Progress Report Final:赤い冊子と白い薔薇
実生活上の大変動とかは、サブブログ[戦闘詳報]にまかせておいて。
ここでは、あくまで妄想大宇宙の与太話に徹しましょう。
自宅待機のお陰様をもちまして(それでも愚痴る)平日午後2時に脱稿しました。540枚に2か月半もかかりました。更生やら表紙絵やらで、あと1週間はかかるでしょう。前後編に分けるにしても、月刊濠門長恭を維持できない計算です。
今回は、最終部分を御紹介。
けっこう実社会においては危険な炎上しそうなことも書いていますが。あくまでも妄想ですので、そこのところ、よろしく。
========================================
・女教師の告白
「恵……気軽に呼び捨てる資格なんか、わたしには無いわね。瀬田さん。ほんとうに、ごめんなさい。この通り謝ります」
そう言うと、ユリは恵に向かって土下座した。
「お姉様……いきなり、どうなさったんですか!?」
混乱を引きずっていた恵は、ますます混乱する。
「実は、わたしは特高警察の狗、いえ、御主人様のお言葉を借りれば牝犬なの」
「あの……わかるように説明してください」
恵は自然と、ユリに向かい合って座る形になった。
ユリは頭を上げて――しかし目は伏せたまま、ぽつりぽつりと語り始めた。
「わたしは、あなたくらいの歳頃から、いいえ、物心ついてからずっとかもしれない。被虐というものに憧れてきました。結婚まで貞操を護るなんて、これっぽっちも考えていなかったの。それどころか。暴漢に襲われて、力ずくで穢されたい。それも一人や二人ではなく、いきなり何人もの男たちに……女の操だけでなく、穴という穴を犯されたい。ほんとうにそんな目に遭ったら必死で抵抗するけれど……貞操を護るためではなく、縛られて抵抗できなくされるため。もしかしたら、それでも暴れて、殴られたりするのも素敵。そんなことばかり考えてた。ゴム紐の褌を考えついたのは、尋常学校を卒業してすぐの頃だったわ」
(………………!!)
恵の心は混乱から驚愕へとうつろっていった。しかし、そんな破廉恥な妄想に耽っていた女学生時代のユリを軽蔑する気持ちにはなれなかった。女性同士の性愛も、被虐への憧れも、世間の常識からすれば、どちらも異常なのだ。
「……わたしのような女は、初潮前でさえも、見る人が見るとわかるものなのね。遠縁の親戚を通じて、わたしを養女にもらいたいという方が現われたの」
「それが、あの……今のお屋敷の?」
「いいえ。あのお方は、御主人様のお友達の部下に過ぎません。下宿代として週に一度は抱かれていましたが、至極まともな人です」
まともというところを、ユリは強調した。
――昨今の、『なんでも有り』な風潮。あるいはライトSMをセックスの前戯くらいに考えているノーマルな人種には思い及ばないことだろうが。昔風にいえば異常性愛にのめり込んでいる者は、けっして自分が正常だとは思っていない。二つ眼の国では、三つ眼はあくまで異常なのだ。そして。三つ眼は、自分が少数者であることに屈折した矜持を抱いている。その他大勢ではない、パンピーではないという、いわば『選ばれし者』の誇りを。そういった意味も含めて、近年の性的多様性への寛容には疑問を抱かざるを得ない。これはもちろん、同性愛の門に一歩だけ足を踏み込んだものの結局は異性愛を基本としている筆者の、百人にひとりくらいのレベルでのSMプレイを実践したにすぎない、基本的にはノーマルの端っこあたりに生息している筆者の偏見に過ぎない。この小説に限らず、筆者が語るのはしょせん妄想(ファンタジー)である。
閑話休題。
「わたしを養女に引き取ってくださった方は、わたしの処女だけを残して、ありとあらゆる淫らな残虐な行為を教えてくださった。御主人様は――浜村も言っていたでしょう。女囚への捕縛術とか拷問術を研究して実践している古武術研究会の会長さんだったの。わたしが受胎可能な身体になったとき、その会合でお披露目されて……御主人様にはわたしの妄想を打ち明けて、いえ白状させられていたから、縄酔いの中で理想的な『初めて』を体験できたわ。最初から気を遣ってしまったの。ああ、お実核とかお尻の穴で気を遣るのは、とっくに覚えていたけれど」
ユリの声は、一世一代の手柄話を吹聴するかのように誇らしげだった。
恵は――驚愕を深めるばかり。そして。腰の奥で熔けた鉛のような塊りがだんだん大きくなってくるのを自覚していた。
会長――ユリの主人は、彼女に高等教育を授けた。女学校から女子師範学校に進ませて教員免状を取得させた。それは、高い教養とマナーを身に着けた女性を辱めるという目的だけではなく……
「うんと若い女囚を手に入れるという目的もあったのね。でも、わたしを女学校に潜入させるとなると、さすがに御主人様のツテだけでは難しかった」
そこで、古武術研究会の賛助会員である浜村を通じて、特高警察と手を組んだ。
先に述べた通り、特高警察の者に娘を嫁がせようという親は滅多にいない。とはいえ、貧乏農家や孤児院から引き取った娘では、あまりに世間体が悪い。内助の功も期待できない。
しかし。特高警察に捕まるような不良娘なら、まともな結婚ができるはずもないし、就職もままならない。そんな娘を手元に置いて更生させるとなれば、これは美談だ。女学校中退なら、それなりに教養と躾も身についている。
そうして始まったのが、一連の冤罪逮捕だったのだ。稲枝紗良だけは別であるが――浜村にとっては棚から牡丹餅の心境だったのではないだろうか。
「だからといって、手当たり次第に生徒を陥れてきたのではありません。これだけは、信じてもらいたいの」
ユリが関与していない最初の二人は知らず。山崎華江も川瀬弓子も、将来の不幸が見えていたと、ユリは弁解する。
男女同権論者の華江は、元は士族の親から疎まれていた。昭和の御代になってまで大正初期に廃止された身分にしがみついている家が、世渡り上手なわけもない。華江本人の知らないところで、遊郭への身売り話が進んでいたという。遊郭に売られた娘は、よほどの幸運に恵まれれば金持ちに身請けされることもあるが、たいていは三十前に花柳病にかかって、落ち着く先は無縁寺である。家では奴隷扱いされるとはいえ、上級官吏の奥様に収まるほうが、よほど幸せではないだろうか。
「弓子さんは、実はお兄様のほうが危険思想の持ち主だったのです」
小さなテロリストの組織に属しているという。特高警察も全容をつかみかねて当面は泳がせているが、いずれは一網打尽にされる。家族に関わりのないことと特高警察は承知しているから、弓子も形ばかりの取り調べで釈放はされる。しかし、その後に世間が彼女に辿らせる道は、本人が逮捕されたときと同じになるだろう。下手をすれば、許婚者まで巻き込みかねない。そして弓子が特高警察を逆恨みするのは目に見えている。ならば、先手を打って反抗の芽をつぶし心をへし折って特高警察官の妻にしておけば、四方が丸く収まるのではないだろうか。
「でも、瀬田さん。あなただけは、違ったの。言ったでしょう、同じ性癖の者は相手をきちんと見分けられるって」
最初の授業で恵を見たときから、ユリはその素質を見抜いていたという。
「そんなことはないって、瀬田さんは反発するでしょうけれど……よくよく考えてほしいの。わたしがあなたの手を引いたとき、なぜ素直に倒れ込んだの? ゴム紐の褌をしてあげたとき、羞ずかしがりながらも、心の奥――いいえ、子宮は疼いていなかった?」
まだまだ語りたいことはあるのだろうが、ユリは言葉を封じて、恵の反応をうががう様子だった。
恵は、何分ものあいだ、無表情に黙りこくっていた。
沈黙を続けるということ自体が、ユリの言葉を(なにもかも)受け容れる準備をしているということを暗示していた。看守に怒鳴られる、あるいは懲らしめられるのも恐れずに、声を大にしてユリを非難して当然の――驚天動地の告白だった。それとも、これまでも浜村たちの言葉の端々に、真相の陽炎を垣間見ていたのだろうか。
「それじゃ……あの日にあたしが逮捕されるって、御存知だったんですね」
長い沈黙の果てに恵が紡いだ言葉は、やはり非難の響きを帯びていた。
「そうよ。だから、わざとあんな恰好をさせたの」
ゴム紐褌と輪ゴム乳バンドのことを言っている。
「あんな恰好をしていたら、ワカランチンの荒島だって、さすがに考えるでしょうし。青谷だって愛想を尽かすと思ったの」
ユリが自慢めかせて答えを返した。
「えっ……??」
恵の表情に怒りが浮かびかける。
「ふつうに逮捕させたら、華江さんや弓子さんと同じように扱われて、結局は青谷の妻にされてしまったでしょうね。でも、あなたをまともな男の持ち物になんか、させたくなかった。言ったでしょ。わたしは仲間が欲しかったって。男の人に虐められて、それを身も心も悦ぶ変態の女性――できれば、わたしが可愛がってあげたくなるような、若い娘だったら、申し分ないわ」
「……変態」
恵の表情から怒りの色が薄れた。替わって、晴れやかな羞恥とでもいった色に頬が染まっていく。ユリが変態という言葉に否定や嫌悪と真逆の意味合いを込めていることに、恵もついに気づいたのだった。
「電話で荒島と掛け合ったけれど、埒が明かなかった。御主人様にも相談したのだけれど――それくらい、自分でなんとかしろと。今になって考えれば、わたしも試されていたのかしら」
ユリの企みは成功したといえるだろう。恵は最初から、華江や弓子と同じ責めでは満足しない変態娘として扱われてきた。そして、ユリの思惑通り青谷に愛想を尽かされて――ここに、ユリとふたりきりで監禁されている。
ふたたび、恵は長い黙考に沈んだ。そうして。
「表向きにまかせる――浜村が言っていましたね。あれは、どういう意味なんでしょうか」
思考は将来へと向けられた。
「危険思想の本を持っていた罪で裁判にかけられるという意味よ。もらった相手の名前をついに自白しなかったということまで問題にされれば――そうね、年齢の問題もあるから、刑務所ではなくて矯正院に入れられるかしら。あそこは、すごく厳しいのよ。ここの取調室とは全然違う意味でね」
そこの職員たちは、本気で少年少女を更生させようと熱意を持って指導している。こっそり自慰なんかしていたら、厳しく罰せられる。手枷を着けて独房に入れられることもある。ただし、衣服は脱がされないし乳房を縄で絞られたり股縄を締めさせられるとこは絶対にない。ビンタは日常茶飯だが、ワイヤーを跨がされたり駿河問、ましてブリブリに掛けられることもない。運動会が催されたり慰問団が訪れることもある。けれど恵が慰問を提供する機会は与えられない。性の交わり、まして悦虐などはこの世に存在しないような、規律正しい生活。
「英語教員に仕立て上げられる前に、三か月だけ刑務所の生活を体験させられたわ。気が狂いそうになった。瀬田さんには、あんな体験をさせたくない」
「そのためには、あたしも特高警察の牝犬にならなくてはいけないんですか?」
この文脈での質問は、すでに答えを出しているということにならないだろうか。
「そうね……わたしは九月から遠くの女学校で臨時教員を務めることが決まっているけれど、瀬田さんは……」
「恵って呼んでください、お姉様!」
それが、恵の最終的な返事だった。
・生餌を求めて
「瀬田恵さんは病弱で、進学が遅れていました。ようやく本復したので、二学期からですが復学することになりました。皆さん、仲良くしてあげてくださいね」
恵は、一年生の教室を――猟犬さながらの目で見渡した。
「瀬田恵です。二年間も入院していましたが、そのあいだに少しはお勉強もしたつもりです。もしも授業でわからないことがあったら、遠慮なく聞いてください。あたしもわからないことはたくさんありますが、そのときは一緒に考えましょう」
英語の受業は高学年が主体なので、ユリが一年生まで手を広げるのは難しい。そして、嫁候補にするのも高学年が対象だから――恵は、むしろ御主人様子飼いの、別の言い方をすれば古武術研究会用の女囚候補を探すことに専念すればいい。
恵が嗅ぎ当てた少女は、恵と同じように特高警察の厳しい拷問に掛けられて、荒島のような鬼畜趣味の男たちを愉しませてから、古武術研究会の賛助会員のうちでも裕福な(そして残虐な)男の妾奴隷にされて――悦虐の生涯を送ることになるだろう。
七月から八月半ば(その後の二週間は養生に充てられた)までの一か月半、恵は特高警察の拷問が児戯に思えるほどの、残虐だが子宮を蕩かすような、責めに掛けられて女に生まれた至福と悲惨とを味わい尽くして――全国に散らばる六十余人の古武術研究会員すべてに抱かれていた。いや、犯されていた。
今年の年末は、恵が見初めた年下の少女と、古武術研究会の総本部になっている拷問蔵で過ごすことになる。
そのときにうんと虐めてもらうためにも、素質を持った少女を是非見つけ出さねばならない。
恵の心は、小さな子供のように弾んでいた。
だ・れ・に・し・よ・う・か・な。て・ん・じ・ん・さ・ま・の・い・う・と・お・り……
[完]
========================================
画像は、執筆の合間に考えた表紙BFの構図でもご紹介しますか。
荒っぽく切り抜いた画像のコラージュです。ラフスケッチてやつです。
下段のやつは、ひとつの画像をまんま加工したのですが、女体と顔が写真の加工と分かり過ぎるからボツだそうです。

なので、これらの画像(尺度不一)をまとめて丁稚揚げるつもりです。

ここでは、あくまで妄想大宇宙の与太話に徹しましょう。
自宅待機のお陰様をもちまして(それでも愚痴る)平日午後2時に脱稿しました。540枚に2か月半もかかりました。更生やら表紙絵やらで、あと1週間はかかるでしょう。前後編に分けるにしても、月刊濠門長恭を維持できない計算です。
今回は、最終部分を御紹介。
けっこう実社会においては危険な炎上しそうなことも書いていますが。あくまでも妄想ですので、そこのところ、よろしく。
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・女教師の告白
「恵……気軽に呼び捨てる資格なんか、わたしには無いわね。瀬田さん。ほんとうに、ごめんなさい。この通り謝ります」
そう言うと、ユリは恵に向かって土下座した。
「お姉様……いきなり、どうなさったんですか!?」
混乱を引きずっていた恵は、ますます混乱する。
「実は、わたしは特高警察の狗、いえ、御主人様のお言葉を借りれば牝犬なの」
「あの……わかるように説明してください」
恵は自然と、ユリに向かい合って座る形になった。
ユリは頭を上げて――しかし目は伏せたまま、ぽつりぽつりと語り始めた。
「わたしは、あなたくらいの歳頃から、いいえ、物心ついてからずっとかもしれない。被虐というものに憧れてきました。結婚まで貞操を護るなんて、これっぽっちも考えていなかったの。それどころか。暴漢に襲われて、力ずくで穢されたい。それも一人や二人ではなく、いきなり何人もの男たちに……女の操だけでなく、穴という穴を犯されたい。ほんとうにそんな目に遭ったら必死で抵抗するけれど……貞操を護るためではなく、縛られて抵抗できなくされるため。もしかしたら、それでも暴れて、殴られたりするのも素敵。そんなことばかり考えてた。ゴム紐の褌を考えついたのは、尋常学校を卒業してすぐの頃だったわ」
(………………!!)
恵の心は混乱から驚愕へとうつろっていった。しかし、そんな破廉恥な妄想に耽っていた女学生時代のユリを軽蔑する気持ちにはなれなかった。女性同士の性愛も、被虐への憧れも、世間の常識からすれば、どちらも異常なのだ。
「……わたしのような女は、初潮前でさえも、見る人が見るとわかるものなのね。遠縁の親戚を通じて、わたしを養女にもらいたいという方が現われたの」
「それが、あの……今のお屋敷の?」
「いいえ。あのお方は、御主人様のお友達の部下に過ぎません。下宿代として週に一度は抱かれていましたが、至極まともな人です」
まともというところを、ユリは強調した。
――昨今の、『なんでも有り』な風潮。あるいはライトSMをセックスの前戯くらいに考えているノーマルな人種には思い及ばないことだろうが。昔風にいえば異常性愛にのめり込んでいる者は、けっして自分が正常だとは思っていない。二つ眼の国では、三つ眼はあくまで異常なのだ。そして。三つ眼は、自分が少数者であることに屈折した矜持を抱いている。その他大勢ではない、パンピーではないという、いわば『選ばれし者』の誇りを。そういった意味も含めて、近年の性的多様性への寛容には疑問を抱かざるを得ない。これはもちろん、同性愛の門に一歩だけ足を踏み込んだものの結局は異性愛を基本としている筆者の、百人にひとりくらいのレベルでのSMプレイを実践したにすぎない、基本的にはノーマルの端っこあたりに生息している筆者の偏見に過ぎない。この小説に限らず、筆者が語るのはしょせん妄想(ファンタジー)である。
閑話休題。
「わたしを養女に引き取ってくださった方は、わたしの処女だけを残して、ありとあらゆる淫らな残虐な行為を教えてくださった。御主人様は――浜村も言っていたでしょう。女囚への捕縛術とか拷問術を研究して実践している古武術研究会の会長さんだったの。わたしが受胎可能な身体になったとき、その会合でお披露目されて……御主人様にはわたしの妄想を打ち明けて、いえ白状させられていたから、縄酔いの中で理想的な『初めて』を体験できたわ。最初から気を遣ってしまったの。ああ、お実核とかお尻の穴で気を遣るのは、とっくに覚えていたけれど」
ユリの声は、一世一代の手柄話を吹聴するかのように誇らしげだった。
恵は――驚愕を深めるばかり。そして。腰の奥で熔けた鉛のような塊りがだんだん大きくなってくるのを自覚していた。
会長――ユリの主人は、彼女に高等教育を授けた。女学校から女子師範学校に進ませて教員免状を取得させた。それは、高い教養とマナーを身に着けた女性を辱めるという目的だけではなく……
「うんと若い女囚を手に入れるという目的もあったのね。でも、わたしを女学校に潜入させるとなると、さすがに御主人様のツテだけでは難しかった」
そこで、古武術研究会の賛助会員である浜村を通じて、特高警察と手を組んだ。
先に述べた通り、特高警察の者に娘を嫁がせようという親は滅多にいない。とはいえ、貧乏農家や孤児院から引き取った娘では、あまりに世間体が悪い。内助の功も期待できない。
しかし。特高警察に捕まるような不良娘なら、まともな結婚ができるはずもないし、就職もままならない。そんな娘を手元に置いて更生させるとなれば、これは美談だ。女学校中退なら、それなりに教養と躾も身についている。
そうして始まったのが、一連の冤罪逮捕だったのだ。稲枝紗良だけは別であるが――浜村にとっては棚から牡丹餅の心境だったのではないだろうか。
「だからといって、手当たり次第に生徒を陥れてきたのではありません。これだけは、信じてもらいたいの」
ユリが関与していない最初の二人は知らず。山崎華江も川瀬弓子も、将来の不幸が見えていたと、ユリは弁解する。
男女同権論者の華江は、元は士族の親から疎まれていた。昭和の御代になってまで大正初期に廃止された身分にしがみついている家が、世渡り上手なわけもない。華江本人の知らないところで、遊郭への身売り話が進んでいたという。遊郭に売られた娘は、よほどの幸運に恵まれれば金持ちに身請けされることもあるが、たいていは三十前に花柳病にかかって、落ち着く先は無縁寺である。家では奴隷扱いされるとはいえ、上級官吏の奥様に収まるほうが、よほど幸せではないだろうか。
「弓子さんは、実はお兄様のほうが危険思想の持ち主だったのです」
小さなテロリストの組織に属しているという。特高警察も全容をつかみかねて当面は泳がせているが、いずれは一網打尽にされる。家族に関わりのないことと特高警察は承知しているから、弓子も形ばかりの取り調べで釈放はされる。しかし、その後に世間が彼女に辿らせる道は、本人が逮捕されたときと同じになるだろう。下手をすれば、許婚者まで巻き込みかねない。そして弓子が特高警察を逆恨みするのは目に見えている。ならば、先手を打って反抗の芽をつぶし心をへし折って特高警察官の妻にしておけば、四方が丸く収まるのではないだろうか。
「でも、瀬田さん。あなただけは、違ったの。言ったでしょう、同じ性癖の者は相手をきちんと見分けられるって」
最初の授業で恵を見たときから、ユリはその素質を見抜いていたという。
「そんなことはないって、瀬田さんは反発するでしょうけれど……よくよく考えてほしいの。わたしがあなたの手を引いたとき、なぜ素直に倒れ込んだの? ゴム紐の褌をしてあげたとき、羞ずかしがりながらも、心の奥――いいえ、子宮は疼いていなかった?」
まだまだ語りたいことはあるのだろうが、ユリは言葉を封じて、恵の反応をうががう様子だった。
恵は、何分ものあいだ、無表情に黙りこくっていた。
沈黙を続けるということ自体が、ユリの言葉を(なにもかも)受け容れる準備をしているということを暗示していた。看守に怒鳴られる、あるいは懲らしめられるのも恐れずに、声を大にしてユリを非難して当然の――驚天動地の告白だった。それとも、これまでも浜村たちの言葉の端々に、真相の陽炎を垣間見ていたのだろうか。
「それじゃ……あの日にあたしが逮捕されるって、御存知だったんですね」
長い沈黙の果てに恵が紡いだ言葉は、やはり非難の響きを帯びていた。
「そうよ。だから、わざとあんな恰好をさせたの」
ゴム紐褌と輪ゴム乳バンドのことを言っている。
「あんな恰好をしていたら、ワカランチンの荒島だって、さすがに考えるでしょうし。青谷だって愛想を尽かすと思ったの」
ユリが自慢めかせて答えを返した。
「えっ……??」
恵の表情に怒りが浮かびかける。
「ふつうに逮捕させたら、華江さんや弓子さんと同じように扱われて、結局は青谷の妻にされてしまったでしょうね。でも、あなたをまともな男の持ち物になんか、させたくなかった。言ったでしょ。わたしは仲間が欲しかったって。男の人に虐められて、それを身も心も悦ぶ変態の女性――できれば、わたしが可愛がってあげたくなるような、若い娘だったら、申し分ないわ」
「……変態」
恵の表情から怒りの色が薄れた。替わって、晴れやかな羞恥とでもいった色に頬が染まっていく。ユリが変態という言葉に否定や嫌悪と真逆の意味合いを込めていることに、恵もついに気づいたのだった。
「電話で荒島と掛け合ったけれど、埒が明かなかった。御主人様にも相談したのだけれど――それくらい、自分でなんとかしろと。今になって考えれば、わたしも試されていたのかしら」
ユリの企みは成功したといえるだろう。恵は最初から、華江や弓子と同じ責めでは満足しない変態娘として扱われてきた。そして、ユリの思惑通り青谷に愛想を尽かされて――ここに、ユリとふたりきりで監禁されている。
ふたたび、恵は長い黙考に沈んだ。そうして。
「表向きにまかせる――浜村が言っていましたね。あれは、どういう意味なんでしょうか」
思考は将来へと向けられた。
「危険思想の本を持っていた罪で裁判にかけられるという意味よ。もらった相手の名前をついに自白しなかったということまで問題にされれば――そうね、年齢の問題もあるから、刑務所ではなくて矯正院に入れられるかしら。あそこは、すごく厳しいのよ。ここの取調室とは全然違う意味でね」
そこの職員たちは、本気で少年少女を更生させようと熱意を持って指導している。こっそり自慰なんかしていたら、厳しく罰せられる。手枷を着けて独房に入れられることもある。ただし、衣服は脱がされないし乳房を縄で絞られたり股縄を締めさせられるとこは絶対にない。ビンタは日常茶飯だが、ワイヤーを跨がされたり駿河問、ましてブリブリに掛けられることもない。運動会が催されたり慰問団が訪れることもある。けれど恵が慰問を提供する機会は与えられない。性の交わり、まして悦虐などはこの世に存在しないような、規律正しい生活。
「英語教員に仕立て上げられる前に、三か月だけ刑務所の生活を体験させられたわ。気が狂いそうになった。瀬田さんには、あんな体験をさせたくない」
「そのためには、あたしも特高警察の牝犬にならなくてはいけないんですか?」
この文脈での質問は、すでに答えを出しているということにならないだろうか。
「そうね……わたしは九月から遠くの女学校で臨時教員を務めることが決まっているけれど、瀬田さんは……」
「恵って呼んでください、お姉様!」
それが、恵の最終的な返事だった。
・生餌を求めて
「瀬田恵さんは病弱で、進学が遅れていました。ようやく本復したので、二学期からですが復学することになりました。皆さん、仲良くしてあげてくださいね」
恵は、一年生の教室を――猟犬さながらの目で見渡した。
「瀬田恵です。二年間も入院していましたが、そのあいだに少しはお勉強もしたつもりです。もしも授業でわからないことがあったら、遠慮なく聞いてください。あたしもわからないことはたくさんありますが、そのときは一緒に考えましょう」
英語の受業は高学年が主体なので、ユリが一年生まで手を広げるのは難しい。そして、嫁候補にするのも高学年が対象だから――恵は、むしろ御主人様子飼いの、別の言い方をすれば古武術研究会用の女囚候補を探すことに専念すればいい。
恵が嗅ぎ当てた少女は、恵と同じように特高警察の厳しい拷問に掛けられて、荒島のような鬼畜趣味の男たちを愉しませてから、古武術研究会の賛助会員のうちでも裕福な(そして残虐な)男の妾奴隷にされて――悦虐の生涯を送ることになるだろう。
七月から八月半ば(その後の二週間は養生に充てられた)までの一か月半、恵は特高警察の拷問が児戯に思えるほどの、残虐だが子宮を蕩かすような、責めに掛けられて女に生まれた至福と悲惨とを味わい尽くして――全国に散らばる六十余人の古武術研究会員すべてに抱かれていた。いや、犯されていた。
今年の年末は、恵が見初めた年下の少女と、古武術研究会の総本部になっている拷問蔵で過ごすことになる。
そのときにうんと虐めてもらうためにも、素質を持った少女を是非見つけ出さねばならない。
恵の心は、小さな子供のように弾んでいた。
だ・れ・に・し・よ・う・か・な。て・ん・じ・ん・さ・ま・の・い・う・と・お・り……
[完]
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画像は、執筆の合間に考えた表紙BFの構図でもご紹介しますか。
荒っぽく切り抜いた画像のコラージュです。ラフスケッチてやつです。
下段のやつは、ひとつの画像をまんま加工したのですが、女体と顔が写真の加工と分かり過ぎるからボツだそうです。

なので、これらの画像(尺度不一)をまとめて丁稚揚げるつもりです。

Progress Report 7:赤い冊子と白い薔薇
在宅勤務から休業に変わりました。給料40%ダウンです。そのかわり、本来の勤務時間中に何をしようと勝手です。なので、本編を書いたり、フリーセル連勝記録(MAX1665)に挑んで現在400連勝中だったり堂々とブログを更新したりしています。
今回の未校訂公開分は第四章第四節です。前回に予告した通り、トイチヤイチ(トイチハイチ)です。
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・睦み合う二人
無限とも思える二時間が過ぎて。荒島、浜村、青谷、泊の四人が戻ってきた。その後から初老の男と、恵たちにカテーテル処置を施した看護婦。今日は和服姿だった。恵たち三人はワイヤーから下ろされて後ろ手にいつもの鉄枷を嵌められた。平机を診察台代わりにして傷の――つまりは女性器の具合を調べられる。
「ふさぎかけていた傷口が、また裂けています。当分は取り調べを控えたほうがよろしいでしょう」
とは、紗良のことだった。医者の進言で、紗良への尋問は取りやめになった。後ろ手枷は傷と関係ないので容赦されない。どころか。浜村は、傷の手当てに使う薬品を医者に指示した。
「それは……へたな軟膏よりはよほど効きますが」
「塩や蝋燭よりも、な」
医者は溜息をついて、大きな茶色のガラス瓶を鞄から取り出した。
それを見て、紗良の顔が引き攣った。が、なにも言わない。抗議はいっそうの過酷で報われると身に沁みている。
アルコールを染ませた脱脂綿で、医者が傷口を丹念に拭う。
それだけでもじゅうぶんに沁みるはずだが、紗良は唇を引き結んで呻き声も漏らさない。しかし。明るい茶色の液体に染まったガーゼを、割り開かれた淫唇の内側に貼り付けられると。
「くううう……あ、熱い。痛い……きひいい」
それはもちろん。有刺鉄線を巻いたワイヤーを跨がせられたときなどに比べれば慎ましやかな悲鳴ではあったが。処置が終わっても、紗良の悲鳴は止まらない。この時代、ヨードチンキをアルコールで希釈した薬品は傷薬として常用されていた。低学年の子なら、擦り剥いた膝頭にヨーチン液を塗られて泣かない子はいなかった。しかも、ヨードチンキ希釈液の不適切な用法として、粘膜への塗布とガーゼや脱脂綿による被覆とが挙げられている。そのふたつを同時に施されては、長時間の拷問も同然だった。
ガーゼが剥落しないようにと股縄を結ばれて、紗良は拘置房へ戻された。
ユリについては。
「無傷も同然ですね」
現実に出血している股間を見て、医者が無雑作に診断する。ただし、ひと言を付け加える。
「もちろん、ここだけに適用する診断基準ですがね」
「今朝までは真っ更だったんだからな。こっちの娘は、どうですか?」
医者は、恵には紗良ほどではないが慎重に傷口を診た。
「以前の傷が完治していませんが――さきの娘ほどにはヨードチンキ希釈液の効果はないでしょう」
効果とは、暗に副作用(激痛)を指している。しかし、医者としての務めも忘れてはいない。
「それよりも、腹部の痣が気になります。二、三日前に殴られた痕ですね。下手をすると内臓破裂を起こしかねません。、お手柔らかに願いますよ」
恵は自分で見ても、腹に痣が残っているとは気づかなかった。やはり、医者の目は違うのだろう。
「わかっている。女房なんか週に一度は殴っているが、まだピンシャンとしている。それも、目隠しをさせて、腹筋を固める余裕も与えずに――だ」
「なるほど。釈迦に説法でしたな」
「いや、馬の耳に念仏だね」
浜村が恵の腹に握りこぶしを押し当てて、酷薄に――微笑したつもりなのだろう、唇の端がゆがんだ。
恵は反射的に腹に力をいれたが、そのときは殴られずにすんだ。
「さて、午後も美しき師弟愛の発露を拝見させてもらうか。いや……トイチヤイチの間柄だったな」
ユリは頬を染めたが、恵はポカンとしている。
トイチヤイチ、あるいはトイチハイチともう。カタカナの『ト』と漢数字のイチで上、漢数字またはカタカナの『ハ』を左へ傾けて漢数字のイチで下。つまり、上下を意味する。なぜか男女の睦み事ではなく、女同士の絡み合いを指す隠語として使われている。
「トイチヤイチか。そう言えば、延べ七人も取り調べていながら、一度もさせたことがなかったな」
荒島が身を乗り出した。
「どうだね。活きの良いうちに二人を絡ませてみては?」
「僕も寡聞少見にして、トイチハイチはお目にかかったことがありません」
自分の担当だから恵だけは責めるし、輪姦にはお付き合いで加わっている。そんな青谷までが、珍しく乗り気になっている。
「では、こうしましょうや」
浜村が、嗜虐味にあふれた提案をする。
「逝かせっこをさせて、先に気を遣らせたほうは今日の尋問を取りやめにしてやる。逝かされたほうは、二人分の責めを一身に引き受ける――というのは、どうです?」
「そりゃ、駄目だ。馴れ合いでダラダラ真似事をされては時間の無駄だ」
「では、先に気を遣ったほうを免除するようにしますか」
「ふむ。海千山千の女教師と、初心な女学生とでは勝負は見えているが――どうせ、今日は石山ユリの取り調べを優先する予定だったから、好都合か」
こういった相談を聞かされては、恵にも鬼畜どもの企みは推察でできる。
(絶対に厭……お姉様との交歓を見せ物にされるなんて!)
しかし一方のユリは――うつむけた顔の中で、唇が妖艶に微笑している。ペロリと唇を舐めた仕種は、教え子を先に逝かせることで拷問を免れさせるという自己犠牲の精神とは懸け離れていた。
「そういうことだ。ちょっと狭いが、この上で演じてもらおう」
浜村が泊に手伝わせて、平机を部屋の中央に引き出した。
恵とユリは手枷をはずされた。両手を自由に使えるというのは、恵にとっては何日ぶりのことだろう。しかし、その手をどういうふうに使わされるかを考えれば、ちっともありがたくなんかなかった。
「ほんとうに……恵を先に逝かせれば、この子への拷問は赦してくださるのですね?」
ユリが、提案者の浜村にではなく、場を取り仕切っている荒島に尋ねた。
「それだけじゃ、つまりません。女先生にも昇天してもらいましょう」
「つまり、瀬田恵に気を遣らせてから自分も気を遣るということか」
「そうですな。どちらかが気を遣らなかったときは、気を遣ったほうに二人分の責めを与える――わかったな」
最後は、ユリと恵を交互に見比べながら言った。条件が格段に難しくなった。
しかしユリはそれを受け容れた。不平を口にしてしっぺ返しを恐れるというよりも、自信たっぷりといった風情だった。
「わかりました。さ……恵。この殿方たちに、わたしたちの至純の交歓を見ていただきましょう」
「先生……?」
恵は、意想外のユリの態度に驚いている。
(たとえこの場だけでも、あたしを庇おうとしくれている?)
(感電は厳しかったけれど……鞭で肌を切り裂かれる痛みは、まだ御存知ないのだわ。大勢の暴姦魔どもにすべての穴を何度も何度も凌辱される苦痛と屈辱。上と下をつながれて、他人の汚物を口にする恥辱も……)
(逆さ吊りも駿河問も水責めも……)
そして、なによりも。
(殿方だなんて……この人非人どもが約束を守るなんて、本気で考えてらっしゃるのかしら?)
しかし。人非人に逆らえばどうなるかも、恵は知り尽くしている。恵は、ユリの部屋で彼女の差し出す手を握るときとは真反対の気分で、腕を伸ばした。
ユリは平机の上に恵を仰臥させ、自分は縁に尻を乗せて横座りになった。両手で恵の頬を挟んで、ゆっくりと顔を近づけていく。男どもが折りたたみ椅子で机を囲むのも、まったく気にしていない。いや、敢えて見せつけるような仕種だった。
唇を吸われ舌を絡められて。恵は簡単に蕩けていった。自らの意志で、そうしようと思った。ユリが自分を庇ってくれるのなら、それに甘えてみようと思った。もしも二人分の拷問を一身に受けて、その後も庇ってくれるのなら――ユリの恵への愛情は本物だ。そんな、醒めた計算も無くはなかったが。
ユリを目の前にしてようやく。これまでは考えないようにしていた疑問が意識の奥底から頭をもたげてきた。
(ほんとうに、お姉様はあたしを愛してくださっていたのだろうか)
(お部屋に誘った最初から、あんなふうになさるなんて)
(ご自分の変態趣味に巻き込むなんて)
(若い初心な娘を……弄ぶとはいわないけれど、揶揄ってらしたのではないかしら?)
それは――男どもの淫欲に貪られて、初めて得られた視座だった。
「かわいそうに……こんなに傷つけられて」
ユリの顔が下に動いて、まだ鞭痕の残る乳房に舌を這わせ、瘡蓋におおわれた乳首をついばむように口に含んだ。
治りかけの傷を優しくしかし執拗に愛撫されて、かすかな痛みとむず痒さと、そして忘れていた快感のさざ波が次第に大きくうねり始めた。
「ああっ……ああんんん。羞ずかしい……」
どうしても、鬼畜どもの視線を感じてしまう。しかしその羞恥は、腰の奥に熱い熾火が生じるのを妨げはしない。いやむしろ、これまでのユリとの交情よりも激しく熱く燃え盛ってくる。それを異常とは、ユリは感じていない。
(だって……もう会えないと諦めていたお姉様と再会できたのだもの)
そんなふうに、恵は自分の心の動きを解釈している。見られて、それを恥ずかしく思うことが快感と直截につながっているとは、無意識下ではともかく頭では理解していない。
ユリも机に上がって、上下逆さまになって恵におおいかぶさった。
「わたしのお乳も虐めてちょうだい」
自分でも口にしたことはあるが。『可愛がって』と言う代わりに『虐めて』という。恵はそこに違和感を抱きながらも、言われたとおりにする。ワニグチクリップに咬まれた乳首は血の味がした。
「ああっ……いい。素敵……すごく上手になったのね」
その言葉には羞恥だけを感じた。大きさも要領もまったく違うのだが。男どもの肉棒をしゃぶらされた経験が舌使いに表われている――そうとしか考えられなかった。
ユリがだんだんと恵の股間に向かってずり上がりながら、身体を横向きに変えていった。
男どもが椅子から立ち上がって、机を真直(まじか)に囲んだ。
キュンッと、腰の奥底でなにかが鋭く蠢くのを恵は感じた。それを恵は――無毛と化した左右の丘に三つずつ並ぶ黒点を見たせいだと錯覚した。
これまでは淫叢に埋もれていた、お灸の痕。ごくちいさな黒点と覚えていたけれど、実際には直径五ミリを超えている。小さな子供の頃に親から折檻されたのかと尋ねたら、違うと――すごく熱いけれど快感が凄まじいと、そんな言葉が返ってきた。
(やはり、お姉様は変態だったんだ)
恵は確信した。自身は絶対にそんなことはないけれど。縛られたり叩かれたりして性的に興奮する女性もいるということを、男どもの会話で聞きかじっている。浜村は自分の奥さんについて、何度かそんな惚気話(?)をしていた。女性器にお灸を据えられて快感だなんて、お姉様もそんな変態だったんだ。
しかし。恵の心はユリから離れなかった。ユリを慕うなら、ユリの寵愛を得たいなら――自分も変態の道に足を踏み入れなければならない。そんなふうに明確な思考とはならなかったが恵は――自分の中で何かが変わろうとしているのを感じていた。いや、変わるというよりも。それまでは存在にすら気づかなかったパンドラの箱。それを目の前にしていた。恵はしかし怖気づいて、それを開けようとはしなかった。男どもに見物されているということも頭から追い払って、肉体の交歓にのめり込んでいった。
熱風ほどにも感じられるユリの吐息を敏感な先端に受けて。それだけで腰が震える。
「ああん……」
鞭で敲かれワニグチクリップに咬み破られ、ついには葉巻の火を押しつけられて灼かれた肉蕾は、ようやく薄皮が張って治癒が始まりかけている。ただでさえ敏感なそこは、わずかな刺激にも凄まじい痛みをを生じるのだが、快感への感受性も数倍に高まっていた。そこを口にふくまれ舌を這わされて……
「ひゃあんっっ……! や、やだ……やめて……翔ぶ……翔んじゃう!」
以前は同じようにされても、宙に浮き上がるような感覚だったが、今は、天に向かって放たれた矢のように、凄まじい勢いで翔け昇っていた。
ふっと、ユリの口が股間からはなれた。
「ああっ……駄目! もっと、もっと……」
男どもの視線を忘れよう戯れに没頭しようという意識が、恵を敢えて淫放にさせていた。同時にそれは、パンドラの箱をも、すこしずつ開けていくことにもなる――とは、そこまで気づいていない。
「わたしも昇り詰めないといけないのよ。もっと虐めて。噛んで……恵がクリップに噛まれたよりもずっと強く……」
それまでずっと受け身だった恵は、自分たちに課せられた厳しい条件を思い出して、積極的にユリを責めようと――すこし冷めた気分になって考えた。
ユリの股間は、もちろんワイヤーで傷つけられてはいるが、数時間前までは無垢だった。連日の拷問で傷の上に傷を重ねられ、全体が厚ぼったく腫れている恵や紗良とは、まるで違って見えた。恵は口を大きく開けて、嫉妬混じりの気分で股間全体にかぶりついた。すでにユリの淫核は小指ほどにも固く太く屹立していた。その根元に歯を立てて――
ずぢゅううう……強く息を吸った。
「ひゃあああっ……凄い。こんなこと、教えてないのに」
考えてみれば。大きさは極端に違うけれど、股間に生えている肉棒に違いはない。恵は根元を歯で固定して、淫核全体に細かく舌を這わせ先端をつつき執拗にしゃぶった。どれだけ奉仕しても喉を突かれないのが物足りないような気がしてくる。
「恵……右脚を開いて上に伸ばして」
そんなことをすれば、羞恥の根源というだけでなくユリに責められている箇所が男どもの目に露骨に曝される。それをわかっていながら、恵はユリの言葉に従った。ユリが身体をひねって恵の爪先をつかみ、さらに開脚させる。
「わたしも、同じように……」
チラッと斜め上を見ると、そこにユリの爪先があった。それをつかんで、高さを競い合うように押し上げた。
そうやってみると――自然と淫唇が割り開かれて、膣の中まで舌先が届くようになった。
「あう……なんだか……」
ユリの舌が奥をつついて、淫核の鋭い快感とは異なる重厚な感覚が腰を痺れさせた。
恵も、同じようにユリを責める。舌をすぼめて膣に挿入しながら、身体を横向きに支えている片腕を伸ばして淫核をまさぐる。
「なにがどうなっているんだ。指が絡まり合って、わけがわからん」
その声が誰のものか、恵には判別がつかない。つけようとも思わない。
恵はユリの動きを忠実に模倣している。指で淫核を刺激するのは控えめにとどめて、膣口を丹念に大胆に、舌の筋肉が痙攣しそうになるまで激しく蠢かす。
恵の腰の奥――いや、はっきりと膣の奥に、粘っこい溶岩のような快感が溜まっていく。しかし淫核への刺激で噴火が始まるそうになると、ユリの指が逃げてしまう。
ユリも感極まりつつあるのが、それとなく恵にもわかる。しかしユリは寸前で腰をくねらせて恵の指をかわし、舌での奉仕は続けさせる。
「焦らさないで……」
もどかしい訴えは、いっそう腰を押しつけられて封じられる。そうして、腰全体が熔岩の塊りと化したとき。淫核をこねくる恵の指を、ユリがつかんだ。
「恵……逝くわよ。おもいっきりつねってちょうだい」
言うなり、ユリが淫核を強く噛んだ。
「ひぎゃあああああああああっ……ああああ、ああっ……!!」
淫核を噛まれた激痛が、そのまま純粋無垢な快感に昇華した。激痛が腰から脳天を貫き、同時に太い稲妻が地から天に向かって奔った。いや、恵の全身が稲妻と化していた。恵は宙に高く上げた脚を突っ張っていた。まるで感電しているように、激しく震えている。
ユリの手が恵の指を強く握って、斜めにひねった。恵の指の中で、弾力のある小さな塊りがグニンとつぶれた。
「ああああっ……逝く! 逝きますうううううう!」
ユリの脚も宙に凍りついた。
十秒ほどで二人の脚がダランと垂れた。恵の股間を弄っていた手が、背中にまわされて。二人は固く抱き合った。
(あたし……なんで、こんなことしちゃったんだろ)
遥かな高みからふんわりと漂い降りながら、恵は自分自身を訝しんでいた。
他に選択肢が無かったのは、たしかだ。浜村たちの言葉に逆らえば、有刺鉄線を巻きつけたワイヤーを跨がされるよりも残虐な拷問にかけられるかもしれない。五分も十分も高電圧で感電させられるかもしれない。それどころか、後ろ手に縛られて懸垂もできないまま首を吊られるかもしれない。真似事でも同じ目に遭わされる。ほんとうにお姉様と一緒に絶頂するしかなかった。そのためには、自分の(お姉様との)行為に嫌悪を感じてもいけなかた。
でも……そんなのは後からの理由付けだと、恵は知っている。二人で睦み合っていたときには、心の底からそれを求めていた。
お姉様が変態なら、自分も悦んで変態になろう。そうは思い定めたけれど。人非人どもへの憎悪まで忘れていたなんて……それが信じられなかった。
なぜか。拷問されて殺された作家のこととか、留置場の一般房に入れられている人たちのことが頭に浮かんだ。まるで無関係な連想だが……そこに何かが隠されているような直感があった。
しかし、そのことについて考えているゆとりなど、あるはずもなかった。
========================================
ま、局所的甘々展開です。
この夜は強制69緊縛で「粗相をしたら厳罰」ということで永久運動というか流体力学における連続体の法則に準拠するわけです。A出す→B飲む→B出す→A飲む→A出す…………ですね。
さて、この土曜日はチャイルス無視して6人以上でほぼ休眠同人誌の飲み会ですが、月曜からも休業ですので、9月中に脱肛できるかもしれません。
ほんま。SM小説執筆/電子出版は、時給換算30円だよなあ。
今回の未校訂公開分は第四章第四節です。前回に予告した通り、トイチヤイチ(トイチハイチ)です。
========================================
・睦み合う二人
無限とも思える二時間が過ぎて。荒島、浜村、青谷、泊の四人が戻ってきた。その後から初老の男と、恵たちにカテーテル処置を施した看護婦。今日は和服姿だった。恵たち三人はワイヤーから下ろされて後ろ手にいつもの鉄枷を嵌められた。平机を診察台代わりにして傷の――つまりは女性器の具合を調べられる。
「ふさぎかけていた傷口が、また裂けています。当分は取り調べを控えたほうがよろしいでしょう」
とは、紗良のことだった。医者の進言で、紗良への尋問は取りやめになった。後ろ手枷は傷と関係ないので容赦されない。どころか。浜村は、傷の手当てに使う薬品を医者に指示した。
「それは……へたな軟膏よりはよほど効きますが」
「塩や蝋燭よりも、な」
医者は溜息をついて、大きな茶色のガラス瓶を鞄から取り出した。
それを見て、紗良の顔が引き攣った。が、なにも言わない。抗議はいっそうの過酷で報われると身に沁みている。
アルコールを染ませた脱脂綿で、医者が傷口を丹念に拭う。
それだけでもじゅうぶんに沁みるはずだが、紗良は唇を引き結んで呻き声も漏らさない。しかし。明るい茶色の液体に染まったガーゼを、割り開かれた淫唇の内側に貼り付けられると。
「くううう……あ、熱い。痛い……きひいい」
それはもちろん。有刺鉄線を巻いたワイヤーを跨がせられたときなどに比べれば慎ましやかな悲鳴ではあったが。処置が終わっても、紗良の悲鳴は止まらない。この時代、ヨードチンキをアルコールで希釈した薬品は傷薬として常用されていた。低学年の子なら、擦り剥いた膝頭にヨーチン液を塗られて泣かない子はいなかった。しかも、ヨードチンキ希釈液の不適切な用法として、粘膜への塗布とガーゼや脱脂綿による被覆とが挙げられている。そのふたつを同時に施されては、長時間の拷問も同然だった。
ガーゼが剥落しないようにと股縄を結ばれて、紗良は拘置房へ戻された。
ユリについては。
「無傷も同然ですね」
現実に出血している股間を見て、医者が無雑作に診断する。ただし、ひと言を付け加える。
「もちろん、ここだけに適用する診断基準ですがね」
「今朝までは真っ更だったんだからな。こっちの娘は、どうですか?」
医者は、恵には紗良ほどではないが慎重に傷口を診た。
「以前の傷が完治していませんが――さきの娘ほどにはヨードチンキ希釈液の効果はないでしょう」
効果とは、暗に副作用(激痛)を指している。しかし、医者としての務めも忘れてはいない。
「それよりも、腹部の痣が気になります。二、三日前に殴られた痕ですね。下手をすると内臓破裂を起こしかねません。、お手柔らかに願いますよ」
恵は自分で見ても、腹に痣が残っているとは気づかなかった。やはり、医者の目は違うのだろう。
「わかっている。女房なんか週に一度は殴っているが、まだピンシャンとしている。それも、目隠しをさせて、腹筋を固める余裕も与えずに――だ」
「なるほど。釈迦に説法でしたな」
「いや、馬の耳に念仏だね」
浜村が恵の腹に握りこぶしを押し当てて、酷薄に――微笑したつもりなのだろう、唇の端がゆがんだ。
恵は反射的に腹に力をいれたが、そのときは殴られずにすんだ。
「さて、午後も美しき師弟愛の発露を拝見させてもらうか。いや……トイチヤイチの間柄だったな」
ユリは頬を染めたが、恵はポカンとしている。
トイチヤイチ、あるいはトイチハイチともう。カタカナの『ト』と漢数字のイチで上、漢数字またはカタカナの『ハ』を左へ傾けて漢数字のイチで下。つまり、上下を意味する。なぜか男女の睦み事ではなく、女同士の絡み合いを指す隠語として使われている。
「トイチヤイチか。そう言えば、延べ七人も取り調べていながら、一度もさせたことがなかったな」
荒島が身を乗り出した。
「どうだね。活きの良いうちに二人を絡ませてみては?」
「僕も寡聞少見にして、トイチハイチはお目にかかったことがありません」
自分の担当だから恵だけは責めるし、輪姦にはお付き合いで加わっている。そんな青谷までが、珍しく乗り気になっている。
「では、こうしましょうや」
浜村が、嗜虐味にあふれた提案をする。
「逝かせっこをさせて、先に気を遣らせたほうは今日の尋問を取りやめにしてやる。逝かされたほうは、二人分の責めを一身に引き受ける――というのは、どうです?」
「そりゃ、駄目だ。馴れ合いでダラダラ真似事をされては時間の無駄だ」
「では、先に気を遣ったほうを免除するようにしますか」
「ふむ。海千山千の女教師と、初心な女学生とでは勝負は見えているが――どうせ、今日は石山ユリの取り調べを優先する予定だったから、好都合か」
こういった相談を聞かされては、恵にも鬼畜どもの企みは推察でできる。
(絶対に厭……お姉様との交歓を見せ物にされるなんて!)
しかし一方のユリは――うつむけた顔の中で、唇が妖艶に微笑している。ペロリと唇を舐めた仕種は、教え子を先に逝かせることで拷問を免れさせるという自己犠牲の精神とは懸け離れていた。
「そういうことだ。ちょっと狭いが、この上で演じてもらおう」
浜村が泊に手伝わせて、平机を部屋の中央に引き出した。
恵とユリは手枷をはずされた。両手を自由に使えるというのは、恵にとっては何日ぶりのことだろう。しかし、その手をどういうふうに使わされるかを考えれば、ちっともありがたくなんかなかった。
「ほんとうに……恵を先に逝かせれば、この子への拷問は赦してくださるのですね?」
ユリが、提案者の浜村にではなく、場を取り仕切っている荒島に尋ねた。
「それだけじゃ、つまりません。女先生にも昇天してもらいましょう」
「つまり、瀬田恵に気を遣らせてから自分も気を遣るということか」
「そうですな。どちらかが気を遣らなかったときは、気を遣ったほうに二人分の責めを与える――わかったな」
最後は、ユリと恵を交互に見比べながら言った。条件が格段に難しくなった。
しかしユリはそれを受け容れた。不平を口にしてしっぺ返しを恐れるというよりも、自信たっぷりといった風情だった。
「わかりました。さ……恵。この殿方たちに、わたしたちの至純の交歓を見ていただきましょう」
「先生……?」
恵は、意想外のユリの態度に驚いている。
(たとえこの場だけでも、あたしを庇おうとしくれている?)
(感電は厳しかったけれど……鞭で肌を切り裂かれる痛みは、まだ御存知ないのだわ。大勢の暴姦魔どもにすべての穴を何度も何度も凌辱される苦痛と屈辱。上と下をつながれて、他人の汚物を口にする恥辱も……)
(逆さ吊りも駿河問も水責めも……)
そして、なによりも。
(殿方だなんて……この人非人どもが約束を守るなんて、本気で考えてらっしゃるのかしら?)
しかし。人非人に逆らえばどうなるかも、恵は知り尽くしている。恵は、ユリの部屋で彼女の差し出す手を握るときとは真反対の気分で、腕を伸ばした。
ユリは平机の上に恵を仰臥させ、自分は縁に尻を乗せて横座りになった。両手で恵の頬を挟んで、ゆっくりと顔を近づけていく。男どもが折りたたみ椅子で机を囲むのも、まったく気にしていない。いや、敢えて見せつけるような仕種だった。
唇を吸われ舌を絡められて。恵は簡単に蕩けていった。自らの意志で、そうしようと思った。ユリが自分を庇ってくれるのなら、それに甘えてみようと思った。もしも二人分の拷問を一身に受けて、その後も庇ってくれるのなら――ユリの恵への愛情は本物だ。そんな、醒めた計算も無くはなかったが。
ユリを目の前にしてようやく。これまでは考えないようにしていた疑問が意識の奥底から頭をもたげてきた。
(ほんとうに、お姉様はあたしを愛してくださっていたのだろうか)
(お部屋に誘った最初から、あんなふうになさるなんて)
(ご自分の変態趣味に巻き込むなんて)
(若い初心な娘を……弄ぶとはいわないけれど、揶揄ってらしたのではないかしら?)
それは――男どもの淫欲に貪られて、初めて得られた視座だった。
「かわいそうに……こんなに傷つけられて」
ユリの顔が下に動いて、まだ鞭痕の残る乳房に舌を這わせ、瘡蓋におおわれた乳首をついばむように口に含んだ。
治りかけの傷を優しくしかし執拗に愛撫されて、かすかな痛みとむず痒さと、そして忘れていた快感のさざ波が次第に大きくうねり始めた。
「ああっ……ああんんん。羞ずかしい……」
どうしても、鬼畜どもの視線を感じてしまう。しかしその羞恥は、腰の奥に熱い熾火が生じるのを妨げはしない。いやむしろ、これまでのユリとの交情よりも激しく熱く燃え盛ってくる。それを異常とは、ユリは感じていない。
(だって……もう会えないと諦めていたお姉様と再会できたのだもの)
そんなふうに、恵は自分の心の動きを解釈している。見られて、それを恥ずかしく思うことが快感と直截につながっているとは、無意識下ではともかく頭では理解していない。
ユリも机に上がって、上下逆さまになって恵におおいかぶさった。
「わたしのお乳も虐めてちょうだい」
自分でも口にしたことはあるが。『可愛がって』と言う代わりに『虐めて』という。恵はそこに違和感を抱きながらも、言われたとおりにする。ワニグチクリップに咬まれた乳首は血の味がした。
「ああっ……いい。素敵……すごく上手になったのね」
その言葉には羞恥だけを感じた。大きさも要領もまったく違うのだが。男どもの肉棒をしゃぶらされた経験が舌使いに表われている――そうとしか考えられなかった。
ユリがだんだんと恵の股間に向かってずり上がりながら、身体を横向きに変えていった。
男どもが椅子から立ち上がって、机を真直(まじか)に囲んだ。
キュンッと、腰の奥底でなにかが鋭く蠢くのを恵は感じた。それを恵は――無毛と化した左右の丘に三つずつ並ぶ黒点を見たせいだと錯覚した。
これまでは淫叢に埋もれていた、お灸の痕。ごくちいさな黒点と覚えていたけれど、実際には直径五ミリを超えている。小さな子供の頃に親から折檻されたのかと尋ねたら、違うと――すごく熱いけれど快感が凄まじいと、そんな言葉が返ってきた。
(やはり、お姉様は変態だったんだ)
恵は確信した。自身は絶対にそんなことはないけれど。縛られたり叩かれたりして性的に興奮する女性もいるということを、男どもの会話で聞きかじっている。浜村は自分の奥さんについて、何度かそんな惚気話(?)をしていた。女性器にお灸を据えられて快感だなんて、お姉様もそんな変態だったんだ。
しかし。恵の心はユリから離れなかった。ユリを慕うなら、ユリの寵愛を得たいなら――自分も変態の道に足を踏み入れなければならない。そんなふうに明確な思考とはならなかったが恵は――自分の中で何かが変わろうとしているのを感じていた。いや、変わるというよりも。それまでは存在にすら気づかなかったパンドラの箱。それを目の前にしていた。恵はしかし怖気づいて、それを開けようとはしなかった。男どもに見物されているということも頭から追い払って、肉体の交歓にのめり込んでいった。
熱風ほどにも感じられるユリの吐息を敏感な先端に受けて。それだけで腰が震える。
「ああん……」
鞭で敲かれワニグチクリップに咬み破られ、ついには葉巻の火を押しつけられて灼かれた肉蕾は、ようやく薄皮が張って治癒が始まりかけている。ただでさえ敏感なそこは、わずかな刺激にも凄まじい痛みをを生じるのだが、快感への感受性も数倍に高まっていた。そこを口にふくまれ舌を這わされて……
「ひゃあんっっ……! や、やだ……やめて……翔ぶ……翔んじゃう!」
以前は同じようにされても、宙に浮き上がるような感覚だったが、今は、天に向かって放たれた矢のように、凄まじい勢いで翔け昇っていた。
ふっと、ユリの口が股間からはなれた。
「ああっ……駄目! もっと、もっと……」
男どもの視線を忘れよう戯れに没頭しようという意識が、恵を敢えて淫放にさせていた。同時にそれは、パンドラの箱をも、すこしずつ開けていくことにもなる――とは、そこまで気づいていない。
「わたしも昇り詰めないといけないのよ。もっと虐めて。噛んで……恵がクリップに噛まれたよりもずっと強く……」
それまでずっと受け身だった恵は、自分たちに課せられた厳しい条件を思い出して、積極的にユリを責めようと――すこし冷めた気分になって考えた。
ユリの股間は、もちろんワイヤーで傷つけられてはいるが、数時間前までは無垢だった。連日の拷問で傷の上に傷を重ねられ、全体が厚ぼったく腫れている恵や紗良とは、まるで違って見えた。恵は口を大きく開けて、嫉妬混じりの気分で股間全体にかぶりついた。すでにユリの淫核は小指ほどにも固く太く屹立していた。その根元に歯を立てて――
ずぢゅううう……強く息を吸った。
「ひゃあああっ……凄い。こんなこと、教えてないのに」
考えてみれば。大きさは極端に違うけれど、股間に生えている肉棒に違いはない。恵は根元を歯で固定して、淫核全体に細かく舌を這わせ先端をつつき執拗にしゃぶった。どれだけ奉仕しても喉を突かれないのが物足りないような気がしてくる。
「恵……右脚を開いて上に伸ばして」
そんなことをすれば、羞恥の根源というだけでなくユリに責められている箇所が男どもの目に露骨に曝される。それをわかっていながら、恵はユリの言葉に従った。ユリが身体をひねって恵の爪先をつかみ、さらに開脚させる。
「わたしも、同じように……」
チラッと斜め上を見ると、そこにユリの爪先があった。それをつかんで、高さを競い合うように押し上げた。
そうやってみると――自然と淫唇が割り開かれて、膣の中まで舌先が届くようになった。
「あう……なんだか……」
ユリの舌が奥をつついて、淫核の鋭い快感とは異なる重厚な感覚が腰を痺れさせた。
恵も、同じようにユリを責める。舌をすぼめて膣に挿入しながら、身体を横向きに支えている片腕を伸ばして淫核をまさぐる。
「なにがどうなっているんだ。指が絡まり合って、わけがわからん」
その声が誰のものか、恵には判別がつかない。つけようとも思わない。
恵はユリの動きを忠実に模倣している。指で淫核を刺激するのは控えめにとどめて、膣口を丹念に大胆に、舌の筋肉が痙攣しそうになるまで激しく蠢かす。
恵の腰の奥――いや、はっきりと膣の奥に、粘っこい溶岩のような快感が溜まっていく。しかし淫核への刺激で噴火が始まるそうになると、ユリの指が逃げてしまう。
ユリも感極まりつつあるのが、それとなく恵にもわかる。しかしユリは寸前で腰をくねらせて恵の指をかわし、舌での奉仕は続けさせる。
「焦らさないで……」
もどかしい訴えは、いっそう腰を押しつけられて封じられる。そうして、腰全体が熔岩の塊りと化したとき。淫核をこねくる恵の指を、ユリがつかんだ。
「恵……逝くわよ。おもいっきりつねってちょうだい」
言うなり、ユリが淫核を強く噛んだ。
「ひぎゃあああああああああっ……ああああ、ああっ……!!」
淫核を噛まれた激痛が、そのまま純粋無垢な快感に昇華した。激痛が腰から脳天を貫き、同時に太い稲妻が地から天に向かって奔った。いや、恵の全身が稲妻と化していた。恵は宙に高く上げた脚を突っ張っていた。まるで感電しているように、激しく震えている。
ユリの手が恵の指を強く握って、斜めにひねった。恵の指の中で、弾力のある小さな塊りがグニンとつぶれた。
「ああああっ……逝く! 逝きますうううううう!」
ユリの脚も宙に凍りついた。
十秒ほどで二人の脚がダランと垂れた。恵の股間を弄っていた手が、背中にまわされて。二人は固く抱き合った。
(あたし……なんで、こんなことしちゃったんだろ)
遥かな高みからふんわりと漂い降りながら、恵は自分自身を訝しんでいた。
他に選択肢が無かったのは、たしかだ。浜村たちの言葉に逆らえば、有刺鉄線を巻きつけたワイヤーを跨がされるよりも残虐な拷問にかけられるかもしれない。五分も十分も高電圧で感電させられるかもしれない。それどころか、後ろ手に縛られて懸垂もできないまま首を吊られるかもしれない。真似事でも同じ目に遭わされる。ほんとうにお姉様と一緒に絶頂するしかなかった。そのためには、自分の(お姉様との)行為に嫌悪を感じてもいけなかた。
でも……そんなのは後からの理由付けだと、恵は知っている。二人で睦み合っていたときには、心の底からそれを求めていた。
お姉様が変態なら、自分も悦んで変態になろう。そうは思い定めたけれど。人非人どもへの憎悪まで忘れていたなんて……それが信じられなかった。
なぜか。拷問されて殺された作家のこととか、留置場の一般房に入れられている人たちのことが頭に浮かんだ。まるで無関係な連想だが……そこに何かが隠されているような直感があった。
しかし、そのことについて考えているゆとりなど、あるはずもなかった。
========================================

ま、局所的甘々展開です。
この夜は強制69緊縛で「粗相をしたら厳罰」ということで永久運動というか流体力学における連続体の法則に準拠するわけです。A出す→B飲む→B出す→A飲む→A出す…………ですね。
さて、この土曜日はチャイルス無視して6人以上でほぼ休眠同人誌の飲み会ですが、月曜からも休業ですので、9月中に脱肛できるかもしれません。
ほんま。SM小説執筆/電子出版は、時給換算30円だよなあ。
Progress Report 6:赤い冊子と白い薔薇
Progress Report 5は、ひとつ下です。
四.入替
・女教師の尋問
翌日は午前中に紗良だけが取調室に連行されたが、一時間もしないうちに房へ戻された。分厚く血糊がこびりついていた股間は、白色の蝋に埋め尽くされていた。つまり拷問ではなく、乱暴極まりない消毒をされたのだった。
そうして次の日は、恵だけに――これは、厳しい拷問が行なわれた。
さすがに有刺鉄線は巻かれていないが、素線の毛羽立つワイヤーを跨がされて、両足に四つのコンクリートブロックを吊るされた。腕は高手小手に縛られ、前のときとは違って身体を支える縄は一切掛けられていない。全体重の二倍が股間にかかるという――恵にとっては初めての苛酷な試練だった。後ろ手を伸ばして引き上げられる肩の鈍い痛みは無く、股間の激痛は倍にも感じられる。
恵をワイヤー上に据えると浜村が取調室から出て行き、残るは荒島と青谷と淀江。しかし、誰も恵に尋問しようとはしない。淀江は退屈そうにしているが、荒島も青谷も持ち込んだ書類を熱心に調べている。ほかの仕事に追われながらも小娘を甚振る時間を確保する――その歪んだ熱心さに、恵は呆れもした。
恵が脂汗にまみれながら呻吟を続けること十分、いや三十分だったか。
取調室のドアが開いて――ひとりの女性が、部屋の中に突き飛ばされた。その姿を見るなり、恵は叫んでいた。
「お姉様っ……?!」
ぐしょ濡れのブラウスに下着の線を浮き上がらせた石山ユリ――恵が命を賭して庇い通そうとした、その人だった。後ろ手に嵌められた鉄枷を見れば、ユリがささやかな容疑で勾引されたのでないことは明白だった。
ユリを連行して戻ってきた浜村が、芝居がかった台詞を口にする。
「ひさしぶりの教え子との対面だ。言葉のひとつも掛けてやれ」
濡れそぼってパーマの崩れた髪を泊がつかんで引き起こし、ユリを恵の前に立たせた。
「なんてことを……!」
恵の血まみれの股間に食い込むワイヤーを見て、ユリが絶句する。
「この子に罪はありません。あの冊子は、わたしが勝手に押しつけたのです。この子は、内容をろくに理解できていません」
「まあまあ……」
恵を庇おうとする女教師に、荒島がゆっくりと手を伸ばす。ユリは身じろぎもせずに、乳房をつかまれるにまかせている。
「物事には順番がある。教え子が素っ裸だというのに、女先生だけが服を着ているのは不公平とは思わんかね」
「わたしを辱めるのなら、どうぞお好きなように。でも、この子は赦してやってください。政治にはなんの関心もない平凡な女学生にしか過ぎません」
「平凡ではなく変態だと思うが――ともかくも、おまえの望み通りに辱めてやろう」
荒島はブラウスの襟を両手でつかむと――
ビリイイイイッ……
一気に引き千切った。ユリは仁王立ち(という言葉がふさわしいと、恵は思った)のまま、荒島を睨みつけている。
乳バンドを毟り取られスカートを引きずり下ろされ、腰を申し訳程度に蔽っている下穿きを引き千切られて――全裸にされてもなお、微動だにしなかった。
「これで気が済みましたか。恵さんを、その忌まわしい仕掛から下ろしてやってください。乗れと言うなら、わたしが乗ります」
(お姉様は、この拷問の恐ろしさをわかってらっしゃるのだろうか?)
わかっているに違いないと、恵は自分に即答した。この痛みは具体的に想像できなくても、股間から太腿に伝う鮮血を見れば、ワイヤーの残虐さは容易に理解できる。つまり――我が身を犠牲にして教え子を、それとも年下の愛人を助けようとしてくれている。
「おまえを愉しませるわけにもいかん」
荒島が反語的にうそぶいた(と、恵は理解した)。
「この小娘を助けたければ、正直になにもかも白状しろ。おまえは、アカ本を誰からもらったのだ? 古本屋で買いましたなどとふざけたことをいうと――」
荒島が、恵の斜め後ろに動いた。恵の腰を両手でつかんで――前後に揺すった。
「ぎゃわああああっ……やめて、やめて!」
荒島が手を放して、冷たい声で宣告する。
「おまえではなく、可愛い教え子が苦しむことになる」
「……………………」
ユリは唇を噛んでうつむき、十秒ほども悩んでいたろうか。
「言えません……」
ポツリとつぶやいて。不意に激した様子で、言葉を継ぐ。
「卑怯です。なんの罪もない恵さんを使って脅すなんて。罪を犯したのは、わたしです。責めるなら、わたしを責めてください」
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、というやつだ」
荒島が、今度は壁に掛けてある竹刀を手に取った。
「おねえ……先生。こんな脅しに屈さないでください。竹刀で敲かれるくらい、平気です」
さっきは思わず『お姉様』と言ってしまったけれど、それではますます二人の緊密な仲を悟られてしまうと――言い直したのだが。竹刀で平気なら鉄鞭にしてやろうか――荒島なら、それくらいは言いだしかねないと、そちらは忘れていた。
「まあまあ、課長殿。どうせ、こいつは筋金入りの党員でしょう。そう簡単には口を割りませんよ。それよりは――願いを叶えてやって、恩を売っては如何でしょうか」
浜村が奇妙な進言をした。いや、最初からそういう筋書きだったのかもしれない。
「ふむ。では、キミに任せてみるか」
荒島が後ろに下がって、折りたたみ椅子に座った。
そのときになって、ようやく恵は――今日に限って、尋問用の大きな平机が壁のそばに寄せられていることに気づいた。具体的になにをされるかはわからないが、恵とユリを甚振るための準備だとは、容易に知れた。
意想外にも、浜村はユリの手枷をはずした。
「両手を頭の後ろで組んで、脚を横に開け」
ユリの顔に微妙な翳りが浮かんだ。当然だ――と、恵は思う。縛られて破廉恥極まりない姿にされるのではなく、自らの意志で、股間も胸も腋の下まで無防備に曝すというのは、むしろ恥辱は深いのではないだろうか。
「これから十五分、おまえがその姿勢を崩さなかったら、瀬田恵をワイヤーから下ろしてやろう。言葉に嘘偽りのない証として、まずは責めを緩めてやる」
恵の足から、四つのコンクリートブロックが取り除かれた。
ほふうと――恵が息を吐いた。もちろん、幾分やわらいだとはいえ、数日前の恵なら声を限りに泣き喚いている激痛に違いはない。それだけ、恵は拷問に馴致されていた。
「課長殿。何時何分でしょうか」
「ん? 十時五分だ。つまり十時二十分まで、この女を甚振るのだな」
「さて、ね。時間が来たら、教えてくださいよ」
「承知した」
ユリを甚振るために浜村が最初に選んだのは、水垢がこびりついて黒ずんでいる荒縄の束だった。青谷が恵を打ち据えたときに使った得物だ。それをバケツの水に沈めて、浜村は脇机からワニグチクリップを取り出した。
「ひ……」
ユリが息を呑むのを見て、恵は小さな疑問を抱いた。お姉様は、あの痛みを御存知なのだろうか。もしかしたら――ゴム紐の褌をわざと引っ張って割れ目に弾くくらいだから。自分で試したことがあるのかもしれないと思った。
「動くなよ」
浜村がワニグチクリップをユリの乳首に咬ませた。
「く……」
固く歯を食い縛ってはいるが、悲鳴を無理にこらえているようにも見えない。さんざん拷問されて激痛に馴致されている恵でも、猿轡がなければ絶対に泣き叫ぶ痛みだというのに。
双つの乳首、そして包皮の上から肉蕾にも。
「浜村クン。もう五分が過ぎたぞ」
もっと激しく甚振ってやれと、荒島がけしかける。
「へいへい」
浜村が水浸しの荒縄をバケツから取り出したとき、ユリが懇願した。
「このままで敲くのは……赦してください。千切れてしまいます」
理屈で考えれば、そうなるかもしれない。けれど、察しが良過ぎはしないだろうか。自分でちょっと試したくらいでは、そこまで想像できない。そんなふうに、恵は思う。像(かたち)のはっきりしない疑念が湧いた。が、それは肉を敲くすさまじい音に消し飛んでしまった。
浜村はユリの真正面で脚を踏ん張って、背中まで腕をまわしてから、縄束をユリの乳房に叩きつけた。
ぶゅん、バッッシャアアン!
豊満な乳房がひしゃげて横に流れ、ぶるるんと弾んだ。
「きゃああああっ……!」
絶叫。しかし、ユリは両手を頭に組んだまま、姿勢を崩さなかった。
ぶゅん、バッシャアアン!
「ぎひいいいっ……!」
縄束の往復ビンタを食らって、しかし乳首は無事だった。血まみれにはなったけれど。
「ずいぶんとお淑やかな悲鳴だが、こいつはどうかな?」
浜村の腕がダランと下がった。半歩後ろに引いて、前へ出る動きに乗せて腕が跳ね上がる。
ぶん、バシイン!
「あがっ……」
天を仰いで口を開け――息を詰まらせて悲鳴を吐き出せないユリ。
「おまえは苦痛には強いな。インチキ教師にふさわしく淫乱で破廉恥でもあるし。どうすれば堪えるものやら」
浜村は壁の棚から有刺鉄線の鞭を取り上げかけて、元に戻した。
「これを使っては、生徒を誑かすのが難しくなるか。あちらからお叱りを蒙るだろうし」
つぶやき声だったので恵にはよく聞き取れなかったが――聞こえていたところで、意味は理解できなかったろう。
「我ながら生ぬるいとは思うが……」
浜村が棚から持ってきたのはアルコールランプだった。蓋を開けて芯を引き抜くと、中のアルコールを股間にぶちまけた。そして、マッチで火を点けた。
ボオオオッ……
太腿から股間までが、青白い炎に包まれた。
「くっ……」
ユリは小さく呻いたきり、命じられた姿勢を崩そうとしない。毛の焼ける厭な臭いが恵のところまで漂ってきた。
「ほお、なるほど。これが折檻灸の痕か」
淫叢を失った左右の大淫唇に並ぶ三つずつの黒点の正体を、浜村は即座に見破った。いや、事前に知っていたような口ぶりだった。
「どうせなら、ここまで躾けてやっちゃどうですか?」
浜村が語りかけている相手は青谷だった。いずれは恵が彼の奴隷妻になると見越しての戯言だろう。青谷は、肩を竦めるだけの反応すら示さなかった。
「浜村クン。あと五分だぞ」
「だとよ。最後のひと踏ん張りだぞ」
何を思ったか、浜村はユリの急所からワニグチクリップを取り去った。そして、素手でユリに向かい合う。
「おらあ!」
気合声とともに、浜村の右手がユリの顔を水平にはたいた。
バッシイン!
ユリの顔がひしゃげて横にねじられる。
バッシイン!
手の甲が反対側の頬に叩きつけられて、ユリの顔が反対側へ吹っ飛んだ。
しかし、両手を頭の後ろで組んだ姿勢は保たれている。
浜村が無言で一歩踏み込んだ――と同時に。
ボスン!
拳が腹にめり込んだ。
「ぐぶっ……うええええ」
ユリが身体を二つに折って、胃液を吹いた。しかし、すぐ元の姿勢に戻った。その間、両手は頭の後ろからはなれていない。
ボスン!
ユリが膝を突きかけて――かろうじて踏みとどまった。
「なかなかに生徒思いの女先生だな。いいだろう、瀬田恵は赦してやろう」
(えっ……?)
驚いたのは恵だった。時間切れ寸前だけど、まだすこしは残っている。淫虐非道の男が、まさか仏心を起こしたはずもなかろうに。
戸惑っているうちに、恵はワイヤーから下ろされた。淀江は泊と入れ替わりに退出していたから、泊ひとりが奮闘して――ワイヤーにこれ以上引っ掛かれないような配慮はしなかったので、内腿にまで新しい(小さな)傷ができてしまった。
浜村が恵をうつ伏せに押さえつけ、鉄枷をはずして四肢に別々の縄を巻いた。その縄が一つにまとめられて、滑車から垂れる綱に結びつけられ――恵は宙吊りにされた。
肩が鋭く痛み背筋を激痛が奔り、股関節は重く軋む。
「く、苦しい……」
恵は、できるだけ苦痛を訴えまいと頑張るが、どうしても呻きが漏れてしまう。
「なぜ、恵さんを虐めるのですか。約束が違います」
ユリの抗議を、浜村がせせら嗤う。
「約束どおり、ワイヤーから降ろしてやった。駿河問に掛けないとは言ってないぜ」
浜村がコンクリートブロックを恵の真下へ運ばせた。
「お願いですから、赦してあげてください。背骨が折れてしまいます」
ユリの必死の訴えに、恵はまた小さな疑問を持った。駿河問は体練の上体反らしを深くしただけで――たとえば海老責めに比べれば、そんなに厳しそうには見えない。実際に吊られてみて初めて、その苦しさがわかる。すくなくとも、恵自身はそうだった。
お姉様はなぜ、この責めの厳しさを御存知なのだろう。ことに、背骨が折れるという訴えは生々しい実感がこもっていた。
(もしかすると……)
あのゴム紐褌は、お姉様の発明ではないのかもしれない。誰かに教えられて……その人に、こんな責めまで受けたのではないかしら。浜村や浅利が女体を虐めて愉悦を覚えるように――女の人が女の人を虐めるということも、ありそうな気がする。いつしか恵は、人が性的興奮を求めて人を責めるという図式を自然と受け容れていた。もっとも。仮にユリが誰かから性的な悪戯を仕込まれたのだとしても、その誰かとは女性に決まっている――そんな思い込みに囚われてはいたが。
「では、もう十五分ばかり頑張ってみるか?」
浜村の意図は、恵にもわかった。だから、さっきは制限時間前に赦してくれたのだろう。
「いちいちわたしに尋ねないで、お好きになさってください」
ユリは、まだ両手を頭の後ろで組んだまま――ことさら挑発するように言い放った。
「そうか。ならば、とっておきの責めに掛けてやろう」
浜村が腰をかがめて、平机の下から電熱器を引き出した。雲母の板に彫られた渦巻状の溝の中にニクロム線のコイルを嵌め込んだコンロだ。浜村が、またなにか新手の残虐を思いついたのだろうか。
「か、感電は……厭です」
ユリの声が震えていた。
(感電……?)
恵の中に、また疑問が積み重なった。恵は、まっ赤に焼けたコイルを肌に押しつけられるものと想像して、恐怖に心臓を鷲掴みにされていた。蝋燭やアルコールランプよりずっと熱いだろうし、焼かれる面積も桁違いだ。恵には、電熱器と感電とが結びつかなかった。
「厭なことをしなければ、責めになるまいよ」
浜村は、またワニグチクリップをユリの裸身に咬ませた。乳首と淫核だけでなく、大きくはみ出している小淫唇にも。今度のワニグチクリップには、長い電線がつながれている。
さらに。拷問椅子から棒ヤスリを取り外して、それにも電線を巻きつけて。恵の予想に反して、それは膣に押し込まれた。
「い、痛い……きひいいっ……せめて、濡らしてから……ひいいい」
あれこれ注文をつけるなんて、怖いもの知らずだな――とも、恵は思う。あたしなんか、紗良さんがワイヤーを跨がされているのを見て、竦みあがってしまったのに。
浜村は細引きを使って棒ヤスリが抜け落ちないようにしておいてから。また別の小道具を取り出した。中の火薬や作動機構を抜き取った、先すぼまりの金属筒――信管だった。底部のネジに電線を巻きつける。
「立ったままだと、ひとしお苦しいぞ」
尻の谷間にあてがって、力まかせに押し込んだ。
「ぎひいいっ……」
激痛に膝が砕けたのか、ユリは信管に向かって腰を落とすような動きをした。下手に逃げるよりは、たしかに苦痛は短くてすむだろうが……
り上がっている。そこに電線を巻きつけて。これも潤滑無しで肛門にねじ込んだ。
「さて、これで準備完了だが……」
浜村が背伸びして、電熱器のコードを電球の二股ソケットにつないだ。
右の乳首から延びている電線の先にも、小さなワニグチクリップがついている。それを、ニクロム線の端子に留めた。
「まずは、ここらあたりか」
肥大の乳首から延びている電線を、電熱器の中心にあるネジの頭に近づける。
「あ、あああ、ああ……」
ユリが唇をわななかせる。全身が小刻みに震えている。
電線がネジの頭に触れると同時に――
「ぎゃんっ……!」
ユリは両手で胸を抱えてうずくまった。
(……?)
ニクロム線を流れている電気が分流してユリの身体に通電されたのだと、それは恵にもわかった。
「なんだ、一発で降参か。これでは、愛しい教え子を下ろしてやるわけにはいかんな」
十五分間姿勢を崩さなかったらという条件が、早々に破られたことを言っている。
ユリは、うずくまったまま。胸から両手をはなして四つん這いになっている。
「瀬田恵をブリブリに掛けてやるか」
なんのことか恵にはわからなかったが。
「……縛ってください!」
ユリが叫んだ。
「縛って、身動きできなくしてください。五十ボルトでなく百ボルトでもいいです。こんなに弱っている恵さんにブリブリだなんて――死んでしまいます」
五十ボルトと百ボルト。ユリは浜村の感電責めを正確に言い当てていた。ニクロム線の両端に印加されている電圧は百ボルト。電熱器の中心――ニクロム線のちょうど中間と端子との電位差は半分の五十ボルトになる。百ボルトにするなら、ニクロム線の両端に電線をつなげばよい。英語の教師といえども、女生徒より理科の知識に詳しくても不思議はないのだが。
「へっ。自分から縄をおねだりか。さすがに変態女教師だけあるな。いいだろう。願いはかなえてやるが……後悔するなよ」
浜村はうずくまっているユリの手を後ろ手にねじり上げて、手首を簡単に縛った。腰縄ひとつにも意地悪い趣向を凝らす彼にしては珍しいことだった。
「立って、じっとしていろ」
浜村が新しい荒縄を四メートルほどの長さに切り取った。左手で乳房を鷲掴みにして引っ張り、その根元に右手だけで荒縄を三重に巻き付けた。ひと巻きごとに引き絞り、巻き終えてからもさらに両手で絞りあげる。
ユリの乳房は根元をくびられて、今にもはじけそうなゴム風船さながらになった。
浜村は、もう一方の乳房も同じようにした。左右の乳房をつなぐ荒縄を二つに折り、途中に結び目を作って長さを調節する。荒縄が天井から垂れる綱に結びつけられた頃には、乳房は鬱血して薄紫色になっていた。静脈が浮き出て、色こそ違うがメロンのようにも見える。
浜村が綱を引くと乳房が吊り上げられて――
「泊クン、手伝ってくれ」
ついには、ユリの両足が床から浮いた。
「ぎひいいいっ……ぐううう」
ユリの顔が苦痛に歪んだ。棒ヤスリをねじ込まれたときよりも、ずっと苦しそうだった。
「これで、姿勢を崩したくても崩せまい。倍付けで三十分といくか」
「三十分でも一時間でも、文句は言いません。そのかわり、今すぐ恵さんを赦してやってください」
「文句を言われたところで、電圧が高くなるだけだがな」
また机の下に潜り込んで、浜村が十五センチ立方ほどの鉄の箱を取り出した。
「これは、おまえにもわかるまい。百ボルトを一千ボルトまで高めることもできる変圧器というものだ。今度指図がましい口を利いたら、これを使ってやる」
「死んでしまいます!」
「何百万ボルトにもなる雷に打たれても、死ぬとは限らん。おまえを殺すわけにはいかんからな。そこらへんは工夫してある。河童がダンスを踊って直流になるという説明は珍文漢文(チンプンカンプン)だが――古武術研究会きっての理学博士様のおっしゃることに間違いはあるまい」
「…………」
駿河問の苦しさに呻吟している恵は、そのときユリの顔に安堵の表情が浮かんだことに気づかなかった。気づいたとしても、それをどう解釈するかは別の問題かもしれないが。
「おい、瀬田恵を――そうだな。腹が床に着くくらいには下ろしてやれ」
泊に命じてから、記録係用の小机をユリのそばへ動かして、そこに電熱器を据えた。
「さっきは乳首から乳首で降参したな。今度は降参したくても――そうだ。おまえが悲鳴をあげたり文句を言うたびに、愛しい教え子を五センチずつ吊り上げてやろう。そして、仏の顔も三度。三回目からは五回転ずつ回してやる。縄がねじれきったら、つぎはどうなるか――わかっているよな?」
浜村の長広舌を聞いているうちに、彼の言うブリブリがどういう責めか理解した。弓子は駿河問のままぶん回されて、身体じゅうを敲かれた。きっと、それだ。
(でも、どうして?)
なぜお姉様は知っているのだろう。もしかすると知らないのは自分だけで、そういう嗜癖のある人たちには有名な拷問なのかもしれない。そういう嗜癖のある……? お姉様が?
「ぎゃわあっ!」
ユリの凄絶な悲鳴で、恵の思考は消し飛んだ。
両乳首に百ボルトを通電されて、ユリの身体が反り返っていた。足場を求めてか、両足が宙で踊っている。
電線をニクロム線から離れると、ユリの動きも止まった。
浜村がスイッチを切った。
ニクロム線の端子は電熱器の表面に二か所ある。そのもう一か所に、棒ヤスリから伸びる電線がつながれた。
「やはり、女の大元はここだからな。さて、もう一方は……」
小淫唇を咬むワニグチクリップの電線を床から拾い上げて、電熱器の中心にあるネジの頭に押しつけた。
「かはっ……あ、あああああ、あああ!」
腰がくの字に折れて、小刻みに痙攣している。小さな悲鳴が震えているのは交流のせいだろうか。
通電は十秒ほども続いた。浜村の手元を見ていなくても、ユリの身体がダランと弛緩して通電が終わったとわかる。
「こっちは、どうかな」
今度は、ユリの裸身が一本の棒のように硬直した。
「ぎびいいいい……ああっあああああ!」
太腿の筋肉も腹筋も、ぷるぷると痙攣している。
恵は電線を目で追って、それが肛門に突き刺さった信管につながっていると知った。
「やはり、これが本ボシだろうな」
ユリの硬直が一瞬弛緩して。淫核につながる電線がニクロム線に触れると同時に――
「ぎゃんっ! ぎゃああああああっああっ!」
膣と小淫唇との間で通電されたときとは逆に、腰を突き出すようにして――ずっと激しく、全身が痙攣している。
それも十秒ほどで赦されたのだが。
「これまでは小手調べだ。ここからがきついぞ」
浜村が、またスイッチを切る。ニクロム線の端子につながる二本を除いてすべての電線を撚り合わせ、新たなワニグチクリップに巻き付けた。それを電熱器の中心にあるネジの頭に咬ませた。
「今度は百ボルトだぞ」
(…………?)
恵には理解できなかったが。電熱器はワット数を倍半分に切り替えられる。たとえば半分のワット数に設定するときは、全体を一本のニクロム線として通電する。ワット数を倍にして使いたいときは、同じ長さのニクロム線を二本に分けて並列に通電する。豆電球で考えれば尋常学校の生徒にも理解できるだろう。二つの豆電球を直列につなげば、明るさは半分になる。この豆電球同士のつなぎ目に相当するのが、電熱器の中心でニクロム線を固定しているネジである。もしも豆電球同士のつなぎ目に乾電池の一方の極をつないで、二つの豆電球の線をもう一方につなげば並列接続となって、明るさすなわちワット数は二倍になる。
はたして――浜村は、それまでとは逆の向きにスイッチをひねった。
「ぎゃあ゙っ……!!」
ユリは短く吼えて、全身を硬直させた。全身が激しく痙攣している。息を詰まらせたのか、悲鳴は続かない。
「浜村クン……心臓麻痺は起こさんのかね?」
荒島がしゃがれた声で尋ねた。本気で懸念しているようだった。
「大丈夫でしょう。体幹を電流が流れないよう、乳房と下半身とは回路を分けてあります」
それが、先ほどのややこしい細工だったらしい。
ガクガクガクガクと激しい痙攣が、ピタッと止まった。全身の硬直も弛緩する。
「かはっ……こふっ……はあはあ」
ユリが激しく喘いだ。通電されている間、ほんとうに呼吸ができなかったらしい。
しかし、安息は十秒と続かなかった。
「ぎゃあ゙っ……!!」
再び短く吼えて、痙攣が始まる。
「過熱防止にバイメタルが仕込まれていますからね。空炊きすると、すぐ電気が切れるんです。そして温度が下がると――また地獄が始まるって寸法です」
「まったく……」
荒島が溜め息とともに頭を振った。
「浅利クンとは違って、キミの場合は『芸は身を助ける』の見本だな」
「お陰様で、叩き上げの身で警部を拝命しております」
芝居めかして、荒島に向かって深々と頭を下げる浜村。たしかに――巡査として採用されながら四十歳になるやならずで警部に昇進したのは、異例とはいわないまでも出世頭には違いない。もっとも、彼が荒島の年齢になっても警視正に昇進することなどは絶対にあり得ないのだが。
通電と休止が五度も繰り返されて、その間ユリは自分ではどうしようもない悲鳴のほかは、ひと言も発さなかった。浜村も、駿河問の形のまま床に腹を着けている恵に新たな責めを加えようとはしなかった。
そして、六度目の通電の直後。
「げふっ……」
奇妙な呻き声とともに、ユリがガクンと頭を垂れた。通電されているのに、全身が弛緩している。
「いかん。下ろせ」
明らかな異変に、しかし浜村の声は落ち着いている。
ユリをあお向けに寝かせ、耳を左胸に押し当てて心臓の鼓動を探る。馬乗りになって、両手でグイグイと胸を圧迫する。再び鼓動を探って。上体を抱え上げ、背後にまわって背中に膝頭を押しつけ両腕を斜め上に引き上げて。
「むんっ……!」
グイと背中を突いた。
ユリが目を開けた。
「ぐふ……はあああああ」
生き返って幸せ――そんなふうに、恵には聞こえた。
ユリは焦点の定まらない視線を宙に彷徨わせている。
「一時間どころか、まだ十五分と経っておらんが……」
さらに感電拷問を続けるのかと、恵は戦慄した。と同時に、叫んでいた。
「やめてください! お姉様を殺さないで! ブリブリでもワイヤーでも、あたしを虐めてください」
恵は、発してしまった自分の言葉に恐怖と絶望を覚えた。しかし、後悔はしていなかった。
浜村がニタリと嗤った。
「女先生は教え子を庇い、教え子は女先生を助けようとする。美しき師弟愛だな」
浜村は恵の願いを聞き届けたのだろう。ユリの乳房を縊る荒縄をほどき、股間から棒ヤスリと信管を抜き去った。とはいえ、感電責めそのものを取りやめるつもりも無いようだった。小淫唇のワニグチクリップも外したが、乳首と淫核はそのままだった。
電線を着けたままの棒ヤスリを拷問椅子に戻し、膣用のスリコギには細い銅線を巻きつけた。
「すこしでも瀬田恵に手心を加えてほしければ、自分で座れ」
部屋の中央に拷問椅子だけを据えて、そこを指差す浜村。
ユリがのろのろと立ち上がって、椅子に向かい合った。初めて目にするはずの凶悪な道具立てに、ユリは表情を動かさなかった。
それまでは恥部を隠すこともなくダランと垂らしていた両手を、ユリが動かした。左手で乳房を揉みながら、右手を淫裂に這わせる。
(お姉様……?)
五人もの男の目の前で自慰を始めたユリの立ち姿を、茫然と凝視(みつめ)る恵。
濡れていない状態で拷問椅子に座るのは、ワイヤーを跨がせられると同じくらいの激痛だ。しかし――肉体の苦痛をやわらげるために羞恥をかなぐり捨てて破廉恥な姿態を曝す歳上の女性を目の前にして、恵が心の中に抱く偶像にはっきりと亀裂が生じた。
じきに――ワニグチクリップに咬み破られて血に染まる股間に、透明な汁が滲み始めた。ユリはそれを指に掬い取り、肛門にまぶす。そうして、椅子に背を向けて――じわじわと腰を落としていった。
「く、うううう……」
肘掛をつかんで、ユリはゆっくりと腰を沈めていく。合致していない棒の角度と穴を合わせるためか、微妙に(妖艶に)腰をくねらせる。
凸凹の刻まれた極太の擂粉木は電線を巻かれてさらに凶悪になっている。金属も削り取るヤスリの表面が粘膜を掻き毟らないはずもない。ユリは眉を寄せ歯を食い縛りながら――しかし、わずかに呻くだけで座面に尻を落とした。
「経験豊富な変態女とあれば、小便臭い女学生と同じ扱いでは満足できんだろうな」
荒縄を使って、浜村はユリの腰を椅子に縛りつけた。下乳を巻いて、背もたれに密着させる。両脚は開かせて椅子の脚に緊縛する。縛り終えてから後ろ手に鉄枷を嵌める。そこまでは、恵たちとあまり変わらない拘束の仕方だったが。
浜村は滑車から垂れる綱をユリの首に巻いた。反対の端は、腕をねじ上げて鉄枷につなぐ。
「く……」
限界ちかくまで腕をねじ上げられて、ユリが微かに苦悶を漏らした。これまでの我慢ぶりから考えれば、当然だと恵も思う。恵は、腕をこの形にされて宙吊りにされたことがある。肩の関節が外れそうな激痛だけど、ワニグチクリップとは違ってジワジワと身体に浸み込むような重たい痛みだ。
浜村がコンクリートブロックを持ってきて、それを鉄枷に吊るした。
「あっ……」
恵は自分や紗良に加えられた似たような拷問を思い出して、思わず声を漏らしていた。首吊りにされて、その綱を握らされる。腕を曲げて自分の体重を支えていれば、首の縄は締まらない。けれど、綱を放すと……助け下ろされないかぎりは、死んでしまう。ユリへの仕打ちは、さらに残酷だった。斜めにねじ上げられている腕を、自分の筋力で保持し続けねばならない。懸垂より、ずっと困難だった。
浜村が、恵を振り返った。
「おっと、忘れるところだった。ブリブリをねだられていたな」
言葉で嬲られて、いちいち反応する初々しさは、とっくに摩滅している。けれど、沈黙を続けるのは得策でないと恵は判断した。
「覚悟はしています。でも……お姉様を感電させるのだけは、赦してあげてください」
もはや、『先生』などと体裁を取り繕うことも忘れている。と同時に、言葉尻を捉えられてはいっそうの拷問を課せられることも。
「では、おまえも女先生と同じ条件にしてやろう。悲鳴ひとつにつき、通電十秒だ。それから――そうだな、泣くんじゃないぞ。涙ひと粒でも通電だ」
「…………わかりました」
ほかに返事のしようがなかった。
浜村が荒島に声をかける。
「課長殿。小生は瀬田恵に取り掛かりますので、石山ユリの尋問をお願いできますか」
「上司をこき使うね。配線は、ちゃんとしておいてくれよ」
「へいへい」
浜村は電熱器でなく、真四角の変圧器を拷問椅子の横に置いた。
「それは駄目です!」
恵が叫んだ。百ボルトの通電でも心臓麻痺を起こしかけた。一千ボルトも掛けられたら、確実に死んでしまう。
「おまえがグウの音もあげなければ、どうということもないさ」
変圧器は四つも回路を備えているらしく、上面の各辺にそれぞれ赤と黒の端子が並んでいる。そのうちの一組に左右の乳首をつなぎ、もう一組には淫核を一方の電極として、擂粉木と棒ヤスリとはひとまとめにしてつないだ。チチチッとツマミをまわす。
「赤黒の端子の間に小さなボタンがありますね。それを押している間だけ、その回路に通電されます。河童ダンスとやらの働きで、心臓麻痺を起こすほどの電気は流れないそうですから、遠慮なく哭かせてやってください」
荒島は面妖な面持ちで説明を聞いている。河童のダンス――キャパシタとインピーダンスのことだが、それを理解する素養が二人には無い。
「……いや」
浜村が、これはほんとうにその場の思いつきなのだろう。目をぎらつかせながら、余っている端子に電線をつないだ。電線の端には、一本はワニグチクリップ。もう一本は肛門に使う信管だった。
「通電したときに悲鳴をあげたら、瀬田恵にも電気を味わわせてやりましょう」
ひぐっ……と、息を呑む恵。
ユリは――浜村を睨みつけて無言。
「では、石山ユリはお任せしましたよ」
浜村は恵を床から十五センチの高さまで吊り上げて――裸身を半時計方向へ回し始めた。
・被虐に酔う女
荒島が折りたたみ椅子から立ち上がって、ユリと向かい合う。が、すぐには尋問を始めない。いや――ユリに白状させることはただひとつ。アカ本の入手先。すなわち、より上層の党員の名前。そう簡単に白状するはずもない。無駄に言葉を費やさず、責めて責めて責め抜いて、当人が耐えられなくなれば勝手に自白するだろう。そんなふうに考えているのだろう。あるいは、自白させる気がないのか。新鮮だが実の硬い果実に飽きて、熟しきった柔らかい果肉を貪るつもりなのかもしれない。
「泊巡査部長、手伝ってくれ」
泊にコンクリートブロックを持ってこさせる。
「脚の下に置いてくれ」
よっこいしょと、椅子を後ろへ傾けた。泊が怪訝な面持ちで、その下にコンクリートブロックを掻い込んだ。
「片方だけでよい」
ウンッ……と気合を入れて、残る三本の脚もコンクリートブロックの高さまで持ち上げる。
「対角の位置に置いてくれ」
荒島が手をはなすと、拷問椅子は右斜め前に傾いだ。背もたれを引いて倒すと、今度は左斜め後ろに傾いて、三脚に支持された形で安定する。
「すまんが、しばらくあやしてやってくれ」
責め具造りの職人を父親に持ち、嗜虐に染まった上司の薫陶を受けてきた青年である。たちどころに荒島の意図を察した。
「はッ。こんな感じでよろしいでしょうか」
背もたれをつかんで、前後に揺する。
コトン……コトン……コトン……コトン……
椅子の揺れに合わせてユリの頭が前後に傾き、前に倒されると首の縄がいっそう締まる。そして、二本の棒が股間を抉る。
「くっ……ぐふ……うう……ぐふっ……」
それは、ワイヤーを跨がされたり通電されたりするほどの激烈な苦痛ではないかもしれないが、着実にユリの肉体を苛む拷問のはずだった。
恵は何十回転もさせられて、天井が間近に見えるほど吊り上げられていた。
恵を回していた浜村の手が止まった。ぐるぐる回っていた視界がピタリと止まって――ユリを正面から見下ろす形になった。
(美しい……)
およそ、場違いな感想だった。しかし、息苦しさに口を半開きにしてのけぞり薄く目を閉じたユリの顔には、淡い恍惚が浮かんでいた。
(もしも聖母マリア様が十字架に掛けられたら――こんなお顔をされるのではないかしら)
それは、唐突に拓かれた洞察だった。すくなくとも、敬愛する女性が苦悶と恍惚とを綯い交ぜにしていると、それだけは確信できた。
それを、我が身に引きつけて考える時間は与えられなかった。
「そおらよッ」
掛け声とともに、逆海老に反らされた恵の裸身が勢いよく回された。
「んぐっ……」
凄まじい速さで視界が右から左へ流れていく。遠心力で頭に血が上って頭痛がする。それ以上に、鼻がきな臭い。浜村が荒縄の束を振りかぶるのが見えた。
バッジャアン!
これまでにない激しさで、縄束が乳房を薙ぎあげた。
「ぎゃはああっ……!」
乳房が爆発したような衝撃。恵は絶叫していた。
バッジャアン!
股間に叩き込まれた。淫裂の奥まで先端の結び瘤が食い込み、同時に淫核も打ち据える。
「ぎゃわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!!」
傷ついた獣のような咆哮。
さらに荒縄の束が恵の全身に驟雨のごとく降り注ぐ。腋、脇腹、乳房、下腹部、太腿……吊っている縄のよじれがほぐれて床が近づくと、四肢の間を縫って背中まで打たれた。
ガクンと肩を蹴られて、回転が止まる。
「盛大に啼いてくれたな。愛しのお姉様を庇っているどころじゃなかったか」
一瞬、浜村の言葉がわからなかったが。
「ああっ……」
悲鳴だった。
「お姉様ッ……ごめんなさい」
忘れていた。恵が一回悲鳴をあげるごとに、ユリは十秒間の通電を受ける。それも百ボルトではなく、変圧器で高められた電撃を。
「待って……せめて、半分はあたしを感電させてください」
運が良ければ(それとも、最悪?)二人そろって死ぬことになる。天国でまっとうされる恋。そんな甘っちょろい感傷が胸をよぎった。同性の肉愛を神は認めていないという事実など、初めて口を吸われたときから(敢えて)忘れ果てている。
「あわてるな。おまえにも、たっぷり味わわせてやる――多分な」
荒島が机の端に置かれた変圧器に両手を伸ばすのが、恵の位置からも見えた。
ビクンッと、ユリの裸身が硬直した。
バチバチチッ……
線の巻き付け方が弱くて接触不良を起こしているのか、百ボルトよりずっと高い電圧に電線の絶縁が破れたのか――ユリの尻の下から青白い火花が散った。
「かはっ……!」
ユリは痙攣しながら、悲鳴をこらえているのか息を封じられているのか。
半ばは意志の力で斜め上に引き上げられていた腕が、コンクリートブロックの重みに負けて水平まで垂れた。ユリの顔がいっそうあおむいて、半開きの口から泡がこぼれる。
「やめて……やめて! お姉様が死んじゃう」
「涙を流すと、また通電が長引くぞ」
浜村の冷酷な声。
「あ、あああああああ……」
恵は声を押し殺して嘆いた。ぶるんと頭を振って涙を振り払うと、両眼を固く閉じた。そうして、三十秒か一分か……
「げふっ、かはっ……はあはあ」
ユリの荒い息遣い。目を開けると、浜村がユリの腕をねじ上げて、首の縄を緩めていた。通電も止まっているらしい。ユリは顎をわななかせながら息を貪っている。
「声を出したな。さすがは女先生。教え子にも感電とはどういうものか教えてやりたいというわけか」
ユリは悲鳴をあげたわけでもなく、声も発していない。しかし浜村は、ユリが発した音をとがめた。恵に通電するための口実なのは明白だった。しかし、ユリが抗議をすれば、それも口実にされる。
だからユリが沈黙を保っているのは致し方のないことではあったが。力無くうなだれている彼女の顔に、なぜか恍惚めいた色が浮かんでいるように、恵には見えた。
恵の淫裂を信管が抉じ開けた。直径は太いけれど。円錐形になっているからいきなり極限まで拡張される苦痛は薄かった。なによりも、表面が(擂粉木よりも棒ヤスリよりも男根よりも)滑らかだった。わずか一週間前には未通だった穴が、恵にそれほどの苦痛を与えることもなく、ツルリとそれを飲み込んだ。
淫核をワニグチクリップに咬まれてさえも、悲鳴をあげればさらにユリが苦しむことになるという思いもあっただろうが、皮を剥かれて実核に咬みつかれたときに比べれば、じゅうぶんに耐えられた。それは――ワニグチクリップが前よりも小さかったせいなのか、包皮のおかげなのか、自分の肉体が疲弊しているからなのか、それとも苦痛に馴致されたゆえなのか――おそらくは、そのすべてなのだろう。
「課長殿、お願いします」
言葉が終わらないうちに。膣の内部から刃物で四方八方に切り裂かれるような、淫核が爆発したような、敲かれる痛みとは異質な衝撃が股間を貫いた。
「ぎゃがっ……!!」
短く叫んで、声が出なくなった。腰が激しく痙攣する。いや、跳ねている。吊られている全身が軋む。視界が溶暗して、白熱の閃光が飛び交う。それが果てしなく続いて――パタッとやんだ。
「ふううう……」
ようやくに息を継げた。
感電は、ひどく後味の悪い責めだった。股間には、まだ不気味な鈍痛がわだかまっている。これに比べたら、激しく敲かれたあとは、鮮烈な痛みの中に爽快感さえあった。縄束にしろ拳骨にしろ、目を見開いてさえいれば、自分を痛めつけるものの形が見えている。けれど電気は目に見えない。それが不気味さの正体かもしれない。
ワニグチクリップが取り去られ女の穴から信管が抜き取られて、ふたたびブリブリに掛けるために身体を回され始めると――むしろ安堵してしまった。
お姉様は――と、ゆっくり回る視界の中に姿を探すと、ワニグチクリップを着けられ二穴を責め具に貫かれたまま、また椅子を揺すられていた。首吊りの綱に連結された腕は水平よりも下がって、窒息しかけている。前後に揺すられる動きでわずかに綱が緩んで、そのたびに喉がヒュウヒュウ鳴っている。
そんなふうに死と向かい合っているというのに、ユリの顔には妖しい恍惚が浮かんでいた。
駿河問の縄がいっぱいまで撚れて、ふたたび恵は激しくぶん回された。今度は縄束ではなく竹刀が、裸身に襲いかかる。恵は歯を食い縛って、ついに悲鳴を封じ込めたのだが。
縄の撚りがほどけて、そのまま回転を続け――浜村と泊の二人がかりで蹴飛ばされ殴りつけられて、また天井近くまで吊り上げられて。三度目のブリブリが始まる。鮮明な鞭痕こそ少ないが、すでに全身が痣だらけになっていた。
――朝の九時から恵への拷問が始まって、ユリが連れて来られたのは九時半過ぎだったろうか。ユリへの小手調べと電熱器を使った感電責めが十時過ぎまで続いて、恵へのブリブリがそれから三十分余り。十一時前には、二人とも失神寸前に追い込まれていた。どちらも股間は血まみれだが、全身が鞭痕や痣で覆われているぶん、恵のほうがより激しく拷問されたように見える。しかし恵にしてみれば、感電責めを受け続けたユリに同情する気持ちになっている。
「昼休みまで、あと一時間か」
荒島が腕時計を見ながら、ちょっと思案する。
「午後からは稲枝紗良も尋問する予定だったな。ついでだから、連れて来い」
なにが、どう、ついでなのか――と、内心で皮肉る気にもなれない。
すぐに紗良も取調室に引き据えられた。
「これまでにも相乗りさせたことはあったが、三人まとめてというのはなかったな」
荒島の発案で、三人ともに一本のワイヤーを跨がせられた。まん中がユリ、ユリの前に紗良、ユリの後ろに恵という並び順だった。
「どうせなら、あれこれ盛り込みましょうや」
浜村が、新しい玩具を与えられた男の子みたいに(しては、目の色が淫欲に滾っているし、浮かべる笑みも酷薄に過ぎたが)はしゃいで、いそいそと立ち働く。
その結果――三人の首には縄が巻かれて、天井からワイヤーと平行に吊られた六尺棒で折り返され、頭上で縛られた手首につながれた。自分で自分の首を絞めてワイヤーの激痛をやわらげるか、窒息を免れて股間を痛めつけられるかの二者択一だった。
浜村は、まだユリの淫核を咬んでいたワニグチクリップをはずして――包皮をめくってから着け直した。
「くううう……」
恵と紗良にも、同じように咬みつかせる。
「きひいい……」
「痛い……ぐううう」
何度も同じ責めを受けてきた恵と紗良の悲鳴のほうが、ユリよりも大きかった。
浜村はワニグチクリップを絶縁テープで包んで、ワイヤーに金属が触れないように処置した。
電熱器が床に置かれて、ニクロム線の一端とワイヤーが電線でつながれた。淫核を咬むワニグチクリップは、電熱器の中心でニクロム線を固定しているネジの頭に。
「二時間ぶっ通しとなると――三十三ボルトでも危ないかな」
浜村が首を傾げながら、電熱器のスイッチを『強』の側にひねった。
「ぎゃんっ……!」
「きゃあっ……!」
「ぎひいい……!」
三人三様に叫んだ。
「ち、違う……これ、ひゃ百ボルトです」
ユリが舌を震わせながら抗議した。
「ん……? 三人だから百割る三のはずだが」
「それは並列接続になっていますよ」
それまで黙って見物していた青谷が、面倒くさそうに指摘した。
「マンコを共通電極にするのだから、直列は無理ですね」
浜村はスイッチを切って考え込んだが、すぐに肩をすくめた。
「高文さんのおっしゃることだから、正しいんでしょうね。それじゃ……」
カチカチッと『弱』の側にスイッチを切り替えた。
淫核の爆発がずっと小さくなった。小淫唇はピリピリと震えているが、淫核の痛みとは比べものにならない。それも、三十秒ほどで終わって――ニクロム線が冷めて通電が再開されるまで十数秒の安息が訪れる。
しばらく三人の様子をうかがっていた浜村だが、これならじゅうぶんに安全だと判断したのだろう。
「課長殿。時間もたっぷりあることですし。大物を逮捕した祝いに鰻丼をおごってくださいよ」
厚かましいことを言う。
「ふん。それもいいか。午後からは石山ユリをたっぷりと――おい、悦ばすことになるんじゃないのか」
「さて……逝き狂わせるのも拷問にはなりますよ」
「では、浅利クンも呼ばねばなるまい」
ワイヤーの上で窒息と感電責めに悶える三人の生贄を放置して、鬼畜どもは立ち去った。

ようやく、新章突入です。
書いているうちに、ふと……これまで、複数ヒロインを登場させたときは例外なく強制レズがありました。それが、今回のプロットには欠落していました。ハードな責めを思いきり書き散らしたいという妄想竹の繁茂にまかせた結果ですが。
しかし、これを挿れておくと、終盤でヒロインが悦虐に目覚めるというシーケンスが破綻無く進むのではないか。
思慕する女教師のユリを変態と認識して、共に地獄に墜ちる決心を固めさせるとか。
ということで。
この後しばらくは幕間みたいなシーンがあって、上記のような画像のいずれかにたどり着くのです。
さて、そのシーンが次のProgress Reportになるか、ずっと先まで進んでいるかは――筆者にもわかりません。
未通海女哭虐 緊急発売!
DLsiteその他で公開していてもかまいませんよとの返事をもらって大量爆撃を敢行しましたが、ひとつくらいは完全未公開作品があってもいいかなと、妙に義理立てしてきた作品ですが。
まさかの1次全滅。作品レベルではなく
・有料販売が、まさかこんなに大量とは想像してなかった。
・この作者、10年以上前から応募してて、ちっとも変わって(編集部が偏向推測している読者ニーズに合致して)いないな。
・巨大停車場(Platform)にBangされたヤツは商業的にリスク多すぎ。
といった、営業的判断……すね。
筆者の作品は、「商業出版されて当然」のレベルです。
しかし、出版社が「是非、出版させてください」と言ってくるレベルには達していません。
無名の作家が世に出るには、これくらいのインパクトが無ければ無理なのです。
既存作家でそこそこ売り上げの見込める作品と、同じくらいの売り上げが見込めるが無名作家の作品と――安全牌を選ぶのは当然です。
ということで。
ツバナレは遥かにしているものの、キロ単位には遠い熱心なフォローユーザーのために、これからも書き続けるのです。ていうか、妄想竹の自己繁殖を焉めるわけがないでは有馬泉下。物騒な当て字。
ボヤキ/決意表明はさておき。
完全未公開作品のリリースです。
筆者の覚えている昭和(よりチョイか、かなり昔かは読者各位の推測にゆだねるとして)を舞台にした作品です。
体罰は、教育熱心な先生なら当然のこと。
女の子を素っ裸にして縛って納屋に閉じ込めるのも躾の範囲。
淫行条例だの性行為類似行為だのヤヤコシイ概念は無く、13歳以上のSEXは合意があれば無問題。アナルFUCKは性交でない。(当時としても)非合法遊郭から逃げてきた少女を、「民事不介入」の建前で保護しないだけでなく、場合によっては逃げてきた場所へ連れ戻していた時代。一部フィクションを交えています。
まして、女教師に少年が強チンされたなんて、どっちにとっても勲章モノでしたよ。
という時代におけるアレコレを描いていく予定の「昭和ノスタルジー」第2弾です。
第1弾は、後付けですが『少女博徒~手本引地獄』です。
今回は前編(本文271枚)です。 DLsite→
後編(264枚)は、9/10発売です。DLsite→
(実は、すでにBOOTHで先行発売中だったりします。書棚のリンクから、どうぞ……)
古き(男性とマゾ牝にとっては)佳き昭和の香りをご堪能ください。
追記:FANZAでも同時発売予定でしたが、すこし遅れます。
まさかのまさかですが、直前に検閲でソンタク他粛です。
冒頭の情景描写で、
トランクに収まっている母に、声に出して語りかけた。母は生まれ育った島のことをほとんど語ってくれなかった。あまり良い思い出を持っていなかったらしい。因習にとらわれた漁師村と言っていたけれど、海岸沿いに並んだ三十軒ほどの家並みは、村というより商店街の印象だった。所得倍増計画のおかげだろうか。もっとも。来年は国際オリムピックが開かれるというので、東京から遠く離れた地方まで、外国人観光客を当て込んだ建設ラッシュが続いている。それに比べれば、実にささやかな街並だった。
この中の一か所が引っ掛かりました。全年齢部分だよ??
東南北なので――
現在、「もっとも。来年は国際オリムピックが開かれるというので、」を削除して再申請中です。
オリンピックを連想させるものはアカンのだそうです。
国際的イベントの前になると風俗産業の取り締まりが厳しくなるのと同じ文脈ですかしら。
ここは同人作品に限らず、商業動画でも「奴隷」「強制」が、「奴●」「強●」です。いっそ、小気味良いくらいです。
ま、なにも言わずに具体的な理由も一切開示せずにいきなりバッサリの地球でいちばん同人作家にやさしくない巨大熱帯雨林列車乗降場よりは無限にマシですけどね。
.
.
.
発売開始日中に復活しました。オリンピックには版権があるんだそうです。(AHOな……)
しかし。オリンピックて、どこまで含むんだろ。第1回アテネ大会も? 古代ギリシアのオリンピヤードも? SEXオリンピックとか大食いオリンピックとかもあかんのかしら。ま、個別対応しましょう。オリンピックは一般名称だとかナンとか争うつもりはありません。裁判所への印紙代の時点で下手すれば赤字ですもの(いや、それはさすがに……)
まさかの1次全滅。作品レベルではなく
・有料販売が、まさかこんなに大量とは想像してなかった。
・この作者、10年以上前から応募してて、ちっとも変わって(編集部が偏向推測している読者ニーズに合致して)いないな。
・巨大停車場(Platform)にBangされたヤツは商業的にリスク多すぎ。
といった、営業的判断……すね。
筆者の作品は、「商業出版されて当然」のレベルです。
しかし、出版社が「是非、出版させてください」と言ってくるレベルには達していません。
無名の作家が世に出るには、これくらいのインパクトが無ければ無理なのです。
既存作家でそこそこ売り上げの見込める作品と、同じくらいの売り上げが見込めるが無名作家の作品と――安全牌を選ぶのは当然です。
ということで。
ツバナレは遥かにしているものの、キロ単位には遠い熱心なフォローユーザーのために、これからも書き続けるのです。ていうか、妄想竹の自己繁殖を焉めるわけがないでは有馬泉下。物騒な当て字。
ボヤキ/決意表明はさておき。
完全未公開作品のリリースです。
筆者の覚えている昭和(よりチョイか、かなり昔かは読者各位の推測にゆだねるとして)を舞台にした作品です。

体罰は、教育熱心な先生なら当然のこと。
女の子を素っ裸にして縛って納屋に閉じ込めるのも躾の範囲。
淫行条例だの性行為類似行為だのヤヤコシイ概念は無く、13歳以上のSEXは合意があれば無問題。アナルFUCKは性交でない。(当時としても)非合法遊郭から逃げてきた少女を、「民事不介入」の建前で保護しないだけでなく、場合によっては逃げてきた場所へ連れ戻していた時代。一部フィクションを交えています。
まして、女教師に少年が強チンされたなんて、どっちにとっても勲章モノでしたよ。
という時代におけるアレコレを描いていく予定の「昭和ノスタルジー」第2弾です。
第1弾は、後付けですが『少女博徒~手本引地獄』です。
今回は前編(本文271枚)です。 DLsite→
後編(264枚)は、9/10発売です。DLsite→
(実は、すでにBOOTHで先行発売中だったりします。書棚のリンクから、どうぞ……)
古き(男性とマゾ牝にとっては)佳き昭和の香りをご堪能ください。
追記:FANZAでも同時発売予定でしたが、すこし遅れます。
まさかのまさかですが、直前に検閲でソンタク他粛です。
冒頭の情景描写で、
トランクに収まっている母に、声に出して語りかけた。母は生まれ育った島のことをほとんど語ってくれなかった。あまり良い思い出を持っていなかったらしい。因習にとらわれた漁師村と言っていたけれど、海岸沿いに並んだ三十軒ほどの家並みは、村というより商店街の印象だった。所得倍増計画のおかげだろうか。もっとも。来年は国際オリムピックが開かれるというので、東京から遠く離れた地方まで、外国人観光客を当て込んだ建設ラッシュが続いている。それに比べれば、実にささやかな街並だった。
この中の一か所が引っ掛かりました。全年齢部分だよ??
東南北なので――
現在、「もっとも。来年は国際オリムピックが開かれるというので、」を削除して再申請中です。
オリンピックを連想させるものはアカンのだそうです。
国際的イベントの前になると風俗産業の取り締まりが厳しくなるのと同じ文脈ですかしら。
ここは同人作品に限らず、商業動画でも「奴隷」「強制」が、「奴●」「強●」です。いっそ、小気味良いくらいです。
ま、なにも言わずに具体的な理由も一切開示せずにいきなりバッサリの地球でいちばん同人作家にやさしくない巨大熱帯雨林列車乗降場よりは無限にマシですけどね。
.
.
.
発売開始日中に復活しました。オリンピックには版権があるんだそうです。(AHOな……)
しかし。オリンピックて、どこまで含むんだろ。第1回アテネ大会も? 古代ギリシアのオリンピヤードも? SEXオリンピックとか大食いオリンピックとかもあかんのかしら。ま、個別対応しましょう。オリンピックは一般名称だとかナンとか争うつもりはありません。裁判所への印紙代の時点で下手すれば赤字ですもの(いや、それはさすがに……)
Progress Report 5:赤い冊子と白い薔薇
Report 4 →
Report 0 →
ずいぶんと間が伸びてしまいました。
在宅勤務ってのは、かえって時間が不自由なのです。勤務時間中に、チョコマカ(仕事のメールチェックついでに私用メールも見て、下手するとリンク先をクリックしたり)(会社貸与PCはネット接続禁止でそちらは自前PCなので、データのUSB持ち運びも時間がかかるし)(問い合わせのRe:があるまで手待ちになったり)(残業とか休日出勤とかの規制がない=タダ働きですけど、気が緩んで作業効率が落ちたり)いろいろあって。しかも、10月10日(トツキトオカと読まないように!)で失業の公算大で降参するしかないし。
などというグチは蹴飛ばして。暑気払い悪魔祓い節季払い(内心ショボーンだと文章アゲアゲ??)にドーン。

とうとう、縛り首にまで守備範囲を広げてしまいました。
========================================
第3章「拷問」の最終節です。
・命脅かす拷問
翌日は朝から三人そろって取調室へ連行された。
取り調べという名目の拷問に当たるのは浜村、泊、淀江。恵の担当官である青谷と弓子の担当官の大岩も、当然立ち会う。荒島と浅利の姿は見えない。浅利がいないということは、今日は色責めではなく肉体を虐げる拷問が主体なのだろう。
責任者である荒島がいないことに、恵は漠然とした不安を持った。彼が紗良について漏らした言葉を思い出したからだった。
「わしが勃つうちは、諸君もお裾分けにあずかれるというものだ」
紗良は、いずれ責め殺される運命にある。その日が近いのではないだろうか。
浜村の紗良に対する拷問も、恵の不安を裏付けていた。
「もう、あれこれと尋問するのはやめた。なにか謡(うた)いたくなったら、そう言え」
自白するまで責め続けるという意味だ。
天井から六尺棒が水平に吊るされて、その中央から垂らされた綱が紗良の首に巻かれた。
「手を伸ばして棒をつかめ」
淀江が紗良を抱え上げて、それに応じて浜村が綱を縮めていく。紗良が六尺棒を両手でつかんで、裸身が宙に浮いた。それでも、いっそう綱が引かれたので――腕を曲げて身体を引き上げていないと窒息してしまう。浜村が綱の端を棚受け金具に結び留めた。
「罪を認めて刑務所へ行くか、強情を張り通して天国へ逝くか、すきなほうを選べ」
「…………」
紗良は無言で浜村を見下ろした。二か月以上も責め嬲られ犯され弄ばれ飢餓にも再三追いやられて、なおこれだけの気力を宿しているのかと恵が驚嘆したほどの、勁(つよ)い光が目にこもっている。その光は、憎悪の色ではない。では何なのだろうか――恵にはわからなかった。
「気に食わん目つきだな」
浜村が有刺鉄線の鞭を持ち出した。
「可愛い声で哭いてみろ」
下から斜めに掬い上げるように乳房を打った。
ビヂヂヂッ……!
棘に引っ張られて乳房がしたたかに歪み、ぶるんと弾んだときには小さな鉤形をつらねた傷が下乳に刻まれていた。たちまち、胸が鮮血に染まっていく。
「ぐっ……」
曲げた形を保った両腕に細い腱が浮き上がって――紗良は悲鳴を口の中に封じ込んだようだった。
「チッ、意地でも哭かんつもりか。まあ、いい。あまり痛めつけては、早々と楽にしてやるようなものだからな」
跡始末をしておけと、浜村は鞭を泊に渡した。雑用ならいちばん下っ端の淀江に言いつけるところだろうが、拷問道具の取り扱いは泊のほうが長けている――とは、おいおいに恵も気づいていくことになる。
「おまえらには、もちっと優しくしてやる。なにしろ、担当官殿が御臨席だからな」
滑車から垂れている綱の両端を二人の首に巻き付けた。結び目を絞ってじわじわと長さを縮めていき、二人ともつま先立ちでかろうじて首が締まらないように調節した。手枷をはずして、両手を頭上で綱に縛りつける。
背中合わせで身体を密着させている恵と弓子。
「尋問を始める前に、ちょっと甘やかしてやろう」
浜村が取調室の隅に転がしてある巻き束から新しい荒縄を切り取った。三メートルほどを二つ折りにして、二人の股間に通す。
「川瀬弓子は一週間ぶり、瀬田恵は初めてだったか――いや、ワイヤー跨ぎはしていたな。あれに比べれば物足りんだろうが」
荒縄の両端を左右の手に持って、ぐいぐいと引き上げる。
「く……」
「痛い……」
恵が自分の下腹部に視線を落とすと――まるで荒縄が股間から生えているみたいに食い込んでいた。
「瀬田はパイパン、川瀬は密林か。毛を巻き込まないだけ、瀬田には刺激が少ないか」
言いながら、ゆっくりと浜村が荒縄を左右にしごき始めた。
「痛い……痛い……」
ワイヤーほどではないが、淫唇の内側にチリチリと鋭い刺激が突き刺さる。びくっと腰を引いては、尻と尻とで押しくら饅頭をしてしまう。肉がひしゃげて、そこに微かな波紋が生じる。それが感じられるくらいには、股間の刺激は激痛一辺倒ではなかった。
ずにゅっ、ずにゅっと股間をしごかれて――弓子も恵も、小さく呻くだけで悲鳴までには至らない。そこまで、股間への残虐には馴致されている。
ことに恵は、ワイヤーの絶望的な激痛と比較してしまう。荒島の言う『甘やかし』が、実感として腑に落ちてしまう。痛みの中に潜む擽ったさにも気づいてしまう。擽ったさ――それは、ねじ曲げられた官能だった。刺激を受ければ肉体はおのれを護るためにも潤滑を試みるものだが、それを超えて――腰の奥底に、熱い滴りが生じつつあった。
「痛い……あああ、痛いいい」
はっきりと、痛い。激痛といっても過言ではない。それなのに、痛みを訴える声に艶が紛れていた。
「ふうむ。これはなかなかの逸材だな」
浜村のつぶやきは恵にも聞こえたが、これくらいで大袈裟に泣き叫ばないとは虐め甲斐がある――そんなふうに解釈した。あとにつづく、いっそう低いつぶやきは聞き逃した。
「英雄は英雄を識るというが……いや、同病相憐れむか」
浜村の手の動きがいっそう早くなった。
「ぐううう……やめて。赦してください……助けて、大岩様」
婚約を解消された今、すこしでも弓子を庇護してくれそうな人物といえば、彼女の尋問を担当している(飴と鞭の、飴役である)男しかいない。弓子は、それが本心かどうかは定かでないが、彼に甘えようとしていた。
しかし恵は――
「あああ……痛い……ああああんんん」
粘膜をしごかれ荒縄の毛羽に刺される鋭い痛みと、腰の奥で次第に溜まっていく熱い滴り。そのことだけしか考えられなくなりつつあった。が――追い上げられる前に、荒縄が股間から抜き去られた。
「大岩警部補、お呼びが掛かったぞ。せいぜい短気は慎んで、じっくりと口説けよ」
大岩が弓子の前に立った。
「青谷警部殿、尋問を始めますか?」
「いや。まずは大岩警部補のお手並み拝見といこう」
「そうですか。それじゃ小生は瀬田恵を、もうすこし甘やかしておきましょう」
弓子への尋問の妨げにならないようにと、浜村は自分の越中褌で恵に猿轡を噛ませた。
青谷は浜村の行為に口を差しはさまない。いずれは自分の奴隷妻にするかもしれない少女が他人に穢されるのを、平然と眺めている。
「ワニグチクリップでも平気だったよなあ。これくらいは刺激的な悪戯に過ぎんだろうな」
浜村は棚から小さな籠を持ち出して、中身を恵に見せた。大小の洗濯バサミが何十となく詰められている。それを尋問机に置いて。
「まずは、こういこうか」
割れ目からわずかに顔を覗かせている小淫唇を引っ張り出して、そこに咬みつかせた。
「…………」
咬まれた部位の違いもあるが、ほとんど痛みは無かった。そして羞恥心は、すっかり鈍磨している。すくなくとも、性器を弄られたくらいではなにも感じない。穏やかな手つきが、いつ凶暴に変じるか、その小さな恐怖しかない。
浜村は次々と洗濯バサミを加えていって、片側に三個ずつを咬ませた。
「しっかり、綱を握っていろよ」
警告しておいてから肘の内側で恵の片足を持ち上げる。開いた股に洗濯バサミを押し込むようにして、大淫唇にも三個ずつを咬みつかせる。
足を下ろされるときに洗濯バサミが触れ合って、カチャカチャと場違いに滑稽な音を立てた。
尋問を始めているはずの大岩は、さっきからひと言も発していない。
「痛い……赦してください」
「あ、ああ……厭です」
苦痛を訴える声と、はっきり甘い声とが、交互に弓子の口から漏れている――のも道理。背中合わせの恵にはわからなかったが――弓子は左の乳房を握りつぶされたり、あるいは乳首に爪を立てられてねじられたりしていた。しかし、弓子が赦しを乞うと、意外にあっさりと責めを中断する。そして、右の乳房を――優しく愛撫され乳首を転がされる。いわば、飴と鞭を一人二役で大岩が演じているようなものだった。
「このままスカートを穿かせて外を歩かせると、面白いのだがな。内股で歩けば痛いし、洗濯バサミのぶつかる音を他人に聞きとがめられないかと、女は羞恥に悶える」
もっとも、ゴム紐褌の愛用者なら、ケロリン閑としているだろうがな――と、言葉でも恵を嬲る。
「さて。仕上げは、もちろんここだよなあ」
ひときわ大きい洗濯バサミをつまんで、浜村は股間の肉蕾を指で引き伸ばした。
「こいつには、面白い仕掛けがしてあってな」
浜村が恵の目の前で洗濯バサミを開いた。
「…………?!」
洗濯バサミの嘴から、鋭い針が直角に突き出ていた。洗濯バサミは針に邪魔されることなく、滑らかに開閉した。針に向かい合う面に小さな穴が穿ってあった。
「泊甚作――巡査部長の親父さんの新作だ。大工でもあり小間物職人でもある。尋問椅子もワイヤー台も吊り滑車も、彼の作だが。近頃は、こっちから細かく指図しなくとも趣味人の好みをわかるようになってな。ワニグチクリップより穏やかな器具はなかろかと相談したら、こんな品を作ってくれた」
恵は、顔も知らないその男に憎しみを抱いた。御上の威光に逆らえなくて、女を甚振る仕掛を厭々作ったというのならまだしも――率先して凶悪な責め道具を考案するなんて、浜村と同じ鬼畜だ。
しかし、そんな義憤は一瞬のこと。包皮を剥き下げられて甘い戦慄が奔ったが、すぐに恐怖が取って代わった。ワニグチクリップに咬まれた凄絶な激痛は、思い出したくなくても思い出してしまい、背筋が総毛だつ。「ワニグチクリップよりは穏やか」という浜村の言葉にしがみつくしかない。
針が触れた瞬間から鋭い痛みがあった。間髪を入れずに、痛みが膨れあがりながら突き抜けた。
「ゔま゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
恵は猿轡の中に絶叫を吐き出していた。
しかし、たしかに――ワニグチクリップほどには凶悪でなかった。針に貫かれたあとは、平板な圧迫しかなかった。これくらいなら耐えられる――というのは、錯覚かもしれない。
「う……うううっ、うう」
膝が砕けて、喉に全体重が掛かっていた。
目の前が赤くなって、白い星が飛び散った。
「く、くるしい……瀬田さん、しっかりして」
恵の体重で首を吊られて、弓子も呻く。
ぐいっとさらに吊り上げられて、恵は声を発せなくなった。
「足をバタつかせるな。しっかり伸ばせ」
大岩の声だった。弓子を庇って、首吊りの縄を引いているらしい。
藻掻くのをやめてだらんと足を伸ばすと、身体が下がり始めて、どうにか爪先が床に届いた。
「俺が愛想を尽かしたら、おまえもああなるわけだ。さて……ここは、どうしてほしい。優しくされたいのか? それとも、あの洗濯バサミを借りてやろうか?」
大岩が弓子の肉蕾を撫で上げながら耳元に囁いた。
「……………………」
長い沈黙のあとで、弓子がぽつりと答えた。
「優しくしてください……」
諦念のにじんだ声だったが、甘えるような響きも混じっていた。婚約を解消されて心の支えを失った弓子は、ついに陥落したのだった。
「そうか。あいつとは縁もゆかりも無くなったのだから、今さら当時の言動を蒸し返しても始まらんな。おまえに同調した娘も、お咎め無しにしてやろう」
恵の首に掛かっている縄が緩んだ。弓子が解き放たれたのだ。が、すぐに縄は引っ張られて、紗良と同じように棚の受け金具に結ばれた。
浜村は恵を放置して、紗良を甚振りにかかった。
「なかなかに知恵が回るな。腕の力を抜いて、窒息寸前でまた身体を引き上げる。まだまだ粘れそうだな。しかし……」
浜村が淀江に命じて、紗良の足元にコンクリートブロックを運ばせた。
その間に――弓子は手枷をはずされて、茶番の調書に爪印を取られている。素裸ではなかった。無地の浴衣を着せかけられている。絶対に今日で陥落すると踏んだ大岩があらかじめ準備していたのだろう。
紗良の足首に縄が巻かれて四のコンクリートブロックが吊るされたとき、すでに大岩と弓枝の姿は取調室から消えていた。
二倍以上に増えた体重に、顔を真っ赤にして懸垂を続ける紗良。
浜村が残酷に揶揄う。
「まだ頑張るか。だが、腕が震えているぞ。お、身体が下がり始めたか」
歯を食いしばって持ちこたえていた紗良の顔に、絶望が浮かんだ。
「悪魔……」
紗良の腕から力が抜けて、ガクンと身体が沈んだ。
「ぐふっ……」
顎の下に綱が食い込んで――
バキッ、ベリリ!
棚の支持金具が折れて、綱がはずれた。
そのまま床に倒れ込む紗良。
窒息は免れても、首の骨が折れたかもしれない。恵がそう思ったほどの激しい落下だった。
「けふっ……けふ、けふっ」
床に突っ伏したまま、紗良が咳き込んだ。
「ふふん。今度こそ殺されると思ったか。残念だったな。まだまだ愉しませてもらうぞ」
浜村が靴の先で紗良の脇腹を蹴った。
無謀に思える拷問もすべて計算ずくだったのだと、紗良は悟った。縛り首ではあっても、顎にも体重が分散するようにしてあったのだ。コンクリートブロックを追加したのも、紗良を早く力尽きさせる意味もあったのだろうが、むしろ余計な重さまで加えて金具を壊す目的もあったのではないだろうか。
わざと死の恐怖を味わわせる浜村の残忍さに恵は恐怖したが、その一方で、彼への信頼にも似た感情が芽生えようとしているのにも気づいていた。この男に責められるかぎり、責め殺されることだけは免れるのではないだろうか。もちろん――浜村が恵を生かしておこうと思っていれば、だが。それは期待できるのではないだろうか。青谷の奴隷妻に馴致するというのが鬼畜どもの目論見なのだから。
もっとも。そういった惨めな安心は、いっそうの絶望をも意味する。永遠の安息に逃げ込む道を封じられるのだから。
「では、そろそろ僕も本気を出そうか」
ずっと見物役にまわっていた青谷が腰を上げた。
「僕は、誰かさんみたいにネチネチと女を甚振る趣味は無い。おまえにアカ本をくれたやつの名を吐け。吐くまで、これを続けるぞ」
青谷が言う『これ』とは、四本にまとめた荒縄だった。先端が結ばれて硬い瘤になっている。それをバケツの水に浸す。
「そいつは効きますが、部屋の掃除が大変ですぜ」
「染みが増えれば、被疑者への脅しになるさ」
ずしりと重くなった縄束を、無雑作に恵の尻に叩きつけた。
バシイン!
「んぶっ……」
骨盤にめり込んだのではないかと思うほどの重たい衝撃だった。
バシイン!
バシイン!
バシイン!
バシイン!
五発を立て続けに打つと、水が散って縄が軽くなったらしく、またバケツに浸す。
「今度は尻なんかではないぞ。だが、その前に訊いておこう。白状するか?」
正面から覗き込まれて、恵は顔を伏せた。
(この人は……乃木や大岩とは違う)
直感だった。なんとかして娘をなびかせようという熱意が無いように感じられた。まったくの被疑者扱い。奴隷妻にされるなんて真っ平だけど、まったく見捨てられるとなると心細い。そういった思いが、無意識に恵にいやいやをさせていたのだろう。もちろん、青谷はそれを拒否の意思表示と解釈する。
「そうか」
バッシイン!
乳房がひしゃげて、横に薙ぎ払われた。
「むばああっ……!」
反対方向へ逃げようとして、真上に吊られているのだから足が宙に浮いて、喉を締めつけられた。
「げふっ……」
爪先を伸ばして床を捉える。
バッシイン!
今度は腹に叩きつけられた。
「ぼぶっ……うええええ、げふ」
吐き気が込み上げて身体を折り、また足が宙に浮いて喉を締められる。
足をバタつかせて、なんとか床に爪先を着けようとするが、届かない。恵はとっさに腕をねじって、両手で綱をつかんだ。無理に手首をこねて縄で神経を挫いたのか、指に疼痛が走った。綱を引くと首の圧迫が緩んだ。
バッシイン!
脇腹を敲かれた。悶え苦しんでいる恵に、縄束の滅多打ち。宙吊りになって身体が回っているので、敲かれるまでどこに当たるかわからない。
バッシイン!
バッシイン!
背中を敲かれ、次は下腹部。
そこで青谷は手を休めて、また縄に水を吸わせる。
「どうも……僕には、ただ強情なだけに思える。それとも、あのお……オルグを庇ってのことか。いずれにしても、そうそう変態には思えないが」
「そりゃあ、そうですよ」
浜村が紗良の縛り首をほどきながら答える。
「縛られて縄に酔ったり敲かれて濡らす女でも、それを悦んじゃいませんや。いや、いることはいますが。そういうのは、ちょっと厳しくすると音を上げます。縛られるのも厭、敲かれるのも厭――本人だってそう思い込んでいるのに、厳しく虐められれば虐められるほど陶酔に追い込まれる。そういうのが、本物ですね。小生の女房なんか、ケツもマンコも空っぽでも、逝き狂いますからね」
非道い目に遭わされれば遭わされるほど、それを悦ぶ女性がいる――浜村はそう言っているらしいと、恵にもわかってきた。これまでに聞きかじった断片をつなげると、どうしてもそうなってしまう。
そして、アッとなった。ゴム紐の褌を締めて輪ゴムで乳房を虐めていた自分は、
そういった変態的な女だと思われているのかもしれない。
とんでもない誤解だ。拷問にしても輸姦紛いの行為にしても、そこに官能を感じたことは一度だって、これっぽっちも無い。それは……ユリお姉様に虐められたらすごく燃えてしまったけれど。でも、あれは濃密な愛情の発露だ。まったく別の話だ。ベルトで乳首を擦られたり荒縄で股間をしごかれたときに感じた微かな快感は――あれは、女の身であっては致し方のない反応に過ぎない。
口を封じられていては、男どもに反駁することもできないというのに。そういった想念を追いかけるのは、自分は絶対に違うと信じたいからだ――ということに、恵はまだ気づいていなかった。
「そんなものかね。まあ、変態女はもちろんだが、あれこれ味を覚えられても困る」
「とは?」
「浜村警部は、もう四十を過ぎたはずだが――縛るにしても敲くにしても、それなりに体力を消耗するだろう。しんどくはないのかね」
「なるほど。味を覚えられて夜毎におねだりされては身が持たない――ということですか」
浜村は部屋の隅にある滑車の下へ紗良を引きずって行って、恵と同じように縛り首の綱を自分の手でつかんで身体を支えさせる形にした。その精力的な動きが、そのまま青谷への答えにもなっていた。
「人それぞれですかね。小生や浅利クンが女に注ぐ情熱を、青谷警部殿は出世に注ぎ込む。それも男冥利ですな」
薄笑いを浮かべて、そんな男冥利は願い下げだという内心をあからさまにしている。浜村はワイヤーを張った台を紗良の横に据えて――ワイヤーに新しい有刺鉄線を巻き付け始めた。
「掛け合い漫才はれくらいにしておこう――さて、瀬田恵。虐められて悦ぶおまえとしては、もっと厳しく敲いて欲しいのだろうな」
なぜか――ドキンとした。虐められて悦ぶだなんて、そんなことは絶対にあり得ない。なのに、ユリの顔がちらついて、そこに青谷の言葉が絡みつく。
「そうそう思い通りにはしてやらんぞ」
青谷はズボンをまさぐって、茶色の細い筒を取り出した。尋問机の引き出しから鋏を取り出して筒の一端を薄く切り取り、反対側を口に咥えた。マッチで、念入りに火を点ける。
それが葉巻だとは、恵にもわかる。祖父の法事のときに、紳士然とした(名前も知らない)遠縁の親戚が葉巻を吸っていて、この非常時に貴重な外貨を燃やすとは不届き千万と、まわりから責められていた光景を覚えている。
痩身で二枚目然とした青谷は、意外と葉巻が似合っている――この期に及んでも、そんなふうに思ったりもする恵だったが。なぜ、この場でそんな物が持ち出されたかに気づいて、心臓がねじ切られるような恐怖に捕らわれた。葉巻は紙巻き煙草よりずっと太い。そのぶん火口が大きくて、灰皿に押しつけたくらいでは消えないのではないか。火傷の痕も、生涯残るのではないだろうか。
「さっきも言ったが、外堀を埋めてから本丸に取り掛かるような手間は掛けない」
青谷が手を伸ばして、恵の肉蕾をまさぐる。
「んんっ……」
恵は反射的に腰を引いて、また爪先が宙に浮く。
「暴れるな。淀江巡査、身柄を確保してくれ」
「はいッ」
警察内で使う言葉に反応して、淀江がキビキビと動く。恵の背後にまわって、腰をつかんだ。
「ご苦労」
青谷は恵の斜め横に動いて、かろうじて床に届いている爪先を靴の先で踏みつけた。
ぐっと体重を乗せられて、その痛みも感じたが――そんな些細なことに気を取られている場合ではない。
青谷は肉蕾を剥き下げて、人差し指と中指で剥き出しの実核を挟み込んだ。
「もう一度だけ、尋ねるぞ。おまえにアカ本をくれたやつの名を吐くか?」
自白しなければ、そこを焼かれる。ユリとの交わりで知り初めたばかりの、この世のものとは思えない陶酔の根源を――焼き尽くされる。そうなっては、ユリお姉様を庇う理由がなくなる――チラッと浮かびかけた考えを、あわてて打ち払った。お姉様とは肉の悦びだけで結びついているのではない。心と心の結びつきがあって、それが肉の交わりにつながっていった――恵は、本気でそう思っている。実際には、いきなりユリの下宿先に呼び出されて、身の上話をしているうちに、ありていに言ってしまえば襲われたのだが――それさえも、言葉を交わさぬうちから魂が惹き合っていたのだと、恵は自分に説明するだろう。
「そうか。女の悦びは捨てるか。そのほうが僕にとっても好都合だ」
青谷の言葉で、恵は心の沈潜から引き戻された。すでに運命は決していた。
青谷はあらためて葉巻を吸いつけてから、まっ赤に燃える火口を恵の小さな突起に押しつけた。
ジュウウウッ……
灼熱が股間の一点を貫いて、腰全体で爆発した。
「ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!!」
恵の全身が激しく撥ねた。淀江が恵の尻に突き飛ばされた。頭をぶつけられそうになった青谷がのけぞって、たたらを踏んだ。恵の裸身が宙でくねった。
「むぶううう……」
手の中で首吊りの綱が滑って、恵を窒息させる。
恵は、まるで宙を歩いているように足を前後に蹴っている。無意識の動作だった。
青谷は、そんな恵を冷ややかに眺めている。葉巻が消えないように吸い付けるほど冷静かつ冷酷に。
「どうにも、警部殿は気乗り薄のようですな」
恵を丸め込むつもりはない――という意味だ。
「ま、そのほうが面白くはありますがね」
その言葉は口の中でつぶやいたきりで。
浜村は、淀江と泊に紗良を高く吊るさせた。
前で手首を重ねて縛られている紗良は片手で綱をつかんで、かろうじて縛り首を免れている。その真下に、有刺鉄線を巻きつけたワイヤーの台が据えられた。
「下ろせ」
紗良は観念して、有刺鉄線に内腿を傷つけられながらワイヤーを跨いだ。
「未練たらしくしがみついてるんじゃない」
綱をつかむ手を引き剥がされて、全体重が股間に掛かった。
「ぎひいいいいいっ……!」
細い素線が無数に毛羽立つワイヤーを跨がされることが、すでに女性器への激越なの拷問だというのに――そこに巻かれた有刺鉄線の棘が淫唇の裏側に膣前庭に、さらには膣口までを突き刺し引っ掻く。それでも、サーベルの峰打ちよりは衝撃も肉体の損傷も小さいかもしれないが――峰打ちは一瞬。これはいつまでも続く。
「前門の虎後門の狼という諺くらいは、おまえでも知っているよな」
淀江に紗良の腰を保持させておいて、浜村は滑車で折り返した首吊りの綱を扼した手首にくぐらせた。肘を軽く曲げて手首が頭の少し上になる位置まで、綱の長さを調整した。
「マンコを壊されたくなかったら、綱を引け。窒息したくないなら、腕の力を抜け」
「悪魔……」
紗良が呪詛をつぶやいた。
「神の御教えに背いても……あなた方を愛することはできません!」
それは、キリスト者としては最大級の憎悪の表現だったろう。『汝の敵を愛せよ』という聖書の言葉を真っ向から否定するのだから。
「女囚に愛されたくはねえな」
浜村が青谷が放り出していた縄束の鞭を拾い上げた。それをあらためてバケツの水に浸してから。
「本音を吐けば、服従だってされたくはない。小生を憎め、反抗しろ。そうすれば、心おきなく責められるというものだ」
縄束を振り上げて、下腹部に叩きつける。
ズバシイン!
「あがっ……!」
紗良が宙で硬直する。鞭打たれる痛みは(他の苦しみに比べれば)たいしたことはなくても、その衝撃がワイヤーで撥ね返って股間を劇烈に抉る。
ズバシイン!
二撃目で紗良は前へつんのめって――股間にいっそう有刺鉄線が食い込み、同時に喉も締め付けられる。意識を失ったのか、あるいは窒息してしまったのか。紗良はピクリとも動かなくなった。
「ふん……?」
浜村が紗良の首筋に指を当てて脈を探った。首を巻く縄の位置を細かく調節したのは、頸動脈への圧迫を緩めるためだろう。
浜村にはすくなくとも積極的に紗良を殺そうという意図が無いと知って――恵は鼻から安堵の息を吐いた。
「もう火膨れができたか。これを焼きつぶせば、どうなるかな」
青谷が、火傷を負った恵の実核を指でこねくる。
「ん゙ん゙、ん゙ん゙ん゙……」
恵が首吊りの綱を握り締めて、弄虐に耐える。
「そりゃあ、胼胝(たこ)になりますよ。焼き切れなければ、ですがね」
そうなると並みの刺激では感じなくなるが、ふつうの女が悲鳴をあげるほど可愛がってやると、それだけで逝くようになる――こともあると、浜村が実体験に基づいた知識を披露する。
「なんだ、これも二番煎じか。つまらん」
青谷は灰皿で葉巻を揉み消した。鋏で火口を薄く切って、金属の細い筒に入れた。
「たいがいの責めは、先人が実践してますよ。そのぶん、安心して追い込めるというものですがね」
とはいえ、厳しい取り調べに過失事故はつきものだ――と、紗良と恵を交互に見比べて脅かす浜村。
「事故が起きてもかまわんとおっしゃるなら――火の次は水ということになりますが、ちと趣向を凝らしますかね」
フンと肩をすくめて、青谷は部屋の隅に引っ込んだ。折り畳み椅子を広げて脚を組んだ。
「では、被疑者をお借りしますよ」
首を吊られて爪先立ちを続けている恵の足に、浜村が別の滑車から垂れている綱を結び付けた。
「せえの」
恵の足が床からはなれて、恵は斜めになって宙に浮かぶ。
「ぐっ……むうう……」
綱をつかんでいても容赦なく喉を締めつけられて、傷だらけの裸身が宙でくねる。
「淀江巡査、持っていてくれ」
綱を淀江に持たせて、浜村は戸棚の受け金具から首吊りの綱をはずした。
逆さ吊りにされて頭に血が下がったが、窒息の恐怖から解放された。
浜村は手首の縄もほどいて、後ろ手に縛り直す。
「鼻を洗濯バサミあたりでふさぐと、水責めもすこしは楽になる。だが、その逆だと……どうなるかは、自身で体験してみろ」
鼻から水を吸い込む苦しさは、尋常小学校での水連で恵も知っている。まして、逆さ吊りにされて顔を水に突っ込まれたら……
しかし、浜村の企む水責めは、そんな生易しいものではなかった。
浜村は恵の頭が床すれすれになるように綱を受け金具に固定した。
「こっちを引っ張ってくれ」
首吊りの縄が引かれて、恵の裸身が斜めになる。苦しいが、全体重が掛かるわけではないので息はできた。
これまでに何度か使われた大きなバケツを、浜村が滑車の真下に置いた。
「ゆっくり下ろしてくれ」
恵の頭が振り子の軌跡を描きながら下がっていく。バケツが常に頭の下にくるように、浜村が動かしていく。
頭が水に浸かり、目が没して――鼻に水が流れ込んできた。
「んぶ……ぶぶぶ……」
鼻から息を吐いて――これでは、すぐに苦しくなると気づいて息を止めると、鼻の奥がキインと痛くなってくる。我慢できずに、すこしずつ息を吐く。
やがて目の前が赤く染まって、それがだんだん薄れて暗くなっていく。頭が割れるように痛む。
何十秒、いや数分か。頭痛と胸の痛みとに耐えきれず、恵は肺に残っている空気をすべて吐き出してしまった。ボコボコと水面で泡が弾ける。
前に顔をバケツに浸けられたときは、このあたりで引き上げてもらえた。しかし今回は――十秒二十秒と経っても、首の縄は緩んだままだった。
(殺される……?!)
これまで、逮捕されるまでは想像もしなかった恐怖をさんざんに味わってきたが、生命の危険をここまで感じたことはなかった。
(もし、この瞬間に自白するつもりになっても、わからないでしょうに?)
そんなことを考えるだけの余裕も、すぐになくなる。息を吸いたいという衝動だけが残って――しかし、身体の防御反応がはたらいているのか、水を吸い込むことだけは免れているのだが。
ビクン、ビクビクッと身体が痙攣するのが自分でわかった。これが断末魔というものだろうと、恵は朧にかんがえる。この痙攣が止まるとき、自分は死ぬのだ……
ぐいっと喉に圧力が加わった。
ザバアッ……
目の前が明るくなった。しかし、恵の苦しみは終わらない。いや、いっそう鮮烈になった。
「ぐぶっ……ぶふっ、ぶふっ……」
息を吸い込むと同時に、顔から垂れている水も一緒に吸い込んで、喉が灼けた。口でも息をして、猿轡に浸み込んでいる大量の水が喉に流れ込む。ほとんど――恵は空中で溺れかけていた。
「おまえに赤本をくれたヤツは誰だ?」
浜村の声が降ってきた。なぜか上っ調子に聞こえる。
その理由は、恵にもわかってしまう。浜村の本音としては、自白を求めていないのだ。恵が自白しなければ、さらに拷問を続行できる。それがわかっていながら、恵は頭を横に振るしかない。
「そうか。山崎華江は最後に取調官のワイシャツを着せられて、ここから出て行ったな。川瀬弓子は浴衣だとさ。しかしおまえは――経帷子を着ることになるかな」
つぎは死ぬまで続けるという脅しだった。
恵は、むしろ安らぎをさえ覚えた。これが最後の苦しみ。そして訪れる永遠の安息。
(ユリお姉様……)
これまでになく鮮烈な映像が頭に広がった。ユリは――恵との肉の交わりのときに見せるような、苦悶とも恍惚ともつかない妖艶な表情をくっきりと浮かべている。それは、恵の識閾下に生じた『真実』への洞察かもしれなかったが――恵の表層意識は、天国での契りといったふうにしか理解しなかった。
今度は一気に、顎まで水面下に没した。頭をバケツの底にぶつけたほどの勢いだった。
「んぶっ……」
不意を衝かれたショックでいきなり大量の息を吐いて、たちまち苦しくなった。
しばらくは息を止めていたが。
(もう、いい。苦しみが長引くだけ……)
息を吐いてしまえば、苦しいのは束の間。すぐ楽になれる。悲壮――の念は、なかった。恵は深呼吸をするように大量の息を吐いた。
頭が割れるように痛くなって、喉が灼けるように痛み、眼前の色が赤から暗黒へとうつろっていき――全身の痙攣が始まる。
痙攣が途絶えるまで、恵の凄惨な裸身はそのままに留め置かれた。
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ああ、もちろん。根っ子はフェミニスト(厭よ厭よも好きのうちを、ちゃんと理解してあげます)の筆者ですから、殺してはいません。ていうか、殺したらドンデン返しマゾ牝2匹狂艶の第4章が消滅します。息をしなくなって数分以内だと、ほぼ確実に蘇生します。若干のリスクはありますが、それを恐れていたら飛行機には乗れないし自縛遊びもできません。
問題は、むしろ……ここまではPLOTを固めてあったけれど、4章と短い5章はおおまかな筋だけで、かなり(ヒロインの心境変化=マゾ開眼)無理のある展開を乗り切れるのか――です。もちろん乗り切りますとも。ここまで400枚以上書いてきて、投げ出すものですか。ただ、乗り切り方の切れ味がどうなるかが、さてねえ?
お気に入りの写真(拷問・折檻・躾の違い)
拷問が、少女(趣味で断定します)に罪を認めさせる、少女に自らの手で不本意なことをさせるというのに対して。
折檻は、(強引にでっちあげる場合がほとんどですが)少女が犯した罪に罰を与える行為です。体罰とどう違うかというと。これも濠門長恭式分類ですが、家庭内において親権者による処罰が折檻で、学校で教師が女子生徒を処罰するのが体罰です。
折檻に似た言葉では「お仕置き」と「躾」とがあります。
体罰や折檻は有無を言わさず罰するのに対して、躾は少女に罪を認めさせて、自分から罰を求めるように仕向ける――というのは、『未通海女哭虐~裸の昼と縄の夜』で鬼伯母に言わせた科白ですが。
折檻が大時代的な場合には、お仕置きがいいかもしれません。もっとも、月に代わってみたりするので、お仕置きにはコミカルな響き(お仕置きじゃ~)が混じっています。筆者は、そう思います。少女を怖がらせるにしても、悦虐を掻き立てるにしても、お仕置きや躾よりは折檻がよろしいかと。
もっとも。現実の虐待において「躾の範囲だ」という言い訳が――平成の前半くらいまでは罷り通っていました。そういう意味ではライトSMかもしれません(激違
おっと。少女が自ら処罰を乞い願うときは「お仕置きしてください」が似合いそうです。ロリマゾだろうと、実質的な強制だろうとです。

お仕置きでも折檻でも躾でも体罰でも。少女が抵抗を放棄するというのが、最近の筆者の好みです。好きに嬲ってくださいの開脚。たとえ女芯を鞭打たれても、その姿勢を崩さない。いいですね。G線上に遷移したいのを我慢して記事を書いています。
画像に関してですが。右のなんて「少女」どころか娘ですらないです。合法的なネット画像は、せいぜいこんなものです。だからこそ、小説としてのロリマゾに価値があるのです。牽強付会我田引水会者定離愛新覚羅溥儀です。

折檻は、恥辱を伴なうのがよろしい。
義母にお尻をぶたれて、まっ赤なお尻を晒しながら掃除をさせられるとか。

これは近年の傾向では差別だなんだと叩かれそうですが。こういう形で叩かれるのは嫌いですが。インモラルはことばかり書き連ねるのが、SM小説としては王道であると信じています。ので。
メイドと主人。メイドが外国からの出稼ぎだと――現実にも、これが問題になっているのですが、なかなかにそそられます。もちろん、肌の色が違うとかは必須ですね。
逆に、お嬢様が女中頭あたりに折檻されるのもアリです。右の画像は、人種の配置が好みではありません。高ビーな白人お嬢様がお仕置きされるというのがツボです。
さもなければ、養女にもらわれていった先で、人種の違い故に女中からも下男からも虐げられる。これは、至高と究極の争いです。「いやらしんぼ」です。強引過ぎる造語です。
しかし。「体罰」というのは、格別の響きがあります。『鞭と縄の体育補習』です。
というわけで、次回は学校における体罰/リンチ/イジメなどを考察しましょうかしら。予定は未定にして既定に非ず。
おっと、その前にひと言。
こういった形での加虐は、拷問に比べてソフトな場合がほとんどです。

畳の縁の三角木馬なんて、甘っちょろすぎます。
股間への電撃笞は、心臓マヒとかのリスクはありません。すこしくらい火傷したって、パンツを穿かせておけば発覚しません。そういう問題ではありません。
では、最後に。畳の三角木馬を改変したのが、下のアフィリンク画像す。
創作メモ:歩行器具
とんでもない番狂わせが生じました。
DLsiteなどで販売している作品でも応募可能との言葉を信じて、14本(前後編はまとめて1本、シリーズものもまとめて1本で勘定)も大量にブチこんだのですが。ゆうパック段ボール箱で2コです。それが……昨日1次予選結果が出ていまして、通過作品144本の中にひとつもはいっていない?!
これまでも、しつこく応募してきて、1次落ちしたことはありません。まあ、2次にたどり着くのがやっとでしたけどね。
急に応募作品の水準が上がったわけではないです。
結局、有料販売なので弾かれたか、熱帯雨林との確執を紙のお手紙にして同梱したせいか。ともかく、営業的判断ですね。
まあね。筆者の作品群は「商業誌に載っていてもおかしくない」レベルです。しかし、商業誌のほうから「載せさせてください」と言ってくるレベルには、ちょっと届きません。読者の嗜好だと編集者が思い込んでいる方向と作風とが一致すれば、あり得るんですけどね。1980年代の仏蘭西はハードSM全盛でしたが、21世紀になってからは甘々路線ですから。
数本が1次通過して2次で1本だけ、それも最終落ちなんて屈辱より、いっそ清々しいです。
もう、いいもんね。
妄想の赴くままに書くまでです。いや、元々、SM小説に関しては売れ筋とか関係なく書きたいものを書くという方針を貫いてきました。そりゃまあ、出版が約束されているなら、NTRだろうとイチャラブSMだろうと、それなりのレベルの作品を書く自信はありますが。なんだったら、健全ラノベでも!
けど、まあ……「それなり」でしかないです。既存の作家と同水準しか書けません。
企画・編集サイドとしても、新人を採用するリスクを回避します。デビューには、既存の作家を超える+αが必要条件なのです。
あーあ。第12回SFマガジン・コンテスト参考作授賞が、筆者の墓碑銘になるのかしらねえ。
まったく、悪いことは続くもので。
昨年の9月に母が死去して、11月にはSF小説時代の師匠(30年以上のご無沙汰でしたが)が亡くなられて、12月に熱帯雨林ポルノ認定で、続いて外付HDDがクラッシュして(災厄レベルが低すぎる?)、なんとか治まったかなと思っていたら、今回のこれ。たぶん、9月上旬に派遣社員契約延長無しの通告が来て……それで、厄落としかしら。最後のはモロ死活にかかわりますがな。
最初から可能性ゼロだったフランスよりは、サマージャンボのほうが期待を持てるかな???
辛気臭い話はおしまい。
「パーカー、やっておしまい」
「はい、お嬢様」
ズダダダダダダダ!
以下、本編です。
無料動画を漁っていて、ちょっと面白いのを見つけました。
・逆T字形の棒を突っ込んで、横木は膝の裏へあてがう。歩くと、自分でこねくる。動画"insex 2004-GG"

こういうのは好きです。
『未性熟処女の強制足入れ婚』でバージンロードを歩くシーンだったか、『女囚性務所』での懲罰だったか。2本の棒を挿入して、片脚ずつ内腿と膝に縛りつけるというのは、書いたことがあります。歩けば淫唇強制開口ですね。
画像のほうは、専用器具ではなく、環境に優しい(女に厳しい)樹木を使っているというのが、筆者的にはツボです。
どこかで使ってみたいものです。これは拷問ではなく、プレイのひとつですね。
いや。ちょこっと山歩きではなく、戦地で捕らえた捕虜か人質にとったお姫様を、自国までこの格好で連行する。こうなれば、苦痛系の恥辱です。
そうか。『ミスリルの悲劇』で、女騎士は全裸背中合わせ騎乗が必然ですが、一緒に捕らえた侍女を、こうして歩かせるのもありだったんですね。増補改訂版でも書こうかしら。嘘です。
もひとつ。こっちは拷問手法というか、口実です。
・そう易々と自白するとは。さては嘘だな。ほんとうのことを言え。
さっきと言っていることが違うぞ。どっちが本当なんだ。
今日も拷問、明日も拷問、明後日もだ。それでも自白が変わらなければ信用してやる。
頑なに同じことを繰り返しているな。よほど隠し通したいとみえる。
実際の尋問でも、似たような手法が採用されているそうです。
何度も供述させて、その矛盾を衝くわけです。
いくら本当のことを白状しても信じてもらえずに拷問される。これは、なかなかにツボです。
冤罪は、こうして作られる――なんて、社会派を気取ったりはしません。そういったことは、濠門長恭クン以外の自我にまかせておきます。
DLsiteなどで販売している作品でも応募可能との言葉を信じて、14本(前後編はまとめて1本、シリーズものもまとめて1本で勘定)も大量にブチこんだのですが。ゆうパック段ボール箱で2コです。それが……昨日1次予選結果が出ていまして、通過作品144本の中にひとつもはいっていない?!
これまでも、しつこく応募してきて、1次落ちしたことはありません。まあ、2次にたどり着くのがやっとでしたけどね。
急に応募作品の水準が上がったわけではないです。
結局、有料販売なので弾かれたか、熱帯雨林との確執を紙のお手紙にして同梱したせいか。ともかく、営業的判断ですね。
まあね。筆者の作品群は「商業誌に載っていてもおかしくない」レベルです。しかし、商業誌のほうから「載せさせてください」と言ってくるレベルには、ちょっと届きません。読者の嗜好だと編集者が思い込んでいる方向と作風とが一致すれば、あり得るんですけどね。1980年代の仏蘭西はハードSM全盛でしたが、21世紀になってからは甘々路線ですから。
数本が1次通過して2次で1本だけ、それも最終落ちなんて屈辱より、いっそ清々しいです。
もう、いいもんね。
妄想の赴くままに書くまでです。いや、元々、SM小説に関しては売れ筋とか関係なく書きたいものを書くという方針を貫いてきました。そりゃまあ、出版が約束されているなら、NTRだろうとイチャラブSMだろうと、それなりのレベルの作品を書く自信はありますが。なんだったら、健全ラノベでも!
けど、まあ……「それなり」でしかないです。既存の作家と同水準しか書けません。
企画・編集サイドとしても、新人を採用するリスクを回避します。デビューには、既存の作家を超える+αが必要条件なのです。
あーあ。第12回SFマガジン・コンテスト参考作授賞が、筆者の墓碑銘になるのかしらねえ。
まったく、悪いことは続くもので。
昨年の9月に母が死去して、11月にはSF小説時代の師匠(30年以上のご無沙汰でしたが)が亡くなられて、12月に熱帯雨林ポルノ認定で、続いて外付HDDがクラッシュして(災厄レベルが低すぎる?)、なんとか治まったかなと思っていたら、今回のこれ。たぶん、9月上旬に派遣社員契約延長無しの通告が来て……それで、厄落としかしら。最後のはモロ死活にかかわりますがな。
最初から可能性ゼロだったフランスよりは、サマージャンボのほうが期待を持てるかな???
辛気臭い話はおしまい。
「パーカー、やっておしまい」
「はい、お嬢様」
ズダダダダダダダ!

以下、本編です。
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こういうのは好きです。
『未性熟処女の強制足入れ婚』でバージンロードを歩くシーンだったか、『女囚性務所』での懲罰だったか。2本の棒を挿入して、片脚ずつ内腿と膝に縛りつけるというのは、書いたことがあります。歩けば淫唇強制開口ですね。
画像のほうは、専用器具ではなく、環境に優しい(女に厳しい)樹木を使っているというのが、筆者的にはツボです。
どこかで使ってみたいものです。これは拷問ではなく、プレイのひとつですね。
いや。ちょこっと山歩きではなく、戦地で捕らえた捕虜か人質にとったお姫様を、自国までこの格好で連行する。こうなれば、苦痛系の恥辱です。
そうか。『ミスリルの悲劇』で、女騎士は全裸背中合わせ騎乗が必然ですが、一緒に捕らえた侍女を、こうして歩かせるのもありだったんですね。増補改訂版でも書こうかしら。嘘です。
もひとつ。こっちは拷問手法というか、口実です。
・そう易々と自白するとは。さては嘘だな。ほんとうのことを言え。
さっきと言っていることが違うぞ。どっちが本当なんだ。
今日も拷問、明日も拷問、明後日もだ。それでも自白が変わらなければ信用してやる。
頑なに同じことを繰り返しているな。よほど隠し通したいとみえる。

実際の尋問でも、似たような手法が採用されているそうです。
何度も供述させて、その矛盾を衝くわけです。
いくら本当のことを白状しても信じてもらえずに拷問される。これは、なかなかにツボです。
冤罪は、こうして作られる――なんて、社会派を気取ったりはしません。そういったことは、濠門長恭クン以外の自我にまかせておきます。
Progress Report 4:赤い冊子と白い薔薇
チャイルス猖獗で、またまた在宅勤務ですが。
どうも、クビが危ない。3か月単位の契約更改が、今回は1か月。次の更改交渉は9月初旬頃ですが、かなり W Arrow です。
などという話は、サブブログ(→)にまかせて。
盆休みには脱稿するでしょうが、そうすると前後編に分けて9,10月公開ですからぎりぎり月刊維持ですが、盆休み中に新作に着手は難しいでしょう。まあ、10月からは時間がたっぷり……あると困るのです!
Progress Report 3 は、こちら→
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第三章六幕です。
濠門長恭初挑戦のマングリ返し緊縛連姦は、すでに終わっています。製品版の発売をお待ちください。
・肛姦と口姦と
さすがに署内の全員ということもなく、紗良への凌辱は二十人ほどで終わった。
連れて来られたときとは違って後ろ手枷を掛けられて、両側から支えられても立っていられないまでに消耗していたので、引きずられて取調室から引きずり出された。
弓子も狸縛りの吊りから下ろされて、やはり全裸に後ろ手枷という惨めな(しかし、すっかり慣らされてしまった)姿で連れ去られた。
恵ひとりだけが、四匹の淫虐鬼の中に取り残されていた。荒島、浜村、浅利、青谷――記録係を務める淀江が不在ということは、恵を自白に追い込むつもりがないからだろう。そうとでも考えなければ、淫虐鬼どもの打ち合わせに合点がいかない。
「こいつは、元から変態趣味があったわけですから……なまなかな責めでは心をへし折れんでしょう」
青谷が、いずれは自分の物にするはずの女を鬼どもの前に突き飛ばすようなことを言う。
「さて、どうですかね。こいつ、まだ媾合いの味を知らんのですよ。だから、平気で破廉恥な真似ができるのです」
「そんなものかな。まあ、女にかけてはピカイチの浅利クンが言うのだから、正しいのだろうが」
「では、色責めに掛けてみますか」
衆議一決。
恵にも、色責めの意味は薄々察せられる。昨日と今日で、察せられるようにされてしまった。だから、余計に戦慄する。
(こんな大怪我をしているところを、この人たちはまだ虐めるつもりなのだろうか)
目の前で見せつけられてさえも、怪我をしていない部位が残されていることに、恵は気づかない。そして――粘膜を切り裂かれての出血など、この男どもはかすり傷くらいにしか思っていないということにも。
「味を教え込むとなると、海老責めのままでは無理か」
浜村が恵の縄を解いた。
「…………」
滞っていた血行が甦って、全身がジインと痺れた。
「はあ、はあ、はあ……」
思い切り貪る空気を甘くさえ感じた。
が、安逸は一瞬。記録係用の小机が部屋の中央に引き出され、上体を直角に曲げられてうつ伏せに縛りつけられた。両手で左右の脚を握らされて手首を縛りつけられる。開脚させられて膝も縛りつけられた。小さな机なので、乗っているのは腹部だけ。乳房は机の向こう側に剥き出しに立っている。
(犬のような姿で犯される……)
恵は、自分の理解が三分の一しか正しくなかったと、すぐに思い知ることになる。
恵の目の前で、浜村が奇妙な作業を始めた。先革をはずして放置してあった竹刀の先端に大きなビー玉を乗せて、それをガーゼでくるむ。そのままガーゼを先端から二十センチあたりまで何重にも巻き付けた。
「よっこらせ」
浅利が恵の目の前にバケツを置いた。恵が失禁したときの始末に使われたものよりふた回りは大きい。水がいっぱいに張られている。
浜村がそこに竹刀を浸けて。ガーゼから水が滴って床を汚すのも気にせず、恵の後ろへまわった。
肛門に冷たい感触を押し付けられて、今さらに恵は狼狽した。ヤスリのつぎは竹刀。異物で陵辱する拷問だと直感した。
「力を抜いていろ。力むと痛いぞ」
力んでいるつもりはなかった。しかし、自然と括約筋だけでなく全身が硬直してしまう。
ずぐうううっと……一気に竹刀を押し込まれた。
「いぎゃああっ……熱いっ!」
激痛というよりも、狭い穴を無理矢理に抉じ開けられる不快きわまりない拡張感。そこに灼熱が重なっている。
「ぎひいい……」
竹刀が回転するのが肛門に感じられた。腸の奥まで突かれて、内臓が押し上げられるような圧迫を下腹部に感じた。
ズポッと、小さく音がして――灼熱が消えた。
鼻先に竹刀が突きつけられた。まだらに茶色く汚れている。小さな固形物もこびりついていた。悪臭が鼻の奥まで突き抜ける。
「可愛い顔していても、内側はこんなものだ」
浜村はバケツに竹刀を突っ込んで掻き回した。固形物が剥がれて、ガーゼの色もわずかに薄くなった。
ぞんざいに洗われた竹刀が、ふたたび恵を貫く。
「熱い……いやあああ」
同じ灼熱を繰り返されて、驚愕の無いぶんだけ悲鳴は抑制されていた。
「女の中には、しこたま貯めているやつも多いが、おまえは腸が綺麗だな」
恵は便秘とは無縁だった。どころか。昨日の朝に食べてからは米の一粒も口にしていないというのに、今朝も少量だがお通じがあった。逆さ吊りにされているときは、跡始末できなかった汚れに内心で悶絶していたのだが、今は汚物を見せつけられなくて済んだ。まさしく、不幸中の幸いではあった。
「青谷警部、こちらも口開けをなさいますね」
同じ階級の歳下を、丁寧な口調でけしかける浜村。
「口開けは、そこのやつで済んでいるでしょうに」
青谷が尋問用の椅子を目で指した。
「いやいや。陰間などは張形でさんざんに修練を重ねておきながら、水揚げと称しますからね」
異物挿入は数のうちにはいらないと、浅利が真面目くさって言う。
「玄人を相手にしているぶんには構わんが、善良な少年にまでは手を出すなよ」
荒島が苦笑を交える。つまり浅利は、善良な少女には手を出しているということなのだろう。
「なるほど。では、先達のお言葉に甘えるとしましょう」
青谷が立って、恵の後ろへ動いた。
事ここにいたっては、恵も自分の運命を悟らざるを得ない。二十四時間前までは、そのような行為が世の中に存在することすら知らなかった――不衛生で破廉恥な醜行。
他の男ではなく青谷だというのが、微かな救いのようにも思えたけれど。どうせなら、ヤスリで犯される前に……ぼんやり像(かたち)作られかけた言葉を、恵はあわてて打ち消した。
この男の奴隷妻になど、絶対にならない。あたしはユリお姉様を護って責め殺されるのだ。かすかに甘い味のする絶望だった。
ペッと唾を吐く音がして、すぼまった穴を指でこねくられた。そして……
竹刀とは違って灼けるように熱い感触が押し当てられて。閉ざされた穴が、ぐうううっと押し込まれて。ずぶりと貫かれた。
「いやああああっ……熱いッ!」
棒ヤスリや竹刀は、恵を一瞬で貫いた。けれど青谷は、じわじわと押し入ってくる。だからといって括約筋を拡張される熱痛感がやわらぐこともなく、苦悶の時間だけが長引く。
「きひいいい……くう……」
青谷の下腹部が尻に突き当たって、わずかに激痛が落ち着く。
「はああ……はあ、はあ」
口を開けて喘ぐだけの余裕を、恵は取り戻した。
青谷が抽挿を開始した。熱痛がうねって、息が自然と押し出される。
「はっ、はっ、はっ……痛い……もう、赦して……ください」
自分が哀願していると、恵は気づいていない。
「どうにも太平洋ですね。萎えてしまいますよ」
「腸には筋肉がありませんからね。そのかわり、括約筋の締まりは女穴の比ではないですよ。雁首を入口でしごくようにするのが、肛姦の極意です」
浅利が指南すると、青谷が早速に実践する。
「ぎひいっ……痛い痛い痛い……やめて……」
雁首に拡張されては、すぼまると内側から『返し』の部分で抉じ開けられる。ただ淫茎を突き挿れられるよりも、痛みは大きい。しかも、激しく律動する。
不意に熱痛が抜去された。
(終わったんだ……)
惨めに安堵した恵だったが。お下げを頭の後ろで束ねて引き上げられた。
(…………!?)
頭を無理強いに引き起こされた鼻先に、まったく衰えていない剛直が突きつけられた。、牛熱い部屋の中でも湯気を立てている。はっきりと異臭をはなっていた。
「口を開けろ」
恵は青谷の顔を見上げて、固く唇を引き結んだ。言葉に従えば、腸内の汚れにまみれた怒張を頬張らされるに決まっている。
「強情ですね」
青谷が荒島を振り返って、わざとらしい苦笑を浮かべた。
浜村が立ち上がって、棚から有刺鉄線の束を取り出した。淫虐鬼どもが『鉄鞭』と称している凶器。それを手にして、恵の横に立った。
「躾は最初が肝心ですよ」
右手を上げて、鞭の根元を乳房に押しつけた。 有刺鉄線の棘が柔肌に突き刺さる。
「くっ……」
口を開けるわけにはいかない。恵は意識して悲鳴を封じた。
「浜村さん。それは、さすがに可哀そうです。僕も大岩警部補の顰(ひそみ)に倣うとしましょう」
青谷がズボンのベルトを抜いて浜村に渡した。
「そうですか。赤ん坊に乳をやれなくなっては拙いですね」
昨日は乃木も華江を相手にそんなことを言っていた。一発や二発、有刺鉄線で乳房を敲いたところで、そこまで酷いことにはならないのだが――母性本能への恫喝としては大きな効果がある。
浜村は鉄鞭のときのような威嚇はせずに、いきなり右手を撥ね上げた。
バシイン!
「きゃああっ……!」
乳房が爆発したような衝撃と、一瞬遅れての重たい激痛。
悲鳴を吐き終えても半開きになっている口に、青谷が怒張を近づける。
すでにそれを拒む気力は粉砕されていたが――自身の汚れを口に入れることへの嫌悪感が、無意識のうちに口を閉じさせていたのだろう。
バシイン!
「きゃああっ……ごめんなさい」
不本意な謝罪を口にして、恵は目を伏せた。醜悪な怒張が、ふたたび近づいてくる。
「口を開けろとは言ったが……ちゃんと咥えろ」
屈辱に頭をクラクラさせながら、恵は言葉に従った。
口を閉ざすと、臭気が鼻腔の奥を突いた。硬いけれど笛(くらいしか、口に咥えたことはなかった)なんかとは違って、柔らかさで上塗りされている――キュロンとした舌触りだった。
「聞き分けがよくなったな。しゃぶれ。舐めるんだ」
言葉の意味は理解できても、すぐには実行できなかった。嫌悪があったし、要求を受け容れればつけ込まれて、いっそう淫らな仕種(それがなんであるか、想像は出来なかったけれど)をしいられるのではないかという駆け引きめいた気持ちもはたらいていた。
恵の横で、浜村と浅利が入れ替わった。浅利は恵に横合いから腕をまわして、両手でバンドを握って乳房に押し当てた。バックルに先端を通してベルトを引き絞っていく。乳房がつぶれて、胸全体も圧迫されて息苦しくなってくる。
「んぶ……?」
ベルトが横に滑って、乳房をしたたかにこすった。灼けるような痛み。乳首には激痛が奔った――のだが、ベルトで敲かれる爆発的な痛みではなく、チリチリする感覚の奥には、不快とは断じられないくすぐったさが潜んでいた。
浅利の掌が恵の尻を撫でた。
「警部殿のおっしゃる通りにしろ」
ペチンと叩かれた。先輩への苛酷な拷問を見せられ、自身も逆さ吊りにされたり拷問椅子に座らされたりワニグチクリップやベルト鞭の洗礼を受けている恵には、わずかな恥辱を与える以上の効き目はない。怒張を咥えさせられている少女に激痛を与えれば、加虐者の側に不測の事態を生じかねないゆえの配慮――とまでは気づかない。不服従を続けるともっと痛い目に遭わせるぞという脅しだと思ってしまう。
その思い込みを裏付けるように――胸を巻くベルトが左右に滑った。灼けるような痛みと、鋭く繊細な感触と。
恵は嫌悪をねじ伏せて、口中の異物に舌を這わせた。いざ、そうしてみると――感触も大きさもまるきり異なってはいるものの、ユリとの舌の戯れで覚えた要領を無意識に応用して、まったく純粋無垢な少女とは思えない淫靡な蠢かし方をしてしまう。
「おお、うまいぞ。これなら立ちん坊でじゅうぶんに稼げるな」
立ちん坊というのは街娼の謂である。遊郭が公認されていても、籠の鳥を嫌って、多大の危険(性病、地回り、強盗など)を承知で街に立って客を引く。浮浪罪で逮捕されることもあるが、数日間慰み物にされて放逐されるくらいで済む。そういった事情までは知らない恵だが、青谷の言葉が侮辱だとは、声の調子で察せられた。
しかし、しゃぶり始めてしまっては、いまさらにやめるには、かえって意志の力が必要になる。
「裏筋もなめろ。雁首の裏に、縦に筋があるのはわかるな――そう、そこだ」
「鈴口――小便の出る穴だ。そこを舌先で突っつけ。まわりを舐めろ」
次々と押しつけられる要求にも素直に応じてしまう。
胸の圧迫が減った。ベルトが緩められて――まだ左右に滑り始めた。が、痛みはなかった。乳首だけが刺激されて、チリチリする感覚が鮮明になる。くすぐったさが快感に変じた。
青谷が、お下げをつかんだまま腰を前後に揺すり始めた。
「頑張れ、頑張れ」
浅利が囃し立てながら、ベルトをいっそう激しく滑らせる。
荒々しい快感がさざ波になって、だんだんと大きくうねり始めた。
「んぐ……むぶう……んくっ、んんっ……」
喉を突かれて込み上げる吐き気をこらえる呻きに、快感の喘ぎが重なった。しかし快感は、ユリから与えられるそれの四半分にも満たない。それでも、だんだんと快感が苦しさや屈辱を上まわり始めて――
「んむっ……」
力むようなうなり声とともに、熱い滾りが恵の喉奥にぶち撒けられた。
「げふっ……」
咳き込みかけると、いっそう強く腰を押し付けられた。
「吐き出すな。飲み込め。命の源だ。一滴残らず飲み干せ」
無理に吐き出せば、乳房を敲かれるか拷問椅子か、それともワイヤーを跨がされるか、もっと残虐な拷問か。恵は喉の痙攣にさからって、口中の汚濁を嚥下した。
「だいぶん素直になってきたな」
犬の頭を撫でるようにぽんぽんと恵の頭を叩いてから、青谷が抜去した。
「ふううう……」
今度こそ終わったと、安堵の吐息。しかし。
「初めてにしては上出来だった。褒美をやろう」
浜村が白熱電球を恵に見せつけた。ソケットに嵌められていて、スイッチをひねると眩く点灯する。家庭用の電球に比べると頭部の膨らみが小さく、フィラメントが細いバネで浮いているのだが、そんな些細な違いに気づくゆとりなど恵にはない。
「…………?」
昼行燈――そんな諺が頭に浮かんだ。浜村の意図がわからなかった。
浜村の姿が背後に消えて。股間を指でこねくられた。傷口を抉られて、鋭い痛みが奔る。
「淫汁ではなく血がにじんできたか。潤滑にはなるだろう」
指が引き抜かれて――冷たい感触を押し付けられて、ようやく恵は、これから咥えられようとしている淫虐を悟った。
「おとなしくしていろ。電球が割れると大怪我をするぞ」
しかし電球は、張り裂けるのではないかと思った擂粉木よりも、さらに太い。とても挿入(はい)るとは思えない。
「無理です! やめてください」
電球の頭部が、ぐりぐりと淫唇をこねくりながら――侵入してくる。血で潤滑されていても、膣口がキシキシと軋む。
「痛い……無理! やめてください……ひいいいいっ!」
限界を超えて拡張されて――不意に、グポンと大きな塊りが下腹部を圧迫した。膣口の痛みが軽くなった。
「ぽこんと膨れているな」
淫埠を撫でられて、それが自分にも感じられた。
「夜だったら蛍見物の風流が愉しめるところだが……」
腰の奥が、ぽうっと温かくなった。いや、だんだんと熱くなってくる。電球を灯されたのだと、恵にもわかった。
「三十分も放置すれば、子を産めない身体になる」
「それは困ります。勘弁してやってください」
青谷がとりなす――のは台本どおりなのだが、もちろん恵にはわからない。
「そうですか。では、使用中には電気を消すことにしますか」
「話が逆のような気もするぞ」
荒島が恵の前に立った。ズボンを下げて越中褌を緩め、萎えた淫茎を露出した。
「勃たせてみろ」
(…………?!)
青谷以外の男から淫らな行ないを求められるとは、まるで思っていなかった。華江は乃木、弓子は大谷――組み合わせは決まっていた。紗良だけは誰からかまわず犯されていたが、彼女は誰かの奴隷妻に目されているのではなく、肉人形として弄ばれ、いずれは責め殺される運命だと、いつか恵も思い込んでいる。自分も、そうなのだろうか。
「青谷さん……」
処女を奪い、排泄器官も摂食器官も――すべての穴を蹂躙した男に、恵は縋るしかなかった。
「あたしを……他の男の人たちに穢されても、平気なのですか?」
青谷は答えずに――浜村と場所を替わって、電球を引き抜いた。が、すぐに挿れ直して。二度三度と抜き差しした。
「性行為とは、ここに魔羅を突き立てることだ。他の穴は関係ないね」
それは正論だった。この時代から八十余年が経過した現在でさえ、『性交類似行為』はすくなくとも売春防止法の規制を受けていない。
「非道い……」
そう怨じるのが、やっとだった。
「サックを着けていれば、この穴だって同じだ。もちろん、僕の許しを得ないで勝手な真似はさせないがね」
つまり。もしも青谷の妻になったところで、彼の命じるがままに売春婦の真似事をさせられかねない。いや、肉の賄賂、あるいは内偵捜査の生餌にされる。女だけに、そういった方向への想像は容易にはたらいた。
しかし、そんな将来のことを考えているどころではない。ふたたび、腰の奥で灼熱が膨れあがってきた。
いっそ、ここが使いものにならなくなれば、青谷の奴隷妻にされる悲惨だけは免れる。けれど、その咄嗟の思いつきを実行に移す蛮勇は持ち合わせていなかった。
恵はみずからの意志で顔を上げて口を開いた。首を伸ばして、目の前の萎びた肉棒を口に咥えた。
灼熱の膨張が止まって、わずかずつ冷え始めた。
「舐めろ。すすれ。青谷クンに仕込まれたとおりにやれ」
荒島は頭をつかんだり腰をつかったりせず、恵の一方的な奉仕を強いる。
恵は、おずおずと舌を絡めた。まるで麩菓子を舐めているような舌触りだった。もちろん、唾液で溶けたりはしない。逆に、次第に太く硬くなっていく。
(馴れというのは恐ろしい……)
機械的に舌を動かしながら、ふっと思った。わずか十分前にはあんなに嫌悪していた行為を、吐き気を覚えることもなく実行している自分が、やりきれなくなってしまう。
もちろん、好き好んでしているわけではない。電球に膣を焼かれる恐怖から逃れるための、不本意きわまりない強いられた行為ではあるのだけれど。涙がにじむ気配すらないのも事実だった。それどころか――男というものは、射精するとすぐには勃起しないのだと、わずか二日の見分と体験とで、恵はじゅうぶんに学んでいる。年齢が関係しているらしいとも。射精して一時間と経っていない五十男が、自分の口の中で自分の舌遣いで勃起している。屈辱の中に誇らしさが紛れ込んでいた。
「本官もお相伴させていただきます」
荒島に断わってから、浅利は下半身を丸出しにしたばかりか開襟シャツまで脱いで、ランニングシャツ一枚になった。この男は紗良への輪姦には加わっていない。若い巡査が『遠距離砲撃』と形容した状態になっている。
唾で自身を湿してから、恵の背中におおいかぶさった。
「くっ……」
括約筋を押し広げられる、熱い激痛。しかし、悲鳴にまでは至らなかった。
ズブズブと肛門を貫かれて、内臓を押し上げられる鈍重な不快と――下腹部が押し破られそうな圧迫と。
「ケツ穴にマンコが引っ越してきたかと思うほどの締まりですな」
膣を電球で膨満させられて、腸も圧迫されている。
「おまえも気持ちいいんじゃないか?」
恵が苦痛しか感じていないと承知のうえでの問いかけだった。
恵は、答えられる状況にはない。口はふさがれているし、首を振って歯が怒張をこすったりすれば叱られる。
「では、気持ち良くしてやろう」
体重をのし掛けられて、乳房をつかまれた。
また虐められると身構えた恵だったが――指は食い込んでこなかった。五本の指が、軽やかに乳房を撫でる。掌のくぼみが、乳首をこする。
「んんっ……んふう」
女の穴に電球を突っ込まれて発声器官も排泄器官も肉棒に犯されているという激痛と圧迫と恥辱の極致にあって、乳房にだけは甘いさざ波が生じて――浅利の手の動きにだんだんと波が煽られていく。相反する感覚に翻弄されて、恵は混乱していた。
「こら、ちゃんと舐めろ。しゃぶれ。啜れ」
荒島に叱咤されても、言葉は意味を形成せずに頭を素通りしていく。
浅利の片手が乳房からはなれた。電球のソケットを摘まんで、浅い抽挿を与える。
「きひっ……んぶうう」
電球の膨らみに膣口を拡張させられ、浅利が力を緩めると収縮が電球を奥へと咥え込む。繰り返されるうちに、激痛が鈍痛へと麻痺していく。電球の角度が変わって、ますます腸壁への圧迫が強くなって……
「ああっ……んん!」
にょるんと肉蕾を摘ままれて、恵は不本意な甘い悲鳴をあげたのだが。
「痛っ……噛みつきおった」
荒島が腰を引いた。恵が悲鳴の直後に歯をくいしばったのだった。もっとも、まだまだ快感が浅いぶん、顎を閉じる力も知れていた。荒島が怒張を維持しているのが、その証拠だった。
「逆らうとどうなるか、思い知らせてやる」
恵にしてみれば、まったくの言いがかり――荒島としては、いっそうの屈辱を与える恰好の口実だった。
荒島が棚から竹筒を取り出して、怒張に装着した。気を失っている紗良の口を犯したときに使った道具だった。
「もっと口を開けろ」
荒島の声に含まれている(あるいは芝居がかった)怒気に怯えて、恵は大きく口をあけて竹筒の蹂躙にまかせた。怒張とはまったく異質の無機質な硬さに歯先をこすられて、生理的な不快があった。
俄然、荒島が腰を激しく突き動かし始めた。紗良を犯したときはみずから腰の高さを調節していたが、その手間も省いて、お下げの根元を両手でつかんで顔の向きを上下に変えさせる。そのたびに、亀頭を口蓋におしつけられたり舌を押さえ込まれたり――顔が正面を向いたときには喉の奥まで抉られる。
「んぶ……ぶふっ……んんんっ……」
浅利は上体を起こし気味に直して、荒島の動きに合わせて腰を使いながら、両手で恵の肉蕾を刺激にかかった。剥き下げては戻し、戻しては剥き下げる。あるいは実核を摘まんで先端を強くこする。愛撫というには乱暴に過ぎるが、弄虐と呼ぶのもためらわれる動きだった。すくなくとも、昨日までは生娘だった未開発の少女には拷問にちかい扱いのはずだが――ワニグチクリップの咬虐に比べれば、じゅうぶんに受け容れられる刺激ではあったのだろう。
「んぶうう……んん……くううう」
息苦しさを訴える呻きが、だんだんと甘く蕩けてきた。
「快感が腰全体に広がっていくのがわかるか?」
耳元でささやかれてみると――快感はともかく、肛門の熱痛はずいぶんと薄らいでいるのに気づく。淫核に発する快感が、二穴の苦痛を押し返している。そんな感じがした。
「課長殿。こいつ、しっかり感じています。褒美を与えてやってください。噛みつかれる心配はありません」
口中の異物が引き抜かれて、竹筒のかぶさっていない――すでに馴染みかけている弾力に富んだ温かい肉棒が押し込まれた。それが、『褒美』という言葉に重なった。
つまりは、暗示効果と条件付けだった。恵は淫虐鬼どもの快感調教に馴致される第一歩を踏み出したのだった。
しかし。この場の主導権を握っている浅利には、無垢な少女を単なる淫乱娘に仕立てる意図はなかったのか――あるいは、自白を引き出す駆け引きの手段に残しておこうと考えたのか。荒島が動きを早めて、そのぶん恵を苦しめながら早急に埒を明けようとするのを抑えはしなかった。そしてみずからも、荒島の放出に呼応して射精に至ったのだった。
ただし、それで恵への凌辱が終わったのではない。
再び、恵の中の電球が点された。じわじわと腰の奥に熱が溜まっていく。
「く……熱い……」
呻いても、男どもは無関心を装っている。荒島など、取調官が座る革張りの椅子にふんぞり返って、のんびりと煙草をくゆらせていた。
「青谷さん、助けてください」
屈辱は打ち捨てて、またも恵は『初めての男』に哀願した。どんなに淫虐なやり方だったにしても、処女を奪った男には嫌悪一色ではない感情が揺れる。
「僕は、もう堪能した。浜村警部あたりに頼むんだね」
使用中には電気を消す――浜村の言葉を思い出した。ここにいる四人の中で、まだ恵を使っていないのは浜村だけだった。
「そんなはしたないこと、口にできません。お願いです……あたしが石女(うまずめ)になっても、いいのですか?」
恵としては、屈辱に恥辱を重ねて理に訴えたつもりだったが。
「勘違いするなよ。僕は荒島課長殿の好意を無碍にしたくないから、あえておまえに救いの手を伸べてやってもいいと考えているだけだ。その気になれば、嫁の一人や二人、どうにでも見繕えるんだからな」
「孤児院とか女衒とか――良家の子女ってわけにはいきませんですがね」
浜村に半畳を入れられて、青谷の端正な顔がわずかにゆがんだ。
「縛られて濡らしたり敲かれて気を遣るような女を娶るなんて、僕にはできませんね」
高文組と叩き上げの反目。あるいは、権力で女を自由にすれば満足できる比較的に真っ当な男と、権力で女を甚振ることに愉悦を感じる変態との確執なのかもしれない。
しかし、恵はそんな微妙な齟齬には気づかない。身体を内側から灼かれる痛みよりも恐怖が、口にできないはずの言葉を吐かせていた。
「浜村さん。お願いですから、電気を消してあたしを使ってください」
浜村は、ちろっと青谷を振り返ってから。
「被疑者のくせに、サン付けとは狎れ狎れしい。それに、どこをどういうふうに使うのか、サッパリわからんぞ」
「浜村警部殿……」
バチンと尻を叩かれた。二日前の恵だったら大仰な悲鳴をあげていただろうが、今となっては痛みも羞ずかしさもほとんど感じなかった。
「浜村様。ケツの穴にオチンポ様を嵌めてください――それくらいは言ってみろ」
屈辱を噛み締めている暇はなかった。
「はまむらさま……け、けつの穴に、お、お……おちんぽさまを……はめてください!」
卑猥な言葉をつっかえつっかえ、口にして、最後には叫んでいた。
「まあ、いいだろう」
パチンとソケットのスイッチがひねられて、突き刺さるような熱痛が薄れた。
ほうっと安堵の息を吐いた直後。尻を灼熱が貫いた。
「ぎゃわああああっ……!」
腰をつかまれるような予告もなく、不意打ちの突貫だった。凸と凹とがきっちり合っていないのを無理矢理に押し込まれたのだから、激痛も著しかった。しかし……
浅利が横に来て、恵の股間に片手を差し入れた。三本の指で肉蕾を剥き下げて、人差し指と中指とで実核をしごく。荒々しい、しかし愛撫だった。
肛門は灼けるような痛みに苛まれ、膣は怒張した魔羅よりも太い電球で裂けそうなまでに押し広げられて――苦痛の渦の端で一点だけが、甘い稲妻に翻弄されている。
「くうう……いやあ……痛い……もっと……」
痛みに比べれば、ごくささやかな快感。ユリに与えられる極上の甘美と比べれば、惨めで残酷な快感。しかし、そこにしがみついていれば、苦痛がやわらぐのも事実だった。激痛と快感に引き裂かれながら、恵は無意識に愛撫をねだっていた。
「もっと、どうして欲しいんだ。はっきり言え」
「……もっと、お豆を……虐めてください」
なぜか、可愛がってというのをためらって、そんなふうに言ってしまった。
「なるほど。さすがは……だな。まさに慧眼というべきか。青谷警部殿では持て余すかもしれませんな」
浅利が不得要領な言葉をつぶやく。それが聞こえたのか、青谷が眉をしかめた。
「では、気を合わせて虐めてやりましょう」
浜村が恵の腰を両手でつかんで、荒腰を使い始めた。一往復ごとに抜去しては、激しい勢いで突き立てる。
浅利は真横に位置して、右手で淫核に乱暴な愛撫を加えながら、左手は掌底で乳房を押し上げながら指を大きく広げて双つの乳首を同時に転がす。
甘い稲妻に三点を翻弄されて――快感が苦痛をうわまわっていく。
「んあああ……逝く……ごめんなさい、ユリお姉様」
ユリ以外の――それも男の乱暴な愛撫で浮揚させられる後ろめたさが、恵に禁断の名前を口走らせていた。浜村は行為に夢中だったとしても、冷徹に恵を追い上げている浅利も、黙って淫劇を鑑賞している荒島と青谷も、その名を糺そうとしなかった。
――浜村が恵の腹腔に精を放ったとき、恵はまだ頂点からは程遠い高さにしか浮かんでいなかった。浅利の手もあっさりと逃げ去って、恵は地面に叩きつけられた思いだった。ズルズルと電球が抜き去られて、その刺激に官能を追い求める始末だった。
恵は机から解き放たれて、すぐに後ろ手に緊縛された。乳房を絞りあげられて、腰の奥に残っていた埋み火がじんわりと熾きた。
「あ、ああん……」
喘いでしまって。縄に愉悦を感じた自分に戸惑いを覚える恵だった。
「さすがに日曜日は早仕舞いとするか。明日からは覚悟しておけと言いたいところだが――そうそう小娘の相手ばかりもしておれん」
それとも――荒島が、青谷に目を向けた。
「若い連中に息抜きをさせてやるか?」
わざわざ青谷に断わりを入れるのは、息抜き云々は自分と関わりのあることだと、恵にもわかる。ついさっきまで自分の受けていた仕打ち。その前の、いっそう無惨な紗良への輪姦。荒島の言葉の意味は、わかりたくなくてもわかってしまう。
「他人の種を孕まさない予防をしていただけるなら、僕は構いませんよ」
浜村や浅利よりも青谷のほうがよほど残酷だと、恵は痛感した。またワイヤーを跨がされようと、紗良さんみたいに灼けた針を突き刺されようと――いいえ、殺されたって、こんな男に傅いてなるものか。その決意が運命をさらにねじ曲げるとは、知る由もない恵だった。
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つまり、こういう形ですね。このポーズの画像、ほとんど無いです。蟻が来りて芋虫なのかしら。
300枚を超えたのに、逮捕されてまだ2日目。
女穴は1回だけ、発声器官と排泄器官が、それぞれ2回ずつ。拷問椅子の凸凹極太擂粉木と棒ヤスリはカウントに入れません。
でも、本文中にも書きましたが、ゴムを装着していれば胡瓜と変わりはないんだからノーカンになるんでしょうかね。法的には、そうなっていませんけど。
どうも、クビが危ない。3か月単位の契約更改が、今回は1か月。次の更改交渉は9月初旬頃ですが、かなり W Arrow です。
などという話は、サブブログ(→)にまかせて。
盆休みには脱稿するでしょうが、そうすると前後編に分けて9,10月公開ですからぎりぎり月刊維持ですが、盆休み中に新作に着手は難しいでしょう。まあ、10月からは時間がたっぷり……あると困るのです!
Progress Report 3 は、こちら→
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第三章六幕です。
濠門長恭初挑戦のマングリ返し緊縛連姦は、すでに終わっています。製品版の発売をお待ちください。
・肛姦と口姦と
さすがに署内の全員ということもなく、紗良への凌辱は二十人ほどで終わった。
連れて来られたときとは違って後ろ手枷を掛けられて、両側から支えられても立っていられないまでに消耗していたので、引きずられて取調室から引きずり出された。
弓子も狸縛りの吊りから下ろされて、やはり全裸に後ろ手枷という惨めな(しかし、すっかり慣らされてしまった)姿で連れ去られた。
恵ひとりだけが、四匹の淫虐鬼の中に取り残されていた。荒島、浜村、浅利、青谷――記録係を務める淀江が不在ということは、恵を自白に追い込むつもりがないからだろう。そうとでも考えなければ、淫虐鬼どもの打ち合わせに合点がいかない。
「こいつは、元から変態趣味があったわけですから……なまなかな責めでは心をへし折れんでしょう」
青谷が、いずれは自分の物にするはずの女を鬼どもの前に突き飛ばすようなことを言う。
「さて、どうですかね。こいつ、まだ媾合いの味を知らんのですよ。だから、平気で破廉恥な真似ができるのです」
「そんなものかな。まあ、女にかけてはピカイチの浅利クンが言うのだから、正しいのだろうが」
「では、色責めに掛けてみますか」
衆議一決。
恵にも、色責めの意味は薄々察せられる。昨日と今日で、察せられるようにされてしまった。だから、余計に戦慄する。
(こんな大怪我をしているところを、この人たちはまだ虐めるつもりなのだろうか)
目の前で見せつけられてさえも、怪我をしていない部位が残されていることに、恵は気づかない。そして――粘膜を切り裂かれての出血など、この男どもはかすり傷くらいにしか思っていないということにも。
「味を教え込むとなると、海老責めのままでは無理か」
浜村が恵の縄を解いた。
「…………」
滞っていた血行が甦って、全身がジインと痺れた。
「はあ、はあ、はあ……」
思い切り貪る空気を甘くさえ感じた。
が、安逸は一瞬。記録係用の小机が部屋の中央に引き出され、上体を直角に曲げられてうつ伏せに縛りつけられた。両手で左右の脚を握らされて手首を縛りつけられる。開脚させられて膝も縛りつけられた。小さな机なので、乗っているのは腹部だけ。乳房は机の向こう側に剥き出しに立っている。
(犬のような姿で犯される……)
恵は、自分の理解が三分の一しか正しくなかったと、すぐに思い知ることになる。
恵の目の前で、浜村が奇妙な作業を始めた。先革をはずして放置してあった竹刀の先端に大きなビー玉を乗せて、それをガーゼでくるむ。そのままガーゼを先端から二十センチあたりまで何重にも巻き付けた。
「よっこらせ」
浅利が恵の目の前にバケツを置いた。恵が失禁したときの始末に使われたものよりふた回りは大きい。水がいっぱいに張られている。
浜村がそこに竹刀を浸けて。ガーゼから水が滴って床を汚すのも気にせず、恵の後ろへまわった。
肛門に冷たい感触を押し付けられて、今さらに恵は狼狽した。ヤスリのつぎは竹刀。異物で陵辱する拷問だと直感した。
「力を抜いていろ。力むと痛いぞ」
力んでいるつもりはなかった。しかし、自然と括約筋だけでなく全身が硬直してしまう。
ずぐうううっと……一気に竹刀を押し込まれた。
「いぎゃああっ……熱いっ!」
激痛というよりも、狭い穴を無理矢理に抉じ開けられる不快きわまりない拡張感。そこに灼熱が重なっている。
「ぎひいい……」
竹刀が回転するのが肛門に感じられた。腸の奥まで突かれて、内臓が押し上げられるような圧迫を下腹部に感じた。
ズポッと、小さく音がして――灼熱が消えた。
鼻先に竹刀が突きつけられた。まだらに茶色く汚れている。小さな固形物もこびりついていた。悪臭が鼻の奥まで突き抜ける。
「可愛い顔していても、内側はこんなものだ」
浜村はバケツに竹刀を突っ込んで掻き回した。固形物が剥がれて、ガーゼの色もわずかに薄くなった。
ぞんざいに洗われた竹刀が、ふたたび恵を貫く。
「熱い……いやあああ」
同じ灼熱を繰り返されて、驚愕の無いぶんだけ悲鳴は抑制されていた。
「女の中には、しこたま貯めているやつも多いが、おまえは腸が綺麗だな」
恵は便秘とは無縁だった。どころか。昨日の朝に食べてからは米の一粒も口にしていないというのに、今朝も少量だがお通じがあった。逆さ吊りにされているときは、跡始末できなかった汚れに内心で悶絶していたのだが、今は汚物を見せつけられなくて済んだ。まさしく、不幸中の幸いではあった。
「青谷警部、こちらも口開けをなさいますね」
同じ階級の歳下を、丁寧な口調でけしかける浜村。
「口開けは、そこのやつで済んでいるでしょうに」
青谷が尋問用の椅子を目で指した。
「いやいや。陰間などは張形でさんざんに修練を重ねておきながら、水揚げと称しますからね」
異物挿入は数のうちにはいらないと、浅利が真面目くさって言う。
「玄人を相手にしているぶんには構わんが、善良な少年にまでは手を出すなよ」
荒島が苦笑を交える。つまり浅利は、善良な少女には手を出しているということなのだろう。
「なるほど。では、先達のお言葉に甘えるとしましょう」
青谷が立って、恵の後ろへ動いた。
事ここにいたっては、恵も自分の運命を悟らざるを得ない。二十四時間前までは、そのような行為が世の中に存在することすら知らなかった――不衛生で破廉恥な醜行。
他の男ではなく青谷だというのが、微かな救いのようにも思えたけれど。どうせなら、ヤスリで犯される前に……ぼんやり像(かたち)作られかけた言葉を、恵はあわてて打ち消した。
この男の奴隷妻になど、絶対にならない。あたしはユリお姉様を護って責め殺されるのだ。かすかに甘い味のする絶望だった。
ペッと唾を吐く音がして、すぼまった穴を指でこねくられた。そして……
竹刀とは違って灼けるように熱い感触が押し当てられて。閉ざされた穴が、ぐうううっと押し込まれて。ずぶりと貫かれた。
「いやああああっ……熱いッ!」
棒ヤスリや竹刀は、恵を一瞬で貫いた。けれど青谷は、じわじわと押し入ってくる。だからといって括約筋を拡張される熱痛感がやわらぐこともなく、苦悶の時間だけが長引く。
「きひいいい……くう……」
青谷の下腹部が尻に突き当たって、わずかに激痛が落ち着く。
「はああ……はあ、はあ」
口を開けて喘ぐだけの余裕を、恵は取り戻した。
青谷が抽挿を開始した。熱痛がうねって、息が自然と押し出される。
「はっ、はっ、はっ……痛い……もう、赦して……ください」
自分が哀願していると、恵は気づいていない。
「どうにも太平洋ですね。萎えてしまいますよ」
「腸には筋肉がありませんからね。そのかわり、括約筋の締まりは女穴の比ではないですよ。雁首を入口でしごくようにするのが、肛姦の極意です」
浅利が指南すると、青谷が早速に実践する。
「ぎひいっ……痛い痛い痛い……やめて……」
雁首に拡張されては、すぼまると内側から『返し』の部分で抉じ開けられる。ただ淫茎を突き挿れられるよりも、痛みは大きい。しかも、激しく律動する。
不意に熱痛が抜去された。
(終わったんだ……)
惨めに安堵した恵だったが。お下げを頭の後ろで束ねて引き上げられた。
(…………!?)
頭を無理強いに引き起こされた鼻先に、まったく衰えていない剛直が突きつけられた。、牛熱い部屋の中でも湯気を立てている。はっきりと異臭をはなっていた。
「口を開けろ」
恵は青谷の顔を見上げて、固く唇を引き結んだ。言葉に従えば、腸内の汚れにまみれた怒張を頬張らされるに決まっている。
「強情ですね」
青谷が荒島を振り返って、わざとらしい苦笑を浮かべた。
浜村が立ち上がって、棚から有刺鉄線の束を取り出した。淫虐鬼どもが『鉄鞭』と称している凶器。それを手にして、恵の横に立った。
「躾は最初が肝心ですよ」
右手を上げて、鞭の根元を乳房に押しつけた。 有刺鉄線の棘が柔肌に突き刺さる。
「くっ……」
口を開けるわけにはいかない。恵は意識して悲鳴を封じた。
「浜村さん。それは、さすがに可哀そうです。僕も大岩警部補の顰(ひそみ)に倣うとしましょう」
青谷がズボンのベルトを抜いて浜村に渡した。
「そうですか。赤ん坊に乳をやれなくなっては拙いですね」
昨日は乃木も華江を相手にそんなことを言っていた。一発や二発、有刺鉄線で乳房を敲いたところで、そこまで酷いことにはならないのだが――母性本能への恫喝としては大きな効果がある。
浜村は鉄鞭のときのような威嚇はせずに、いきなり右手を撥ね上げた。
バシイン!
「きゃああっ……!」
乳房が爆発したような衝撃と、一瞬遅れての重たい激痛。
悲鳴を吐き終えても半開きになっている口に、青谷が怒張を近づける。
すでにそれを拒む気力は粉砕されていたが――自身の汚れを口に入れることへの嫌悪感が、無意識のうちに口を閉じさせていたのだろう。
バシイン!
「きゃああっ……ごめんなさい」
不本意な謝罪を口にして、恵は目を伏せた。醜悪な怒張が、ふたたび近づいてくる。
「口を開けろとは言ったが……ちゃんと咥えろ」
屈辱に頭をクラクラさせながら、恵は言葉に従った。
口を閉ざすと、臭気が鼻腔の奥を突いた。硬いけれど笛(くらいしか、口に咥えたことはなかった)なんかとは違って、柔らかさで上塗りされている――キュロンとした舌触りだった。
「聞き分けがよくなったな。しゃぶれ。舐めるんだ」
言葉の意味は理解できても、すぐには実行できなかった。嫌悪があったし、要求を受け容れればつけ込まれて、いっそう淫らな仕種(それがなんであるか、想像は出来なかったけれど)をしいられるのではないかという駆け引きめいた気持ちもはたらいていた。
恵の横で、浜村と浅利が入れ替わった。浅利は恵に横合いから腕をまわして、両手でバンドを握って乳房に押し当てた。バックルに先端を通してベルトを引き絞っていく。乳房がつぶれて、胸全体も圧迫されて息苦しくなってくる。
「んぶ……?」
ベルトが横に滑って、乳房をしたたかにこすった。灼けるような痛み。乳首には激痛が奔った――のだが、ベルトで敲かれる爆発的な痛みではなく、チリチリする感覚の奥には、不快とは断じられないくすぐったさが潜んでいた。
浅利の掌が恵の尻を撫でた。
「警部殿のおっしゃる通りにしろ」
ペチンと叩かれた。先輩への苛酷な拷問を見せられ、自身も逆さ吊りにされたり拷問椅子に座らされたりワニグチクリップやベルト鞭の洗礼を受けている恵には、わずかな恥辱を与える以上の効き目はない。怒張を咥えさせられている少女に激痛を与えれば、加虐者の側に不測の事態を生じかねないゆえの配慮――とまでは気づかない。不服従を続けるともっと痛い目に遭わせるぞという脅しだと思ってしまう。
その思い込みを裏付けるように――胸を巻くベルトが左右に滑った。灼けるような痛みと、鋭く繊細な感触と。
恵は嫌悪をねじ伏せて、口中の異物に舌を這わせた。いざ、そうしてみると――感触も大きさもまるきり異なってはいるものの、ユリとの舌の戯れで覚えた要領を無意識に応用して、まったく純粋無垢な少女とは思えない淫靡な蠢かし方をしてしまう。
「おお、うまいぞ。これなら立ちん坊でじゅうぶんに稼げるな」
立ちん坊というのは街娼の謂である。遊郭が公認されていても、籠の鳥を嫌って、多大の危険(性病、地回り、強盗など)を承知で街に立って客を引く。浮浪罪で逮捕されることもあるが、数日間慰み物にされて放逐されるくらいで済む。そういった事情までは知らない恵だが、青谷の言葉が侮辱だとは、声の調子で察せられた。
しかし、しゃぶり始めてしまっては、いまさらにやめるには、かえって意志の力が必要になる。
「裏筋もなめろ。雁首の裏に、縦に筋があるのはわかるな――そう、そこだ」
「鈴口――小便の出る穴だ。そこを舌先で突っつけ。まわりを舐めろ」
次々と押しつけられる要求にも素直に応じてしまう。
胸の圧迫が減った。ベルトが緩められて――まだ左右に滑り始めた。が、痛みはなかった。乳首だけが刺激されて、チリチリする感覚が鮮明になる。くすぐったさが快感に変じた。
青谷が、お下げをつかんだまま腰を前後に揺すり始めた。
「頑張れ、頑張れ」
浅利が囃し立てながら、ベルトをいっそう激しく滑らせる。
荒々しい快感がさざ波になって、だんだんと大きくうねり始めた。
「んぐ……むぶう……んくっ、んんっ……」
喉を突かれて込み上げる吐き気をこらえる呻きに、快感の喘ぎが重なった。しかし快感は、ユリから与えられるそれの四半分にも満たない。それでも、だんだんと快感が苦しさや屈辱を上まわり始めて――
「んむっ……」
力むようなうなり声とともに、熱い滾りが恵の喉奥にぶち撒けられた。
「げふっ……」
咳き込みかけると、いっそう強く腰を押し付けられた。
「吐き出すな。飲み込め。命の源だ。一滴残らず飲み干せ」
無理に吐き出せば、乳房を敲かれるか拷問椅子か、それともワイヤーを跨がされるか、もっと残虐な拷問か。恵は喉の痙攣にさからって、口中の汚濁を嚥下した。
「だいぶん素直になってきたな」
犬の頭を撫でるようにぽんぽんと恵の頭を叩いてから、青谷が抜去した。
「ふううう……」
今度こそ終わったと、安堵の吐息。しかし。
「初めてにしては上出来だった。褒美をやろう」
浜村が白熱電球を恵に見せつけた。ソケットに嵌められていて、スイッチをひねると眩く点灯する。家庭用の電球に比べると頭部の膨らみが小さく、フィラメントが細いバネで浮いているのだが、そんな些細な違いに気づくゆとりなど恵にはない。
「…………?」
昼行燈――そんな諺が頭に浮かんだ。浜村の意図がわからなかった。
浜村の姿が背後に消えて。股間を指でこねくられた。傷口を抉られて、鋭い痛みが奔る。
「淫汁ではなく血がにじんできたか。潤滑にはなるだろう」
指が引き抜かれて――冷たい感触を押し付けられて、ようやく恵は、これから咥えられようとしている淫虐を悟った。
「おとなしくしていろ。電球が割れると大怪我をするぞ」
しかし電球は、張り裂けるのではないかと思った擂粉木よりも、さらに太い。とても挿入(はい)るとは思えない。
「無理です! やめてください」
電球の頭部が、ぐりぐりと淫唇をこねくりながら――侵入してくる。血で潤滑されていても、膣口がキシキシと軋む。
「痛い……無理! やめてください……ひいいいいっ!」
限界を超えて拡張されて――不意に、グポンと大きな塊りが下腹部を圧迫した。膣口の痛みが軽くなった。
「ぽこんと膨れているな」
淫埠を撫でられて、それが自分にも感じられた。
「夜だったら蛍見物の風流が愉しめるところだが……」
腰の奥が、ぽうっと温かくなった。いや、だんだんと熱くなってくる。電球を灯されたのだと、恵にもわかった。
「三十分も放置すれば、子を産めない身体になる」
「それは困ります。勘弁してやってください」
青谷がとりなす――のは台本どおりなのだが、もちろん恵にはわからない。
「そうですか。では、使用中には電気を消すことにしますか」
「話が逆のような気もするぞ」
荒島が恵の前に立った。ズボンを下げて越中褌を緩め、萎えた淫茎を露出した。
「勃たせてみろ」
(…………?!)
青谷以外の男から淫らな行ないを求められるとは、まるで思っていなかった。華江は乃木、弓子は大谷――組み合わせは決まっていた。紗良だけは誰からかまわず犯されていたが、彼女は誰かの奴隷妻に目されているのではなく、肉人形として弄ばれ、いずれは責め殺される運命だと、いつか恵も思い込んでいる。自分も、そうなのだろうか。
「青谷さん……」
処女を奪い、排泄器官も摂食器官も――すべての穴を蹂躙した男に、恵は縋るしかなかった。
「あたしを……他の男の人たちに穢されても、平気なのですか?」
青谷は答えずに――浜村と場所を替わって、電球を引き抜いた。が、すぐに挿れ直して。二度三度と抜き差しした。
「性行為とは、ここに魔羅を突き立てることだ。他の穴は関係ないね」
それは正論だった。この時代から八十余年が経過した現在でさえ、『性交類似行為』はすくなくとも売春防止法の規制を受けていない。
「非道い……」
そう怨じるのが、やっとだった。
「サックを着けていれば、この穴だって同じだ。もちろん、僕の許しを得ないで勝手な真似はさせないがね」
つまり。もしも青谷の妻になったところで、彼の命じるがままに売春婦の真似事をさせられかねない。いや、肉の賄賂、あるいは内偵捜査の生餌にされる。女だけに、そういった方向への想像は容易にはたらいた。
しかし、そんな将来のことを考えているどころではない。ふたたび、腰の奥で灼熱が膨れあがってきた。
いっそ、ここが使いものにならなくなれば、青谷の奴隷妻にされる悲惨だけは免れる。けれど、その咄嗟の思いつきを実行に移す蛮勇は持ち合わせていなかった。
恵はみずからの意志で顔を上げて口を開いた。首を伸ばして、目の前の萎びた肉棒を口に咥えた。
灼熱の膨張が止まって、わずかずつ冷え始めた。
「舐めろ。すすれ。青谷クンに仕込まれたとおりにやれ」
荒島は頭をつかんだり腰をつかったりせず、恵の一方的な奉仕を強いる。
恵は、おずおずと舌を絡めた。まるで麩菓子を舐めているような舌触りだった。もちろん、唾液で溶けたりはしない。逆に、次第に太く硬くなっていく。
(馴れというのは恐ろしい……)
機械的に舌を動かしながら、ふっと思った。わずか十分前にはあんなに嫌悪していた行為を、吐き気を覚えることもなく実行している自分が、やりきれなくなってしまう。
もちろん、好き好んでしているわけではない。電球に膣を焼かれる恐怖から逃れるための、不本意きわまりない強いられた行為ではあるのだけれど。涙がにじむ気配すらないのも事実だった。それどころか――男というものは、射精するとすぐには勃起しないのだと、わずか二日の見分と体験とで、恵はじゅうぶんに学んでいる。年齢が関係しているらしいとも。射精して一時間と経っていない五十男が、自分の口の中で自分の舌遣いで勃起している。屈辱の中に誇らしさが紛れ込んでいた。
「本官もお相伴させていただきます」
荒島に断わってから、浅利は下半身を丸出しにしたばかりか開襟シャツまで脱いで、ランニングシャツ一枚になった。この男は紗良への輪姦には加わっていない。若い巡査が『遠距離砲撃』と形容した状態になっている。
唾で自身を湿してから、恵の背中におおいかぶさった。
「くっ……」
括約筋を押し広げられる、熱い激痛。しかし、悲鳴にまでは至らなかった。
ズブズブと肛門を貫かれて、内臓を押し上げられる鈍重な不快と――下腹部が押し破られそうな圧迫と。
「ケツ穴にマンコが引っ越してきたかと思うほどの締まりですな」
膣を電球で膨満させられて、腸も圧迫されている。
「おまえも気持ちいいんじゃないか?」
恵が苦痛しか感じていないと承知のうえでの問いかけだった。
恵は、答えられる状況にはない。口はふさがれているし、首を振って歯が怒張をこすったりすれば叱られる。
「では、気持ち良くしてやろう」
体重をのし掛けられて、乳房をつかまれた。
また虐められると身構えた恵だったが――指は食い込んでこなかった。五本の指が、軽やかに乳房を撫でる。掌のくぼみが、乳首をこする。
「んんっ……んふう」
女の穴に電球を突っ込まれて発声器官も排泄器官も肉棒に犯されているという激痛と圧迫と恥辱の極致にあって、乳房にだけは甘いさざ波が生じて――浅利の手の動きにだんだんと波が煽られていく。相反する感覚に翻弄されて、恵は混乱していた。
「こら、ちゃんと舐めろ。しゃぶれ。啜れ」
荒島に叱咤されても、言葉は意味を形成せずに頭を素通りしていく。
浅利の片手が乳房からはなれた。電球のソケットを摘まんで、浅い抽挿を与える。
「きひっ……んぶうう」
電球の膨らみに膣口を拡張させられ、浅利が力を緩めると収縮が電球を奥へと咥え込む。繰り返されるうちに、激痛が鈍痛へと麻痺していく。電球の角度が変わって、ますます腸壁への圧迫が強くなって……
「ああっ……んん!」
にょるんと肉蕾を摘ままれて、恵は不本意な甘い悲鳴をあげたのだが。
「痛っ……噛みつきおった」
荒島が腰を引いた。恵が悲鳴の直後に歯をくいしばったのだった。もっとも、まだまだ快感が浅いぶん、顎を閉じる力も知れていた。荒島が怒張を維持しているのが、その証拠だった。
「逆らうとどうなるか、思い知らせてやる」
恵にしてみれば、まったくの言いがかり――荒島としては、いっそうの屈辱を与える恰好の口実だった。
荒島が棚から竹筒を取り出して、怒張に装着した。気を失っている紗良の口を犯したときに使った道具だった。
「もっと口を開けろ」
荒島の声に含まれている(あるいは芝居がかった)怒気に怯えて、恵は大きく口をあけて竹筒の蹂躙にまかせた。怒張とはまったく異質の無機質な硬さに歯先をこすられて、生理的な不快があった。
俄然、荒島が腰を激しく突き動かし始めた。紗良を犯したときはみずから腰の高さを調節していたが、その手間も省いて、お下げの根元を両手でつかんで顔の向きを上下に変えさせる。そのたびに、亀頭を口蓋におしつけられたり舌を押さえ込まれたり――顔が正面を向いたときには喉の奥まで抉られる。
「んぶ……ぶふっ……んんんっ……」
浅利は上体を起こし気味に直して、荒島の動きに合わせて腰を使いながら、両手で恵の肉蕾を刺激にかかった。剥き下げては戻し、戻しては剥き下げる。あるいは実核を摘まんで先端を強くこする。愛撫というには乱暴に過ぎるが、弄虐と呼ぶのもためらわれる動きだった。すくなくとも、昨日までは生娘だった未開発の少女には拷問にちかい扱いのはずだが――ワニグチクリップの咬虐に比べれば、じゅうぶんに受け容れられる刺激ではあったのだろう。
「んぶうう……んん……くううう」
息苦しさを訴える呻きが、だんだんと甘く蕩けてきた。
「快感が腰全体に広がっていくのがわかるか?」
耳元でささやかれてみると――快感はともかく、肛門の熱痛はずいぶんと薄らいでいるのに気づく。淫核に発する快感が、二穴の苦痛を押し返している。そんな感じがした。
「課長殿。こいつ、しっかり感じています。褒美を与えてやってください。噛みつかれる心配はありません」
口中の異物が引き抜かれて、竹筒のかぶさっていない――すでに馴染みかけている弾力に富んだ温かい肉棒が押し込まれた。それが、『褒美』という言葉に重なった。
つまりは、暗示効果と条件付けだった。恵は淫虐鬼どもの快感調教に馴致される第一歩を踏み出したのだった。
しかし。この場の主導権を握っている浅利には、無垢な少女を単なる淫乱娘に仕立てる意図はなかったのか――あるいは、自白を引き出す駆け引きの手段に残しておこうと考えたのか。荒島が動きを早めて、そのぶん恵を苦しめながら早急に埒を明けようとするのを抑えはしなかった。そしてみずからも、荒島の放出に呼応して射精に至ったのだった。
ただし、それで恵への凌辱が終わったのではない。
再び、恵の中の電球が点された。じわじわと腰の奥に熱が溜まっていく。
「く……熱い……」
呻いても、男どもは無関心を装っている。荒島など、取調官が座る革張りの椅子にふんぞり返って、のんびりと煙草をくゆらせていた。
「青谷さん、助けてください」
屈辱は打ち捨てて、またも恵は『初めての男』に哀願した。どんなに淫虐なやり方だったにしても、処女を奪った男には嫌悪一色ではない感情が揺れる。
「僕は、もう堪能した。浜村警部あたりに頼むんだね」
使用中には電気を消す――浜村の言葉を思い出した。ここにいる四人の中で、まだ恵を使っていないのは浜村だけだった。
「そんなはしたないこと、口にできません。お願いです……あたしが石女(うまずめ)になっても、いいのですか?」
恵としては、屈辱に恥辱を重ねて理に訴えたつもりだったが。
「勘違いするなよ。僕は荒島課長殿の好意を無碍にしたくないから、あえておまえに救いの手を伸べてやってもいいと考えているだけだ。その気になれば、嫁の一人や二人、どうにでも見繕えるんだからな」
「孤児院とか女衒とか――良家の子女ってわけにはいきませんですがね」
浜村に半畳を入れられて、青谷の端正な顔がわずかにゆがんだ。
「縛られて濡らしたり敲かれて気を遣るような女を娶るなんて、僕にはできませんね」
高文組と叩き上げの反目。あるいは、権力で女を自由にすれば満足できる比較的に真っ当な男と、権力で女を甚振ることに愉悦を感じる変態との確執なのかもしれない。
しかし、恵はそんな微妙な齟齬には気づかない。身体を内側から灼かれる痛みよりも恐怖が、口にできないはずの言葉を吐かせていた。
「浜村さん。お願いですから、電気を消してあたしを使ってください」
浜村は、ちろっと青谷を振り返ってから。
「被疑者のくせに、サン付けとは狎れ狎れしい。それに、どこをどういうふうに使うのか、サッパリわからんぞ」
「浜村警部殿……」
バチンと尻を叩かれた。二日前の恵だったら大仰な悲鳴をあげていただろうが、今となっては痛みも羞ずかしさもほとんど感じなかった。
「浜村様。ケツの穴にオチンポ様を嵌めてください――それくらいは言ってみろ」
屈辱を噛み締めている暇はなかった。
「はまむらさま……け、けつの穴に、お、お……おちんぽさまを……はめてください!」
卑猥な言葉をつっかえつっかえ、口にして、最後には叫んでいた。
「まあ、いいだろう」
パチンとソケットのスイッチがひねられて、突き刺さるような熱痛が薄れた。
ほうっと安堵の息を吐いた直後。尻を灼熱が貫いた。
「ぎゃわああああっ……!」
腰をつかまれるような予告もなく、不意打ちの突貫だった。凸と凹とがきっちり合っていないのを無理矢理に押し込まれたのだから、激痛も著しかった。しかし……
浅利が横に来て、恵の股間に片手を差し入れた。三本の指で肉蕾を剥き下げて、人差し指と中指とで実核をしごく。荒々しい、しかし愛撫だった。
肛門は灼けるような痛みに苛まれ、膣は怒張した魔羅よりも太い電球で裂けそうなまでに押し広げられて――苦痛の渦の端で一点だけが、甘い稲妻に翻弄されている。
「くうう……いやあ……痛い……もっと……」
痛みに比べれば、ごくささやかな快感。ユリに与えられる極上の甘美と比べれば、惨めで残酷な快感。しかし、そこにしがみついていれば、苦痛がやわらぐのも事実だった。激痛と快感に引き裂かれながら、恵は無意識に愛撫をねだっていた。
「もっと、どうして欲しいんだ。はっきり言え」
「……もっと、お豆を……虐めてください」
なぜか、可愛がってというのをためらって、そんなふうに言ってしまった。
「なるほど。さすがは……だな。まさに慧眼というべきか。青谷警部殿では持て余すかもしれませんな」
浅利が不得要領な言葉をつぶやく。それが聞こえたのか、青谷が眉をしかめた。
「では、気を合わせて虐めてやりましょう」
浜村が恵の腰を両手でつかんで、荒腰を使い始めた。一往復ごとに抜去しては、激しい勢いで突き立てる。
浅利は真横に位置して、右手で淫核に乱暴な愛撫を加えながら、左手は掌底で乳房を押し上げながら指を大きく広げて双つの乳首を同時に転がす。
甘い稲妻に三点を翻弄されて――快感が苦痛をうわまわっていく。
「んあああ……逝く……ごめんなさい、ユリお姉様」
ユリ以外の――それも男の乱暴な愛撫で浮揚させられる後ろめたさが、恵に禁断の名前を口走らせていた。浜村は行為に夢中だったとしても、冷徹に恵を追い上げている浅利も、黙って淫劇を鑑賞している荒島と青谷も、その名を糺そうとしなかった。
――浜村が恵の腹腔に精を放ったとき、恵はまだ頂点からは程遠い高さにしか浮かんでいなかった。浅利の手もあっさりと逃げ去って、恵は地面に叩きつけられた思いだった。ズルズルと電球が抜き去られて、その刺激に官能を追い求める始末だった。
恵は机から解き放たれて、すぐに後ろ手に緊縛された。乳房を絞りあげられて、腰の奥に残っていた埋み火がじんわりと熾きた。
「あ、ああん……」
喘いでしまって。縄に愉悦を感じた自分に戸惑いを覚える恵だった。
「さすがに日曜日は早仕舞いとするか。明日からは覚悟しておけと言いたいところだが――そうそう小娘の相手ばかりもしておれん」
それとも――荒島が、青谷に目を向けた。
「若い連中に息抜きをさせてやるか?」
わざわざ青谷に断わりを入れるのは、息抜き云々は自分と関わりのあることだと、恵にもわかる。ついさっきまで自分の受けていた仕打ち。その前の、いっそう無惨な紗良への輪姦。荒島の言葉の意味は、わかりたくなくてもわかってしまう。
「他人の種を孕まさない予防をしていただけるなら、僕は構いませんよ」
浜村や浅利よりも青谷のほうがよほど残酷だと、恵は痛感した。またワイヤーを跨がされようと、紗良さんみたいに灼けた針を突き刺されようと――いいえ、殺されたって、こんな男に傅いてなるものか。その決意が運命をさらにねじ曲げるとは、知る由もない恵だった。
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つまり、こういう形ですね。このポーズの画像、ほとんど無いです。蟻が来りて芋虫なのかしら。
300枚を超えたのに、逮捕されてまだ2日目。
女穴は1回だけ、発声器官と排泄器官が、それぞれ2回ずつ。拷問椅子の凸凹極太擂粉木と棒ヤスリはカウントに入れません。
でも、本文中にも書きましたが、ゴムを装着していれば胡瓜と変わりはないんだからノーカンになるんでしょうかね。法的には、そうなっていませんけど。
『誘拐と陵辱の全裸サンバ』愈々本日発売!

It looks like sky C......なんだか空々しいですけど。
既報のとおり(→)FANZAでは発売期日指定を忘れて、とっくに販売中ですし。
朝三暮四連休(戦闘詳報参照→)で、執筆の合間の息抜きにBOOTHでも出してしまったし。±E(イー加減)ですねえ。
けれど、まあ。熱帯雨林中でも基準はDLsiteに置いていました。デビューしたとこですから。
というわけで、本日8月1日が、公式の発売開始日なのです。
Supendid Marvelouse Tours シリーズは、次の(いつ書くかわかりません)Episode7 『裸族の性人儀式』で、持ちネタが尽きます。

その後は、『昭和集団羞辱史』シリーズを進めるか、ロリマゾ番外編Strike Back! 題未定。熱血ショタコン教師+イジメ体罰公言実践私設スクールを発作マグナ的に書くか。
後半の舞台になるスクールは某猿(ぼう・さる)ヨットスクールがモデルです。驚いたことに校長以下多数が実刑判決を受けながら、反省の色もなくスクールを再開して、入所者に複数の自殺者を出しながらも、2020年現在まで存続しているそうです。しかも、入校金300万円とか、他に雑費が20万円だの生活費が15万円だの。こういうのこそ、炎上させろよ叩きまくれよ。妄想は脳内補間に留めとけよ。いや、それなりに燃えてますかね。蛙の面になんとやら、ですかね。ある意味、見習わなければなりませんかしら。まあ、どのみち。ネット検索で簡単にわかることですから、実名挙げたりましてやURL磔に処したりして煽りはしませんですけど。
という、義憤は上手出汁投げ。
ロリマゾ番外編Strike Back! は、女の子を真冬に素っ裸で戸外に放り出しても躾の範疇だった昭和を舞台にします。『昭和集団羞辱史』が昭和30年代なのに比べて、こちらは昭和50年前後にするでしょう。筆者が、あまりYahooらずに執筆できる時代です。ロリマゾは一人称が原則ですから、三人称で書けば、シリーズとまでは銘打っていませんが「昭和ノスタルジー」の括りに入れることになるかもしれません。
そういえば昭和ノスタルジー『幼な妻甘々調教』も宿題(?)でしたね。

今現在は『赤い冊子と白い薔薇』絶惨打鍵中です。この「惨」が作品にかかるのか筆者にかかるのか、自分でもわかっていませんけれど。前者なら中身が淫「惨」無比のすばらしさという意味ですし、後者なら「父として進まず母」です。作品の出来が「惨」である筈はありません。ええ、そうですとも。細かな設定も幕間劇も最小限(かなあ……?)に端折って、責め場の連続。どこぞのSM作家が示した「90%まではエロ/SM場面であるべし」という基準に、濠門長恭作品としてはこれまでになく近づいています。
マングリ返し緊縛同時二穴とか、三連環二穴連結永久運動(出→飲→出→飲……)とか、三角木馬撤廃ささくれワイヤーとか、サーベル峰打ちPussy斬り上げとか、ちょっと苦し紛れ気味ですが、新機軸も満載。女体灰皿なんて、刺身のツマ。
……あまり書くと、Progress Report がネタ切れになるので、ここらへんにしときますか。
あらためて。
新刊Splemdid Marvelouse Tours EPISODE6『誘拐と陵辱の全裸サンバ』震撼の発売中!
です。でるでむでん。