジャックの手当てに取り掛かります。
私は、突き飛ばされた弾みで床に転がって、三つの頂点に突き刺さったままの針が、いっそう深く刺さってきて……それなのに至福の境地には至らず、とにかく凄まじい激痛にのたうちまわりました。もしかすると、私の無慈悲への神罰だったかもしれません。
無慈悲。そうなのです。太い針よりは細い針を。あまり痛くないように手加減をしてやって――などという配慮を忘れて、ジャックが泣き叫ぶのを愉しんでいたのでした。なんとむごい姉なのでしょう。弟の何十倍も酷い目に遭わされなければ――というのも、淫らな自分勝手な欲望かもしれません。
フェビアンヌさんの治療は、いつも乱暴です。傷口を消毒して、すごく沁みるヨードチンキを塗って、それでおしまいです。出血が止まるまでペニスの付け根を握っていてくれたのは、親切なのか意地悪なのか分かりません。だって、あれこれ刺激して、ずっと勃起させていたのですから。
「この子には、まだ淫魔は憑りついていないようですね」
父様が真面目くさって、牧師らしい物言いをします。でも、もう騙されません。
「しかし、念のために聖刻を施しておきましょう」
ほら、ね。
「それも奥さんの仕事だろうな。こんな餓鬼を泣かしても面白くはない」
「おや。ドーソンさんのお好みは野獣ですか。家畜は大切にしたいと?」
「わしが可愛がるのは牝犬だけだ。牝猫もか」
「皆様、このふたりが仮初でも姉弟だということをお忘れじゃない?」
「どういう意味だ?」
「ふふ……」
フェビアンヌさんの発案で、私とジャックは背中合わせに縛られました。後ろ手に縛られて、腋の下を回した縄でひとまとめにされたのです。私は残っていた針も抜かれて、ジャックは口の詰め物を取ってもらいました。そして、立たされて、首に滑車の鎖を巻かれました。それぞれの左足も高く吊り上げられました。先週にフェビアンヌさんが鞭打たれたときと同じポーズです。でも、転びかけると縛り首になるので、ずっと厳しい――と思ったのですが、互いに相手を支えられるので、フェビアンヌさんより楽かもしれません。
フェビアンヌさんがブルウィップを持って、私たちの真横に立ちます。
「どちらから鞭打ってほしいのかしら?」
私は迷うことなく――足を軸にして、肩でジャックの身体を押しのけるような動きで、フェビアンヌさんに背を向けました。ジャックは私に押されて、否応なく正面をフェビアンヌさんに曝します。
「姉ちゃん……?」
ジャックが心細げな声を発しました。
「ふふ……弟思いのお姉さんだこと」
からかっているつもりでしょうが。ほんとうにジャックのことを思い遣るからこそ、最初の生贄に弟を差し出したのです。最後までフェビアンヌさんが鞭打ちを続けるとは思えません。男の人の鞭は、フェビアンヌさんより厳しいに決まっています。そして、最悪の場合、四人が順番ということも有り得ます。
最初の楽な部分を弟に譲って、後はすべて私が引き受けるつもりです。それでは、弟は至福の境地に達さないかもしれませんけれど……私だって、最初は痛くて苦しくて羞ずかしかっただけです。
「恨むなら、薄情なお姉ちゃんを恨んでね」
視界の端をブルウィップが掠めます。
ひゅ、しゅ……バチイン!
鞭がもつれながら、肌を弱く叩いただけです。
「きゃあっ、いたい……!」
なのにジャックは(私よりも)か弱い女の子みたいな悲鳴を上げました。
しゅる゙……ベシン!
「いたいっ……やめてよお」
鞭の先端が回り込んできて、私にも当たります。ちっとも痛くありません。しかも、フェビアンヌさんが狙っているのは胸やお腹です。
しけった鞭の音と大袈裟なジャックの悲鳴。私は、なんだか白けた気分です。見ている人たちも同じだったのでしょう。
「奥さんは、鞭打たれるほうが似合っとる」
いちばん怖い牧場主様が、奥様の手から鞭を取り上げました。
どうしようかと、迷います。私やフェビアンヌさんを打ったのと同じ強さで叩かれたら、ジャックは泣くだけでは済まないでしょう。でも、同じ人間を鞭打って、反応の違いを見せつけたいとお考えだと思います。ジャックだって、一発くらいは本物の鞭の痛みを知っておくべきです。
ひゅううんん。壁に当たるすれすれまで、牧場主様は大きく鞭を振り回しました。ジャックが竦み上がるのが、背中に伝わります。
「そおらよっ……」
ぶゅうんん、バッヂイイン!
「ぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
私の右の太腿の付け根近くに鞭の先が当たりました。互いに左足を真上に吊り上げられたポーズでの背中合わせなのですから、鞭はジャックの股間に……
がくんと、ジャックの体重が背中に掛かりました。気を失ったのでしょう。私は右脚一本で踏ん張り、後ろで縛られている手も使って、ジャックを持ち上げようとします。首に鎖を巻かれているのだから、そうしないと窒息してしまいます。
「たった一発で寝んねなの? お姉ちゃんはケロッとしてたわよ。あたしなんか、五発も食らったんだから」
ケロッとなんかしていません。それに、女性は股間を蹴り上げられてもすごく痛いだけですが、男性は悶絶します。
「ほら、起きなさいよ」
フェビアンヌさんがジャックの前に立って、ぱちんぱちんと頬を叩いた――のまでは分かりましたけれど、後は良く分かりません。ペニスを刺激しているのかもしれません。
「じれったいわね」
フェビアンヌさんがジャックの顔にかぶりつきました。ふううっと息を吹き込んでいます。
「げふっ……くしゅんっ……かはっ!」
ジャックが意識を取り戻しました。人工呼吸でもしてもらったのでしょうか。
「ふふん。そういうやり方があったか。ビッチのほうには、してやってもいいな」
「口はふさいでおくのよ。それと、あまり強く吹き込んでも駄目よ。唾が肺に入ったら、後で厄介なことになるから」
唾を鼻の穴に吹き込んだようです。なんて乱暴な蘇生法でしょう。看護学校では、こんな手当てを教えているのでしょうか。
「よし。目が覚めたところで、続きだぞ」
フェビアンヌさんが下がって、牧場主様がジャックの正面に立ちます。
「もう、ゆるしてよお。お姉ちゃん、助けて!」
涙声です。まだ早いとは思いますが、せめてドーソンさんの残酷な鞭だけは代わってあげましょう。
私はまた一本足で独楽のように身体を回して、ジャックと入れ替わりました。
「私に聖刻を施してください」
恐怖に声が震えています。膝が今にも砕けそうです。
彼の鞭は一発しか受けたことがありません。股間への猛烈な一発。深い傷は残りませんでしたが、鮮血が飛び散りました。何発も叩かれると、今度こそ女性器が使い物にならなくなるほどの傷を負うでしょう。
胸がきゅうんと絞られて、腰の奥が熱く滾ってきます。でも、それだけではありません。すごく誇らしい気分です。弟のためにみずからを犠牲にするという崇高な行為に酔い痴れています。
「よかろう。弟思いのおまえに免じて、わずか十発で赦してやる。ただし、黙って耐えるのだ。悲鳴も鳴き声も許さん。声を上げたら、あらためて十発を、可愛い弟にくれてやるからな」
私はドーソンさんの瞳を見つめながら頷きました。イエスと言ったら、声を上げたことになるかもしれないと判断したからです。
ドーソンさんが、腕を水平に保って後ろへ引きました。やっぱり、狙っている部位は恐れていた通りのところです。
ぶゅうんん、バッヂイイン!
「…………!!」
股間でダイナマイトが爆発したような衝撃です。全身が引き裂かれたと錯覚しました。息を吐き切っていたので、悲鳴は声になりませんでした。
「くっ……」
息が出来ません。首に鎖が食い込んできます。右足一本で立っているのに、股間を庇おうとしてその足を跳ね上げたのです。
足を伸ばしました。足の裏に床が触れましたが、膝に力が入りません。もがいていると、急に身体が持ち上がりました。ジャックが私の身体を支えてくれたのです。
私は、ようやく呼吸を取り戻しました。顔を俯けて股間を覗き込むと、たった一撃で真っ赤に染まっていました。ああ、神様/いえ、ここは淫魔に祈ったほうが良いかもしれません/女性器を破壊されてしまっては、あなたも愉しめないでしょう。だから、助けてください。
ドーソンさんが鞭を構えました。腕がすこし下がっています。私は、あわてて息を吐き出します。
ぶゅうんん、バッヂイイン!
「…………!」
ああ、淫魔様。ありがとうございます。鞭は斜め下から斜め上に、乳房を薙ぎ払ったのでした。太い鞭痕が乳房を横断して、血がにじんでいます。でも、肉を引き千切られたりはしていません。
私は心の中で淫魔様に感謝を述べて――深刻な罪悪感に陥りました。神様を裏切って、淫魔に救いを求めたのです。これ以上はない背徳です。私は地獄の業火に焼かれるに決まっています。
ぶゅうんん、バッヂイイン!
「…………!」
三発目は、バックハンドで乳房に叩き込まれました。浅い角度で鞭痕がクロスしました。
これまでのブルウィップは、ただ激烈に痛いだけで、至福の境地なんか欠片もありませんでした。そして四発目は……
しゅんんん、バッシュウンンンン!
最初よりも正確に、鞭の先端がクレバスに叩き込まれました。いえ、撫で上げて通り過ぎたのです。正確に淫魔のペニスを薙ぎ払ってくれました。
腰から全身に向けて、太くて甘い稲妻が飛び散りました。悲鳴を堪えるよりも、喜悦の声を封じるほうが、よほどつらいです。
息が苦しい。また、足が宙に浮いて喉を絞められています。このまま死んでもかまわない。それくらいに甘美な苦痛です。でも、ジャックが踏ん張ってくれました。
頭が朦朧として目が霞んで、床を踏みしめているのか雲を踏んでいるのかも分かりません。
しゅんんん、バッシュウンンンン!
「うあああああああっ……いいいっ!!」
不意打ちでした。甲高い声で、被虐への悦びを叫んでしまいました。
ずぐうっと、ヴァギナに太い刺激を感じました。すぐ目の前にドーソンさんが立っています。鞭を逆手に持って、グリップを挿入してくださっています。ぐりぐりと抉ってくださいます。
「声を出したな。では、ジャックに十発だ」
「ごめんなさい。もう二度と声を出しません。あらためて十発でいいですから、私に聖刻を施してください」
「ふふん……」
ドーソンさんがグリップを引き抜いて、私の唇にあてがいました。
私はその意図を理解して、グリップを咥えました。ペニスをしゃぶるのと同じくらいに丁寧に、それをしゃぶります。血の味がしました。でも、鮮血にしてはねっとりし過ぎています。淫らな汁が混じっているのでしょう。
最後に喉の奥までグリップを突き挿れてから、ドーソンさんは後ろに下がりました。そして、鞭を構えます。ああ、淫魔様。ありがとうございます。あと十発も、ブルウィップを受けられるのです。女性器が壊れてもかまいません。乳房が千切れてもかまいません。
しゅううん、バッチイン!
「いたいっ……!」
悲鳴はジャックです。私は、覚悟していたよりもずっと軽い、そして的外れな部位への鞭に、かえって驚いています。
次の一発は目をしっかり見開いて、ドーソンさんの挙動を観察しました。一歩ほど近寄っています。ブルウィップは中間部が私の脇腹を打って、くるんと回り込んでジャックを打ち据えました。でも、手加減してくださっています。ジャックの悲鳴も、そんなに切迫していません。
そして、改めての鞭打ちは三発だけで終わりました。
「チャーリイの言い草ではないが、こういうのはわしの性分に合わん。あとは任せる」
父様が、ほっとしたように頷かれました。私は苦痛と恍惚に忙しくて気づきませんでしたが、手加減してくれるように頼んでくださったのでしょう。
私とジャックは、いったん鎖から解放されました。そして二人別々に吊り直されたのです。ジャックは両手を頭上で縛られて。私は左足首だけに鎖を巻かれて逆さ吊りに。被虐の経験は私のほうがずっと積んでいますから、これくらいで公平かなと思います。
私の前には父様が、ジャックの前には頭取様が、それぞれブルウィップを持って立たれました。父様がジャックではなく私を選んでくださったことを、嬉しく思います。
私は片脚で逆さ吊りにされているので、遊んでいるほうの脚はどうしても折れ曲がってしまいます。せめて股間を隠さないようにと、膝を外へ向けました。父様の愛情がこもった鞭なら、喜んで受けます。
ジャックは顔を(彼の肌の色で可能な限りに)真っ青にして、唇もわななかせています。
「ついでに、ルーレットで遊んだらどうかな」
父様は困ったような顔をしましたが、手加減を頼んで聞いてもらっていますから、この提案までは拒否できない感じで頷きました。
牧場主様が私のヴァギナに指を(五本全部!)挿入しました。もう一方の手は、折り曲げた膝をつかみます。ジャックは議長様です。両手で腰を抱えました。
「せえの!」
掛け声とともに、私たちはぶん回されました。私は半回転の間、ヴァギナを指で掻き回されました。痛かっただけです。
すごい勢いで部屋が回転します。
しゅんんんっ、バチイン!
「きゃああっ……!」
脇腹に当たりました。まったくの不意打ちでした。
しゅんんんっ、バチイン!
「きゃっ……痛い!」
内腿です。どこに鞭が当たるか分からないので、悲鳴は驚きが半分です。半分は、父様への甘えです。もしも悲鳴にペナルティを課されるのなら、黙って耐えます。それとも、叫ぶかしら。だって、もう少しだけ厳しくて……なんでもないです。
しゅんんんっ、バチイン!
しゅんんんっ、バチイン!
しゅんんんっ、バチイン!
脹脛から腰に掛けて、縦に打ち下ろされました。ああ、これは股間を狙って外れたんだなと推測していたら、二発目がお尻の割れ目に当たって、三発目が正面からクレバスに食い込みました。
でも、牧場主様の鞭に比べると、明らかに手加減してくださっています。そして、じゅうぶんにスナップを利かせているので、痛みが爽やかです。
「うああっ……!」
「いたい、ゆるして!」
「いやだよ……やめてよ!」
ジャックは泣きじゃくっています。
手加減してくださっていても、繰り返し打たれると肌が裂けます。全身がアカム染まっていきます。
ジャックのほうは、血の色が分かりにくいせいもあるでしょうが、明らかに私よりも傷は浅いです。男の人にとっては、男の子を虐めるのは、女の子を虐めるよりも面白くないのでしょう。でも、逆は成り立ちません。フェビアンヌさんも、ジャックを虐めるより私を虐めるときのほうが、気合が入っていたように思います。
あらためて私に十発と宣告されてから、ドーソンさんは三発を打ちました。残りは私だけに七発のはずなのに――私もジャックも、十数発は鞭打たれました。もう、理屈も計算も無視されています。彼らが満足するまで、生贄は嬲られるのです。
鞭打ちが終わって床に下ろされて。それで、エクソシストに名を借りた淫虐は終わりではありませんでした。
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出来立てのほやほやです。今日は、ここまで。休日でも13枚しか捗りませんでした。本来は「捗」の字なんですね。「墓取る」とか「破瓜取る」とかふざけて書いていますが。
まあ、あまり進まなかったのは、いよいよBFの下準備に掛かったせいもあります。元ネタは下記の3点です。どんなのになるかは、想像がつくと思います。

ちなみに、ここまでで290枚ほど。300枚は超えますね。このくらいの長さが、筆者の適量なのかも。短編じゃないし、長編としては(単行本には)短いし。まあ、商業出版でも電子書籍だと長短まちまちですし。紙媒体でも、似たのを2本抱き合わせる手もあります。
実際問題、これだけ書き散らして発表しても声が掛からないのですから……PDFとして記憶装置の片隅に埋もれている作品が数十年数百年後に再発見されて再評価される……書いていて、アンダーバスト+15cmですな。
アンダーバスト+15cm=Cカップ。胸C。むなしい。
筆者は、己れの力量を見誤ってはいません。世間では祖父とSMで周知路線がメインですから、逆張りもいいとこですが、それはともかく。
商業出版されておかしくないレベルだと自負しています。
しかし。それではデビューできないのです。出来ませんでした。FでもMでも。
売れっ子作家が書いた作品Aと、無名の作家が書いた作品A’とが、同程度の出来だとすれば。編集者はAを選ぶに決まっています。企画の時点で、最低でもどれくらい売れるか予想できますから。
新人がデビューするには、既存の作家に無い「何か」が必要なのです。
古い(筆者としては生々しい)話ですが。新井素子がデビューしたとき
「そこらの女子高生が使っている文体」と酷評する向きもありましたが。その文体で小説を書いたのは、彼女が初めてです。
まあ。デビューのハードルは近年格段に低くなっています。ニャロウとかで何百万PVいけば、即です。
とはいえ。読者受けするジャンルを書こうとは思いません。書いたところで上滑りするとは分かっていますが。それ以上に。古臭い文学青年じみてはいますが、内的必然性というやつです。
ああ、やめやめ。こんな辛気臭い話、やんぴ。
気分転換に、平日なら勤務中の時間から酒を啖ってやる。んで、明日は3時起きで書きジャブろう。(書き殴ると文章が荒れるからジャブくらいで)。
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二体の生贄
そして火曜日。私への聖礼典は午後から始まります。町長様にしても頭取様にしても、お仕事があります。偉い人たちですから、御自分の裁量で早上がりは出来ますが、朝は出勤していないと不都合があるらしいです。
今日、私を虐めて/もう自分に嘘をつくのはやめました/くださるのは、もちろん父様と、先に挙げたおふた方と牧場主様。と、もうおひとり。フェビアンヌさんです。教区長様の名代として馬無し馬車で駆け付けてくださいました。運転手さんも一緒ですが、彼は教区長様のいらっしゃらない場では奥様の裸を見ることすら許されていないのだそうです。サロンで時間を潰して、ついでに裏サロン(この言葉の意味も、だいたい分かるようになりました)で遊んできなさいと、フェビアンヌさんから臨時のお小遣いをもらって、町へ出掛けて行きました。
前の二回と比べると小人数ですが、狭い小集会所に大道具を据え付けたので、かろうじてブルウィップを振り回せる空間が残るだけです。
ジャックには、絶対に近づいてはいけないと、父様が厳重に言い渡しておいて。聖礼典が始まります。
私が全裸にさせられたのは当然ですが、フェビアンヌさんも上半身だけ裸になりました。下半身はこの前と同じで、脚に密着した乗馬ズボンと拍車付きのブーツです。
私の聖刻は、一寸見には分からないくらい薄くなっていますが、フェビアンヌさんのは真新しいです。ということは、今日は聖礼典を施してもらう必要が無い。私だけで、すべての鞭と聖なる肉棒を引き受けなければなりません。といっても、たった四本です。鞭は五本かもしれませんけれど。
ここまで考えて、ずいぶんと変わってしまった自分に呆れました。四本のペニスを受け挿れるなんて……乱交、いえ輪姦です。娼婦ならともかく、ふつうの女性だったら、生涯に一度たりとも体験することさえ絶対にありません。なのに、わたしときたら……先週はひと晩で十人もの男性に犯されたのですから。
「まだ、木馬は使ってらっしゃらないのね。これを乗りこなせないようじゃ、一人前のマゾヒストにはなれないわよ」
「それでは、姐さんがお手本を示しちゃどうかな。せっかく乗馬の支度をしているのだから」
「きょうのあたしは、夫の名代だよ。サディスチンって知ってる?」
私は知りません。でも、皆様はご存じのようです。
そんな遣り取りがあって、私が三角木馬に乗せられることになりました。
「ロデオと違って、手放しで乗るのがルールなのよ」
そんな理屈で、私は縛られました。背中にねじ上げられた手首に鎖が巻き付き、さらに胸まで回されて乳房を上下からぎちぎちに絞られました。足を踏ん張っていないと、鎖の重みで転んでしまいそうです。
鎖が滑車で巻き上げられて、私は木馬を跨らせられました。
ちゃり、ちゃり、ちゃり……少しずつ下ろされていきます。木馬の表面が内腿を擦ります。そして、鋭い稜線がクレバスを割って。
「くうう……痛い」
鞭で叩かれるような爆発的な痛みではありません。吊り下ろされるにつれて、鈍い痛みがだんだん強く鋭くなっていきます。私を吊っている鎖が弛むと、全体重ばかりか身体を縛っている鎖の重みまでが股間に集中します。
「痛い……痛い痛い!」
叫んでしまいました。涙がこぼれます。でも、私は赦しを乞いません。無駄だと分かり切っているからです。それに……ほんとうに赦してほしいのか、自分の本心が分からないのです。この激痛を向こうには、神様の恩寵か淫魔の悪戯かは知りませんが、至福の境地が待っているような予感がしているのです。
「驚いたわね」
フェビアンヌさんが――呆れているのではなく、褒めてくださっているように聞こえました。
「初めて乗せられて、下ろしてくれって懇願しなかった女はいなかったわよ。このあたしも含めてね」
「それだけ、こいつは淫魔に魅入られてるってことかね」
「違うわ」
牧場主様の質問をフェビアンヌさんがきっぱりと否定しました。
「この子は天使の恩寵に浴しているのよ。被虐天使の恩寵にね」
「では、エクソシストはもはや不要ですね」
もしも真実に気づく前の私でしたら、父様の言葉を天上の調べのごとくに聞いていたでしょうけれど。今の私は、失望しか感じませんでした。でも、それは早とちりでした。
「その代わり――愛娘を天使に捧げなければなりませんね」
「そうね。たとえば……」
フェビアンヌさんが、私の後ろへまわって両手で腰をつかみました。
「こんなふうにね!」
すごい力で私を揺すりました。びちちっと、クレバスの奥が裂けるような鮮烈な激痛が奔ります。
「ぎゃわあああっ……ああっ……はあああ」
フェビアンヌさんが手を放すと、激痛が薄らいでいって、そこに甘い疼きが忍び寄ります。これが、被虐天使の恩寵なのでしょう。
「なるほど。では、これも天使様への奉仕かな」
牧場主様がブルウィップを持って私の斜め前に立たれました。
ぶううん、バッジイイイン!
「きゃあああっ……あああ」
鎖に縊り出された乳房を水平に薙ぎ払われて、やはり激痛と甘美とが全身を駆け巡りました。
ぶううん、バッジイイイン!
ぶううん、バッジイイイン!
ぶううん、バッジイイイン!
悲鳴を上げる暇さえないほど立て続けに――木馬が食い込んでいる部分を鞭打たれ、背中を打ち据えられ、お尻を鞣されました。鞭打たれた瞬間には、どうしても身体が跳ねてしまいます。いっそう股間が切り裂かれて……内腿も木馬の表面も、赤く染まっていきます。
「あああ、あああああ……」
頭に霞が掛かります。赤と金色が絡み合った……恍惚の色です。
「ううむ。これほどの娘は、あの売春館にもおらんぞ。もはや、この娘自身が被虐天使というべきだ」
町長様が手放しで褒めてくださって……いるのでしょう。少なくとも、侮辱なさっているようには聞こえません。
そして、わたしは――幸せです。父様たちが淫魔に憑りつかれていようと、私が淫魔に捧げられる天使であろうと……きっと、それも神様の大いなる御計画なのでしょう。私は息絶えるまで虐められて、天国に召されるのです。それとも、業火に焼かれ続けるのでしょうか。その業火の奥にも、甘美が潜んでいるのではないでしょうか。
ばあん!
不意にドアが開け放たれて、ジャックが転げ込んできました。
「この餓鬼――いや、お坊ちゃんですかね。覗き見してやがりましたぜ。コックをしごきながらです」
町へ出掛けているはずの運転手さんです。そっぽを向いてしゃべっているのは、奥様の半裸を見ないためでしょうか。運転手さんはすぐにドアを閉めて、どすどすとわざと(でしょう)大きな足音を立てて去って行きました。
父様が、ことさらに怒った顔を作って、床に倒れているジャックの前に立ちはだかりました。
「決して近づくなと言い付けておいたぞ」
「あ、あの……ごめんなさい。こないだから、姉ちゃんが大人の人たちにいじめられてたから……心配になって……」
「ケツ丸出しでコックをしごきながらか?」
今も、ジャックの半ズボンは膝まで下がったままです。弁解の余地はありません。
父様がコックなんて下品な言葉を口にするなんて、ちょっとショックです。農場で飼っている雄の鶏だって、そうは呼ばないのに。
「娘の身体に近づけなくなった淫魔は、この子に目を付けたのかもしれませんね。詳しく調べてみましょう」
父様が言うのを聞いていて、これは仕組まれた罠ではないかと、疑うどころか確信しました。拷問道具を運ぶのにジャックを手伝わせたのも、運転手さんを町へ出掛けさせたのも――ジャックの好奇心をあおって覗き見させるためだったのです。完全に外から見えないようにしたはずのカーテンが、庭に面した一か所だけ閉じ切っていないなんて、あからさまが過ぎます。
「わしには、そういう趣味は無いぞ」
「同じくだな」
牧場主様も町長様も、男の子を虐める趣味は持ち合わせていないようです。フェビアンヌさんが招かれたのか押し掛けたのか、その理由が分かったような気がします。
といっても、荒仕事は男性の分担です。頭取様が父様を手伝って、ジャックを全裸にして梯子の拷問台に縛り付けました。
「ごめんなさい……これからは、いい子になります。ゆるしてよお……!」
「うるさい。黙らせろ」
牧場主様の言葉を待っていたかのように、フェビアンヌさんが動きました。私が脱いだ衣服の中からドロワーズを引っ張り出して、口に詰められる大きさに引き裂いたのです。もう、これで二着のドロワーズを破られました。最近は穿く機会が減っていますが、だから不要になったのではありません。むしろ、穿いている間は出血とかおりもので汚れやすく……なにをのん気なこと、言っているのでしょう。
襤褸布の詰め物を突き付けられて、ジャックは硬く口を閉じています。
口を開けろなんて、フェビアンヌさんは言いません。デリンジャーよりも小さくなっている彼のピストルを片手でつかむというより指の中に包み込むと、その指をくにゅくにゅと動かしたのです。
「あっ……むぶうう」
叫びかけた口に素早くボロ布が押し込まれました。ジャックは声を封じられたけれど、同時に、ピストルはコルトくらいになりました。もちろんバントラインスペシャルではありません。というか、デリンジャーも比喩です冗談です。大人だって、平常時はデリンジャーくらいのサイズですもの。
ジャックは、冗談どころではありません。まだペニスをしごかれ続けています。ミルクコーヒー色の肌を赤く染めて、懸命に腰をよじっています。もがけば、かえって刺激が強くなるだけなのに。
一分もしないうちに、ジャックが腰を痙攣させました。
「むうう……」
呻いて。ジャックの全身から力がぬけました。
「ちぇっ」
フェビアンヌさんが舌打ちしました。
「空砲かあ。さすがのあたしも、お子様と遊ぶ気にはなれないわよ」
「とはいえ、縮れ毛が芽生えていますな」
市長様と牧場主様の灰汁の強さに圧されている頭取様が、顔はそむけたまま、指だけでジャックの股間を差しました。
「ふん、剃るまでもあるまい」
牧場主様が、銀色の小さな箱を取り出しました。煙草の点火器具です。キャップを引き抜いて、内蔵されている小さな円形の燧石を親指で勢い良く回しました。
ボッ……マッチの何倍も大きな炎が燃え上りました。それをジャックの股間に近づけます。
「む゙ゔゔ、うう……」
ジャックは身をよじって逃れようとしますが、拷問台に拘束されているのですから、無駄な足掻きです。
「ジャック、おとなしくしてなさい。ピストルまで焼かれちゃうわよ」
牧場主様の手元が狂うのを恐れて、忠告してあげたのですが。大人たちと一緒になって弟を虐めているみたいな言い方になってしまいました。
でも、ジャックは私の言葉を素直に聞いてくれました。
あっという間に、炎がささやかなジャックの縮れ毛を燃やし尽くしました。
「んんっ……」
はたで見ているよりも熱くないのか、ジャックは微かに身じろぎしただけです。
「では、針による魔女判定か。どうも、気が乗らんな」
町長様も頭取様も顔を見合わせています。
「あたしに遊ばせてもらえるかしら」
フェビアンヌさんが、ハンドバッグの中から針のケースを取り出しました。こんな物を持参しているのですから、最初からジャックを虐めるつもりだったのでしょう。でも、すぐには針を使いませんでした。
「これから何をするか、教えてあげるわね」
しばらく放置されていた私に、男の人たちが群がります。木馬から下ろされ、鎖の縛めもほどかれて、ジャックの横に立たされました。
「手は頭の後ろで組んでいなさい」
わけが分からないまま(虐められるのだということだけは分かっています)命じられたポーズを取りました。
「お姉ちゃんだから、泣いたりしないわよね?」
フェビアンヌさんが針を、私の右の乳首に近づけます。
「…………」
私は歯を食い縛りました。
ぷつっ……最初の針が、左の乳首を水平に貫きました。
「くっ……」
大袈裟な悲鳴は上げません。ジャックを怖がらせるだけです。それに……どうせ、ジャックは泣き叫ぶでしょう。フェビアンヌさんの目論見通りになるのは悔しいですが、姉としての貫禄(?)を示したい気持ちもありました。
ぷつっ……ぶすう!
「きひいっ……」
垂直に刺された二本目は堪えましたが、乳房の奥まで刺し通された三本目には、すこしだけ悲鳴をこぼしました。
左の乳首にも同じ仕打ちをされて。予想していた通りの命令が来ました。
「もっと脚を開いて腰を突き出しなさい」
「あ、あああ……」
凄絶な激痛の予感に、声が震えます。なのに、ヴァギナの奥が熱くなってきます。淫らな汁がにじむのが分かります。激痛を突き抜けた彼方にある至福。それを、身体が覚えているのです。
フェビアンヌさんの冷たい指が、淫魔のペニスをつまんで……
ぶつっ……!
「きひいっ……!?」
乳首を指されたのと同じくらいの痛みしかありませんでした。覚悟していたよりも痛くなかったです。視線を下に落として、その理由が分かりました。中身を押し込むようにして、莢だけを突き刺してくださったのです。ほっとしましたけれど、ちょっと不満も/なんでもないです。木馬に切り裂かれて、股間はすでに血まみれです。
なのに、二本目は――容赦なく、中身もろともに突き刺してくださいました。
「びい゙い゙い゙い゙っ……!」
歯を力いっぱい噛みしめて、ぎちぎちと軋りました。
クロスして刺された針に指を添えて、フェビアンヌさんが淫魔のペニスを引っ張ります。その先端に三本目の針が……
「かはっ……!」
悲鳴を上げたくないから、あらかじめ息を吐いておきました。だから、絶叫しても声にはなりませんでした。
「はあ、はあ、はあ……」
息をするたびに針が小さく揺れて、新たな鋭い痛みを送り付けてきます。
「あら、困ったわね」
フェビアンヌさんは愉しそうに嗤っています。表情と台詞とが一致していません。
「もう、こんな針しか残ってないわ」
フェビアンヌさんがケースから抜き出したのは、四インチを超える長さの、針金よりも太い針です。
「これは、おまえに刺した針の十倍は痛いわよ。でも、使うしかないかな?」
受け入れてもらえる可能性のある答えは、ひとつきりです。
「私に刺した針を抜いて、ジャックに使ってやってください」
自分が楽になって、その痛みを弟に押し付ける。でも、ジャックの痛みを軽くしてやるには、それしか方法はありません。
「あら、名案ね」
拒否されると思っていたので、私はほっと……しませんでした。何倍ものしっぺ返しが企まれている。それくらい、これまでの経験で分かります。
「それじゃ、おまえの手で、小さな可愛い弟のコックに針を刺してやりなさい」
「…………?!」
ひどい……残酷です。私自身は、どんな痛いことだろうと羞ずかしいことだろうと、何をされたって我慢します。至福の境地が……なんでもないです。
でも、私の手で弟を苦しめるなんて。これまででもっとも残酷な拷問です。
なのに。独占欲とでもいうのでしょうか。他人の手で苦しめられるくらいなら、この私の手で虐めてあげたい。そんな恐ろしい考えが忍び寄ってきたのです。
私はジャックよりも体格が良く力も強いです。どちらかがどちらかを支配するなら、虐めるなら……ああ、そうか。フェビアンヌさんと私との関係が、そのまま私とジャックの関係に鏡写しです。
ぐにゅんと、心臓がねじ曲げられました。胸に込み上げてくる感情が、これまでとは違います。
「ねえ、ジャック……」
私はフェビアンヌさんが持っている太くて長い針をつまんで、ジャックのペニスに軽く押し付けました。
「こんな太い針を、この女の人に突き刺されたい?」
ジャックが、ぶんぶんと頭を横に振ります。
私は乳首から針を一本抜いて、ジャックの目の前にかざします。
「それとも、こっちをお姉ちゃんが刺してあげようか。お姉ちゃんが平気だったのは、ジャックも見てたでしょ?」
ぞくぞくっと、背中が震えました。男の人が、そしてフェビアンヌさんが、か弱い女の子である私を虐める妖しい悦びが、すこしだけ理解できたように思いました。
ジャックは首を横に振り掛けて、ふっと気迷いの表情を浮かべました。私の目をじっと見つめます。そして……
ああ、なんということでしょう。彼にも淫魔が憑りついているのです。首を振る代わりにペニスが鎌首をもたげたのです。私が鞭や針を目の前にして淫魔のペニスを固くしこらせるのと同じように。
「そう……それじゃ、お姉ちゃんが虐めてあげる」
本来なら、魔女判定をしてあげると言うべきなのでしょうが。誰ひとり――父様さえも、訂正してくれません。聖礼典の虚構を捨て去り、敬虔な信徒の仮面さえもかなぐり捨てた淫魔の使徒たち。私と弟は、淫魔に捧げられる被虐天使なのです。これまでにないくらいに、気持ちが昂ぶっています。乳首も淫魔のペニスも、ジャックに負けないくらいに硬く尖っていきます。
私は右手に針を持ったまま、ジャックのペニスに手を伸ばしました。聳え立っているのではなく、お腹に密着しています。
どれくらい固いのかな。勃起したペニスを三つの穴には何度も挿れていただきましたが、手に握ってみたことはありません。
表面はわずかに軟らかいけれど、鉄の芯が通っている感じです。力を入れて、下へ曲げてみます。
ジャックはびくっと腰を震わせましたが、おとなしくしています。
どういう具合に針を刺したら痛みが少ないでしょうか。フェビアンヌさんが私でお手本を示してくれたように、スラッグ弾を避けて莢だけを突き刺すのが良いでしょう。
でも、それはできませんでした。
「そのまま、包皮を剥いてグランスを露出させなさい」
命令されては、従うしかありません。簡単に剥けました。地肌の色とは違うピンク色の小さなスラッグ弾が顔を出します。
自分の身体に針を刺されたときの経験から、中心まで貫かれるとつらいのは分かっています。周辺部の張り出している部分を狙って、一気に突き刺しました。
「ま゙わ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
びくんっと腰が跳ねて。その動きがいっそうの激痛を招いて、ジャックは背中を弓なりに反らして腰を突き上げたまま凍りつきました。まだ声変わりしていない甲高い悲鳴が、口に詰められた私のドロワーズの切れ端に吸い込まれていきます。
たちまち、ペニスが萎んでいきます。それで筋肉(が、ペニスにもあるのでしょうか)が縮んで傷口をふさぎ、出血はごくわずかです。
「九本の針を、全部突き刺してやるのよ」
私は自分を高い所から見下ろしているような錯覚に捉われました。私が見守る中で、私は何も考えずに、自分の乳首から二本目の針を抜きました。
「それじゃ刺しにくいでしょ。大きくしてやりなさい」
莢をつまんでいる指を、くにゅくにゅと動かします。大きさはまるで違いますが、自分のやフェビアンヌさんを弄るのと同じ要領です。でも、ちっとも大きくなりません。
「お上品なことしてないで。舐めてやりなさい」
ふらふらっと跪いて。針を突き刺した部分を避けて、舌を這わせました。
「おや、興奮しとるようですな」
牧場主様の声が遠くから聞こえます。
「長年慈しんできたお子さんたちが、破廉恥で淫らで残酷な振る舞いをしているのですよ。養い親として平気なのですか?」
議長様の非難に、牧場主様が反駁なさいます。
「わしと同じということだ。牧師さんは、この餓鬼どもを人間とは思っておらんのだ。人語を介する家畜と野獣。それが本心なのだ」
「違う」
父様が、きっぱりと否定なさいました。
「あなたは、猿の毛を剃って赤裸にして、それが面白いのですか。猿を鞭打って、興奮しますか。山羊のケツにコックを突っ込んで満足できますか。この子たちは人間だからこそ、天使にも昇格できるのです」
人間が天使になるだなんて、牧師様のお言葉とは思えませんけれど。私とジャックを愛してくださっているからこそ、このような残酷な目に遭わすのだということは分かりました。いえ、羞恥と苦痛の彼方にある至福の境地に導いてくださるのです。
私とフェビアンヌさんは、それを知っています。きっとジャックも体験することでしょう。
私は真心を込めて、ジャックのペニスをしゃぶりました。啜りました。私の誠意と父様の愛情とが伝わったのでしょう。ペニスが半分くらいは硬く大きくなりました。これだけあればじゅうぶんです。
予告無しで。先端を口に咥えたまま、二本目の針を突き刺しました。最初に突き刺したのと反対側の部分です。
「ま゙わ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
ジャックは最初と同じくらいに絶叫して、最初と同じくらいに腰を跳ねました。
また萎んだので、また舐めてやります。グランスの両側に針が刺さっているので、裏筋を中心に舌を這わせました。おCこの出る穴も舌の先でつついてやりました。牝の本能でしょうか――自然と思いついて、ボールを揉んでやりました。
じきに硬くなってきます。私は三本目の針を乳首から抜きました。ジャックへの贖罪と自分の愉しみ/これも訂正しません/とで、乳房の奥深くへ向かって突き刺さっている針ではなく、水平に貫いているのを選びました。それを……ちょっと考えてから、グランスの上面から中心へ向かって深く突き立てます。苦痛が大きければ、それだけ至福の境地への道が近くなるからです。
「も゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙っ……!!」
一瞬で声変わりしたのかと思ったほど野太い絶叫でした。
「ペニスだけじゃなく、ナッツも調べないと駄目よ」
そうでした。魔女判定です。淫魔が潜みそうな部分には隈なく針を突き刺さなければなりません。
勃起させる必要がないので、四本目と五本目は立て続けに左右のボールに刺しました。袋の中で小さな玉がくにゅんと逃げるので、皮を貫通しただけです。それでも、ジャックは(グランスほどではありませんが)苦痛を悲鳴で訴えます。
これくらいの悶え方では至福の境地は遠いと思います。だから六本目は、萎えたままのペニスをつまんで引っ張って、裏筋の真上に突き刺しました。
「ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!」
失敗しました。いえ、大成功なのかも。刺したところから噴水のように血が迸りました。
私は、むしろ呆気に取られていましたが、フェビアンヌさんがうろたえました。
「ストップ! やり過ぎよ!」
私を突きのけて、ジャックの手当てに取り掛かります。
私は、突き飛ばされた弾みで床に転がって、三つの頂点に突き刺さったままの針が、いっそう深く刺さってきて……それなのに至福の境地には至らず、とにかく凄まじい激痛にのたうちまわりました。もしかすると、私の無慈悲への神罰だったかもしれません。
無慈悲。そうなのです。太い針よりは細い針を。あまり痛くないように手加減をしてやって――などという配慮を忘れて、ジャックが泣き叫ぶのを愉しんでいたのでした。なんとむごい姉なのでしょう。弟の何十倍も酷い目に遭わされなければ――というのも、淫らな自分勝手な欲望かもしれません。
フェビアンヌさんの治療は、いつも乱暴です。傷口を消毒して、すごく沁みるヨードチンキを塗って、それでおしまいです。出血が止まるまでペニスの付け根を握っていてくれたのは、親切なのか意地悪なのか分かりません。だって、あれこれ刺激して、ずっと勃起させていたのですから。
「この子には、まだ淫魔は憑りついていないようですね」
父様が真面目くさって、牧師らしい物言いをします。でも、もう騙されません。
「しかし、念のために聖刻を施しておきましょう」
ほら、ね。
「それも奥さんの仕事だろうな。こんな餓鬼を泣かしても面白くはない」
「おや。ドーソンさんのお好みは野獣ですか。家畜は大切にしたいと?」
「わしが可愛がるのは牝犬だけだ。牝猫もか」
「皆様、このふたりが仮初でも姉弟だということをお忘れじゃない?」
「どういう意味だ?」
「ふふ……」
フェビアンヌさんの発案で、私とジャックは背中合わせに縛られました。後ろ手に縛られて、腋の下を回した縄でひとまとめにされたのです。私は残っていた針も抜かれて、ジャックは口の詰め物を取ってもらいました。そして、立たされて、首に滑車の鎖を巻かれました。それぞれの左足も高く吊り上げられました。先週にフェビアンヌさんが鞭打たれたときと同じポーズです。でも、転びかけると縛り首になるので、ずっと厳しい――と思ったのですが、互いに相手を支えられるので、フェビアンヌさんより楽かもしれません。
フェビアンヌさんがブルウィップを持って、私たちの真横に立ちます。
「どちらから鞭打ってほしいのかしら?」
私は迷うことなく――足を軸にして、肩でジャックの身体を押しのけるような動きで、フェビアンヌさんに背を向けました。ジャックは私に押されて、否応なく正面をフェビアンヌさんに曝します。
「姉ちゃん……?」
ジャックが心細げな声を発しました。
「ふふ……弟思いのお姉さんだこと」
からかっているつもりでしょうが。ほんとうにジャックのことを思い遣るからこそ、最初の生贄に弟を差し出したのです。最後までフェビアンヌさんが鞭打ちを続けるとは思えません。男の人の鞭は、フェビアンヌさんより厳しいに決まっています。そして、最悪の場合、四人が順番ということも有り得ます。
最初の楽な部分を弟に譲って、後はすべて私が引き受けるつもりです。それでは、弟は至福の境地に達さないかもしれませんけれど……私だって、最初は痛くて苦しくて羞ずかしかっただけです。
「恨むなら、薄情なお姉ちゃんを恨んでね」
視界の端をブルウィップが掠めます。
ひゅ、しゅ……バチイン!
鞭がもつれながら、肌を弱く叩いただけです。
「きゃあっ、いたい……!」
なのにジャックは(私よりも)か弱い女の子みたいな悲鳴を上げました。
しゅる゙……ベシン!
「いたいっ……やめてよお」
鞭の先端が回り込んできて、私にも当たります。ちっとも痛くありません。しかも、フェビアンヌさんが狙っているのは胸やお腹です。
しけった鞭の音と大袈裟なジャックの悲鳴。私は、なんだか白けた気分です。見ている人たちも同じだったのでしょう。
「奥さんは、鞭打たれるほうが似合っとる」
いちばん怖い牧場主様が、奥様の手から鞭を取り上げました。
どうしようかと、迷います。私やフェビアンヌさんを打ったのと同じ強さで叩かれたら、ジャックは泣くだけでは済まないでしょう。でも、同じ人間を鞭打って、反応の違いを見せつけたいとお考えだと思います。ジャックだって、一発くらいは本物の鞭の痛みを知っておくべきです。
ひゅううんん。壁に当たるすれすれまで、牧場主様は大きく鞭を振り回しました。ジャックが竦み上がるのが、背中に伝わります。
「そおらよっ……」
ぶゅうんん、バッヂイイン!
「ぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
私の右の太腿の付け根近くに鞭の先が当たりました。互いに左足を真上に吊り上げられたポーズでの背中合わせなのですから、鞭はジャックの股間に……
がくんと、ジャックの体重が背中に掛かりました。気を失ったのでしょう。私は右脚一本で踏ん張り、後ろで縛られている手も使って、ジャックを持ち上げようとします。首に鎖を巻かれているのだから、そうしないと窒息してしまいます。
「たった一発で寝んねなの? お姉ちゃんはケロッとしてたわよ。あたしなんか、五発も食らったんだから」
ケロッとなんかしていません。それに、女性は股間を蹴り上げられてもすごく痛いだけですが、男性は悶絶します。
「ほら、起きなさいよ」
フェビアンヌさんがジャックの前に立って、ぱちんぱちんと頬を叩いた――のまでは分かりましたけれど、後は良く分かりません。ペニスを刺激しているのかもしれません。
「じれったいわね」
フェビアンヌさんがジャックの顔にかぶりつきました。ふううっと息を吹き込んでいます。
「げふっ……くしゅんっ……かはっ!」
ジャックが意識を取り戻しました。人工呼吸でもしてもらったのでしょうか。
「ふふん。そういうやり方があったか。ビッチのほうには、してやってもいいな」
「口はふさいでおくのよ。それと、あまり強く吹き込んでも駄目よ。唾が肺に入ったら、後で厄介なことになるから」
唾を鼻の穴に吹き込んだようです。なんて乱暴な蘇生法でしょう。看護学校では、こんな手当てを教えているのでしょうか。
「よし。目が覚めたところで、続きだぞ」
フェビアンヌさんが下がって、牧場主様がジャックの正面に立ちます。
「もう、ゆるしてよお。お姉ちゃん、助けて!」
涙声です。まだ早いとは思いますが、せめてドーソンさんの残酷な鞭だけは代わってあげましょう。
私はまた一本足で独楽のように身体を回して、ジャックと入れ替わりました。
「私に聖刻を施してください」
恐怖に声が震えています。膝が今にも砕けそうです。
彼の鞭は一発しか受けたことがありません。股間への猛烈な一発。深い傷は残りませんでしたが、鮮血が飛び散りました。何発も叩かれると、今度こそ女性器が使い物にならなくなるほどの傷を負うでしょう。
胸がきゅうんと絞られて、腰の奥が熱く滾ってきます。でも、それだけではありません。すごく誇らしい気分です。弟のためにみずからを犠牲にするという崇高な行為に酔い痴れています。
「よかろう。弟思いのおまえに免じて、わずか十発で赦してやる。ただし、黙って耐えるのだ。悲鳴も鳴き声も許さん。声を上げたら、あらためて十発を、可愛い弟にくれてやるからな」
私はドーソンさんの瞳を見つめながら頷きました。イエスと言ったら、声を上げたことになるかもしれないと判断したからです。
ドーソンさんが、腕を水平に保って後ろへ引きました。やっぱり、狙っている部位は恐れていた通りのところです。
ぶゅうんん、バッヂイイン!
「…………!!」
股間でダイナマイトが爆発したような衝撃です。全身が引き裂かれたと錯覚しました。息を吐き切っていたので、悲鳴は声になりませんでした。
「くっ……」
息が出来ません。首に鎖が食い込んできます。右足一本で立っているのに、股間を庇おうとしてその足を跳ね上げたのです。
足を伸ばしました。足の裏に床が触れましたが、膝に力が入りません。もがいていると、急に身体が持ち上がりました。ジャックが私の身体を支えてくれたのです。
私は、ようやく呼吸を取り戻しました。顔を俯けて股間を覗き込むと、たった一撃で真っ赤に染まっていました。ああ、神様/いえ、ここは淫魔に祈ったほうが良いかもしれません/女性器を破壊されてしまっては、あなたも愉しめないでしょう。だから、助けてください。
ドーソンさんが鞭を構えました。腕がすこし下がっています。私は、あわてて息を吐き出します。
ぶゅうんん、バッヂイイン!
「…………!」
ああ、淫魔様。ありがとうございます。鞭は斜め下から斜め上に、乳房を薙ぎ払ったのでした。太い鞭痕が乳房を横断して、血がにじんでいます。でも、肉を引き千切られたりはしていません。
私は心の中で淫魔様に感謝を述べて――深刻な罪悪感に陥りました。神様を裏切って、淫魔に救いを求めたのです。これ以上はない背徳です。私は地獄の業火に焼かれるに決まっています。
ぶゅうんん、バッヂイイン!
「…………!」
三発目は、バックハンドで乳房に叩き込まれました。浅い角度で鞭痕がクロスしました。
これまでのブルウィップは、ただ激烈に痛いだけで、至福の境地なんか欠片もありませんでした。そして四発目は……
しゅんんん、バッシュウンンンン!
最初よりも正確に、鞭の先端がクレバスに叩き込まれました。いえ、撫で上げて通り過ぎたのです。正確に淫魔のペニスを薙ぎ払ってくれました。
腰から全身に向けて、太くて甘い稲妻が飛び散りました。悲鳴を堪えるよりも、喜悦の声を封じるほうが、よほどつらいです。
息が苦しい。また、足が宙に浮いて喉を絞められています。このまま死んでもかまわない。それくらいに甘美な苦痛です。でも、ジャックが踏ん張ってくれました。
頭が朦朧として目が霞んで、床を踏みしめているのか雲を踏んでいるのかも分かりません。
しゅんんん、バッシュウンンンン!
「うあああああああっ……いいいっ!!」
不意打ちでした。甲高い声で、被虐への悦びを叫んでしまいました。
ずぐうっと、ヴァギナに太い刺激を感じました。すぐ目の前にドーソンさんが立っています。鞭を逆手に持って、グリップを挿入してくださっています。ぐりぐりと抉ってくださいます。
「声を出したな。では、ジャックに十発だ」
「ごめんなさい。もう二度と声を出しません。あらためて十発でいいですから、私に聖刻を施してください」
「ふふん……」
ドーソンさんがグリップを引き抜いて、私の唇にあてがいました。
私はその意図を理解して、グリップを咥えました。ペニスをしゃぶるのと同じくらいに丁寧に、それをしゃぶります。血の味がしました。でも、鮮血にしてはねっとりし過ぎています。淫らな汁が混じっているのでしょう。
最後に喉の奥までグリップを突き挿れてから、ドーソンさんは後ろに下がりました。そして、鞭を構えます。ああ、淫魔様。ありがとうございます。あと十発も、ブルウィップを受けられるのです。女性器が壊れてもかまいません。乳房が千切れてもかまいません。
しゅううん、バッチイン!
「いたいっ……!」
悲鳴はジャックです。私は、覚悟していたよりもずっと軽い、そして的外れな部位への鞭に、かえって驚いています。
次の一発は目をしっかり見開いて、ドーソンさんの挙動を観察しました。一歩ほど近寄っています。ブルウィップは中間部が私の脇腹を打って、くるんと回り込んでジャックを打ち据えました。でも、手加減してくださっています。ジャックの悲鳴も、そんなに切迫していません。
そして、改めての鞭打ちは三発だけで終わりました。
「チャーリイの言い草ではないが、こういうのはわしの性分に合わん。あとは任せる」
父様が、ほっとしたように頷かれました。私は苦痛と恍惚に忙しくて気づきませんでしたが、手加減してくれるように頼んでくださったのでしょう。
私とジャックは、いったん鎖から解放されました。そして二人別々に吊り直されたのです。ジャックは両手を頭上で縛られて。私は左足首だけに鎖を巻かれて逆さ吊りに。被虐の経験は私のほうがずっと積んでいますから、これくらいで公平かなと思います。
私の前には父様が、ジャックの前には頭取様が、それぞれブルウィップを持って立たれました。父様がジャックではなく私を選んでくださったことを、嬉しく思います。
私は片脚で逆さ吊りにされているので、遊んでいるほうの脚はどうしても折れ曲がってしまいます。せめて股間を隠さないようにと、膝を外へ向けました。父様の愛情がこもった鞭なら、喜んで受けます。
ジャックは顔を(彼の肌の色で可能な限りに)真っ青にして、唇もわななかせています。
「ついでに、ルーレットで遊んだらどうかな」
父様は困ったような顔をしましたが、手加減を頼んで聞いてもらっていますから、この提案までは拒否できない感じで頷きました。
牧場主様が私のヴァギナに指を(五本全部!)挿入しました。もう一方の手は、折り曲げた膝をつかみます。ジャックは議長様です。両手で腰を抱えました。
「せえの!」
掛け声とともに、私たちはぶん回されました。私は半回転の間、ヴァギナを指で掻き回されました。痛かっただけです。
すごい勢いで部屋が回転します。
しゅんんんっ、バチイン!
「きゃああっ……!」
脇腹に当たりました。まったくの不意打ちでした。
しゅんんんっ、バチイン!
「きゃっ……痛い!」
内腿です。どこに鞭が当たるか分からないので、悲鳴は驚きが半分です。半分は、父様への甘えです。もしも悲鳴にペナルティを課されるのなら、黙って耐えます。それとも、叫ぶかしら。だって、もう少しだけ厳しくて……なんでもないです。
しゅんんんっ、バチイン!
しゅんんんっ、バチイン!
しゅんんんっ、バチイン!
脹脛から腰に掛けて、縦に打ち下ろされました。ああ、これは股間を狙って外れたんだなと推測していたら、二発目がお尻の割れ目に当たって、三発目が正面からクレバスに食い込みました。
でも、牧場主様の鞭に比べると、明らかに手加減してくださっています。そして、じゅうぶんにスナップを利かせているので、痛みが爽やかです。
「うああっ……!」
「いたい、ゆるして!」
「いやだよ……やめてよ!」
ジャックは泣きじゃくっています。
手加減してくださっていても、繰り返し打たれると肌が裂けます。全身がアカム染まっていきます。
ジャックのほうは、血の色が分かりにくいせいもあるでしょうが、明らかに私よりも傷は浅いです。男の人にとっては、男の子を虐めるのは、女の子を虐めるよりも面白くないのでしょう。でも、逆は成り立ちません。フェビアンヌさんも、ジャックを虐めるより私を虐めるときのほうが、気合が入っていたように思います。
あらためて私に十発と宣告されてから、ドーソンさんは三発を打ちました。残りは私だけに七発のはずなのに――私もジャックも、十数発は鞭打たれました。もう、理屈も計算も無視されています。彼らが満足するまで、生贄は嬲られるのです。
鞭打ちが終わって床に下ろされて。それで、エクソシストに名を借りた淫虐は終わりではありませんでした。
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出来立てのほやほやです。今日は、ここまで。休日でも13枚しか捗りませんでした。本来は「捗」の字なんですね。「墓取る」とか「破瓜取る」とかふざけて書いていますが。
まあ、あまり進まなかったのは、いよいよBFの下準備に掛かったせいもあります。元ネタは下記の3点です。どんなのになるかは、想像がつくと思います。

Progress Report 5:SMX358
はい、リクエストの目玉の「針刺し」です。
魔女は体表に悪魔との契約の刻印を隠している。そこは痛覚を持たないから針で刺して調べる。実に好都合です。しかも。
「淫魔が契約の印を刻むのは、淫らな部位に限られているのですよ」
とはいえ。魔女なら、痛くなくても「痛い!」って叫ぶんじゃないかしら?
その答えは、本文をお読みください。とはいえ、針を刺されても分からないように目隠しをするのはパス。一人称ですから、いちいち「何をされた」かをヒロインの触覚から推測するのでは面倒ですので。
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魔女の嫌疑
月曜日。数日ぶりの爽やかな目覚めでした。もう、淫魔が囁き掛けてくることもないでしょう。生まれ変わったつもりで、新たな一週間に臨みます。
……でも、だめでした。淫魔の囁きは聞こえてこないけれど、まだ続いているヴァギナの疼きが、聖礼典のことばかり思い出させます。儀式の意義を考えるのではなく、父様のペニスが私のヴァギナに突き刺さったという外形的な事実と、それに伴なう激痛と、にじみ出てきた悦びと。そんな淫らなことばかりが。
気もそぞろに一日を過ごしました。レース編みは、今日も手に付きませんでした。
そして夜はベッドの中で……またしても淫魔の囁きに負けてしまったのです。
それも、これまでのようなおいたではすみませんでした。父様によってつけていただいた道には、指が三本も入ってしまったのです。きついし痛みもありましたけれど、快感のほうが上回っていました。
肉棒を中で動かされながら淫魔のペニスを抓られたときの甘い激痛を思い出して……右手の人差し指から薬指までを挿入して、親指で淫魔のペニスを刺激しました。左手が空いているので、指をうんと広げて左右の乳首を同時に擦りました。
「ああああっ………だめえええっ!」
慌ててシーツを口に詰め込みましたが、時すでに遅しです。父様もジャックも熟睡していることを願うしかありませんでした。
もしも父様の耳に届いていなかったとしても、知らん顔で通すほど、私は自堕落ではありません。牧師様にお願いして、礼拝堂での朝のお祈りに立ち会っていただきました。
牧師様は私を責めるでも諭すでもなく、けれど赦しの言葉も掛けてくださいませんでした。その代わり、予想外の――本来なら喜ばなければならないことをおっしゃいました。
「もう思い悩むことはありませんよ。今日の午後にも、教区長のアンディ・ノートン牧師が来てくださいます。これまでの経過は電話で報告してきたのですが、私ひとりでは困難だろうと判断されて、直々に悪魔祓いをしてくださることになったのです」
牧師様の顔にも声にも悔しさがにじんでいます。牧師でありながら娘を淫魔から護ってやれなかった無念でしょうか。
私にも父様の憂鬱が伝染したのでしょう。ちっとも安心出来ずに不安が募るばかりでした。
ノートン教区長様がいらっしゃったのは午後二時でした。大きな馬無し馬車で、教区長様は(聞くところによるとご自分のお歳の半分の)若い奥様を同伴なさっていました。助手の牧師様と馬無し馬車の運転手さんも一緒です。
御挨拶もそこそこに、父様を含む四人の男性は、馬無し馬車のに積んできた様々な道具を礼拝堂に運び入れる作業に取り掛かりました。私と(付け足しに)ジャックは、奥様の接待です。といっても、コーヒーとクッキーをお出しした後は、居間の隅っこに控えて、奥さまが読書をなさる邪魔にならないようにおとなしくしているだけでしたけれど。
奥様は社交的でないのか、子供(悔しいけれど、奥様からみたら、私はじゅうぶんに子供でしょう)の相手が苦手なのか、私たちにあまり話しかけてはくださいませんでした。
ただ、いくつか教えていただいたひとつが、奥様も悪魔祓いに立ち会われるとのことでした。
私は、とても心強く思いました。だって、これまでにされたことといえば、羞ずかしいことばかりでした。女性が立ち会えば、そんなにひどいことはされないでしょう。でもそれでは、悪魔祓いの霊験も薄れるのではないかしらと――矛盾した不安に苛まれたりもします。
夕食の支度は六人分しか調えなかったので、ぎりぎりテーブルに載りました。
「ジュリアは食事をせず、礼拝堂でお祈りをしていなさい」
罰でも信仰の証でもなく……夜になってから、教区長様によって行なわれる私への悪魔祓いは肉体的にとても厳しいので、嘔吐などをして場を穢さないための予防処置だそうです。
そう聞かされただけで、私は心の底から震え上がってしまいました。でも……どんなふうに虐められる/訂正します/清められるのだろうと、想像すら出来ない事柄を想像すると、腰の奥に熱い疼きが生じます。この不合理な感情は、淫魔がもたらすのでしょうか。苦しむのは私の肉体であって、淫魔ではありません。
そんな得体の知れない恐怖は、礼拝堂に入るなり、具体的な恐怖に変わりました。そして、腰の奥の疼きがいっそう熱を帯びてきました。
馬無し馬車の大きな荷台に積まれていた荷物が、すべて礼拝堂に運び入れられたのでしょう。
実際に人間を磔に掛けられる大きな十字架が、聖壇の前に立てられています。天井には大きな滑車が幾つも吊り下げられて、太い鎖が垂れています。一本の鎖の下には、行水桶ほどの差し渡しで、立ったまま腰まで浸かれそうな桶が据えられています。ベッドの幅ほどもある梯子が、床からニフィートの高さで水平に支えられています。断面が三角形をした太い木材が、四本の脚で支えられています。
これは………父様の本棚にある、聖書研究の専門書の挿絵とそっくりです。中世の魔女裁判、あるいは異端審問の拷問道具です。
そう思ってさらに見回すと、肉を挟んで引き千切る大きなペンチとか、火桶と焼鏝とか、いろんな大きさと形の木枷や鉄枷も、幾つかの木箱に収められています。隅へ寄せられた信者席の上には、長短様々な鞭や笞が置かれています。
なんてことでしょう。これらの拷問道具はすべて、私に使うために持ち込まれたのです。
私は恐慌に陥って、出入口へ駆け寄りました。でも、そこで立ち止まりました。ここから逃げ出しても、私には行くべき場所がありません。家へ戻って問いただしても(何を問いただすというのでしょう)どうにもなりません。むしろ、ジャックまで何らかの形で巻き込んでしまいます。
逃げてどこかへ隠れてみても、狭い町です。簡単に見つかって連れ戻されるでしょう。町の人たちにも知られてしまいます。それよりも。私の周囲から淫魔を退ける聖礼典を拒んで逃げるなんて、淫魔をみずから進んで迎え入れるようなものです。
私はこの場に留まって。可能な限り厳しい試練を与えてくださるよう、神様にお願いするべきなのです。そう決心しました。でも、怖い……腰の奥に熱い疼きなんか、まったく生じません。
どうしようもないので聖壇の前に跪いて両手を胸の前で組みました。でも、お祈りの言葉を唱えるどころか、頭に浮かんですらきません。
そのうちに、怖いもの見たさの好奇心が頭をもたげてきます。
まずは、すぐ後ろに立ててある十字架。犠牲者の足を載せるための手前に傾斜した踏台がありません。その代わりと言ってはなんですが、ずっと高い位置に、Fの文字を左へ倒したような棒が突き出ています。腕木の位置から推測して、腰のあたりです。
一昨日の私だったら、上向きに突き出ている二本の棒の意味に気づくとしても、しばらくは考え込んだことでしょう。でも今は、見た瞬間に理解しました。と同時に、アヌスもヴァギナと同じ用途に使えるらしいという新たな知見も得ました。男女共通の器官。ソドムの罪とはこういうものだったのですね。
十字架にはいたるところに、開閉式の半円形の金属の環が取り付けられています。これなら、手足に釘を打ち込まなくても犠牲者を固定できます。十字架に磔けられても、命には係わらない。そして上向きの棒は二本。つまり、女性を辱める/訂正します/清めるための聖具なのです。
それでも、ずいぶんと苦しいでしょう。背筋を氷水が流れ落ちます。なのに、腰のあたりに溜まった水が熱くなってきました。
別の大道具を観察しましょう。ずっと気になっていた三角の材木。作業台には使えないし、刈り取った麦を乾燥させるには風通しが悪そうです。
あら……中程の先端にどす黒い染みが。まさか、血痕?
今後は背筋が凍りつきました。淫魔封じの針金と、一昨夜の出血からの連想です。もしも、これに跨ったりしたら。鐙は無いし、馬の腹よりもつるつるしていますから腿で締め付けても体重を支え切れないでしょう。
「きゃっ……?!」
無意識に後ずさっていたのでしょう。つまずいて転びかけました。
もう、好奇心なんか消え失せました。それに……これらは私に使うために、教区長様がわざわざ持ち込まれた道具類です。観察して推測しなくても、すぐにでも使い方と恐ろしさとを、私自身の身体で知ることになるでしょう。
私は聖壇の前へ逃げ戻って、全身全霊でお祈りをしました。
神様。私をお護りください。
でも……神様が加害者ではないでしょうか。絞首刑の執行者に命乞いをしても無駄なのではないでしょうか。
絶望です。それなのに……十字架に磔けられてヴァギナもアヌスも串刺しにされたら、苦しいだけだろうかなんて、とんでもない妄想が湧いてきます。三角の材木に乗せられたら激痛に泣き喚いて、さすがの淫魔も辟易して逃げるのではないかしらなんて、ちょっぴり期待したりもします。
ああ……住居に通じるドアの開く音です。いよいよ、私への凄絶な聖礼典が始まるのです。
父様が先導する形で、教区長様と奥様、助手の牧師様。その後ろは運転手さん――でもボブさんでもありませんでした。町長のディーラーさん、銀行頭取のギャレットさん、保安官のハーベイさん。町の名士様ばかりが三人も。
それにしても、奥様はなんという服装をしてらっしゃるのでしょう。長袖のブラウスに細身の乗馬ズボン。乗馬ズボンとすぐに分かったのは、歯車状の拍車が付いたブーツを履いているからです。ズボンはぴっちり肌に密着して、脚もお尻も生の輪郭が浮き彫りになっています。淫らです。もっと淫らなのがブラウスです。ボタンを留めずに、裾をおへその上で結んでいます。余った端がリボンみたいでお洒落ですが、おへその露出くらいは、この服装の中では些末事です。胸元が開いて、乳房が半分くらいは見えています。
男性の皆様は、それぞれの職業にふさわしいセミフォーマルな装いです。
その皆様が、父様と奥様を除いて、私を取り囲みました。私は立ち上がるタイミングを失って、跪いたままです。
「これより、ジュリア・コバーニの魔女審問を行なう」
教区長様が厳かな声で、とんでもないことをおっしゃいました。
「魔女審問って……悪魔祓いではないのですか?」
抗議の意味を込めて尋ね返しながら、心のどこかでは――ああ、やっぱりと思いました。それで、ここにある恐ろしい拷問道具の説明がつきます。
「これまでの魔封じの失敗は、すでにお前の体内に淫魔が巣食っているからではなかろうか――というのが、ノートン先生のお見立てなのだよ」
父様が優しい声で、これも恐ろしいことをおっしゃいます。
どうでもいいことですけど。ここには牧師様が三人もいらっしゃいます。区別するために、牧師としての発言であっても父様と考えることにします。
「立て。立って、衣服を下着まですべて脱いで全裸になるのだ」
教区長様が、懇切丁寧に無慈悲なことをお命じになります。
「あの……この方たちは?」
魔女審問だろうと悪魔祓いであろうと、町長さんたちは部外者でし。
「魔女審問は、私と妻のフェビアンヌ、ベルケン牧師とヒュンケル牧師の四人で執り行ないます。他の三人は証人です」
これから行なわれることは、外形的には暴力行為であり強奻だと、教区長様は明言なさいました。ですが、それは神様の絶対的正義の下に行なわれる私の救済なのです。だから犯罪ではないという証明のために立ち会うのだそうです。
私としては羞恥が募るだけです。
「もっとも。彼らにも幾分かは手伝ってもらって、いずれはヒュンケル牧師と彼らだけで魔女審問や悪魔祓いを出来るようになってもらいます」
つまり、この場にいる全員が私を拷問に掛けるという意味です。
「納得できたところで、さっさと全裸になりなさい」
納得なんて出来ません。でも、拒んだらどんな目に遭わされるか、身体を張って確かめる蛮勇などありません。それに、奥様はグラマラス過ぎて、むしろ私のほうが/なんでもありません。
私は立ち上がって、取り囲んだ人たちの視線に怯えながら、晴着のワンピースを脱ぎました。シュミーズもドロワーズも。最後に、胸の布をほどきます。
「そこの台に仰臥しなさい」
そこの台というのは、両端と真ん中を脚に支えられて水平に寝かされた梯子のことです。今さら恥部を隠しても無意味ですから、両手を使って足も大胆に動かして、床からニフィートの高さにある台に上がりました。
教区長様とベルケン牧師様とが、台の両端に立たれて――私の手足をニフィートほど広げて、そこに置かれてある、二本の長い鎖につながれた木枷に嵌めました。そして、ベッドの端に取り付けられているハンドルを回すと――木枷が引っ張られて、私の身体も引き伸ばされます。でも、両手で木からぶら下がった(初潮を迎えてからは、そんなお転婆は慎んでいます)くらいまで引っ張られたところで、ハンドルは止まりました。
「このまま引っ張り続けると、肩を脱臼して股関節まで破壊されますが、拷問が目的ではないので、身動きできなくなったところで止めます」
拷問ではないというお言葉に、ほっとしました。では、そんなに痛いことはされずにすみそうです。羞ずかしいのさえ我慢すれば良いのです。
「さて。悪魔は人間の身体に契約の印を刻むことで、その身体を乗っ取ります。それが無いうちは一時的に憑りつかれたとしても、悪魔祓いによって、その者を救えるのです」
教区長様が立会人の皆様に講釈されます。
「契約の印は痣や黒子、疣などに偽装されていますが、そこは痛みを感じなくなっています。したがって……」
ベルケン牧師様が、皮革で装丁された薄い本のような物を開きました。立会人と父様に見せてから、私にも見せ付けます。
太いのや細いの、長いのや短いの――何十本もの針が、びっしり並べられています。
「この針を怪しい箇所に突き刺して、痛みを訴えない箇所があれば、即ちそこが、契約の印なのです」
「全身にですかい?」
うんざりしたような声で尋ねたのは、保安官のハーベイさんです。
私はうんざりどころか、恐怖に震え上がっています。
「そうするときもありますが、ヒュンケル牧師の観察で、相手は淫魔だと判明しています。淫魔が契約の印を刻むのは、淫らな部位に限られているのですよ」
「つまり、股座とか乳房かね」
これは町長様の質問ですが、保安官とは反対に、声が弾んでいます。手間が省けて嬉しいのでしょう。
もっとも敏感な部分ばかりに針を刺される……私は気が遠くなりそうです。
「では、私が手本を示します。もっとも怪しい箇所からです」
教区長様が、淫魔のペニスを掘り起こしました。
「待ってください!」
誤って指先に針を突き刺しただけでも痛いのに。こんな敏感な突起に刺されたら……
「そこは淫魔のペニスだと、父様は教区長様から教わったそうです。針で確かめなくても、証拠は明白なのではないでしょうか」
「おや。おまえは自らが魔女であると認めるのか。町中を素っ裸で引き回され、人々に誹られ石打たれた挙げ句に、炎に焼き尽くされたいと望むのか?」
「あああ、そんな……」
そうでした。それはリンチではなく、神様の御名の下に行なわれる正義なのです。そして私は、復活の日にも甦ることはなく、地獄の劫火で永遠に焼き続けられるのです。
神様が「誤審」をなさるとは思えません。ならば……ほんとうに私は、すでに淫魔に憑りつかれているのでしょうか?
「安心なさい。この疣は、善良で清純な乙女にさえ生えている場合もあります」
そのお言葉だけで、劫火が地平線の彼方まで遠ざかりました。
見せてあげなさいと声を掛けられて、奥様がズボンをずり下げました。たぶん下着も一緒だったのでしょう。いきなり下半身が露わになりました。もっと驚いたことには、脱毛症のようです。
奥様はラビアに指を当ててV字形に開くと、父様の前に立って腰を突き出しました。
「彼女にも淫魔のペニスが生えているのが見えますね?」
父様が腰を屈めて覗き込みます。
「ううむ……たしかに」
奥様はそうやって、立会人の皆様にも見せて回りました。
「ただし……」
教区長様が、私の淫魔のペニスをくにゅくにゅとくじります。
「ひゃうんっ……」
莢を剥いたり戻したり。中身の先っぽをくすぐったり。
立て続けに電気が奔って、硬くしこっていくのが自分で分かります。
「このように、あたかも男性のペニスの如く勃起するのは淫魔の悪行です。この娘がすでに憑りつかれているのか、まだ救えるのか、慎重に判断しなければなりません」
私ひとりを除いて皆が納得したところで、審問が再開されます。
淫魔のペニスをつままれて、きゅっと引き伸ばされます。上体をわずかでも曲げられないので、顎を引いても下腹部は見えません。かえって幸いです。
チクッと冷たい感覚に続いて鋭い痛みが貫きました。反射的に腰を引きました。梯子の踏み桟がお尻を押し戻します。
「きひいいっ……」
悲鳴が後から追い掛けてきます。でも、鞭打たれたよりは痛くなかったです。
「おや。それほど痛くはなさそうですね」
教区長様も首を傾げます。
「ほんとうに、ここが契約の刻印かもしれません。もっと詳しく調べましょう」
また引き伸ばされて、今度はチクッが根本のほうへきました。
ぶつっ……と、針が肉に突き刺さる音を肌で聞きました。
「がゃわ゙あ゙あ゙あ゙っっ……!!」
痛いと感じた瞬間に絶叫していました。
「ひいいいいい……」
悲鳴が止まりません。
針を引き抜かれて、ようやく止まりました。
「今度は芝居掛かっていますね」
教区長の助手のベルケン牧師様が、私が穿いていたドロワーズをずたずたに引き裂いて丸めました。それを私の口に押し付けます。
口をふさがれるというのも怖いですが、その詰め物が私のドロワーズだというのがすごく厭です。でも、牧師様に逆らうのはいけないことです。素直に口を開けて、声を封じていただきました。
「悲鳴に惑わされることなく、全身の反応を見て判断するのです」
教区長様はそうおっしゃって、淫魔のペニスの根元をつまみました。そして、針を真上から突き刺したのです!
「ま゙ゃわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!!」
これまででいちばんの激痛が腰で爆発して脳天まで噴き上げました。
「も゙お゙お゙お゙、お゙お゙お゙お゙お゙……」
ずぐずぐと針が淫魔のペニスの奥深くまで肉を引き裂いて突き進むのが感じられます。腰はよじれますが、そうすると激痛がさらに跳ね上がるので……腰を突き上げた形で凍りつくしか出来ません。
針が引き抜かれても、激痛が居座っています。手首と足首もずきずきと痛むのに気づきました。木枷に逆らってもがいたのでしょう。
「ここには、悪魔の刻印は無いようですね」
ああ、良かった。神様、ありがとうございます。
しかし、感謝の祈りを捧げるのは早計でした。
「次は乳房です」
そうでした。罪深い女の身体には、悪魔に狙われやすい部分が幾つもあるのです。
「もしも淫魔がすでにこの娘に憑りついているとすれば、体内の奥深くへ逃げ込まないようにしておかなくてはなりません」
父様が名指しされました。
「この娘の乳房にこれを嵌めて、淫魔の逃げ道を断つのです」
これというのは、8の字を半割りにした鉄枷です。それが、乳房の上下にあてがわれて、両端をボルトで締め付けていきます。ぎりぎりと鉄枷が乳房に食い込んできます。
「むううう……」
すごく痛いのですが、淫魔のペニスに針を刺されることを思えば、ちょっと強く揉まれているくらいでしかないです。
乳房の根元をきつく縊られて、中ほどから先の部分が、針で刺せば破裂しそうなくらいに膨れました。
「淫魔が潜んでいると仮定して、じわじわと追い込んでいきましょう」
あなたたちも経験しなさいと――教区長様は三人の立会人と父様に針を持たせました。淫魔のペニスに使ったのより、ずっと太くて長い針です。
最初は父様です。昨日までは、いえ、この瞬間にも敬愛している父様に拷問される/違います/検査していただくのです。これは形を変えた祝福だと……思うようにします。
父様が左の乳房をわしづかみにして、ますますぱんぱんに張り詰めさせます。鉄枷で縊られているすれすれのところに針が突き立てられました。
「ん゙む゙うううう……!」
三十分前の私だったら、口をふさがれていなかったら、喉から血を吐くほどに絶叫していたでしょう。でも、淫魔のペニスへの針刺しを体験してしまっては、颶風に対する強風でしかありません。ですが、乳房の中をぐずぐずと針が突き進んでいく感触は、蜈蚣に食い荒らされるみたいな気色悪さです。
ぷつっと、針が乳房を突き抜けました。針を残したまま、父様が引き下がりました。
父様と反対の側に町長のディーラーさんが立ちました。右の乳房を、父様の倍以上の力で握り潰します。そして、三倍くらいの勢いで、一気に乳房を貫きました。
「も゙お゙お゙おおおっ……!」
二人を比べれば、やはり父様の刺し方には、娘へのいたわりがあふれています。
三人目は銀行頭取のギャレットさんです。先の二人とは違って、左の乳房を上から下へ縦に刺し通しました。
最後が保安官のハーベイさんです。父様よりも若い三十二歳です。いえ、意味はありません。修道女に準じた生涯を送ると決めているのですから、どんなに若くても恋愛対象にはなりません。ボブさんは、家族に次ぐ親密さですから……こんなときに、なにを浮ついたことを考えているのでしょう。でも、若い男性(といっても、私の倍以上ですし、父様と三つしか違いません)に乳房をつまかれるのは、四十や五十の男性にそうされるのとでは、感じ方が違います。
などと、あれこれ考えてしまうのは。ハーベイさんが乳房をつかんだきり、固まっているからです。
「どうしても、やらなきゃ駄目ですかね?」
やってください。どんなに痛くてつらくても、淫魔を追い祓うためです。
「この娘が魔女だとしたら、町にとんでもない災厄をもたらします。治安を預かる者の義務でもあるのです」
教区長様に優しく強く諭されて、ハーベイさんも覚悟を決めたようです。
「む゙ゔうう、うううう、ゔゔうう……」
ためらいながらゆっくり突き刺すので、四人のうちではいちばん痛かったです。
「よろしい。とどめは私がとどめを刺しましょう」
教区長様が、それまでのよりは短い針を持って、私の横に立ちました。淫魔のペニスへの仕打ちから、その針がどんなふうに刺されるか予測できてしまって、口の中の布を強く噛み締めました。
それでも、淫魔のペニスに垂直に突き立てられるよりは痛くないでしょう。せいぜい嵐くらいではないかしら。それよりも、左の乳首を正面から突き刺されたら、心臓に達するのではないかしら。そちらが心配でした。
同じような描写の繰り返しになりますから端折りますけど。絶叫は詰め物に吸い込まれて、乳房が爆発したと錯覚するまでの激痛ではありませんでした。
今度こそ終わった。魔女の嫌疑は晴れたと喜んだのですが。教区長様はとても慎重なお方でした。
「狡猾な淫魔は、目の届きにくい部分に印を刻むものです。フェビアンヌ。この娘の腋と股間の縮れ毛を剃り落としてやりなさい」
「…………」
私は、ただ諦めるだけでした。
毛を剃られてしまうなんて、とても羞ずかしいことです。でも、女性器の中まで晒しているのですから、それよりも羞ずかしいなんてことはありません。それに、剃られた毛はじきに元に戻ります。とにかく。徹底して魔女の嫌疑を晴らしていただくことだけを願います。
父様は髭を蓄えてらっしゃいますが、もちろんお手入れは(つるつるの顔よりも入念に)必要です。父様の泡立て皿と剃刀が用意されました。いつもは父様の顎に泡を塗っている刷毛で私の股間を撫でられると考えると、股間にリンパ液がにじみ出てきます。それとも、淫らな汁なのでしょうか。
まず股間が真っ白に塗りつぶされて、剃刀が当てられました。
ぞりっ、ぞりっ……縮れ毛が剃られていくかすかな感触が肌を震わせます。くすぐったくて気持ちいいです。こんな楽しみが毎朝あるなんて、男の人って得だな。そんなことまで考えてしまいました。
立会人の皆様も、私と同じように手持無沙汰なのでしょう。私が剃られていくのを見物しながら、とりとめのない雑談をしています。
「あらかた剃ってしまったな」
「恥毛を剃ってしまうと、ますます幼く見えるな。さすがに良心がとがめるぞ」
「いや。使えるなら、女は若ければ若いほどよろしい」
耳をふさぎたくなりますが、それも出来ません。
「剃り残しが無いようにしなさい。ああ、アヌスのまわりは後回しです」
教区長様が、あからさまな指示をなさいます。
「これからは百マイルも遠征せずにすみますな」
「ストーンのやつ、石っころだけあって融通が利かん」
「ティムの餓鬼なんか、ケツ穴に突っ込みかけただけで出入禁止を食らったからな」
「俺は宣教師スタイルだけで満足ですぜ。女の顔が見えなきゃ、つまらんでしょうが」
意味が分かりませんが、ストーンさんというのはサロンの経営者です。ケツ穴がどうこうというのは、私が得た最新の知見に照らせば、ソドムの罪を……市長様ともあろうお方が、そんなことを望んでらっしゃるなんて、信じられません。私の聞き違いです。
「ホステスが若すぎるビッチ一匹では、ちと物足りんが……」
「いや、あの乳はじゅうぶんに鞣し甲斐がある。若いのだから、わしらの好みに調教できるというものだ」
私としても、彼らの冗談話を本気で解読するつもりはありません。それでも、聞き耳を立てているうちに、腋毛まで一本残さずつるつるに剃り上げられてしまいました。
そして、今度はピンポイントではなく雨が平野に降り注ぐように、下腹部と腋を何十本もの針で突き刺されたのです。時間は掛かりましたけれど、淫魔のペニスや乳首に比べたら微風でしかありませんでした。
「それでは、最後の一か所を調べるとしましょう」
教区長様のお言葉を、今の私は理解できます。
私を引き伸ばしていた鎖がわずかに緩められたした。父様とベルケン牧師様とが手足の木枷を持ち上げて、私を俯せにしました。改めて鎖が巻き縮められます。
お尻の肉に熊手のような道具が食らいついて、左右に引っ張られます。そこにひんやりとした空気が触れて、アヌスを剥き出しにされたのが分かりました。
フェビアンヌさんがお尻を覗き込んで――そこの産毛(縮れ毛なんか生えていません)を剃りました。
ファビエンヌさんが下がると、六人の男性が私のお尻を取り囲みました。皆さん、長い針を一本ずつ持っています。
「では、私から」
教区長様の声と同時に――ぷつっと針がアヌスに突き刺されました。
「む゙も゙お゙お゙お゙お゙っ……!」
ラビアに刺されるより、よほど厳しい激痛でした。
ぷつっ、ぷつっ、ぷつっ……続けざまに突き刺されて、そのたびに私はくぐもった悲鳴を上げさせられました。
「ふむ。ここにも印は刻まれていないようです」
そのお言葉を聞きながら、ふっと疑問が生じました。
乳房を調べるときは、淫魔が奥深くへ逃げ込まないようにと、鉄枷で縊られました。でも、ラビアやアヌスを調べるときにはそんな処置は取れません。それで構わないのでしょうか。でも、教区長様に尋ねる勇気はありません。淫魔の逃げ道を封じるために、どんな恐ろしい処置を追加されるか分かりませんから。
木枷を外す前に、ファビエンヌさんが傷の手当てをしてくれました。アルコール消毒をしてヨードチンキを塗るというより針で開けられた穴に擦り込むという、乱暴な手当てです。針で刺されるよりは痛くありませんが、痛みが何分も続くし、乳房も女性器もアヌスも同時に痛いので、とろ火で焼かれるようなつらさでした。
これで、私の魔女嫌疑は晴れたと安堵したのですが。
「念には念を入れて調べましょう。せっかく、その用意もしてあることですし」
まさか、ここにある恐ろしい拷問毒具をすべて私に使うおつもりなのでしょうか。「準備をし過ぎるということは無い」という格言はありますが、「それをすべて活用しろ」とは言いません。
それでも、私は抗議をできません。魔女審問を拒否すれば、それが魔女である何よりの証拠にされます。
「魔女は自然に逆らった存在です。水に沈めようとしても、水に拒まれるのです」
あの大きな桶に水を張って、私を沈めて確かめるのだとおっしゃいます。でも。水に沈めば魔女でないという証しを立てられるのでしょうが、沈んでしまえば溺れ死にます。
父様も加わっているのです。ぎりぎりのところで引き上げてもらえますよね?
水に浸けるといっても、大桶は空です。直径二フィート半、深さ三フィートもの桶に水を満たすには何時間も掛かります。せめて、その間は休ませてもらえる――なんていうのは、甘い考えでした。裏の井戸から水を汲んでくるのは、私ひとりの仕事にされてしまいました。
「みずからの潔白を証明するための仕事です」
元気なときでも、気が遠くなるような重労働です。それを、急所ばかり何十本もの針を突き立てられた満身創痍の肉体でやり遂げなければならないのです。
全裸のままで働くようにと、教区長様はおっしゃいます。それどころか。
「礼拝堂から外へ出れば、それだけ淫魔の付け込む隙も増えるのではないでしょうか」
教区長様から教えていただいた魔封じをしておきましょうと、父様が提案しました。日曜礼拝のときのあれは、やはり父様がご自分で考えたものではなかったのです。
乳首を針金の輪で締め付けて乳房もぐるぐる巻きにして、針金の束で股間を封印したうえで、淫魔のペニスからは十字架を吊り下げる。ただ歩くだけでも、自分で自分を痛めつけるに等しいというのに、その姿で水を汲んで運ぶのは――ほとんど不可能事です。けれど、教区長様は大きく頷かれたのです。
「おお、そうでしたね。あなたの娘さんを案じる気持ちは良く分かります」
私も、父様と教区長様に感謝しないといけないのでしょうが……どうしても、その気になれませんでした。それなのに、厳重に身体を締め付けられ突起を虐められると……頭に靄が掛かって、腰の奥が熱く潤ってしまうのです。
何も知らない信者の皆様に見られる懸念が無いのですし、全裸でお淑やかもあったものではありませんけれど、がに股にならないよう気を付けて、胸を張って仕事をしました。だって、そのほうが刺激が強くて/なんでもありません。
二ガロンのバケツを同時に二つ持って、裏庭と礼拝堂を何十回と往復しました。十字架を膝で蹴りながら歩きました。最初のうちは痛いのがずっと強いのですが、その中でかすかな快感がだんだんと蓄積していきます。水を汲んでいる間は股間の揺れが止まっていますが、腋を締めてポンプのレバーを動かすと乳房がこねくられて、やはり一定した苦痛の中に快感が蓄積していきます。
十往復くらいまでは回数を覚えていましたが、あとは霞の中を雲を踏みながら歩いているみたいになって――皆様が夕食をとっている間も、私は働き詰めでした。お昼も食べていないのに、ちっとも空腹は感じませんでした。というか、淫魔に憑りつかれようとしている罪深い娘には、人並みに食事をすることなど許されていない。そんなふうにも思うのです。
水は大桶一杯に満たすのではなく、六インチ手前で止めるように言われていました。それでも、二十往復以上です。自分自身を拷問に/ではないです!/魔女審問に掛けていただくための準備が調ったときには、精根尽き果てて床に伏してしまいました。俯せになって自分の体重で乳房をこねくり乳首を虐め、十字架を太腿で押さえて腰をくねらせて……桃色の霞が薄れないようにしていました。これは魔女審問のための準備なのですから、淫魔の囁きにそそのかされた自涜行為ではありません。神様に祝福していただいているのです。なにかとんでもない考え違いをしているのかなとも思いましたけれど、三匹の鶏と二匹の牛で脚が何本あるかさえ計算できない状態ですから、そんな神学上の問題を考えられるわけがありません。
わずか数十分でしたが――ある意味で、これまでの生涯の中でいちばん幸せな時間を過ごしていたのではないでしょうか。苦痛と快感とがせめぎ合って、互いが互いを押し上げていくような恍惚。それが、決して淫魔にそそのかされたものではなく、神様に与えていただいているという、心の充足。
その一方で。なにかがひどく間違っているという予感もありました。
もしや、私ではなく……教区長様や父様こそが悪魔に魅入られて、私を生贄に捧げようとしているのではないだろうかという疑問。もちろん、私よりもずっと神様のおそばに居る人たちが悪魔の手先であるなんて、馬鹿げた妄想です。そんな疑いを持つことこそ、私が淫魔に憑りつかれよとしている証拠ではないでしょうか。
「床に身体を擦りつけてオナニーとは、淫魔に支配された魔女の嫌疑がますます深まったな」
教区長様の声で、私は我に還りました。
「しかし、そうではない可能性もあります。どうか、娘のためにも厳正に取り調べてください」
「言われるまでもありません。我が教区に魔女が現われるなど、あってはならないことです。この娘が魔女でないことを皆で祈りましょう。アーメン」
起き上がって床にへたり込んでいる私に向かって、教区長様が十字を切ってくださいました。そして父様の手で、天井の滑車から垂れている太い鎖が、揃えた両足に巻きつけられました。
そのまま立たされて。短い鎖でつながれた手錠が股間に通されました。私は右手を前で拘束され、左手は後ろです。手を動かせば、鎖がスリットに食い込んで――ごつごつした快感を強いられます。
立会人の皆様が、鎖の端を引っ張ります。そのままだと転んでしまうので、自発的に床に仰臥しました。脚が吊り上げられ、腰が持ち上がって――身体が宙に浮きました。水を張った大桶の真上です。
じわじわと吊り下げられていきます。ほつれたお下げが水に浸かり、目も水面下に沈もうとしています。そんなことをしても、せいぜい一分かそこらの違いでしょうが、急いで深呼吸をして肺に空気を溜めます。
すうっと顔が水に没して、肩から乳房……股間に水の冷たさを感じた直後に、頭が底に着きました。そこでは止まらずに鎖が緩められていって、脚が手前へ折れていって、桶の縁に掛かりました。それを、誰かが押し戻して――鎖の重みに負けてつま先が沈んでいきます。二つに折り畳まれた姿勢で、私の身体は完全に水没しました。
苦しい。顔が上下逆さになっているせいでしょう。息をしていなくても、鼻の中に水が入ってきます。くしゃみが出そうになるので、わずかずつ息を吐いて水抜きをします。
まさか、最初に懸念したように、水から浮かび上がって魔女の正体を現わすか溺れ死んで潔白を証すかの二者択一ではないでしょうね。
そんなはずは絶対にありません。教区長様にはそこまでの信頼を置けませんけれど、父様が娘を見殺しにする、どころか積極的に危害を加えるなんて、絶対にあり得ません。
それでも……これまでと違って、直截に命の危険を感じます。恐怖で急速に息苦しくなりました。
引き上げてもらえるまで堪え抜く。それしか、私に出来ることはありません。せいぜい、あと三十秒で引き上げてもらえるでしょう。
一、二、三、四、五……
……二十八、二十九、三十!
まだ気配もありません。あと三十秒……も、息が続きそうにないです。それでも、引き上げてもらえると信じます。
……もう、駄目。
苦し紛れに息を吐きました。ぼごごっと音を立てて、大きな泡が沈んでいきます。間違えました。頭が下になっています。泡は水面へ向かって浮かび上がっています。
息を吐き出せば、どうしても吸いたくなります。それを渾身の気力で我慢します。水が肺へ入ってしまえば溺れ死にます。
痛い……?!
断末魔の痙攣でしょうか。身体が海老のように跳ねて、桶にぶつかったのです。
お願いです、神様。こんなのは厭です!
身体の芯まで苦しいだけで、救いとなる快感がひと欠けらもありません。ああ、こんなことを考えるのも、私の身体に淫魔が巣食っているせいなのでしょうか。
身体の下のほうできらきら光っている水面が、すうっと暗くなっていきます。頭に霞が――真っ黒な霞が掛かっていきます。
神様の下に召されるのでしょうか。もしも、神様にまで魔女だと断罪されたら……
がくんと、脚に衝撃が加わりました。誰かの手が、いえ複数の手が、私の身体を押したり脚を伸ばしたりしています。ぐうっと脚が引っ張られて。
「ぶはあっ……げふっ……!」
一気に空中へ引き上げられて、私は咳き込みながら空気を貪りました。
冷たくて甘い空気。全身に酸素が沁み通る感覚が、快感を超越して生きている実感です。
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これで、今夜はおしまい――ではありません。尺が長くなったので、章を追加して『三穴の魔封じ』が続きます。
詳しくは次回ですが、こんな感じです。清めていただくのですから、喜んで自発的に――です。

魔女は体表に悪魔との契約の刻印を隠している。そこは痛覚を持たないから針で刺して調べる。実に好都合です。しかも。
「淫魔が契約の印を刻むのは、淫らな部位に限られているのですよ」
とはいえ。魔女なら、痛くなくても「痛い!」って叫ぶんじゃないかしら?
その答えは、本文をお読みください。とはいえ、針を刺されても分からないように目隠しをするのはパス。一人称ですから、いちいち「何をされた」かをヒロインの触覚から推測するのでは面倒ですので。
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魔女の嫌疑
月曜日。数日ぶりの爽やかな目覚めでした。もう、淫魔が囁き掛けてくることもないでしょう。生まれ変わったつもりで、新たな一週間に臨みます。
……でも、だめでした。淫魔の囁きは聞こえてこないけれど、まだ続いているヴァギナの疼きが、聖礼典のことばかり思い出させます。儀式の意義を考えるのではなく、父様のペニスが私のヴァギナに突き刺さったという外形的な事実と、それに伴なう激痛と、にじみ出てきた悦びと。そんな淫らなことばかりが。
気もそぞろに一日を過ごしました。レース編みは、今日も手に付きませんでした。
そして夜はベッドの中で……またしても淫魔の囁きに負けてしまったのです。
それも、これまでのようなおいたではすみませんでした。父様によってつけていただいた道には、指が三本も入ってしまったのです。きついし痛みもありましたけれど、快感のほうが上回っていました。
肉棒を中で動かされながら淫魔のペニスを抓られたときの甘い激痛を思い出して……右手の人差し指から薬指までを挿入して、親指で淫魔のペニスを刺激しました。左手が空いているので、指をうんと広げて左右の乳首を同時に擦りました。
「ああああっ………だめえええっ!」
慌ててシーツを口に詰め込みましたが、時すでに遅しです。父様もジャックも熟睡していることを願うしかありませんでした。
もしも父様の耳に届いていなかったとしても、知らん顔で通すほど、私は自堕落ではありません。牧師様にお願いして、礼拝堂での朝のお祈りに立ち会っていただきました。
牧師様は私を責めるでも諭すでもなく、けれど赦しの言葉も掛けてくださいませんでした。その代わり、予想外の――本来なら喜ばなければならないことをおっしゃいました。
「もう思い悩むことはありませんよ。今日の午後にも、教区長のアンディ・ノートン牧師が来てくださいます。これまでの経過は電話で報告してきたのですが、私ひとりでは困難だろうと判断されて、直々に悪魔祓いをしてくださることになったのです」
牧師様の顔にも声にも悔しさがにじんでいます。牧師でありながら娘を淫魔から護ってやれなかった無念でしょうか。
私にも父様の憂鬱が伝染したのでしょう。ちっとも安心出来ずに不安が募るばかりでした。
ノートン教区長様がいらっしゃったのは午後二時でした。大きな馬無し馬車で、教区長様は(聞くところによるとご自分のお歳の半分の)若い奥様を同伴なさっていました。助手の牧師様と馬無し馬車の運転手さんも一緒です。
御挨拶もそこそこに、父様を含む四人の男性は、馬無し馬車のに積んできた様々な道具を礼拝堂に運び入れる作業に取り掛かりました。私と(付け足しに)ジャックは、奥様の接待です。といっても、コーヒーとクッキーをお出しした後は、居間の隅っこに控えて、奥さまが読書をなさる邪魔にならないようにおとなしくしているだけでしたけれど。
奥様は社交的でないのか、子供(悔しいけれど、奥様からみたら、私はじゅうぶんに子供でしょう)の相手が苦手なのか、私たちにあまり話しかけてはくださいませんでした。
ただ、いくつか教えていただいたひとつが、奥様も悪魔祓いに立ち会われるとのことでした。
私は、とても心強く思いました。だって、これまでにされたことといえば、羞ずかしいことばかりでした。女性が立ち会えば、そんなにひどいことはされないでしょう。でもそれでは、悪魔祓いの霊験も薄れるのではないかしらと――矛盾した不安に苛まれたりもします。
夕食の支度は六人分しか調えなかったので、ぎりぎりテーブルに載りました。
「ジュリアは食事をせず、礼拝堂でお祈りをしていなさい」
罰でも信仰の証でもなく……夜になってから、教区長様によって行なわれる私への悪魔祓いは肉体的にとても厳しいので、嘔吐などをして場を穢さないための予防処置だそうです。
そう聞かされただけで、私は心の底から震え上がってしまいました。でも……どんなふうに虐められる/訂正します/清められるのだろうと、想像すら出来ない事柄を想像すると、腰の奥に熱い疼きが生じます。この不合理な感情は、淫魔がもたらすのでしょうか。苦しむのは私の肉体であって、淫魔ではありません。
そんな得体の知れない恐怖は、礼拝堂に入るなり、具体的な恐怖に変わりました。そして、腰の奥の疼きがいっそう熱を帯びてきました。
馬無し馬車の大きな荷台に積まれていた荷物が、すべて礼拝堂に運び入れられたのでしょう。
実際に人間を磔に掛けられる大きな十字架が、聖壇の前に立てられています。天井には大きな滑車が幾つも吊り下げられて、太い鎖が垂れています。一本の鎖の下には、行水桶ほどの差し渡しで、立ったまま腰まで浸かれそうな桶が据えられています。ベッドの幅ほどもある梯子が、床からニフィートの高さで水平に支えられています。断面が三角形をした太い木材が、四本の脚で支えられています。
これは………父様の本棚にある、聖書研究の専門書の挿絵とそっくりです。中世の魔女裁判、あるいは異端審問の拷問道具です。
そう思ってさらに見回すと、肉を挟んで引き千切る大きなペンチとか、火桶と焼鏝とか、いろんな大きさと形の木枷や鉄枷も、幾つかの木箱に収められています。隅へ寄せられた信者席の上には、長短様々な鞭や笞が置かれています。
なんてことでしょう。これらの拷問道具はすべて、私に使うために持ち込まれたのです。
私は恐慌に陥って、出入口へ駆け寄りました。でも、そこで立ち止まりました。ここから逃げ出しても、私には行くべき場所がありません。家へ戻って問いただしても(何を問いただすというのでしょう)どうにもなりません。むしろ、ジャックまで何らかの形で巻き込んでしまいます。
逃げてどこかへ隠れてみても、狭い町です。簡単に見つかって連れ戻されるでしょう。町の人たちにも知られてしまいます。それよりも。私の周囲から淫魔を退ける聖礼典を拒んで逃げるなんて、淫魔をみずから進んで迎え入れるようなものです。
私はこの場に留まって。可能な限り厳しい試練を与えてくださるよう、神様にお願いするべきなのです。そう決心しました。でも、怖い……腰の奥に熱い疼きなんか、まったく生じません。
どうしようもないので聖壇の前に跪いて両手を胸の前で組みました。でも、お祈りの言葉を唱えるどころか、頭に浮かんですらきません。
そのうちに、怖いもの見たさの好奇心が頭をもたげてきます。
まずは、すぐ後ろに立ててある十字架。犠牲者の足を載せるための手前に傾斜した踏台がありません。その代わりと言ってはなんですが、ずっと高い位置に、Fの文字を左へ倒したような棒が突き出ています。腕木の位置から推測して、腰のあたりです。
一昨日の私だったら、上向きに突き出ている二本の棒の意味に気づくとしても、しばらくは考え込んだことでしょう。でも今は、見た瞬間に理解しました。と同時に、アヌスもヴァギナと同じ用途に使えるらしいという新たな知見も得ました。男女共通の器官。ソドムの罪とはこういうものだったのですね。
十字架にはいたるところに、開閉式の半円形の金属の環が取り付けられています。これなら、手足に釘を打ち込まなくても犠牲者を固定できます。十字架に磔けられても、命には係わらない。そして上向きの棒は二本。つまり、女性を辱める/訂正します/清めるための聖具なのです。
それでも、ずいぶんと苦しいでしょう。背筋を氷水が流れ落ちます。なのに、腰のあたりに溜まった水が熱くなってきました。
別の大道具を観察しましょう。ずっと気になっていた三角の材木。作業台には使えないし、刈り取った麦を乾燥させるには風通しが悪そうです。
あら……中程の先端にどす黒い染みが。まさか、血痕?
今後は背筋が凍りつきました。淫魔封じの針金と、一昨夜の出血からの連想です。もしも、これに跨ったりしたら。鐙は無いし、馬の腹よりもつるつるしていますから腿で締め付けても体重を支え切れないでしょう。
「きゃっ……?!」
無意識に後ずさっていたのでしょう。つまずいて転びかけました。
もう、好奇心なんか消え失せました。それに……これらは私に使うために、教区長様がわざわざ持ち込まれた道具類です。観察して推測しなくても、すぐにでも使い方と恐ろしさとを、私自身の身体で知ることになるでしょう。
私は聖壇の前へ逃げ戻って、全身全霊でお祈りをしました。
神様。私をお護りください。
でも……神様が加害者ではないでしょうか。絞首刑の執行者に命乞いをしても無駄なのではないでしょうか。
絶望です。それなのに……十字架に磔けられてヴァギナもアヌスも串刺しにされたら、苦しいだけだろうかなんて、とんでもない妄想が湧いてきます。三角の材木に乗せられたら激痛に泣き喚いて、さすがの淫魔も辟易して逃げるのではないかしらなんて、ちょっぴり期待したりもします。
ああ……住居に通じるドアの開く音です。いよいよ、私への凄絶な聖礼典が始まるのです。
父様が先導する形で、教区長様と奥様、助手の牧師様。その後ろは運転手さん――でもボブさんでもありませんでした。町長のディーラーさん、銀行頭取のギャレットさん、保安官のハーベイさん。町の名士様ばかりが三人も。
それにしても、奥様はなんという服装をしてらっしゃるのでしょう。長袖のブラウスに細身の乗馬ズボン。乗馬ズボンとすぐに分かったのは、歯車状の拍車が付いたブーツを履いているからです。ズボンはぴっちり肌に密着して、脚もお尻も生の輪郭が浮き彫りになっています。淫らです。もっと淫らなのがブラウスです。ボタンを留めずに、裾をおへその上で結んでいます。余った端がリボンみたいでお洒落ですが、おへその露出くらいは、この服装の中では些末事です。胸元が開いて、乳房が半分くらいは見えています。
男性の皆様は、それぞれの職業にふさわしいセミフォーマルな装いです。
その皆様が、父様と奥様を除いて、私を取り囲みました。私は立ち上がるタイミングを失って、跪いたままです。
「これより、ジュリア・コバーニの魔女審問を行なう」
教区長様が厳かな声で、とんでもないことをおっしゃいました。
「魔女審問って……悪魔祓いではないのですか?」
抗議の意味を込めて尋ね返しながら、心のどこかでは――ああ、やっぱりと思いました。それで、ここにある恐ろしい拷問道具の説明がつきます。
「これまでの魔封じの失敗は、すでにお前の体内に淫魔が巣食っているからではなかろうか――というのが、ノートン先生のお見立てなのだよ」
父様が優しい声で、これも恐ろしいことをおっしゃいます。
どうでもいいことですけど。ここには牧師様が三人もいらっしゃいます。区別するために、牧師としての発言であっても父様と考えることにします。
「立て。立って、衣服を下着まですべて脱いで全裸になるのだ」
教区長様が、懇切丁寧に無慈悲なことをお命じになります。
「あの……この方たちは?」
魔女審問だろうと悪魔祓いであろうと、町長さんたちは部外者でし。
「魔女審問は、私と妻のフェビアンヌ、ベルケン牧師とヒュンケル牧師の四人で執り行ないます。他の三人は証人です」
これから行なわれることは、外形的には暴力行為であり強奻だと、教区長様は明言なさいました。ですが、それは神様の絶対的正義の下に行なわれる私の救済なのです。だから犯罪ではないという証明のために立ち会うのだそうです。
私としては羞恥が募るだけです。
「もっとも。彼らにも幾分かは手伝ってもらって、いずれはヒュンケル牧師と彼らだけで魔女審問や悪魔祓いを出来るようになってもらいます」
つまり、この場にいる全員が私を拷問に掛けるという意味です。
「納得できたところで、さっさと全裸になりなさい」
納得なんて出来ません。でも、拒んだらどんな目に遭わされるか、身体を張って確かめる蛮勇などありません。それに、奥様はグラマラス過ぎて、むしろ私のほうが/なんでもありません。
私は立ち上がって、取り囲んだ人たちの視線に怯えながら、晴着のワンピースを脱ぎました。シュミーズもドロワーズも。最後に、胸の布をほどきます。
「そこの台に仰臥しなさい」
そこの台というのは、両端と真ん中を脚に支えられて水平に寝かされた梯子のことです。今さら恥部を隠しても無意味ですから、両手を使って足も大胆に動かして、床からニフィートの高さにある台に上がりました。
教区長様とベルケン牧師様とが、台の両端に立たれて――私の手足をニフィートほど広げて、そこに置かれてある、二本の長い鎖につながれた木枷に嵌めました。そして、ベッドの端に取り付けられているハンドルを回すと――木枷が引っ張られて、私の身体も引き伸ばされます。でも、両手で木からぶら下がった(初潮を迎えてからは、そんなお転婆は慎んでいます)くらいまで引っ張られたところで、ハンドルは止まりました。
「このまま引っ張り続けると、肩を脱臼して股関節まで破壊されますが、拷問が目的ではないので、身動きできなくなったところで止めます」
拷問ではないというお言葉に、ほっとしました。では、そんなに痛いことはされずにすみそうです。羞ずかしいのさえ我慢すれば良いのです。
「さて。悪魔は人間の身体に契約の印を刻むことで、その身体を乗っ取ります。それが無いうちは一時的に憑りつかれたとしても、悪魔祓いによって、その者を救えるのです」
教区長様が立会人の皆様に講釈されます。
「契約の印は痣や黒子、疣などに偽装されていますが、そこは痛みを感じなくなっています。したがって……」
ベルケン牧師様が、皮革で装丁された薄い本のような物を開きました。立会人と父様に見せてから、私にも見せ付けます。
太いのや細いの、長いのや短いの――何十本もの針が、びっしり並べられています。
「この針を怪しい箇所に突き刺して、痛みを訴えない箇所があれば、即ちそこが、契約の印なのです」
「全身にですかい?」
うんざりしたような声で尋ねたのは、保安官のハーベイさんです。
私はうんざりどころか、恐怖に震え上がっています。
「そうするときもありますが、ヒュンケル牧師の観察で、相手は淫魔だと判明しています。淫魔が契約の印を刻むのは、淫らな部位に限られているのですよ」
「つまり、股座とか乳房かね」
これは町長様の質問ですが、保安官とは反対に、声が弾んでいます。手間が省けて嬉しいのでしょう。
もっとも敏感な部分ばかりに針を刺される……私は気が遠くなりそうです。
「では、私が手本を示します。もっとも怪しい箇所からです」
教区長様が、淫魔のペニスを掘り起こしました。
「待ってください!」
誤って指先に針を突き刺しただけでも痛いのに。こんな敏感な突起に刺されたら……
「そこは淫魔のペニスだと、父様は教区長様から教わったそうです。針で確かめなくても、証拠は明白なのではないでしょうか」
「おや。おまえは自らが魔女であると認めるのか。町中を素っ裸で引き回され、人々に誹られ石打たれた挙げ句に、炎に焼き尽くされたいと望むのか?」
「あああ、そんな……」
そうでした。それはリンチではなく、神様の御名の下に行なわれる正義なのです。そして私は、復活の日にも甦ることはなく、地獄の劫火で永遠に焼き続けられるのです。
神様が「誤審」をなさるとは思えません。ならば……ほんとうに私は、すでに淫魔に憑りつかれているのでしょうか?
「安心なさい。この疣は、善良で清純な乙女にさえ生えている場合もあります」
そのお言葉だけで、劫火が地平線の彼方まで遠ざかりました。
見せてあげなさいと声を掛けられて、奥様がズボンをずり下げました。たぶん下着も一緒だったのでしょう。いきなり下半身が露わになりました。もっと驚いたことには、脱毛症のようです。
奥様はラビアに指を当ててV字形に開くと、父様の前に立って腰を突き出しました。
「彼女にも淫魔のペニスが生えているのが見えますね?」
父様が腰を屈めて覗き込みます。
「ううむ……たしかに」
奥様はそうやって、立会人の皆様にも見せて回りました。
「ただし……」
教区長様が、私の淫魔のペニスをくにゅくにゅとくじります。
「ひゃうんっ……」
莢を剥いたり戻したり。中身の先っぽをくすぐったり。
立て続けに電気が奔って、硬くしこっていくのが自分で分かります。
「このように、あたかも男性のペニスの如く勃起するのは淫魔の悪行です。この娘がすでに憑りつかれているのか、まだ救えるのか、慎重に判断しなければなりません」
私ひとりを除いて皆が納得したところで、審問が再開されます。
淫魔のペニスをつままれて、きゅっと引き伸ばされます。上体をわずかでも曲げられないので、顎を引いても下腹部は見えません。かえって幸いです。
チクッと冷たい感覚に続いて鋭い痛みが貫きました。反射的に腰を引きました。梯子の踏み桟がお尻を押し戻します。
「きひいいっ……」
悲鳴が後から追い掛けてきます。でも、鞭打たれたよりは痛くなかったです。
「おや。それほど痛くはなさそうですね」
教区長様も首を傾げます。
「ほんとうに、ここが契約の刻印かもしれません。もっと詳しく調べましょう」
また引き伸ばされて、今度はチクッが根本のほうへきました。
ぶつっ……と、針が肉に突き刺さる音を肌で聞きました。
「がゃわ゙あ゙あ゙あ゙っっ……!!」
痛いと感じた瞬間に絶叫していました。
「ひいいいいい……」
悲鳴が止まりません。
針を引き抜かれて、ようやく止まりました。
「今度は芝居掛かっていますね」
教区長の助手のベルケン牧師様が、私が穿いていたドロワーズをずたずたに引き裂いて丸めました。それを私の口に押し付けます。
口をふさがれるというのも怖いですが、その詰め物が私のドロワーズだというのがすごく厭です。でも、牧師様に逆らうのはいけないことです。素直に口を開けて、声を封じていただきました。
「悲鳴に惑わされることなく、全身の反応を見て判断するのです」
教区長様はそうおっしゃって、淫魔のペニスの根元をつまみました。そして、針を真上から突き刺したのです!
「ま゙ゃわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!!」
これまででいちばんの激痛が腰で爆発して脳天まで噴き上げました。
「も゙お゙お゙お゙、お゙お゙お゙お゙お゙……」
ずぐずぐと針が淫魔のペニスの奥深くまで肉を引き裂いて突き進むのが感じられます。腰はよじれますが、そうすると激痛がさらに跳ね上がるので……腰を突き上げた形で凍りつくしか出来ません。
針が引き抜かれても、激痛が居座っています。手首と足首もずきずきと痛むのに気づきました。木枷に逆らってもがいたのでしょう。
「ここには、悪魔の刻印は無いようですね」
ああ、良かった。神様、ありがとうございます。
しかし、感謝の祈りを捧げるのは早計でした。
「次は乳房です」
そうでした。罪深い女の身体には、悪魔に狙われやすい部分が幾つもあるのです。
「もしも淫魔がすでにこの娘に憑りついているとすれば、体内の奥深くへ逃げ込まないようにしておかなくてはなりません」
父様が名指しされました。
「この娘の乳房にこれを嵌めて、淫魔の逃げ道を断つのです」
これというのは、8の字を半割りにした鉄枷です。それが、乳房の上下にあてがわれて、両端をボルトで締め付けていきます。ぎりぎりと鉄枷が乳房に食い込んできます。
「むううう……」
すごく痛いのですが、淫魔のペニスに針を刺されることを思えば、ちょっと強く揉まれているくらいでしかないです。
乳房の根元をきつく縊られて、中ほどから先の部分が、針で刺せば破裂しそうなくらいに膨れました。
「淫魔が潜んでいると仮定して、じわじわと追い込んでいきましょう」
あなたたちも経験しなさいと――教区長様は三人の立会人と父様に針を持たせました。淫魔のペニスに使ったのより、ずっと太くて長い針です。
最初は父様です。昨日までは、いえ、この瞬間にも敬愛している父様に拷問される/違います/検査していただくのです。これは形を変えた祝福だと……思うようにします。
父様が左の乳房をわしづかみにして、ますますぱんぱんに張り詰めさせます。鉄枷で縊られているすれすれのところに針が突き立てられました。
「ん゙む゙うううう……!」
三十分前の私だったら、口をふさがれていなかったら、喉から血を吐くほどに絶叫していたでしょう。でも、淫魔のペニスへの針刺しを体験してしまっては、颶風に対する強風でしかありません。ですが、乳房の中をぐずぐずと針が突き進んでいく感触は、蜈蚣に食い荒らされるみたいな気色悪さです。
ぷつっと、針が乳房を突き抜けました。針を残したまま、父様が引き下がりました。
父様と反対の側に町長のディーラーさんが立ちました。右の乳房を、父様の倍以上の力で握り潰します。そして、三倍くらいの勢いで、一気に乳房を貫きました。
「も゙お゙お゙おおおっ……!」
二人を比べれば、やはり父様の刺し方には、娘へのいたわりがあふれています。
三人目は銀行頭取のギャレットさんです。先の二人とは違って、左の乳房を上から下へ縦に刺し通しました。
最後が保安官のハーベイさんです。父様よりも若い三十二歳です。いえ、意味はありません。修道女に準じた生涯を送ると決めているのですから、どんなに若くても恋愛対象にはなりません。ボブさんは、家族に次ぐ親密さですから……こんなときに、なにを浮ついたことを考えているのでしょう。でも、若い男性(といっても、私の倍以上ですし、父様と三つしか違いません)に乳房をつまかれるのは、四十や五十の男性にそうされるのとでは、感じ方が違います。
などと、あれこれ考えてしまうのは。ハーベイさんが乳房をつかんだきり、固まっているからです。
「どうしても、やらなきゃ駄目ですかね?」
やってください。どんなに痛くてつらくても、淫魔を追い祓うためです。
「この娘が魔女だとしたら、町にとんでもない災厄をもたらします。治安を預かる者の義務でもあるのです」
教区長様に優しく強く諭されて、ハーベイさんも覚悟を決めたようです。
「む゙ゔうう、うううう、ゔゔうう……」
ためらいながらゆっくり突き刺すので、四人のうちではいちばん痛かったです。
「よろしい。とどめは私がとどめを刺しましょう」
教区長様が、それまでのよりは短い針を持って、私の横に立ちました。淫魔のペニスへの仕打ちから、その針がどんなふうに刺されるか予測できてしまって、口の中の布を強く噛み締めました。
それでも、淫魔のペニスに垂直に突き立てられるよりは痛くないでしょう。せいぜい嵐くらいではないかしら。それよりも、左の乳首を正面から突き刺されたら、心臓に達するのではないかしら。そちらが心配でした。
同じような描写の繰り返しになりますから端折りますけど。絶叫は詰め物に吸い込まれて、乳房が爆発したと錯覚するまでの激痛ではありませんでした。
今度こそ終わった。魔女の嫌疑は晴れたと喜んだのですが。教区長様はとても慎重なお方でした。
「狡猾な淫魔は、目の届きにくい部分に印を刻むものです。フェビアンヌ。この娘の腋と股間の縮れ毛を剃り落としてやりなさい」
「…………」
私は、ただ諦めるだけでした。
毛を剃られてしまうなんて、とても羞ずかしいことです。でも、女性器の中まで晒しているのですから、それよりも羞ずかしいなんてことはありません。それに、剃られた毛はじきに元に戻ります。とにかく。徹底して魔女の嫌疑を晴らしていただくことだけを願います。
父様は髭を蓄えてらっしゃいますが、もちろんお手入れは(つるつるの顔よりも入念に)必要です。父様の泡立て皿と剃刀が用意されました。いつもは父様の顎に泡を塗っている刷毛で私の股間を撫でられると考えると、股間にリンパ液がにじみ出てきます。それとも、淫らな汁なのでしょうか。
まず股間が真っ白に塗りつぶされて、剃刀が当てられました。
ぞりっ、ぞりっ……縮れ毛が剃られていくかすかな感触が肌を震わせます。くすぐったくて気持ちいいです。こんな楽しみが毎朝あるなんて、男の人って得だな。そんなことまで考えてしまいました。
立会人の皆様も、私と同じように手持無沙汰なのでしょう。私が剃られていくのを見物しながら、とりとめのない雑談をしています。
「あらかた剃ってしまったな」
「恥毛を剃ってしまうと、ますます幼く見えるな。さすがに良心がとがめるぞ」
「いや。使えるなら、女は若ければ若いほどよろしい」
耳をふさぎたくなりますが、それも出来ません。
「剃り残しが無いようにしなさい。ああ、アヌスのまわりは後回しです」
教区長様が、あからさまな指示をなさいます。
「これからは百マイルも遠征せずにすみますな」
「ストーンのやつ、石っころだけあって融通が利かん」
「ティムの餓鬼なんか、ケツ穴に突っ込みかけただけで出入禁止を食らったからな」
「俺は宣教師スタイルだけで満足ですぜ。女の顔が見えなきゃ、つまらんでしょうが」
意味が分かりませんが、ストーンさんというのはサロンの経営者です。ケツ穴がどうこうというのは、私が得た最新の知見に照らせば、ソドムの罪を……市長様ともあろうお方が、そんなことを望んでらっしゃるなんて、信じられません。私の聞き違いです。
「ホステスが若すぎるビッチ一匹では、ちと物足りんが……」
「いや、あの乳はじゅうぶんに鞣し甲斐がある。若いのだから、わしらの好みに調教できるというものだ」
私としても、彼らの冗談話を本気で解読するつもりはありません。それでも、聞き耳を立てているうちに、腋毛まで一本残さずつるつるに剃り上げられてしまいました。
そして、今度はピンポイントではなく雨が平野に降り注ぐように、下腹部と腋を何十本もの針で突き刺されたのです。時間は掛かりましたけれど、淫魔のペニスや乳首に比べたら微風でしかありませんでした。
「それでは、最後の一か所を調べるとしましょう」
教区長様のお言葉を、今の私は理解できます。
私を引き伸ばしていた鎖がわずかに緩められたした。父様とベルケン牧師様とが手足の木枷を持ち上げて、私を俯せにしました。改めて鎖が巻き縮められます。
お尻の肉に熊手のような道具が食らいついて、左右に引っ張られます。そこにひんやりとした空気が触れて、アヌスを剥き出しにされたのが分かりました。
フェビアンヌさんがお尻を覗き込んで――そこの産毛(縮れ毛なんか生えていません)を剃りました。
ファビエンヌさんが下がると、六人の男性が私のお尻を取り囲みました。皆さん、長い針を一本ずつ持っています。
「では、私から」
教区長様の声と同時に――ぷつっと針がアヌスに突き刺されました。
「む゙も゙お゙お゙お゙お゙っ……!」
ラビアに刺されるより、よほど厳しい激痛でした。
ぷつっ、ぷつっ、ぷつっ……続けざまに突き刺されて、そのたびに私はくぐもった悲鳴を上げさせられました。
「ふむ。ここにも印は刻まれていないようです」
そのお言葉を聞きながら、ふっと疑問が生じました。
乳房を調べるときは、淫魔が奥深くへ逃げ込まないようにと、鉄枷で縊られました。でも、ラビアやアヌスを調べるときにはそんな処置は取れません。それで構わないのでしょうか。でも、教区長様に尋ねる勇気はありません。淫魔の逃げ道を封じるために、どんな恐ろしい処置を追加されるか分かりませんから。
木枷を外す前に、ファビエンヌさんが傷の手当てをしてくれました。アルコール消毒をしてヨードチンキを塗るというより針で開けられた穴に擦り込むという、乱暴な手当てです。針で刺されるよりは痛くありませんが、痛みが何分も続くし、乳房も女性器もアヌスも同時に痛いので、とろ火で焼かれるようなつらさでした。
これで、私の魔女嫌疑は晴れたと安堵したのですが。
「念には念を入れて調べましょう。せっかく、その用意もしてあることですし」
まさか、ここにある恐ろしい拷問毒具をすべて私に使うおつもりなのでしょうか。「準備をし過ぎるということは無い」という格言はありますが、「それをすべて活用しろ」とは言いません。
それでも、私は抗議をできません。魔女審問を拒否すれば、それが魔女である何よりの証拠にされます。
「魔女は自然に逆らった存在です。水に沈めようとしても、水に拒まれるのです」
あの大きな桶に水を張って、私を沈めて確かめるのだとおっしゃいます。でも。水に沈めば魔女でないという証しを立てられるのでしょうが、沈んでしまえば溺れ死にます。
父様も加わっているのです。ぎりぎりのところで引き上げてもらえますよね?
水に浸けるといっても、大桶は空です。直径二フィート半、深さ三フィートもの桶に水を満たすには何時間も掛かります。せめて、その間は休ませてもらえる――なんていうのは、甘い考えでした。裏の井戸から水を汲んでくるのは、私ひとりの仕事にされてしまいました。
「みずからの潔白を証明するための仕事です」
元気なときでも、気が遠くなるような重労働です。それを、急所ばかり何十本もの針を突き立てられた満身創痍の肉体でやり遂げなければならないのです。
全裸のままで働くようにと、教区長様はおっしゃいます。それどころか。
「礼拝堂から外へ出れば、それだけ淫魔の付け込む隙も増えるのではないでしょうか」
教区長様から教えていただいた魔封じをしておきましょうと、父様が提案しました。日曜礼拝のときのあれは、やはり父様がご自分で考えたものではなかったのです。
乳首を針金の輪で締め付けて乳房もぐるぐる巻きにして、針金の束で股間を封印したうえで、淫魔のペニスからは十字架を吊り下げる。ただ歩くだけでも、自分で自分を痛めつけるに等しいというのに、その姿で水を汲んで運ぶのは――ほとんど不可能事です。けれど、教区長様は大きく頷かれたのです。
「おお、そうでしたね。あなたの娘さんを案じる気持ちは良く分かります」
私も、父様と教区長様に感謝しないといけないのでしょうが……どうしても、その気になれませんでした。それなのに、厳重に身体を締め付けられ突起を虐められると……頭に靄が掛かって、腰の奥が熱く潤ってしまうのです。
何も知らない信者の皆様に見られる懸念が無いのですし、全裸でお淑やかもあったものではありませんけれど、がに股にならないよう気を付けて、胸を張って仕事をしました。だって、そのほうが刺激が強くて/なんでもありません。
二ガロンのバケツを同時に二つ持って、裏庭と礼拝堂を何十回と往復しました。十字架を膝で蹴りながら歩きました。最初のうちは痛いのがずっと強いのですが、その中でかすかな快感がだんだんと蓄積していきます。水を汲んでいる間は股間の揺れが止まっていますが、腋を締めてポンプのレバーを動かすと乳房がこねくられて、やはり一定した苦痛の中に快感が蓄積していきます。
十往復くらいまでは回数を覚えていましたが、あとは霞の中を雲を踏みながら歩いているみたいになって――皆様が夕食をとっている間も、私は働き詰めでした。お昼も食べていないのに、ちっとも空腹は感じませんでした。というか、淫魔に憑りつかれようとしている罪深い娘には、人並みに食事をすることなど許されていない。そんなふうにも思うのです。
水は大桶一杯に満たすのではなく、六インチ手前で止めるように言われていました。それでも、二十往復以上です。自分自身を拷問に/ではないです!/魔女審問に掛けていただくための準備が調ったときには、精根尽き果てて床に伏してしまいました。俯せになって自分の体重で乳房をこねくり乳首を虐め、十字架を太腿で押さえて腰をくねらせて……桃色の霞が薄れないようにしていました。これは魔女審問のための準備なのですから、淫魔の囁きにそそのかされた自涜行為ではありません。神様に祝福していただいているのです。なにかとんでもない考え違いをしているのかなとも思いましたけれど、三匹の鶏と二匹の牛で脚が何本あるかさえ計算できない状態ですから、そんな神学上の問題を考えられるわけがありません。
わずか数十分でしたが――ある意味で、これまでの生涯の中でいちばん幸せな時間を過ごしていたのではないでしょうか。苦痛と快感とがせめぎ合って、互いが互いを押し上げていくような恍惚。それが、決して淫魔にそそのかされたものではなく、神様に与えていただいているという、心の充足。
その一方で。なにかがひどく間違っているという予感もありました。
もしや、私ではなく……教区長様や父様こそが悪魔に魅入られて、私を生贄に捧げようとしているのではないだろうかという疑問。もちろん、私よりもずっと神様のおそばに居る人たちが悪魔の手先であるなんて、馬鹿げた妄想です。そんな疑いを持つことこそ、私が淫魔に憑りつかれよとしている証拠ではないでしょうか。
「床に身体を擦りつけてオナニーとは、淫魔に支配された魔女の嫌疑がますます深まったな」
教区長様の声で、私は我に還りました。
「しかし、そうではない可能性もあります。どうか、娘のためにも厳正に取り調べてください」
「言われるまでもありません。我が教区に魔女が現われるなど、あってはならないことです。この娘が魔女でないことを皆で祈りましょう。アーメン」
起き上がって床にへたり込んでいる私に向かって、教区長様が十字を切ってくださいました。そして父様の手で、天井の滑車から垂れている太い鎖が、揃えた両足に巻きつけられました。
そのまま立たされて。短い鎖でつながれた手錠が股間に通されました。私は右手を前で拘束され、左手は後ろです。手を動かせば、鎖がスリットに食い込んで――ごつごつした快感を強いられます。
立会人の皆様が、鎖の端を引っ張ります。そのままだと転んでしまうので、自発的に床に仰臥しました。脚が吊り上げられ、腰が持ち上がって――身体が宙に浮きました。水を張った大桶の真上です。
じわじわと吊り下げられていきます。ほつれたお下げが水に浸かり、目も水面下に沈もうとしています。そんなことをしても、せいぜい一分かそこらの違いでしょうが、急いで深呼吸をして肺に空気を溜めます。
すうっと顔が水に没して、肩から乳房……股間に水の冷たさを感じた直後に、頭が底に着きました。そこでは止まらずに鎖が緩められていって、脚が手前へ折れていって、桶の縁に掛かりました。それを、誰かが押し戻して――鎖の重みに負けてつま先が沈んでいきます。二つに折り畳まれた姿勢で、私の身体は完全に水没しました。
苦しい。顔が上下逆さになっているせいでしょう。息をしていなくても、鼻の中に水が入ってきます。くしゃみが出そうになるので、わずかずつ息を吐いて水抜きをします。
まさか、最初に懸念したように、水から浮かび上がって魔女の正体を現わすか溺れ死んで潔白を証すかの二者択一ではないでしょうね。
そんなはずは絶対にありません。教区長様にはそこまでの信頼を置けませんけれど、父様が娘を見殺しにする、どころか積極的に危害を加えるなんて、絶対にあり得ません。
それでも……これまでと違って、直截に命の危険を感じます。恐怖で急速に息苦しくなりました。
引き上げてもらえるまで堪え抜く。それしか、私に出来ることはありません。せいぜい、あと三十秒で引き上げてもらえるでしょう。
一、二、三、四、五……
……二十八、二十九、三十!
まだ気配もありません。あと三十秒……も、息が続きそうにないです。それでも、引き上げてもらえると信じます。
……もう、駄目。
苦し紛れに息を吐きました。ぼごごっと音を立てて、大きな泡が沈んでいきます。間違えました。頭が下になっています。泡は水面へ向かって浮かび上がっています。
息を吐き出せば、どうしても吸いたくなります。それを渾身の気力で我慢します。水が肺へ入ってしまえば溺れ死にます。
痛い……?!
断末魔の痙攣でしょうか。身体が海老のように跳ねて、桶にぶつかったのです。
お願いです、神様。こんなのは厭です!
身体の芯まで苦しいだけで、救いとなる快感がひと欠けらもありません。ああ、こんなことを考えるのも、私の身体に淫魔が巣食っているせいなのでしょうか。
身体の下のほうできらきら光っている水面が、すうっと暗くなっていきます。頭に霞が――真っ黒な霞が掛かっていきます。
神様の下に召されるのでしょうか。もしも、神様にまで魔女だと断罪されたら……
がくんと、脚に衝撃が加わりました。誰かの手が、いえ複数の手が、私の身体を押したり脚を伸ばしたりしています。ぐうっと脚が引っ張られて。
「ぶはあっ……げふっ……!」
一気に空中へ引き上げられて、私は咳き込みながら空気を貪りました。
冷たくて甘い空気。全身に酸素が沁み通る感覚が、快感を超越して生きている実感です。
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これで、今夜はおしまい――ではありません。尺が長くなったので、章を追加して『三穴の魔封じ』が続きます。
詳しくは次回ですが、こんな感じです。清めていただくのですから、喜んで自発的に――です。

Progress Report 1ver.1.01:SMX358
冒頭をかなり変えたので、Ver1.01として公開します。
ストーリイ的には、何も変わっていません。
筆者の不勉強を糊塗糊塗こっとん、ファミレドシドレミファ♪
========================================
自涜と反省
神様はお眠りにはならないと思いますが、人の子は眠ります。ですから、朝のお祈りは目覚めの挨拶から始めます。聖壇の前に跪いて、声に出してきちんと唱えます。
「神様、おはようございます。安らかな眠りから満ち足りた目覚めを迎えられたことを感謝します……」
こうやって毎朝礼拝堂でお祈りを捧げるのは私だけです。父様は牧師ですが、朝は起きてすぐにベッドから出て、その場でお祈りをしています。神様は教会にいらっしゃるのではなく、祈りを捧げる者のそばに、あるいは信者が集まっている場所に降臨されるのです。それがプロテスタントの教えです。
ですから、日曜礼拝のとき以外に、わざわざ教会まで来てお祈りを捧げる信者は、ほとんどいません。
でも私としては、神様に来ていただくのではなく、人の子が神様の前へ足を運ぶべきだと思っています。これは信仰ではなくて気分の問題ですけれど。
かすかな足音が背後に聞こえました。珍しく私より先に起きて外へ出ていると思ったら、ここに隠れていたのですね。
「今日も一日、精一杯に働いて……」
すぐ後ろまで気配が迫りました。
「こらっ!」
振り返りざま、叱りつけました。
「わっ……?!」
跪いている私に合わせて腰をかがめていたのでしょう。ジャックは見事に尻餅をつきました。
「礼拝堂でふざけてはいけないって、何度も言ってるでしょう」
クリームたっぷりのコーヒーにうんと砂糖を入れたみたいな顔が、はにかんだように笑っています。
「ごめんなさい……」
しおらしく謝って立ち上がると……
ぺちん。私のお尻を(かなり強く)叩いて、そのまま掌を上へずり上げました。私にしてみれば、強い力で撫でられた感じです。
「へっへーん。姉ちゃんのおけつ、いい音がするね」
憎まれ口を叩きながら礼拝堂から駆け出て行きました。礼拝堂で走るな騒ぐな――注意する暇もありませんでした。
ジャックの悪戯には手を焼きます。でも、私より二つ年下――ようやく十二星座を巡り終えようとしている弟には、男の子が女の子のお尻とか胸を触るのは淫らな行為だという自覚はないのです。お姉ちゃんがうろたえるから面白がっているだけなのです。
私? もちろん、淫らな行為だと分かっているから、ジャックを叱るのです。
そういう行為が性的な意味を持つとはっきり知ったのは――半年前に女性器から出血して父様に相談したら、雑貨屋のスーザン小母さんが代わりに教えてくださって、そのときにあからさまなことも少し教わりました。
神様の目の前で淫らなことを考えるのは不敬です。もうお祈りを続ける気分ではありません。
「アーメン」
お祈りは端折って、朝の日課に向かいます。礼拝堂と住居は棟続きで通用口もありますが、神様と正しく向かい合うには正面から出入りするべきだというのが、私の信条です。
ああ。私はこれから礼拝堂とか住居とか教会とかを使い分けてお話しするでしょうから、最初に説明しておきますね。教会の敷地の中はすべて教会です。同語反復ですね。
敷地の中に、信者が集まる礼拝堂と、牧師の家族の住居があります。小さな事務室もくっついています。小人数の集会に使う小綺麗で頑丈な「掘立小屋」もあります。あと、家畜小屋とか納屋とかも。畑は建物ではないので、常識として教会とは言いません。これは冗談でした。
真面目な話をします。今日は月曜ですから、助手のボブさんは来ません。食事の用意は三人分だけです。支度が出来たら、フライパンをレイドルで打ち鳴らして合図をします。三人で食卓に就いて、神様に感謝の祈りを捧げてから、私と父様は食事を始めます。弟は、食事を終えかけるところ――といいたいぐらい、ぱくつきます。
これまで、父様とか弟と紹介してきましたけれど、実の家族ではありません。
父様はオットー・ヒュンケル。ここ、人口千人ほどのコッパーベルタウンにある唯一の教会を司る牧師様です。三十五歳です。カウボーイたちと喧嘩をしても(しませんけれど)二人くらいならまとめて相手に出来そうなくらいに頑丈です。年上の人に説法をしてもなめられないようにと、髭もじゃです。髪も髭も赤茶色です。生涯独身の誓いを立てておられます。
父様は法律的には養父(Adoptive father)なのでしょうが、私としては義父(Fathe in law)をもじって心父(Fathe in heart)がふさわしいと思っています。
弟はジャック・ヒュンケル。教会の前に捨てられていた黒人との混血です。黒い縮れ毛を短く刈っています。甘ったるい顔つきだと思うのは白人の美的基準からだけらしいです。
そして私、ジュリア・コバーニ。父様とも弟とも違って、銀髪です。瞳も碧いので、北欧系かもしれません。でも、母様の姓はコバーニですから、ラテン系かもしれません。血統が不明なのは、母様はロマの民で、事情は知りませんが仲間からはぐれたか追い出されたかして、やはり教会の前で行き倒れたからです。身の上を語る暇もなく私を産み落として、すぐに亡くなりました。私の名前は、母様に付けていただきました。
私は生粋の白人なので出自がロマの民でも、町の人たちからあまり差別は受けていません。
ああ、ジャックだって表立った差別は受けていませんよ。なにしろ、父様が牧師様なのですから。元奴隷の子供たちからは半分白人と思われています。友達と呼べる子はひとりもいなくて、だから私に甘えたり悪戯を仕掛けたりするのです。
ジャックは、将来のことを考えるのは早すぎますが、私には確固たる目標があります。ほんとうは父様の後を継いで牧師になりたいのですが、世間の人たちは女がしゃしゃり出ることを望みません。聖書にもはっきりと、女は男に劣ると書かれています。ですから、私は将来は修道女となって、神様に一生を捧げるつもりです。私たちはプロテスタントですから、カソリックのような厳密な組織としての修道院はありませんけれど、熱心な信者が同性で集まって清貧な集団生活を営むという意味での集団は、この州にも幾つか存在します。
父様も賛成してくれています。でも、責任ある社会人として誓約できる年齢には達していないので、受け入れてもらえません。今は教会のお仕事を出来るだけ手伝いながら、生活態度だけでも修道女と同じように、敬虔に清く勤勉であろうとしています。
========================================

つまり、プロテスタントに関する知識不足です。
教会といえば頭に浮かぶのは聖堂ばかりで、実務空間とかも抜けていました。
しかし、まあ。プロテスタントでは、ごく一部の宗派にしか修道院は存在しませんが、篤志家の奉仕活動の拠点とか結構あるそうな。
ううむう。いっそ、クリスチャンにしちまえば楽だった。しかし、アメリカと言えば清教徒ですメイフラワーですプロテスタントです。
それに、そういう環境で修道女(に準じる生活)を目指すヒロインの信仰の篤さが表現できるという。in front of MISOです。
ストーリイ的には、何も変わっていません。
筆者の不勉強を糊塗糊塗こっとん、ファミレドシドレミファ♪
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自涜と反省
神様はお眠りにはならないと思いますが、人の子は眠ります。ですから、朝のお祈りは目覚めの挨拶から始めます。聖壇の前に跪いて、声に出してきちんと唱えます。
「神様、おはようございます。安らかな眠りから満ち足りた目覚めを迎えられたことを感謝します……」
こうやって毎朝礼拝堂でお祈りを捧げるのは私だけです。父様は牧師ですが、朝は起きてすぐにベッドから出て、その場でお祈りをしています。神様は教会にいらっしゃるのではなく、祈りを捧げる者のそばに、あるいは信者が集まっている場所に降臨されるのです。それがプロテスタントの教えです。
ですから、日曜礼拝のとき以外に、わざわざ教会まで来てお祈りを捧げる信者は、ほとんどいません。
でも私としては、神様に来ていただくのではなく、人の子が神様の前へ足を運ぶべきだと思っています。これは信仰ではなくて気分の問題ですけれど。
かすかな足音が背後に聞こえました。珍しく私より先に起きて外へ出ていると思ったら、ここに隠れていたのですね。
「今日も一日、精一杯に働いて……」
すぐ後ろまで気配が迫りました。
「こらっ!」
振り返りざま、叱りつけました。
「わっ……?!」
跪いている私に合わせて腰をかがめていたのでしょう。ジャックは見事に尻餅をつきました。
「礼拝堂でふざけてはいけないって、何度も言ってるでしょう」
クリームたっぷりのコーヒーにうんと砂糖を入れたみたいな顔が、はにかんだように笑っています。
「ごめんなさい……」
しおらしく謝って立ち上がると……
ぺちん。私のお尻を(かなり強く)叩いて、そのまま掌を上へずり上げました。私にしてみれば、強い力で撫でられた感じです。
「へっへーん。姉ちゃんのおけつ、いい音がするね」
憎まれ口を叩きながら礼拝堂から駆け出て行きました。礼拝堂で走るな騒ぐな――注意する暇もありませんでした。
ジャックの悪戯には手を焼きます。でも、私より二つ年下――ようやく十二星座を巡り終えようとしている弟には、男の子が女の子のお尻とか胸を触るのは淫らな行為だという自覚はないのです。お姉ちゃんがうろたえるから面白がっているだけなのです。
私? もちろん、淫らな行為だと分かっているから、ジャックを叱るのです。
そういう行為が性的な意味を持つとはっきり知ったのは――半年前に女性器から出血して父様に相談したら、雑貨屋のスーザン小母さんが代わりに教えてくださって、そのときにあからさまなことも少し教わりました。
神様の目の前で淫らなことを考えるのは不敬です。もうお祈りを続ける気分ではありません。
「アーメン」
お祈りは端折って、朝の日課に向かいます。礼拝堂と住居は棟続きで通用口もありますが、神様と正しく向かい合うには正面から出入りするべきだというのが、私の信条です。
ああ。私はこれから礼拝堂とか住居とか教会とかを使い分けてお話しするでしょうから、最初に説明しておきますね。教会の敷地の中はすべて教会です。同語反復ですね。
敷地の中に、信者が集まる礼拝堂と、牧師の家族の住居があります。小さな事務室もくっついています。小人数の集会に使う小綺麗で頑丈な「掘立小屋」もあります。あと、家畜小屋とか納屋とかも。畑は建物ではないので、常識として教会とは言いません。これは冗談でした。
真面目な話をします。今日は月曜ですから、助手のボブさんは来ません。食事の用意は三人分だけです。支度が出来たら、フライパンをレイドルで打ち鳴らして合図をします。三人で食卓に就いて、神様に感謝の祈りを捧げてから、私と父様は食事を始めます。弟は、食事を終えかけるところ――といいたいぐらい、ぱくつきます。
これまで、父様とか弟と紹介してきましたけれど、実の家族ではありません。
父様はオットー・ヒュンケル。ここ、人口千人ほどのコッパーベルタウンにある唯一の教会を司る牧師様です。三十五歳です。カウボーイたちと喧嘩をしても(しませんけれど)二人くらいならまとめて相手に出来そうなくらいに頑丈です。年上の人に説法をしてもなめられないようにと、髭もじゃです。髪も髭も赤茶色です。生涯独身の誓いを立てておられます。
父様は法律的には養父(Adoptive father)なのでしょうが、私としては義父(Fathe in law)をもじって心父(Fathe in heart)がふさわしいと思っています。
弟はジャック・ヒュンケル。教会の前に捨てられていた黒人との混血です。黒い縮れ毛を短く刈っています。甘ったるい顔つきだと思うのは白人の美的基準からだけらしいです。
そして私、ジュリア・コバーニ。父様とも弟とも違って、銀髪です。瞳も碧いので、北欧系かもしれません。でも、母様の姓はコバーニですから、ラテン系かもしれません。血統が不明なのは、母様はロマの民で、事情は知りませんが仲間からはぐれたか追い出されたかして、やはり教会の前で行き倒れたからです。身の上を語る暇もなく私を産み落として、すぐに亡くなりました。私の名前は、母様に付けていただきました。
私は生粋の白人なので出自がロマの民でも、町の人たちからあまり差別は受けていません。
ああ、ジャックだって表立った差別は受けていませんよ。なにしろ、父様が牧師様なのですから。元奴隷の子供たちからは半分白人と思われています。友達と呼べる子はひとりもいなくて、だから私に甘えたり悪戯を仕掛けたりするのです。
ジャックは、将来のことを考えるのは早すぎますが、私には確固たる目標があります。ほんとうは父様の後を継いで牧師になりたいのですが、世間の人たちは女がしゃしゃり出ることを望みません。聖書にもはっきりと、女は男に劣ると書かれています。ですから、私は将来は修道女となって、神様に一生を捧げるつもりです。私たちはプロテスタントですから、カソリックのような厳密な組織としての修道院はありませんけれど、熱心な信者が同性で集まって清貧な集団生活を営むという意味での集団は、この州にも幾つか存在します。
父様も賛成してくれています。でも、責任ある社会人として誓約できる年齢には達していないので、受け入れてもらえません。今は教会のお仕事を出来るだけ手伝いながら、生活態度だけでも修道女と同じように、敬虔に清く勤勉であろうとしています。
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つまり、プロテスタントに関する知識不足です。
教会といえば頭に浮かぶのは聖堂ばかりで、実務空間とかも抜けていました。
しかし、まあ。プロテスタントでは、ごく一部の宗派にしか修道院は存在しませんが、篤志家の奉仕活動の拠点とか結構あるそうな。
ううむう。いっそ、クリスチャンにしちまえば楽だった。しかし、アメリカと言えば清教徒ですメイフラワーですプロテスタントです。
それに、そういう環境で修道女(に準じる生活)を目指すヒロインの信仰の篤さが表現できるという。in front of MISOです。
Progress Report 1:SMX358
いよいよ執筆開始(過去完了形)!
9/8、9、10、11(うち休日1、紙飛行機1)で、わずか40枚です。今日(12)の休日でバンカイできればカンパイですが。
この記事(小説冒頭)と小説終結部は残しますが、あとは漏らさず掲載しては、次の記事のときに消していきます。途中も少しは残すかもしれませんが。進捗状況と尺によっては、ひとつの章の掲載期間が二、三日ということもあるかもしれません。あると、いいな。
この小説は『なろう』形式で書いています。[[rb:根菜勘治>こんなかんじ]]ですね。なので、html形式にするのは一括置換です。
> → <rt>[[rb: → <ruby> ]] → </rt></ruby>
出来上がりは……根菜勘治
WORDでルビ検索しなくていいから楽です。でも、PDF化のためにword形式にするには[[を検索してはルビに置き換えていくので、ちょい手間です。
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自涜と反省
神様はお眠りにはならないと思いますが、人の子は眠ります。ですから、朝のお祈りは目覚めの挨拶から始めます。聖壇の前に跪いて、声に出してきちんと唱えます。
「神様、おはようございます。安らかな眠りから満ち足りた目覚めを迎えられたことを感謝します……」
かすかな足音が背後に聞こえました。珍しく私より先に起きて外へ出ていると思ったら、礼拝堂に隠れていたのですね。
「今日も一日、精一杯に働いて……」
すぐ後ろまで気配が迫りました。
「こらっ!」
振り返りざま、叱りつけました。
「わっ……?!」
跪いている私に合わせて腰をかがめていたのでしょう。ジャックは見事に尻餅をつきました。
「礼拝堂でふざけてはいけないって、何度も言ってるでしょう」
クリームたっぷりのコーヒーにうんと砂糖を入れたみたいな顔が、はにかんだように笑っています。
「ごめんなさい……」
しおらしく謝って立ち上がると……
ぺちん。私のお尻を(かなり強く)叩いて、そのまま掌を上へずり上げました。私にしてみれば、強い力で撫でられた感じです。
「へっへーん。姉ちゃんのおけつ、いい音がするね」
憎まれ口を叩きながら礼拝堂から駆け出て行きました。礼拝堂で走るな騒ぐな――注意する暇もありませんでした。
ジャックの悪戯には手を焼きます。でも、私より二つ年下――ようやく十二星座をめぐり終えようとしている弟には、男の子が女の子のお尻とか胸を触るのは淫らな行為だという自覚はないのです。お姉ちゃんがうろたえるから面白がっているだけなのです。
私? もちろん、淫らな行為だと分かっているから、ジャックを叱るのです。
そういう行為が性的な意味を持つとはっきり知ったのは――半年前にお股から血が出て父様に相談したら、雑貨屋のスーザン小母さんが代わりに教えてくださって、そのときにあからさまなことも少し教わりました。
神様の目の前で淫らなことを考えるのは不敬です。もうお祈りを続ける気分ではありません。
「アーメン」
お祈りは端折って、朝の日課に向かいます。今日は月曜ですから、助手のボブさんは来ません。食事の用意は三人分だけです。
支度が出来たら、フライパンをレイドルで打ち鳴らして合図をします。三人で食卓に就いて、神様に感謝の祈りを捧げてから、私と父様は食事を始めます。弟は、食事を終えかけるところ――といいたいぐらい、ぱくつきます。
これまで、父様とか弟と紹介してきましたけれど、実の家族ではありません。
父様はオットー・ヒュンケル。ここコッパーベルタウンの牧師様です。三十五歳です。カウボーイたちと喧嘩をしても(しませんけれど)二人くらいならまとめて相手に出来そうなくらいに頑丈です。年上の人に説法をしてもなめられないようにと、髭もじゃです。髪も髭も赤茶色です。生涯独身の誓いを立てておられます。
父様は法律的には養父(Adoptive father)なのでしょうが、私としては義父(Fathe in law)をもじって心父(Fathe in heart)がふさわしいと思っています。
弟はジャック・ヒュンケル。教会の前に捨てられていた黒人との混血です。黒い縮れ毛を短く刈っています。甘ったるい顔つきだと思うのは白人の美的基準からだけらしいです。
そして私、ジュリア・コバーニ。父様とも弟とも違って、銀髪です。瞳も碧いので、北欧系かもしれません。でも、母様の姓はコバーニですから、ラテン系かもしれません。出自が分からないのは、母様はロマの民で、事情は知りませんが仲間からはぐれたか追い出されたかして、やはり教会の前で行き倒れたからです。身の上を語る暇もなく私を産み落として、すぐに亡くなりました。私の名前は、母様に付けていただきました。
私は生粋の白人なので出自がロマの民でも、町の人たちからあまり差別は受けていません。
ああ、ジャックだって表立った差別は受けていませんよ。なにしろ、父様が牧師様なのですから。元奴隷の子供たちからは半分白人と思われています。友達と呼べる子はひとりもいなくて、だから私に甘えたり悪戯を仕掛けたりするのです。
ジャックは、将来のことを考えるのは早すぎますが、私には確固たる目標があります。ほんとうは父様の後を継いで牧師になりたいのですが、世間の人たちは女がしゃしゃり出ることを望みません。聖書にもはっきりと、女は男に劣ると書かれています。ですから、私は将来は修道女となって、神様に一生を捧げるつもりです。父様も賛成してくれています。でも、まだ見習修道女にもなれない年齢ですから、今は教会のお仕事を出来るだけ手伝いながら、生活態度だけでも修道女と同じように、敬虔に清く勤勉であろうとしています。
ちらっと触れたボブさんは、教会の助手です。専属ではなく、週末だけに来て下さるボランティアです。二十二歳ですから、じゅうぶんに私と釣り合う年齢です。もっとも、向こうは私のことを……せめて、妹くらいには思ってくれると嬉しいのですけど。
などと、朝っぱらから浮ついたことを考えてはいけません。
台所の後片付けが終わったら、私も農作業です。信徒の皆様からの浄財は、出来る限り教会の維持と修繕にまわします。小麦も野菜も牛乳も、教会の小さな農場で賄います。
朝の私の仕事は乳搾りです。雌牛の横に座って、子供のペニス(という単語も、スーザン小母さんに教わりました)くらいもある乳首を両手にひとつずつ握って、左右交互に搾っていきます。
ふう。また、ジャックが忍び足で近づいて来ました。叱っても叱っても懲りないので、今日は作戦を変更します。
むぎゅっと、背後から左右の乳房をつかまれました。私は、平然を装います。
「姉ちゃんのお乳は、僕が搾ってあげるよ」
無視していると、ぎゅううっと強くつかんで、私が雌牛の乳を搾るリズムに合わせて、もぎゅもぎゅと指を食い込ませてきます。
私は背丈では二つくらい下の年齢に見間違われますけど、そんな人も私の乳房に気づくとレディに対する口調に改めます。改めすぎます。若い男性には、じゅうぶんに恋愛の対象に見えるのでしょう。それが厭だから、私は(寝るときを除いて)胸にきつく布を巻いています。
その布を越えてジャックの指が食い込んできます。痛いのですけど、意地になって無視を決め込みます。
「お姉ちゃん、平気なの?」
「いくら私の乳房を搾っても、お乳は出ないわよ」
わざと見当はずれな答えを返してやりました。
「ちぇええ……」
私が取り合わないと分かると、ジャックは逃げて行きました。
私は乳を搾りながら、なんとなく落ち着かない気分です。ジャックの指は痛かったけれど、まだ残っている疼きが、だんだん熱を帯びてきたような……錯覚ですね。
牛の世話を終えると、すぐに昼ご飯の支度に取り掛かります。
午後からは、乾燥させておいた麻から糸を作ります。繊維が長いので、綿のように紡ぐ必要がありません。来週あたりからは麻糸を使って亜麻布を織る予定です。女の子ひとりだけの手ではたいした量を作れませんが、シーツや家族の普段着を作る分には足りています。
父様と弟か野良仕事から帰って来ました。まず父様が身体を洗って、私が出しておいた清潔な下着に着替えてから私の部屋をちょっと覗きます。
「おお。ずいぶんと捗っているね。関心、関心。それでは、ちょっと出てくるからね」
町の反対側にあるサロンへ通うのが日課になっています。カウボーイや職人さんたちと、世間話をしながら遊ぶのです。サロンでの遊びといえば、ポーカーのような賭け事が真っ先に浮かびますが、父様は神様に仕える身ですから、チェッカーです。市長のディーラーさんとか銀行頭取のギャレットさんがいらっしゃれば、チェスをすることもあります。
父様が出て行かれて十五分もした頃です。
「姉ちゃん……助けてよお」
半べその声が聞こえてきました。あわてて裏庭へ出てみると、弟が行水桶の中にうずくまって両手で股間を押さえていました。
「チンチンが……変になっちゃったよお」
どんなになっているのか、見ないことには始まりません。いやがるのを叱って、手をどかせました。
「まあ……?!」
ふだんは私の小指くらいなのに、父様のペニスの半分くらいにまで大きくなっています。父様のは垂れていますが、今のジャックのは、お腹にくっつくくらいに上向いています。これが、勃起という現象なのでしょう。しかも、普段とは違って、薬莢から飛び出たスラッグ弾みたいになっています。
こういうときには、エロチックなことからうんと遠くてややこしい事柄を考えれば良い――というのは、スーザン小母さんではなく、去年から酒場で働き始めたマリーから聞きました。エロチックからいちばん遠いのは、お祈りだと思います。でも、不謹慎ですし、ややこしくもありません……そうだ。
「いいこと。落ち着いて聞くのよ。塀で隠れた向こう側には、鶏と牛が合わせて五匹隠れているの。そして、塀の下から十四本の足が見えているわ。鶏と牛とは、それぞれ何匹いるか分かる?」
註記:数助詞(人、匹、頭、個、本)の
問題は無視してください。
「何言ってんだよ。赤ちゃんだって、牛の足と鶏の足を見間違えるはずがないぞ」
それは、まあ、そうですけど。でも、見る見るうちにペニスがうなだれて縮んで、先端まで薬莢の中に引っ込みました。
「ジャック、正直におっしゃい。チンチンをいじってたんでしょ?」
「違うよ」
弟は怒ったように答えました。
「お姉ちゃんのおっぱいをつかんだときのことを考えただけだよ」
そちらのほうが、罪は重いです。でも、どう言ってたしなめたら良いのか分からなかったので。
「元に戻って良かったじゃないの」
適当にごまかして家の中へ引き返しました。
夕食が終わって。居間に三人が寄り集まって。私は繕い物をしたり趣味のレース編みを進めたり。弟は小さな黒板を使って二桁の足し算の勉強。父様は新聞です。面白い記事があると、読んで聞かせてくれます。
電気代がもったいないので、午後九時には寝ます。それでも、十年くらい前までは明かりはランプしか無くて、午後七時には眠りに就いていたのですから、ずいぶんと夜更かしになったものです。その分、朝は遅くなりましたけれど。
ひとり闇の中に身を横たえて。なかなか寝付けません。ジャックの勃起したペニスが、瞼の裏に浮かんできます。あれが、女の子のヴァギナに挿入されるのです。いえ、あれではありません。大人の男性でしたら、父様のペニスと同じくらいです。それが、倍くらいにも大きくなって……私のヴァギナに、本当に入るのでしょうか。ジャックのですら怪しいと思います。
それから……ジャックにつかまれた乳房が、また疼き始めました。強い力。あれが、男性の片鱗なのでしょう。
あれとこれとを考えると、腰のあたりが熱くなってきます。胸が苦しくなってきます。
私は背丈が発育不良で胸が発育過剰です。では、ヴァギナは?
指くらいなら入るかな?
布団の中で手を動かして、お股に触れてみました。なんだか、ぬるぬるしています。もう三年くらい前から……淫らなことを考えると、こうなるのです。
指くらいなら入るかな?
その考えが頭を去りません。人差し指をラビアの中へ滑らせました。穴は、すぐに探り当てました。縁に触れると、くすぐったいです。腋をくすぐられたときとは、ちょっと違います。心臓がドキドキしています。
つぷっと……簡単に指が入りました。でも、赤ちゃんに指を吸われているみたいな感じ。とても二本三本は入りそうにありません。大人の勃起したペニスはもちろん、ジャックのすら無理でしょう。
ああ、そうか。それでも無理にこじ入れるから、マリーが言っていたように「最初はすごく痛い」のでしょう。
そこでやめておけば良かったとは、後になって思ったことです。ヴァギナから指を引き抜いたものの、なんだか満たされない気分のままに、ラビアをなぞっていました。
「あっ……?!」
びびっと電気が走ったみたいな感覚がありました。町に来た『科学サーカス』の興行で感電を体験したことがありますが、そのときみたいな痛みはありません。甘い感電とでもいうべき感覚です。
たしか、ラビアの上端あたりを……
「ああっ……」
また感電しました。そして、はっきりと『電極』が分かりました。左右のラビアが合わさっているあたりに、小さな疣があるのです。そこに指が振れると、疣から腰の奥へ向かって、途中でヴァギナも通りながら、電気が奔るのです。それが、とても甘い――なんて言葉では追いつきません。じいんと腰が痺れて、頭に淡い霞がかかります。
その霞は、はっきりとピンクに染まっています。だから、これは淫らなこと、いけないことだと悟ってしまいました。オナンの罪という言葉が自然と浮かびました。オナンは、妻を孕ませることなく男女の営みに及びました。
「でも、今ではそういう意味じゃあなくなってるのよ」
またも、マリーの言葉を思い出しました。
「そのうち、自分で覚えるわ。そうならないうちは、まだまだネンネってことだわよ」
ああ、マリーの言葉に隠されていた真実に目覚めてしまいました。そうなってしまったのです。
いけないことだと分かっていながら、指は身体は、また感電を欲しがります。
ただ疣に触れるだけでなく。この疣には『芯』があって、それを皮が包んでいます。その皮をくにゅくにゅとつまむと芯まで刺激されて、いっそう強い電気が奔ります。
股間に触れていいのは、最も汚らしい排泄の後始末と、最も崇高な子作りのときだけです。神様が、そうお定めになったのです。こんな、自分の快楽のためにだけ刺激するのは涜神です。悪魔の誘惑に負けているのです。
それが分かっているのに、指の動きを止められません。だんだんと速くなっていきます。でも、ジャックに乳房をつかまれたみたいに(そう思った瞬間、胸にきゅうんと熱い感情が込み上げてきました)強くつまむと――痛いだけです。嘘です。痛いのだけど、その奥に甘い感覚があります。むしろ……お菓子を作るとき、生地に少量の塩を混ぜるといっそう甘みが引き立つみたいに。痛いのと気持ち良いのとが混じり合って……
「あああっ……(何か来る)?!」
叫びかけて、あわてて片手で口を押えました。もう一方の手は、股間から放すことが出来ません。片手だけでは物足りないので、シーツを引き寄せて丸めて口に入れて。右手で疣を刺激しながら、左手でヴァギナに指を挿れてみました。
「…………!」
ぶわあっとヴァギナが爆発したような感覚。頭の中のピンク色の霞が、部屋いっぱいに拡がって……
「ふわああああ」
口からシーツを吐き出して、幸せな溜息を吐きました。そのまま、ピンク色がだんだん暗くなっていって……
罪の意識とともに目を覚ましました。
我を忘れて、悪魔の誘惑に負けてしまったのです。私は、なんという罪深い行為をしてしまったのでしょう。子作りのためにのみ使う器官を、一時の快楽の道具にするなんて。
ロザリオを繰る想いで三つ編みを結い直しました。それをスカーフで包みます。修道女の被り物を真似て、起きている間はずっと髪を隠しているのです。
朝のお祈りでは、神様にお赦しを願いました。そして、贖罪のためにも昨日より頑張って仕事をしようと自分に誓いました。
昨夜に気づいた疣のこともジャックの勃起したペニスのことも考えないようにしました。でも、ジャックが台無しにしてくれました。
乳搾りのときも、考えないということばかり考えていたので、ジャックの気配に気づきませんでした。不意に乳房をつかまれました。どうにか、驚かずに済みました。
「しつこいわよ。お乳は出ないんだったら亅
「僕も算数の問題を考えたんだよ亅
昨日よりは優しい力で乳房を揉みながら、身体を密着させて耳元に囁きます。
「雌牛と人間と、合わせて七頭。おっぱいは十二個。それぞれ何頭だ?亅
全部人間とすると乳房は十四個……暗算が間違っているのでしょうか。背中に押しつけられたジャックの身体の一部が、すごく硬くて、考えがまとまりません。
「降参、分からないわ。手を放して」
「雌牛が三頭と男の人が四人だよ。男には、おっぱいが無いからね」
種明かしはしてくれましたが、手は放してくれません。
「いい加減にしないと、あなただけ牛乳抜きにするわよ」
「分かったよ。それじゃ、バイバイ」
声に合わせて強くモギュモギュと揉んでから、駆け去りました。
ムウウウ~
雌牛に乳搾りを催促されて、我に還りました。乳房を揉まれたのと背中の感触とにぼうっとしていたようです。
結局、一日中あれこれ考えるというか思い出すというか。ジャックのペニス。昨日は半年ぶりくらいに見たのです。発起していないときでも、私が覚えているよりも成長しているのかもしれません。もしそうなら、少し安心です。大人のペニスがあんな倍率で膨張するのだったらヴァギナに拳骨を突っ込まれるようなものですから。
だから、これはちっとも淫らな真似じゃない――と、自分に言い訳をして。ジャックが行水を使っているときに、わざわざ玄関から出て裏庭へまわって、忍び足で後ろから近づいて覗き込みました。
「わっ……どしたんだよ、姉ちゃん?!」
「後ろからそっと近づかれると、びっくりするでしょ。仕返しよ」
一瞬ですけど、きっちり目撃出来ました。不安が募りました。ジャックの平常時のペニスは、半年前から変わっていなかったのです。
でも、本当に? 見間違いはなかったかしら。
「今日は、チンチンは腫れてないの?」
「なんともないよ」
「それでも心配だわ。お姉ちゃんに見せてごらん」
我ながらうまい口実です。
「平気だよ。もう、あっちへ行ってよ」
「お姉ちゃんが頼んでも、ジャックはやめてくれないでしょ。見せなさいったら」
前を隠している手をつかんで、ひっぺがします。ジャックも本気では逆らいません。
「ふうん?」
スラッグ弾ではなく、マスケット銃の薬包みたいです。マスケット銃の薬包は、火薬と弾丸がひとまとめに紙の筒に収まっています。
ジャックのは、実際には薬包よりも小さいです。でも、眺めているうちに大きくなってきました。遠距離射撃の角度になるのは薬包ではなく銃身のほうですが、つまりそういうことです。
「もう、いいだろ。あっちへ行ってよ」
手で水を掬って顔に掛けられました。完全なスラッグ弾になるのを見届けたかったのですが、あまり騒ぐと父様が様子を見に来るかもしれません。退散します。
食事の支度をしているときも食事中も後片付けも上の空でした。レースの編み物は何度も間違えて、ほどいてはやり直し。
今日見たジャックの平常時のペニスと昨日の勃起したときの大きさと。その比率を、ただひとりだけ見知っている大人のペニスに当てはめて。私の指を五本まとめてつぼめたよりもずっと太いでしょうから、とてもヴァギナへの挿入は不可能だと思ったり。でも先端は丸まっているから、鈍い楔を打ち込むようにして……引き裂かれるとしたら、想像を絶する痛みだろうと恐怖に捕らわれたり。それなのに、腰の奥がキュンキュンして、淫らな汁がにじみ出るのです。
「よし。そろそろ寝る時刻だな」
お父様がそう言ったときには、ほっとしました。と同時に……今夜も寝付けない。だけではなく、きっと、悪魔の囁きに耳を貸してしまうのではないかと恐れました。
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リクエストでアメリカと指定されていますから、やはりプロテスタントです。典型的なキリスト教といえば(服装とか儀式とか)カソリックのほうが書きやすいですが。それでは中世旧大陸の話『公女巡虐』と似通ってくるし。
19世紀末乃至20世紀初頭の設定は、これは便利です。サディスト見習の牧師様(養父)が、百マイル離れた大きな街にいる筋金入りサディスト教区長に相談するのに電話が使えます。教区長が馬無し馬車で駆けつけることもできます。
いえ、これはお話が進んでから先の展開ですが。
今、もっとも苦慮しているのがBFの元ネタです。ヒロインはまだ修道女見習にもなっていないので、あの被り物はしていませんが、それは無視して。
全裸で跪いて正面の十字架に祈る修道女。の背中に刻まれた鞭痕。
なんて図柄を想定していますが、なかなか適当なのがありません。それらは追々紹介していくとして。
ウィンプルの代わりに髪をスカーフで覆ったヒロイン――のイメージです。

元ネタはイスラム系少女らしいですが、まあ、いいや。
9/8、9、10、11(うち休日1、紙飛行機1)で、わずか40枚です。今日(12)の休日でバンカイできればカンパイですが。
この記事(小説冒頭)と小説終結部は残しますが、あとは漏らさず掲載しては、次の記事のときに消していきます。途中も少しは残すかもしれませんが。進捗状況と尺によっては、ひとつの章の掲載期間が二、三日ということもあるかもしれません。あると、いいな。
この小説は『なろう』形式で書いています。[[rb:根菜勘治>こんなかんじ]]ですね。なので、html形式にするのは一括置換です。
> → <rt>[[rb: → <ruby> ]] → </rt></ruby>
出来上がりは……根菜勘治
WORDでルビ検索しなくていいから楽です。でも、PDF化のためにword形式にするには[[を検索してはルビに置き換えていくので、ちょい手間です。
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自涜と反省
神様はお眠りにはならないと思いますが、人の子は眠ります。ですから、朝のお祈りは目覚めの挨拶から始めます。聖壇の前に跪いて、声に出してきちんと唱えます。
「神様、おはようございます。安らかな眠りから満ち足りた目覚めを迎えられたことを感謝します……」
かすかな足音が背後に聞こえました。珍しく私より先に起きて外へ出ていると思ったら、礼拝堂に隠れていたのですね。
「今日も一日、精一杯に働いて……」
すぐ後ろまで気配が迫りました。
「こらっ!」
振り返りざま、叱りつけました。
「わっ……?!」
跪いている私に合わせて腰をかがめていたのでしょう。ジャックは見事に尻餅をつきました。
「礼拝堂でふざけてはいけないって、何度も言ってるでしょう」
クリームたっぷりのコーヒーにうんと砂糖を入れたみたいな顔が、はにかんだように笑っています。
「ごめんなさい……」
しおらしく謝って立ち上がると……
ぺちん。私のお尻を(かなり強く)叩いて、そのまま掌を上へずり上げました。私にしてみれば、強い力で撫でられた感じです。
「へっへーん。姉ちゃんのおけつ、いい音がするね」
憎まれ口を叩きながら礼拝堂から駆け出て行きました。礼拝堂で走るな騒ぐな――注意する暇もありませんでした。
ジャックの悪戯には手を焼きます。でも、私より二つ年下――ようやく十二星座をめぐり終えようとしている弟には、男の子が女の子のお尻とか胸を触るのは淫らな行為だという自覚はないのです。お姉ちゃんがうろたえるから面白がっているだけなのです。
私? もちろん、淫らな行為だと分かっているから、ジャックを叱るのです。
そういう行為が性的な意味を持つとはっきり知ったのは――半年前にお股から血が出て父様に相談したら、雑貨屋のスーザン小母さんが代わりに教えてくださって、そのときにあからさまなことも少し教わりました。
神様の目の前で淫らなことを考えるのは不敬です。もうお祈りを続ける気分ではありません。
「アーメン」
お祈りは端折って、朝の日課に向かいます。今日は月曜ですから、助手のボブさんは来ません。食事の用意は三人分だけです。
支度が出来たら、フライパンをレイドルで打ち鳴らして合図をします。三人で食卓に就いて、神様に感謝の祈りを捧げてから、私と父様は食事を始めます。弟は、食事を終えかけるところ――といいたいぐらい、ぱくつきます。
これまで、父様とか弟と紹介してきましたけれど、実の家族ではありません。
父様はオットー・ヒュンケル。ここコッパーベルタウンの牧師様です。三十五歳です。カウボーイたちと喧嘩をしても(しませんけれど)二人くらいならまとめて相手に出来そうなくらいに頑丈です。年上の人に説法をしてもなめられないようにと、髭もじゃです。髪も髭も赤茶色です。生涯独身の誓いを立てておられます。
父様は法律的には養父(Adoptive father)なのでしょうが、私としては義父(Fathe in law)をもじって心父(Fathe in heart)がふさわしいと思っています。
弟はジャック・ヒュンケル。教会の前に捨てられていた黒人との混血です。黒い縮れ毛を短く刈っています。甘ったるい顔つきだと思うのは白人の美的基準からだけらしいです。
そして私、ジュリア・コバーニ。父様とも弟とも違って、銀髪です。瞳も碧いので、北欧系かもしれません。でも、母様の姓はコバーニですから、ラテン系かもしれません。出自が分からないのは、母様はロマの民で、事情は知りませんが仲間からはぐれたか追い出されたかして、やはり教会の前で行き倒れたからです。身の上を語る暇もなく私を産み落として、すぐに亡くなりました。私の名前は、母様に付けていただきました。
私は生粋の白人なので出自がロマの民でも、町の人たちからあまり差別は受けていません。
ああ、ジャックだって表立った差別は受けていませんよ。なにしろ、父様が牧師様なのですから。元奴隷の子供たちからは半分白人と思われています。友達と呼べる子はひとりもいなくて、だから私に甘えたり悪戯を仕掛けたりするのです。
ジャックは、将来のことを考えるのは早すぎますが、私には確固たる目標があります。ほんとうは父様の後を継いで牧師になりたいのですが、世間の人たちは女がしゃしゃり出ることを望みません。聖書にもはっきりと、女は男に劣ると書かれています。ですから、私は将来は修道女となって、神様に一生を捧げるつもりです。父様も賛成してくれています。でも、まだ見習修道女にもなれない年齢ですから、今は教会のお仕事を出来るだけ手伝いながら、生活態度だけでも修道女と同じように、敬虔に清く勤勉であろうとしています。
ちらっと触れたボブさんは、教会の助手です。専属ではなく、週末だけに来て下さるボランティアです。二十二歳ですから、じゅうぶんに私と釣り合う年齢です。もっとも、向こうは私のことを……せめて、妹くらいには思ってくれると嬉しいのですけど。
などと、朝っぱらから浮ついたことを考えてはいけません。
台所の後片付けが終わったら、私も農作業です。信徒の皆様からの浄財は、出来る限り教会の維持と修繕にまわします。小麦も野菜も牛乳も、教会の小さな農場で賄います。
朝の私の仕事は乳搾りです。雌牛の横に座って、子供のペニス(という単語も、スーザン小母さんに教わりました)くらいもある乳首を両手にひとつずつ握って、左右交互に搾っていきます。
ふう。また、ジャックが忍び足で近づいて来ました。叱っても叱っても懲りないので、今日は作戦を変更します。
むぎゅっと、背後から左右の乳房をつかまれました。私は、平然を装います。
「姉ちゃんのお乳は、僕が搾ってあげるよ」
無視していると、ぎゅううっと強くつかんで、私が雌牛の乳を搾るリズムに合わせて、もぎゅもぎゅと指を食い込ませてきます。
私は背丈では二つくらい下の年齢に見間違われますけど、そんな人も私の乳房に気づくとレディに対する口調に改めます。改めすぎます。若い男性には、じゅうぶんに恋愛の対象に見えるのでしょう。それが厭だから、私は(寝るときを除いて)胸にきつく布を巻いています。
その布を越えてジャックの指が食い込んできます。痛いのですけど、意地になって無視を決め込みます。
「お姉ちゃん、平気なの?」
「いくら私の乳房を搾っても、お乳は出ないわよ」
わざと見当はずれな答えを返してやりました。
「ちぇええ……」
私が取り合わないと分かると、ジャックは逃げて行きました。
私は乳を搾りながら、なんとなく落ち着かない気分です。ジャックの指は痛かったけれど、まだ残っている疼きが、だんだん熱を帯びてきたような……錯覚ですね。
牛の世話を終えると、すぐに昼ご飯の支度に取り掛かります。
午後からは、乾燥させておいた麻から糸を作ります。繊維が長いので、綿のように紡ぐ必要がありません。来週あたりからは麻糸を使って亜麻布を織る予定です。女の子ひとりだけの手ではたいした量を作れませんが、シーツや家族の普段着を作る分には足りています。
父様と弟か野良仕事から帰って来ました。まず父様が身体を洗って、私が出しておいた清潔な下着に着替えてから私の部屋をちょっと覗きます。
「おお。ずいぶんと捗っているね。関心、関心。それでは、ちょっと出てくるからね」
町の反対側にあるサロンへ通うのが日課になっています。カウボーイや職人さんたちと、世間話をしながら遊ぶのです。サロンでの遊びといえば、ポーカーのような賭け事が真っ先に浮かびますが、父様は神様に仕える身ですから、チェッカーです。市長のディーラーさんとか銀行頭取のギャレットさんがいらっしゃれば、チェスをすることもあります。
父様が出て行かれて十五分もした頃です。
「姉ちゃん……助けてよお」
半べその声が聞こえてきました。あわてて裏庭へ出てみると、弟が行水桶の中にうずくまって両手で股間を押さえていました。
「チンチンが……変になっちゃったよお」
どんなになっているのか、見ないことには始まりません。いやがるのを叱って、手をどかせました。
「まあ……?!」
ふだんは私の小指くらいなのに、父様のペニスの半分くらいにまで大きくなっています。父様のは垂れていますが、今のジャックのは、お腹にくっつくくらいに上向いています。これが、勃起という現象なのでしょう。しかも、普段とは違って、薬莢から飛び出たスラッグ弾みたいになっています。
こういうときには、エロチックなことからうんと遠くてややこしい事柄を考えれば良い――というのは、スーザン小母さんではなく、去年から酒場で働き始めたマリーから聞きました。エロチックからいちばん遠いのは、お祈りだと思います。でも、不謹慎ですし、ややこしくもありません……そうだ。
「いいこと。落ち着いて聞くのよ。塀で隠れた向こう側には、鶏と牛が合わせて五匹隠れているの。そして、塀の下から十四本の足が見えているわ。鶏と牛とは、それぞれ何匹いるか分かる?」
註記:数助詞(人、匹、頭、個、本)の
問題は無視してください。
「何言ってんだよ。赤ちゃんだって、牛の足と鶏の足を見間違えるはずがないぞ」
それは、まあ、そうですけど。でも、見る見るうちにペニスがうなだれて縮んで、先端まで薬莢の中に引っ込みました。
「ジャック、正直におっしゃい。チンチンをいじってたんでしょ?」
「違うよ」
弟は怒ったように答えました。
「お姉ちゃんのおっぱいをつかんだときのことを考えただけだよ」
そちらのほうが、罪は重いです。でも、どう言ってたしなめたら良いのか分からなかったので。
「元に戻って良かったじゃないの」
適当にごまかして家の中へ引き返しました。
夕食が終わって。居間に三人が寄り集まって。私は繕い物をしたり趣味のレース編みを進めたり。弟は小さな黒板を使って二桁の足し算の勉強。父様は新聞です。面白い記事があると、読んで聞かせてくれます。
電気代がもったいないので、午後九時には寝ます。それでも、十年くらい前までは明かりはランプしか無くて、午後七時には眠りに就いていたのですから、ずいぶんと夜更かしになったものです。その分、朝は遅くなりましたけれど。
ひとり闇の中に身を横たえて。なかなか寝付けません。ジャックの勃起したペニスが、瞼の裏に浮かんできます。あれが、女の子のヴァギナに挿入されるのです。いえ、あれではありません。大人の男性でしたら、父様のペニスと同じくらいです。それが、倍くらいにも大きくなって……私のヴァギナに、本当に入るのでしょうか。ジャックのですら怪しいと思います。
それから……ジャックにつかまれた乳房が、また疼き始めました。強い力。あれが、男性の片鱗なのでしょう。
あれとこれとを考えると、腰のあたりが熱くなってきます。胸が苦しくなってきます。
私は背丈が発育不良で胸が発育過剰です。では、ヴァギナは?
指くらいなら入るかな?
布団の中で手を動かして、お股に触れてみました。なんだか、ぬるぬるしています。もう三年くらい前から……淫らなことを考えると、こうなるのです。
指くらいなら入るかな?
その考えが頭を去りません。人差し指をラビアの中へ滑らせました。穴は、すぐに探り当てました。縁に触れると、くすぐったいです。腋をくすぐられたときとは、ちょっと違います。心臓がドキドキしています。
つぷっと……簡単に指が入りました。でも、赤ちゃんに指を吸われているみたいな感じ。とても二本三本は入りそうにありません。大人の勃起したペニスはもちろん、ジャックのすら無理でしょう。
ああ、そうか。それでも無理にこじ入れるから、マリーが言っていたように「最初はすごく痛い」のでしょう。
そこでやめておけば良かったとは、後になって思ったことです。ヴァギナから指を引き抜いたものの、なんだか満たされない気分のままに、ラビアをなぞっていました。
「あっ……?!」
びびっと電気が走ったみたいな感覚がありました。町に来た『科学サーカス』の興行で感電を体験したことがありますが、そのときみたいな痛みはありません。甘い感電とでもいうべき感覚です。
たしか、ラビアの上端あたりを……
「ああっ……」
また感電しました。そして、はっきりと『電極』が分かりました。左右のラビアが合わさっているあたりに、小さな疣があるのです。そこに指が振れると、疣から腰の奥へ向かって、途中でヴァギナも通りながら、電気が奔るのです。それが、とても甘い――なんて言葉では追いつきません。じいんと腰が痺れて、頭に淡い霞がかかります。
その霞は、はっきりとピンクに染まっています。だから、これは淫らなこと、いけないことだと悟ってしまいました。オナンの罪という言葉が自然と浮かびました。オナンは、妻を孕ませることなく男女の営みに及びました。
「でも、今ではそういう意味じゃあなくなってるのよ」
またも、マリーの言葉を思い出しました。
「そのうち、自分で覚えるわ。そうならないうちは、まだまだネンネってことだわよ」
ああ、マリーの言葉に隠されていた真実に目覚めてしまいました。そうなってしまったのです。
いけないことだと分かっていながら、指は身体は、また感電を欲しがります。
ただ疣に触れるだけでなく。この疣には『芯』があって、それを皮が包んでいます。その皮をくにゅくにゅとつまむと芯まで刺激されて、いっそう強い電気が奔ります。
股間に触れていいのは、最も汚らしい排泄の後始末と、最も崇高な子作りのときだけです。神様が、そうお定めになったのです。こんな、自分の快楽のためにだけ刺激するのは涜神です。悪魔の誘惑に負けているのです。
それが分かっているのに、指の動きを止められません。だんだんと速くなっていきます。でも、ジャックに乳房をつかまれたみたいに(そう思った瞬間、胸にきゅうんと熱い感情が込み上げてきました)強くつまむと――痛いだけです。嘘です。痛いのだけど、その奥に甘い感覚があります。むしろ……お菓子を作るとき、生地に少量の塩を混ぜるといっそう甘みが引き立つみたいに。痛いのと気持ち良いのとが混じり合って……
「あああっ……(何か来る)?!」
叫びかけて、あわてて片手で口を押えました。もう一方の手は、股間から放すことが出来ません。片手だけでは物足りないので、シーツを引き寄せて丸めて口に入れて。右手で疣を刺激しながら、左手でヴァギナに指を挿れてみました。
「…………!」
ぶわあっとヴァギナが爆発したような感覚。頭の中のピンク色の霞が、部屋いっぱいに拡がって……
「ふわああああ」
口からシーツを吐き出して、幸せな溜息を吐きました。そのまま、ピンク色がだんだん暗くなっていって……
罪の意識とともに目を覚ましました。
我を忘れて、悪魔の誘惑に負けてしまったのです。私は、なんという罪深い行為をしてしまったのでしょう。子作りのためにのみ使う器官を、一時の快楽の道具にするなんて。
ロザリオを繰る想いで三つ編みを結い直しました。それをスカーフで包みます。修道女の被り物を真似て、起きている間はずっと髪を隠しているのです。
朝のお祈りでは、神様にお赦しを願いました。そして、贖罪のためにも昨日より頑張って仕事をしようと自分に誓いました。
昨夜に気づいた疣のこともジャックの勃起したペニスのことも考えないようにしました。でも、ジャックが台無しにしてくれました。
乳搾りのときも、考えないということばかり考えていたので、ジャックの気配に気づきませんでした。不意に乳房をつかまれました。どうにか、驚かずに済みました。
「しつこいわよ。お乳は出ないんだったら亅
「僕も算数の問題を考えたんだよ亅
昨日よりは優しい力で乳房を揉みながら、身体を密着させて耳元に囁きます。
「雌牛と人間と、合わせて七頭。おっぱいは十二個。それぞれ何頭だ?亅
全部人間とすると乳房は十四個……暗算が間違っているのでしょうか。背中に押しつけられたジャックの身体の一部が、すごく硬くて、考えがまとまりません。
「降参、分からないわ。手を放して」
「雌牛が三頭と男の人が四人だよ。男には、おっぱいが無いからね」
種明かしはしてくれましたが、手は放してくれません。
「いい加減にしないと、あなただけ牛乳抜きにするわよ」
「分かったよ。それじゃ、バイバイ」
声に合わせて強くモギュモギュと揉んでから、駆け去りました。
ムウウウ~
雌牛に乳搾りを催促されて、我に還りました。乳房を揉まれたのと背中の感触とにぼうっとしていたようです。
結局、一日中あれこれ考えるというか思い出すというか。ジャックのペニス。昨日は半年ぶりくらいに見たのです。発起していないときでも、私が覚えているよりも成長しているのかもしれません。もしそうなら、少し安心です。大人のペニスがあんな倍率で膨張するのだったらヴァギナに拳骨を突っ込まれるようなものですから。
だから、これはちっとも淫らな真似じゃない――と、自分に言い訳をして。ジャックが行水を使っているときに、わざわざ玄関から出て裏庭へまわって、忍び足で後ろから近づいて覗き込みました。
「わっ……どしたんだよ、姉ちゃん?!」
「後ろからそっと近づかれると、びっくりするでしょ。仕返しよ」
一瞬ですけど、きっちり目撃出来ました。不安が募りました。ジャックの平常時のペニスは、半年前から変わっていなかったのです。
でも、本当に? 見間違いはなかったかしら。
「今日は、チンチンは腫れてないの?」
「なんともないよ」
「それでも心配だわ。お姉ちゃんに見せてごらん」
我ながらうまい口実です。
「平気だよ。もう、あっちへ行ってよ」
「お姉ちゃんが頼んでも、ジャックはやめてくれないでしょ。見せなさいったら」
前を隠している手をつかんで、ひっぺがします。ジャックも本気では逆らいません。
「ふうん?」
スラッグ弾ではなく、マスケット銃の薬包みたいです。マスケット銃の薬包は、火薬と弾丸がひとまとめに紙の筒に収まっています。
ジャックのは、実際には薬包よりも小さいです。でも、眺めているうちに大きくなってきました。遠距離射撃の角度になるのは薬包ではなく銃身のほうですが、つまりそういうことです。
「もう、いいだろ。あっちへ行ってよ」
手で水を掬って顔に掛けられました。完全なスラッグ弾になるのを見届けたかったのですが、あまり騒ぐと父様が様子を見に来るかもしれません。退散します。
食事の支度をしているときも食事中も後片付けも上の空でした。レースの編み物は何度も間違えて、ほどいてはやり直し。
今日見たジャックの平常時のペニスと昨日の勃起したときの大きさと。その比率を、ただひとりだけ見知っている大人のペニスに当てはめて。私の指を五本まとめてつぼめたよりもずっと太いでしょうから、とてもヴァギナへの挿入は不可能だと思ったり。でも先端は丸まっているから、鈍い楔を打ち込むようにして……引き裂かれるとしたら、想像を絶する痛みだろうと恐怖に捕らわれたり。それなのに、腰の奥がキュンキュンして、淫らな汁がにじみ出るのです。
「よし。そろそろ寝る時刻だな」
お父様がそう言ったときには、ほっとしました。と同時に……今夜も寝付けない。だけではなく、きっと、悪魔の囁きに耳を貸してしまうのではないかと恐れました。
========================================
リクエストでアメリカと指定されていますから、やはりプロテスタントです。典型的なキリスト教といえば(服装とか儀式とか)カソリックのほうが書きやすいですが。それでは中世旧大陸の話『公女巡虐』と似通ってくるし。
19世紀末乃至20世紀初頭の設定は、これは便利です。サディスト見習の牧師様(養父)が、百マイル離れた大きな街にいる筋金入りサディスト教区長に相談するのに電話が使えます。教区長が馬無し馬車で駆けつけることもできます。
いえ、これはお話が進んでから先の展開ですが。
今、もっとも苦慮しているのがBFの元ネタです。ヒロインはまだ修道女見習にもなっていないので、あの被り物はしていませんが、それは無視して。
全裸で跪いて正面の十字架に祈る修道女。の背中に刻まれた鞭痕。
なんて図柄を想定していますが、なかなか適当なのがありません。それらは追々紹介していくとして。
ウィンプルの代わりに髪をスカーフで覆ったヒロイン――のイメージです。

元ネタはイスラム系少女らしいですが、まあ、いいや。
Progress Report 0:SMX358
少女ジュリア~背徳の恍惚
20世紀初頭、秋。
アメリカ南部マラバメ州カッパーベルタウン
プロテスタント教会
懺悔はないが、神父と信徒の信頼関係に基づいた罪の告白はある。
(サクラメントではない)
コルセットが一般的だが、性的な強調を嫌って、ヒロインは着用しない。
布を節約したズロース(提灯ブルマ類似)、胸は布を巻いて押さえている。
その上に膝丈のシュミーズ。上衣(と表記)はくるぶしまでの長袖ワンピース。ブラウスは無し。
町の女の子と交流はあるから、知識としては勃起を知っている。半年前に初潮。
ウィンプル(修道女の頭巾)は着用できない。スカーフで髪を包んでいる。
父様(ファザー)。神父を意味するのはカトリックだけ。疑似家族。シスター、ブラザーも。
弟は「父ちゃん」「姉ちゃん」
少女:ジュリア・コバーニ14歳。
銀髪(シルバーブロンド)碧眼。清楚に三つ編み。トランジスタグラマー。
ロマの母親(マリア・コバーニ)が産み落として死亡。
父は不明。苗字から推測してイタリア系? 銀髪碧眼は北欧?
将来は聖職に就きたいが、女性への偏見があるので修道女を目指している。
年齢に満たないので、教会の仕事を手伝って修業中。
性格的には殺戮聖女レピアの裏返し。
少年:ジャック(・ヒュンケル)12歳。
教会の前に捨てられていた。苗字は養父から。
白黒ハーフ。縮れ毛を短く刈っている。
愛くるしいが、白人の美醜基準の埒外。
牧師:オットー・ヒュンケル35歳。
独身の誓い。筋肉質。
助手:ボブ・サマーズ/通い22歳。
教区長:ノートン牧師48歳。
妻 :フェビアンヌ23歳。
助手 :ベルケン32歳。
<PLOT>
・自涜と反省
月曜。
跪いて朝の祈り。
気配に気づいて直前に「こらっ」
それでも尻パッチンで逃げるジャック。
牛の乳搾り。つかまれても手が放せない。
夕刻。農作業の後の桶行水。
「お姉ちゃん。チンチンが変になった」
でかい。ずる向け。
こんなときにお祈りとかは不謹慎なので。
「スペインでは雨は主に平野に降る」
じゃなくて。
「鶏と牛が三十二、脚の数は八十八……」
「鶏と牛の脚を見間違える馬鹿はいないぞ」
寝床で。でかチンが頭から消えない。
妙な疼き。初めてのオナニー。
クリに気づいて、快感と不安と(小さなチンチンが生えた?)
翌日からは、ジャックの悪戯に過敏。行水を覗き見。繰り返す自慰。快感増大。自己嫌悪も。
・告白と贖罪
水曜。
罪の告白。小さなチンチンも告白。
下脱ぎさせて実見。下心は無い。
これはイボみたいなもので無害?
(オットーも知らない)。
自涜の罰に、掌に鞭。
その夜は、オットーに頼んで手を縛って寝る。
木曜
太腿を擦り合わせて脚ピンで軽く逝く。
また懺悔。根源を罰してください。
スカート捲り上げて、笞でメコスジ縦打ち。逝ってしまう。
オットーの声が上ずってくる。
これは容易ならぬ。
イボの件も含めて教区長様に相談してみる。
(数年前に、町に電話がつながった)。
着衣大の字緊縛で就寝。ジャックの悪戯。
・苦痛と恥辱
金曜。ボブを立ち会わせる。
全裸。直立メコスジ打ち。ずっと強く。
姿勢崩れるので宙吊り。
ここも突起と、乳首も笞先で。教区長の入れ知恵
派手に逝く。
・礼拝の試練
土曜は安息日で聖書黙読。
日曜礼拝。淫魔封じに紐で三点豆絞り。それぞれクルスをぶら下げる。
筆で聖水を塗る(こちょこちょ)。下着無し。
ばれないかひやひやで、股間じゅくじゅく。
濡れた太腿と股間。魔封じ。
悪魔が暴れないようにベッド上マングリ返し緊縛。
このあたり、ジュリアも神父の本心に薄々気づいてる。
男女の営みにいくらかの知識はある。でも受容。
(ジャックは、白人からも黒人からもコウモリ扱いで、友達がいない)。
破瓜、聖水(普通に精液)注入。
・魔女の嫌疑
月曜
教区長の到着(自動車だから半日)。すでに根回しは出来ている。
同好の士/浄財寄付。
市長、銀行頭取、保安官、総合雑貨屋店主。中にはただの助平も。
教区長と市長の会話で、繋がりが明らかに。
牧師が堅物で、遠くの特殊娼館で欲望を満たしていたが、これからは地元で。
尋問の場所は神の御前(礼拝堂)。祭壇の前に脚立。
全身剃毛して針判定。最後は十字架をマンコとアナルに(単独で)。アナルは十字架で掻き出し。
オットーが改めて拘束和姦。イラマは教区長。店主がアナル。
市長は前。頭取も前。保安官はアナル。この三人はお掃除フェラ。
礼拝堂に結界を張って、ジュリアを拘束監禁。
・魔除の儀式
火曜日
まだ悪魔に乗っ取られていない。
悪魔が印を付けられぬように全身鞭傷。
傷の上に熱蝋で封印。
悪魔が入らぬよう、すべての穴を同時に清める。
・犠牲の仔豚
教区長はすぐ帰って。あとは、オットーとボブと同好の士で。
水曜日と木曜日は、傷だらけの身体で日常生活。すべてが重労働。
ジャックも、異様な雰囲気に気づいて神妙。
金曜日に再び魔除の儀式。
ジャックの挙動不審は気づいている。
覗かれている。もっと見てという欲求と、彼が第三者という不満と。
自分から声を掛ける。
引きずり出されるジャック。リンチ。
市長「黒もロマも平等だと言ってた牧師殿がねえ」
「同じ人間だから激怒しておる。猿が人形にちょっかいを出して、人間が本気で怒るかね」
ジュリアと並べてエクソシスト。
========================================
いきなりのPLOT紹介でした。
ヒロインの心裡とかは、リクエスト内容通り。
今回は名前のお遊びは無し。あえて言えば、ヒロインのイニシャルJはジュスティーヌのJ。
ヒロインの性格設定にある「殺戮聖女レピア」は『ふかふかダンジョン攻略記』の助演女優。

話はずれますが。この『ふかダン』。ファンタジーではありませんね。「なろう」でもありません。てか、そもそもノベライズじゃないし。
『ふかダン』はハードSFにしてディープSFです。
ハードSFについては、別ブログを参照。
ちなみに(別作品で)指摘してた大チョンボ。時計のない世界で「2時の方向、敵影!」は、ちゃんと改善されてますね。同じ12方位でも真正面を前方、以下時計回りに、前右、右前、右方……ゼンポウ、コウホウではなくマエホー、アトホー。ちなみにヒダリはヒダと短縮。最初の2文字でおよその方角が分かり、聞き間違えない工夫もされています。
それはともかく。『ふかダン』は、ハードScience Fiction(空想科学)の部分よりもディープSpeculative Fable(思弁的寓話)に注目すべきです。
以下、長くなりますが引用。妻子の仇とつけねらった知的モンスターに返り討ちにされた男が。
「妻と赤子だった息子になんの罪が……」
それに対して。
「罪や善悪は同じ社会の中でしか成立しない。同じ社会の一員となる条件は双方の同意」
「農家が害獣を殺しても、害獣が農家を殺しても、どちらも悪くない」
「我々を害獣と定義したおまえたちが、どれだけ我々を殺し、泣きじゃくる用事(ほんま、AIで文脈解析くらいしろや)を追って刺し、赤子を岩に叩きつけて回っても、お前たちは何も悪くないし、それは罪ではない」
「だから、お前たちも罪が有るとか無いとかでは分けてもらえない」
中略
「何故なら、お前たちがこの『戦争のルール』をそのように定めたのだから」
これがSFだ! です。
お話を戻して。
ストーリイはこれで良しとして。ガジェットというかメインディッシュの責めの内容は、書きながらノリでぶっこんでいきます。
さて。勤務が不規則なジェダイの騎士。7,8,10,12,14と休みです。そのかわり後半は3日しかありませんが。
『宿題を忘れたらお尻たたき』の最新話もノクターンにUPしたことだし。
一気にスタートダッシュといきたいのですが。
スマホのやつ、いきなり充電量ゼロになったりしやがるので、機種変しますか。調教に1日はかかるよなあ。10日と14日は紙飛行機も入れるだろうし。でも、まあ。100枚はともかく50枚はいくでしょう。
20世紀初頭、秋。
アメリカ南部マラバメ州カッパーベルタウン
プロテスタント教会
懺悔はないが、神父と信徒の信頼関係に基づいた罪の告白はある。
(サクラメントではない)
コルセットが一般的だが、性的な強調を嫌って、ヒロインは着用しない。
布を節約したズロース(提灯ブルマ類似)、胸は布を巻いて押さえている。
その上に膝丈のシュミーズ。上衣(と表記)はくるぶしまでの長袖ワンピース。ブラウスは無し。
町の女の子と交流はあるから、知識としては勃起を知っている。半年前に初潮。
ウィンプル(修道女の頭巾)は着用できない。スカーフで髪を包んでいる。
父様(ファザー)。神父を意味するのはカトリックだけ。疑似家族。シスター、ブラザーも。
弟は「父ちゃん」「姉ちゃん」
少女:ジュリア・コバーニ14歳。
銀髪(シルバーブロンド)碧眼。清楚に三つ編み。トランジスタグラマー。
ロマの母親(マリア・コバーニ)が産み落として死亡。
父は不明。苗字から推測してイタリア系? 銀髪碧眼は北欧?
将来は聖職に就きたいが、女性への偏見があるので修道女を目指している。
年齢に満たないので、教会の仕事を手伝って修業中。
性格的には殺戮聖女レピアの裏返し。
少年:ジャック(・ヒュンケル)12歳。
教会の前に捨てられていた。苗字は養父から。
白黒ハーフ。縮れ毛を短く刈っている。
愛くるしいが、白人の美醜基準の埒外。
牧師:オットー・ヒュンケル35歳。
独身の誓い。筋肉質。
助手:ボブ・サマーズ/通い22歳。
教区長:ノートン牧師48歳。
妻 :フェビアンヌ23歳。
助手 :ベルケン32歳。
<PLOT>
・自涜と反省
月曜。
跪いて朝の祈り。
気配に気づいて直前に「こらっ」
それでも尻パッチンで逃げるジャック。
牛の乳搾り。つかまれても手が放せない。
夕刻。農作業の後の桶行水。
「お姉ちゃん。チンチンが変になった」
でかい。ずる向け。
こんなときにお祈りとかは不謹慎なので。
「スペインでは雨は主に平野に降る」
じゃなくて。
「鶏と牛が三十二、脚の数は八十八……」
「鶏と牛の脚を見間違える馬鹿はいないぞ」
寝床で。でかチンが頭から消えない。
妙な疼き。初めてのオナニー。
クリに気づいて、快感と不安と(小さなチンチンが生えた?)
翌日からは、ジャックの悪戯に過敏。行水を覗き見。繰り返す自慰。快感増大。自己嫌悪も。
・告白と贖罪
水曜。
罪の告白。小さなチンチンも告白。
下脱ぎさせて実見。下心は無い。
これはイボみたいなもので無害?
(オットーも知らない)。
自涜の罰に、掌に鞭。
その夜は、オットーに頼んで手を縛って寝る。
木曜
太腿を擦り合わせて脚ピンで軽く逝く。
また懺悔。根源を罰してください。
スカート捲り上げて、笞でメコスジ縦打ち。逝ってしまう。
オットーの声が上ずってくる。
これは容易ならぬ。
イボの件も含めて教区長様に相談してみる。
(数年前に、町に電話がつながった)。
着衣大の字緊縛で就寝。ジャックの悪戯。
・苦痛と恥辱
金曜。ボブを立ち会わせる。
全裸。直立メコスジ打ち。ずっと強く。
姿勢崩れるので宙吊り。
ここも突起と、乳首も笞先で。教区長の入れ知恵
派手に逝く。
・礼拝の試練
土曜は安息日で聖書黙読。
日曜礼拝。淫魔封じに紐で三点豆絞り。それぞれクルスをぶら下げる。
筆で聖水を塗る(こちょこちょ)。下着無し。
ばれないかひやひやで、股間じゅくじゅく。
濡れた太腿と股間。魔封じ。
悪魔が暴れないようにベッド上マングリ返し緊縛。
このあたり、ジュリアも神父の本心に薄々気づいてる。
男女の営みにいくらかの知識はある。でも受容。
(ジャックは、白人からも黒人からもコウモリ扱いで、友達がいない)。
破瓜、聖水(普通に精液)注入。
・魔女の嫌疑
月曜
教区長の到着(自動車だから半日)。すでに根回しは出来ている。
同好の士/浄財寄付。
市長、銀行頭取、保安官、総合雑貨屋店主。中にはただの助平も。
教区長と市長の会話で、繋がりが明らかに。
牧師が堅物で、遠くの特殊娼館で欲望を満たしていたが、これからは地元で。
尋問の場所は神の御前(礼拝堂)。祭壇の前に脚立。
全身剃毛して針判定。最後は十字架をマンコとアナルに(単独で)。アナルは十字架で掻き出し。
オットーが改めて拘束和姦。イラマは教区長。店主がアナル。
市長は前。頭取も前。保安官はアナル。この三人はお掃除フェラ。
礼拝堂に結界を張って、ジュリアを拘束監禁。
・魔除の儀式
火曜日
まだ悪魔に乗っ取られていない。
悪魔が印を付けられぬように全身鞭傷。
傷の上に熱蝋で封印。
悪魔が入らぬよう、すべての穴を同時に清める。
・犠牲の仔豚
教区長はすぐ帰って。あとは、オットーとボブと同好の士で。
水曜日と木曜日は、傷だらけの身体で日常生活。すべてが重労働。
ジャックも、異様な雰囲気に気づいて神妙。
金曜日に再び魔除の儀式。
ジャックの挙動不審は気づいている。
覗かれている。もっと見てという欲求と、彼が第三者という不満と。
自分から声を掛ける。
引きずり出されるジャック。リンチ。
市長「黒もロマも平等だと言ってた牧師殿がねえ」
「同じ人間だから激怒しておる。猿が人形にちょっかいを出して、人間が本気で怒るかね」
ジュリアと並べてエクソシスト。
========================================
いきなりのPLOT紹介でした。
ヒロインの心裡とかは、リクエスト内容通り。
今回は名前のお遊びは無し。あえて言えば、ヒロインのイニシャルJはジュスティーヌのJ。
ヒロインの性格設定にある「殺戮聖女レピア」は『ふかふかダンジョン攻略記』の助演女優。

話はずれますが。この『ふかダン』。ファンタジーではありませんね。「なろう」でもありません。てか、そもそもノベライズじゃないし。
『ふかダン』はハードSFにしてディープSFです。
ハードSFについては、別ブログを参照。
ちなみに(別作品で)指摘してた大チョンボ。時計のない世界で「2時の方向、敵影!」は、ちゃんと改善されてますね。同じ12方位でも真正面を前方、以下時計回りに、前右、右前、右方……ゼンポウ、コウホウではなくマエホー、アトホー。ちなみにヒダリはヒダと短縮。最初の2文字でおよその方角が分かり、聞き間違えない工夫もされています。
それはともかく。『ふかダン』は、ハードScience Fiction(空想科学)の部分よりもディープSpeculative Fable(思弁的寓話)に注目すべきです。
以下、長くなりますが引用。妻子の仇とつけねらった知的モンスターに返り討ちにされた男が。
「妻と赤子だった息子になんの罪が……」
それに対して。
「罪や善悪は同じ社会の中でしか成立しない。同じ社会の一員となる条件は双方の同意」
「農家が害獣を殺しても、害獣が農家を殺しても、どちらも悪くない」
「我々を害獣と定義したおまえたちが、どれだけ我々を殺し、泣きじゃくる用事(ほんま、AIで文脈解析くらいしろや)を追って刺し、赤子を岩に叩きつけて回っても、お前たちは何も悪くないし、それは罪ではない」
「だから、お前たちも罪が有るとか無いとかでは分けてもらえない」
中略
「何故なら、お前たちがこの『戦争のルール』をそのように定めたのだから」
これがSFだ! です。
お話を戻して。
ストーリイはこれで良しとして。ガジェットというかメインディッシュの責めの内容は、書きながらノリでぶっこんでいきます。
さて。勤務が不規則なジェダイの騎士。7,8,10,12,14と休みです。そのかわり後半は3日しかありませんが。
『宿題を忘れたらお尻たたき』の最新話もノクターンにUPしたことだし。
一気にスタートダッシュといきたいのですが。
スマホのやつ、いきなり充電量ゼロになったりしやがるので、機種変しますか。調教に1日はかかるよなあ。10日と14日は紙飛行機も入れるだろうし。でも、まあ。100枚はともかく50枚はいくでしょう。
Progress Report [-1]:SMX358
ううむ。この人とは潜在的無意識とやらでつながっているのか?
これまで、無実の罪で拷問されるヒロインはあれこれ書いてきたけど、はっきりと罪を犯した少女が「正当に」拷問される話は書いてなかったな。
『偽りの殉難』は、切支丹を装って処刑されることで憎き叔父夫婦を連座させる話だし。
『非国民の烙淫』も、母親に懸想した特高刑事の罠だし。
『女囚性務所』は、志願して女囚になったわけだし。
『赤い雑誌と白い薔薇』も、特高の罠だし。
というわけで、「犯罪少女を正当に拷問して公開処罰する」話を書きたくなって。
『公女巡虐~娼婦から性隷までの長い道程』と、タイトルもほぼ決まりました。
性隷というのは聖隷のもじりです。施虐女子修道院で、祈りと悦虐に明け暮れる一生が始まるのです。
そして、ここで。PIXIVの新規依頼がありました。ので、これを受けることにして。
『公女巡虐』は、”Ponpoko Skin”本棚に仮収容しました。次作はリクエストのSMX358で、その次が『昭和集団羞辱史:物売編(夜)』か、「これ」でしょう。
SMXというのは、SM小説の試作品です。米空軍のX15とか自衛隊のF-Xですな。そして、電子出版して量産試作程度に売れたわいとなると、SMYです。余談だよん。
358というのは、ロリマゾシリーズは当初30番台だったのですが、作品が増えたので桁を挙げて、リクエスト作品は351番からとしたのです。ううむ。リクエスト第8作か。売れっ子ですな(激違
で、この新規依頼です。例によってWILL様です。リクエスト一読。おにょろきました。
========================================
*ストーリイのリクエスト
修道女見習いがマゾ落ちする
*時代設定のリクエスト
20世紀前後のアメリカ
*シチュエーションのリクエスト
悪魔祓いという名目で調教される
*キャラ設定
・ヒロイン
1x~x4歳くらいの修道女を目指す銀髪碧眼の女。年の割には背が低いが胸は大きめ。
敬虔で心優しく、弟分(後述)のことを家族のように思っているが、少しづつ成長している彼に異性として惹かれていく。
性欲の強いマゾヒストだが、若さゆえの潔癖症から性欲は悪魔の囁きとして嫌悪している。
・弟分
ヒロインより2~3歳年下の男。黒人と白人のハーフで赤ん坊の頃に教会の前に捨てられていた。
やんちゃないたずら好きでヒロインと保護者(後述)を困らせているが、実際は強く慕っている。
まだ生えておらずエッチなことにはあまり興味はないが、騒がれるのが楽しくてヒロインの胸を触ったりする。
・保護者
ヒロインと弟分の保護者。温厚篤実、公明正大、この時代では珍しく偏見も差別意識もない。
二人に慕われ住民の信頼も厚いが、その本性は他者を甚振ることにでしか興奮できないサディスト。
だが、未だ自覚はない。
*人間関係のリクエスト
保護者、姉、弟の疑似家族
*特定の責めのリクエスト
・弟分の裸を見てしまったヒロインは、欲望のままに自慰を行い、深く嫌悪する。
・日に日に強くなる性欲について保護者に相談するヒロイン。最初は真摯に対応していた保護者だが、
ヒロインの安心のために行った悪魔祓いをきっかけに、自身の性癖に気づき同好の士を集めてヒロインを調教、ヒロインは罵られ嬲られることに快楽を感じ受け入れていく
※できれば乳首や陰核への針責があると嬉しいです
・調教を目撃した弟分も巻き込まれる。
弟分の衣服を剥ぎ取り、口汚く罵りながら拷問じみた性的な懲罰を加える保護者。同じ懲罰を受けながら、みだらな笑みを浮かべるヒロイン。
混乱する弟分を見て、ヒロインは弟分が自分と同じ立場になったことを主に感謝する。
R-18 #SM #鬼畜 #輪姦 #拷問 #露出 #言葉責め #調教
========================================

なんとなんとナントの勅令、ナンタケットでナンタルチャ。
舞台は教会ですが、ヒロインは修道女見習ではありませんか。
暗合というやつであります。暗号では有馬温泉草津の湯別府湯布院城崎にて。
依頼者様は教会と修道院と混同されてるきらいがありますが。それを言うと。そもそも女子修道院は男子禁制。男女修道院はありません。ですが、これは。修道院ではなく、「教団」とかで辻褄れます。あるいは教会の孤児院とか。孤児院にすると保護者、ヒロイン、弟分という疑似家族の設定に合いませんが。
しかし、まあ。リクエストの時代と世界には、在俗会(ますます人数が……)というやつが実際に存在します。なんとでもなります。ならなくても、します。「同好の士」に教会関係者を配置する手もあります。外来者も登場させますが。
まあ。これを受けると、修道院かぶりですが。『公女巡虐』は、幼い頃に垣間見た女囚の全裸引き回しで被虐に目覚め、それを妄想しながらオナッてるのを継母に見つかって、お仕置きにメコ筋縦打ちとかオナ封じで毎夜大の字磔就寝とか。修道院送りにされる直前に誘拐されて娼館に売られて、わざと脱走してきつい仕置を受けるとか、伯爵令嬢捜索の手が娼館に伸びてきたので口封じに殺されかかるところをガキンチョ強盗団に救われて、イケメン頭目の情婦になって、ガサ入れ食らって、とろいヒロインだけが捕まって、盗賊への正当な拷問が苛酷に繰り広げられて、全裸引き回し公開処罰で、前述の捜索隊に発見されて救出されて、当初の予定通りに修道院へ送致されて、ところがそこは嗜虐者の巣窟で……実は継母はそれを知っていて継子を生贄にした。ヒロインの被虐願望と継母の継子虐めの思惑が共に満たされて――WinWinでいいのか?
あら、オチまでばらしちった。
500枚超過の大作になりますから、修道院だけが舞台のコンパクト(コンパクトでインパクト:SF時代からのモットーです)なリクエストとは違います。だいち『公女巡虐』は中世ヨーロッパ、SMX358は19世紀末乃至20世紀初頭のアメリカです。
タイトルも決めました(変更するかも)。
『少女ジュリア~背徳の恍惚』
実は、女子修道院には原点近傍の深い思い入れがあります。
おそらく『マルキ・ド・サドのジュスティーヌ』という洋画でしょう。かつては、こんなのがお子様が視聴する時間帯に堂々とテレビ放映されていたのです。
ヒロインが放浪遍歴の果てに辿り着いた修道院。男の院長が彼女を迎えて、二人の修道女が現われて。いきなり法衣を引き開ける。簡単に乳房が露出する構造になっているのです。
ジャーン! みたいな音楽。ヒロインは(これまでの性的虐待遍歴で)即座に事情を悟って、逃亡を図ったと記憶してます。連れ戻されてドウコウアレコレされたという記憶はありません。ゴールデンアワー健全ロードショーですから、カットされたのか、元々そういうシーンは無かったのか。
という訳で。『ジュスティーヌあるいは美徳の不幸』をもじったタイトルなのです。
次回はPLOTのご紹介――に、なる予定です。
蛇足の靴下。
衆道院とか衆道淫という語呂合わせも思いつきました。そのうち使うかもしれませんが、今回はパス。
これまで、無実の罪で拷問されるヒロインはあれこれ書いてきたけど、はっきりと罪を犯した少女が「正当に」拷問される話は書いてなかったな。
『偽りの殉難』は、切支丹を装って処刑されることで憎き叔父夫婦を連座させる話だし。
『非国民の烙淫』も、母親に懸想した特高刑事の罠だし。
『女囚性務所』は、志願して女囚になったわけだし。
『赤い雑誌と白い薔薇』も、特高の罠だし。
というわけで、「犯罪少女を正当に拷問して公開処罰する」話を書きたくなって。
『公女巡虐~娼婦から性隷までの長い道程』と、タイトルもほぼ決まりました。
性隷というのは聖隷のもじりです。施虐女子修道院で、祈りと悦虐に明け暮れる一生が始まるのです。
そして、ここで。PIXIVの新規依頼がありました。ので、これを受けることにして。
『公女巡虐』は、”Ponpoko Skin”本棚に仮収容しました。次作はリクエストのSMX358で、その次が『昭和集団羞辱史:物売編(夜)』か、「これ」でしょう。
SMXというのは、SM小説の試作品です。米空軍のX15とか自衛隊のF-Xですな。そして、電子出版して量産試作程度に売れたわいとなると、SMYです。余談だよん。
358というのは、ロリマゾシリーズは当初30番台だったのですが、作品が増えたので桁を挙げて、リクエスト作品は351番からとしたのです。ううむ。リクエスト第8作か。売れっ子ですな(激違
で、この新規依頼です。例によってWILL様です。リクエスト一読。おにょろきました。
========================================
*ストーリイのリクエスト
修道女見習いがマゾ落ちする
*時代設定のリクエスト
20世紀前後のアメリカ
*シチュエーションのリクエスト
悪魔祓いという名目で調教される
*キャラ設定
・ヒロイン
1x~x4歳くらいの修道女を目指す銀髪碧眼の女。年の割には背が低いが胸は大きめ。
敬虔で心優しく、弟分(後述)のことを家族のように思っているが、少しづつ成長している彼に異性として惹かれていく。
性欲の強いマゾヒストだが、若さゆえの潔癖症から性欲は悪魔の囁きとして嫌悪している。
・弟分
ヒロインより2~3歳年下の男。黒人と白人のハーフで赤ん坊の頃に教会の前に捨てられていた。
やんちゃないたずら好きでヒロインと保護者(後述)を困らせているが、実際は強く慕っている。
まだ生えておらずエッチなことにはあまり興味はないが、騒がれるのが楽しくてヒロインの胸を触ったりする。
・保護者
ヒロインと弟分の保護者。温厚篤実、公明正大、この時代では珍しく偏見も差別意識もない。
二人に慕われ住民の信頼も厚いが、その本性は他者を甚振ることにでしか興奮できないサディスト。
だが、未だ自覚はない。
*人間関係のリクエスト
保護者、姉、弟の疑似家族
*特定の責めのリクエスト
・弟分の裸を見てしまったヒロインは、欲望のままに自慰を行い、深く嫌悪する。
・日に日に強くなる性欲について保護者に相談するヒロイン。最初は真摯に対応していた保護者だが、
ヒロインの安心のために行った悪魔祓いをきっかけに、自身の性癖に気づき同好の士を集めてヒロインを調教、ヒロインは罵られ嬲られることに快楽を感じ受け入れていく
※できれば乳首や陰核への針責があると嬉しいです
・調教を目撃した弟分も巻き込まれる。
弟分の衣服を剥ぎ取り、口汚く罵りながら拷問じみた性的な懲罰を加える保護者。同じ懲罰を受けながら、みだらな笑みを浮かべるヒロイン。
混乱する弟分を見て、ヒロインは弟分が自分と同じ立場になったことを主に感謝する。
R-18 #SM #鬼畜 #輪姦 #拷問 #露出 #言葉責め #調教
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なんとなんとナントの勅令、ナンタケットでナンタルチャ。
舞台は教会ですが、ヒロインは修道女見習ではありませんか。
暗合というやつであります。暗号では有馬温泉草津の湯別府湯布院城崎にて。
依頼者様は教会と修道院と混同されてるきらいがありますが。それを言うと。そもそも女子修道院は男子禁制。男女修道院はありません。ですが、これは。修道院ではなく、「教団」とかで辻褄れます。あるいは教会の孤児院とか。孤児院にすると保護者、ヒロイン、弟分という疑似家族の設定に合いませんが。
しかし、まあ。リクエストの時代と世界には、在俗会(ますます人数が……)というやつが実際に存在します。なんとでもなります。ならなくても、します。「同好の士」に教会関係者を配置する手もあります。外来者も登場させますが。
まあ。これを受けると、修道院かぶりですが。『公女巡虐』は、幼い頃に垣間見た女囚の全裸引き回しで被虐に目覚め、それを妄想しながらオナッてるのを継母に見つかって、お仕置きにメコ筋縦打ちとかオナ封じで毎夜大の字磔就寝とか。修道院送りにされる直前に誘拐されて娼館に売られて、わざと脱走してきつい仕置を受けるとか、伯爵令嬢捜索の手が娼館に伸びてきたので口封じに殺されかかるところをガキンチョ強盗団に救われて、イケメン頭目の情婦になって、ガサ入れ食らって、とろいヒロインだけが捕まって、盗賊への正当な拷問が苛酷に繰り広げられて、全裸引き回し公開処罰で、前述の捜索隊に発見されて救出されて、当初の予定通りに修道院へ送致されて、ところがそこは嗜虐者の巣窟で……実は継母はそれを知っていて継子を生贄にした。ヒロインの被虐願望と継母の継子虐めの思惑が共に満たされて――WinWinでいいのか?
あら、オチまでばらしちった。
500枚超過の大作になりますから、修道院だけが舞台のコンパクト(コンパクトでインパクト:SF時代からのモットーです)なリクエストとは違います。だいち『公女巡虐』は中世ヨーロッパ、SMX358は19世紀末乃至20世紀初頭のアメリカです。
タイトルも決めました(変更するかも)。
『少女ジュリア~背徳の恍惚』
実は、女子修道院には原点近傍の深い思い入れがあります。
おそらく『マルキ・ド・サドのジュスティーヌ』という洋画でしょう。かつては、こんなのがお子様が視聴する時間帯に堂々とテレビ放映されていたのです。
ヒロインが放浪遍歴の果てに辿り着いた修道院。男の院長が彼女を迎えて、二人の修道女が現われて。いきなり法衣を引き開ける。簡単に乳房が露出する構造になっているのです。
ジャーン! みたいな音楽。ヒロインは(これまでの性的虐待遍歴で)即座に事情を悟って、逃亡を図ったと記憶してます。連れ戻されてドウコウアレコレされたという記憶はありません。ゴールデンアワー健全ロードショーですから、カットされたのか、元々そういうシーンは無かったのか。
という訳で。『ジュスティーヌあるいは美徳の不幸』をもじったタイトルなのです。
次回はPLOTのご紹介――に、なる予定です。
蛇足の靴下。
衆道院とか衆道淫という語呂合わせも思いつきました。そのうち使うかもしれませんが、今回はパス。
Making of 娘女敵討:Final
最終章は短いので、その前とまとめて一気に。
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婚礼討入
祝言は暮れ六つの鐘を聞いて始められる。この頃には来客の出入りもなく、近隣も邪魔をせぬよう鳴りをひそめているが。その一刻前くらいまでは、なにかと慌ただしい。
農民としてなら一張羅くらいの着物を纏って、それらしい荷物を裏口から運び入れる。名も用件も聞かれずに素通り。物陰に隠れていては、見つかったときに怪しまれる。あれこれ手伝うふりをしながら、時を稼いで。
いざ祝言が始まると、台所の片隅で堂々と素早く身支度をする。兵之輔は、むしろそれまでより襤褸い着流しに脇差。美代は黒猫褌の素肌に白装束。手には抜き身の大刀。襷掛の暇(いとま)もない。
立ち騒ぐ下女たちを突き飛ばすように掻き分けて奥座敷へ突進する兵之輔。ぴたりと後に続く美代。襖を蹴破ったところで、兵之輔は脇へ引く。後は美代の独り舞台。兵之輔には、助太刀するつもりなど端から無かった。また、必要とも思わぬ。
抜き身の大刀を引っ提げた白装束女の乱入。婚礼の場はたちまち阿鼻叫喚の修羅場――になど、ならなかった。あまりに突拍子もない椿事に、その場で固まってしまう烏合の衆。
刀が鴨居につかえぬよう、正眼に構えて座敷の中央を美代は突き進んだ。
さすがに忠則は状況を幾らかは理解して。片膝立ちになって脇差を抜いた。ときには、すでに大刀の撃尺の間。
「田上忠則殿。女の恨みっ。覚悟」
「うわわわわっ」
忠則は、振り下ろされる刀身を脇差で横へ払う――というよりも、顔をそむけながら闇雲に振り回すだけ。
「ええいっ」
裂帛の気合もろとも大刀が忠則の頭頂を襲った。
「ぎゃわああっ……」
忠則は脇差を放り出し、頭を押さえて尻餅をついた――だけだった。
美代は敢えて十二分にも十五分にも踏み込んで。真剣勝負に望む心構え通りに、刀の鍔を相手の額に叩きつけたのだった。
「思い知ったか」
会心を叫ぶ美代。
一太刀を浴びせれば斬り殺されても善しという決心は、敵のあまりな不甲斐なさに立ち消えて、憐愍さえ湧いたのであろう。あるいは、己れの生への執着が湧いたか。
呆然とする一同のうちで、最初に我を取り戻したのは、なんと花嫁だった。忠則を婿養子に迎える立花家の長女、菊江。
「婚礼の場で狼藉を働き、あまつさえ婿殿を傷つけた慮外者。討ち取れ、討ち取ってくだされ」
叱咤督励されて、男たちの半数ばかりが脇差に手を掛けた。
うぬ……と、兵之輔が瞠目する。と同時に、美代を取り巻く相関図の中に菊江の名が大きく浮かび上がった。
手切れ金めいて小森家に渡された二十五両。八十石の貧乏武家が、おいそれと出せる額ではない。さらに。破落戸どもを手懐けるにも五両十両を要したはず。小娘のへそくりでは追い付かないが、二百石取りの武家ならば難しくはなかろう。二十五両を工面したのは立花家であろうが、相手の娘を傷物にするどころか川原に晒すまでは――女の嫉妬が絡んで初めて成し得る所業ではなかろうか。
それに思い至ったのは兵之輔だけではなかった。美代が、殺気のこもった眼差しを菊江に向けた。
「何をなされておられる。取り押さえてください。いっそ、無礼討ちに」
まだ尻餅をついたままの新婿を見捨てて立ち上がるや、廊下へ逃げようとする菊江。
「待て……」
美代が追いすがろうとする――よりも早く。蹴破った襖の陰に身をひそめていた兵之輔が、案山子の間をすり抜けるようにして菊江の行く手をふさいだ。と同時に。
「むんっ」
電光石火の抜刀から逆袈裟に斬り上げた。
怪我を負わせては面倒という遠慮が、わずかに切っ先を萎縮させて、切断されたのは帯だけだった。しかし、それでじゅうぶん。兵之輔は花嫁衣裳の前襟をつかんで花嫁に足払いを掛けた。
「きゃああっ」
胸元を大きくはだけられて廊下に転がる菊江。一同は元より、美代までもがぽかんと突っ立っている。少なくとも、殺気は失せていた。
「この喧嘩、神崎外流の柴里兵之輔が預かった」
女の一大事を掛けた討入を喧嘩とは、第一に美代が納得しないであろうが。
仮に忠則が美代に斬り殺されたとしても、仕掛を使ってみる腹を固めていた。忠則は浅手すら負わなかったとなれば、事を丸く納められなければ『其他諸々承候』の看板を降ろさねばならない。
兵之輔は脇差を腰に納めて、周囲を睥睨する。
「お手前方が抜けば、拙者も改めて抜くぞ」
美代を背中にかばって一同と対峙する。
かなりに毒気を抜かれているが、ひとつきっかけがあれば抜刀して襲いかかる気配は消えていない。
兵之輔が懐から呼子笛を取り出した。
ピリリリ、ピリ、ピリ、ピリリリリ。断続的に甲高く吹き鳴らした。
と、ひと呼吸を置いて。
ふおおお、ぼお、ぼお、ふおおおおお。遠くから尺八の音が反ってきた。
ピイイイ、ピッ、ピッ、ピイイイイ。滑らかな按摩笛が別の方角から響く。
「すでに、美代のカワラケサラシから田上家との破談、立花家と田上家の慌ただしい縁組までは、瓦版に刷り上がっておる。討入の顛末も――それ、そこの松の木じゃ」
塀に沿って立つ松を、兵之輔は指差した。仲間が潜んで一部始終を見届けている――というハッタリである。しかし、「討入の首尾や如何に」という尻切れ蜻蛉で瓦版を出す手筈は実際に調えてあった。猫探しとは違って、向こうからネタ料をくれようかという、大スクープである。実行出来るところはきちんと実行してこそ、ハッタリが迫真を帯びてくるのだ。
兵之輔と美代が無事に立花家の屋敷から退去できれば、刷り上がっている瓦版をまとめて引き取って――兵之輔の懐具合が無事でなくなる。とはいえ。これまでに堪能したあれこれを蹴転相手に仕掛けようものなら、二十五両では追いつかない。以て瞑すべしではあろう。
永年修行
二人は打ち揃って台所へ引き返し、美代だけが衣服を改めた。白装束で外を歩けば、瓦版を押えても噂千里を奔る。
無人の野を行くごとくに、田上の屋敷を裏から退散して。十三夜月を背に横河の村へ向かう。今さら実家へ戻れぬ美代も、ひっそりとついて来る。胸に抱えているのは白装束の風呂敷包み。菰に包んで持ち込んだ大刀は、兵之輔の腰にあった。
さて、これからどのように事を運べば良いものやらと、兵之輔は思案する。瓦版まで用意周到に手配りした男も、こちらは何も考えていなかった。
しかし美代は考えていたらしかった。あるいは、忠則を仕留めた後に、この場で決心したのか。
「お陰様をもちまして、私を穢した男に一太刀を浴びせる悲願が叶いました」
兵之輔を追いながら、はっきりとした声で礼を――述べているふうでもなかった。
「ですが。あの男よりも酷く私を穢した男が、まだ残っています」
俺のことかと、苦笑できる雰囲気でもない。何を言い出すのかと、正面を見据えて歩きながら、兵之輔は全身を耳にしていた。
「この憎き男にも一太刀を浴びせとうございます」
立ち会って俺に斬られるつもりかと――見当はずれな当て推量。
「でも、今の私の腕では返り討ちにされるだけです。この男の技に勝てるようになるまで、これまで通りの住み込み稽古をつけていただきとうございます」
さすがに立ち止まらざるを得なかった。そして振り向けば、撃尺の間合どころか、抱き寄せられる間近に美代の身体があった。その表情を読むどころではない。
「うむ……」
不意打ちに脳天を唐竹割にされた想い。ああでもないこうでもないと、頭は空回りをして。咄嗟にしては、なかなかに洒落た言葉を口に出来た。
「修業を積むごとに、一太刀では済まぬ恨みを重ねることになるぞ。それで良いのだな」
ここでこうせねば、男として恰好がつかぬ。道端とはいえ、さいわいに人通りも絶えている。
――兵之輔は一歩を進んで、美代をきつく抱き締めた。
========================================

これで宿題をひとつ片付けた。そんな気分ですね。
ずっと前に某剣客小説を読んで、それ以来の念願ではありました。
もっと『悲剣肌風』に即したストーリイとか。男の門弟に混じってアレコレとか。そういうエピソードでまとめれば、二百や三百はいっていたでしょう。でも、某文庫書き下ろしとかでなく商業誌に掲載となると、これくらいの尺でないと無理です。
まあ。どっちにしても。「商業誌に載っていてもおかしくない」レベルでしかありません。20世紀末くらいにSM小説誌が氾濫していたとしても、「新人というリスクを冒してまで、敢えて掲載する必然性」は無いレベルです。
さてさて。これは実は9/1に仕込んだ予定稿です。
この記事がリリースされたときには、『宿題を忘れたら……』の「15章:縄とトコロテン」を脱稿しているか、執筆中か。
しかし、すでに、心は。「その次」に飛んでいるのです。
挫折した『昭和集団羞辱史:物売編(夜)』に取り組んでいるか。
まるきり新規着想の長編『公女巡虐~娼婦から性隷への長い道程』に着手しているか。
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婚礼討入
祝言は暮れ六つの鐘を聞いて始められる。この頃には来客の出入りもなく、近隣も邪魔をせぬよう鳴りをひそめているが。その一刻前くらいまでは、なにかと慌ただしい。
農民としてなら一張羅くらいの着物を纏って、それらしい荷物を裏口から運び入れる。名も用件も聞かれずに素通り。物陰に隠れていては、見つかったときに怪しまれる。あれこれ手伝うふりをしながら、時を稼いで。
いざ祝言が始まると、台所の片隅で堂々と素早く身支度をする。兵之輔は、むしろそれまでより襤褸い着流しに脇差。美代は黒猫褌の素肌に白装束。手には抜き身の大刀。襷掛の暇(いとま)もない。
立ち騒ぐ下女たちを突き飛ばすように掻き分けて奥座敷へ突進する兵之輔。ぴたりと後に続く美代。襖を蹴破ったところで、兵之輔は脇へ引く。後は美代の独り舞台。兵之輔には、助太刀するつもりなど端から無かった。また、必要とも思わぬ。
抜き身の大刀を引っ提げた白装束女の乱入。婚礼の場はたちまち阿鼻叫喚の修羅場――になど、ならなかった。あまりに突拍子もない椿事に、その場で固まってしまう烏合の衆。
刀が鴨居につかえぬよう、正眼に構えて座敷の中央を美代は突き進んだ。
さすがに忠則は状況を幾らかは理解して。片膝立ちになって脇差を抜いた。ときには、すでに大刀の撃尺の間。
「田上忠則殿。女の恨みっ。覚悟」
「うわわわわっ」
忠則は、振り下ろされる刀身を脇差で横へ払う――というよりも、顔をそむけながら闇雲に振り回すだけ。
「ええいっ」
裂帛の気合もろとも大刀が忠則の頭頂を襲った。
「ぎゃわああっ……」
忠則は脇差を放り出し、頭を押さえて尻餅をついた――だけだった。
美代は敢えて十二分にも十五分にも踏み込んで。真剣勝負に望む心構え通りに、刀の鍔を相手の額に叩きつけたのだった。
「思い知ったか」
会心を叫ぶ美代。
一太刀を浴びせれば斬り殺されても善しという決心は、敵のあまりな不甲斐なさに立ち消えて、憐愍さえ湧いたのであろう。あるいは、己れの生への執着が湧いたか。
呆然とする一同のうちで、最初に我を取り戻したのは、なんと花嫁だった。忠則を婿養子に迎える立花家の長女、菊江。
「婚礼の場で狼藉を働き、あまつさえ婿殿を傷つけた慮外者。討ち取れ、討ち取ってくだされ」
叱咤督励されて、男たちの半数ばかりが脇差に手を掛けた。
うぬ……と、兵之輔が瞠目する。と同時に、美代を取り巻く相関図の中に菊江の名が大きく浮かび上がった。
手切れ金めいて小森家に渡された二十五両。八十石の貧乏武家が、おいそれと出せる額ではない。さらに。破落戸どもを手懐けるにも五両十両を要したはず。小娘のへそくりでは追い付かないが、二百石取りの武家ならば難しくはなかろう。二十五両を工面したのは立花家であろうが、相手の娘を傷物にするどころか川原に晒すまでは――女の嫉妬が絡んで初めて成し得る所業ではなかろうか。
それに思い至ったのは兵之輔だけではなかった。美代が、殺気のこもった眼差しを菊江に向けた。
「何をなされておられる。取り押さえてください。いっそ、無礼討ちに」
まだ尻餅をついたままの新婿を見捨てて立ち上がるや、廊下へ逃げようとする菊江。
「待て……」
美代が追いすがろうとする――よりも早く。蹴破った襖の陰に身をひそめていた兵之輔が、案山子の間をすり抜けるようにして菊江の行く手をふさいだ。と同時に。
「むんっ」
電光石火の抜刀から逆袈裟に斬り上げた。
怪我を負わせては面倒という遠慮が、わずかに切っ先を萎縮させて、切断されたのは帯だけだった。しかし、それでじゅうぶん。兵之輔は花嫁衣裳の前襟をつかんで花嫁に足払いを掛けた。
「きゃああっ」
胸元を大きくはだけられて廊下に転がる菊江。一同は元より、美代までもがぽかんと突っ立っている。少なくとも、殺気は失せていた。
「この喧嘩、神崎外流の柴里兵之輔が預かった」
女の一大事を掛けた討入を喧嘩とは、第一に美代が納得しないであろうが。
仮に忠則が美代に斬り殺されたとしても、仕掛を使ってみる腹を固めていた。忠則は浅手すら負わなかったとなれば、事を丸く納められなければ『其他諸々承候』の看板を降ろさねばならない。
兵之輔は脇差を腰に納めて、周囲を睥睨する。
「お手前方が抜けば、拙者も改めて抜くぞ」
美代を背中にかばって一同と対峙する。
かなりに毒気を抜かれているが、ひとつきっかけがあれば抜刀して襲いかかる気配は消えていない。
兵之輔が懐から呼子笛を取り出した。
ピリリリ、ピリ、ピリ、ピリリリリ。断続的に甲高く吹き鳴らした。
と、ひと呼吸を置いて。
ふおおお、ぼお、ぼお、ふおおおおお。遠くから尺八の音が反ってきた。
ピイイイ、ピッ、ピッ、ピイイイイ。滑らかな按摩笛が別の方角から響く。
「すでに、美代のカワラケサラシから田上家との破談、立花家と田上家の慌ただしい縁組までは、瓦版に刷り上がっておる。討入の顛末も――それ、そこの松の木じゃ」
塀に沿って立つ松を、兵之輔は指差した。仲間が潜んで一部始終を見届けている――というハッタリである。しかし、「討入の首尾や如何に」という尻切れ蜻蛉で瓦版を出す手筈は実際に調えてあった。猫探しとは違って、向こうからネタ料をくれようかという、大スクープである。実行出来るところはきちんと実行してこそ、ハッタリが迫真を帯びてくるのだ。
兵之輔と美代が無事に立花家の屋敷から退去できれば、刷り上がっている瓦版をまとめて引き取って――兵之輔の懐具合が無事でなくなる。とはいえ。これまでに堪能したあれこれを蹴転相手に仕掛けようものなら、二十五両では追いつかない。以て瞑すべしではあろう。
永年修行
二人は打ち揃って台所へ引き返し、美代だけが衣服を改めた。白装束で外を歩けば、瓦版を押えても噂千里を奔る。
無人の野を行くごとくに、田上の屋敷を裏から退散して。十三夜月を背に横河の村へ向かう。今さら実家へ戻れぬ美代も、ひっそりとついて来る。胸に抱えているのは白装束の風呂敷包み。菰に包んで持ち込んだ大刀は、兵之輔の腰にあった。
さて、これからどのように事を運べば良いものやらと、兵之輔は思案する。瓦版まで用意周到に手配りした男も、こちらは何も考えていなかった。
しかし美代は考えていたらしかった。あるいは、忠則を仕留めた後に、この場で決心したのか。
「お陰様をもちまして、私を穢した男に一太刀を浴びせる悲願が叶いました」
兵之輔を追いながら、はっきりとした声で礼を――述べているふうでもなかった。
「ですが。あの男よりも酷く私を穢した男が、まだ残っています」
俺のことかと、苦笑できる雰囲気でもない。何を言い出すのかと、正面を見据えて歩きながら、兵之輔は全身を耳にしていた。
「この憎き男にも一太刀を浴びせとうございます」
立ち会って俺に斬られるつもりかと――見当はずれな当て推量。
「でも、今の私の腕では返り討ちにされるだけです。この男の技に勝てるようになるまで、これまで通りの住み込み稽古をつけていただきとうございます」
さすがに立ち止まらざるを得なかった。そして振り向けば、撃尺の間合どころか、抱き寄せられる間近に美代の身体があった。その表情を読むどころではない。
「うむ……」
不意打ちに脳天を唐竹割にされた想い。ああでもないこうでもないと、頭は空回りをして。咄嗟にしては、なかなかに洒落た言葉を口に出来た。
「修業を積むごとに、一太刀では済まぬ恨みを重ねることになるぞ。それで良いのだな」
ここでこうせねば、男として恰好がつかぬ。道端とはいえ、さいわいに人通りも絶えている。
――兵之輔は一歩を進んで、美代をきつく抱き締めた。
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これで宿題をひとつ片付けた。そんな気分ですね。
ずっと前に某剣客小説を読んで、それ以来の念願ではありました。
もっと『悲剣肌風』に即したストーリイとか。男の門弟に混じってアレコレとか。そういうエピソードでまとめれば、二百や三百はいっていたでしょう。でも、某文庫書き下ろしとかでなく商業誌に掲載となると、これくらいの尺でないと無理です。
まあ。どっちにしても。「商業誌に載っていてもおかしくない」レベルでしかありません。20世紀末くらいにSM小説誌が氾濫していたとしても、「新人というリスクを冒してまで、敢えて掲載する必然性」は無いレベルです。
さてさて。これは実は9/1に仕込んだ予定稿です。
この記事がリリースされたときには、『宿題を忘れたら……』の「15章:縄とトコロテン」を脱稿しているか、執筆中か。
しかし、すでに、心は。「その次」に飛んでいるのです。
挫折した『昭和集団羞辱史:物売編(夜)』に取り組んでいるか。
まるきり新規着想の長編『公女巡虐~娼婦から性隷への長い道程』に着手しているか。
Making of 娘女敵討:4
いよいよ本編執筆開始――は、実は8月18日からですが。
全体で100枚くらいのペースで進行しています。
まあ、考えてみれば。裸の娘を柱に縛りつけて薄皮一枚を斬り刻むという、それがメインディッシュです。一か月ほどの褌一本家事がお口直しで、デザートが婚礼討入。エピソードが少ないのですから当然ですわな。
このシリーズは、WORD直書きからのコピペで御紹介。
[[rb:流尾>ルビ]]で書いて "[[rb:"→"<ruby>"のような作業はしていません。
冒頭の看板の文字も、実際はHG行書体16ptです。
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神崎外流
剣術指南、よみかきそろばん
用心棒、助人、人探、猫探
其他諸々承候
道場主 柴里兵之輔
その娘は看板の前に立ち尽くして、何度も一文字ずつを目で辿っていた。百姓娘らしい粗末な身なり。不相応に大きな葛籠を背負い、三尺近い長さの細い菰包みを胸の前に抱いている。
やがて、踏ん切りがついたのか。大きく息を吸い込むと、古びた板塀に囲まれた門をくぐった。殺風景な庭を進み、破屋(あばらや)とまではいわぬが、どことなく荒涼とした屋敷の玄関口に立った。
速習切望
「御頼み申します。弟子入り志願の者にございます」
若い娘の声に、兵之輔(ひょうのすけ)は小首を傾げた。「お願いします」ならば、月に一度や二度はある「其他諸々」であろうが、わざわざ「弟子入り志願」とは――それも、女人が。当道場の門弟は近在の農民が五人、それだけである。最後の入門者は二年前。
玄関で娘を迎えて、武家の子女だろうとひと目で見て取ったのは流石ではあった。
年の頃は笄を挿し初(そ)めて二年あたりか。番茶ではなく、玉露とまではいかぬにしても煎茶といったところ。その美しく整った顔は陽に焼けておらず、しかし指は家事で幾らか荒れている。
「切紙の腕を持つ男に、せめて一太刀を浴びせられるだけの技を、ひと月の内に御教授願えぬものでしょうか」
逡巡は門前でたっぷりと済ませてきたとでもいうように、座敷で兵之輔と向かい合うなり、娘は単刀直入に突っ込んできた。
「む……」
これほどまでに明確な、そして曖昧な目的を持つとは、この娘は何者であろうか。兵之輔の関心はそこに向かった。
「一太刀とは穏やかでない。たとえ返り討ちに遭わずとも、無事には済まぬぞ」
「元より。敵(かたき)を討って、なおも生き恥を晒すつもりなどございませぬ」
訳が分からなくなった。敵討は武家の誉れ。それを生き恥とは。
兵之輔の困惑を察したのだろう。娘は顔を伏せて、硬い声でつぶやいた。
「私は徒士頭、小森重太夫が娘、美代にございます」
そんな下っ端侍など知らぬ――と、口の端に出かけたところで思い当たった。
「まさか、か……」
カワラケホトサラシなどと口走らぬだけの分別はあった。
破落戸(ごろつき)どもに手篭めにされたばかりか、朱に染まった無毛の女陰も露わに、河原で晒し者にされた娘。夜が明けて最初に美代を見つけたのは、地回りの十手持ちだった。本役の旦那にも検分していただかねばならねえからと、全裸で大岩に縛りつけられた美代をそのまま晒し続けて、集まってきた野次馬を追い払いもしなかった。美代が舌を噛まなかったのが不思議なくらいの追い恥であった。そのあれやこれやを瓦版にまで書かれて、まだ人の噂の七十五日も経ってはいない。
「敵(かたき)とは……破落戸どもをつきとめたということですかな」
咄嗟に取り繕ったまで。破落戸風情が剣術の切紙でもあるまいに。
「敵討です」
美代は顔を上げて、きっぱりと言い切った。
「遺恨だけではありません。小森の家に婿を迎えるなど叶わなくなりました。家を滅ぼした敵を討つのです」
なるほどと、兵之輔は一応の納得はする。傷物にされたばかりか世間に生き恥を晒した娘の婿になろう者など――居るとすれば、百石の扶持に釣られた打算の輩。小森の当主が武士であるなら、そのような男に家督を継がせるわけにはいかぬであろう。
「女の敵を討つのです。いわば女敵討(めがたきうち)です」
「ふうむ」
もちろん。美代の言葉は正しくない。女敵討とは、妻と通じた間男を私怨で討ち果たすことであり、本来の敵討とはまったく別物である。
敵討とは、目上の肉親を殺されての復讐である。遺された者の義務であり名誉でもある。しかし私怨に基づく報復は、逆縁(子の敵、弟妹の敵)を含めて公には許されていない。
美代が本懐を遂げたところで、当人の雪辱はともかく小森家の不名誉は拭われない。いささかでも汚名を雪ぐには、理不尽ながら、操を穢された娘が自害するしかないだろう。
「しかし、破落戸を手ずから成敗なさらずとも。町方に任せておけばよろしいのではありませぬか」
女の恨みの骨髄など分からぬとは思いながら、兵之輔は分別めいた物言いをしてみた。
「私を辱しめた者どもなど、気違い狗のようなものです」
そういった難儀に遭わされた娘に「犬に噛まれたと思って」などと、慰めにもならない言葉を掛ける阿呆も少なくないが、当人が口にするとは――などと苦笑する間もあらばこそ。
「敵(かたき)は、かつての許婚者(いいなずけ)、田上忠則です」
兵之輔は意表を衝かれて、美代の次の言葉を待つしかなかった。
「彼の者が破落戸どもをけしかけ、いやでも人の噂に立つようにしてのけて、それを口実に破談としたのです。そして、何食わぬ……」
美代は言い淀み、なぜか蒼白の顔に羞恥の血色を浮かべた。のは、一瞬。
「ひと月後には、立花家に婿入りします。二百石に鞍替えしたのです」
兵之輔は、田上忠則という男を知らない。これまでの美代の話から推測するに、小さな家の冷や飯食いであろう。何流か知らぬが、切紙程度なら武を買われてではあるまい。よほどに才覚があるのだろう。次男坊、三男坊はたいていの家に居るが、婿養子を取ろうという家は、そうそうありはしない。
「ひと月のうちにとおっしゃいましたな。まさかに、婚礼の場に討入を掛けるおつもりか」
美代の表情に思い詰めた色を見て取っての軽口だったが、返ってきた言葉には絶句するしかなかった。
「その通りです」
兵之輔は、美代の言い分を吟味してみた。
操を奪われたばかりか、その無惨な姿を衆目に晒されたとなれば、破談は当然である。しかし田上忠則が、路傍に転がっている石を拾うように短時日で婿養子の鞍替えを出来たというのは、あまりに不自然ではある。二百石の話がまとまるので百石の話を無理矢理に壊した――そう勘繰って当然ではあろう。勘繰るだけならば。
「田上が裏で糸を引いていたという手証はお有りでしょうね」
「ございます」
「それは、どのような」
今度は羞恥の色どころではなかった。美代の顔が紅潮した。
「それを……申し上げねばなりませぬか」
「他人に害を為そうとして、その技を教えよと言われる。得心できぬ限りは、お断わり致す」
よほどに羞ずかしいことなのであろうが、美代の逡巡は短かった。顎を引き兵之輔の目を見据えて。
「私に乱暴を働いた者どもは、私が娘ではないことも、かわらけであることも、知っておりました」
「…………」
手証とは、誰もが手に取って確かめられる確かな証拠という意味である。破落戸どもが知っていたという美代の言葉は、不確かな証拠ですらない。それを知っていたというのが事実としても、それが田上と、どう結びつくのか。
「かわらけのことを知っているのは、父母の他には一人しかおりませぬ。もうひとつについては、その一人のみです」
謎解きか――兵之輔はしかし、女の深い羞じらいの中に、およその答を察したのだった。田上某は、「いずれは夫婦になるのだから」などと言い含めて、すでに美代を抱いていたのだろう。ならば、彼女がかわらけであると知っているのも当然。
とはいえ、推察で進めて良い話ではない。兵之輔は、そのように己れを言いくるめて、残酷な質問を放った。
「破落戸どもが知っていたというのは、彼奴らが明言したのでしょうな。うろ覚えでもよろしい。どのように話していたか、それをお聞かせ願いたい」
「ダンナノイッテタトオリダゼ。アナガトオッテヤガル。最初の男が、確かにそう言いました」
美代の顔から羞恥が消えて、氷のように冷たい怒気に覆われていた。
「ウマレツイテノカワラケダッテンダカラナ。ミセニデリャア、サゾウレッコニナルダロウゼ。そうも言いました」
これは――兵之輔は瞠目した。修羅場のさ中に、これほどまではっきりと加害者の言葉を覚えているとは。十五のときに逢引中を与太者に絡まれ、相手が匕首を抜いたので、その手首を斬り落とした――などというのは数えずに、二十八の今日(こんにち)までに、兵之輔は死地を三度経験して四人を斬っている。そのうち二人は、必殺の斬撃を放つしかない強敵であった。彼らがどのように動き己れがどのように対処したかは、すべて克明に覚えている。しかし、戦いの最中に発した言葉など、己れのも相手のも、およその内容すら怪しい。
この一事をもってしても美代には天稟があると、兵之輔は断じた。日常の場においてはまったく不要な天稟が。
「如何にも、敵が切紙であろうと目録であろうと、一太刀を浴びせる技くらいは伝授して差し上げること、不可能ではない」
兵之輔が熟考の末に放った言葉に、美代は顔を引き締めた。眉に唾を付けたというほうが当たっているかもしれない。
おそらく。城下にある道場の門を敲いて回って、門前払いを食わされた挙げ句に、御城から一里も離れた横河村にぽつんと佇む、剣術道場だか万屋だか分からないここまで流れてきた。大方はそういうことだろうと、兵之輔は見当を付けている。安請合いをされて、疑心が先立ったとしても無理はない。
兵之輔には、十分な成算があった。と同時に十二分でも足りない邪心もあった。
「改めて尋ねるが、武技の心得はあるかな」
訪なった女人にではなく、師が弟子に対する言葉遣いに、すでになっている。
「貫魂流の懐剣術を幾らかは。一両切紙には勝てると自惚れています」
美代が習っていた流派では、型さえ覚えれば一両の免許料で切紙を頂戴できる。御嬢様切紙とも嫁入切紙とも揶揄されている。腕にいささかの覚えはあるが、家計を逼迫させてまで紙切など不要――寡黙にして雄弁な娘ではあった。
「まずは腕前を見極める。道場へ来られよ」
立って、さっさと道場へ向かう兵之輔。美代は葛籠を胸に抱き、その上に細長い菰包みを載せて兵之輔を追う。
兵之輔は一段高くなった見所(けんぞ)に座して、目の前に正座した娘にとんでもない言葉を放った。
「着物を脱いで素裸になりなさい」
「え……」
言葉の意味までは解しても、それが己れとどう関わってくるのかが分かりかねている、ぽかんとした表情。
「身体全体の動きや筋肉の使い方を見るためです」
直に見なくても衣服の上からでも、末端の動きを見れば根本も粗方は分かる。それを敢えて脱がそうとするのは、九分までは邪心、さらに言うなら嗜虐であった。そして残りの一分は、『肌風』であった。
素肌に太刀風を三寸どころか尺余に感じて、一寸ではなく皮一枚で見切るという、肌の鋭敏な女人にしか為し得ないという秘剣。父が興した神埼外流の祖となった神埼古流で、すでに父の若き頃には術者も絶えて伝説となっていた。
そのような秘術を、御嬢様切紙ちょぼちょぼの娘が短時日で体得できるはずもない。兵之輔の成算は別辺にある。ただ、幾らかは心の疚しさを誤魔化せた。
これまでは決心の早さに兵之輔を瞠目させていた美代が、心の臓が百を拍つほどにも逡巡した。困惑から羞恥、羞恥から遺恨、そして決意へと――それは兵之輔の推測であって、うつむけた表情は能面のように硬く静かだった。
やがて、美代が立ち上がった。
「お目を汚します」
硬い表情で帯を解き、対丈の着物を脱げば、下は膝丈の赤い腰巻のみ。襦袢などは身に着けていなかった。本気で水呑百姓の娘に扮していたのである。
その一事をもってしても、美代の決意は本物であると、兵之輔は感じ入った――以上に、嗜色心を刺激された。
現代の読者に理解しやすくたとえるなら。清楚な御嬢様学校に通っている彼女が、セーラー服の下にインナーを着けていないと知ったときの興奮――では、作者のレトロ感覚を暴露するだけであろうか。
「この姿で型を御覧に入れれば、よろしいのですか」
「うむ……」
みずから仕掛けた悪戯に怯みながらも、なんとか道場主の威厳を取り繕う兵之輔。
美代は携えてきた葛籠から懐剣を取り出して左手に持ち、兵之輔の前に右半身(はんみ)を曝して立った。
「鋭ッ」
可憐な気合声と共に懐剣を逆手に抜いて、迫りくる刃を受け流す型を演じた。順手に持ち替えて正眼に構える。袈裟懸けに斬ってくる見えない刃を受け、上段からの斬撃を防ぐ。
それなりに洗練された動きではあったが、実戦なら最初の一撃で懐剣は弾き飛ばされ、そのまま斬られていたか、押し倒されて若い娘に相応しい扱いをされていたか。
兵之輔はわずかに顔をしかめ、それから鼻翼を広げて太い息を吐いた。剣術の心得がある男に対して一太刀を浴びせられるところまで仕込む前途遼遠を憂い、しかし、未熟を口実に非常の手段を講じる愉悦を思ってのことだった。
「衣服を改めさせていただきます」
型を演じ終えると、当然だが美代は肌を隠す。
もったいないと思いながら、とりあえずは止める口実も無い。
「そこの菰包みは大刀と見受けるが」
再び向かい合って座して、答を知りながらも兵之輔が尋ねる。
「はい。懐剣では切っ先が届かぬと思います」
「うむ。理に敵った考えである」
重々しく頷いたが腹の底では――理詰めで納得させればかなりのことまで受け容れるだろうとほくそ笑んでいる兵之輔だった。
「では、ひと月限りの入門を認める」
ひと月で業を修めたいと願うのだから、それを叶えてやるという意味であり、同時に、それ以降に何をしようと当道場は与り知らぬという逃げでもあった。二百石の跡取りに大怪我を負わせたとばっちりなど真っ平御免だ。
などという思惑を知ってか知らずか、美代は畳に両手を突いて深々と頭を下げた。
「さて……仮初にも入門となると、束脩であるが」
兵之輔がもったいをつけて言葉を切った隙に、美代が葛籠から切餅を取り出した。一分銀百枚。小判にして二十五両である。
束脩が酒や白扇であったのは百年以上も昔の話だが。地獄の沙汰も金次第の世であるとはいえ、束脩に加えて盆暮の付け届け十年分でも釣りがくる。
「これは多すぎる」
兵之輔としては、内弟子の形にして束脩無用の代わりに家事一切を任せ、成り行きによっては夜這いなどと目論んでいたのだから、へどもどしてしまった。
「是非とも、お納めください。これは、田上の家から投げられた金子です。これで我が家を潤すなど、我が身を女郎に売るよりも浅ましいことです」
手切れ金ということだろう。
身売りも親孝行のひとつではあろうし、草をかじらず白米が食えるのだが――貧乏とはいえ武家の娘にそこまで考えよと求めるのも無理だろう。兵之輔は、黙って金子を受け取って――神棚に奉じたのは、すぐにも稽古をつけてやる所存だったので、邪魔になるからだった。
とはいえ、その前に。
「わずかひと月で、それなりに大刀を扱えるようになり、かつ、剣術の心得がある男に一太刀を浴びせられる技前と気構えを練る。非常極まりない修行になるぞ。婿を取れず嫁にも行けぬ身体になる。それは覚悟していただく」
兵之輔の言葉を受け止めて。それまでは硬い決意を覆っていた能面に、嘲りの色が滲んだ。
「元より穢された身なれば、それが束脩の足しになると思し召しでしたら、如何様にも」
やはり、そのように受け取るかと、それは予期してのこと。その覚悟に肩透かしを食わせ、まったく別の方角から嬲る。それも嗜虐のあり方だ。
などと、その道の通ぶってみたところで。実際に女を(ただ抱くのではなく)堪振り嬲ったことなど、五指もあれば足りる。百姓弟子からの付け届けで食うに困りはしないが、用心棒といえば隠居連が維尽島詣する折の世話役だったり、猫探しなど瓦版の隅に書いてもらえば足が出る。傷が治るまでの花代に色を付けて蹴転(けころ)女郎を折檻するだけの金も工面できない。近在の素人娘に手を出したりすれば、おんぼろ道場など文字通りに潰されてしまう。
もっとも、それだけに。いろいろとこじらせているのではあるが。
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筆者はヒロイン視点でばかり書いています。このとき、サディスト役の男はCo-staringであっても、デウス・エキス・サクシャです。そして、緊縛も鞭打ちも手慣れたもの。ヒロインの精神が追い込まれていく様も掌の上。
しかし、今回は。サディストながら経験はごくわずか。最底辺の娼婦を餌食にしようにも、傷が癒えるまでの生活保障をしてやらねばならず、農民門弟5人しかおらず、老人会の慰安旅行のツアコンとか子供から持ち込まれる猫探しで生計を立てているとなれば、その金もままならない。
いえ。けっして作者のアレコレを投影してるのではありません。わざわざ改行して書くなよ。
これに似た男主人公は『初心妻志願奴隷』くらいですか。でも、こやつは金だけはあったっけ。
ともかくも。異色の短編になりそうです。R18シーンも少ない。コミカライズすれば、じゅうぶん全年齢でいけますな。
全体で100枚くらいのペースで進行しています。
まあ、考えてみれば。裸の娘を柱に縛りつけて薄皮一枚を斬り刻むという、それがメインディッシュです。一か月ほどの褌一本家事がお口直しで、デザートが婚礼討入。エピソードが少ないのですから当然ですわな。
このシリーズは、WORD直書きからのコピペで御紹介。
[[rb:流尾>ルビ]]で書いて "[[rb:"→"<ruby>"のような作業はしていません。
冒頭の看板の文字も、実際はHG行書体16ptです。
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神崎外流
剣術指南、よみかきそろばん
用心棒、助人、人探、猫探
其他諸々承候
道場主 柴里兵之輔
その娘は看板の前に立ち尽くして、何度も一文字ずつを目で辿っていた。百姓娘らしい粗末な身なり。不相応に大きな葛籠を背負い、三尺近い長さの細い菰包みを胸の前に抱いている。
やがて、踏ん切りがついたのか。大きく息を吸い込むと、古びた板塀に囲まれた門をくぐった。殺風景な庭を進み、破屋(あばらや)とまではいわぬが、どことなく荒涼とした屋敷の玄関口に立った。
速習切望
「御頼み申します。弟子入り志願の者にございます」
若い娘の声に、兵之輔(ひょうのすけ)は小首を傾げた。「お願いします」ならば、月に一度や二度はある「其他諸々」であろうが、わざわざ「弟子入り志願」とは――それも、女人が。当道場の門弟は近在の農民が五人、それだけである。最後の入門者は二年前。
玄関で娘を迎えて、武家の子女だろうとひと目で見て取ったのは流石ではあった。
年の頃は笄を挿し初(そ)めて二年あたりか。番茶ではなく、玉露とまではいかぬにしても煎茶といったところ。その美しく整った顔は陽に焼けておらず、しかし指は家事で幾らか荒れている。
「切紙の腕を持つ男に、せめて一太刀を浴びせられるだけの技を、ひと月の内に御教授願えぬものでしょうか」
逡巡は門前でたっぷりと済ませてきたとでもいうように、座敷で兵之輔と向かい合うなり、娘は単刀直入に突っ込んできた。
「む……」
これほどまでに明確な、そして曖昧な目的を持つとは、この娘は何者であろうか。兵之輔の関心はそこに向かった。
「一太刀とは穏やかでない。たとえ返り討ちに遭わずとも、無事には済まぬぞ」
「元より。敵(かたき)を討って、なおも生き恥を晒すつもりなどございませぬ」
訳が分からなくなった。敵討は武家の誉れ。それを生き恥とは。
兵之輔の困惑を察したのだろう。娘は顔を伏せて、硬い声でつぶやいた。
「私は徒士頭、小森重太夫が娘、美代にございます」
そんな下っ端侍など知らぬ――と、口の端に出かけたところで思い当たった。
「まさか、か……」
カワラケホトサラシなどと口走らぬだけの分別はあった。
破落戸(ごろつき)どもに手篭めにされたばかりか、朱に染まった無毛の女陰も露わに、河原で晒し者にされた娘。夜が明けて最初に美代を見つけたのは、地回りの十手持ちだった。本役の旦那にも検分していただかねばならねえからと、全裸で大岩に縛りつけられた美代をそのまま晒し続けて、集まってきた野次馬を追い払いもしなかった。美代が舌を噛まなかったのが不思議なくらいの追い恥であった。そのあれやこれやを瓦版にまで書かれて、まだ人の噂の七十五日も経ってはいない。
「敵(かたき)とは……破落戸どもをつきとめたということですかな」
咄嗟に取り繕ったまで。破落戸風情が剣術の切紙でもあるまいに。
「敵討です」
美代は顔を上げて、きっぱりと言い切った。
「遺恨だけではありません。小森の家に婿を迎えるなど叶わなくなりました。家を滅ぼした敵を討つのです」
なるほどと、兵之輔は一応の納得はする。傷物にされたばかりか世間に生き恥を晒した娘の婿になろう者など――居るとすれば、百石の扶持に釣られた打算の輩。小森の当主が武士であるなら、そのような男に家督を継がせるわけにはいかぬであろう。
「女の敵を討つのです。いわば女敵討(めがたきうち)です」
「ふうむ」
もちろん。美代の言葉は正しくない。女敵討とは、妻と通じた間男を私怨で討ち果たすことであり、本来の敵討とはまったく別物である。
敵討とは、目上の肉親を殺されての復讐である。遺された者の義務であり名誉でもある。しかし私怨に基づく報復は、逆縁(子の敵、弟妹の敵)を含めて公には許されていない。
美代が本懐を遂げたところで、当人の雪辱はともかく小森家の不名誉は拭われない。いささかでも汚名を雪ぐには、理不尽ながら、操を穢された娘が自害するしかないだろう。
「しかし、破落戸を手ずから成敗なさらずとも。町方に任せておけばよろしいのではありませぬか」
女の恨みの骨髄など分からぬとは思いながら、兵之輔は分別めいた物言いをしてみた。
「私を辱しめた者どもなど、気違い狗のようなものです」
そういった難儀に遭わされた娘に「犬に噛まれたと思って」などと、慰めにもならない言葉を掛ける阿呆も少なくないが、当人が口にするとは――などと苦笑する間もあらばこそ。
「敵(かたき)は、かつての許婚者(いいなずけ)、田上忠則です」
兵之輔は意表を衝かれて、美代の次の言葉を待つしかなかった。
「彼の者が破落戸どもをけしかけ、いやでも人の噂に立つようにしてのけて、それを口実に破談としたのです。そして、何食わぬ……」
美代は言い淀み、なぜか蒼白の顔に羞恥の血色を浮かべた。のは、一瞬。
「ひと月後には、立花家に婿入りします。二百石に鞍替えしたのです」
兵之輔は、田上忠則という男を知らない。これまでの美代の話から推測するに、小さな家の冷や飯食いであろう。何流か知らぬが、切紙程度なら武を買われてではあるまい。よほどに才覚があるのだろう。次男坊、三男坊はたいていの家に居るが、婿養子を取ろうという家は、そうそうありはしない。
「ひと月のうちにとおっしゃいましたな。まさかに、婚礼の場に討入を掛けるおつもりか」
美代の表情に思い詰めた色を見て取っての軽口だったが、返ってきた言葉には絶句するしかなかった。
「その通りです」
兵之輔は、美代の言い分を吟味してみた。
操を奪われたばかりか、その無惨な姿を衆目に晒されたとなれば、破談は当然である。しかし田上忠則が、路傍に転がっている石を拾うように短時日で婿養子の鞍替えを出来たというのは、あまりに不自然ではある。二百石の話がまとまるので百石の話を無理矢理に壊した――そう勘繰って当然ではあろう。勘繰るだけならば。
「田上が裏で糸を引いていたという手証はお有りでしょうね」
「ございます」
「それは、どのような」
今度は羞恥の色どころではなかった。美代の顔が紅潮した。
「それを……申し上げねばなりませぬか」
「他人に害を為そうとして、その技を教えよと言われる。得心できぬ限りは、お断わり致す」
よほどに羞ずかしいことなのであろうが、美代の逡巡は短かった。顎を引き兵之輔の目を見据えて。
「私に乱暴を働いた者どもは、私が娘ではないことも、かわらけであることも、知っておりました」
「…………」
手証とは、誰もが手に取って確かめられる確かな証拠という意味である。破落戸どもが知っていたという美代の言葉は、不確かな証拠ですらない。それを知っていたというのが事実としても、それが田上と、どう結びつくのか。
「かわらけのことを知っているのは、父母の他には一人しかおりませぬ。もうひとつについては、その一人のみです」
謎解きか――兵之輔はしかし、女の深い羞じらいの中に、およその答を察したのだった。田上某は、「いずれは夫婦になるのだから」などと言い含めて、すでに美代を抱いていたのだろう。ならば、彼女がかわらけであると知っているのも当然。
とはいえ、推察で進めて良い話ではない。兵之輔は、そのように己れを言いくるめて、残酷な質問を放った。
「破落戸どもが知っていたというのは、彼奴らが明言したのでしょうな。うろ覚えでもよろしい。どのように話していたか、それをお聞かせ願いたい」
「ダンナノイッテタトオリダゼ。アナガトオッテヤガル。最初の男が、確かにそう言いました」
美代の顔から羞恥が消えて、氷のように冷たい怒気に覆われていた。
「ウマレツイテノカワラケダッテンダカラナ。ミセニデリャア、サゾウレッコニナルダロウゼ。そうも言いました」
これは――兵之輔は瞠目した。修羅場のさ中に、これほどまではっきりと加害者の言葉を覚えているとは。十五のときに逢引中を与太者に絡まれ、相手が匕首を抜いたので、その手首を斬り落とした――などというのは数えずに、二十八の今日(こんにち)までに、兵之輔は死地を三度経験して四人を斬っている。そのうち二人は、必殺の斬撃を放つしかない強敵であった。彼らがどのように動き己れがどのように対処したかは、すべて克明に覚えている。しかし、戦いの最中に発した言葉など、己れのも相手のも、およその内容すら怪しい。
この一事をもってしても美代には天稟があると、兵之輔は断じた。日常の場においてはまったく不要な天稟が。
「如何にも、敵が切紙であろうと目録であろうと、一太刀を浴びせる技くらいは伝授して差し上げること、不可能ではない」
兵之輔が熟考の末に放った言葉に、美代は顔を引き締めた。眉に唾を付けたというほうが当たっているかもしれない。
おそらく。城下にある道場の門を敲いて回って、門前払いを食わされた挙げ句に、御城から一里も離れた横河村にぽつんと佇む、剣術道場だか万屋だか分からないここまで流れてきた。大方はそういうことだろうと、兵之輔は見当を付けている。安請合いをされて、疑心が先立ったとしても無理はない。
兵之輔には、十分な成算があった。と同時に十二分でも足りない邪心もあった。
「改めて尋ねるが、武技の心得はあるかな」
訪なった女人にではなく、師が弟子に対する言葉遣いに、すでになっている。
「貫魂流の懐剣術を幾らかは。一両切紙には勝てると自惚れています」
美代が習っていた流派では、型さえ覚えれば一両の免許料で切紙を頂戴できる。御嬢様切紙とも嫁入切紙とも揶揄されている。腕にいささかの覚えはあるが、家計を逼迫させてまで紙切など不要――寡黙にして雄弁な娘ではあった。
「まずは腕前を見極める。道場へ来られよ」
立って、さっさと道場へ向かう兵之輔。美代は葛籠を胸に抱き、その上に細長い菰包みを載せて兵之輔を追う。
兵之輔は一段高くなった見所(けんぞ)に座して、目の前に正座した娘にとんでもない言葉を放った。
「着物を脱いで素裸になりなさい」
「え……」
言葉の意味までは解しても、それが己れとどう関わってくるのかが分かりかねている、ぽかんとした表情。
「身体全体の動きや筋肉の使い方を見るためです」
直に見なくても衣服の上からでも、末端の動きを見れば根本も粗方は分かる。それを敢えて脱がそうとするのは、九分までは邪心、さらに言うなら嗜虐であった。そして残りの一分は、『肌風』であった。
素肌に太刀風を三寸どころか尺余に感じて、一寸ではなく皮一枚で見切るという、肌の鋭敏な女人にしか為し得ないという秘剣。父が興した神埼外流の祖となった神埼古流で、すでに父の若き頃には術者も絶えて伝説となっていた。
そのような秘術を、御嬢様切紙ちょぼちょぼの娘が短時日で体得できるはずもない。兵之輔の成算は別辺にある。ただ、幾らかは心の疚しさを誤魔化せた。
これまでは決心の早さに兵之輔を瞠目させていた美代が、心の臓が百を拍つほどにも逡巡した。困惑から羞恥、羞恥から遺恨、そして決意へと――それは兵之輔の推測であって、うつむけた表情は能面のように硬く静かだった。
やがて、美代が立ち上がった。
「お目を汚します」
硬い表情で帯を解き、対丈の着物を脱げば、下は膝丈の赤い腰巻のみ。襦袢などは身に着けていなかった。本気で水呑百姓の娘に扮していたのである。
その一事をもってしても、美代の決意は本物であると、兵之輔は感じ入った――以上に、嗜色心を刺激された。
現代の読者に理解しやすくたとえるなら。清楚な御嬢様学校に通っている彼女が、セーラー服の下にインナーを着けていないと知ったときの興奮――では、作者のレトロ感覚を暴露するだけであろうか。
「この姿で型を御覧に入れれば、よろしいのですか」
「うむ……」
みずから仕掛けた悪戯に怯みながらも、なんとか道場主の威厳を取り繕う兵之輔。
美代は携えてきた葛籠から懐剣を取り出して左手に持ち、兵之輔の前に右半身(はんみ)を曝して立った。
「鋭ッ」
可憐な気合声と共に懐剣を逆手に抜いて、迫りくる刃を受け流す型を演じた。順手に持ち替えて正眼に構える。袈裟懸けに斬ってくる見えない刃を受け、上段からの斬撃を防ぐ。
それなりに洗練された動きではあったが、実戦なら最初の一撃で懐剣は弾き飛ばされ、そのまま斬られていたか、押し倒されて若い娘に相応しい扱いをされていたか。
兵之輔はわずかに顔をしかめ、それから鼻翼を広げて太い息を吐いた。剣術の心得がある男に対して一太刀を浴びせられるところまで仕込む前途遼遠を憂い、しかし、未熟を口実に非常の手段を講じる愉悦を思ってのことだった。
「衣服を改めさせていただきます」
型を演じ終えると、当然だが美代は肌を隠す。
もったいないと思いながら、とりあえずは止める口実も無い。
「そこの菰包みは大刀と見受けるが」
再び向かい合って座して、答を知りながらも兵之輔が尋ねる。
「はい。懐剣では切っ先が届かぬと思います」
「うむ。理に敵った考えである」
重々しく頷いたが腹の底では――理詰めで納得させればかなりのことまで受け容れるだろうとほくそ笑んでいる兵之輔だった。
「では、ひと月限りの入門を認める」
ひと月で業を修めたいと願うのだから、それを叶えてやるという意味であり、同時に、それ以降に何をしようと当道場は与り知らぬという逃げでもあった。二百石の跡取りに大怪我を負わせたとばっちりなど真っ平御免だ。
などという思惑を知ってか知らずか、美代は畳に両手を突いて深々と頭を下げた。
「さて……仮初にも入門となると、束脩であるが」
兵之輔がもったいをつけて言葉を切った隙に、美代が葛籠から切餅を取り出した。一分銀百枚。小判にして二十五両である。
束脩が酒や白扇であったのは百年以上も昔の話だが。地獄の沙汰も金次第の世であるとはいえ、束脩に加えて盆暮の付け届け十年分でも釣りがくる。
「これは多すぎる」
兵之輔としては、内弟子の形にして束脩無用の代わりに家事一切を任せ、成り行きによっては夜這いなどと目論んでいたのだから、へどもどしてしまった。
「是非とも、お納めください。これは、田上の家から投げられた金子です。これで我が家を潤すなど、我が身を女郎に売るよりも浅ましいことです」
手切れ金ということだろう。
身売りも親孝行のひとつではあろうし、草をかじらず白米が食えるのだが――貧乏とはいえ武家の娘にそこまで考えよと求めるのも無理だろう。兵之輔は、黙って金子を受け取って――神棚に奉じたのは、すぐにも稽古をつけてやる所存だったので、邪魔になるからだった。
とはいえ、その前に。
「わずかひと月で、それなりに大刀を扱えるようになり、かつ、剣術の心得がある男に一太刀を浴びせられる技前と気構えを練る。非常極まりない修行になるぞ。婿を取れず嫁にも行けぬ身体になる。それは覚悟していただく」
兵之輔の言葉を受け止めて。それまでは硬い決意を覆っていた能面に、嘲りの色が滲んだ。
「元より穢された身なれば、それが束脩の足しになると思し召しでしたら、如何様にも」
やはり、そのように受け取るかと、それは予期してのこと。その覚悟に肩透かしを食わせ、まったく別の方角から嬲る。それも嗜虐のあり方だ。
などと、その道の通ぶってみたところで。実際に女を(ただ抱くのではなく)堪振り嬲ったことなど、五指もあれば足りる。百姓弟子からの付け届けで食うに困りはしないが、用心棒といえば隠居連が維尽島詣する折の世話役だったり、猫探しなど瓦版の隅に書いてもらえば足が出る。傷が治るまでの花代に色を付けて蹴転(けころ)女郎を折檻するだけの金も工面できない。近在の素人娘に手を出したりすれば、おんぼろ道場など文字通りに潰されてしまう。
もっとも、それだけに。いろいろとこじらせているのではあるが。
========================================

筆者はヒロイン視点でばかり書いています。このとき、サディスト役の男はCo-staringであっても、デウス・エキス・サクシャです。そして、緊縛も鞭打ちも手慣れたもの。ヒロインの精神が追い込まれていく様も掌の上。
しかし、今回は。サディストながら経験はごくわずか。最底辺の娼婦を餌食にしようにも、傷が癒えるまでの生活保障をしてやらねばならず、農民門弟5人しかおらず、老人会の慰安旅行のツアコンとか子供から持ち込まれる猫探しで生計を立てているとなれば、その金もままならない。
いえ。けっして作者のアレコレを投影してるのではありません。わざわざ改行して書くなよ。
これに似た男主人公は『初心妻志願奴隷』くらいですか。でも、こやつは金だけはあったっけ。
ともかくも。異色の短編になりそうです。R18シーンも少ない。コミカライズすれば、じゅうぶん全年齢でいけますな。
Making of 娘女敵討:3
『魔羅神様の男神子』を納品して。
返す刀で、『娘女敵討』の執筆に着手しました。
結局。何か書いていないと落ち着かないという、これはもう、立派な中毒患者ですなあ。
前作を書いている期間中の勤務時間に、PLOTを固めてしまいました。
Makingの趣旨からすれば、その経緯を詳らかに述べる必要があるのでしょうけれど。
出来ちゃったものはしょうがないじゃないの。
というわけで、執筆開始時のPLOTをいきなり御紹介。
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1:速修切望
長月十日。
村娘の身なり。
看板に顔をしかめる。
瓦版で尋ね猫とかの伏線。
名乗った時点で「なんと、あの娘か」
懐剣の御嬢様切紙。ひと月で、剣術切紙の男に一太刀浴びせられる腕に。
女敵討です。私の遺恨だけでなく、婿を取れずに家が潰れる。
「かわらけほと晒しの女」
その者が確かに首魁という手証は?
暴漢どもは、かわらけを知っていた。
(2:許嫁無惨)
どうせ夫婦になるのだからと。
その旬日後。玩具蛮愚。全裸晒し。証拠保全で同心到着まで。
噂千里。婚約破棄。
この段階では、どうして知っていたかと疑念のみ。立花家への婿入を知って。電光石火過ぎる。
カットフォワードして。
束脩25両。包み紙には田上の名前が。つまりは手切金。
80石風情で出せる金額ではない。あるいは立花家から――と、主人公は勘繰る。
ならば、裏の裏には立花家も?
悪役令嬢が絡んでるかどうかは、書きながら考えましょう。
そういうことをするから、空冷から液冷に、だんだん良く鳴るフォッケのウルフはFw190D
3:斬肉断骨
腕前拝見。越中褌。
緊縛肌切。
二尺三寸五分を素振。過負荷鍛えは短期では無理。
看板に「年内の御用引受間敷候」偽装。
自分も褌。数日後には六尺。
syuu
4:緊褌坐臥
翌朝。変なのがうろついてたと、村人から聞いて。
常時褌。
肌風か、主人公の嗜虐か。方向性。嗜虐でいくぞ!
村人は「また悪い癖が出た」。村娘には手を出さないくらいの分別があるから、放置。
探索してる奴にも、主人公がヒロインを嬲っているとしか思われない。
(5:執着粉砕)
前夜あたりで。敵にこどわりすぎているのをほぐしてやると、自身に言い訳。
問答無用で襲い掛かる。
信頼しきっているヒロインは、戸惑いながらも合意。
つまらん展開だな。縄も無い……
町へ出て瓦版屋デンデンは、さらっと。
6:婚礼討入
夕刻からの婚礼。あれこれ運び入れる人夫あたりに化けて潜入。
いちおう仇討らしく白装束。わずか布切れ一枚でも身を護られているという安心感。
褌一本にする必然性が無いもんなあ。全年齢じゃねえか。
庭と塀の外で呼子の応酬。
人の口に戸は立てられぬというが。我らを戸にするか口にするかは、御手前方次第。
(7:傷肌嫁入)
あとひとり、私を手篭めにした御方が。
忠則殿は祝言の先取りと言いましたなれど。
これからも縛り稽古や裸稽古を致したく。
三日目から六尺褌にされた意味が分からぬほど初心ではありませぬ。
押し込まれてタジタジの主人公。
========================================

前記事で紹介したような詳細ではなく、まさしく骨格のみ。前記事で固めた部分は、そのまま執筆に活かしますが。
今回は100枚ちょっとの短編を目指します。となると、7章は多すぎます。ので、括弧で括ったセクションは、前後のセクションに1行明けで合体させるかも。ていうか、すでに(2:許婚無残)は、1:で短いカットバック処理しました。
「3:斬肉断骨」は「肌傷修行」に改題済。
それと。『悲剣肌風』は絡めることにしました。といっても、兵之輔も三信七疑の伝説扱い。ただ、ヒロインが『修行』に疑いを持ったときに言いくるめる材料にはなります。そういうシーケンスが出てくるかは、未定。
次回からは、上記程度のPLOTが、どう受肉していくかの検証ですね。
返す刀で、『娘女敵討』の執筆に着手しました。
結局。何か書いていないと落ち着かないという、これはもう、立派な中毒患者ですなあ。
前作を書いている期間中の勤務時間に、PLOTを固めてしまいました。
Makingの趣旨からすれば、その経緯を詳らかに述べる必要があるのでしょうけれど。
出来ちゃったものはしょうがないじゃないの。
というわけで、執筆開始時のPLOTをいきなり御紹介。
========================================
1:速修切望
長月十日。
村娘の身なり。
看板に顔をしかめる。
瓦版で尋ね猫とかの伏線。
名乗った時点で「なんと、あの娘か」
懐剣の御嬢様切紙。ひと月で、剣術切紙の男に一太刀浴びせられる腕に。
女敵討です。私の遺恨だけでなく、婿を取れずに家が潰れる。
「かわらけほと晒しの女」
その者が確かに首魁という手証は?
暴漢どもは、かわらけを知っていた。
(2:許嫁無惨)
どうせ夫婦になるのだからと。
その旬日後。玩具蛮愚。全裸晒し。証拠保全で同心到着まで。
噂千里。婚約破棄。
この段階では、どうして知っていたかと疑念のみ。立花家への婿入を知って。電光石火過ぎる。
カットフォワードして。
束脩25両。包み紙には田上の名前が。つまりは手切金。
80石風情で出せる金額ではない。あるいは立花家から――と、主人公は勘繰る。
ならば、裏の裏には立花家も?
悪役令嬢が絡んでるかどうかは、書きながら考えましょう。
そういうことをするから、空冷から液冷に、だんだん良く鳴るフォッケのウルフはFw190D
3:斬肉断骨
腕前拝見。越中褌。
緊縛肌切。
二尺三寸五分を素振。過負荷鍛えは短期では無理。
看板に「年内の御用引受間敷候」偽装。
自分も褌。数日後には六尺。
syuu
4:緊褌坐臥
翌朝。変なのがうろついてたと、村人から聞いて。
常時褌。
肌風か、主人公の嗜虐か。方向性。嗜虐でいくぞ!
村人は「また悪い癖が出た」。村娘には手を出さないくらいの分別があるから、放置。
探索してる奴にも、主人公がヒロインを嬲っているとしか思われない。
(5:執着粉砕)
前夜あたりで。敵にこどわりすぎているのをほぐしてやると、自身に言い訳。
問答無用で襲い掛かる。
信頼しきっているヒロインは、戸惑いながらも合意。
つまらん展開だな。縄も無い……
町へ出て瓦版屋デンデンは、さらっと。
6:婚礼討入
夕刻からの婚礼。あれこれ運び入れる人夫あたりに化けて潜入。
いちおう仇討らしく白装束。わずか布切れ一枚でも身を護られているという安心感。
褌一本にする必然性が無いもんなあ。全年齢じゃねえか。
庭と塀の外で呼子の応酬。
人の口に戸は立てられぬというが。我らを戸にするか口にするかは、御手前方次第。
(7:傷肌嫁入)
あとひとり、私を手篭めにした御方が。
忠則殿は祝言の先取りと言いましたなれど。
これからも縛り稽古や裸稽古を致したく。
三日目から六尺褌にされた意味が分からぬほど初心ではありませぬ。
押し込まれてタジタジの主人公。
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前記事で紹介したような詳細ではなく、まさしく骨格のみ。前記事で固めた部分は、そのまま執筆に活かしますが。
今回は100枚ちょっとの短編を目指します。となると、7章は多すぎます。ので、括弧で括ったセクションは、前後のセクションに1行明けで合体させるかも。ていうか、すでに(2:許婚無残)は、1:で短いカットバック処理しました。
「3:斬肉断骨」は「肌傷修行」に改題済。
それと。『悲剣肌風』は絡めることにしました。といっても、兵之輔も三信七疑の伝説扱い。ただ、ヒロインが『修行』に疑いを持ったときに言いくるめる材料にはなります。そういうシーケンスが出てくるかは、未定。
次回からは、上記程度のPLOTが、どう受肉していくかの検証ですね。
Making of 娘女敵討:2
まず、舞台。広島を念頭におきつつ、「瀬戸の海に面した城下町」にしましょう。詳細な古地図は見つからなかった。所詮は「歴史小説」じゃなくて「時代SM小説」です。
・安云(あくも)の国、広鳥城下――でいいや。
ヒロイン
徒士頭(100石):小森重太夫の娘、美代。笄をすぐること二年。
「破瓜」は16歳を意味するけど、現代人の連想は別方向なので。
ちなみに『逝かされたって口は割らない』で、ヒロインの年齢を「辻髪を置いてから二年」と書いて、DもFもクリアしました。元からRは販売申請していない。
主人公
神崎外流二代目:柴里兵之輔
『悲剣肌風』の時代から下ること50年。父の柴里好之輔が神崎古流から分かれて立てた流派。
西へ西へと流れて、安云の国で道場を拓いた。
肌風については、伝説くらいにしか思っていない。
肌を浅く斬られて胆力を養う修業を父から受けている。
敵役
馬廻役(80石):田上家の次男坊、田上忠則(26)
乗換先
御納戸役(2000石+余禄):立花兼光の長女、菊江(番茶も出花というが、なかなかの立花……)
あとはMOBで、必要に応じて。

さて。章題は後回しで、大筋を決めていきましょ。
1:
道場の外観(ぼろい)。ぐっと近づいて看板のアップ。
神崎外流
剣術指南つかまつる
用心棒、助っ人、猫探し、その他諸々
承り候
ヒロインが溜息を吐いて。「どなたかいらっしゃいませぬか」
剣術を教えてください。相手に一撃を与えるだけでよいので、手ほどきを。
「女敵討にございます」
「……?」
「先月、稲荷橋の袂で生き恥を曝した娘にございます」
主人公視点のショートカットバック。
「敵は分かっておるのですね」
「ひと月後には、某家との婚儀が。それまでに成敗致したく」
無茶振りもいいとこ。
ヒロインは、武家娘の嗜みとして懐剣術をわずかだけ。
こんな馬鹿げた入門志願者を受け容れる道場は無い。追い返せば、最悪暴発しかねない。
決心。
「腕前を拝見せぬことには」
筋肉の動き云々。黒猫褌を貸す。締め方は言葉と動作で。
奥の部屋(寝間)で支度をさせる。
ほんまに黒猫褌一丁で出てくる。全身羞恥に染まっている。
懐剣の形を披露。このあたりで、羞恥が薄れる?
木刀を(手本を示してから)振らせてみる。筋は悪くない。
着衣させてから。
「形を教えたところで、どうにもならぬ。もしも本懐を遂げたくば、一切を委ねていただく」
「ただし、修行の後は嫁入り出来ぬ身体となる。それを承知なさるか」
「人の妻になるなど、当に諦めております。先払いを致さねばなりませぬか?」
「いや。そういう意味ではない。束脩は、型通りにいただく」
切餅を差し出すヒロイン。多すぎる。
「父の手文庫からくすねた金子です。けれど、私がもらって構わないいわくがあります。是非とも、この金子で」
貧乏藩士に25両は大金。包み紙には田上の名前が。
で、まあ。ここまで予定原稿を仕込んだところでPIXVの新規リクエストがあって、そちらへシフトしました。
・安云(あくも)の国、広鳥城下――でいいや。
ヒロイン
徒士頭(100石):小森重太夫の娘、美代。笄をすぐること二年。
「破瓜」は16歳を意味するけど、現代人の連想は別方向なので。
ちなみに『逝かされたって口は割らない』で、ヒロインの年齢を「辻髪を置いてから二年」と書いて、DもFもクリアしました。元からRは販売申請していない。
主人公
神崎外流二代目:柴里兵之輔
『悲剣肌風』の時代から下ること50年。父の柴里好之輔が神崎古流から分かれて立てた流派。
西へ西へと流れて、安云の国で道場を拓いた。
肌風については、伝説くらいにしか思っていない。
肌を浅く斬られて胆力を養う修業を父から受けている。
敵役
馬廻役(80石):田上家の次男坊、田上忠則(26)
乗換先
御納戸役(2000石+余禄):立花兼光の長女、菊江(番茶も出花というが、なかなかの立花……)
あとはMOBで、必要に応じて。

さて。章題は後回しで、大筋を決めていきましょ。
1:
道場の外観(ぼろい)。ぐっと近づいて看板のアップ。
神崎外流
剣術指南つかまつる
用心棒、助っ人、猫探し、その他諸々
承り候
ヒロインが溜息を吐いて。「どなたかいらっしゃいませぬか」
剣術を教えてください。相手に一撃を与えるだけでよいので、手ほどきを。
「女敵討にございます」
「……?」
「先月、稲荷橋の袂で生き恥を曝した娘にございます」
主人公視点のショートカットバック。
「敵は分かっておるのですね」
「ひと月後には、某家との婚儀が。それまでに成敗致したく」
無茶振りもいいとこ。
ヒロインは、武家娘の嗜みとして懐剣術をわずかだけ。
こんな馬鹿げた入門志願者を受け容れる道場は無い。追い返せば、最悪暴発しかねない。
決心。
「腕前を拝見せぬことには」
筋肉の動き云々。黒猫褌を貸す。締め方は言葉と動作で。
奥の部屋(寝間)で支度をさせる。
ほんまに黒猫褌一丁で出てくる。全身羞恥に染まっている。
懐剣の形を披露。このあたりで、羞恥が薄れる?
木刀を(手本を示してから)振らせてみる。筋は悪くない。
着衣させてから。
「形を教えたところで、どうにもならぬ。もしも本懐を遂げたくば、一切を委ねていただく」
「ただし、修行の後は嫁入り出来ぬ身体となる。それを承知なさるか」
「人の妻になるなど、当に諦めております。先払いを致さねばなりませぬか?」
「いや。そういう意味ではない。束脩は、型通りにいただく」
切餅を差し出すヒロイン。多すぎる。
「父の手文庫からくすねた金子です。けれど、私がもらって構わないいわくがあります。是非とも、この金子で」
貧乏藩士に25両は大金。包み紙には田上の名前が。
で、まあ。ここまで予定原稿を仕込んだところでPIXVの新規リクエストがあって、そちらへシフトしました。
Making of 娘女敵討:1
今回は、ちと趣向を変えて。着想から執筆~脱稿に到るまでを(後追い)リアルタイムで追い掛けてみましょう。
過去数十度のあれこれ応募も、フランス大量爆撃の戦略的要因で全コケを除けば、まさかに1次を落ちるはずもなく、とはいえ2次突破はむにゃむにゃで、『第12回ハヤカワ・SFコンテスト』参考作が一度きりで、ちょいと片手間に連載してる『宿題を忘れたらお尻たたき、水着を忘れたら裸で泳ぐと、HRの多数決で決めました。』が、1年ちょっとで3万5千PVしかないという。それでも、馬鈴薯を重ね切りしたくらいのナニガシカは、これから書こう/書いても行き詰ってる後進の役に立つか厄になるか。
早い話が自己顕示欲。といってしまっては、実も蓋も容器もありませんがな。
さて。初見時から、「ふうむ、これは」と思っていたのですが。
池波正太郎「剣客商売」文庫本2巻「辻斬り」に収録されている『悪い虫』です。粗筋とかは、検索するなりchotGTPに尋ねるなりしてください。
ここに記述された即席修行。十年以上かかる剣の道を十日で究めさせられるはずもないけど、まあ、「悪い奴」に負けないだけの気力を身に着けさせるという。ところで、気力は精神力だから、「身に着ける」は間違いかな。「心に着ける」かしら。と、気にする程度には、言葉の使い方に注意致しましょう。
Midship!
修行する者を柱に後ろ手で縛りつけて、上半身を裸にして。目の前で白刃をきらめかせて、薄皮一枚を斬ってゆく。そういう修行です。
作中では、又六という青年ですが。
はい、脳内置換。
半裸→全裸。青年→少女。たちまちにして、濠門長恭ワールドです。
これをハイライトシーンとして、短編を作ってみようと、細、思い座りました。
性根が座るといいます。思い立つのは、なにかの拍子にふらふらと、ですが。思い座るとなると、波々ならぬ決意?
で、まあ。あれこれと、このハイライトに結びつく設定とか考えていって。
こういう修業を堂々と行なえるとなると。この道場はさびれているかな。でも、ある程度の銭金がないと、主人公の動きがままならぬ。
このあたりで。いつものヒロイン視点でなく、ヒロインに稽古(かなあ)をつける男を主人公にしようと。はい、ひとつ決まりましたね。
道場主で、門人が「つばなれ」せず、それでいて……よし、こうだ。
神崎外流
剣術指南つかまつる
用心棒、助っ人、猫探し、その他諸々
承り候
こんな怪しげな道場に、わざわざ教えを乞いに来る娘ねえ。
しかも、主人公に「そういう」修業を思い切らせるだけの必死さが娘にある。

BFは『悲剣肌風 巻之一:発動編』表紙絵です。
女+裸+チャンバラです。
で、ああでもない、いいではある、ううううう、えええ? おお!
実際にはライトセーバーを遣いながら半日ばかり、練っていました。
娘が敵と狙う相手の力量を、主人公が知っていないといけない。お江戸は広すぎるし、筆者に知識が無い。
江島橋をへだてた向うは、深川の木場で、縦横にながれる堀川にかこまれた……などとは描写できません(太字部分は『悪い虫』から引用)。
筆者はこれまで、地方の架空の「そこそこ大きな」城下町あたりを舞台にしてきました。今回もこの伝でいきますか。そこそこ(20世紀末頃の)地理に詳しい広島を使う手もあるかな。江戸時代では屈指の人口であるし。後で決めよう。
ヒロインの事情設定を進めます。
やはり、犯されて、その復讐。だけでは弱い。
貧乏藩士のひとり娘。婿養子の話が以前からまとまっていて。ところが相手の男が、もっと裕福な家に婿として望まれて。ヒロインとの縁を一方的に断われる口実に……無頼漢を雇って(あるいは、悪い遊びの仲間に頼んで)ヒロインを犯させて。それを理由に破談。
ヒロインは、許婚者の企みと知って……これで、いこう。
その場で自害しなかったのも、恨みを晴らすため。悲願成就の暁には、潔く自害しましょう。女を犯した男を殺し、心ならずもとはいえ犯された女も死ぬ。これは、相対死にか。いや、女敵討ともいえないか。敵を討つのが犯された女という、変則ではあるが。
あ、これ、いいね――タイトルも決まりました。
娘女敵討
それまでは、肌を切るという部分にこだわって、「女人肌傷修行」とかを考えていましたが。
娘女敵討。普通では有り得ない字面です。
ちなみに「娘女敵討」で検索してみましたが。無かったです。ホッ。
「娘 敵討」だと、ゲームとか小説とか、いっぱい出てきました。
ところで。小説にもサイドクエストにもある「娘の敵討」。これ、どういう『の』なのですかな。
娘が敵討をするというのが、正しいのかしら。殺された娘のかたきを親が討つというは、敵討の定義から外れています。目上の者が殺された報復が敵討の本来の意味です。だから、女敵討は女敵を夫が討つというわけで、本来の敵討ではないのです。
この設定だと、短期間で修業を全うしたい理由も簡単に丁稚揚げられます。
寝返った男の婚儀が一月後。その前に討ち果たしたい。それで、あの男に騙されて不幸になる女人が救われる。
実は、これも、そういう設定にするかしないか。したところで、主人公の胸ひとつに収めてヒロインには教えないか。男を操っているのが、新たな結婚相手で。だから、貧乏武士の次男坊が破落戸を雇う金を工面できたのだとか。これは、後回し。
などなど考えるに。小説中の重大なワンシーンが出来ました。
「(修業を望む)訳を教えてもらいたい」
「女敵討にございます」
主人公は絶句した。女の身で女敵討とは、意味を成さない。
推測を重ねて――この娘、敵を討った後で自害する気だという結論に達するのです。
そういう結論に至るには「事件」を知っていなければならない。また、「事件」が公になったからこそ、無条件即座の破談が成立するのです。
どういう「事件」かというと。GANGBANGの後、破落戸どもがヒロインを全裸緊縛放置して。翌朝に発見した者が目明しを呼んで。
「同心の旦那に見分していただくまで、現状保存する必要がある」と、縄をほどかず、筵で隠してやる配慮も無い――のは、黒幕男に銭をつかまされているからですな。そこまで過激にするか要検討ですが。
そだ。過激エロシーケンスと無難シーケンスの二本立て(所要部分を差し替え)にして、無難シーケンスは……募集中のところがねえや。この案はボツ。
しかしなあ。なんで、そう易々と、ヒロインは男が黒幕と気づくかなあ。だいち、男がGANGBANGの現場に立ち会うのは不自然でご都合主義。まだヒロインを抱いてないなら、ともかく。こういう男だから。少なくとも乗り換えを決めた時点で、せっかくだから味見をしておこうと思うのではないかしら。
では、こういうのはどうだ。男はヒロインを「いずれ夫婦になるのだから」と、言葉巧みにムードも演出して、やらかすのです。そして、ヒロインが生来のパイパンであると知る。もちろん、パイパンは昭和(でしょう)の麻雀用語からきてますから。土器ですな。
そでもって。GANGBANGの現場で
「なるほど。聞いた通りのパイパンだわい」
「しっ!」
で、ヒロインは、わたくしのハイジニーナ(激違)を知るは、母上を除けば、あのお方のみ?!
うん。これで決まりました。
濠門長恭クンは、SM=パイパンのインプリンティングですが、剃毛脱毛の養殖物ばかりで、未だ天然産を扱ったことがありません(未発毛は除く)。初物です。バンザイ三唱です。
だいたい筋は定まって来ました。
つぎに。獲物の問題。絵面的には大刀一択ですが。
女人なら小太刀とか懐剣もあるけど。これは、リーチの問題で除外出来ます。では、槍とか(江戸時代では)女人専用ともいうべき薙刀は……そんな物騒な物を抱えてうろうろしてては、職務質問で現行犯逮捕です。女が刀袋に収めた大刀を抱えていても、どこかの御女中がなにがしかのお使いを言いつかっていると思われるでしょう。まして、主人公が同道します。のは、次の考察。
ああ。主人公はヒロインの(剣術の)素質を見極めるため、半分本気半分助平で、全裸で太刀を振るわせたりします。いや、この時点で全裸はまずい。大殿筋などの動きを見る必要があるから、フンドシですな。もっこフンドシみたいな「お馬さん」は生理用品ですから、別室で一人で準備させられます。手取り足取りでフンドシを締めてやるのも、まだ早い。
それはともかく。娘の身体、娘の気迫……などなどから、修業をつけてやっているうちに惚れ込んでしまい、なんとしてでも生き延びさせてやりたいと。
そこで、いざ討ち入りの場合も下準備。
ああ。筆者の性格ですが、仇討は寸前でやめます。
クライマックスシーンは、まさに祝言の場。
目出度い場ですから、太平の世ですから、警備なんて有馬温泉テルマエロマ。羽織袴で堂々と押し入ってしまうのです。
花嫁を主人公が人質に取って、男にヒロインとの果し合いを強いる。よもや女に後れは取るまいと、居合わせた面々も、むしろ果し合いを期待する。
ここで、ヒロインが主人公の思ってもみなかった挙に出ます。襷に白鉢巻――ではなく、褌一本、それとも超ミニ腰巻。女ごとき、何程のことやあると見くびっている男の度肝を抜くのです。いや、これを書かずして、濠門長恭クンの剣戟小説は有馬温泉(以下略)。
正眼に(おたおたと)構える男に対して、大上段に構えるヒロイン。男は間合いが計れない。そうでなくても、真剣での立ち合いでは(恐怖心から)相手との間合いが近く見え過ぎてしまう。「鍔で相手の眉間を叩き割るつもりで、ようやく切っ先が届く」のです。
案の定というか筆者の意図の通り、はるか手前の地べたに剣を叩きつけてしまう男。その肩口を目がけて、ヒロインの必殺の一撃が……べしんと、叩くのです。咄嗟に峰を返そうとして、そんな技量は無いので、側面が肩に打ち当たるという。
ここで、主人公が花嫁を突き飛ばす(解放する)。
おのれとばかりに取り囲む、披露宴出席の面々。
「まだ、誰一人傷ついてすらおらぬ」主人公は、ヒロインが男を斬り殺した場合も想定はしていますけど。
「人の噂に戸は立てられぬというが、ここには雨戸が二枚ある」
「雨戸を閉じるも蹴破るもお手前方次第」
おもむろに呼子を取り出して。
ぴりりりり、ぴりっ、ぴりりりり!
すると、遠くのあちこちから
びいいい、びいっ、びいいい!
ぴりりりり、ぴりっ、ぴりりりり!
ここで我らが殺されれば、男の所業も含めて一切が瓦版になるぞと脅して。
<余談>一般的な呼子は、中に小球が入っているので、ホイッスルと同じに断続的に鳴ります。「ピー」と単調に鳴るのは、盲人などの注意喚起用の笛です。名和弓雄『間違いだらけの時代劇』より。</余談>
で、無事に退散致しまして。
「私の敵討は、まだ半分しか済んでおりませぬ」
「身体じゅうを刃傷だらけにして、お嫁に行けない身体になさったのは貴方様です。責任を取ってください」
Mayday+です。
さて、次回は以上をまとめて、きっちりPLOTを作りましょう。
過去数十度のあれこれ応募も、フランス大量爆撃の戦略的要因で全コケを除けば、まさかに1次を落ちるはずもなく、とはいえ2次突破はむにゃむにゃで、『第12回ハヤカワ・SFコンテスト』参考作が一度きりで、ちょいと片手間に連載してる『宿題を忘れたらお尻たたき、水着を忘れたら裸で泳ぐと、HRの多数決で決めました。』が、1年ちょっとで3万5千PVしかないという。それでも、馬鈴薯を重ね切りしたくらいのナニガシカは、これから書こう/書いても行き詰ってる後進の役に立つか厄になるか。
早い話が自己顕示欲。といってしまっては、実も蓋も容器もありませんがな。
さて。初見時から、「ふうむ、これは」と思っていたのですが。
池波正太郎「剣客商売」文庫本2巻「辻斬り」に収録されている『悪い虫』です。粗筋とかは、検索するなりchotGTPに尋ねるなりしてください。
ここに記述された即席修行。十年以上かかる剣の道を十日で究めさせられるはずもないけど、まあ、「悪い奴」に負けないだけの気力を身に着けさせるという。ところで、気力は精神力だから、「身に着ける」は間違いかな。「心に着ける」かしら。と、気にする程度には、言葉の使い方に注意致しましょう。
Midship!
修行する者を柱に後ろ手で縛りつけて、上半身を裸にして。目の前で白刃をきらめかせて、薄皮一枚を斬ってゆく。そういう修行です。
作中では、又六という青年ですが。
はい、脳内置換。
半裸→全裸。青年→少女。たちまちにして、濠門長恭ワールドです。
これをハイライトシーンとして、短編を作ってみようと、細、思い座りました。
性根が座るといいます。思い立つのは、なにかの拍子にふらふらと、ですが。思い座るとなると、波々ならぬ決意?
で、まあ。あれこれと、このハイライトに結びつく設定とか考えていって。
こういう修業を堂々と行なえるとなると。この道場はさびれているかな。でも、ある程度の銭金がないと、主人公の動きがままならぬ。
このあたりで。いつものヒロイン視点でなく、ヒロインに稽古(かなあ)をつける男を主人公にしようと。はい、ひとつ決まりましたね。
道場主で、門人が「つばなれ」せず、それでいて……よし、こうだ。
神崎外流
剣術指南つかまつる
用心棒、助っ人、猫探し、その他諸々
承り候
こんな怪しげな道場に、わざわざ教えを乞いに来る娘ねえ。
しかも、主人公に「そういう」修業を思い切らせるだけの必死さが娘にある。

BFは『悲剣肌風 巻之一:発動編』表紙絵です。
女+裸+チャンバラです。
で、ああでもない、いいではある、ううううう、えええ? おお!
実際にはライトセーバーを遣いながら半日ばかり、練っていました。
娘が敵と狙う相手の力量を、主人公が知っていないといけない。お江戸は広すぎるし、筆者に知識が無い。
江島橋をへだてた向うは、深川の木場で、縦横にながれる堀川にかこまれた……などとは描写できません(太字部分は『悪い虫』から引用)。
筆者はこれまで、地方の架空の「そこそこ大きな」城下町あたりを舞台にしてきました。今回もこの伝でいきますか。そこそこ(20世紀末頃の)地理に詳しい広島を使う手もあるかな。江戸時代では屈指の人口であるし。後で決めよう。
ヒロインの事情設定を進めます。
やはり、犯されて、その復讐。だけでは弱い。
貧乏藩士のひとり娘。婿養子の話が以前からまとまっていて。ところが相手の男が、もっと裕福な家に婿として望まれて。ヒロインとの縁を一方的に断われる口実に……無頼漢を雇って(あるいは、悪い遊びの仲間に頼んで)ヒロインを犯させて。それを理由に破談。
ヒロインは、許婚者の企みと知って……これで、いこう。
その場で自害しなかったのも、恨みを晴らすため。悲願成就の暁には、潔く自害しましょう。女を犯した男を殺し、心ならずもとはいえ犯された女も死ぬ。これは、相対死にか。いや、女敵討ともいえないか。敵を討つのが犯された女という、変則ではあるが。
あ、これ、いいね――タイトルも決まりました。
娘女敵討
それまでは、肌を切るという部分にこだわって、「女人肌傷修行」とかを考えていましたが。
娘女敵討。普通では有り得ない字面です。
ちなみに「娘女敵討」で検索してみましたが。無かったです。ホッ。
「娘 敵討」だと、ゲームとか小説とか、いっぱい出てきました。
ところで。小説にもサイドクエストにもある「娘の敵討」。これ、どういう『の』なのですかな。
娘が敵討をするというのが、正しいのかしら。殺された娘のかたきを親が討つというは、敵討の定義から外れています。目上の者が殺された報復が敵討の本来の意味です。だから、女敵討は女敵を夫が討つというわけで、本来の敵討ではないのです。
この設定だと、短期間で修業を全うしたい理由も簡単に丁稚揚げられます。
寝返った男の婚儀が一月後。その前に討ち果たしたい。それで、あの男に騙されて不幸になる女人が救われる。
実は、これも、そういう設定にするかしないか。したところで、主人公の胸ひとつに収めてヒロインには教えないか。男を操っているのが、新たな結婚相手で。だから、貧乏武士の次男坊が破落戸を雇う金を工面できたのだとか。これは、後回し。
などなど考えるに。小説中の重大なワンシーンが出来ました。
「(修業を望む)訳を教えてもらいたい」
「女敵討にございます」
主人公は絶句した。女の身で女敵討とは、意味を成さない。
推測を重ねて――この娘、敵を討った後で自害する気だという結論に達するのです。
そういう結論に至るには「事件」を知っていなければならない。また、「事件」が公になったからこそ、無条件即座の破談が成立するのです。
どういう「事件」かというと。GANGBANGの後、破落戸どもがヒロインを全裸緊縛放置して。翌朝に発見した者が目明しを呼んで。
「同心の旦那に見分していただくまで、現状保存する必要がある」と、縄をほどかず、筵で隠してやる配慮も無い――のは、黒幕男に銭をつかまされているからですな。そこまで過激にするか要検討ですが。
そだ。過激エロシーケンスと無難シーケンスの二本立て(所要部分を差し替え)にして、無難シーケンスは……募集中のところがねえや。この案はボツ。
しかしなあ。なんで、そう易々と、ヒロインは男が黒幕と気づくかなあ。だいち、男がGANGBANGの現場に立ち会うのは不自然でご都合主義。まだヒロインを抱いてないなら、ともかく。こういう男だから。少なくとも乗り換えを決めた時点で、せっかくだから味見をしておこうと思うのではないかしら。
では、こういうのはどうだ。男はヒロインを「いずれ夫婦になるのだから」と、言葉巧みにムードも演出して、やらかすのです。そして、ヒロインが生来のパイパンであると知る。もちろん、パイパンは昭和(でしょう)の麻雀用語からきてますから。土器ですな。
そでもって。GANGBANGの現場で
「なるほど。聞いた通りのパイパンだわい」
「しっ!」
で、ヒロインは、わたくしのハイジニーナ(激違)を知るは、母上を除けば、あのお方のみ?!
うん。これで決まりました。
濠門長恭クンは、SM=パイパンのインプリンティングですが、剃毛脱毛の養殖物ばかりで、未だ天然産を扱ったことがありません(未発毛は除く)。初物です。バンザイ三唱です。
だいたい筋は定まって来ました。
つぎに。獲物の問題。絵面的には大刀一択ですが。
女人なら小太刀とか懐剣もあるけど。これは、リーチの問題で除外出来ます。では、槍とか(江戸時代では)女人専用ともいうべき薙刀は……そんな物騒な物を抱えてうろうろしてては、職務質問で現行犯逮捕です。女が刀袋に収めた大刀を抱えていても、どこかの御女中がなにがしかのお使いを言いつかっていると思われるでしょう。まして、主人公が同道します。のは、次の考察。
ああ。主人公はヒロインの(剣術の)素質を見極めるため、半分本気半分助平で、全裸で太刀を振るわせたりします。いや、この時点で全裸はまずい。大殿筋などの動きを見る必要があるから、フンドシですな。もっこフンドシみたいな「お馬さん」は生理用品ですから、別室で一人で準備させられます。手取り足取りでフンドシを締めてやるのも、まだ早い。
それはともかく。娘の身体、娘の気迫……などなどから、修業をつけてやっているうちに惚れ込んでしまい、なんとしてでも生き延びさせてやりたいと。
そこで、いざ討ち入りの場合も下準備。
ああ。筆者の性格ですが、仇討は寸前でやめます。
クライマックスシーンは、まさに祝言の場。
目出度い場ですから、太平の世ですから、警備なんて有馬温泉テルマエロマ。羽織袴で堂々と押し入ってしまうのです。
花嫁を主人公が人質に取って、男にヒロインとの果し合いを強いる。よもや女に後れは取るまいと、居合わせた面々も、むしろ果し合いを期待する。
ここで、ヒロインが主人公の思ってもみなかった挙に出ます。襷に白鉢巻――ではなく、褌一本、それとも超ミニ腰巻。女ごとき、何程のことやあると見くびっている男の度肝を抜くのです。いや、これを書かずして、濠門長恭クンの剣戟小説は有馬温泉(以下略)。
正眼に(おたおたと)構える男に対して、大上段に構えるヒロイン。男は間合いが計れない。そうでなくても、真剣での立ち合いでは(恐怖心から)相手との間合いが近く見え過ぎてしまう。「鍔で相手の眉間を叩き割るつもりで、ようやく切っ先が届く」のです。
案の定というか筆者の意図の通り、はるか手前の地べたに剣を叩きつけてしまう男。その肩口を目がけて、ヒロインの必殺の一撃が……べしんと、叩くのです。咄嗟に峰を返そうとして、そんな技量は無いので、側面が肩に打ち当たるという。
ここで、主人公が花嫁を突き飛ばす(解放する)。
おのれとばかりに取り囲む、披露宴出席の面々。
「まだ、誰一人傷ついてすらおらぬ」主人公は、ヒロインが男を斬り殺した場合も想定はしていますけど。
「人の噂に戸は立てられぬというが、ここには雨戸が二枚ある」
「雨戸を閉じるも蹴破るもお手前方次第」
おもむろに呼子を取り出して。
ぴりりりり、ぴりっ、ぴりりりり!
すると、遠くのあちこちから
びいいい、びいっ、びいいい!
ぴりりりり、ぴりっ、ぴりりりり!
ここで我らが殺されれば、男の所業も含めて一切が瓦版になるぞと脅して。
<余談>一般的な呼子は、中に小球が入っているので、ホイッスルと同じに断続的に鳴ります。「ピー」と単調に鳴るのは、盲人などの注意喚起用の笛です。名和弓雄『間違いだらけの時代劇』より。</余談>
で、無事に退散致しまして。
「私の敵討は、まだ半分しか済んでおりませぬ」
「身体じゅうを刃傷だらけにして、お嫁に行けない身体になさったのは貴方様です。責任を取ってください」
Mayday+です。
さて、次回は以上をまとめて、きっちりPLOTを作りましょう。
魔羅神様の男神子:7章~8章
脱稿&校訂&PIXIV投稿しました。
この章は消費期限無しです。6章までを非公開とするときには、あらためて1章を公開します。つまり、blogに残るのは1章&7~8章となります。
8章が、ちょっとねえ、トートツになった感が否めません。伏線がじゅうぶんじゃなかったかなと。
筆者は、書き上げた作品てアレコレ手を入れる質ではないので、すでに次の作品に頭が向かっているので。まあ、一里塚です。
一里塚ていうと、通過点の目安くらいのニュアンスなのに、その1.6/4のマイルストーンていうと、エポックメーキングなニュアンスになるのも、なかなか面白いですな。よだんだよん。

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7.神事失敗
退屈としか言いようのない五日間が過ぎて。いよいよ、神事の本番。前日は断食をさせられて、お腹ぺこぺこだから、日の出とともに始まったのは、ありがたいくらい。
今度は巫女様たちにチンチン引き回しと川でのお清めをされて。鳥居に張り付けられてのミソギは男の人たちの手で――かなり手加減してもらえた。
マラ神様のホコラの前。オフクロ様と真苑さんと三人の巫女様と男七人衆――に加えて、六人の女性と六人の女の子たち。紹介された訳じゃないけど、二宮、三宮、良宮、後宮、陸宮、波宮――各家の代表かな。この村に他の名字はない。一宮家は一軒しかないけど、二宮家は三軒、三宮家からはぐんと増えて十五軒、波宮家なんか三十軒ちかくあるそうだ。
これはぼくの推測だけど、村の自治とか神事は、ひとつの名字について一票の権利があるんじゃないかな。それとも一宮家つまりオフクロ様が五十一パーセントを握っているのかも。
村議会がどうなってるのかは知らないけど、役場とかは近在(十キロメートル単位)の数か村がひとつの行政単位になっていて、夕明村には形ばかりの出張所が置かれてる。
明日には出て行って二度ともどらない村のことなんか、どうだっていいや。
いつもの人数のちょうど二倍だけど。男の人を除いた見物人の数でいうと三倍以上。その大きな車座の真ん中、御神体の真正面に置かれた一メートル四方の三宝。
その手前でチンチンの輪っかを外されて、すごい解放感。タックをはがしたときとは、全然違う。あれは、内側へおし込まれているきゅうくつさだけど、これはタマタマが下へ引っ張られている鈍い痛みからの解放。を、しみじみ味わう間もなく、三宝に乗る。倒されたときの配置を考えて、右端に座ってアグラを組んだ。
自発的に後ろへまわした手を、先に縛られる。四つんばいのほうが、口とアナルの高さが同じになるから男の人も動きやすいと思うけど、生けにえとか人身御供は縄で縛ってお供えするのが作法だと言われれば、そういう仕来りなんだと納得するしかない。
手(と腕)を縛られてから、ゆるく組んでいたアグラを、足のこうを太ももの上に載せる平たい形にされてすねを縛られて。前に倒されると、両肩と両ひざで四つんばいというか、尻を高く突き出した「おかしてください」ポーズ。
だけど今日は、すぐにはチンチンを突っ込まれなかった。二巫女様がゴヘイを胸の前に立てて、御神体を背中にしてぼくの前に立ち、二人の平巫女様は、タワーケーキの輪かくに小さなスズをたくさん並べた巫女職専用装備(?)で、ぼくをはさんで二巫女様と向かい合った。
「たかまのはなになんとかかんとか。かけまくもかしこきおおまらがみさまになんたらかんたらまおさくたごさく」
二巫女様がゴヘイをばさばさ振り回しながら祝詞を唱え始めた。二人の平巫女様はシャンシャンシャランとスズを振りながら、ステージダンスみたいに激しい踊り……かな?
そして。三人の動きが一瞬止まって。
「きえええっ!」
雄叫びじゃなくて雌叫び。ゴヘイが下から跳ね上げられてチンチンをたたき、スズか口とアナルに突き刺さる――直前で止まった。三人が御神体に向き直って深々と御辞儀をしてから引き下がって。
いよいよ本番の始まり。ミツオさんとタカシさんが、ぼくの前後に立った。のだけど。神様に供えられた生けにえとしては不禁慎だけど、吹き出しそうになった。だって、ふたりとも裸じゃない。腰にシメ縄を巻いてる。ひし形を並べたような紙が垂れているけど、そこからチンチンが突き出てる。これが女性だったら全裸よりエロチックかもしれないけど、ガチムチの男性だから、こっけいだよ。
いけない。これから、二十人近い女の人に見物されながら、エッチでつらくて恥ずかしいことをされるんだという意識に切り替えなくちゃ。ちゃんとトコロテンしないと、家に帰してもらえないんだから。
シメ縄のせいか、二人のチンチンがいつもより大きく見える。とくにタカシさんのは、ぼくをいじめてる女の子たちの腕くらいもありそうだ。もしかして、ぼくと同じに禁欲してたのかな。
二人も御神体に向かって。かしわ手を打って御辞儀をして。まず、タカシさんがアヌスに入れた。
むぐ……いつもより、ひともわり大きい。ミツオさんのは、いつもより大きくても、ほお張れないほどじゃない。
パンパン。あらためてかしわ手を打たれたりすると、なんだかしらけた気分になって。エッチ気分から遠ざかってしまう。
それと。三宝がいつもの板よりも十センチくらい高いので、ミツオさんには具合が良いらしいけれど、タカシさんのチンチンがアナルを突く角度が変わって、うまく前立線に当たってくれない。
それはタカシさんにも分かっていて、すこしずつ腰の高さを変えて手探り(チン探り?)してる。けど、前立線に当たっても、いつもとは刺激が違って、ぼくのチンチンは寝ぼけまなこ。
もどかしくなって、ぼくも腰を動かそうとするんだけど、ぎちぎちに縛られているから、思うようにならない。
精通したばかりなのに、ぼくの年齢の二倍も三倍もあるオトナたちに、縛られて持て遊ばれて性的にいじめられている。そんなふうに思うと、これまでにないくらい激しく切なく、胸がきゅうんと閉めつけられる。
「あっ……?!」
タカシさんのチンチンが、いつものトコロテンのポイントをわずかにずれて、突くんじゃなくてこすって。その瞬間に、腰がくだけるような何かが走った。
「おっ、ここか」
タカシさんが同じ角度と深さでチンチンを動かす。
「あっ……違う……でも、すご……!」
ポイントをこすられるたびに、腰がぶわあっとふくらんで、それが背筋から脳天まで突き抜けていく。
「本番だけに気合いが入っとるのお」
「そのままイカしてしまえ」
男の人たちの野次。
ものすごく気持ち良いけど、チンチンには何も込み上げてこない。むしろチンチンが溶けて無くなったというか、全身がチンチンになっちゃったみたいな――射精の瞬間よりも気持ち良いけど、まったく切羽詰まった感覚のともなわない、雲にふんわか包まれて、どこまでも高く飛んでいくような快感。
「なんじゃと。ちっとも立っておらんではないか?!」
オフクロ様の、困惑したような声――を、聞いたんだろう。ふんわかした快感の雲が耳の穴をふさいでる。
「これって、メスイキじゃないですか」
とっくに七人の声は聞き分けられるようになっているのに、分厚い雲の向こうから聞こえてくる声が、だれのだかわからない。
「なんじゃ、そりゃ」
「前立線への刺激を工夫すると、男でも女と同じような快感を得られるんだとか。射精をともなわないドライオーガズムというそうです」
「ぼっ起もせずに快感……?」
ああ、そうなんだ――と、自分の状況を他人の言葉で理解するってのも変。じゃない。病気のときは、お医者さんのしん断が頼りだものね。でも、そんなことはどうでもいい。
気持ち良い。とにかく気持ち良い……のが、ずっと続いてる。もしも、これが女の子がセックスで感じる快感なら、ぼくは女の子になりたい。男の娘でいたら、メスイキしやすいかな。
「いずれにせよ、お清めは失敗じゃ」
オフクロ様の不気元そうな声。
「尻からマラ神様の依り代を注ぎ、口はマラ神様の形代でふさいで、手を触れることなくケガレを吐き出させる。これが、五十年の昔に定められたお清めの作法じゃ。ケガレを体内に留めたままで神子になれるはずもない」
神事はやり直すと言われて、タカシさんとミツオさんはぼくから離れた。
「あっ……えっ……?」
最初の声は、もっと続けて欲しいという本音。疑問の声は、チンチンが抜かれてもふんわかした快感が続いている驚き。チンチンが無くなって、すごく物足りない気分なんだけど、そのぽっかり空いた穴に快感の雲が流れ込んでくるような、不思議な感覚。
ああ、そうか。女の人がセックスの後でいつまでも突っぷしているっていうアダルトビデオの描写、あれは演技じゃなかったんだと……実感したのだけれど。
「次の神事は二十一日後じゃ。十日間の修業と、今度は十日間の禁欲とする」
その声で我に返った。じょう談じゃないよ。三週間後なんて、とっくに学校が始まってる。それに。もしも次の神事でもトコロテンじゃなくメスイキなんかしちゃったら……いつまでも村に閉じ込められて、重労働とレイブといじめがずうううううっと続く。
十五日間の我慢だと思ったから、耐えてきたんだ。もう、いやだ!
8.禁身相姦
逃げてやる。一宮家の裏庭につながれて、木陰でぐったりした振りを装いながら、ぼくは決心を固めていた。
今すぐじゃない。また元通りに装着されたチンチンの輪っかは、鎖で松の木につながれているし。日中にうろついていたら、すぐ見つかるに決まってる。
決行するのは夜だ。鎖は鉄クイにつながれるけど、なんとか引き抜けるだろう。チンチンに変な道具をはめられて鎖で鉄クイにつながれて、素っ裸。何もかもが逆待の証拠だ。
十キロメートル以上も歩いて隣村にあるはずの交番に訴えても、多分ムダだろう。村へ連れもどされるに決まってる。
でも、バスの運転手さんなら、どうかな。それか、ミニスーパーに毎日荷物を運んでくるトラック。あれが来るときには、引き回しやタクハツの途中でも裏道に引きずり込まれる。ドライバーは事情を知らされてないんだ。そんな当てずっぽうに頼らなくたって。コンテナの奥に隠れてターミナルで姿を現わせば。大騒ぎになること間違い無し。
村の人たちはいろんな罪に問われるし、おそらくママもパパも無事じゃ済まない。ぼくだってSNSでえん上するかもしれないけど。ぼくは被害者なんだ。クラウドファンディングで助けてあげようなんて親切なお節介だって登場するかも。
なんてウジウジ考えてたら、このじごくはいつまでも終わらない。
逃げてやる。絶対に逃げてやる。
失敗して捕まったら、これまでのミソギとは比べ物にならないくらいに厳しくセッカンされるだろうけど。大昔に比べたらずいぶんとおとなしいやり方になったって、真苑さんも言ってることだし。殺されてヤミからヤミなんてホラーにはならないだろう。
殺されるよりずっと残こくな運命もあるってことなんか……考えないようにしてた。
夜になって。煙責めにされながら眠った振りを続けて。深夜になって三日月が出てから動き始める。
まず、鉄クイを引き抜きにかかった。ゆるく縛られている両手は胸より下へは動かせないので、クイの上におおいかぶさるようにして。何度もゆすっているうちにぐらついてきて、後は簡単に引き抜けた。それから、足の縄。横倒しになって身体を丸めて、ひざを抱え込むようにして、手探りでなんとかほどいた。手を縛っている縄は、どうにもならない。
裏庭を囲っているへいの通用口は簡単に開けて、外へ。クイを持ち上げていても、チンチンの輪っかにつながれた鎖が地面を引きずる。街路灯のないかすかな月明かりの中でさえ、その跡が見える。どっちへ逃げたか一目良然。クイに鎖を巻きつけて。それで名案を思い付いたので裏庭へもどって、足を縛っていた縄を取ってきた。
バス停、つまり村の玄関口へ向かう道の途中に、その縄を捨てた。あまり露骨だと疑われるから、道端の草むらに丸めて隠して、縄の端だけをちょろっと見えるようにしておいた。夜が明けて脱走が発覚しても、追跡はバス停へ向かうだろう。
ぼくは引き返して村の奥を通り抜け、マラ神様のホコラへ向かった。三日月の明りだけじゃ足元がよく見えないし裸足だし、つまずくよりも足のつめをはがすのが怖くて、つま先を浮かし気味にしたすり足で――ふつうに歩く半分くらいの遅さだ。
鳥居の手前で、横へ分かれている細い道へ折れた。わずかな月明かりも林に吸い取られて、真っ黒なアイマスクで目をふさがれたみたいになった。クイと鎖を両手に抱えているので、目の前を手で払うこともできない。左右から張り出している枝が全身を引っかく。石の角を踏んづけて痛みを感じた瞬間にひざを曲げて体重を抜いて。
たった一回だけ、女の子たちに引き回されて連れて来られた道を、真っ暗やみの中で、手探りもできずに進む。しかも、シメ縄の奥がどうなっているのか、道が真っ直ぐなのか曲がってるのかさえ知らない。まるきりの無理ゲーだ。
引き返そうと、何度も思った。今からなら、夜明け前にお屋敷までもどれる。逃げようとしたのはばれるに決まってるけど、未すいだから、そんなに厳しくはセッカンされなくて済むんじゃないかな。
学校のことなんか、どうだっていい。もう三週間だけ我慢して……それでも、次の神事でまた失敗したら、さらに三週間かな。それとも一か月とか二か月?
だけど。あと五分だけ進んだら、娘小屋とかいうのにたどり着けるかもしれない。
延々と同じことばかり考えながら――ちょっとばかり開けた空間に出て、そこにプレハブ小屋の姿が、わずかな三日月の明りの中にまぶしいくらいに浮かび上がったときには、その場にへたり込んじゃった。
すぐに立ち上がったのは、すねから太ももにかけて、小さな虫がぞわぞわとはい回るのを感じたからだ。アルミのドアを開けて中へ入った。大きな窓の向こうに三日月が見えているから、部屋の中はわりと明るい。
「…………?」
娘小屋という名前からばく然と考えていたより、ずっと殺風景だった。神だなとかは見当たらないし、机やイスもない。部屋の真ん中にダブルサイズのマットが置いてあって、まわりに座布団が幾つか。それと、壁際に小さな整理ダンス。を開けてみて。びっくりしたけど、ああそうかと思い当たった。タンスの中にあったのは、ピンクローターとかバイブとか、何本かの小ビン。ラベルまでは読めないから、何のビンかまでは分からないけど。
マラ神様に処女をささげる訓練とポニテの子が言ってたのは、そういうことだったんだ――と、それは簡単に察しがついた。じゃあ、女の子同士でセッサタクマてのは、レズセックスのことかもしれない。
そういう『訓練』をしたら、その時点で処女じゃなくなるんじゃないかと、根本的な疑問も浮かんだけど。そんなことをのんびり考えてる場合じゃない。
ミニスーパーへの配送トラックにもぐり込むにしても、イチかバチかバスに救けを求めるにしても、明るい中でどうやって村の人たちに見つからないようにして、そこまで行くか。実は、具体的な作戦を立てていない。
逃げてすぐはそうさくが厳しいだろうから、明日はずっと小屋に隠れていて、人の気配がしたら林の中へ逃げ込むつもりでいる。そして明後日の早朝にミニスーパーかバス停まで移動して物陰に身をひそめるか。いっそ、隣村まで歩いて行くか。
逃げ出すことばかり考えてて、その先までは考えが固まっていなかった――ということを今になって反省してる。
――具体的な案を思いつかないまま、やがて夜が明けて。予想に反して、こちらへもすぐにそうさくの手がのびてきた。
「おーい、清美くん! 怒っていないから、出てきなさい」
たぶんシメ縄の向こうからの大声が聞こえたけれど、こちらへ近づく気配は無かった。山狩りみたいな仕事は男まかせで、女の人は加わっていないのかもしれない。それなら、禁男のちに踏み込んでは来ないだろうから、当分は安全だ――と油断したつもりはないけど。声に気を取られて、人が近づく気配に気づかなかったのかもしれない。
不意打ちに、ドアが開かれた。
「ああ、やっぱりここだったね」
真苑さんが入ってきた。ひとりきりだった。
「チンコジを外してあげる。そこに寝なさい」
マットを指差す。
「あの……連れもどしに来たんですよね?」
「ううん。私は、そんなことはしないわよ」
予想外の返事。戸惑っていると。
「あまり時間がないんだから。そこに寝なさい」
真苑さんの考えていることは分からないけれど、連れもどしに来たのでなければ脱出に手を貸してくれるのかもしれない。不安だけれど、おとなしく言うことを聞いておいたほうが良いかな。
ぼくがマットの上であお向けになると。何を思ったか、真苑さんは服を脱ぎ始めた。Tシャツを脱いでジーンズをずり下げて――その下は裸だった。
身を起こそうとしたぼくをおしとどめて、横に座って。真苑さんは南京じょうを開けて鎖から解放してくれた。それから、ラジオペンチのクチバシの動きを逆向きにしたような工具でカリクビのC形リングを外してくれた。細いL字形の工具で、チンチンの半割り輪っかも。結合が解ければ、タマぶくろの輪っかを抜き取るのは簡単だった。
そして、ぼくが身を起こすより先に、真苑さんがおおいかぶさってきた。
「縮かんじゃってるのね」
チンチンを握って、皮に指を突っ込むみたいにして亀頭をくすぐった。
「…………?!!」
わけが分からないけど。五日間も射精を禁じられていたから、無条件反射で起っきする。
「男衆にさんざんカマを掘られてても、まだ女の子とセックスをしたことはないよね」
くにくにと皮の上からしごかれて、ぼくの困惑なんかおかまいなしに、チンチンは暴発寸前。
「筆下ろしさせたげる」
真苑さんが後ろ向きになって、ぼくにまたがた。
女の子のお尻の重みと柔らかさを、ずしっとお腹に感じて、それで、止まっていた頭が働き始めた。
「真苑さんて、ぼくのお姉さんですよね?」
「そうね。近親相姦になるわね」
二つ三つ先の質問にまで、一気に答えを出してしまう。
「どうして……?」
どうして、いきなりこんなことをするんだろう。ぼくのオナニーを手伝おうとしただけでオフクロ様、ぼくたちのお祖母様に厳しくしかられてた。今度はしかられるだけじゃ済まないと思う。
「あら……縮んじゃったわね」
真苑さんがお尻をずらして背中を丸めた。
「あっ……?!」
チンチンが温かい感触に包まれて、柔らかい感覚がうねくった。
うわ、うわ、うわわ。フェラチオされてる。
「ダメ……出ちゃう!」
起っきを通り越して、いきなり切羽詰まってさけんだ。
「……ん?」
真苑さんが身を起こした。腰をうかして、ぼくのチンチンを握り閉めて、その上に腰を落とす。
胸より下へ手を動かせないから、まるきり抵抗できなかった――というのは、半分ウソ。上体を起こせば、背中を突き飛ばすくらいは出来た。そうしなかったのは、セックスを体験してみたいという(エッ)知的好奇心が強くて――この人が実の姉だという実感はあまりなかったから。
チンチンが柔らかい壁にうにゅんと押しつけられたと感じた次の瞬間。ぬぷっと何かを突き抜ける感触があって……温かくて柔らかくてコリコリした感触に包まれた。コリコリというのは、恥骨かな。
「はいっちゃった……」
姉さんが、ほけっとつぶやいた。
とうとうセックスをしてしまったという想いが、かえって、この人が姉だということを強く意識させる。
「動くね」
真苑さんが、ぼくをまたいでスクワットを始めた。腰が上下する。
チンチンが出入りする。うにゅんうにゅうん、ぐねりぐねり……巫女のエミ様にしていただいたフェラチオの十倍くらい、気持ち良いんだけれど……チンチンの先っぽ、亀頭のあたりに快感が集中してる。とんがった快感。腰全体に広がった、メスイキの快感に比べると物足りない。それに……射精しちゃったら、なにもかもが空しく感じるようになるけん者タイムだ。実の姉とセックス、実際には強女女じゃなくて強チンだけど。でも、しようと思えば出来た抵抗をしなかったんだから。強い自己けん悪に落ち入るだろうな。
「あまり気持ち良くないね」
姉さんが動きを止めた。ぼくの心を見透かされたと思ったけど、そうじゃなかった。
「クリちゃんへの刺激がないとダメね。これなら、アヌスのほうがましなくらい」
また、ドキッとした。メスイキを知る前から、回数を重ねてアナルを犯される痛みが少なくなるにつれて――太いウンチをするときと似てると言ってしまうとそれまでだけど、ほんわかと快感を感じるときもあった。
女の子には前立線が無いから、アナルでメスイキはしないと思う。それでも快感があるとしたら、そんな感じなんだろうか。
「なぜ、この村では男の子を忌子としてはい除してるか分かる?」
こんなときに、村の歴史なんかどうでもいいよ。
「戦争ばかりしてるやばんな男は要らないっていうのも、その通りだけど。狭い村だからね。村で生まれた子供同士で夫婦になったりすると、どんどん血が濃ゆくなってしまって、村全体が近親相姦みたいになっちゃう。それが、一番の理由なの」
まさか、この一回で姉さんをニンシンさせたりはしないよね。ていうか、まだ射精してない。
姉さんが、今度はゆっくりとスクワットを始めた。頭を働かせた分だけチンチンが寝んねしかけたので、それを防ぐためだと分かる。だって、じゅうぶんに起っきしたら、動きを止めたもの。
「だから……姉と弟でセックスなんかしたら、忌子への仕打ちくらいじゃ済まないのよ」
つまり、この状況が発覚したら――ということだ。こうなったら、姉さんもいっしょに村から逃げなきゃ。
「もう伝説みたいになってるけど、大昔に実例があるのよ」
そのときは、兄と妹で。兄はその場で殺されたそうだ。そして妹は……
「穴も割れ目もぬわれてしまったそうよ。おしこと出血がもれる小さな穴を残してね」
そんな悲惨な伝説(?)を、なぜか姉さんは楽しそうな口ぶりで話す。
「その女の子は、村で飼い殺しにされたの。犬チクショウにも劣るとされて――今の清美と同じように、服を着るのは禁じられて、四つんばいでしか歩けないように、縄なんかじゃなくて永久に外せない鎖で縛られて」
小型の牛や馬みたいに扱われ、荷車を引かされたり農作業をさせられたり。女の人に頭の上がらない種馬の男たちは、うっぷん晴らしにその女の子をいじめたそうだ。ミソギの名目でたたいたり、犬芸(チンチンとかオアズケってやつ)を仕込んだり、残っている二つの穴を夜毎に(昼でも)犯したり。
「私は一宮家の跡取りだけど、やっぱり同じ目に合わされるでしょうね。一宮家の血は、養子の形で二宮家にも受け継がれているし。その子孫は三宮家や良宮家にも流れているし。そこから養子を逆輸入すれば、血筋は絶えない。二宮家の思惑どおりになる。私を可愛がってくれてるお祖母様は悲しむでしょうけれど、オキテを曲げるわけにはいかないもの」
そんなリスクを冒してまで、なぜ、姉さんはぼくを強チンしたんだろう。とっくにセックスを経験済みだって、ぼくにさえ分かる。相手に不自由はしないはずなのに。
そんなことより、ぼくの運命だ。
脱走が失敗する危険は、最初から覚ごしていた(と思う)。捕まっても、されることは高が知れてると、見くびってた。縛られて川へ投げ込まれても、おぼれ死ぬまで放置はされないだろうし。カンチョウされてアナルにせんをされても、二十分が二時間に延びるくらいだろうし。張り付けにされて、木の枝でなくベルトか縄でたたかれても、せいぜい半殺しまでだろう。
だけど、これがばれたら……現代でも殺される?
恐怖が言葉になっていたのかもしれない。
「だいじょうぶ。清美も殺されたりはしないわ」
タックでチンチンをふうじられて、瞬間接着剤でなく、タマぶくろをぬい合わされるだけだろうと、姉さんは言う。
「次の神事でもトコロテンに失敗したら、そんなふうにして追放しようかって、オフクロ様が言ってたもの」
じょうだんじゃない。それじゃ、死ぬまで男の娘……男の小母さんになって、男のばあさんになるじゃないか。
「実際は、無罪放面とあまり違わないかな。だって、ぬった所を切開すれば元にもどるんだから」
ほっとした。タマぶくろを針と糸でぬわれるなんて、ものすごく痛いだろうけど。切開はもっと痛いだろうけど。その瞬間だけを我慢すれば元の生活を取りもどせる。
「私は無期ちょう役だけどね」
「……え?」
「フウジコとして村の中で飼い殺しにされて、今の清美みたいに手を縛られてたら、自分で傷口を開けない」
「そんな……」
「だいじょうぶ。清美は外の人間だもの。村の力が及ばない警察の本署とか、ジャーナリストとか、ネット配信者とか……」
姉さんが、スクワットのピッチを上げた。
「ぼくが通報する。そしたら、姉さんだって……」
「ダメよ」
断ち切るような強い声。
「私のわがままで村に迷惑をかけるわけにはいかない。ここでの出来事は、忘れてちょうだい」
「…………」
姉さんが何を考えてるのか、さっぱり分からない。自分から悲惨な運命に飛び込もうとしているとしか思えない。
混乱とは関係なく。姉さんのスクワットで、チンチンは暴発寸前――のところで、また動きが止まって。チンチンが寝んねし始めるとスクワットの再開。
ぼくが何を話しかけても質問しても、もう返事はしてくれなかった。スクワットを休んでるときには、ぼくの質問とは(あまり)関係ないことを独白する。
巫女様になるためにはぼくのケガレを払わないといけないと、いちばん強く主張したのは姉さんだった。
「こういう形になるとは予想してなかったけど……何かが、私の身にも起きるかなと、それは期待してたの」
ぼくは自覚していないかもしれないけど、心も身体もマゾに目覚めている。姉さんは、そう指摘した。
言われてみれば……全裸で、チンチンに変な輪っかを着けられて、それを他人に見られて。チンチンを起っきさせるなんて、マゾかな。
自分から四つんばいになるより、縛られて身動きできなくされてアナルを犯されるときのほうが、チンチンを起っきさせてたっけ。
チンチンの輪っかに鎖をつながれて引き回されて、タクハツをさせられて。いやだいやだ恥ずかしいと思いながら、チンチンを固くしてたものね。
他人の目には、ぼくがマゾだと見えただろうな。ぼく自身は……よく分からない。
「清美よりも、私のほうがマゾの根は深いんだわ」
忌子としてしいたげられるぼくを見て、自分もあんなふうにされたいと――興奮してたそうだ。ときどき、ぼくをながめながら股を押えていたっけ。あれは、そういうことだったんだと、思い当たった。
姉さんは言わなかったけど、近親相姦を犯して性器をぬい閉じられるというのを、最初から望んでいたのかもしれない。
それを尋ねる勇気は、ぼくにはなかった。
そうして。延々とスクワットと休止を繰り返しながら、夜が明けてしまった。
いきなり戸が引き開けられて、巫女様と女の子たちがなだれ込んできて。
それでも姉さんはぼくから離れようとしなかったので、ぼくが身を起こして突き飛ばして。もちろん、手遅れ。
奥座敷ではなく、裏庭に引きすえられて。オフクロ様と三人の神子様と七人の男衆に取り囲まれて。村へ来て最初の日と同じ配置。違っているのは、姉さんがオフクロ様の横にではなく、ぼくの横に正座させられていることだけだった。
即決裁判。
裏庭に引き込まれて三十分後には、『処置』が始まった。
最初は姉さん。ビニールシートも敷いてない地面に、男衆の手で大の字に押さえつけられて。穴と割れ目をぬい閉じられた。それも、はやく完全にふさがるようにと、密着する面を紙ヤスリでこすられてから。
紙ヤスリでこすられたときには、ぬい合わされるときよりも大きな悲鳴を上げていた。
そして。ぬい合わされるときには、ひかえ目な悲鳴がすすり泣きに変わっていった。
最後まで、ねえさんは許しを願うような言葉を口にしなかった。すすり泣きに甘い調べが混じっていたように聞こえたのは――姉さんがマゾだと知ったぼくのもう想の産物だったかもしれない。
ぼくのチンチンをつないでいた鎖が使われて、姉さんは四つんばいの形に固定された。鎖の端は南京じょうで留められたけど、カギ穴がつぶされて、二度と開けられなくされた。
それから、ぼくの番。タマタマをお腹の中へ納めてタマぶくろを瞬間接着剤でくっつけろタックは、自分の手でしなくちゃならなかった。抵抗できるふんいきじゃなかった。
それから、姉さんと同じように大の字に押さえつけられて、タマぶくろを張り合わせた上を針と糸でぬわれた。ものすごく痛かったけれど、泣き叫ぶほどじゃなかった。もちろん、甘くすすり泣いたりもしなかった。
姉さんは、そのまま裏庭に縄でつながれて。
ぼくは、生理用ナプキンを当てたショーツをはかされて、ワンピースも着せられて、もうバスの朝便は出発した後だったので、バスを乗り継いだ先にある駅まで、自動車で連れ去られた。
電車を乗り継いで家に帰るまでに、ぼくはある決心を固めていた。
姉さんひとりをつらい目に合わせたくないともいえるし。姉さんだけにマゾの快楽をむさぼられるのはくやしいともいえる。
ぼくはマゾだと姉さんに指摘されて、すっかりマゾに目覚めてしまった。
だから、村でされたことについて、両親には何も語らなかった。
帰ったその日のうちに、ぼくは自分でカッターナイフを使って糸を切った。チンチンは正常にもどって。数日で生理用ナプキンも不要になった。
そして、宿題をサボった反省文とかは大変だったけど、無事に二学期が始まって、一日ずつが過ぎて行った。
そして、帰路で固めた決心を実行に移すタイミングを計っている。
ちゃんと書置きをして、両親にあきらめてもらって――村へ帰るタイミングを。
タックをはがしているのはすぐに見つかって、またぬい閉じられるだろう。今度は紙ヤスリでこすってもらう。
そして、ねえさんといっしょに犬チクショウ以下の扱いをされて、いじめられて。男の人たちにアナルを犯されて――きっと、またメスイキをするだろう。あの快感を得られるなら、射精なんかしなくてもいい。ていうか。ドライオーガズムを得るためには何日もの射精禁止が必要らしい。
これから秋になって冬になって。それでも、戸外で強いられる全裸生活は、すごくつらいだろう。川でおぼれさせられるのは、苦しいだけでなくこごえるほど冷たいだろう。姉さんといっしょに鳥居に張り付けられて、木の枝なんかじゃなくベルトでミソギをさせられて……もしかして、タックの中でチンチンが起っきしかけたら痛いだろうな。
そんなことを夢想するたびに、チンチンをしごきかけて。でも、射精したら決心が鈍るのは分かり切ってるから……今日もタックをしたまま、眠りに就く。
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この章は消費期限無しです。6章までを非公開とするときには、あらためて1章を公開します。つまり、blogに残るのは1章&7~8章となります。
8章が、ちょっとねえ、トートツになった感が否めません。伏線がじゅうぶんじゃなかったかなと。
筆者は、書き上げた作品てアレコレ手を入れる質ではないので、すでに次の作品に頭が向かっているので。まあ、一里塚です。
一里塚ていうと、通過点の目安くらいのニュアンスなのに、その1.6/4のマイルストーンていうと、エポックメーキングなニュアンスになるのも、なかなか面白いですな。よだんだよん。

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7.神事失敗
退屈としか言いようのない五日間が過ぎて。いよいよ、神事の本番。前日は断食をさせられて、お腹ぺこぺこだから、日の出とともに始まったのは、ありがたいくらい。
今度は巫女様たちにチンチン引き回しと川でのお清めをされて。鳥居に張り付けられてのミソギは男の人たちの手で――かなり手加減してもらえた。
マラ神様のホコラの前。オフクロ様と真苑さんと三人の巫女様と男七人衆――に加えて、六人の女性と六人の女の子たち。紹介された訳じゃないけど、二宮、三宮、良宮、後宮、陸宮、波宮――各家の代表かな。この村に他の名字はない。一宮家は一軒しかないけど、二宮家は三軒、三宮家からはぐんと増えて十五軒、波宮家なんか三十軒ちかくあるそうだ。
これはぼくの推測だけど、村の自治とか神事は、ひとつの名字について一票の権利があるんじゃないかな。それとも一宮家つまりオフクロ様が五十一パーセントを握っているのかも。
村議会がどうなってるのかは知らないけど、役場とかは近在(十キロメートル単位)の数か村がひとつの行政単位になっていて、夕明村には形ばかりの出張所が置かれてる。
明日には出て行って二度ともどらない村のことなんか、どうだっていいや。
いつもの人数のちょうど二倍だけど。男の人を除いた見物人の数でいうと三倍以上。その大きな車座の真ん中、御神体の真正面に置かれた一メートル四方の三宝。
その手前でチンチンの輪っかを外されて、すごい解放感。タックをはがしたときとは、全然違う。あれは、内側へおし込まれているきゅうくつさだけど、これはタマタマが下へ引っ張られている鈍い痛みからの解放。を、しみじみ味わう間もなく、三宝に乗る。倒されたときの配置を考えて、右端に座ってアグラを組んだ。
自発的に後ろへまわした手を、先に縛られる。四つんばいのほうが、口とアナルの高さが同じになるから男の人も動きやすいと思うけど、生けにえとか人身御供は縄で縛ってお供えするのが作法だと言われれば、そういう仕来りなんだと納得するしかない。
手(と腕)を縛られてから、ゆるく組んでいたアグラを、足のこうを太ももの上に載せる平たい形にされてすねを縛られて。前に倒されると、両肩と両ひざで四つんばいというか、尻を高く突き出した「おかしてください」ポーズ。
だけど今日は、すぐにはチンチンを突っ込まれなかった。二巫女様がゴヘイを胸の前に立てて、御神体を背中にしてぼくの前に立ち、二人の平巫女様は、タワーケーキの輪かくに小さなスズをたくさん並べた巫女職専用装備(?)で、ぼくをはさんで二巫女様と向かい合った。
「たかまのはなになんとかかんとか。かけまくもかしこきおおまらがみさまになんたらかんたらまおさくたごさく」
二巫女様がゴヘイをばさばさ振り回しながら祝詞を唱え始めた。二人の平巫女様はシャンシャンシャランとスズを振りながら、ステージダンスみたいに激しい踊り……かな?
そして。三人の動きが一瞬止まって。
「きえええっ!」
雄叫びじゃなくて雌叫び。ゴヘイが下から跳ね上げられてチンチンをたたき、スズか口とアナルに突き刺さる――直前で止まった。三人が御神体に向き直って深々と御辞儀をしてから引き下がって。
いよいよ本番の始まり。ミツオさんとタカシさんが、ぼくの前後に立った。のだけど。神様に供えられた生けにえとしては不禁慎だけど、吹き出しそうになった。だって、ふたりとも裸じゃない。腰にシメ縄を巻いてる。ひし形を並べたような紙が垂れているけど、そこからチンチンが突き出てる。これが女性だったら全裸よりエロチックかもしれないけど、ガチムチの男性だから、こっけいだよ。
いけない。これから、二十人近い女の人に見物されながら、エッチでつらくて恥ずかしいことをされるんだという意識に切り替えなくちゃ。ちゃんとトコロテンしないと、家に帰してもらえないんだから。
シメ縄のせいか、二人のチンチンがいつもより大きく見える。とくにタカシさんのは、ぼくをいじめてる女の子たちの腕くらいもありそうだ。もしかして、ぼくと同じに禁欲してたのかな。
二人も御神体に向かって。かしわ手を打って御辞儀をして。まず、タカシさんがアヌスに入れた。
むぐ……いつもより、ひともわり大きい。ミツオさんのは、いつもより大きくても、ほお張れないほどじゃない。
パンパン。あらためてかしわ手を打たれたりすると、なんだかしらけた気分になって。エッチ気分から遠ざかってしまう。
それと。三宝がいつもの板よりも十センチくらい高いので、ミツオさんには具合が良いらしいけれど、タカシさんのチンチンがアナルを突く角度が変わって、うまく前立線に当たってくれない。
それはタカシさんにも分かっていて、すこしずつ腰の高さを変えて手探り(チン探り?)してる。けど、前立線に当たっても、いつもとは刺激が違って、ぼくのチンチンは寝ぼけまなこ。
もどかしくなって、ぼくも腰を動かそうとするんだけど、ぎちぎちに縛られているから、思うようにならない。
精通したばかりなのに、ぼくの年齢の二倍も三倍もあるオトナたちに、縛られて持て遊ばれて性的にいじめられている。そんなふうに思うと、これまでにないくらい激しく切なく、胸がきゅうんと閉めつけられる。
「あっ……?!」
タカシさんのチンチンが、いつものトコロテンのポイントをわずかにずれて、突くんじゃなくてこすって。その瞬間に、腰がくだけるような何かが走った。
「おっ、ここか」
タカシさんが同じ角度と深さでチンチンを動かす。
「あっ……違う……でも、すご……!」
ポイントをこすられるたびに、腰がぶわあっとふくらんで、それが背筋から脳天まで突き抜けていく。
「本番だけに気合いが入っとるのお」
「そのままイカしてしまえ」
男の人たちの野次。
ものすごく気持ち良いけど、チンチンには何も込み上げてこない。むしろチンチンが溶けて無くなったというか、全身がチンチンになっちゃったみたいな――射精の瞬間よりも気持ち良いけど、まったく切羽詰まった感覚のともなわない、雲にふんわか包まれて、どこまでも高く飛んでいくような快感。
「なんじゃと。ちっとも立っておらんではないか?!」
オフクロ様の、困惑したような声――を、聞いたんだろう。ふんわかした快感の雲が耳の穴をふさいでる。
「これって、メスイキじゃないですか」
とっくに七人の声は聞き分けられるようになっているのに、分厚い雲の向こうから聞こえてくる声が、だれのだかわからない。
「なんじゃ、そりゃ」
「前立線への刺激を工夫すると、男でも女と同じような快感を得られるんだとか。射精をともなわないドライオーガズムというそうです」
「ぼっ起もせずに快感……?」
ああ、そうなんだ――と、自分の状況を他人の言葉で理解するってのも変。じゃない。病気のときは、お医者さんのしん断が頼りだものね。でも、そんなことはどうでもいい。
気持ち良い。とにかく気持ち良い……のが、ずっと続いてる。もしも、これが女の子がセックスで感じる快感なら、ぼくは女の子になりたい。男の娘でいたら、メスイキしやすいかな。
「いずれにせよ、お清めは失敗じゃ」
オフクロ様の不気元そうな声。
「尻からマラ神様の依り代を注ぎ、口はマラ神様の形代でふさいで、手を触れることなくケガレを吐き出させる。これが、五十年の昔に定められたお清めの作法じゃ。ケガレを体内に留めたままで神子になれるはずもない」
神事はやり直すと言われて、タカシさんとミツオさんはぼくから離れた。
「あっ……えっ……?」
最初の声は、もっと続けて欲しいという本音。疑問の声は、チンチンが抜かれてもふんわかした快感が続いている驚き。チンチンが無くなって、すごく物足りない気分なんだけど、そのぽっかり空いた穴に快感の雲が流れ込んでくるような、不思議な感覚。
ああ、そうか。女の人がセックスの後でいつまでも突っぷしているっていうアダルトビデオの描写、あれは演技じゃなかったんだと……実感したのだけれど。
「次の神事は二十一日後じゃ。十日間の修業と、今度は十日間の禁欲とする」
その声で我に返った。じょう談じゃないよ。三週間後なんて、とっくに学校が始まってる。それに。もしも次の神事でもトコロテンじゃなくメスイキなんかしちゃったら……いつまでも村に閉じ込められて、重労働とレイブといじめがずうううううっと続く。
十五日間の我慢だと思ったから、耐えてきたんだ。もう、いやだ!
8.禁身相姦
逃げてやる。一宮家の裏庭につながれて、木陰でぐったりした振りを装いながら、ぼくは決心を固めていた。
今すぐじゃない。また元通りに装着されたチンチンの輪っかは、鎖で松の木につながれているし。日中にうろついていたら、すぐ見つかるに決まってる。
決行するのは夜だ。鎖は鉄クイにつながれるけど、なんとか引き抜けるだろう。チンチンに変な道具をはめられて鎖で鉄クイにつながれて、素っ裸。何もかもが逆待の証拠だ。
十キロメートル以上も歩いて隣村にあるはずの交番に訴えても、多分ムダだろう。村へ連れもどされるに決まってる。
でも、バスの運転手さんなら、どうかな。それか、ミニスーパーに毎日荷物を運んでくるトラック。あれが来るときには、引き回しやタクハツの途中でも裏道に引きずり込まれる。ドライバーは事情を知らされてないんだ。そんな当てずっぽうに頼らなくたって。コンテナの奥に隠れてターミナルで姿を現わせば。大騒ぎになること間違い無し。
村の人たちはいろんな罪に問われるし、おそらくママもパパも無事じゃ済まない。ぼくだってSNSでえん上するかもしれないけど。ぼくは被害者なんだ。クラウドファンディングで助けてあげようなんて親切なお節介だって登場するかも。
なんてウジウジ考えてたら、このじごくはいつまでも終わらない。
逃げてやる。絶対に逃げてやる。
失敗して捕まったら、これまでのミソギとは比べ物にならないくらいに厳しくセッカンされるだろうけど。大昔に比べたらずいぶんとおとなしいやり方になったって、真苑さんも言ってることだし。殺されてヤミからヤミなんてホラーにはならないだろう。
殺されるよりずっと残こくな運命もあるってことなんか……考えないようにしてた。
夜になって。煙責めにされながら眠った振りを続けて。深夜になって三日月が出てから動き始める。
まず、鉄クイを引き抜きにかかった。ゆるく縛られている両手は胸より下へは動かせないので、クイの上におおいかぶさるようにして。何度もゆすっているうちにぐらついてきて、後は簡単に引き抜けた。それから、足の縄。横倒しになって身体を丸めて、ひざを抱え込むようにして、手探りでなんとかほどいた。手を縛っている縄は、どうにもならない。
裏庭を囲っているへいの通用口は簡単に開けて、外へ。クイを持ち上げていても、チンチンの輪っかにつながれた鎖が地面を引きずる。街路灯のないかすかな月明かりの中でさえ、その跡が見える。どっちへ逃げたか一目良然。クイに鎖を巻きつけて。それで名案を思い付いたので裏庭へもどって、足を縛っていた縄を取ってきた。
バス停、つまり村の玄関口へ向かう道の途中に、その縄を捨てた。あまり露骨だと疑われるから、道端の草むらに丸めて隠して、縄の端だけをちょろっと見えるようにしておいた。夜が明けて脱走が発覚しても、追跡はバス停へ向かうだろう。
ぼくは引き返して村の奥を通り抜け、マラ神様のホコラへ向かった。三日月の明りだけじゃ足元がよく見えないし裸足だし、つまずくよりも足のつめをはがすのが怖くて、つま先を浮かし気味にしたすり足で――ふつうに歩く半分くらいの遅さだ。
鳥居の手前で、横へ分かれている細い道へ折れた。わずかな月明かりも林に吸い取られて、真っ黒なアイマスクで目をふさがれたみたいになった。クイと鎖を両手に抱えているので、目の前を手で払うこともできない。左右から張り出している枝が全身を引っかく。石の角を踏んづけて痛みを感じた瞬間にひざを曲げて体重を抜いて。
たった一回だけ、女の子たちに引き回されて連れて来られた道を、真っ暗やみの中で、手探りもできずに進む。しかも、シメ縄の奥がどうなっているのか、道が真っ直ぐなのか曲がってるのかさえ知らない。まるきりの無理ゲーだ。
引き返そうと、何度も思った。今からなら、夜明け前にお屋敷までもどれる。逃げようとしたのはばれるに決まってるけど、未すいだから、そんなに厳しくはセッカンされなくて済むんじゃないかな。
学校のことなんか、どうだっていい。もう三週間だけ我慢して……それでも、次の神事でまた失敗したら、さらに三週間かな。それとも一か月とか二か月?
だけど。あと五分だけ進んだら、娘小屋とかいうのにたどり着けるかもしれない。
延々と同じことばかり考えながら――ちょっとばかり開けた空間に出て、そこにプレハブ小屋の姿が、わずかな三日月の明りの中にまぶしいくらいに浮かび上がったときには、その場にへたり込んじゃった。
すぐに立ち上がったのは、すねから太ももにかけて、小さな虫がぞわぞわとはい回るのを感じたからだ。アルミのドアを開けて中へ入った。大きな窓の向こうに三日月が見えているから、部屋の中はわりと明るい。
「…………?」
娘小屋という名前からばく然と考えていたより、ずっと殺風景だった。神だなとかは見当たらないし、机やイスもない。部屋の真ん中にダブルサイズのマットが置いてあって、まわりに座布団が幾つか。それと、壁際に小さな整理ダンス。を開けてみて。びっくりしたけど、ああそうかと思い当たった。タンスの中にあったのは、ピンクローターとかバイブとか、何本かの小ビン。ラベルまでは読めないから、何のビンかまでは分からないけど。
マラ神様に処女をささげる訓練とポニテの子が言ってたのは、そういうことだったんだ――と、それは簡単に察しがついた。じゃあ、女の子同士でセッサタクマてのは、レズセックスのことかもしれない。
そういう『訓練』をしたら、その時点で処女じゃなくなるんじゃないかと、根本的な疑問も浮かんだけど。そんなことをのんびり考えてる場合じゃない。
ミニスーパーへの配送トラックにもぐり込むにしても、イチかバチかバスに救けを求めるにしても、明るい中でどうやって村の人たちに見つからないようにして、そこまで行くか。実は、具体的な作戦を立てていない。
逃げてすぐはそうさくが厳しいだろうから、明日はずっと小屋に隠れていて、人の気配がしたら林の中へ逃げ込むつもりでいる。そして明後日の早朝にミニスーパーかバス停まで移動して物陰に身をひそめるか。いっそ、隣村まで歩いて行くか。
逃げ出すことばかり考えてて、その先までは考えが固まっていなかった――ということを今になって反省してる。
――具体的な案を思いつかないまま、やがて夜が明けて。予想に反して、こちらへもすぐにそうさくの手がのびてきた。
「おーい、清美くん! 怒っていないから、出てきなさい」
たぶんシメ縄の向こうからの大声が聞こえたけれど、こちらへ近づく気配は無かった。山狩りみたいな仕事は男まかせで、女の人は加わっていないのかもしれない。それなら、禁男のちに踏み込んでは来ないだろうから、当分は安全だ――と油断したつもりはないけど。声に気を取られて、人が近づく気配に気づかなかったのかもしれない。
不意打ちに、ドアが開かれた。
「ああ、やっぱりここだったね」
真苑さんが入ってきた。ひとりきりだった。
「チンコジを外してあげる。そこに寝なさい」
マットを指差す。
「あの……連れもどしに来たんですよね?」
「ううん。私は、そんなことはしないわよ」
予想外の返事。戸惑っていると。
「あまり時間がないんだから。そこに寝なさい」
真苑さんの考えていることは分からないけれど、連れもどしに来たのでなければ脱出に手を貸してくれるのかもしれない。不安だけれど、おとなしく言うことを聞いておいたほうが良いかな。
ぼくがマットの上であお向けになると。何を思ったか、真苑さんは服を脱ぎ始めた。Tシャツを脱いでジーンズをずり下げて――その下は裸だった。
身を起こそうとしたぼくをおしとどめて、横に座って。真苑さんは南京じょうを開けて鎖から解放してくれた。それから、ラジオペンチのクチバシの動きを逆向きにしたような工具でカリクビのC形リングを外してくれた。細いL字形の工具で、チンチンの半割り輪っかも。結合が解ければ、タマぶくろの輪っかを抜き取るのは簡単だった。
そして、ぼくが身を起こすより先に、真苑さんがおおいかぶさってきた。
「縮かんじゃってるのね」
チンチンを握って、皮に指を突っ込むみたいにして亀頭をくすぐった。
「…………?!!」
わけが分からないけど。五日間も射精を禁じられていたから、無条件反射で起っきする。
「男衆にさんざんカマを掘られてても、まだ女の子とセックスをしたことはないよね」
くにくにと皮の上からしごかれて、ぼくの困惑なんかおかまいなしに、チンチンは暴発寸前。
「筆下ろしさせたげる」
真苑さんが後ろ向きになって、ぼくにまたがた。
女の子のお尻の重みと柔らかさを、ずしっとお腹に感じて、それで、止まっていた頭が働き始めた。
「真苑さんて、ぼくのお姉さんですよね?」
「そうね。近親相姦になるわね」
二つ三つ先の質問にまで、一気に答えを出してしまう。
「どうして……?」
どうして、いきなりこんなことをするんだろう。ぼくのオナニーを手伝おうとしただけでオフクロ様、ぼくたちのお祖母様に厳しくしかられてた。今度はしかられるだけじゃ済まないと思う。
「あら……縮んじゃったわね」
真苑さんがお尻をずらして背中を丸めた。
「あっ……?!」
チンチンが温かい感触に包まれて、柔らかい感覚がうねくった。
うわ、うわ、うわわ。フェラチオされてる。
「ダメ……出ちゃう!」
起っきを通り越して、いきなり切羽詰まってさけんだ。
「……ん?」
真苑さんが身を起こした。腰をうかして、ぼくのチンチンを握り閉めて、その上に腰を落とす。
胸より下へ手を動かせないから、まるきり抵抗できなかった――というのは、半分ウソ。上体を起こせば、背中を突き飛ばすくらいは出来た。そうしなかったのは、セックスを体験してみたいという(エッ)知的好奇心が強くて――この人が実の姉だという実感はあまりなかったから。
チンチンが柔らかい壁にうにゅんと押しつけられたと感じた次の瞬間。ぬぷっと何かを突き抜ける感触があって……温かくて柔らかくてコリコリした感触に包まれた。コリコリというのは、恥骨かな。
「はいっちゃった……」
姉さんが、ほけっとつぶやいた。
とうとうセックスをしてしまったという想いが、かえって、この人が姉だということを強く意識させる。
「動くね」
真苑さんが、ぼくをまたいでスクワットを始めた。腰が上下する。
チンチンが出入りする。うにゅんうにゅうん、ぐねりぐねり……巫女のエミ様にしていただいたフェラチオの十倍くらい、気持ち良いんだけれど……チンチンの先っぽ、亀頭のあたりに快感が集中してる。とんがった快感。腰全体に広がった、メスイキの快感に比べると物足りない。それに……射精しちゃったら、なにもかもが空しく感じるようになるけん者タイムだ。実の姉とセックス、実際には強女女じゃなくて強チンだけど。でも、しようと思えば出来た抵抗をしなかったんだから。強い自己けん悪に落ち入るだろうな。
「あまり気持ち良くないね」
姉さんが動きを止めた。ぼくの心を見透かされたと思ったけど、そうじゃなかった。
「クリちゃんへの刺激がないとダメね。これなら、アヌスのほうがましなくらい」
また、ドキッとした。メスイキを知る前から、回数を重ねてアナルを犯される痛みが少なくなるにつれて――太いウンチをするときと似てると言ってしまうとそれまでだけど、ほんわかと快感を感じるときもあった。
女の子には前立線が無いから、アナルでメスイキはしないと思う。それでも快感があるとしたら、そんな感じなんだろうか。
「なぜ、この村では男の子を忌子としてはい除してるか分かる?」
こんなときに、村の歴史なんかどうでもいいよ。
「戦争ばかりしてるやばんな男は要らないっていうのも、その通りだけど。狭い村だからね。村で生まれた子供同士で夫婦になったりすると、どんどん血が濃ゆくなってしまって、村全体が近親相姦みたいになっちゃう。それが、一番の理由なの」
まさか、この一回で姉さんをニンシンさせたりはしないよね。ていうか、まだ射精してない。
姉さんが、今度はゆっくりとスクワットを始めた。頭を働かせた分だけチンチンが寝んねしかけたので、それを防ぐためだと分かる。だって、じゅうぶんに起っきしたら、動きを止めたもの。
「だから……姉と弟でセックスなんかしたら、忌子への仕打ちくらいじゃ済まないのよ」
つまり、この状況が発覚したら――ということだ。こうなったら、姉さんもいっしょに村から逃げなきゃ。
「もう伝説みたいになってるけど、大昔に実例があるのよ」
そのときは、兄と妹で。兄はその場で殺されたそうだ。そして妹は……
「穴も割れ目もぬわれてしまったそうよ。おしこと出血がもれる小さな穴を残してね」
そんな悲惨な伝説(?)を、なぜか姉さんは楽しそうな口ぶりで話す。
「その女の子は、村で飼い殺しにされたの。犬チクショウにも劣るとされて――今の清美と同じように、服を着るのは禁じられて、四つんばいでしか歩けないように、縄なんかじゃなくて永久に外せない鎖で縛られて」
小型の牛や馬みたいに扱われ、荷車を引かされたり農作業をさせられたり。女の人に頭の上がらない種馬の男たちは、うっぷん晴らしにその女の子をいじめたそうだ。ミソギの名目でたたいたり、犬芸(チンチンとかオアズケってやつ)を仕込んだり、残っている二つの穴を夜毎に(昼でも)犯したり。
「私は一宮家の跡取りだけど、やっぱり同じ目に合わされるでしょうね。一宮家の血は、養子の形で二宮家にも受け継がれているし。その子孫は三宮家や良宮家にも流れているし。そこから養子を逆輸入すれば、血筋は絶えない。二宮家の思惑どおりになる。私を可愛がってくれてるお祖母様は悲しむでしょうけれど、オキテを曲げるわけにはいかないもの」
そんなリスクを冒してまで、なぜ、姉さんはぼくを強チンしたんだろう。とっくにセックスを経験済みだって、ぼくにさえ分かる。相手に不自由はしないはずなのに。
そんなことより、ぼくの運命だ。
脱走が失敗する危険は、最初から覚ごしていた(と思う)。捕まっても、されることは高が知れてると、見くびってた。縛られて川へ投げ込まれても、おぼれ死ぬまで放置はされないだろうし。カンチョウされてアナルにせんをされても、二十分が二時間に延びるくらいだろうし。張り付けにされて、木の枝でなくベルトか縄でたたかれても、せいぜい半殺しまでだろう。
だけど、これがばれたら……現代でも殺される?
恐怖が言葉になっていたのかもしれない。
「だいじょうぶ。清美も殺されたりはしないわ」
タックでチンチンをふうじられて、瞬間接着剤でなく、タマぶくろをぬい合わされるだけだろうと、姉さんは言う。
「次の神事でもトコロテンに失敗したら、そんなふうにして追放しようかって、オフクロ様が言ってたもの」
じょうだんじゃない。それじゃ、死ぬまで男の娘……男の小母さんになって、男のばあさんになるじゃないか。
「実際は、無罪放面とあまり違わないかな。だって、ぬった所を切開すれば元にもどるんだから」
ほっとした。タマぶくろを針と糸でぬわれるなんて、ものすごく痛いだろうけど。切開はもっと痛いだろうけど。その瞬間だけを我慢すれば元の生活を取りもどせる。
「私は無期ちょう役だけどね」
「……え?」
「フウジコとして村の中で飼い殺しにされて、今の清美みたいに手を縛られてたら、自分で傷口を開けない」
「そんな……」
「だいじょうぶ。清美は外の人間だもの。村の力が及ばない警察の本署とか、ジャーナリストとか、ネット配信者とか……」
姉さんが、スクワットのピッチを上げた。
「ぼくが通報する。そしたら、姉さんだって……」
「ダメよ」
断ち切るような強い声。
「私のわがままで村に迷惑をかけるわけにはいかない。ここでの出来事は、忘れてちょうだい」
「…………」
姉さんが何を考えてるのか、さっぱり分からない。自分から悲惨な運命に飛び込もうとしているとしか思えない。
混乱とは関係なく。姉さんのスクワットで、チンチンは暴発寸前――のところで、また動きが止まって。チンチンが寝んねし始めるとスクワットの再開。
ぼくが何を話しかけても質問しても、もう返事はしてくれなかった。スクワットを休んでるときには、ぼくの質問とは(あまり)関係ないことを独白する。
巫女様になるためにはぼくのケガレを払わないといけないと、いちばん強く主張したのは姉さんだった。
「こういう形になるとは予想してなかったけど……何かが、私の身にも起きるかなと、それは期待してたの」
ぼくは自覚していないかもしれないけど、心も身体もマゾに目覚めている。姉さんは、そう指摘した。
言われてみれば……全裸で、チンチンに変な輪っかを着けられて、それを他人に見られて。チンチンを起っきさせるなんて、マゾかな。
自分から四つんばいになるより、縛られて身動きできなくされてアナルを犯されるときのほうが、チンチンを起っきさせてたっけ。
チンチンの輪っかに鎖をつながれて引き回されて、タクハツをさせられて。いやだいやだ恥ずかしいと思いながら、チンチンを固くしてたものね。
他人の目には、ぼくがマゾだと見えただろうな。ぼく自身は……よく分からない。
「清美よりも、私のほうがマゾの根は深いんだわ」
忌子としてしいたげられるぼくを見て、自分もあんなふうにされたいと――興奮してたそうだ。ときどき、ぼくをながめながら股を押えていたっけ。あれは、そういうことだったんだと、思い当たった。
姉さんは言わなかったけど、近親相姦を犯して性器をぬい閉じられるというのを、最初から望んでいたのかもしれない。
それを尋ねる勇気は、ぼくにはなかった。
そうして。延々とスクワットと休止を繰り返しながら、夜が明けてしまった。
いきなり戸が引き開けられて、巫女様と女の子たちがなだれ込んできて。
それでも姉さんはぼくから離れようとしなかったので、ぼくが身を起こして突き飛ばして。もちろん、手遅れ。
奥座敷ではなく、裏庭に引きすえられて。オフクロ様と三人の神子様と七人の男衆に取り囲まれて。村へ来て最初の日と同じ配置。違っているのは、姉さんがオフクロ様の横にではなく、ぼくの横に正座させられていることだけだった。
即決裁判。
裏庭に引き込まれて三十分後には、『処置』が始まった。
最初は姉さん。ビニールシートも敷いてない地面に、男衆の手で大の字に押さえつけられて。穴と割れ目をぬい閉じられた。それも、はやく完全にふさがるようにと、密着する面を紙ヤスリでこすられてから。
紙ヤスリでこすられたときには、ぬい合わされるときよりも大きな悲鳴を上げていた。
そして。ぬい合わされるときには、ひかえ目な悲鳴がすすり泣きに変わっていった。
最後まで、ねえさんは許しを願うような言葉を口にしなかった。すすり泣きに甘い調べが混じっていたように聞こえたのは――姉さんがマゾだと知ったぼくのもう想の産物だったかもしれない。
ぼくのチンチンをつないでいた鎖が使われて、姉さんは四つんばいの形に固定された。鎖の端は南京じょうで留められたけど、カギ穴がつぶされて、二度と開けられなくされた。
それから、ぼくの番。タマタマをお腹の中へ納めてタマぶくろを瞬間接着剤でくっつけろタックは、自分の手でしなくちゃならなかった。抵抗できるふんいきじゃなかった。
それから、姉さんと同じように大の字に押さえつけられて、タマぶくろを張り合わせた上を針と糸でぬわれた。ものすごく痛かったけれど、泣き叫ぶほどじゃなかった。もちろん、甘くすすり泣いたりもしなかった。
姉さんは、そのまま裏庭に縄でつながれて。
ぼくは、生理用ナプキンを当てたショーツをはかされて、ワンピースも着せられて、もうバスの朝便は出発した後だったので、バスを乗り継いだ先にある駅まで、自動車で連れ去られた。
電車を乗り継いで家に帰るまでに、ぼくはある決心を固めていた。
姉さんひとりをつらい目に合わせたくないともいえるし。姉さんだけにマゾの快楽をむさぼられるのはくやしいともいえる。
ぼくはマゾだと姉さんに指摘されて、すっかりマゾに目覚めてしまった。
だから、村でされたことについて、両親には何も語らなかった。
帰ったその日のうちに、ぼくは自分でカッターナイフを使って糸を切った。チンチンは正常にもどって。数日で生理用ナプキンも不要になった。
そして、宿題をサボった反省文とかは大変だったけど、無事に二学期が始まって、一日ずつが過ぎて行った。
そして、帰路で固めた決心を実行に移すタイミングを計っている。
ちゃんと書置きをして、両親にあきらめてもらって――村へ帰るタイミングを。
タックをはがしているのはすぐに見つかって、またぬい閉じられるだろう。今度は紙ヤスリでこすってもらう。
そして、ねえさんといっしょに犬チクショウ以下の扱いをされて、いじめられて。男の人たちにアナルを犯されて――きっと、またメスイキをするだろう。あの快感を得られるなら、射精なんかしなくてもいい。ていうか。ドライオーガズムを得るためには何日もの射精禁止が必要らしい。
これから秋になって冬になって。それでも、戸外で強いられる全裸生活は、すごくつらいだろう。川でおぼれさせられるのは、苦しいだけでなくこごえるほど冷たいだろう。姉さんといっしょに鳥居に張り付けられて、木の枝なんかじゃなくベルトでミソギをさせられて……もしかして、タックの中でチンチンが起っきしかけたら痛いだろうな。
そんなことを夢想するたびに、チンチンをしごきかけて。でも、射精したら決心が鈍るのは分かり切ってるから……今日もタックをしたまま、眠りに就く。
[ 終 ]
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魔羅神様の男神子:1章
この小説は、股腿姦淫鞭縄などエロ&SMジャンルに必須の漢字を除いて、おおむね漢検4級レベルで書かれています。但し、表題と章題はこの限りではありません。
1.男女判別
進学して初めての夏休みに、初めてのひとり旅。電車と電車とバスとバスを乗り継いで。朝の七時に家を出て、終点の夕明村バス停に着いたときには、十一時を過ぎていた。朝昼夕に一本ずつしかないバスは、のんびりと時刻待ち。降りたのは僕だけで、乗ってくる人はいないみたいだ。
とりあえず、着いたよって電話。バス停からさらに一時間も歩く村は、大手のキャリアでも圏外だから、これが最後の連絡。ま、お祖母ちゃんちで固定電話を借りればいいだけの話だけどね。
「きみ、キヨシ君でしょ」
待合所から出てきた女の子に声をかけられて、ちょっとびっくりした。というか、いぶかしんだ。
だって、僕の名前は荘田清美。ふつうキヨミって読むし、戸席もそうなってる。だいいち、戸席上の性別は女だし、今だってサマーワンピースを着てる。どこから見ても女の子だぞ。ショートボブにしてるけど、胸のふくらみもないけど、それでもボーイッシュの範中だぞ。
僕が男の子で、本当はキヨシだって知ってるのは、僕の両親だけなのに。なんてのは、とりあえず後回し。
「はい……ソウダキヨシですけど?」
まだ声変わりしてないから、声でも男女の区別はつかないと思う。
「あたしはイチノミヤマソノ。迎えに来たんだけど……」
マソノと名乗った女の子――じゃないね。僕より頭ひとつばかり背が高い。そりゃまあ、僕はクラスの女子と比べても小柄なほうだけど。それを割り引いても、僕より二つ三つは年上かな。腰に届きそうなロングヘアーをさらりと流して、Tシャツにスリムなジーンズが、かえって女っぽさを強調してる。
マソノちゃん――じゃなくてマソノさんが、停まっているバスを指差した。
「あれに乗って、家へ帰りなさい。それが、君のためにも村のためにも、良いことなんだから」
「僕は……この村で生まれた男の子として、ちゃんと神事を済ませる義務があるんです」
と、ママに言われてる。パパは、なぜか無言でそっぽを向いてたけど。
マソノさんは、ふっと――ため息かな。
「後かいしても知らないよ。村まで案内してあげる」
言うなり、きびすを返して、バス停から続く山道を登り始めた。
なんなんだよ――と、「?」を三つくらい頭の中に浮かべながら、後を追いかける。
マソノさんはずんずん歩き続ける。山道を歩き慣れてる。僕は後を追いかけるのが、やっと。僕は荷物を持ってるし、マソノさんは手ぶら。でも、僕も一応は男子。女子に荷物を持ってもらうなんて、出来るもんか。
十五分(正確にじゃなくて、一時間の半分の半分くらいって意味)も歩くと、息が切れてくる。のに、マソノさんは余ゆうしゃくしゃくにさわる。
だけど、後ろからみてると、本当に女の子だなあって実感する。歩くときに腰から動き始めて、真ん丸なヒップが上下にくねって、ひざから下はその動きを追いかける――みたい。いくら僕が女の子の格好をして、学校でも女の子として通用してても、本物にはかなわないや。
マソノさんは、歩きながらひっきりなしにおしゃべりしてる。自分の名前は漢字だと真実に御苑のエンだとか。大昔は村じゅうが藤原とか立花って名字ばかりだったけど、明治時代に戸席制度が整備されたときに、家の格に従って一宮、二宮、三宮、世宮(シは縁起が悪い)ってふうに改名したとか。僕のママも旧姓は一宮だったとか。いろいろと教えてくれた。歩きながら後ろを振り返ったりもせずだから、独り言ぽい。僕には、相づちを打つ余ゆうもなかったよ。
そうか。僕が訪ねて行く先はママの実家で、一宮だけど。真苑さんに改めて言われるまでは、ひょっとして親せきかなとは思ってなかった。なんてことを考えられたくらいだから、真苑さんは、僕の歩く速度には合わせてくれてたんだろうな。それは、次の言葉ではっきりした。
「はあ、やっと着いた。五十分の道のりが一時間以上かかったけどね」
足腰の弱い都会者ってバカにしてるんじゃなくて、出来の悪い年下の子をあわれむみたいな口調だった。
四歳のときに村を出た僕には、初めて訪れた地も同然。人口は四百人ちょっとらしいけど、都会ならてい宅規模の家がずらっと並んでるから、けっこう大規模に見える。ひとつの箱の中に何十世帯も詰め込まれてるマンションとは大違いだ。
汗をふく暇もなく、百年前から建ってたと言われても納得しそうな、古びた大きな御屋敷へ案内されて。ろう下をずずずずずいと奥へ進んだ座敷に通されて。すずしさどころかうすら寒さを感じた。
そこには、床の間を背にして、大ばば様みたいなおばあさん(僕の祖母の民江さんかな)と、僕の年齢の倍以上はありそうな、でも神社で見かける巫女さんの衣装を身に付けた女性が三人と。壁に沿って七人の男性がコの字形に並んで――僕を見つめていた。
気圧されて、座敷に入ってすぐの所で、ぺたんと正座。
「おまえは、本当に初美の息子なのかね?」
大ばば様から、御下問って感じ。
「はい。こんな格好をしていますけど、男です」
「なにゆえに女装をしておるのじゃ」
巫女さんの一人。この人だけは、小さな金色のかんむりを頭に載せている。
「こうしていないと、この土地の神様にのろわれるって、母から聞かされています」
迷信とかいう言葉を口に出来るようなふん囲気じゃなかった。
「ふん。どんな形をしようが、のろいからは逃れられぬぞ。しかし、おまえが真に男であると確かめた者は、この村に居らぬ」
「しかし、見れば見るほど女子じゃのう。間違いがあってはいかん。服を脱いでみなさい」
大ばば様をはさんでかんむり巫女の反対側に座っている巫女さんが、さらりと言った。
村では、何を言われても何をされても、逆らってはいけないと――ママから厳しく言われてる。十日間だけの我慢。それでのろいから解放されるんだからと。
僕としては。男の娘でいることが自然になってる。そりゃまあ、将来もこれじゃあいやだし。性別適合手術を受けて女性になりたいかというと、それもいやだ。むくつけき男に可愛がられるなんて、ぞっとする。きゃしゃで柔らかくて良いにおいのする女の子を、僕が可愛がりたいんだ。
というのは、ずううっと横へ押しのけて。
僕は立ち上がって、素直に服を脱いだ。下着も(女の子らしく、両手をクロスさせて)脱いで、ショーツ一枚。ここまでは、身体測定でも体育の着替えでも慣れてる。
「何をしている。パンツも脱ぎなさい」
大ばば様にしかられて、心臓が三十センチは跳び上がった。修学旅行のときだって、ほんとにドキドキしたんだから。
全身が火照るのを感じながら、ショーツを脱いで。恥ずかしいので、両手で胸と股間を隠した――ら、やっぱりしかられた。
「手を下ろすのじゃ」
見て驚くだろうな――と、恥ずかしさの中にも、やけっぱちな期待を交えて、手を下ろした。
おおっと、座がどよめいた。胸にふくらみが無いのは当然だけど。男の付属品が股間に付いてないのには、驚いたろうね。まるきりの一本筋だもの。まるきりのツルペタだもの。
「おまえ……まさか、女子なのか?」
「隠してるんです。チン、だんせ……ペニスも見せないとダメですか?」
ものすごく恥ずかしいのと、ちょっぴり得意なのとが混ざり合った複雑な気分。
「インターネットで見たことがあるぞ。それ、タックとかいうやつだな」
七人の中でいちばん若いぽい(といっても、三十過ぎの小父さんだ)男性が、得意そうに言った。そして、大ばば様に向かって言い訳めいて。
「もちろん、サーバー経由のVPNでアドミン権限の情報収集の一環としてですよ」
自分でも理解出来てないIT用語を並べてるぽいな。
「隠しておるのなら、出しなさい」
「はい」
畳の上に正座して。バッグのポケットから、瞬間接着剤の「はがし液」と小筆を取り出した。後、ティッシュ。
ひざを開いて、股間の一本筋に「はがし液」をぬって染み込ませる。毎朝タックをして女の子になって、家へ帰ったら男の子にもどる。三年前からはひとりで出来るようになってる。
瞬間接着剤がふやけるまでの数分。液が垂れないように上体を反らせて畳に両手を突いて、股を開きっ放し。初対面のオトナに三方から囲まれて、とんでもないことをしてるなって……だんだん恥ずかしさがつのってくる。正気を取りもどしたっていうほうが当たってるな。
神事って、具体的に何をするのか、ママも教えてくれなかった。実は知らないんじゃないかと疑ってるけど。そして、見知らぬ場所で見知らぬオトナたちに囲まれて。しかも、恥ずかしいことを要求されて。正気を保てるはずが無いだろ。
正気を取りもどしたといっても、三十パーセントくらいかな。だから、恥ずかしい作業を続けられたんだと思う。
左右のタマタマふくろをはり合わせて縦筋になってる部分をそっと引きはがすと、チンチンがぽろっと出てくる。
「おおおっ」
「まあ……」
「ふうむ?」
そりゃ驚くよね。「女の子」の中から「男の子」が現われるんだから。
「妙にしなびた金玉だな?」
タマタマはくくろから押し出して、下腹部に押し込んである。言葉で説明するのは面倒だし恥ずかしいから。畳の上ではクッションになるので。ろう下へ出て、ケンケン跳び。にょむ゙んって感じで、玉が片方ずつふくろの中に下りてくる。
「ええと……こんなです」
まさか「おそまつ様」なんてあいさつもおかしいし、口の中でもぐもぐつぶやいてから、元の位置に座った。もう必要が無いから、ひざをぴったりそろえて正座。でも、みんなきちんと服を着てるのに、ぼくだけ裸。すごく居心地が悪い。
「しかし、実になんというか……短小包径もいいところですわね」
三人の中で圧倒的に若い(僕とひと回り違うくらいかな)巫女さんが、口に手を当てて笑った。
女の子として通してるから、クラスメイトのチンチンは見たことがない。ネットで見かけるサイズはオトナ基準だから、それに比べたらずっと小さいけど、起っきしてるときに四センチ以上あればSEXに問題は無いそうだけど、僕は縮んでるときでもそれくらいはあるぞ。包径だって仮性だから、多数派だぞ。
でも……
「確かに。年齢を割り引いても小さいな」
「俺がこいつくらいのときには、倍はあったぞ」
「こいつに合うサイズなんて、あったっけ」
そんなふうに言われると、泣きたくなってくる。
「大きさは問題ではないわえ」
大ばば様は僕の味方――じゃなかった。
「かんじんなのは働きじゃ。キヨシよ、精通はしておろうの?」
むぐ……学校ではほとんど教えてくれなくても、ネットで調べれば、精通でも初潮でもオナニーでもSEXでもニンシンでも中絶でも、何だって分かる。そして僕は……何ひとつ経験が無い!
初潮とかニンシンじゃなくて、精通の話だよ。チンチンを指でつまんでしごくと(特にカリクビのところが)すごく気持ち良くなって、ビクビクッと腰がけいれんするんだけど、それだけ。空砲ってやつ? それでもけん者タイムの自己けん悪に突入するんだから、なんだか損をした気分になる。
こういうときは、黙っているのが返事になってしまう。
「ふうん。まだ毛も生えてないし、声も子供だし……でも、本当に出ないのかな?」
若い巫女さんが、ふわりと立ち上がった――次の瞬間には、赤いはかまが僕に向かって押し寄せて来て。
「あっ……?!」
チンチンを握られてた。
「やめてください」
カマトトじゃないよ。知らないよオトナに囲まれて裸ってだけで、恥ずかしくて頭がでんぐり返ってるのに、いちばん恥ずかしいところを、それも若い女の人に握られて。
なんとか押し返そうと、じたばたあがいたら。
「おとなしくしろ。おまえのケガレをはらえるかどうかのせとぎわだぞ」
男の人に、羽交いじめにされた。ものすごい力。身をもがくことすら出来ない。
恥ずかしいことをされてるけど、危害を加えられてるんじゃない。そんなふうに自分を納得させて、抵抗をやめた。
巫女さんが、チンチンをもにゅもにゅとしごく。目いっぱいに縮かんでたのが、たちまち起っきする。ものすごく気持ち良い。自分でするのが木綿豆腐なら、これは絹ごし。よりも柔らかくて甘い――プリンだ。
切ない思いが腰に込み上げてきて。
「ああっ……!」
自分でするときには声なんか出ないのに。ぴくぴくじゃなくて、がくがくと腰が震えた。
「あら、ま。本当に煙だけね。でも、先走りは出てるから、明日は無理でも一週間後くらいなら、どうかしら」
「では、お清めはそれからじゃな」
「それまでにほう納と修験は済ませておきましょう」
さっぱり意味が分からないけど、僕に関する事柄が、僕を抜きにして決められていく。
「あの……もう、放してください。それと、どういうことなのか、神事ってしか聞かされてないんですけど、具体的に何をどうするのかも教えてください。それから……もう、服を着ていいですか?」
「ダメじゃ。おまえは、お清めが済むまでは裸で暮らすのじゃ」
「…………」
とんでもないことを言われて、しばらくは頭がエンストしてた。
「そんなのって、人権無視です!」
自分の思いをうまく表現できなくて、学校で習った言葉をそのまま使ったんだけど。
「この村で生まれた男に、人権なぞ無いわえ。昔じゃったら、赤子のときに間引かれているところぞ。命があるだけ幸せに思え」
大ばば様の声は、ぞっとするほど冷たかった。この人、絶対に僕の祖母じゃない。
「真苑。チンコジを持って来なさい」
僕を座敷に案内した後はどこかへ引っ込んでいた真苑さんが、大きな四角いお盆を持って現われた。
これから何が始まるんだろうという疑問は、すぐに答を与えられた。僕は座敷の真ん中に引き出されて、あお向けに押し倒されて、男の人に手足を押さえつけられた。
お盆が僕の顔のすぐ横に置かれた。厚さ一センチ以上の鉄板から切り出したような輪っかとか、それを半割にしたのとか、C形で薄い(といっても五ミリはある)輪っかは内側が凸凹になってる。直径一センチそこそこから四センチ以上のまで、何個も並べられている。
「これは小さすぎるわね」
「昔は、赤ん坊のころから着けさせたっていうから……ああ、これくらいかしら」
頭にかんむりを載せてない(平の?)巫女さんが二人で相談して、ついでに僕のチンチンを握ったりしながら、円を半割にしたような鉄の輪っかをお盆から選び出した。一人がチンチンを引っ張りながら、もう一人が輪っかを根元にあてがった。
「あっ……何を?」
ばしん。僕の横に座りこんでいた男の人にビンタを張られた。
「黙っておれ。何をどうするかは、順番に教えてやる」
こんなことをされるって、ママは承知していたんだろうか。だから、何をされても逆らってはいけないなんてしつこく言ってたんだろうか。
抵抗をやめた僕のチンチンに、鉄の輪っかがはめられて、他にも変てこな器具を取りつけられた。

これで5,990文字。400字詰原稿用紙1枚の実績平均値は335文字ですから、18枚。
今のところ8章の予定ですから、150枚内外で仕上がるかな。SMシーンは書き込みますから、200枚かも。まかり間違っても400とか600なんてインフレは起こさないでしょう。
1.男女判別
進学して初めての夏休みに、初めてのひとり旅。電車と電車とバスとバスを乗り継いで。朝の七時に家を出て、終点の夕明村バス停に着いたときには、十一時を過ぎていた。朝昼夕に一本ずつしかないバスは、のんびりと時刻待ち。降りたのは僕だけで、乗ってくる人はいないみたいだ。
とりあえず、着いたよって電話。バス停からさらに一時間も歩く村は、大手のキャリアでも圏外だから、これが最後の連絡。ま、お祖母ちゃんちで固定電話を借りればいいだけの話だけどね。
「きみ、キヨシ君でしょ」
待合所から出てきた女の子に声をかけられて、ちょっとびっくりした。というか、いぶかしんだ。
だって、僕の名前は荘田清美。ふつうキヨミって読むし、戸席もそうなってる。だいいち、戸席上の性別は女だし、今だってサマーワンピースを着てる。どこから見ても女の子だぞ。ショートボブにしてるけど、胸のふくらみもないけど、それでもボーイッシュの範中だぞ。
僕が男の子で、本当はキヨシだって知ってるのは、僕の両親だけなのに。なんてのは、とりあえず後回し。
「はい……ソウダキヨシですけど?」
まだ声変わりしてないから、声でも男女の区別はつかないと思う。
「あたしはイチノミヤマソノ。迎えに来たんだけど……」
マソノと名乗った女の子――じゃないね。僕より頭ひとつばかり背が高い。そりゃまあ、僕はクラスの女子と比べても小柄なほうだけど。それを割り引いても、僕より二つ三つは年上かな。腰に届きそうなロングヘアーをさらりと流して、Tシャツにスリムなジーンズが、かえって女っぽさを強調してる。
マソノちゃん――じゃなくてマソノさんが、停まっているバスを指差した。
「あれに乗って、家へ帰りなさい。それが、君のためにも村のためにも、良いことなんだから」
「僕は……この村で生まれた男の子として、ちゃんと神事を済ませる義務があるんです」
と、ママに言われてる。パパは、なぜか無言でそっぽを向いてたけど。
マソノさんは、ふっと――ため息かな。
「後かいしても知らないよ。村まで案内してあげる」
言うなり、きびすを返して、バス停から続く山道を登り始めた。
なんなんだよ――と、「?」を三つくらい頭の中に浮かべながら、後を追いかける。
マソノさんはずんずん歩き続ける。山道を歩き慣れてる。僕は後を追いかけるのが、やっと。僕は荷物を持ってるし、マソノさんは手ぶら。でも、僕も一応は男子。女子に荷物を持ってもらうなんて、出来るもんか。
十五分(正確にじゃなくて、一時間の半分の半分くらいって意味)も歩くと、息が切れてくる。のに、マソノさんは余ゆうしゃくしゃくにさわる。
だけど、後ろからみてると、本当に女の子だなあって実感する。歩くときに腰から動き始めて、真ん丸なヒップが上下にくねって、ひざから下はその動きを追いかける――みたい。いくら僕が女の子の格好をして、学校でも女の子として通用してても、本物にはかなわないや。
マソノさんは、歩きながらひっきりなしにおしゃべりしてる。自分の名前は漢字だと真実に御苑のエンだとか。大昔は村じゅうが藤原とか立花って名字ばかりだったけど、明治時代に戸席制度が整備されたときに、家の格に従って一宮、二宮、三宮、世宮(シは縁起が悪い)ってふうに改名したとか。僕のママも旧姓は一宮だったとか。いろいろと教えてくれた。歩きながら後ろを振り返ったりもせずだから、独り言ぽい。僕には、相づちを打つ余ゆうもなかったよ。
そうか。僕が訪ねて行く先はママの実家で、一宮だけど。真苑さんに改めて言われるまでは、ひょっとして親せきかなとは思ってなかった。なんてことを考えられたくらいだから、真苑さんは、僕の歩く速度には合わせてくれてたんだろうな。それは、次の言葉ではっきりした。
「はあ、やっと着いた。五十分の道のりが一時間以上かかったけどね」
足腰の弱い都会者ってバカにしてるんじゃなくて、出来の悪い年下の子をあわれむみたいな口調だった。
四歳のときに村を出た僕には、初めて訪れた地も同然。人口は四百人ちょっとらしいけど、都会ならてい宅規模の家がずらっと並んでるから、けっこう大規模に見える。ひとつの箱の中に何十世帯も詰め込まれてるマンションとは大違いだ。
汗をふく暇もなく、百年前から建ってたと言われても納得しそうな、古びた大きな御屋敷へ案内されて。ろう下をずずずずずいと奥へ進んだ座敷に通されて。すずしさどころかうすら寒さを感じた。
そこには、床の間を背にして、大ばば様みたいなおばあさん(僕の祖母の民江さんかな)と、僕の年齢の倍以上はありそうな、でも神社で見かける巫女さんの衣装を身に付けた女性が三人と。壁に沿って七人の男性がコの字形に並んで――僕を見つめていた。
気圧されて、座敷に入ってすぐの所で、ぺたんと正座。
「おまえは、本当に初美の息子なのかね?」
大ばば様から、御下問って感じ。
「はい。こんな格好をしていますけど、男です」
「なにゆえに女装をしておるのじゃ」
巫女さんの一人。この人だけは、小さな金色のかんむりを頭に載せている。
「こうしていないと、この土地の神様にのろわれるって、母から聞かされています」
迷信とかいう言葉を口に出来るようなふん囲気じゃなかった。
「ふん。どんな形をしようが、のろいからは逃れられぬぞ。しかし、おまえが真に男であると確かめた者は、この村に居らぬ」
「しかし、見れば見るほど女子じゃのう。間違いがあってはいかん。服を脱いでみなさい」
大ばば様をはさんでかんむり巫女の反対側に座っている巫女さんが、さらりと言った。
村では、何を言われても何をされても、逆らってはいけないと――ママから厳しく言われてる。十日間だけの我慢。それでのろいから解放されるんだからと。
僕としては。男の娘でいることが自然になってる。そりゃまあ、将来もこれじゃあいやだし。性別適合手術を受けて女性になりたいかというと、それもいやだ。むくつけき男に可愛がられるなんて、ぞっとする。きゃしゃで柔らかくて良いにおいのする女の子を、僕が可愛がりたいんだ。
というのは、ずううっと横へ押しのけて。
僕は立ち上がって、素直に服を脱いだ。下着も(女の子らしく、両手をクロスさせて)脱いで、ショーツ一枚。ここまでは、身体測定でも体育の着替えでも慣れてる。
「何をしている。パンツも脱ぎなさい」
大ばば様にしかられて、心臓が三十センチは跳び上がった。修学旅行のときだって、ほんとにドキドキしたんだから。
全身が火照るのを感じながら、ショーツを脱いで。恥ずかしいので、両手で胸と股間を隠した――ら、やっぱりしかられた。
「手を下ろすのじゃ」
見て驚くだろうな――と、恥ずかしさの中にも、やけっぱちな期待を交えて、手を下ろした。
おおっと、座がどよめいた。胸にふくらみが無いのは当然だけど。男の付属品が股間に付いてないのには、驚いたろうね。まるきりの一本筋だもの。まるきりのツルペタだもの。
「おまえ……まさか、女子なのか?」
「隠してるんです。チン、だんせ……ペニスも見せないとダメですか?」
ものすごく恥ずかしいのと、ちょっぴり得意なのとが混ざり合った複雑な気分。
「インターネットで見たことがあるぞ。それ、タックとかいうやつだな」
七人の中でいちばん若いぽい(といっても、三十過ぎの小父さんだ)男性が、得意そうに言った。そして、大ばば様に向かって言い訳めいて。
「もちろん、サーバー経由のVPNでアドミン権限の情報収集の一環としてですよ」
自分でも理解出来てないIT用語を並べてるぽいな。
「隠しておるのなら、出しなさい」
「はい」
畳の上に正座して。バッグのポケットから、瞬間接着剤の「はがし液」と小筆を取り出した。後、ティッシュ。
ひざを開いて、股間の一本筋に「はがし液」をぬって染み込ませる。毎朝タックをして女の子になって、家へ帰ったら男の子にもどる。三年前からはひとりで出来るようになってる。
瞬間接着剤がふやけるまでの数分。液が垂れないように上体を反らせて畳に両手を突いて、股を開きっ放し。初対面のオトナに三方から囲まれて、とんでもないことをしてるなって……だんだん恥ずかしさがつのってくる。正気を取りもどしたっていうほうが当たってるな。
神事って、具体的に何をするのか、ママも教えてくれなかった。実は知らないんじゃないかと疑ってるけど。そして、見知らぬ場所で見知らぬオトナたちに囲まれて。しかも、恥ずかしいことを要求されて。正気を保てるはずが無いだろ。
正気を取りもどしたといっても、三十パーセントくらいかな。だから、恥ずかしい作業を続けられたんだと思う。
左右のタマタマふくろをはり合わせて縦筋になってる部分をそっと引きはがすと、チンチンがぽろっと出てくる。
「おおおっ」
「まあ……」
「ふうむ?」
そりゃ驚くよね。「女の子」の中から「男の子」が現われるんだから。
「妙にしなびた金玉だな?」
タマタマはくくろから押し出して、下腹部に押し込んである。言葉で説明するのは面倒だし恥ずかしいから。畳の上ではクッションになるので。ろう下へ出て、ケンケン跳び。にょむ゙んって感じで、玉が片方ずつふくろの中に下りてくる。
「ええと……こんなです」
まさか「おそまつ様」なんてあいさつもおかしいし、口の中でもぐもぐつぶやいてから、元の位置に座った。もう必要が無いから、ひざをぴったりそろえて正座。でも、みんなきちんと服を着てるのに、ぼくだけ裸。すごく居心地が悪い。
「しかし、実になんというか……短小包径もいいところですわね」
三人の中で圧倒的に若い(僕とひと回り違うくらいかな)巫女さんが、口に手を当てて笑った。
女の子として通してるから、クラスメイトのチンチンは見たことがない。ネットで見かけるサイズはオトナ基準だから、それに比べたらずっと小さいけど、起っきしてるときに四センチ以上あればSEXに問題は無いそうだけど、僕は縮んでるときでもそれくらいはあるぞ。包径だって仮性だから、多数派だぞ。
でも……
「確かに。年齢を割り引いても小さいな」
「俺がこいつくらいのときには、倍はあったぞ」
「こいつに合うサイズなんて、あったっけ」
そんなふうに言われると、泣きたくなってくる。
「大きさは問題ではないわえ」
大ばば様は僕の味方――じゃなかった。
「かんじんなのは働きじゃ。キヨシよ、精通はしておろうの?」
むぐ……学校ではほとんど教えてくれなくても、ネットで調べれば、精通でも初潮でもオナニーでもSEXでもニンシンでも中絶でも、何だって分かる。そして僕は……何ひとつ経験が無い!
初潮とかニンシンじゃなくて、精通の話だよ。チンチンを指でつまんでしごくと(特にカリクビのところが)すごく気持ち良くなって、ビクビクッと腰がけいれんするんだけど、それだけ。空砲ってやつ? それでもけん者タイムの自己けん悪に突入するんだから、なんだか損をした気分になる。
こういうときは、黙っているのが返事になってしまう。
「ふうん。まだ毛も生えてないし、声も子供だし……でも、本当に出ないのかな?」
若い巫女さんが、ふわりと立ち上がった――次の瞬間には、赤いはかまが僕に向かって押し寄せて来て。
「あっ……?!」
チンチンを握られてた。
「やめてください」
カマトトじゃないよ。知らないよオトナに囲まれて裸ってだけで、恥ずかしくて頭がでんぐり返ってるのに、いちばん恥ずかしいところを、それも若い女の人に握られて。
なんとか押し返そうと、じたばたあがいたら。
「おとなしくしろ。おまえのケガレをはらえるかどうかのせとぎわだぞ」
男の人に、羽交いじめにされた。ものすごい力。身をもがくことすら出来ない。
恥ずかしいことをされてるけど、危害を加えられてるんじゃない。そんなふうに自分を納得させて、抵抗をやめた。
巫女さんが、チンチンをもにゅもにゅとしごく。目いっぱいに縮かんでたのが、たちまち起っきする。ものすごく気持ち良い。自分でするのが木綿豆腐なら、これは絹ごし。よりも柔らかくて甘い――プリンだ。
切ない思いが腰に込み上げてきて。
「ああっ……!」
自分でするときには声なんか出ないのに。ぴくぴくじゃなくて、がくがくと腰が震えた。
「あら、ま。本当に煙だけね。でも、先走りは出てるから、明日は無理でも一週間後くらいなら、どうかしら」
「では、お清めはそれからじゃな」
「それまでにほう納と修験は済ませておきましょう」
さっぱり意味が分からないけど、僕に関する事柄が、僕を抜きにして決められていく。
「あの……もう、放してください。それと、どういうことなのか、神事ってしか聞かされてないんですけど、具体的に何をどうするのかも教えてください。それから……もう、服を着ていいですか?」
「ダメじゃ。おまえは、お清めが済むまでは裸で暮らすのじゃ」
「…………」
とんでもないことを言われて、しばらくは頭がエンストしてた。
「そんなのって、人権無視です!」
自分の思いをうまく表現できなくて、学校で習った言葉をそのまま使ったんだけど。
「この村で生まれた男に、人権なぞ無いわえ。昔じゃったら、赤子のときに間引かれているところぞ。命があるだけ幸せに思え」
大ばば様の声は、ぞっとするほど冷たかった。この人、絶対に僕の祖母じゃない。
「真苑。チンコジを持って来なさい」
僕を座敷に案内した後はどこかへ引っ込んでいた真苑さんが、大きな四角いお盆を持って現われた。
これから何が始まるんだろうという疑問は、すぐに答を与えられた。僕は座敷の真ん中に引き出されて、あお向けに押し倒されて、男の人に手足を押さえつけられた。
お盆が僕の顔のすぐ横に置かれた。厚さ一センチ以上の鉄板から切り出したような輪っかとか、それを半割にしたのとか、C形で薄い(といっても五ミリはある)輪っかは内側が凸凹になってる。直径一センチそこそこから四センチ以上のまで、何個も並べられている。
「これは小さすぎるわね」
「昔は、赤ん坊のころから着けさせたっていうから……ああ、これくらいかしら」
頭にかんむりを載せてない(平の?)巫女さんが二人で相談して、ついでに僕のチンチンを握ったりしながら、円を半割にしたような鉄の輪っかをお盆から選び出した。一人がチンチンを引っ張りながら、もう一人が輪っかを根元にあてがった。
「あっ……何を?」
ばしん。僕の横に座りこんでいた男の人にビンタを張られた。
「黙っておれ。何をどうするかは、順番に教えてやる」
こんなことをされるって、ママは承知していたんだろうか。だから、何をされても逆らってはいけないなんてしつこく言ってたんだろうか。
抵抗をやめた僕のチンチンに、鉄の輪っかがはめられて、他にも変てこな器具を取りつけられた。

これで5,990文字。400字詰原稿用紙1枚の実績平均値は335文字ですから、18枚。
今のところ8章の予定ですから、150枚内外で仕上がるかな。SMシーンは書き込みますから、200枚かも。まかり間違っても400とか600なんてインフレは起こさないでしょう。
Response to a new Request :3
さて。PLOTも固まりました。ていうか。執筆開始してます。
書きながらPLOTには随時手を入れていくのが、最近のやり方です。
ともあれ。「おおむね」初期のPLOTです。タイトルは仮題。
========================================
魔羅神様の男神子
実の姉:一宮真苑(15)異父B
巫女候補/観念ハードマゾ
巫女になるには、弟のケガレを祓う必要。
(実の弟と交合えば、無条件に生涯祓除)
祖母:一宮民江 祖父は死去
現在の巫女:二宮里美(35)
巫女は処女。ただし、魔羅神様の寵愛=レズ/ディルドはむしろ必須。
男衆総代:島田高志(御宮家)
高貴な女系村落/女450人+男30人。労働は主として女。ただし、所有山林の権益で農業は食い扶持分くらい。
一宮(1家)、二宮(3家)、三宮(15家)、世宮(20家)、御宮(10家)、陸宮(20家)、波宮(30家)
男は外部調達、一夫多妻(その宮家内)
明治中期まで、男児は間引き。または、出産前から養子先を決めておく。
近世は、村の中で全裸奴隷の例も。鉄環でくびって成長阻害。神子(みこ)ならぬ忌子(いみこ)。早死に。
鉄環は半割り、重たい。責めネジ4本。竿玉まとめて。その下に玉のみ。カリクビはEリング。分厚い。エッジは丸み。
1970年以後は出産前判定で中絶。
希に(母のエゴ)出産の場合、中1(数えで14歳)の一年間を御祓期間。直近は30年前。御祓の後に追放。
一宮家の者だから、形式的に10日だけ。
主人公:荘田清美(きよみ/きよし)13歳(7月22日)A/夏休みと同時
女児として出生届け。就寝時以外は常時タックで睾丸発育不良。5歳で隠しきれなくなって、長女を祖父母に託して夫婦で出奔。戸籍はそのまま。日中は常時タックで、どこまでも女児として。
未発毛未精通。
小6の冬に村から使者。少年に祓除をさせる。「十日間だけ」。実際には難癖付けて夏休み中……の、はずが。
夏休みに祖母から招待される形で。
父:研人A 母:初美O
夕明(ゆうあけ)村:人口400/10~18歳=50人
1:男女判別
昔なら、今度の正月で成人(数えで15)。
※ここを弄ればRいける?
それまでに必要な儀式と言われて、生まれ故郷を訪問。神事は十日間と聞かされてる。
母のアドバイスで女装(普段通り)。
終着バス停(朝晩1本ずつ)に少女(ひとりだけ)の出迎え。
このバスで帰れ。キヨシくん歓迎されてないよ。
なぜ、その名前を? 戸籍も通名もキヨミ。
少女の描写、平行して自分の容姿。
徒歩1時間半。村人なら1時間弱。
祖母の家。
和服の老婦人が祖母。巫女姿の20~40が3人。年輩が冠で、親玉。
30~40の男性が7人。一宮から波宮までの代表。服装まちまち。
マソノは廊下で別れる。11人の前で。
「ほんとに男か?」
脱げと言われて脱ぐ。母に言い含められている。
タックの説明。剥がして、ポロリ。
「歳の割に小さいな」背丈のことではない。
とにかく男なら、禊事をせねば。
精通の有無を尋ねられる。戸惑いながら「まだです」
「本当に?」一番若い巫女(エミ)がしごく。清美は抵抗して羽交い絞め。空砲。
本式の祓除は、精通してから十日じゃ。
2:男根封印
奉納行事を先に。男根封印の鉄輪装着。包茎矯正リング込み。周囲からイモネジ。取れない。
全裸のまま、外へ。抵抗して、後ろ手緊縛。鉄環に縄で引き回し。
神社へ。魔羅神様と無数の脇侍。
神事の説明。魔羅神様に認めていただくまで、人間ではない。
全裸労働、各種修行。最後は、脇侍に「女」にしていただいて、罪業の元を吐き出す。意味はそのうち分かる。
まずは、村を知れ。子供たち(女の子ばかり)に引き回される。冷飯足半。木の枝で追い鞭。
神社前で奉納。空中大の字。木の枝を前に、高所金玉感覚。勃起でなく萎縮。
重石付けて水垢離。
過激になると、真苑がブレーキ役。
近在の大きな村から、駐在の巡邏(原付)。
「これが、噂に聞く男禊か。頑張れよ」
わざと藪の中とか。身体じゅう傷だらけ。虫刺され。
注連縄の結界。この先は巫女修行の女の子だけ。あそこに小屋があるじゃろ。くふふ……
実は、娘の娘による娘のための娘宿。逃げ込む伏線。
村に戻って。女の子たちが軽く叱られる。傷の手当。キンカン。ついでに亀竿玉にも。
四つん這いに縛り直されて、樹につながれる。立って歩くのは人間だけじゃ。トイレは砂箱。
夕食。犬食い。とろろに擂卸ニンニクに卵黄。アサリたっぷりの汁。オクラ三杯酢。玄米飯少々。
夜になると虫除けスプレー。松の青葉を燻す蚊遣り火。
とんでもないことになった。十日じゃ返してもらえそうにない。せめて、夏休みが終わるまでに。
真苑。「だから、帰れと言ったのに」
玉揉み。刺激すれば性長促進効果があるかも。勃起すると、鉄環のイモネジが食い込む。雁首も締め付けられる。
気を散らせるために、村の仕来りの説明。
「我慢して」
空砲。さらに揉み続ける。
3:神前奉納
二日目。朝。今日の世話係。「五宮の者じゃ」昨日の7人には居なかった。
神様の御前に出るのじゃから。大便強要。イチヂク浣腸。我慢すれば川へ連れて行ってやる。
後ろ手緊縛に変更。まともな人間は縛られたりしない。わざと遠回り。
川に腰まで浸かって。束子で綺麗に。先を丸めた細い棒束子で中まで。
激痛を訴えても「修業は、こんなもんじゃないぞ」
ついでに水垢離。
首縄からの前手縛り。60cmじゆう。
米を倉庫から神前まで運ぶ。30kg紙袋を容れた段ボール箱。395x580x220。背負子(肩掛部はU字)で。
歩いていいんだ――皮肉。四つん這いで背中に乗せてやってもいいんだぞ。ごめんなさい。皮肉の罰に歩幅制限50cm。
いちいち、背負子に載せて縛って、背負って立ち上がる。200mの往復。
45箱(山積み)を今日中に。
荷積み30秒+往路200秒+荷卸し30秒+復路150秒=7分。45箱=5Hr
ひとり黙々。女の子の見物とか。水と塩は好きなだけ。
昼に様子を見に来て。夜中までかかるぞ。鞭追い。足の縄を踏んづけて転ばせる。擦り傷。お供えを落とした罰も。
ますます遅れる。
真苑がかばう。中休み。
「まあ、お嬢さんがそう言うんなら」
「身内だからって甘やかすのは良くない」男衆は村の外から迎えられてるから――と、軽く考えてしまう。マソノもミスリードするような返事。
昼の休憩はマソノがおにぎり。これも甘やかしてるのかな。
実際には15分×45箱+中休み45分×2=13時間。
食欲なくても夕食は強制。つらい。
三日目。同じ手順で倉庫へ戻す。ここを1行で済ますか描写するかで尺が……
4:村内修験
四日目。21箱奉納。午後早くに終わる。
引き回し。家を回って、托鉢。少女たちの余録。乳首クリップから吊るした横長の箱に、小銭とか菓子とか。どんどん重くなる。高所金玉感覚。萎縮。
合間にチンチン玩弄。イモネジ目一杯なので痛いのに、さらに勃起。苦痛と快感の融合。
托鉢とハロウィンと獅子舞がごっちゃ。
5:男精修行
五日目。収納。
午後からエロ修行。初日のメンバー。
エミのフェラチオ。凄絶快感。精液披露した後ゴックン。一番搾り。
代表七人によるアナル姦。
賢者タイムにイラマ。
一本目から、弄られて勃つ。お掃除フェラ。神事には関係なく嗜虐。三人目で、前立腺刺激だけで勃起。
屈辱と恥辱と肉体的快感の融合。
ケツ穴で感じてやがる。男巫女になれるんじゃないか。祖母が一喝。おまえは、巫女の意味でミコと言うたが。巫女(ふじょ)と神子(みこ)の違い。
6:恥獄巡行
六日目~十四日目。精通の翌日から九日間。
羞恥と屈辱は変わらないのに、修行を心待ち。水垢離さえも。高所金玉感覚で勃起。胸キュン。
毎晩、GANGBANGで、九日目にトコロテン。以後は射精禁止で、2穴同時も体験。
7:祓除失敗
新たな脇侍。それぞれが、一人の巫女に対応。男だから、巫女レベルでようやく神子。次の巫女はマソノに決まっておる。そのためにも、キヨシを。
ずいぶん太い。
ソフトなドライへ。勃起していない。多幸感。賢者タイム無し。
ドライではないかと、男。
罪業を溜め込んだまま。即ち失敗と、祖母。
罪業を叩き出してやる。空中大の字。勃起。
こいつ、マゾじゃないのか。鞭で射精。
修行やり直し。20日。
8:姉弟哀姦
いつまで経っても解放されない。縛られてなければ逃げられる。初めて、本気で手首をこねくる。縄が抜ける。
逃亡。バスの運転手に救けを求める。それまで娘小屋。バス停からは遠い。他に思い当たらない。
夜の森で迷う。明け方にようやく。
マソノが待っていた。鉄環を外してくれる(工具持参)。
強引に迫られる。ここで、マソノの正体を補完。血液型
姉弟で番えば、二人とも生涯を祓除。これまで以上の苛酷。女は大正に別の穢れで例がある。
マソノに押し倒される。本気で抗っても組み伏せられる。勃起してしまう。
ずっと虐められるなんて……甘美な想いが交じってしまう。
外に女たちの声。
戸板が打ち壊された瞬間に、ふたりとも絶頂。
========================================
最初期のPLOTとの違いは。
少女と少年を、最初は全姉弟(父母共に同じ)を異父姉弟に変更。これは、さして意味がありません。あえて言うなら、乱婚が根付いていることの裏打ちですか。女の子しか認めないのですから、遺伝的な問題がありませんので。まあ、気分次第あるいは必然が生じて、変更するかもです。
もう一点は、神前奉納に名を借りた無意味な重労働。最初は全裸無縄でしたが。猿コミックで見かけた絵面が白い液共同募っ金だったので、両手(かなり)自由の拘束にしました。ついでに足も歩幅制限して。PLOTでは、無拘束の作業所要時間のままですので、書くまでには再計算しておきます。
これまでは、本編を進行に応じて「一部公開」していましたが。初の試みとして「全部公開」します。
ただし。1.2.3.……と章を進めていくにつれて、頭から順次削除していきます。つまり。
1.2.3.
2.3.4.
3.4.5.
こんなふうに公開範囲をずらしていきます。脱稿後には、頭と尻尾だけにするか、ハイライトシーンだけを残すか。
Now boxing.

今のところ、150~200枚を目処です。トヨタニッサン10枚と、のんびりモードで進めても8月上旬には脱稿。校訂とBF含めて下旬には納品ですかしら。
それから、9月中にZSSSを100枚ばかり仕上げるか。別リクエストが来れば、そちらをやるか。
まあ。WILL様への600枚で、今年前半の生産量は1800枚。後半は1か月以上にわたって17枚/日なんて無茶はしない予定ですけど。
書きながらPLOTには随時手を入れていくのが、最近のやり方です。
ともあれ。「おおむね」初期のPLOTです。タイトルは仮題。
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魔羅神様の男神子
実の姉:一宮真苑(15)異父B
巫女候補/観念ハードマゾ
巫女になるには、弟のケガレを祓う必要。
(実の弟と交合えば、無条件に生涯祓除)
祖母:一宮民江 祖父は死去
現在の巫女:二宮里美(35)
巫女は処女。ただし、魔羅神様の寵愛=レズ/ディルドはむしろ必須。
男衆総代:島田高志(御宮家)
高貴な女系村落/女450人+男30人。労働は主として女。ただし、所有山林の権益で農業は食い扶持分くらい。
一宮(1家)、二宮(3家)、三宮(15家)、世宮(20家)、御宮(10家)、陸宮(20家)、波宮(30家)
男は外部調達、一夫多妻(その宮家内)
明治中期まで、男児は間引き。または、出産前から養子先を決めておく。
近世は、村の中で全裸奴隷の例も。鉄環でくびって成長阻害。神子(みこ)ならぬ忌子(いみこ)。早死に。
鉄環は半割り、重たい。責めネジ4本。竿玉まとめて。その下に玉のみ。カリクビはEリング。分厚い。エッジは丸み。
1970年以後は出産前判定で中絶。
希に(母のエゴ)出産の場合、中1(数えで14歳)の一年間を御祓期間。直近は30年前。御祓の後に追放。
一宮家の者だから、形式的に10日だけ。
主人公:荘田清美(きよみ/きよし)13歳(7月22日)A/夏休みと同時
女児として出生届け。就寝時以外は常時タックで睾丸発育不良。5歳で隠しきれなくなって、長女を祖父母に託して夫婦で出奔。戸籍はそのまま。日中は常時タックで、どこまでも女児として。
未発毛未精通。
小6の冬に村から使者。少年に祓除をさせる。「十日間だけ」。実際には難癖付けて夏休み中……の、はずが。
夏休みに祖母から招待される形で。
父:研人A 母:初美O
夕明(ゆうあけ)村:人口400/10~18歳=50人
1:男女判別
昔なら、今度の正月で成人(数えで15)。
※ここを弄ればRいける?
それまでに必要な儀式と言われて、生まれ故郷を訪問。神事は十日間と聞かされてる。
母のアドバイスで女装(普段通り)。
終着バス停(朝晩1本ずつ)に少女(ひとりだけ)の出迎え。
このバスで帰れ。キヨシくん歓迎されてないよ。
なぜ、その名前を? 戸籍も通名もキヨミ。
少女の描写、平行して自分の容姿。
徒歩1時間半。村人なら1時間弱。
祖母の家。
和服の老婦人が祖母。巫女姿の20~40が3人。年輩が冠で、親玉。
30~40の男性が7人。一宮から波宮までの代表。服装まちまち。
マソノは廊下で別れる。11人の前で。
「ほんとに男か?」
脱げと言われて脱ぐ。母に言い含められている。
タックの説明。剥がして、ポロリ。
「歳の割に小さいな」背丈のことではない。
とにかく男なら、禊事をせねば。
精通の有無を尋ねられる。戸惑いながら「まだです」
「本当に?」一番若い巫女(エミ)がしごく。清美は抵抗して羽交い絞め。空砲。
本式の祓除は、精通してから十日じゃ。
2:男根封印
奉納行事を先に。男根封印の鉄輪装着。包茎矯正リング込み。周囲からイモネジ。取れない。
全裸のまま、外へ。抵抗して、後ろ手緊縛。鉄環に縄で引き回し。
神社へ。魔羅神様と無数の脇侍。
神事の説明。魔羅神様に認めていただくまで、人間ではない。
全裸労働、各種修行。最後は、脇侍に「女」にしていただいて、罪業の元を吐き出す。意味はそのうち分かる。
まずは、村を知れ。子供たち(女の子ばかり)に引き回される。冷飯足半。木の枝で追い鞭。
神社前で奉納。空中大の字。木の枝を前に、高所金玉感覚。勃起でなく萎縮。
重石付けて水垢離。
過激になると、真苑がブレーキ役。
近在の大きな村から、駐在の巡邏(原付)。
「これが、噂に聞く男禊か。頑張れよ」
わざと藪の中とか。身体じゅう傷だらけ。虫刺され。
注連縄の結界。この先は巫女修行の女の子だけ。あそこに小屋があるじゃろ。くふふ……
実は、娘の娘による娘のための娘宿。逃げ込む伏線。
村に戻って。女の子たちが軽く叱られる。傷の手当。キンカン。ついでに亀竿玉にも。
四つん這いに縛り直されて、樹につながれる。立って歩くのは人間だけじゃ。トイレは砂箱。
夕食。犬食い。とろろに擂卸ニンニクに卵黄。アサリたっぷりの汁。オクラ三杯酢。玄米飯少々。
夜になると虫除けスプレー。松の青葉を燻す蚊遣り火。
とんでもないことになった。十日じゃ返してもらえそうにない。せめて、夏休みが終わるまでに。
真苑。「だから、帰れと言ったのに」
玉揉み。刺激すれば性長促進効果があるかも。勃起すると、鉄環のイモネジが食い込む。雁首も締め付けられる。
気を散らせるために、村の仕来りの説明。
「我慢して」
空砲。さらに揉み続ける。
3:神前奉納
二日目。朝。今日の世話係。「五宮の者じゃ」昨日の7人には居なかった。
神様の御前に出るのじゃから。大便強要。イチヂク浣腸。我慢すれば川へ連れて行ってやる。
後ろ手緊縛に変更。まともな人間は縛られたりしない。わざと遠回り。
川に腰まで浸かって。束子で綺麗に。先を丸めた細い棒束子で中まで。
激痛を訴えても「修業は、こんなもんじゃないぞ」
ついでに水垢離。
首縄からの前手縛り。60cmじゆう。
米を倉庫から神前まで運ぶ。30kg紙袋を容れた段ボール箱。395x580x220。背負子(肩掛部はU字)で。
歩いていいんだ――皮肉。四つん這いで背中に乗せてやってもいいんだぞ。ごめんなさい。皮肉の罰に歩幅制限50cm。
いちいち、背負子に載せて縛って、背負って立ち上がる。200mの往復。
45箱(山積み)を今日中に。
荷積み30秒+往路200秒+荷卸し30秒+復路150秒=7分。45箱=5Hr
ひとり黙々。女の子の見物とか。水と塩は好きなだけ。
昼に様子を見に来て。夜中までかかるぞ。鞭追い。足の縄を踏んづけて転ばせる。擦り傷。お供えを落とした罰も。
ますます遅れる。
真苑がかばう。中休み。
「まあ、お嬢さんがそう言うんなら」
「身内だからって甘やかすのは良くない」男衆は村の外から迎えられてるから――と、軽く考えてしまう。マソノもミスリードするような返事。
昼の休憩はマソノがおにぎり。これも甘やかしてるのかな。
実際には15分×45箱+中休み45分×2=13時間。
食欲なくても夕食は強制。つらい。
三日目。同じ手順で倉庫へ戻す。ここを1行で済ますか描写するかで尺が……
4:村内修験
四日目。21箱奉納。午後早くに終わる。
引き回し。家を回って、托鉢。少女たちの余録。乳首クリップから吊るした横長の箱に、小銭とか菓子とか。どんどん重くなる。高所金玉感覚。萎縮。
合間にチンチン玩弄。イモネジ目一杯なので痛いのに、さらに勃起。苦痛と快感の融合。
托鉢とハロウィンと獅子舞がごっちゃ。
5:男精修行
五日目。収納。
午後からエロ修行。初日のメンバー。
エミのフェラチオ。凄絶快感。精液披露した後ゴックン。一番搾り。
代表七人によるアナル姦。
賢者タイムにイラマ。
一本目から、弄られて勃つ。お掃除フェラ。神事には関係なく嗜虐。三人目で、前立腺刺激だけで勃起。
屈辱と恥辱と肉体的快感の融合。
ケツ穴で感じてやがる。男巫女になれるんじゃないか。祖母が一喝。おまえは、巫女の意味でミコと言うたが。巫女(ふじょ)と神子(みこ)の違い。
6:恥獄巡行
六日目~十四日目。精通の翌日から九日間。
羞恥と屈辱は変わらないのに、修行を心待ち。水垢離さえも。高所金玉感覚で勃起。胸キュン。
毎晩、GANGBANGで、九日目にトコロテン。以後は射精禁止で、2穴同時も体験。
7:祓除失敗
新たな脇侍。それぞれが、一人の巫女に対応。男だから、巫女レベルでようやく神子。次の巫女はマソノに決まっておる。そのためにも、キヨシを。
ずいぶん太い。
ソフトなドライへ。勃起していない。多幸感。賢者タイム無し。
ドライではないかと、男。
罪業を溜め込んだまま。即ち失敗と、祖母。
罪業を叩き出してやる。空中大の字。勃起。
こいつ、マゾじゃないのか。鞭で射精。
修行やり直し。20日。
8:姉弟哀姦
いつまで経っても解放されない。縛られてなければ逃げられる。初めて、本気で手首をこねくる。縄が抜ける。
逃亡。バスの運転手に救けを求める。それまで娘小屋。バス停からは遠い。他に思い当たらない。
夜の森で迷う。明け方にようやく。
マソノが待っていた。鉄環を外してくれる(工具持参)。
強引に迫られる。ここで、マソノの正体を補完。血液型
姉弟で番えば、二人とも生涯を祓除。これまで以上の苛酷。女は大正に別の穢れで例がある。
マソノに押し倒される。本気で抗っても組み伏せられる。勃起してしまう。
ずっと虐められるなんて……甘美な想いが交じってしまう。
外に女たちの声。
戸板が打ち壊された瞬間に、ふたりとも絶頂。
========================================
最初期のPLOTとの違いは。
少女と少年を、最初は全姉弟(父母共に同じ)を異父姉弟に変更。これは、さして意味がありません。あえて言うなら、乱婚が根付いていることの裏打ちですか。女の子しか認めないのですから、遺伝的な問題がありませんので。まあ、気分次第あるいは必然が生じて、変更するかもです。
もう一点は、神前奉納に名を借りた無意味な重労働。最初は全裸無縄でしたが。猿コミックで見かけた絵面が白い液共同募っ金だったので、両手(かなり)自由の拘束にしました。ついでに足も歩幅制限して。PLOTでは、無拘束の作業所要時間のままですので、書くまでには再計算しておきます。
これまでは、本編を進行に応じて「一部公開」していましたが。初の試みとして「全部公開」します。
ただし。1.2.3.……と章を進めていくにつれて、頭から順次削除していきます。つまり。
1.2.3.
2.3.4.
3.4.5.
こんなふうに公開範囲をずらしていきます。脱稿後には、頭と尻尾だけにするか、ハイライトシーンだけを残すか。
Now boxing.

今のところ、150~200枚を目処です。トヨタニッサン10枚と、のんびりモードで進めても8月上旬には脱稿。校訂とBF含めて下旬には納品ですかしら。
それから、9月中にZSSSを100枚ばかり仕上げるか。別リクエストが来れば、そちらをやるか。
まあ。WILL様への600枚で、今年前半の生産量は1800枚。後半は1か月以上にわたって17枚/日なんて無茶はしない予定ですけど。
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・毎日のように激しい羞恥や侮蔑を浴びて自尊心や尊厳を傷つけられ続けた結果、少年は自分の心を守るためにマゾヒズムに縋っていく。
SMとは何ぞやという根本的な問題に通じるという、その考察です。
「SMプレイ」というように、ほとんどの人にとっては「ごっこ」であり、敢えて言うならSEXの外延です。
筆者は「そうではない」SMを書いているつもりですが、それでも尻尾は引き摺っています。筆者が生理的に受け付けないプレイは、ヒロインも拒絶します。拒絶の代償として(筆者もヒロインも受け付けられる範囲の)厳重な罰を渇仰します。
プレイではないSM/悦虐にしても、歪んで限定的な形ではあるにせよ、愛情と信頼とが不可欠だというのが、筆者の考えです。これが言い過ぎだとすれば、執着と服従ですかな。
ヒロインによく言わせる(内言)言葉に「御主人様は、私を必要とされている」というのがあります。本当に憎んでいるのであれば、無視するか殺してしまうか。
被虐者の人格を(少なくとも性的意味合いにおいて)認めているからこその加虐なのです。
手間暇かけて監禁して、何度も責めを繰り返せる範囲に留めながら、どんな責めでも性器への悪戯・虐待を忘れない。まさしく、異性として愛でているのです。執着しているのです。そこが、現実に、たとえばウクライナで起きた「戦術としてのGANGBANG」とは異なるのです。ホロコーストとも決定的に異なります。
これは何度か書いていますが。筆者御幼少の砌に、さる学習雑誌で読んだ、ナチスの悪逆非道。レジスタンスの家族と思しい姉弟を(本部へ連行するのではなく)戦火で朽ち果てたアパルトメントの一室に監禁して、連日のようにそこを訪れては、姉弟を半裸にしては曖昧にしか描写されない肉体への尋問を繰り返す(のは、掲載媒体の限界ですが)という。この将校などは、ペドのサドの典型でしょう。この場合は、筆者もさすがに、姉弟の悦虐は求めませんけれど。
ぎりぎりのところ。加虐者に被虐者への性的関心が有るか否か。被虐者が、加虐者から性的に扱われているのを自覚しているか。まあ……性的関心があって、局部を切り刻んで殺すというのは、さすがに極限を突破しています。
やはり。四半世紀以上も考え続けてきた問題に、この小文で回答を見い出すのは無理ですな。
もっとも。筆者には理解しがたい性癖の人も居ます。出典は忘れましたが、ある女性は、歯医者で痛い目に遭うのが好きと告白しています。強引に解釈すれば、歯科医が仮想の御主人様なのかも?
しかし。歩いていてうっかり電柱にぶつかったり、交通事故に遭ったりして、それでエクスタシーを感じる人間がいるとは、筆者には思えません。
冒頭のリクエストは、だから、筆者の心情とは相容れないのです。いや、ずいぶんと前後に隔たりのある「だから」だとは分かっていますけどね。
まあ、リクエストに9割方は応じた展開には出来ますよ。「結果」の部分にワンクッションを挿れればいいんですから。
やはり。個別のケースとして小説を書いて。それらしい形に逃げることになるでしょう。
尻切れトンボです。
ところで。リクエストを読み返していて気づいたのですが。「強制自慰や愛撫」という文言はありますが、ケツにぶち込むシチュエーションには言及されていません。まあ、いいか。濠門長恭クンへのリクエストです。標準装備とは御承知の筈。
リクエストでは、そもそもの原因が、女性(母親)が御神体を蔑ろにしたことですが。レスポンスは、ちょっとずれてるかな。まあ、男児を女児と偽るのですから、これも「蔑ろにした」ことに変わりはないでしょう。
次回では、一気にPLOTを固めます。これも順を追って解説すべきですが、出来ません。前回にあれこれ書いて、それが大筋を決めてしまっています。

「SMプレイ」というように、ほとんどの人にとっては「ごっこ」であり、敢えて言うならSEXの外延です。
筆者は「そうではない」SMを書いているつもりですが、それでも尻尾は引き摺っています。筆者が生理的に受け付けないプレイは、ヒロインも拒絶します。拒絶の代償として(筆者もヒロインも受け付けられる範囲の)厳重な罰を渇仰します。
プレイではないSM/悦虐にしても、歪んで限定的な形ではあるにせよ、愛情と信頼とが不可欠だというのが、筆者の考えです。これが言い過ぎだとすれば、執着と服従ですかな。
ヒロインによく言わせる(内言)言葉に「御主人様は、私を必要とされている」というのがあります。本当に憎んでいるのであれば、無視するか殺してしまうか。
被虐者の人格を(少なくとも性的意味合いにおいて)認めているからこその加虐なのです。
手間暇かけて監禁して、何度も責めを繰り返せる範囲に留めながら、どんな責めでも性器への悪戯・虐待を忘れない。まさしく、異性として愛でているのです。執着しているのです。そこが、現実に、たとえばウクライナで起きた「戦術としてのGANGBANG」とは異なるのです。ホロコーストとも決定的に異なります。
これは何度か書いていますが。筆者御幼少の砌に、さる学習雑誌で読んだ、ナチスの悪逆非道。レジスタンスの家族と思しい姉弟を(本部へ連行するのではなく)戦火で朽ち果てたアパルトメントの一室に監禁して、連日のようにそこを訪れては、姉弟を半裸にしては曖昧にしか描写されない肉体への尋問を繰り返す(のは、掲載媒体の限界ですが)という。この将校などは、ペドのサドの典型でしょう。この場合は、筆者もさすがに、姉弟の悦虐は求めませんけれど。
ぎりぎりのところ。加虐者に被虐者への性的関心が有るか否か。被虐者が、加虐者から性的に扱われているのを自覚しているか。まあ……性的関心があって、局部を切り刻んで殺すというのは、さすがに極限を突破しています。
やはり。四半世紀以上も考え続けてきた問題に、この小文で回答を見い出すのは無理ですな。
もっとも。筆者には理解しがたい性癖の人も居ます。出典は忘れましたが、ある女性は、歯医者で痛い目に遭うのが好きと告白しています。強引に解釈すれば、歯科医が仮想の御主人様なのかも?
しかし。歩いていてうっかり電柱にぶつかったり、交通事故に遭ったりして、それでエクスタシーを感じる人間がいるとは、筆者には思えません。
冒頭のリクエストは、だから、筆者の心情とは相容れないのです。いや、ずいぶんと前後に隔たりのある「だから」だとは分かっていますけどね。
まあ、リクエストに9割方は応じた展開には出来ますよ。「結果」の部分にワンクッションを挿れればいいんですから。
やはり。個別のケースとして小説を書いて。それらしい形に逃げることになるでしょう。
尻切れトンボです。
ところで。リクエストを読み返していて気づいたのですが。「強制自慰や愛撫」という文言はありますが、ケツにぶち込むシチュエーションには言及されていません。まあ、いいか。濠門長恭クンへのリクエストです。標準装備とは御承知の筈。
リクエストでは、そもそもの原因が、女性(母親)が御神体を蔑ろにしたことですが。レスポンスは、ちょっとずれてるかな。まあ、男児を女児と偽るのですから、これも「蔑ろにした」ことに変わりはないでしょう。
次回では、一気にPLOTを固めます。これも順を追って解説すべきですが、出来ません。前回にあれこれ書いて、それが大筋を決めてしまっています。
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PIXIVで小説のリクエストを募集していますが、新しいのが来ました。
その前に、募集要項です。新規ページで開きます。→
さて、どんなのが来たかというと、これです。↓
----------------------------------------
ストーリイ
→田舎を訪れた男の娘が、土着信仰の清めの儀式として全裸生活を強制される。
時代設定
→現代日本
シチュエーション
→田舎の因習で常時全裸生活を強いられる少年が激しい羞恥に苦悩し、いじめや侮蔑を受けて自尊心や尊厳を奪われていく。
キャラ設定
・少年
一人称:僕。色白黒髪。中学一年生。小柄でなよなよした楊枝(fc2規制による当て字)体型。短小包茎。
内向的だが大人びた性格で強い理性を持っており、羞恥と屈辱でマゾに目覚めながらも
人間らしく服を着て、人としての尊厳を取り戻したいと常に願っている。
昔田舎に住んでいた母が神を雑に扱ったため、儀式の参加を強制される。
人間関係
・神:土着信仰の神。
御神体を蔑ろにした者が女性の場合、その子供が男子なら親子ごと呪うとされる。
解呪法は、清めの儀式として対象者の男子が全裸のまま奴隷のような扱いを村人から一定期間受けること。
・村の子供
何故か女子しかおらず、少年を好きに苛めて良いと許可を出され激しい苛めを行う。
・少女
少年に一人だけ優しくしてくれ、この土地から逃げるよう忠告する。
特定の責めのリクエスト
・少年が自分だけが全裸を強いられることに強い羞恥や屈辱を感じる。
・家に入れてもらえず、動物のように地べたで寝泊まりを強いられる。
竿と袋の根元に金属の輪を嵌められ、逃げ出さないようロープで繋がれる。
・学校に行かせてもらえず、奴隷として裸のまま荷物運びや土木作業など重労働を強いられる。
・村の子供に短小包茎をバカにされ、金属の輪につけられたロープを引っ張られ晒し者として歩く。
急流に突き落とされ溺れるが、股間のロープで引き上げられ、睾丸に体重がかかり激しい痛みに苦しむ。
・毎日のように激しい羞恥や侮蔑を浴びて自尊心や尊厳を傷つけられ続けた結果、
少年は自分の心を守るためにマゾヒズムに縋っていく。
自尊心から快楽に溺れまいとこらえていた強制自慰や愛撫に対して快楽に逆らえず溺れるようになってしまう。快楽に逆らえなくなっても自分だけ裸でいることに常に恥ずかしさを覚え続ける。
・逃げ出した少年が全裸のまま何日も森を彷徨う。
※以下は無視して頂いて問題ありません。
・少女に不思議な空間に匿われる。長い時間が経ち自分が年を取らないのか不思議に思うが少女に手コキされどうでもよくなる。
R-18男の子全裸露出奴隷ショタCFNM
----------------------------------------
まず、総合所見を。
過去には、箸棒なリクエストもありました。その点、このリクエストはそれなりに結構が整っています。が、金魚すくいの出目金な部分も。よほど上手くやらないと紙が破れますわな。
その点、常連のWILL様は、御自分でも書き始めただけあって、リクエスト一読でストーリイが浮かんできます。
いや、しかし。今回のリクエストが『普通』なのでしょう。
実は、太思いついた(エロシーンは、十年来の抱卵)ZSSSJapaneseSamuraiを、着想から記事にしていこうと『Making of 娘女敵討』を仕込み始めていたところだったので、それをこれでやっつけようと。
リクエストを出された方(以下、customer)が、自分でも書いてみたいという野望と書いて無謀と読まれるのでしたら、参考になるかも。筆者の方法論を吸収取捨選択して、その上に独自の感性(妄想)と文体をフルヘッヘンドすれば、穴勝ち竿負けするかもしれません。意味不明。
さて。これまでは「可能なら追加してほしい」というシーケンスも、ほぼすべてぶっ込んできましたが。今回の「以下は無視して~」部分は、まさしく無視します。
これを入れると、まるきり別の小説になってしまいます。
背理法的に、もし採用するとどうなるかを考えます。筆者的には、A:無限ループ、B:フルダイブVR。この2点しか思いつきませんでした。
Aの無限ループは、必然性を見出だせません。
Bは、ぱっと思いついたのが、少年は少女の(タイムシェアリング的に独立した自我を持つ)アバターという設定。少女がショタ好きの妄想マゾで、アバターの受難&マゾ堕ちに自分を重ねて……
伏線は、いろいろ考えられます。小道具でも、スマホだPCだが一切無くて、ダイヤル式黒電話とか……冒頭で「2023年8月」とか書いておけば、大本営発表だろうがHAL9000だろうが、伏線どころか露線ですな。
けど、まあ。一種の夢落ちですから、ネタバラシの瞬間に少年の悲惨が飛散します。それに、余分な描写で長くなるし。
もう、前車の轍は、600枚は懲りました。今度こそ、200枚以内に収めましょう。
<挿入>
あ、そうそう。これは決定事項ですが、この小説の地域ではスマホ電波届きません。インターネットもつなぎたくないけど、電気が来てればつながるみたいだし。いや、PLCの普及率が低いのは承知。『淫乱処女のエロエロ・デビュー』執筆当時の「ADSLも通じてないなんて、どんだけ田舎なのよ」の1行では済まない時代という、そういうことです。ま、村内LANで接続を管理してる――書くか田舎はともかく、そういう設定にしましょう。
ただ。AとBの考察も。:でも只では起きません。素敵な設定が出てきました。少女は、実は少年の全姉(父母ともに同じ)で、自覚but未経験のマゾという。実のところ、他の設定を固めていくうちに鮮明になったわけですが。
キャラ配置に関連性を持たせるというのも、劇剣に必須です。やり過ぎると、あざとくなりますが。
さて。「無視する」部分は無視して。
customerは、気楽に(ではなかったら、御免なさい)、村には女の子ばかりと指定していますが。大人は、どうなの?
十数年前に異変が起こって……だから、少年の一家が村を出たというのもアリナミン。
けど、素直に。大人も大半が女という、それが数百年の過去から。アマゾネス設定です。昔は、男児が生まれたら間引くか捨子か養子。今は生前検査で中絶。
ああ、これで少年が男の娘なのも合理的(かなあ)に説明できます。母親が検査結果を偽って(亭主は、下記の設定で言いなり)出生届も女児にして。生まれてすぐからタックを施して。
タックというのは、玉を体内に押し込んで、空になった袋でチンを包んで接着するのです。
股間がきれいな一本筋になります。参考→
夜は開放するとしても、体内でタマが高温になって、発育不全。短小包茎の説明にもなります。
このようにして、設定に合理性もどきを作り込んでいくのです。
で、まあ。隠しきれなくなって、夫婦で村から逃げる。でも、その家の後継ぎは必要だし、さいわいに長女は祖母に懐いているので、置いてきぼり。これで、customer指定の女の子が少年にアンビバレントな感情を持つのも当然ですわな。
戸籍が女だから、学校でも女の子として通すのです。
さて、アマゾネス設定の続き。今回の記事は、いつも以上にあっち飛びこっち飛びしますが、思考過程を追っているので、やむを得ません。覚悟しておいてください。
じゃあ、子作りはどうしてるかというと。外へ出て子種を――では、村に男が居なくなる。誰が少年を犯すんだよ。ペニバンだけじゃ味気無い。
近在の村から納得ずくで婿に来てもらうとか、たまたま迷い込んだ学生をたぶらかすとか。一夫多妻です。ハーレムじゃなくて種馬です。どれだけ種が交じっても、女の子だけなので近親姦の問題はありません。
女系村落です。その由来は、先の戦争で落ち延びた高貴な姫君と女官たちでデンデンカンカン。
<余談>京都の人が「こないだの戦で家を焼かれましてな」。あれ、京都は空襲されなかったはず――と、よくよく話を聞いてみれば、こないだの戦とは、応仁の乱のことだったとか。</余談>
これに信仰を絡めて。神主が居なくて神子ばかり。どの家の女も非処女を含めて神子の潜在的資格があって。でも、家の格で順番が。
これに絡めて。明治初頭の全国民戸籍制度のとき。村の大半が藤原と立花じゃあ煩わしいってんで。家の格に従って、一宮・二宮・三宮・良宮・御宮・陸宮……お遊びです。
次は、宗教の設定です。「土着信仰」ですから、人里離れたサティアンは設定のOut of rangeです。土着信仰となれば、うん、金精様とか道祖神(厳密には別物)とか。ばかでかい御神体だけでなく、大小の脇侍が何十体。石も木も近年のバイブも。これで、実際的に神様に操を捧げられますな。
じゃあ、少年の御祓の最後(完了)も決まりますな。太めのやつに貫かれて、トコロテン。神聖な儀式で粗相があってはならないからと、事前に特訓です。強制自慰、男衆による慣熟運転GANGBANGともいう。
女の子による虐めも、修行に位置づけましょう。川に突き落とされるのは水垢離です。
問題は奴隷労働。
村の日常生活は、少年抜きで完結しています。何十年ぶりかの『儀式』が割り込む余地がないのです。
過酷な奴隷労働を成立させるには、そういうシステムが出来ていなければなりません。出来ていなければ(ある程度の永続性を担保して)作らなくてはなりません。前者の代表例が『1/16の牝奴隷』、『偽りの殉難』です。後者は『強制入院マゾ馴致』、『未通海女哭虐』、『性少年包弄記』あたり。
つまり、短期滞在(予定)者に日常的な労働を担わせるのは不合理なのです。
駄菓子案山子。実は無問題。もっとも屈辱的な労働とは、生産に寄与しない無駄働きなのです。穴を掘らせて、その中に当人を――じゃなくて、また穴を埋めさせるのです。『大正弄瞞』に、二つの蔵の間で米俵を往復させる虐めが出てきます。先日脱稿した『特別娼学性奴』でも。Progress Report→
無駄な労働のポピュラーな例としては、歯ブラシでトイレの床掃除ですか。欧米の軍隊で(残念ながら男の新兵に、ですが)実際にあったのかなかったのか。SM画像なら、全裸の女の子です。さらに屈辱を増すなら、四角いブラシを口に咥えさせて縛り付けるとか。
というわけで。米俵あたりを蔵から神前に奉納ですね。鞭で督励してもよろしい。積み上げたら、また蔵に戻させる。
これで、リクエストの内容はおおむねカバー出来ました。
ついでに。少年が村を訪れる理由とかを。
ルーツを訪ねて、ではいけません。事前に親に相談したら反対されます。それに逆らう動機が必要。さらに、親が警察に相談しない理由とか。ごちゃごちゃ積み上げるより。
一家の居所は把握されていて。村からの使者。
「今は事情も変わっている。ほんの形だけ。十日間も儀式の真似事をすれば、それですべて帳消しになるから」
母親もそれを信じて。積極的に送り出す。
実際には、修行を失敗するたびに、何日かずつ増やされて。しかも、最後に神様に精を捧げる儀式に失敗して、さらに1か月とか。
これに絶望して、森へ逃げ込むんですね。バス停(徒歩1時間)までの道は見張られてるから、迂回しようとして迷う。
しかしね。あっさりと「森を彷徨う」て書いてくれますけど。全裸ですよ。冬なら凍死、他の季節なら虫に刺されます。痒いどころか命にかかわります。
地べたに寝かせるのも同じですが、少年が一定期間行方不明になっても騒がれないよう、夏休みを利用するので、凍死はありません。傷口を含めて防虫スプレーで、周囲では昔ながらの蚊遣りを焚いて、ついでに煙責め。
しかし、森の中ねえ。何日もねえ。
うん、これは無理です。森の中を数時間、あちこち迷いながら。最後には、村の外まで引き回されているときに見ていた廃屋に隠れましょう。
神事に失敗して、折檻されて、いつものように玉竿環を縄で樹あたりにつながれて。勝手にほどかないように後ろ手縛り(デフォルトですな)。ずっと同じ縄を使ってたので摩り切れかけてたかな。つまり、深夜に村から逃げて。
ああ、この村の特殊性は知れ渡っていて、今思いついたけど、何百年の歴史の結果、周辺の山も村の物になっていて、入会権とかで、村を怒らせると面倒。なので。近在の村から駐在さんがパトロールに立ち寄って、全裸で引き回されている少年を見ても「六十年ぶりの神事ですか。御苦労様」。
この、末端警察は見て見ぬ振りパターンは、濠門長恭作品では枚挙に毎度ですな。
それでも、少年の浅知恵で、朝一番のバスで運転手さんに事情を話せば町まで乗せていってもらえるかな。町まで逃げれば何とかなる。逆にいえば、もし捕まっても、まさか殺されはしない。厳しく折檻されるだけだと――すでにマゾ堕ちしてる少年は勃起させて、まだ嵌められている竿玉枷に締め付けられて(内側に刺?)、さらにカチコチ。
このマゾ堕ちも、customerの設定にgood tea question=いい茶問がありますが。その前に、森の中の決着すなわち大団円を。
少年の脱走はすぐに気づかれるが。どうせバスに助けを求めて運転手に捕まるか、隣村まで逃げても同じこと。森の中で泣いてるかな。朝になったら救助に行ってやろう、くらいに構えている。
書き忘れてましたが、少年一人称なので、彼に対して隠されている設定には言及できません。読者がそれとなく推察出来るような形に持っていくには、相応の技量が必要です。それが筆者にあるかないかは、作品で判断してください。
大人たちがのんびり構えているうちに、少女は行動を起こします。隠れていそうな場所をしらみ潰しか、引き回しのあたりでさりげなく隠れ場所の候補を示唆しておくか。
ともかく。少年を見つけて。閉鎖空間に若い男女が二人きり。姉弟とはいえ、少年に実感は無く。
彼女は一宮家の娘。神子頭の筆頭候補。今は二宮家が神子頭だが、本来は一宮のもの。
でも、なりたくない。だって、マゾなんだもん。
もしも、姉弟でまぐわったりしたら、男児出産どころのケガレでは済まない。生涯の御祓。
そう聞かされて。理性は金切り声なのに、憧れも感じる少年。だって、マゾなんだもん。
短い葛藤とか姉の誘惑とか。
姉への思慕が高まるシーケンスは事前にね。
そして。結ばれて。外に足音話し声が聞こえても、腰は止まらない。戸が蹴破られた瞬間に二人揃って絶頂。
姉が処女か、神に捧げてるかは、要検討。
ということで、PLOTも見えてきたのですが。
敢えて、ここまで触れなかった重大問題が残っています。これまでの問題は、いわばテクニカルなものです。しかし、これは――SMとはなんぞやという、根本的な問題。作者のそしてcustomerのSM観を問われる問題なのです。
それは何かというと。
・毎日のように激しい羞恥や侮蔑を浴びて自尊心や尊厳を傷つけられ続けた結果、少年は自分の心を守るためにマゾヒズムに縋っていく。
この部分です。
これについては、次の記事で論じます。
ただ。この問題はリクエストを一読した時点で把握していました。小説を書くことで、自身にも読者にも納得のいく結論を出せたらなあ――というのも、リクエストに応じた大きな動機ではあるのです。
To be continued.
Wait for next article!

画像はタックの実際。タックを紹介したリンク http://kokan.tvlife-net.com/ から拝借。
その前に、募集要項です。新規ページで開きます。→
さて、どんなのが来たかというと、これです。↓
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ストーリイ
→田舎を訪れた男の娘が、土着信仰の清めの儀式として全裸生活を強制される。
時代設定
→現代日本
シチュエーション
→田舎の因習で常時全裸生活を強いられる少年が激しい羞恥に苦悩し、いじめや侮蔑を受けて自尊心や尊厳を奪われていく。
キャラ設定
・少年
一人称:僕。色白黒髪。中学一年生。小柄でなよなよした楊枝(fc2規制による当て字)体型。短小包茎。
内向的だが大人びた性格で強い理性を持っており、羞恥と屈辱でマゾに目覚めながらも
人間らしく服を着て、人としての尊厳を取り戻したいと常に願っている。
昔田舎に住んでいた母が神を雑に扱ったため、儀式の参加を強制される。
人間関係
・神:土着信仰の神。
御神体を蔑ろにした者が女性の場合、その子供が男子なら親子ごと呪うとされる。
解呪法は、清めの儀式として対象者の男子が全裸のまま奴隷のような扱いを村人から一定期間受けること。
・村の子供
何故か女子しかおらず、少年を好きに苛めて良いと許可を出され激しい苛めを行う。
・少女
少年に一人だけ優しくしてくれ、この土地から逃げるよう忠告する。
特定の責めのリクエスト
・少年が自分だけが全裸を強いられることに強い羞恥や屈辱を感じる。
・家に入れてもらえず、動物のように地べたで寝泊まりを強いられる。
竿と袋の根元に金属の輪を嵌められ、逃げ出さないようロープで繋がれる。
・学校に行かせてもらえず、奴隷として裸のまま荷物運びや土木作業など重労働を強いられる。
・村の子供に短小包茎をバカにされ、金属の輪につけられたロープを引っ張られ晒し者として歩く。
急流に突き落とされ溺れるが、股間のロープで引き上げられ、睾丸に体重がかかり激しい痛みに苦しむ。
・毎日のように激しい羞恥や侮蔑を浴びて自尊心や尊厳を傷つけられ続けた結果、
少年は自分の心を守るためにマゾヒズムに縋っていく。
自尊心から快楽に溺れまいとこらえていた強制自慰や愛撫に対して快楽に逆らえず溺れるようになってしまう。快楽に逆らえなくなっても自分だけ裸でいることに常に恥ずかしさを覚え続ける。
・逃げ出した少年が全裸のまま何日も森を彷徨う。
※以下は無視して頂いて問題ありません。
・少女に不思議な空間に匿われる。長い時間が経ち自分が年を取らないのか不思議に思うが少女に手コキされどうでもよくなる。
R-18男の子全裸露出奴隷ショタCFNM
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まず、総合所見を。
過去には、箸棒なリクエストもありました。その点、このリクエストはそれなりに結構が整っています。が、金魚すくいの出目金な部分も。よほど上手くやらないと紙が破れますわな。
その点、常連のWILL様は、御自分でも書き始めただけあって、リクエスト一読でストーリイが浮かんできます。
いや、しかし。今回のリクエストが『普通』なのでしょう。
実は、太思いついた(エロシーンは、十年来の抱卵)ZSSSJapaneseSamuraiを、着想から記事にしていこうと『Making of 娘女敵討』を仕込み始めていたところだったので、それをこれでやっつけようと。
リクエストを出された方(以下、customer)が、自分でも書いてみたいという野望と書いて無謀と読まれるのでしたら、参考になるかも。筆者の方法論を吸収取捨選択して、その上に独自の感性(妄想)と文体をフルヘッヘンドすれば、穴勝ち竿負けするかもしれません。意味不明。
さて。これまでは「可能なら追加してほしい」というシーケンスも、ほぼすべてぶっ込んできましたが。今回の「以下は無視して~」部分は、まさしく無視します。
これを入れると、まるきり別の小説になってしまいます。
背理法的に、もし採用するとどうなるかを考えます。筆者的には、A:無限ループ、B:フルダイブVR。この2点しか思いつきませんでした。
Aの無限ループは、必然性を見出だせません。
Bは、ぱっと思いついたのが、少年は少女の(タイムシェアリング的に独立した自我を持つ)アバターという設定。少女がショタ好きの妄想マゾで、アバターの受難&マゾ堕ちに自分を重ねて……
伏線は、いろいろ考えられます。小道具でも、スマホだPCだが一切無くて、ダイヤル式黒電話とか……冒頭で「2023年8月」とか書いておけば、大本営発表だろうがHAL9000だろうが、伏線どころか露線ですな。
けど、まあ。一種の夢落ちですから、ネタバラシの瞬間に少年の悲惨が飛散します。それに、余分な描写で長くなるし。
もう、前車の轍は、600枚は懲りました。今度こそ、200枚以内に収めましょう。
<挿入>
あ、そうそう。これは決定事項ですが、この小説の地域ではスマホ電波届きません。インターネットもつなぎたくないけど、電気が来てればつながるみたいだし。いや、PLCの普及率が低いのは承知。『淫乱処女のエロエロ・デビュー』執筆当時の「ADSLも通じてないなんて、どんだけ田舎なのよ」の1行では済まない時代という、そういうことです。ま、村内LANで接続を管理してる――書くか田舎はともかく、そういう設定にしましょう。
ただ。AとBの考察も。:でも只では起きません。素敵な設定が出てきました。少女は、実は少年の全姉(父母ともに同じ)で、自覚but未経験のマゾという。実のところ、他の設定を固めていくうちに鮮明になったわけですが。
キャラ配置に関連性を持たせるというのも、劇剣に必須です。やり過ぎると、あざとくなりますが。
さて。「無視する」部分は無視して。
customerは、気楽に(ではなかったら、御免なさい)、村には女の子ばかりと指定していますが。大人は、どうなの?
十数年前に異変が起こって……だから、少年の一家が村を出たというのもアリナミン。
けど、素直に。大人も大半が女という、それが数百年の過去から。アマゾネス設定です。昔は、男児が生まれたら間引くか捨子か養子。今は生前検査で中絶。
ああ、これで少年が男の娘なのも合理的(かなあ)に説明できます。母親が検査結果を偽って(亭主は、下記の設定で言いなり)出生届も女児にして。生まれてすぐからタックを施して。
タックというのは、玉を体内に押し込んで、空になった袋でチンを包んで接着するのです。
股間がきれいな一本筋になります。参考→
夜は開放するとしても、体内でタマが高温になって、発育不全。短小包茎の説明にもなります。
このようにして、設定に合理性もどきを作り込んでいくのです。
で、まあ。隠しきれなくなって、夫婦で村から逃げる。でも、その家の後継ぎは必要だし、さいわいに長女は祖母に懐いているので、置いてきぼり。これで、customer指定の女の子が少年にアンビバレントな感情を持つのも当然ですわな。
戸籍が女だから、学校でも女の子として通すのです。
さて、アマゾネス設定の続き。今回の記事は、いつも以上にあっち飛びこっち飛びしますが、思考過程を追っているので、やむを得ません。覚悟しておいてください。
じゃあ、子作りはどうしてるかというと。外へ出て子種を――では、村に男が居なくなる。誰が少年を犯すんだよ。ペニバンだけじゃ味気無い。
近在の村から納得ずくで婿に来てもらうとか、たまたま迷い込んだ学生をたぶらかすとか。一夫多妻です。ハーレムじゃなくて種馬です。どれだけ種が交じっても、女の子だけなので近親姦の問題はありません。
女系村落です。その由来は、先の戦争で落ち延びた高貴な姫君と女官たちでデンデンカンカン。
<余談>京都の人が「こないだの戦で家を焼かれましてな」。あれ、京都は空襲されなかったはず――と、よくよく話を聞いてみれば、こないだの戦とは、応仁の乱のことだったとか。</余談>
これに信仰を絡めて。神主が居なくて神子ばかり。どの家の女も非処女を含めて神子の潜在的資格があって。でも、家の格で順番が。
これに絡めて。明治初頭の全国民戸籍制度のとき。村の大半が藤原と立花じゃあ煩わしいってんで。家の格に従って、一宮・二宮・三宮・良宮・御宮・陸宮……お遊びです。
次は、宗教の設定です。「土着信仰」ですから、人里離れたサティアンは設定のOut of rangeです。土着信仰となれば、うん、金精様とか道祖神(厳密には別物)とか。ばかでかい御神体だけでなく、大小の脇侍が何十体。石も木も近年のバイブも。これで、実際的に神様に操を捧げられますな。
じゃあ、少年の御祓の最後(完了)も決まりますな。太めのやつに貫かれて、トコロテン。神聖な儀式で粗相があってはならないからと、事前に特訓です。強制自慰、男衆による慣熟運転GANGBANGともいう。
女の子による虐めも、修行に位置づけましょう。川に突き落とされるのは水垢離です。
問題は奴隷労働。
村の日常生活は、少年抜きで完結しています。何十年ぶりかの『儀式』が割り込む余地がないのです。
過酷な奴隷労働を成立させるには、そういうシステムが出来ていなければなりません。出来ていなければ(ある程度の永続性を担保して)作らなくてはなりません。前者の代表例が『1/16の牝奴隷』、『偽りの殉難』です。後者は『強制入院マゾ馴致』、『未通海女哭虐』、『性少年包弄記』あたり。
つまり、短期滞在(予定)者に日常的な労働を担わせるのは不合理なのです。
駄菓子案山子。実は無問題。もっとも屈辱的な労働とは、生産に寄与しない無駄働きなのです。穴を掘らせて、その中に当人を――じゃなくて、また穴を埋めさせるのです。『大正弄瞞』に、二つの蔵の間で米俵を往復させる虐めが出てきます。先日脱稿した『特別娼学性奴』でも。Progress Report→
無駄な労働のポピュラーな例としては、歯ブラシでトイレの床掃除ですか。欧米の軍隊で(残念ながら男の新兵に、ですが)実際にあったのかなかったのか。SM画像なら、全裸の女の子です。さらに屈辱を増すなら、四角いブラシを口に咥えさせて縛り付けるとか。
というわけで。米俵あたりを蔵から神前に奉納ですね。鞭で督励してもよろしい。積み上げたら、また蔵に戻させる。
これで、リクエストの内容はおおむねカバー出来ました。
ついでに。少年が村を訪れる理由とかを。
ルーツを訪ねて、ではいけません。事前に親に相談したら反対されます。それに逆らう動機が必要。さらに、親が警察に相談しない理由とか。ごちゃごちゃ積み上げるより。
一家の居所は把握されていて。村からの使者。
「今は事情も変わっている。ほんの形だけ。十日間も儀式の真似事をすれば、それですべて帳消しになるから」
母親もそれを信じて。積極的に送り出す。
実際には、修行を失敗するたびに、何日かずつ増やされて。しかも、最後に神様に精を捧げる儀式に失敗して、さらに1か月とか。
これに絶望して、森へ逃げ込むんですね。バス停(徒歩1時間)までの道は見張られてるから、迂回しようとして迷う。
しかしね。あっさりと「森を彷徨う」て書いてくれますけど。全裸ですよ。冬なら凍死、他の季節なら虫に刺されます。痒いどころか命にかかわります。
地べたに寝かせるのも同じですが、少年が一定期間行方不明になっても騒がれないよう、夏休みを利用するので、凍死はありません。傷口を含めて防虫スプレーで、周囲では昔ながらの蚊遣りを焚いて、ついでに煙責め。
しかし、森の中ねえ。何日もねえ。
うん、これは無理です。森の中を数時間、あちこち迷いながら。最後には、村の外まで引き回されているときに見ていた廃屋に隠れましょう。
神事に失敗して、折檻されて、いつものように玉竿環を縄で樹あたりにつながれて。勝手にほどかないように後ろ手縛り(デフォルトですな)。ずっと同じ縄を使ってたので摩り切れかけてたかな。つまり、深夜に村から逃げて。
ああ、この村の特殊性は知れ渡っていて、今思いついたけど、何百年の歴史の結果、周辺の山も村の物になっていて、入会権とかで、村を怒らせると面倒。なので。近在の村から駐在さんがパトロールに立ち寄って、全裸で引き回されている少年を見ても「六十年ぶりの神事ですか。御苦労様」。
この、末端警察は見て見ぬ振りパターンは、濠門長恭作品では枚挙に毎度ですな。
それでも、少年の浅知恵で、朝一番のバスで運転手さんに事情を話せば町まで乗せていってもらえるかな。町まで逃げれば何とかなる。逆にいえば、もし捕まっても、まさか殺されはしない。厳しく折檻されるだけだと――すでにマゾ堕ちしてる少年は勃起させて、まだ嵌められている竿玉枷に締め付けられて(内側に刺?)、さらにカチコチ。
このマゾ堕ちも、customerの設定にgood tea question=いい茶問がありますが。その前に、森の中の決着すなわち大団円を。
少年の脱走はすぐに気づかれるが。どうせバスに助けを求めて運転手に捕まるか、隣村まで逃げても同じこと。森の中で泣いてるかな。朝になったら救助に行ってやろう、くらいに構えている。
書き忘れてましたが、少年一人称なので、彼に対して隠されている設定には言及できません。読者がそれとなく推察出来るような形に持っていくには、相応の技量が必要です。それが筆者にあるかないかは、作品で判断してください。
大人たちがのんびり構えているうちに、少女は行動を起こします。隠れていそうな場所をしらみ潰しか、引き回しのあたりでさりげなく隠れ場所の候補を示唆しておくか。
ともかく。少年を見つけて。閉鎖空間に若い男女が二人きり。姉弟とはいえ、少年に実感は無く。
彼女は一宮家の娘。神子頭の筆頭候補。今は二宮家が神子頭だが、本来は一宮のもの。
でも、なりたくない。だって、マゾなんだもん。
もしも、姉弟でまぐわったりしたら、男児出産どころのケガレでは済まない。生涯の御祓。
そう聞かされて。理性は金切り声なのに、憧れも感じる少年。だって、マゾなんだもん。
短い葛藤とか姉の誘惑とか。
姉への思慕が高まるシーケンスは事前にね。
そして。結ばれて。外に足音話し声が聞こえても、腰は止まらない。戸が蹴破られた瞬間に二人揃って絶頂。
姉が処女か、神に捧げてるかは、要検討。
ということで、PLOTも見えてきたのですが。
敢えて、ここまで触れなかった重大問題が残っています。これまでの問題は、いわばテクニカルなものです。しかし、これは――SMとはなんぞやという、根本的な問題。作者のそしてcustomerのSM観を問われる問題なのです。
それは何かというと。
・毎日のように激しい羞恥や侮蔑を浴びて自尊心や尊厳を傷つけられ続けた結果、少年は自分の心を守るためにマゾヒズムに縋っていく。
この部分です。
これについては、次の記事で論じます。
ただ。この問題はリクエストを一読した時点で把握していました。小説を書くことで、自身にも読者にも納得のいく結論を出せたらなあ――というのも、リクエストに応じた大きな動機ではあるのです。
To be continued.
Wait for next article!

画像はタックの実際。タックを紹介したリンク http://kokan.tvlife-net.com/ から拝借。
Progress Report Final :『特別娼学性奴』
無事脱稿しました。ベタ打ち632枚/21万8千文字。
ベタ打ちというのは、章ごとに改ページとかせず、章の終わりから2行明けて次の章題、そこから1行明けて本文――を繰り返した状態です。今回はマルチエンディングのための改頁とか、他にも騙し絵的イタズラを目論んでいるので。着膨れするでしょう。
ヒロイン本人は、「わたくしは変態マゾヒストではありません」て、最後まで(どのエンドでも)突っ張っていますが、まあ、無理矢理「自覚」しないように努めてるフシはありあり――と、読んでくださることを期待しましょう。
屈辱で腰の奥が炎の渦巻と化しても、「女は子宮でものを考えるといいますけど、その通りです」なんて逃げてるけど。完全な嫌悪とか義憤だと、胸いっぱいに鉛のように重たく氷のように冷たい塊が生じるのです。最後には炎と氷とがアウフヘーベンして、犯されて心底嫌悪してても性感を刺激されてエベレスト(8,848m)に押し上げられていたのが、とうとう火星のオリュンポス(27,000m)のてっぺんから宇宙へ向けて発射されたりしますからねえ。
ま、解釈は読者に委ねます。

ちょこっと息抜きにBFをやっつけました。
すでに午後2時。5時くらいからは大悦糖を気にしつつ晩爵様です。
書きながら漢字チェック(常用漢字+SM漢字)がてら一次校訂はしてあるので、二次は明日からですが、校訂はスマホの無料WORDでは困難です。ので、早起きしてちょこっとやって。まあ、10,11が連休ですから600枚を300分で校訂……できるかな?
せっかくPIXIVでもジャンプできるから、こうなったら本文も[[rb:紅玉>ruby]]に開きますか。今回は数百カ所のルビですから。しかし、14日も休日だから、大丈夫でしょう。13日は紙飛行機です。
そだ。これから2枚/分で校訂できるか何十枚かは確認しておきましょう。
ベタ打ちというのは、章ごとに改ページとかせず、章の終わりから2行明けて次の章題、そこから1行明けて本文――を繰り返した状態です。今回はマルチエンディングのための改頁とか、他にも騙し絵的イタズラを目論んでいるので。着膨れするでしょう。
ヒロイン本人は、「わたくしは変態マゾヒストではありません」て、最後まで(どのエンドでも)突っ張っていますが、まあ、無理矢理「自覚」しないように努めてるフシはありあり――と、読んでくださることを期待しましょう。
屈辱で腰の奥が炎の渦巻と化しても、「女は子宮でものを考えるといいますけど、その通りです」なんて逃げてるけど。完全な嫌悪とか義憤だと、胸いっぱいに鉛のように重たく氷のように冷たい塊が生じるのです。最後には炎と氷とがアウフヘーベンして、犯されて心底嫌悪してても性感を刺激されてエベレスト(8,848m)に押し上げられていたのが、とうとう火星のオリュンポス(27,000m)のてっぺんから宇宙へ向けて発射されたりしますからねえ。
ま、解釈は読者に委ねます。

ちょこっと息抜きにBFをやっつけました。
すでに午後2時。5時くらいからは大悦糖を気にしつつ晩爵様です。
書きながら漢字チェック(常用漢字+SM漢字)がてら一次校訂はしてあるので、二次は明日からですが、校訂はスマホの無料WORDでは困難です。ので、早起きしてちょこっとやって。まあ、10,11が連休ですから600枚を300分で校訂……できるかな?
せっかくPIXIVでもジャンプできるから、こうなったら本文も[[rb:紅玉>ruby]]に開きますか。今回は数百カ所のルビですから。しかし、14日も休日だから、大丈夫でしょう。13日は紙飛行機です。
そだ。これから2枚/分で校訂できるか何十枚かは確認しておきましょう。
Progress Report 7:『特別娼学性奴』
くそ忙しいのに、また新たな趣向を考えついてしまって。というか、WORDの機能にあったのに気づかなかった。
どんな趣向かは、小説内容紹介の最後にあります。
明るいミニマム(暗いマックスの反対??)の『Showtime』は、製品版でのお愉しみ。ということは、約1名様を除いて1年ほどお待ちいただくわけですが。
========================================
Sequel
講堂での実演で、セカンダリー生徒全員が見物する中で、それまでにない激しいオーガズムを迎えて――それくらいのことで、わたくしの尊厳が打ち砕かれたりはしませんでした。少なくとも、わたくしの中では。
生徒たちは、以前よりおおっぴらに、セキスパート生徒を求めるようになりました。クリスマス休暇前の中間テストでは、前年に比べて平均点が一割も上がりました。ことに、それまでは目立たなかった生徒の中に、めきめきと頭角を現わした人が何人も出現しました。セキスパート生徒が三人から七人に増えて、その一人ずつの『受け容れ能力』が訓練と実践で増えたこともあり、成績上位者へのボーナス枠が大奮発されたことも生徒の発奮をうながしたのです。
男女を問わず各科目の上位三人には、一日デート権が与えられました。総合成績は男子が上位五名、女子は二名。同じようにデート権です。文系、理系と別れたコース別の成績にも権利が与えられたので、合計数は七十を超えました。七人のSS生徒一人あたり十回のデートです。
学園の公認ではないけれど、デート権のオークションも黙認されましたから、ひとりで複数の権利を得た人は、ちょっとしたお小遣いもせしめたのです。五つ以上の権利を獲得したエースのひとりは、五人の女子をすべて制覇するという勇猛果敢を発揮しました。
さいわいに変態的趣味を持った生徒は居ませんでしたので、わたくしも安心して奉仕出来ました。けれど、初心者が多いから――腰の奥に生じる炎の渦巻は、ごくささやかなもので、もちろん不満など感じませんでしたけれど、なんとなく寂しい思いをしたのは……
話題を変えます。
年が開けると、頻繁に外部から臨時講師が招かれるようになりました。泡の国の技術よりもレパートリーが広かったり、奥が深かったり、純粋に習得が難しかったりするジャンルばかりでしたので、二か月の集中特訓が平均的な講義になりました。
視覚的に男性を楽しませる技術としては、ストリップティーズに始り、ベリーダンスやポールダンス。ベッドテクニックとしては、オリエントの幾つかの流儀。カーマ・スートラとか、白黒裏表九十六体位とかです。
わたくしの自負をぺしゃんこにしてくれたのは、ダンス系の技術でした。リズム感がまったく違うので、社交ダンスで培った身体さばきが、まったく通用しなかったのです。
逆に、あまり熱心でもなかった美術クラブの経験は、おおいに役立ちました。これもチャーパンから招いた、リュウナ・ヒシノ嬢による花電車(decolated tram)という……狭い舞台で行なわれるショーです。花電車は見物専用で、お客は乗せません。膣を使う特殊技術です。
腹筋を利用して膣に空気を出し入れさせて、吹奏楽器を演奏したり吹矢を飛ばしたりします。もっと単純に(もっと難しいのですが)膣にコインとか卵を何個も挿れて、手を使わずに膣の筋肉だけで、ひとつずつ取り出して見せるとか。そういった芸当のひとつに、膣にペイントブラシをくわえて、腰の動きだけで文字を書くというのがあります。しゃがんで後ずさりながら書き進めるのですが、縦書きのチャーパン文字ならともかく、横書きのアルファベットですと右に九十度回転させなければなりません。他の六人が四苦八苦する中、わたくしだけは簡単にマスターしました。スケッチの空間把握能力とデッサン力が物を言ったのです。他人に抜きん出ると、もっと究めてやろうという意欲が出ます。じきにわたくしは、二本のペイントブラシを使い分けて同時に二行の文章を書けるまでに上達しました。しかも、普通のペイントブラシを使ってです。というのは、陰茎並みの太さのあるほうがグリップが安定するからです。細い柄でじゅうぶん保持できるというのは、それだけ膣の(肛門も)締まりが良いということですから、自慢出来ます。
二本の筆を使い分けると言いました。ですから、他の技は女子生徒専用ですが、文字を書くのはチャーリイとヌビアンも出来るようになりました。余談です。
外部講師の集中講座がないときは、課外活動です。ポルノビデオの観賞に加えて、膣や肛門のトレーニングも始まりました。わたくしたちは若いですし、本職の売春婦ほどには使い込みませんから不要だとは思いますけれど。血圧計を応用した膣圧計で数字が示されると、やりがいはあります。実は、わたくしがいちばん使用頻度が多いのですけれど――頑張って、常にトップの数字を維持しています。
補習で二期生が悪い成績を取ったときにわたくしまで罰せられるシステムは、ずっと続けられました。なにかにつけて口実を設けては、わたくしに(だけ)体罰を加えるのも慣例化しましたし、長期休暇中も学園に軟禁されて(他い行く場所もありません)、不要不急の労働にこき使われるのも続きました。
何度か視察に来たノートンにこびれば、「どうか可愛がってください」と懇願すれば、理不尽な仕打ちは終わっていたでしょうけれど。わたくしの処女を(三つとも)奪い、母様を売春婦に堕とした男にこびることなど、わたくしの最後のプライドが許しませんでした。
それに。いちばん一緒に居る時間の長い他のSS生徒からの意地悪は、自然に無くなっていきました。なんといっても、まともな教科での補習は、わたくしが教師なのですから。
ただ――チャーリイとジニアからの意地悪は、飽きることなく続けられました。わたくしが二人の上に君臨していた期間は四年以上ですから、少なくともY11までは続くのでしょうね。夜毎に手錠で拘束されるのが続いたせいで、手首にも足首にも、半永久的に残るかもしれない痕が付いてしまいました。いえ、ただ装着するだけならそんなことにはなりません。チャーリイには三年間同じように着けさせて、なんともなっていません。わたくしにだけ痕が残ったのは、力を込めて手錠を引っ張ったりするからです。なぜそんなことをするかというと、チャーリイとジニアがいろんな意地悪を仕掛けてくるからです。貞操帯が無くなってからは、すこし酷くなりましたし。
手足を強制的に広げさせられて眠るのも、一般生徒に視姦されたり挨拶代わりに胸をもまれお尻をなでられ膣に指を挿れられるのにも、取りに足りない落ち度を理由に教鞭でたたかれるのにも、いつの間にかすっかり慣れてしまいました。
長期休暇中に課される無意味な重労働は苦痛ですが、その代わり(チャーリイとジニアが居ないので)手足を丸めて眠れるし寝返りも自由に打てますから、そんなにつらくはない。運動クラブの特訓で身体を鍛えているのと同じ――と、前向きに考えるようにしています。
夏休み中のことも、もうすこしお話ししておきましょう。
SS生徒はチャーリイとジニアを除いて、帰省を許されていません。家庭が無い子もいますし、あっても悪い道へ引き戻されかねないからです。普段通りに特別寮に寝泊まりをして、ここぞとばかりに補習浸けにされます。わたくしは重労働をさせられているので、ほぼ全面的に自習ですが、みんな一生懸命です。息抜きに郊外でのキャンプとか、近在の街に泊りがけで遊びに行くとかもします。すべて、教師の監督付きですけれど。
もちろん、わたくしだけは例外です。どころか、夏休み中は特別寮からも追い出されて、昔の物置小屋で寝なければなりません。もう、もっともらしい口実も無し。ノートンの格別のごひいきと、はっきり宣告されました。権力者に逆らうとどうなうかという、他のSS生徒に対する見せしめを兼ねているのです。
夏休みはしのげましたけれど、クリスマス休みは最悪でした。さすがに屋外での全裸(無意味)重労働こそありませんでしたが、校舎内の掃除でも大変でした。なにしろ暖房が切られています。そしてわたくしは、乳房も股間も冷たい空気の中に露出しています。もしも腰の奥が羞恥と屈辱に熱くなっていなければ風邪を引いて肺炎になっていたかもしれません。
そんな過酷で恥辱にまみれた奴隷生徒あるいは特別虐待生徒としての生活にも、次第に順応していきました。順応してしまったから、すこしくらい性的に刺激されたって平気になりました。女性器を教鞭でたたかれても、以前ほど羞恥や恐怖で腰が熱くはなりません。三人の教師が示した悪いお手本をデートのときに真似する生徒もいますけれど、みんな早漏ですから、エベレストにすら登頂出来ません。
いえ、オリュンポスにまで登りたいとは、まったく思っていません。
一年に四回まで増えた参観日というか視察では、何人もの来賓と『歓談』をしますけれど。彼らのうちの一部は教師よりもずっとタフで、わたくしを宇宙まで打ち上げるのですけれど。わたくしがそれを心待ちにしているかというと、そんなことは絶対にありません。強制的に麻薬を注射されれば、わたくしの意思とは関わりなくオーガズムを貪ってしまいます。
ですが、みずから注射器に手を伸ばしたりはしません。わたくしは魂の高潔まで失ったわけではないのです。
それは校長も見抜いているようです。わたくしを屈服させるつもりでしょうか。来賓の中で特殊な性癖をお持ちの方を接待させられるのは、だいたいにおいてわたくしでした。縄で縛られるのも、猛獣に使うような長い一本鞭で全身をたたかれるのも、溺死寸前までバスタブに沈められるのも、敏感な部位に高電圧(もっとも残酷な方はワニグチクリップを使いました)を流されるのも体験しました。いずれの場合も、絶叫して号泣して赦しを乞いました。心の底からではありません。お客がそれを望んでいると分かったからです。
サディストの餌食にはされましたけれど、基本的には『接待』であり『歓談』です。つまり、時間の限られたプレイです。しかも、そういったお客は監視カメラで見張るようになったので、残念なことに入院して安楽に過ごす機会はありませんでした。
もちろん、サディストの餌食にされるのはわたくしだけではありません。どんなジャンルにでも就職できるようにと、全員が経験を積まされました。わたくしがいちばん多かったというだけのことです。
逆に、わたくしがほとんど命じられなかったのは、マゾヒストの来賓の接待です。これは、わたくしの運命が最終的に定まってから思い当たったのですが――かなり早い時期に、わたくしの就職先が決められていたのではないかと思います。これについては、後でお話しするかもしれません。
季節は移ろっても、性的に虐待され搾取される日々は変わりません。
わたくしの波乱万丈ながら単調な一年のうちで、もっとも大きなアクセントは、クリスマスカードです。母様とは基本的に音信不通なのですが、クリスマスカードだけは弁護士のハバクック氏が届けてくれました。わたくしにはクリスマスカードを買うお金もありませんし、ハバクック氏は伝言も頼まれてくれません。
Y8のときのクリスマスカードは、こうでした。
特別奨学生の仕組は、わたくしも知りませんでした。
わたくしよりも辛い目に遭っているのですね。どれだけ謝罪の言葉を尽くしても足りません。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
一年でも早く借金を返済して、きっとあなたを迎えに行きます。
愛娘アイリスへ、愛を込めて。
メリー
謝罪の文字は涙でにじんでいました。
たとえ何千語を連ねても、母様は思いを伝えきれなかったでしょう。たとえ一語でも、わたくしには掛け替えのないメッセージです。そして、母様の署名は――これ以上はないほどの決意の表われだと思います。「メリー」とだけ。子爵未亡人でもなく、伯爵令嬢でもなく――ただ一個人としてのメリー。我が身ひとつで難局を克服するという決意です。
ですが一年後、Y9のときのクリスマスカードは、わたくしを不安にさせました。
今年もクリスマスの季節になりました。
神様の恵みが、常にあなたの上にありますように。来年のクリスマスまでには、
愛娘アイリスへ、愛を込めて。
メリー
まるきり素っ気ないカードです。母様に何かあったのではないかと心配になりましたけれど、事情を知っているらしいハバクック弁護士は何も教えてくれませんでした。
母様のことを考えると、不安で胸が締めつけられるだけです。熱い渦巻も冷たい氷塊も生じず、ただ虚ろに。
他のSS生徒のこともお話ししておきましょう。
わたくしがY8を終了したときには、ヌビアンが卒業しましたけれどアビリアは卒業せず、延長教育のSS生徒第一号になりました。そして、三期生が三人加わりました。このときから、貞操帯は廃止されました。処女膜を残している子はいませんでしたし、肛門も陰茎も『未使用』の証拠なんて無いですものね。わたくしのアナルバージンにノートンがこだわったとばっちりだとすると、二期生に申し訳ないです。チャーリイとジニアには申し訳なくないです。
Y9の終了時にはウラニアが卒業してアビリアも中途退学で就職して去りました。フュリーは延長教育です。四期生は一気に五人が入りました。これでSS生徒の総数は十二人の定員に達しました。
そして、わたくしは誕生日を過ぎて――Y10になろうとしています。Y13の卒業まで、まだ四年も残っています。
そうそう。わたくしの胸は、昔のジニアよりも大きくなりました。グレープフルーツを赤道で割ったくらいの感じです。
Select ENDING
←Sacrifice END
Sacrifice END
製品版をお読みください。

Saitsfice END
せいひんばんをおよみください。

Sadistics END
セイヒンバンヲオヨミクダサイ。

========================================
デュアルENDは『非国民の烙淫』に先例があります。変形としては『悦虐へのエチュード』も。
ですが、「ひとつ、ふたつ……たくさん」マルチENDは初の試み。まあ、文書内ジャンプのために、三つ目のENDは強引に取って強引に着けたわけですけど。
この文書内ジャンプは、PIXIVでは使えません。
pdfとepubで機能するのは昨日確認しました。
現在585枚で、SacrificeENDが終わるところです。それぞれのENDは短いので、まあ、全部で600枚ちょっとになるでしょう。
オムニバス『非情と淫虐の上意』、『いじめられっ娘二重唱』、『生贄王女と簒奪侍女』、一粒で三度おいしい『Family SM Triangle』に次ぐ長さです。『大正弄瞞』613枚、『縄と鞭の体育補習』609枚は確実に抜くでしょう。
1か月半で、よくもまあ。
リクエスト募集要項では「100枚前後」と謳っているのですから、次からは200枚に収めるようにしたいものですけれど……依頼があって、お仕事として書くのではなくて。依頼に妄想竹を増殖させて、「我が赴くはG線上の大地」なのですから。
遥か未来のPonpoko(トランター抜き)は決まり手はウッチャリ。7/7の休日脱稿を目処に、燃料尽きるまでリヒート装置全開!
どんな趣向かは、小説内容紹介の最後にあります。
明るいミニマム(暗いマックスの反対??)の『Showtime』は、製品版でのお愉しみ。ということは、約1名様を除いて1年ほどお待ちいただくわけですが。
========================================
Sequel
講堂での実演で、セカンダリー生徒全員が見物する中で、それまでにない激しいオーガズムを迎えて――それくらいのことで、わたくしの尊厳が打ち砕かれたりはしませんでした。少なくとも、わたくしの中では。
生徒たちは、以前よりおおっぴらに、セキスパート生徒を求めるようになりました。クリスマス休暇前の中間テストでは、前年に比べて平均点が一割も上がりました。ことに、それまでは目立たなかった生徒の中に、めきめきと頭角を現わした人が何人も出現しました。セキスパート生徒が三人から七人に増えて、その一人ずつの『受け容れ能力』が訓練と実践で増えたこともあり、成績上位者へのボーナス枠が大奮発されたことも生徒の発奮をうながしたのです。
男女を問わず各科目の上位三人には、一日デート権が与えられました。総合成績は男子が上位五名、女子は二名。同じようにデート権です。文系、理系と別れたコース別の成績にも権利が与えられたので、合計数は七十を超えました。七人のSS生徒一人あたり十回のデートです。
学園の公認ではないけれど、デート権のオークションも黙認されましたから、ひとりで複数の権利を得た人は、ちょっとしたお小遣いもせしめたのです。五つ以上の権利を獲得したエースのひとりは、五人の女子をすべて制覇するという勇猛果敢を発揮しました。
さいわいに変態的趣味を持った生徒は居ませんでしたので、わたくしも安心して奉仕出来ました。けれど、初心者が多いから――腰の奥に生じる炎の渦巻は、ごくささやかなもので、もちろん不満など感じませんでしたけれど、なんとなく寂しい思いをしたのは……
話題を変えます。
年が開けると、頻繁に外部から臨時講師が招かれるようになりました。泡の国の技術よりもレパートリーが広かったり、奥が深かったり、純粋に習得が難しかったりするジャンルばかりでしたので、二か月の集中特訓が平均的な講義になりました。
視覚的に男性を楽しませる技術としては、ストリップティーズに始り、ベリーダンスやポールダンス。ベッドテクニックとしては、オリエントの幾つかの流儀。カーマ・スートラとか、白黒裏表九十六体位とかです。
わたくしの自負をぺしゃんこにしてくれたのは、ダンス系の技術でした。リズム感がまったく違うので、社交ダンスで培った身体さばきが、まったく通用しなかったのです。
逆に、あまり熱心でもなかった美術クラブの経験は、おおいに役立ちました。これもチャーパンから招いた、リュウナ・ヒシノ嬢による花電車(decolated tram)という……狭い舞台で行なわれるショーです。花電車は見物専用で、お客は乗せません。膣を使う特殊技術です。
腹筋を利用して膣に空気を出し入れさせて、吹奏楽器を演奏したり吹矢を飛ばしたりします。もっと単純に(もっと難しいのですが)膣にコインとか卵を何個も挿れて、手を使わずに膣の筋肉だけで、ひとつずつ取り出して見せるとか。そういった芸当のひとつに、膣にペイントブラシをくわえて、腰の動きだけで文字を書くというのがあります。しゃがんで後ずさりながら書き進めるのですが、縦書きのチャーパン文字ならともかく、横書きのアルファベットですと右に九十度回転させなければなりません。他の六人が四苦八苦する中、わたくしだけは簡単にマスターしました。スケッチの空間把握能力とデッサン力が物を言ったのです。他人に抜きん出ると、もっと究めてやろうという意欲が出ます。じきにわたくしは、二本のペイントブラシを使い分けて同時に二行の文章を書けるまでに上達しました。しかも、普通のペイントブラシを使ってです。というのは、陰茎並みの太さのあるほうがグリップが安定するからです。細い柄でじゅうぶん保持できるというのは、それだけ膣の(肛門も)締まりが良いということですから、自慢出来ます。
二本の筆を使い分けると言いました。ですから、他の技は女子生徒専用ですが、文字を書くのはチャーリイとヌビアンも出来るようになりました。余談です。
外部講師の集中講座がないときは、課外活動です。ポルノビデオの観賞に加えて、膣や肛門のトレーニングも始まりました。わたくしたちは若いですし、本職の売春婦ほどには使い込みませんから不要だとは思いますけれど。血圧計を応用した膣圧計で数字が示されると、やりがいはあります。実は、わたくしがいちばん使用頻度が多いのですけれど――頑張って、常にトップの数字を維持しています。
補習で二期生が悪い成績を取ったときにわたくしまで罰せられるシステムは、ずっと続けられました。なにかにつけて口実を設けては、わたくしに(だけ)体罰を加えるのも慣例化しましたし、長期休暇中も学園に軟禁されて(他い行く場所もありません)、不要不急の労働にこき使われるのも続きました。
何度か視察に来たノートンにこびれば、「どうか可愛がってください」と懇願すれば、理不尽な仕打ちは終わっていたでしょうけれど。わたくしの処女を(三つとも)奪い、母様を売春婦に堕とした男にこびることなど、わたくしの最後のプライドが許しませんでした。
それに。いちばん一緒に居る時間の長い他のSS生徒からの意地悪は、自然に無くなっていきました。なんといっても、まともな教科での補習は、わたくしが教師なのですから。
ただ――チャーリイとジニアからの意地悪は、飽きることなく続けられました。わたくしが二人の上に君臨していた期間は四年以上ですから、少なくともY11までは続くのでしょうね。夜毎に手錠で拘束されるのが続いたせいで、手首にも足首にも、半永久的に残るかもしれない痕が付いてしまいました。いえ、ただ装着するだけならそんなことにはなりません。チャーリイには三年間同じように着けさせて、なんともなっていません。わたくしにだけ痕が残ったのは、力を込めて手錠を引っ張ったりするからです。なぜそんなことをするかというと、チャーリイとジニアがいろんな意地悪を仕掛けてくるからです。貞操帯が無くなってからは、すこし酷くなりましたし。
手足を強制的に広げさせられて眠るのも、一般生徒に視姦されたり挨拶代わりに胸をもまれお尻をなでられ膣に指を挿れられるのにも、取りに足りない落ち度を理由に教鞭でたたかれるのにも、いつの間にかすっかり慣れてしまいました。
長期休暇中に課される無意味な重労働は苦痛ですが、その代わり(チャーリイとジニアが居ないので)手足を丸めて眠れるし寝返りも自由に打てますから、そんなにつらくはない。運動クラブの特訓で身体を鍛えているのと同じ――と、前向きに考えるようにしています。
夏休み中のことも、もうすこしお話ししておきましょう。
SS生徒はチャーリイとジニアを除いて、帰省を許されていません。家庭が無い子もいますし、あっても悪い道へ引き戻されかねないからです。普段通りに特別寮に寝泊まりをして、ここぞとばかりに補習浸けにされます。わたくしは重労働をさせられているので、ほぼ全面的に自習ですが、みんな一生懸命です。息抜きに郊外でのキャンプとか、近在の街に泊りがけで遊びに行くとかもします。すべて、教師の監督付きですけれど。
もちろん、わたくしだけは例外です。どころか、夏休み中は特別寮からも追い出されて、昔の物置小屋で寝なければなりません。もう、もっともらしい口実も無し。ノートンの格別のごひいきと、はっきり宣告されました。権力者に逆らうとどうなうかという、他のSS生徒に対する見せしめを兼ねているのです。
夏休みはしのげましたけれど、クリスマス休みは最悪でした。さすがに屋外での全裸(無意味)重労働こそありませんでしたが、校舎内の掃除でも大変でした。なにしろ暖房が切られています。そしてわたくしは、乳房も股間も冷たい空気の中に露出しています。もしも腰の奥が羞恥と屈辱に熱くなっていなければ風邪を引いて肺炎になっていたかもしれません。
そんな過酷で恥辱にまみれた奴隷生徒あるいは特別虐待生徒としての生活にも、次第に順応していきました。順応してしまったから、すこしくらい性的に刺激されたって平気になりました。女性器を教鞭でたたかれても、以前ほど羞恥や恐怖で腰が熱くはなりません。三人の教師が示した悪いお手本をデートのときに真似する生徒もいますけれど、みんな早漏ですから、エベレストにすら登頂出来ません。
いえ、オリュンポスにまで登りたいとは、まったく思っていません。
一年に四回まで増えた参観日というか視察では、何人もの来賓と『歓談』をしますけれど。彼らのうちの一部は教師よりもずっとタフで、わたくしを宇宙まで打ち上げるのですけれど。わたくしがそれを心待ちにしているかというと、そんなことは絶対にありません。強制的に麻薬を注射されれば、わたくしの意思とは関わりなくオーガズムを貪ってしまいます。
ですが、みずから注射器に手を伸ばしたりはしません。わたくしは魂の高潔まで失ったわけではないのです。
それは校長も見抜いているようです。わたくしを屈服させるつもりでしょうか。来賓の中で特殊な性癖をお持ちの方を接待させられるのは、だいたいにおいてわたくしでした。縄で縛られるのも、猛獣に使うような長い一本鞭で全身をたたかれるのも、溺死寸前までバスタブに沈められるのも、敏感な部位に高電圧(もっとも残酷な方はワニグチクリップを使いました)を流されるのも体験しました。いずれの場合も、絶叫して号泣して赦しを乞いました。心の底からではありません。お客がそれを望んでいると分かったからです。
サディストの餌食にはされましたけれど、基本的には『接待』であり『歓談』です。つまり、時間の限られたプレイです。しかも、そういったお客は監視カメラで見張るようになったので、残念なことに入院して安楽に過ごす機会はありませんでした。
もちろん、サディストの餌食にされるのはわたくしだけではありません。どんなジャンルにでも就職できるようにと、全員が経験を積まされました。わたくしがいちばん多かったというだけのことです。
逆に、わたくしがほとんど命じられなかったのは、マゾヒストの来賓の接待です。これは、わたくしの運命が最終的に定まってから思い当たったのですが――かなり早い時期に、わたくしの就職先が決められていたのではないかと思います。これについては、後でお話しするかもしれません。
季節は移ろっても、性的に虐待され搾取される日々は変わりません。
わたくしの波乱万丈ながら単調な一年のうちで、もっとも大きなアクセントは、クリスマスカードです。母様とは基本的に音信不通なのですが、クリスマスカードだけは弁護士のハバクック氏が届けてくれました。わたくしにはクリスマスカードを買うお金もありませんし、ハバクック氏は伝言も頼まれてくれません。
Y8のときのクリスマスカードは、こうでした。
特別奨学生の仕組は、わたくしも知りませんでした。
わたくしよりも辛い目に遭っているのですね。どれだけ謝罪の言葉を尽くしても足りません。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
一年でも早く借金を返済して、きっとあなたを迎えに行きます。
愛娘アイリスへ、愛を込めて。
メリー
謝罪の文字は涙でにじんでいました。
たとえ何千語を連ねても、母様は思いを伝えきれなかったでしょう。たとえ一語でも、わたくしには掛け替えのないメッセージです。そして、母様の署名は――これ以上はないほどの決意の表われだと思います。「メリー」とだけ。子爵未亡人でもなく、伯爵令嬢でもなく――ただ一個人としてのメリー。我が身ひとつで難局を克服するという決意です。
ですが一年後、Y9のときのクリスマスカードは、わたくしを不安にさせました。
今年もクリスマスの季節になりました。
神様の恵みが、常にあなたの上にありますように。来年のクリスマスまでには、
愛娘アイリスへ、愛を込めて。
メリー
まるきり素っ気ないカードです。母様に何かあったのではないかと心配になりましたけれど、事情を知っているらしいハバクック弁護士は何も教えてくれませんでした。
母様のことを考えると、不安で胸が締めつけられるだけです。熱い渦巻も冷たい氷塊も生じず、ただ虚ろに。
他のSS生徒のこともお話ししておきましょう。
わたくしがY8を終了したときには、ヌビアンが卒業しましたけれどアビリアは卒業せず、延長教育のSS生徒第一号になりました。そして、三期生が三人加わりました。このときから、貞操帯は廃止されました。処女膜を残している子はいませんでしたし、肛門も陰茎も『未使用』の証拠なんて無いですものね。わたくしのアナルバージンにノートンがこだわったとばっちりだとすると、二期生に申し訳ないです。チャーリイとジニアには申し訳なくないです。
Y9の終了時にはウラニアが卒業してアビリアも中途退学で就職して去りました。フュリーは延長教育です。四期生は一気に五人が入りました。これでSS生徒の総数は十二人の定員に達しました。
そして、わたくしは誕生日を過ぎて――Y10になろうとしています。Y13の卒業まで、まだ四年も残っています。
そうそう。わたくしの胸は、昔のジニアよりも大きくなりました。グレープフルーツを赤道で割ったくらいの感じです。
Select ENDING
←Sacrifice END
Sacrifice END
製品版をお読みください。

Saitsfice END
せいひんばんをおよみください。

Sadistics END
セイヒンバンヲオヨミクダサイ。

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デュアルENDは『非国民の烙淫』に先例があります。変形としては『悦虐へのエチュード』も。
ですが、「ひとつ、ふたつ……たくさん」マルチENDは初の試み。まあ、文書内ジャンプのために、三つ目のENDは強引に取って強引に着けたわけですけど。
この文書内ジャンプは、PIXIVでは使えません。
pdfとepubで機能するのは昨日確認しました。
現在585枚で、SacrificeENDが終わるところです。それぞれのENDは短いので、まあ、全部で600枚ちょっとになるでしょう。
オムニバス『非情と淫虐の上意』、『いじめられっ娘二重唱』、『生贄王女と簒奪侍女』、一粒で三度おいしい『Family SM Triangle』に次ぐ長さです。『大正弄瞞』613枚、『縄と鞭の体育補習』609枚は確実に抜くでしょう。
1か月半で、よくもまあ。
リクエスト募集要項では「100枚前後」と謳っているのですから、次からは200枚に収めるようにしたいものですけれど……依頼があって、お仕事として書くのではなくて。依頼に妄想竹を増殖させて、「我が赴くはG線上の大地」なのですから。
遥か未来のPonpoko(トランター抜き)は決まり手はウッチャリ。7/7の休日脱稿を目処に、燃料尽きるまでリヒート装置全開!
Progress Report 6:『特別娼学性奴』
7月のシフトが、ようやく決まりました。3,7が休みなので、ここらで脱稿すれば、校訂もBFも余裕。。
今はSodomy中盤で、床屋に行ったりなんかしてると、明日に持ち越し。
その後が、クライマックス Showtime です。以後は、2年間の点描 Sequel と、5~10枚ずつの SatisficEND と SadisticEND 。ラストは改題しました。Sに拘り韻にこだわっています。
ま、レポートはさっさと片付けて、本日執筆枚数18を25くらいにしておきますか。平日15とか行くくせに、休日はブログ更新したりちょこまかゲームしたり(;^_^A
ちなみに、本章(Skill)終わりで480枚。現在は505枚目を執筆中です。
========================================
Skill
午前中は各教室で見世物になって、午後はせいぜいY6までの学習内容を、わたくしとチャーリイとジニアが手分けして、二期生の四人にほとんどマンツーマンです。四人の成績がかんばしくないときに責任者として半分の罰を受けるのは、わたくしだけですけれど。
放課後は、SS生徒としての課外活動です。ずいぶんとポルノビデオ(ほとんどは国内では非合法の代物だと思います)を鑑賞して、わたくしの実用的な知識も二期生に負けないくらい豊富になってきました。でも、知識だけです。
特別奨学生契約書の4項に書かれてある『就職に必要な技能を習得する為の講習』が始まったのは、十月の中旬からでした。
外部から講師が招かれました。チャーパンでソープランドのコンパニオンをしているカガリ・アカギ嬢です。ランドといっても国家とか大規模な遊園地のことではなく、ビルの一画くらいです。それでも国(land)という名前がついているからでしょうか、コンパニオン嬢のことは泡姫(soap princess)と呼ぶのだそうです。
その国では入浴と特殊なマッサージを提供して、ほとんど百パーセントの確率でお客とお姫様は電撃の恋に落ちて――SS生徒が来賓と『歓談』するようなものですね。違うのは、コンパニオン嬢はお客から個人的に(現金の)プレゼントをもらうことくらいでしょうか。
入浴してリラックスする習慣の無い西欧社会では定着しそうもないサービスですが、ソープランドで行なわれる特殊マッサージは、あまりにも特殊で、『就職に必要』というよりも『きわめて有利な』技能ではないかと、学園つまり理事長は考えたのでしょう。だから、最初から広すぎるシャワールームに大きなバスタブまで設置されていたのです。
講習は、全員が首輪だけの完全な全裸で受けました。『完全な全裸』は、重言ではありません。鎖の貞操帯も外してもらって――という意味です。
実技講習の最初の段階では、SS生徒同士がペアを組みました。チャーリイとジニア、ヌビアンとアビリア。ウラニアとフュリーは、女の子同士です。わたくしは、カガリ嬢の相手役に指名されました。最初だけです。途中からペアの組み合わせは変わりましたし、最終段階では教師や延長教育生徒にお客役を務めていただきました。
「さいしょにいっておきますが、おとこもおんなも、えろちっくなきもちよさをかんじるばしょは、おなじなのです――さおとくりとりす、たまとらびあがにているというだけでなく、ゆびさきとか、みみとかもふくめて、です」
だから、女性が女性を練習台にして身に着けたテクニックは、そのまま男性にも応用できるのだと――初耳です。わたくしは、陰茎と陰核が発生学的には同一部位だという知識を持っていましたけれど、あらためて指摘されるまで、そんなふうに考えたことがなかったので、目からうろこが落ちる思いでした。カガリ嬢のレッスンをマスターして、セキスパートとして他の六人に抜きん出てみせましょうと、心に誓いました。
性奴隷も売春婦も、つまりはSEXを商品にすることに変わりはないです。そして、わたくしは不覚にも、そういう契約を(半ばだまされてとはいえ)結んでしまったのです。逃れられない運命ならば、前向きになりましょう。常に学年主席を争っていたわたくしです。この道でもトップになってみせます。処女を喪失してから、そういうふうに考えるようになってきました。
それにしても、なんて卑わいな『マッサージ』なのでしょう。最初にお客の指を洗うのですが、それには膣を使うのです。指を一本ずつ入れていただいて。それから、女性器をお客の腕や太腿に擦りつけて、女性器をブラシ代わりにするのです。
もっとも、このテクニックを教えてくれるとき、カガリ嬢は苦笑していました。
「ほんとうは、けのブラシであらうのですが、みなさんはパイパンですね」
パイパンというのはチャーパンの言葉で、絵柄が印刷されていないゲーム札という意味だそうです。だから『ブラシ洗い』ではなく『スポンジ洗い』だと、名付けてくれました。
卑わいといえば。お客の身体を洗うための椅子も、想像を絶して卑わいです。分厚いアクリル板を長方形に曲げて、両端は六インチ開いています。隙間のある側が座面です。殿方が腰掛けると、男性器は隙間から下に垂れます。だから、ていねいに洗えるのです。応用技としては、コンパニオン嬢があお向けになって長方形の中に頭を突っ込んで――洗った後ですから、パンツを脱いだばかりの陰茎をくわえるよりは、ずっと衛生的です。肛門までなめるのが常識だそうです。
この特殊な椅子を使うよりも、さらに桁違いに卑わいな洗い方もあります。それには、大きなエアマットを使うのです。プールに浮かべたら三人くらいは乗って遊べそうな大きさです。お客はマットに寝ていただいて――全身を石けんの泡まみれにしたコンパニオン嬢が抱き着いて、身体をくねらせて全身を洗うのです。泡踊り(bubble dance)というそうです。
最初にカガリ嬢がわたくしをお客に見立てて模範演技を披露したのですけれど。わたくしのほうが小柄なので、勝手が違って苦労しているようでした。それでも、ダンスの神髄を余すところなく体験させていただきました。
ひと言でいえば、くすぐったいです。でも、乳房や股間を背中に押しつけられても、ちっともエロチックには感じませんでした。実のところ、身体の背面は(お尻も含めて)神経の分布が疎らなので、性感には乏しいのだそうです。そうかしらと、疑う気持ちはあります。背中をそっとなでられると、ぞわあっとします。くすぐったいです。お尻については言を待ちません。もしかすると、やはり、男性と女性とでは性感帯が違うのではないでしょうか。
ですけれど。カガリ嬢は月に(自身の手取で)五千ポンド以上を稼いでいる売れっ子だそうです。一流の専門家の言葉を素人が疑うのは間違っています。彼女に劣らないだけのテクニックを身に着けて、それから自身の経験に基づいて判断すべきだと思います。
彼女の言によると、男性が泡踊りを喜ぶのは、そこまで女性に奉仕をさせているという――支配欲が満たされるからだそうです。これは、俗説の言い換えに過ぎません――男は女を支配したがる存在であるという。ですけれど、真実でもあると思います。女は男に支配されたがる存在であるという対偶命題と共に。
理屈は、ベッドに張り付けられているときでも考えられます。今は、とにかく実践です。
攻守所を入れ替えて、カガリ嬢をステージにして、わたくしが踊る番になりました。男の人に比べれば狭いステージですが、それでもわたくしよりは広いです。
そのステージに乗っているだけでも、テクニックを要求されるのだと思い知りました。とにかく、石けんの泡のせいで、背中から滑り落ちそうになります。といって、ステージにしがみついては、お客を不快にさせるだけです。うまくバランスを取って、身体をくねらせて、意識して乳房を背中に押しつけなければなりません。マーコットでは難しいです。カガリ嬢のメロンまでは望みませんけれど、ジニアのリンゴは欲しいです。ないものねだり(cry for the moon)はやめます。
お客にあお向けになっていただいたら、勃起した陰茎に淫裂をこすりつけます。けれど、この段階では挿入してはいけないのです。それでいて、じゅうぶんに『女性』をアピールするのです。乳首と乳首を擦り合わせたり、上下逆さになって、いわゆる69の体勢で口を使っての奉仕もします。この部分は、必要なポールがステージに備わっていないので、省略しました。ただし、さり気なく石けんを洗い流してから出ないと、自身の健康にも良くないし、求められてディープキスをするときに、お客に不快な思いをさせます。
カガリ嬢に及第点をもらうまでに、一時間以上も踊り続けて、腕も足も腰も痛くなりました。社交ダンスより、よほど難しく体力も要求されます。
ちなみに、その日の講習で及第点に達したのは、わたくしの他にはフュリーだけでした。
実際の接客では、たとえば四十五分とか百八十分といった時間の制約があります。短いのは大衆向けのお店で、カガリ嬢が勤めているお店では百二十分が最短だそうです。いずれにしても、最後は電撃の恋を成就させるのですが、それまでには時間の長短によって、いろんなプレイが組み込まれます。ああ、タフな男性ですと二ラウンドまれに三ラウンドということもあるのですけれど、それは事前にお客の希望を確かめておく必要があります。
わたくしとしては、そういう打ち合わせはしたくないです。お客に自由に振る舞っていただきたいと思います。けれど、ことにこの国ではなじみのないスタイルですから、プロフェッショナルとしてわたくしがリードしなければならないでしょう。今から気が重いです。
それはともかく。最初の講習で教わった応用プレイは、ひとつだけでした。潜望鏡といいます。お客にバスタブに浸かっていただいて、腰を浮かせて、勃起した陰茎を湯面から突き出してもらうのです。それを潜水艦の潜望鏡に見立てて――真上からくわえてフェラチオをするという理屈が分かりません。潜望鏡を発見したら爆弾をたたきつけるか爆雷を放り込むのが常識だと思います。これは、他の六人も同意見でした。
夕食までみっちり三時間の講習を受けて。全身が湯でふやけ切った感じになりました。身体の節々が悲鳴を上げています。みんな疲れ切って早めに就寝したのですが、チャーリイとジニアは、わたくしをX字形に拘束する手間だけは惜しみませんでした。
連日の講習。週末なんか、午前中に三時間、午後からは二期生へのマンツーマン補習、それが終わってから、また泡姫の実技講習が三時間。凄まじいハードスケジュールですが、これ以上をカガリ嬢は月に十五日も繰り返しているのだそうです。尊敬します。
売春婦なんて、股を開いてベッドに寝ていればいい――なんて、心の奥では見くびっていた自分が恥ずかしいです。もっとも、わたくしだけは性奴隷ですから、サディストにいろいろ痛めつけられるんだろうなと、それは覚悟していましたけれど。それだって、男に好き勝手されるだけのことです。能動的に振る舞って、持ち時間の配分まで考えなければならないなんて、肉体労働者であると同時に管理職でもあるのです。
わたくしには務まりません。泡姫としての技能は身に着けても、それを主体的に発揮するのは間違っていると――講習が進むにつれて、思い直すようになりました。というよりも。驚異的なテクニックを見せつけられて、思考停止に陥っていたのでしょう。
魂を高潔に保つということと、みずから進んで男に身体を売るという行為は、両立するはずがないのです。契約に縛られて、命令されて、心ならずも男に(とは限りませんけれど)犯される――それが、青い血をおとしめない唯一の身の処し方です。そして、たとえ命令されたって譲れない部分は……苛酷な懲罰に甘んじるしかありません。
もちろん、そういった決意は言葉にも態度にも表わしませんでした。カガリ嬢に同情されたくなかったからです。わたくしたちセキスパート奨学生は、将来の高収入のためにみずから進んで特殊技能を学んでいると、カガリ嬢は信じているようです。わたくしの事情については、かなり詳しく知っているようでしたけれど、それも。父の借金を返済しながら、貴族令嬢にふさわしい名門学園を卒業するために、この道を選んだ。そんなふうに校長から聞かされて、それを信じているようでした。ええ、大筋は間違っていませんとも!
その誤解を訂正するつもりはありません。込み入った内容を理解するほど、彼女の語学力は高くないでしょうし。有色人種に同情されるなんて、それだけでプライドがずたずたに引き裂かれます。いえ、カガリ嬢本人を見下しているのではありません。ただ、彼女が属する人種がコーカソイドに劣っているという、普遍的な真実を言っているだけです。白人奴隷は、それでも有色人種よりは身分が上なのです。
――講習の最終段階の、教師や上級生を相手にした実習については、語りたくありません。どうせ、来賓を相手にした本番のお話をしなければならないのですから。
ただ、本番の『接待』をするにあたって、わたくしはじゅうぶんな自信を持っていました。二週間の集中講習を終えてイングルを去る(のか、しばらくは観光をしてまわるのかまでは知りませんけれど)にあたって、カガリ嬢は全員にトリプルAの評価をくれたのです。
「みんな、ソープランドではたらけば、すぐにナンバーワンになれます。チャーリイとヌビアンにも、しょくばはあります。でも、いますぐはだめです。Y13をそつぎょうしてからですね」
カガリ嬢の言葉は法律面での無知を露呈しています。売春婦に就労ビザは発給されませんから、それでもチャーパンで働こうとするなら、非合法な手段しかありません。それなら、Y13だろうとY8だろうと関係はないのです。
もっとも、わたくしはそういったことを考える必要はありません。特別奨学生契約書の3項に従って、わたくしは学園を卒業したら売り飛ばされるのですから。もしかしたら、母様が借金を返済し終えて、なおかつわたくしを買い戻せる(契約書1項の但し書きです)だけの資金を蓄えて卒業までに迎えに来てくださるかもしれませんけれど――無駄な希望は抱かないようにします。
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ま、さらっと流しました。
実技講習は、他にも花電車、カーマスートラ、ポールダンスなどなどありますが、これは Sequelで数行ずつ(で済むかなあ?)触れるくらいにしておきます。
今はSodomy中盤で、床屋に行ったりなんかしてると、明日に持ち越し。
その後が、クライマックス Showtime です。以後は、2年間の点描 Sequel と、5~10枚ずつの SatisficEND と SadisticEND 。ラストは改題しました。Sに拘り韻にこだわっています。
ま、レポートはさっさと片付けて、本日執筆枚数18を25くらいにしておきますか。平日15とか行くくせに、休日はブログ更新したりちょこまかゲームしたり(;^_^A
ちなみに、本章(Skill)終わりで480枚。現在は505枚目を執筆中です。
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Skill
午前中は各教室で見世物になって、午後はせいぜいY6までの学習内容を、わたくしとチャーリイとジニアが手分けして、二期生の四人にほとんどマンツーマンです。四人の成績がかんばしくないときに責任者として半分の罰を受けるのは、わたくしだけですけれど。
放課後は、SS生徒としての課外活動です。ずいぶんとポルノビデオ(ほとんどは国内では非合法の代物だと思います)を鑑賞して、わたくしの実用的な知識も二期生に負けないくらい豊富になってきました。でも、知識だけです。
特別奨学生契約書の4項に書かれてある『就職に必要な技能を習得する為の講習』が始まったのは、十月の中旬からでした。
外部から講師が招かれました。チャーパンでソープランドのコンパニオンをしているカガリ・アカギ嬢です。ランドといっても国家とか大規模な遊園地のことではなく、ビルの一画くらいです。それでも国(land)という名前がついているからでしょうか、コンパニオン嬢のことは泡姫(soap princess)と呼ぶのだそうです。
その国では入浴と特殊なマッサージを提供して、ほとんど百パーセントの確率でお客とお姫様は電撃の恋に落ちて――SS生徒が来賓と『歓談』するようなものですね。違うのは、コンパニオン嬢はお客から個人的に(現金の)プレゼントをもらうことくらいでしょうか。
入浴してリラックスする習慣の無い西欧社会では定着しそうもないサービスですが、ソープランドで行なわれる特殊マッサージは、あまりにも特殊で、『就職に必要』というよりも『きわめて有利な』技能ではないかと、学園つまり理事長は考えたのでしょう。だから、最初から広すぎるシャワールームに大きなバスタブまで設置されていたのです。
講習は、全員が首輪だけの完全な全裸で受けました。『完全な全裸』は、重言ではありません。鎖の貞操帯も外してもらって――という意味です。
実技講習の最初の段階では、SS生徒同士がペアを組みました。チャーリイとジニア、ヌビアンとアビリア。ウラニアとフュリーは、女の子同士です。わたくしは、カガリ嬢の相手役に指名されました。最初だけです。途中からペアの組み合わせは変わりましたし、最終段階では教師や延長教育生徒にお客役を務めていただきました。
「さいしょにいっておきますが、おとこもおんなも、えろちっくなきもちよさをかんじるばしょは、おなじなのです――さおとくりとりす、たまとらびあがにているというだけでなく、ゆびさきとか、みみとかもふくめて、です」
だから、女性が女性を練習台にして身に着けたテクニックは、そのまま男性にも応用できるのだと――初耳です。わたくしは、陰茎と陰核が発生学的には同一部位だという知識を持っていましたけれど、あらためて指摘されるまで、そんなふうに考えたことがなかったので、目からうろこが落ちる思いでした。カガリ嬢のレッスンをマスターして、セキスパートとして他の六人に抜きん出てみせましょうと、心に誓いました。
性奴隷も売春婦も、つまりはSEXを商品にすることに変わりはないです。そして、わたくしは不覚にも、そういう契約を(半ばだまされてとはいえ)結んでしまったのです。逃れられない運命ならば、前向きになりましょう。常に学年主席を争っていたわたくしです。この道でもトップになってみせます。処女を喪失してから、そういうふうに考えるようになってきました。
それにしても、なんて卑わいな『マッサージ』なのでしょう。最初にお客の指を洗うのですが、それには膣を使うのです。指を一本ずつ入れていただいて。それから、女性器をお客の腕や太腿に擦りつけて、女性器をブラシ代わりにするのです。
もっとも、このテクニックを教えてくれるとき、カガリ嬢は苦笑していました。
「ほんとうは、けのブラシであらうのですが、みなさんはパイパンですね」
パイパンというのはチャーパンの言葉で、絵柄が印刷されていないゲーム札という意味だそうです。だから『ブラシ洗い』ではなく『スポンジ洗い』だと、名付けてくれました。
卑わいといえば。お客の身体を洗うための椅子も、想像を絶して卑わいです。分厚いアクリル板を長方形に曲げて、両端は六インチ開いています。隙間のある側が座面です。殿方が腰掛けると、男性器は隙間から下に垂れます。だから、ていねいに洗えるのです。応用技としては、コンパニオン嬢があお向けになって長方形の中に頭を突っ込んで――洗った後ですから、パンツを脱いだばかりの陰茎をくわえるよりは、ずっと衛生的です。肛門までなめるのが常識だそうです。
この特殊な椅子を使うよりも、さらに桁違いに卑わいな洗い方もあります。それには、大きなエアマットを使うのです。プールに浮かべたら三人くらいは乗って遊べそうな大きさです。お客はマットに寝ていただいて――全身を石けんの泡まみれにしたコンパニオン嬢が抱き着いて、身体をくねらせて全身を洗うのです。泡踊り(bubble dance)というそうです。
最初にカガリ嬢がわたくしをお客に見立てて模範演技を披露したのですけれど。わたくしのほうが小柄なので、勝手が違って苦労しているようでした。それでも、ダンスの神髄を余すところなく体験させていただきました。
ひと言でいえば、くすぐったいです。でも、乳房や股間を背中に押しつけられても、ちっともエロチックには感じませんでした。実のところ、身体の背面は(お尻も含めて)神経の分布が疎らなので、性感には乏しいのだそうです。そうかしらと、疑う気持ちはあります。背中をそっとなでられると、ぞわあっとします。くすぐったいです。お尻については言を待ちません。もしかすると、やはり、男性と女性とでは性感帯が違うのではないでしょうか。
ですけれど。カガリ嬢は月に(自身の手取で)五千ポンド以上を稼いでいる売れっ子だそうです。一流の専門家の言葉を素人が疑うのは間違っています。彼女に劣らないだけのテクニックを身に着けて、それから自身の経験に基づいて判断すべきだと思います。
彼女の言によると、男性が泡踊りを喜ぶのは、そこまで女性に奉仕をさせているという――支配欲が満たされるからだそうです。これは、俗説の言い換えに過ぎません――男は女を支配したがる存在であるという。ですけれど、真実でもあると思います。女は男に支配されたがる存在であるという対偶命題と共に。
理屈は、ベッドに張り付けられているときでも考えられます。今は、とにかく実践です。
攻守所を入れ替えて、カガリ嬢をステージにして、わたくしが踊る番になりました。男の人に比べれば狭いステージですが、それでもわたくしよりは広いです。
そのステージに乗っているだけでも、テクニックを要求されるのだと思い知りました。とにかく、石けんの泡のせいで、背中から滑り落ちそうになります。といって、ステージにしがみついては、お客を不快にさせるだけです。うまくバランスを取って、身体をくねらせて、意識して乳房を背中に押しつけなければなりません。マーコットでは難しいです。カガリ嬢のメロンまでは望みませんけれど、ジニアのリンゴは欲しいです。ないものねだり(cry for the moon)はやめます。
お客にあお向けになっていただいたら、勃起した陰茎に淫裂をこすりつけます。けれど、この段階では挿入してはいけないのです。それでいて、じゅうぶんに『女性』をアピールするのです。乳首と乳首を擦り合わせたり、上下逆さになって、いわゆる69の体勢で口を使っての奉仕もします。この部分は、必要なポールがステージに備わっていないので、省略しました。ただし、さり気なく石けんを洗い流してから出ないと、自身の健康にも良くないし、求められてディープキスをするときに、お客に不快な思いをさせます。
カガリ嬢に及第点をもらうまでに、一時間以上も踊り続けて、腕も足も腰も痛くなりました。社交ダンスより、よほど難しく体力も要求されます。
ちなみに、その日の講習で及第点に達したのは、わたくしの他にはフュリーだけでした。
実際の接客では、たとえば四十五分とか百八十分といった時間の制約があります。短いのは大衆向けのお店で、カガリ嬢が勤めているお店では百二十分が最短だそうです。いずれにしても、最後は電撃の恋を成就させるのですが、それまでには時間の長短によって、いろんなプレイが組み込まれます。ああ、タフな男性ですと二ラウンドまれに三ラウンドということもあるのですけれど、それは事前にお客の希望を確かめておく必要があります。
わたくしとしては、そういう打ち合わせはしたくないです。お客に自由に振る舞っていただきたいと思います。けれど、ことにこの国ではなじみのないスタイルですから、プロフェッショナルとしてわたくしがリードしなければならないでしょう。今から気が重いです。
それはともかく。最初の講習で教わった応用プレイは、ひとつだけでした。潜望鏡といいます。お客にバスタブに浸かっていただいて、腰を浮かせて、勃起した陰茎を湯面から突き出してもらうのです。それを潜水艦の潜望鏡に見立てて――真上からくわえてフェラチオをするという理屈が分かりません。潜望鏡を発見したら爆弾をたたきつけるか爆雷を放り込むのが常識だと思います。これは、他の六人も同意見でした。
夕食までみっちり三時間の講習を受けて。全身が湯でふやけ切った感じになりました。身体の節々が悲鳴を上げています。みんな疲れ切って早めに就寝したのですが、チャーリイとジニアは、わたくしをX字形に拘束する手間だけは惜しみませんでした。
連日の講習。週末なんか、午前中に三時間、午後からは二期生へのマンツーマン補習、それが終わってから、また泡姫の実技講習が三時間。凄まじいハードスケジュールですが、これ以上をカガリ嬢は月に十五日も繰り返しているのだそうです。尊敬します。
売春婦なんて、股を開いてベッドに寝ていればいい――なんて、心の奥では見くびっていた自分が恥ずかしいです。もっとも、わたくしだけは性奴隷ですから、サディストにいろいろ痛めつけられるんだろうなと、それは覚悟していましたけれど。それだって、男に好き勝手されるだけのことです。能動的に振る舞って、持ち時間の配分まで考えなければならないなんて、肉体労働者であると同時に管理職でもあるのです。
わたくしには務まりません。泡姫としての技能は身に着けても、それを主体的に発揮するのは間違っていると――講習が進むにつれて、思い直すようになりました。というよりも。驚異的なテクニックを見せつけられて、思考停止に陥っていたのでしょう。
魂を高潔に保つということと、みずから進んで男に身体を売るという行為は、両立するはずがないのです。契約に縛られて、命令されて、心ならずも男に(とは限りませんけれど)犯される――それが、青い血をおとしめない唯一の身の処し方です。そして、たとえ命令されたって譲れない部分は……苛酷な懲罰に甘んじるしかありません。
もちろん、そういった決意は言葉にも態度にも表わしませんでした。カガリ嬢に同情されたくなかったからです。わたくしたちセキスパート奨学生は、将来の高収入のためにみずから進んで特殊技能を学んでいると、カガリ嬢は信じているようです。わたくしの事情については、かなり詳しく知っているようでしたけれど、それも。父の借金を返済しながら、貴族令嬢にふさわしい名門学園を卒業するために、この道を選んだ。そんなふうに校長から聞かされて、それを信じているようでした。ええ、大筋は間違っていませんとも!
その誤解を訂正するつもりはありません。込み入った内容を理解するほど、彼女の語学力は高くないでしょうし。有色人種に同情されるなんて、それだけでプライドがずたずたに引き裂かれます。いえ、カガリ嬢本人を見下しているのではありません。ただ、彼女が属する人種がコーカソイドに劣っているという、普遍的な真実を言っているだけです。白人奴隷は、それでも有色人種よりは身分が上なのです。
――講習の最終段階の、教師や上級生を相手にした実習については、語りたくありません。どうせ、来賓を相手にした本番のお話をしなければならないのですから。
ただ、本番の『接待』をするにあたって、わたくしはじゅうぶんな自信を持っていました。二週間の集中講習を終えてイングルを去る(のか、しばらくは観光をしてまわるのかまでは知りませんけれど)にあたって、カガリ嬢は全員にトリプルAの評価をくれたのです。
「みんな、ソープランドではたらけば、すぐにナンバーワンになれます。チャーリイとヌビアンにも、しょくばはあります。でも、いますぐはだめです。Y13をそつぎょうしてからですね」
カガリ嬢の言葉は法律面での無知を露呈しています。売春婦に就労ビザは発給されませんから、それでもチャーパンで働こうとするなら、非合法な手段しかありません。それなら、Y13だろうとY8だろうと関係はないのです。
もっとも、わたくしはそういったことを考える必要はありません。特別奨学生契約書の3項に従って、わたくしは学園を卒業したら売り飛ばされるのですから。もしかしたら、母様が借金を返済し終えて、なおかつわたくしを買い戻せる(契約書1項の但し書きです)だけの資金を蓄えて卒業までに迎えに来てくださるかもしれませんけれど――無駄な希望は抱かないようにします。
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ま、さらっと流しました。
実技講習は、他にも花電車、カーマスートラ、ポールダンスなどなどありますが、これは Sequelで数行ずつ(で済むかなあ?)触れるくらいにしておきます。
Progress Report 5:『特別娼学性奴』
どうにか峠は越したかな。
只今、Submissionの後半です。キャティ・ストック(虐められラビニア)の仇討に父上が大西洋を越えて乗り込んできて、渾身会心痛恨の十連撃くらいでメコ筋縦打ちを食らわせて。それでは足りずに、PLOTで予定していなかった、濠門長恭劇場定番の後ろ手錠強制騎乗位をさせているところです。まだピストンを始めていませんが、当然クリを摘まんで、スクワットをしたら自分で自分のクリ虐め――の予定です。
この後、同じ章でキャティ自身によるヘアブローチ復讐(Progress Report 0 参照→)が、やっぱり20枚はいくかな。
その後のSkillは、これまた定番のソープ講習です。講師は本場チャーパンから呼び寄せた現役嬢のカガリ・アカギ(加賀、赤城)です。
ヒロインは「実技講習を受けるという契約ですから、ちゃんと守りますわ」で、常に学年トップを争っていたプライドに懸けて、こちらも頑張るとか? まあ、尺は短いでしょう。気分的には『ママと歩むSlave Road』何頁から何頁 および 『昭和集団羞辱史:浴場編』何頁から何頁を参照――てなものですから。
Sodomyもカルメン77に流す予定。
元々は終章のはずだった Showtimeはじっくりねっちりの予定ですが。
以後は点描。最後のデュアル・エンドもそれぞれ20枚くらいでしょうか。
さいわい、6/29、30が連休ですので、ここでShowtimeに突入できれば、遅くとも7/10までには脱稿。間に合いそうですね。
しかし、現在で440枚。とんでもないことになったものです。
さてさて。今回は、ずううううっと引っ張ってきた除膜式です。
強制騎乗位破瓜も大好物なのですが、ヒロインは、あくまでpassiveにアレコレされてきたので、activeに動くのは絶対に嫌! と抵抗してしまって。そこで厳罰拷問で命令に服従させると尺がとんでもなくなるし爾後の展開が破茶目茶るので、あっさりと――今回は1982年のユナイテッド・キンガム・オブ・イングルが舞台なので現代日本のエロ用語は控えておるのですが、書いてるときもそういう意識は無かったのですが、読み返してみたら、つまりはマングリ返しです。実に淡々と破瓜がいきました。そして、お掃除フェラで締めくくり。
ということで、Sexperienceを一挙公開先に立たず。

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Sexperience
バカンスも娯楽も無く勉強も出来ず、貧しい食事で過ごした夏休みでしたが、無理に捻り出したような雑務をあれこれとさせられた五週間でした。そのうちの一日には、人生でただ一度きりの女の一大事も経験させられました。
順を追ってお話しします。
八月に入ってすぐ、わたくしは大変な重労働を押しつけられたのです。
父様が寄付をしたフッド記念小講堂。こけがはびこって、すこし見苦しくなっています。このまま十年も放置すれば、むしろ風格になるのでしょうけれど。これを洗い落としてきれいにしろと、校長に言いつけられました。高圧水を噴き付けて汚れを吹き飛ばすのです。水浸しになって地面に落ちたこけは、シャベルですくって一輪車で運んで一か所に集めておけば、後で清掃業者が回収に来るそうです。
高圧放水が建物に侵入しないよう、すべてのよろい戸を締めて、それでも光が漏れている部分は内側からガムテープで目張りをします。この仕事だけで、丸一日かかりました。閉めきった中での作業でしたから、汗びっしょり。コインランドリーの使用までは禁止されていませんが、わたくしはコイン一枚持ち合わせていません。校長は貸してくれません。とりあえずは制服を水でぬらしたタオル(これも、学園からの貸与です)で汗を拭いて陰干しにしました。
二日目からは、エンジン付きの高圧洗浄機で(窓は狙いを外して)建物に放水です。ずどどどどとエンジンが小タンクに蓄圧して、それで大タンクに貯めた水道水を噴き付けるのです。
「また汗をかくし、その前に放水でびしょぬれになるから」
そんな理由で、全裸での作業を命じられました。夏休みでも、運動部の生徒の一部は、新シーズンに向けたトレーニングで学園に残っています。それに、普段は出来ない大規模なメンテナンスでいろんな業者も出入りします。教室内で全裸になるより、百倍は恥ずかしいです。
それでも。人目のない時間帯にはチャーリイとジニアに強いられて、全裸で小屋からガレージまで往復していたのですから、昼間だってへっちゃらだと自分に言い聞かせたのですけれど。学園としては不都合もあるのでしょう。タオル一枚だけは局部を隠すのに使っても良いという寛大なお許しをいただきました。皮肉です。
でも、フェイスタオルです。腰に巻いても、どこかしらが露出してしまいます。わたくしとしては、腰の横で結んで太腿の片方を露出させておきた(くな)かったのですが、なぜか後ろで結ぶように命令されました。お尻が丸見えになってしまいます。そんなわたくしの都合は、逆らう理由にはなりません。そして、従う理由は幾らでもあります。
そうして、外壁の洗浄作業を始めたのですが。水鉄砲で遊ぶのとは、根本的に違います。放水の圧力が凄まじいのです。両手でしっかりとホースを抱えて、両足で踏ん張っていないと後ろへ倒れてしまいます。
そんな激しい勢いでも、なかなかこけは剥がれてくれません。飛び散る汚泥は、離れていても全身に浴びてしまいます。半日かかって、全身泥まみれになって、正面の壁の三分の一もきれいになりませんでした。放水が激しいので、蛇口を開けっ放しにしていても、じきにタンクは空になります。タンクが満たされるまでの時間は、洗い落とした汚泥の回収です。汚泥をシャベルですくって集めて一輪車へ移し、いっぱいになったら十メートルほど離れた場所に設けられた集積所へ運びます。貯水に要する時間よりも、こちらのほうが長くかかります。つまり、ひと時たりとも作業現場から離れられないのです。
そのうち、困難な問題が生じました。炎天下での労働です。喉が渇きます。けれど、飲み水が近くにないのです。手元にはあふれるほど「水」はありますが、上水道の質は悪いし、タンクの中でさらに汚染されています。ずらっと連なっている校舎を横切ってガレージの洗車場へ行くくらいなら、物置小屋へ戻ったほうが早いです。ミネラルウォーターもあります。
休み休みの作業(と、校長は決めつけました)だから、あらためて休憩は取るなと厳命されていましたけれど、十分とかからずに戻って来れるのだからと、持ち場を離れたのですが。空気を圧縮するエンジンの音が止まりっぱなしになったので、校長に気づかれてしまいました。
「隙を盗んでは怠けようとする。きみは、心まで奴隷根性に染まってしまったのかね」
教鞭で女性器をたたかれるよりも、ずっと厳しい鞭でした。日射病で倒れるまで、絶対に持ち場を離れまいと、自分に固く誓いました。
そうして、作業の三日目を迎えたのです。朝のうちに出来るだけ多量にミネラルウォーターを飲んでおこうと思いましたけれど、それはそれで、汗が追いつかずにトイレに行きたくなるのではないかと心配になって、結局は適当なところで妥協してしまいました。
作業の時間帯は授業と同じですが、準備がその前にあるので、実際には午前八時から外に出ます。八時半から作業を始めて、十一時を回る頃には喉の渇きが強くなってきました。正午からは一時間の昼休みがあります。それまでの我慢だと思っていたのに。
校長が進捗状況を見回りに来て、命にかかわるような無慈悲な命令を下しました。
「これでは、期限の五日間では終わりそうにないね。昼も休まずに働きなさい」
期限だなんて、今初めて聞きました。進み具合を見て、間に合いそうもない期限を後出しに押しつける。そうとしか思えません。それでも、そのこと自体には抗議しませんでした。
「分かりました。でも、十分だけでよろしいですから、水を飲みに行く時間をください」
ここまで卑屈になるなんて、子爵令嬢の軽蔑の眼差しが、どこかから突き刺さってきます。それなのに、校長はわたくしの哀願を聞き届けてくれません。
「駄目です。この一面が終わるまで、夜になっても続けなさい」
実行不可能な命令を残して、校長は校舎へ戻って行きました。
お腹の底のほうに、冷たい氷塊が生じました。これまで、悔しさが腰の奥で熱くたぎることは幾度もありましたが、これは初めての感覚ではないかと思います。けれど……
よろしいですわ。御命令の通りに働き続けます。日射病になろうと過労で倒れようと、お好きなように虐めてください。そう覚悟を決めると、いつもの憤激と屈辱のない混ざった熱い感覚がよみがえってきました。氷の塊と炎の塊。相反する感情が同時に……あれ?
どちらも怒りと悔しさのはずです。なぜ、相反するなどと考えたのでしょうか。なんて、哲学的思索にふけっている場合ではありません。一切手を抜かず、ぶっ倒れるまで働いてやりますとも。入院させてもらえれば、その期間はたっぷり休めます!
なんて決心した時点で、わたくしはすでに正気を失っていたのかもしれません。
しばらく作業を続けていると、自分がとんでもない愚かなことをしているように思えてきました。だって、水は目の前にたっぷりとあるのです。たくさん飲めば、お腹を壊すかもしれませんけれど――ちょっと喉の渇きを潤すくらいなら、平気ではないのかしら。
その考えは、すごく魅力的でした。本当に、ちょっと試してみるだけだから。
わたくしはノズルをぎりぎりまで絞って、ちょろちょろとあふれる水に口をつけてみました。
おいしい。金臭いし舌がぴりぴり刺激されるけれど、それすらも芳純に感じられます。ちょっとだけ、もうひと口だけ――喉の渇きが潤されて正気を取り戻すまでに、コップ三杯分くらいは飲んだのではないかと思います。
天罰はてき面でした。飲んですぐに、お腹がごろごろ鳴り始めました。これはいけない。すぐに吐きださなければ。けれど、飲むと同時に水は身体に吸収されてしまったのでしょう。喉に指を突っ込んでも、空えずきばかりです。
仕方がないので作業を再開しました。けれど、お腹のごろごろは大きくなるばかりです。痛くなってきました。それだけなら、耐えられたかもしれませんけれど。致命的な感覚が、お腹のいちばん底のあたりに生じました。今すぐトイレに駆け込まなければ、粗相をしでかしてしまいます。
けれど、絶対に持ち場を離れないと、他の誰でもない自分自身に誓ったのです。校長に知られたら、今度こそ罰を受けるでしょうが、それはたいした問題ではありません。奴隷根性と言われようと、わたくし自身が心を強く持っていれば、わたくしの高潔は揺るぎません。けれど……お漏らしを、それも小さな子どもですら滅多にしない粗相をするなんて、それもわたくしの尊厳を踏みにじります。
どうしよう……その迷いが、ついにわたくしを破滅させました。
「ああっ……だめえええええ!」
ぶじゃあああっと、半固形物の混じった水流が地面をたたきました。
「いやあああ……」
地面にうずくまってしまいたいところですが、汚物の中にしゃがみ込むなんて、それも出来ません。ぼう然と立ち尽くして、わたくしは泣きじゃくりました。
それでも。十分も経ってから、ようやく気を取り直して。高圧洗浄機のノズルを調節して、お尻の汚れを洗い流しました。股間の鎖を左右にずらしたり前後に引っ張ったり、その刺激で生じる感覚になど、かまっていられません。絶対に汚物が付着していないと確信できるまで、入念に洗いました。それからノズルを全開にして、地面がえぐれるほど粗相の痕跡を洗い流しました。
もしかして、誰かに見られていたかもしれないと気づいたのは、すべての証拠隠滅が終わってからでした。あたりを見回して、近くに人影はありませんでしたが、今さらですよね。
開き直って、何食わぬ顔で作業を続けて。夜遅くなって陽が沈んでも(夏の夜は午後九時を過ぎます)指示されていた正面の壁は終わっていませんでしたけれど、暗くては汚れが落ちたか分からないだろうということで、ようやく赦してもらえました。
小屋へ戻ると、お昼を抜いたのに夕食を取る気にもなれず、そのまま床に転げ込んですぐに眠ってしまいました。チャーリイとジニアがいないから、どんな姿勢で寝てもかまわないのです。
――さんざんな三日目でしたけれど、四日目はもっとひどい――人生で最悪な日になりました。
大きな被害を食い止めるためには小さな被害に甘んじよう。そう決意して、お腹がちゃぷちゃぷ鳴るくらいに、わたくしはミネラルウォーターをたっぷり飲んでから作業に取り掛かりました。
陽射しが昨日よりもきつく、飲んだ水が胃袋から汗腺へ直行しているみたいでした。これなら、小さな被害も食い止められそうです。今日は昼休みを取らせてもらいたいな。それだけを念じながら、懸命に作業を続けていると。また、校長が姿を見せました。今日はひとりではありません。薄いクリーム色のスーツ(たぶんリネン製でしょう)を着こなした、父様と同じくらいの年輩の男性を伴なっています。
学園の独裁者とその客人に敬意を表すべきだと判断しました。作業を中断して、二人を迎えました。
「こちらにいらっしゃるのは、本学園の理事長であらせられる、スマーポッツ子爵ドレッド・ノートンです」
わたくしは軽く膝を折って目を伏せました。
「それが、われに対する挨拶なのかね?」
ドレッドきょうが嘲りました。
「膝折礼(curtsey)もろくに出来んとは、校長、仕付がなっていませんな」
膝折礼は、相対的に身分の低い者から高貴な方への儀礼です。子爵令嬢から他家の子爵に対しては、まあ、もうすこし丁重であってもよろしいでしょうけれど、わたくしの事情もあります。こんな腰布一枚では、はっきり裾を持ち上げるのも膝をきちんと曲げるのも、卑わいなだけです。
「いや、わたくしの不徳のいたすところ。性奴隷の膝折礼を仕込んでいませんでした」
そうでした。今(だけです!)のわたくしは、子爵令嬢である以前に性奴隷生徒でした。
今すぐに覚えてノートンきょうにお披露目しなさいと言って、校長は――とんでもない作法を伝授しました。
「裾は腰までまくり上げなさい。引いた足のつま先は、前側のかかとに着けるのです。そして、バレエのプリエのように、膝を大きく左右に開きなさい」
そんなのって、膝折礼ではありません。女性器の露出、いえ開陳です。
けれど、命令には絶対服従というのが特別奨学生契約(の、後付けの細則)です。わたくしは恥辱にまみれながら、伝授されたとおりの仕種をしました。悔しさに子宮がむせび泣いています。腰を沈めたので鎖が膣口に食い込んできて、その物理的な刺激が熱い涙をこぼさせます。
「ふむ。さすがは元子爵令嬢だな。奴隷嬢(Lady Slave)のマナーも覚えが早い」
褒められた(おとしめられた)のですから、言葉を返すのが礼儀です。
「お褒めにあずかり、恐悦至極にございます」
結び目より高く裾をまくり上げ、直角を越えて膝を曲げてやりました。皮肉のつもりでしたが、みずから進んで破廉恥に振る舞ったことに変わりはありません。腰の奥で羞恥が大きな炎となって燃え上がりました。
ノートン(この人にも敬称は無用と判断しました)が、くくっと含み笑いを漏らしました。
「なかなかに礼儀正しい性奴隷だな。よろしい、陪食の栄誉を与えてやろう。正午になったら、校長、どこだったかな?」
「延長教育(6th form)校舎のカフェテリアです」
「うむ、そこに来い」
仕事を続けなさいと命じて、けれど二人は立ち去りません。小柄なわたくしがホースに振り回され汚泥を浴びる姿を、愉快そうに見物したのです。
それでも、十一時には作業をやめ、機械を片付けてから身なりを調えてるように言われました。機械を片付けるとは、午後の作業を免除されるという意味です。
ちっともうれしくありません。ますます期限に間に合わなくなります。そして……
「今日は、いや明日の朝まで、きみがノートンきょうのお相手をするのです」
とうとう、恐れていたことが現実になろうとしているのです。素直に返事が出来るはずもありません。すると校長は、わたくしが事態を理解していないと思ったのか、露骨な表現で付け加えたのです。
「性奴隷としての最初の実習です。彼に処女をささげるのです。もちろん他のことでも、どんな命令にも従うのです」
そう言ってから、股間の鎖の封印を解いたのです。Y1の生徒だって理解したでしょうね。その年令で可能かどうかは、ともかくとして。
――機械を片付けるのは、簡単です。小型自動車を一人で押すくらいの重労働ですけれど。洗車場へ行って全身を洗うほうが、よほど手間取りました。身体はすぐに乾きますけれど、腰に達そうとしているブルネットは始末に負えません。言葉を飾れば、しっとりと潤ったままで会食に望まなければなりませんでした。
ああ、装いですか。いつも通りに十秒で完了です。学校の制服は、もっともフォーマルな服装です。たとえ女王陛下とのディナーにだって参列できますとも。もしとがめられるとしたら、このようなデザインを採用した学園でしょうね!
ノートンは、とがめたりはしませんでした。にやにや笑いながら褒めてくださいましたとも。
「しかし、もっと趣向を凝らしてもらえんかね。たとえば、アナン・ラミリーズみたいに、上着から乳房を突き出すようなのとか」
テーブルには校長も着いています。わたくしとノートンが向かい合って、校長は下座です。当然の待遇に、わたくしはむしろ屈辱すら感じています。子爵令嬢でなく性奴隷(実習生?)の立場を考えれば、お買上げいただく前の商品展示に等しいのですから。ああ、こんなことを考えてしまうまでに、わたくしは卑屈になってしまったのでしょうか。心の気高さを忘れてはなりません。
心を高く保つには、まず振る舞いからです。気楽なカフェテリアでの昼食とはいえ、わたくしは完璧なテーブルマナーを心がけました。ノートンはそれに気づいたらしく、ときどき手を休めては、面白そうにわたくしを眺めています。
校長は何かとノートンに話題を提供していましたけれど。わたくしが全裸にされて股間を教鞭でたたかれたとか、全身の無駄毛処理を義務付けられているとか、寝るときは手足を広げて拘束されているとか補習でクンニリングスを仕込まれたとか――わたくしの惨めな学園生活ばかりです。
それをノートンは満足そうに聞いています。ただ、『デート』で間違いが起きなかったことだけは、しつこく確認をしていました。
さいわいに感想を求められたりはしなかったので、雑音を耳に入れないよう、食事に専念しました。なのに、紙束をかんで粘土をかじっているみたいで、ちっとも味が分かりませんでした。
食事の場所はカフェテリアでも、料理は順番に配膳されました。その一皿ずつは、おままごとかと思うくらいに少量でした。重労働でお腹は空いていましたから、紙束でも粘土でも、もっと食べたかったです。校長だけは量が多くて、ノートンはわたくしと同じくらいでしたから――社交ダンスだって乗馬だって他のスポーツだって、満腹では差し障ります。男女の交接も運動には違いありませんから、そういうことなのでしょう。
食事が終わると、腹ごなしに散歩をしようと提案、いえ、命令されました。たしかに散歩でしたとも。大型犬を散歩させるような鎖を首輪につながれて、二人に学園のあちこちを引き回されたのですから。しかも、何も持っていないのは手の遣り場に困るだろうからと、両手の親指を背中でひとまとめに太い糸で括って――布ベルトに結びつけてくださいました。遠目には、破廉恥な格好を誇らしげにさらしてかっ歩しているように見えたことでしょうね。
何十日ぶりかで、股間に鎖が通っていない状態での歩行です。異物に侵されない心地好さよりも、すうすうすかすかする頼り無さが物足りない……のではなく、心細かったです。だって、陰裂を隠している鎖を見られるのと、陰裂の奥まで見えてしまうのとでは、やはり恥ずかしさが違いますもの。だから、人の目があろうとなかろうと、腰の奥では羞恥の炎が渦巻いていました。子宮が熱を帯びると膣口に粘っこい分泌がにじむのは、そういう生理的反応だと思います。
わたくしもそうでしたけれど、理事長の顔を知らない生徒は多くても校長を知らない生徒は居ません。校長への生徒の対応は、敬して遠ざける(respect away)です。しかも、後ろにはSSSというデリケートな問題が文字通りにひも付けられています。三人の散歩、あるいは二人による引回しは、誰にも邪魔されませんでした。
広い敷地を気紛れに散策して、最終的に連れ込まれたのは女子寮でした。女子寮の、以前のわたくしの部屋です。
最後に見たときには、荷物を一切合財持ち去られた空虚な空間でしたが、今は妖しい雰囲気に充ち満ちています。壁紙はどぎついピンク一色。窓は同色のカーテンで目隠しをされて、ミラーボールの七色の光点が天井から床まで踊り狂っています。そして、部屋の真ん中に、どかんと置かれた正方形の(キングサイズよりも大きな)ベッド。
そういう目的のための部屋だと、経験の無いわたくしにも分かります。
「何をしておる。こういう場面では率先して裸になるのが、SS生徒の務めだろう。教わらなかったのか」
反論する気力もありませんが、事実を誤解されたままだと、いわれのない罰を受けるかもしれません。
「せ、セキスパートとしての授業は受けていないのです。新学年度からだそうです。もし、よろしければ……いろいろと教えてくださ」
わたくしの、馬鹿。馬鹿ばか馬鹿。なぜ、こびるようなことを言ってしまったのでしょう。処女膜を破られるのが痛いのは、ジニアで目の当たりにしています。すこしでも優しく扱ってほしい――それが、奴隷根性というものです。むしろ、乱暴に扱われて、必要以上に痛くされたほうが、単純に相手を憎めます。
結果として、わたくしの言動は、強女3者を付け上がらせただけのようです。
命じられるまま、男の目の前で彼に正面を向けて十秒で制服を脱ぎました。もはや、指が震えることもなくなりました。
それから、男の上着とシャツを脱がせて。彼の前にひざまずいて、ズボンを脱がせます。そして最後に、これは彼の事情で脱がせにくくなっているパンツをずり下げました。
「では、おまえが奉仕する相手に挨拶をしてもらおう」
会った最初に屈辱的な膝折礼をさせられています。今さら何を――という疑問は、ありませんでした。彼は勃起した男性器を指差しながら、そう言ったのですから。さらに、醜悪(ugly style) で臭悪(ugly stench)なそれで、ぺちぺちと頬をたたきます。
こんな屈辱的な命令には従いたくありません。不服従がどれほどの罰になるのか、身を持って体験してみようかとさえ思いました。
けれど、そんな破滅的な考えはすぐに捨てました。鎖の貞操帯は、この日を迎えるために使われていたのです。この人は理事長。奨学金制度の創設者。
もしも奨学金を取り消されて、無一物で学園から放逐されたら。もっとも幸運に恵まれたとしても、公的機関の保護を受けることになるでしょう。子爵令嬢が、です。スキャンダルです。父様が爵位を剥奪されるのは必然です。母様が我が身を犠牲にした意味が無くなります。
わたくしは覚悟を決めて、目の前にある、水平射撃くらいまで勃起している男性器に口づけをしました。
「それから、どうするのだね?」
質問形ですが命令です。わたくしは閉ざしていた唇を(出来るだけ小さく)開けて、亀頭のあたりだけを口に入れました。フェラチオについては、ごく初歩的な知識くらいはあります。大衆向けの女性雑誌には、いろいろと書いてあります。平民がどのようなことに興味を持っているかを知るのも、現代の貴族にとっては大切なことです。決して衆愚に迎合するという意味ではありません――などと性奴隷が言っても虚しいだけですね。
初歩的な知識を実践に移して。亀頭をなめたり、冠状に盛り上がっている部分を唇でしごいたり。昼食と同じで、味はさっぱり分かりませんでした。敢えていうなら、生臭いしょっぱさでしょうか。フランクフルト・ソーセージみたいだったのが、たちまちボロニアくらいに太く、サラミみたいに硬くなります。
不意に突き倒されました。
「このビッチめが。どこで、そんなテクニックを覚えた? 誰かに仕込まれたのか? ケリーの大間抜けが!」
「違います。女性向けの通俗雑誌で得た知識です。実際にしたのは、これが初めてです」
わたくしは誇らしく思いながら、彼の思い違いを訂正しました。ただの知識を経験と勘違いされたのですから……でも、これって誇るべきことでしょうか。
それはともかく。
「ふん、信じるとしよう。では、どこまで知っているか、試してやろう」
ノートンが、巨大なベッドの中央であお向けになりました。水平射撃ではなく、対空射撃になっています。
「おまえが上になって、自分で挿入するのだ」
墓穴を掘ってしまいました。いえ、前向きに考えるようにしましょう。どこにどういうふうに挿れれば良いのかは、ジニアでの実験で分かっています。ならば――自分で具合を加減出来るのですから、痛みを減らせるのではないでしょうか。好きな人に処女をあげるのなら、激痛も大切な思い出になるでしょうが、不本意に、こんな中年男に奪われるのです。せめて肉体の苦痛だけでも和らげたいと願って当然でしょう。
わたくしは背を向けてノートンにまたがりました。
「失礼しますのひと言くらい断わらんか」
ぺちんとお尻をたたかれました。ちっとも痛くないです。
「ごめんなさい。気をつけます」
素直に謝っておきます。ちっとも悔しくないです。
腰を浮かして。ドライバーを使ったときを思い出しながら、陰茎の根本を右手で握って陰裂にあてがいました。小陰唇が蓋をしているので、左手の指をV字形にして――手と手がぶつかります。右手はお尻の後ろへまわして持ち替えました。
じわっと腰を落として、亀頭を陰裂に埋めました。膣前庭(でしょう)に亀頭が押しつけられるのが感じ取れます。腰をちょっとだけ前後に動かしてみたら、明らかに感覚の異なる点があります。ここが膣口でしょう。
このまま膝の力を抜いて腰を落とせば、それで処女は破られて、わたくしは娘から『女』になるのです。
けれど。ふっと迷いが生じました。このまま、みずからの意思で処女を失って良いのでしょうか。性奴隷に成り下がりセキスパートの道へ足を踏み入れて良いのでしょうか。
これまでだって、わたくしはみずからの意思で罰を受け辱しめられて……そうではなかったのだと、かつ然として悟りました。
罰を受けざるを得なかったから、縄目の恥辱を重ねないために、敢えてみずからの意思で手の動きを封じたのです。なぶられるしか選択肢が無かったから、抵抗して押さえつけられてなぶられる恥辱だけは回避したのです。クンニリングスは、あれは奉仕です。つまり、もっとも尊厳を保てる形での受身(passive)でした。
ですが、騎乗位で処女を失うのは――能動(active)です。それはもちろん――命令されてそうするのですから、大局的には受身(passive)かもしれませんけれど。
女が男に押さえ込まれて処女を失うのは、もっともありふれた状況でしょう。そのこと自体は、ちっとも恥ではないと思います。強女3されるのは屈辱ですが、性奴隷の宿命でしょう。
なのに、敢えて能動的(active)に振る舞うのは、みずからの意思で恥辱を求める破廉恥な行為ではないでしょうか。
わたくしはベッドから飛び下りて、床にひざまずきました。
「わたくしには出来ません。どうか、御主人様(My master)のたくましいおチンポ(dick)でわたくしを貫いてください」
可能な限り卑屈に卑わいに懇願しました。クイーンを護るためにはポーンを犠牲にします。
「ふふん、無理をしおって」
ノートンは薄く笑いながら身を起こしました。嘲笑ではなく満足のようです。
「子爵令嬢に淫売の真似は出来ぬか」
彼は手を伸ばして、再びわたくしをベッドの上へ引き入れました。
「小柄な娘には、こういうのも面白いな」
あお向けになったわたくしの両足をつかんで高々と持ち上げ、さらに頭のほうへ折り曲げました。この形でチャーリイとジニアに何度拘束されたことか。手足に冷たい手錠が食い込んでいないのが不思議に感じられます。
ノートンは手を添えることなく、亀頭を陰裂に埋め込み――ぐいと腰を突き出しました。
びききっと股間に亀裂が生じたのが、はっきりと分かりました。
「痛いいいっ……!」
悲鳴を抑える理由は無いと思うので、自分に素直になります。
唇の両端に指を引っ掛けて力一杯に引っ張られて――唇の中央が裂けたら、きっとこんな痛みだと思います。ジニアと違って痛みを的確に描写できます。
「見ろ、マイティ。おまえの娘の純潔は、われが散らしてやったぞ」
ノートンが雄叫びを上げました。
男爵まで含めても、世襲貴族は八百家くらいのものです。狭い社会です。父様とノートンが知己であっても不思議はありません。けれど、父様に恨みがあるような口振りです。
そのことについて彼に尋ねるのは、新たな災厄を招き寄せるのではないかと恐れました。そして、尋ねるどころではなくなりました。
彼が動き始めたのです、わたくしの中で。
ずぐうっ、ずぐうっと、お腹の奥まで、熱した太い鉄棒を押し込まれているような激痛です。鉄棒が途中まで抜かれるときには、傷口を引きむしられるような痛みです。彼の動きで、激痛がうねくります。
「ひぐっ、ひぐっ、きひいい……」
歯を食い縛っていても、うめき声を抑えられません。こんなのを何度も繰り返せば、本当に痛みが無くなって、通俗雑誌に書いてあるみたいに他では替えられないほどの快感を得られるようになるのでしょうか。信じられません。
足を持ち上げていると、動きを制限されるのでしょう。じきに彼はわたくしの足を開いて膝を曲げた形にして、ベッドへ戻しました。そして、いっそう激しくいっそう深く腰を動かします。
わたくしは、ただただ激痛に身を委ねているしかありません。
やがて、激痛が常態となって、わたくしのうめき声も治まった頃、彼は腰全体をわたくしの股間に打ちつけるほど荒々しく動き始めた――と思ったら、不意に動きを止めました。そして、わたくしから身を引きました。その瞬間は分かりませんでしたけれど、射精したのだと思います。
股間の汚れを指ですくって確かめる気にはなれませんでしたし、その暇もありませんでした。わたくしは、床に引きずり下ろされたのです。
「跡始末をするのも、セキスパートの務めだ」
彼はベッドに腰掛けてわたくしを引き寄せ、股間に向けて頭を押しつけます。フェラチオをして汚れをなめ取れという意味でしょう。男の白い精液とわたくしの赤い血に染まった陰茎を。
すでに開け放っているドアをもぎ取るような仕打ちです。いいでしょう。ハンマーでたたき壊してやります。
わたくしは目をつむって、威勢を失っている陰茎を頬張りました。ねとっとしたおぞましさが舌にへばり着きます。生臭くて鉄臭て、吐き気が込み上げてきます。それでも堪えて、陰茎全体をなめます。命令されて、太いストローの中に残っている汁まで吸い出しました。
「おまえの娘はここまで堕ちたのだぞ、メアリー。見せてやれぬのが残念だ」
父様だけでなく母様にまで遺恨があるようです。たとえ災厄を招こうとも、尋ねずにはいられませんでした。
「母のことも御存知なのですか?」
言葉は選んだつもりですが、軽々しく他人の妻に言及した非礼をとがめるニュアンスは隠しません。
「なんだ、知らなかったのか。われとやつとは同学年で――三つ年下の伯爵令嬢をめぐって決闘紛いのことまでしたかな」
初耳です。そんな激しいラブロマンスがあったなんて。
「勝ったのは、われだった。ところがメリーときたら、怪我をしたマイティに同情する余りに、われを野蛮だのひきょうだのと……」
わたくしだって。わたくしを争って一方が怪我をしたら、その方に肩入れするでしょう。まして……父様とノートンとでは、風格もハンサムも段違いです。これは、父親に溺愛されている娘の水増しもあるでしょうけれど。
「あ……」
わたくしは素晴らしいアイデアを思いつきました。そのように錯覚しました。処女を奪われた衝撃で、冷静な判断が出来なくなっていたのでしょう。ノートンのことを、今も母様に未練があるなどと勘違いしてしまったのです。いえ、勘違いではありませんでした。けれど、好意と悪意を読み違えていたのです。
「わたくしの母が、父の借金まで背負ってしまったのを御存知でしょうか。幾らかでも扶けていただけるなら、どのようなことでも致します」
冷静に考えれば。わたくしは、どのような命令にでも従わなければならないのですから、無意味なお願いです。けれど、ノートンはそれを指摘しませんでした。
「メリーが好きでやっていることだ」
それは違いますと反論しかけたのですが、彼の次の言葉を聞いて、声を失いました。
「新大陸の連中は貴族に弱いから、一晩に三千ドルは稼げるものを――合法性にこだわって、ドイッチュで飾り窓の女だ。十年経っても五十万ポンドは無理だな」
まさかと疑っていた『出稼ぎ』の真実が明かされました。なぜ、ノートンはそれを知っているのでしょう。私立探偵を雇えば可能でしょうけれど、それにしては話しぶりが主観的に過ぎるように思えます。
「まさか、あなたが……母にお金を貸してくださった……?」
「御主人様(My master)だ。我が君(My lord)でも苦しくないぞ」
誰が。とにかく、言い直して尋ねましたけれど。
「三十を過ぎた婆あに、五十万ポンドの価値は無い」
否定のようですが、思い入れは経済的に評価できないのではないでしょうか。
「それよりも、アイリス――おまえの処遇だ」
いきなりの話題転換です。それとも、つながっているのでしょうか。
「おまえは、われにどのように扱われたいかな。われがほれたメリーの娘として可愛がられたいか。それとも、われが憎むマイティの娘として虐げられたいか?」
本気の質問とは思えません。わたくしの処遇はとっくに決めていて、言葉でなぶっているのです。
なんと答えれば良いか、わたくしには分かります。それは、こうです――御主人様(My master)のお好きなように可愛がってください。
ですけれど、これだけは言えません。ドアはすでにたたき壊されていますが、それでも、象を通すほどの広さは無いのです。
そして。わたくしがこれからこの男にたたきつける言葉は、母様にも迷惑を掛けるかもしれません。それを思うと、お腹の奥深くに大きな氷塊が生じます。けれど母様もすでに、奈落の底に堕とされているも同然なのです。
わたくし自身は、この台詞がどれほどの迫害を招こうとも、青い血に懸けて、父様と母様の名誉に懸けて、言わなければならないのです。
「あなたを拒んだ母の娘としてあなたを拒み、あなたが憎む父の娘としてあなたを憎みます」
言いました。恐怖に乳房を握り潰される思いです。熱い戦慄が腰を貫きます。
「そして、アイリス・フッドとして、わたくしを汚したあなたを絶対に許しません」
不安の氷塊と恐怖のしゃく熱とが、ひとつの大きな渦巻となって、わたくしはほとんどこうこつの思いです。熱くにじむのは、溶けた氷塊でしょうか。
「くくく……」
ノートンが愉快そうに(でしょうか?)笑っています。
「喜んで被虐を選ぶのか。ケリーの見立て通りだな。天性のマゾヒストだ」
違います! 虐められることを望み、そこに性的な愉悦を覚えるような、わたくしはそんな変態ではありません。
青い血筋のこの男が、わたくしの尊厳を懸けた決意を理解しないなんて……いいえ、理解して、その上でわたくしをおとしめているのです。
けれど。抗議をすればするほど、この男を喜ばせることになるでしょう。わたくしは、SF映画のように目から殺人光線が出てくれることを祈りながら、ノートンをにらみつけてやりました。
もちろん、彼はけろりとしています。
「よかろう。おまえの望み通りになるよう、ケリーに念を押しておこう。楽しみにしているが良い」
こうして、わたくしの人生最悪の一日は……ようやく始まったのでした!
ピンク一色の強女3部屋に校長と、個人的な研究とか単純にバカンスのスケジュール調整で居残っていた四人の教師が呼び集められたのです。
さまざまな体位で、わたくしは犯されました。一大決心で拒絶した騎乗位も強いられました。六人もの男に取り囲まれて、か弱い少女に何が出来ましょう。強制的なフェラチオ(イラマチオというのだそうです)のあげく、飲精までさせられました。
悔しいことに、行為を繰り返されるたびに痛みは小さくなっていきました。屈辱と憤激が腰の奥で燃え狂っていましたが、もちろんそれは快感ではありません。陰核を刺激されたときの稲妻とは、まったく異質の『感覚』という言葉が果たして適切なのかも分からない、感情の渦巻でした。
校長は「明日の朝まで」と言っていましたが、その通りになりました。いえ、夜を徹して犯されていたという意味ではありません。
ノートンはわたくしに、物置小屋からピンク一色の部屋まで、ベッド代わりの長机を運ばせました。鎖の貞操帯も着けていない全裸で――というのは、大した問題では(あるのですけれど)ありません。処女膜を破られ膣口を拡張されて、ずきずき痛いのです。まだ太い陰茎を挿入されている感覚が強く残っていて、まともに歩けません。それなのに、重たくて脚を折り畳んでもかさばる長机をひとりで運ぶのは、ことに階段では重労働です。打ちのめされてなんかいませんけれど正常でもない精神状態ですから、いっそうつらく感じられます。わずかに救いだったのは、運ばされたのが二台だけだったことでしょうか。それでも、二往復もさせられたのです。
そしてわたくしは、間隔を開けて並べた長机に手錠でX字形に張り付けられて夜を迎えたのです。チャーリイとジニアが帰省してからの数日間はのびのびと(それまでの反動で)身を丸めて寝ていられたのに、また逆戻りです。それでも、ふかふかのじゅうたんに身を横たえるのは快適でした。
ノートンにベッドの上から見下ろされるのは不快でした。
開脚を強いられていても、股間に巨大な異物を突っ込まれているような違和感がしつこく残っています。これまでは裸にされて教鞭でたたかれたり、補習という名目で悪戯をされたり、一対四でCACCとか称して痛めつけられたり、無意味な重労働を押しつけられたり――さんざんに身体の表面に対する虐待(abuse)をされてきましたが、とうとう女の核心を身体の内側を暴行されてしまったのです。それも輪姦(gangbang)という最悪の形で。
ついに決定的に、性奴隷(Sex Slave)にされてしまったのです。それでも――心を高潔に保っていれば、わたくしの体内に流れる青い血の尊厳を侵すことなど出来ないのです。ええ、そうですとも。
物事があるべき形に定まってしまったという思いは、心に安らぎさえもたらします。もちろん、午前中の重労働のせいもありますし、深く傷つけられた魂が回復する時間も必要だったのでしょう――契約書に署名してからは絶えて無かったことですが、不安にさいなまれながら夜半に目を覚ますこともなく、わたくしは朝まで熟睡したのです。
――脇腹を蹴られて、わたくしは目を覚ましました。まぶしいです。昨日とは打って変わって、ピンクの色彩が軟らかです。カーテンが引き開けられて、朝の陽光が部屋に満ちていました。
きわめて狭い意味での『女』にされて初めて迎える朝でした。恥辱にまみれた感慨にふける暇もなく、わたくしは部屋を追い出されて――そのまま、昨日の重労働の続きをさせられました。
その日のうちに、校長からアフターピルを与えられました。それでようやく、強女3には妊娠のリスクまで伴っているのだと思い至りました。けれど、アフターピルを服用し、翌日からは継続的に低用量ピルを使えば、その心配も無くなります。しかも、わたくしを犯したのは、身持ちの固い貴族と教師。性感染症の恐れもありません。まったく、性奴隷としては申し分のないデビューでした!
五日後には、性器からの出血を見ました。つまり、きわめて狭い意味での『女』になった後に、もうすこし一般的な意味での『女』になったのです。順序があべこべですけれど、セキスパートとしては誇るべきことなのでしょうね!
実は、この出血は初潮ではなかったらしく、さらに二週間後に、もっと多量で黒っぽい出血が三日ほど続きました。こちらが通常の生理で、最初のはアフターピルの副作用だと、夏休みから戻ったミルダに教わりました。ちなみに、どちらの出血もタンポンで過ごしました。ひもが股間から垂れるのは陰裂を直視されるよりも恥ずかしかったです。
こういったことを思い出すだけで、怒りで子宮が熱くなります。けれど、考えずにはいられません。どころか――こういったこと以上のことが、夏休みの最後には立て続けに起きたのです。
小講堂の外壁の洗浄作業は、校長が後出しで決めた五日の期限を四日も超過してしまいました。そのこと自体には、覚悟していた罰則もありませんでした。けれど、いっそう無意味な労働を次々と押しつけられました。ふたつの教室の机を入れ替えたり、歯ブラシを使ってトイレの床と便器を磨かされたり、もはや詳述する気力もありません。
けれど、そんな馬鹿げた単純労働のほうが、八月も下旬になってからさせられた仕事よりは百倍もましでした。
新学年度は九月から始まりますが、実際に授業が始まるのは中旬からです。それでも、寮生活のリズムを取り戻すために、八月の末頃からは生徒がぼつぼつと戻って来ます。余暇を利用して勉学に勤しめば良いものを――仲良しグループが集まって、ピクニックに遠出してみたり敷地の一画でキャンプをしてみたり。
ピクニックはわたくしへの実害がありませんが、学内でのキャンプは被害甚大でした。わたくしが遊び道具として、彼らに貸し出されたのです。
ノートンに処女を奪われた翌日からは、わたくしはジニアと同じ形の貞操帯に改められていました。股間を割る鎖が無くなって、そけい部をY字形に通るのです。つまり、女性器が無防備です。しかもジニアと違って、わたくしは私物のパンティを持っていません。
そうなると、男子生徒がどのようにわたくしで遊ぶかは分かり切ったことです。
最初は、九月からY8とY9になる五人のグループが相手でした。Y8はわたくしと同学年ですし、一学年の男子は二十数人ですからY9の全員も知っています。
レビー・ブロックス、アル・ブライトン、エド・フォーグス、ウォルター・デライト、フォーグ・シェブラン。いえ、名前なんかどうでもいいです。こういったプライベートな催しには珍しく、キャンプファイヤーもしないのに教師のジャス・レイカーが監督として付いていたのが不可解でしたけれど、すぐに彼の役目が分かりました。五人の生徒は、全員が童貞(cherry boys)だったのです。わたくしは、ひと晩で五粒のさくらんぼ(cherries)を食べさせられました。残念ながら(ではないです)レイカーの指導では、さくらんぼは美味しくなかったです。
これで、わたくしの経験人数は両手では足りなくなってしまいました。セキスパートのレッスンを受ける前に、一人前以上になってしまったのです――などというのは、まったくの勘違いと思い上がり(?)でしたが、それは後日のお話です。
二日空けて、Y13ばかり四人のグループに貸し出されました。二人が経験済みだった(さんざん自慢していました)せいでしょう、指導教官は付きませんでした。おかげで、酷い目に遭いました。
彼らは、わたくしがあまり反応しないことに自尊心を傷つけられたみたいです。
身体を不本意に弄ばれて、強女3されて、それで性的に興奮するとでも、彼らは思っているのでしょうか。
乳首をくすぐられれば、稲妻の影くらいは走ります。陰核をつままれれば、どうしても稲妻が腰を貫きます。けれど、わたくしは強い意志の力で、腰の奥の火種を押さえ込んだのです。わたくしは性奴隷です。女を搾取されるのです。喜んで与えるのではありません――これが心得違いだと悟るのも、後日のお話です。
彼らは焦れて。わたくしの性感を開発にかかりました――遊び半分で。授業が始まれば(本当は始まる前から取り組むべきですけれど)、学年末の全国統一試験を目指して、一日の半分は勉強漬けになるのです。後の半分は睡眠時間と食事などです。だから、一日じゅう遊んでいられるのは、あとわずかだという思いが、遊びを過激に走らせたのでしょう。四人のリーダー格のゼラス・ソールベイという男が、性的に倒錯した趣向の持ち主だったのが、いちばんの原因と思います。五歳も離れていると、もはや男子生徒ではなく大人の男と変わりありません。これは、どうでも良くはないことです。わたくしへの加虐の度合いが、教師やノートンと同じくらいに残酷になるのですから。
彼らはわたくしたちの寮舎である物置小屋から長机を持ち出して、裏返しにして並べた間に、わたくしをX字形に張り付けました。夜は手錠でその形にされていることは、いつの間にか広く知れ渡っています。
ソールベイが幾つかの日用雑貨を机の上(裏側)に並べました。電線をまとめたりキャンプでもペグの補助に使える結束バンド、長短のヘアピン、小さな輪ゴムと太い糸。
「一度実験してみたかったんだ。まさかロザリンドには頼めないもんな」
ガールフレンドには出来ないことでも、性奴隷になら出来るということです。
彼は、わたくしの乳房の根本を結束バンドで縛りました。以前の北緯三十度オレンジだとバンドがすっぽ抜けたでしょうが、『女』にされた下半身に追いつこうとしているのかピルの副作用か分かりませんけれど、北緯二十度まで盛り上がってきたし、サイズもマーコットからマンダリンくらいに成長しました。つまり、すっぽ抜けるどころか、根本をぎちぎちにくびられて、丸ごとの(小ぶりの)オレンジにされてしまったのです。圧迫されたせいで、乳首も硬くしこって突き出しています。
その乳首をヘアピンで挟まれました。それでしごかれるのはちょっと痛かったのですが、髪を安定させるために湾曲している部分に乳首がはまり込むと、適度の刺激で気持ち好く……なるはずもないですけど、痛くはないです。
ところが。彼はヘアピンの一端に指を引っ掛けて回し始めたのです。ゴム動力の模型飛行機がありますよね。飛ばす前にゴムを巻く。あんな感じです。乳首も引っ張られますけれど、硬くなっているし乳房もぱんぱんに張り詰めているし、ヘアピンが外れる気配はありません。
くすぐったいのですが、何回も回されているうちに、ごろごろと雷鳴がとどろいてきました。
「あんっ……」
なまめかしい声を漏らしてしまいました。
すると、指がぴたりと止まりました。続けてほしいという思いが、ちらっと頭をかすめましたけれど、もちろん口にはしません。
ソールベイは二本目のヘアピンをつまんで――もう一方の乳首もヘアピンで挟みました。両手をつかって、左右のヘアピンを同時に回します。
雷鳴が左右の乳首から乳房にまで伝わって、心臓まで震わせます。
「あんっ……あんっ、あああ……」
雷鳴とか稲妻とか、比喩表現をしている余裕がなくなってきました。快感が乳首を貫き乳房を震わせるのです。
そこまでわたくしを追い込んでも、ソールベイは不服のようです。仲間に枕を持って来させると、わたくしの腰を持ち上げてお尻の下に押し込みました。そして、天に向かって突き上げた股間をから陰核をほじくり出しました。
包皮を剥かれる感触に続いて冷たく細い感覚が……
「ひゃうんっ……!」
実核までヘアピンに挟まれたのです。けれど乳首みたいな純粋の快感は生じませんでした。ヘアピンが回転すると、それに引きずられて陰核がぐにょんと変形します。すぐにヘアピンが抜けてしまいます。
ああ、良かった。乳首だけでこの有り様です。何倍(何十倍?)も敏感な陰核、それも剥き身の実核に同じことをされたら、アリスにされて、もうすこしでどうかなるところだった、その先へ達していたでしょう。そこは足を踏み入れてはならない禁断の地だと、わたくしの本能が告げています。
「これを使ったら、どうかな。ニリッサは、白目を剥いて気を遣るていうか、気を失うんだぜ」
もう一人の経験者であるガース・ルドロウが歯ブラシを手に持って、わたくしを挟んだ反対側にしゃがみ込みました。そして、包皮を剥き下げられてヘアピンで固定されている実核に歯ブラシで触れたのです。
「ひゃあっ……?!」
ちくっとブラシの先が突き刺さってきて、凄まじい稲妻が走りました。痛みはあったのですが、その何倍もくすぐったくて、それよりも……快感なのでしょうか。びくんっと腰が跳ねました。みずから実核をブラシに押しつけた形になって、一瞬さらに刺激が強くなったのですが。そんなのは序奏でした。
歯ブラシが、さわさわっと小さく動いて……
「いやあああああああっっ……!」
叫びました。
無数の針に刺されたような鋭い痛みと、腰全体が砕け散るような、混じりっけ無しの、恐怖の塊のような快感……なのでしょう。
びくんびくんと跳ね続ける腰。ルドロウは馬乗りになって腰を押さえつけ、しつこく歯ブラシを動かします。
上からのぞき込む二人の顔もその後ろの景色もはっきりと見えているのに、すうっと視界そのものが遠ざかるような奇妙な錯覚。
「やめて、やめて……分からない、分からなくなっちゃいますううう!」
無意味な言葉を叫ぶうちにも、さらに快感が膨れていって……不意に止まりました。
ソールベイの顔が小さくなって、向きを変えて……膣口が拡張される感覚。ずぐうっと、怒張した陰茎が膣に押し入ってきました。すうっと、訳の分からない快感が引いていって、目の前にはソールベイの顔。あり得ないほどに鼻が膨らんでいます。
ただ目をそらすだけでは気が収まらず、露骨に顔を背けてやりました。
「なんだよ。そんなにぼくが気に食わないのか。ひと晩に五人も六人もはめ狂うビッチのくせに」
「気に入らないのは、あなたではありません。こういうことをされるのが嫌なのです」
言うだけ無駄と分かっていても、信じられないほどの快感を台無しにされた腹立ち紛れです。
「うそつけ。あんなに激しく善がってたじゃないか」
彼も腹を立てたのでしょう。腰を激しく打ちつけてきて――すぐに果ててくれました。
三日前のときは、ひとり終わる都度にレイカーが携帯ビデで洗浄してくれたのですが、今日は次の人のセルフサービスです。コーラの瓶を激しく振ってから、泡を吹き出している口を膣に挿入されました。性交よりも、よほど気色悪いです。
手錠でX字形に張り付けられているから、自分で手加減することも出来ません――ではなくて。たとえ両手が自由で、携帯ビデを持たされたとしても、命令で強制されるまでは決して自発的に使ったりはしなかったでしょう。陵辱される準備を自分でするなんて真っ平です。そういう意味では、拘束されているのがありがたかったくらいです。
ソールベイの後は童貞の二人が、彼に負けないくらいのスピード記録を達成しました。しんがりのルドロウは、三人を合わせた時間の倍くらいは粘りました。
童貞五人のキャンプでは、用済みになってすぐにキャンプから追い出されたのですが、今日はさらに遊ばれました。張り付けからは解放されたのですけれど、三点の突起に着けられたヘアピンをそのままにされたのです。詳しくいうと、乳首のヘアピンは水平に、陰核のヘアピンは垂直にされました。外れないように、ピンの先端を小さな輪ゴムで縛られたので、圧迫が強まりました。
自分では決して触るなと命令されました。だから、もしも(仮定法過去ですよ)乳首のヘアピンを回してみたくなっても出来ません。
それから、『サイモンの命令(Simon says)』という遊びをさせられました。本来の遊び方は、大勢の中で一人がサイモンになって単純な動作をしながら「サイモンの命令、○×をしろ!」と指示します。みんなは、言われた通りにするのですが、「サイモンの命令、右手を上げろ!」と言いながらサイモン役は左手を前に突き出したりします。動作を真似たら間違いです。あるいは「ぼくの命令、ジャンプ!」とか「頭に触れ」とか、キイワード「サイモンの命令」がない指示にも従ってはいけません。
間違えた人から抜けていって、最後まで残った人が次のサイモンになるという、ただそれだけの遊びです。低学年の子ならともかく、Y13にもなってするような遊びでは――あったのです。
四人がサイモンになって、指示に従うのはわたくしだけという変則的な遊び方です。そして、間違えたらズボンのベルトでたたかれるのです。
「サイモンの命令、おっぱいをもめ」
「サイモンの命令、マンコに指を挿れろ」
「サイモンの命令、乳首のヘアピンを回せ」
「サイモンの命令、もっと速く回せ」
自分で自分を刺激するなんて、四人に見られながら自慰をするに等しい行為です。そう思うと、胸いっぱいに羞恥があふれ、腰の奥で憤怒がうねります。
「回し続けろ」
バチン!
「きゃあっ……?!」
お尻をたたかれました。
「ただ『回し続けろ』って言ったんだから、止めなきゃ駄目だろ」
そうでしょうか。論理的に考察すると、「回し続けろ」の命令は無視して、「サイモンの命令、もっと速く回せ」を継続していると――解釈したって無駄ですね。わたくしに恥ずかしいことをさせて、口実を設けて虐めるというのが、この遊びの目的なのですから。
二人から矛盾する命令を出されたり、単純にわたくしが間違えたりして。お尻に六発、乳房に二発、股間に三発のベルトを受けて、ようやくゲームは終わりました。最初みたいな不意打ちは少なくて、「サイモンの命令、右手で右手をつかめ」なんて不可能な指示を実行できなかった罰として股間をたたかれる前には「サイモンの命令、足を開いて腰を突き出せ」なんて言われたりしました。
言葉のどんな意味においても玩具として弄ばれている。そう思うと、頭がくらくらして、全身が屈辱で火照りました。膣からこぼれた熱い滴りは、きっと涙です。
――キャンプは他にも何組かありましたけれど、わたくしが貸し出されたのは、この二回きりでした。
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それは、そうと。大きな見落としをしていました。日本でなら、それ系の私学でない限りスルー出来る宗教。
大急ぎで、大講堂に教会が付属しているとか、悲劇の始まりを6/14の勝利の日ではなく、戦勝の翌日、神に感謝を捧げる全学集会(プロテスタントでは、ミサとはいいません)の直後にして。Sodomy(大罪です)あたりで、神への懺悔を考えて、いいえ、わたくしは被害者ですと思い直して、ついでに、最初の頃に破廉恥な(ノーパン超ミニ裸ジャンスカ)を神に懺悔しなさいと神父に諭されて、以来、教会には足を踏み入れていないとか――いやあ、ワープロって便利ですねえ。
さて。6/23は大いなる骨休めでしたが、今日6/26は夕方から飲み会。まあ、午後1時時点で18枚は書いてますけど。
英気を養って月末に向けてニトロ注入メタノール噴射と参りましょう。
只今、Submissionの後半です。キャティ・ストック(虐められラビニア)の仇討に父上が大西洋を越えて乗り込んできて、渾身会心痛恨の十連撃くらいでメコ筋縦打ちを食らわせて。それでは足りずに、PLOTで予定していなかった、濠門長恭劇場定番の後ろ手錠強制騎乗位をさせているところです。まだピストンを始めていませんが、当然クリを摘まんで、スクワットをしたら自分で自分のクリ虐め――の予定です。
この後、同じ章でキャティ自身によるヘアブローチ復讐(Progress Report 0 参照→)が、やっぱり20枚はいくかな。
その後のSkillは、これまた定番のソープ講習です。講師は本場チャーパンから呼び寄せた現役嬢のカガリ・アカギ(加賀、赤城)です。
ヒロインは「実技講習を受けるという契約ですから、ちゃんと守りますわ」で、常に学年トップを争っていたプライドに懸けて、こちらも頑張るとか? まあ、尺は短いでしょう。気分的には『ママと歩むSlave Road』何頁から何頁 および 『昭和集団羞辱史:浴場編』何頁から何頁を参照――てなものですから。
Sodomyもカルメン77に流す予定。
元々は終章のはずだった Showtimeはじっくりねっちりの予定ですが。
以後は点描。最後のデュアル・エンドもそれぞれ20枚くらいでしょうか。
さいわい、6/29、30が連休ですので、ここでShowtimeに突入できれば、遅くとも7/10までには脱稿。間に合いそうですね。
しかし、現在で440枚。とんでもないことになったものです。
さてさて。今回は、ずううううっと引っ張ってきた除膜式です。
強制騎乗位破瓜も大好物なのですが、ヒロインは、あくまでpassiveにアレコレされてきたので、activeに動くのは絶対に嫌! と抵抗してしまって。そこで厳罰拷問で命令に服従させると尺がとんでもなくなるし爾後の展開が破茶目茶るので、あっさりと――今回は1982年のユナイテッド・キンガム・オブ・イングルが舞台なので現代日本のエロ用語は控えておるのですが、書いてるときもそういう意識は無かったのですが、読み返してみたら、つまりはマングリ返しです。実に淡々と破瓜がいきました。そして、お掃除フェラで締めくくり。
ということで、Sexperienceを一挙公開先に立たず。

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Sexperience
バカンスも娯楽も無く勉強も出来ず、貧しい食事で過ごした夏休みでしたが、無理に捻り出したような雑務をあれこれとさせられた五週間でした。そのうちの一日には、人生でただ一度きりの女の一大事も経験させられました。
順を追ってお話しします。
八月に入ってすぐ、わたくしは大変な重労働を押しつけられたのです。
父様が寄付をしたフッド記念小講堂。こけがはびこって、すこし見苦しくなっています。このまま十年も放置すれば、むしろ風格になるのでしょうけれど。これを洗い落としてきれいにしろと、校長に言いつけられました。高圧水を噴き付けて汚れを吹き飛ばすのです。水浸しになって地面に落ちたこけは、シャベルですくって一輪車で運んで一か所に集めておけば、後で清掃業者が回収に来るそうです。
高圧放水が建物に侵入しないよう、すべてのよろい戸を締めて、それでも光が漏れている部分は内側からガムテープで目張りをします。この仕事だけで、丸一日かかりました。閉めきった中での作業でしたから、汗びっしょり。コインランドリーの使用までは禁止されていませんが、わたくしはコイン一枚持ち合わせていません。校長は貸してくれません。とりあえずは制服を水でぬらしたタオル(これも、学園からの貸与です)で汗を拭いて陰干しにしました。
二日目からは、エンジン付きの高圧洗浄機で(窓は狙いを外して)建物に放水です。ずどどどどとエンジンが小タンクに蓄圧して、それで大タンクに貯めた水道水を噴き付けるのです。
「また汗をかくし、その前に放水でびしょぬれになるから」
そんな理由で、全裸での作業を命じられました。夏休みでも、運動部の生徒の一部は、新シーズンに向けたトレーニングで学園に残っています。それに、普段は出来ない大規模なメンテナンスでいろんな業者も出入りします。教室内で全裸になるより、百倍は恥ずかしいです。
それでも。人目のない時間帯にはチャーリイとジニアに強いられて、全裸で小屋からガレージまで往復していたのですから、昼間だってへっちゃらだと自分に言い聞かせたのですけれど。学園としては不都合もあるのでしょう。タオル一枚だけは局部を隠すのに使っても良いという寛大なお許しをいただきました。皮肉です。
でも、フェイスタオルです。腰に巻いても、どこかしらが露出してしまいます。わたくしとしては、腰の横で結んで太腿の片方を露出させておきた(くな)かったのですが、なぜか後ろで結ぶように命令されました。お尻が丸見えになってしまいます。そんなわたくしの都合は、逆らう理由にはなりません。そして、従う理由は幾らでもあります。
そうして、外壁の洗浄作業を始めたのですが。水鉄砲で遊ぶのとは、根本的に違います。放水の圧力が凄まじいのです。両手でしっかりとホースを抱えて、両足で踏ん張っていないと後ろへ倒れてしまいます。
そんな激しい勢いでも、なかなかこけは剥がれてくれません。飛び散る汚泥は、離れていても全身に浴びてしまいます。半日かかって、全身泥まみれになって、正面の壁の三分の一もきれいになりませんでした。放水が激しいので、蛇口を開けっ放しにしていても、じきにタンクは空になります。タンクが満たされるまでの時間は、洗い落とした汚泥の回収です。汚泥をシャベルですくって集めて一輪車へ移し、いっぱいになったら十メートルほど離れた場所に設けられた集積所へ運びます。貯水に要する時間よりも、こちらのほうが長くかかります。つまり、ひと時たりとも作業現場から離れられないのです。
そのうち、困難な問題が生じました。炎天下での労働です。喉が渇きます。けれど、飲み水が近くにないのです。手元にはあふれるほど「水」はありますが、上水道の質は悪いし、タンクの中でさらに汚染されています。ずらっと連なっている校舎を横切ってガレージの洗車場へ行くくらいなら、物置小屋へ戻ったほうが早いです。ミネラルウォーターもあります。
休み休みの作業(と、校長は決めつけました)だから、あらためて休憩は取るなと厳命されていましたけれど、十分とかからずに戻って来れるのだからと、持ち場を離れたのですが。空気を圧縮するエンジンの音が止まりっぱなしになったので、校長に気づかれてしまいました。
「隙を盗んでは怠けようとする。きみは、心まで奴隷根性に染まってしまったのかね」
教鞭で女性器をたたかれるよりも、ずっと厳しい鞭でした。日射病で倒れるまで、絶対に持ち場を離れまいと、自分に固く誓いました。
そうして、作業の三日目を迎えたのです。朝のうちに出来るだけ多量にミネラルウォーターを飲んでおこうと思いましたけれど、それはそれで、汗が追いつかずにトイレに行きたくなるのではないかと心配になって、結局は適当なところで妥協してしまいました。
作業の時間帯は授業と同じですが、準備がその前にあるので、実際には午前八時から外に出ます。八時半から作業を始めて、十一時を回る頃には喉の渇きが強くなってきました。正午からは一時間の昼休みがあります。それまでの我慢だと思っていたのに。
校長が進捗状況を見回りに来て、命にかかわるような無慈悲な命令を下しました。
「これでは、期限の五日間では終わりそうにないね。昼も休まずに働きなさい」
期限だなんて、今初めて聞きました。進み具合を見て、間に合いそうもない期限を後出しに押しつける。そうとしか思えません。それでも、そのこと自体には抗議しませんでした。
「分かりました。でも、十分だけでよろしいですから、水を飲みに行く時間をください」
ここまで卑屈になるなんて、子爵令嬢の軽蔑の眼差しが、どこかから突き刺さってきます。それなのに、校長はわたくしの哀願を聞き届けてくれません。
「駄目です。この一面が終わるまで、夜になっても続けなさい」
実行不可能な命令を残して、校長は校舎へ戻って行きました。
お腹の底のほうに、冷たい氷塊が生じました。これまで、悔しさが腰の奥で熱くたぎることは幾度もありましたが、これは初めての感覚ではないかと思います。けれど……
よろしいですわ。御命令の通りに働き続けます。日射病になろうと過労で倒れようと、お好きなように虐めてください。そう覚悟を決めると、いつもの憤激と屈辱のない混ざった熱い感覚がよみがえってきました。氷の塊と炎の塊。相反する感情が同時に……あれ?
どちらも怒りと悔しさのはずです。なぜ、相反するなどと考えたのでしょうか。なんて、哲学的思索にふけっている場合ではありません。一切手を抜かず、ぶっ倒れるまで働いてやりますとも。入院させてもらえれば、その期間はたっぷり休めます!
なんて決心した時点で、わたくしはすでに正気を失っていたのかもしれません。
しばらく作業を続けていると、自分がとんでもない愚かなことをしているように思えてきました。だって、水は目の前にたっぷりとあるのです。たくさん飲めば、お腹を壊すかもしれませんけれど――ちょっと喉の渇きを潤すくらいなら、平気ではないのかしら。
その考えは、すごく魅力的でした。本当に、ちょっと試してみるだけだから。
わたくしはノズルをぎりぎりまで絞って、ちょろちょろとあふれる水に口をつけてみました。
おいしい。金臭いし舌がぴりぴり刺激されるけれど、それすらも芳純に感じられます。ちょっとだけ、もうひと口だけ――喉の渇きが潤されて正気を取り戻すまでに、コップ三杯分くらいは飲んだのではないかと思います。
天罰はてき面でした。飲んですぐに、お腹がごろごろ鳴り始めました。これはいけない。すぐに吐きださなければ。けれど、飲むと同時に水は身体に吸収されてしまったのでしょう。喉に指を突っ込んでも、空えずきばかりです。
仕方がないので作業を再開しました。けれど、お腹のごろごろは大きくなるばかりです。痛くなってきました。それだけなら、耐えられたかもしれませんけれど。致命的な感覚が、お腹のいちばん底のあたりに生じました。今すぐトイレに駆け込まなければ、粗相をしでかしてしまいます。
けれど、絶対に持ち場を離れないと、他の誰でもない自分自身に誓ったのです。校長に知られたら、今度こそ罰を受けるでしょうが、それはたいした問題ではありません。奴隷根性と言われようと、わたくし自身が心を強く持っていれば、わたくしの高潔は揺るぎません。けれど……お漏らしを、それも小さな子どもですら滅多にしない粗相をするなんて、それもわたくしの尊厳を踏みにじります。
どうしよう……その迷いが、ついにわたくしを破滅させました。
「ああっ……だめえええええ!」
ぶじゃあああっと、半固形物の混じった水流が地面をたたきました。
「いやあああ……」
地面にうずくまってしまいたいところですが、汚物の中にしゃがみ込むなんて、それも出来ません。ぼう然と立ち尽くして、わたくしは泣きじゃくりました。
それでも。十分も経ってから、ようやく気を取り直して。高圧洗浄機のノズルを調節して、お尻の汚れを洗い流しました。股間の鎖を左右にずらしたり前後に引っ張ったり、その刺激で生じる感覚になど、かまっていられません。絶対に汚物が付着していないと確信できるまで、入念に洗いました。それからノズルを全開にして、地面がえぐれるほど粗相の痕跡を洗い流しました。
もしかして、誰かに見られていたかもしれないと気づいたのは、すべての証拠隠滅が終わってからでした。あたりを見回して、近くに人影はありませんでしたが、今さらですよね。
開き直って、何食わぬ顔で作業を続けて。夜遅くなって陽が沈んでも(夏の夜は午後九時を過ぎます)指示されていた正面の壁は終わっていませんでしたけれど、暗くては汚れが落ちたか分からないだろうということで、ようやく赦してもらえました。
小屋へ戻ると、お昼を抜いたのに夕食を取る気にもなれず、そのまま床に転げ込んですぐに眠ってしまいました。チャーリイとジニアがいないから、どんな姿勢で寝てもかまわないのです。
――さんざんな三日目でしたけれど、四日目はもっとひどい――人生で最悪な日になりました。
大きな被害を食い止めるためには小さな被害に甘んじよう。そう決意して、お腹がちゃぷちゃぷ鳴るくらいに、わたくしはミネラルウォーターをたっぷり飲んでから作業に取り掛かりました。
陽射しが昨日よりもきつく、飲んだ水が胃袋から汗腺へ直行しているみたいでした。これなら、小さな被害も食い止められそうです。今日は昼休みを取らせてもらいたいな。それだけを念じながら、懸命に作業を続けていると。また、校長が姿を見せました。今日はひとりではありません。薄いクリーム色のスーツ(たぶんリネン製でしょう)を着こなした、父様と同じくらいの年輩の男性を伴なっています。
学園の独裁者とその客人に敬意を表すべきだと判断しました。作業を中断して、二人を迎えました。
「こちらにいらっしゃるのは、本学園の理事長であらせられる、スマーポッツ子爵ドレッド・ノートンです」
わたくしは軽く膝を折って目を伏せました。
「それが、われに対する挨拶なのかね?」
ドレッドきょうが嘲りました。
「膝折礼(curtsey)もろくに出来んとは、校長、仕付がなっていませんな」
膝折礼は、相対的に身分の低い者から高貴な方への儀礼です。子爵令嬢から他家の子爵に対しては、まあ、もうすこし丁重であってもよろしいでしょうけれど、わたくしの事情もあります。こんな腰布一枚では、はっきり裾を持ち上げるのも膝をきちんと曲げるのも、卑わいなだけです。
「いや、わたくしの不徳のいたすところ。性奴隷の膝折礼を仕込んでいませんでした」
そうでした。今(だけです!)のわたくしは、子爵令嬢である以前に性奴隷生徒でした。
今すぐに覚えてノートンきょうにお披露目しなさいと言って、校長は――とんでもない作法を伝授しました。
「裾は腰までまくり上げなさい。引いた足のつま先は、前側のかかとに着けるのです。そして、バレエのプリエのように、膝を大きく左右に開きなさい」
そんなのって、膝折礼ではありません。女性器の露出、いえ開陳です。
けれど、命令には絶対服従というのが特別奨学生契約(の、後付けの細則)です。わたくしは恥辱にまみれながら、伝授されたとおりの仕種をしました。悔しさに子宮がむせび泣いています。腰を沈めたので鎖が膣口に食い込んできて、その物理的な刺激が熱い涙をこぼさせます。
「ふむ。さすがは元子爵令嬢だな。奴隷嬢(Lady Slave)のマナーも覚えが早い」
褒められた(おとしめられた)のですから、言葉を返すのが礼儀です。
「お褒めにあずかり、恐悦至極にございます」
結び目より高く裾をまくり上げ、直角を越えて膝を曲げてやりました。皮肉のつもりでしたが、みずから進んで破廉恥に振る舞ったことに変わりはありません。腰の奥で羞恥が大きな炎となって燃え上がりました。
ノートン(この人にも敬称は無用と判断しました)が、くくっと含み笑いを漏らしました。
「なかなかに礼儀正しい性奴隷だな。よろしい、陪食の栄誉を与えてやろう。正午になったら、校長、どこだったかな?」
「延長教育(6th form)校舎のカフェテリアです」
「うむ、そこに来い」
仕事を続けなさいと命じて、けれど二人は立ち去りません。小柄なわたくしがホースに振り回され汚泥を浴びる姿を、愉快そうに見物したのです。
それでも、十一時には作業をやめ、機械を片付けてから身なりを調えてるように言われました。機械を片付けるとは、午後の作業を免除されるという意味です。
ちっともうれしくありません。ますます期限に間に合わなくなります。そして……
「今日は、いや明日の朝まで、きみがノートンきょうのお相手をするのです」
とうとう、恐れていたことが現実になろうとしているのです。素直に返事が出来るはずもありません。すると校長は、わたくしが事態を理解していないと思ったのか、露骨な表現で付け加えたのです。
「性奴隷としての最初の実習です。彼に処女をささげるのです。もちろん他のことでも、どんな命令にも従うのです」
そう言ってから、股間の鎖の封印を解いたのです。Y1の生徒だって理解したでしょうね。その年令で可能かどうかは、ともかくとして。
――機械を片付けるのは、簡単です。小型自動車を一人で押すくらいの重労働ですけれど。洗車場へ行って全身を洗うほうが、よほど手間取りました。身体はすぐに乾きますけれど、腰に達そうとしているブルネットは始末に負えません。言葉を飾れば、しっとりと潤ったままで会食に望まなければなりませんでした。
ああ、装いですか。いつも通りに十秒で完了です。学校の制服は、もっともフォーマルな服装です。たとえ女王陛下とのディナーにだって参列できますとも。もしとがめられるとしたら、このようなデザインを採用した学園でしょうね!
ノートンは、とがめたりはしませんでした。にやにや笑いながら褒めてくださいましたとも。
「しかし、もっと趣向を凝らしてもらえんかね。たとえば、アナン・ラミリーズみたいに、上着から乳房を突き出すようなのとか」
テーブルには校長も着いています。わたくしとノートンが向かい合って、校長は下座です。当然の待遇に、わたくしはむしろ屈辱すら感じています。子爵令嬢でなく性奴隷(実習生?)の立場を考えれば、お買上げいただく前の商品展示に等しいのですから。ああ、こんなことを考えてしまうまでに、わたくしは卑屈になってしまったのでしょうか。心の気高さを忘れてはなりません。
心を高く保つには、まず振る舞いからです。気楽なカフェテリアでの昼食とはいえ、わたくしは完璧なテーブルマナーを心がけました。ノートンはそれに気づいたらしく、ときどき手を休めては、面白そうにわたくしを眺めています。
校長は何かとノートンに話題を提供していましたけれど。わたくしが全裸にされて股間を教鞭でたたかれたとか、全身の無駄毛処理を義務付けられているとか、寝るときは手足を広げて拘束されているとか補習でクンニリングスを仕込まれたとか――わたくしの惨めな学園生活ばかりです。
それをノートンは満足そうに聞いています。ただ、『デート』で間違いが起きなかったことだけは、しつこく確認をしていました。
さいわいに感想を求められたりはしなかったので、雑音を耳に入れないよう、食事に専念しました。なのに、紙束をかんで粘土をかじっているみたいで、ちっとも味が分かりませんでした。
食事の場所はカフェテリアでも、料理は順番に配膳されました。その一皿ずつは、おままごとかと思うくらいに少量でした。重労働でお腹は空いていましたから、紙束でも粘土でも、もっと食べたかったです。校長だけは量が多くて、ノートンはわたくしと同じくらいでしたから――社交ダンスだって乗馬だって他のスポーツだって、満腹では差し障ります。男女の交接も運動には違いありませんから、そういうことなのでしょう。
食事が終わると、腹ごなしに散歩をしようと提案、いえ、命令されました。たしかに散歩でしたとも。大型犬を散歩させるような鎖を首輪につながれて、二人に学園のあちこちを引き回されたのですから。しかも、何も持っていないのは手の遣り場に困るだろうからと、両手の親指を背中でひとまとめに太い糸で括って――布ベルトに結びつけてくださいました。遠目には、破廉恥な格好を誇らしげにさらしてかっ歩しているように見えたことでしょうね。
何十日ぶりかで、股間に鎖が通っていない状態での歩行です。異物に侵されない心地好さよりも、すうすうすかすかする頼り無さが物足りない……のではなく、心細かったです。だって、陰裂を隠している鎖を見られるのと、陰裂の奥まで見えてしまうのとでは、やはり恥ずかしさが違いますもの。だから、人の目があろうとなかろうと、腰の奥では羞恥の炎が渦巻いていました。子宮が熱を帯びると膣口に粘っこい分泌がにじむのは、そういう生理的反応だと思います。
わたくしもそうでしたけれど、理事長の顔を知らない生徒は多くても校長を知らない生徒は居ません。校長への生徒の対応は、敬して遠ざける(respect away)です。しかも、後ろにはSSSというデリケートな問題が文字通りにひも付けられています。三人の散歩、あるいは二人による引回しは、誰にも邪魔されませんでした。
広い敷地を気紛れに散策して、最終的に連れ込まれたのは女子寮でした。女子寮の、以前のわたくしの部屋です。
最後に見たときには、荷物を一切合財持ち去られた空虚な空間でしたが、今は妖しい雰囲気に充ち満ちています。壁紙はどぎついピンク一色。窓は同色のカーテンで目隠しをされて、ミラーボールの七色の光点が天井から床まで踊り狂っています。そして、部屋の真ん中に、どかんと置かれた正方形の(キングサイズよりも大きな)ベッド。
そういう目的のための部屋だと、経験の無いわたくしにも分かります。
「何をしておる。こういう場面では率先して裸になるのが、SS生徒の務めだろう。教わらなかったのか」
反論する気力もありませんが、事実を誤解されたままだと、いわれのない罰を受けるかもしれません。
「せ、セキスパートとしての授業は受けていないのです。新学年度からだそうです。もし、よろしければ……いろいろと教えてくださ」
わたくしの、馬鹿。馬鹿ばか馬鹿。なぜ、こびるようなことを言ってしまったのでしょう。処女膜を破られるのが痛いのは、ジニアで目の当たりにしています。すこしでも優しく扱ってほしい――それが、奴隷根性というものです。むしろ、乱暴に扱われて、必要以上に痛くされたほうが、単純に相手を憎めます。
結果として、わたくしの言動は、強女3者を付け上がらせただけのようです。
命じられるまま、男の目の前で彼に正面を向けて十秒で制服を脱ぎました。もはや、指が震えることもなくなりました。
それから、男の上着とシャツを脱がせて。彼の前にひざまずいて、ズボンを脱がせます。そして最後に、これは彼の事情で脱がせにくくなっているパンツをずり下げました。
「では、おまえが奉仕する相手に挨拶をしてもらおう」
会った最初に屈辱的な膝折礼をさせられています。今さら何を――という疑問は、ありませんでした。彼は勃起した男性器を指差しながら、そう言ったのですから。さらに、醜悪(ugly style) で臭悪(ugly stench)なそれで、ぺちぺちと頬をたたきます。
こんな屈辱的な命令には従いたくありません。不服従がどれほどの罰になるのか、身を持って体験してみようかとさえ思いました。
けれど、そんな破滅的な考えはすぐに捨てました。鎖の貞操帯は、この日を迎えるために使われていたのです。この人は理事長。奨学金制度の創設者。
もしも奨学金を取り消されて、無一物で学園から放逐されたら。もっとも幸運に恵まれたとしても、公的機関の保護を受けることになるでしょう。子爵令嬢が、です。スキャンダルです。父様が爵位を剥奪されるのは必然です。母様が我が身を犠牲にした意味が無くなります。
わたくしは覚悟を決めて、目の前にある、水平射撃くらいまで勃起している男性器に口づけをしました。
「それから、どうするのだね?」
質問形ですが命令です。わたくしは閉ざしていた唇を(出来るだけ小さく)開けて、亀頭のあたりだけを口に入れました。フェラチオについては、ごく初歩的な知識くらいはあります。大衆向けの女性雑誌には、いろいろと書いてあります。平民がどのようなことに興味を持っているかを知るのも、現代の貴族にとっては大切なことです。決して衆愚に迎合するという意味ではありません――などと性奴隷が言っても虚しいだけですね。
初歩的な知識を実践に移して。亀頭をなめたり、冠状に盛り上がっている部分を唇でしごいたり。昼食と同じで、味はさっぱり分かりませんでした。敢えていうなら、生臭いしょっぱさでしょうか。フランクフルト・ソーセージみたいだったのが、たちまちボロニアくらいに太く、サラミみたいに硬くなります。
不意に突き倒されました。
「このビッチめが。どこで、そんなテクニックを覚えた? 誰かに仕込まれたのか? ケリーの大間抜けが!」
「違います。女性向けの通俗雑誌で得た知識です。実際にしたのは、これが初めてです」
わたくしは誇らしく思いながら、彼の思い違いを訂正しました。ただの知識を経験と勘違いされたのですから……でも、これって誇るべきことでしょうか。
それはともかく。
「ふん、信じるとしよう。では、どこまで知っているか、試してやろう」
ノートンが、巨大なベッドの中央であお向けになりました。水平射撃ではなく、対空射撃になっています。
「おまえが上になって、自分で挿入するのだ」
墓穴を掘ってしまいました。いえ、前向きに考えるようにしましょう。どこにどういうふうに挿れれば良いのかは、ジニアでの実験で分かっています。ならば――自分で具合を加減出来るのですから、痛みを減らせるのではないでしょうか。好きな人に処女をあげるのなら、激痛も大切な思い出になるでしょうが、不本意に、こんな中年男に奪われるのです。せめて肉体の苦痛だけでも和らげたいと願って当然でしょう。
わたくしは背を向けてノートンにまたがりました。
「失礼しますのひと言くらい断わらんか」
ぺちんとお尻をたたかれました。ちっとも痛くないです。
「ごめんなさい。気をつけます」
素直に謝っておきます。ちっとも悔しくないです。
腰を浮かして。ドライバーを使ったときを思い出しながら、陰茎の根本を右手で握って陰裂にあてがいました。小陰唇が蓋をしているので、左手の指をV字形にして――手と手がぶつかります。右手はお尻の後ろへまわして持ち替えました。
じわっと腰を落として、亀頭を陰裂に埋めました。膣前庭(でしょう)に亀頭が押しつけられるのが感じ取れます。腰をちょっとだけ前後に動かしてみたら、明らかに感覚の異なる点があります。ここが膣口でしょう。
このまま膝の力を抜いて腰を落とせば、それで処女は破られて、わたくしは娘から『女』になるのです。
けれど。ふっと迷いが生じました。このまま、みずからの意思で処女を失って良いのでしょうか。性奴隷に成り下がりセキスパートの道へ足を踏み入れて良いのでしょうか。
これまでだって、わたくしはみずからの意思で罰を受け辱しめられて……そうではなかったのだと、かつ然として悟りました。
罰を受けざるを得なかったから、縄目の恥辱を重ねないために、敢えてみずからの意思で手の動きを封じたのです。なぶられるしか選択肢が無かったから、抵抗して押さえつけられてなぶられる恥辱だけは回避したのです。クンニリングスは、あれは奉仕です。つまり、もっとも尊厳を保てる形での受身(passive)でした。
ですが、騎乗位で処女を失うのは――能動(active)です。それはもちろん――命令されてそうするのですから、大局的には受身(passive)かもしれませんけれど。
女が男に押さえ込まれて処女を失うのは、もっともありふれた状況でしょう。そのこと自体は、ちっとも恥ではないと思います。強女3されるのは屈辱ですが、性奴隷の宿命でしょう。
なのに、敢えて能動的(active)に振る舞うのは、みずからの意思で恥辱を求める破廉恥な行為ではないでしょうか。
わたくしはベッドから飛び下りて、床にひざまずきました。
「わたくしには出来ません。どうか、御主人様(My master)のたくましいおチンポ(dick)でわたくしを貫いてください」
可能な限り卑屈に卑わいに懇願しました。クイーンを護るためにはポーンを犠牲にします。
「ふふん、無理をしおって」
ノートンは薄く笑いながら身を起こしました。嘲笑ではなく満足のようです。
「子爵令嬢に淫売の真似は出来ぬか」
彼は手を伸ばして、再びわたくしをベッドの上へ引き入れました。
「小柄な娘には、こういうのも面白いな」
あお向けになったわたくしの両足をつかんで高々と持ち上げ、さらに頭のほうへ折り曲げました。この形でチャーリイとジニアに何度拘束されたことか。手足に冷たい手錠が食い込んでいないのが不思議に感じられます。
ノートンは手を添えることなく、亀頭を陰裂に埋め込み――ぐいと腰を突き出しました。
びききっと股間に亀裂が生じたのが、はっきりと分かりました。
「痛いいいっ……!」
悲鳴を抑える理由は無いと思うので、自分に素直になります。
唇の両端に指を引っ掛けて力一杯に引っ張られて――唇の中央が裂けたら、きっとこんな痛みだと思います。ジニアと違って痛みを的確に描写できます。
「見ろ、マイティ。おまえの娘の純潔は、われが散らしてやったぞ」
ノートンが雄叫びを上げました。
男爵まで含めても、世襲貴族は八百家くらいのものです。狭い社会です。父様とノートンが知己であっても不思議はありません。けれど、父様に恨みがあるような口振りです。
そのことについて彼に尋ねるのは、新たな災厄を招き寄せるのではないかと恐れました。そして、尋ねるどころではなくなりました。
彼が動き始めたのです、わたくしの中で。
ずぐうっ、ずぐうっと、お腹の奥まで、熱した太い鉄棒を押し込まれているような激痛です。鉄棒が途中まで抜かれるときには、傷口を引きむしられるような痛みです。彼の動きで、激痛がうねくります。
「ひぐっ、ひぐっ、きひいい……」
歯を食い縛っていても、うめき声を抑えられません。こんなのを何度も繰り返せば、本当に痛みが無くなって、通俗雑誌に書いてあるみたいに他では替えられないほどの快感を得られるようになるのでしょうか。信じられません。
足を持ち上げていると、動きを制限されるのでしょう。じきに彼はわたくしの足を開いて膝を曲げた形にして、ベッドへ戻しました。そして、いっそう激しくいっそう深く腰を動かします。
わたくしは、ただただ激痛に身を委ねているしかありません。
やがて、激痛が常態となって、わたくしのうめき声も治まった頃、彼は腰全体をわたくしの股間に打ちつけるほど荒々しく動き始めた――と思ったら、不意に動きを止めました。そして、わたくしから身を引きました。その瞬間は分かりませんでしたけれど、射精したのだと思います。
股間の汚れを指ですくって確かめる気にはなれませんでしたし、その暇もありませんでした。わたくしは、床に引きずり下ろされたのです。
「跡始末をするのも、セキスパートの務めだ」
彼はベッドに腰掛けてわたくしを引き寄せ、股間に向けて頭を押しつけます。フェラチオをして汚れをなめ取れという意味でしょう。男の白い精液とわたくしの赤い血に染まった陰茎を。
すでに開け放っているドアをもぎ取るような仕打ちです。いいでしょう。ハンマーでたたき壊してやります。
わたくしは目をつむって、威勢を失っている陰茎を頬張りました。ねとっとしたおぞましさが舌にへばり着きます。生臭くて鉄臭て、吐き気が込み上げてきます。それでも堪えて、陰茎全体をなめます。命令されて、太いストローの中に残っている汁まで吸い出しました。
「おまえの娘はここまで堕ちたのだぞ、メアリー。見せてやれぬのが残念だ」
父様だけでなく母様にまで遺恨があるようです。たとえ災厄を招こうとも、尋ねずにはいられませんでした。
「母のことも御存知なのですか?」
言葉は選んだつもりですが、軽々しく他人の妻に言及した非礼をとがめるニュアンスは隠しません。
「なんだ、知らなかったのか。われとやつとは同学年で――三つ年下の伯爵令嬢をめぐって決闘紛いのことまでしたかな」
初耳です。そんな激しいラブロマンスがあったなんて。
「勝ったのは、われだった。ところがメリーときたら、怪我をしたマイティに同情する余りに、われを野蛮だのひきょうだのと……」
わたくしだって。わたくしを争って一方が怪我をしたら、その方に肩入れするでしょう。まして……父様とノートンとでは、風格もハンサムも段違いです。これは、父親に溺愛されている娘の水増しもあるでしょうけれど。
「あ……」
わたくしは素晴らしいアイデアを思いつきました。そのように錯覚しました。処女を奪われた衝撃で、冷静な判断が出来なくなっていたのでしょう。ノートンのことを、今も母様に未練があるなどと勘違いしてしまったのです。いえ、勘違いではありませんでした。けれど、好意と悪意を読み違えていたのです。
「わたくしの母が、父の借金まで背負ってしまったのを御存知でしょうか。幾らかでも扶けていただけるなら、どのようなことでも致します」
冷静に考えれば。わたくしは、どのような命令にでも従わなければならないのですから、無意味なお願いです。けれど、ノートンはそれを指摘しませんでした。
「メリーが好きでやっていることだ」
それは違いますと反論しかけたのですが、彼の次の言葉を聞いて、声を失いました。
「新大陸の連中は貴族に弱いから、一晩に三千ドルは稼げるものを――合法性にこだわって、ドイッチュで飾り窓の女だ。十年経っても五十万ポンドは無理だな」
まさかと疑っていた『出稼ぎ』の真実が明かされました。なぜ、ノートンはそれを知っているのでしょう。私立探偵を雇えば可能でしょうけれど、それにしては話しぶりが主観的に過ぎるように思えます。
「まさか、あなたが……母にお金を貸してくださった……?」
「御主人様(My master)だ。我が君(My lord)でも苦しくないぞ」
誰が。とにかく、言い直して尋ねましたけれど。
「三十を過ぎた婆あに、五十万ポンドの価値は無い」
否定のようですが、思い入れは経済的に評価できないのではないでしょうか。
「それよりも、アイリス――おまえの処遇だ」
いきなりの話題転換です。それとも、つながっているのでしょうか。
「おまえは、われにどのように扱われたいかな。われがほれたメリーの娘として可愛がられたいか。それとも、われが憎むマイティの娘として虐げられたいか?」
本気の質問とは思えません。わたくしの処遇はとっくに決めていて、言葉でなぶっているのです。
なんと答えれば良いか、わたくしには分かります。それは、こうです――御主人様(My master)のお好きなように可愛がってください。
ですけれど、これだけは言えません。ドアはすでにたたき壊されていますが、それでも、象を通すほどの広さは無いのです。
そして。わたくしがこれからこの男にたたきつける言葉は、母様にも迷惑を掛けるかもしれません。それを思うと、お腹の奥深くに大きな氷塊が生じます。けれど母様もすでに、奈落の底に堕とされているも同然なのです。
わたくし自身は、この台詞がどれほどの迫害を招こうとも、青い血に懸けて、父様と母様の名誉に懸けて、言わなければならないのです。
「あなたを拒んだ母の娘としてあなたを拒み、あなたが憎む父の娘としてあなたを憎みます」
言いました。恐怖に乳房を握り潰される思いです。熱い戦慄が腰を貫きます。
「そして、アイリス・フッドとして、わたくしを汚したあなたを絶対に許しません」
不安の氷塊と恐怖のしゃく熱とが、ひとつの大きな渦巻となって、わたくしはほとんどこうこつの思いです。熱くにじむのは、溶けた氷塊でしょうか。
「くくく……」
ノートンが愉快そうに(でしょうか?)笑っています。
「喜んで被虐を選ぶのか。ケリーの見立て通りだな。天性のマゾヒストだ」
違います! 虐められることを望み、そこに性的な愉悦を覚えるような、わたくしはそんな変態ではありません。
青い血筋のこの男が、わたくしの尊厳を懸けた決意を理解しないなんて……いいえ、理解して、その上でわたくしをおとしめているのです。
けれど。抗議をすればするほど、この男を喜ばせることになるでしょう。わたくしは、SF映画のように目から殺人光線が出てくれることを祈りながら、ノートンをにらみつけてやりました。
もちろん、彼はけろりとしています。
「よかろう。おまえの望み通りになるよう、ケリーに念を押しておこう。楽しみにしているが良い」
こうして、わたくしの人生最悪の一日は……ようやく始まったのでした!
ピンク一色の強女3部屋に校長と、個人的な研究とか単純にバカンスのスケジュール調整で居残っていた四人の教師が呼び集められたのです。
さまざまな体位で、わたくしは犯されました。一大決心で拒絶した騎乗位も強いられました。六人もの男に取り囲まれて、か弱い少女に何が出来ましょう。強制的なフェラチオ(イラマチオというのだそうです)のあげく、飲精までさせられました。
悔しいことに、行為を繰り返されるたびに痛みは小さくなっていきました。屈辱と憤激が腰の奥で燃え狂っていましたが、もちろんそれは快感ではありません。陰核を刺激されたときの稲妻とは、まったく異質の『感覚』という言葉が果たして適切なのかも分からない、感情の渦巻でした。
校長は「明日の朝まで」と言っていましたが、その通りになりました。いえ、夜を徹して犯されていたという意味ではありません。
ノートンはわたくしに、物置小屋からピンク一色の部屋まで、ベッド代わりの長机を運ばせました。鎖の貞操帯も着けていない全裸で――というのは、大した問題では(あるのですけれど)ありません。処女膜を破られ膣口を拡張されて、ずきずき痛いのです。まだ太い陰茎を挿入されている感覚が強く残っていて、まともに歩けません。それなのに、重たくて脚を折り畳んでもかさばる長机をひとりで運ぶのは、ことに階段では重労働です。打ちのめされてなんかいませんけれど正常でもない精神状態ですから、いっそうつらく感じられます。わずかに救いだったのは、運ばされたのが二台だけだったことでしょうか。それでも、二往復もさせられたのです。
そしてわたくしは、間隔を開けて並べた長机に手錠でX字形に張り付けられて夜を迎えたのです。チャーリイとジニアが帰省してからの数日間はのびのびと(それまでの反動で)身を丸めて寝ていられたのに、また逆戻りです。それでも、ふかふかのじゅうたんに身を横たえるのは快適でした。
ノートンにベッドの上から見下ろされるのは不快でした。
開脚を強いられていても、股間に巨大な異物を突っ込まれているような違和感がしつこく残っています。これまでは裸にされて教鞭でたたかれたり、補習という名目で悪戯をされたり、一対四でCACCとか称して痛めつけられたり、無意味な重労働を押しつけられたり――さんざんに身体の表面に対する虐待(abuse)をされてきましたが、とうとう女の核心を身体の内側を暴行されてしまったのです。それも輪姦(gangbang)という最悪の形で。
ついに決定的に、性奴隷(Sex Slave)にされてしまったのです。それでも――心を高潔に保っていれば、わたくしの体内に流れる青い血の尊厳を侵すことなど出来ないのです。ええ、そうですとも。
物事があるべき形に定まってしまったという思いは、心に安らぎさえもたらします。もちろん、午前中の重労働のせいもありますし、深く傷つけられた魂が回復する時間も必要だったのでしょう――契約書に署名してからは絶えて無かったことですが、不安にさいなまれながら夜半に目を覚ますこともなく、わたくしは朝まで熟睡したのです。
――脇腹を蹴られて、わたくしは目を覚ましました。まぶしいです。昨日とは打って変わって、ピンクの色彩が軟らかです。カーテンが引き開けられて、朝の陽光が部屋に満ちていました。
きわめて狭い意味での『女』にされて初めて迎える朝でした。恥辱にまみれた感慨にふける暇もなく、わたくしは部屋を追い出されて――そのまま、昨日の重労働の続きをさせられました。
その日のうちに、校長からアフターピルを与えられました。それでようやく、強女3には妊娠のリスクまで伴っているのだと思い至りました。けれど、アフターピルを服用し、翌日からは継続的に低用量ピルを使えば、その心配も無くなります。しかも、わたくしを犯したのは、身持ちの固い貴族と教師。性感染症の恐れもありません。まったく、性奴隷としては申し分のないデビューでした!
五日後には、性器からの出血を見ました。つまり、きわめて狭い意味での『女』になった後に、もうすこし一般的な意味での『女』になったのです。順序があべこべですけれど、セキスパートとしては誇るべきことなのでしょうね!
実は、この出血は初潮ではなかったらしく、さらに二週間後に、もっと多量で黒っぽい出血が三日ほど続きました。こちらが通常の生理で、最初のはアフターピルの副作用だと、夏休みから戻ったミルダに教わりました。ちなみに、どちらの出血もタンポンで過ごしました。ひもが股間から垂れるのは陰裂を直視されるよりも恥ずかしかったです。
こういったことを思い出すだけで、怒りで子宮が熱くなります。けれど、考えずにはいられません。どころか――こういったこと以上のことが、夏休みの最後には立て続けに起きたのです。
小講堂の外壁の洗浄作業は、校長が後出しで決めた五日の期限を四日も超過してしまいました。そのこと自体には、覚悟していた罰則もありませんでした。けれど、いっそう無意味な労働を次々と押しつけられました。ふたつの教室の机を入れ替えたり、歯ブラシを使ってトイレの床と便器を磨かされたり、もはや詳述する気力もありません。
けれど、そんな馬鹿げた単純労働のほうが、八月も下旬になってからさせられた仕事よりは百倍もましでした。
新学年度は九月から始まりますが、実際に授業が始まるのは中旬からです。それでも、寮生活のリズムを取り戻すために、八月の末頃からは生徒がぼつぼつと戻って来ます。余暇を利用して勉学に勤しめば良いものを――仲良しグループが集まって、ピクニックに遠出してみたり敷地の一画でキャンプをしてみたり。
ピクニックはわたくしへの実害がありませんが、学内でのキャンプは被害甚大でした。わたくしが遊び道具として、彼らに貸し出されたのです。
ノートンに処女を奪われた翌日からは、わたくしはジニアと同じ形の貞操帯に改められていました。股間を割る鎖が無くなって、そけい部をY字形に通るのです。つまり、女性器が無防備です。しかもジニアと違って、わたくしは私物のパンティを持っていません。
そうなると、男子生徒がどのようにわたくしで遊ぶかは分かり切ったことです。
最初は、九月からY8とY9になる五人のグループが相手でした。Y8はわたくしと同学年ですし、一学年の男子は二十数人ですからY9の全員も知っています。
レビー・ブロックス、アル・ブライトン、エド・フォーグス、ウォルター・デライト、フォーグ・シェブラン。いえ、名前なんかどうでもいいです。こういったプライベートな催しには珍しく、キャンプファイヤーもしないのに教師のジャス・レイカーが監督として付いていたのが不可解でしたけれど、すぐに彼の役目が分かりました。五人の生徒は、全員が童貞(cherry boys)だったのです。わたくしは、ひと晩で五粒のさくらんぼ(cherries)を食べさせられました。残念ながら(ではないです)レイカーの指導では、さくらんぼは美味しくなかったです。
これで、わたくしの経験人数は両手では足りなくなってしまいました。セキスパートのレッスンを受ける前に、一人前以上になってしまったのです――などというのは、まったくの勘違いと思い上がり(?)でしたが、それは後日のお話です。
二日空けて、Y13ばかり四人のグループに貸し出されました。二人が経験済みだった(さんざん自慢していました)せいでしょう、指導教官は付きませんでした。おかげで、酷い目に遭いました。
彼らは、わたくしがあまり反応しないことに自尊心を傷つけられたみたいです。
身体を不本意に弄ばれて、強女3されて、それで性的に興奮するとでも、彼らは思っているのでしょうか。
乳首をくすぐられれば、稲妻の影くらいは走ります。陰核をつままれれば、どうしても稲妻が腰を貫きます。けれど、わたくしは強い意志の力で、腰の奥の火種を押さえ込んだのです。わたくしは性奴隷です。女を搾取されるのです。喜んで与えるのではありません――これが心得違いだと悟るのも、後日のお話です。
彼らは焦れて。わたくしの性感を開発にかかりました――遊び半分で。授業が始まれば(本当は始まる前から取り組むべきですけれど)、学年末の全国統一試験を目指して、一日の半分は勉強漬けになるのです。後の半分は睡眠時間と食事などです。だから、一日じゅう遊んでいられるのは、あとわずかだという思いが、遊びを過激に走らせたのでしょう。四人のリーダー格のゼラス・ソールベイという男が、性的に倒錯した趣向の持ち主だったのが、いちばんの原因と思います。五歳も離れていると、もはや男子生徒ではなく大人の男と変わりありません。これは、どうでも良くはないことです。わたくしへの加虐の度合いが、教師やノートンと同じくらいに残酷になるのですから。
彼らはわたくしたちの寮舎である物置小屋から長机を持ち出して、裏返しにして並べた間に、わたくしをX字形に張り付けました。夜は手錠でその形にされていることは、いつの間にか広く知れ渡っています。
ソールベイが幾つかの日用雑貨を机の上(裏側)に並べました。電線をまとめたりキャンプでもペグの補助に使える結束バンド、長短のヘアピン、小さな輪ゴムと太い糸。
「一度実験してみたかったんだ。まさかロザリンドには頼めないもんな」
ガールフレンドには出来ないことでも、性奴隷になら出来るということです。
彼は、わたくしの乳房の根本を結束バンドで縛りました。以前の北緯三十度オレンジだとバンドがすっぽ抜けたでしょうが、『女』にされた下半身に追いつこうとしているのかピルの副作用か分かりませんけれど、北緯二十度まで盛り上がってきたし、サイズもマーコットからマンダリンくらいに成長しました。つまり、すっぽ抜けるどころか、根本をぎちぎちにくびられて、丸ごとの(小ぶりの)オレンジにされてしまったのです。圧迫されたせいで、乳首も硬くしこって突き出しています。
その乳首をヘアピンで挟まれました。それでしごかれるのはちょっと痛かったのですが、髪を安定させるために湾曲している部分に乳首がはまり込むと、適度の刺激で気持ち好く……なるはずもないですけど、痛くはないです。
ところが。彼はヘアピンの一端に指を引っ掛けて回し始めたのです。ゴム動力の模型飛行機がありますよね。飛ばす前にゴムを巻く。あんな感じです。乳首も引っ張られますけれど、硬くなっているし乳房もぱんぱんに張り詰めているし、ヘアピンが外れる気配はありません。
くすぐったいのですが、何回も回されているうちに、ごろごろと雷鳴がとどろいてきました。
「あんっ……」
なまめかしい声を漏らしてしまいました。
すると、指がぴたりと止まりました。続けてほしいという思いが、ちらっと頭をかすめましたけれど、もちろん口にはしません。
ソールベイは二本目のヘアピンをつまんで――もう一方の乳首もヘアピンで挟みました。両手をつかって、左右のヘアピンを同時に回します。
雷鳴が左右の乳首から乳房にまで伝わって、心臓まで震わせます。
「あんっ……あんっ、あああ……」
雷鳴とか稲妻とか、比喩表現をしている余裕がなくなってきました。快感が乳首を貫き乳房を震わせるのです。
そこまでわたくしを追い込んでも、ソールベイは不服のようです。仲間に枕を持って来させると、わたくしの腰を持ち上げてお尻の下に押し込みました。そして、天に向かって突き上げた股間をから陰核をほじくり出しました。
包皮を剥かれる感触に続いて冷たく細い感覚が……
「ひゃうんっ……!」
実核までヘアピンに挟まれたのです。けれど乳首みたいな純粋の快感は生じませんでした。ヘアピンが回転すると、それに引きずられて陰核がぐにょんと変形します。すぐにヘアピンが抜けてしまいます。
ああ、良かった。乳首だけでこの有り様です。何倍(何十倍?)も敏感な陰核、それも剥き身の実核に同じことをされたら、アリスにされて、もうすこしでどうかなるところだった、その先へ達していたでしょう。そこは足を踏み入れてはならない禁断の地だと、わたくしの本能が告げています。
「これを使ったら、どうかな。ニリッサは、白目を剥いて気を遣るていうか、気を失うんだぜ」
もう一人の経験者であるガース・ルドロウが歯ブラシを手に持って、わたくしを挟んだ反対側にしゃがみ込みました。そして、包皮を剥き下げられてヘアピンで固定されている実核に歯ブラシで触れたのです。
「ひゃあっ……?!」
ちくっとブラシの先が突き刺さってきて、凄まじい稲妻が走りました。痛みはあったのですが、その何倍もくすぐったくて、それよりも……快感なのでしょうか。びくんっと腰が跳ねました。みずから実核をブラシに押しつけた形になって、一瞬さらに刺激が強くなったのですが。そんなのは序奏でした。
歯ブラシが、さわさわっと小さく動いて……
「いやあああああああっっ……!」
叫びました。
無数の針に刺されたような鋭い痛みと、腰全体が砕け散るような、混じりっけ無しの、恐怖の塊のような快感……なのでしょう。
びくんびくんと跳ね続ける腰。ルドロウは馬乗りになって腰を押さえつけ、しつこく歯ブラシを動かします。
上からのぞき込む二人の顔もその後ろの景色もはっきりと見えているのに、すうっと視界そのものが遠ざかるような奇妙な錯覚。
「やめて、やめて……分からない、分からなくなっちゃいますううう!」
無意味な言葉を叫ぶうちにも、さらに快感が膨れていって……不意に止まりました。
ソールベイの顔が小さくなって、向きを変えて……膣口が拡張される感覚。ずぐうっと、怒張した陰茎が膣に押し入ってきました。すうっと、訳の分からない快感が引いていって、目の前にはソールベイの顔。あり得ないほどに鼻が膨らんでいます。
ただ目をそらすだけでは気が収まらず、露骨に顔を背けてやりました。
「なんだよ。そんなにぼくが気に食わないのか。ひと晩に五人も六人もはめ狂うビッチのくせに」
「気に入らないのは、あなたではありません。こういうことをされるのが嫌なのです」
言うだけ無駄と分かっていても、信じられないほどの快感を台無しにされた腹立ち紛れです。
「うそつけ。あんなに激しく善がってたじゃないか」
彼も腹を立てたのでしょう。腰を激しく打ちつけてきて――すぐに果ててくれました。
三日前のときは、ひとり終わる都度にレイカーが携帯ビデで洗浄してくれたのですが、今日は次の人のセルフサービスです。コーラの瓶を激しく振ってから、泡を吹き出している口を膣に挿入されました。性交よりも、よほど気色悪いです。
手錠でX字形に張り付けられているから、自分で手加減することも出来ません――ではなくて。たとえ両手が自由で、携帯ビデを持たされたとしても、命令で強制されるまでは決して自発的に使ったりはしなかったでしょう。陵辱される準備を自分でするなんて真っ平です。そういう意味では、拘束されているのがありがたかったくらいです。
ソールベイの後は童貞の二人が、彼に負けないくらいのスピード記録を達成しました。しんがりのルドロウは、三人を合わせた時間の倍くらいは粘りました。
童貞五人のキャンプでは、用済みになってすぐにキャンプから追い出されたのですが、今日はさらに遊ばれました。張り付けからは解放されたのですけれど、三点の突起に着けられたヘアピンをそのままにされたのです。詳しくいうと、乳首のヘアピンは水平に、陰核のヘアピンは垂直にされました。外れないように、ピンの先端を小さな輪ゴムで縛られたので、圧迫が強まりました。
自分では決して触るなと命令されました。だから、もしも(仮定法過去ですよ)乳首のヘアピンを回してみたくなっても出来ません。
それから、『サイモンの命令(Simon says)』という遊びをさせられました。本来の遊び方は、大勢の中で一人がサイモンになって単純な動作をしながら「サイモンの命令、○×をしろ!」と指示します。みんなは、言われた通りにするのですが、「サイモンの命令、右手を上げろ!」と言いながらサイモン役は左手を前に突き出したりします。動作を真似たら間違いです。あるいは「ぼくの命令、ジャンプ!」とか「頭に触れ」とか、キイワード「サイモンの命令」がない指示にも従ってはいけません。
間違えた人から抜けていって、最後まで残った人が次のサイモンになるという、ただそれだけの遊びです。低学年の子ならともかく、Y13にもなってするような遊びでは――あったのです。
四人がサイモンになって、指示に従うのはわたくしだけという変則的な遊び方です。そして、間違えたらズボンのベルトでたたかれるのです。
「サイモンの命令、おっぱいをもめ」
「サイモンの命令、マンコに指を挿れろ」
「サイモンの命令、乳首のヘアピンを回せ」
「サイモンの命令、もっと速く回せ」
自分で自分を刺激するなんて、四人に見られながら自慰をするに等しい行為です。そう思うと、胸いっぱいに羞恥があふれ、腰の奥で憤怒がうねります。
「回し続けろ」
バチン!
「きゃあっ……?!」
お尻をたたかれました。
「ただ『回し続けろ』って言ったんだから、止めなきゃ駄目だろ」
そうでしょうか。論理的に考察すると、「回し続けろ」の命令は無視して、「サイモンの命令、もっと速く回せ」を継続していると――解釈したって無駄ですね。わたくしに恥ずかしいことをさせて、口実を設けて虐めるというのが、この遊びの目的なのですから。
二人から矛盾する命令を出されたり、単純にわたくしが間違えたりして。お尻に六発、乳房に二発、股間に三発のベルトを受けて、ようやくゲームは終わりました。最初みたいな不意打ちは少なくて、「サイモンの命令、右手で右手をつかめ」なんて不可能な指示を実行できなかった罰として股間をたたかれる前には「サイモンの命令、足を開いて腰を突き出せ」なんて言われたりしました。
言葉のどんな意味においても玩具として弄ばれている。そう思うと、頭がくらくらして、全身が屈辱で火照りました。膣からこぼれた熱い滴りは、きっと涙です。
――キャンプは他にも何組かありましたけれど、わたくしが貸し出されたのは、この二回きりでした。
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それは、そうと。大きな見落としをしていました。日本でなら、それ系の私学でない限りスルー出来る宗教。
大急ぎで、大講堂に教会が付属しているとか、悲劇の始まりを6/14の勝利の日ではなく、戦勝の翌日、神に感謝を捧げる全学集会(プロテスタントでは、ミサとはいいません)の直後にして。Sodomy(大罪です)あたりで、神への懺悔を考えて、いいえ、わたくしは被害者ですと思い直して、ついでに、最初の頃に破廉恥な(ノーパン超ミニ裸ジャンスカ)を神に懺悔しなさいと神父に諭されて、以来、教会には足を踏み入れていないとか――いやあ、ワープロって便利ですねえ。
さて。6/23は大いなる骨休めでしたが、今日6/26は夕方から飲み会。まあ、午後1時時点で18枚は書いてますけど。
英気を養って月末に向けてニトロ注入メタノール噴射と参りましょう。
Progress Report 4:『特別娼学性奴』
とんでもない状況になっています。
ヒロインがSSS(Sexpert Scholarship Student / Sex Slave Student)に堕とされてから1か月。枚数にして320枚。なんと、未だに処女です。
そして、実質全14章のうち、まだ7章が終わったところです。
これは……500枚突破はおろか、600枚いくのではないでしょうか。受注からの納期が2か月しかないと分かってるのに、そのうち最初の10日は別の作品を仕上げるのが分かっていたというのに。
妄想竹を構想竹しているうちに暴走竹しちまった筆者が悪いんですけどね。
SCINARIO
Spiteful・・・・・・- 3 -
Substitute ・・・- 19 -
Subsidence・・・- 27 -
Shame・・・・・・・・- 61 -
Scorn・・・・・・・・ - 90 -
Suppression・・- 104 -
Service・・・・・・- 114 -
Sexperience・・- 139 -
Study
Submission
Skill
Sodomy
Showtime
以下は分量的に1章?
Sequel
Succession/Success
Succession/Session
SCRIPT AFTER これは「後書」
さて、今回はServiceのうち前半の補習は割愛して、かつての男子親衛隊員2名との『デート』の様子をお送りします。
キスをしながら、胸の疼きとか腰の奥の熱い潤いとか、これまでは憤激と屈辱に身体が震えていると思っていたのと同じ反応が生じて、セエラアイリスが「え……?」と思うシーンがあります。後に悦虐に目覚める伏線になるかもしれない、そもそも最後まで(自覚的には)目覚めさせないかもしれませんが。
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さいわいに、補習を受けさせられたのは、この二回だけでした。わたくしが二度とゼロ点に抗議しなかったからですが、教師がその気になれば何とでも口実は設けられたはずです。どの教師も、わたくしをまともな生徒としては扱ってくれませんが、セキスパート奨学生あるいは性奴隷として扱う教師も、今のところは少数だということでしょう。
全教科の試験が(生徒からの異議も吟味した後に)確定してから、学年ごとの順位が掲示されました。わたくしとチャーリイとジニアの名前はありませんでした。
Y7男子の上位四人は、わたくしかジニアかどちらかとの一日デートの権利を獲得しました。夏休みが始まる二日前からは、授業が午前中だけ。午後からが、権利の行使に充てられました。
最初は、同じクラスのハーディ・リンクスとです。彼も、オッターに負けないくらいに献身的なわたくしの崇拝者で僕(しもべ)でした。わたくしが落ちぶれてからは、彼のほうから近づいてくることはなくなりましたが、それは大半のクラスメイトと同様です。近づいてくる男子は、女子の目を盗んでわたくしに置換紛いの行為を仕掛けてくる者ばかりでしたから、近づいてこないことが最大の好意だと、わたくしは解釈していました。
校長からは事前に、デートの相手はわたくしの御主人様(Master)であり顧客(Customer)なのだから、丁重に振る舞えとは指導されていました。わたくしが性奴隷なら彼が御主人様だし、売春婦なら顧客です。でも、まさか、彼がわたくしに対してそのようなことを要求するなど、考えられないことです。
だから、二人きりで校内を散策したり、単独では出入りを禁止されているカフェテリアに連れて行ったりしてもらえるのかなと、楽しみになんかしていませんが、軽く考えていました。
ところが、彼がわたくしをエスコートしてくれた先は、彼の所属しているレスリング部の部屋でした。三人の上級生がわたくしたちを出迎えました。三人とも、シングレットというのでしたかしら、半袖膝丈のレオタードを身に着けています。
ははん。スパーリングとかして、格好いいところをアピールしたいのね――と、わたくしは独り合点しました。
案の定、ハーディは服を脱いで――え? 女性の目の前で着替えるつもりですか。
着替えるどころか、彼は全裸になりました。
「きゃ……」
わたくしは、顔を背けて両手で目をおおいました。清純ぶったのではないです。男の人に裸を見られるのは慣れっこになっても、男の人の裸には免疫が付いていません。
「ファウルカップを忘れてるぞ」
「無理だよ。だって、これだもの」
げらげら笑う声に興味が湧いて、指の隙間からちらっとのぞきました。
彼の男性器が勃起していました。チャーリイに比べても可愛い、訂正します――小さいです。それをお腹に貼り付けるようにして、彼はユニフォームを着ました。
「きみも準備しろよ」
え……?
「貸してあげられるシングレットはないから、裸でやれよ」
「女のパンクラチオンだな。ルールはCACCだけど」
何を言っているのか、理解できません。
「さっさと脱げよ」
上級生のひとりが、わたくしに近寄りました。
他の二人もそれに倣って――包囲された形です。
わたくしはおびえたりなんかしません。上級生の目を見詰めて、静かな声で尋ねました。
「それは、わたくしへの命令なのですか?」
上級生は目を反らしかけましたが、自分が絶対的に優位であることを思い出したのでしょう。にらみつけてきました。
「そうだ、命令だ。裸になって、ぼくたちとレスリングをしろ」
「わたくし、ルールを知りません」
「さっきも言ったろ。CACC、Catch as catch can――つかめるところはどこをつかんでもかまわないし、関節技、キック、パンチ、なんでもあり。まあ、きみは女性だから、顔面への攻撃はしないであげる」
「それと、レイフもしないよ。出来ないからね」
もうひとりの上級生が苦笑しています。つまり。レスリングにかこつけて、か弱い乙女を男が四人掛かりで痛めつけようというのです。
「なぜ……わたくしに恨みでもあるのですか」
「無いとでも思ってたのか」
ハーディです。
「いつも女王様気取りで、ぼくたちを見下しててさ。しょっちゅう荷物持ちをさせるし、カフェテリアではこっちの都合も考えずに呼びつけるし、去年の誕生日にあげたハンカチなんかジニアに投げ与えたし……」
わたくしは、ただあきれて、ハーディの恨み言を聞くばかりです。彼はオッターと競うようにしてチャーリイの仕事を横取りしていたのだし、それでもたまには彼の献身に報いてあげようとして陪食の機会を与えてやったのです。ハンカチは、あんな安物を身のまわりに置くなんて、わたくしの品位を損ないます。でも、好意は分かっていましたから、捨てたりなんかせず、ジニアに下賜したのです。
そのひとつひとつを、彼に説明する気にはなれません。しょせん愚民には高貴な者の考え方など理解できないでしょう。それに……今さら言い聞かせたところで、虐められるのが怖くて言い逃れをしていると勘繰らるだけでしょう。
よろしいです。わたくしを痛めつけて満足するのであれば、お好きになさい。今日を耐えれば、それで終わるのです。この先何年も性奴隷としての辱しめを受けることを思えば、なにほどのことがありましょう。
わたくしは、四人に取り囲まれたまま、制服のジャンパースカートを脱ぎました。求められて、靴も脱ぎます。
部室は広くて、部屋の中央には五ヤード四方くらいのマットが敷かれています。印象としては、マットのまわりのわずかな空間が、ロッカールームとミーティングルームになっています。
その広いマットの上で、わたくしはハーディと向かい合いました。
彼は姿勢を低くして両手を前に突き出して、まるでへっぴり腰です。もちろん、これがレスリングの構えだということくらいは知っています。
猿真似をしたところで、その後の体さばきを知りません。どうやったって敵いっこないのですから、棒立ちですけれど座り込んだアヒル(Sitting duck)です。
「ファイティング・ポーズを取れよ」
「それは命令ですか」
「いいから、やっちまえよ」
上級生にけしかけられて、それでもハーディは慎重に近づいてきて……腕をつかまれたと思ったら。
「きゃっ……?!」
マットの上に引き倒されていました。とっさに突いた手がずるっと滑って、お腹をマットに打ちつけました。このまま転がっていれば、そんなに酷いことはされないで済むかなとずるいことも考えましたけど。
「立てよ」
命令されたうえに腕を引っ張られては、立ち上がるしかありません。よろめきながら立ち上がると。
「きゃあっ……!」
足を払われて、尻餅をつきました。
ハーディは正面で片足を上げて。
「痛いっ……!」
股間を踏んづけられました。鎖が陰裂に食い込んで、すごく痛いです。本能的に股間を護ろうとして、背中を丸めてうずくまります。その背後から……
「いてえっ……」
小さく叫んだのは、ハーディのほうでした。背後から股間を蹴りあげようとして、つま先を鎖にぶち当てたのでしょう。
良い気味ですと言いたいところですが、ハーディはつま先、わたくしは鎖のせいで尾底骨から陰裂までのダメージです。割りに合いません。
「こいつめ!」
腹を立てたハーディが髪をつかんで、わたくしをマットから引き抜きました。そのまま前へ回り込んで。
ぼぐっと、鈍い衝撃がお腹に広がります。
「ぐふっ……」
重たい痛みが腹全体に広がって、吐き気が込み上げてきます。
「思い知ったか」
ぼぐっ……二発目は腹筋を固めたので、苦痛も小さかったし吐き気もしませんでした。
「腹はやめておけよ」
三人の上級生の誰かが、ハーディを止めてくれました。
「なんだよ。顔は殴るな、レイフは禁止、そのうえ腹も駄目って、どうすればいいんですか」
「交替しろ。お手本を見せてやるよ」
ハーディがしぶしぶを顔に貼り付けてマットの外へ出ると、いちばん年長らしい男子がわたくしの前に立ちはだかりました。同級生の数年後の姿というより、若い教師の数年前といった印象です。けれど、せいぜいY10くらいだと思います。延長教育の生徒は、SSSと関り合いにならないようにしている感じですし、Y11は卒業と進学とを控えて、それどころではないはずです。Y10だろうとY13だろうと、わたくしよりずっと大きくて腕力も強いことに変わりはないです。
わたくしがうずくまったままでいると、その人はわたくしにおおいかぶさるようにして。腰の鎖を握って、わたくしを持ち上げました。
「痛いいっ……!」
体重がもろに鎖に乗って、食い込むなんてものではないです。切れ味の悪い刃物で股間を切り裂かれるような激痛です。
わたくしは、足を伸ばして立とうとしました。ところが、彼は腰の横に手をまわして、両側から引き上げます。
「やめて……ください!」
突きのけようとすると、ますます鎖が食い込んできます。進退窮まって、彼の肩にしがみつきました。鎖の圧迫が消えて、ほっとする間もなく。
ぐらっと部屋が傾いたと思ったら、彼に浴びせ倒されました。どすんと、彼の体重が全身を押し潰しました。
「ぐぶふっ……!」
カートゥーンだったら、人形(ひとがた)のパイ生地を描くところです。冗談を言っている場合ではありません。
全身を打って、痛みで動けないわたくしに、彼が手足を絡ませてきました。どういう体勢なのかうまく説明できませんけど、肘を外側へねじ曲げられるような激痛です。ぐききっと関節がきしみます。
「痛い……腕が折れます!」
わたくしの訴えを無視して、いえ、面白がるかのように、彼は身体を揺すって、その動きがますます肘をきしませます。
「どうだ、降参か?」
「降参です。降参します!」
わたくしが(半泣きになんか、なっていません)叫ぶと、彼は赦してくれました。
彼はわたくしを横向きに転がして、添い寝するような形になりました。わたくしの手足を自分の手足に絡めてから、わたくしを腹の上に乗せるようにして、あお向けになります。そして――ぐんっとわたくしを突き上げました。
「いやああっ……」
そんなに痛くはないです。けれど、空中でブリッジの姿勢に固められました。ブリッジよりも開脚の角度が大きいです。直角を超えています。他の三人もマットに上がってきて、わたくしの股間をのぞき込みます。
「可愛らしい陰唇(lips)だな。こんなのでセキスパートになれるのかな?」
「マンコ(cunt)は……鎖が邪魔で、よく分からないや」
「ケツ穴(ass hole)も色が薄くて小さいね」
ひわいな単語の連発です。可愛いというのも、否定的な評価なのでしょう。肯定的な評価をされたって恥ずかしいですけれど。
正面から見られるのと、開脚しているところをのぞき込まれるのとでは、恥ずかしさが百倍も違います。腰の奥が羞恥に燃え盛っています。
「降参します。やめてください」
「まだ早いよ」
取り合ってくれません。ハーディが鎖をつかみました。正確には、腰を巻いている鎖と股間を割っている鎖との交点を、南京錠とまとめてつかみました。下へも手を突っ込んで、腰の後ろの交点もつかみます。
「これって、女のセンズリ(jerk)になるのかな」
鎖を前後にしごき始めました。元から淫裂に食い込んではいますが、ぎちぎちではありません。わずかな余裕はあります。そのせいで、鎖が淫裂と会淫と肛門とを擦ります。のこぎりで引かれているような痛みが走ります。
「それはマンズリ(beaf flicking)っていうんだぜ」
「牛肉ほど分厚くないよ」
痛みに耐えているうちに、陰核への刺激が稲妻を呼び寄せました。膣口と肛門にも、むずがゆいようなくすぐったいような感覚が生じました。
「くうっ……んん」
「よがりだしたな」
わたしの苦鳴に混じる別の響きを、耳ざとく聞きつけられてしまいました。けれど、苦痛はそのままに快感のほうは次第に強くなっていって、うめき声を止められません。
腰の奥で燃え盛る恥ずかしさと浅い部分にたまっていく快感とが絡みあって、全身に広がっていきます。
もっと虐めてほしい。そんな思いが浮かんできて、あわてて打ち消しました。虐めてほしいだなんて……わたくしはマゾヒストではありません。「虐めて」ではなく「可愛がって」なら問題は……大ありです。同じことです。肉体の快感と苦痛に心の恥辱とが混然一体となって、何も考えられなくなっていきます。
でも、わたくしは負けません。快感に囚われては、麻薬中毒患者と同じです。
「くううっ……まだ、降参させてくれないのですか」
気力を振り絞った訴えは聞き届けてもらえました。鎖の動きが止まって、同時にわたくしはマットの上にたたきつけられたのです。
「あれだけマンズリしてやってアクメに達しないなんて――こいつ、不感症じゃないのか」
「前も後ろも未開通だから、まだガキなんだよ」
「Y7だものな」
「ぼくはガキじゃないよ」
「でも、まだ童貞(cherry)だろ」
好き勝手なことを言い合っています。
酷い目に遭いました。でも、大怪我をさせられずに終わった――のでは、ありませんでした。
二人目の上級生がマットに立って、ボクシングのファイティングポーズを取ったのです。しゅっしゅっと、ジャブを繰り出す真似をしています。
「アイリス、立てよ。おれにぶちのめされるために立て。顔は勘弁してやる」
命令には従わなければなりません。泣いて赦しを乞うなんてみっともない真似はできません。でも、身体が動きません。
「しょうがないな。ハヴェント、立たせてやれ。倒れないように、羽交い締めにしておけ」
「自分の足で立ちます!」
名前を呼ばれた三人目の上級生が動く前に、わたくしは宣言しました。両手を突いて上体を起こし、両足を踏ん張って、よろよろと立ちました。強制されるよりはみずからの意思で命令に従う――という自尊心だけではありません。羽交い締めにされていては、殴られた瞬間によろめいて衝撃を和らげることすら出来ません。
「形だけどもファイティングポーズを取れよ。か弱い女の子を一方的に虐めるみたいで後ろめたいよ」
まさに言葉通りのことをしているくせに。でも、命令ですから――肘を曲げて両手を拳にして顔の前で構えました。
「きみも攻撃していいんだよ」
フットワークは使わず、彼は無造作に近づいてきて――パンチを繰り出しました。胸を狙われていると分かったときには心臓のあたりに、どすんと衝撃を受けていました。
オレンジの輪切りが潰れて、ぷるんと跳ね返るのが分かりました。乳房をもぎ取られたような激痛が走ります。机の角にぶつけただけで息が詰まるほど痛いというのに、拳骨で思い切り殴られたのです。両手で胸を抱えて前のめりになりました。
「ほら、ファイト、ファイト!」
命令に従おうと思っても、身体が動きません。とうとう羽交い締めにされてしまいました。ブリッジのポーズで空中にさらされるよりも屈辱です。
正面の上級生は、さっきよりもわたくしに近づくと、両手を使って乳房を連続して横に殴り始めました。
「ワンツウ、ワンツウ」
殴られるたびに、ささやかな乳房が左右にひしゃげます。さっきほど激烈ではありませんが、鈍い痛みが蓄積していきます。
「ワンツウ、ワンツウ……フィニッシュ!」
また正面からパンチをたたき込まれて、乳房が破裂したような激痛です。
「うわあ。だいぶん赤くなったな。腫れた分だけ、おっぱいが大きくなったんじゃないかな」
そんなことは分かりませんけれど、ずきずきとうずいています。
「先輩、交替してください。ぼくは、まだスパーリングをしてない」
わたくしを羽交い締めにしていた上級生との対戦(?)です。サンドバッグにされていた間、ずっと支えてくれていたおかげで、自分の足で立てるようになりました。驚きました。まだ、皮肉を考えられる余裕があります。口にする蛮勇はありませんけれど。
「それじゃ、ぼくはね……」
目の前に立って、両肩をつかむと……
「あがっ……!」
股間が爆発したような激痛が、腰を砕きました。
「…………?!」
両手で股間を押さえて、その場に崩折れました。
「玉(ball)が無いから、金蹴り(nuts crushing)ほどは効かない感じだね」
男の人が睾丸を蹴られる痛みは分かりませんけれど、女性器を蹴られたって、物凄く痛いです。教鞭でたたかれるよりも。それに、局所的な痛みではなく、股間全体が痛いです。でも、彼が言うように男性はもっと痛いのかもしれません。すくなくともわたくしは、もん絶したり跳びはねたりはしませんでしたから。
「ひと通りは試したけど、あまり面白くないな」
わたくしをサンドバッグにした上級生が、つまらなさそうに言いました。
「恋の駆け引きをするわけじゃなし。穴を使えないビッチなんて、何の役にも立たないや」
「それじゃ、もう赦してやるんですか?」
ハーディは不満そうです。
「そうだな。おい、アイリス」
「はい、なにかご用でしょうか、御主人様(My master)」
この言葉遣いは、校長からの命令です。赦してもらえそうな雰囲気になって、やっと思い出したのです。我ながら現金です。
「そこにひざまずけ。そして、こう言え――父親の権威を我が物と勘違いし、高慢ちきに皆様を見下してきて、申し訳ありませんでした。わがままな振る舞いで皆様に迷惑ばかり掛けて、申し訳ありませんでした。深く反省しています。両手を組んで謝罪してから、最後に、おれたち一人ひとりの足にキスしろ。それで、おれたち四人はおまえを赦してやるよ」
また、四人に取り囲まれました。わたくしが謝罪するのが当然といった顔です。
これも命令には違いないのだから、服従しなければならないのでしょうね――と、弱気が頭をもたげました。言われた通りにすれば、それで『デート』はおしまいにしてもらえそうです。
けれど。たとえ不服従の厳しい――これまで以上となると、厳しいのではなく残虐です。その残虐な罰をこうむっても、譲れない一線があります。高潔です。誇りです。わたくしが高慢ですって?! 貴族としての品位を保って、平民であるクラスメイトに接していたのを、そのように曲解するのですか。
わたくしには、この四人にも他の生徒にも、謝罪する必要など断じて有りません。
これ以上の暴力から逃れる方便だとしても、わたくしの口から出た言葉は、わたくしを縛ります。何をされても仕方がない、そういう契約です。けれど、無実の罪を認めるわけにはいきません。
「お断わりします」
わたくしは勇気を振り絞って、敢然と拒否しました。どんなに残酷な罰でも、潔く受ける覚悟でした。誇らしさに、胸がねじ切れそうです。悲壮が腰の奥で熱くたぎります。
「ちぇ、頑固だな。もうちょっと遊んでやるか」
これまでの延長なら、もう少しの間は耐えられる……かもしれません。
わたくしは立たされて――頭から袋をかぶせられました。男の体臭がこもっています。ユニフォームを入れる袋かもしれません。分厚い生地で、袋の口を首のところで閉じられると真っ暗になるだけでなく、息も苦しく感じられます。
どんっと斜め後ろから突かれて、前へよろめきました。すぐに受け止められて、真後ろへ突き飛ばされます。それを真横へ押されて……倒れる暇もないくらい、あちこちへ小突き回されます。肩をつかんで向きを変えられたりもします。
こんなことをして、何が面白いんだろう。そう思っていると――不意に足払いを掛けられました。
「きゃっ……?!」
身体を支えようと前へ手を伸ばしましたが、背中から落ちて頭を打ちました。視界を奪われて身体を動かされているうちに、三半規管の平衡が狂ったみたいです。
「痛いいっ……」
鎖をつかんで持ち上げられて、身体が宙に浮きました。くるんと裏返しにされて、そのままマットにたたきつけられました。腕に力が入らず、ささやかな乳房がまた潰れました。
それからは……いちいち覚えていないです。脇腹や股間を蹴られたり胸やお腹を踏んづけられたりお尻を蹴られたり。腕をつかんで引きずり起こされてすぐ押し倒されるのなんてまだ優しいです。足をつかんで逆立ちにされて、そこに股をクロスする形でのしかかられてぐりぐり擦りつけられたり。あお向けに寝かされて四人掛りで手足を引っ張られたり。
もしもわたくしがぬいぐるみ人形だったら、ばらばらにされていたに違いありません。生身の身体だから、どこも千切れたり裂けたりしなかったのです。
最後は、袋を取ってもらえたのですけれど。
「おまえのデートだからな。一番乗りをしろよ」
ハーディがユニフォームを脱いで裸になりました。男性器は勃起しています。ずっとだったのかもしれません。あお向けに転がったわたくしの足を大きく開かせると、上からおおいかぶさって、男性器をわたくしの股間に押しつけました。正確には、そけい部です。太腿と大陰唇とのくぼみに、包皮から顔を出している亀頭を、腰を激しく動かして、擦りつけます。そして、ラテン語教師のカビンより多量の白濁をわたくしの下腹部にぶちまけました。
次は最年長の上級生でした。両足をそろえて、わたくしに抱えさせました。そして、わたくしの足を折り曲げて、のしかかってくると、男性器を太腿の間に突っ込みました。みずからもわたくしの膝頭をつかんできつく閉じ合わせて、腰を激しく振りました。さっきよりも、刺激が微妙です。快不快ではなく、ぬるぬるした感触が気色悪いです。この人もすぐに射精して、胸のあたりまでわたくしを汚しました。
三人目はボクシングの人でした。先の二人の精液をロールペーパーで拭ってから、わたくしの上体を起こさせ、自分は中腰になって。両手でわたくしの乳房を中央に寄せて、男性器を挟んだ――つもりかもしれませんが、北緯三十度のオレンジでは無理です。陰茎の両側に触れさせるのが、やっとでした。それでも、激しく腰を動かしてオレンジを側面からすり潰すみたいにして(そういえば、陰茎とすり粉木は形が似ています)目的を果たしました。
手の甲で拭おうとしたら、その手をハヴェントにつかまれて、剥き出しの陰茎を握らされました。湯煎したサラミソーセージの感触です。しごくように命令されたので、手を動かしました。
「もっと強く、もっと早く!」
サラミでなくフランクフルトだったら折れるくらいに強く握って、一秒に二往復どころか四往復くらい、五分も続けていたらけんしょう炎になっていたかもしれませんが、二分くらいで終わりました。亀頭のすぐ下のあたりを握って、しごくというよりも包皮を剥いたりかぶせたりといった感じに動かしていたので、手には(あまり)掛かりませんでした。その代わりマットを汚して、ハヴェントは他の二人から叱られていました。
このあたりになると、意識もだいぶんしゃっきりしていました。
射精してしまうと、わたくしへの関心は薄れたようでした。まだ足元がおぼつかないわたくしをうつ伏せにすると手足を持って宙づりにして、物置小屋まで運んでくれました。四人掛りで虐めるのを『デート』というのなら、これはエスコートでしょうね!
――翌日は全身が痛くて、まだ乳房も女性器も腫れていましたが、授業には出ました。わがままだ身勝手だと昨日はけなされましたが、Y5から学園で学ぶようになって以来、こう見えても無遅刻無欠席です。名誉ある記録を、これしきのことで中断してたまるものですか。
一時限目の授業は欠席しました。校長に呼びつけられたからです。いわば公式行事ですから、欠席扱いにはならないでしょう。
校長からは、昨日のデートで何が無かったかを詳しく尋ねられました。鎖の防護が侵されなかったことと、フェラチオ(または類似の行為)は無かったと証言したら、それでおしまいでした。
後になって、フェラチオをさせられたと証言しておけば、彼らが叱られたのかなと思い返しましたけれど。わたくしのうそが暴かれて、結局罰せられるのはわたくしでしょうから、正直に答えておいて正解だったと思います。
さて――今日の放課後は、オッター・デアリングとの『デート』です。指定された通りに昼食は取らないで小屋で待っていると、彼が迎えに来ました。
「良かったら、これを使ってください」
差し出された紙包み(リボンでラッピングされています)を開けると、もう何十日もわたくしとは縁の無かった品々が出てきました。おそろいのブラジャーとパンティ、そして半袖のブラウスです。
「え……?」
「デートのときくらい、まともな格好を……あ、ごめんなさい。普段は目に余る格好をしてるとか、そういう意味ではなくて……」
疑問符がどんどん増えていきます。彼は、いったい何を目論んでいるのでしょうか。
「これを身に着けろという命令なのですね」
「命令じゃないよ。フッド嬢(Miss Hood)が今のファッションが好きなのなら、それでもかまいません」
すねたような物言いです。
わけが分からないまま、彼の言葉に従うことにしました。わたくしが制服を脱ぎかけると、彼があわてます。
「ちょ、ちょっと……ぼく、外に出ているから」
物置小屋のドアが閉められました。てっきり、わたくしが性奴隷にふさわしくない格好になるところを見たいのだと思っていたのに。ますます調子が狂います。チャーリイとジニアが、まだ食事から戻っていなくて良かったです。からかわれるのは目に見えていますから。
とにかく。何十日ぶりにブラジャーとパンティを身にまといます。身体を拘束されたように感じました。ブラウスは普通に着ると、裾が超ミニスカートからはみ出てしまいます。おへその上で裾を結んでみます。男性向けの雑誌のグラビアで見かける着こなしです。もちろん、ボタンはきちんと掛けましたよ。
下着のサイズはちょっと窮屈ですが、胸元をのぞき込まれてもスカートが翻っても、防備は完璧です。騎士が全身よろい(full plate armor)を身に着けたときも、こんな気分になったのではないでしょうか。
わたくしがドアを開けてオッターの前に立つと、彼ははにかんだような微笑を浮かべました。
「すごく似合ってるよ」
下着は見えないし、ブラウスはフリルも付いていない簡素なものです。どこがどう似合っているのか分かりません。儀礼的な言葉なのでしょうが、性奴隷に対して御主人様がおべっかを使う意味が分かりません。
「もし、よかったら――だけど」
またも儀礼的な言葉と共に、左腕を曲げました。彼の魂胆は分かりませんけれど、意図的に気分を損ねさす必要も無いでしょう。わたくしは彼に寄り添って、左腕に右腕を絡めました。
「それでは、行くよ」
どこへでも連れて行ってください。好きにしてください。運命に身を任せます。
彼に(本来の意味で)エスコートされて行った先は、学園内のあちこちに配置されている東屋(pavilion)のひとつでした。環境を変えて勉強をする(人は、あまりいませんけれど)のも善し、ひとり思索にふけるも善し、小人数でお茶会を開くのにも使えます。人目につきにくい場所に設けられているので、愛を語らう(それ以上のことをしてはいけません)のにも向いています。
デートだというのに、テーブルを挟んで向かい合って座って。
彼は持って来たバスケットの中身を、いそいそとテーブルの上に広げました。小ぎれいなクロスの上に紙皿と紙コップを並べて、サンドイッチとフルーツと、ワインの小瓶に炭酸水。まるきり、ピクニックです。
ここに至ってようやく。もしかしたら、オッターは本気でまともなデートをしているつもりなのかもしれないと思いました。
わたくしは勧められるままにサンドイッチを食べ、炭酸水で薄めたワインも飲みました。カフェテリアのコックに特別注文で作らせたのだろうサンドイッチは、とても美味でした。ワインを炭酸水で割るなんてと、フランシュ人なら顔をしかめるでしょうけれど。オッターには精一杯の背伸びでしょう。わたくしも、これくらい薄ければ平気です。
「ええと……フッド嬢(Miss Hood)……」
「アイリスと呼んでください」
「え、いいの?」
以前のわたくしでしたら、彼がおずおずとお伺いを立ててくるまで待っていたでしょうけれど。今はわたくしのほうが彼を御主人様(My master)と呼ばなければならない身分なのですから。いつまでも過去の権威を引きずっているほどわたくしは愚かではありません。
「それじゃ……ミ……アイリス」
ミスを付けかけて、それが伯爵令嬢以上への呼び掛け、子爵令嬢に対しては非礼に当たると気づいて言い直しました。顔が真っ赤です。
うふ、可愛い……同い年の男性に、失礼な感想ですね。でも、男性を可愛いなんて思う感情が、まだ残っていたのには驚きました。今のわたくしにとっては、男性とは迫害者の言い換えに等しいのですから。
「ねえ、アイリス?」
呼び掛けられて、あわてました。彼は何事かを話していたようですが、ちっとも耳に入っていなかったのです。
「ごめんなさい……」
素直に謝ります。
「久しぶりに人間扱いされたので、うれしくてぼおっとしていました」
口にしてから、皮肉に聞こえたのではないかと、不安になりました。昨日、わたくしの振る舞いについてあれこれ言われたのが、まったく平気なわけでもないのです。けれど、無用の懸念でした。
「と、とんでもない。あなたを、あんなふうに扱うほうが間違っているんです。あなたが、今でも子爵令嬢であるという事実は揺るぎません。あなたは、ぼくにとって、今も……あ、憧れの女性です」
言ってから、彼の顔はますます赤くなりました。
「エスコートさせてもらって、ぼぼくのほうこそ舞い上がっています」
こんなに率直に告白をされたのは、初めてです。
「お世辞でもうれしく思います」
ああ、もう。もうちょっと気の利いた返事を出来ないものでしょうか。
彼は、それから――自分のこと(生い立ちまで)とか、伯父が一代騎士爵を賜っているとか、一年以上も前に観た映画の感想とか、好きな食べ物とか、趣味のFlyable paper solid airplaneのこととか、いろんなことを話してくれました。気を遣ってデリケートな話題、学園生活とかナイフランド紛争とかは避けていました。一時間も(そんなに長く、彼は話し続けたのです)すると、わたくしは彼のことを世界でおそらく三番目くらいには詳しく知っている人間になっていました。一番と二番は、彼の御両親です。
普通のデートみたいに(学園内ですけど)あちこちへ行かなかったのも――性奴隷を連れて歩くのはみっともないと、そんなふうに考えたのではなく、さらし者にされるわたくしのみじめさを思ってくれたのでしょう。
とはいえ、彼の話を聞いているだけでは退屈です。ですけど、わたくしの話など、過去の自慢か現在への嘆きにしか聞こえないでしょう。
まだ残っていたフルーツに彼が手を伸ばしたとき、わたくしは思い切って自分の手を重ねました。
「わたくしを、あなたのお好きなようになさってもよろしいのよ?」
性奴隷が御主人様に気に入られようとして、こびているのではありません。一途な男の子に恩恵を与えようと思ったのです。
「な、なな、なんでもいいの?」
彼の声が上ずってきました。しょせんは男。女を自由に出来ると分かれば、女性器は封鎖されているから、胸かお尻か、それとも手に握らせるつもりかもしれません。
「それじゃ、これなんだけど……」
彼がバスケットから取り出したのはビスケットの箱でした。ドイッチュ原産のスティックプレッツェルです。マッチ棒を十倍くらいに拡大した感じです。それを一本だけ取り出しました。
「チャーパンに交換留学してた友達から教わったんだ。二人で両端から食べていくんだ」
「それで、どうなるの?」
どちらも降りなければ、二人の唇と唇とがくっつきます。チキンレースかなと思ったのですけれど。
「あの……ええと……」
もじもじする様子が、いっそう可愛らしく思えます。わたくしになら「キスさせろ」で済むのに。
ファーストキスは、この子にあげよう。そう決めました。体育教師の女性器へのキスは、あれがキスなら、わたくしは何百回も何千回もリンゴやマフィンやソーセージとキスしています。喩えが偏ってしまいました。
「いいわよ。これをくわえるのね」
顔を近づけて、彼が手にしていたスティックの端をくわえました。
オッターもあわてて(折ってしまわないように慎重に)反対側の端をくわえました。
顔と顔は五インチと離れていません。視線をそらすのは不可能に近いです。なんだか、本当に恋人同士になったようなくすぐったさがあります。
ぽりっ。端っこを四分の一インチほどかじりました。くわえ続けているには、かじった分だけくわえ込んで、顔を近づけなければなりません。
ぽりっ。オッターのかじったかすかな振動が、わたくしの歯に伝わります。ますます顔がくっつきます。
それでも、またかじって。彼もかじって。鼻と鼻がぶつからないよう、互いに顔を傾けます。本当に、完全に、キスの体勢です。
あと一口で唇がくっつく。そのまま五秒くらいが何事も無く過ぎて。不意にオッターが顔を寄せてきました。唇と唇とが、ついに触れ合いました。
そこからはオッターが、が然と情熱的になりました。残りのスティックはかまずに飲み込んでから――ちゅううと、音を立てて唇を吸ってきて。それから舌を入れてきました。
そういうのが大人のキスだというのは知っていました。舌と舌とを絡めたり、口の中をなめまわしたり。くすぐったいのではないかしらとおもっていましたけれど、全然そんなことはありませんでした。でも、口の中で生の肉がうごめいていると思うと、あまり気色は良くないです。あ、でも。交接というのも、女の人の体内で男の人の生の肉が動くのですよね。つまり、キスとは男女の営みの代償行為。そう考えると、むねがきゅうんとねじれて、腰の奥が熱く潤ってきました。
あれ……?
この感覚。恥ずかしいことを強いられて、怒りと屈辱に震えているときと、とてもよく似ています。本当の意味で――強制されるくらいならという意味ではなくて、みずからの意思に基づいた行為だというのに、なぜ憤慨しなければならないのでしょう。
身体の反応に対応する自身の感情に疑問を持ったのは、これが初めてでした。けれど、それを深く考えられる状況ではありません。ファーストキスなのです。これよりも一大事なのは初体験でしょうか。こちらは、わたくしの意思に反して強制されるのではないかと――鎖で封じられていることからも、容易に想像できます。その日が少しでも遅くなりますように。なんて、デートの最中に考えることではないですね。
テーブルを挟んで顔を寄せ合っていましたけれど、不自然な姿勢です。その思いはオッターも同じだったらしくて、わたくしたちは自然と立ち上がって、テーブルの横に立って、抱き合いました。男の人にしがみつくって、何もかも彼に委ねた気分で、無防備だけれど安心できます。男の人に抱き締められるって、何もかも彼に支配されているけれど守られているって気分で、すごく幸せです。この時間が、いつまでも続けば良いのに。
けれど、何事にも終わりはあります。SSSの境遇だって、そうに決まっています。いえ、それを考えるとシャボン玉が弾けてしまいます。
オッターは、わたくしを抱き締めている手を下へずらしていって、腰……に達したときに、あわてたように手を放しました。
「あ……身体を触ってごめんなさい」
本当はお尻も触りたかったんだなと思います。最初のデートで、それはやり過ぎだと思い直したのでしょう。紳士的過ぎます。昨日、ハーディたちに何をされたか教えて、たきつけてやりたくなりました。けれど、オッターの前ではSSSアイリスではなく子爵令嬢として振る舞うべきだと思いましたので、ふしだらな言動は慎みました。
こうして、オッターとのデートは、シャボン玉が弾けることもなく終わりました。それは、地平の果てまで広がるしゃく熱の砂漠の中で見つけた、貴重な湧き水のような時間でした。わたくしは、心ゆくまで喉の渇きを潤せたのです――その瞬間だけは。
ジニアとオットーも二人ずつの異性と『デート』をしました。
ジニアは、ものすごく露骨に、その様子を自慢っぽく話して聞かせてくれました。詳しいことは断固として省略しますけれど。彼女の鎖の貞操帯はY字形をしています。裏口からの訪問(ソドムの罪がどういうものかくらい、わたくしだって知っています)は無理でも、玄関からの訪問は可能なのです。彼女は、その可能性を十二分に活用して――デートの相手に、未来の花嫁に対する不実を働かせたのです。
チャーリイは、対照的に不機嫌でした。きっと、金網で男性器を封じられていることと関係があるのでしょう。
「ぼくは猫じゃないんだ」
それが、デートについての感想のすべてでした。きっと、マフィンを振る舞われたのだろうと思います。
学年末のテスト明けから五日後には、新学年に向けての長い夏休みが始まります。チャーリイとジニアは、他の生徒と同様に、親元へ帰省しました。わたくしには、帰る場所がありません。学園の物置小屋で、バカンスも娯楽も無く過ごさなければならないのです。カフェテリアも休業ですから、乾パンと缶詰とドライフルーツを食料として。あ、軍隊のいわゆる野戦食(field ration)を一ダース(十二日分)だけ与えられました。パスタに各種のスプレッドにシリアルバーにナッツ類と粉末飲料。以前のわたくしだったら顔をしかめていたでしょうけれど、今となってはフルコースの御ちそうに匹敵します。
――チャーリイとジニアが帰省する前夜のことは、あまり思い出したくありません。
ミルダ・フォーブスにワックス脱毛を施されてひと月近くが経っていました。
「ぼつぼつ無精ひげが目立ってきたな。帰る前にきれいにしておいてやるよ」
そう言われたのは、いつものように全裸になって手足を長机ベッドの脚に手錠で拘束されてからでした。
「……ありがとう。お願いしますね」
横柄な口調をたしなめても、手荒く扱われるだけです。あまり(元来の)上下関係を際立たせない言葉遣いで、相手の行為(going)を好意(goodwill)として受け容れるようにしています。だいてはbadwillですけれど。
このときも、そうでした。チャーリイは昼のうちにミルダから借りていた鍵で鎖を外して、教わった手順通りにワックスをわたくしの股間に塗り込めました。必要よりも熱く溶かして、必要よりも分厚く。それくらいなら、どうということもありません。熱いのをちょっと我慢するだけです。
ところが彼は、ジニアにピンセットを使わせて淫核の包皮を剥き下げました。彼の意図が分かると――冷たい空気にさらされた乳首と同じことです。実核が固く大きくなってしまいました。その、いっそうびんかんになった神経の塊に、彼はワックスを垂らしたのです。へらに乗せて塗りつける必要がないほどに熱く溶けたワックスを。
「くううっ……」
わたくしは歯を食い縛って、彼の好意(goodwill)ではない行為(going)に耐えました。さいわいに、ワックスはすぐに固まり始めたので、激熱は一分と続きませんでした。
ワックスは鼠蹊部から会陰にまで塗りつけられて、ある程度固まってから、さらに重ね塗りされました。ミルダが使った量の三倍以上を股間に塗られたのです。
覚悟していたのとは違って、彼は優しく――ワックスがその形を保つように注意しながら剥がしてくれたので、毛を引き抜かれる痛みは、ミルダのときよりも小さかったのですけれど。それは彼の親切ではありませんでした。
彼は剥がし取ったワックスの塊を額に入れて、物置小屋の壁に掛けたのです。わたくしの女性器の形がくっきりと写し取られた――反転レプリカを。
わたくしへの意地悪(と、せいぜい軽く考えるようにします)は、まだ続きます。
「乳首のあたりにも、ちょこっと産毛か生えてるわね。ついでだから、きれいにしときましょうよ」
乳房にも、ことに乳首は念入りにワックスを垂らされて、これには声を出さずに耐え抜きました。
それが、ジニアには面白くなかったのでしょう。前にされたように、手首と足首を重ねて手錠を掛けられました。身体は深いV字形に折れ曲がって、肛門が屋根裏を向きます。屋根裏と表現したのは、簡素なプレハブですから天井板が張られていないからです。どうでも良いことです。
肛門のまわりにも産毛があるとジニアは主張して――熱いワックスを高い位置から糸のように細く垂らして、多弁花のつぼみの中芯を狙ったのです。まさか中にまでは入り込みませんでしたけれど、わたくしはちょっぴりだけ痩せ我慢を緩めて悲鳴を上げました。それで、ジニアは満足したようです。
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ポッキーゲームは健全着衣ですし。絵としては、やはりこちらですね。

さて。本日(6月19日)は天気晴朗なれど風速4mとの予報です。紙飛行機は飛ばせなくありませんが、競技用機の調整には向いていません。ので、さあ……午前中は10枚でしたが、午後はセキスパートでなくスパートで、せめて20枚にはしときますか。
(参考記事:健全ブログ→)
ヒロインがSSS(Sexpert Scholarship Student / Sex Slave Student)に堕とされてから1か月。枚数にして320枚。なんと、未だに処女です。
そして、実質全14章のうち、まだ7章が終わったところです。
これは……500枚突破はおろか、600枚いくのではないでしょうか。受注からの納期が2か月しかないと分かってるのに、そのうち最初の10日は別の作品を仕上げるのが分かっていたというのに。
妄想竹を構想竹しているうちに暴走竹しちまった筆者が悪いんですけどね。
SCINARIO
Spiteful・・・・・・- 3 -
Substitute ・・・- 19 -
Subsidence・・・- 27 -
Shame・・・・・・・・- 61 -
Scorn・・・・・・・・ - 90 -
Suppression・・- 104 -
Service・・・・・・- 114 -
Sexperience・・- 139 -
Study
Submission
Skill
Sodomy
Showtime
以下は分量的に1章?
Sequel
Succession/Success
Succession/Session
SCRIPT AFTER これは「後書」
さて、今回はServiceのうち前半の補習は割愛して、かつての男子親衛隊員2名との『デート』の様子をお送りします。
キスをしながら、胸の疼きとか腰の奥の熱い潤いとか、これまでは憤激と屈辱に身体が震えていると思っていたのと同じ反応が生じて、
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さいわいに、補習を受けさせられたのは、この二回だけでした。わたくしが二度とゼロ点に抗議しなかったからですが、教師がその気になれば何とでも口実は設けられたはずです。どの教師も、わたくしをまともな生徒としては扱ってくれませんが、セキスパート奨学生あるいは性奴隷として扱う教師も、今のところは少数だということでしょう。
全教科の試験が(生徒からの異議も吟味した後に)確定してから、学年ごとの順位が掲示されました。わたくしとチャーリイとジニアの名前はありませんでした。
Y7男子の上位四人は、わたくしかジニアかどちらかとの一日デートの権利を獲得しました。夏休みが始まる二日前からは、授業が午前中だけ。午後からが、権利の行使に充てられました。
最初は、同じクラスのハーディ・リンクスとです。彼も、オッターに負けないくらいに献身的なわたくしの崇拝者で僕(しもべ)でした。わたくしが落ちぶれてからは、彼のほうから近づいてくることはなくなりましたが、それは大半のクラスメイトと同様です。近づいてくる男子は、女子の目を盗んでわたくしに置換紛いの行為を仕掛けてくる者ばかりでしたから、近づいてこないことが最大の好意だと、わたくしは解釈していました。
校長からは事前に、デートの相手はわたくしの御主人様(Master)であり顧客(Customer)なのだから、丁重に振る舞えとは指導されていました。わたくしが性奴隷なら彼が御主人様だし、売春婦なら顧客です。でも、まさか、彼がわたくしに対してそのようなことを要求するなど、考えられないことです。
だから、二人きりで校内を散策したり、単独では出入りを禁止されているカフェテリアに連れて行ったりしてもらえるのかなと、楽しみになんかしていませんが、軽く考えていました。
ところが、彼がわたくしをエスコートしてくれた先は、彼の所属しているレスリング部の部屋でした。三人の上級生がわたくしたちを出迎えました。三人とも、シングレットというのでしたかしら、半袖膝丈のレオタードを身に着けています。
ははん。スパーリングとかして、格好いいところをアピールしたいのね――と、わたくしは独り合点しました。
案の定、ハーディは服を脱いで――え? 女性の目の前で着替えるつもりですか。
着替えるどころか、彼は全裸になりました。
「きゃ……」
わたくしは、顔を背けて両手で目をおおいました。清純ぶったのではないです。男の人に裸を見られるのは慣れっこになっても、男の人の裸には免疫が付いていません。
「ファウルカップを忘れてるぞ」
「無理だよ。だって、これだもの」
げらげら笑う声に興味が湧いて、指の隙間からちらっとのぞきました。
彼の男性器が勃起していました。チャーリイに比べても可愛い、訂正します――小さいです。それをお腹に貼り付けるようにして、彼はユニフォームを着ました。
「きみも準備しろよ」
え……?
「貸してあげられるシングレットはないから、裸でやれよ」
「女のパンクラチオンだな。ルールはCACCだけど」
何を言っているのか、理解できません。
「さっさと脱げよ」
上級生のひとりが、わたくしに近寄りました。
他の二人もそれに倣って――包囲された形です。
わたくしはおびえたりなんかしません。上級生の目を見詰めて、静かな声で尋ねました。
「それは、わたくしへの命令なのですか?」
上級生は目を反らしかけましたが、自分が絶対的に優位であることを思い出したのでしょう。にらみつけてきました。
「そうだ、命令だ。裸になって、ぼくたちとレスリングをしろ」
「わたくし、ルールを知りません」
「さっきも言ったろ。CACC、Catch as catch can――つかめるところはどこをつかんでもかまわないし、関節技、キック、パンチ、なんでもあり。まあ、きみは女性だから、顔面への攻撃はしないであげる」
「それと、レイフもしないよ。出来ないからね」
もうひとりの上級生が苦笑しています。つまり。レスリングにかこつけて、か弱い乙女を男が四人掛かりで痛めつけようというのです。
「なぜ……わたくしに恨みでもあるのですか」
「無いとでも思ってたのか」
ハーディです。
「いつも女王様気取りで、ぼくたちを見下しててさ。しょっちゅう荷物持ちをさせるし、カフェテリアではこっちの都合も考えずに呼びつけるし、去年の誕生日にあげたハンカチなんかジニアに投げ与えたし……」
わたくしは、ただあきれて、ハーディの恨み言を聞くばかりです。彼はオッターと競うようにしてチャーリイの仕事を横取りしていたのだし、それでもたまには彼の献身に報いてあげようとして陪食の機会を与えてやったのです。ハンカチは、あんな安物を身のまわりに置くなんて、わたくしの品位を損ないます。でも、好意は分かっていましたから、捨てたりなんかせず、ジニアに下賜したのです。
そのひとつひとつを、彼に説明する気にはなれません。しょせん愚民には高貴な者の考え方など理解できないでしょう。それに……今さら言い聞かせたところで、虐められるのが怖くて言い逃れをしていると勘繰らるだけでしょう。
よろしいです。わたくしを痛めつけて満足するのであれば、お好きになさい。今日を耐えれば、それで終わるのです。この先何年も性奴隷としての辱しめを受けることを思えば、なにほどのことがありましょう。
わたくしは、四人に取り囲まれたまま、制服のジャンパースカートを脱ぎました。求められて、靴も脱ぎます。
部室は広くて、部屋の中央には五ヤード四方くらいのマットが敷かれています。印象としては、マットのまわりのわずかな空間が、ロッカールームとミーティングルームになっています。
その広いマットの上で、わたくしはハーディと向かい合いました。
彼は姿勢を低くして両手を前に突き出して、まるでへっぴり腰です。もちろん、これがレスリングの構えだということくらいは知っています。
猿真似をしたところで、その後の体さばきを知りません。どうやったって敵いっこないのですから、棒立ちですけれど座り込んだアヒル(Sitting duck)です。
「ファイティング・ポーズを取れよ」
「それは命令ですか」
「いいから、やっちまえよ」
上級生にけしかけられて、それでもハーディは慎重に近づいてきて……腕をつかまれたと思ったら。
「きゃっ……?!」
マットの上に引き倒されていました。とっさに突いた手がずるっと滑って、お腹をマットに打ちつけました。このまま転がっていれば、そんなに酷いことはされないで済むかなとずるいことも考えましたけど。
「立てよ」
命令されたうえに腕を引っ張られては、立ち上がるしかありません。よろめきながら立ち上がると。
「きゃあっ……!」
足を払われて、尻餅をつきました。
ハーディは正面で片足を上げて。
「痛いっ……!」
股間を踏んづけられました。鎖が陰裂に食い込んで、すごく痛いです。本能的に股間を護ろうとして、背中を丸めてうずくまります。その背後から……
「いてえっ……」
小さく叫んだのは、ハーディのほうでした。背後から股間を蹴りあげようとして、つま先を鎖にぶち当てたのでしょう。
良い気味ですと言いたいところですが、ハーディはつま先、わたくしは鎖のせいで尾底骨から陰裂までのダメージです。割りに合いません。
「こいつめ!」
腹を立てたハーディが髪をつかんで、わたくしをマットから引き抜きました。そのまま前へ回り込んで。
ぼぐっと、鈍い衝撃がお腹に広がります。
「ぐふっ……」
重たい痛みが腹全体に広がって、吐き気が込み上げてきます。
「思い知ったか」
ぼぐっ……二発目は腹筋を固めたので、苦痛も小さかったし吐き気もしませんでした。
「腹はやめておけよ」
三人の上級生の誰かが、ハーディを止めてくれました。
「なんだよ。顔は殴るな、レイフは禁止、そのうえ腹も駄目って、どうすればいいんですか」
「交替しろ。お手本を見せてやるよ」
ハーディがしぶしぶを顔に貼り付けてマットの外へ出ると、いちばん年長らしい男子がわたくしの前に立ちはだかりました。同級生の数年後の姿というより、若い教師の数年前といった印象です。けれど、せいぜいY10くらいだと思います。延長教育の生徒は、SSSと関り合いにならないようにしている感じですし、Y11は卒業と進学とを控えて、それどころではないはずです。Y10だろうとY13だろうと、わたくしよりずっと大きくて腕力も強いことに変わりはないです。
わたくしがうずくまったままでいると、その人はわたくしにおおいかぶさるようにして。腰の鎖を握って、わたくしを持ち上げました。
「痛いいっ……!」
体重がもろに鎖に乗って、食い込むなんてものではないです。切れ味の悪い刃物で股間を切り裂かれるような激痛です。
わたくしは、足を伸ばして立とうとしました。ところが、彼は腰の横に手をまわして、両側から引き上げます。
「やめて……ください!」
突きのけようとすると、ますます鎖が食い込んできます。進退窮まって、彼の肩にしがみつきました。鎖の圧迫が消えて、ほっとする間もなく。
ぐらっと部屋が傾いたと思ったら、彼に浴びせ倒されました。どすんと、彼の体重が全身を押し潰しました。
「ぐぶふっ……!」
カートゥーンだったら、人形(ひとがた)のパイ生地を描くところです。冗談を言っている場合ではありません。
全身を打って、痛みで動けないわたくしに、彼が手足を絡ませてきました。どういう体勢なのかうまく説明できませんけど、肘を外側へねじ曲げられるような激痛です。ぐききっと関節がきしみます。
「痛い……腕が折れます!」
わたくしの訴えを無視して、いえ、面白がるかのように、彼は身体を揺すって、その動きがますます肘をきしませます。
「どうだ、降参か?」
「降参です。降参します!」
わたくしが(半泣きになんか、なっていません)叫ぶと、彼は赦してくれました。
彼はわたくしを横向きに転がして、添い寝するような形になりました。わたくしの手足を自分の手足に絡めてから、わたくしを腹の上に乗せるようにして、あお向けになります。そして――ぐんっとわたくしを突き上げました。
「いやああっ……」
そんなに痛くはないです。けれど、空中でブリッジの姿勢に固められました。ブリッジよりも開脚の角度が大きいです。直角を超えています。他の三人もマットに上がってきて、わたくしの股間をのぞき込みます。
「可愛らしい陰唇(lips)だな。こんなのでセキスパートになれるのかな?」
「マンコ(cunt)は……鎖が邪魔で、よく分からないや」
「ケツ穴(ass hole)も色が薄くて小さいね」
ひわいな単語の連発です。可愛いというのも、否定的な評価なのでしょう。肯定的な評価をされたって恥ずかしいですけれど。
正面から見られるのと、開脚しているところをのぞき込まれるのとでは、恥ずかしさが百倍も違います。腰の奥が羞恥に燃え盛っています。
「降参します。やめてください」
「まだ早いよ」
取り合ってくれません。ハーディが鎖をつかみました。正確には、腰を巻いている鎖と股間を割っている鎖との交点を、南京錠とまとめてつかみました。下へも手を突っ込んで、腰の後ろの交点もつかみます。
「これって、女のセンズリ(jerk)になるのかな」
鎖を前後にしごき始めました。元から淫裂に食い込んではいますが、ぎちぎちではありません。わずかな余裕はあります。そのせいで、鎖が淫裂と会淫と肛門とを擦ります。のこぎりで引かれているような痛みが走ります。
「それはマンズリ(beaf flicking)っていうんだぜ」
「牛肉ほど分厚くないよ」
痛みに耐えているうちに、陰核への刺激が稲妻を呼び寄せました。膣口と肛門にも、むずがゆいようなくすぐったいような感覚が生じました。
「くうっ……んん」
「よがりだしたな」
わたしの苦鳴に混じる別の響きを、耳ざとく聞きつけられてしまいました。けれど、苦痛はそのままに快感のほうは次第に強くなっていって、うめき声を止められません。
腰の奥で燃え盛る恥ずかしさと浅い部分にたまっていく快感とが絡みあって、全身に広がっていきます。
もっと虐めてほしい。そんな思いが浮かんできて、あわてて打ち消しました。虐めてほしいだなんて……わたくしはマゾヒストではありません。「虐めて」ではなく「可愛がって」なら問題は……大ありです。同じことです。肉体の快感と苦痛に心の恥辱とが混然一体となって、何も考えられなくなっていきます。
でも、わたくしは負けません。快感に囚われては、麻薬中毒患者と同じです。
「くううっ……まだ、降参させてくれないのですか」
気力を振り絞った訴えは聞き届けてもらえました。鎖の動きが止まって、同時にわたくしはマットの上にたたきつけられたのです。
「あれだけマンズリしてやってアクメに達しないなんて――こいつ、不感症じゃないのか」
「前も後ろも未開通だから、まだガキなんだよ」
「Y7だものな」
「ぼくはガキじゃないよ」
「でも、まだ童貞(cherry)だろ」
好き勝手なことを言い合っています。
酷い目に遭いました。でも、大怪我をさせられずに終わった――のでは、ありませんでした。
二人目の上級生がマットに立って、ボクシングのファイティングポーズを取ったのです。しゅっしゅっと、ジャブを繰り出す真似をしています。
「アイリス、立てよ。おれにぶちのめされるために立て。顔は勘弁してやる」
命令には従わなければなりません。泣いて赦しを乞うなんてみっともない真似はできません。でも、身体が動きません。
「しょうがないな。ハヴェント、立たせてやれ。倒れないように、羽交い締めにしておけ」
「自分の足で立ちます!」
名前を呼ばれた三人目の上級生が動く前に、わたくしは宣言しました。両手を突いて上体を起こし、両足を踏ん張って、よろよろと立ちました。強制されるよりはみずからの意思で命令に従う――という自尊心だけではありません。羽交い締めにされていては、殴られた瞬間によろめいて衝撃を和らげることすら出来ません。
「形だけどもファイティングポーズを取れよ。か弱い女の子を一方的に虐めるみたいで後ろめたいよ」
まさに言葉通りのことをしているくせに。でも、命令ですから――肘を曲げて両手を拳にして顔の前で構えました。
「きみも攻撃していいんだよ」
フットワークは使わず、彼は無造作に近づいてきて――パンチを繰り出しました。胸を狙われていると分かったときには心臓のあたりに、どすんと衝撃を受けていました。
オレンジの輪切りが潰れて、ぷるんと跳ね返るのが分かりました。乳房をもぎ取られたような激痛が走ります。机の角にぶつけただけで息が詰まるほど痛いというのに、拳骨で思い切り殴られたのです。両手で胸を抱えて前のめりになりました。
「ほら、ファイト、ファイト!」
命令に従おうと思っても、身体が動きません。とうとう羽交い締めにされてしまいました。ブリッジのポーズで空中にさらされるよりも屈辱です。
正面の上級生は、さっきよりもわたくしに近づくと、両手を使って乳房を連続して横に殴り始めました。
「ワンツウ、ワンツウ」
殴られるたびに、ささやかな乳房が左右にひしゃげます。さっきほど激烈ではありませんが、鈍い痛みが蓄積していきます。
「ワンツウ、ワンツウ……フィニッシュ!」
また正面からパンチをたたき込まれて、乳房が破裂したような激痛です。
「うわあ。だいぶん赤くなったな。腫れた分だけ、おっぱいが大きくなったんじゃないかな」
そんなことは分かりませんけれど、ずきずきとうずいています。
「先輩、交替してください。ぼくは、まだスパーリングをしてない」
わたくしを羽交い締めにしていた上級生との対戦(?)です。サンドバッグにされていた間、ずっと支えてくれていたおかげで、自分の足で立てるようになりました。驚きました。まだ、皮肉を考えられる余裕があります。口にする蛮勇はありませんけれど。
「それじゃ、ぼくはね……」
目の前に立って、両肩をつかむと……
「あがっ……!」
股間が爆発したような激痛が、腰を砕きました。
「…………?!」
両手で股間を押さえて、その場に崩折れました。
「玉(ball)が無いから、金蹴り(nuts crushing)ほどは効かない感じだね」
男の人が睾丸を蹴られる痛みは分かりませんけれど、女性器を蹴られたって、物凄く痛いです。教鞭でたたかれるよりも。それに、局所的な痛みではなく、股間全体が痛いです。でも、彼が言うように男性はもっと痛いのかもしれません。すくなくともわたくしは、もん絶したり跳びはねたりはしませんでしたから。
「ひと通りは試したけど、あまり面白くないな」
わたくしをサンドバッグにした上級生が、つまらなさそうに言いました。
「恋の駆け引きをするわけじゃなし。穴を使えないビッチなんて、何の役にも立たないや」
「それじゃ、もう赦してやるんですか?」
ハーディは不満そうです。
「そうだな。おい、アイリス」
「はい、なにかご用でしょうか、御主人様(My master)」
この言葉遣いは、校長からの命令です。赦してもらえそうな雰囲気になって、やっと思い出したのです。我ながら現金です。
「そこにひざまずけ。そして、こう言え――父親の権威を我が物と勘違いし、高慢ちきに皆様を見下してきて、申し訳ありませんでした。わがままな振る舞いで皆様に迷惑ばかり掛けて、申し訳ありませんでした。深く反省しています。両手を組んで謝罪してから、最後に、おれたち一人ひとりの足にキスしろ。それで、おれたち四人はおまえを赦してやるよ」
また、四人に取り囲まれました。わたくしが謝罪するのが当然といった顔です。
これも命令には違いないのだから、服従しなければならないのでしょうね――と、弱気が頭をもたげました。言われた通りにすれば、それで『デート』はおしまいにしてもらえそうです。
けれど。たとえ不服従の厳しい――これまで以上となると、厳しいのではなく残虐です。その残虐な罰をこうむっても、譲れない一線があります。高潔です。誇りです。わたくしが高慢ですって?! 貴族としての品位を保って、平民であるクラスメイトに接していたのを、そのように曲解するのですか。
わたくしには、この四人にも他の生徒にも、謝罪する必要など断じて有りません。
これ以上の暴力から逃れる方便だとしても、わたくしの口から出た言葉は、わたくしを縛ります。何をされても仕方がない、そういう契約です。けれど、無実の罪を認めるわけにはいきません。
「お断わりします」
わたくしは勇気を振り絞って、敢然と拒否しました。どんなに残酷な罰でも、潔く受ける覚悟でした。誇らしさに、胸がねじ切れそうです。悲壮が腰の奥で熱くたぎります。
「ちぇ、頑固だな。もうちょっと遊んでやるか」
これまでの延長なら、もう少しの間は耐えられる……かもしれません。
わたくしは立たされて――頭から袋をかぶせられました。男の体臭がこもっています。ユニフォームを入れる袋かもしれません。分厚い生地で、袋の口を首のところで閉じられると真っ暗になるだけでなく、息も苦しく感じられます。
どんっと斜め後ろから突かれて、前へよろめきました。すぐに受け止められて、真後ろへ突き飛ばされます。それを真横へ押されて……倒れる暇もないくらい、あちこちへ小突き回されます。肩をつかんで向きを変えられたりもします。
こんなことをして、何が面白いんだろう。そう思っていると――不意に足払いを掛けられました。
「きゃっ……?!」
身体を支えようと前へ手を伸ばしましたが、背中から落ちて頭を打ちました。視界を奪われて身体を動かされているうちに、三半規管の平衡が狂ったみたいです。
「痛いいっ……」
鎖をつかんで持ち上げられて、身体が宙に浮きました。くるんと裏返しにされて、そのままマットにたたきつけられました。腕に力が入らず、ささやかな乳房がまた潰れました。
それからは……いちいち覚えていないです。脇腹や股間を蹴られたり胸やお腹を踏んづけられたりお尻を蹴られたり。腕をつかんで引きずり起こされてすぐ押し倒されるのなんてまだ優しいです。足をつかんで逆立ちにされて、そこに股をクロスする形でのしかかられてぐりぐり擦りつけられたり。あお向けに寝かされて四人掛りで手足を引っ張られたり。
もしもわたくしがぬいぐるみ人形だったら、ばらばらにされていたに違いありません。生身の身体だから、どこも千切れたり裂けたりしなかったのです。
最後は、袋を取ってもらえたのですけれど。
「おまえのデートだからな。一番乗りをしろよ」
ハーディがユニフォームを脱いで裸になりました。男性器は勃起しています。ずっとだったのかもしれません。あお向けに転がったわたくしの足を大きく開かせると、上からおおいかぶさって、男性器をわたくしの股間に押しつけました。正確には、そけい部です。太腿と大陰唇とのくぼみに、包皮から顔を出している亀頭を、腰を激しく動かして、擦りつけます。そして、ラテン語教師のカビンより多量の白濁をわたくしの下腹部にぶちまけました。
次は最年長の上級生でした。両足をそろえて、わたくしに抱えさせました。そして、わたくしの足を折り曲げて、のしかかってくると、男性器を太腿の間に突っ込みました。みずからもわたくしの膝頭をつかんできつく閉じ合わせて、腰を激しく振りました。さっきよりも、刺激が微妙です。快不快ではなく、ぬるぬるした感触が気色悪いです。この人もすぐに射精して、胸のあたりまでわたくしを汚しました。
三人目はボクシングの人でした。先の二人の精液をロールペーパーで拭ってから、わたくしの上体を起こさせ、自分は中腰になって。両手でわたくしの乳房を中央に寄せて、男性器を挟んだ――つもりかもしれませんが、北緯三十度のオレンジでは無理です。陰茎の両側に触れさせるのが、やっとでした。それでも、激しく腰を動かしてオレンジを側面からすり潰すみたいにして(そういえば、陰茎とすり粉木は形が似ています)目的を果たしました。
手の甲で拭おうとしたら、その手をハヴェントにつかまれて、剥き出しの陰茎を握らされました。湯煎したサラミソーセージの感触です。しごくように命令されたので、手を動かしました。
「もっと強く、もっと早く!」
サラミでなくフランクフルトだったら折れるくらいに強く握って、一秒に二往復どころか四往復くらい、五分も続けていたらけんしょう炎になっていたかもしれませんが、二分くらいで終わりました。亀頭のすぐ下のあたりを握って、しごくというよりも包皮を剥いたりかぶせたりといった感じに動かしていたので、手には(あまり)掛かりませんでした。その代わりマットを汚して、ハヴェントは他の二人から叱られていました。
このあたりになると、意識もだいぶんしゃっきりしていました。
射精してしまうと、わたくしへの関心は薄れたようでした。まだ足元がおぼつかないわたくしをうつ伏せにすると手足を持って宙づりにして、物置小屋まで運んでくれました。四人掛りで虐めるのを『デート』というのなら、これはエスコートでしょうね!
――翌日は全身が痛くて、まだ乳房も女性器も腫れていましたが、授業には出ました。わがままだ身勝手だと昨日はけなされましたが、Y5から学園で学ぶようになって以来、こう見えても無遅刻無欠席です。名誉ある記録を、これしきのことで中断してたまるものですか。
一時限目の授業は欠席しました。校長に呼びつけられたからです。いわば公式行事ですから、欠席扱いにはならないでしょう。
校長からは、昨日のデートで何が無かったかを詳しく尋ねられました。鎖の防護が侵されなかったことと、フェラチオ(または類似の行為)は無かったと証言したら、それでおしまいでした。
後になって、フェラチオをさせられたと証言しておけば、彼らが叱られたのかなと思い返しましたけれど。わたくしのうそが暴かれて、結局罰せられるのはわたくしでしょうから、正直に答えておいて正解だったと思います。
さて――今日の放課後は、オッター・デアリングとの『デート』です。指定された通りに昼食は取らないで小屋で待っていると、彼が迎えに来ました。
「良かったら、これを使ってください」
差し出された紙包み(リボンでラッピングされています)を開けると、もう何十日もわたくしとは縁の無かった品々が出てきました。おそろいのブラジャーとパンティ、そして半袖のブラウスです。
「え……?」
「デートのときくらい、まともな格好を……あ、ごめんなさい。普段は目に余る格好をしてるとか、そういう意味ではなくて……」
疑問符がどんどん増えていきます。彼は、いったい何を目論んでいるのでしょうか。
「これを身に着けろという命令なのですね」
「命令じゃないよ。フッド嬢(Miss Hood)が今のファッションが好きなのなら、それでもかまいません」
すねたような物言いです。
わけが分からないまま、彼の言葉に従うことにしました。わたくしが制服を脱ぎかけると、彼があわてます。
「ちょ、ちょっと……ぼく、外に出ているから」
物置小屋のドアが閉められました。てっきり、わたくしが性奴隷にふさわしくない格好になるところを見たいのだと思っていたのに。ますます調子が狂います。チャーリイとジニアが、まだ食事から戻っていなくて良かったです。からかわれるのは目に見えていますから。
とにかく。何十日ぶりにブラジャーとパンティを身にまといます。身体を拘束されたように感じました。ブラウスは普通に着ると、裾が超ミニスカートからはみ出てしまいます。おへその上で裾を結んでみます。男性向けの雑誌のグラビアで見かける着こなしです。もちろん、ボタンはきちんと掛けましたよ。
下着のサイズはちょっと窮屈ですが、胸元をのぞき込まれてもスカートが翻っても、防備は完璧です。騎士が全身よろい(full plate armor)を身に着けたときも、こんな気分になったのではないでしょうか。
わたくしがドアを開けてオッターの前に立つと、彼ははにかんだような微笑を浮かべました。
「すごく似合ってるよ」
下着は見えないし、ブラウスはフリルも付いていない簡素なものです。どこがどう似合っているのか分かりません。儀礼的な言葉なのでしょうが、性奴隷に対して御主人様がおべっかを使う意味が分かりません。
「もし、よかったら――だけど」
またも儀礼的な言葉と共に、左腕を曲げました。彼の魂胆は分かりませんけれど、意図的に気分を損ねさす必要も無いでしょう。わたくしは彼に寄り添って、左腕に右腕を絡めました。
「それでは、行くよ」
どこへでも連れて行ってください。好きにしてください。運命に身を任せます。
彼に(本来の意味で)エスコートされて行った先は、学園内のあちこちに配置されている東屋(pavilion)のひとつでした。環境を変えて勉強をする(人は、あまりいませんけれど)のも善し、ひとり思索にふけるも善し、小人数でお茶会を開くのにも使えます。人目につきにくい場所に設けられているので、愛を語らう(それ以上のことをしてはいけません)のにも向いています。
デートだというのに、テーブルを挟んで向かい合って座って。
彼は持って来たバスケットの中身を、いそいそとテーブルの上に広げました。小ぎれいなクロスの上に紙皿と紙コップを並べて、サンドイッチとフルーツと、ワインの小瓶に炭酸水。まるきり、ピクニックです。
ここに至ってようやく。もしかしたら、オッターは本気でまともなデートをしているつもりなのかもしれないと思いました。
わたくしは勧められるままにサンドイッチを食べ、炭酸水で薄めたワインも飲みました。カフェテリアのコックに特別注文で作らせたのだろうサンドイッチは、とても美味でした。ワインを炭酸水で割るなんてと、フランシュ人なら顔をしかめるでしょうけれど。オッターには精一杯の背伸びでしょう。わたくしも、これくらい薄ければ平気です。
「ええと……フッド嬢(Miss Hood)……」
「アイリスと呼んでください」
「え、いいの?」
以前のわたくしでしたら、彼がおずおずとお伺いを立ててくるまで待っていたでしょうけれど。今はわたくしのほうが彼を御主人様(My master)と呼ばなければならない身分なのですから。いつまでも過去の権威を引きずっているほどわたくしは愚かではありません。
「それじゃ……ミ……アイリス」
ミスを付けかけて、それが伯爵令嬢以上への呼び掛け、子爵令嬢に対しては非礼に当たると気づいて言い直しました。顔が真っ赤です。
うふ、可愛い……同い年の男性に、失礼な感想ですね。でも、男性を可愛いなんて思う感情が、まだ残っていたのには驚きました。今のわたくしにとっては、男性とは迫害者の言い換えに等しいのですから。
「ねえ、アイリス?」
呼び掛けられて、あわてました。彼は何事かを話していたようですが、ちっとも耳に入っていなかったのです。
「ごめんなさい……」
素直に謝ります。
「久しぶりに人間扱いされたので、うれしくてぼおっとしていました」
口にしてから、皮肉に聞こえたのではないかと、不安になりました。昨日、わたくしの振る舞いについてあれこれ言われたのが、まったく平気なわけでもないのです。けれど、無用の懸念でした。
「と、とんでもない。あなたを、あんなふうに扱うほうが間違っているんです。あなたが、今でも子爵令嬢であるという事実は揺るぎません。あなたは、ぼくにとって、今も……あ、憧れの女性です」
言ってから、彼の顔はますます赤くなりました。
「エスコートさせてもらって、ぼぼくのほうこそ舞い上がっています」
こんなに率直に告白をされたのは、初めてです。
「お世辞でもうれしく思います」
ああ、もう。もうちょっと気の利いた返事を出来ないものでしょうか。
彼は、それから――自分のこと(生い立ちまで)とか、伯父が一代騎士爵を賜っているとか、一年以上も前に観た映画の感想とか、好きな食べ物とか、趣味のFlyable paper solid airplaneのこととか、いろんなことを話してくれました。気を遣ってデリケートな話題、学園生活とかナイフランド紛争とかは避けていました。一時間も(そんなに長く、彼は話し続けたのです)すると、わたくしは彼のことを世界でおそらく三番目くらいには詳しく知っている人間になっていました。一番と二番は、彼の御両親です。
普通のデートみたいに(学園内ですけど)あちこちへ行かなかったのも――性奴隷を連れて歩くのはみっともないと、そんなふうに考えたのではなく、さらし者にされるわたくしのみじめさを思ってくれたのでしょう。
とはいえ、彼の話を聞いているだけでは退屈です。ですけど、わたくしの話など、過去の自慢か現在への嘆きにしか聞こえないでしょう。
まだ残っていたフルーツに彼が手を伸ばしたとき、わたくしは思い切って自分の手を重ねました。
「わたくしを、あなたのお好きなようになさってもよろしいのよ?」
性奴隷が御主人様に気に入られようとして、こびているのではありません。一途な男の子に恩恵を与えようと思ったのです。
「な、なな、なんでもいいの?」
彼の声が上ずってきました。しょせんは男。女を自由に出来ると分かれば、女性器は封鎖されているから、胸かお尻か、それとも手に握らせるつもりかもしれません。
「それじゃ、これなんだけど……」
彼がバスケットから取り出したのはビスケットの箱でした。ドイッチュ原産のスティックプレッツェルです。マッチ棒を十倍くらいに拡大した感じです。それを一本だけ取り出しました。
「チャーパンに交換留学してた友達から教わったんだ。二人で両端から食べていくんだ」
「それで、どうなるの?」
どちらも降りなければ、二人の唇と唇とがくっつきます。チキンレースかなと思ったのですけれど。
「あの……ええと……」
もじもじする様子が、いっそう可愛らしく思えます。わたくしになら「キスさせろ」で済むのに。
ファーストキスは、この子にあげよう。そう決めました。体育教師の女性器へのキスは、あれがキスなら、わたくしは何百回も何千回もリンゴやマフィンやソーセージとキスしています。喩えが偏ってしまいました。
「いいわよ。これをくわえるのね」
顔を近づけて、彼が手にしていたスティックの端をくわえました。
オッターもあわてて(折ってしまわないように慎重に)反対側の端をくわえました。
顔と顔は五インチと離れていません。視線をそらすのは不可能に近いです。なんだか、本当に恋人同士になったようなくすぐったさがあります。
ぽりっ。端っこを四分の一インチほどかじりました。くわえ続けているには、かじった分だけくわえ込んで、顔を近づけなければなりません。
ぽりっ。オッターのかじったかすかな振動が、わたくしの歯に伝わります。ますます顔がくっつきます。
それでも、またかじって。彼もかじって。鼻と鼻がぶつからないよう、互いに顔を傾けます。本当に、完全に、キスの体勢です。
あと一口で唇がくっつく。そのまま五秒くらいが何事も無く過ぎて。不意にオッターが顔を寄せてきました。唇と唇とが、ついに触れ合いました。
そこからはオッターが、が然と情熱的になりました。残りのスティックはかまずに飲み込んでから――ちゅううと、音を立てて唇を吸ってきて。それから舌を入れてきました。
そういうのが大人のキスだというのは知っていました。舌と舌とを絡めたり、口の中をなめまわしたり。くすぐったいのではないかしらとおもっていましたけれど、全然そんなことはありませんでした。でも、口の中で生の肉がうごめいていると思うと、あまり気色は良くないです。あ、でも。交接というのも、女の人の体内で男の人の生の肉が動くのですよね。つまり、キスとは男女の営みの代償行為。そう考えると、むねがきゅうんとねじれて、腰の奥が熱く潤ってきました。
あれ……?
この感覚。恥ずかしいことを強いられて、怒りと屈辱に震えているときと、とてもよく似ています。本当の意味で――強制されるくらいならという意味ではなくて、みずからの意思に基づいた行為だというのに、なぜ憤慨しなければならないのでしょう。
身体の反応に対応する自身の感情に疑問を持ったのは、これが初めてでした。けれど、それを深く考えられる状況ではありません。ファーストキスなのです。これよりも一大事なのは初体験でしょうか。こちらは、わたくしの意思に反して強制されるのではないかと――鎖で封じられていることからも、容易に想像できます。その日が少しでも遅くなりますように。なんて、デートの最中に考えることではないですね。
テーブルを挟んで顔を寄せ合っていましたけれど、不自然な姿勢です。その思いはオッターも同じだったらしくて、わたくしたちは自然と立ち上がって、テーブルの横に立って、抱き合いました。男の人にしがみつくって、何もかも彼に委ねた気分で、無防備だけれど安心できます。男の人に抱き締められるって、何もかも彼に支配されているけれど守られているって気分で、すごく幸せです。この時間が、いつまでも続けば良いのに。
けれど、何事にも終わりはあります。SSSの境遇だって、そうに決まっています。いえ、それを考えるとシャボン玉が弾けてしまいます。
オッターは、わたくしを抱き締めている手を下へずらしていって、腰……に達したときに、あわてたように手を放しました。
「あ……身体を触ってごめんなさい」
本当はお尻も触りたかったんだなと思います。最初のデートで、それはやり過ぎだと思い直したのでしょう。紳士的過ぎます。昨日、ハーディたちに何をされたか教えて、たきつけてやりたくなりました。けれど、オッターの前ではSSSアイリスではなく子爵令嬢として振る舞うべきだと思いましたので、ふしだらな言動は慎みました。
こうして、オッターとのデートは、シャボン玉が弾けることもなく終わりました。それは、地平の果てまで広がるしゃく熱の砂漠の中で見つけた、貴重な湧き水のような時間でした。わたくしは、心ゆくまで喉の渇きを潤せたのです――その瞬間だけは。
ジニアとオットーも二人ずつの異性と『デート』をしました。
ジニアは、ものすごく露骨に、その様子を自慢っぽく話して聞かせてくれました。詳しいことは断固として省略しますけれど。彼女の鎖の貞操帯はY字形をしています。裏口からの訪問(ソドムの罪がどういうものかくらい、わたくしだって知っています)は無理でも、玄関からの訪問は可能なのです。彼女は、その可能性を十二分に活用して――デートの相手に、未来の花嫁に対する不実を働かせたのです。
チャーリイは、対照的に不機嫌でした。きっと、金網で男性器を封じられていることと関係があるのでしょう。
「ぼくは猫じゃないんだ」
それが、デートについての感想のすべてでした。きっと、マフィンを振る舞われたのだろうと思います。
学年末のテスト明けから五日後には、新学年に向けての長い夏休みが始まります。チャーリイとジニアは、他の生徒と同様に、親元へ帰省しました。わたくしには、帰る場所がありません。学園の物置小屋で、バカンスも娯楽も無く過ごさなければならないのです。カフェテリアも休業ですから、乾パンと缶詰とドライフルーツを食料として。あ、軍隊のいわゆる野戦食(field ration)を一ダース(十二日分)だけ与えられました。パスタに各種のスプレッドにシリアルバーにナッツ類と粉末飲料。以前のわたくしだったら顔をしかめていたでしょうけれど、今となってはフルコースの御ちそうに匹敵します。
――チャーリイとジニアが帰省する前夜のことは、あまり思い出したくありません。
ミルダ・フォーブスにワックス脱毛を施されてひと月近くが経っていました。
「ぼつぼつ無精ひげが目立ってきたな。帰る前にきれいにしておいてやるよ」
そう言われたのは、いつものように全裸になって手足を長机ベッドの脚に手錠で拘束されてからでした。
「……ありがとう。お願いしますね」
横柄な口調をたしなめても、手荒く扱われるだけです。あまり(元来の)上下関係を際立たせない言葉遣いで、相手の行為(going)を好意(goodwill)として受け容れるようにしています。だいてはbadwillですけれど。
このときも、そうでした。チャーリイは昼のうちにミルダから借りていた鍵で鎖を外して、教わった手順通りにワックスをわたくしの股間に塗り込めました。必要よりも熱く溶かして、必要よりも分厚く。それくらいなら、どうということもありません。熱いのをちょっと我慢するだけです。
ところが彼は、ジニアにピンセットを使わせて淫核の包皮を剥き下げました。彼の意図が分かると――冷たい空気にさらされた乳首と同じことです。実核が固く大きくなってしまいました。その、いっそうびんかんになった神経の塊に、彼はワックスを垂らしたのです。へらに乗せて塗りつける必要がないほどに熱く溶けたワックスを。
「くううっ……」
わたくしは歯を食い縛って、彼の好意(goodwill)ではない行為(going)に耐えました。さいわいに、ワックスはすぐに固まり始めたので、激熱は一分と続きませんでした。
ワックスは鼠蹊部から会陰にまで塗りつけられて、ある程度固まってから、さらに重ね塗りされました。ミルダが使った量の三倍以上を股間に塗られたのです。
覚悟していたのとは違って、彼は優しく――ワックスがその形を保つように注意しながら剥がしてくれたので、毛を引き抜かれる痛みは、ミルダのときよりも小さかったのですけれど。それは彼の親切ではありませんでした。
彼は剥がし取ったワックスの塊を額に入れて、物置小屋の壁に掛けたのです。わたくしの女性器の形がくっきりと写し取られた――反転レプリカを。
わたくしへの意地悪(と、せいぜい軽く考えるようにします)は、まだ続きます。
「乳首のあたりにも、ちょこっと産毛か生えてるわね。ついでだから、きれいにしときましょうよ」
乳房にも、ことに乳首は念入りにワックスを垂らされて、これには声を出さずに耐え抜きました。
それが、ジニアには面白くなかったのでしょう。前にされたように、手首と足首を重ねて手錠を掛けられました。身体は深いV字形に折れ曲がって、肛門が屋根裏を向きます。屋根裏と表現したのは、簡素なプレハブですから天井板が張られていないからです。どうでも良いことです。
肛門のまわりにも産毛があるとジニアは主張して――熱いワックスを高い位置から糸のように細く垂らして、多弁花のつぼみの中芯を狙ったのです。まさか中にまでは入り込みませんでしたけれど、わたくしはちょっぴりだけ痩せ我慢を緩めて悲鳴を上げました。それで、ジニアは満足したようです。
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ポッキーゲームは健全着衣ですし。絵としては、やはりこちらですね。

さて。本日(6月19日)は天気晴朗なれど風速4mとの予報です。紙飛行機は飛ばせなくありませんが、競技用機の調整には向いていません。ので、さあ……午前中は10枚でしたが、午後はセキスパートでなくスパートで、せめて20枚にはしときますか。
(参考記事:健全ブログ→)
Progress Report 3:『特別娼学性奴』
いやはや、困ったものです。まだ零落(Subsidence)して1か月も経たないというのに、240枚です。後半でいつものように加速したりワープするかもしれませんが、予定しているエピソードをきっちり書き込んでいくと500枚を超えるかもです。
しかも。これだけS尽くしなのに、基本的なServiceが無いのはおかしいと。性奴隷としての初仕事、学年末成績上位者との「デート」を予定していますから、これぞServiceです。それと、赤点(強制ゼロ点)の補習と。でも、膝の上に座らせてモミモミモギュモギュだけでは弱いな――ということで、女教師による保健衛生の補習も追加。レズ奉仕です。尺が伸びる一方です。
まあ、学校でのアレコレは、大昔からドツボでした。『奴隷留学』とか『淫海教育』とか。小昔でも『鞭と縄の体育補習』がありますし。
妄想竹が暴走竹になってきました。
ということで。今回はSuppression(抑圧)です。縄は登場しませんが、予定調和のツインテ利用後ろ手縛りです。
アイリスちゃんは、屈辱に胸をねじられたり、クリに奔った細い稲妻が腰の奥で疼いている屈辱と合体したり。本人は、あくまで不快だと主張しています。小さな水(こういう表現ならfc2に引っ掛からないよね?)ではない粘っこい体液の分泌に戸惑ったり。
今の予定では。肉体的な性感を教え込まれても虚しさが募ったりして、精神的な要素(屈辱)と止揚されてこそ充足を得られるのだと――さて、どこで悟らせるか。未定です。
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Suppression
七月になって早々に、わたくしは誕生日を迎えました。誰からも祝福されることのない誕生日でした。
性奴隷などという惨めな肩書ですが、そんなにわいせつな悪戯はされずに済んでいます。やはり、男子生徒は女子の目を恐れています。耳もです。
すれ違いざまにお尻をなでるどころか、追い抜きながら胸元に手を入れてきたり、はなはだしいのは正面に立ちはだかって股間をまさぐる男子までいましたが、じきに少なくなりました。わたくしが黙っていなかったからです。いえ、抵抗したのではありません。
「今、お尻を触りましたね。先に、触らせろと命令してください」
大声でそんなことを言われては、退散するしかないでしょ?
ただ。わたくしの機転では切り抜けられない困難に直面したことがありました。特別奨学生徒は、言いつけられた雑用もこなさなければなりません。普段(こんな日々が普段になってはたまりませんけれど)は、こきつかわれることもありません。寮の自室以外は専門の業者が掃除しますし、洗濯してくれるハウスメイドも居ます。まさか、代わりにノートを取ってくれなんていう生徒はいません。
それでも、寮に忘れ物をしたから大急ぎで取って来いとかいうのはあります。そのときが、それでした。ところが、校舎を出たところで、Y11の男子生徒に呼び止められました。同じような依頼、いえ命令でした。男子寮と女子寮は正反対の方角です。二つの命令を同時には果たせません。事情を説明しても、彼はこっちを優先しろと主張します。全国統一試験を控えているぼくのほうが忙しいのだし、上級生なのだし、男だから――と。
言い争う(ことを、わたくしが許されていたとしても)時間が惜しかったので、彼の命令を先に片付けました。当然ですが、最初の命令を果たしたときは授業が始まっていて、無駄足になってしまいました。彼女は怒り狂って――授業の後で受けた罰は、スカートをまくってお尻をたたかれるよりも生ぬるいものでしたけれど。
放課後すぐに、わたくしは校長に訴えました。悪意を持って、こんな両立不可能な命令を出されたら、対抗のしようがありません。
校長の返事は単純明快で、とうてい受け容れられるものではありませんでした。
「どちらか一方の命令にだけ従えばよろしい」
当然ですが、続きがありました。
「それから、もう一方の命令に従わなかった罰をうけるのです」
礼儀正しく辞去の挨拶をして校長室を出てからも、わたくしの肩は怒りに震えていました。
幸いに二律背反の命令は、今までのところ、その一回きりです。男子生徒からの性的な悪戯も、一日に数回だけだし、ほとんど一瞬です。
むしろ、女子生徒からの嫌がらせが多いくらいですが、ほとんどが面と向かっての嫌味ですから、心を強く持っていれば、へっちゃらです。
むしろ、わたくしたちと接する機会のある使用人たちのほうが、だんだん図に乗ってきました。食事を提供するコックは、わたくしとジニアを抱き締めたり何十秒かは堂々と身体を触るようになりました。といっても、被害はもっぱらジニアに集中して、わたくしにはお義理といった扱いでした。ちっとも悔しくはありません。ジニアのほうがグラマーですし、鎖の貞操帯も前を防御していませんものね。
休日だけ出勤するスクールバスの運転手は、バスの運行を始める何時間も前から洗車場のすぐ横に椅子を持ち出して、そこで待機するようになりました。コックと違って身体に触ったりはしませんけれど、水で股間を洗うわたくしとジニアをじっくりと観賞するのです。そして、こちらの被害はわたくしにが受け持つ破目になりました。夕食を終えて小屋へ戻るとすぐに制服を取り上げられ、朝食が始まる直前まで返してもらえなくなったのです。ジニアの発案です。
「もっと、身体をくねらせながら洗うとかしたら、彼は喜んでくれるわよ。チップの一ポンドも張り込んでくれるんじゃないかな。あなた、一文無しなんでしょ」
もちろん、死んだって――もっと現実的な喩えなら、(昼食時には物置小屋に拘束は出来ませんから)朝食と夕食を取り上げられたって、そんなことはしません。
そうこうするうちに、学年末の試験が始まりました。特別奨学生徒になってから、勉学の機会は奪われていたに等しいですが、わたくしには一年分以上の貯金があります。とくに国語やラテン語は、ケアレスミスでも無い限り満点の自信がありました。
ところが。テスト明けの授業で、最初にラテン語のテストが返されたとき、わたくしは目を疑いました。答案用紙には、正解のチェックマークも誤答を指摘する赤線も入っていないのです。それなのに、右肩には二重線のうえに大きくゼロの数字が書かれています。
「採点漏れがあります」
特別奨学生の身分を弁えて、ずいぶんと控えめな言葉で、教師の怠慢を指摘しました。ところが、カビン氏から返って来た言葉は耳を疑うものでした。
「ゼロ点のことかね。マイナスの点は付けられないので、そうしておいたのだ」
採点漏れではなく故意だったのです。
「なぜ、そんなことをなさるのですか?!」
「きみは、チャーリイとジニアがテストで取っていた点数を知っているかね」
大体は知っています。使用人が落第点を取ったりしたら、主人の管理能力を疑われます。二人とも平均点に届いたことはありませんが、落第点を取ったこともありません。
「きみは、今回の全教科がゼロ点でも、嘆かわしいことに平均点をはるかに越えてしまうのです」
分かってきました。チャーリイもジニアも、きちんと(わたくしの父が)学費を納めていた生徒とはいえ、わたくしの使用人でもありました。そんな者が優秀な成績を修めれば、良く思う者は、生徒にも教師にもいないでしょう。まして今は――学園のお情けで養われて(辱しめられての間違いです)いる身です。
それでも。裸の上に超ミニスカートも、女性器に食い込む鎖も、電気も無い物置小屋も、さらし台の机も、乞食のような扱いも、屈辱的な命令への絶対服従も、いやらしく身体を触られることも――すべて甘受するとしても、これだけは我慢出来ません。財産も爵位も青い血さえも関係なく、わたくしの個人としての能力を全否定されるのですから。
「公式に保存される学業記録にまでとは望みません。せめて、この答案用紙には、正当な点数を記入してください」
今の身分を弁えて、ぎりぎりまで譲った要求です。
「思い上がるのも、たいがいにしろ」
怒鳴りつけられました。
「財産と身分を鼻に掛けて、教師までないがしろにしてきたのだから、それを失えばしっぺ返しを食らうのは当然だろうが。三倍返し、いや十倍返しは覚悟しておけ」
授業内容でも道徳的な問題でも、間違っている部分は教師に対してもきっちり指摘してきました。それを曲解して、そんなふうに思っていたなんて……でも、言い返しても、ますます怒らせるだけでしょう。
「そういえば、この授業では、まだおまえに懲罰を与えたことがなかったな。いい機会だ――服を脱げ。制服だけでいいぞ。下着まで脱がすほど、私は無慈悲ではない」
わたくしを除く全員が笑いました。
もう慣れてしまいました。わたくしはき然とした態度で――内心では羞恥にもだえながら、それを押し隠して、制服を脱ぎました。直ちに、わたくしは全裸。正確には、一本の鎖で陰裂を隠しているのか際立たせているのか。
半ば埋もれている乳首を無理矢理に摘ままれて、教壇の中央へ引きずり出されました。これしきのことで、痛いだの恥ずかしいだの、いちいち反応するのは面倒です。私も図太くなったものです。
後ろ向きにされたので、ほっとしていると。腕を背中へ捻じ上げられました。ツインテールのお下げを引っ張られて、それで手首を縛られました。
「やめてください。おっしゃってくだされば、手を後ろで組みます」
問答無用で縛られてしまいました。右手首は左のお下げで、左手首は右のお下げで。左右の手首が肩甲骨の下で交差しました。後ろから見れば、腕はW字形に折れ曲がっているでしょう。
「SSSアイリス……」
くすくす笑いが起きました。
「軍艦みたいだな」
「それはHMS、Her Magesty Shipだよ」
「SSSはナチスの親衛隊だろ」
コホンとせき払いをして、カビン(わたくしにこのような辱めを与えるやつに敬称は不要です)が続けます。
「彼女は、ずいぶんとラテン語が得意のようですから、その実力を見せてもらいましょう」
すでにY7の履修範囲は終えているから授業に差し障りはないと、生徒を安心させてから、わたくしに命じました。
「私は、すべての教師と生徒との如何なる命令にも服従します――これを、ラテン語で黒板に書きなさい」
いちいち翻訳などしなくても、ラテン語が頭に浮かびます。けれど……
「手を自由にしてください」
ケビンは肩をすくめてから、チョークをわたくしの唇に押しつけました。
「これは懲罰です。口にくわえて書きなさい」
一瞬の憤慨と教師への軽蔑。そして、すぐに諦めました。チョークを口にくわえて黒板に向かいます。
「もっと上のほうに書きなさい」
足をそろえて伸ばして、顔を上向けます。髪の毛を下へ引っ張られているので、容易なことです。書くべき言葉も分かっています。
Omnibus magistris et scolaribus mandatis obediam.
顔を動かして文字を書き始めましたが、思うようにチョークが動きません。それに、すごく薄くしか書けません。
「汚い字だね。これで点数をくれというのだからあきれる」
からかいの言葉は無視します。でも、せめて濃く書こうと思って、二度三度となぞりました。
強くかんだせいで、チョークを折ってしまいました。口の中に残った切れ端は、 ひどく苦い味がしました。粉薬と一緒ですね。
「チョークひとつ、まともに持てんのか」
わたくしの口にチョークを突っ込みながら、カビンは半割りオレンジを、もぎゅっとつかみました。この人は、乳房が好みなんでしょう。小さくてごめんなさいね――皮肉です。
「あれ? magesirisだっけ?」
書き終えようとしたとき、誰かが言いました。男子生徒の声ですが、誰なのか分かりませんでした。すでに三年間、一緒に学んできたというのに。
私は後ろへ下がって、書いたところを見直しました。
スペルミスです。magistrisです。
「消して書き直しなさい」
またしても無理難題を言われました。いえ、簡単なことです。黒板消しを使うのは無理難題ですが、黒板の字は簡単に消せます。私は横向きになって背伸びをして、右肩を持ち上げるようにして黒板に押しつけ、前後に動かしました。
文字は――消そうと思った範囲以上に消えてしまいました。チョークの粉が広がって、全体的に白くなっています。もう一度、ずっと慎重に肩を揺すって粉を拭き取りました。それから、消した部分を書き直しました。ずいぶんと手間取りました。
「ふむ。間違ってはいないね。しかし、もっと早く書くようにしなさい」
言葉だけを聞いていると、まともな授業を受けているように錯覚します。
「よろしい。その下に、こう書きなさい――私は決して教師にも生徒にも逆らいません」
これも易しい問題です。書いた言葉が、そのままわたくし自身の宣言になるのだろうという確信さえなければ。でも、どうせ――契約書の内容の言い換えに過ぎません。
Numquam magistros aut discipulos detestor.
今度はスペルミスも格変化の間違いもなく書けました。
「よろしい。次は、こうです――私は従順な性奴隷です。短い文章ですから、右上に書きなさい」
ますます簡単に、そして困難になってきました。わたくしは右へ動いて、また背伸びをして書き始めました。心の動揺が文字にも表われて、今度は自分で間違いに気づきました。
さっきは、高い位置に書いた文字を無理して当てずっぽうに消そうとしたのが失敗の理由です。わたくしは横を向いて、目は黒板の文字を見詰めながら、頬を擦り付けて消しました。
なぜ、こんな道化めいたことをしなければならないのでしょうか。正しく採点してくださいと要求するのは、そんなに罪なのでしょうか。チョークの粉が目に灰って、涙がにじみます。泣いてなんかいませんとも。
書き終えて、その文字を眺めると、ますまづチョークの粉が目に染みます。
Ego sum servus sexus submissi.
「よろしい、次はこうです――私は自分の無毛のマンコが自慢です」
これまでは客観的事実(?)の記述でしたが、これはわたくしの心を直接に踏みにじる語句です。
自慢どころか。有るべき物が有るのを見られるのはじゅうぶんに恥ずかしいのですが、無いのを見られるのがそれ以上に恥ずかしいとは、知りませんでした。
それでも、書かなければならないのです。
Ego cor meum genitalia feminina glaber.
マンコに相当する下品な単語なんて知らないので、女性器と上品(ではないかも知れませんが、正しい医学用語です)に表現しました。
からかわれるのも覚悟していましたが、カビンは寄り道をせず、最初に定めていた(のだと思います)コースを進みました。
「よろしい。では、最後にこう書くのです――私は淫乱なビッチです」
もう、チョークの粉が目に入ることもなくなりました。
二行の文章の下に書こうとして、腰をかがめました。ぴりぴりっと、陰核に小さな稲妻が走りました。
「あっ……?!」
わずかな刺激だったのに、腰全体に雷鳴がとどろいたような感じになりました。屈辱にまみれていたことろへの不意打ちで、心の準備が出来ていなかったせいでしょう。
わたくしは(可能な限り)気取られないように素早く体勢を立て直して、淡々と書き進めます。けれど、文字には内心が表われてしまいます。震えて、スペルミスだらけで……
間違ったところを消そうとしたら、止められました。
「もっとピンポイントで消しなさい」
「……?!」
意味が分かりませんでした。
「鉛筆の尻に付いているのと同じ消しゴムを、きみは二つも持っているではないですか。それを使いなさい」
言いながら、わたくしの胸元を指差しました。
理解せざるを得ません。でも、わたくしの乳首は半ば埋もれ……意識すると、途端に硬くしこって、飛び出してきました。それは、近くに立っているカビンにも見えたのです。
「何を期待して乳首を立てているんだね、この淫乱娘は」
命令は含まれていませんから、雑言は無視して、黒板と向かい合いました。書いていたときよりも腰が高い位置に来ますから、刺激が少し減って楽になりました。物足りないなんて、これっぽっちも思いません。
下目遣いに文字を見ながら乳首を近づけて。黒板に軽く押しつけると、ひんやり心地好いです。上体を慎重に動かして、乳首でチョークをこすり取ります。無数の細い稲妻が乳首から乳房の奥まで飛び散りました。かろうじて声は押さえましたが、身体がびくんっと跳ねるのまでは、どうしようもありませんでした。
体勢を立て直して。乳首を消しゴムにして、間違えた文字を消していきます。ぴりぴりぴりっと、立て続けに細い稲妻が走ります。今度は予期していたので、平気ではないけれど、耐えられます。
電撃を心地好いと思う人はいないでしょう。でも、これは本当の電撃ではなくて……心地好くはないけれど、乳房全体がうずいて、腰の奥に奇妙なうねりを感じます。いつまでも続けていたくなります。
でも、しつこくは続けません。消したい文字を消し終わると、少し深く腰をかがめて、文字を書き直しました。
書き終わって足を伸ばすと、陰裂からにじみ出た体液で腿がぬれているのが分かりました。
書いた文字をあらためて眺めると、そんなに屈辱的な文章でもありません。
Ego sum nymphomanis femina canis.
nymphomanisという形容詞は妖精(nymph)が語源ですから幻想的です。ビッチは雌犬(femina canis)のことですが、侮蔑のニュアンスが――ラテン語にあるかどうかは知りません。
わたくしが書き終えて、カビンが何か言いかけたとき、終業のチャイムが鳴り始めました。思っていたよりも時間が経過していました。
「アイリス。放課後、私の部屋へ来なさい。落第点を取ったのだから補習です」
どんな補習か、想像がつきます。でも、受けなければならないのです。年間を通じての点数は及第ですが、今のは絶対に無条件に服従しなければならない命令だからです。
「誰か、アイリスの髪をほどいてやってください」
そう言って、カビンは教室から出て行きました。生徒も、次の教室へと移動します。わたくしの手首を縛っている髪の毛をほどいてくれる親切な人は――ひとりだけ居ました。
最後まで教室に残っていたオッター・デアリングが、なぜかそっぽを向きながら近づいてきて。
「すぐ、ほどくから――身体に手が触れたらごめんね」
まるで普通の女の子に断わるみたいな物言いをして、わたくしの後ろへ回り込むと、ちっとも身体には手を触れずにほどいてくれたのです。
こういうときは、きちんとお礼を言うべきなのかしら。だとすると、どんなふうに言えば良いのだろうとためらっているうちに、彼はそそくさと立ち去ったのです。
わたくしがためらったのは。触り放題虐め放題の性奴隷としては、ひざまずいて、なんだったら彼の靴にキスでもしなくてはいけないかしらと、一割くらいは本気で考えたからです。それとも、子爵令嬢としてなら、軽くうなずいて一言だけが適切かしらと、こちらは二割くらい本気でした。残りの七割は、単純に戸惑っていました。
男子は、全員がわたくしの崇拝者か僕(しもべ)か、少なくともファンでしたけれど、彼は特に熱心な崇拝者であり僕でした。四月のキャティ・ストックとのいさかいのときも、彼はチャーリイ以上の献身をしてくれました。
もしかすると、今もまだ、わたくしを崇拝しているのでしょうか。首輪をはめられ、鎖で女性器を虐められ、下着さえ与えられずに超ミニの制服一枚を着せられて、屈辱の文字を書かれたボロ靴を履かされている、このわたくしの中に、彼には青い血が見えているのでしょうか。
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最後に出てくるオットー君は、Spitefulで登場した親衛隊員です。頑張って、見事デート権を獲得して。下着をプレゼントしたり、ポッキーゲームでキスしたりと。純愛可憐一直線。ああ、その前日にはもう一人の親衛隊員であるハーディ君およびその先輩たちと、楽しくガチレス(CACC)をやらされて痛めつけられているので、なおさらオママゴトデートが心に沁みるのです。
まあ。オットー君はデートの後で「下着をつけてたら叱られるんじゃないのか」なんて言って臭い付き染み付きを回収しますから、そうそう純情でもないかな。
しかも。これだけS尽くしなのに、基本的なServiceが無いのはおかしいと。性奴隷としての初仕事、学年末成績上位者との「デート」を予定していますから、これぞServiceです。それと、赤点(強制ゼロ点)の補習と。でも、膝の上に座らせてモミモミモギュモギュだけでは弱いな――ということで、女教師による保健衛生の補習も追加。レズ奉仕です。尺が伸びる一方です。
まあ、学校でのアレコレは、大昔からドツボでした。『奴隷留学』とか『淫海教育』とか。小昔でも『鞭と縄の体育補習』がありますし。
妄想竹が暴走竹になってきました。
ということで。今回はSuppression(抑圧)です。縄は登場しませんが、予定調和のツインテ利用後ろ手縛りです。
アイリスちゃんは、屈辱に胸をねじられたり、クリに奔った細い稲妻が腰の奥で疼いている屈辱と合体したり。本人は、あくまで不快だと主張しています。小さな水(こういう表現ならfc2に引っ掛からないよね?)ではない粘っこい体液の分泌に戸惑ったり。
今の予定では。肉体的な性感を教え込まれても虚しさが募ったりして、精神的な要素(屈辱)と止揚されてこそ充足を得られるのだと――さて、どこで悟らせるか。未定です。
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Suppression
七月になって早々に、わたくしは誕生日を迎えました。誰からも祝福されることのない誕生日でした。
性奴隷などという惨めな肩書ですが、そんなにわいせつな悪戯はされずに済んでいます。やはり、男子生徒は女子の目を恐れています。耳もです。
すれ違いざまにお尻をなでるどころか、追い抜きながら胸元に手を入れてきたり、はなはだしいのは正面に立ちはだかって股間をまさぐる男子までいましたが、じきに少なくなりました。わたくしが黙っていなかったからです。いえ、抵抗したのではありません。
「今、お尻を触りましたね。先に、触らせろと命令してください」
大声でそんなことを言われては、退散するしかないでしょ?
ただ。わたくしの機転では切り抜けられない困難に直面したことがありました。特別奨学生徒は、言いつけられた雑用もこなさなければなりません。普段(こんな日々が普段になってはたまりませんけれど)は、こきつかわれることもありません。寮の自室以外は専門の業者が掃除しますし、洗濯してくれるハウスメイドも居ます。まさか、代わりにノートを取ってくれなんていう生徒はいません。
それでも、寮に忘れ物をしたから大急ぎで取って来いとかいうのはあります。そのときが、それでした。ところが、校舎を出たところで、Y11の男子生徒に呼び止められました。同じような依頼、いえ命令でした。男子寮と女子寮は正反対の方角です。二つの命令を同時には果たせません。事情を説明しても、彼はこっちを優先しろと主張します。全国統一試験を控えているぼくのほうが忙しいのだし、上級生なのだし、男だから――と。
言い争う(ことを、わたくしが許されていたとしても)時間が惜しかったので、彼の命令を先に片付けました。当然ですが、最初の命令を果たしたときは授業が始まっていて、無駄足になってしまいました。彼女は怒り狂って――授業の後で受けた罰は、スカートをまくってお尻をたたかれるよりも生ぬるいものでしたけれど。
放課後すぐに、わたくしは校長に訴えました。悪意を持って、こんな両立不可能な命令を出されたら、対抗のしようがありません。
校長の返事は単純明快で、とうてい受け容れられるものではありませんでした。
「どちらか一方の命令にだけ従えばよろしい」
当然ですが、続きがありました。
「それから、もう一方の命令に従わなかった罰をうけるのです」
礼儀正しく辞去の挨拶をして校長室を出てからも、わたくしの肩は怒りに震えていました。
幸いに二律背反の命令は、今までのところ、その一回きりです。男子生徒からの性的な悪戯も、一日に数回だけだし、ほとんど一瞬です。
むしろ、女子生徒からの嫌がらせが多いくらいですが、ほとんどが面と向かっての嫌味ですから、心を強く持っていれば、へっちゃらです。
むしろ、わたくしたちと接する機会のある使用人たちのほうが、だんだん図に乗ってきました。食事を提供するコックは、わたくしとジニアを抱き締めたり何十秒かは堂々と身体を触るようになりました。といっても、被害はもっぱらジニアに集中して、わたくしにはお義理といった扱いでした。ちっとも悔しくはありません。ジニアのほうがグラマーですし、鎖の貞操帯も前を防御していませんものね。
休日だけ出勤するスクールバスの運転手は、バスの運行を始める何時間も前から洗車場のすぐ横に椅子を持ち出して、そこで待機するようになりました。コックと違って身体に触ったりはしませんけれど、水で股間を洗うわたくしとジニアをじっくりと観賞するのです。そして、こちらの被害はわたくしにが受け持つ破目になりました。夕食を終えて小屋へ戻るとすぐに制服を取り上げられ、朝食が始まる直前まで返してもらえなくなったのです。ジニアの発案です。
「もっと、身体をくねらせながら洗うとかしたら、彼は喜んでくれるわよ。チップの一ポンドも張り込んでくれるんじゃないかな。あなた、一文無しなんでしょ」
もちろん、死んだって――もっと現実的な喩えなら、(昼食時には物置小屋に拘束は出来ませんから)朝食と夕食を取り上げられたって、そんなことはしません。
そうこうするうちに、学年末の試験が始まりました。特別奨学生徒になってから、勉学の機会は奪われていたに等しいですが、わたくしには一年分以上の貯金があります。とくに国語やラテン語は、ケアレスミスでも無い限り満点の自信がありました。
ところが。テスト明けの授業で、最初にラテン語のテストが返されたとき、わたくしは目を疑いました。答案用紙には、正解のチェックマークも誤答を指摘する赤線も入っていないのです。それなのに、右肩には二重線のうえに大きくゼロの数字が書かれています。
「採点漏れがあります」
特別奨学生の身分を弁えて、ずいぶんと控えめな言葉で、教師の怠慢を指摘しました。ところが、カビン氏から返って来た言葉は耳を疑うものでした。
「ゼロ点のことかね。マイナスの点は付けられないので、そうしておいたのだ」
採点漏れではなく故意だったのです。
「なぜ、そんなことをなさるのですか?!」
「きみは、チャーリイとジニアがテストで取っていた点数を知っているかね」
大体は知っています。使用人が落第点を取ったりしたら、主人の管理能力を疑われます。二人とも平均点に届いたことはありませんが、落第点を取ったこともありません。
「きみは、今回の全教科がゼロ点でも、嘆かわしいことに平均点をはるかに越えてしまうのです」
分かってきました。チャーリイもジニアも、きちんと(わたくしの父が)学費を納めていた生徒とはいえ、わたくしの使用人でもありました。そんな者が優秀な成績を修めれば、良く思う者は、生徒にも教師にもいないでしょう。まして今は――学園のお情けで養われて(辱しめられての間違いです)いる身です。
それでも。裸の上に超ミニスカートも、女性器に食い込む鎖も、電気も無い物置小屋も、さらし台の机も、乞食のような扱いも、屈辱的な命令への絶対服従も、いやらしく身体を触られることも――すべて甘受するとしても、これだけは我慢出来ません。財産も爵位も青い血さえも関係なく、わたくしの個人としての能力を全否定されるのですから。
「公式に保存される学業記録にまでとは望みません。せめて、この答案用紙には、正当な点数を記入してください」
今の身分を弁えて、ぎりぎりまで譲った要求です。
「思い上がるのも、たいがいにしろ」
怒鳴りつけられました。
「財産と身分を鼻に掛けて、教師までないがしろにしてきたのだから、それを失えばしっぺ返しを食らうのは当然だろうが。三倍返し、いや十倍返しは覚悟しておけ」
授業内容でも道徳的な問題でも、間違っている部分は教師に対してもきっちり指摘してきました。それを曲解して、そんなふうに思っていたなんて……でも、言い返しても、ますます怒らせるだけでしょう。
「そういえば、この授業では、まだおまえに懲罰を与えたことがなかったな。いい機会だ――服を脱げ。制服だけでいいぞ。下着まで脱がすほど、私は無慈悲ではない」
わたくしを除く全員が笑いました。
もう慣れてしまいました。わたくしはき然とした態度で――内心では羞恥にもだえながら、それを押し隠して、制服を脱ぎました。直ちに、わたくしは全裸。正確には、一本の鎖で陰裂を隠しているのか際立たせているのか。
半ば埋もれている乳首を無理矢理に摘ままれて、教壇の中央へ引きずり出されました。これしきのことで、痛いだの恥ずかしいだの、いちいち反応するのは面倒です。私も図太くなったものです。
後ろ向きにされたので、ほっとしていると。腕を背中へ捻じ上げられました。ツインテールのお下げを引っ張られて、それで手首を縛られました。
「やめてください。おっしゃってくだされば、手を後ろで組みます」
問答無用で縛られてしまいました。右手首は左のお下げで、左手首は右のお下げで。左右の手首が肩甲骨の下で交差しました。後ろから見れば、腕はW字形に折れ曲がっているでしょう。
「SSSアイリス……」
くすくす笑いが起きました。
「軍艦みたいだな」
「それはHMS、Her Magesty Shipだよ」
「SSSはナチスの親衛隊だろ」
コホンとせき払いをして、カビン(わたくしにこのような辱めを与えるやつに敬称は不要です)が続けます。
「彼女は、ずいぶんとラテン語が得意のようですから、その実力を見せてもらいましょう」
すでにY7の履修範囲は終えているから授業に差し障りはないと、生徒を安心させてから、わたくしに命じました。
「私は、すべての教師と生徒との如何なる命令にも服従します――これを、ラテン語で黒板に書きなさい」
いちいち翻訳などしなくても、ラテン語が頭に浮かびます。けれど……
「手を自由にしてください」
ケビンは肩をすくめてから、チョークをわたくしの唇に押しつけました。
「これは懲罰です。口にくわえて書きなさい」
一瞬の憤慨と教師への軽蔑。そして、すぐに諦めました。チョークを口にくわえて黒板に向かいます。
「もっと上のほうに書きなさい」
足をそろえて伸ばして、顔を上向けます。髪の毛を下へ引っ張られているので、容易なことです。書くべき言葉も分かっています。
Omnibus magistris et scolaribus mandatis obediam.
顔を動かして文字を書き始めましたが、思うようにチョークが動きません。それに、すごく薄くしか書けません。
「汚い字だね。これで点数をくれというのだからあきれる」
からかいの言葉は無視します。でも、せめて濃く書こうと思って、二度三度となぞりました。
強くかんだせいで、チョークを折ってしまいました。口の中に残った切れ端は、 ひどく苦い味がしました。粉薬と一緒ですね。
「チョークひとつ、まともに持てんのか」
わたくしの口にチョークを突っ込みながら、カビンは半割りオレンジを、もぎゅっとつかみました。この人は、乳房が好みなんでしょう。小さくてごめんなさいね――皮肉です。
「あれ? magesirisだっけ?」
書き終えようとしたとき、誰かが言いました。男子生徒の声ですが、誰なのか分かりませんでした。すでに三年間、一緒に学んできたというのに。
私は後ろへ下がって、書いたところを見直しました。
スペルミスです。magistrisです。
「消して書き直しなさい」
またしても無理難題を言われました。いえ、簡単なことです。黒板消しを使うのは無理難題ですが、黒板の字は簡単に消せます。私は横向きになって背伸びをして、右肩を持ち上げるようにして黒板に押しつけ、前後に動かしました。
文字は――消そうと思った範囲以上に消えてしまいました。チョークの粉が広がって、全体的に白くなっています。もう一度、ずっと慎重に肩を揺すって粉を拭き取りました。それから、消した部分を書き直しました。ずいぶんと手間取りました。
「ふむ。間違ってはいないね。しかし、もっと早く書くようにしなさい」
言葉だけを聞いていると、まともな授業を受けているように錯覚します。
「よろしい。その下に、こう書きなさい――私は決して教師にも生徒にも逆らいません」
これも易しい問題です。書いた言葉が、そのままわたくし自身の宣言になるのだろうという確信さえなければ。でも、どうせ――契約書の内容の言い換えに過ぎません。
Numquam magistros aut discipulos detestor.
今度はスペルミスも格変化の間違いもなく書けました。
「よろしい。次は、こうです――私は従順な性奴隷です。短い文章ですから、右上に書きなさい」
ますます簡単に、そして困難になってきました。わたくしは右へ動いて、また背伸びをして書き始めました。心の動揺が文字にも表われて、今度は自分で間違いに気づきました。
さっきは、高い位置に書いた文字を無理して当てずっぽうに消そうとしたのが失敗の理由です。わたくしは横を向いて、目は黒板の文字を見詰めながら、頬を擦り付けて消しました。
なぜ、こんな道化めいたことをしなければならないのでしょうか。正しく採点してくださいと要求するのは、そんなに罪なのでしょうか。チョークの粉が目に灰って、涙がにじみます。泣いてなんかいませんとも。
書き終えて、その文字を眺めると、ますまづチョークの粉が目に染みます。
Ego sum servus sexus submissi.
「よろしい、次はこうです――私は自分の無毛のマンコが自慢です」
これまでは客観的事実(?)の記述でしたが、これはわたくしの心を直接に踏みにじる語句です。
自慢どころか。有るべき物が有るのを見られるのはじゅうぶんに恥ずかしいのですが、無いのを見られるのがそれ以上に恥ずかしいとは、知りませんでした。
それでも、書かなければならないのです。
Ego cor meum genitalia feminina glaber.
マンコに相当する下品な単語なんて知らないので、女性器と上品(ではないかも知れませんが、正しい医学用語です)に表現しました。
からかわれるのも覚悟していましたが、カビンは寄り道をせず、最初に定めていた(のだと思います)コースを進みました。
「よろしい。では、最後にこう書くのです――私は淫乱なビッチです」
もう、チョークの粉が目に入ることもなくなりました。
二行の文章の下に書こうとして、腰をかがめました。ぴりぴりっと、陰核に小さな稲妻が走りました。
「あっ……?!」
わずかな刺激だったのに、腰全体に雷鳴がとどろいたような感じになりました。屈辱にまみれていたことろへの不意打ちで、心の準備が出来ていなかったせいでしょう。
わたくしは(可能な限り)気取られないように素早く体勢を立て直して、淡々と書き進めます。けれど、文字には内心が表われてしまいます。震えて、スペルミスだらけで……
間違ったところを消そうとしたら、止められました。
「もっとピンポイントで消しなさい」
「……?!」
意味が分かりませんでした。
「鉛筆の尻に付いているのと同じ消しゴムを、きみは二つも持っているではないですか。それを使いなさい」
言いながら、わたくしの胸元を指差しました。
理解せざるを得ません。でも、わたくしの乳首は半ば埋もれ……意識すると、途端に硬くしこって、飛び出してきました。それは、近くに立っているカビンにも見えたのです。
「何を期待して乳首を立てているんだね、この淫乱娘は」
命令は含まれていませんから、雑言は無視して、黒板と向かい合いました。書いていたときよりも腰が高い位置に来ますから、刺激が少し減って楽になりました。物足りないなんて、これっぽっちも思いません。
下目遣いに文字を見ながら乳首を近づけて。黒板に軽く押しつけると、ひんやり心地好いです。上体を慎重に動かして、乳首でチョークをこすり取ります。無数の細い稲妻が乳首から乳房の奥まで飛び散りました。かろうじて声は押さえましたが、身体がびくんっと跳ねるのまでは、どうしようもありませんでした。
体勢を立て直して。乳首を消しゴムにして、間違えた文字を消していきます。ぴりぴりぴりっと、立て続けに細い稲妻が走ります。今度は予期していたので、平気ではないけれど、耐えられます。
電撃を心地好いと思う人はいないでしょう。でも、これは本当の電撃ではなくて……心地好くはないけれど、乳房全体がうずいて、腰の奥に奇妙なうねりを感じます。いつまでも続けていたくなります。
でも、しつこくは続けません。消したい文字を消し終わると、少し深く腰をかがめて、文字を書き直しました。
書き終わって足を伸ばすと、陰裂からにじみ出た体液で腿がぬれているのが分かりました。
書いた文字をあらためて眺めると、そんなに屈辱的な文章でもありません。
Ego sum nymphomanis femina canis.
nymphomanisという形容詞は妖精(nymph)が語源ですから幻想的です。ビッチは雌犬(femina canis)のことですが、侮蔑のニュアンスが――ラテン語にあるかどうかは知りません。
わたくしが書き終えて、カビンが何か言いかけたとき、終業のチャイムが鳴り始めました。思っていたよりも時間が経過していました。
「アイリス。放課後、私の部屋へ来なさい。落第点を取ったのだから補習です」
どんな補習か、想像がつきます。でも、受けなければならないのです。年間を通じての点数は及第ですが、今のは絶対に無条件に服従しなければならない命令だからです。
「誰か、アイリスの髪をほどいてやってください」
そう言って、カビンは教室から出て行きました。生徒も、次の教室へと移動します。わたくしの手首を縛っている髪の毛をほどいてくれる親切な人は――ひとりだけ居ました。
最後まで教室に残っていたオッター・デアリングが、なぜかそっぽを向きながら近づいてきて。
「すぐ、ほどくから――身体に手が触れたらごめんね」
まるで普通の女の子に断わるみたいな物言いをして、わたくしの後ろへ回り込むと、ちっとも身体には手を触れずにほどいてくれたのです。
こういうときは、きちんとお礼を言うべきなのかしら。だとすると、どんなふうに言えば良いのだろうとためらっているうちに、彼はそそくさと立ち去ったのです。
わたくしがためらったのは。触り放題虐め放題の性奴隷としては、ひざまずいて、なんだったら彼の靴にキスでもしなくてはいけないかしらと、一割くらいは本気で考えたからです。それとも、子爵令嬢としてなら、軽くうなずいて一言だけが適切かしらと、こちらは二割くらい本気でした。残りの七割は、単純に戸惑っていました。
男子は、全員がわたくしの崇拝者か僕(しもべ)か、少なくともファンでしたけれど、彼は特に熱心な崇拝者であり僕でした。四月のキャティ・ストックとのいさかいのときも、彼はチャーリイ以上の献身をしてくれました。
もしかすると、今もまだ、わたくしを崇拝しているのでしょうか。首輪をはめられ、鎖で女性器を虐められ、下着さえ与えられずに超ミニの制服一枚を着せられて、屈辱の文字を書かれたボロ靴を履かされている、このわたくしの中に、彼には青い血が見えているのでしょうか。
========================================

最後に出てくるオットー君は、Spitefulで登場した親衛隊員です。頑張って、見事デート権を獲得して。下着をプレゼントしたり、ポッキーゲームでキスしたりと。純愛可憐一直線。ああ、その前日にはもう一人の親衛隊員であるハーディ君およびその先輩たちと、楽しくガチレス(CACC)をやらされて痛めつけられているので、なおさらオママゴトデートが心に沁みるのです。
まあ。オットー君はデートの後で「下着をつけてたら叱られるんじゃないのか」なんて言って臭い付き染み付きを回収しますから、そうそう純情でもないかな。
Progress Report 2:『特別娼学性奴』
どうも、平日というやつはいけません。勤務中にぼけっとしてると(出来る環境なのです)、どんどん妄想が膨らんでいって……
まあ、ゲームと一緒ですけどね。立ち上がりが、もっとも楽しめて(ゲームと違ってS/Lはしませんけど)。後半は作業ゲーになっていく。小説だと、序盤あたりを書き込んで、途中からどんどん走り出す。頭デッカチ尻スボミ。いや、読者を最終ページに向けて疾走させるベクトル感覚(Ⓒ平井和正)とも言えるかもしれないのではないかと思わぬこともないのであろうか。
ええと。
Spiteful (意地悪な)は、紹介済み。
Substitute (代用品)で、ドライバーの柄でスクールメイドの処女膜を破って。でも、陰茎を挿入したのではないから(太いタンポンと同じだから)処女を奪ったのではありませんことよ。労働者階級の娘の処女にはなんの価値もありませんけれど。
Subsidence (没落は意訳だな)で、パパは行方不明、ママはジャマゆきさん。
裁判所に申し立てて死亡宣告をしてもらうと、嗣子(直系男子のみ)無き子爵家は廃絶。破産宣告しても同じ。というわけで、家屋敷からパンティ一枚に至るまで処分しても残る50万ポンド(話の都合で増減します)を、親切な人物から借りて、その返済方法も親切な人物から斡旋してもらって。さらに、娘が学ぶメイスレッド学園の新理事長の好意で、新しく設けられた奨学制度の第1号。実は、親切な人物と新理事長は同一人物で、かつて伯爵家令嬢メリーをフッド子爵と競ったドレッド・ノートン子爵。ママはノートンに騙されたのか、ママが娘を(ノートンの名を伏せることで)騙したのかは、書き進むうちに決まるでしょう。作者が決めるのではなく、話の流れで決まるのです。
この章で、ヒロインはパパの顧問弁護士にパンティ一枚まで没収されて、特別奨学生契約を結ぶしかなくなって。股下ゼロcmの裸ジャンスカ制服(制服は貸与するが下着は契約範囲外)で、そんな格好でうろつけば襲われるぞと貞操鎖を装着させられて。SchoolMale、SchoolMaidともども物置小屋を新しい宿舎に与えられて。二人からの仕返しが、じわじわと始まって。
画像は、ちょっと違うけれど、鎖貞操帯のイメージです。

ようやく1日が終わって。次の日が
Shame(恥辱)です。
その途中までを御紹介。書き立てのほやほや。
========================================
Shame
環境が激変して。チャーリイとジニアも、熟睡できるはずがありません。二人とも夜明け前には目を覚ましました。けれど、すぐには手錠を外してくれません。高い所から見下ろしているくらいなら、まだしも。
チャーリイは床まで下りてきてわたくしの横にしゃがみ込みました。ばかりか。不届きにも、わたくしの乳房を撫でたりつかんだりし始めました。
「やめなさい、チャーリイ」
たしなめましたけれど、彼の手は止まりません。わたくしは、重ねて叱ったりはしません。絶対に従わないだろうと、予測できたからです。叱れば叱るほど、主人としての威厳が損なわれます。
今のチャーリイは、小さな子供と同じです。珍しい物をあれこれいじっているのです。
「ひゃんっ……」
乳首をつままれて、不快な電撃が走りました。ええ、不快なのです。
「へえ。こんなちっこい胸でも感じてるんだ」
チャーリイは調子に乗って、指の腹で乳頭をくすぐったり、あるいは半割りのオレンジを胸板から引き剥がすみたいにつかんだり。
そのたびに、細く鋭い不快感や、乳房全体に染み通るような不快感に襲われます。うっかり声を漏らした結果がこれなのですから――わたくしは声を出すまいと、懸命に堪えました。
ぼぐっ……お腹に重たい衝撃を受けました。
「ぐぶふっ……」
また、バッグを落とされたのです。それも、昨夜よりずっと高い位置から。
「そんな平らな胸が、あなたの好みなの? それじゃ、わたしのは二度と触らせてやらないからね」
女同士です。声に含まれている嫉妬の響きは、容易に聞き分けられます。なんとしたことでしょう。あれだけ厳しく管理していたのに、いつの間にか二人は(どこまでかは分かりませんが)通じていたのです。
「怒らないでくれよ。ちょっと、お嬢様をしつけていただけさ」
「そんなのは、先生方に任せておけばいいのよ。そんな平原で遊んでいないで、わたしの丘で遊んでよ。なんだったら、密林を探検……あ、そうか。出来ないんだっけ」
「勘弁してくれよ。前が突っ張らかるのは痛いんだから」
状況が状況ですから、そんな換喩(metonimy)だらけの会話も、およそは分かります。わたくしの胸が平原ですって? 平原にオレンジは生りません――この修辞はねじれています。
それ以上の悪戯はされずに、張り付けから解放してもらえました。わずか十秒で制服を着て、隣のブースで恥辱をかみ締めながら用を足して、校舎の裏伝いにガレージへ行き、もう目覚めて男子寮の窓から外を眺めている顔が無いのを確かめてから大急ぎで股間を洗いました。
物置小屋まで戻って、ずいぶんと迷いましたが、中に入りました。使用人が中でのんびり過ごして主人が外で待つなんて不自然ですし、さっきの会話から察するに、二人だけにしておくと良からぬことをしでかしそうです。使用人の不始末は主人の責任でもあるのですから、きちんと監督しなければなりません。分かっています。もはや、二人ともわたくしの言うことなんか聞く耳をもたないのでしょう。けれど、だからといって責任を放棄するわけにはいきません。それに、彼らがわたくしを主人と思わないにしても、『第三者』の目の前で不純異性交遊(illicit sexual relations)に耽ったりはしないでしょう。
はなはだしく居心地の悪い二時間が過ぎて、朝食の時間になりました。また、二人について行く形でカフェテリアの裏手へ行って、昨日と同じコックから朝食を恵んでもらいました。
「え……?」
思わず疑問の声を漏らしたのは、二人に比べて明らかに食事の量が少なかったからです。絶対的な量の不足が不満だったのではありません。差異をつけられたことに納得がいかなかったのです。
「おまえさんは食が細いから、それでじゅうぶんだろ」
昨夜は半分くらいを残した、そのことを言っているのです。
たかだか食事の量くらいのことで、労働者といさかいを起こすなんて、わたくしの誇りが許しません。
「ありがとうございます(Thank you,sir)」
昨夜よりは滑らかに、感謝の言葉を言えました。誇りを失ったのではありません。事務的手続き、あるいは呪文みたいなものだと、割り切っただけです。
食事の途中で、わたくしたちのグループの担任(advisor)であるレイカー氏が来て、教室ではなくフッド記念講堂へ行くようにと告げました。二人は心得顔。何事だろうといぶかしく思ったのは、わたくしだけのようです。
フッド記念小講堂へ行くと、担任に関係者通用口へ案内されました。通用口から控室を通って袖へ行き、そこで待機です。
袖からは座席が見えませんが、収容人数と聞こえてくる私語から推察すると、セカンダリーの生徒が集められているようです。
一時限目のチャイムが鳴ると、わたくしたちとは反対側の袖から、校長が姿を現わしました。
「おはよう、生徒諸君。本日は、当学園で初めて試みる奨学制度(Scholarship System)について説明します」
生徒の皆さんはお行儀よく校長の話を聞いていますが、きっと何の関心も持っていないでしょう。学費の心配なんて無縁ですものね――わたくしたち三人を除いては。
「近世までは学僕という制度がありました」
校長が後ろの黒板に大きく“Scool Servant”と書きました。
「学校の雑役夫として働きながら、その合間に無償で授業を受ける生徒のことです。新しく設ける奨学制度も、この仕組みと似ています。在学中の生徒で、学費を工面できなくなった三人に、この新しい制度を適用することにしました」
レイカー氏に引率されて、わたくしたちは演壇の中央へ進みます。進みたくなくても、進まざるを得ません。生徒たちと向かい合って立っても、ひとりひとりの顔なんか見分けがつきません。とにかく、スカートの裾が気になって仕方がありません。下から見上げられているのです。
「奨学生の三人も、こちらを向きなさい」
ほっとした気分になって、まわれ右をします。股間を見上げられるよりは、お尻を見られるほうが、まだしもです。もっとも、六つと半ダースの違いですけれど。
「新しい奨学制度は、公式には特別奨学制度と称します」
最初に書いた文字の下に“Special Scholarship Sysytem”の文字が加わりました。
「しかし、生徒も教師も心得ておいてもらいたいのは、その制度の運用形態です」
校長が三行目に“expert Scholarship Student”と書きました。何かの分野の専門家を養成する目的の奨学金制度という意味でしょう。だから、学園が就職先を世話してくれるのだと、理解しました。
ところが。校長は三行目の左端に“S”の文字を書き加えて、最初の三文字にアンダーラインを引きました。“Sexpert”
「あっ……」
わたくしは息を飲みました。昨日の校長の発音は、聞き違いではなかったのです。こんな単語は初めて見ましたけれど、容易に想像がつきました。SEXのエキスパート。
娼婦です!
それで、この破廉恥極まりない制服の意味が明白になりました。娼婦は客を引くために、ずいぶんと露出的な服装をするのだと、男性向けのいかがわしい雑誌に書いて……あると、噂に聞いたことがあります。こんな超ミニスカートとか、裸身に毛皮のコートだけをまとうとか。
わたくしは、この場から逃げ出そうかと考えました。大声で校長に抗議しようかとも考えました。けれど、どちらも危うく思いとどまりました。
ひとつには、学園を逃げ出しても、身を寄せる所が無いのです。こんな破廉恥な服装で外を歩かなければならないという事実は無視するとしても。
二つ目には、他の二人が平然としているのに、わたくしひとりが取り乱すことへの羞じらいです。
この二つは、実際的な困難と個人的な見栄の問題です。けれど、それ以上にわたくしを縛るものがあります。契約書への署名です。うかつに署名してしまったとはいえ、契約が成立したことに変わりはありません。契約をやぶるなど、ならず者のすることです。貴族の名誉に懸けて、そんな真似は出来ません。
それに、セキスパートが娼婦だというのは、わたくしの勘違いでしょう。伝統と格式を誇るメイスレッド学園が娼婦を養成するはずがありませんもの。
「……さて、ここで諸君に覚えておいてもらいたいのは、アイリス・フッドと他の二人は明確に事情が異なっているということです」
自分の考えにかまけて、校長の話を聞いていませんでした。
「チャーリイ・アクティとジニア・コルベットには、労働者階級とはいえ両親が健在です。親元から若干の金銭的援助を受けられます。しかし、アイリス・フッドは事実上の孤児となり、まったくの無一文となったのです。彼女は、学園の慈悲と生徒諸君の善意とによってのみ生きていけるのです。したがって、彼女に対してその見返りを求める権利が学園と生徒諸君にはあるのです」
酷い言われようです。けれど、ここまでの長広舌は、わたくしにとどめの一撃を加えるための前準備に過ぎなかったのだと、思い知らされました。
「したがって……」
校長は、チャーリイとジニアに、袖へ引っ込むように命じました。わたくしひとりが壇上に立たされています。
校長はチョークでわたくしを指し示してから黒板に向き直り――四行目に、それまでより大きな文字で、すべてを大文字で書き記しました。
“SEX SLAVE STUDENT”
講堂全体がどよめきました。
わたくしは――立ったまま卒倒したのでしょう。気がついてみると、グループが集まる教室に居たのです。
========================================
尺が伸びてきたので、最後の一行で、Warpします。
まあ、ゲームと一緒ですけどね。立ち上がりが、もっとも楽しめて(ゲームと違ってS/Lはしませんけど)。後半は作業ゲーになっていく。小説だと、序盤あたりを書き込んで、途中からどんどん走り出す。頭デッカチ尻スボミ。いや、読者を最終ページに向けて疾走させるベクトル感覚(Ⓒ平井和正)とも言えるかもしれないのではないかと思わぬこともないのであろうか。
ええと。
Spiteful (意地悪な)は、紹介済み。
Substitute (代用品)で、ドライバーの柄でスクールメイドの処女膜を破って。でも、陰茎を挿入したのではないから(太いタンポンと同じだから)処女を奪ったのではありませんことよ。労働者階級の娘の処女にはなんの価値もありませんけれど。
Subsidence (没落は意訳だな)で、パパは行方不明、ママはジャマゆきさん。
裁判所に申し立てて死亡宣告をしてもらうと、嗣子(直系男子のみ)無き子爵家は廃絶。破産宣告しても同じ。というわけで、家屋敷からパンティ一枚に至るまで処分しても残る50万ポンド(話の都合で増減します)を、親切な人物から借りて、その返済方法も親切な人物から斡旋してもらって。さらに、娘が学ぶメイスレッド学園の新理事長の好意で、新しく設けられた奨学制度の第1号。実は、親切な人物と新理事長は同一人物で、かつて伯爵家令嬢メリーをフッド子爵と競ったドレッド・ノートン子爵。ママはノートンに騙されたのか、ママが娘を(ノートンの名を伏せることで)騙したのかは、書き進むうちに決まるでしょう。作者が決めるのではなく、話の流れで決まるのです。
この章で、ヒロインはパパの顧問弁護士にパンティ一枚まで没収されて、特別奨学生契約を結ぶしかなくなって。股下ゼロcmの裸ジャンスカ制服(制服は貸与するが下着は契約範囲外)で、そんな格好でうろつけば襲われるぞと貞操鎖を装着させられて。SchoolMale、SchoolMaidともども物置小屋を新しい宿舎に与えられて。二人からの仕返しが、じわじわと始まって。
画像は、ちょっと違うけれど、鎖貞操帯のイメージです。

ようやく1日が終わって。次の日が
Shame(恥辱)です。
その途中までを御紹介。書き立てのほやほや。
========================================
Shame
環境が激変して。チャーリイとジニアも、熟睡できるはずがありません。二人とも夜明け前には目を覚ましました。けれど、すぐには手錠を外してくれません。高い所から見下ろしているくらいなら、まだしも。
チャーリイは床まで下りてきてわたくしの横にしゃがみ込みました。ばかりか。不届きにも、わたくしの乳房を撫でたりつかんだりし始めました。
「やめなさい、チャーリイ」
たしなめましたけれど、彼の手は止まりません。わたくしは、重ねて叱ったりはしません。絶対に従わないだろうと、予測できたからです。叱れば叱るほど、主人としての威厳が損なわれます。
今のチャーリイは、小さな子供と同じです。珍しい物をあれこれいじっているのです。
「ひゃんっ……」
乳首をつままれて、不快な電撃が走りました。ええ、不快なのです。
「へえ。こんなちっこい胸でも感じてるんだ」
チャーリイは調子に乗って、指の腹で乳頭をくすぐったり、あるいは半割りのオレンジを胸板から引き剥がすみたいにつかんだり。
そのたびに、細く鋭い不快感や、乳房全体に染み通るような不快感に襲われます。うっかり声を漏らした結果がこれなのですから――わたくしは声を出すまいと、懸命に堪えました。
ぼぐっ……お腹に重たい衝撃を受けました。
「ぐぶふっ……」
また、バッグを落とされたのです。それも、昨夜よりずっと高い位置から。
「そんな平らな胸が、あなたの好みなの? それじゃ、わたしのは二度と触らせてやらないからね」
女同士です。声に含まれている嫉妬の響きは、容易に聞き分けられます。なんとしたことでしょう。あれだけ厳しく管理していたのに、いつの間にか二人は(どこまでかは分かりませんが)通じていたのです。
「怒らないでくれよ。ちょっと、お嬢様をしつけていただけさ」
「そんなのは、先生方に任せておけばいいのよ。そんな平原で遊んでいないで、わたしの丘で遊んでよ。なんだったら、密林を探検……あ、そうか。出来ないんだっけ」
「勘弁してくれよ。前が突っ張らかるのは痛いんだから」
状況が状況ですから、そんな換喩(metonimy)だらけの会話も、およそは分かります。わたくしの胸が平原ですって? 平原にオレンジは生りません――この修辞はねじれています。
それ以上の悪戯はされずに、張り付けから解放してもらえました。わずか十秒で制服を着て、隣のブースで恥辱をかみ締めながら用を足して、校舎の裏伝いにガレージへ行き、もう目覚めて男子寮の窓から外を眺めている顔が無いのを確かめてから大急ぎで股間を洗いました。
物置小屋まで戻って、ずいぶんと迷いましたが、中に入りました。使用人が中でのんびり過ごして主人が外で待つなんて不自然ですし、さっきの会話から察するに、二人だけにしておくと良からぬことをしでかしそうです。使用人の不始末は主人の責任でもあるのですから、きちんと監督しなければなりません。分かっています。もはや、二人ともわたくしの言うことなんか聞く耳をもたないのでしょう。けれど、だからといって責任を放棄するわけにはいきません。それに、彼らがわたくしを主人と思わないにしても、『第三者』の目の前で不純異性交遊(illicit sexual relations)に耽ったりはしないでしょう。
はなはだしく居心地の悪い二時間が過ぎて、朝食の時間になりました。また、二人について行く形でカフェテリアの裏手へ行って、昨日と同じコックから朝食を恵んでもらいました。
「え……?」
思わず疑問の声を漏らしたのは、二人に比べて明らかに食事の量が少なかったからです。絶対的な量の不足が不満だったのではありません。差異をつけられたことに納得がいかなかったのです。
「おまえさんは食が細いから、それでじゅうぶんだろ」
昨夜は半分くらいを残した、そのことを言っているのです。
たかだか食事の量くらいのことで、労働者といさかいを起こすなんて、わたくしの誇りが許しません。
「ありがとうございます(Thank you,sir)」
昨夜よりは滑らかに、感謝の言葉を言えました。誇りを失ったのではありません。事務的手続き、あるいは呪文みたいなものだと、割り切っただけです。
食事の途中で、わたくしたちのグループの担任(advisor)であるレイカー氏が来て、教室ではなくフッド記念講堂へ行くようにと告げました。二人は心得顔。何事だろうといぶかしく思ったのは、わたくしだけのようです。
フッド記念小講堂へ行くと、担任に関係者通用口へ案内されました。通用口から控室を通って袖へ行き、そこで待機です。
袖からは座席が見えませんが、収容人数と聞こえてくる私語から推察すると、セカンダリーの生徒が集められているようです。
一時限目のチャイムが鳴ると、わたくしたちとは反対側の袖から、校長が姿を現わしました。
「おはよう、生徒諸君。本日は、当学園で初めて試みる奨学制度(Scholarship System)について説明します」
生徒の皆さんはお行儀よく校長の話を聞いていますが、きっと何の関心も持っていないでしょう。学費の心配なんて無縁ですものね――わたくしたち三人を除いては。
「近世までは学僕という制度がありました」
校長が後ろの黒板に大きく“Scool Servant”と書きました。
「学校の雑役夫として働きながら、その合間に無償で授業を受ける生徒のことです。新しく設ける奨学制度も、この仕組みと似ています。在学中の生徒で、学費を工面できなくなった三人に、この新しい制度を適用することにしました」
レイカー氏に引率されて、わたくしたちは演壇の中央へ進みます。進みたくなくても、進まざるを得ません。生徒たちと向かい合って立っても、ひとりひとりの顔なんか見分けがつきません。とにかく、スカートの裾が気になって仕方がありません。下から見上げられているのです。
「奨学生の三人も、こちらを向きなさい」
ほっとした気分になって、まわれ右をします。股間を見上げられるよりは、お尻を見られるほうが、まだしもです。もっとも、六つと半ダースの違いですけれど。
「新しい奨学制度は、公式には特別奨学制度と称します」
最初に書いた文字の下に“Special Scholarship Sysytem”の文字が加わりました。
「しかし、生徒も教師も心得ておいてもらいたいのは、その制度の運用形態です」
校長が三行目に“expert Scholarship Student”と書きました。何かの分野の専門家を養成する目的の奨学金制度という意味でしょう。だから、学園が就職先を世話してくれるのだと、理解しました。
ところが。校長は三行目の左端に“S”の文字を書き加えて、最初の三文字にアンダーラインを引きました。“Sexpert”
「あっ……」
わたくしは息を飲みました。昨日の校長の発音は、聞き違いではなかったのです。こんな単語は初めて見ましたけれど、容易に想像がつきました。SEXのエキスパート。
娼婦です!
それで、この破廉恥極まりない制服の意味が明白になりました。娼婦は客を引くために、ずいぶんと露出的な服装をするのだと、男性向けのいかがわしい雑誌に書いて……あると、噂に聞いたことがあります。こんな超ミニスカートとか、裸身に毛皮のコートだけをまとうとか。
わたくしは、この場から逃げ出そうかと考えました。大声で校長に抗議しようかとも考えました。けれど、どちらも危うく思いとどまりました。
ひとつには、学園を逃げ出しても、身を寄せる所が無いのです。こんな破廉恥な服装で外を歩かなければならないという事実は無視するとしても。
二つ目には、他の二人が平然としているのに、わたくしひとりが取り乱すことへの羞じらいです。
この二つは、実際的な困難と個人的な見栄の問題です。けれど、それ以上にわたくしを縛るものがあります。契約書への署名です。うかつに署名してしまったとはいえ、契約が成立したことに変わりはありません。契約をやぶるなど、ならず者のすることです。貴族の名誉に懸けて、そんな真似は出来ません。
それに、セキスパートが娼婦だというのは、わたくしの勘違いでしょう。伝統と格式を誇るメイスレッド学園が娼婦を養成するはずがありませんもの。
「……さて、ここで諸君に覚えておいてもらいたいのは、アイリス・フッドと他の二人は明確に事情が異なっているということです」
自分の考えにかまけて、校長の話を聞いていませんでした。
「チャーリイ・アクティとジニア・コルベットには、労働者階級とはいえ両親が健在です。親元から若干の金銭的援助を受けられます。しかし、アイリス・フッドは事実上の孤児となり、まったくの無一文となったのです。彼女は、学園の慈悲と生徒諸君の善意とによってのみ生きていけるのです。したがって、彼女に対してその見返りを求める権利が学園と生徒諸君にはあるのです」
酷い言われようです。けれど、ここまでの長広舌は、わたくしにとどめの一撃を加えるための前準備に過ぎなかったのだと、思い知らされました。
「したがって……」
校長は、チャーリイとジニアに、袖へ引っ込むように命じました。わたくしひとりが壇上に立たされています。
校長はチョークでわたくしを指し示してから黒板に向き直り――四行目に、それまでより大きな文字で、すべてを大文字で書き記しました。
“SEX SLAVE STUDENT”
講堂全体がどよめきました。
わたくしは――立ったまま卒倒したのでしょう。気がついてみると、グループが集まる教室に居たのです。
========================================
尺が伸びてきたので、最後の一行で、Warpします。
Progress Report 1.01:『さんすう』レベルのミス!
あわててててて!
ひでえ!
ミスはすでに直してある。
何がどうしたかというと。
某国を参考にした学制です。
Y1。こう書けば(グルグルで)某国は一目燎原の火ですが。Y1で5歳なら、ヒロインはY7で、5+7=12だな、と。
阿保か。手をグウにして「1」。一本ずつ開いていって、「2、3、4……」。小1レベル。はい、「7」まで数えたら、親指一本だけが再度折られていますね。今日になって気づきました。
リクエストの12±xの範囲ですが、筆者の感覚としては、恋足(こいたす)にはちょい早い。かといってY8にすると、いろいろ不都合で一括置換は犯罪ですから面倒です。
ので。7月生まれ(誕生日の1か月半後に入学)から10月生まれ(入学は誕生日の11か月後)に変更。
やれやれでした。
せっかく、6th formなる制度を見つけて、Sexpertと聞かされたアイリスが、6th partのことかしらと勘違いするという天の配剤的エピソードが丁稚揚がったのです。オジャンにして貯まるもんか、俺の貯金。
しつこく、同じ画像。今度はラージサイズの一点物。

うん、これは使いましょう。ていうより、教鞭で全裸メコ筋縦打ちがあるのですから。お仕置の前に甘やかしてやりましょう。ちなみに、画像の如く後ろ手に縛ったりはしませんし、開脚させましょう。
青い血のプライドに掛けて、アイリスは(目に入ったゴミのせいで涙をあふれさせながら)不本意な快感に翻弄され、恥辱に胸をねじられながら、激痛には腰の奥を痺れさせるのです。
今はまだ、裸股下0cm袖繰エヴァ風ジャンスカの恥辱に悶えているところ。
この後、下僕下女ともども寮舎から追い出され、物置小屋をあてがわれ、二人はベッド、アイリスはベッドの間で、これまで二人に使っていた手錠で大の字にされて、それ以上の悪戯はされずに朝まで眠れず、母様の特別なお仕事ってなんだろうと薄々気づいて……さて、翌朝は登校ぎりぎりまで放置されるか。連帯責任を恐れて、あっさり解放されるか。尺次第?
いずれにしても。フッド記念小講堂にY7からY9を集めて。あれこれ説明するシーンとか万由旬を経て兜率天に至るのです。百億の恥と千億の辱。
ひでえ!
ミスはすでに直してある。
何がどうしたかというと。
某国を参考にした学制です。
Y1。こう書けば(グルグルで)某国は一目燎原の火ですが。Y1で5歳なら、ヒロインはY7で、5+7=12だな、と。
阿保か。手をグウにして「1」。一本ずつ開いていって、「2、3、4……」。小1レベル。はい、「7」まで数えたら、親指一本だけが再度折られていますね。今日になって気づきました。
リクエストの12±xの範囲ですが、筆者の感覚としては、恋足(こいたす)にはちょい早い。かといってY8にすると、いろいろ不都合で一括置換は犯罪ですから面倒です。
ので。7月生まれ(誕生日の1か月半後に入学)から10月生まれ(入学は誕生日の11か月後)に変更。
やれやれでした。
せっかく、6th formなる制度を見つけて、Sexpertと聞かされたアイリスが、6th partのことかしらと勘違いするという天の配剤的エピソードが丁稚揚がったのです。オジャンにして貯まるもんか、俺の貯金。
しつこく、同じ画像。今度はラージサイズの一点物。

うん、これは使いましょう。ていうより、教鞭で全裸メコ筋縦打ちがあるのですから。お仕置の前に甘やかしてやりましょう。ちなみに、画像の如く後ろ手に縛ったりはしませんし、開脚させましょう。
青い血のプライドに掛けて、アイリスは(目に入ったゴミのせいで涙をあふれさせながら)不本意な快感に翻弄され、恥辱に胸をねじられながら、激痛には腰の奥を痺れさせるのです。
今はまだ、裸股下0cm袖繰エヴァ風ジャンスカの恥辱に悶えているところ。
この後、下僕下女ともども寮舎から追い出され、物置小屋をあてがわれ、二人はベッド、アイリスはベッドの間で、これまで二人に使っていた手錠で大の字にされて、それ以上の悪戯はされずに朝まで眠れず、母様の特別なお仕事ってなんだろうと薄々気づいて……さて、翌朝は登校ぎりぎりまで放置されるか。連帯責任を恐れて、あっさり解放されるか。尺次第?
いずれにしても。フッド記念小講堂にY7からY9を集めて。あれこれ説明するシーンとか万由旬を経て兜率天に至るのです。百億の恥と千億の辱。
Progress Report 1:特別娼学性奴
初っ端から、あれこれ変更です。
Sadistin は、長くなってきたので、2章に分割。Spiteful と Substitute です。スクールメイドの処女を興味本位で(substitute=代用品)で破るのを独立させました。
次に名前。
スクールメイル(下僕)ラック・ワンブス→チャーリイ・アクティ
虐められるアメリカ娘 ケイティ・アーズ→キャティ・ストック
元の名前がアングロ・サクソンぽくないので。ワンブスについては、そのままにして、有色人種のクォーターあたりにすれば、ますますクラスメートから孤立するかと思ってもみましたが。メイスレッド学園はパパ上のマイティ・フッドとママ上のメリー・レパルス(旧姓)の母校です。たとえ娘の下僕とはいえ、有色人種を入学させるなんて、とんでもない。
まあ、チャンティクリアはブラックスワンの姉妹艦だから、いいか。
ここで、豆知識。
その昔。大英帝国海軍では、戦列艦>フリゲイト>スループ(3檣はシップ・スループ、2檣をブリッグ・スループ)でしたが。フリゲイトが大型化してスループとの間に空隙ができたので、そこを埋めるためにフランスあたりで採用されていた名称のコルベットを入れたのです。コルベット・スティングレイとの関係は知りません。
ところが。第2次大戦中だっけ。駆逐艦の下位バージョンとしてスループの名称が復活し、さらに日本でいうところの駆潜艇相当としてコルベットも復活しました。この場合は、帆船時代と逆で、コルベットのほうが小さいです。
さらに蛇の後足。江戸時代末期の開陽丸(新選組が蝦夷地脱出に使った船)は甲鉄コルベット、舷側に鉄(鋼ではない)を張ったコルベットでした。
相変わらず遊んでいます。
さて、肝心の本文紹介。冒頭からいきましょう。
==============================
Spiteful
チッ……
目覚まし時計の針が重なる音で目を覚まして、ベルが鳴り始める前にスヌーズしました。
春の朝の柔らかな陽光が満ちるベッドルーム。快適な目覚めです。わたくしはすぐにベッドを出て、隣の寮室へ行きました。
わたくしの部屋と違って、ベッドが二つと机も二つ。それだけでも狭いのに、ベッドとベッドの間にはカラーボックスが並べられています。寝るときまでお互いの顔を見るのが恥ずかしいとかで、三か月前にチャーリイ・アクティが買って来たのですけれど。四つのボックスを足元へ寄せて、顔が見交わせる配置で落ち着きました。考え無しですね。
「おはようございます、お嬢様(My lady)」
ベッドの中からわたくしを見上げて、チャーリイが挨拶をします。致し方のないことです。だって、彼の右手と右足は手錠でベッドの脚につないであるのですから。
「おはようございます、お嬢様」
ジニア・コルベットも挨拶を寄越します。彼女は、左手と左足をベッドにつないであいます。
「おはよう」
挨拶を返してやりながら、二人の手錠を外してやりました。朝晩面倒な儀式ですけど、これも高貴な者の務(Noblesse oblige)めです。だいいち、使用人が間違いをしでかしたら、わたくしの落ち度になります。
あら。使用人ではありませんでした。二人はわたくしの学友――スクールメイルとスクールメイドです。同じY7ですけど、実はチャーリイは二つ年上。レディの護衛ですから、たくましくなくてはなりませんものね。
だから、チャーリイには性的欲求が兆していると思います。ジニアも、ぼつぼつそういう年頃でしょう。三年ちかくも一緒の部屋に住んでいながら、今さらのようにパーティションを欲しがったりするのは、そのせいだと思います。
もっとも、間違いなんて起きるはずがありません。二人を拘束するのは就寝のときだけですけれど、廊下への出入口はドアを取り払ってあります。男女が二人きりで同室のときはドアを開けておくのがマナーですから、いちいち開閉する手間を省いてあるのです。廊下のいちばん奥とはいえ、いつ他人にのぞき込まれるかわかったものではない環境で、いやらしいことなんか出来っこないですね。女子寮に男子を住まわせる特例を認めてもらうには、これくらい徹底する必要があるのです。
わたくしはベッドルームへ戻って、仕切りのドアを閉めました。それから、元は廊下だった部分に通じるドアを出て、向かい側のセクションにあるサニタリールームへ行きます。そうです。わたくしの寮室には、専用のリビングルームとサニタリールームがあるのです。男女合わせて七百八十名の生徒の中で、わたくしひとりだけの特権です。
当然のことですわ。学園には男爵を親に持つ生徒が三人と、準男爵や騎士は二十何人かおりますけれど、子爵はわたくしだけ。しかも、この学園はわたくしの父母の母校ということもあり、有象無象の成金連中など足元にも及ばないほど多額の寄付をしているのです。フッド記念講堂もありますの。別に自慢するつもりはございませんけれど。
わたくしは朝の生理的欲求を満たしてから、シャワーを浴びました。腰まで届くブルネットは、ざっと水気を拭っただけで、バスタオル一枚でベッドルームへ戻ります。
「ジニア」
声を掛けると、ジニアが礼儀正しく部屋へ入って来ます。わたくしが猶予をあげている間に、自身の身支度は整えています。
ジニアはわたくしの髪をドライヤーで乾かしながらブラッシングをして、ていねいに編み下ろしてくれます。
「これでよろしいでしょうか」
ブルネットに映えて、かつ学生らしく清そな白のリボンを差し出します。
「よろしいわ。あなたのセンスも、洗練されてきたわね」
使用人を褒めてやるのも、主人の心得です。
わたくしが立ち上がると、ジニアはかいがいしく着替えを手伝います。子供っぽくはないけれどけっしてセクシーではない、おそろいのブラジャーとパンティ。淑女のたしなみのスリップ。ハイソックス。きれいに洗って、ふわっとした感じにアイロンを掛けたブラウス。校章を左胸に刺しゅうした水色のジャンパースカート。真っ赤な紐ネクタイ。
身支度が調うと、ドレッサーの小さな鏡ではなく、壁にはめてある姿見で全身をチェックします――けれど、着付けの具合よりも身体の輪郭に目が行ってしまいます。
チビってほどではないですが、わたくしは同級生の中では小柄なほうです。でも、胸の膨らみはY8の先輩にだって負けていません。目下の悩みは、バストよりもヒップの数字が(少しだけです)大きいことですけれど。母様みたいにほっそりしていると、結婚してから苦労することになります。なにしろ、二人目を授かるために、スポーツジムに通って体質改善に励んでいるんですもの。
でもまあ。私の後ろに控えているジニアを鏡の隅っこに見ると、わたくしの自慢も悩みもぺちゃんこになってしまいます。わたくしより頭半分背が高くて(女性で長身は如何なものかと思いますけど)、わたくしとジニアが並ぶと、クラスの男子の視線はわたくしの顔ではなくジニアのバストとヒップに集中するんですから。将来はきっと、殿方を悩殺するような下司な女性になることでしょうよ。
あら、いけない。朝ご飯を食べている時間がなくなります。カフェテリアでは皆さんが順番を譲ってくださるから、長い行列に並ぶ必要はありませんし、そんなにたくさん食べるわけでもないです。けれど、淑女のマナーを守ってお食事をするには、相応の時間がかかるものなのです。
「学校へ行きます」
ジニアに声を掛けて、わたくしは廊下へ出ました。ジニアは、わたくしのバッグを持って、自分のバッグを取りに、あたふたと自分の部屋へ戻ります。わたくしの斜め後ろには、ちゃんとチャーリイがついています。
「おはようございます、ミス・フッド」
部屋から出てきた上級生が、立ち止まって挨拶をします。身分を弁えて、なれなれしくアイリスなんて呼び掛けたりはしません。
「おはようございます。良い朝ですわね」
この人はY12のネリッサ・グラフトン。ほとんど毎朝、出会います。顔なじみの方には、それなりの言葉を掛けて差し上げるべきでしょう。
挨拶を交わしている間に、ジニアも追いついて来ました。三人で階段を下ります。この様子を『お姫様の出陣』なんておっしゃる方々も、何人かはいらっしゃいます。Y7以上の女子だけで百四十人もいるのですから、わたくしを良く思っていない方だっていないことはないでしょう。身分高き者を崇拝せず富める者を嫉妬する輩は、どこにだっているものです。もちろん、下級生は皆さん、わたくしの崇拝者に決まっていますけれど。
朝食を終えて教室に入ると、十二人のクラスメートのうち一人を除いて、起立して朝の挨拶をしてくださいます。椅子に座ってそっぽを向いているのは、キャティ・ストックだけです。
彼女の頭に飾られているヘアブローチが、わたくしの目を引きました。細長い花の形をした金色は、彼女の金髪に埋もれて、ちっとも見映えがしていません。
わたくしはキャティの前に立ちました。彼女はわたくしを見上げただけで、何も言いません。わたくしから挨拶されるのを待っているのでしょう。
「素敵なヘアブローチね。もっと良く見せてくださらないかしら」
キャティが立ち上がりました。ジニアと同じくらいに背が高いです。
「いやよ。髪が乱れるわ」
けんか腰です。この人は、いつもこうなのです。石油のほうが青い血よりも貴いとでも思っているのでしょう。
「ジニア」
キャティをにらみ返したまま、低いけれどしっかりした声で命じました。でも、他のクラスメートが素早く動きました。マリー・デストンが斜め後ろから、ヘアブローチを素早くむしり取ったのです。
「痛いっ、なにするのよ」
マリーはキャティを無視して、ヘアブローチをわたくしに差し出します。
手に取って見ると、やはり意匠はアイリスでした。
「返しなさいよ」
キャティが右手を突き出しました。
先程からの数々の無礼に、腹が立ちました。それよりも、このわたくしを髪飾りにするなんて。きっと、分かってやってて、得意満面なのでしょう。
わたくしは、指の力を抜きました。
カツン。ヘアブローチが床に落ちます。それを、靴のかかとで踏んづけてやります。
ぐじゃっと潰れる感触が小気味良いです。
バチイン!
目から火花が飛び散りました。ほほが熱いです。
「なにするのよ。五百ドルもするのよ。パパからのプレゼントなのよ!」
やはり成金の娘です。真っ先にお金のことを言います。しかも、アメリカドル。ポンドだと、二百五十くらいかしら。子供の玩具としては高価ですし、大人の装身具としては安物ですわ。
「赦さない!」
キャティが、また手を振り上げます。
わたくしは顔をかばいかけて、その手を止めました。わたくしは貴族の娘です。困難にも真正面から立ち向かいます。でも、取っ組み合いのけんかなんてはしたない真似は御免です。こういうときのために、チャーリイを学友にしてあるのです。
ところが、チャーリイがキャティを取り押さえる前に、男子のオッター・デアリングがキャティを羽交い締めにしました。
「放してよ!」
「もう暴れるなよ」
「暴れてなんかない。先に手を出したのは、向こうでしょ」
キャティは、オッターから逃れようと、もがきます。そうなると、オッターも意地になって、ますますキャティを――あら、背中から抱き締めるみたいな形になりました。わざとかしら。キャティも、発育が早いほうですから。
もみ合って(もまれて、かしら)いるところに、ヴィクター・トリアス先生が来られました。
「これは、なんの騒ぎだ。オッター、女の子を虐めるんじゃない」
「違います。キャティが、ミス・フッドを殴ったので、オッターが止めていたところです」
マリーが事情を説明します。
「なんと。淑女にあるまじき蛮行。しかも、貴族令嬢に暴力を――植民地の平民ごときが」
そうです。たとえ世界一の軍事力と財力を誇ろうと、所詮は本国に反旗を翻した連中なのです。すくなくとも、上流社会の人たちは、腹の底ではそう思っています。
「手を出しなさい」
トリアス先生 (Mr.Trious)が厳しい声でおっしゃって、脇に抱えていた教鞭を右手に持ち替えられました。手の平をたたくなんて、授業中に騒いだ子へのお仕置きと同じです。
「先生(Sir)。そんな罰じゃあ軽すぎると思います」
マリーがわたくしの内心を代弁してくれました。
「ふむ……」
トリアス先生はわたくしに視線を向けます。わたくしは、微妙にそっぽを向いて知らん顔。こういうときは、言葉で表わさない限り、どんな仕種でも肯定の意味になるでしょう。
トリアス先生は、キャティに向き直って、いっそう厳しい声でおっしゃいました。
「教壇に上がって、黒板に向きなさい」
けげんな表情を浮かべて、それでも言われた通りにしたキャティは、次の言葉に驚いたようです。わたくしも、びっくりしました。
「スカートをまくって、尻を出しなさい」
うわわわわ、です。お尻たたきなんて、せいぜいY3までです。それも、座っている先生の膝の上です。ズボンやスカートをめくったりはしません。立たせておいてお尻をじかにだなんて、このメイスレッド学園では、戦後初めてではないでしょうか。いえ、そんな大昔のことは知りませんけど。
キャティはトリアス先生を振り返って。それから、なぜかわたくしをにらみつけてから。黒板に向き直ると、スカートをたくし上げました。裾を握る手が震えています。いい気味です。
キャティは、学生にあるまじきひわいなパンティを身に着けています。浅い二等辺三角形で、ヒップの上半分が露出しています。
トリアス先生は、教鞭を持っていないほうの手を伸ばして……
「きゃあっ……?!」
キャティが両手でお尻を押さえてしゃがみ込みました。
「しゃんと立っていなさい」
トリアス先生は落ち着き払っています。
「いやです。なぜ、パンティを脱がそうとするんですか」
「わたしは、尻を出せと言ったぞ」
戦後初めてどころか、ウィンザー朝始まって以来かもしれません。
「いやですっ!」
金切り声です。
「チャーリイ」
トリアス先生は、わたくしのスクールメイルに声を掛けました。
「彼女を押さえておきなさい」
右隣の席に座っているチャーリイが、目顔で問い掛けてきました。ちなみに、左隣はジニアです。わたくしが軽くうなずいて承認を与えると、しぶしぶといった感じで立ち上がって、教壇へ行きました。
ジニアと同じくらいの背があるキャティも、ふたつ年上の男子と比べると、まるで大人と子供――というのは言い過ぎですが、肩を押さえ付けられると、身動き取れないようです。
トリアス先生は、キャティの脇腹に手を差し込むと、ジャンパースカートの布ベルトを抜き取りました。両腕を背中へねじ上げて、そのベルトで手首を縛ります。
「いやああっ! なにするんですか?!」
「静かにしなさい。隣の教室に迷惑です」
スカートをまくり上げて、手首を縛っている布ベルトに絡めました。
ぎゃんぎゃん喚いているキャティのパンティをずり下げて、お尻を丸出しにしました。
「いい加減に黙らないと、この布を引き千切って口に詰めますよ」
ひぐっと、しゃっくりを飲み込んで、キャティがおとなしくなりました。
トリアス先生がチャーリイに命じて、キャティを立たせました。あらためて教鞭を手に取りました。
「お願いです。たたかないでください」
キャティが、泣きながら訴えます。
「そんなに嫌なら、校長先生のところへ連れて行きましょう。直ちに退学の手続をしなさい」
「いやですっ!」
またヒステリックが、ぶり返しました。
「いやです。絶対に辞めません!」
「ならば、素直に罰を受けるのです」
「いやです、絶対にいやですっ!」
トリアス先生がため息をつきました。
わたくしもあきれてしまいます。パンティを履いていてもお尻の半分は露出しているのに、残り半分をさらけ出すのは、なぜ嫌なのでしょうか。もっとも――どうしても退学したくないというほうは、理屈の上では理解できます。
庶民にとっては、寄宿学校(Boarding school)に入るのは、大変に名誉なことです。あ、庶民といっても、労働者のことではないですよ。寄宿学校の学費は労働者の年収以上なのですから、子弟を入学させられるはずがありません。わたくしが言っている庶民とは、お金はたくさんあるけれど身分の無い――当人一代限りの騎士叙任すら賜っていない、キャティの父親みたいな人のことです。入学が大変な名誉であれば、退学なんて、それを上まわる不名誉です。
わたくしなどは、有り得ないことですけれど、退学しても――父様に無理をしていただいて上位の学校へ転入するか、子爵令嬢の名前に傷が付くのに甘んじて下位の学校(大歓迎してくれるでしょうね)へ行くか、なんとでもなります。それも一時のこと。本当に大切なのは出身校の格ではなく、Y11とY13の学年末に行なわれる全国統一試験の成績なのです。
けれど、植民地ではそうではないのでしょう。学校の格付けを重視するとなると――栄誉あるメイスレッド学園を追い出されたキャティを受け入れてくれる同格の寄宿学校なんて、ありますでしょうか。
キャティはわがままを飲み込んでおとなしくなりました。トリアス先生が教鞭の先をお尻に当てると、ぴくっと全身を震わせました。
トリアス先生が教鞭を後ろへ引いて。
びしっ!
豊満なヒップに教鞭の先が食い込みました。
「きゃああっ!」
本当に両隣のクラスまで壁を突き抜けて届くような悲鳴です。教鞭は細いプラスチックの棒ですけど、先端が団栗のように膨らんでいます。きっと、団栗を投げつけられるよりも痛いことでしょう。
びしっ!
「痛いっ!」
びしっ!
「くっ……」
だんだん痛みに慣れてきたみたいです。
びしいっ!
肉を打つ音が大きくなりました。
「きゃああっ!」
悲鳴も一発目以上に大きいです。
びしいいっ!
「いやああああっ!」
悲鳴に泣き声が混じっています。最初の三発では、横長の丸い小さなあざが残っただけでしたが、この二発では、左右のお尻に一本ずつの赤い線が刻まれました。
わたくしは、ちょっぴりだけ、キャティが可哀想になってきました。
「トリアス先生。早く授業を始めてください」
彼は、教鞭を持つ手を止めました。キャティのスカートを下ろしてやり、手も解いてやりました。
「では、席に戻りなさい」
キャティはパンティをずり上げてから正面に向き直って――泣き腫らした目で、またわたくしをにらみつけました。
わたくしの心の中から、ちょっぴり可哀想が消えうせました。
「トリアス先生。わたくし、まだストックさんから謝罪を受けていません」
先生が何か言う前に、キャティが言い返します。
「あなたに謝ることなんか、これっぽっちも無いわよ!」
わたくしはトリアス先生に向かって、はっきりと首を横に振りました。
「キャティ、フッド嬢(Miss Hood)に謝りなさい」
「先生は事情を御存知ないから、あたしが悪いと決めつけてらっしゃいますけど……」
「フッド嬢は、きみをたたいたのかね?」
「それは……でも」
「反省していないのだね」
「だって、あたしのヘアブローチを……」
「授業が終わるまで、教壇の隅に立っていなさい」
トリアス先生が彼女の背後へまわって、また手首を縛りに掛かります。
「やめてっ……」
彼女は抵抗しましたけれど、トリアス先生の次の言葉でおとなしくなりました。
「では、校長室へ行きましょう」
乾きかけていた彼女の目から、大粒の涙がこぼれます。
トリアス先生は、手を縛っただけでなく、スカートをまくり上げ、パンティも膝まで引きずり下ろしました。そして、キャティにとっては屈辱きわまりない指導をします。
「きみも、そこで授業を受けるのです。黒板に向き直りなさい」
つまり、むき出しのお尻をクラスメートの目にさらしていなさいという意味です。
キャティは、もう文句を言いませんでした。わたくしを物凄い形相でにらみつけてから、後ろ向きになりました。
涙を流しているのかは見えませんでしたが、授業中ずっと、キャティの全身が小刻みに震えていました。膝の震えを見ていると、よくもあれで立っていられるものだと、妙な関心をしたほどでした。
――授業が終わると、キャティは教室から逃げ出しました。
お昼休みに、わたくしは父様に電話をしました。簡単な挨拶と近況報告(楽しく学んでおりますわ。クラスメートも教師の皆様も、本当に良くしてくれています)を済ませると、おねだりです。
「クラスメートのキャティ・ストックを御存知でしょうか。彼女にヘアブローチをプレゼントしたいの。生徒名鑑を見てください。長い金髪に映えるような、エメラルドがいいかしら。どんなのにするかは父様におまかせしますけど、一千ドルより高くても安くても困ります」
五百ポンドなら、貴族令嬢のわたくしが身に着けても見劣りはしませんでしょう。それよりも大切なことは、わたくしが、うっかり壊してしまったキャティのヘアブローチの倍の値段だということです。
==============================
この後、寮へ戻って。チャーリイが護衛の役目を果たせなかった罰で、キャティと同じに下脱ぎさせて。キャティのお尻を盗み見してたときにはエベレストだったのに、いまはチョモランマ。
とっくにY7履修範囲を済ませて先に進んでいるアイリスは、図書室でいろんな本を読んでいます。上の学年で習う性教育の副読本とか、家庭の医学百科とか、6th formの生徒向けの医学書とか。とうぜん、勃起現象も知っていて。直に触れるのは汚らわしいから、長い柄の靴ベラとかで、つんつん。
そして。男の子は女の子より頑丈だから、お尻ペンペンでは足りない。
男性って、睾丸をたたかれるとすごく痛がるそうだけど、どんなになるのかな?
靴ベラでバチイン。
ここまでが、Spitefulの章です。

実は、このシーンでアイリスが思ったあれこれが、後に彼女を呪縛するのです。
縛られなくても、命じられた姿勢を崩したりしません。
キャティみたいに無様に悲鳴をあげたりしないわよ。
泣くもんですか。わたくしは、誇り高い貴族なのよ。
などなどなど。
いっそのこと、章題を Boomerang にしようかと思うくらいです。でも、Sで始まらないので。
さて、今日(OFF)は Subsitituteくらいは書き上げましょう。
Sadistin は、長くなってきたので、2章に分割。Spiteful と Substitute です。スクールメイドの処女を興味本位で(substitute=代用品)で破るのを独立させました。
次に名前。
スクールメイル(下僕)ラック・ワンブス→チャーリイ・アクティ
虐められるアメリカ娘 ケイティ・アーズ→キャティ・ストック
元の名前がアングロ・サクソンぽくないので。ワンブスについては、そのままにして、有色人種のクォーターあたりにすれば、ますますクラスメートから孤立するかと思ってもみましたが。メイスレッド学園はパパ上のマイティ・フッドとママ上のメリー・レパルス(旧姓)の母校です。たとえ娘の下僕とはいえ、有色人種を入学させるなんて、とんでもない。
まあ、チャンティクリアはブラックスワンの姉妹艦だから、いいか。
ここで、豆知識。
その昔。大英帝国海軍では、戦列艦>フリゲイト>スループ(3檣はシップ・スループ、2檣をブリッグ・スループ)でしたが。フリゲイトが大型化してスループとの間に空隙ができたので、そこを埋めるためにフランスあたりで採用されていた名称のコルベットを入れたのです。コルベット・スティングレイとの関係は知りません。
ところが。第2次大戦中だっけ。駆逐艦の下位バージョンとしてスループの名称が復活し、さらに日本でいうところの駆潜艇相当としてコルベットも復活しました。この場合は、帆船時代と逆で、コルベットのほうが小さいです。
さらに蛇の後足。江戸時代末期の開陽丸(新選組が蝦夷地脱出に使った船)は甲鉄コルベット、舷側に鉄(鋼ではない)を張ったコルベットでした。
相変わらず遊んでいます。
さて、肝心の本文紹介。冒頭からいきましょう。
==============================
Spiteful
チッ……
目覚まし時計の針が重なる音で目を覚まして、ベルが鳴り始める前にスヌーズしました。
春の朝の柔らかな陽光が満ちるベッドルーム。快適な目覚めです。わたくしはすぐにベッドを出て、隣の寮室へ行きました。
わたくしの部屋と違って、ベッドが二つと机も二つ。それだけでも狭いのに、ベッドとベッドの間にはカラーボックスが並べられています。寝るときまでお互いの顔を見るのが恥ずかしいとかで、三か月前にチャーリイ・アクティが買って来たのですけれど。四つのボックスを足元へ寄せて、顔が見交わせる配置で落ち着きました。考え無しですね。
「おはようございます、お嬢様(My lady)」
ベッドの中からわたくしを見上げて、チャーリイが挨拶をします。致し方のないことです。だって、彼の右手と右足は手錠でベッドの脚につないであるのですから。
「おはようございます、お嬢様」
ジニア・コルベットも挨拶を寄越します。彼女は、左手と左足をベッドにつないであいます。
「おはよう」
挨拶を返してやりながら、二人の手錠を外してやりました。朝晩面倒な儀式ですけど、これも高貴な者の務(Noblesse oblige)めです。だいいち、使用人が間違いをしでかしたら、わたくしの落ち度になります。
あら。使用人ではありませんでした。二人はわたくしの学友――スクールメイルとスクールメイドです。同じY7ですけど、実はチャーリイは二つ年上。レディの護衛ですから、たくましくなくてはなりませんものね。
だから、チャーリイには性的欲求が兆していると思います。ジニアも、ぼつぼつそういう年頃でしょう。三年ちかくも一緒の部屋に住んでいながら、今さらのようにパーティションを欲しがったりするのは、そのせいだと思います。
もっとも、間違いなんて起きるはずがありません。二人を拘束するのは就寝のときだけですけれど、廊下への出入口はドアを取り払ってあります。男女が二人きりで同室のときはドアを開けておくのがマナーですから、いちいち開閉する手間を省いてあるのです。廊下のいちばん奥とはいえ、いつ他人にのぞき込まれるかわかったものではない環境で、いやらしいことなんか出来っこないですね。女子寮に男子を住まわせる特例を認めてもらうには、これくらい徹底する必要があるのです。
わたくしはベッドルームへ戻って、仕切りのドアを閉めました。それから、元は廊下だった部分に通じるドアを出て、向かい側のセクションにあるサニタリールームへ行きます。そうです。わたくしの寮室には、専用のリビングルームとサニタリールームがあるのです。男女合わせて七百八十名の生徒の中で、わたくしひとりだけの特権です。
当然のことですわ。学園には男爵を親に持つ生徒が三人と、準男爵や騎士は二十何人かおりますけれど、子爵はわたくしだけ。しかも、この学園はわたくしの父母の母校ということもあり、有象無象の成金連中など足元にも及ばないほど多額の寄付をしているのです。フッド記念講堂もありますの。別に自慢するつもりはございませんけれど。
わたくしは朝の生理的欲求を満たしてから、シャワーを浴びました。腰まで届くブルネットは、ざっと水気を拭っただけで、バスタオル一枚でベッドルームへ戻ります。
「ジニア」
声を掛けると、ジニアが礼儀正しく部屋へ入って来ます。わたくしが猶予をあげている間に、自身の身支度は整えています。
ジニアはわたくしの髪をドライヤーで乾かしながらブラッシングをして、ていねいに編み下ろしてくれます。
「これでよろしいでしょうか」
ブルネットに映えて、かつ学生らしく清そな白のリボンを差し出します。
「よろしいわ。あなたのセンスも、洗練されてきたわね」
使用人を褒めてやるのも、主人の心得です。
わたくしが立ち上がると、ジニアはかいがいしく着替えを手伝います。子供っぽくはないけれどけっしてセクシーではない、おそろいのブラジャーとパンティ。淑女のたしなみのスリップ。ハイソックス。きれいに洗って、ふわっとした感じにアイロンを掛けたブラウス。校章を左胸に刺しゅうした水色のジャンパースカート。真っ赤な紐ネクタイ。
身支度が調うと、ドレッサーの小さな鏡ではなく、壁にはめてある姿見で全身をチェックします――けれど、着付けの具合よりも身体の輪郭に目が行ってしまいます。
チビってほどではないですが、わたくしは同級生の中では小柄なほうです。でも、胸の膨らみはY8の先輩にだって負けていません。目下の悩みは、バストよりもヒップの数字が(少しだけです)大きいことですけれど。母様みたいにほっそりしていると、結婚してから苦労することになります。なにしろ、二人目を授かるために、スポーツジムに通って体質改善に励んでいるんですもの。
でもまあ。私の後ろに控えているジニアを鏡の隅っこに見ると、わたくしの自慢も悩みもぺちゃんこになってしまいます。わたくしより頭半分背が高くて(女性で長身は如何なものかと思いますけど)、わたくしとジニアが並ぶと、クラスの男子の視線はわたくしの顔ではなくジニアのバストとヒップに集中するんですから。将来はきっと、殿方を悩殺するような下司な女性になることでしょうよ。
あら、いけない。朝ご飯を食べている時間がなくなります。カフェテリアでは皆さんが順番を譲ってくださるから、長い行列に並ぶ必要はありませんし、そんなにたくさん食べるわけでもないです。けれど、淑女のマナーを守ってお食事をするには、相応の時間がかかるものなのです。
「学校へ行きます」
ジニアに声を掛けて、わたくしは廊下へ出ました。ジニアは、わたくしのバッグを持って、自分のバッグを取りに、あたふたと自分の部屋へ戻ります。わたくしの斜め後ろには、ちゃんとチャーリイがついています。
「おはようございます、ミス・フッド」
部屋から出てきた上級生が、立ち止まって挨拶をします。身分を弁えて、なれなれしくアイリスなんて呼び掛けたりはしません。
「おはようございます。良い朝ですわね」
この人はY12のネリッサ・グラフトン。ほとんど毎朝、出会います。顔なじみの方には、それなりの言葉を掛けて差し上げるべきでしょう。
挨拶を交わしている間に、ジニアも追いついて来ました。三人で階段を下ります。この様子を『お姫様の出陣』なんておっしゃる方々も、何人かはいらっしゃいます。Y7以上の女子だけで百四十人もいるのですから、わたくしを良く思っていない方だっていないことはないでしょう。身分高き者を崇拝せず富める者を嫉妬する輩は、どこにだっているものです。もちろん、下級生は皆さん、わたくしの崇拝者に決まっていますけれど。
朝食を終えて教室に入ると、十二人のクラスメートのうち一人を除いて、起立して朝の挨拶をしてくださいます。椅子に座ってそっぽを向いているのは、キャティ・ストックだけです。
彼女の頭に飾られているヘアブローチが、わたくしの目を引きました。細長い花の形をした金色は、彼女の金髪に埋もれて、ちっとも見映えがしていません。
わたくしはキャティの前に立ちました。彼女はわたくしを見上げただけで、何も言いません。わたくしから挨拶されるのを待っているのでしょう。
「素敵なヘアブローチね。もっと良く見せてくださらないかしら」
キャティが立ち上がりました。ジニアと同じくらいに背が高いです。
「いやよ。髪が乱れるわ」
けんか腰です。この人は、いつもこうなのです。石油のほうが青い血よりも貴いとでも思っているのでしょう。
「ジニア」
キャティをにらみ返したまま、低いけれどしっかりした声で命じました。でも、他のクラスメートが素早く動きました。マリー・デストンが斜め後ろから、ヘアブローチを素早くむしり取ったのです。
「痛いっ、なにするのよ」
マリーはキャティを無視して、ヘアブローチをわたくしに差し出します。
手に取って見ると、やはり意匠はアイリスでした。
「返しなさいよ」
キャティが右手を突き出しました。
先程からの数々の無礼に、腹が立ちました。それよりも、このわたくしを髪飾りにするなんて。きっと、分かってやってて、得意満面なのでしょう。
わたくしは、指の力を抜きました。
カツン。ヘアブローチが床に落ちます。それを、靴のかかとで踏んづけてやります。
ぐじゃっと潰れる感触が小気味良いです。
バチイン!
目から火花が飛び散りました。ほほが熱いです。
「なにするのよ。五百ドルもするのよ。パパからのプレゼントなのよ!」
やはり成金の娘です。真っ先にお金のことを言います。しかも、アメリカドル。ポンドだと、二百五十くらいかしら。子供の玩具としては高価ですし、大人の装身具としては安物ですわ。
「赦さない!」
キャティが、また手を振り上げます。
わたくしは顔をかばいかけて、その手を止めました。わたくしは貴族の娘です。困難にも真正面から立ち向かいます。でも、取っ組み合いのけんかなんてはしたない真似は御免です。こういうときのために、チャーリイを学友にしてあるのです。
ところが、チャーリイがキャティを取り押さえる前に、男子のオッター・デアリングがキャティを羽交い締めにしました。
「放してよ!」
「もう暴れるなよ」
「暴れてなんかない。先に手を出したのは、向こうでしょ」
キャティは、オッターから逃れようと、もがきます。そうなると、オッターも意地になって、ますますキャティを――あら、背中から抱き締めるみたいな形になりました。わざとかしら。キャティも、発育が早いほうですから。
もみ合って(もまれて、かしら)いるところに、ヴィクター・トリアス先生が来られました。
「これは、なんの騒ぎだ。オッター、女の子を虐めるんじゃない」
「違います。キャティが、ミス・フッドを殴ったので、オッターが止めていたところです」
マリーが事情を説明します。
「なんと。淑女にあるまじき蛮行。しかも、貴族令嬢に暴力を――植民地の平民ごときが」
そうです。たとえ世界一の軍事力と財力を誇ろうと、所詮は本国に反旗を翻した連中なのです。すくなくとも、上流社会の人たちは、腹の底ではそう思っています。
「手を出しなさい」
トリアス先生 (Mr.Trious)が厳しい声でおっしゃって、脇に抱えていた教鞭を右手に持ち替えられました。手の平をたたくなんて、授業中に騒いだ子へのお仕置きと同じです。
「先生(Sir)。そんな罰じゃあ軽すぎると思います」
マリーがわたくしの内心を代弁してくれました。
「ふむ……」
トリアス先生はわたくしに視線を向けます。わたくしは、微妙にそっぽを向いて知らん顔。こういうときは、言葉で表わさない限り、どんな仕種でも肯定の意味になるでしょう。
トリアス先生は、キャティに向き直って、いっそう厳しい声でおっしゃいました。
「教壇に上がって、黒板に向きなさい」
けげんな表情を浮かべて、それでも言われた通りにしたキャティは、次の言葉に驚いたようです。わたくしも、びっくりしました。
「スカートをまくって、尻を出しなさい」
うわわわわ、です。お尻たたきなんて、せいぜいY3までです。それも、座っている先生の膝の上です。ズボンやスカートをめくったりはしません。立たせておいてお尻をじかにだなんて、このメイスレッド学園では、戦後初めてではないでしょうか。いえ、そんな大昔のことは知りませんけど。
キャティはトリアス先生を振り返って。それから、なぜかわたくしをにらみつけてから。黒板に向き直ると、スカートをたくし上げました。裾を握る手が震えています。いい気味です。
キャティは、学生にあるまじきひわいなパンティを身に着けています。浅い二等辺三角形で、ヒップの上半分が露出しています。
トリアス先生は、教鞭を持っていないほうの手を伸ばして……
「きゃあっ……?!」
キャティが両手でお尻を押さえてしゃがみ込みました。
「しゃんと立っていなさい」
トリアス先生は落ち着き払っています。
「いやです。なぜ、パンティを脱がそうとするんですか」
「わたしは、尻を出せと言ったぞ」
戦後初めてどころか、ウィンザー朝始まって以来かもしれません。
「いやですっ!」
金切り声です。
「チャーリイ」
トリアス先生は、わたくしのスクールメイルに声を掛けました。
「彼女を押さえておきなさい」
右隣の席に座っているチャーリイが、目顔で問い掛けてきました。ちなみに、左隣はジニアです。わたくしが軽くうなずいて承認を与えると、しぶしぶといった感じで立ち上がって、教壇へ行きました。
ジニアと同じくらいの背があるキャティも、ふたつ年上の男子と比べると、まるで大人と子供――というのは言い過ぎですが、肩を押さえ付けられると、身動き取れないようです。
トリアス先生は、キャティの脇腹に手を差し込むと、ジャンパースカートの布ベルトを抜き取りました。両腕を背中へねじ上げて、そのベルトで手首を縛ります。
「いやああっ! なにするんですか?!」
「静かにしなさい。隣の教室に迷惑です」
スカートをまくり上げて、手首を縛っている布ベルトに絡めました。
ぎゃんぎゃん喚いているキャティのパンティをずり下げて、お尻を丸出しにしました。
「いい加減に黙らないと、この布を引き千切って口に詰めますよ」
ひぐっと、しゃっくりを飲み込んで、キャティがおとなしくなりました。
トリアス先生がチャーリイに命じて、キャティを立たせました。あらためて教鞭を手に取りました。
「お願いです。たたかないでください」
キャティが、泣きながら訴えます。
「そんなに嫌なら、校長先生のところへ連れて行きましょう。直ちに退学の手続をしなさい」
「いやですっ!」
またヒステリックが、ぶり返しました。
「いやです。絶対に辞めません!」
「ならば、素直に罰を受けるのです」
「いやです、絶対にいやですっ!」
トリアス先生がため息をつきました。
わたくしもあきれてしまいます。パンティを履いていてもお尻の半分は露出しているのに、残り半分をさらけ出すのは、なぜ嫌なのでしょうか。もっとも――どうしても退学したくないというほうは、理屈の上では理解できます。
庶民にとっては、寄宿学校(Boarding school)に入るのは、大変に名誉なことです。あ、庶民といっても、労働者のことではないですよ。寄宿学校の学費は労働者の年収以上なのですから、子弟を入学させられるはずがありません。わたくしが言っている庶民とは、お金はたくさんあるけれど身分の無い――当人一代限りの騎士叙任すら賜っていない、キャティの父親みたいな人のことです。入学が大変な名誉であれば、退学なんて、それを上まわる不名誉です。
わたくしなどは、有り得ないことですけれど、退学しても――父様に無理をしていただいて上位の学校へ転入するか、子爵令嬢の名前に傷が付くのに甘んじて下位の学校(大歓迎してくれるでしょうね)へ行くか、なんとでもなります。それも一時のこと。本当に大切なのは出身校の格ではなく、Y11とY13の学年末に行なわれる全国統一試験の成績なのです。
けれど、植民地ではそうではないのでしょう。学校の格付けを重視するとなると――栄誉あるメイスレッド学園を追い出されたキャティを受け入れてくれる同格の寄宿学校なんて、ありますでしょうか。
キャティはわがままを飲み込んでおとなしくなりました。トリアス先生が教鞭の先をお尻に当てると、ぴくっと全身を震わせました。
トリアス先生が教鞭を後ろへ引いて。
びしっ!
豊満なヒップに教鞭の先が食い込みました。
「きゃああっ!」
本当に両隣のクラスまで壁を突き抜けて届くような悲鳴です。教鞭は細いプラスチックの棒ですけど、先端が団栗のように膨らんでいます。きっと、団栗を投げつけられるよりも痛いことでしょう。
びしっ!
「痛いっ!」
びしっ!
「くっ……」
だんだん痛みに慣れてきたみたいです。
びしいっ!
肉を打つ音が大きくなりました。
「きゃああっ!」
悲鳴も一発目以上に大きいです。
びしいいっ!
「いやああああっ!」
悲鳴に泣き声が混じっています。最初の三発では、横長の丸い小さなあざが残っただけでしたが、この二発では、左右のお尻に一本ずつの赤い線が刻まれました。
わたくしは、ちょっぴりだけ、キャティが可哀想になってきました。
「トリアス先生。早く授業を始めてください」
彼は、教鞭を持つ手を止めました。キャティのスカートを下ろしてやり、手も解いてやりました。
「では、席に戻りなさい」
キャティはパンティをずり上げてから正面に向き直って――泣き腫らした目で、またわたくしをにらみつけました。
わたくしの心の中から、ちょっぴり可哀想が消えうせました。
「トリアス先生。わたくし、まだストックさんから謝罪を受けていません」
先生が何か言う前に、キャティが言い返します。
「あなたに謝ることなんか、これっぽっちも無いわよ!」
わたくしはトリアス先生に向かって、はっきりと首を横に振りました。
「キャティ、フッド嬢(Miss Hood)に謝りなさい」
「先生は事情を御存知ないから、あたしが悪いと決めつけてらっしゃいますけど……」
「フッド嬢は、きみをたたいたのかね?」
「それは……でも」
「反省していないのだね」
「だって、あたしのヘアブローチを……」
「授業が終わるまで、教壇の隅に立っていなさい」
トリアス先生が彼女の背後へまわって、また手首を縛りに掛かります。
「やめてっ……」
彼女は抵抗しましたけれど、トリアス先生の次の言葉でおとなしくなりました。
「では、校長室へ行きましょう」
乾きかけていた彼女の目から、大粒の涙がこぼれます。
トリアス先生は、手を縛っただけでなく、スカートをまくり上げ、パンティも膝まで引きずり下ろしました。そして、キャティにとっては屈辱きわまりない指導をします。
「きみも、そこで授業を受けるのです。黒板に向き直りなさい」
つまり、むき出しのお尻をクラスメートの目にさらしていなさいという意味です。
キャティは、もう文句を言いませんでした。わたくしを物凄い形相でにらみつけてから、後ろ向きになりました。
涙を流しているのかは見えませんでしたが、授業中ずっと、キャティの全身が小刻みに震えていました。膝の震えを見ていると、よくもあれで立っていられるものだと、妙な関心をしたほどでした。
――授業が終わると、キャティは教室から逃げ出しました。
お昼休みに、わたくしは父様に電話をしました。簡単な挨拶と近況報告(楽しく学んでおりますわ。クラスメートも教師の皆様も、本当に良くしてくれています)を済ませると、おねだりです。
「クラスメートのキャティ・ストックを御存知でしょうか。彼女にヘアブローチをプレゼントしたいの。生徒名鑑を見てください。長い金髪に映えるような、エメラルドがいいかしら。どんなのにするかは父様におまかせしますけど、一千ドルより高くても安くても困ります」
五百ポンドなら、貴族令嬢のわたくしが身に着けても見劣りはしませんでしょう。それよりも大切なことは、わたくしが、うっかり壊してしまったキャティのヘアブローチの倍の値段だということです。
==============================
この後、寮へ戻って。チャーリイが護衛の役目を果たせなかった罰で、キャティと同じに下脱ぎさせて。キャティのお尻を盗み見してたときにはエベレストだったのに、いまはチョモランマ。
とっくにY7履修範囲を済ませて先に進んでいるアイリスは、図書室でいろんな本を読んでいます。上の学年で習う性教育の副読本とか、家庭の医学百科とか、6th formの生徒向けの医学書とか。とうぜん、勃起現象も知っていて。直に触れるのは汚らわしいから、長い柄の靴ベラとかで、つんつん。
そして。男の子は女の子より頑丈だから、お尻ペンペンでは足りない。
男性って、睾丸をたたかれるとすごく痛がるそうだけど、どんなになるのかな?
靴ベラでバチイン。
ここまでが、Spitefulの章です。

実は、このシーンでアイリスが思ったあれこれが、後に彼女を呪縛するのです。
縛られなくても、命じられた姿勢を崩したりしません。
キャティみたいに無様に悲鳴をあげたりしないわよ。
泣くもんですか。わたくしは、誇り高い貴族なのよ。
などなどなど。
いっそのこと、章題を Boomerang にしようかと思うくらいです。でも、Sで始まらないので。
さて、今日(OFF)は Subsitituteくらいは書き上げましょう。
Progress Report 0:特別娼学性奴
Urgent Report[-1]→
WILL様からのリクエスト第6弾。いよいよ執筆開始です。
先にお断わりしておきますが、今回はいわゆる「マゾ堕ち」はしませんさせません。
最後まで貴族令嬢のプライドを保って、それなのに最下層の性奴扱いされて、恥辱屈辱にまみれながら、肉体的反応はしますが、それ以上にプライドを踏み躙られることに、もしかしたら最後まで当人は自覚しない愉悦を覚えるという。ううむ。うまく描写できるか不安になってきました。
三人称なら、憐れなヒロインを見て加虐者が愉しんでいればいいんですけど。ヒロイン一人称で、ヒロインが最後まで反発しながら、その実――だいたい、こうやって説明する文章でさえ、うまく書けていないのですから。
それでも、チャレンジ一念生。
ちょっと、息抜き。『小公女、エロ』で検索すると……ぐへへ。
下の実写画像は、ヒロインが「藤咲セイラ」だから掛かったみたいです。
あと、重大なポイント。
今回は、きわめてソフト路線です。木馬も焼鏝も出てきません。ピアスもタトゥも無し。恥辱メインです。
しかも。SSSに堕ちてから1か月くらいは、処女のままです。濠門長恭作品では最長不倒記録のはずです。
では、恒例のPLOT紹介。
Y7というのは、Y1~Y11が義務教育で、Y12とY13が 6th form という、大学受験予備校というか高校というか。
義務教育は5歳からで、日本より1年早く始まります。
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S is for...
Special School Servant
Sexpert Scholarship Sutudent
Sex Slave Student
特別娼学性奴
ヤード・ポンド
『小公女』を読んでいることにして、随所で対比?
Yes sir /ma'am は、使わない。教師に貴族はいないから。
教師や生徒からの呼び掛けは、ミス・フッド。
ジニアとラックは My lady お嬢様。
ケイティだけは、レディ・アイリス。本来は伯爵令嬢以上。
物価は現在の30% £1=¥400(現在¥160)。学費は大雑把にサラリーマンの年収の3倍。
アイリス・フッド Y7 7月
ひとり娘。社交ダンス部と美術(絵画)部。馬術部志望だったが、母の反対(処女膜伝説)。運動部系は、肌を晒すなんて。
母親譲りのブルネット。編み下ろしにしていたが、ジニアを使役できなくなってからは長いツインテ(表紙予定画像から逆フィードバック)。
母と同じで小柄の細身。同学年(たいてい半年くらい上)と比べて乳房が膨らんでるのは、逞しい父の影響? わずかに生えてる。
ヒップの数字ががバストより大きいのは嫌。でも、きっと子供を何人も産める。
ママは2人目(男子)に挑んで体質改善にスポーツジム。まだ若いから、きっと叶うよね。
べた甘の父親が、4学年まで自宅で家庭教師。
母はY8で父と付き合い始めた。ので、恋愛にも興味津々。図書室で正しい知識を得ている。膣、陰唇、陰核、陰茎、睾丸、陰嚢……
父親 マイティ・フッド子爵 35
ロイズのアンダーライター
多額の債務を抱えて行方不明。
母親 メリー 32 旧姓レパルス
卒業してすぐ結婚
破産しない。すれば、爵位を失う。
まだ若いから、マイティ存命なら男児出産の可能性。
私物一切は債権者に(下着一枚に至るまで)譲渡しないといけない。
弁護士 パイク・ハボクック
専属学友(school maid & male)
ジニア・コルベット Y7 10月
大柄。BQB。
ラック・ワンブス Y7 12月
実は二つ年上(ボディガード)
二人は、アイリスとドア続きの隣室で相部屋。廊下側のドアは開けっ放し。寝るときは、間違いが起きないよう、アイリスがベッド拘束。恥ずかしいので、ラックがカラーボックス。
取巻 Y10 メル・ブリーク
Y8 ローナ・トレント
同Y7 マリー・デストン 「同」は同クラス
同Y7 ライラ・ロイヤー
同Y7m オッター・デアリング mはmale
他Y7 キャティ・ストック 「他」は他クラス
他Y7m ハーディ・リンクス
Y6以下は全員が崇拝者なのです。
上級生の大半は、わたくしを敬して遠ざけているのでしょうね。
同級生は、ほとんどの者がわたくしにかしずいています。
一部の者の反感なぞ、力ある者の宿命ですから、平気ですわ。
被害者 同Y7 ケイティ・アーズ アメリカの成金。
メイスレッド学園
全寮制 1学年~13学年
基本は2人部屋。低学年は4人。
1クラス12人×5クラス×13Y=780人
教員150人、職員50人が住込。
清掃業者、給食業者など50人は通い。厳重な守秘義務。
物資搬入などは通用門で職員が差配。
学僕は19世紀の制度だから、今は無い。
ボーディングスクールとしては上の下。
子爵の子弟が最上級。まれに伯爵。爵位継承権者はアイリスひとり。
年間の学費はサラリーマンの年収の数倍。ボーディングスクールでは当然。
父母の出身校。
経営者(理事長)が交代。かつて母を父と争ったドウ・セットシャー子爵(マイティと同学年)。アイリスはそこまで知らない。
校長 ケリー・キプリング
校医 ミルダ・フォーブ
女教師 アリス・グロー
ガディラ・マッカラン
ソープ カガリ・アカギ
花電車 リュウナ・ヒシノ
男教師 ヴィクター・トリアス
アトラス・イリス
ジャス・レイカー
マック・アルペイン
ラルフ・カビン
制服はジャンパースカート(冬は紺で夏は水色)に紐リボン。冬は上にブレザー。
男子は校章入りワイシャツに蝶ネクタイ。ズボンの色は女子と同じで、8年生から長ズボン。冬のブレザーはデザイン違い。
1982年4月(学年の後期)
ナイフランド紛争で、株価暴落。
父親、現地へ行く途中で行方不明。母親は「ジャマゆき」
土地は無くし、妻や娘に爵位継承権は無い。
しかし、身体を流れる青い血は変わらない。
6月上旬に悲劇は始まる。
sadistin 4月中旬
・オープニングは、目覚めて隣室の二人の解錠から。Noblesse oblige。
突き当たりの廊下をふさいで、二人部屋二つを独占。特別にサニタリールーム。
二人は大急ぎで共用トイレ。身支度の世話。ここでヘアーとか身体つきとか一気。
髪飾り(アイリスの意匠に見えるが百合)。取巻きが取り上げる。返してと言われて、わざと落として踏みにじる。
「500ドルもするのよ」金に賎しい。
ビンタ食らう。取巻きが取り押さえて、そこに教師。
尻叩き。ケイティは、取巻きと教師の忖度合戦で、下脱ぎ立たされ。
護衛を怠ったラックは後で股間キック。
パパに電話をして、ケイティ(金髪巻毛)に似合いそうな髪飾りを。千ドルで。£レートに言及。
・数日後。メルの「姉のお友達」の体験談。
最初は、すごく痛い。
どれくらいかを、ジニアで実験。
ラックのを見て、ジニアを見て。ラックがいっそう大きくなって、悪戯心。カラーボックスをラックが組み立てたドライバー。
処女膜と処女性は無関係。馬術部に言及。
「どんなふうに痛いの?」
答えられない。
見ていて勃起させたラックも脱がして。手は気色悪いので、足で。
その前に。まず、ラックを勃起させて
「ふうん。こんな大きいのが入るのねえ。あ、オトナはもっと大きいのかな?」とか。
・10日後
髪飾りが届く。
「このほうが、あなたには似合うでしょうよ」
ケイティの机に置く。ケイティは敵意のこもった目で、無様なカーテシー。
「あいがとうございます。レイディ・アイリス」煮えくり返る腹が透けている。
subsidence 6月下旬
ナイフランドの推移はフォークランドと違う。
・3人が校長に呼ばれて、先にラックとジニア。1時間も待たされて。
弁護士から母の手紙。下着まで『財産没収』
全裸で校長からの説明を聞く。上の空。
新制度はSexpart Scholar student
sextant(六分儀)からの連想で、sixth formに関係あると誤解。
弁護士の悪意。ろくに読ませずサイン。
渡されたのは制服と紐ネクタイの代わりに犬の首輪「SSS,IRIS」
ブラウスも下着も靴も「制服貸与」の範疇外。必要なら自弁で←無一文。
制服は超ミニ(股下ゼロcm)プリーツジャンスカ。必然的に裸ジャンスカ。
「きみは処女だね」
T字形鎖貞操帯。環が太いから、大も可能。陰核が環に嵌まる位置で安定。若干意識してしまうが、まだ快感には至らない。
他の2人が入室。2人は、これまでフッド家から給金。今後は親元から仕送り。
ジニアはパンティ+ノースリーブブラウス。ノーブラ(鉛筆理論)。首輪。超ミニジャンスカだが股下5cm。
ラックはノースリーブで裾結び。首輪。股下ゼロ半ズボン前V開きベルト有り。パンツはペニスぎりぎりローレイズ。
家名は捨てる。boy & girl
・3人ひとまとめに物置小屋へ。ジニアとラックの荷物で狭い。オンボロベッドは二つ。アイリスは床に毛布。制服が皺になると二人に全裸強要される。左右に並んだベッドの間に大の字拘束で寝かされる。これまでの仕返し。
・初日。3人ばらばらに。アイリスだけが元のクラス。教壇の隅に机。クラスメートと斜めに向き合う。
「雑用でもなんでも言いつけてかまいません。皆さんのメイドと思いなさい」
経緯を詳しく説明。アイリスと他の二人との違いも。実家からの仕送りなど。
超ミニをまくられて、ビンタを返す。たちまち尻叩き。後ろ向き立たされ。後ろに組んだ手で裾を持ち上げさせられる。昼まで。じんわり濡れる。胸キュン。
昼食。カフェテリア出入禁止。適当に盛り付けられたトレーを裏口で受け取って、その場で。木箱のテーブル。
・学年全体で年度末テスト上位(男子4人、女子2人)に、デート権。
・数日後。取巻きだったマリーの虐め。
「裸足じゃないの。これを差し上げるわ」
目の前で履き替えたキャンバスシューズを差し出す。
「受け取りなさい」顔に押し付ける。払いのけたら、わざと隣の子の顔にぶつける。
「先生。アイリスが暴力を振るいました」
問答無用。全裸。
「無精髭を明日までに剃りなさい」
抗議しても、ほかの[まともな]生徒は隠している。
T字鎖を外してメコ筋縦打ち。汚れた鞭を舐めて綺麗に。乳房で拭かれる。生徒が慣れるまで、教師は意図的に過激?
ズックは、最大限の感謝で受け取らされる。カーテシーはしない。
全裸ズックで整列休め。放課後まで。昼は他教室からも。視線意識して濡らしてしまう。
・その夜、ジニアとラックの手で強制剃毛。腋も。また濡らして、からかわれる。
・学年末に12歳。初潮はまだ。土日は3人で校内清掃。清掃業者を削減。
suppression 7月中旬
・本人も生徒も、まだ戸惑っている。
・学年末テストの答案返却。零点。補習。
抗議。員数外。ジニアとラックはノーチェックで及第点ぎりぎり。
抗議の罰。
ツインテで後ろ手縛り。文句を言った口にチョークを咥えて、悔し泣きしながら。惨めなほど濡れる。
I will never disobey any teacher and student.
SSSの立ち位置が、生徒にも明確に。
補習。ひとりだけ別教室。教鞭ツンツンから生乳もみもみくらいか。
・熱心な取り巻きだったハーディとオッターがデート権利。
土曜はオッター。半日の校内デート。給食業者に作らせたランチボックス。
ポッキーゲームで抱きすくめてキス。無防備な乳房こねくりまわして尻をなでるくらい。陰核クリクリで、初あへり?
日曜はハーディ。レスリング部。
CACC。全裸(T字貞操帯)。敵はシングレット。
先輩3人も一緒にスパーリング。「恥ずかし固め」くらいで赦してやろうかな。
バリバイ・デサド皇太子がエクスターシャをぶちのめしたようなハード系は駄目です。
ハヴェントY8、ラムゼイY9、スウィフトY10 たぶん、ファミリーネーム。
shame 7月下旬~8月中旬(夏休)
乾パンと缶詰の日々も。
・フッド記念講堂。7年前に父が寄贈。小さいから小集会用。汚れが目立ってきている。
古くて小さいから、使われていない。苔むしている。
外壁の高圧水洗浄。汚泥はシャベルで掬ってネコ車。近くのコンテナにまとめておけば、業者が早朝に収集。濡れるから腰巻ひとつ。
1日目。鎧窓を閉めて、洗浄の準備。
2日目。腹痛。水を飲みに離れたのを咎められ、機械につながれかけるが、拒否。
プライドに掛けても、離れられない。
「そこにいくらでも水はある」
質の悪い水道水が汚いタンクで、さらに。
垂れ流してジェット洗浄はプライドが。限界突破で泣き崩れる。それでも、自身を洗浄。
3日目。不意打ちで理事長視察。初対面。
理事長にカーテシー強要される。違う意味で濡れる。
躾のし直し。全裸のときは小陰唇カーテシー。ペニスへのカーテシー。破瓜。
「私は、どんなふうに痛いか言えるわよ」
恥辱が快感。血塗れお掃除フェラ。
「メリー。おまえの娘は、ここまで堕ちたぞ」
三巴の過去が明らかに。教師が辛く当たっていたのも差し金。
寄付の餌。
「母親よりも稼げるぞ。すべて学園の金庫に入る。そういう契約」
翌日も出血。初潮。ピル。Y字鎖に。
・サマーキャンプで戻って来る生徒も。
手伝わされて、遊ばれて。教師が挿入&イラマ。突っ込まれると、ラビアが擦れる。
生徒も真似する。膣挿入+陰核で快感。絶頂ではない。肉体的官能のみ。
・性感開発と称して、ヘアピンを乳首は横向き、陰核は縦向き。あるいは脱がせてプロペラ。
Study 8月下旬
新学年新学年からのSSS本格稼働の準備。
初代はアイリス、ジニアYのまま、ラックYのまま
アビリア(Y11)、ウラニア(Y10)、フュリー(Y10)、ヌビアン(Y11牡褐色小柄童顔)。全員貞操帯無し。
すれた印象。感化院あたりから?
SSSなんて、失敗するわよ。
学年相応の教養を身に着けさせる。アイリスが臨時教員。小公女の影響かなあ。
「元子爵令嬢だってね」
父の爵位は健在。それに、伯爵の孫娘。でも、この人たちに言っても無駄。
「今は、あなた方と同じ。あなた方より年少ですけど、ここでのキャリアは長いから、分からないことがあったら、遠慮無く」
「冗談じゃない。あんたは親無しの、パンツひとつ買えない無一文じゃないの」
「おまけに、処女を守る貞操帯だって?」
「あたいたちのが、ずっと先輩だよ」
同じ扱いだなんて、誇りが許さない。特別扱いされてて、ありがたいくらい。高貴な者が逆風なのは、物語の定番だわ。
二人が異様に幼い。ジニアは可愛がられる。
3日ごとの小テスト。低めに設定した合格点に達さないと「教え方が悪い」
アイリスが罰を受ける。赤点を取った当人はお咎め無し。
罰は、書きながら考える。1日食事抜き/3点クリップ/股縄タイヤ引き校庭一周/串刺しスクワット
(過激にならないようにね?)
ただし、ひどいと感化院へ逆戻り。アッパーミドルの妾になる道が鎖されるので、それなりに必死?
submission 9月上旬
・SSSの本格稼働。
新学年。Y8になる。12歳2カ月。
Y9以上の成績優秀男子のみ権利。
Y12と13の6th formは、週末に街へ行く者が多い。
男子宿舎の外にプレハブ宿舎。雑魚寝。
寝るときは、間違いが起きるように拘束。ドアは開け放しておくのが、未婚の男女が同室のときのマナー。実際に夜這い。
「手足自由なら、あれこれしてあげられるのにさ」
カフェテリアの裏にテント設営。
・新学期早々の参観日もふつうに出席。親も平然どころか、奴隷カーテシー「躾が行き届いてますね」
お忍び視察の大臣が、最初の募金活動。
ボンデージファッションで女王様初体験。ごっこ遊び。気持ち悪い。
二番目がケイティの父親。娘の仇討ち。メコ筋縦打ちも手紙で知っている。再現、教師は手加減してくれていたと痛感。
他のSSSも、それぞれ2~3人。
・わりと、男子からちやほや(?)されてる。のが面白くなくて、ケイティの時間差意趣返し。返してあげる。髪飾りを机の上に。昼休みが終わるまで放置。教師が入って来てから、ケイティが払い落として踏みにじって。
「この娘が、わたしの髪飾りを壊しました」
弁解無用。黒板の前で逆立ち。教鞭突っ込んでは縦打ち。3点目玉クリップインク瓶吊るし。見苦しいから、ラビアWクリップ。放課後まで、廊下。
・他のSSSに比べて、異様に過酷。
「nobless obligeと思え」
「ラックとジニアは帰る家がある。新人連中も、おまえという最下層を見ていれば、脱走など思わんだろう」本音。
skill 10月上旬
放課後の課外活動時間。SSSはポルノ観賞。
・臨時講師。1か月。ソープ技。
放課後のクラブ活動として。
各SSSの指で、フェラ見本。自分で。相互で。先生に。最後は男教師とY12、Y13が練習台。バブル・ダンスも同じ。
アイリスも熱心に受講。負けん気。
花電車は翌年かな。
sodomy 10月後半
・わずかな時間を盗んで、図書室など転々として勉強。成績の維持。
理事長再来。
イチジク浣腸を取り出したが、やめる。
ヴァギナと違って出血したら治らない。丁寧にほぐされて、快感。
お掃除フェラを要求。汚濁。口を近づけて異臭。
これだけは赦してと懇願。嗚咽。
「どんな罰でも受けます」
医務室からダブルバルーン取り寄せ。
「放課後まで我慢しろ」
ただし。自分でピンチを外せる。元子爵令嬢が自らの言葉に背くとは思わんがな。
上の空で授業。
放課後。校庭の真ん中。全校生徒の前で。全裸。自分で解錠。中腰で。両手で顔を覆って。終わって号泣。SSS総出で水をぶっ掛ける。自分の手で清拭。
貞操帯無しになる。
showtime 11月上旬。
自尊心があるから、羞恥に悶える。
羞恥の感情があるから、悦辱に転化する。
講堂で性教育実習(Y7以上)。アイリスだけ。
女子のためのオナニー実演。
教師による本番、3穴も。
最後に、クラスヘッドが一人ずつ。
Y9~Y11(15人)。辞退は次席。
下の学年から 失敗しても恥でない。
上級生は相談して3穴チャレンジ。
succession/success 2年後
Y10でもY13の卒業証書。
母親がパトロン咥え込んで、娼館経営。
マダムとして3人をスカウトに来る。
解放は、理事長とは裏取引?
裸ジャンスカで校門に立つ3人。アイリスだけ裸ミニジャンスカ。他の2人は普通の制服。
在校SSS総出。
ロールスロイスから降り立つシースルー・ロングドレスの母親。以前通りの気品+上記した肌。
三人同じ扱い(アイリスにとっては大昇格)で、娼婦と娼夫。嫌なら、学校に留まって、もう1年~3年。
選択の自由。
学校から貸与されている制服を返却して。卒業メダルの代わりの首輪ひとつで。小陰唇をつまんで、カーテシー。
二人の動向は気にせず、ロールスロイスに向かって歩む。スモークフィルムが、ちょっぴり残念――なんて思わない。
succession/session 2年後
母親がsex skill supervisorとして着任。フッド記念講堂でY7以上。
母は、マゾっぽいボンデージファッション。乳房マンコ露出。パイパン&タトゥ。
SSS代表でアイリス。自発的に全裸。
陰唇屈膝礼(ラビアカーテシー)。差し出された足にキス。そのまま上へ。性器にキスしたところで立ち上がらされて、抱き合ってキス。母にリードされてレズ披露。
ヒロインは幼少時には学籍だけ置いて、父母の元で家庭教師から英才教育を受けていました。
原文を邦訳したという想定の本作品では、常用漢字すべてと、鞭笞磔枷浣(腸)などのSMジャンル必須の漢字を使います。
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上の一文は、設定年令の婉曲表現です。販売サイト自主規制対策です。Y7て書いたら、婉曲も直截もないですけど。でも、コノ物語ハふぃくしょんデス、現実のイングランドじゃないですから。
先のUrgent Report [-1]から、study, skill ,sodomy, sucsessionと増殖しています。
studyは、submissionが長尺になったので分割。sodmyは、いきなりAV同時(Oは前戯みたいなもの)では可哀想なので日を改めて。skillは、まあintermissionですか。sexpartになるための必修講座です。描くのはソープ技術だけです。花電車は割愛。
しかし、ソープと花電車。何回書いたんだろうなあ。『ママと歩むSlave Road』『悦虐へのエチュード』『海女無残花』『大正弄瞞』『姪奴と甥奴』「幼な妻甘々調教』『昭和集団羞辱史(浴場編)』他にもあったかも。
Midship!
そして。最後の succession は、ブログへのWILL様の
「ジャマゆきさん」した母親の一発逆転が成るか――というコメントがヒントです。
筆者としては、ヒロインを天涯孤独にするための方便で「行きっ放し」のつもりでしたが。
『非国民の烙淫(後編)』みたいな、アドベンチャーゲームなどではお馴染みの、Truth ENDとBAd ENDです。
どっちも、濠門長恭流ハッピーエンドかな?
※先のUrgernt Report[-1]からの大きな変更点は、パパ上の扱いです。
よくよく考えるまでもなく、パパ上はインドまで遠征しているわけではありません。国内で死んだら、ヒロインも葬儀に列席しますわな。服喪とかもあって。そこから、学園まで連れ戻すプロセスが必要になります。無駄な尺です。それと、生命保険。アンダーライターは保険のプロです。最悪の事態を想定して保険金額を設定してたら、波乱ゼロ丈です。
ので、設定変更。パパ上が生きていれば、ママ上はまだまだ出産適齢期。子爵位継承権者の男児を望めるでしょう。つまり、ママ上が借金返済に挑む動機が強化されます。
ついでに。イジメ被害者が「500ドルもするのよ」と口走るのは、アメリカの成金の娘だからです。ラヴィニアが重なってたり。
すでに、PLOTの長さから本編は300枚規模になっています。さて、実際に書いて、どうなりますことやら。
今回のAffiliateは、”小公女”ではロクなのが掛からないので、趣を変えて
WILL様からのリクエスト第6弾。いよいよ執筆開始です。
先にお断わりしておきますが、今回はいわゆる「マゾ堕ち」はしませんさせません。
最後まで貴族令嬢のプライドを保って、それなのに最下層の性奴扱いされて、恥辱屈辱にまみれながら、肉体的反応はしますが、それ以上にプライドを踏み躙られることに、もしかしたら最後まで当人は自覚しない愉悦を覚えるという。ううむ。うまく描写できるか不安になってきました。
三人称なら、憐れなヒロインを見て加虐者が愉しんでいればいいんですけど。ヒロイン一人称で、ヒロインが最後まで反発しながら、その実――だいたい、こうやって説明する文章でさえ、うまく書けていないのですから。
それでも、チャレンジ一念生。
ちょっと、息抜き。『小公女、エロ』で検索すると……ぐへへ。
上段中央のシーンは、どこかで使おうかな?

下の実写画像は、ヒロインが「藤咲セイラ」だから掛かったみたいです。
あと、重大なポイント。
今回は、きわめてソフト路線です。木馬も焼鏝も出てきません。ピアスもタトゥも無し。恥辱メインです。
しかも。SSSに堕ちてから1か月くらいは、処女のままです。濠門長恭作品では最長不倒記録のはずです。
では、恒例のPLOT紹介。
Y7というのは、Y1~Y11が義務教育で、Y12とY13が 6th form という、大学受験予備校というか高校というか。
義務教育は5歳からで、日本より1年早く始まります。
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S is for...
Special School Servant
Sexpert Scholarship Sutudent
Sex Slave Student
特別娼学性奴
ヤード・ポンド
『小公女』を読んでいることにして、随所で対比?
Yes sir /ma'am は、使わない。教師に貴族はいないから。
教師や生徒からの呼び掛けは、ミス・フッド。
ジニアとラックは My lady お嬢様。
ケイティだけは、レディ・アイリス。本来は伯爵令嬢以上。
物価は現在の30% £1=¥400(現在¥160)。学費は大雑把にサラリーマンの年収の3倍。
アイリス・フッド Y7 7月
ひとり娘。社交ダンス部と美術(絵画)部。馬術部志望だったが、母の反対(処女膜伝説)。運動部系は、肌を晒すなんて。
母親譲りのブルネット。編み下ろしにしていたが、ジニアを使役できなくなってからは長いツインテ(表紙予定画像から逆フィードバック)。
母と同じで小柄の細身。同学年(たいてい半年くらい上)と比べて乳房が膨らんでるのは、逞しい父の影響? わずかに生えてる。
ヒップの数字ががバストより大きいのは嫌。でも、きっと子供を何人も産める。
ママは2人目(男子)に挑んで体質改善にスポーツジム。まだ若いから、きっと叶うよね。
べた甘の父親が、4学年まで自宅で家庭教師。
母はY8で父と付き合い始めた。ので、恋愛にも興味津々。図書室で正しい知識を得ている。膣、陰唇、陰核、陰茎、睾丸、陰嚢……
父親 マイティ・フッド子爵 35
ロイズのアンダーライター
多額の債務を抱えて行方不明。
母親 メリー 32 旧姓レパルス
卒業してすぐ結婚
破産しない。すれば、爵位を失う。
まだ若いから、マイティ存命なら男児出産の可能性。
私物一切は債権者に(下着一枚に至るまで)譲渡しないといけない。
弁護士 パイク・ハボクック
専属学友(school maid & male)
ジニア・コルベット Y7 10月
大柄。BQB。
ラック・ワンブス Y7 12月
実は二つ年上(ボディガード)
二人は、アイリスとドア続きの隣室で相部屋。廊下側のドアは開けっ放し。寝るときは、間違いが起きないよう、アイリスがベッド拘束。恥ずかしいので、ラックがカラーボックス。
取巻 Y10 メル・ブリーク
Y8 ローナ・トレント
同Y7 マリー・デストン 「同」は同クラス
同Y7 ライラ・ロイヤー
同Y7m オッター・デアリング mはmale
他Y7 キャティ・ストック 「他」は他クラス
他Y7m ハーディ・リンクス
Y6以下は全員が崇拝者なのです。
上級生の大半は、わたくしを敬して遠ざけているのでしょうね。
同級生は、ほとんどの者がわたくしにかしずいています。
一部の者の反感なぞ、力ある者の宿命ですから、平気ですわ。
被害者 同Y7 ケイティ・アーズ アメリカの成金。
メイスレッド学園
全寮制 1学年~13学年
基本は2人部屋。低学年は4人。
1クラス12人×5クラス×13Y=780人
教員150人、職員50人が住込。
清掃業者、給食業者など50人は通い。厳重な守秘義務。
物資搬入などは通用門で職員が差配。
学僕は19世紀の制度だから、今は無い。
ボーディングスクールとしては上の下。
子爵の子弟が最上級。まれに伯爵。爵位継承権者はアイリスひとり。
年間の学費はサラリーマンの年収の数倍。ボーディングスクールでは当然。
父母の出身校。
経営者(理事長)が交代。かつて母を父と争ったドウ・セットシャー子爵(マイティと同学年)。アイリスはそこまで知らない。
校長 ケリー・キプリング
校医 ミルダ・フォーブ
女教師 アリス・グロー
ガディラ・マッカラン
ソープ カガリ・アカギ
花電車 リュウナ・ヒシノ
男教師 ヴィクター・トリアス
アトラス・イリス
ジャス・レイカー
マック・アルペイン
ラルフ・カビン
制服はジャンパースカート(冬は紺で夏は水色)に紐リボン。冬は上にブレザー。
男子は校章入りワイシャツに蝶ネクタイ。ズボンの色は女子と同じで、8年生から長ズボン。冬のブレザーはデザイン違い。
1982年4月(学年の後期)
ナイフランド紛争で、株価暴落。
父親、現地へ行く途中で行方不明。母親は「ジャマゆき」
土地は無くし、妻や娘に爵位継承権は無い。
しかし、身体を流れる青い血は変わらない。
6月上旬に悲劇は始まる。
sadistin 4月中旬
・オープニングは、目覚めて隣室の二人の解錠から。Noblesse oblige。
突き当たりの廊下をふさいで、二人部屋二つを独占。特別にサニタリールーム。
二人は大急ぎで共用トイレ。身支度の世話。ここでヘアーとか身体つきとか一気。
髪飾り(アイリスの意匠に見えるが百合)。取巻きが取り上げる。返してと言われて、わざと落として踏みにじる。
「500ドルもするのよ」金に賎しい。
ビンタ食らう。取巻きが取り押さえて、そこに教師。
尻叩き。ケイティは、取巻きと教師の忖度合戦で、下脱ぎ立たされ。
護衛を怠ったラックは後で股間キック。
パパに電話をして、ケイティ(金髪巻毛)に似合いそうな髪飾りを。千ドルで。£レートに言及。
・数日後。メルの「姉のお友達」の体験談。
最初は、すごく痛い。
どれくらいかを、ジニアで実験。
ラックのを見て、ジニアを見て。ラックがいっそう大きくなって、悪戯心。カラーボックスをラックが組み立てたドライバー。
処女膜と処女性は無関係。馬術部に言及。
「どんなふうに痛いの?」
答えられない。
見ていて勃起させたラックも脱がして。手は気色悪いので、足で。
その前に。まず、ラックを勃起させて
「ふうん。こんな大きいのが入るのねえ。あ、オトナはもっと大きいのかな?」とか。
・10日後
髪飾りが届く。
「このほうが、あなたには似合うでしょうよ」
ケイティの机に置く。ケイティは敵意のこもった目で、無様なカーテシー。
「あいがとうございます。レイディ・アイリス」煮えくり返る腹が透けている。
subsidence 6月下旬
ナイフランドの推移はフォークランドと違う。
・3人が校長に呼ばれて、先にラックとジニア。1時間も待たされて。
弁護士から母の手紙。下着まで『財産没収』
全裸で校長からの説明を聞く。上の空。
新制度はSexpart Scholar student
sextant(六分儀)からの連想で、sixth formに関係あると誤解。
弁護士の悪意。ろくに読ませずサイン。
渡されたのは制服と紐ネクタイの代わりに犬の首輪「SSS,IRIS」
ブラウスも下着も靴も「制服貸与」の範疇外。必要なら自弁で←無一文。
制服は超ミニ(股下ゼロcm)プリーツジャンスカ。必然的に裸ジャンスカ。
「きみは処女だね」
T字形鎖貞操帯。環が太いから、大も可能。陰核が環に嵌まる位置で安定。若干意識してしまうが、まだ快感には至らない。
他の2人が入室。2人は、これまでフッド家から給金。今後は親元から仕送り。
ジニアはパンティ+ノースリーブブラウス。ノーブラ(鉛筆理論)。首輪。超ミニジャンスカだが股下5cm。
ラックはノースリーブで裾結び。首輪。股下ゼロ半ズボン前V開きベルト有り。パンツはペニスぎりぎりローレイズ。
家名は捨てる。boy & girl
・3人ひとまとめに物置小屋へ。ジニアとラックの荷物で狭い。オンボロベッドは二つ。アイリスは床に毛布。制服が皺になると二人に全裸強要される。左右に並んだベッドの間に大の字拘束で寝かされる。これまでの仕返し。
・初日。3人ばらばらに。アイリスだけが元のクラス。教壇の隅に机。クラスメートと斜めに向き合う。
「雑用でもなんでも言いつけてかまいません。皆さんのメイドと思いなさい」
経緯を詳しく説明。アイリスと他の二人との違いも。実家からの仕送りなど。
超ミニをまくられて、ビンタを返す。たちまち尻叩き。後ろ向き立たされ。後ろに組んだ手で裾を持ち上げさせられる。昼まで。じんわり濡れる。胸キュン。
昼食。カフェテリア出入禁止。適当に盛り付けられたトレーを裏口で受け取って、その場で。木箱のテーブル。
・学年全体で年度末テスト上位(男子4人、女子2人)に、デート権。
・数日後。取巻きだったマリーの虐め。
「裸足じゃないの。これを差し上げるわ」
目の前で履き替えたキャンバスシューズを差し出す。
「受け取りなさい」顔に押し付ける。払いのけたら、わざと隣の子の顔にぶつける。
「先生。アイリスが暴力を振るいました」
問答無用。全裸。
「無精髭を明日までに剃りなさい」
抗議しても、ほかの[まともな]生徒は隠している。
T字鎖を外してメコ筋縦打ち。汚れた鞭を舐めて綺麗に。乳房で拭かれる。生徒が慣れるまで、教師は意図的に過激?
ズックは、最大限の感謝で受け取らされる。カーテシーはしない。
全裸ズックで整列休め。放課後まで。昼は他教室からも。視線意識して濡らしてしまう。
・その夜、ジニアとラックの手で強制剃毛。腋も。また濡らして、からかわれる。
・学年末に12歳。初潮はまだ。土日は3人で校内清掃。清掃業者を削減。
suppression 7月中旬
・本人も生徒も、まだ戸惑っている。
・学年末テストの答案返却。零点。補習。
抗議。員数外。ジニアとラックはノーチェックで及第点ぎりぎり。
抗議の罰。
ツインテで後ろ手縛り。文句を言った口にチョークを咥えて、悔し泣きしながら。惨めなほど濡れる。
I will never disobey any teacher and student.
SSSの立ち位置が、生徒にも明確に。
補習。ひとりだけ別教室。教鞭ツンツンから生乳もみもみくらいか。
・熱心な取り巻きだったハーディとオッターがデート権利。
土曜はオッター。半日の校内デート。給食業者に作らせたランチボックス。
ポッキーゲームで抱きすくめてキス。無防備な乳房こねくりまわして尻をなでるくらい。陰核クリクリで、初あへり?
日曜はハーディ。レスリング部。
CACC。全裸(T字貞操帯)。敵はシングレット。
先輩3人も一緒にスパーリング。「恥ずかし固め」くらいで赦してやろうかな。
バリバイ・デサド皇太子がエクスターシャをぶちのめしたようなハード系は駄目です。
ハヴェントY8、ラムゼイY9、スウィフトY10 たぶん、ファミリーネーム。
shame 7月下旬~8月中旬(夏休)
乾パンと缶詰の日々も。
・フッド記念講堂。7年前に父が寄贈。小さいから小集会用。汚れが目立ってきている。
古くて小さいから、使われていない。苔むしている。
外壁の高圧水洗浄。汚泥はシャベルで掬ってネコ車。近くのコンテナにまとめておけば、業者が早朝に収集。濡れるから腰巻ひとつ。
1日目。鎧窓を閉めて、洗浄の準備。
2日目。腹痛。水を飲みに離れたのを咎められ、機械につながれかけるが、拒否。
プライドに掛けても、離れられない。
「そこにいくらでも水はある」
質の悪い水道水が汚いタンクで、さらに。
垂れ流してジェット洗浄はプライドが。限界突破で泣き崩れる。それでも、自身を洗浄。
3日目。不意打ちで理事長視察。初対面。
理事長にカーテシー強要される。違う意味で濡れる。
躾のし直し。全裸のときは小陰唇カーテシー。ペニスへのカーテシー。破瓜。
「私は、どんなふうに痛いか言えるわよ」
恥辱が快感。血塗れお掃除フェラ。
「メリー。おまえの娘は、ここまで堕ちたぞ」
三巴の過去が明らかに。教師が辛く当たっていたのも差し金。
寄付の餌。
「母親よりも稼げるぞ。すべて学園の金庫に入る。そういう契約」
翌日も出血。初潮。ピル。Y字鎖に。
・サマーキャンプで戻って来る生徒も。
手伝わされて、遊ばれて。教師が挿入&イラマ。突っ込まれると、ラビアが擦れる。
生徒も真似する。膣挿入+陰核で快感。絶頂ではない。肉体的官能のみ。
・性感開発と称して、ヘアピンを乳首は横向き、陰核は縦向き。あるいは脱がせてプロペラ。
Study 8月下旬
新学年新学年からのSSS本格稼働の準備。
初代はアイリス、ジニアYのまま、ラックYのまま
アビリア(Y11)、ウラニア(Y10)、フュリー(Y10)、ヌビアン(Y11牡褐色小柄童顔)。全員貞操帯無し。
すれた印象。感化院あたりから?
SSSなんて、失敗するわよ。
学年相応の教養を身に着けさせる。アイリスが臨時教員。小公女の影響かなあ。
「元子爵令嬢だってね」
父の爵位は健在。それに、伯爵の孫娘。でも、この人たちに言っても無駄。
「今は、あなた方と同じ。あなた方より年少ですけど、ここでのキャリアは長いから、分からないことがあったら、遠慮無く」
「冗談じゃない。あんたは親無しの、パンツひとつ買えない無一文じゃないの」
「おまけに、処女を守る貞操帯だって?」
「あたいたちのが、ずっと先輩だよ」
同じ扱いだなんて、誇りが許さない。特別扱いされてて、ありがたいくらい。高貴な者が逆風なのは、物語の定番だわ。
二人が異様に幼い。ジニアは可愛がられる。
3日ごとの小テスト。低めに設定した合格点に達さないと「教え方が悪い」
アイリスが罰を受ける。赤点を取った当人はお咎め無し。
罰は、書きながら考える。1日食事抜き/3点クリップ/股縄タイヤ引き校庭一周/串刺しスクワット
(過激にならないようにね?)
ただし、ひどいと感化院へ逆戻り。アッパーミドルの妾になる道が鎖されるので、それなりに必死?
submission 9月上旬
・SSSの本格稼働。
新学年。Y8になる。12歳2カ月。
Y9以上の成績優秀男子のみ権利。
Y12と13の6th formは、週末に街へ行く者が多い。
男子宿舎の外にプレハブ宿舎。雑魚寝。
寝るときは、間違いが起きるように拘束。ドアは開け放しておくのが、未婚の男女が同室のときのマナー。実際に夜這い。
「手足自由なら、あれこれしてあげられるのにさ」
カフェテリアの裏にテント設営。
・新学期早々の参観日もふつうに出席。親も平然どころか、奴隷カーテシー「躾が行き届いてますね」
お忍び視察の大臣が、最初の募金活動。
ボンデージファッションで女王様初体験。ごっこ遊び。気持ち悪い。
二番目がケイティの父親。娘の仇討ち。メコ筋縦打ちも手紙で知っている。再現、教師は手加減してくれていたと痛感。
他のSSSも、それぞれ2~3人。
・わりと、男子からちやほや(?)されてる。のが面白くなくて、ケイティの時間差意趣返し。返してあげる。髪飾りを机の上に。昼休みが終わるまで放置。教師が入って来てから、ケイティが払い落として踏みにじって。
「この娘が、わたしの髪飾りを壊しました」
弁解無用。黒板の前で逆立ち。教鞭突っ込んでは縦打ち。3点目玉クリップインク瓶吊るし。見苦しいから、ラビアWクリップ。放課後まで、廊下。
・他のSSSに比べて、異様に過酷。
「nobless obligeと思え」
「ラックとジニアは帰る家がある。新人連中も、おまえという最下層を見ていれば、脱走など思わんだろう」本音。
skill 10月上旬
放課後の課外活動時間。SSSはポルノ観賞。
・臨時講師。1か月。ソープ技。
放課後のクラブ活動として。
各SSSの指で、フェラ見本。自分で。相互で。先生に。最後は男教師とY12、Y13が練習台。バブル・ダンスも同じ。
アイリスも熱心に受講。負けん気。
花電車は翌年かな。
sodomy 10月後半
・わずかな時間を盗んで、図書室など転々として勉強。成績の維持。
理事長再来。
イチジク浣腸を取り出したが、やめる。
ヴァギナと違って出血したら治らない。丁寧にほぐされて、快感。
お掃除フェラを要求。汚濁。口を近づけて異臭。
これだけは赦してと懇願。嗚咽。
「どんな罰でも受けます」
医務室からダブルバルーン取り寄せ。
「放課後まで我慢しろ」
ただし。自分でピンチを外せる。元子爵令嬢が自らの言葉に背くとは思わんがな。
上の空で授業。
放課後。校庭の真ん中。全校生徒の前で。全裸。自分で解錠。中腰で。両手で顔を覆って。終わって号泣。SSS総出で水をぶっ掛ける。自分の手で清拭。
貞操帯無しになる。
showtime 11月上旬。
自尊心があるから、羞恥に悶える。
羞恥の感情があるから、悦辱に転化する。
講堂で性教育実習(Y7以上)。アイリスだけ。
女子のためのオナニー実演。
教師による本番、3穴も。
最後に、クラスヘッドが一人ずつ。
Y9~Y11(15人)。辞退は次席。
下の学年から 失敗しても恥でない。
上級生は相談して3穴チャレンジ。
succession/success 2年後
Y10でもY13の卒業証書。
母親がパトロン咥え込んで、娼館経営。
マダムとして3人をスカウトに来る。
解放は、理事長とは裏取引?
裸ジャンスカで校門に立つ3人。アイリスだけ裸ミニジャンスカ。他の2人は普通の制服。
在校SSS総出。
ロールスロイスから降り立つシースルー・ロングドレスの母親。以前通りの気品+上記した肌。
三人同じ扱い(アイリスにとっては大昇格)で、娼婦と娼夫。嫌なら、学校に留まって、もう1年~3年。
選択の自由。
学校から貸与されている制服を返却して。卒業メダルの代わりの首輪ひとつで。小陰唇をつまんで、カーテシー。
二人の動向は気にせず、ロールスロイスに向かって歩む。スモークフィルムが、ちょっぴり残念――なんて思わない。
succession/session 2年後
母親がsex skill supervisorとして着任。フッド記念講堂でY7以上。
母は、マゾっぽいボンデージファッション。乳房マンコ露出。パイパン&タトゥ。
SSS代表でアイリス。自発的に全裸。
陰唇屈膝礼(ラビアカーテシー)。差し出された足にキス。そのまま上へ。性器にキスしたところで立ち上がらされて、抱き合ってキス。母にリードされてレズ披露。
ヒロインは幼少時には学籍だけ置いて、父母の元で家庭教師から英才教育を受けていました。
原文を邦訳したという想定の本作品では、常用漢字すべてと、鞭笞磔枷浣(腸)などのSMジャンル必須の漢字を使います。
========================================
上の一文は、設定年令の婉曲表現です。販売サイト自主規制対策です。Y7て書いたら、婉曲も直截もないですけど。でも、コノ物語ハふぃくしょんデス、現実のイングランドじゃないですから。
先のUrgent Report [-1]から、study, skill ,sodomy, sucsessionと増殖しています。
studyは、submissionが長尺になったので分割。sodmyは、いきなりAV同時(Oは前戯みたいなもの)では可哀想なので日を改めて。skillは、まあintermissionですか。sexpartになるための必修講座です。描くのはソープ技術だけです。花電車は割愛。
しかし、ソープと花電車。何回書いたんだろうなあ。『ママと歩むSlave Road』『悦虐へのエチュード』『海女無残花』『大正弄瞞』『姪奴と甥奴』「幼な妻甘々調教』『昭和集団羞辱史(浴場編)』他にもあったかも。
Midship!
そして。最後の succession は、ブログへのWILL様の
「ジャマゆきさん」した母親の一発逆転が成るか――というコメントがヒントです。
筆者としては、ヒロインを天涯孤独にするための方便で「行きっ放し」のつもりでしたが。
『非国民の烙淫(後編)』みたいな、アドベンチャーゲームなどではお馴染みの、Truth ENDとBAd ENDです。
どっちも、濠門長恭流ハッピーエンドかな?
※先のUrgernt Report[-1]からの大きな変更点は、パパ上の扱いです。
よくよく考えるまでもなく、パパ上はインドまで遠征しているわけではありません。国内で死んだら、ヒロインも葬儀に列席しますわな。服喪とかもあって。そこから、学園まで連れ戻すプロセスが必要になります。無駄な尺です。それと、生命保険。アンダーライターは保険のプロです。最悪の事態を想定して保険金額を設定してたら、波乱ゼロ丈です。
ので、設定変更。パパ上が生きていれば、ママ上はまだまだ出産適齢期。子爵位継承権者の男児を望めるでしょう。つまり、ママ上が借金返済に挑む動機が強化されます。
ついでに。イジメ被害者が「500ドルもするのよ」と口走るのは、アメリカの成金の娘だからです。ラヴィニアが重なってたり。
すでに、PLOTの長さから本編は300枚規模になっています。さて、実際に書いて、どうなりますことやら。
今回のAffiliateは、”小公女”ではロクなのが掛からないので、趣を変えて
Progress Report Final:生贄王女と簒奪侍女
5月22日脱稿。14万8千文字(原稿用紙換算430枚)
とっとと校訂して――7月1日発売予定です。
すでに、心は次作『特別娼学性奴:Special School Servant / Sex Slave Studen』に馳せております。
ので、アイキャッチも適当に。

こういうふうに寝かせて固定してから十字架を立てるんですが。作中でも、かなり忠実に描写しているつもりですが。校訂の際に確認しておきましょう。
今回は最後っ屁で。全登場人物・組織・地名のネタばらしです。
本文中では書かなかった家名、旧姓、養親なども(括弧表記)します。
★フィションク準王国→この物語はフィクションです
ドエム河→美しく青き……
ツタッペル丘陵→つるぺた
国王 マノット・コモアール・コモニレル→妻の肛門に挿れることもある
先后 ジョイーティ(メジマキンヌ)→生真面目な貞女
前后 メソビア(インランド)→淫乱な遊び女
王女 モジョリン・コモニレル→喪女/家名はしょうがないね
王女 エクスターシャ・コモニレル→肛門に挿れてエクスタシー
侍女 アクメリン・リョナルデ→リョナでアクメ
侍女 イレッテ・ズコバック→入れてズコバコ
侍女 ミァーナ・オッケイン→三穴OK
親善(同盟交渉)使節団
正使 ロテイト・クレジワルド→狂言回し(ワルド=word)
副使 (チョイス)ヤックナン→チョイ役
★近隣諸国 リャクンシー王国/タンコシタン公国→侵略に虎視眈々
★海賊団アルイェット→無敵艦隊アルマダ(まだ=yet)
ヴァギナン船長 ミズン・モシュタル→水もしたたる
パイオーツ船長 ヒゲン・モテワッコ→髭のこわもて
オシリーヌ船長 (ボーズ・アバレン)→暴れん坊
手下 チョデイン→ちょっと出
女 オゴネア→大姐御
女 カッサンドラ(モデオイン)→おっかさんでもド淫乱
女 マイラ(テネシー)→イラマしてね
★メスマン首長国→オスマン帝国
首都 アリエザラム→有り得ざらぬ
首長 セセイン・シュンク・ボギャック→暴虐な専制君主
宰相 オザーリカ→お飾り
太子 バリバイ・デサド・セセイン→バイでリバでサド
寵姫 サナンドオ→サド女
寵姫 ハイビシャナ→高飛車な
寵姫 クリシナット→クリット無し
侍女 ベシメキア→別式女
侍女 スマゾネア→アマゾネス
寵童 タマーシャナ→玉無しやな
奴隷 ニンサコ イシラガ ンレド→奴隷小頭三人
兵士 モクーリャ アジミール→ヤリもく、味見る
炭鉱 ドロージュ→重労働
持主 バリ・シャデイン→出しゃばり
★教会派遣査問団
所属組織 聖ヨドウサ修道院→サド養成
枢機卿 キャゴッテ・ゼメキンス→焼鏝責め好き
修道僧 ホナー リカード ガイアス→ほリカドなGayasu
兵士長 レオ・モサッド→おれもサド
★都市 マライボ→サラエボ+疣魔羅
統治者 (ナッシュ)デバイン伯爵→出番無し
被疑者 ショウザンの娘、ジョイエ→冤罪少女
被疑者 ワイマーツの妻、ニレナ→哀れな新妻
その他 イディナ→出ない
その他 ガカーリイ商会→言い掛かり
★都市 ズブアナ→リュブリナ+穴にズブ
重罪人 ゴケット ヒューゴ ロシヒト→人殺し強盗火付け
魔 女 マイ・セシゾン→真性マゾ
★教皇庁 デチカン→バチカン+デカチン
その他端役候補(未採用)
ミッジ・カスギール、オライナ・ケッカネン
エキス・トーラン、ハヤック・ソノーチ
ツィヤック、モシモーシュ
ジウ/メイヤー (yaJIUma)
アンナ・ハインライン、ニアーナ・ヨガリンヌ
キュリアン・エピック、セツィーナ・ギーシュ
ノーノ・コマチオ/ルアーナ
パパイン/モデリード/プカーディ
書いているときは、おふざけが、ほとんど気になりません。
読者諸賢におかれましては如何でしょうか。
とっとと校訂して――7月1日発売予定です。
すでに、心は次作『特別娼学性奴:Special School Servant / Sex Slave Studen』に馳せております。
ので、アイキャッチも適当に。

こういうふうに寝かせて固定してから十字架を立てるんですが。作中でも、かなり忠実に描写しているつもりですが。校訂の際に確認しておきましょう。
今回は最後っ屁で。全登場人物・組織・地名のネタばらしです。
本文中では書かなかった家名、旧姓、養親なども(括弧表記)します。
★フィションク準王国→この物語はフィクションです
ドエム河→美しく青き……
ツタッペル丘陵→つるぺた
国王 マノット・コモアール・コモニレル→妻の肛門に挿れることもある
先后 ジョイーティ(メジマキンヌ)→生真面目な貞女
前后 メソビア(インランド)→淫乱な遊び女
王女 モジョリン・コモニレル→喪女/家名はしょうがないね
王女 エクスターシャ・コモニレル→肛門に挿れてエクスタシー
侍女 アクメリン・リョナルデ→リョナでアクメ
侍女 イレッテ・ズコバック→入れてズコバコ
侍女 ミァーナ・オッケイン→三穴OK
親善(同盟交渉)使節団
正使 ロテイト・クレジワルド→狂言回し(ワルド=word)
副使 (チョイス)ヤックナン→チョイ役
★近隣諸国 リャクンシー王国/タンコシタン公国→侵略に虎視眈々
★海賊団アルイェット→無敵艦隊アルマダ(まだ=yet)
ヴァギナン船長 ミズン・モシュタル→水もしたたる
パイオーツ船長 ヒゲン・モテワッコ→髭のこわもて
オシリーヌ船長 (ボーズ・アバレン)→暴れん坊
手下 チョデイン→ちょっと出
女 オゴネア→大姐御
女 カッサンドラ(モデオイン)→おっかさんでもド淫乱
女 マイラ(テネシー)→イラマしてね
★メスマン首長国→オスマン帝国
首都 アリエザラム→有り得ざらぬ
首長 セセイン・シュンク・ボギャック→暴虐な専制君主
宰相 オザーリカ→お飾り
太子 バリバイ・デサド・セセイン→バイでリバでサド
寵姫 サナンドオ→サド女
寵姫 ハイビシャナ→高飛車な
寵姫 クリシナット→クリット無し
侍女 ベシメキア→別式女
侍女 スマゾネア→アマゾネス
寵童 タマーシャナ→玉無しやな
奴隷 ニンサコ イシラガ ンレド→奴隷小頭三人
兵士 モクーリャ アジミール→ヤリもく、味見る
炭鉱 ドロージュ→重労働
持主 バリ・シャデイン→出しゃばり
★教会派遣査問団
所属組織 聖ヨドウサ修道院→サド養成
枢機卿 キャゴッテ・ゼメキンス→焼鏝責め好き
修道僧 ホナー リカード ガイアス→ほリカドなGayasu
兵士長 レオ・モサッド→おれもサド
★都市 マライボ→サラエボ+疣魔羅
統治者 (ナッシュ)デバイン伯爵→出番無し
被疑者 ショウザンの娘、ジョイエ→冤罪少女
被疑者 ワイマーツの妻、ニレナ→哀れな新妻
その他 イディナ→出ない
その他 ガカーリイ商会→言い掛かり
★都市 ズブアナ→リュブリナ+穴にズブ
重罪人 ゴケット ヒューゴ ロシヒト→人殺し強盗火付け
魔 女 マイ・セシゾン→真性マゾ
★教皇庁 デチカン→バチカン+デカチン
その他端役候補(未採用)
ミッジ・カスギール、オライナ・ケッカネン
エキス・トーラン、ハヤック・ソノーチ
ツィヤック、モシモーシュ
ジウ/メイヤー (yaJIUma)
アンナ・ハインライン、ニアーナ・ヨガリンヌ
キュリアン・エピック、セツィーナ・ギーシュ
ノーノ・コマチオ/ルアーナ
パパイン/モデリード/プカーディ
書いているときは、おふざけが、ほとんど気になりません。
読者諸賢におかれましては如何でしょうか。
Urgent Report [-1]:R is for Request
『生贄王女と簒奪侍女(後編)』も終章を書き進んで、あと10枚くらいでEND。のタイミングで、お馴染みWILL様からのリクエストが来ました。吉原では三会目からが「馴染」になります。WILL様はダブル馴染ですな。戯言はともかく。
頂いたリクエストは、下記の通り
========================================
*ストーリイのリクエスト
→寄宿学校で絶大な権力と財力を持っていたお嬢様が、最下層のマゾ奴隷へと落ちる
*時代設定のリクエスト
→身分、人種差別が公然と行われていた時代
(国や具体的な時代の指定はありません)
*シチュエーションのリクエスト
→かつては高貴な身分と傅かれ我儘に振る舞ってい少女が最下層の身分に落ちマゾに目覚めていく
*キャラ設定(外見、性格)
・少女(人種はお任せします)
高貴な身分と絶大な財力を持つ生まれながらのお嬢様
年齢はx2歳前後の外見は愛らしい小柄な美少女で家が学校に多額の寄付をしているため、教師ですら彼女には逆らえない
高慢な性格で、使用人や奴隷は人間として見ておらず、同級生や教師も見下していたが、ある日、身分と財産の全てを失い、奴隷以下の立場になる
サディスティックな性格と思われていたが本質は蔑まれることに悦びをおぼえる真正のマゾ
*人間関係のリクエスト
→かつて少女に虐げられていた使用人・奴隷や、少女の取り巻きだった同級生、少女の我儘に振り回されていた教師
*特定の責めのリクエスト
・同い年くらいの使用人や奴隷を甚振る少女
些細な粗相をした使用人を裸にして鞭打ったり、戯れに物で処女を奪ったりする
(少年の奴隷がいる場合は性器をおもちゃにして遊んだりもする)
・全てを失った少女は温情という名目で学校で働かされることになる
裸同然の服でなれない重労働をしたり、かつて自分が行ったような性的ないじめを使用人や奴隷達、教師や生徒から受けるが、何故か興奮する自分に困惑していく
・かつての同級生の前で見せ物として自慰や性行為を行う少女
取り巻き達に笑われバカにされながら絶頂にたってしてしまう
========================================
一読、思ったのは。
『小公女』と『1/16の牝奴隷』を足して2で割ったら出来上がりじゃん――でした。うわああああ。畏れ多きことを。
国や具体的な時代の指定はないとおっしゃいましても。「高貴な身分」ですから、制度としては廃されていても御貴族様でしょうね。社会主義国家のエリートでは、イメージが合わない。ていうか「多額の寄付」とかしませんし。
そして、日本でも拙いです。「男女七歳にして席を同じうせず」ですもの。たとえ宿舎が別の建物に分かれているとしても。いや、現在の現実にはごく少数存在してるみたいですけど。日本の古典的な貴族(公家華族)は、線が細いし貧しくていらっしゃいますし。明治以降の大名華族や新華族は、誇りとかNoblesse obrigeから外れてる感じだし(個人的見解)。
やはり、領地を切り取っていった攻撃的な狩猟民族がよろしい。
というわけで、旧大陸に限定されます。
といっても、イタリアは――筆者の感覚では、陽気なラブコメか残酷なマフィアか。
そして。ドイツとフランスは――『11月のギムナジウム』と『風と木の詩』です。二絶大のイメージに引きずられます。
註記
御中<御大<極大 は、そのベクトル上に濠門長恭クンの座標があります。
御中<御大<絶大 は、読者視点です。逆立ちY字バランスしたって、濠門長恭クンには描けません。たとえAI絵師を使ったとしても。
というわけで。必然的にイングランドです。
外国物を書くときに悩む言語の問題が、すこしは緩和されます。筆者とて、TOEICで10点くらいは取れます。
そして時代は。電マやポラロイドやピルを使いたいです。ケイタイで24とか、ネットで助さん角さんしてほしくないです。というわけで、20世紀後半ですな。身分や人種差別が公然ではありませんが、隠然というかガラスの仮面檻というか。
と、ここまで、脊髄反射的に定まりました。あとは一瀉千里。
リクエストを最初に見たのが、19日(OFF)の午後。20日は勤務日でしたが、退勤までにはタイトルも章題も固まっていました。
Special School Servant
特別娼学性奴
Sex Slave Student
章題は
sadistin
subsidence
shame
submission
showtime
S尽くしで御座います。参照:『An Amateur Assasine Arrested And Assaulted』
設定の掘り下げも。
父親は子爵様で、ロイズのアンダーライター。紛争だかテロだかで想定外の保険金支払が生じて、破産必至。なんとか挽回しようと1日48時間の奮闘のあまり、脳溢血でぽっくり。母親は伯爵令嬢。両家の名誉にかけても個人破産などせずに、相続した1千万ポンド以上の借金を合法的労働によって返済すべく、西ドイツへ出稼ぎ。「飾り窓の女」です。「ジャマゆき」さんです。
ヒロインの我儘放題は父の甘やかし。下賤の者を蔑むのは母の影響。そして、母には幼少の頃から貴族の振る舞いを厳しく躾けられています。
それを利用したエピソードまで浮かびました。腰布一枚でも、カーテシーを強いられるのです。
「両手で、もっと裾を持ち上げなさい」「足は後ろへ引くのではなく横に大きく開きなさい」
さて。後はエピソードを膨らませていけばプロットの完成です。
どころか、表紙も構想してしまいました。こんなの↓

さあ。執筆中の『生贄王女と簒奪侍女(後編)』を、今日は紙飛行機全国大会の予選があるので、明日か明後日には脱稿して。校訂して。表紙絵は出来ています。

6月1日には執筆開始です。
あ、そうそう。この作品では、登場人物の語呂合わせはしません。
でも、レパルスとかフォーミダブルとかヴァリアントとかフッドで統一したりして。
頂いたリクエストは、下記の通り
========================================
*ストーリイのリクエスト
→寄宿学校で絶大な権力と財力を持っていたお嬢様が、最下層のマゾ奴隷へと落ちる
*時代設定のリクエスト
→身分、人種差別が公然と行われていた時代
(国や具体的な時代の指定はありません)
*シチュエーションのリクエスト
→かつては高貴な身分と傅かれ我儘に振る舞ってい少女が最下層の身分に落ちマゾに目覚めていく
*キャラ設定(外見、性格)
・少女(人種はお任せします)
高貴な身分と絶大な財力を持つ生まれながらのお嬢様
年齢はx2歳前後の外見は愛らしい小柄な美少女で家が学校に多額の寄付をしているため、教師ですら彼女には逆らえない
高慢な性格で、使用人や奴隷は人間として見ておらず、同級生や教師も見下していたが、ある日、身分と財産の全てを失い、奴隷以下の立場になる
サディスティックな性格と思われていたが本質は蔑まれることに悦びをおぼえる真正のマゾ
*人間関係のリクエスト
→かつて少女に虐げられていた使用人・奴隷や、少女の取り巻きだった同級生、少女の我儘に振り回されていた教師
*特定の責めのリクエスト
・同い年くらいの使用人や奴隷を甚振る少女
些細な粗相をした使用人を裸にして鞭打ったり、戯れに物で処女を奪ったりする
(少年の奴隷がいる場合は性器をおもちゃにして遊んだりもする)
・全てを失った少女は温情という名目で学校で働かされることになる
裸同然の服でなれない重労働をしたり、かつて自分が行ったような性的ないじめを使用人や奴隷達、教師や生徒から受けるが、何故か興奮する自分に困惑していく
・かつての同級生の前で見せ物として自慰や性行為を行う少女
取り巻き達に笑われバカにされながら絶頂にたってしてしまう
========================================
一読、思ったのは。
『小公女』と『1/16の牝奴隷』を足して2で割ったら出来上がりじゃん――でした。うわああああ。畏れ多きことを。
国や具体的な時代の指定はないとおっしゃいましても。「高貴な身分」ですから、制度としては廃されていても御貴族様でしょうね。社会主義国家のエリートでは、イメージが合わない。ていうか「多額の寄付」とかしませんし。
そして、日本でも拙いです。「男女七歳にして席を同じうせず」ですもの。たとえ宿舎が別の建物に分かれているとしても。いや、現在の現実にはごく少数存在してるみたいですけど。日本の古典的な貴族(公家華族)は、線が細いし貧しくていらっしゃいますし。明治以降の大名華族や新華族は、誇りとかNoblesse obrigeから外れてる感じだし(個人的見解)。
やはり、領地を切り取っていった攻撃的な狩猟民族がよろしい。
というわけで、旧大陸に限定されます。
といっても、イタリアは――筆者の感覚では、陽気なラブコメか残酷なマフィアか。
そして。ドイツとフランスは――『11月のギムナジウム』と『風と木の詩』です。二絶大のイメージに引きずられます。
註記
御中<御大<極大 は、そのベクトル上に濠門長恭クンの座標があります。
御中<御大<絶大 は、読者視点です。逆立ちY字バランスしたって、濠門長恭クンには描けません。たとえAI絵師を使ったとしても。
というわけで。必然的にイングランドです。
外国物を書くときに悩む言語の問題が、すこしは緩和されます。筆者とて、TOEICで10点くらいは取れます。
そして時代は。電マやポラロイドやピルを使いたいです。ケイタイで24とか、ネットで助さん角さんしてほしくないです。というわけで、20世紀後半ですな。身分や人種差別が公然ではありませんが、隠然というかガラスの
と、ここまで、脊髄反射的に定まりました。あとは一瀉千里。
リクエストを最初に見たのが、19日(OFF)の午後。20日は勤務日でしたが、退勤までにはタイトルも章題も固まっていました。
Special School Servant
特別娼学性奴
Sex Slave Student
章題は
sadistin
subsidence
shame
submission
showtime
S尽くしで御座います。参照:『An Amateur Assasine Arrested And Assaulted』
設定の掘り下げも。
父親は子爵様で、ロイズのアンダーライター。紛争だかテロだかで想定外の保険金支払が生じて、破産必至。なんとか挽回しようと1日48時間の奮闘のあまり、脳溢血でぽっくり。母親は伯爵令嬢。両家の名誉にかけても個人破産などせずに、相続した1千万ポンド以上の借金を合法的労働によって返済すべく、西ドイツへ出稼ぎ。「飾り窓の女」です。「ジャマゆき」さんです。
ヒロインの我儘放題は父の甘やかし。下賤の者を蔑むのは母の影響。そして、母には幼少の頃から貴族の振る舞いを厳しく躾けられています。
それを利用したエピソードまで浮かびました。腰布一枚でも、カーテシーを強いられるのです。
「両手で、もっと裾を持ち上げなさい」「足は後ろへ引くのではなく横に大きく開きなさい」
さて。後はエピソードを膨らませていけばプロットの完成です。
どころか、表紙も構想してしまいました。こんなの↓

さあ。執筆中の『生贄王女と簒奪侍女(後編)』を、今日は紙飛行機全国大会の予選があるので、明日か明後日には脱稿して。校訂して。表紙絵は出来ています。

6月1日には執筆開始です。
あ、そうそう。この作品では、登場人物の語呂合わせはしません。
でも、レパルスとかフォーミダブルとかヴァリアントとかフッドで統一したりして。
Progress Report 7:生贄王女と簒奪侍女
いよいよ第四コーナーを回って、最後の追い込み。後編を終わって、終章に突入しました。
疾走するベクトル感覚(Ⓒ平井和正……ちょい違)を緩めてじっくり腰を据えて書き込むか、このまま突っ走るか。尾道どの道、今日(OFF)で目処を着けて、明後日のOFFは40秒×5なら決勝進出ですが。その次のOFFの25,26で脱稿でしょう。
今回は、後編の最後を御紹介……ですが。爆裂弾は転がるわ、ロケット兵器は飛び交うわと、PLOT段階では考えてもいなかったスペクタクルアクションになっちゃいました。いえね。いきなり飛び出した近代兵器でもないですよ。前編でも後編でも、「大砲がこの地に伝わるのは半世紀後」とか書いて――西方社会では知られていなくても、中近東ならばという微弱な(巧まずして)伏線はありましたし。狼煙通信で赤い煙とか描写して、ケミストリーの発達を暗示したり。うん、そういうことにしときます。
しかし、好き勝手に書いてるなあ……
========================================
処刑執行直後の救出
アクメリンは円環の晒し台から降ろされ、地上に寝かされている十字架に鎖で縛りつけられた。釘で手足を固定するのは古の処刑作法であるが、救世主と同じでは畏れ多いとして、基督教では(明文規定こそないが)禁止されている。
アクメリンを磔けた十字架が立てられて。十字架のまわりに薪が並べられていく。積み上げるというほど多くはない。
死刑を司るのは聖職者であっても、実際に手を下すのは下人である。ゼメキンス子飼の三人がマライボとズブアで執行に携わったのは――あれは処刑ではなく、強弁すれば教会の慈善事業であるから、話は異なっている。
下人は被差別的な扱いを受けているか、罪人の烙印を捺された者がほとんどである。だから、肌の浅黒い者が混じっていても、人目を引かない。下人の一人が、小さな樽から石炭の粉のような物を撒きながら、十字架を取り囲んだ薪のまわりをぐるりと巡っても――ゼメキンスは教会が手配した者だと考えるし、教会から公式に任命された処刑執行人はゼメキンスの独走かと苦々しく黙認する。つまりは、指揮系統のねじれにつけこまれたわけだが、話を先へ進めよう。
準備万端調って。フィションク準王国第二王女たるエクスターシャ・コモニレルを魔女として処刑する旨が宣せられて。刑吏が松明を持って十字架の前に進み出て。その火が薪に転じられた途端。
しゅぼおおおおおおおおおっ……!
真っ赤な火の輪が薪の外側に奔って、同時に十字架をおおい尽くす白煙が噴き上がった。
群衆から驚きの声が上がったが、悪魔の所業か神の御業かと、戸惑いが大勢を占めている。天に向かって噴き上げる煙に注意を奪われて、下人のひとりが梯子を抱えて煙の中へ駆け込んだのも、下級兵士の服装をした男が別の方角から突入したのも、ほとんどの者は気づかなかった。
下級兵士の服装をした男は、手早く上着を脱ぎ捨てた。男は梯子を駆け登って、十字架の頂部に立った。下の者から投げ上げられた奇妙な道具を受け止めて、それを口に当てた。
上腕ほどの長さの末広がりの筒が三本、左右に広がっている。それは拡声筒というよりも、悪魔の牙のように見えた。
「聞け、人の子らよ!」
筒に反響して歪んだ声が、広場に轟き渡った。人の子という場合、基督教徒にとって第一義的には救世主を示すが、複数形で使えば――話者が人外の存在であることを暗示する。少なくとも、群衆も貴顕もそのように受け取った。聖職者は、もうすこしだけ分別があったかもしれない。
「我はメスマン君主国よりの使者である」
噴き上がった煙はすでに薄れ、十字架の頂部に立つ男の全貌が群衆の目に曝されている。裸の上半身に描かれた東方風の文様が、三連の拡声筒と相俟って、男を人外の存在に見せかけている。
「この娘は、フィションク王国から我が君に献上された寵姫である。故に、我が君は奪われた寵姫を取り返す。人の子らよ、我が君の所有物を掠取した罪に慄くがよい!」
群衆の中から二人の男が走り出る。梯子を支えていた下人が途中まで登って、アクメリンを縛している鎖を手斧で断ち切った。ずり落ちるアクメリンの裸身を、駆け寄った二人が受け止める。
「何をしている、衛兵。あやつらは異教徒だ。成敗せよ! 魔女を奪われるな!」
エクスターシャが実はアクメリンであり、魔女ではないと知悉しているゼメキンスが、真っ先に我に還って拡声筒に負けぬほどの大音声で怒鳴った。
群衆の整理に当たっていた衛兵が、てんでに槍や短剣を構えて十字架目がけて突進した――その刹那、下の二人がアクメリンを地面に放りだすと、懐から握り拳の倍ほどの大きさの玉を取り出し、突き出ている短い紐を小さな箱に押しつけてから、殺到する衛兵に向かって転がした。
ひと呼吸をおいて。
バガアンッ!
バガアンッ!
玉が破裂して、炎と煙が噴き上げる。飛び散った破片で傷ついた兵士もいたが、驚天動地の出来事に兵も群衆も逃げ惑う。
水で薄めた葡萄酒と干し肉を挟んだ麺包を売っていた屋台馬車が、いつの間に支度を調えていたのか、二頭の馬をつなぎ天板はかなぐり捨てて、馬体で群衆を掻き分けながら、処刑台の手前へ馳せつけた。
十字架から飛び降りた立役者とその相方がアクメリンを馬車に放り込み、みずからも乗り込む。爆裂弾を投じた二人は馬車の先に立って、群衆に向かって突進した。
聖なる書物の記述もかくや。人の海がまっぷたつに割れて――馬車は、無人の野を突っ走るごとく。広場を突っ切り、大門に続く広路を駆け抜ける。
大門を護る衛兵からも、広場の方角から噴き上げる煙は見えていた。なにやら騒動が持ち上がっているらしいのも聞こえていた。しかし、その渦中の阿鼻叫喚は知らない。こちらへ向かって駆けてくる人馬を認めれば、広場の騒ぎと考え合わせて、それなりの迎撃体制を敷く。大門を閉じて、手前に十人を配置して、城の上には五張の長弓。
しかし、先手を取ったのは馬車のほうだった。荷台に立ちはだかった二人が半弓を射た。鏃が異様に太い。その鏃の後ろから白煙が噴き出した。
シュウウウウウ……白煙を引きながら弧を描くこともなく一直線に飛翔した矢は弓兵から逸れたが、その後方で爆裂弾同様に破裂した。
パアアン!
パアアン!
肝を潰した弓兵が、呆然としているうちに、馬車が間合いを詰める。先頭を駆ける二人が両手に、棍棒にしては細く木刀にしては太い得物を握った。
ブシュウウ……二本の棒から、赤い煙と黄色い煙が噴き出す。まさに、地獄の劫火と硫黄の煙を撒き散らす悪魔の軍勢――と、兵士たちの目には映った。
算を乱して逃げ惑う兵士を蹴散らし、前衛の二人が開け放った大門を、悠々と馬車は駆け抜けた。そのまま街道を東へと進む。いつしか、馬車の前後には十騎ばかりが隊列を組んでいた。服装はまちまちだが、その服装にふさわしい態度を取り繕おうとはしていない。明らかに統制の取れた部隊であった。
アクメリンは荷馬車の上で意識を取り戻したが、そのときには手足を緩く縛られたうえで袋に押し込められていた――ので、救け出されてどこかへ運ばれているのか、焼け死んで墓地へと運ばれているのかも、最初のうちは分からなかった。やがて袋から出されて縄を解かれて、気付けの酒を与えられたあたりで、生き永らえたとは知ったのだが。しかし、アクメリンの問い掛けには無言が返されるのみだった。
昼は袋に詰められて馬車で運ばれ、夜は袋から出されても馬車の荷台を天板でふさがれて、地面に降り立てるのは、朝晩二回の排泄のときだけ。
アクメリンを拐ったのか救出したのか、その男たちが交わす会話に耳を澄ましても、異教徒国の言葉らしく、一言半句も理解できなかった。
この男たちは西方の言葉を話せないのだろうと、アクメリンは半ば確信するに至った。しかし、それにしても。人語を介さない家畜や愛玩動物にさえ、なにくれと話し掛けるのが人の習性であってみれば。何か含むところがあるのも、間違いはないであろう。
不安はあったが、アクメリンは逃げようなどと考えなかった。
魔女として焚刑に処されていたはずの、この身。あるいは――簒奪など試みなかったとしても、海賊どもに大嵐の海に連れ出されて海神への生贄にされていたかもしれない。いずれにしても、ここにこうして生きているのが間違いに思える。
アクメリンは意識を失っていたので、広場での騒動は見聞きしていないが、男たちが異教徒ならば――メスマン首長国の君主が寵姫を奪還しようと事を起こしたのかもしれない。と、かなりに正鵠を得た推測もしていた。それならば、紆余曲折はあったものの、終わり良ければ全て善し……でも、なかった。生贄の牝山羊を奪われたデチカンが、どう出るか。フィションクにどう対処するか。ひいては、リョナルデ家がどうなるか。それが気懸かりではあった。
しかし、そのことを含めて、アクメリンはあれこれ思い悩むことはやめた。我が身は無力なれど、それなりに我が身を犠牲にして父母兄姉を護ろうとしたのだ。ここらあたりで、一切を(我らのか異国のかはともかく)神の御手に委ねてもよいのではないかしら。曲がりなりにも死線を乗り越えて、そんなふうに達観――せざるを得なかった。
袋詰めにされはしたが、傷の手当てもきちんとされていた。医術は東のほうが、西よりもはるかに進んでいる。正確には、西方では古典国家の時代から万事が退歩している。
四日目からは、アクメリンは馬車の荷物ではなくなって、馬の背で運ばれた。逃げられぬように、手首を鞍壷に縛りつけられ、落ちぬように馬腹をまわして足首も縛られたが。
しかし、なによりもアクメリンが驚きながら喜んだのは――裸身を隠すための布を与えられたことだった。傷は風に当てておいたほうが治りが早いと信じられていたから、衣服と呼べるほどの代物ではなかった。乗馬の妨げにならないように丈の短い腰巻と、乳房が揺れて傷に障らないための胸巻。
すっかり全裸に狎らされていたアクメリンは、久しぶりに女の羞恥を取り戻した。そして、それは――当時の人間にしてはそれほど短命ともいえない彼女の生涯において、恥部を隠すという贅沢に与れた、最後の日々であった。
一行はアクメリンを乗せた馬を追い立てて。一か月ほどもかけて、アクメリンが歩かされたり引きずられたりした道を六日で駆け抜けた。
アルイェットのある半島からさほど遠くない海岸から小舟で漕ぎ出して、沖繋りしている二檣三角帆の快速船でメスマンへと渡った。
そこからは、また馬で――アクメリンは救出されて二週間と経たないうちに、メスマンの首都アリエザラムの土を(裸足で)踏んだのだった。
そして、せっかくの布切れを剥ぎ取られて、直ちに投獄された。
========================================

残念ながら、上のようなシーンはないです。
終章は、前編のヒロイン(エクスターシャ)と後編のヒロイン(アクメリン)が牢獄の中で再会して。
あっさりと公開処刑され……る直前。
「誰か、この女たちに死罪よりも厳しい罰を与えようと思う者はいるか」
という名目で、競売が始まります。
あちこちに焼印を捺され、乳首とクリにはでかい穴を明けられ、鞭痕も半永久的に残りそうなアクメリンは
「金貨十枚から始める……声が掛からんな。では、八枚……五枚でどうだ。誰も名乗り出ぬなら処刑しかないぞ」
で、買い取られて。買主(飼主になります)は、買い取った女罪人をどんなふうに処罰するか、群衆に納得させなければなりません。鉱山でケコロ(蹴って転がして抱く)くらいでは、ブーイングの嵐。昼は男と同じに重労働を課して、ノルマを達成できなければ、飯抜きと鞭打ちと、他にも鉱夫からリクエストがあれば、その罰も追加。
まあ『偽りの殉難~香世裸責』の二番か三番煎じです。
一方のエクスターシャは、
「二十枚……三十枚……」と競り上がるところへ。
「金貨百枚だ」と、暴虐な専制君主セセイン・シュンク・ボギャックの歳の離れた甥で暫定太子である、バイでリバでサドなバリバイ・デサド・セセインが鶴の一声。
「わたしは、ぜったいにまけません」と宣言して、ぶちのめされ気絶しても降参しなかったエクスターシャを、負けを認めるまで毎日痛め付け、さらには君主の寵姫を弄辱した罪を(寵姫たちに玩具にさせて)償わせる――と宣告して、拍手喝采。
それぞれ、新たな悦虐と淫虐の場へ連行されるシーンで、一巻の終わりと相成る予定です。
さて、書き始めるとしましょう。
疾走するベクトル感覚(Ⓒ平井和正……ちょい違)を緩めてじっくり腰を据えて書き込むか、このまま突っ走るか。尾道どの道、今日(OFF)で目処を着けて、明後日のOFFは40秒×5なら決勝進出ですが。その次のOFFの25,26で脱稿でしょう。
今回は、後編の最後を御紹介……ですが。爆裂弾は転がるわ、ロケット兵器は飛び交うわと、PLOT段階では考えてもいなかったスペクタクルアクションになっちゃいました。いえね。いきなり飛び出した近代兵器でもないですよ。前編でも後編でも、「大砲がこの地に伝わるのは半世紀後」とか書いて――西方社会では知られていなくても、中近東ならばという微弱な(巧まずして)伏線はありましたし。狼煙通信で赤い煙とか描写して、ケミストリーの発達を暗示したり。うん、そういうことにしときます。
しかし、好き勝手に書いてるなあ……
========================================
処刑執行直後の救出
アクメリンは円環の晒し台から降ろされ、地上に寝かされている十字架に鎖で縛りつけられた。釘で手足を固定するのは古の処刑作法であるが、救世主と同じでは畏れ多いとして、基督教では(明文規定こそないが)禁止されている。
アクメリンを磔けた十字架が立てられて。十字架のまわりに薪が並べられていく。積み上げるというほど多くはない。
死刑を司るのは聖職者であっても、実際に手を下すのは下人である。ゼメキンス子飼の三人がマライボとズブアで執行に携わったのは――あれは処刑ではなく、強弁すれば教会の慈善事業であるから、話は異なっている。
下人は被差別的な扱いを受けているか、罪人の烙印を捺された者がほとんどである。だから、肌の浅黒い者が混じっていても、人目を引かない。下人の一人が、小さな樽から石炭の粉のような物を撒きながら、十字架を取り囲んだ薪のまわりをぐるりと巡っても――ゼメキンスは教会が手配した者だと考えるし、教会から公式に任命された処刑執行人はゼメキンスの独走かと苦々しく黙認する。つまりは、指揮系統のねじれにつけこまれたわけだが、話を先へ進めよう。
準備万端調って。フィションク準王国第二王女たるエクスターシャ・コモニレルを魔女として処刑する旨が宣せられて。刑吏が松明を持って十字架の前に進み出て。その火が薪に転じられた途端。
しゅぼおおおおおおおおおっ……!
真っ赤な火の輪が薪の外側に奔って、同時に十字架をおおい尽くす白煙が噴き上がった。
群衆から驚きの声が上がったが、悪魔の所業か神の御業かと、戸惑いが大勢を占めている。天に向かって噴き上げる煙に注意を奪われて、下人のひとりが梯子を抱えて煙の中へ駆け込んだのも、下級兵士の服装をした男が別の方角から突入したのも、ほとんどの者は気づかなかった。
下級兵士の服装をした男は、手早く上着を脱ぎ捨てた。男は梯子を駆け登って、十字架の頂部に立った。下の者から投げ上げられた奇妙な道具を受け止めて、それを口に当てた。
上腕ほどの長さの末広がりの筒が三本、左右に広がっている。それは拡声筒というよりも、悪魔の牙のように見えた。
「聞け、人の子らよ!」
筒に反響して歪んだ声が、広場に轟き渡った。人の子という場合、基督教徒にとって第一義的には救世主を示すが、複数形で使えば――話者が人外の存在であることを暗示する。少なくとも、群衆も貴顕もそのように受け取った。聖職者は、もうすこしだけ分別があったかもしれない。
「我はメスマン君主国よりの使者である」
噴き上がった煙はすでに薄れ、十字架の頂部に立つ男の全貌が群衆の目に曝されている。裸の上半身に描かれた東方風の文様が、三連の拡声筒と相俟って、男を人外の存在に見せかけている。
「この娘は、フィションク王国から我が君に献上された寵姫である。故に、我が君は奪われた寵姫を取り返す。人の子らよ、我が君の所有物を掠取した罪に慄くがよい!」
群衆の中から二人の男が走り出る。梯子を支えていた下人が途中まで登って、アクメリンを縛している鎖を手斧で断ち切った。ずり落ちるアクメリンの裸身を、駆け寄った二人が受け止める。
「何をしている、衛兵。あやつらは異教徒だ。成敗せよ! 魔女を奪われるな!」
エクスターシャが実はアクメリンであり、魔女ではないと知悉しているゼメキンスが、真っ先に我に還って拡声筒に負けぬほどの大音声で怒鳴った。
群衆の整理に当たっていた衛兵が、てんでに槍や短剣を構えて十字架目がけて突進した――その刹那、下の二人がアクメリンを地面に放りだすと、懐から握り拳の倍ほどの大きさの玉を取り出し、突き出ている短い紐を小さな箱に押しつけてから、殺到する衛兵に向かって転がした。
ひと呼吸をおいて。
バガアンッ!
バガアンッ!
玉が破裂して、炎と煙が噴き上げる。飛び散った破片で傷ついた兵士もいたが、驚天動地の出来事に兵も群衆も逃げ惑う。
水で薄めた葡萄酒と干し肉を挟んだ麺包を売っていた屋台馬車が、いつの間に支度を調えていたのか、二頭の馬をつなぎ天板はかなぐり捨てて、馬体で群衆を掻き分けながら、処刑台の手前へ馳せつけた。
十字架から飛び降りた立役者とその相方がアクメリンを馬車に放り込み、みずからも乗り込む。爆裂弾を投じた二人は馬車の先に立って、群衆に向かって突進した。
聖なる書物の記述もかくや。人の海がまっぷたつに割れて――馬車は、無人の野を突っ走るごとく。広場を突っ切り、大門に続く広路を駆け抜ける。
大門を護る衛兵からも、広場の方角から噴き上げる煙は見えていた。なにやら騒動が持ち上がっているらしいのも聞こえていた。しかし、その渦中の阿鼻叫喚は知らない。こちらへ向かって駆けてくる人馬を認めれば、広場の騒ぎと考え合わせて、それなりの迎撃体制を敷く。大門を閉じて、手前に十人を配置して、城の上には五張の長弓。
しかし、先手を取ったのは馬車のほうだった。荷台に立ちはだかった二人が半弓を射た。鏃が異様に太い。その鏃の後ろから白煙が噴き出した。
シュウウウウウ……白煙を引きながら弧を描くこともなく一直線に飛翔した矢は弓兵から逸れたが、その後方で爆裂弾同様に破裂した。
パアアン!
パアアン!
肝を潰した弓兵が、呆然としているうちに、馬車が間合いを詰める。先頭を駆ける二人が両手に、棍棒にしては細く木刀にしては太い得物を握った。
ブシュウウ……二本の棒から、赤い煙と黄色い煙が噴き出す。まさに、地獄の劫火と硫黄の煙を撒き散らす悪魔の軍勢――と、兵士たちの目には映った。
算を乱して逃げ惑う兵士を蹴散らし、前衛の二人が開け放った大門を、悠々と馬車は駆け抜けた。そのまま街道を東へと進む。いつしか、馬車の前後には十騎ばかりが隊列を組んでいた。服装はまちまちだが、その服装にふさわしい態度を取り繕おうとはしていない。明らかに統制の取れた部隊であった。
アクメリンは荷馬車の上で意識を取り戻したが、そのときには手足を緩く縛られたうえで袋に押し込められていた――ので、救け出されてどこかへ運ばれているのか、焼け死んで墓地へと運ばれているのかも、最初のうちは分からなかった。やがて袋から出されて縄を解かれて、気付けの酒を与えられたあたりで、生き永らえたとは知ったのだが。しかし、アクメリンの問い掛けには無言が返されるのみだった。
昼は袋に詰められて馬車で運ばれ、夜は袋から出されても馬車の荷台を天板でふさがれて、地面に降り立てるのは、朝晩二回の排泄のときだけ。
アクメリンを拐ったのか救出したのか、その男たちが交わす会話に耳を澄ましても、異教徒国の言葉らしく、一言半句も理解できなかった。
この男たちは西方の言葉を話せないのだろうと、アクメリンは半ば確信するに至った。しかし、それにしても。人語を介さない家畜や愛玩動物にさえ、なにくれと話し掛けるのが人の習性であってみれば。何か含むところがあるのも、間違いはないであろう。
不安はあったが、アクメリンは逃げようなどと考えなかった。
魔女として焚刑に処されていたはずの、この身。あるいは――簒奪など試みなかったとしても、海賊どもに大嵐の海に連れ出されて海神への生贄にされていたかもしれない。いずれにしても、ここにこうして生きているのが間違いに思える。
アクメリンは意識を失っていたので、広場での騒動は見聞きしていないが、男たちが異教徒ならば――メスマン首長国の君主が寵姫を奪還しようと事を起こしたのかもしれない。と、かなりに正鵠を得た推測もしていた。それならば、紆余曲折はあったものの、終わり良ければ全て善し……でも、なかった。生贄の牝山羊を奪われたデチカンが、どう出るか。フィションクにどう対処するか。ひいては、リョナルデ家がどうなるか。それが気懸かりではあった。
しかし、そのことを含めて、アクメリンはあれこれ思い悩むことはやめた。我が身は無力なれど、それなりに我が身を犠牲にして父母兄姉を護ろうとしたのだ。ここらあたりで、一切を(我らのか異国のかはともかく)神の御手に委ねてもよいのではないかしら。曲がりなりにも死線を乗り越えて、そんなふうに達観――せざるを得なかった。
袋詰めにされはしたが、傷の手当てもきちんとされていた。医術は東のほうが、西よりもはるかに進んでいる。正確には、西方では古典国家の時代から万事が退歩している。
四日目からは、アクメリンは馬車の荷物ではなくなって、馬の背で運ばれた。逃げられぬように、手首を鞍壷に縛りつけられ、落ちぬように馬腹をまわして足首も縛られたが。
しかし、なによりもアクメリンが驚きながら喜んだのは――裸身を隠すための布を与えられたことだった。傷は風に当てておいたほうが治りが早いと信じられていたから、衣服と呼べるほどの代物ではなかった。乗馬の妨げにならないように丈の短い腰巻と、乳房が揺れて傷に障らないための胸巻。
すっかり全裸に狎らされていたアクメリンは、久しぶりに女の羞恥を取り戻した。そして、それは――当時の人間にしてはそれほど短命ともいえない彼女の生涯において、恥部を隠すという贅沢に与れた、最後の日々であった。
一行はアクメリンを乗せた馬を追い立てて。一か月ほどもかけて、アクメリンが歩かされたり引きずられたりした道を六日で駆け抜けた。
アルイェットのある半島からさほど遠くない海岸から小舟で漕ぎ出して、沖繋りしている二檣三角帆の快速船でメスマンへと渡った。
そこからは、また馬で――アクメリンは救出されて二週間と経たないうちに、メスマンの首都アリエザラムの土を(裸足で)踏んだのだった。
そして、せっかくの布切れを剥ぎ取られて、直ちに投獄された。
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残念ながら、上のようなシーンはないです。
終章は、前編のヒロイン(エクスターシャ)と後編のヒロイン(アクメリン)が牢獄の中で再会して。
あっさりと公開処刑され……る直前。
「誰か、この女たちに死罪よりも厳しい罰を与えようと思う者はいるか」
という名目で、競売が始まります。
あちこちに焼印を捺され、乳首とクリにはでかい穴を明けられ、鞭痕も半永久的に残りそうなアクメリンは
「金貨十枚から始める……声が掛からんな。では、八枚……五枚でどうだ。誰も名乗り出ぬなら処刑しかないぞ」
で、買い取られて。買主(飼主になります)は、買い取った女罪人をどんなふうに処罰するか、群衆に納得させなければなりません。鉱山でケコロ(蹴って転がして抱く)くらいでは、ブーイングの嵐。昼は男と同じに重労働を課して、ノルマを達成できなければ、飯抜きと鞭打ちと、他にも鉱夫からリクエストがあれば、その罰も追加。
まあ『偽りの殉難~香世裸責』の二番か三番煎じです。
一方のエクスターシャは、
「二十枚……三十枚……」と競り上がるところへ。
「金貨百枚だ」と、暴虐な専制君主セセイン・シュンク・ボギャックの歳の離れた甥で暫定太子である、バイでリバでサドなバリバイ・デサド・セセインが鶴の一声。
「わたしは、ぜったいにまけません」と宣言して、ぶちのめされ気絶しても降参しなかったエクスターシャを、負けを認めるまで毎日痛め付け、さらには君主の寵姫を弄辱した罪を(寵姫たちに玩具にさせて)償わせる――と宣告して、拍手喝采。
それぞれ、新たな悦虐と淫虐の場へ連行されるシーンで、一巻の終わりと相成る予定です。
さて、書き始めるとしましょう。
Progress Report 6:生贄王女と簒奪侍女
Progress Report 0 →
Progress Report 5 →
ちまちまと書き進めています。
勤務中の休憩とか手隙のときのほうが破瓜が逝ったりします。フリーセルも紙飛行機も無いですから。
ともかくも。『拷虐の四:浄化儀式』を尻切れトンボで終わらせて。『拷虐の五:重鎖押送』に取り掛かりましょうか。
ということで、Part4(2万8千文字)を一挙公開。たぶん、後で手を入れるでしょう。
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拷虐の四:浄化儀式
拷問小屋に入ってきたのは、見知らぬ三人の男たちだった。ひとりは役人らしい、こざっぱりした服装。あとのふたりは、素肌に布の胴着と継当てだらけの半袴。中流以下の家庭に雇われている使用人か、もっと若ければ徒弟といったところだが、場所柄を考えれば拷問吏だろう。
ひとりの囚人が引き出されて、鎖で宙吊りにされた。ゼメキンスがアクメリンに施すような、残酷だが趣向に富んだ吊り方ではない。
「ゴケットよ。おまえが押入りの犯人だというのは、目撃証人もおるから、動かぬところだ。仲間の名を言え。そうすれば、重追放で済むように弁護してやる。おまえひとりで罪をかぶるつもりなら、斬首は免れないぞ」
役人の説得に、ゴケットと呼ばれた男は沈黙で答える。
「そうか。まずは鞭打ちからだ」
役人は拷問小屋の隅に置かれた小机に座って。拷問吏のひとりが、鞭を握ってゴケットの背後に立った。
その鞭を見て、アクメリンは囚人に同情した。マライボでゼメキンスがアクメリンに使った鞭と、形も長さも似ている。だが、鞭の先から半分には短い針が編み込まれていた。苦痛も大きいに決まっているが、あんな凶器で叩かれたら肌が裂けてしまう。
ぶゅんん、バヂイン!
「ぎゃああっ……!」
男だけあって、腹の底から揺すぶられるような野太い悲鳴。
ぶゅんん、バヂイン!
ぶゅんん、バヂイン!
ぶゅんん、バヂイン!
たった四発で、ゴケットの背中は切り刻まれて、切り裂かれた肌がべろんと垂れた。
ぶゅんん、バヂイン!
ぶゅんん、バヂイン!
次の二発で、それが千切れ飛んだ。
「待ってくれ!」
ゴケットが、早々に音を上げた。
「なあ……おれが重追放なら、相棒も首を斬られたりはしねえよな?」
「弁護はしてやるが、約束はできんぞ。御裁きは市長殿がなさるんだからな」
「…………」
ぶゅんん、バヂイン!
ぶゅんん、バヂイン!
「やめてくれ! 言うよ、言うから!」
ゴケットはあっさりと降参して、共に押し入った男と、外で見張りをしていた女の名前を挙げた。それで、彼の取調は終わり。血だらけの背中をそのままで服を着せられ、別の小役人の手で外へ引き出された。裁判は仲間と揃って受けるはずだから、拷問設備のない獄舎へ移されるのだろう。
小休止を挟んで、次に引き出されたのはロシヒトという、面構えからして堅気ではない中年の男だった。酒の上の諍いで隣人を殺して、それは男も認めている。殺そうとして危害を加えたのか、喧嘩が過ぎて殺してしまったのか。故意の有無が問われていた。男にしてみれば、死刑か重追放かの岐路である。
ロシヒトは先のゴケットと同じ鞭打ち切裂きの拷問に掛けられて――三十発を超えたところで息絶えた。失血による死ではなく、心臓が破裂したのかもしれない。遺骸は服を着せられて運び出された。それからどう処理されるのかは、アクメリンには分からないし、知りたくもなかった。
拷問で殺してしまったのだから、後の処理もいろいろある。役人は小机の上で何枚かの書類を認め、その間、二人の拷問吏は、若い娘の裸体をじっくり見物する役得に与った。
最後に、ヒューゴという青年への拷問が始まる。姉の亭主の家に放火した嫌疑が掛けられているが、先の二人と違って目撃者はいない。すでに幾度も拷問に掛けられていて、身体じゅう傷だらけだ。
「僕があいつを憎んでいたのは、誰だって知っている。この手で殺してやりたかった。でも、姉さんが寝ている家に火を点けるなんて、そんな馬鹿なことをするはずがない」
青年の真摯な訴えを聞くうちに、これは冤罪に違いないとアクメリンは信じた。冤罪といえば、彼女自身もそうなのだが――自身の悪だくみが招いた結果だから、まったくの無罪ではない。
青年も、先のふたりと同様に宙吊りにされた。しかし、鞭ではなかった。膝の高さほどに煉瓦が四か所に積み上げられて、その上に一辺が二歩長ばかりの正方形の鉄板が置かれた。四つの大きな火皿に石炭が灼熱されて、鉄板の下に差し入れられた。しばらくすると、鉄板の表面で煙が燻り始める。拷問吏が手桶に半分ほどの水をぶちまけると、あまり蒸気は上がらず、小さな水の玉がぱりぱりと音を立てながら転げ回った。鉄板は赤く灼けてはいないが、水が沸騰するよりはるかに高温になっている。
「火を点けたのは、おまえだな」
「そんなに、僕を罪に落としたいのか。どんなに責められたって、僕は無実だ」
青年を吊っている鎖が緩められて――鉄板の上に裸足が着いた。
「熱いッ!」
青年が跳ねた。が、すぐに足の裏が鉄板に落ちる。
「熱いッ……くそッ……僕は無実だ!」
叫びながら、ぴょんぴょん跳びはねる。跳び上がるために踏ん張ることすらできず、片足ずつ上げては、熱さに耐えかねて足を踏み替える。凄まじい速さで踊っているような仕草だった。
「熱い、やめてくれ、うあああっ!」
すぐに青年の足元から青白い煙が立ち昇り始める。悲鳴の合間に、じゅうっと肉の焼ける音が混じる。
さらに鎖が緩められて。その重みで腕が垂れて身体の釣合を崩して、青年が転倒した。
「ぎゃああっ……助けて!」
灼けた鉄板の上を転げ回って、あわや転落の寸前に鎖が引き上げられた。ぐきっと鈍い音がして、肩の一方がはずれたらしく、身体が一方に傾いた。
振り子のように揺れる身体を役人が押さえて止めて。拷問吏が二人がかりで、また青年を鉄板の上に吊り下ろす。
「やめろ! 僕は無実だ!」
叫びながら踊り狂う青年。
はっと、役人が入口を振り返った。威儀を正して、きらびやかな法服に向かって頭を下げた。
「申し訳ありません。まだ片付かない罪人が残っておりまして」
ゼメキンスは鷹揚に頷いて。
「左様か。世俗の罪を明らかにするのも大切じゃからの。されど……」
「はい、心得ております」
青年への拷問は直ちに中断されて。二人の拷問吏に抱えられて、全裸のまま拷問小屋から連れ去られた。役人が青年の衣服を火皿に投げ入れる。
「ふむ……」
青年には二度と服を着せる必要がない――罪を自白させて死刑に処すか、さもなければ拷問で責め殺すという役人の意思を、ゼメキンスは読み取っただろうが、それには何も言わない。地方都市の行政にまで枢機卿猊下が口を挟むのは筋違いである。しかし、もっと細々とした事柄には口も手も出す。
下役人に青年を引き渡して戻ってきたふたりが鉄板を片付けに掛かると。
「そのままにしておきなさい。まさか、この地にカンカン踊りの舞台があったとは知らなんだ」
せっかくの道具立てだから、アクメリンも舞台に立たせるという意味だ。
註記:この拷問は、日本では『猫踊り』と称されている。
また、拷問ではなく『ええじゃないか』や『風流(ふりゅう)』の系譜である『看看踊(かんかんのう)』がある。
これらと『フレンチ・カンカン』を混ぜこぜにして『カンカン踊り』とした。
聞いていたアクメリンは即座に理解して――震え上がった。青年の苦悶を目の当たりにしている。肉の焦げる臭いまで嗅いでいる。これまでの拷問が遊びにしか思えないくらいに残酷で苦痛に満ちている。
水平の吊りから下ろされて、あらためて腕を垂らしたまま後ろ手に縛られる。
「なぜ、私に……わらわを、責めるのじゃ。わらわは王女エクスターシャであると、認めておるではないか?」
ゼメキンスの脚本に従っているのに責められる理由がわからなかった。
「おまえは基督者か?」
あっと思った。ゼメキンスは、王女を異端者として、信仰を捨てて異教に奔った者として処罰するのだと、最初から言っていた。いきなり決めつけられはしたが、彼女自身はそれを自白していない。
どう答えれば拷問を免れるだろうか。それを考える。信仰を捨てていないと答えれば、灼けた鉄板の上に立たされる。基督者であることを棄てたと答えれば――デチカンで焚刑に処せられるにしても、とにかく今日は焼かれずに済む。
「わらわは、神の教えを裏切った。嫁ぐ異郷の地の神を受け容れた」
せいぜい王女らしい言葉遣いで、ゼメキンスが望む通りの『自白』をしたつもりだったが。彼の求める答は、遥かに大きかった。
「異教徒に嫁ぐのは、父親の差し金じゃな。つまりは、父親も異端者。国王が異端者なら、国そのものが教会に背いていると考えて間違いあるまい」
十字軍。アクメリンの脳裡を、その言葉が掠めた。
十字軍は、なにも東方の異教徒に向けて発せられるとは限らない。聖地の奪回が目的とは限らない。西方社会全体に布令を出さなくても十字軍は起こせる。具体的には――リャンクシー王国とタンコシタン公国に勅許を与えれば、両国は共同してフィションク準王国を滅ぼすだろう。そこに、教会あるいは西方社会全体にとって、どのような利益があるのかまでは、政治とは無縁の男爵隷嬢などには見当もつかないのだが。
フィションクが滅びれば、リョナルデ家も共に滅びる。一族郎党、殺されなくても庶民どころか奴隷にまで堕とされかねない。淫奔な女を後妻に迎える王家などに、アクメリンはたいして忠誠心を持ち合わせてはいないけれど――実家が没落するとなると。
「違う……!」
咄嗟に否定はしたものの、後の言葉が続かない。
「違うとな。何が違うというのじゃ?」
エクスターシャ個人とメスマン首長国とのつながりを……そんな虚構は、砂で造った城壁よりも脆い。それでも……
「父は、メスマンに傭兵を頼んだだけじゃ。メスマンは裏切りを恐れて人質を求めた。父王の体面もあって、輿入れの形を取ったが、基督の教えは棄てたりせぬ。わらわは……メスマンに求められて、異郷の神に帰依はしたが……」
「では、神を謀ろうとしたのか。異教徒に成り下がるより、いっそう邪悪な異端ではないか」
「…………」
神の教えに関して、田舎貴族の小娘が枢機卿に太刀打ちできるはずもない。
アアクメリンが言葉に詰まると、ゼメキンスは拷問を始めるための台詞を口にした。
「真実を自白するには、厳しい尋問が必要らしいの」
ぢゃりりりと鎖が鳴って、アクメリンの腕が斜め後ろへじ引き上げられていく。アクメリンは自然と後退さるのだが、鉄板の手前に立つガイアスが尻を押し返す。
その場でアクメリンの腕が水平よりも高くねじ上げられ、上体が前へ倒れていく。やがて、上体を起こしても倒しても鎖を引っ張ってしまう均衡点に達して。アクメリンはつま先立ちになり、ついには足が床から浮いた。
「きひいっ……肩が抜ける!」
アクメリンの訴えを無視して、鎖は引かれ続ける。
アクメリンの足が鉄板より高く浮いてから、ガイアスがゆっくりと手を放す。
それでも、アクメリンの身体は振り子のように大きく揺れて、肩にいっそうの力が掛かる。
「きゃああっ……」
悲鳴は、苦痛のせいだけではない。目に見えている何もかもが大きく揺れるのは――ぶらんこ遊びとは似ていても、大きな恐怖だった。
ホナーとリカードが、長い棒でアクメリンの裸身を押し返して、揺れを止めた。その不快な痛みを気にするどころではない。
ちりちりと焼けるような熱気に、アクメリンは包まれた。
ホナーが手桶の水を鉄板に撒いた。
ジュワアアッ……ヒューゴのときと違って、凄まじい水蒸気が立ち昇った。
ぎゅっと心臓を捻じ千切られるような恐怖。実はずっと鉄板の温度が下がっているからこその現象なのだが、錬金術(現代の化学と物理) の知識など持たないアクメリンには、それが分かるはずもない。
註記:物理学的基礎体力の無い読者は『ライデンフロスト』で検索してください。筆者は読者に、嗜虐癖、被虐妄想(ヒロインへの感情移入)、倒錯性愛指向の共有を期待していますが、科学的素養の共有までは求めていません。上から目線。
もっとも、肉の表面がすぐに焼け焦げるか、しっとりした肉感を保ちながら中まで火が通るかの違いしかないのだが。
「よろしい――下ろせ」
ちゃり、ちゃり、ちゃり……徐々にアクメリンの足が鉄板に近づいていって。
「熱いッ……」
つま先が触れるや否や、アクメリンは足を跳ね曲げた。鎖が止まる。
「しゃんと立て。それとも、脛肉を焼かれたいか」
ゼメキンスの言う通りだった。足を曲げたまま吊り下ろされれば、灼けた鉄板の上に座り込む形になってしまう。皮膚の分厚い足の裏を焼かれるほうが、苦痛は幾らかでも小さいだろう。
アクメリンは、断崖絶壁から身を投げるほどの決心で、脚を伸ばした。熱いというより、焼床鋏(やっとこ)で肉をつねられたような激痛。
「痛いッ!」
先に痛みを感じたほうの足を跳ね上げた。途端に、鉄板を踏んでいるほうの足にいっそうの熱痛が奔って、踏み替える。すると、勢いよく下ろしたせいで、足の裏を身の重み以上に押しつけてしまう。
じゅっ……足の裏に、肉の焼ける音が伝わって、アクメリンは恐慌に陥った。
「いたいッ……あつッ……ひいいッ!」
アクメリンは悲鳴を上げながら、狂ったように足を踏み替える。あまりの激しさに乳房が揺れ、亜麻色の長い髪が宙に踊る。
肩に負担を掛けるのを覚悟して、後ろへねじられた腕を支えにして腰を曲げれば、両足が宙に浮くのだが、それを思いつく裕りもない。もっとも、そうしたところで、さらに鎖を緩められるだけなのだが。
「いやあッ……あつい、いたい……ゆるして……」
国王が神に背き、国を挙げて異教に帰依した。そう証言すれば、赦してもらえるだろうか。そんな考えが頭を掠めて、あわてて打ち消す。我が身が焼き滅ぼされるのは――王女の身分を簒奪して、異郷の国王の妾に成り下がろうとした、あまりに厳し過ぎはするけども、その罰と諦めもつく。けれど、家族には何の罪も無い。
「あああっ……あつい……いやあああっっ!」
デチカンで処刑されるのだから、この場で殺されるはずがない。もしも足が焼けてしまえば、荒野を歩かされることも見世物として市街を引き回されることもなくなる。そういった小賢しい打算は脳裡に浮かばず。足の裏の熱痛から逃れるだけのために、アクメリンは跳ね踊り続けた。息が切れて悲鳴も途絶え、心臓は胸全体に轟くほどに早鐘を打ち……全身から飛び散る汗が鉄板に落ちて蒸発する音が、踊りの激しさに不釣合なささやかな伴奏となって。
五分、あるいは十分も経っただろうか。ふっと身体が軽くなったのを、アクメリンは感じた。苦しさが、すうっと消えた。足の裏には熱痛が突き刺さっているけれど、駆け足よりも早く足を踏み替えていれば、いつまでも持ち堪えられそうな気になってきた。
アクメリンは悲鳴を叫ぼうともせずに踊り続ける。身体を動かせば動かすほど軽くなってゆき、楽になってゆく。いや、心地好くなる。そして、頭は――雲は散り霧も消えて、どこまでも透き通っていって、故郷の家族も自身の運命も、次はどんな拷問に掛けられるのだろうかという恐怖さえも消え失せて。アクメリンは無心に踊り続ける。その顔には、苦悶ではなく見誤りようもない恍惚が浮かんでいた。
註記:(今回はしつこいな)ニュートンが発見する以前から林檎は地面に向かって落下していたと同様に、中世においてもランナーズ・ハイは存在した。それは、おそらく神の恩寵もしくは悪魔憑きと理解されたであろうが。
「ふうむ……」
ゼメキンスが難しい顔で首を横に振った。
「こやつ、もしや本物の魔女かもしれぬ。じゃとすれば、二十年ぶりじゃわい」
これまでにゼメキンスが主導して断罪してきた魔女の数だけでも十指に余る。そのことごとくが、ただ一人を除いて無実であったという、重大な告白ではあった。
「とは――以前にうかがった、シセゾン家のマイでしたか。彼女以来の?」
聖ヨドウサ修道院でゼメキンスの片腕を務めていたことのあるガイアスが訳知り顔で水を向けた。
「うむ。ホナーとリカルドには話しておらなんだな。マイという娘は子爵家の次女――よほどの証拠がなければ魔女審問に掛けることなど出来ぬのじゃが」
アクメリンの踊り狂う様を注意深く観察しながら、ゼメキンスは手短かに話す。
マイは、子供を産める身体になって半年も経たぬうちに女になったという。それからは、弟ほどの年齢から父親よりも歳上まで、貴族だけでなく使用人とも、娼婦もかくやといわんばかりの男漁りに耽ったという。父親の意見も折檻も、聞く耳も沁みる身も持たぬ。ついには(当然ながら)女子修道院へ送られたのだが。
マイは修道院で、我が身を鞭打つ修行にのめり込んだ。我が手では生ぬるいし鞭を避けようとするからと、先輩に頼んで縄で縛られ鞭打ってもらい――いつしか、男女の交わりにおける男性の役割までも求めるようになっていった。明らかに修行からの逸脱であり、神の教えに背く行ないであった。修道院は彼女に対して魔女の疑いを持ち、審問の技術に定評のある聖ヨドウサ修道院に処置を委ねた。
「きゃああっ……!」
疲れを知らぬが如くに踊り狂っていたアクメリンだが、体力の消耗は極限に達していた。足をもつらせて、灼けた鉄板の上に倒れ込む――寸前を、鎖に引き留められた。
膝を突く寸前を、ぢゃららららっと鎖に引き上げられて。修道僧が手加減したのか、アクメリンの身体がヒューゴより柔らかかったからか、肩を脱臼することもなかった。
「あああああ……」
頭をのけぞらせて、恍惚と呻くアクメリン。全身が汗に絖っている。
手が滑車に届くほどに吊り上げて、ガイアスが足の裏の火傷を調べる。
「生焼けです。食べると腹に虫が湧くでしょう」
ホナーとリカードが苦笑する。
「歩かせるのは難しいかな?」
ガイアスも無駄口はやめてゼメキンスに答える。
「数日は。以後も十日ばかりは、裸足はよろしくないかと」
ゼメキンスは肩をすくめただけだった。
足の裏の火傷にも、万能薬たる錬金術の秘薬と薬草を混ぜた泥が塗られて、火酒を染ませた布が巻かれた。細菌の存在を知らず消毒の概念が無くとも、経験則による手当ては、それほど的を外していない。錬金術の秘薬の正体にもよるが。
アクメリンは、三人の男たちが押し込まれていた檻に放り込まれた。中腰で三歩は歩ける広さだから、マライボに比べればずいぶんと待遇は改善されている。
「針による探査も、まるきり効かなんだ」
途切れていた回想を、ゼメキンスが唐突に再開した。是非とも後輩に語り継いでおきたいという熱意の表われだろうか。
「念のために目隠しをして、手が肌に触れぬよう気をつけて刺したのじゃが、どこを刺しても痛みを訴える」
「……?」
それが普通なのではと、ホナーもリカードも拍子抜けした顔。
「ところが、その娘はとんでもないことを言いおった。もっと全身をくまなく深く刺して、魔女の証がどこにもないと、潔白を証してください――とな」
針による探査が終わったとき、マイの肌のどこに一本の指を当てても、針傷に触れぬところは無くなっていた。彼女はほじくらずとも見分けられる悪魔の淫茎を持っていたが、そこに針を突き刺されると、ひときわ凄絶な悲鳴を上げた。
「ところが、切なそうな余韻を嫋々と引きずりよる。このアクメ……こほん、エクスターシャと同じようにな」
ゼメキンスは図らずも、捕らえた娘がエクスターシャの身代わりだと承知していることを暴露しかけたが、それは三人の修道僧もとっくに承知しているだろう。きっちり言い直したのは、体裁というやつである。話を戻す。
マイは、さまざまな審問に掛けられたが、そのすべてに耐え抜いた。のではなく、悦んだといったほうが当たっているだろう。
鞭打たれれば泣き叫びながら、みずから脚を開いて股間を曝し胸を突き出して鞭を誘った。木馬に乗せれば、わざと暴れて股間を傷つけ、血液に染まった粘い蜜をこぼした。乳首と悪魔の陰淫を焼鏝で潰されたときは、聞き誤りようのない喜悦の声と共に失神した。女穴も尻穴も『苦悶の梨』に引き裂かれてさえ、凄絶な咆哮には艶があった。
「父御(修道院長)も、本物の魔女と対峙したのは、それが初めてじゃった」
偽の王女への拷問など児戯に等しい過酷な責めが十日の余も続けられて、マイは命を落とした。死してなおマイは魔女の姿を隠し通して、その死顔はさながら聖母マリアのようであったと――ゼメキンスは述懐した。
「そのような苛烈な拷問に耐えたことこそ、魔女である動かぬ証拠ではあったがな」
水に浮かんで生き延びれば魔女、沈んで溺れ死ねば魔女ではないという理屈と通底した、どう転んでも被疑者は助からない論理だった。
「この娘がマイに劣らぬほどの魔女であるか、すぐに露見する詐欺を目論んだ小悪魔に過ぎぬかは――これから、じっくりと見定めてくれよう」
気を失っている檻の中のアクメリンを見詰めながら、ゼメキンスが呟く。次の拷問をどんな苛虐にするか、想を改めているのだろう。
「まずは夕餉じゃ。こやつにも、黴の生えた麺包と肉片がこびりついた骨くらいは与えておけ。親切に食べさせてやるまでもないぞ」
アクメリンの世話係みたいな形になっているガイアスが、おどけた仕種を交えて胸に十字を切った。
――檻の中で失神から覚めたアクメリンは、床に転がされている麺包と骨、そして水を入れた椀に気づいた。渇きを癒そうと椀を手に取って半分ほども飲み、人心地の欠片なりとも取り戻して、ふっと考えた。空腹を感じるどころではないし、そうだとしても、こんな塵芥も同然の代物など口にしたくもない。けれど、手を付けなかったら――それを口実に、飢え死に寸前まで食べ物を与えてもらえなくなるのではなかろうか。そんな卑屈な考えをするまでに、アクメリンの心は挫かれていた。
アクメリンは乾き切った麺包を水にふやかして食べ、骨もわずかにこびりついている肉片を歯でこそぎ取った。惨めさに涙するくらいに、残飯は美味だった。悔し涙をこぼすくらいには、心を喪っていなかった。
そうして、さらに時は過ぎて。ついに四人の拷問者が戻って来た。リカードの持つ角灯に、四人の姿が悪鬼羅刹めいて浮かび上がる。その顔が赤く見えるのは、灯りのせいだけでもないだろう。彼らは救世主の肉だけでなく、その血もしこたま聞こし召したに違いない。
酔っ払って手加減を間違えるのではないだろうかと――アクメリンは取り越し苦労をする。生かしてデチカンへ連行して、裁判で公式に王女を弾劾する手筈が――狂ったところで、アクメリンにとっては苦しむ時間が短くなるだけだというのに。
しかしゼメキンスには、すくなくとも今夜のところは、拷問を再開する意図は無いらしかった。
「魔女の嫌疑は晴れておらぬし、施した封印も効き目が薄いようじゃ。もしも、おまえが清めの儀式をみずから進んで受け容れるなら、今宵は安らかに憩わせてやろう」
どうじゃなと問われて。
清めると称してこれまでに為された仕打ちを思い返せば、何を求められているかは、もはや乙女とはアルイェットからデチカンよりも隔たっているアクメリンには、明白だった。問題は、どのような『安らぎ』を与えられるかだった。楽をさせてやると言って、十字架を逆さに馬で引きずったり、絡繰が全身を凌辱する馬車に乗せたり――今にして思えば、馬車はたしかに(惨めだけど凄絶な)快感だったけれど。
しかし何をされるにしても、ゼメキンスに逆らえば、いっそう酷い目に遭わされるだけだ。
「どうか、わらわを清めてたもれ」
王女として振る舞う必要を思い出すくらいには、気力も甦っていた。
アクメリンは檻から引き出されて――縛られもしなかったし、枷で拘束もされなかった。かつてない扱いに、手持ち無沙汰を持て余して仕方なく両手で前を隠して立ちすくんでいると。目の前の床に手桶と金属の筒が置かれた。筒は浣腸器だった。この時代には(拷問や羞恥責めの器具ではなく)ありふれた医療器具だから、マライボで見たそれと大同小異であっても、何の不思議もない。
マライボのときと同様に、四人が手桶に放[尺水]したが、ゼメキンスがわざとらしく首を傾げる。
「これでは量が足りぬな。増やしてくれぬか、王女殿下?」
ちっとも遠回しな言葉ではなかった。そして、その行為に対する羞恥心は相当に薄れていた。アクメリンがわずかにためらったのは、聖職者のそれに被嫌疑者である自分のそれを混ぜても良いのかという畏れだった。
とはいえ。理性では「まさか」と否定していても、女の本能は男の性的嗜虐を察知している。従わないとどうなるかは、恐怖が覚えている。
アクメリンは手桶をまたいでしゃがんだ。四人が手桶を、つまりアクメリンを取り囲んでいるので、無意識の媚が、アクメリンをゼメキンスに正対させた。枢機卿猊下に尻を向けるなんて失礼はできないという常識的な意識も働いた。貴いお方に向かって放●する非礼は常識の範疇外だった。
アクメリンが立ち上がると、この拷問部屋にも備え付けられている水責め用の大桶から、ホナーが別の手桶で水を足した。さらにリカードが小さな壺の中身を垂らす。白く懸濁した何かの油――と理解するだけの素養は、アクメリンにはなかった。リカードは短い棒で手桶を掻き回してから、後ろへ下がった。
四人が無言でアクメリンの挙措を見詰めている。
アクメリンは浣腸器を手に取って、手桶の『水』を吸い上げた。把手をいっぱいに引いても半分も入らなかった。
しかし。吸い込んだはいいが、そこで途方に暮れた。浣腸器の中ほどをつかんで手を後ろへ回してみたものの、嘴管を尻穴にあてがうのも手探り。押し込むのは難しい。もし成功したところで、手をいっぱいに伸ばしても把手に届かない。
アクメリンは顔を上げて助けを求めるようにゼメキンスを見たが、嗜虐の笑みに跳ね返された。
アクメリンは四つん這いになって再度試みたが、浣腸器を水平に保つのも難しい。
どうすれば……ふっと思いついたのは薪だった。小屋に納めてあるときは寝かしているが、使う前には立てて斧で割る。貧乏貴族の娘だから、見て知っている。エクスターシャには想像もつかないことだろう。こんな境遇に落ちても、まだ王女と張り合っている。
アクメリンは把手を床に着けて、浣腸器を垂直に立てた。その上に腰を下ろすと、嘴管は自然と尻穴に当たった。さらに、じわっと腰を沈めると――把手が押されて、液体が漏れ出る。慌てて、急に腰を落とした。
ずぶうっと、嘴管が尻穴を貫く。
「痛いっ……」
小さな悲鳴は、自身への甘えだった。どんなにささやかな呟きであっても、鞭や木馬と同じ言葉を使うのは大仰に過ぎると自覚していた。
嘴管は深々と尻穴を抉って、生ぬるい汚水を腹の奥へ注入した。押子が筒の奥に突き当たって止まった。その瞬間から、猛烈な便意に襲われた。しかし。
「まだまだ残っておるぞ。入れてしまわんか」
アクメリンは大急ぎで空の浣腸器を満たして、二本目を注入する。勢い余って、尻穴のまわりから汚水が飛び散ったが、そこまではゼメキンスも咎めない。
すでに便意は限界を超えていた。
「お許しくださいっっ……」
まだ突き刺さったまなの浣腸器を噴き飛ばして。
ぶじゃあああっ……ぶりりり……
水も固形物も一挙に迸らせた。
「あああ……」
床にうずくまって、両手で顔をおおった。かえって羞ずかしさが募る。手も足も拘束されて、他人の手で浣腸されて、目をつむるしか羞恥から逃れられないほうが、よほどましだと、アクメリンは知った。
そして。手も足も自由なのに、他人の手を払いのけられない屈辱も。アクメリンはさらに二回、これは清水を注入されては噴出を繰り返させられた。
どこの拷問部屋もそうなっているのだろう。床にこぼされた水(と、汚物)は、わずかな傾斜に沿って奥へ集められ、小さな開口部から外へ流れ出た。
排泄に伴う軽い虚脱に陥っているアクメリンは、分厚い木の板で作られた拷問台の前へ引っ張られた。そこにはホナーが、自分の腕を枕にして仰臥していた。股間も寝ている。
「清めてほしいと、みずから願い出たのであろう。どうすれば良いか、分かっておるはずじゃ」
分かっていなかった。けれど、その言葉で分かってしまった。アクメリンはホナーの横に跪いて、右手を股間へと伸ばした。
その手を、傍らに立っていたゼメキンスが細い木の笞で叩いた。
「横着をするな。口を使え」
アクメリンは唇を噛んだ。身体を様々な形にねじ曲げられて、三つの穴に男根を突っ込まれるのは、受け身である。けれど、みずから挿れにいくなんて……久しぶりに、かあっと羞恥が燃え上がった。
しかし。拒めば、酔いの勢いにまかせた凄まじい拷問が始まるに決まっている。アクメリンは顔をホナーの腰の上に伏せた。むわあっと男の体臭が鼻を衝いて、息を詰めた。
初めてじっくりと眺める男性の器官。もちろんアクメリンは、手鏡に自身の股間を映して観察するようなはしたない真似はしたことがない。彼女が目にしたことのある女性の器官は、マライボで拷問されていたジョイエとニレナの二人だけ。ジョイエはともかくニレナのそこは、複雑怪奇な形状をしていた。肥大した割れ目の縁から皺の寄った二枚の肉片がはみ出ていて、その上端の合わせ目からは、悪魔の淫茎だという小さな突起が覗いていて……
それに比べると、なんと単純な形だろうか。ただ一本の棒。先端は蕾のようにすぼまっているが、太く長く勃起して、中から傘の開いていない茸みたいな赤黒い本体が現われると、醜悪で狂暴に見える――のは、それが女を辱しめる凶器だと知っているからだろう。
さらにしばらくためらってから、アクメリンは男の股間に顔を埋めた。手を使うなと言われたのだから、犬の真似をするしかなかった。
とうとう咥えてしまった。けれど、そこからどうすれば、このでろんとした腸詰肉より柔らかい棒を怒張させられるかが分からない。マライボの拷問小屋でされたときのことを思い出して、頭を上下に揺すってみた。口の中で肉棒がぐにょぐにょ蠢くが、それ以上の変化は起きない。ホナーが必死に聖句を暗誦しているなど、アクメリンには分からないし、知ったところで、勃起現象が起きない事実との関連は分からないだろう。膣穴への(過激な)刺激で逝くことは覚えても、男の放水はさんざん見せつけられていても、勃起する過程を目撃したのは、せいぜい二三回なのだ。
焦っていると、頭をつかまれた。
「そんなのでは、勃たない。舌を使え、唇もだ」
唇で包皮を押し下げて、茸の傘の縁を舌で舐めろ。裏側にある縦筋もだ。歯に唇をかぶせて、先端から根元まで呑み込みながら甘噛みをしろ。唇をすぼめて、水を啜り込むように息を吸え。先端の割れ目を舌先でくすぐれ。
娼婦でも使わないような技を、次々とホナーが命令する。
アクメリンは言われるがままに、口全体で男根を愛撫した。その甲斐あって、腸詰肉がしなやかな木の棒に変じて、ついには火傷しそうに熱い鉄杭にまでなった。
男の体臭がいっそう濃密になってくるが、なぜか不快感は消え失せて、股間に熱い滴りを感じる。
ぴしやんと尻を叩かれて、次の所作を求められていると理解した。寝ている男と媾合うにはどうすれば良いかは、ついさっき、自身に浣腸を施した経験が役に立った。
アクメリンは男に向かい合って、腰の上にしゃがんだ。怒張の根元を右手に持って、覗き込みながらその上に腰を落としていく。先端が淫裂を割るのが、見えた。怒張が股の奥でぬらっと滑る感触があって、穴に嵌まり込んだのが分かった。
「はああ……」
男の腰に座りこんで、アクメリンは息を吐いた。羞ずかしいという感情より、うまく出来たという達成感が大きかった。
ホナーが、また尻を叩いた。
「じっとしていては清められんぞ。入口から奥の院まで、くまなく抜き挿しするのだ」
アクメリンは腰を浮かして怒張を抜去し、すぐに挿れ直して奥まで突き通した。それを何度もくり返すうちに、いちいち抜いてしまうとやりにくいと分かり、自然と腰遣いを覚えていった。
「次は、拙僧を勃たせてもらおう」
リカードが頭髪をつかんで、アクメリンの上体を押し下げた。
目の前に突き付けられた、これも萎びた男根をアクメリンは咥えて、ホナーに教わったばかりの仕種を繰り返す。その間、腰の動きは止まっているが、ホナーは何も言わないし尻を叩きもしない。
じゅうぶんに勃起すると、リカードはアクメリンの背後から拷問台に上がり、両手で腰をつかんで尻穴に怒張をあてがった。
色責め馬車でさんざんに経験したことだから、アクメリンは驚かない。前にホナーを挿れたままリカードに後ろを貫かれて、さすがに軽く呻いたが、苦悶の響きはない。むしろ、ふたつの穴を同時に貫かれることに充足を覚える。
そして、ガイアスまでもがアクメリンの前に立った。
ああ、そうかと――アクメリンは自然と理解した。言われる前に、みずから上体を倒してガイアスを咥えた。
リカードに両手首をつかまれて後ろへ引き上げられると、アクメリンの上体は宙に泳いで、それだけみずからの意思では身体を動かしにくくなった。手綱に操られている馬を、アクメリンは連想した。
リカードが大きな動作で腰を動かし始めた。アクメリンの身体が前後に揺すられて、口中のガイアスも跨っているホナーも、自然とアクメリンを責める。
過激な調教で性感を開発されているアクメリンは、官能に火を点じられた。模造男根と違って生身の肉棒は、適度の弾力で穴をいっぱいに満たす。馬車と違って、肉棒の動きは一致しているのだが、それを物足りないとは感じなかった。排泄の穴だけではなく、言葉を発し命の源を摂り入れる穴までも犯されているという思いが、背徳と屈辱を燃えがらせて――悦辱へと変貌していく。
「もぼおおお……おお、おおお……」
自然と漏れるくぐもった呻きは、はっきりと艶を帯びている。
アクメリンの下になっているホナーが右手を伸ばして、焼印の先端で根元を焼かれ釘で傷つけられている淫核を摘まんだ。
「むぶううっ……!」
怒張を咥えたまま、アクメリンが激痛に呻いた。しかしホナーは、いっそう強く摘まむと――爪を立てながら強く捻じった。
「ぎゃ……ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっ!」
アクメリンは悲鳴をあげたのだが、ガイアスに頭をつかんで腰を押しつけられて、くぐもった叫びになった。
「あ゙あ゙あ゙あ゙……や゙え゙え゙え゙え゙え゙っっっ!」
しかし、リカードはいっそう激しく尻穴に抽挿を繰り返す。ガイアスは肩に手を掛けてアクメリンの裸身を激しく揺すぶる。
三つの穴をこねくられ抽挿されるうちに、淫核が純粋な快楽の器官としての働きを取り戻して、激痛をそのまま快感にすり替えていく。
「み゙い゙い゙い゙い゙い゙っ……いいいっっっ!!」
苦痛と快感とが綯い交ぜになりながら、頂を抜けて、さらに雲の上へと押し上げられるアクメリン。こうしてアクメリンは、相反する感覚がひとつの官能に止揚される境地を教え込まれたのだった。
びくんびくんびくんと、アクメリンの背中が痙攣して。やがて、全身から力が抜けた。三人の男たちはそれを見届けてから――三つの穴に白濁をぶちまけた。
意識を失ったアクメリンは、拷問台から転がし落とされても、地獄か天国か定かでない暗黒の中を漂っている。跡始末もされないまま檻に放りこまれて、それで清めの儀式は終わったのだが。
翌日には、昨夜に与えた快楽の代償だといわんばかりの、激痛一辺倒の加虐が待ち構えていた。
これまでと違って、拷問は朝のうちから始まった。アクメリンは拷問部屋の壁に立てかけた分厚い板を背にして両手両足を広げて立たされた。喉、手首、肘、胸の下、腰、太腿、膝、足首――関節という関節を、大小の鎹に挟まれて板に縫いつけられた。まさに、ぴくりとも身体を動かせない。
「おまえが魔女であることには疑義が残っておるが、神の教えを捨てた異端者であることは、自身で認めておるな?」
今さらの尋問に、アクメリンはどう答えるのが得策――もっとも苦痛が少ないかを考えてみたが。ゼメキンスの意向に逆らうべきではないという、当然の結論に行き着いただけだった。
「……そうじゃ。わらわは、異郷の神の教えに帰依したのじゃ。しかし、今では悔い改めておる」
「遅い!」
ゼメキンスが一喝する。
「一度でも神を裏切った者は、二度三度と裏切るに決まっておる」
「…………」
「よって、デチカンでの裁判に俟つまでもなく、おまえは異教徒として断罪される。その判決文を、おまえの身体に刻んでおいてやろう」
リカードが、手に持っていた長い鉄棒をアクメリンに向かって突きつけた。鉄棒の先には鉄板が取り付けられていて――鏡文字が浮かび上がっている。頭の中で正字に読み替えなくても、アクメリンにはすぐ読めた。乳首に吊るされていた文字“Heretic”だ。それが異端者という意味だとも、すでに知っている。
「あああ……」
アクメリンは絶望を呻いたが、拒否の言葉は口にしなかった。素直に受け容れるか、拷問の果てに受け容れさせられるか――雁字搦めに拘束されているのだから、その二者択一すら、許されていない。
まだ組まれたままになっているカンカン踊りの舞台下からリカードが火皿を取り出し、石炭を足して火を熾し始める。
「わらわは、もはや死罪は免れぬのじゃな……」
エクスターシャとしての言葉遣いを強いられるうちに、絶望の嘆きさえ素に戻らなくなっている。
「祖国を道連れにしてな。なんと、豪勢な死出の旅路よ」
「陛下は無実じゃ。神を裏切ったのは、わらわひとりの考えじゃ!」
ゼメキンスは狡そうに嗤う。
「それについては、デチカンで改めて審問する。今は、おまえの処置だけじゃ」
国を挙げての背教をエクスターシャが証言するまで、拷問は繰り返されるのかと、アクメリンは絶望に絶望を重ねる。
「凸凹があっては、焼印の文字が崩れるな」
ゼメキンスの言葉を受けて、リカードが二本の細い鎖を取り出した。一端には小さな鉄球がぶらさがり、反対側は鎖の輪がC形に開いている。その輪が、釘に貫通されてふさがっていないアクメリンの乳首に通された。
「ひいいい……」
乳首が引き伸ばされ、乳房全体が年増女のように垂れた。
「まさか……?!」
凸凹がどうのこうのという話から、この仕打ち。焼印がどこに捺されようとしているのか、分かりたくなくても悟ってしまう。
ゼメキンスが火床から焼印を取り出した。鉄板に浮かび上がる文字は、煙も出ないほどに白熱している。
「しかし……おまえは異教徒らしからぬ形(なり)をしておるな」
ゼメキンスは焼印を腋の下に近づけた。そこにも濃密に繁茂している亜麻色の毛が、ぱっと燃え上がった。
「熱いっ……」
股間の毛を焼かれたときは炎が上へ逃げたが、腋の下で火を燃やせば二の腕まで焼かれる。さいわいに、すぐ燃え尽きたので火傷にまではならずに済んだのだが。
ゼメキンスは、下腹部にも焼印を近づけた。焼かれて後に芽吹いていた草叢も、また焼け野原と化してしまう。こちらは、短い毛を焼こうとして、肌に触れるほど近づけたので、ぽつぽつと火脹れになってしまった。
「体毛を無くすなど、異教徒の嗜みは我らには理解しがたい」
嘯きながら、ゼメキンスの眼は有るべき物が無い部分から離れない。そういう嗜癖もあるのだろうか。
「もう一度熱くしましょうか?」
冷めすぎるのを懸念して、リカードが声を掛ける。
「いや、これくらいのほうが、傷の治りが早かろう」
ゼメキンスは半歩下がって、焼印を持ち変えた。柄を立てて、刻印の鉄板を乳房の真上にかざす。
「あああ、あ……」
アクメリンは顔を背けて瞼を固く閉じた。
焼印が上乳に押しつけられて、じゅうっと肉を焦がす。
「ぎゃあああああっっっ……!」
アクメリンの喉から迸った悲鳴は、純粋の苦痛を訴えていた。
十字架の焼印と
Progress Report 5 →
ちまちまと書き進めています。
勤務中の休憩とか手隙のときのほうが破瓜が逝ったりします。フリーセルも紙飛行機も無いですから。
ともかくも。『拷虐の四:浄化儀式』を尻切れトンボで終わらせて。『拷虐の五:重鎖押送』に取り掛かりましょうか。
ということで、Part4(2万8千文字)を一挙公開。たぶん、後で手を入れるでしょう。
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拷虐の四:浄化儀式
拷問小屋に入ってきたのは、見知らぬ三人の男たちだった。ひとりは役人らしい、こざっぱりした服装。あとのふたりは、素肌に布の胴着と継当てだらけの半袴。中流以下の家庭に雇われている使用人か、もっと若ければ徒弟といったところだが、場所柄を考えれば拷問吏だろう。
ひとりの囚人が引き出されて、鎖で宙吊りにされた。ゼメキンスがアクメリンに施すような、残酷だが趣向に富んだ吊り方ではない。
「ゴケットよ。おまえが押入りの犯人だというのは、目撃証人もおるから、動かぬところだ。仲間の名を言え。そうすれば、重追放で済むように弁護してやる。おまえひとりで罪をかぶるつもりなら、斬首は免れないぞ」
役人の説得に、ゴケットと呼ばれた男は沈黙で答える。
「そうか。まずは鞭打ちからだ」
役人は拷問小屋の隅に置かれた小机に座って。拷問吏のひとりが、鞭を握ってゴケットの背後に立った。
その鞭を見て、アクメリンは囚人に同情した。マライボでゼメキンスがアクメリンに使った鞭と、形も長さも似ている。だが、鞭の先から半分には短い針が編み込まれていた。苦痛も大きいに決まっているが、あんな凶器で叩かれたら肌が裂けてしまう。
ぶゅんん、バヂイン!
「ぎゃああっ……!」
男だけあって、腹の底から揺すぶられるような野太い悲鳴。
ぶゅんん、バヂイン!
ぶゅんん、バヂイン!
ぶゅんん、バヂイン!
たった四発で、ゴケットの背中は切り刻まれて、切り裂かれた肌がべろんと垂れた。
ぶゅんん、バヂイン!
ぶゅんん、バヂイン!
次の二発で、それが千切れ飛んだ。
「待ってくれ!」
ゴケットが、早々に音を上げた。
「なあ……おれが重追放なら、相棒も首を斬られたりはしねえよな?」
「弁護はしてやるが、約束はできんぞ。御裁きは市長殿がなさるんだからな」
「…………」
ぶゅんん、バヂイン!
ぶゅんん、バヂイン!
「やめてくれ! 言うよ、言うから!」
ゴケットはあっさりと降参して、共に押し入った男と、外で見張りをしていた女の名前を挙げた。それで、彼の取調は終わり。血だらけの背中をそのままで服を着せられ、別の小役人の手で外へ引き出された。裁判は仲間と揃って受けるはずだから、拷問設備のない獄舎へ移されるのだろう。
小休止を挟んで、次に引き出されたのはロシヒトという、面構えからして堅気ではない中年の男だった。酒の上の諍いで隣人を殺して、それは男も認めている。殺そうとして危害を加えたのか、喧嘩が過ぎて殺してしまったのか。故意の有無が問われていた。男にしてみれば、死刑か重追放かの岐路である。
ロシヒトは先のゴケットと同じ鞭打ち切裂きの拷問に掛けられて――三十発を超えたところで息絶えた。失血による死ではなく、心臓が破裂したのかもしれない。遺骸は服を着せられて運び出された。それからどう処理されるのかは、アクメリンには分からないし、知りたくもなかった。
拷問で殺してしまったのだから、後の処理もいろいろある。役人は小机の上で何枚かの書類を認め、その間、二人の拷問吏は、若い娘の裸体をじっくり見物する役得に与った。
最後に、ヒューゴという青年への拷問が始まる。姉の亭主の家に放火した嫌疑が掛けられているが、先の二人と違って目撃者はいない。すでに幾度も拷問に掛けられていて、身体じゅう傷だらけだ。
「僕があいつを憎んでいたのは、誰だって知っている。この手で殺してやりたかった。でも、姉さんが寝ている家に火を点けるなんて、そんな馬鹿なことをするはずがない」
青年の真摯な訴えを聞くうちに、これは冤罪に違いないとアクメリンは信じた。冤罪といえば、彼女自身もそうなのだが――自身の悪だくみが招いた結果だから、まったくの無罪ではない。
青年も、先のふたりと同様に宙吊りにされた。しかし、鞭ではなかった。膝の高さほどに煉瓦が四か所に積み上げられて、その上に一辺が二歩長ばかりの正方形の鉄板が置かれた。四つの大きな火皿に石炭が灼熱されて、鉄板の下に差し入れられた。しばらくすると、鉄板の表面で煙が燻り始める。拷問吏が手桶に半分ほどの水をぶちまけると、あまり蒸気は上がらず、小さな水の玉がぱりぱりと音を立てながら転げ回った。鉄板は赤く灼けてはいないが、水が沸騰するよりはるかに高温になっている。
「火を点けたのは、おまえだな」
「そんなに、僕を罪に落としたいのか。どんなに責められたって、僕は無実だ」
青年を吊っている鎖が緩められて――鉄板の上に裸足が着いた。
「熱いッ!」
青年が跳ねた。が、すぐに足の裏が鉄板に落ちる。
「熱いッ……くそッ……僕は無実だ!」
叫びながら、ぴょんぴょん跳びはねる。跳び上がるために踏ん張ることすらできず、片足ずつ上げては、熱さに耐えかねて足を踏み替える。凄まじい速さで踊っているような仕草だった。
「熱い、やめてくれ、うあああっ!」
すぐに青年の足元から青白い煙が立ち昇り始める。悲鳴の合間に、じゅうっと肉の焼ける音が混じる。
さらに鎖が緩められて。その重みで腕が垂れて身体の釣合を崩して、青年が転倒した。
「ぎゃああっ……助けて!」
灼けた鉄板の上を転げ回って、あわや転落の寸前に鎖が引き上げられた。ぐきっと鈍い音がして、肩の一方がはずれたらしく、身体が一方に傾いた。
振り子のように揺れる身体を役人が押さえて止めて。拷問吏が二人がかりで、また青年を鉄板の上に吊り下ろす。
「やめろ! 僕は無実だ!」
叫びながら踊り狂う青年。
はっと、役人が入口を振り返った。威儀を正して、きらびやかな法服に向かって頭を下げた。
「申し訳ありません。まだ片付かない罪人が残っておりまして」
ゼメキンスは鷹揚に頷いて。
「左様か。世俗の罪を明らかにするのも大切じゃからの。されど……」
「はい、心得ております」
青年への拷問は直ちに中断されて。二人の拷問吏に抱えられて、全裸のまま拷問小屋から連れ去られた。役人が青年の衣服を火皿に投げ入れる。
「ふむ……」
青年には二度と服を着せる必要がない――罪を自白させて死刑に処すか、さもなければ拷問で責め殺すという役人の意思を、ゼメキンスは読み取っただろうが、それには何も言わない。地方都市の行政にまで枢機卿猊下が口を挟むのは筋違いである。しかし、もっと細々とした事柄には口も手も出す。
下役人に青年を引き渡して戻ってきたふたりが鉄板を片付けに掛かると。
「そのままにしておきなさい。まさか、この地にカンカン踊りの舞台があったとは知らなんだ」
せっかくの道具立てだから、アクメリンも舞台に立たせるという意味だ。
註記:この拷問は、日本では『猫踊り』と称されている。
また、拷問ではなく『ええじゃないか』や『風流(ふりゅう)』の系譜である『看看踊(かんかんのう)』がある。
これらと『フレンチ・カンカン』を混ぜこぜにして『カンカン踊り』とした。
聞いていたアクメリンは即座に理解して――震え上がった。青年の苦悶を目の当たりにしている。肉の焦げる臭いまで嗅いでいる。これまでの拷問が遊びにしか思えないくらいに残酷で苦痛に満ちている。
水平の吊りから下ろされて、あらためて腕を垂らしたまま後ろ手に縛られる。
「なぜ、私に……わらわを、責めるのじゃ。わらわは王女エクスターシャであると、認めておるではないか?」
ゼメキンスの脚本に従っているのに責められる理由がわからなかった。
「おまえは基督者か?」
あっと思った。ゼメキンスは、王女を異端者として、信仰を捨てて異教に奔った者として処罰するのだと、最初から言っていた。いきなり決めつけられはしたが、彼女自身はそれを自白していない。
どう答えれば拷問を免れるだろうか。それを考える。信仰を捨てていないと答えれば、灼けた鉄板の上に立たされる。基督者であることを棄てたと答えれば――デチカンで焚刑に処せられるにしても、とにかく今日は焼かれずに済む。
「わらわは、神の教えを裏切った。嫁ぐ異郷の地の神を受け容れた」
せいぜい王女らしい言葉遣いで、ゼメキンスが望む通りの『自白』をしたつもりだったが。彼の求める答は、遥かに大きかった。
「異教徒に嫁ぐのは、父親の差し金じゃな。つまりは、父親も異端者。国王が異端者なら、国そのものが教会に背いていると考えて間違いあるまい」
十字軍。アクメリンの脳裡を、その言葉が掠めた。
十字軍は、なにも東方の異教徒に向けて発せられるとは限らない。聖地の奪回が目的とは限らない。西方社会全体に布令を出さなくても十字軍は起こせる。具体的には――リャンクシー王国とタンコシタン公国に勅許を与えれば、両国は共同してフィションク準王国を滅ぼすだろう。そこに、教会あるいは西方社会全体にとって、どのような利益があるのかまでは、政治とは無縁の男爵隷嬢などには見当もつかないのだが。
フィションクが滅びれば、リョナルデ家も共に滅びる。一族郎党、殺されなくても庶民どころか奴隷にまで堕とされかねない。淫奔な女を後妻に迎える王家などに、アクメリンはたいして忠誠心を持ち合わせてはいないけれど――実家が没落するとなると。
「違う……!」
咄嗟に否定はしたものの、後の言葉が続かない。
「違うとな。何が違うというのじゃ?」
エクスターシャ個人とメスマン首長国とのつながりを……そんな虚構は、砂で造った城壁よりも脆い。それでも……
「父は、メスマンに傭兵を頼んだだけじゃ。メスマンは裏切りを恐れて人質を求めた。父王の体面もあって、輿入れの形を取ったが、基督の教えは棄てたりせぬ。わらわは……メスマンに求められて、異郷の神に帰依はしたが……」
「では、神を謀ろうとしたのか。異教徒に成り下がるより、いっそう邪悪な異端ではないか」
「…………」
神の教えに関して、田舎貴族の小娘が枢機卿に太刀打ちできるはずもない。
アアクメリンが言葉に詰まると、ゼメキンスは拷問を始めるための台詞を口にした。
「真実を自白するには、厳しい尋問が必要らしいの」
ぢゃりりりと鎖が鳴って、アクメリンの腕が斜め後ろへじ引き上げられていく。アクメリンは自然と後退さるのだが、鉄板の手前に立つガイアスが尻を押し返す。
その場でアクメリンの腕が水平よりも高くねじ上げられ、上体が前へ倒れていく。やがて、上体を起こしても倒しても鎖を引っ張ってしまう均衡点に達して。アクメリンはつま先立ちになり、ついには足が床から浮いた。
「きひいっ……肩が抜ける!」
アクメリンの訴えを無視して、鎖は引かれ続ける。
アクメリンの足が鉄板より高く浮いてから、ガイアスがゆっくりと手を放す。
それでも、アクメリンの身体は振り子のように大きく揺れて、肩にいっそうの力が掛かる。
「きゃああっ……」
悲鳴は、苦痛のせいだけではない。目に見えている何もかもが大きく揺れるのは――ぶらんこ遊びとは似ていても、大きな恐怖だった。
ホナーとリカードが、長い棒でアクメリンの裸身を押し返して、揺れを止めた。その不快な痛みを気にするどころではない。
ちりちりと焼けるような熱気に、アクメリンは包まれた。
ホナーが手桶の水を鉄板に撒いた。
ジュワアアッ……ヒューゴのときと違って、凄まじい水蒸気が立ち昇った。
ぎゅっと心臓を捻じ千切られるような恐怖。実はずっと鉄板の温度が下がっているからこその現象なのだが、錬金術(現代の化学と物理) の知識など持たないアクメリンには、それが分かるはずもない。
註記:物理学的基礎体力の無い読者は『ライデンフロスト』で検索してください。筆者は読者に、嗜虐癖、被虐妄想(ヒロインへの感情移入)、倒錯性愛指向の共有を期待していますが、科学的素養の共有までは求めていません。上から目線。
もっとも、肉の表面がすぐに焼け焦げるか、しっとりした肉感を保ちながら中まで火が通るかの違いしかないのだが。
「よろしい――下ろせ」
ちゃり、ちゃり、ちゃり……徐々にアクメリンの足が鉄板に近づいていって。
「熱いッ……」
つま先が触れるや否や、アクメリンは足を跳ね曲げた。鎖が止まる。
「しゃんと立て。それとも、脛肉を焼かれたいか」
ゼメキンスの言う通りだった。足を曲げたまま吊り下ろされれば、灼けた鉄板の上に座り込む形になってしまう。皮膚の分厚い足の裏を焼かれるほうが、苦痛は幾らかでも小さいだろう。
アクメリンは、断崖絶壁から身を投げるほどの決心で、脚を伸ばした。熱いというより、焼床鋏(やっとこ)で肉をつねられたような激痛。
「痛いッ!」
先に痛みを感じたほうの足を跳ね上げた。途端に、鉄板を踏んでいるほうの足にいっそうの熱痛が奔って、踏み替える。すると、勢いよく下ろしたせいで、足の裏を身の重み以上に押しつけてしまう。
じゅっ……足の裏に、肉の焼ける音が伝わって、アクメリンは恐慌に陥った。
「いたいッ……あつッ……ひいいッ!」
アクメリンは悲鳴を上げながら、狂ったように足を踏み替える。あまりの激しさに乳房が揺れ、亜麻色の長い髪が宙に踊る。
肩に負担を掛けるのを覚悟して、後ろへねじられた腕を支えにして腰を曲げれば、両足が宙に浮くのだが、それを思いつく裕りもない。もっとも、そうしたところで、さらに鎖を緩められるだけなのだが。
「いやあッ……あつい、いたい……ゆるして……」
国王が神に背き、国を挙げて異教に帰依した。そう証言すれば、赦してもらえるだろうか。そんな考えが頭を掠めて、あわてて打ち消す。我が身が焼き滅ぼされるのは――王女の身分を簒奪して、異郷の国王の妾に成り下がろうとした、あまりに厳し過ぎはするけども、その罰と諦めもつく。けれど、家族には何の罪も無い。
「あああっ……あつい……いやあああっっ!」
デチカンで処刑されるのだから、この場で殺されるはずがない。もしも足が焼けてしまえば、荒野を歩かされることも見世物として市街を引き回されることもなくなる。そういった小賢しい打算は脳裡に浮かばず。足の裏の熱痛から逃れるだけのために、アクメリンは跳ね踊り続けた。息が切れて悲鳴も途絶え、心臓は胸全体に轟くほどに早鐘を打ち……全身から飛び散る汗が鉄板に落ちて蒸発する音が、踊りの激しさに不釣合なささやかな伴奏となって。
五分、あるいは十分も経っただろうか。ふっと身体が軽くなったのを、アクメリンは感じた。苦しさが、すうっと消えた。足の裏には熱痛が突き刺さっているけれど、駆け足よりも早く足を踏み替えていれば、いつまでも持ち堪えられそうな気になってきた。
アクメリンは悲鳴を叫ぼうともせずに踊り続ける。身体を動かせば動かすほど軽くなってゆき、楽になってゆく。いや、心地好くなる。そして、頭は――雲は散り霧も消えて、どこまでも透き通っていって、故郷の家族も自身の運命も、次はどんな拷問に掛けられるのだろうかという恐怖さえも消え失せて。アクメリンは無心に踊り続ける。その顔には、苦悶ではなく見誤りようもない恍惚が浮かんでいた。
註記:(今回はしつこいな)ニュートンが発見する以前から林檎は地面に向かって落下していたと同様に、中世においてもランナーズ・ハイは存在した。それは、おそらく神の恩寵もしくは悪魔憑きと理解されたであろうが。
「ふうむ……」
ゼメキンスが難しい顔で首を横に振った。
「こやつ、もしや本物の魔女かもしれぬ。じゃとすれば、二十年ぶりじゃわい」
これまでにゼメキンスが主導して断罪してきた魔女の数だけでも十指に余る。そのことごとくが、ただ一人を除いて無実であったという、重大な告白ではあった。
「とは――以前にうかがった、シセゾン家のマイでしたか。彼女以来の?」
聖ヨドウサ修道院でゼメキンスの片腕を務めていたことのあるガイアスが訳知り顔で水を向けた。
「うむ。ホナーとリカルドには話しておらなんだな。マイという娘は子爵家の次女――よほどの証拠がなければ魔女審問に掛けることなど出来ぬのじゃが」
アクメリンの踊り狂う様を注意深く観察しながら、ゼメキンスは手短かに話す。
マイは、子供を産める身体になって半年も経たぬうちに女になったという。それからは、弟ほどの年齢から父親よりも歳上まで、貴族だけでなく使用人とも、娼婦もかくやといわんばかりの男漁りに耽ったという。父親の意見も折檻も、聞く耳も沁みる身も持たぬ。ついには(当然ながら)女子修道院へ送られたのだが。
マイは修道院で、我が身を鞭打つ修行にのめり込んだ。我が手では生ぬるいし鞭を避けようとするからと、先輩に頼んで縄で縛られ鞭打ってもらい――いつしか、男女の交わりにおける男性の役割までも求めるようになっていった。明らかに修行からの逸脱であり、神の教えに背く行ないであった。修道院は彼女に対して魔女の疑いを持ち、審問の技術に定評のある聖ヨドウサ修道院に処置を委ねた。
「きゃああっ……!」
疲れを知らぬが如くに踊り狂っていたアクメリンだが、体力の消耗は極限に達していた。足をもつらせて、灼けた鉄板の上に倒れ込む――寸前を、鎖に引き留められた。
膝を突く寸前を、ぢゃららららっと鎖に引き上げられて。修道僧が手加減したのか、アクメリンの身体がヒューゴより柔らかかったからか、肩を脱臼することもなかった。
「あああああ……」
頭をのけぞらせて、恍惚と呻くアクメリン。全身が汗に絖っている。
手が滑車に届くほどに吊り上げて、ガイアスが足の裏の火傷を調べる。
「生焼けです。食べると腹に虫が湧くでしょう」
ホナーとリカードが苦笑する。
「歩かせるのは難しいかな?」
ガイアスも無駄口はやめてゼメキンスに答える。
「数日は。以後も十日ばかりは、裸足はよろしくないかと」
ゼメキンスは肩をすくめただけだった。
足の裏の火傷にも、万能薬たる錬金術の秘薬と薬草を混ぜた泥が塗られて、火酒を染ませた布が巻かれた。細菌の存在を知らず消毒の概念が無くとも、経験則による手当ては、それほど的を外していない。錬金術の秘薬の正体にもよるが。
アクメリンは、三人の男たちが押し込まれていた檻に放り込まれた。中腰で三歩は歩ける広さだから、マライボに比べればずいぶんと待遇は改善されている。
「針による探査も、まるきり効かなんだ」
途切れていた回想を、ゼメキンスが唐突に再開した。是非とも後輩に語り継いでおきたいという熱意の表われだろうか。
「念のために目隠しをして、手が肌に触れぬよう気をつけて刺したのじゃが、どこを刺しても痛みを訴える」
「……?」
それが普通なのではと、ホナーもリカードも拍子抜けした顔。
「ところが、その娘はとんでもないことを言いおった。もっと全身をくまなく深く刺して、魔女の証がどこにもないと、潔白を証してください――とな」
針による探査が終わったとき、マイの肌のどこに一本の指を当てても、針傷に触れぬところは無くなっていた。彼女はほじくらずとも見分けられる悪魔の淫茎を持っていたが、そこに針を突き刺されると、ひときわ凄絶な悲鳴を上げた。
「ところが、切なそうな余韻を嫋々と引きずりよる。このアクメ……こほん、エクスターシャと同じようにな」
ゼメキンスは図らずも、捕らえた娘がエクスターシャの身代わりだと承知していることを暴露しかけたが、それは三人の修道僧もとっくに承知しているだろう。きっちり言い直したのは、体裁というやつである。話を戻す。
マイは、さまざまな審問に掛けられたが、そのすべてに耐え抜いた。のではなく、悦んだといったほうが当たっているだろう。
鞭打たれれば泣き叫びながら、みずから脚を開いて股間を曝し胸を突き出して鞭を誘った。木馬に乗せれば、わざと暴れて股間を傷つけ、血液に染まった粘い蜜をこぼした。乳首と悪魔の陰淫を焼鏝で潰されたときは、聞き誤りようのない喜悦の声と共に失神した。女穴も尻穴も『苦悶の梨』に引き裂かれてさえ、凄絶な咆哮には艶があった。
「父御(修道院長)も、本物の魔女と対峙したのは、それが初めてじゃった」
偽の王女への拷問など児戯に等しい過酷な責めが十日の余も続けられて、マイは命を落とした。死してなおマイは魔女の姿を隠し通して、その死顔はさながら聖母マリアのようであったと――ゼメキンスは述懐した。
「そのような苛烈な拷問に耐えたことこそ、魔女である動かぬ証拠ではあったがな」
水に浮かんで生き延びれば魔女、沈んで溺れ死ねば魔女ではないという理屈と通底した、どう転んでも被疑者は助からない論理だった。
「この娘がマイに劣らぬほどの魔女であるか、すぐに露見する詐欺を目論んだ小悪魔に過ぎぬかは――これから、じっくりと見定めてくれよう」
気を失っている檻の中のアクメリンを見詰めながら、ゼメキンスが呟く。次の拷問をどんな苛虐にするか、想を改めているのだろう。
「まずは夕餉じゃ。こやつにも、黴の生えた麺包と肉片がこびりついた骨くらいは与えておけ。親切に食べさせてやるまでもないぞ」
アクメリンの世話係みたいな形になっているガイアスが、おどけた仕種を交えて胸に十字を切った。
――檻の中で失神から覚めたアクメリンは、床に転がされている麺包と骨、そして水を入れた椀に気づいた。渇きを癒そうと椀を手に取って半分ほども飲み、人心地の欠片なりとも取り戻して、ふっと考えた。空腹を感じるどころではないし、そうだとしても、こんな塵芥も同然の代物など口にしたくもない。けれど、手を付けなかったら――それを口実に、飢え死に寸前まで食べ物を与えてもらえなくなるのではなかろうか。そんな卑屈な考えをするまでに、アクメリンの心は挫かれていた。
アクメリンは乾き切った麺包を水にふやかして食べ、骨もわずかにこびりついている肉片を歯でこそぎ取った。惨めさに涙するくらいに、残飯は美味だった。悔し涙をこぼすくらいには、心を喪っていなかった。
そうして、さらに時は過ぎて。ついに四人の拷問者が戻って来た。リカードの持つ角灯に、四人の姿が悪鬼羅刹めいて浮かび上がる。その顔が赤く見えるのは、灯りのせいだけでもないだろう。彼らは救世主の肉だけでなく、その血もしこたま聞こし召したに違いない。
酔っ払って手加減を間違えるのではないだろうかと――アクメリンは取り越し苦労をする。生かしてデチカンへ連行して、裁判で公式に王女を弾劾する手筈が――狂ったところで、アクメリンにとっては苦しむ時間が短くなるだけだというのに。
しかしゼメキンスには、すくなくとも今夜のところは、拷問を再開する意図は無いらしかった。
「魔女の嫌疑は晴れておらぬし、施した封印も効き目が薄いようじゃ。もしも、おまえが清めの儀式をみずから進んで受け容れるなら、今宵は安らかに憩わせてやろう」
どうじゃなと問われて。
清めると称してこれまでに為された仕打ちを思い返せば、何を求められているかは、もはや乙女とはアルイェットからデチカンよりも隔たっているアクメリンには、明白だった。問題は、どのような『安らぎ』を与えられるかだった。楽をさせてやると言って、十字架を逆さに馬で引きずったり、絡繰が全身を凌辱する馬車に乗せたり――今にして思えば、馬車はたしかに(惨めだけど凄絶な)快感だったけれど。
しかし何をされるにしても、ゼメキンスに逆らえば、いっそう酷い目に遭わされるだけだ。
「どうか、わらわを清めてたもれ」
王女として振る舞う必要を思い出すくらいには、気力も甦っていた。
アクメリンは檻から引き出されて――縛られもしなかったし、枷で拘束もされなかった。かつてない扱いに、手持ち無沙汰を持て余して仕方なく両手で前を隠して立ちすくんでいると。目の前の床に手桶と金属の筒が置かれた。筒は浣腸器だった。この時代には(拷問や羞恥責めの器具ではなく)ありふれた医療器具だから、マライボで見たそれと大同小異であっても、何の不思議もない。
マライボのときと同様に、四人が手桶に放[尺水]したが、ゼメキンスがわざとらしく首を傾げる。
「これでは量が足りぬな。増やしてくれぬか、王女殿下?」
ちっとも遠回しな言葉ではなかった。そして、その行為に対する羞恥心は相当に薄れていた。アクメリンがわずかにためらったのは、聖職者のそれに被嫌疑者である自分のそれを混ぜても良いのかという畏れだった。
とはいえ。理性では「まさか」と否定していても、女の本能は男の性的嗜虐を察知している。従わないとどうなるかは、恐怖が覚えている。
アクメリンは手桶をまたいでしゃがんだ。四人が手桶を、つまりアクメリンを取り囲んでいるので、無意識の媚が、アクメリンをゼメキンスに正対させた。枢機卿猊下に尻を向けるなんて失礼はできないという常識的な意識も働いた。貴いお方に向かって放●する非礼は常識の範疇外だった。
アクメリンが立ち上がると、この拷問部屋にも備え付けられている水責め用の大桶から、ホナーが別の手桶で水を足した。さらにリカードが小さな壺の中身を垂らす。白く懸濁した何かの油――と理解するだけの素養は、アクメリンにはなかった。リカードは短い棒で手桶を掻き回してから、後ろへ下がった。
四人が無言でアクメリンの挙措を見詰めている。
アクメリンは浣腸器を手に取って、手桶の『水』を吸い上げた。把手をいっぱいに引いても半分も入らなかった。
しかし。吸い込んだはいいが、そこで途方に暮れた。浣腸器の中ほどをつかんで手を後ろへ回してみたものの、嘴管を尻穴にあてがうのも手探り。押し込むのは難しい。もし成功したところで、手をいっぱいに伸ばしても把手に届かない。
アクメリンは顔を上げて助けを求めるようにゼメキンスを見たが、嗜虐の笑みに跳ね返された。
アクメリンは四つん這いになって再度試みたが、浣腸器を水平に保つのも難しい。
どうすれば……ふっと思いついたのは薪だった。小屋に納めてあるときは寝かしているが、使う前には立てて斧で割る。貧乏貴族の娘だから、見て知っている。エクスターシャには想像もつかないことだろう。こんな境遇に落ちても、まだ王女と張り合っている。
アクメリンは把手を床に着けて、浣腸器を垂直に立てた。その上に腰を下ろすと、嘴管は自然と尻穴に当たった。さらに、じわっと腰を沈めると――把手が押されて、液体が漏れ出る。慌てて、急に腰を落とした。
ずぶうっと、嘴管が尻穴を貫く。
「痛いっ……」
小さな悲鳴は、自身への甘えだった。どんなにささやかな呟きであっても、鞭や木馬と同じ言葉を使うのは大仰に過ぎると自覚していた。
嘴管は深々と尻穴を抉って、生ぬるい汚水を腹の奥へ注入した。押子が筒の奥に突き当たって止まった。その瞬間から、猛烈な便意に襲われた。しかし。
「まだまだ残っておるぞ。入れてしまわんか」
アクメリンは大急ぎで空の浣腸器を満たして、二本目を注入する。勢い余って、尻穴のまわりから汚水が飛び散ったが、そこまではゼメキンスも咎めない。
すでに便意は限界を超えていた。
「お許しくださいっっ……」
まだ突き刺さったまなの浣腸器を噴き飛ばして。
ぶじゃあああっ……ぶりりり……
水も固形物も一挙に迸らせた。
「あああ……」
床にうずくまって、両手で顔をおおった。かえって羞ずかしさが募る。手も足も拘束されて、他人の手で浣腸されて、目をつむるしか羞恥から逃れられないほうが、よほどましだと、アクメリンは知った。
そして。手も足も自由なのに、他人の手を払いのけられない屈辱も。アクメリンはさらに二回、これは清水を注入されては噴出を繰り返させられた。
どこの拷問部屋もそうなっているのだろう。床にこぼされた水(と、汚物)は、わずかな傾斜に沿って奥へ集められ、小さな開口部から外へ流れ出た。
排泄に伴う軽い虚脱に陥っているアクメリンは、分厚い木の板で作られた拷問台の前へ引っ張られた。そこにはホナーが、自分の腕を枕にして仰臥していた。股間も寝ている。
「清めてほしいと、みずから願い出たのであろう。どうすれば良いか、分かっておるはずじゃ」
分かっていなかった。けれど、その言葉で分かってしまった。アクメリンはホナーの横に跪いて、右手を股間へと伸ばした。
その手を、傍らに立っていたゼメキンスが細い木の笞で叩いた。
「横着をするな。口を使え」
アクメリンは唇を噛んだ。身体を様々な形にねじ曲げられて、三つの穴に男根を突っ込まれるのは、受け身である。けれど、みずから挿れにいくなんて……久しぶりに、かあっと羞恥が燃え上がった。
しかし。拒めば、酔いの勢いにまかせた凄まじい拷問が始まるに決まっている。アクメリンは顔をホナーの腰の上に伏せた。むわあっと男の体臭が鼻を衝いて、息を詰めた。
初めてじっくりと眺める男性の器官。もちろんアクメリンは、手鏡に自身の股間を映して観察するようなはしたない真似はしたことがない。彼女が目にしたことのある女性の器官は、マライボで拷問されていたジョイエとニレナの二人だけ。ジョイエはともかくニレナのそこは、複雑怪奇な形状をしていた。肥大した割れ目の縁から皺の寄った二枚の肉片がはみ出ていて、その上端の合わせ目からは、悪魔の淫茎だという小さな突起が覗いていて……
それに比べると、なんと単純な形だろうか。ただ一本の棒。先端は蕾のようにすぼまっているが、太く長く勃起して、中から傘の開いていない茸みたいな赤黒い本体が現われると、醜悪で狂暴に見える――のは、それが女を辱しめる凶器だと知っているからだろう。
さらにしばらくためらってから、アクメリンは男の股間に顔を埋めた。手を使うなと言われたのだから、犬の真似をするしかなかった。
とうとう咥えてしまった。けれど、そこからどうすれば、このでろんとした腸詰肉より柔らかい棒を怒張させられるかが分からない。マライボの拷問小屋でされたときのことを思い出して、頭を上下に揺すってみた。口の中で肉棒がぐにょぐにょ蠢くが、それ以上の変化は起きない。ホナーが必死に聖句を暗誦しているなど、アクメリンには分からないし、知ったところで、勃起現象が起きない事実との関連は分からないだろう。膣穴への(過激な)刺激で逝くことは覚えても、男の放水はさんざん見せつけられていても、勃起する過程を目撃したのは、せいぜい二三回なのだ。
焦っていると、頭をつかまれた。
「そんなのでは、勃たない。舌を使え、唇もだ」
唇で包皮を押し下げて、茸の傘の縁を舌で舐めろ。裏側にある縦筋もだ。歯に唇をかぶせて、先端から根元まで呑み込みながら甘噛みをしろ。唇をすぼめて、水を啜り込むように息を吸え。先端の割れ目を舌先でくすぐれ。
娼婦でも使わないような技を、次々とホナーが命令する。
アクメリンは言われるがままに、口全体で男根を愛撫した。その甲斐あって、腸詰肉がしなやかな木の棒に変じて、ついには火傷しそうに熱い鉄杭にまでなった。
男の体臭がいっそう濃密になってくるが、なぜか不快感は消え失せて、股間に熱い滴りを感じる。
ぴしやんと尻を叩かれて、次の所作を求められていると理解した。寝ている男と媾合うにはどうすれば良いかは、ついさっき、自身に浣腸を施した経験が役に立った。
アクメリンは男に向かい合って、腰の上にしゃがんだ。怒張の根元を右手に持って、覗き込みながらその上に腰を落としていく。先端が淫裂を割るのが、見えた。怒張が股の奥でぬらっと滑る感触があって、穴に嵌まり込んだのが分かった。
「はああ……」
男の腰に座りこんで、アクメリンは息を吐いた。羞ずかしいという感情より、うまく出来たという達成感が大きかった。
ホナーが、また尻を叩いた。
「じっとしていては清められんぞ。入口から奥の院まで、くまなく抜き挿しするのだ」
アクメリンは腰を浮かして怒張を抜去し、すぐに挿れ直して奥まで突き通した。それを何度もくり返すうちに、いちいち抜いてしまうとやりにくいと分かり、自然と腰遣いを覚えていった。
「次は、拙僧を勃たせてもらおう」
リカードが頭髪をつかんで、アクメリンの上体を押し下げた。
目の前に突き付けられた、これも萎びた男根をアクメリンは咥えて、ホナーに教わったばかりの仕種を繰り返す。その間、腰の動きは止まっているが、ホナーは何も言わないし尻を叩きもしない。
じゅうぶんに勃起すると、リカードはアクメリンの背後から拷問台に上がり、両手で腰をつかんで尻穴に怒張をあてがった。
色責め馬車でさんざんに経験したことだから、アクメリンは驚かない。前にホナーを挿れたままリカードに後ろを貫かれて、さすがに軽く呻いたが、苦悶の響きはない。むしろ、ふたつの穴を同時に貫かれることに充足を覚える。
そして、ガイアスまでもがアクメリンの前に立った。
ああ、そうかと――アクメリンは自然と理解した。言われる前に、みずから上体を倒してガイアスを咥えた。
リカードに両手首をつかまれて後ろへ引き上げられると、アクメリンの上体は宙に泳いで、それだけみずからの意思では身体を動かしにくくなった。手綱に操られている馬を、アクメリンは連想した。
リカードが大きな動作で腰を動かし始めた。アクメリンの身体が前後に揺すられて、口中のガイアスも跨っているホナーも、自然とアクメリンを責める。
過激な調教で性感を開発されているアクメリンは、官能に火を点じられた。模造男根と違って生身の肉棒は、適度の弾力で穴をいっぱいに満たす。馬車と違って、肉棒の動きは一致しているのだが、それを物足りないとは感じなかった。排泄の穴だけではなく、言葉を発し命の源を摂り入れる穴までも犯されているという思いが、背徳と屈辱を燃えがらせて――悦辱へと変貌していく。
「もぼおおお……おお、おおお……」
自然と漏れるくぐもった呻きは、はっきりと艶を帯びている。
アクメリンの下になっているホナーが右手を伸ばして、焼印の先端で根元を焼かれ釘で傷つけられている淫核を摘まんだ。
「むぶううっ……!」
怒張を咥えたまま、アクメリンが激痛に呻いた。しかしホナーは、いっそう強く摘まむと――爪を立てながら強く捻じった。
「ぎゃ……ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっ!」
アクメリンは悲鳴をあげたのだが、ガイアスに頭をつかんで腰を押しつけられて、くぐもった叫びになった。
「あ゙あ゙あ゙あ゙……や゙え゙え゙え゙え゙え゙っっっ!」
しかし、リカードはいっそう激しく尻穴に抽挿を繰り返す。ガイアスは肩に手を掛けてアクメリンの裸身を激しく揺すぶる。
三つの穴をこねくられ抽挿されるうちに、淫核が純粋な快楽の器官としての働きを取り戻して、激痛をそのまま快感にすり替えていく。
「み゙い゙い゙い゙い゙い゙っ……いいいっっっ!!」
苦痛と快感とが綯い交ぜになりながら、頂を抜けて、さらに雲の上へと押し上げられるアクメリン。こうしてアクメリンは、相反する感覚がひとつの官能に止揚される境地を教え込まれたのだった。
びくんびくんびくんと、アクメリンの背中が痙攣して。やがて、全身から力が抜けた。三人の男たちはそれを見届けてから――三つの穴に白濁をぶちまけた。
意識を失ったアクメリンは、拷問台から転がし落とされても、地獄か天国か定かでない暗黒の中を漂っている。跡始末もされないまま檻に放りこまれて、それで清めの儀式は終わったのだが。
翌日には、昨夜に与えた快楽の代償だといわんばかりの、激痛一辺倒の加虐が待ち構えていた。
これまでと違って、拷問は朝のうちから始まった。アクメリンは拷問部屋の壁に立てかけた分厚い板を背にして両手両足を広げて立たされた。喉、手首、肘、胸の下、腰、太腿、膝、足首――関節という関節を、大小の鎹に挟まれて板に縫いつけられた。まさに、ぴくりとも身体を動かせない。
「おまえが魔女であることには疑義が残っておるが、神の教えを捨てた異端者であることは、自身で認めておるな?」
今さらの尋問に、アクメリンはどう答えるのが得策――もっとも苦痛が少ないかを考えてみたが。ゼメキンスの意向に逆らうべきではないという、当然の結論に行き着いただけだった。
「……そうじゃ。わらわは、異郷の神の教えに帰依したのじゃ。しかし、今では悔い改めておる」
「遅い!」
ゼメキンスが一喝する。
「一度でも神を裏切った者は、二度三度と裏切るに決まっておる」
「…………」
「よって、デチカンでの裁判に俟つまでもなく、おまえは異教徒として断罪される。その判決文を、おまえの身体に刻んでおいてやろう」
リカードが、手に持っていた長い鉄棒をアクメリンに向かって突きつけた。鉄棒の先には鉄板が取り付けられていて――鏡文字が浮かび上がっている。頭の中で正字に読み替えなくても、アクメリンにはすぐ読めた。乳首に吊るされていた文字“Heretic”だ。それが異端者という意味だとも、すでに知っている。
「あああ……」
アクメリンは絶望を呻いたが、拒否の言葉は口にしなかった。素直に受け容れるか、拷問の果てに受け容れさせられるか――雁字搦めに拘束されているのだから、その二者択一すら、許されていない。
まだ組まれたままになっているカンカン踊りの舞台下からリカードが火皿を取り出し、石炭を足して火を熾し始める。
「わらわは、もはや死罪は免れぬのじゃな……」
エクスターシャとしての言葉遣いを強いられるうちに、絶望の嘆きさえ素に戻らなくなっている。
「祖国を道連れにしてな。なんと、豪勢な死出の旅路よ」
「陛下は無実じゃ。神を裏切ったのは、わらわひとりの考えじゃ!」
ゼメキンスは狡そうに嗤う。
「それについては、デチカンで改めて審問する。今は、おまえの処置だけじゃ」
国を挙げての背教をエクスターシャが証言するまで、拷問は繰り返されるのかと、アクメリンは絶望に絶望を重ねる。
「凸凹があっては、焼印の文字が崩れるな」
ゼメキンスの言葉を受けて、リカードが二本の細い鎖を取り出した。一端には小さな鉄球がぶらさがり、反対側は鎖の輪がC形に開いている。その輪が、釘に貫通されてふさがっていないアクメリンの乳首に通された。
「ひいいい……」
乳首が引き伸ばされ、乳房全体が年増女のように垂れた。
「まさか……?!」
凸凹がどうのこうのという話から、この仕打ち。焼印がどこに捺されようとしているのか、分かりたくなくても悟ってしまう。
ゼメキンスが火床から焼印を取り出した。鉄板に浮かび上がる文字は、煙も出ないほどに白熱している。
「しかし……おまえは異教徒らしからぬ形(なり)をしておるな」
ゼメキンスは焼印を腋の下に近づけた。そこにも濃密に繁茂している亜麻色の毛が、ぱっと燃え上がった。
「熱いっ……」
股間の毛を焼かれたときは炎が上へ逃げたが、腋の下で火を燃やせば二の腕まで焼かれる。さいわいに、すぐ燃え尽きたので火傷にまではならずに済んだのだが。
ゼメキンスは、下腹部にも焼印を近づけた。焼かれて後に芽吹いていた草叢も、また焼け野原と化してしまう。こちらは、短い毛を焼こうとして、肌に触れるほど近づけたので、ぽつぽつと火脹れになってしまった。
「体毛を無くすなど、異教徒の嗜みは我らには理解しがたい」
嘯きながら、ゼメキンスの眼は有るべき物が無い部分から離れない。そういう嗜癖もあるのだろうか。
「もう一度熱くしましょうか?」
冷めすぎるのを懸念して、リカードが声を掛ける。
「いや、これくらいのほうが、傷の治りが早かろう」
ゼメキンスは半歩下がって、焼印を持ち変えた。柄を立てて、刻印の鉄板を乳房の真上にかざす。
「あああ、あ……」
アクメリンは顔を背けて瞼を固く閉じた。
焼印が上乳に押しつけられて、じゅうっと肉を焦がす。
「ぎゃあああああっっっ……!」
アクメリンの喉から迸った悲鳴は、純粋の苦痛を訴えていた。
十字架の焼印と