Progress Report 5:昭和集団羞辱史『売春編:女護ヶ島』

注記:表題は『売春島』から『女護ヶ島』に変更しました。
やはり、6尾も鯛が降る(フルタイム)と墓が進みます。
ということで、冒頭は破瓜シーンです。
いやはや。初体験でアクメなんて、エソラシドは固く戒めておりましたが。やらかしました。
ニンフォマニアは不感症という仮説があります。男からエクスタシーを与えてもらえなくて、「あっちが駄目ならこっちかな」とつぎつぎと試すのだとか。
そういう少女をヒロインにしてしまったので。
初体験でアクメ体験して、その男とは二度と逢えなくなって。次の体験がまるきりエクス足りずで。アクメを求めて三千里。売春島に就職するという展開です。
もちろん、ヒロインは単純に快楽を求めての行動ではありません。100万円あれば、廃業する隣家の田圃を購入して、足りないマンパワー(卑猥な意味はありません)は耕運機などの農機具を購入して。
そういう設定を……原稿用紙数枚でケリをつけるやり方もあるんでしょうけどね。延々と45枚も書くとは。
女にとって一生一度の晴れ舞台ですから、書き流すのは可哀そうです。妄想の赴くままに書いちまいました。
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夏祭の夜
公民館前の広場でラジオ体操が終わって、北野ユキは五百メートル先に見えている我が家に向かって歩き出した。弟の興一と隆二は反対方向へ。昨日はセミ採りだったが、今日はカブトムシだという。一昨日はバッタだった。早朝から一家総出で草取りをして、さらにラジオ体操。男の子の無尽蔵の活力には感心してしまう。
隣家の庭先で足を止める。古ぼけた家とも青々とした田圃ともそぐわないスポーツカーが停まっている。庄内家の長男、友則のものだ。ペチャンコに見えるのは屋根が無いせいだ。こんな車は洋画でしか見たことがない。村でしょっちゅう見かける車は乗合バスか、軽トラックぐらいのもの。このスポーツカーは軽トラックの四、五台分の値段だそうだ。
まだ学生なのに高価なスポーツカーを乗り回しているのは、家が裕福だからではない。友則は岩戸景気に乗って株の売買で大金を稼いだそうだ。株なんて博奕だと村の誰もが言っているが、友則の偉いところは引き時を知っていたことだ。儲けたお金で都会に土地を買って賃貸アパートを建てたという。まだ建築中なのに入居希望者が殺到して、空きは三戸だけ。そのうちの一戸には友則が住んで、いちばん大きな一戸には両親と妹が住む。そして残る一戸は、妹が結婚したときの新居に充てるという。なんとも豪勢な話だが、所詮は他家の話――では、すまない。
一家が引っ越したら、隣は空き家になる。空き家はどうでもいいが、空き田圃がもったいない。北野家としては是非にも買い取りたいところだった。そうすれば、将来は兄弟二人がそれぞれに独立できる。しかし、資金がまったく足りない。田圃が倍になっても一家五人は同じ(ユキたちが小さかった頃は祖父母が健在だったから、一家四人)だから、人手も足りない。耕運機と草刈機と稲刈機を買えば二倍が三倍でも余裕だが、結局はお金に行きつく。
(この車、二百万円したっていうけど)
その半分の百万円があれば、田圃も農業機械も買える。百万円といえば、家の年収の二倍以上。その中から種苗や肥料、農薬の代金、農協の会費も払っているから、『実入り』で考えれば四年分にも匹敵するだろうか。
結局は戦前まで大地主だった小島家が買い取って、農業機械で処理できない雑用を周囲の家が雀の涙で請け負わされるんだろうなあ。なにも悪いことは起きていないというのに、なんとなく気が滅入る朝になってしまった。
「おや、ユキちゃん。おはよう」
スポーツカーの持ち主が家から出てきて、ユキに声をかけた。
「あ、おはようございます」
ぺこんとお辞儀をして頭を上げると。友則は、なんだか眩しそうにユキを見詰めている。
「あの……どうかしましたか?」
友則の目が泳いだ。
「いや……ずいぶんおとなびたな、と。トモ兄(にい)、トモ兄ってちょこまかついてきた子とは、まるで見違えたよ」
歳は離れているが隣家でもあり、ヤンチャな餓鬼(弟)二人の面倒も見てくれたりするうちに、ユキも弟と一緒になってまとわりついていたのだった。もっとも、友則の妹の静子とは友則を取り合って小さな火花を飛ばし合ったこともあったが。
けれど、おとなびたのは、むしろトモ兄だとユキは思う。去年は盆も正月も帰省しなかったから、顔を合わせたのは二年ぶり。坊主頭のお兄さんではなく、ポマードの匂いを漂わす好青年に大変身。作業ズボンにランニングシャツという、ごくふつうの身なりでも、なんとなく洗練された印象を受ける。
「ずいぶん熱心に見ていたね。乗ってみる?」
「いえ、いいです」
反射的に答えて、ちょっぴり後悔した。高級なスポーツカーに乗れる二度とないチャンスを逃したというのではなく、せっかくトモ兄を独り占めできたのにという後悔。だけど、乗ったら乗ったで照れ臭いかなと、そこまで先回りして考えてしまう。
「そう。乗りたくなったら、いつでも言ってね。定員は四人だけど、スポーツカーの後部座席は狭いから二人乗りがくつろげるよ」
「はい、ありがとうございます」
ぺこんとお辞儀をして逃げるように立ち去って。家に帰ってから、最後の言葉が気になりだした。あれって、乗るときには弟を連れてくるなって意味だろうか。
「それは、そうだよね」
ズックなんか、いつも泥だらけ。車の中が汚れる。たぶんそういう理由じゃないとわかってるけれど、そういう理由にしておく。
稲が穂を孕んだら草刈りも間遠になる。ここぞとばかりにユキは宿題に取り組み、友則は連日のように同窓生と飲み歩いていた。
二人が顔を合わせたのは、村祭りの夜だった。他県からもタカマチ(屋台)が押し寄せて、両隣の村と併せての盛大な盆踊り大会。盆踊りは最初がいちばん人数が多くて、だんだん櫛の歯が欠けていく傾向がある。そのぶん、近くの林の中や不届きにも境内の裏手がなにやらゴソゴソとざわつきだす。祭りの無礼講はなにも酒に限らないという伝統が、今も脈々と受け継がれている。当然、実りの秋は稲穂に限ったことではなく、初雪の頃にはあちこちで三々九度が交わされる運びとなる。
こんなときでも、友則の手際は洗練されていた。野合ではなく、ガールハントといったほうがぴったりだった。
盆踊りは男女が交互に並んで三重の輪になって踊る。女はほぼ全員が浴衣だが、男は浴衣が半数くらい。最新流行のTシャツや、まったくの普段着姿も少なくない。
友則はアロハシャツに膝丈ズボンの太陽族ファッションで、盆踊りの輪に――加わらなかった。広い境内で家族が散り散りに分かれるとすぐに、ユキの手を引いて囁きかける。
「これから、夜の国道を突っ走らないか」
ドキン。
祭りの夜に男性から声を掛けられるのがどういうことか、わきまえていない娘はいない。清い身体で学校を卒業して清いままでお嫁に行く子も多いけれど――五人に一人くらいは、最後の夏に思い出を作る。去年卒業した先輩が、そんなことを言っていた。
ずっと可愛がってくれたトモ兄。この秋には一家挙げて都会へ引っ越して、もう二度と会えない。そう思ったときには、心が決まっていた。
「十時には家に帰らないと、親が心配するから」
友則が横に並びかけてきて、そのまま腰を抱いた。自然と、ユキも彼の腕にしなだれかかる形になった。
人の流れに逆らって歩くアベックを呼び止める野暮はいない。せいぜい、成金に油揚げをさらわれたやっかみの視線を投げかけるくらい。
寺のすぐ近くまで友則はスポーツカーを持ってきていた。助手席にユキを乗せて、タカマチの並んでいない間道を通って国道へ出た。
「ちょっとスピードを出すよ」
グオンとエンジンが吼えて、背中がシートに押しつけられた。頭の上を猛烈な風が吹き抜けて、三つ編みに結んだ大きなリボンが引き千切られそうになる。
幹線道路とはいえすでに日が暮れて、交通量は少ない。それでも数分おきに正面から眩しいヘッドライトが見る見る迫ってきて、轟音とともに横を掠め去る。遠くに見えていた先行車のテールランプがだんだん近づくと。
プワン。
クラクションの直後にテールランプが左へ流れて、後ろへ置いてきぼりにする。
交通事故なんてよその国の出来事くらいにしか思っていないユキは、スピードとスリルだけを楽しんでいた。なぜか腰の奥が熱くざわついてくる。とろりとした感触を股間に感じて、うろたえる。そういった経験はこれまでにもあったし、どういうときにそうなるかも、およそは察している。
前方にけばけばしいピンクの電飾看板が現われた。『モーテル77』
友則をスピードを落として車を左に寄せる。今さら口説く必要は無いとわかっているのだろう。無言のまま左折して、電飾看板をくぐった。
地面すれすれまで垂れている分厚い暖簾(?)を車の鼻先で押し分けると、そこが屋内の駐車場。友則は素早く車の後ろを回って助手席のドアを開ける。
まるで洋画を観ているような錯覚にユキはとらわれて、ますます腰の奥がざわつく。車から降りようとして足がもつれ、友則にしがみついた。
「おっと。それじゃ、せっかくだから」
ひょいとユキを横抱き(お姫様抱っこという言葉が広まったのは21世紀になってからである)にして、開けっ放しになっている入口をくぐった。
「休憩で」
フロアわきの小さな窓に話しかけると、四角い棒につながれた鍵が窓口に現われた。
「二階の二三号室へどうぞ」
階段はフロアの奥にあった。当然だが、受付の窓口からよく見える位置だ。
階段の手前でユキは身をよじった。
「歩いて上がります」
おろしてもらって、まだ足元がふわふわしているので、二の腕にしがみついて階段を上がる。豆電球が点滅しているドアの部屋を友則が開けて、そこでまたユキを横抱きにして敷居をまたいだ。狭い部屋の半分以上を大きなベッドが占有している。
「シャワーがあるから、汗を流しておいで」
汗はともかく、土ぼこりが肌にへばりついている感じだった。
シャワー室を開けて戸惑う。タイル張りの狭い小部屋。脱衣場が見当たらない。
「ここで脱いでいくんだよ」
後ろから抱きすくめられて、ますます立っていられなくなる。しゅるしゅるっと衣擦れの音がして、帯がほどかれる。戸惑うことなく帯をほどけるなんて、ずいぶんと遊び慣れている――半年後のユキならそう思っただろう。
頭に霧がかかってきて、いつのまにか浴衣も脱がされていた。下には腰巻も着けていないから、生まれたままの姿になった。
「これも濡れるといけないね」
お下げのリボンまで取って。ユキをシャワー室に押し込んで磨りガラスの引き戸を閉めた。
寝室は薄暗いから、シャワー室の明かりを点けたら向こうから丸見えになってしまう。そんなことにも気づかず、ユキはシャワーを浴び始めた。
カララッと引き戸が開いて、全裸の友則が闖入してきた。
「きゃ……」
シャワーを握ったまま背中を向けて両手で胸を抱えて、しゃがもうとしたところを抱きすくめられた。
「すごくきれいな裸だ。もっとよく見せてほしいな」
友則は片手でシャワーを止めて、その手が乳房を揉んだ。
乳房がじいんと痺れて、その痺れが甘く疼いた。乳首に触れられると、そこから心臓に向かって小さな矢のようなさざ波が奔る。
(キューピッドの矢に貫かれたみたい)
どくんどくんどくんと心臓が激しく拍って、鼓動が背筋を伝って腰の奥を揺すぶる。
腰に手を掛けられて、友則と向かい合った。
友則が身をのけぞらせて、ほんとうにユキの裸身をまざまざと眺める。
「綺麗だ。可愛いよ」
顔を近づけられて、ユキは顎を突き出して目を閉じた。
生温かくて柔らかな感触が唇に触れて。そのまま動かない。
腰にまわされていた手が背筋を下から上に撫でる。背中が総毛立った。といっても、悪寒ではない。逆。熱風で吹き上げられているみたい。
強く抱きしめられて。今度は手が下へ滑って、尻の丸みを撫でる。腰の奥のさざ波が熱く滾った。
「…………」
唇を重ねたまま、ユキは友則に抱きついた。いや、しがみついた。背筋を撫で上げられ、円を描くように尻を撫でられる。それを何度も繰り返されると、身体全体が飴のように溶けていく。そして……ふわっと身体が浮いた。のは、また横抱きにされたからだった。
「待って。身体が濡れてる」
「かまわないよ」
そのままシャワー室から抱え出されて、大きなベッドに横たえられた。部屋の中は、さっきよりも薄暗い。それでも、友則の顔がはっきりと見える。
「怖い……」
つぶやいて、ユキは右腕を横にして目の上に乗せた。左手は股間を隠している。
ぎし。ベッドが軋んで、友則の存在が間近に感じられた。
双つの乳房に、同時に掌が触れた。指が乳房の根元を円く撫でる。その円がだんだんと小さくなって、固く尖っていると自分でもわかる突起に指の腹が滑った。
「あ……」
乳首がマッチの頭になって燃え上がったような錯覚。炎は乳房全体に広がっていく。
友則の一方の手が腹を撫でおろす。臍をちょんっとつついてユキにちいさく悲鳴をあげさせてから、さらに股間へと滑り落ちていく。
ユキの左手を友則が払いのけたのか、それとも自分で防壁を崩したのか。
「いやあ……」
淫裂を撫で上げられて、心とは反対の言葉をユキの口が紡いだ。
「ひゃっ……」
淫裂の頂点に隠れている肉芽に触れられて、驚きでも拒絶でもない甲高い悲鳴を小さく漏らすユキ。そこに不思議な突起があることは、知っていた。うっかり机の角に押しつけたりすると、腰が砕けそうになるほどの甘い衝撃が腰を貫くことも。その正体を本能的に察知していたから、敢えて触れないようにしていた、そこ。そこを友則はつまんだ。つまんで、圧迫する。
にょるんとなにかが動いて。
「ひゃああっ……ん!」
腰がビクンと跳ねた。腰が爆発した。厚い滾りが粘っこい熔岩にみたいに迸る。
にょるん、にょるん……
肉芽は敏感な本体が莢に包まれていて、それが圧迫を受けて滑っているらしいと、ユキは気づいた。いや、そんな理解はどうでもよかった。これまでも幾度か垣間見ていた快感の蜃気楼。その実態を始めて知って。どこまで快感に没入したい誘惑と、快感に没入する恐怖とが、ひとつにもつれ合っている。
指がすこし下に動いて。
ずぶうっと、股間を穿たれた。
「い……」
痛いと言い切るほどには痛くなかった。むしろ。熔岩の煮え滾る中心をずぶずぶと貫かれているみたいで、肉芽を刺激されたときとは違う、もっと微かだが、くすぐったさの混じった重厚な快感が生じた。
指が穴を掻き回す。かすかな鈍い痛みと、くすぐったさと、深く沈み込むような快感と。
またベッドが軋んで。顔に友則の息を感じた。
「ユキちゃんの初めてをもらうよ。いいね」
「いや……」
本心ではないけれど、「はい」だなんて、羞ずかしくて言えない。
「ユキちゃんだなんて、子ども扱いしないでください。ユキって呼んでください」
本心だけれど、先の言葉の否定でもあった。
「……ユキ。おまえを僕の女にする」
脚を左右に割り開かれて。
「え……?」
腰の下に手を差し込まれて尻を持ち上げられた。
あおむけのまま上体反らしのような形にされて、高く浮いた股間に――指よりも圧倒的に太いものが触れたと感じた直後。
指に穿たれていた部分に、引き攣れるような痛みが生じた。ぐううううっと、太いものが押し挿ってくる。
「きひいいい……」
はっきりと痛い。と同時に。くすぐったさはなく、重厚な快感も指よりは強い。
ずぬうううっと、逆向きの感触が生じた。
(え……? これで終わったの?)
腕をずらして友則の様子をうかがうと。さっきまで結合していた部分を眺めている。
手を伸ばして桜紙を取ると、股間を拭った。その紙を広げて。ふうんといった表情。そこで、ユキの視線に気づく。
ユキの腕を横へ引っ張って、目の前に桜紙を広げた。染みの広がった紙のまん中が、いびつな楕円形に赤く染まっていた。
「初めての証しだよ。あまり痛そうになかったから、心配になったんだ」
「そんなこと、ありません。痛かったです」
「ふうん。人それぞれなんだ。雑誌なんかだと、あまりの痛さに初夜はできなかったとか、あれこれ書いてあったから」
後半は、なんだか言い訳めいて聞こえた。きっと、この人は他の女性の初めても奪っているんだ。けれど、それを男の不誠実とは思わなかった。そんな過去の女性よりも、あたしを選んでくれた。誇らしくさえ思った。が、友則がふたたび動き始めると、それどころではなくなった。
「今度は挿れるだけでなく、中で動くよ」
挿入は、さっきよりも痛くなかった。そして、快感は強まっていた。
友則は膝立ち気味になって上体を立て、ユキの腰を抱え込んで前後にピストン運動を始めた。
ずぐうう、ずにゅ。ずぐうう、ずにゅ。ゆっくりと繰り返す。
明美は両肩を布団につけて、腰を友則に抱えられている。両手は左右に垂らしているが、どうにも無様な気がする。ので、手を差し伸べて友則の腕に絡めてみた。
友則はそれをユキの余裕と受け取ったらしい。両手を腰から離してユキをベッドの上に平らに寝かせて。自分はユキにのしかかり、ユキの両肩のわきに手を突いて上体を支える。そして。
ズンズン、ズンズン……
深く激しく突き挿れる。
「あ……」
下腹部が密着して。友則の剛毛が肉芽をこすり上げる。
「ひゃあん、んんん……」
指での刺激よりもずっと鋭い。小さな爆発が休むことなく繰り返される。
「うああああ……落ちる。落ちちゃう……」
急速に膨れていく快感に意識が集中して、ベッドに押しつけられている背中の感覚が薄れていく。自然、宙に浮いて――どこまでも落下していくような錯覚にとらわれる。
ユキは友則にしがみついた。ますます下腹部が密着して、肉芽への刺激が強まる。
ズンズン、ズンズン、ズンズン……
「いやああ、怖い……落ちる、落ちる……」
無意識のうちにユキは両脚を浮かして、友則の腰に絡めていた。いや、本人としては全身で男にしがみついている。
挿入の角度が代わり、いっそう深くまで突き挿れられて。穿たれている穴のどこかで、どしりと重たいくせに鋭い大きな爆発が生じた。それが、肉芽の爆発とひとつに溶け合って。
「うああああああ! 落ちる! 落ちるうううう!」
ユキは絶叫していた。両脚をピンと伸ばして天井に向けて突き上げ、両腕は男をきつく抱きしめて。
「わあああああっ! お゙ぢる゙ゔゔゔゔ!」
足の指があり得ない角度にそり返って、脹脛が激しく痙攣する。
既婚者でも生涯達し得ない女性が珍しくない高みにまで、ユキは初体験の裡に到達したのだった。
絶頂の中でユキは無意識に全身の筋肉を緊張させていた。処女の狭隘にさらなる締め付けが加わって――ユキが達するとほとんど同時に、友則も若い精を迸らせていた。
ユキの記憶は、挿入したまま友則がおおいかぶさってきたあたりから薄い霧に包まれている。自分が絶叫したあたりは霧が最も濃くて、ほとんどなにも覚えていない。
霧に包まれたまま、ユキは友則の手で身体を洗われて、浴衣は自分ひとりで着付けたのか手伝ってもらったのか、はっきりしない。霧の中をふらふら歩いて、ユキはスポーツカーに乗った。ただひとつ。
「布団をずいぶん汚しちゃった。これで勘弁してよ」
小さな窓に友則が紙幣を差し入れたことだけは、鮮明に覚えていた。
「ええっ? こんなに……いいんですか?」
そんな声がしていたから、あれは一万円札だったかもしれない。
スポーツカーに乗って風に吹かれているうちに、霧は晴れていった。しかし、霧の晴れた後に明確な記憶は残っていなかった。幼馴染のトモ兄に抱かれて、この世のものとは思えない恐怖さえ感じるような快感とともに女になった――そのことだけしか、覚えていなかった。
「ただいま。遅くなってごめんなさい」
両親は黙って――温かくでもなく冷たくでもなく無関心にでもなく、ユキを迎え入れた。スポーツカーの野太いエンジン音が聞こえて、消えて。その直後にユキが返ってきたのであれば、誰と何処で何をしていたかは、詰問するまでもない。父親も母親も、何年にもわたってそれぞれに夏祭りの夜を過ごしていたのだから、娘の行動は容認するしかないのだった。
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しかも、次の章は『淫放少女』で2回目とそれ以後を書いて。
就職斡旋シーンを経て、ようやく本題にはいるのですから。こりゃあ300枚は行くかな。『ちょんの間』245枚と合わせると……さすが3番バッターの貫禄です。
さて。派遣契約満了の10/10までに上電の準備まで阿弥陀リキになって進めましょう。
でもって、10/12からはハロワ通いかなあ。
アフィリンクのキーワードは[浴衣 JS|JC|JK]です。
Progress Report 4:昭和集団羞辱史『売春編:ちょんの間』
昼飯前に掻き揚げました。起きてすぐ朝飯を食べるのが習慣ですから朝飯前は時空的に不可能です。
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「…………?」
しばらく文面とにらめっこをしていた。なんとなくわかりそうな、しかし意味不明な内容だった。
「こちらから相手のおり所まで出向いて『ごっこ遊び』をしようってことね。でも、売春行為は禁止。その代わり、お釜や尺八で埒を明けてあげるの。お客が希望するなら手コキもあるけど、それだとSMっぽくないでしょ」
「あの……エスエムってなんですか?」
冒頭のローマ字で、その2文字だけが強調されていることと関係があるのだろうか。
「相手を虐めて性的に興奮するのをサドと言うの。逆に虐められて興奮するのがマゾ。現に、あたいも明美さんもマゾだよね」
なるほどと、半分だけ思い当たった。勝江さんは縛られて陶然となっていたし、竹尺で叩かれてあそこが洪水になっていた。でも、わたしは……
同じかもしれない。縛られて相手の言いなりになっていたほうが楽チンだと思っていたけれど、それでまったく興奮しなかったとは言い切れない。
そして男性は……
縛られている明美や勝江を見て、すごく勃起させていた客を何人も思い出せる。
「アルバイトと書いてるけど、ほんとうはアドバルーンなの。これで何人もお客が見つかるようなら、卒業後はこれを仕事にしようと思っている。あたいが経営者で、女子従業員第一号も兼ねる。そして……」
勝江が、まっすぐに明美の目を覗き込んだ。
「あなたに共同経営者、そして女子従業員第二号になってもらいたいの」
「…………」
明美は、長いこと沈黙していた。いまひとつしっくりこなかった女将と勝江の会話が、ジグソーパズルのようにピッタリ噛み合った。
自分が虐められて性的に興奮するかどうか、まだ自信(?)は無かったけれど。売春行為不可の文言に目が吸い寄せられている。SMを『お仕事』にすれば、法の網の目をくぐるようなきわどいことをしないで済む。世間様に後ろ指を差されることもない……だろうか? きっと、変態女と誹られる。
「お店はどうするんですか?」
それは、迷いの森をどちらへ進もうか考えるための時間稼ぎだったかもしれない。しかし勝江は、即座に答えた。
「雄二さんに任せるわ。いまのオトウサンは飾り物でオカアサンが万事を仕切っているでしょ。代替わりしたら逆にするだけのことよ」
「それで……雄二さんは承知なんですか」
「あいつってね、こういう世界に棲んでるくせに、それともこういう世界だからかな。すごく義理堅いの。まあ、あたいから夜這いを掛けたんだけどね。娼売を始めるのに生娘じゃどうしようもないって、掻き口説いて。でも、あたいの処女を破ったのは雄二。だから責任は取るって約束してくれたの」
実際には、そんな単純な話ではないだろうと、それくらいは明美にも推察できる。大きな遊郭(を分割した三つの店)を引き継ぐ娘を嫁にすれば、金銭的にはなんの不満もない生涯が約束される。
そんな明美の勘繰りを、勝江は否定――したのだろうか。
「今の商売って、御上の意向ひとつで、どうなるかわかったものじゃない。一般女性を進駐軍から護るって名目で始めたRAAなんて、その一般女性を何万人も娼婦に仕立てておいて、一年もしないうちに放り出したでしょ。今だって目をつむってるだけ。いつなんどき片眼を明けないとも限らない」
しかし、売春ではないSM行為は取り締まれない。いざというときの避難場所になるかもしれない。
「日本が戦争に負けたのは連合軍の物量のせいではないというのが、雄二さんの持論ね。せっかく真珠湾で空母の威力を世界に見せつけておきながら、結局は艦隊決戦主義から脱け出せなかった。インパール作戦だって、無理とわかっても撤退せず遮二無二突き進んで、何万人も無駄死にさせた。こっちが駄目ならあっち。そういう柔軟性がなかったのが最大の原因だそうよ。あたいには、よくわからないけど」
明美にもわからなかったが、勝江の将来の入り婿も賛成しているということだろう。
「でも……こんな変態的なことを求める男の人って、ごく一部じゃないんでしょうか?」
その疑問への答えは、すでに明美自身が知っている。『ごっこ遊び』の人気がすべてだ。
勝江はバッグの中から十通ほどの封書を取り出した。宛名はすべて、先の文通欄にあった『〇△□郵便局留 大和田勝江様』となっていた。現金封筒が三通あった。まさか……?
「雑誌が発売されてたった二週間で、五十通を超える手紙が届いたわ。ここに持ってきたのは……」
勝江が白封筒から摘まみ出したのは当然だが便箋と――一万円札だった。それも四枚。
「十一通には現金が同封されていたの。こんなふうに交通費込みのもあった」
もしもこれが詐欺なら大儲けできていたわねと、勝江が小さく笑った。もちろん、そんなことをすれば――雑誌の編集部にはきちんと住所まで教えてあるのだから、すぐに捕まってしまう。変態的な申し出に勇み足をした恥ずかしさに口をつぐむ者も少なくないだろうとまでは、考えが及ばない。
「もちろん、このすべてに応じたりはしないわよ。どういうことをするつもりか、文通で確かめて、双方の予定を突き合わせて――条件が合わなければ、このお金は送り返すけど」
半月で三十万円以上、あるいは五十通以上。もしかすると、八月は海水浴にも行けないのではないだろうか。そう考えるくらいには、明美は乗り気になっていた。
娼売女と賎しめられるのと変態女と蔑まれるのと、たいして違いはない。それなら、法律をきちんと守っていると胸を張れるだけ、変態女のほうがましではないだろうか。
それに。明美に竹尺で叩かれてオーガズムへの道を登りかけた勝江を羨ましく思ったというのは言い過ぎにしても、自分も同じ体験をしてみたいとは、確かに思っていた。絶対に蔑んではいなかった。そのような言葉を口にはしたが、あれは『ごっこ遊び』のお芝居だった。いや、もっと言えば。あるいは自分に向けた言葉だったのかもしれない。
それに。十万円の前借はちょうど返済を終えたところだ。なにも他の店に鞍替えしようというのではない。実の娘が興す新商売を手伝うのだ。オカアサンもこころよく認めてくれるだろう。
不安があるとすれば。擂粉木で練習していたという勝江さんでさえ、あんなに泣き叫んでいた『お釜』。自分に我慢できるだろうか。我慢できるだけなら、それに越したことはないが。もし万一……勝江さんみたいに、痛みの中に快感を見い出してしまったら?
それでもかまわない。すこし軽はずみだった気はしているが、「どんなことがあっても、ついて行きます」とまで誓いを立てている。いまさら、あれは気の迷いでしたなんて言えない。言ったら、勝江さんだけでなく自分自身まで裏切ることになる。
あけみは封書の山から目をあげて、勝江に正対した。
「わたし、足手まといになるかもしれませんが、オネエサンにどこまでもついて行きます」
言い切って。なんだか梅雨が明けて青空が広がったような気分になった。
追記
勝江が始めたSM援助交際はじきに拠点を構えた本邦初のSMクラブに発展し、六十年を経た令和の現在まで続いている。リイとアゲハは今なお『現役』として活躍しており、美魔女とも八百比丘尼とも恐れられて嘆美されている。
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『未通海女哭虐~裸の昼と縄の夜』と同じ終わり方になりました。
赤線や 昭和は遠く なりにけり
なに言ってんだか。
それにしても本文8万2千文字(原稿用紙247枚)。
2エピソードで1本にする『昭和集団羞辱史』最長のエピソードです。あと1エピソードも長くなりそうです。
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「…………?」
しばらく文面とにらめっこをしていた。なんとなくわかりそうな、しかし意味不明な内容だった。
「こちらから相手のおり所まで出向いて『ごっこ遊び』をしようってことね。でも、売春行為は禁止。その代わり、お釜や尺八で埒を明けてあげるの。お客が希望するなら手コキもあるけど、それだとSMっぽくないでしょ」
「あの……エスエムってなんですか?」
冒頭のローマ字で、その2文字だけが強調されていることと関係があるのだろうか。
「相手を虐めて性的に興奮するのをサドと言うの。逆に虐められて興奮するのがマゾ。現に、あたいも明美さんもマゾだよね」
なるほどと、半分だけ思い当たった。勝江さんは縛られて陶然となっていたし、竹尺で叩かれてあそこが洪水になっていた。でも、わたしは……
同じかもしれない。縛られて相手の言いなりになっていたほうが楽チンだと思っていたけれど、それでまったく興奮しなかったとは言い切れない。
そして男性は……
縛られている明美や勝江を見て、すごく勃起させていた客を何人も思い出せる。
「アルバイトと書いてるけど、ほんとうはアドバルーンなの。これで何人もお客が見つかるようなら、卒業後はこれを仕事にしようと思っている。あたいが経営者で、女子従業員第一号も兼ねる。そして……」
勝江が、まっすぐに明美の目を覗き込んだ。
「あなたに共同経営者、そして女子従業員第二号になってもらいたいの」
「…………」
明美は、長いこと沈黙していた。いまひとつしっくりこなかった女将と勝江の会話が、ジグソーパズルのようにピッタリ噛み合った。
自分が虐められて性的に興奮するかどうか、まだ自信(?)は無かったけれど。売春行為不可の文言に目が吸い寄せられている。SMを『お仕事』にすれば、法の網の目をくぐるようなきわどいことをしないで済む。世間様に後ろ指を差されることもない……だろうか? きっと、変態女と誹られる。
「お店はどうするんですか?」
それは、迷いの森をどちらへ進もうか考えるための時間稼ぎだったかもしれない。しかし勝江は、即座に答えた。
「雄二さんに任せるわ。いまのオトウサンは飾り物でオカアサンが万事を仕切っているでしょ。代替わりしたら逆にするだけのことよ」
「それで……雄二さんは承知なんですか」
「あいつってね、こういう世界に棲んでるくせに、それともこういう世界だからかな。すごく義理堅いの。まあ、あたいから夜這いを掛けたんだけどね。娼売を始めるのに生娘じゃどうしようもないって、掻き口説いて。でも、あたいの処女を破ったのは雄二。だから責任は取るって約束してくれたの」
実際には、そんな単純な話ではないだろうと、それくらいは明美にも推察できる。大きな遊郭(を分割した三つの店)を引き継ぐ娘を嫁にすれば、金銭的にはなんの不満もない生涯が約束される。
そんな明美の勘繰りを、勝江は否定――したのだろうか。
「今の商売って、御上の意向ひとつで、どうなるかわかったものじゃない。一般女性を進駐軍から護るって名目で始めたRAAなんて、その一般女性を何万人も娼婦に仕立てておいて、一年もしないうちに放り出したでしょ。今だって目をつむってるだけ。いつなんどき片眼を明けないとも限らない」
しかし、売春ではないSM行為は取り締まれない。いざというときの避難場所になるかもしれない。
「日本が戦争に負けたのは連合軍の物量のせいではないというのが、雄二さんの持論ね。せっかく真珠湾で空母の威力を世界に見せつけておきながら、結局は艦隊決戦主義から脱け出せなかった。インパール作戦だって、無理とわかっても撤退せず遮二無二突き進んで、何万人も無駄死にさせた。こっちが駄目ならあっち。そういう柔軟性がなかったのが最大の原因だそうよ。あたいには、よくわからないけど」
明美にもわからなかったが、勝江の将来の入り婿も賛成しているということだろう。
「でも……こんな変態的なことを求める男の人って、ごく一部じゃないんでしょうか?」
その疑問への答えは、すでに明美自身が知っている。『ごっこ遊び』の人気がすべてだ。
勝江はバッグの中から十通ほどの封書を取り出した。宛名はすべて、先の文通欄にあった『〇△□郵便局留 大和田勝江様』となっていた。現金封筒が三通あった。まさか……?
「雑誌が発売されてたった二週間で、五十通を超える手紙が届いたわ。ここに持ってきたのは……」
勝江が白封筒から摘まみ出したのは当然だが便箋と――一万円札だった。それも四枚。
「十一通には現金が同封されていたの。こんなふうに交通費込みのもあった」
もしもこれが詐欺なら大儲けできていたわねと、勝江が小さく笑った。もちろん、そんなことをすれば――雑誌の編集部にはきちんと住所まで教えてあるのだから、すぐに捕まってしまう。変態的な申し出に勇み足をした恥ずかしさに口をつぐむ者も少なくないだろうとまでは、考えが及ばない。
「もちろん、このすべてに応じたりはしないわよ。どういうことをするつもりか、文通で確かめて、双方の予定を突き合わせて――条件が合わなければ、このお金は送り返すけど」
半月で三十万円以上、あるいは五十通以上。もしかすると、八月は海水浴にも行けないのではないだろうか。そう考えるくらいには、明美は乗り気になっていた。
娼売女と賎しめられるのと変態女と蔑まれるのと、たいして違いはない。それなら、法律をきちんと守っていると胸を張れるだけ、変態女のほうがましではないだろうか。
それに。明美に竹尺で叩かれてオーガズムへの道を登りかけた勝江を羨ましく思ったというのは言い過ぎにしても、自分も同じ体験をしてみたいとは、確かに思っていた。絶対に蔑んではいなかった。そのような言葉を口にはしたが、あれは『ごっこ遊び』のお芝居だった。いや、もっと言えば。あるいは自分に向けた言葉だったのかもしれない。
それに。十万円の前借はちょうど返済を終えたところだ。なにも他の店に鞍替えしようというのではない。実の娘が興す新商売を手伝うのだ。オカアサンもこころよく認めてくれるだろう。
不安があるとすれば。擂粉木で練習していたという勝江さんでさえ、あんなに泣き叫んでいた『お釜』。自分に我慢できるだろうか。我慢できるだけなら、それに越したことはないが。もし万一……勝江さんみたいに、痛みの中に快感を見い出してしまったら?
それでもかまわない。すこし軽はずみだった気はしているが、「どんなことがあっても、ついて行きます」とまで誓いを立てている。いまさら、あれは気の迷いでしたなんて言えない。言ったら、勝江さんだけでなく自分自身まで裏切ることになる。
あけみは封書の山から目をあげて、勝江に正対した。
「わたし、足手まといになるかもしれませんが、オネエサンにどこまでもついて行きます」
言い切って。なんだか梅雨が明けて青空が広がったような気分になった。
追記
勝江が始めたSM援助交際はじきに拠点を構えた本邦初のSMクラブに発展し、六十年を経た令和の現在まで続いている。リイとアゲハは今なお『現役』として活躍しており、美魔女とも八百比丘尼とも恐れられて嘆美されている。
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『未通海女哭虐~裸の昼と縄の夜』と同じ終わり方になりました。
赤線や 昭和は遠く なりにけり
なに言ってんだか。
それにしても本文8万2千文字(原稿用紙247枚)。
2エピソードで1本にする『昭和集団羞辱史』最長のエピソードです。あと1エピソードも長くなりそうです。
Progress Report 3:昭和集団羞辱史『売春編:ちょんの間』
昨日30枚、今日40枚。ちょっと本気を出せば、こんなもんさ。本気を出して執筆時間が長くなればなるほど、時給が下がっていく不思議。
グッチもアルマーニ。
最初は予定していなくて、でもSMシーン書きたいので、先輩たちからのリンチを挿入して、でもストーリイの流れが阻害されるので結局やめて。
明日は最終章(せいぜい20枚)を一揆加勢で終わる予定です。
帰す彼方で『女護ヶ島(売春島)』には明後日着手予定。
今回はアイキャッチの先出。有名な「飾り窓」です。

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「いちおう、これを参考にして。あたいも教えるけど、実際に経験した揚羽がいちばん勘所をわかってると思うよ」
店ごとに仕切った狭い控室ではなく、二階の座敷を使って『緊縛講座』が開かれていた。腰巻一枚の半裸になった勝江が座敷の中央で膝立ちになって、二つ折りにした綿ロープを持った明美が後ろに立っている。脇に置かれた座卓には、縛る手順をイラストで解説したエロ雑誌の見開き。壁に沿って八人の女子従業員が並んで見守っている。男性は立入禁止。女将にも遠慮してもらっている。
勝江が両手を後ろにまわして、腰骨の上で手首を重ねる。
縄の折り返し部分ができるだけ短くなるように手首をひと巻きして、さらに縄が十文字になるようにもうひと巻き。縄尻を折り返しに通して引き絞る。
「あ……」
勝江が呻く。
「ごめんなさい。きついですか?」
勝江が頭を横に振った。
「だいじょうぶ。他人に縛られるのってこんな感じなんだなあって……」
なんだか舌がもつれているような喋り方だった。
「気にしないで続けて」
縄を斜めに引き上げるような感じで乳房の上を巻く。
「もすこし下。おっぱいの根元に食い込ませるくらいに」
勝江が要点を指導する。
「縄を巻いてからすこしだけ引き絞る感じで。途中の縄留めは、しっかりとね」
胸を巻いた縄を手首から伸びる縄に絡ませて軽く引き絞る。勝江の手首が縄に引かれて吊り上がる。いったん縄を片輪結びで留める。その輪に縄尻を通して引っ張ると輪が縮まるが、輪が縄を締めつけるので摩擦がはたらいて、そんなにきつくはならない。二の腕の肘に近いあたりから縄を前へまわして下乳を縛る。こちらは縄で乳房を持ち上げるような感じにする。最後に、手首から伸びる縄に絡めて、これも勝江の指導で、ごく軽く堅結びにする。
「あああああ……」
なまめかしい声で喘いで、勝江が明美の胸に頭をもたせかけた。
(あたしとは、ずいぶん違う)
縄酔いという言葉を明美は知らなかったし、勝江もそこまで知っているのかどうか。
「あの……続けてもいいですか?」
上下の胸縄を腋の下で(適度に)絞らないとすぐ緩んでくるのは、自分の体験でわかっている。
「いいの。お金を返さなかった父が悪いんです。揚羽さんになにをされても文句は言いません」
見世に出る前から、勝江はヒロインに感情移入しきっている。
二人の役どころは入れ替わったが『ごっこ遊び』の設定は同じだった。父の借金の肩代わりをさせられるヒロインと、彼女を客に取り持つ姐御。姉御がヒロインより幼くては筋立てに無理がありそうだが、そこはちゃんと補強してある。組長に男の子はいなくて、いずれは姐御が幹部の誰かを婿に迎えて組を引き継ぐ。どこかで聞いたような話だ。
組長が後見に就くとしても、自分より年長の荒くれ男どもを顎で使えるだけの器量が無ければ組は危うい。この歳上の娘をきっちり仕切ってみろ。それが修行の第一歩だ。架空の設定というよりも、勝江の本心の吐露といったほうが当たっているだろう。
そこまでは明美も察して、悪役になりきった。
「文句を言いたければ、いくらでもいいなよ。俺の手に負えなきゃあ、親父に折檻してもらうまでのことさ」
「ああっ……それだけは赦してください。鞭は、もう厭です」
「ふたりとも、よくやるわねえ」
勝江が素の表情に戻って、声の主に顔を向けた。
「あら。それじゃ網代さんの善がり声は本気なの?」
隣の座敷まで響き渡ると評判が立っている。それが、むしろ彼女の売りにもなっている。演技を見抜けないほとんどの客には、娼売抜きで乱れまくる妓として好評だった。
「そりゃあ……半分くらいは本気だけどさあ」
「あたいだって、半分は成り切ってるよ。オマンコを食わせてオマンマを食べてるんだからね。チャランポランじゃ駄目よ」
なんだかよくわからない理屈だが、勝江の気組だけは伝わったようだ。
「たしかに、ねえ」
八人がそれぞれにうなづいた。
明美は気を取り直して二本目の縄を手にした。脇の下をくぐらせて上下の胸縄を絞り、手首の縄に絡ませて縄尻を長く余した。
「もう四時を十五分も過ぎてるよ。支度はまだかい」
階下からの声で、勝江が立ち上がった。
「それじゃ、揚羽さん。どうかよろしくお引き回しのほどをお願いします」
そして、小声で付け加える。
「遠慮なんかしないで。あたいに虐められた仕返しをするくらいの気持ちでお願いね。物差も思いきり叩いてね」
「え、あ……はい」
自分とは『お仕事』に対する気構えが、まるきり違う。そんなふうに考えた明美だった。
「さあ、たっぷりと稼いでもらうよ」
明美は着物の片肌を脱いだ。まるきり子供の浴衣にしか見えなかった着物姿も、それなりに妖しくなった。わずか一週間だが、明美も男の汁で磨かれて性長を遂げていたということなのだろう。
――いよいよ明美の出番と待ちかまえていた二人組の客が、怪訝な顔をした。
「あれ? 揚羽ちゃんが営業さん? その縛られてるのは誰?」
イチゲン客がほとんどの『ちょんの間』だが、馴染客も少しはいる。ことに、この『ごっこ遊び』は、それまで一度もこの界隈に足を運んだことはないが噂を聞きつけて訪れた客と、他所ではできない遊びに嵌って二度三度と通う客とが入り混じっている。そして口開けにつくのは馴染客が多い。あけみも、この二人連れの一方には見覚えがあった。
「こいつは理非(リイ)っての。昨日までさんざん俺を虐めてくれたからね。今日はたっぷり仕返しをしてやるんだ」
馴染客を相手に新しい設定を説明するよりも、現実を持ち込んでしまったほうがどっちも演(や)りやすいのではないかと、咄嗟に考えた明美だった。けれど、一人称だけは『ごっこ遊び』でいくことにした。
「お願いです。あたいを買ってください。買ってもらえないと、この場で折檻されるんです」
明美の意図を悟って勝江も演出を切り替えたのまではいいけれど、とんでもないことを言い出した。
果たして。客も悪乗りしてしまう。
「へええ。店先で折檻ねえ。こりゃあ、いいや。見せてもらおうじゃないか」
数秒、明美は考えて。
「やだね。こいつを買いたいってお客は幾らでもいるんだ。冷やかしなら、とっとと帰ってよ」
「ちょっと待てよ」
馴染客のほうが、ズボンに手を突っ込んで千円札を取り出した。
「どうも、五百円はキリが悪い。見物料を上乗せして四枚でどうだい?」
予想とは違う展開に、明美は返答に詰まった。
すかさず、勝江が助け舟を出す。
「あたいを素っ裸に引ん剝いて人前で折檻させて、それで五百円だなんて、あんまりです。せめて、総額で五枚にしてください」
「なんだよ。因業なところは、変わってねえなあ」
客は鼻白みながらも、さらに千円札を引っ張り出した。
「これで、文句はねえよな」
戸惑いながらも、明美は五千円を受け取った。
「ああああ、ひどい。人前で、こんな羞ずかしい姿にされるなんて」
明美がなにも言わないうちに、勝江は床に肩を押しつけて尻を高く突き上げた。
「ああああ、素っ裸にされて、お尻を物差でぶたれるんだ」
悲嘆にくれた口調で、その実、明美に芝居の振り付けをしている。
(勝江さん、どういうつもりなんだろう)
すこしでもお金をたくさん稼いで――自分にまわしてくれようとしているのだろうか。
そうだとしても、いきなり型から外れたことをしたら、控室で見学している人たちが混乱しないだろうか。
「殊勝な態度だね」
それでも指示されたとおりの芝居をして、勝江の腰巻を剥ぎ取った。背中に差していた二尺の竹尺を右手に握り締める。
「覚悟しな」
中途半端に振りかぶって、勝江の白い尻に向けて振り下ろす。
びしゃ……
「……悔しい」
小さな声でつぶやく勝江。
もっと本気で叩けというふうに、明美には聞こえた。思い切り振りかぶって、腕に力を込めて叩いた――つもりだったが、どうしても委縮してしまう。
ピシャッ……
「平気だ。借金を返すまでは、どんなにつらくても我慢するんだ」
もっと強く叩けと催促している。
今度こそ明美は、力一杯に竹尺を打ちつけた。
ビシャアン!
「きひいいいっ……」
勝江がか細い悲鳴をあげた。演技だと、明美は直感する。
(本気で叩いているのに)
悔しくて、それが腕に伝わった。
ビッシャアンン!
「あがっ……」
悲鳴が喉につかえたような苦鳴。演技ができないところまで追い込まれたのだろう。
そのとき。明美の背筋に、冷たい快感とでもいうような感覚が生じた。じいんと膣奥が熱く疼いた。
ビッシャアアン!
ビッシャアアン!
ビッシャアアン!
立て続けに三発を叩いた。視界の隅に動きを感じて暖簾を振り返ると。十人ほども人の壁ができていた。
これ以上やると収拾がつかなくなる。豆を刺激されたときの忘我の快感と違って、冷静な判断がはたらいた。
「とりあえずは、これくらいで赦してやるよ。もっとも、お客さんがお望みなら座敷でもたっぷり折檻してやるからね」
不思議なくらいすらすらと台詞が口を衝いて出た。
勝江が芝居がかって、のろのろと立ち上がる。
「縄尻を前に……」
客に聞こえない声でつぶやいた。
自分がされたのだから仕返して当然。そんなふうに思いながら、長い縄尻を股間から前へ通して、淫裂に食い込ませて引き上げる。
「さあ、お務めだよ」
縄尻を引いても、勝江は動かない。
今さら何をためらうこともないだろうにと訝しんで。思い当って、グイと縄尻を引いてみた。縄がますます股間に食い込んで。
「あううう……」
雲を踏むような足取りで歩きだした。
まさしく雲を踏んでいるのだと、明美は理解した。縄が股間に食い込んで、痛いのだけれど痺れるような快感がそこに潜んでいる。悦虐という言葉を知らない明美だったが、言葉に表わせない漠とした理解が明美に生じた。
「お客さん。理非が立ち止まったりしたら、遠慮なくお尻を叩いてやってくださいね」
それは客へのサービスなのか理非へのサービスなのか、明美自身にもわからなくなっていた。
――二人の客を座敷に揚げて。勝江の手順に倣って盆を取りに下へ戻る。隣の座敷の襖がわずかに開いてすぐに閉じたのに気づくだけの心の余裕があった。すでに『一新』と『縁奇』は最初の客を座敷に揚げているだろうし、顔見世の場にもそれぞれ誰かが就いていれば、隣の座敷で見学をしているのは多くても三人。そう計算したのだが。
他店はともかく『江楼』は、顔見世の場に女性従業員の姿がなかった。遣手婆のマツだけが所在なげに煙草を吹かしていた。
考えてみたら当然かもしれない。浮橋と牡丹が休みで鳴門が生理中だから、明美と勝江のコンビを除くと営業中の女子従業員は七人。『一新』と『縁奇』に三人ずつの配置になっているが、見学にまわる者もいるから、実質的には二人か。『江楼』でふつうに営業しているのは巴だけだから、今は接客の真っ最中なのだろう。
自分たちの『お仕事』を先輩たちに見られていると、あらためて意識して。目覚まし時計とゼリーと茶菓子の三点セットを持って二階に――お客が勝江をゆっくり感傷なり悪戯なりできる時間を計算してゆっくりと戻った。
座敷にはいって、あらためて挨拶をする。
「このたびは理非(リイ)をお買い上げいただきありがとうございます。すぐお使いになりますか。それとも、折檻の続きをいたしましょうか」
いつもとは違う流れになったから、挨拶も即興になった。
「すぐでいこうや。時間が余ったら折檻ショーでも見せてもらうか」
十五分なら(童貞が暴発でもさせないかぎり)時間の余りようもないが、三十分ならお義理程度の前戯をする客もあるし、寝物語の真似もできる。たいていの女子従業員は前者を嫌がるが。
「そうですか。では、さっそくに」
布団の上に横座りしてそれらしく顔をうつむけている勝江を押し倒して、指の腹に絞り出したゼリーを塗り込めたのだが。
(勝江さんたら、すごい淫乱なのかしら)
潤滑の必要がないほどに、膣穴はぬかるんでいた。
「それじゃ失礼します」
すでにズボンを脱いでいる客の前にひざまずいてゴムを装着するのだが。ひさしぶりのことなので手間取ってしまった。
「ご所望の形はありますか?」
勝江との打ち合わせでは、座卓に腹這いの姿勢で縛りつけての鵯越え(後背位)と決めてあったが、馴染客となれば前回とかぶっているかもしれない。変態的な刺激を求めて通ってくれるのだから、それでは申し訳ない。
「そうだなあ。押し車で尺八てのを考えてたんだけど。できるかな?」
尺八とはフェラチオのことだ。勝江がしばしば口にする四十八手のひとつではない。四十八手は体位を細かく分類したものだが、尺八は行為そのものを指す。言ってみれば『挿入』と同じ普通名詞だった。しかし『押し車』は知らなかった。『御酒車』とは違うのだろうか。
「あの……折檻を赦してくださるんでしたら、初めてですけど頑張ってみます」
勝江さんも大変だなあと、明美は感心した。受け身で虐められているように見せかけて、明美に代わって場を仕切っている。
勝江の(それとない)指示で、縄をほどいた。縛り直すのが手間だなあと、心の中でぼやきつつ。
勝江は四つん這いになって、言い出しっぺの客に尻を向けた。
「虐めてください」
可愛がっての反語表現だろうが、『ごっこ遊び』の設定にふさわしい言い方かもしれない。
「お、おう」
客は膝立ちになって勝江を貫いた。
「よし、立つぞ」
両手で太腿を抱えて、客が立ち上がった。勝江は脚を伸ばして客の胴を挟み、両手を突っ張る。
「へえええ。なんか運動会を思い出すなあ」
連れの客が口にした感想で、明美も気づいた。この姿勢(もちろん挿入は無し)で十メートルくらい先の旗まで進んで、Uターンして戻って来るリレー競技だ。男女ペアで、そういえば必ず女子が押され役だった。男子に人気で女子には不評だった。男子のほうが力があるから仕方ないと思っていたが、もしかしたらオトナはこっちを連想していたのだろうか。とんでもない競技だ。
「揚羽姐さん、ゴム」
小声でうながされて、慌てる明美。
「ごめんなさい。ゴムを着けさせていただきます」
意馬心猿の客に取りついて、大急ぎでゴムを着けた。
「なんだよ。口で妊娠するわけねえだろ」
「いえ……口の中って、けっこうバイ菌がいるんです。尿道炎とかの予防ですから」
こう言えば拒む客はいない。
そうして、押しても引いても動かない『押し車』が始まった。
ぱんぱん、ぱんぱん、ぱんぱん……
淫嚢が勝江の淫埠を打つ音が響いて、勝江の裸身が前後に揺れる。その動きで、口に咥えている淫茎も勝手に出入りする。
「んん、んん、んんん、んんんんん」
鼻声がだんだん艶めかしくなってくる。淫嚢が豆をつついているのだと、明美が気づく。
(だけど……エロっぽいだけだなあ)
ずっと『ごっこ遊び』ばかりさせられてきた明美には、縄の無い光景が、なんだか物足りなく思える。
しかし、男には具合の良い体位なのかもしれない。女性が自分でしっかり身体を支えているし、男性は立っているだけだから、自由に腰を使える。女性の上体が前後に揺れるから、抽挿の動きが増幅される。
「んぶうう……」
後ろの客の動きで切迫の度合いがわかるのだろう。ずぢゅううと淫茎をすすったり、顔の角度を変えて裏筋をしごいたり。後ろから追い上げられて、前を追い上げる。
明美は部屋の隅に座って、三人の痴態を眺めるばかり。裸の女性を下半身だけ脱いだ二人の男性が前後から『H』の字に挟んで、米搗きバッタみたいに腰を振っている。馬鹿々々しいしつまらない。こんなことに大金を払うなんてなにを考えているんだろうと思う。もっとも。豆を刺激されて全身を稲妻に貫かれ空中高く翔けるような、あの感覚。まだ瞬間的だし『お仕事』のたびに感じるわけでもない。けれど、あれが癖になったら――むしろ、こっちからお金を払ってでもしてもらいたくなるかもしれない。それくらいには、SEXに対して肯定的になってきていた。
勝江の身体が布団に投げ出されて。客がほとんど同時に埒を明けたのだと、恵は気づいた。目覚まし時計を見ると、あと十五分も残っていた。
(どうしよう)
客が早めに終わるのは、これまでにもたびたびあった。その後は勝江がうまく間を持たせていたのだが――雑談で時を稼いだり、明美が指技で追い上げられるところを見せたり、二人の身の上話を(あれこれと脚色して)打ち明けたり。客に応じて違っていたから、いざ参考にしようとしても、どれを選べばいいかわからなかった。
しかし、それも勝江が取り仕切ってくれた。
「ああああん。あたい、まだ逝ってないのにい。揚羽姐さん、なんとかしてください」
勝江の指示は理解したが。『お仕事』を忘れているんじゃないかと疑った。女が女を弄るところなんか見せても仕方ないのに。明美はレズビアンという言葉を知らなかったし、たいていの男にとっては、男と女が絡み合う構図より女同士が絡み合う構図に興奮するなど、たとえ教えられても理解できなかっただろう。けれど。それを言えば、女が折檻されるところだって、なにが面白いんだろうとは思うのだけど。代案を思いつかない以上、勝江の判断に従うしかない。
「なんだよ。お客さん二人に可愛がられて、まだ足りないってのかい。とんだ淫乱女だねえ」
役柄に成り切って勝江の口調を真似たのだが、藁半紙に書かれていた悪口を思い出したせいもあった。
立ち上がって勝江の横に行き、これも勝江の真似をして、裾をわざと乱して立膝で座った。
「ゴム……」
ささやかれて、失態に気づく。が、『ごっこ遊び』でつないだ。勝江の股間を指で穿って、メリーの混じった分泌物を客に見せつける。
「こんなざまですよ」
勝江い顔を戻して。
「もうちょい待ってな。先にお客さんを片さなくちゃね」
枕元の桜紙をわしゃっとつかんで客ににじり寄り、桜紙で包みながらゴムを抜き取り汚れを拭う。それをまとめて屑籠に捨てて、勝江に向き直ったのだが。
「思いきりつねって」
また囁かれて面食らった。自分でちょっと触れただけでも腰がぴくんと跳ねるくらいに敏感な部分だ。刺激されたら甘い稲妻に貫かれる。そこをつねったら――どうなるのだろう。乳首だって、強くつまめば痛いのだから……
「なんだよ、こんなに尖らせちゃって。お望みどおりに虐めてやるよ」
半ばは莢から顔を覗かせている豆を親指の腹と人差し指の第一関節とで挟んで――手加減して文句を言われた竹尺を思い出して、力いっぱいにつねった。コリッとした手ごたえがくにゃっとひしゃげて。
「ぎゃわああああっ!」
聞いたことも、もちろん自分で叫んだこともないような凄絶な悲鳴だった。慌てて手を引っ込めた。
「痛い、痛い痛い……」
勝江は両手で股間をかばって、布団の上で身体を『く』の字に折っている。しかし。その鳴き声に陶酔を聞きつけてしまったのは――明美の素質ゆえだったろうか。
(痛いのはほんとうだろうけど……)
激痛に匹敵するほどの快感もあるのではないだろうか。確かめてみたい誘惑に駆られた。
「なんだい。お望みどおりに、どうにかしてやったんじゃないか。もっとしてやるよ。あお向けになって、股を開きな」
果たして。勝江は素直に身体を伸ばして脚を開いた。最初の頃の明美のように、両手で顔を隠した。
(絶対に愉しんでる……ううん)
陶酔しているのだと、明美は確信した。
ふたたび豆を指の間に挟んで、今度は半回転ほども力まかせにつねった。
「ひゃぎゃわああああああっ……!」
凄絶な悲鳴が尾を引いて、空中に溶け込んだ。
それでも、つねったまま明美は力を緩めない。
「うああああ……痛い。痛い……」
勝江はうわ言のようにつぶやいて、びくんびくんと腰を震わせた。オーガズムに達したと、明美にはわかった。が、客はそこまで女の生理にも心理にも通じていない。
「おい、もう赦してやれよ。芝居にしても、やり過ぎだぜ」
客に肩を叩かれて、ようやく明美は指の力を緩めた。
勝江が糸の絡まった操り人形みたいにぎくしゃくと上体を起こした。
「ひさしぶりに気を遣れました。ありがとうございます」
客に向かって頭を下げた。
明美も芝居をやめて、勝江と並んで頭を下げた。
「礼を言うのはこっちだよ。この街にもずいぶんと通い詰めたけど、今日みたいなのは初めてだ。五千円分、きっちり愉しませてもらったよ」
「つぎは一万円分なんて言っちゃあ厭ですよ。こっちが壊れちまいます」
アハハハと、毒気を抜かれた笑いが返ってきた。
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こっちは、いわゆる「立ちんぼ」です。さすが西洋先進諸国です。

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グッチもアルマーニ。
最初は予定していなくて、でもSMシーン書きたいので、先輩たちからのリンチを挿入して、でもストーリイの流れが阻害されるので結局やめて。
明日は最終章(せいぜい20枚)を一揆加勢で終わる予定です。
帰す彼方で『女護ヶ島(売春島)』には明後日着手予定。
今回はアイキャッチの先出。有名な「飾り窓」です。

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「いちおう、これを参考にして。あたいも教えるけど、実際に経験した揚羽がいちばん勘所をわかってると思うよ」
店ごとに仕切った狭い控室ではなく、二階の座敷を使って『緊縛講座』が開かれていた。腰巻一枚の半裸になった勝江が座敷の中央で膝立ちになって、二つ折りにした綿ロープを持った明美が後ろに立っている。脇に置かれた座卓には、縛る手順をイラストで解説したエロ雑誌の見開き。壁に沿って八人の女子従業員が並んで見守っている。男性は立入禁止。女将にも遠慮してもらっている。
勝江が両手を後ろにまわして、腰骨の上で手首を重ねる。
縄の折り返し部分ができるだけ短くなるように手首をひと巻きして、さらに縄が十文字になるようにもうひと巻き。縄尻を折り返しに通して引き絞る。
「あ……」
勝江が呻く。
「ごめんなさい。きついですか?」
勝江が頭を横に振った。
「だいじょうぶ。他人に縛られるのってこんな感じなんだなあって……」
なんだか舌がもつれているような喋り方だった。
「気にしないで続けて」
縄を斜めに引き上げるような感じで乳房の上を巻く。
「もすこし下。おっぱいの根元に食い込ませるくらいに」
勝江が要点を指導する。
「縄を巻いてからすこしだけ引き絞る感じで。途中の縄留めは、しっかりとね」
胸を巻いた縄を手首から伸びる縄に絡ませて軽く引き絞る。勝江の手首が縄に引かれて吊り上がる。いったん縄を片輪結びで留める。その輪に縄尻を通して引っ張ると輪が縮まるが、輪が縄を締めつけるので摩擦がはたらいて、そんなにきつくはならない。二の腕の肘に近いあたりから縄を前へまわして下乳を縛る。こちらは縄で乳房を持ち上げるような感じにする。最後に、手首から伸びる縄に絡めて、これも勝江の指導で、ごく軽く堅結びにする。
「あああああ……」
なまめかしい声で喘いで、勝江が明美の胸に頭をもたせかけた。
(あたしとは、ずいぶん違う)
縄酔いという言葉を明美は知らなかったし、勝江もそこまで知っているのかどうか。
「あの……続けてもいいですか?」
上下の胸縄を腋の下で(適度に)絞らないとすぐ緩んでくるのは、自分の体験でわかっている。
「いいの。お金を返さなかった父が悪いんです。揚羽さんになにをされても文句は言いません」
見世に出る前から、勝江はヒロインに感情移入しきっている。
二人の役どころは入れ替わったが『ごっこ遊び』の設定は同じだった。父の借金の肩代わりをさせられるヒロインと、彼女を客に取り持つ姐御。姉御がヒロインより幼くては筋立てに無理がありそうだが、そこはちゃんと補強してある。組長に男の子はいなくて、いずれは姐御が幹部の誰かを婿に迎えて組を引き継ぐ。どこかで聞いたような話だ。
組長が後見に就くとしても、自分より年長の荒くれ男どもを顎で使えるだけの器量が無ければ組は危うい。この歳上の娘をきっちり仕切ってみろ。それが修行の第一歩だ。架空の設定というよりも、勝江の本心の吐露といったほうが当たっているだろう。
そこまでは明美も察して、悪役になりきった。
「文句を言いたければ、いくらでもいいなよ。俺の手に負えなきゃあ、親父に折檻してもらうまでのことさ」
「ああっ……それだけは赦してください。鞭は、もう厭です」
「ふたりとも、よくやるわねえ」
勝江が素の表情に戻って、声の主に顔を向けた。
「あら。それじゃ網代さんの善がり声は本気なの?」
隣の座敷まで響き渡ると評判が立っている。それが、むしろ彼女の売りにもなっている。演技を見抜けないほとんどの客には、娼売抜きで乱れまくる妓として好評だった。
「そりゃあ……半分くらいは本気だけどさあ」
「あたいだって、半分は成り切ってるよ。オマンコを食わせてオマンマを食べてるんだからね。チャランポランじゃ駄目よ」
なんだかよくわからない理屈だが、勝江の気組だけは伝わったようだ。
「たしかに、ねえ」
八人がそれぞれにうなづいた。
明美は気を取り直して二本目の縄を手にした。脇の下をくぐらせて上下の胸縄を絞り、手首の縄に絡ませて縄尻を長く余した。
「もう四時を十五分も過ぎてるよ。支度はまだかい」
階下からの声で、勝江が立ち上がった。
「それじゃ、揚羽さん。どうかよろしくお引き回しのほどをお願いします」
そして、小声で付け加える。
「遠慮なんかしないで。あたいに虐められた仕返しをするくらいの気持ちでお願いね。物差も思いきり叩いてね」
「え、あ……はい」
自分とは『お仕事』に対する気構えが、まるきり違う。そんなふうに考えた明美だった。
「さあ、たっぷりと稼いでもらうよ」
明美は着物の片肌を脱いだ。まるきり子供の浴衣にしか見えなかった着物姿も、それなりに妖しくなった。わずか一週間だが、明美も男の汁で磨かれて性長を遂げていたということなのだろう。
――いよいよ明美の出番と待ちかまえていた二人組の客が、怪訝な顔をした。
「あれ? 揚羽ちゃんが営業さん? その縛られてるのは誰?」
イチゲン客がほとんどの『ちょんの間』だが、馴染客も少しはいる。ことに、この『ごっこ遊び』は、それまで一度もこの界隈に足を運んだことはないが噂を聞きつけて訪れた客と、他所ではできない遊びに嵌って二度三度と通う客とが入り混じっている。そして口開けにつくのは馴染客が多い。あけみも、この二人連れの一方には見覚えがあった。
「こいつは理非(リイ)っての。昨日までさんざん俺を虐めてくれたからね。今日はたっぷり仕返しをしてやるんだ」
馴染客を相手に新しい設定を説明するよりも、現実を持ち込んでしまったほうがどっちも演(や)りやすいのではないかと、咄嗟に考えた明美だった。けれど、一人称だけは『ごっこ遊び』でいくことにした。
「お願いです。あたいを買ってください。買ってもらえないと、この場で折檻されるんです」
明美の意図を悟って勝江も演出を切り替えたのまではいいけれど、とんでもないことを言い出した。
果たして。客も悪乗りしてしまう。
「へええ。店先で折檻ねえ。こりゃあ、いいや。見せてもらおうじゃないか」
数秒、明美は考えて。
「やだね。こいつを買いたいってお客は幾らでもいるんだ。冷やかしなら、とっとと帰ってよ」
「ちょっと待てよ」
馴染客のほうが、ズボンに手を突っ込んで千円札を取り出した。
「どうも、五百円はキリが悪い。見物料を上乗せして四枚でどうだい?」
予想とは違う展開に、明美は返答に詰まった。
すかさず、勝江が助け舟を出す。
「あたいを素っ裸に引ん剝いて人前で折檻させて、それで五百円だなんて、あんまりです。せめて、総額で五枚にしてください」
「なんだよ。因業なところは、変わってねえなあ」
客は鼻白みながらも、さらに千円札を引っ張り出した。
「これで、文句はねえよな」
戸惑いながらも、明美は五千円を受け取った。
「ああああ、ひどい。人前で、こんな羞ずかしい姿にされるなんて」
明美がなにも言わないうちに、勝江は床に肩を押しつけて尻を高く突き上げた。
「ああああ、素っ裸にされて、お尻を物差でぶたれるんだ」
悲嘆にくれた口調で、その実、明美に芝居の振り付けをしている。
(勝江さん、どういうつもりなんだろう)
すこしでもお金をたくさん稼いで――自分にまわしてくれようとしているのだろうか。
そうだとしても、いきなり型から外れたことをしたら、控室で見学している人たちが混乱しないだろうか。
「殊勝な態度だね」
それでも指示されたとおりの芝居をして、勝江の腰巻を剥ぎ取った。背中に差していた二尺の竹尺を右手に握り締める。
「覚悟しな」
中途半端に振りかぶって、勝江の白い尻に向けて振り下ろす。
びしゃ……
「……悔しい」
小さな声でつぶやく勝江。
もっと本気で叩けというふうに、明美には聞こえた。思い切り振りかぶって、腕に力を込めて叩いた――つもりだったが、どうしても委縮してしまう。
ピシャッ……
「平気だ。借金を返すまでは、どんなにつらくても我慢するんだ」
もっと強く叩けと催促している。
今度こそ明美は、力一杯に竹尺を打ちつけた。
ビシャアン!
「きひいいいっ……」
勝江がか細い悲鳴をあげた。演技だと、明美は直感する。
(本気で叩いているのに)
悔しくて、それが腕に伝わった。
ビッシャアンン!
「あがっ……」
悲鳴が喉につかえたような苦鳴。演技ができないところまで追い込まれたのだろう。
そのとき。明美の背筋に、冷たい快感とでもいうような感覚が生じた。じいんと膣奥が熱く疼いた。
ビッシャアアン!
ビッシャアアン!
ビッシャアアン!
立て続けに三発を叩いた。視界の隅に動きを感じて暖簾を振り返ると。十人ほども人の壁ができていた。
これ以上やると収拾がつかなくなる。豆を刺激されたときの忘我の快感と違って、冷静な判断がはたらいた。
「とりあえずは、これくらいで赦してやるよ。もっとも、お客さんがお望みなら座敷でもたっぷり折檻してやるからね」
不思議なくらいすらすらと台詞が口を衝いて出た。
勝江が芝居がかって、のろのろと立ち上がる。
「縄尻を前に……」
客に聞こえない声でつぶやいた。
自分がされたのだから仕返して当然。そんなふうに思いながら、長い縄尻を股間から前へ通して、淫裂に食い込ませて引き上げる。
「さあ、お務めだよ」
縄尻を引いても、勝江は動かない。
今さら何をためらうこともないだろうにと訝しんで。思い当って、グイと縄尻を引いてみた。縄がますます股間に食い込んで。
「あううう……」
雲を踏むような足取りで歩きだした。
まさしく雲を踏んでいるのだと、明美は理解した。縄が股間に食い込んで、痛いのだけれど痺れるような快感がそこに潜んでいる。悦虐という言葉を知らない明美だったが、言葉に表わせない漠とした理解が明美に生じた。
「お客さん。理非が立ち止まったりしたら、遠慮なくお尻を叩いてやってくださいね」
それは客へのサービスなのか理非へのサービスなのか、明美自身にもわからなくなっていた。
――二人の客を座敷に揚げて。勝江の手順に倣って盆を取りに下へ戻る。隣の座敷の襖がわずかに開いてすぐに閉じたのに気づくだけの心の余裕があった。すでに『一新』と『縁奇』は最初の客を座敷に揚げているだろうし、顔見世の場にもそれぞれ誰かが就いていれば、隣の座敷で見学をしているのは多くても三人。そう計算したのだが。
他店はともかく『江楼』は、顔見世の場に女性従業員の姿がなかった。遣手婆のマツだけが所在なげに煙草を吹かしていた。
考えてみたら当然かもしれない。浮橋と牡丹が休みで鳴門が生理中だから、明美と勝江のコンビを除くと営業中の女子従業員は七人。『一新』と『縁奇』に三人ずつの配置になっているが、見学にまわる者もいるから、実質的には二人か。『江楼』でふつうに営業しているのは巴だけだから、今は接客の真っ最中なのだろう。
自分たちの『お仕事』を先輩たちに見られていると、あらためて意識して。目覚まし時計とゼリーと茶菓子の三点セットを持って二階に――お客が勝江をゆっくり感傷なり悪戯なりできる時間を計算してゆっくりと戻った。
座敷にはいって、あらためて挨拶をする。
「このたびは理非(リイ)をお買い上げいただきありがとうございます。すぐお使いになりますか。それとも、折檻の続きをいたしましょうか」
いつもとは違う流れになったから、挨拶も即興になった。
「すぐでいこうや。時間が余ったら折檻ショーでも見せてもらうか」
十五分なら(童貞が暴発でもさせないかぎり)時間の余りようもないが、三十分ならお義理程度の前戯をする客もあるし、寝物語の真似もできる。たいていの女子従業員は前者を嫌がるが。
「そうですか。では、さっそくに」
布団の上に横座りしてそれらしく顔をうつむけている勝江を押し倒して、指の腹に絞り出したゼリーを塗り込めたのだが。
(勝江さんたら、すごい淫乱なのかしら)
潤滑の必要がないほどに、膣穴はぬかるんでいた。
「それじゃ失礼します」
すでにズボンを脱いでいる客の前にひざまずいてゴムを装着するのだが。ひさしぶりのことなので手間取ってしまった。
「ご所望の形はありますか?」
勝江との打ち合わせでは、座卓に腹這いの姿勢で縛りつけての鵯越え(後背位)と決めてあったが、馴染客となれば前回とかぶっているかもしれない。変態的な刺激を求めて通ってくれるのだから、それでは申し訳ない。
「そうだなあ。押し車で尺八てのを考えてたんだけど。できるかな?」
尺八とはフェラチオのことだ。勝江がしばしば口にする四十八手のひとつではない。四十八手は体位を細かく分類したものだが、尺八は行為そのものを指す。言ってみれば『挿入』と同じ普通名詞だった。しかし『押し車』は知らなかった。『御酒車』とは違うのだろうか。
「あの……折檻を赦してくださるんでしたら、初めてですけど頑張ってみます」
勝江さんも大変だなあと、明美は感心した。受け身で虐められているように見せかけて、明美に代わって場を仕切っている。
勝江の(それとない)指示で、縄をほどいた。縛り直すのが手間だなあと、心の中でぼやきつつ。
勝江は四つん這いになって、言い出しっぺの客に尻を向けた。
「虐めてください」
可愛がっての反語表現だろうが、『ごっこ遊び』の設定にふさわしい言い方かもしれない。
「お、おう」
客は膝立ちになって勝江を貫いた。
「よし、立つぞ」
両手で太腿を抱えて、客が立ち上がった。勝江は脚を伸ばして客の胴を挟み、両手を突っ張る。
「へえええ。なんか運動会を思い出すなあ」
連れの客が口にした感想で、明美も気づいた。この姿勢(もちろん挿入は無し)で十メートルくらい先の旗まで進んで、Uターンして戻って来るリレー競技だ。男女ペアで、そういえば必ず女子が押され役だった。男子に人気で女子には不評だった。男子のほうが力があるから仕方ないと思っていたが、もしかしたらオトナはこっちを連想していたのだろうか。とんでもない競技だ。
「揚羽姐さん、ゴム」
小声でうながされて、慌てる明美。
「ごめんなさい。ゴムを着けさせていただきます」
意馬心猿の客に取りついて、大急ぎでゴムを着けた。
「なんだよ。口で妊娠するわけねえだろ」
「いえ……口の中って、けっこうバイ菌がいるんです。尿道炎とかの予防ですから」
こう言えば拒む客はいない。
そうして、押しても引いても動かない『押し車』が始まった。
ぱんぱん、ぱんぱん、ぱんぱん……
淫嚢が勝江の淫埠を打つ音が響いて、勝江の裸身が前後に揺れる。その動きで、口に咥えている淫茎も勝手に出入りする。
「んん、んん、んんん、んんんんん」
鼻声がだんだん艶めかしくなってくる。淫嚢が豆をつついているのだと、明美が気づく。
(だけど……エロっぽいだけだなあ)
ずっと『ごっこ遊び』ばかりさせられてきた明美には、縄の無い光景が、なんだか物足りなく思える。
しかし、男には具合の良い体位なのかもしれない。女性が自分でしっかり身体を支えているし、男性は立っているだけだから、自由に腰を使える。女性の上体が前後に揺れるから、抽挿の動きが増幅される。
「んぶうう……」
後ろの客の動きで切迫の度合いがわかるのだろう。ずぢゅううと淫茎をすすったり、顔の角度を変えて裏筋をしごいたり。後ろから追い上げられて、前を追い上げる。
明美は部屋の隅に座って、三人の痴態を眺めるばかり。裸の女性を下半身だけ脱いだ二人の男性が前後から『H』の字に挟んで、米搗きバッタみたいに腰を振っている。馬鹿々々しいしつまらない。こんなことに大金を払うなんてなにを考えているんだろうと思う。もっとも。豆を刺激されて全身を稲妻に貫かれ空中高く翔けるような、あの感覚。まだ瞬間的だし『お仕事』のたびに感じるわけでもない。けれど、あれが癖になったら――むしろ、こっちからお金を払ってでもしてもらいたくなるかもしれない。それくらいには、SEXに対して肯定的になってきていた。
勝江の身体が布団に投げ出されて。客がほとんど同時に埒を明けたのだと、恵は気づいた。目覚まし時計を見ると、あと十五分も残っていた。
(どうしよう)
客が早めに終わるのは、これまでにもたびたびあった。その後は勝江がうまく間を持たせていたのだが――雑談で時を稼いだり、明美が指技で追い上げられるところを見せたり、二人の身の上話を(あれこれと脚色して)打ち明けたり。客に応じて違っていたから、いざ参考にしようとしても、どれを選べばいいかわからなかった。
しかし、それも勝江が取り仕切ってくれた。
「ああああん。あたい、まだ逝ってないのにい。揚羽姐さん、なんとかしてください」
勝江の指示は理解したが。『お仕事』を忘れているんじゃないかと疑った。女が女を弄るところなんか見せても仕方ないのに。明美はレズビアンという言葉を知らなかったし、たいていの男にとっては、男と女が絡み合う構図より女同士が絡み合う構図に興奮するなど、たとえ教えられても理解できなかっただろう。けれど。それを言えば、女が折檻されるところだって、なにが面白いんだろうとは思うのだけど。代案を思いつかない以上、勝江の判断に従うしかない。
「なんだよ。お客さん二人に可愛がられて、まだ足りないってのかい。とんだ淫乱女だねえ」
役柄に成り切って勝江の口調を真似たのだが、藁半紙に書かれていた悪口を思い出したせいもあった。
立ち上がって勝江の横に行き、これも勝江の真似をして、裾をわざと乱して立膝で座った。
「ゴム……」
ささやかれて、失態に気づく。が、『ごっこ遊び』でつないだ。勝江の股間を指で穿って、メリーの混じった分泌物を客に見せつける。
「こんなざまですよ」
勝江い顔を戻して。
「もうちょい待ってな。先にお客さんを片さなくちゃね」
枕元の桜紙をわしゃっとつかんで客ににじり寄り、桜紙で包みながらゴムを抜き取り汚れを拭う。それをまとめて屑籠に捨てて、勝江に向き直ったのだが。
「思いきりつねって」
また囁かれて面食らった。自分でちょっと触れただけでも腰がぴくんと跳ねるくらいに敏感な部分だ。刺激されたら甘い稲妻に貫かれる。そこをつねったら――どうなるのだろう。乳首だって、強くつまめば痛いのだから……
「なんだよ、こんなに尖らせちゃって。お望みどおりに虐めてやるよ」
半ばは莢から顔を覗かせている豆を親指の腹と人差し指の第一関節とで挟んで――手加減して文句を言われた竹尺を思い出して、力いっぱいにつねった。コリッとした手ごたえがくにゃっとひしゃげて。
「ぎゃわああああっ!」
聞いたことも、もちろん自分で叫んだこともないような凄絶な悲鳴だった。慌てて手を引っ込めた。
「痛い、痛い痛い……」
勝江は両手で股間をかばって、布団の上で身体を『く』の字に折っている。しかし。その鳴き声に陶酔を聞きつけてしまったのは――明美の素質ゆえだったろうか。
(痛いのはほんとうだろうけど……)
激痛に匹敵するほどの快感もあるのではないだろうか。確かめてみたい誘惑に駆られた。
「なんだい。お望みどおりに、どうにかしてやったんじゃないか。もっとしてやるよ。あお向けになって、股を開きな」
果たして。勝江は素直に身体を伸ばして脚を開いた。最初の頃の明美のように、両手で顔を隠した。
(絶対に愉しんでる……ううん)
陶酔しているのだと、明美は確信した。
ふたたび豆を指の間に挟んで、今度は半回転ほども力まかせにつねった。
「ひゃぎゃわああああああっ……!」
凄絶な悲鳴が尾を引いて、空中に溶け込んだ。
それでも、つねったまま明美は力を緩めない。
「うああああ……痛い。痛い……」
勝江はうわ言のようにつぶやいて、びくんびくんと腰を震わせた。オーガズムに達したと、明美にはわかった。が、客はそこまで女の生理にも心理にも通じていない。
「おい、もう赦してやれよ。芝居にしても、やり過ぎだぜ」
客に肩を叩かれて、ようやく明美は指の力を緩めた。
勝江が糸の絡まった操り人形みたいにぎくしゃくと上体を起こした。
「ひさしぶりに気を遣れました。ありがとうございます」
客に向かって頭を下げた。
明美も芝居をやめて、勝江と並んで頭を下げた。
「礼を言うのはこっちだよ。この街にもずいぶんと通い詰めたけど、今日みたいなのは初めてだ。五千円分、きっちり愉しませてもらったよ」
「つぎは一万円分なんて言っちゃあ厭ですよ。こっちが壊れちまいます」
アハハハと、毒気を抜かれた笑いが返ってきた。
========================================
こっちは、いわゆる「立ちんぼ」です。さすが西洋先進諸国です。

最後は「ロリ 娼婦」がキーワードのアフィリンク
こっそり合体(野合とか不倫とかではないです)
皆様、お気づきになられたでありましょうか。本棚に隙間が増えました。これまで前後編の2分冊はそれぞれを本棚に収めていましたが、1冊にまとめてしまったのです現在進行形。
それで、合本:増補改訂版(正味はK版)として登録作業を進めていたのですが、Dサイトは1+1=2にうるさくて、面倒いので登録中止。となると、気分的にはミラーサイトのFでも取り下げ。ちなみに「いじめられっ娘」をRejectしたRサイトは、『●3歳』といった表記を廃して年齢不詳にしましたが……U15ではなくU18そのものが Not Open だそうで、轟沈。厳密に読み込むと、濠門長恭作品のほとんどが……いえ、なんでもないです。販売に漕ぎ付けている作品は、大切にしましょう。3年半で2万円にも満たないサイトですが。百年で50万円、1億年だと5千億円の収入が見込めます。1億年程度では、まだ太陽は赤色巨星化していません。人類は滅んでるでしょうけど。
おっと。ここはSFではなくSMの場です。酔った勢いの与太話はやめよった苦しい。
で、まあ。前後編分冊版をどうしたかというのは、トップページの常設本棚で確認していただくとして。
でも、せっかく作ったヘッポコBF(CG以前)をボツリヌスは惜しいので。こっそりと、BOOTHでだけ販売しちゃいます。
現在のところ。
強制入院マゾ馴致 (合本増補改訂版)→
いじめられっ娘二重唱(合本増補改訂版)→
そのうち、『非国民の烙淫』と『姪奴と甥奴』もBOOTH専用ガッポン増補改訂するかもしれません。今のところ、この作品を収録している本棚は余裕があります。といっても、本棚は刷新しましたが。
BOOTH新発売の2点は、5冊セット本棚にも細工があります。リンクが張ってある部分は文字が金色になっています。
DLsiteでは灰色文字の部分が、BOOTHでは金色。ここをクリックすると、そこにジャンプします指示代名詞が多過ぎる。
なぜ、「そのうち」かというと、newBFの手当てが出来ていないからです。ここ1週間ほど、ヘッポコBF作成で遊んだり、epub準拠(絶版)K版をPDF形式に最適化したりで、フルタイム環境に(強制的に)陥りながら、平均して20枚/日に達さない蟻様です。さすがに、反省しました。『昭和集団羞辱史:売春編』を鋭意書き進めましょう。営為です。
でも、『非国民の烙淫(合本増補改訂版)』は、統合表紙絵の構想まではできていたりします。拷問台に縛りつけられてる(作品設定では)ドイツ人母親がズタボロ着衣はBF難しいので全裸の似たような画像を探しましたが見つかりませんでした。
さらに『姪奴と甥奴』も、新規表紙絵を丁稚揚げてBOOTHのみでリリースするのは……どうせ2021年中には、やらかしているでしょうね。
それで、合本:増補改訂版(正味はK版)として登録作業を進めていたのですが、Dサイトは1+1=2にうるさくて、面倒いので登録中止。となると、気分的にはミラーサイトのFでも取り下げ。ちなみに「いじめられっ娘」をRejectしたRサイトは、『●3歳』といった表記を廃して年齢不詳にしましたが……U15ではなくU18そのものが Not Open だそうで、轟沈。厳密に読み込むと、濠門長恭作品のほとんどが……いえ、なんでもないです。販売に漕ぎ付けている作品は、大切にしましょう。3年半で2万円にも満たないサイトですが。百年で50万円、1億年だと5千億円の収入が見込めます。1億年程度では、まだ太陽は赤色巨星化していません。人類は滅んでるでしょうけど。
おっと。ここはSFではなくSMの場です。酔った勢いの与太話はやめよった苦しい。
で、まあ。前後編分冊版をどうしたかというのは、トップページの常設本棚で確認していただくとして。
でも、せっかく作ったヘッポコBF(CG以前)をボツリヌスは惜しいので。こっそりと、BOOTHでだけ販売しちゃいます。

現在のところ。
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BOOTH新発売の2点は、5冊セット本棚にも細工があります。リンクが張ってある部分は文字が金色になっています。
DLsiteでは灰色文字の部分が、BOOTHでは金色。ここをクリックすると、そこにジャンプします指示代名詞が多過ぎる。
なぜ、「そのうち」かというと、newBFの手当てが出来ていないからです。ここ1週間ほど、ヘッポコBF作成で遊んだり、epub準拠(絶版)K版をPDF形式に最適化したりで、フルタイム環境に(強制的に)陥りながら、平均して20枚/日に達さない蟻様です。さすがに、反省しました。『昭和集団羞辱史:売春編』を鋭意書き進めましょう。営為です。
でも、『非国民の烙淫(合本増補改訂版)』は、統合表紙絵の構想まではできていたりします。拷問台に縛りつけられてる(作品設定では)ドイツ人母親がズタボロ着衣はBF難しいので全裸の似たような画像を探しましたが見つかりませんでした。

さらに『姪奴と甥奴』も、新規表紙絵を丁稚揚げてBOOTHのみでリリースするのは……どうせ2021年中には、やらかしているでしょうね。
Progress Report 2:昭和集団羞辱史『売春編:ちょんの間』
ヒロイン(明美)が初日に『ちょんの間』デビュー失敗して、跡継ぎ娘で(高校に)在学中ながら現場で実地研修にも励んでいる勝江が、前々から女将(母親)に提案していたアイデアを明美を使って試してみることになります。
章のタイトルは「疑似強女女女」でしたが、曖昧ですので「縄 見 世」に変更。文字間に半角スペースを挟んで、他の章と同じ4文字の体裁にしています。
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縄 見 世
「簡単に言うと、エッチな『ごっこ遊び』ね」
明美の部屋で、勝江はそんなふうに説明した。見世に出るのはあくまでも明美だが、勝江が介添え役として一緒に座敷を務めるという。
「あたいが接客も受け持つから、揚羽は借金の形(カタ)に拐われた商家のお嬢様。ひたすら怯えるお芝居をしてればいいの。あ、もちろん――本番のときは、ちょっとだけ抵抗してね。それもできなくて為すがまま、でもいいわ。でも、お客のすることにホイホイ協力しちゃ駄目。まあ、そこらはあたいがうまく仕切ってあげる」
つまり。明美は拐われたヒロインを演じて、客に犯されるという――現代ふうに言うなら本番有りのイメクラである。芝居に迫真性を持たせると同時に、明美が下手な演技をしないですむように、縄で縛るという。
そう聞かされて明美は驚き不安になると同時に、安心もした。すべてをベテランの勝江にまかせて、自分は縛られて身動きできない身体を弄ばれていればいい。苦しいけど楽チンかもしれないと思った。それに。悪人に捕らわれて縄で縛られるなんて、時代劇の女優さんみたい。
昨日の三度続けてのしくじりを挽回(※)するためにも頑張ろう。またしくじったら、もうお店にいられない。その決意が表情に表われていたのだろう。
※「汚名挽回」が誤用であるという説は昭和五十年代以降に現われたものである。現代でも「疲労回復」という言葉に違和感を持つ読者は少ないと思う。
「あのね。気負うことはないの。一世一代の正念場なんかじゃないんだから。一年三百六十五日、これで稼いでくんだからね。あ、休みを取るから一年二百日くらいか」
キリキリシャンとしている勝江さんでも冗談を言うんだな――と、肩の力が抜けた明美だったのだが。
午後四時になって娼売が始まって。いよいよ縛られる段になると、やはり緊張する。
こういった演出には、最初から半裸で見世にでる『江楼』が適しているだろうということになったのだが、勝江はどういう役柄なのか、『縁奇』でも見かけないほどきっちり和服を着付けて、それで右肩を抜いている。剥き出しの二の腕には、鯉の滝登りを描いたシールが貼られている。駄菓子屋で売っている子供向けの転写シールだった。
一方の明美は赤の腰巻一枚きり。それも腰紐が無く、端を腰回りに織り込む昔風のものだった。
見世ごとに仕切られた控室。生理明けの椋鳥が、興味津々で勝江と明美を眺めている。
小机の上に勝江が、半裸の女性モデルを表紙に使っている角背の雑誌を広げた。女性を縛る手順が図解されている。金物屋で売っているような細い綿ロープを手にして。
「両手を後ろにまわして手首を重ねて」
明美の手首に縄を巻いて結び留める。そして、長い縄尻を胸にまわした。乳房の上をひと巻きして、背中に戻した縄で手首を吊り上げた。
「痛かったら言ってね。でも、きついくらいは我慢して」
「……はい」
痛いのときついのとはどう違うのかと明美が判断に迷っているうちに、ロープは乳房の下も巻いた。勝江は二本目の綿ロープをほぐして、腋の下に通す。乳房の上下を巻く縄をひとまとめに絞った。
「あ……くうううう」
縄が乳房に食い込んできて、明美は痛みを覚えたのだが。なんだか心臓まで絞られているような、不思議な感覚が生じた。その感覚は、微妙に甘かった。と同時に、腰の奥でさざ波が揺れた。
腋の下を縛った縄が背中でひとつにまとめられて、縄尻が長く余った。
「他人を縛るほうが簡単だわ」
勝江が小さくひとりごちた。明美は、その意味を深く考えなかった。
「それじゃ、お先に」
椋鳥に挨拶をして、勝江が縄尻を握った。
「そら、とっとと歩きな。親父の借金のせめて利息分くらいは、おまえの身体で稼いでもらうよ」
すでに『ごっこ』が始まっていた。
顔見世用の椅子は勝江が奥に片付けて、明美を板の間に横座りさせた。腰巻の裾を乱して、太腿まで露出させる。自分は、入口の脇にある椅子に座って、遣手婆も兼ねるつもりらしい。
足を止めて覗き込んでいた三人ほどが、板付きの開幕と見て、さっそくに暖簾をくぐった。
「なんだか面白そうなことをしてるね」
「まさか、嫌がる子を無理矢理に――じゃ、ないだろうな」
勝江が答える前に、三人目が明美に尋ねかけた。
「これ、遊んでるんだよね?」
昔ながらに、拐われた女の子が無理強いに身体を売らされている。自由と平等の民主国家でそんな犯罪は行なわれていないだろうと思いながらも、まさかという疑いも拭いきれないのではないかと、明美は推測した。自分だって、即日採用社の林課長から詳しく話を聞くまでは、子供が拐われてサーカスに売られるなんて話まで、ありそうなことだと思っていたくらいだ。きちんと答えないと、またお店に迷惑を掛けてしまう。でも、冗談半分でこんな羞ずかしいことをしてるとも思われたくない。
「遊んでなんかいません」
明美はきっぱりと答えた。
「お仕事だから、やってるんです」
言ってから、すぐにしまったと思った。仕事だから嫌々やってるというふうに聞こえなかっただろうか。
「そうともさ。親父が博奕で作った借金を綺麗にするまでは、これがおめえの仕事なんだよ」
勝江が立ち上がって、床に伸びていた縄尻をぐいと引いた。
「あっ……」
つんのめって、男たちの前に身を投げ出す形になった。
「さあ、おめえからも旦那衆にお願いしねえか。何十人にも弄ばれた薄汚れた身体を、どうか買ってくださいってな」
「おいおい。その子は昨日が御目見えだろ。いくら『ちょんの間』たって、ひと晩に何十人てのは勘定が合わない」
「やだなあ、お客さん。お芝居と現実をゴッチャにしないでよ」
「や、こりゃ参った。あまりに真に迫ってたもんでね」
「で、どうすんの? 現実で言うとね。この子、いろいろと不慣れだから、お座敷でもあたいが付き添うんだけどね。コーチ料を含めて、三十分千五百円。もちろん……」
まだ突っ伏している明美の腰巻を、ぺろんとめくった。
「きゃっ……」
「オールヌードも込みだから、安いもんでしょ」
「面白いな」
三人ともに乗ってきたのだが。いちばん歳上らしい男が、とんでもないことを言い出す。
「けどさ。俺たち三人、ツレなんだよ。順番待ちしてりゃ一時間半だぜ。三人まとめてお願いできねえか」
「うーん、流石にそれはねえ。そこまで規則を破ると、あたいがお仕置きされちゃう」
数秒ほども考えてから、勝江がポンと手を拍った――のは芝居なのか、実際にその場で名案を思いついたのか。
「最初と最後のご挨拶とか省けば、よその店と同じ十五分で埒が明くよね。御座敷を二つにして、三人のうち二人はそっちで待っててもらうってのは、どう? 三人で四十五分で――口開けサービス、二千円ポッキリ」
「決めた」
「輪姦(まわ)すみたいで、可哀そうな気もするな。ほんとに、それでいいの?」
さっきも明美に尋ねた男が、わざわざしゃがみ込んで明美の目を見詰めた。
自分の返事でお客さんの気持ちが決まる。そう思ったときには、自分でも呆れるくらいにお芝居どっぷりの台詞を口にしていた。
「お願いです。わたしを買ってください。お兄さんたちに見限られたら、またお仕置きされます」
お仕置き云々は、もちろん勝江の言葉が頭に残っていたからだ。
「そうかい。じゃあ、お兄さんたちが助けてあげよう。もちろん、お礼は身体で返してもらうからね」
男たちも、勝江と明美の芝居に引きずり込まれたようだった。
「そうと決まったら、さあ、娼売娼売。さっさと立ちな」
いつの間に用意していたのか二尺の竹尺で、剥き出しになったままの尻をピシャリと叩いた。その動きが見えていたので、
「ひいい……ぶたないでください」
あまり痛くもないのに、哀れっぽく訴えて立ち上がった。
「そら、ついといで。お客さん方。立ち止まったりしたら、遠慮なく尻を叩いてやってくださいね」
勝江が先に立って、縄尻を股間から前へまわして引っ張った。
「きゃ……」
明美の悲鳴に、すこし本気が混じった。わざわざこんなことまでしなくてもいいのに。腰巻が縄でたくれるし、強く引っ張られると股間に食い込んで痛い――のだけれど。階段を一歩上がるたびに、腰の奥がじいんと痺れる。
六畳間の座敷も、布団が延べてあるし小さな座卓も置かれているしで、五人だと窮屈だった。
「それじゃ、支度をしてきますから。その間に順番を決めておいてくださいね。あ、湯文字は引っぺがしてもいいけど、縄はそのままにお願いします。縛るのって、けっこう手間なんだから」
「それじゃ、ジャンケンだ。引っぺがすのも、勝ったやつの権利な」
勝江が襖を閉じると同時にジャンケンが始まる。
明美は布団のへりに横座りになって、身の置き場に困っていた。もしこれが『ごっこ』じゃなかったら、わたしは逃げようとするんじゃないかな。まっすぐ襖めがけて突進したら逃げ出せる。そんなことを考えて、すぐに否定した。逃げ出しても、縛られているんだからすぐに捕まる。それとも。逃げたりしたらお父つぁんが――もうすこしで噴き出してしまうところだった。
(やだ。お父つぁんだなんて。ヒロインになりきってる)
なんだか、昨日とは違って心にゆとりがあった。自分であれこれ段取りを考えたりせず、勝江と客たちに一切をまかせてしまう。考えていた以上に気楽だった。
「アイコでしょ、ほい」
ジャンケンの決着がついて、勝ったのは年長の男だった。上着だけを脱いで。
「腰巻を取るぞ。いいんだな」
念を押したのは、追加料金を心配したのかもしれない。
(オールヌード込みの値段だって言ってあるのに)
しかし、そんな野暮を返す必要はない。羞ずかしそうに身を縮めて顔をそむけていればいい。
客もそれ以上はなにも言わず、腰巻に手を掛けた。紐がないので、ちょっと引っ張っただけでハラリとほどけた。
「へええ。薄いな。ほんものの娼妓みたいだ」
売春防止法が施行されたのは五年前だから、この男はかつての遊郭を知っているのかもしれない。当時の娼妓は古くからの伝統を受け継いで、淫叢の手入れを怠らなかった。実はこの元『新奇楼』でも、女将の指導でそのようにしている女子従業員も何人かいるのだとは――じきに明美も知ることになるのだが。いずれにしても彼女の股間には、冬の田圃よりも叢は淡かった。
「おや。さっそくに可愛がってもらってるのかい」
勝江が戻ってきて、座卓に盆を置いた。
「それじゃ、先にこの妓(こ)の支度をすませますね」
縄で縛って裸に剥いて、これ以上の支度が必要なのかと訝る三人の客の目の前で、勝江はチューブからゼリーを絞り出した。
「そら。もっと股をおっ広げな」
横座りの膝をつかんで開かせる。
「……羞ずかしい」
明美のか細い訴えは演技ではない。思ったままを(この場にふさわしいセリフだからと思ったので)素直につぶやいただけだ。股縄で刺激された腰の奥の痺れが、膣口をこねくられる刺激で甦った。
「なるほど。道理で最初から濡れてたわけだ」
明美の味方(?)をしてくれている男が、すこし醒めた声で感心する。
それを聞き付けたのか。勝江が明美の肩を芝居がかって突き飛ばす。明美は抵抗することなく、布団の上に転がった。
「それじゃ、時計をセットするからね。十五分でお願いしますよ。おっと、その前に」
上着を脱いでいる男の前にひざまずいてズボンとパンツをずり下ろす。
「この妓は手が使えないからね。特別サービスだよ」
軽く手でしごいて目いっぱいに怒張させて、ゴムをかぶせた。
「それじゃ、お邪魔物は退散いたしますよ」
まだ服を着たままの二人を追い立てて座敷から出て行く勝江。
とたんに、客の雰囲気がガラリと変わった。
「へへへ。親父さんの借金を返すのを手伝ってやるぜ。ありがたく思えよ」
そんなことを言いながらのしかかってきて、一気に貫いた。
「あ……」
声は出したけれど――背中で重ねた手首に体重が掛かる痛みをやわらげようとして腰を浮かし気味にしていたのがよかったのかもしれない。膣を押し広げられ身体の中芯まで貫かれる痛みはほとんどなかった。そして、粘っこいくすぐったさが腰の奥の痺れと共振して、これまでに感じたことのない感覚を生み出していた。気持ちいいのとは違う。いや、つたない快感なのかもしれない。けれど、ほんとうは夫婦の関係でなければしてはいけないことをしているという、それでお金を稼ごうとしている罪の意識が、その感覚を苦いものにしていた。
明美は、客が早く射精してくれることだけを願って耐えている。けれど昨日とは違って、文句は言われない。
客は、借金の形に拐われた少女を犯しているという幻想に没入しているらしい。
「つらいか? 恨むなら親父を恨めよ」
そんなことをつぶやいたり。
「そんなに男に抱かれるのが厭か。これならどうだ?」
腰は休みなく動かしながら右手を結合部に差し入れてきた。そして、男性器が出入りしているより上のほうを指でまさぐっていたが。
不意に、腰の浅いあたりでなにかが爆ぜた。
「ひゃああっ……!」
びくんっと瑕疵が跳ねた。男の指が動くたびに、得体の知れない感覚が立て続けに爆ぜる。背骨まで衝撃が突き抜ける。
「ひゃああっ……ああっ、あっ、あっ……やめ……やめて!」
ほんとうはやめてほしくなかった。衝撃は、はっきりと甘美だった。それだけに怖かった。衝撃が繰り返されるたびに、身体が分解していくような錯覚があった。
「未通女殺しの豆とは、よく言ったもんだ」
客は手を引き抜いて、それまでまさぐっていたあたりに下腹部を押しつけてきた。指に替わって剛毛が、それまで衝撃を発生していた部分を刺激する。爆ぜるような凄まじさは消えたが、じゅうぶんに鋭い甘美が腰骨を揺すぶる。
「あっ、あっ、あっ……」
明美は切迫した声で喘いでいた。もしかすると、これが勝江さんの言っていたオーガズムというものかもしれない――ぼんやりと理解が生じた。けれど実際には、オーガズムの遥か手前、宙ぶらりんなままで明美は放り出された。
「ふう……安い買い物だったな」
男が立ち上がった。ゴムをはずして自分で跡始末をして。まだ目覚まし時計は鳴らない。
「跡始末をどうするか、聞いておくんだったな」
ズボンだけ穿いて上半身は裸のまま廊下に身を乗り出して、隣に声を掛けた。
「終わったけど、女の子はほっといていいのか?」
すぐに勝江が入ってくる。
「そのままでいいわよ。どうせゴムなんだから。それにしても、お客さん凄いわね。ちゃんと豆のことを知っていて、三日前まで処女だった子をあれだけ哭かすんだもの」
勝江の言葉はもちろんお世辞を交えているが、半ばは本心だったろう。この時代、クリトリスの存在を知らない男も少なくはない。知っていても、女性が苦痛を感じない繊細さで刺激できる男は、もっと少ない。
「あまり味を覚えられると、娼売がおろそかになって、それも困りもんだけどさ」
明美をうつ伏せにさせて、尻を高く突き上げた形に据える。
「ずっと同じ体位じゃ、とくに手首が痛いでしょ。つぎは、これでいこうか」
最初の客が身支度を調えて出て行くと、入れ替わりにつぎの客が姿を現わす。勝江のゴム装着サービスを受けて、最初の客以上に猛然と明美に襲いかかった。
客が興奮したのは、明美が縄で縛られているからだけではなかった。正常位以外の体位をすんなりと受け入れる女性は、娼婦も含めてそんなに多くはなかった。だからこそ、雄二は明美が売れっ妓になれるようにと騎乗位まで仕込んだのだろうが。
二人目の客は明美におおいかぶさり、両手で乳房をこねくりながら猛然と荒腰を使って、五分以上を残して終わってしまった。
客は満足して帰ったが、『豆』をいじってもらえなかった明美は、なまじ快感を知ってしまっただけに、憤懣やるかたない思いで客を見送ったのだった。
そして三人目は正常位に戻って。やはり明美を欲求不満に取り残して埒を明けたのだった。
三十分千円(オールヌードはサービス)のところ、勝江の介添え込みで千五百円。割り戻しは正規の料金分が明美、追加分は勝江の約束になっている。三人が四十五分で二千円の変則的な金額も同じ計算で、明美が六百七十円で勝江が三百三十円。実際のところ逆の比率に決められても、明美は不満に思わなかったろう。三人続けてしくじって、それを一気に挽回できたのだから。
その日は、午後四時から休憩を取りながら八時間をフルに働いて五回転。ちょんの間にしては回数が少ないのは、緊縛のせいだった。勝江が「他人を縛るのは初めて」と言っていたとおり、必要以上に肌を締めつけがちで、一時間もすると鬱血してくる。そのたびに縄を解いて一時間は休んで、また縛られる。それでも、最初に三人まとめて『お仕事』をしただけでなく、常連の二人がかち合ったとき、これは勝江からの提案で二人で四十分千八百円というのがあったから、五回転でも八人の相手ができた。
二日目にして、ようやくのデビューであった。これからも『お仕事』を続けていく自信もついた。
ふつうに接客できるようになったらやめるという『ごっこ遊び』だったが、そうもいかなくなった。今日は順番がまわってきそうにないと判断した何人かの常連が、翌日とか三日後に予約を入れたのだった。『ちょんの間』で予約というのも珍しい話だったが、勝江が貼りきってその場で予約を受け付けてしまった。そうなると、断わるわけにもいかない。
「まったくねえ。あまり派手にやると、御上(おかみ)がうるさいんだよ。うちは飲食店だよ。芝居小屋じゃないんだから」
茶菓子しか出さないし、形ばかりのメニューに書いてあるのはビールと乾き物と新発売のインスタントコーヒーだけ。しかも、相場の三倍以上の値段。それでもきちんと届け出をしているから、警察も保健所も実態には目をつぶっている。
「いいじゃない。酒場にだって流しのギター弾きとか来るでしょ。同じことよ」
もしも勝江が跡取り娘としてふんぞり返っていれば、女将も雷を落とせただろうが。当人も身体を張っているのだから強くも言えない。
「しょうがないね。それじゃ、あと半月くらいは許したげるよ。でも、予約なんか取るんじゃないよ」
やはり明美に意見を求めることもなく決まってしまった。もっとも明美としても、段取りとかサービスとかを考えずに、縛られて転がって男の好きなように嬲られているだけのほうが楽だくらいには思っている。そういった受け身の姿勢の奥に潜む自分の性向については、まだ気づいていなかった。
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やっぱり、筆者はSMシーンを描きたいんだなと、あらためて痛感。この章の27枚は6時間で書きました。これまでの5割増しくらいのスピードです。
この章でも伏線していますが、勝江は「他人を縛るのは初めて」なのです。しかも、当時は扱っている書店が少なかったSM雑誌を縛り方の教科書にしているし。
実は、「自分がされたいことを他人にしている」というドMなのです。やがては住込み男性従業員を婿養子に迎えて店を継ぐのですが、それは亭主にまかせっきりにして、自分は大阪の十三で(令和の時代にも現存している)日本最古のSMクラブを開く――というのは、嘘です。ここの作品はフィクションです。実在する(した)如何なる人物・団体・地域・年齢とも関係はありません。
実在するこちらのアマゾンさんには、(ひとつだけ苦い体験も含めて)良い思い出しかありません。いえ、そのうちまたお世話にならないとも限りませんので、「思い出」という単語は不適切かもしれませんね。
しかし、50年ちかい昔にアマゾンを創設したママ。いまだにプレイングマネージャーでいらっしゃる。
化け物かよ?!
章のタイトルは「疑似強女女女」でしたが、曖昧ですので「縄 見 世」に変更。文字間に半角スペースを挟んで、他の章と同じ4文字の体裁にしています。
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縄 見 世
「簡単に言うと、エッチな『ごっこ遊び』ね」
明美の部屋で、勝江はそんなふうに説明した。見世に出るのはあくまでも明美だが、勝江が介添え役として一緒に座敷を務めるという。
「あたいが接客も受け持つから、揚羽は借金の形(カタ)に拐われた商家のお嬢様。ひたすら怯えるお芝居をしてればいいの。あ、もちろん――本番のときは、ちょっとだけ抵抗してね。それもできなくて為すがまま、でもいいわ。でも、お客のすることにホイホイ協力しちゃ駄目。まあ、そこらはあたいがうまく仕切ってあげる」
つまり。明美は拐われたヒロインを演じて、客に犯されるという――現代ふうに言うなら本番有りのイメクラである。芝居に迫真性を持たせると同時に、明美が下手な演技をしないですむように、縄で縛るという。
そう聞かされて明美は驚き不安になると同時に、安心もした。すべてをベテランの勝江にまかせて、自分は縛られて身動きできない身体を弄ばれていればいい。苦しいけど楽チンかもしれないと思った。それに。悪人に捕らわれて縄で縛られるなんて、時代劇の女優さんみたい。
昨日の三度続けてのしくじりを挽回(※)するためにも頑張ろう。またしくじったら、もうお店にいられない。その決意が表情に表われていたのだろう。
※「汚名挽回」が誤用であるという説は昭和五十年代以降に現われたものである。現代でも「疲労回復」という言葉に違和感を持つ読者は少ないと思う。
「あのね。気負うことはないの。一世一代の正念場なんかじゃないんだから。一年三百六十五日、これで稼いでくんだからね。あ、休みを取るから一年二百日くらいか」
キリキリシャンとしている勝江さんでも冗談を言うんだな――と、肩の力が抜けた明美だったのだが。
午後四時になって娼売が始まって。いよいよ縛られる段になると、やはり緊張する。
こういった演出には、最初から半裸で見世にでる『江楼』が適しているだろうということになったのだが、勝江はどういう役柄なのか、『縁奇』でも見かけないほどきっちり和服を着付けて、それで右肩を抜いている。剥き出しの二の腕には、鯉の滝登りを描いたシールが貼られている。駄菓子屋で売っている子供向けの転写シールだった。
一方の明美は赤の腰巻一枚きり。それも腰紐が無く、端を腰回りに織り込む昔風のものだった。
見世ごとに仕切られた控室。生理明けの椋鳥が、興味津々で勝江と明美を眺めている。
小机の上に勝江が、半裸の女性モデルを表紙に使っている角背の雑誌を広げた。女性を縛る手順が図解されている。金物屋で売っているような細い綿ロープを手にして。
「両手を後ろにまわして手首を重ねて」
明美の手首に縄を巻いて結び留める。そして、長い縄尻を胸にまわした。乳房の上をひと巻きして、背中に戻した縄で手首を吊り上げた。
「痛かったら言ってね。でも、きついくらいは我慢して」
「……はい」
痛いのときついのとはどう違うのかと明美が判断に迷っているうちに、ロープは乳房の下も巻いた。勝江は二本目の綿ロープをほぐして、腋の下に通す。乳房の上下を巻く縄をひとまとめに絞った。
「あ……くうううう」
縄が乳房に食い込んできて、明美は痛みを覚えたのだが。なんだか心臓まで絞られているような、不思議な感覚が生じた。その感覚は、微妙に甘かった。と同時に、腰の奥でさざ波が揺れた。
腋の下を縛った縄が背中でひとつにまとめられて、縄尻が長く余った。
「他人を縛るほうが簡単だわ」
勝江が小さくひとりごちた。明美は、その意味を深く考えなかった。
「それじゃ、お先に」
椋鳥に挨拶をして、勝江が縄尻を握った。
「そら、とっとと歩きな。親父の借金のせめて利息分くらいは、おまえの身体で稼いでもらうよ」
すでに『ごっこ』が始まっていた。
顔見世用の椅子は勝江が奥に片付けて、明美を板の間に横座りさせた。腰巻の裾を乱して、太腿まで露出させる。自分は、入口の脇にある椅子に座って、遣手婆も兼ねるつもりらしい。
足を止めて覗き込んでいた三人ほどが、板付きの開幕と見て、さっそくに暖簾をくぐった。
「なんだか面白そうなことをしてるね」
「まさか、嫌がる子を無理矢理に――じゃ、ないだろうな」
勝江が答える前に、三人目が明美に尋ねかけた。
「これ、遊んでるんだよね?」
昔ながらに、拐われた女の子が無理強いに身体を売らされている。自由と平等の民主国家でそんな犯罪は行なわれていないだろうと思いながらも、まさかという疑いも拭いきれないのではないかと、明美は推測した。自分だって、即日採用社の林課長から詳しく話を聞くまでは、子供が拐われてサーカスに売られるなんて話まで、ありそうなことだと思っていたくらいだ。きちんと答えないと、またお店に迷惑を掛けてしまう。でも、冗談半分でこんな羞ずかしいことをしてるとも思われたくない。
「遊んでなんかいません」
明美はきっぱりと答えた。
「お仕事だから、やってるんです」
言ってから、すぐにしまったと思った。仕事だから嫌々やってるというふうに聞こえなかっただろうか。
「そうともさ。親父が博奕で作った借金を綺麗にするまでは、これがおめえの仕事なんだよ」
勝江が立ち上がって、床に伸びていた縄尻をぐいと引いた。
「あっ……」
つんのめって、男たちの前に身を投げ出す形になった。
「さあ、おめえからも旦那衆にお願いしねえか。何十人にも弄ばれた薄汚れた身体を、どうか買ってくださいってな」
「おいおい。その子は昨日が御目見えだろ。いくら『ちょんの間』たって、ひと晩に何十人てのは勘定が合わない」
「やだなあ、お客さん。お芝居と現実をゴッチャにしないでよ」
「や、こりゃ参った。あまりに真に迫ってたもんでね」
「で、どうすんの? 現実で言うとね。この子、いろいろと不慣れだから、お座敷でもあたいが付き添うんだけどね。コーチ料を含めて、三十分千五百円。もちろん……」
まだ突っ伏している明美の腰巻を、ぺろんとめくった。
「きゃっ……」
「オールヌードも込みだから、安いもんでしょ」
「面白いな」
三人ともに乗ってきたのだが。いちばん歳上らしい男が、とんでもないことを言い出す。
「けどさ。俺たち三人、ツレなんだよ。順番待ちしてりゃ一時間半だぜ。三人まとめてお願いできねえか」
「うーん、流石にそれはねえ。そこまで規則を破ると、あたいがお仕置きされちゃう」
数秒ほども考えてから、勝江がポンと手を拍った――のは芝居なのか、実際にその場で名案を思いついたのか。
「最初と最後のご挨拶とか省けば、よその店と同じ十五分で埒が明くよね。御座敷を二つにして、三人のうち二人はそっちで待っててもらうってのは、どう? 三人で四十五分で――口開けサービス、二千円ポッキリ」
「決めた」
「輪姦(まわ)すみたいで、可哀そうな気もするな。ほんとに、それでいいの?」
さっきも明美に尋ねた男が、わざわざしゃがみ込んで明美の目を見詰めた。
自分の返事でお客さんの気持ちが決まる。そう思ったときには、自分でも呆れるくらいにお芝居どっぷりの台詞を口にしていた。
「お願いです。わたしを買ってください。お兄さんたちに見限られたら、またお仕置きされます」
お仕置き云々は、もちろん勝江の言葉が頭に残っていたからだ。
「そうかい。じゃあ、お兄さんたちが助けてあげよう。もちろん、お礼は身体で返してもらうからね」
男たちも、勝江と明美の芝居に引きずり込まれたようだった。
「そうと決まったら、さあ、娼売娼売。さっさと立ちな」
いつの間に用意していたのか二尺の竹尺で、剥き出しになったままの尻をピシャリと叩いた。その動きが見えていたので、
「ひいい……ぶたないでください」
あまり痛くもないのに、哀れっぽく訴えて立ち上がった。
「そら、ついといで。お客さん方。立ち止まったりしたら、遠慮なく尻を叩いてやってくださいね」
勝江が先に立って、縄尻を股間から前へまわして引っ張った。
「きゃ……」
明美の悲鳴に、すこし本気が混じった。わざわざこんなことまでしなくてもいいのに。腰巻が縄でたくれるし、強く引っ張られると股間に食い込んで痛い――のだけれど。階段を一歩上がるたびに、腰の奥がじいんと痺れる。
六畳間の座敷も、布団が延べてあるし小さな座卓も置かれているしで、五人だと窮屈だった。
「それじゃ、支度をしてきますから。その間に順番を決めておいてくださいね。あ、湯文字は引っぺがしてもいいけど、縄はそのままにお願いします。縛るのって、けっこう手間なんだから」
「それじゃ、ジャンケンだ。引っぺがすのも、勝ったやつの権利な」
勝江が襖を閉じると同時にジャンケンが始まる。
明美は布団のへりに横座りになって、身の置き場に困っていた。もしこれが『ごっこ』じゃなかったら、わたしは逃げようとするんじゃないかな。まっすぐ襖めがけて突進したら逃げ出せる。そんなことを考えて、すぐに否定した。逃げ出しても、縛られているんだからすぐに捕まる。それとも。逃げたりしたらお父つぁんが――もうすこしで噴き出してしまうところだった。
(やだ。お父つぁんだなんて。ヒロインになりきってる)
なんだか、昨日とは違って心にゆとりがあった。自分であれこれ段取りを考えたりせず、勝江と客たちに一切をまかせてしまう。考えていた以上に気楽だった。
「アイコでしょ、ほい」
ジャンケンの決着がついて、勝ったのは年長の男だった。上着だけを脱いで。
「腰巻を取るぞ。いいんだな」
念を押したのは、追加料金を心配したのかもしれない。
(オールヌード込みの値段だって言ってあるのに)
しかし、そんな野暮を返す必要はない。羞ずかしそうに身を縮めて顔をそむけていればいい。
客もそれ以上はなにも言わず、腰巻に手を掛けた。紐がないので、ちょっと引っ張っただけでハラリとほどけた。
「へええ。薄いな。ほんものの娼妓みたいだ」
売春防止法が施行されたのは五年前だから、この男はかつての遊郭を知っているのかもしれない。当時の娼妓は古くからの伝統を受け継いで、淫叢の手入れを怠らなかった。実はこの元『新奇楼』でも、女将の指導でそのようにしている女子従業員も何人かいるのだとは――じきに明美も知ることになるのだが。いずれにしても彼女の股間には、冬の田圃よりも叢は淡かった。
「おや。さっそくに可愛がってもらってるのかい」
勝江が戻ってきて、座卓に盆を置いた。
「それじゃ、先にこの妓(こ)の支度をすませますね」
縄で縛って裸に剥いて、これ以上の支度が必要なのかと訝る三人の客の目の前で、勝江はチューブからゼリーを絞り出した。
「そら。もっと股をおっ広げな」
横座りの膝をつかんで開かせる。
「……羞ずかしい」
明美のか細い訴えは演技ではない。思ったままを(この場にふさわしいセリフだからと思ったので)素直につぶやいただけだ。股縄で刺激された腰の奥の痺れが、膣口をこねくられる刺激で甦った。
「なるほど。道理で最初から濡れてたわけだ」
明美の味方(?)をしてくれている男が、すこし醒めた声で感心する。
それを聞き付けたのか。勝江が明美の肩を芝居がかって突き飛ばす。明美は抵抗することなく、布団の上に転がった。
「それじゃ、時計をセットするからね。十五分でお願いしますよ。おっと、その前に」
上着を脱いでいる男の前にひざまずいてズボンとパンツをずり下ろす。
「この妓は手が使えないからね。特別サービスだよ」
軽く手でしごいて目いっぱいに怒張させて、ゴムをかぶせた。
「それじゃ、お邪魔物は退散いたしますよ」
まだ服を着たままの二人を追い立てて座敷から出て行く勝江。
とたんに、客の雰囲気がガラリと変わった。
「へへへ。親父さんの借金を返すのを手伝ってやるぜ。ありがたく思えよ」
そんなことを言いながらのしかかってきて、一気に貫いた。
「あ……」
声は出したけれど――背中で重ねた手首に体重が掛かる痛みをやわらげようとして腰を浮かし気味にしていたのがよかったのかもしれない。膣を押し広げられ身体の中芯まで貫かれる痛みはほとんどなかった。そして、粘っこいくすぐったさが腰の奥の痺れと共振して、これまでに感じたことのない感覚を生み出していた。気持ちいいのとは違う。いや、つたない快感なのかもしれない。けれど、ほんとうは夫婦の関係でなければしてはいけないことをしているという、それでお金を稼ごうとしている罪の意識が、その感覚を苦いものにしていた。
明美は、客が早く射精してくれることだけを願って耐えている。けれど昨日とは違って、文句は言われない。
客は、借金の形に拐われた少女を犯しているという幻想に没入しているらしい。
「つらいか? 恨むなら親父を恨めよ」
そんなことをつぶやいたり。
「そんなに男に抱かれるのが厭か。これならどうだ?」
腰は休みなく動かしながら右手を結合部に差し入れてきた。そして、男性器が出入りしているより上のほうを指でまさぐっていたが。
不意に、腰の浅いあたりでなにかが爆ぜた。
「ひゃああっ……!」
びくんっと瑕疵が跳ねた。男の指が動くたびに、得体の知れない感覚が立て続けに爆ぜる。背骨まで衝撃が突き抜ける。
「ひゃああっ……ああっ、あっ、あっ……やめ……やめて!」
ほんとうはやめてほしくなかった。衝撃は、はっきりと甘美だった。それだけに怖かった。衝撃が繰り返されるたびに、身体が分解していくような錯覚があった。
「未通女殺しの豆とは、よく言ったもんだ」
客は手を引き抜いて、それまでまさぐっていたあたりに下腹部を押しつけてきた。指に替わって剛毛が、それまで衝撃を発生していた部分を刺激する。爆ぜるような凄まじさは消えたが、じゅうぶんに鋭い甘美が腰骨を揺すぶる。
「あっ、あっ、あっ……」
明美は切迫した声で喘いでいた。もしかすると、これが勝江さんの言っていたオーガズムというものかもしれない――ぼんやりと理解が生じた。けれど実際には、オーガズムの遥か手前、宙ぶらりんなままで明美は放り出された。
「ふう……安い買い物だったな」
男が立ち上がった。ゴムをはずして自分で跡始末をして。まだ目覚まし時計は鳴らない。
「跡始末をどうするか、聞いておくんだったな」
ズボンだけ穿いて上半身は裸のまま廊下に身を乗り出して、隣に声を掛けた。
「終わったけど、女の子はほっといていいのか?」
すぐに勝江が入ってくる。
「そのままでいいわよ。どうせゴムなんだから。それにしても、お客さん凄いわね。ちゃんと豆のことを知っていて、三日前まで処女だった子をあれだけ哭かすんだもの」
勝江の言葉はもちろんお世辞を交えているが、半ばは本心だったろう。この時代、クリトリスの存在を知らない男も少なくはない。知っていても、女性が苦痛を感じない繊細さで刺激できる男は、もっと少ない。
「あまり味を覚えられると、娼売がおろそかになって、それも困りもんだけどさ」
明美をうつ伏せにさせて、尻を高く突き上げた形に据える。
「ずっと同じ体位じゃ、とくに手首が痛いでしょ。つぎは、これでいこうか」
最初の客が身支度を調えて出て行くと、入れ替わりにつぎの客が姿を現わす。勝江のゴム装着サービスを受けて、最初の客以上に猛然と明美に襲いかかった。
客が興奮したのは、明美が縄で縛られているからだけではなかった。正常位以外の体位をすんなりと受け入れる女性は、娼婦も含めてそんなに多くはなかった。だからこそ、雄二は明美が売れっ妓になれるようにと騎乗位まで仕込んだのだろうが。
二人目の客は明美におおいかぶさり、両手で乳房をこねくりながら猛然と荒腰を使って、五分以上を残して終わってしまった。
客は満足して帰ったが、『豆』をいじってもらえなかった明美は、なまじ快感を知ってしまっただけに、憤懣やるかたない思いで客を見送ったのだった。
そして三人目は正常位に戻って。やはり明美を欲求不満に取り残して埒を明けたのだった。
三十分千円(オールヌードはサービス)のところ、勝江の介添え込みで千五百円。割り戻しは正規の料金分が明美、追加分は勝江の約束になっている。三人が四十五分で二千円の変則的な金額も同じ計算で、明美が六百七十円で勝江が三百三十円。実際のところ逆の比率に決められても、明美は不満に思わなかったろう。三人続けてしくじって、それを一気に挽回できたのだから。
その日は、午後四時から休憩を取りながら八時間をフルに働いて五回転。ちょんの間にしては回数が少ないのは、緊縛のせいだった。勝江が「他人を縛るのは初めて」と言っていたとおり、必要以上に肌を締めつけがちで、一時間もすると鬱血してくる。そのたびに縄を解いて一時間は休んで、また縛られる。それでも、最初に三人まとめて『お仕事』をしただけでなく、常連の二人がかち合ったとき、これは勝江からの提案で二人で四十分千八百円というのがあったから、五回転でも八人の相手ができた。
二日目にして、ようやくのデビューであった。これからも『お仕事』を続けていく自信もついた。
ふつうに接客できるようになったらやめるという『ごっこ遊び』だったが、そうもいかなくなった。今日は順番がまわってきそうにないと判断した何人かの常連が、翌日とか三日後に予約を入れたのだった。『ちょんの間』で予約というのも珍しい話だったが、勝江が貼りきってその場で予約を受け付けてしまった。そうなると、断わるわけにもいかない。
「まったくねえ。あまり派手にやると、御上(おかみ)がうるさいんだよ。うちは飲食店だよ。芝居小屋じゃないんだから」
茶菓子しか出さないし、形ばかりのメニューに書いてあるのはビールと乾き物と新発売のインスタントコーヒーだけ。しかも、相場の三倍以上の値段。それでもきちんと届け出をしているから、警察も保健所も実態には目をつぶっている。
「いいじゃない。酒場にだって流しのギター弾きとか来るでしょ。同じことよ」
もしも勝江が跡取り娘としてふんぞり返っていれば、女将も雷を落とせただろうが。当人も身体を張っているのだから強くも言えない。
「しょうがないね。それじゃ、あと半月くらいは許したげるよ。でも、予約なんか取るんじゃないよ」
やはり明美に意見を求めることもなく決まってしまった。もっとも明美としても、段取りとかサービスとかを考えずに、縛られて転がって男の好きなように嬲られているだけのほうが楽だくらいには思っている。そういった受け身の姿勢の奥に潜む自分の性向については、まだ気づいていなかった。
========================================

やっぱり、筆者はSMシーンを描きたいんだなと、あらためて痛感。この章の27枚は6時間で書きました。これまでの5割増しくらいのスピードです。
この章でも伏線していますが、勝江は「他人を縛るのは初めて」なのです。しかも、当時は扱っている書店が少なかったSM雑誌を縛り方の教科書にしているし。
実は、「自分がされたいことを他人にしている」というドMなのです。やがては住込み男性従業員を婿養子に迎えて店を継ぐのですが、それは亭主にまかせっきりにして、自分は大阪の十三で(令和の時代にも現存している)日本最古のSMクラブを開く――というのは、嘘です。ここの作品はフィクションです。実在する(した)如何なる人物・団体・地域・年齢とも関係はありません。
実在するこちらのアマゾンさんには、(ひとつだけ苦い体験も含めて)良い思い出しかありません。いえ、そのうちまたお世話にならないとも限りませんので、「思い出」という単語は不適切かもしれませんね。
しかし、50年ちかい昔にアマゾンを創設したママ。いまだにプレイングマネージャーでいらっしゃる。
化け物かよ?!
Progress Report 1:昭和集団羞辱史『売春編:ちょんの間』
いよいよ打鍵開始です。
フルタイム執筆強制突入(詳しくは戦闘詳報参照→)ですが、まるきり墓が逝きません。通勤往復3時間と、8時間勤務+1時間休憩。合計12時間は、どこに消えたのでしょうか。
Youtubeで2時間、フリーセルで2時間、ブログストック記事で2時間。それでも6時間×3枚はこれまでより書けるはずなのに。
ともかく、誤字脱字の第ゼロ稿を御紹介。
今回は、就職列車に乗ってから、就職先の手前で引率の就職斡旋業者に『職業指導』を受けるところまでです。
このヒロイン。昭和30年代なら棲息していましたが、今や完全絶滅種です。男と女が抱き合ってひとつ布団で寝ると赤ちゃんができると信じているのですから。もっとも、おませな子から「ヒニン」について中途半端な知識は仕入れています。
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職業指導
都会への集団就職組が旅立って一週間も過ぎた三月二十八日。小島明美は近在の村から集まった四人の少女とともに、即日採用社の今里という若い男に引率されて、夜行列車で故郷を後にした。学校の教師や後輩たちや親戚一同の見送りもない、もの悲しい旅立ちだった。見送りに来ていたのは、津田佳恵という小柄な美人の両親と、新卒ではないらしい大芝加奈という娘の母親――三人だけだった。明美は、面と向かって言われたわけではないが、就職を決めてからは両親に縁切りをされた雰囲気が続いていた。
女の子が五人もひと塊りになっていながら、お喋りに花が咲くこともなく、今里が差し入れてくれた駅弁を黙々と食べ、お通夜(田舎のそれは、けっこう賑やかだ)よりも湿気った空気の中で夜が更けていき、やがて浅い微睡みに引きずり込まれていった。それも、ときおりの汽笛や停車駅でのガタンゴトンで何度も破られたのだけれど。
ターミナル駅では、特別就職説明会に来ていた四十歳過ぎの林課長が出迎えてくれた。そこに、山幡という今里より二つ三つ歳上の男に引率された三人の娘が合流した。
就職する女子は総勢八名。そのうちの二人は、遠方の就職先から雇い主が迎えに来ていて、すぐに分かれた。明美は汽車でも一緒だった田端朋子という、ちょっとぽっちゃりおっとりした子とともに、今里に就職先まで連れて行ってもらった。
都心と近郊とを結ぶ電車で小一時間。降りたところは、たまに家族で奮発して出かけていた街が田舎に思えるほどの都会だった。さらに三十分ほど歩く。駅前の賑わいがすこし落ち着いた街並みに変わって、そこから何度か道を曲がると、ひどく雑然とした印象のアーケード街に行きついた。
「昼にはちょっと早いが、田端さんの紹介先はすぐそこだから。先に昼飯を食っておこう」
二人を小奇麗な食堂へ案内する。
小奇麗というのは今里の言葉だったが、明美にしてみれば(おそらく朋子にとっても)デパートの食堂よりもよほど豪華に見えた。店頭の蝋細工見本だけでも――カレーライス、ハヤシライス、ビフカツ定食、赤や白のスパゲッティ、酢豚定食、中華ソバ、叉焼麺、炒飯、焼き魚定食、刺身定食、カツ丼、天丼、親子丼、天婦羅蕎麦にスタミナうどん。和洋中が一堂に会している。二人とも、五分以上ショーケースを呆然と眺めて。
「なんだ、決められないのか。それじゃ、俺が決めてやるから。さあ、突っ立ってちゃ営業妨害だぞ」
今里に尻を叩かれる始末。それくらいは学校でも日常茶飯なので、悲鳴をあげたり文句をつけたりはしない。
「晴れの門出だ。ビフカツ定食を三つ。それと、ビール。グラスは三つな」
明美たちとたいして歳の違わない女店員が、遠慮がちに言う。
「あのう……未成年の人にお酒は出せない決まりになってるんです」
朋子も明美もセーラー服を着ていた。この時代、制服以外に外出着を持っているのは、それなりに裕福な階層の子弟に限られていた。朋子も同じだろうが明美も、支度金というには多すぎる金額をすでにもらっている。明美の場合でいえば十万円。新卒者の年間給与にも匹敵する額だが、それはすべて学資として弟名義の郵便貯金にしてきた。だから財布の中には、家に帰る汽車賃すら無かった。それは自分に対する不退転の決意表明でもあったのだが。
「ややこしいことを言うなよ。この二人は、今日から特飲街で働くんだぜ。ビールの一杯も飲めずに、男の相手ができるわけねえだろ」
ことさらに伝法な調子で、女子店員をやりこめる今里。店員は奥を振り返ってから。
「わかりました。しばらくお待ちください」
言われたとおりにビールの大びんとコップを三つ運んできた。
今里が、泡があふれるまでコップにビールを注ぐ。
(飲めるかしら?)
泡を舐めただけでとまではいわないが、コップに三分の一もビールを飲むと、顔が火照って頭がポワンとしてくる。酔っ払って就職先に連れて行かれて、失礼な振る舞いをしないだろうかと、それが気がかりだった。
「それじゃ、乾杯。頑張って稼げよ」
今里の調子に巻き込まれて、コップをひと息に明けてしまった。
やがて料理が運ばれてきて。お子様ランチを卒業してからも、ハヤシライス(カレーは辛くて苦手)か玉子丼くらいしか食べたことのない明美は、ビフカツのサクサクした食感に驚くと同時に、一気にオトナの仲間入りをした気分になった。もっとも、皿の縁に盛られていた粒々の黄色を辛子と気づかずに塗り過ぎてしまって、それに炭酸ガスがお腹の中で膨れたので、半分以上は持て余してしまった。もちろん、食事を残すなんてもったいないことはできない。どうしようかと悩んでいると、今里が助け舟を出してくれた。
「おおい、姉ちゃん。二人とも量が多くて食いきれねえとさ。折に詰めてくれよ」
たちまち皿が下げられて、すぐに小ぢんまりとした折詰がテーブルに乗せられた。
「晩飯が浮いたな。と言っても、明美ちゃんのほうは、賄い付きだったか」
旅館に仲居として住み込みで働くというのが、表向きの触れ込みだった。いや、表も裏も無い。仲居がお客様と寝るのは、あくまでも自由恋愛であると――これは、就職説明会のときにも念を押されている。もっとも、自由恋愛をしなければ寮費も払えないのだけれど。
こればかりは奮発したボストンバッグの上に折詰を入れて店から出ようとすると、数人の客に声をかけられた。
「お姉ちゃんたち、どこで働くの?」
「ずいぶんと若いね。集団就職ってやつかい」
どう答えようか、そもそも勤め先を教えていいものだろうかと迷う間もなく、今里が気楽に受け応える。
「こっちのぽっちゃりさんはピンサロの『ヨルメーナ』、ツインテちゃんは『新奇楼』さ。どうぞご贔屓に」
初めて聞く言葉だが、ツインテとはツインテールのことだと、すぐにわかった。在学中はずっと三つ編みにしていたのだが、それではさすがに子供っぽいと思って、ほどいて付け根をリボンでまとめて左右に垂らしている。さすがに、まだお化粧はしていない。
「どっちも、ずいぶんと高い店だな。まあ、これだけ若くて可愛けりゃ当然か」
アルコールで足元をふらつかせている二人を左右に抱えて、今里が店を出る。
そのまましばらく進んで、なにか目印があったのか、裏道へ曲がる。
「明美ちゃんは、ちょいと待っててな」
みすぼらしいドアを開けて、今里と朋子が中へはいった。
表通りは極彩色の看板が並んでいかにも華やかだったが、裏道はくすんでいる。だけでなく、ドブの臭いやゴミ箱からあふれた腐臭が煙草の臭いと入り混じっていた。壁に寄りかかっても、そこらへんの木箱に座っても服が汚れそうで――明美はじっと立って待っていた。というのは、彼女の意識で。実際には、酔いが上体をゆっくりと揺さぶっていた。
十分くらいで、今里がひとりで戻ってきた。
「お待たせ。さあ、行こう」
しばらく歩くうちに看板が減って、住宅街のような雰囲気になった。『御休憩』という看板が目立ち始めた。そのひとつの下で、今里が立ち止まった。追いついた明美の腰に手を回して、入口をくぐった。
そこがこれからの仕事場なのだと信じて疑わなかった明美だが。
「先方との約束まで、まだ三時間ばかりある。ひと休みしていこう」
三時間もあれば酔いも覚めるだろうと、まだ軽く考えている。夜になっていないのに、布団が延べられているのが気になった。それも、二人なのにひとつ。
座卓の前に座って。仲居さんが来る気配もないし、魔法瓶と急須は目の前に置かれている。お茶でも入れようと伸ばした手を、後ろから押さえられた。
「明美ちゃんは、ずいぶんと割り切っているけど。ほんとうにわかっているよね?」
肩を抱かれて、耳元でささやかれた。
「あの……わかっているって、なにがですか?」
「だから。これから明美ちゃんがする仕事のことだよ。経験は、あるの?」
そんなの、経験がなくたってちゃんとできる。
「男の人とわたしが、抱き合ってひとつの布団で寝るんでしょ。そしたら赤ちゃんができるけど、男の人はヒニンの仕方を知ってるそうだから……」
「抱き合うって、どういうふうに? もっと具体的に言える?」
「え……? ふつうは正面を向き合って、男の人が上になって。あ、でも……わたしがうつ伏せになって、男の人が背中に覆いかぶさることもあるみたいですね」
今里が溜め息を吐いた。まさかとは思っていたけど――そうつぶやいた。
「それじゃ、今からそれをするけど、いいね。言ってみれば職業訓練みたいなものだ」
「え、今ですか?」
ああそうか。だから布団が敷いてあったんだと、妙に納得する明美。
「そうだ。キミは根本的な勘違いをしているように思う」
「そんなこと、ないと思いますけど……職業訓練なら、きちんと習っておかないと駄目ですね」
「そういうこと。まずは、スカートとパンツを脱いで」
セーラー服のまま寝るなんてお行儀の悪いことは、もちろんしない。でも、パンツまで脱ぐなんて。男女で寝るときのお作法なんだろうか。戸惑いながらも、明美は言われたとおりにした。両手を股間に重ねて、つぎの指図を待つ。
「ちょんの間ではキスはしないんだけど、最初からそれじゃ味気ないだろ」
意味のわからないことをいいながら、今里が顔を近づけてくる。両肩をつかまれて、逃げるに逃げられない。逃げようとも思わなかった。男女が抱き合う前にはキスをするのが自然な流れだと、おませな子から聞いた覚えもあった。
むにゅっと唇と唇とが重なって、なんだか生ぬるいお刺身を押し当てられているような感触だった。誰と誰がキスをしたとか噂話で盛り上がったこともあったけど、気持ち悪いばっかりでちっとも胸がときめかない。そんな思いは、唇を割って舌が口の中に侵入してきて、それどころではなくなった。
「んんー、んんん」
舌を絡ませられ、頬の内側を舐められて、それが驚愕の始まりだった。
身を振りほどいたりしたらいけないんだろうなと考えているうちに――
ざらっと尻を撫でられた。スカートの上からなら、男の子に悪戯されたこともあったけれど、直接肌に触れる掌はまるで感触が違っていた。粘っこいくすぐったさが波のように広がっていく。
肩を押されて布団の上に押し倒されたときは、むしろホッとした。ここからが『お仕事』のいちばん大切な部分だと、気を引き締めたのだが。
今里は抱きついてこずに、上体を起こし気味にして股間に手を這わせてきた。内腿を撫であげて――蛞蝓が這っているような気持ち悪さと、さっき以上の粘っこいくすぐったさ。
「ひゃああっ……!」
明美は悲鳴をあげて、今里を突き飛ばしていた。まったく思いもかけない部分を――絶対に誰にも見せたり触らせたりしてはいけないと、小さいときから母親に教えられてきた部分に触れられるどころか、指先でくじられたのだ。
「変なことは、やめてください」
今里が苦笑した。なにを思ったか、立ち上がってズボンを脱いだ。だけでなく、パンツまで脱いだ。
「きゃ……!」
男の股間にでろんと垂れた棒を見て、あわてて明美は両手で目をふさいだ。男の人のオチンチンを見てはいけないとも、母に躾けられている。けれど、好奇心もあって――指の隙間から覗き見してしまう。父の股間に垂れているものと同じで、先のほうが丸くなっている。棒の裏側から垂れているはずのキンタマが、子供のそれみたいに縮んでいる。
「いいか。男と女が寝るというのは――こいつを」
今里が、垂れている肉棒を右手で支えて水平にした。
「明美ちゃんの股の間にある穴に挿れて、穴と棒とを擦り合わせることを言うんだよ」
「穴なんて……」
空いてませんと言いかけて。でも、オシ コが出るんだから穴はあるのかな。でも、あんな太い棒がオシ コの穴に入るとも思えない。
今里が、股間を剥き出しにしたままのしかかってくる。
「口で説明するより、身体で覚えるほうが早い。いずれは、一日に何人もの男としなければならないことなんだからね」
そう言われると、また突き飛ばす気にはなれない。自分は『仕事』のことを勘違いしていたのかもしれないけれど――だからといって、逃げ帰るわけにはいかない。秀一を上の学校へやるためにも、頑張らなければならない。
「わかりました……よろしくお願いします」
今里が、また苦笑した。
「俺も処女を相手にするのは初めてだが……よろしくお願いされるとは、思ってもいなかったよ」
明美には、今里が笑っている理由がわからない。とにかく。これが『仕事』なのだから、きちんと教えてもらおう。そんなふうに考えている。と同時に――男と女とがひとつになって寝ることと、禁忌にされてきた股間を男に触れられることとが、頭の中でようやく結びつこうとしていた。
成り行きで、明美は両手で目をふさいだまま仰臥している。両脚は軽く開いて投げ出している。男の人がそこを触ろうとしているのだから、閉じるのは不作法だと、ぼんやり考えていた。しかし、積極的に開く必要があるとは思いもよらない。
今里の指が、割れ目に沿って動く。『お仕事』なんだからという思いが、気色の悪さを我慢させる。が、粘っこいくすぐったさだけはどうしようもない。自然と腰がひくついてしまう。
指が割れ目の中に押し入ってきた。ずにゅうっと身体の中にめり込んでくる。
(え……こんなとこに、穴が?)
あったんだと思う前に。ナイフで切り裂かれるような痛みを感じた。
「痛いっ……!」
職業訓練とか、そういったことを忘れて、布団の上で後じさった。が、肩を押さえ付けられた。
「ごめん。ちょっとだけ我慢してな。できるだけ、優しくするから」
そう囁かれては、我慢するしかない。この人は、私を虐めているんじゃない。何も知らなかったわたしが、ちゃんと『お仕事』ができるように教えてくれているんだ。
指の動きが優しくなったとは感じられないが、痛みはずっと小さくなった。
指が引き抜かれて、またすぐに挿れられた。
「痛い……」
呻いてしまった。なんだか太くなったようにも感じられた。
「だいぶん、こなれてきたね。ぬかるんでるよ」
言われてみると、身体の芯で指が滑っているような感覚があった。これまでも、不意に割れ目の奥が熱く感じたりすることがあった。そんなときは、なぜかパンツが粘く染みていたりしたのだが――それは、こういうことだったのかと、なにがこういうことか頭ではよくわからないけど、身体が納得しているという実感があった。
やがて、指が引き抜かれて。今里の顔が正面に来た。ああ、そうか。これから、男の人のオチンチンがわたしの穴の中に挿入(はい)ってくるんだと、本能的に悟ったのだが。
すぐには、そうならなかった。デロンとした肉棒を明美の股間にこすりつけている。かと思うと。上体を起こし気味にして、両手で乳房をつかんだ。
もにゅもにゅと揉まれて、肉をつねられる痛さに、股間が冷めていくのがわかった。
「どうもな……ちっちゃな子を虐めているみたいで、こいつがその気になってくれない」
肉棒を手荒くこすりながら、顔に焦燥を浮かべている。
「あの……?」
明美は不安に駆られた。この人は『職業訓練』としてわたしを抱こうとしているのに、自分に女としての魅力がないから、その気になれないのではないか――そう思った。いやいや宿題をやるようなものだ。もしもそうだとしたら。『お仕事』をする資格が自分にはないのかもしれない。
「あの……なにか、お手伝いできることはありませんか?」
なにがなんでも、この人に(正しい意味で)抱いてもらわないと、女としての面目が立たない。そんな気分になっていた。
今里が顔を上げて――ハッと何事かを思いついたようだった。
「あの……これからお願いすることは、けっして本番ではする必要はないからね。それだけは、わかっておいてほしいんだが……」
そう念を押してから、今里はとんでもないことを明美に求めた。
「その……口で、こいつをしゃぶってほしいんだ。フェラチオといって、ほんとうは心中立てをした男にしか許してはいけない――娼婦と客の間では、してはいけないことなんだけど……」
オシ コが出るところをしゃぶるなんて、とんでもない。そうは思ったけれど、就職先まで来て不合格の烙印を捺されて引き返すなんて、できない。自分の不名誉だけではなく、弟の将来にもかかわる。そう覚悟を定めると――余計な知識が無いだけに、禁忌感を克服するのは容易(たやす)かった。
明美は布団の上に起き直って、今里の股間に顔を近寄せた。
男性の器官を生まれて初めて間近に眺めて――すごく単純な構造だと思った。密林の中にちんまりした丸太が転がっている。先端が丸まっていると思っていたが、よく見ると傘の開いていない松茸のような形をしている。松茸と違って、頂点には細長い小さな溝があった。そこがオシ コの出る穴なのだろう。そして、もう一点。松茸の土臭い匂いとは違って、ひどく生臭い。汗を掻いたときの腋の下の臭いに似ている。
「頼むよ」
今里が手を添えて丸太を斜めに起こした。
明美は覚悟を決めて口を開け、丸太をぱくんと咥えた。ちょっとしょっぱくて、舌に触れた感じは、空気が抜けた水風船を連想した。
「厚かましいお願いなんだけど……もっと、こう、なんていうか。ペロペロとしゃぶってくれないか?」
毒を食らわば皿まで。そんな心境で、明美はふにゃっとした肉棒に舌を這わせた。なんだか、すごく羞ずかしい。遠慮がちに頼まれると、いかにも二人でいけないことをしている。そんな気持ちになる。いっそのこと。もっと堂々と、図々しいくらいの勢いで命令してくれれば――しているんじゃなくて、させられているほうが、まだ羞ずかしくない。そんなふうに思う。
口中の肉棒は明美の屈折した思いとは関係なく、太く硬く長くなっていく。フニャッとした感じがキュロンとした感じになって、さらにゴツゴツした感触に変わっていった。
(うわあ……?!)
明美は勃起という生理現象をまったく知らなかった。自分がそれを舐めたせいで短時間にこれだけの激変を引き起こしたのだと理解して、なんだか誇らしい気持ちになった。しかし、指の何倍(印象としては数十倍)も太く長い物体が自分の股間に空いているらしい穴に突っ込まれると思うと……
(無理! 絶対に無理!)
としか思えない。
「よおし、いけるぞ」
今里が腰を引いて、あらためて明美を押し倒した。
「あ、あの……こんなの、わたしの中に、は、はいるんですか?」
尋ねる明美の声は引き攣っていた。
「ん? ああ。だいじょうぶ。最初は痛いけど、我慢してくれ。二度目からはそんなに痛くないし、キミもだんだん気持ち良くなってくるから」
また萎えないうちにと、今里は明美の脚を大きく開かせて、その間に腰を割り入れてくる。
もしも今里に処女を相手にした経験があったなら。もっと時間をかけて膣口をもみほぐすとか、腰の下に枕をあてがって挿入しやすい角度に調整するとか――とにかく時間をかけてあれこれと工夫をしていただろうが。玄人妓しか知らない二十五歳の青年にそれを求めるのは無理な注文ではあった。
明美は、熱くて太いなにかが股間の割れ目を押し開くのを感じた。そのつぎの瞬間。指で穿たれるのとは桁違いの鋭い激痛が股間に奔った。
「い、いいいいっ……!」
痛いという叫びが言葉にならない。明美は布団を両手でつかんで、両脚を突っ張った。ずりっと、身体の下で布団が滑った。一瞬だけ痛みがやわらいで、すぐ前に倍する激痛が甦る。明美がずり上がって、それを今里が追いかけた結果だった。
それを何度か繰り返して、ついに今里が強引な手段に出た。
「おとなしくしないキミが悪いんだからな」
明美は足首をつかまれて、肩の向こう側まで脚を折り曲げられた。今里が上体を起こし気味にしたので、目の前にあった顔が遠のいた。
そして、股間から臍の上まで真っ二つに切り裂かれるような衝撃が背骨を貫いた。
「ぎい゙い゙っ…………!」
食いしばった歯の間から、くぐもった悲鳴が押し出される。
「痛い、痛い、痛い……やめて……」
ひと呼吸を置いて、弱々しく訴えた。声を出せるくらいに、痛みは軽くなっていた。訴えないではいられないほどの痛みが、股間にわだかまっていた。
「やったぞ。これで、明美ちゃんも一人前の女だ」
素人娘の処女を奪った感激に、今里の声がうわずっていた。
肩の上で畳に押しつけている明美の足首に両手を突っ張って、今里が抽挿を始める。
「痛いッ……痛い、痛い痛い痛い……」
今里が腰を動かすたびに、明美の中で激痛が律動した。しかし、貫かれた一瞬のことを思えば、すすり泣きながらも耐えられる痛みだった。
(そうか。これが、女になるということなんだわ)
痛みに耐えながら、今里の言葉を内心で反芻して。しみじみとした思いが込み上げてきた。
すうっと、痛みが軽くなった。
今里が中腰になって抜去していた。血まみれの勃起を満足そうに見下ろしてから、枕元に置かれている桜紙で汚れを拭う。が、明美の股間はそのままに。
「もうちょっとだけ、我慢して……そうだ、これも知らないんだろ?」
座卓の上の盆から小さな紙包みを取り上げて、明美に見せた。
明美は首を横に振った。
「これが、コンドームというものだ。帽子とかゴムとか、そういう言い方もある」
紙包みから輪ゴムに膜を張ったような物を取り出して勃起の先端にかぶせ、輪ゴムを巻き下げていく。
「この先っぽの部分に精液が溜まる。それと、性病の予防にもなる」
明美がキョトンとしているのを見て、今里はイチからの性教育をしなければならなかった。男は射精することで性欲を満足させるとか、その精液が子宮まで届いて妊娠するとか。性器同士の接触で梅毒とか淋病とかの性病が伝染(うつ)る。しかし戦後に抗生物質が発明されてからは、そんなに恐ろしい病気ではなくなっている。彼の知識もいい加減なものだったが、大筋は間違っていない。
明美は講釈を聞きながら、自分の無知を恥じていた。
「というわけで。今度は最後まで――射精するまで続けるよ」
いろんな体位を教えてあげようと言って、今里は明美を四つん這いにさせた。
(あ……これだったんだ)
背後からのしかかられて、二匹の犬がそういう姿で重なっていたのを思い出した。今里が言っていたように、最初に比べると痛みはずっと軽くなっていた。
しかし、今里は自身の欲望は抑えて(生娘に羞ずかしい所作をさせるという愉しみは貪って)、明美が上になるように要求した。
仰臥する今里をまたいで、自分の指で割れ目を広げながら、ゴムで包まれた勃起の上に腰を落としていく。今里と目が合って、突然に羞恥の感情が噴き上がった。SEXは羞ずかしい行為なのだと、ようやくに明美は実感した。
さらには背面騎乗位まで仕込まれて。男の上で腰を振る仕種も教えられた。もっとも、明美の覚えたての稚拙な技巧では男を射精に導くことはできず、最後は明美が仰臥して脚を開いて膝を立てるという、もっとも基本的な体位で職業指導は終わったのだけれど。
(だんだん痛くはなくなってきた。でも……)
ちっとも、気持ち良くなんかならなかった。それを不満に思ったが、すぐに反省した。これは『お仕事』なのだ。畑仕事だって、しんどい。ラヂオドラマだと、サラリーマンの仕事は農家よりもつらいらしい。いっぱいに働いて汗みずくになった肌を風に曝す爽快さもないし、収穫を積み上げて誇らしい気分に浸ることもない。朝から晩まで机に向かって帳面を付けたり、工場で延々と同じ部品を組み立てたり。それがどうしてお給料、つまりお金になるのか、社会科で教わったけど、いまひとつ仕組がわからない。
それに比べたら。明美の『お仕事』は、ずっとわかりやすい。お客に自分の身体を使ったサービスをして、そのお礼をもらう。お祖母ちゃんの肩を叩いてお駄賃をもらうのと、根本的には同じだと思うのだった。
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画像は「初々しい」少女の全裸です。このブログとしては珍しく、縄も手錠も鞭も檻もありません。
しかし、この少女。絶対に姦通済なんでしょうねえ。
フルタイム執筆強制突入(詳しくは戦闘詳報参照→)ですが、まるきり墓が逝きません。通勤往復3時間と、8時間勤務+1時間休憩。合計12時間は、どこに消えたのでしょうか。
Youtubeで2時間、フリーセルで2時間、ブログストック記事で2時間。それでも6時間×3枚はこれまでより書けるはずなのに。
ともかく、誤字脱字の第ゼロ稿を御紹介。
今回は、就職列車に乗ってから、就職先の手前で引率の就職斡旋業者に『職業指導』を受けるところまでです。
このヒロイン。昭和30年代なら棲息していましたが、今や完全絶滅種です。男と女が抱き合ってひとつ布団で寝ると赤ちゃんができると信じているのですから。もっとも、おませな子から「ヒニン」について中途半端な知識は仕入れています。
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職業指導
都会への集団就職組が旅立って一週間も過ぎた三月二十八日。小島明美は近在の村から集まった四人の少女とともに、即日採用社の今里という若い男に引率されて、夜行列車で故郷を後にした。学校の教師や後輩たちや親戚一同の見送りもない、もの悲しい旅立ちだった。見送りに来ていたのは、津田佳恵という小柄な美人の両親と、新卒ではないらしい大芝加奈という娘の母親――三人だけだった。明美は、面と向かって言われたわけではないが、就職を決めてからは両親に縁切りをされた雰囲気が続いていた。
女の子が五人もひと塊りになっていながら、お喋りに花が咲くこともなく、今里が差し入れてくれた駅弁を黙々と食べ、お通夜(田舎のそれは、けっこう賑やかだ)よりも湿気った空気の中で夜が更けていき、やがて浅い微睡みに引きずり込まれていった。それも、ときおりの汽笛や停車駅でのガタンゴトンで何度も破られたのだけれど。
ターミナル駅では、特別就職説明会に来ていた四十歳過ぎの林課長が出迎えてくれた。そこに、山幡という今里より二つ三つ歳上の男に引率された三人の娘が合流した。
就職する女子は総勢八名。そのうちの二人は、遠方の就職先から雇い主が迎えに来ていて、すぐに分かれた。明美は汽車でも一緒だった田端朋子という、ちょっとぽっちゃりおっとりした子とともに、今里に就職先まで連れて行ってもらった。
都心と近郊とを結ぶ電車で小一時間。降りたところは、たまに家族で奮発して出かけていた街が田舎に思えるほどの都会だった。さらに三十分ほど歩く。駅前の賑わいがすこし落ち着いた街並みに変わって、そこから何度か道を曲がると、ひどく雑然とした印象のアーケード街に行きついた。
「昼にはちょっと早いが、田端さんの紹介先はすぐそこだから。先に昼飯を食っておこう」
二人を小奇麗な食堂へ案内する。
小奇麗というのは今里の言葉だったが、明美にしてみれば(おそらく朋子にとっても)デパートの食堂よりもよほど豪華に見えた。店頭の蝋細工見本だけでも――カレーライス、ハヤシライス、ビフカツ定食、赤や白のスパゲッティ、酢豚定食、中華ソバ、叉焼麺、炒飯、焼き魚定食、刺身定食、カツ丼、天丼、親子丼、天婦羅蕎麦にスタミナうどん。和洋中が一堂に会している。二人とも、五分以上ショーケースを呆然と眺めて。
「なんだ、決められないのか。それじゃ、俺が決めてやるから。さあ、突っ立ってちゃ営業妨害だぞ」
今里に尻を叩かれる始末。それくらいは学校でも日常茶飯なので、悲鳴をあげたり文句をつけたりはしない。
「晴れの門出だ。ビフカツ定食を三つ。それと、ビール。グラスは三つな」
明美たちとたいして歳の違わない女店員が、遠慮がちに言う。
「あのう……未成年の人にお酒は出せない決まりになってるんです」
朋子も明美もセーラー服を着ていた。この時代、制服以外に外出着を持っているのは、それなりに裕福な階層の子弟に限られていた。朋子も同じだろうが明美も、支度金というには多すぎる金額をすでにもらっている。明美の場合でいえば十万円。新卒者の年間給与にも匹敵する額だが、それはすべて学資として弟名義の郵便貯金にしてきた。だから財布の中には、家に帰る汽車賃すら無かった。それは自分に対する不退転の決意表明でもあったのだが。
「ややこしいことを言うなよ。この二人は、今日から特飲街で働くんだぜ。ビールの一杯も飲めずに、男の相手ができるわけねえだろ」
ことさらに伝法な調子で、女子店員をやりこめる今里。店員は奥を振り返ってから。
「わかりました。しばらくお待ちください」
言われたとおりにビールの大びんとコップを三つ運んできた。
今里が、泡があふれるまでコップにビールを注ぐ。
(飲めるかしら?)
泡を舐めただけでとまではいわないが、コップに三分の一もビールを飲むと、顔が火照って頭がポワンとしてくる。酔っ払って就職先に連れて行かれて、失礼な振る舞いをしないだろうかと、それが気がかりだった。
「それじゃ、乾杯。頑張って稼げよ」
今里の調子に巻き込まれて、コップをひと息に明けてしまった。
やがて料理が運ばれてきて。お子様ランチを卒業してからも、ハヤシライス(カレーは辛くて苦手)か玉子丼くらいしか食べたことのない明美は、ビフカツのサクサクした食感に驚くと同時に、一気にオトナの仲間入りをした気分になった。もっとも、皿の縁に盛られていた粒々の黄色を辛子と気づかずに塗り過ぎてしまって、それに炭酸ガスがお腹の中で膨れたので、半分以上は持て余してしまった。もちろん、食事を残すなんてもったいないことはできない。どうしようかと悩んでいると、今里が助け舟を出してくれた。
「おおい、姉ちゃん。二人とも量が多くて食いきれねえとさ。折に詰めてくれよ」
たちまち皿が下げられて、すぐに小ぢんまりとした折詰がテーブルに乗せられた。
「晩飯が浮いたな。と言っても、明美ちゃんのほうは、賄い付きだったか」
旅館に仲居として住み込みで働くというのが、表向きの触れ込みだった。いや、表も裏も無い。仲居がお客様と寝るのは、あくまでも自由恋愛であると――これは、就職説明会のときにも念を押されている。もっとも、自由恋愛をしなければ寮費も払えないのだけれど。
こればかりは奮発したボストンバッグの上に折詰を入れて店から出ようとすると、数人の客に声をかけられた。
「お姉ちゃんたち、どこで働くの?」
「ずいぶんと若いね。集団就職ってやつかい」
どう答えようか、そもそも勤め先を教えていいものだろうかと迷う間もなく、今里が気楽に受け応える。
「こっちのぽっちゃりさんはピンサロの『ヨルメーナ』、ツインテちゃんは『新奇楼』さ。どうぞご贔屓に」
初めて聞く言葉だが、ツインテとはツインテールのことだと、すぐにわかった。在学中はずっと三つ編みにしていたのだが、それではさすがに子供っぽいと思って、ほどいて付け根をリボンでまとめて左右に垂らしている。さすがに、まだお化粧はしていない。
「どっちも、ずいぶんと高い店だな。まあ、これだけ若くて可愛けりゃ当然か」
アルコールで足元をふらつかせている二人を左右に抱えて、今里が店を出る。
そのまましばらく進んで、なにか目印があったのか、裏道へ曲がる。
「明美ちゃんは、ちょいと待っててな」
みすぼらしいドアを開けて、今里と朋子が中へはいった。
表通りは極彩色の看板が並んでいかにも華やかだったが、裏道はくすんでいる。だけでなく、ドブの臭いやゴミ箱からあふれた腐臭が煙草の臭いと入り混じっていた。壁に寄りかかっても、そこらへんの木箱に座っても服が汚れそうで――明美はじっと立って待っていた。というのは、彼女の意識で。実際には、酔いが上体をゆっくりと揺さぶっていた。
十分くらいで、今里がひとりで戻ってきた。
「お待たせ。さあ、行こう」
しばらく歩くうちに看板が減って、住宅街のような雰囲気になった。『御休憩』という看板が目立ち始めた。そのひとつの下で、今里が立ち止まった。追いついた明美の腰に手を回して、入口をくぐった。
そこがこれからの仕事場なのだと信じて疑わなかった明美だが。
「先方との約束まで、まだ三時間ばかりある。ひと休みしていこう」
三時間もあれば酔いも覚めるだろうと、まだ軽く考えている。夜になっていないのに、布団が延べられているのが気になった。それも、二人なのにひとつ。
座卓の前に座って。仲居さんが来る気配もないし、魔法瓶と急須は目の前に置かれている。お茶でも入れようと伸ばした手を、後ろから押さえられた。
「明美ちゃんは、ずいぶんと割り切っているけど。ほんとうにわかっているよね?」
肩を抱かれて、耳元でささやかれた。
「あの……わかっているって、なにがですか?」
「だから。これから明美ちゃんがする仕事のことだよ。経験は、あるの?」
そんなの、経験がなくたってちゃんとできる。
「男の人とわたしが、抱き合ってひとつの布団で寝るんでしょ。そしたら赤ちゃんができるけど、男の人はヒニンの仕方を知ってるそうだから……」
「抱き合うって、どういうふうに? もっと具体的に言える?」
「え……? ふつうは正面を向き合って、男の人が上になって。あ、でも……わたしがうつ伏せになって、男の人が背中に覆いかぶさることもあるみたいですね」
今里が溜め息を吐いた。まさかとは思っていたけど――そうつぶやいた。
「それじゃ、今からそれをするけど、いいね。言ってみれば職業訓練みたいなものだ」
「え、今ですか?」
ああそうか。だから布団が敷いてあったんだと、妙に納得する明美。
「そうだ。キミは根本的な勘違いをしているように思う」
「そんなこと、ないと思いますけど……職業訓練なら、きちんと習っておかないと駄目ですね」
「そういうこと。まずは、スカートとパンツを脱いで」
セーラー服のまま寝るなんてお行儀の悪いことは、もちろんしない。でも、パンツまで脱ぐなんて。男女で寝るときのお作法なんだろうか。戸惑いながらも、明美は言われたとおりにした。両手を股間に重ねて、つぎの指図を待つ。
「ちょんの間ではキスはしないんだけど、最初からそれじゃ味気ないだろ」
意味のわからないことをいいながら、今里が顔を近づけてくる。両肩をつかまれて、逃げるに逃げられない。逃げようとも思わなかった。男女が抱き合う前にはキスをするのが自然な流れだと、おませな子から聞いた覚えもあった。
むにゅっと唇と唇とが重なって、なんだか生ぬるいお刺身を押し当てられているような感触だった。誰と誰がキスをしたとか噂話で盛り上がったこともあったけど、気持ち悪いばっかりでちっとも胸がときめかない。そんな思いは、唇を割って舌が口の中に侵入してきて、それどころではなくなった。
「んんー、んんん」
舌を絡ませられ、頬の内側を舐められて、それが驚愕の始まりだった。
身を振りほどいたりしたらいけないんだろうなと考えているうちに――
ざらっと尻を撫でられた。スカートの上からなら、男の子に悪戯されたこともあったけれど、直接肌に触れる掌はまるで感触が違っていた。粘っこいくすぐったさが波のように広がっていく。
肩を押されて布団の上に押し倒されたときは、むしろホッとした。ここからが『お仕事』のいちばん大切な部分だと、気を引き締めたのだが。
今里は抱きついてこずに、上体を起こし気味にして股間に手を這わせてきた。内腿を撫であげて――蛞蝓が這っているような気持ち悪さと、さっき以上の粘っこいくすぐったさ。
「ひゃああっ……!」
明美は悲鳴をあげて、今里を突き飛ばしていた。まったく思いもかけない部分を――絶対に誰にも見せたり触らせたりしてはいけないと、小さいときから母親に教えられてきた部分に触れられるどころか、指先でくじられたのだ。
「変なことは、やめてください」
今里が苦笑した。なにを思ったか、立ち上がってズボンを脱いだ。だけでなく、パンツまで脱いだ。
「きゃ……!」
男の股間にでろんと垂れた棒を見て、あわてて明美は両手で目をふさいだ。男の人のオチンチンを見てはいけないとも、母に躾けられている。けれど、好奇心もあって――指の隙間から覗き見してしまう。父の股間に垂れているものと同じで、先のほうが丸くなっている。棒の裏側から垂れているはずのキンタマが、子供のそれみたいに縮んでいる。
「いいか。男と女が寝るというのは――こいつを」
今里が、垂れている肉棒を右手で支えて水平にした。
「明美ちゃんの股の間にある穴に挿れて、穴と棒とを擦り合わせることを言うんだよ」
「穴なんて……」
空いてませんと言いかけて。でも、オシ コが出るんだから穴はあるのかな。でも、あんな太い棒がオシ コの穴に入るとも思えない。
今里が、股間を剥き出しにしたままのしかかってくる。
「口で説明するより、身体で覚えるほうが早い。いずれは、一日に何人もの男としなければならないことなんだからね」
そう言われると、また突き飛ばす気にはなれない。自分は『仕事』のことを勘違いしていたのかもしれないけれど――だからといって、逃げ帰るわけにはいかない。秀一を上の学校へやるためにも、頑張らなければならない。
「わかりました……よろしくお願いします」
今里が、また苦笑した。
「俺も処女を相手にするのは初めてだが……よろしくお願いされるとは、思ってもいなかったよ」
明美には、今里が笑っている理由がわからない。とにかく。これが『仕事』なのだから、きちんと教えてもらおう。そんなふうに考えている。と同時に――男と女とがひとつになって寝ることと、禁忌にされてきた股間を男に触れられることとが、頭の中でようやく結びつこうとしていた。
成り行きで、明美は両手で目をふさいだまま仰臥している。両脚は軽く開いて投げ出している。男の人がそこを触ろうとしているのだから、閉じるのは不作法だと、ぼんやり考えていた。しかし、積極的に開く必要があるとは思いもよらない。
今里の指が、割れ目に沿って動く。『お仕事』なんだからという思いが、気色の悪さを我慢させる。が、粘っこいくすぐったさだけはどうしようもない。自然と腰がひくついてしまう。
指が割れ目の中に押し入ってきた。ずにゅうっと身体の中にめり込んでくる。
(え……こんなとこに、穴が?)
あったんだと思う前に。ナイフで切り裂かれるような痛みを感じた。
「痛いっ……!」
職業訓練とか、そういったことを忘れて、布団の上で後じさった。が、肩を押さえ付けられた。
「ごめん。ちょっとだけ我慢してな。できるだけ、優しくするから」
そう囁かれては、我慢するしかない。この人は、私を虐めているんじゃない。何も知らなかったわたしが、ちゃんと『お仕事』ができるように教えてくれているんだ。
指の動きが優しくなったとは感じられないが、痛みはずっと小さくなった。
指が引き抜かれて、またすぐに挿れられた。
「痛い……」
呻いてしまった。なんだか太くなったようにも感じられた。
「だいぶん、こなれてきたね。ぬかるんでるよ」
言われてみると、身体の芯で指が滑っているような感覚があった。これまでも、不意に割れ目の奥が熱く感じたりすることがあった。そんなときは、なぜかパンツが粘く染みていたりしたのだが――それは、こういうことだったのかと、なにがこういうことか頭ではよくわからないけど、身体が納得しているという実感があった。
やがて、指が引き抜かれて。今里の顔が正面に来た。ああ、そうか。これから、男の人のオチンチンがわたしの穴の中に挿入(はい)ってくるんだと、本能的に悟ったのだが。
すぐには、そうならなかった。デロンとした肉棒を明美の股間にこすりつけている。かと思うと。上体を起こし気味にして、両手で乳房をつかんだ。
もにゅもにゅと揉まれて、肉をつねられる痛さに、股間が冷めていくのがわかった。
「どうもな……ちっちゃな子を虐めているみたいで、こいつがその気になってくれない」
肉棒を手荒くこすりながら、顔に焦燥を浮かべている。
「あの……?」
明美は不安に駆られた。この人は『職業訓練』としてわたしを抱こうとしているのに、自分に女としての魅力がないから、その気になれないのではないか――そう思った。いやいや宿題をやるようなものだ。もしもそうだとしたら。『お仕事』をする資格が自分にはないのかもしれない。
「あの……なにか、お手伝いできることはありませんか?」
なにがなんでも、この人に(正しい意味で)抱いてもらわないと、女としての面目が立たない。そんな気分になっていた。
今里が顔を上げて――ハッと何事かを思いついたようだった。
「あの……これからお願いすることは、けっして本番ではする必要はないからね。それだけは、わかっておいてほしいんだが……」
そう念を押してから、今里はとんでもないことを明美に求めた。
「その……口で、こいつをしゃぶってほしいんだ。フェラチオといって、ほんとうは心中立てをした男にしか許してはいけない――娼婦と客の間では、してはいけないことなんだけど……」
オシ コが出るところをしゃぶるなんて、とんでもない。そうは思ったけれど、就職先まで来て不合格の烙印を捺されて引き返すなんて、できない。自分の不名誉だけではなく、弟の将来にもかかわる。そう覚悟を定めると――余計な知識が無いだけに、禁忌感を克服するのは容易(たやす)かった。
明美は布団の上に起き直って、今里の股間に顔を近寄せた。
男性の器官を生まれて初めて間近に眺めて――すごく単純な構造だと思った。密林の中にちんまりした丸太が転がっている。先端が丸まっていると思っていたが、よく見ると傘の開いていない松茸のような形をしている。松茸と違って、頂点には細長い小さな溝があった。そこがオシ コの出る穴なのだろう。そして、もう一点。松茸の土臭い匂いとは違って、ひどく生臭い。汗を掻いたときの腋の下の臭いに似ている。
「頼むよ」
今里が手を添えて丸太を斜めに起こした。
明美は覚悟を決めて口を開け、丸太をぱくんと咥えた。ちょっとしょっぱくて、舌に触れた感じは、空気が抜けた水風船を連想した。
「厚かましいお願いなんだけど……もっと、こう、なんていうか。ペロペロとしゃぶってくれないか?」
毒を食らわば皿まで。そんな心境で、明美はふにゃっとした肉棒に舌を這わせた。なんだか、すごく羞ずかしい。遠慮がちに頼まれると、いかにも二人でいけないことをしている。そんな気持ちになる。いっそのこと。もっと堂々と、図々しいくらいの勢いで命令してくれれば――しているんじゃなくて、させられているほうが、まだ羞ずかしくない。そんなふうに思う。
口中の肉棒は明美の屈折した思いとは関係なく、太く硬く長くなっていく。フニャッとした感じがキュロンとした感じになって、さらにゴツゴツした感触に変わっていった。
(うわあ……?!)
明美は勃起という生理現象をまったく知らなかった。自分がそれを舐めたせいで短時間にこれだけの激変を引き起こしたのだと理解して、なんだか誇らしい気持ちになった。しかし、指の何倍(印象としては数十倍)も太く長い物体が自分の股間に空いているらしい穴に突っ込まれると思うと……
(無理! 絶対に無理!)
としか思えない。
「よおし、いけるぞ」
今里が腰を引いて、あらためて明美を押し倒した。
「あ、あの……こんなの、わたしの中に、は、はいるんですか?」
尋ねる明美の声は引き攣っていた。
「ん? ああ。だいじょうぶ。最初は痛いけど、我慢してくれ。二度目からはそんなに痛くないし、キミもだんだん気持ち良くなってくるから」
また萎えないうちにと、今里は明美の脚を大きく開かせて、その間に腰を割り入れてくる。
もしも今里に処女を相手にした経験があったなら。もっと時間をかけて膣口をもみほぐすとか、腰の下に枕をあてがって挿入しやすい角度に調整するとか――とにかく時間をかけてあれこれと工夫をしていただろうが。玄人妓しか知らない二十五歳の青年にそれを求めるのは無理な注文ではあった。
明美は、熱くて太いなにかが股間の割れ目を押し開くのを感じた。そのつぎの瞬間。指で穿たれるのとは桁違いの鋭い激痛が股間に奔った。
「い、いいいいっ……!」
痛いという叫びが言葉にならない。明美は布団を両手でつかんで、両脚を突っ張った。ずりっと、身体の下で布団が滑った。一瞬だけ痛みがやわらいで、すぐ前に倍する激痛が甦る。明美がずり上がって、それを今里が追いかけた結果だった。
それを何度か繰り返して、ついに今里が強引な手段に出た。
「おとなしくしないキミが悪いんだからな」
明美は足首をつかまれて、肩の向こう側まで脚を折り曲げられた。今里が上体を起こし気味にしたので、目の前にあった顔が遠のいた。
そして、股間から臍の上まで真っ二つに切り裂かれるような衝撃が背骨を貫いた。
「ぎい゙い゙っ…………!」
食いしばった歯の間から、くぐもった悲鳴が押し出される。
「痛い、痛い、痛い……やめて……」
ひと呼吸を置いて、弱々しく訴えた。声を出せるくらいに、痛みは軽くなっていた。訴えないではいられないほどの痛みが、股間にわだかまっていた。
「やったぞ。これで、明美ちゃんも一人前の女だ」
素人娘の処女を奪った感激に、今里の声がうわずっていた。
肩の上で畳に押しつけている明美の足首に両手を突っ張って、今里が抽挿を始める。
「痛いッ……痛い、痛い痛い痛い……」
今里が腰を動かすたびに、明美の中で激痛が律動した。しかし、貫かれた一瞬のことを思えば、すすり泣きながらも耐えられる痛みだった。
(そうか。これが、女になるということなんだわ)
痛みに耐えながら、今里の言葉を内心で反芻して。しみじみとした思いが込み上げてきた。
すうっと、痛みが軽くなった。
今里が中腰になって抜去していた。血まみれの勃起を満足そうに見下ろしてから、枕元に置かれている桜紙で汚れを拭う。が、明美の股間はそのままに。
「もうちょっとだけ、我慢して……そうだ、これも知らないんだろ?」
座卓の上の盆から小さな紙包みを取り上げて、明美に見せた。
明美は首を横に振った。
「これが、コンドームというものだ。帽子とかゴムとか、そういう言い方もある」
紙包みから輪ゴムに膜を張ったような物を取り出して勃起の先端にかぶせ、輪ゴムを巻き下げていく。
「この先っぽの部分に精液が溜まる。それと、性病の予防にもなる」
明美がキョトンとしているのを見て、今里はイチからの性教育をしなければならなかった。男は射精することで性欲を満足させるとか、その精液が子宮まで届いて妊娠するとか。性器同士の接触で梅毒とか淋病とかの性病が伝染(うつ)る。しかし戦後に抗生物質が発明されてからは、そんなに恐ろしい病気ではなくなっている。彼の知識もいい加減なものだったが、大筋は間違っていない。
明美は講釈を聞きながら、自分の無知を恥じていた。
「というわけで。今度は最後まで――射精するまで続けるよ」
いろんな体位を教えてあげようと言って、今里は明美を四つん這いにさせた。
(あ……これだったんだ)
背後からのしかかられて、二匹の犬がそういう姿で重なっていたのを思い出した。今里が言っていたように、最初に比べると痛みはずっと軽くなっていた。
しかし、今里は自身の欲望は抑えて(生娘に羞ずかしい所作をさせるという愉しみは貪って)、明美が上になるように要求した。
仰臥する今里をまたいで、自分の指で割れ目を広げながら、ゴムで包まれた勃起の上に腰を落としていく。今里と目が合って、突然に羞恥の感情が噴き上がった。SEXは羞ずかしい行為なのだと、ようやくに明美は実感した。
さらには背面騎乗位まで仕込まれて。男の上で腰を振る仕種も教えられた。もっとも、明美の覚えたての稚拙な技巧では男を射精に導くことはできず、最後は明美が仰臥して脚を開いて膝を立てるという、もっとも基本的な体位で職業指導は終わったのだけれど。
(だんだん痛くはなくなってきた。でも……)
ちっとも、気持ち良くなんかならなかった。それを不満に思ったが、すぐに反省した。これは『お仕事』なのだ。畑仕事だって、しんどい。ラヂオドラマだと、サラリーマンの仕事は農家よりもつらいらしい。いっぱいに働いて汗みずくになった肌を風に曝す爽快さもないし、収穫を積み上げて誇らしい気分に浸ることもない。朝から晩まで机に向かって帳面を付けたり、工場で延々と同じ部品を組み立てたり。それがどうしてお給料、つまりお金になるのか、社会科で教わったけど、いまひとつ仕組がわからない。
それに比べたら。明美の『お仕事』は、ずっとわかりやすい。お客に自分の身体を使ったサービスをして、そのお礼をもらう。お祖母ちゃんの肩を叩いてお駄賃をもらうのと、根本的には同じだと思うのだった。
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画像は「初々しい」少女の全裸です。このブログとしては珍しく、縄も手錠も鞭も檻もありません。
しかし、この少女。絶対に姦通済なんでしょうねえ。
未通海女哭虐 後編発売
すでに次発装填済(『赤い冊子と白い薔薇』10/1発売)なので、さっさとリリースします。
DLsite →
BOOTH →
FANZA →
楽天はU15規制に引っ掛かって発禁です。
ここからは、作品にあまり関係のない雑談です。
平成は30年間続きましたが、まさしく平らかに成った時代ですね。
ガラケーの栄枯盛衰とか、PCの性能飛躍とか、ロリ規制とか、細かく見れば変化はありますが。
複葉プロペラ機がジェット機に進化したとか、大日本帝国が民主国家日本になったとかの激動は皆無。
さて、令和は……いきなり、チャイルスで世界が変わるかもしれませんなあ。
江戸時代は300年間で、まあそれなりに変化はあったわけですが、それはさておき。
明治は、日本が三等国家から一等国家に飛躍した時代です。
といっても、筆者としては扱いにくい時代です。前半はチョンマゲを引きずり鹿鳴館ではスカートを引きずっていました。後半は富国強兵とか勇ましい話ですし、妄想竹が繁茂する余地がありません。
大正は、なんといってもデカダンであり、エログロナンセンスです。華族は家庭内に関しては家憲が国法に優先する(女中に折檻)ので、民間におけるアレコレが筆者としては扱いやすいです。
そして、昭和。見事に20年ずつに区切れます。
昭和20年までは、特高警察(『非国民の烙淫』『赤い冊子と白い薔薇』)に軍隊に(『陸軍女子三等兵強制全裸突撃』『成層圏の飛燕』)、国家権力をサド役に抜擢です。
昭和40年まで、ことに30年代は、現在とは異なる価値観の元、体罰・売春・未性年。なんでもありあり。
『昭和集団羞辱』シリーズ、『未通海女哭虐』『少女博徒-手本引地獄』などなど。
その後は現在と地続きな面が多くなって、ノスタルジーから微妙に外れます。もっとも、あまり「現代との違い」を考証せずに書けるという利点もあります。いえ、やはりキチンと考証はしますけど、自身の感覚で書いてもそれほどハズレないということです。
実は、平成を舞台にしているはずの作品群には、昭和末期のテイストが紛れ込んでいる場合が多々あります。
逆に、昭和30年代を描いても昭和末期とチャンポンな部分もあることでしょう。自戒。
↑上で言及した自作品へのDLsiteフィリンクです。
↓『海女』をキーワードにしたアフィリンクです。
チャイルスのおかげで、予定より1年半ほどフルタイム環境になっちゃいました。
戦闘詳報でもしつこく書いているように、ギリギリ首を吊らずに済みそうですが。家の補修、大物家電、入院などを考えると、副収入が欲しいところです。おのれ、熱帯雨林め。おのれ仏蘭西め。
ハロワに通って、月に5万くらいのバイトを探すしかないですなあ。
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楽天はU15規制に引っ掛かって発禁です。
ここからは、作品にあまり関係のない雑談です。
平成は30年間続きましたが、まさしく平らかに成った時代ですね。
ガラケーの栄枯盛衰とか、PCの性能飛躍とか、ロリ規制とか、細かく見れば変化はありますが。
複葉プロペラ機がジェット機に進化したとか、大日本帝国が民主国家日本になったとかの激動は皆無。
さて、令和は……いきなり、チャイルスで世界が変わるかもしれませんなあ。
江戸時代は300年間で、まあそれなりに変化はあったわけですが、それはさておき。
明治は、日本が三等国家から一等国家に飛躍した時代です。
といっても、筆者としては扱いにくい時代です。前半はチョンマゲを引きずり鹿鳴館ではスカートを引きずっていました。後半は富国強兵とか勇ましい話ですし、妄想竹が繁茂する余地がありません。
大正は、なんといってもデカダンであり、エログロナンセンスです。華族は家庭内に関しては家憲が国法に優先する(女中に折檻)ので、民間におけるアレコレが筆者としては扱いやすいです。
そして、昭和。見事に20年ずつに区切れます。
昭和20年までは、特高警察(『非国民の烙淫』『赤い冊子と白い薔薇』)に軍隊に(『陸軍女子三等兵強制全裸突撃』『成層圏の飛燕』)、国家権力をサド役に抜擢です。
昭和40年まで、ことに30年代は、現在とは異なる価値観の元、体罰・売春・未性年。なんでもありあり。
『昭和集団羞辱』シリーズ、『未通海女哭虐』『少女博徒-手本引地獄』などなど。
その後は現在と地続きな面が多くなって、ノスタルジーから微妙に外れます。もっとも、あまり「現代との違い」を考証せずに書けるという利点もあります。いえ、やはりキチンと考証はしますけど、自身の感覚で書いてもそれほどハズレないということです。
実は、平成を舞台にしているはずの作品群には、昭和末期のテイストが紛れ込んでいる場合が多々あります。
逆に、昭和30年代を描いても昭和末期とチャンポンな部分もあることでしょう。自戒。
↑上で言及した自作品へのDLsiteフィリンクです。
↓『海女』をキーワードにしたアフィリンクです。
チャイルスのおかげで、予定より1年半ほどフルタイム環境になっちゃいました。
戦闘詳報でもしつこく書いているように、ギリギリ首を吊らずに済みそうですが。家の補修、大物家電、入院などを考えると、副収入が欲しいところです。おのれ、熱帯雨林め。おのれ仏蘭西め。
ハロワに通って、月に5万くらいのバイトを探すしかないですなあ。
Progress Report 0b:昭和集団羞辱史「売春:ちょんの間」
いよいよ、構想も固まりました。

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ちょんの間
元は地域随一の遊郭(新奇楼)。店を三分割(奥は一体)しているが、「他の雑魚とは違う」プライド。
一新:洋装ちょいエロ 縁奇:和服(昆布巻きが基本) 江楼:水着その他エロ下着
縦看板を横に連ねると新奇楼
女の子は当日に3店へ割り振っているが、和服好きとかエロ好きもいる。
この遊郭は四十八手から源氏名
揚羽、網代、笠船、深山
千鳥、椋鳥、松葉、花菱、ひよどり、芙蓉、鳴門、本駒、茶臼、時雨、巴
石清水、流鏑馬、雁が音、うぐいす、浮橋、牡丹、燕、菊……
*アパート自活 :遊郭内住込
住込は、一階の四畳半(かつての格子の部屋)か三畳(雑魚寝部屋を改装)。稼ぎ年齢ではなく、在籍の長い順。
ちょんの間は、四畳半。3店で6部屋。
本駒 *31十年選手
石清水:35最年長。女給からだんだん下へ/四畳半
鳴門 :26トランジスタグラマー
茶臼 :23百合の二割増し/四畳半
椋鳥 :21触れなば落ちん。元は両家の子女
花菱 :19最年少
網代 *24アパート住まい
浮橋 *23(あたし)レズ同棲
牡丹 *21(おれ) レズ同棲
巴 *28ヒモを養っている
大和田和雄 楼主 [おとうさん]わし
大和田正子 女将 [おかあさん]わっち
大和田勝江 ひとり娘[おねえさん]あたい(学校ではわたし)
商業学校3年。理非(リイ)として、店に出ている(補欠)。
兄2人は戦死。いずれ楼を継ぐ。現場の苦労を知らずに社長になれるか。
クールな部分が、見下していると誤解(?)されている。
下村雄二 牛太郎 [おにいさん]ぼく
住み込んで勝江とともに店を手伝っている。ゆくゆくは勝江と一緒に。
遣手婆[おばさん]掃除とかも。欠員時は女将も
カヨ
ミツコ
マツエ
テルコ
小島明美:揚羽(わたし)
2歳下の弟が秀才。進学させてやりたい。さらに下にも妹。
男女が抱き合って寝れば子供ができると信じている。
支度金10万円。
1:職業指導
3月28日出発。今里に率いられて5人。
ターミナルからは今里の引率で朋子と。朋子は店長のアパートへ。
昼時。食事の後、連れ込み宿。覚悟はできていても、男を知らないことには。
(今里へのボーナス)
裸にされて、ビックリ。触られてドッキリ。男女の営みって、こんなことをするんですか?!
今里もやりにくい。一から教える。明美は、ただ痛いだけ。
イタズラ心でフェラまで仕込む。アナルも指で。
2:疑似強貫
当日はシステムを教わって。
15分単位だが、最短30分で千円 以後、15分ごとに300円
他所は15分
割り戻しは50%×90%(税天引き)
住込みは月額3千円。家賃としては割高だが、賄い付き・公共料金込みで、近所づきあいも不要。
前借は上記で計算して3/4返済。(千円×10人×45%-300円)×1/4=1千円日払い
勝江とも顔合わせ。
翌日の昼に口開け。覗き見できる部屋から女将が見張り。
ぎこちない。痛い。愛想笑いできない。評判悪い。昼は2人だけで待機。
夜も最初のひとりで文句言われる。
落ち込んでいるところに勝江帰宅。女将と相談。
女囚/誘拐プレイを持ちかけられる。否応なく。
事前に、ゴムの口でも装着を特訓。
翌日。江楼。腰巻緊縛。勝江が和服片肌脱ぎ駄菓子屋イレズミシール。
30分1500円。(追加料金の割り戻しは勝江がとる)。
縛られる時ときに、ちょっとキュン。勝江うまい。
客が興味津々。いちおう、明美の意思確認。
「好きでやってるんじゃありません。お仕事だから、やってるんです」
プレイ時も勝江が付き添いというか指導というか、芝居っ気たっぷりに監視役。
お掃除生フェラを強制。若い客なので再勃起、延長。
3:再開交接
明美&勝江コンビが店に出る日は、待ちが出る。
他の子には客がつかず、10分で交替。とたんに奪い合いは、女将が仕切る。さらに料金アップとか。
他の女は、面白くない。縛って強貫の真似事なんて変態。
おねえさん(おかみさん)に逆らうわけにもいかないので、明美がイジメの対象。
無視、接客の部屋が片付いていない。
我慢して独立営業してみるが、客の評判悪い。揚羽といえば縄女郎のイメージも定着。
今里が様子見に。元気無さそうな明美を連れ出して。
打開策として、初めての男に抱かれてみようと。やはり(肉体的な苦痛はないが)嫌悪が先立つ。
不感症? それも悩み。
弟から手紙。姉の犠牲で進学なんて、生涯の悔いが残る。夏休みにバイトして貯金。
一部返済だけでよい奨学金制度もできた(昭和33)。これに受かるよう頑張る。
4:役割交換
ますます明美への虐めエスカレート。
服が無くなる。貯金通帳が無くなって、ついに泣きだす。女将介入。勝江深刻。
全員呼集。
勝江、考えが至らなかったと、土下座。
でも、期待してくる客に応えないと店全体に悪影響。
これからは、あたいが縛られる。割り戻しは悪役(生理などで店に出られない者)に全部あげてもいいけど、それも生意気なので、折半。
女将を含めて一同ビックリ、とんでも八分。
要領がわからないだろうから、揚羽ちゃんにお願い。
女将の鶴声。火土日に限って揚羽と理非の縄女郎専門。
最初は理非の指導で雄二に緊縛を教える。見よう見まねで揚羽が姐御役。
隣の部屋から数人が覗き見。揚羽のサディスチンで一幕。
軌道に乗る。真似する店も出てくる。タイムスリップ本番込イメクラ(にしては駄目よ)。
縄女郎も増える。客との会話・交渉が苦手な椋鳥。男への嫌悪があるレズ2人。
5:SM風俗
勝江から、卒業後に予定しているSM風俗店への移籍を打診される。女将さんも不承不承に。
日本にまだない娼売。しかし、そういう変態マニアは富裕層に多い。
そういうつながりがあるとも、勝江は匂わす。当時としては相当に進歩的な女学生です。
古武術研究会は封印しましょうね。
縄女郎遊びは、当局の指導で間もなく中止。
売春はしない。アナル、オーラル、手足コキは売春でない。
ソロバン勘定込みで迷う。縛られて犯される時の陶酔も……
弟への手紙。完全に合法の娼売に移る話もある。あなたが奨学生に決まったら、お姉ちゃんはそちらに移ります。
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売春のド真ん中剛速球ストライクとSMは、実は相性が悪いなと今さらに気づきました。
筆者の初体験は、まさしく股を開いて「はい、どうぞ」でした。レンタル生オナホそのものです。当時は、それでも「これで俺も一人前」なんて感慨にふけったりしました。
しかし。当時はまるっきりSMなんて変態の極致でした。トルコなんかで「縛らせて」も「縛って」も門前払い。もちろん、SMイメクラもなにもありません。大阪に老舗のAMAZON(通販はしてません)があるとSM雑誌で知ったのは、社会人になってしばらくしてからのことでした。
今回のPLOTでは、思いっきりの無知少女とSM願望自覚娘との組み合わせです。
SMシーンよりは、無知少女の性教育コメディがむしろ見せ場になるんじゃないかと……
ま、書いてみなけりゃわからんです。そういう我儘が許される執筆環境です(くそゥ……)
Progress Report 0a:昭和集団羞辱史「売春:売春島」
いよいよ、満を持しての3番バッターです。
このシリーズは200枚程度の中編2本を1冊にまとめる方針で進めています。
「売春」編は、『売春島』と『ちょんの間』です。
『売春島』のPLOTが揚がりましたのでご紹介。
売春島
どうも、『売春編:売春島』では畳語で収まりが悪いです。出版時にはタイトルを変更するでしょう。
大小無数の売春宿。
島全体でヤクザを締め出して自警団。警察幹部に上納金。
船で15分の小島。島で屈指のホテル『サザンドリーム』
ただし、和風に仲居。昼に客室で自由恋愛(2~3人)。夜は宴会を盛り上げて自由恋愛(1人:ロングがほとんど)。
ホテルの2階が従業員宿所。三畳一間。一人部屋。寮費・食費ゼロ。
ショート(1時間)千円、ロング3千円。宴会千円。
バック率50% ただし、宴会でのドリンク・フルーツは価格の10%。
前借分は手取の1/2。出入りの業者から買うあれこれは前借が増える。
(千円×3+3千円+千円)×50%×1/2=1,250円(返済同額)
月20日で2万5千円。3年で返済。
北野ユキ(美冬)
弟2人。どちらかが跡継ぎ。しかし隣家の田圃を入手できれば兄弟とも独り立ちできる。
引率:山幡 同行:白川五十鈴、島本綾(見送りあり)
ターミナルで合流後は出迎えの者に連れられて島へ
男を知ってから、野暮ったい三つ編みをショートカットに。
先輩を見習って厚化粧。同じホテルの堅気従業員との差別化とか。
庄内幸雄(21)
ユキの破瓜役。村の隣家の一人息子。それなりに遊んでいる。加熱する岩戸景気。学生で株売買など。
後の出番は無し。
神月わたる(偽名:ヅカスター合成)25♀
大沢喜三郎(オーナー)
美春(2か月前:22歳)/美夏(30過ぎ新人)/美秋(ひとつ上新人)
古株には「千」が多い。千夏、千秋、千花(サザン=千)
中堅どころは「百」が多い。
1:淫奔少女
夏休み。草刈り。隣家の先輩(都会の大学から帰省中)。
「これが最後の帰省」収穫後に一家挙げて都会へ。田圃の処置を決めていない。北野家にも相談しているが、金銭面の問題。
数日後の隣村共同盆踊り&花火大会。脱け出して、国道沿いのモーテルで。夢見心地の初体験で絶頂。
二学期になって、噂も。言い寄る男(顔役、教師、同級生などなど)
壮絶な快感を求めて「サセ子」。ちっとも良くない。村の芋男は下手くそ。
隣家の田圃を買う費用。耕運機も必要。
2:積極志願
11月初旬。即日採用社の特別説明会。事前に教師が曖昧な説明。個別に声を掛ける例も。
聞いた途端、ピンとくる。
説明会後の個別面談。ホンバン無しは無意味。トルコはおスペ中心が多い。ちょんの間はせわしない。
前借目いっぱい。特別斡旋課長の忠告は聞かない。
3月28日出発。ここらは『芸術編』『浴場編』と整合。
数日前に来た娘(ひとつ上)、30歳過ぎの新人。客室50。接客仲居50(稼働30)、雑役仲居20(稼働数)。
ホテル内では膝丈着物でブラパン禁止。休日の外出は自由。
3:売れっ娘
美冬は「床急ぎ」。若いし積極的で評判上々。
美秋はイヤイヤがわかって不評。
宴会いろいろ。女体盛りとワカメ酒はオープニング。
透け透けミニ浴衣時代考証キックアウト。花電車(伏線)。ツイスターは1966年だからね。
国旗掲揚(パンティ着用)日の丸をするすると……
爪楊枝輪ゴムリレー
抱擁風船割り
背中おっぱい文字当て
棒倒し競争。手は使用禁止。10分間倒れなかったら男性の勝ち(必死で温存しようとする)。商品は希望者のみ兎跳び3回。負けたら高額のフルーツ盛りを注文。当人が払うか一括精算かは客まかせ。
ベッドでは五合目まで。
白川五十鈴との再会は「芸術編」と整合。
4:初の絶頂
10月の行楽シーズン。ごった返す。
若い一人旅の客。ワイシャツとパンツ脱がない。指と口。最後は突っ込むが……後日、ディルドと判明。
美冬、メロメロ。初絶頂。
借金を返したら、僕のところにおいで。結婚はできないけど、一緒に住んでもいい。
年季明けまで最低5年。待てない。
あなたと逃げたい。
僕も、きみとだけは離れたくない。
打ち明ける。実は、娼婦をテクニックで陥落させて引き抜いている。
きみみたいなバンス持ちは相手にしないつもりだったのだが、一目見たときから。
渡し舟は基本、本土側で往復切符。島に券売場はない。脱走防止。島民は無料定期券。
後日を約して。
5:駆け落ち
浮き浮きルンルンおどおどビクビク。怪しまれないはずがない。
別の客が連絡係で切符をくれる。スッピンで外出。外で落ち合って港へ。
船にはホテルの男が張り込んでいて、問答無用で二人連行。
美冬は、はじめて相手が女性と知る。驚愕。と同時に、二度とない出会いと確信。
神月わたるは、各地で引き抜きをしてヤクザ組織からも目の仇。
見せしめに二人まとめて折檻。せっかくだから、マニアを呼ぼう。
かねてから、女を折檻するシーンを見たいという要望があった。連絡。
6:公開折檻
ホテルの従業員室に監禁(2人1室)。三日間、劇場で本番レズ・ショー。
きちんと勤めれば、ヤクザに引き渡さない。
これを最後と熱演。今生の別れ。
深夜の劇場で手加減無し折檻。
伝統のブリブリ。休憩は三角木馬。〆はギロチン磔の2穴連姦か?
もすこし趣向を凝らしましょ。
7:二足草鞋
美冬と「わたる」改め美央
昼は本番レズショー、夜は接待仲居、合間に花電車特訓。
美央は高額の借用書を書かされて、美冬が希望して折半。
5年で返済してみせる。その後は、二人で新生活。

売春島はノンフィクションもあり、レディコミもあり。
いまさら題材に取り上げるのもためらわれますが、やはり不動の3番バッターとしては、避けて通るわけにもいきません。
ちょいとヒネッてみました。
そして。SMシーンが無いことには濠門長恭のraison d'êtreが消失します。ので、Attached Handle(取って付けた)ではありますが、かような展開となりました。
SMシーンには、目新しい責めはありません。前作『赤い冊子と白い薔薇』でNo味噌を絞り尽くしました。
むしろ、見せ場は宴会になるのではないかと。
ただし。エロ宴会の定番である
さて。上記の宴会芸は、よく(かなあ?)知られているものもあり、筆者が丁稚揚げたものもあります。とはいえ、現実に存在しているかも。
いちおう、アイキャッチは日の丸です。宴会芸では、わざわざ生理休暇中の接待仲居(コンパニオンという言葉も1961年にはなかった)を呼び出して。逆立ちさせて。同僚が国歌斉唱に合わせて恭しくずり上げていく。ひでえネタ。
すぐには着手せず。もうひとつのPLOT『ちょんの間』が固まってから、おもむろに打鍵開始です。
創作メモ:NTRではなくて
出会い。というものでしょうか。過飽和状態になっていて、ふとした刺激で結晶化。
通勤途中にあるポスター。何か月も目にしていました。
野良猫を捕獲して不妊手術を施してリリースする。手術施行済のマーキングとして、耳の先を桜の花びら形にカットする。
ずっと見ていて。ふうん、そんな取り組みもあるんだと。
ところが。本日。ふと、気になるローマ字が目について。
NTRでなくて、TNR。Trap Neuter Relase。
捕まえて、不妊手術をして、解き放つ。
一気に妄想が膨らみました。
男の場合は、後述。
妊娠の心配がなくなった娘を、野放しにする。視点を変えれば、飢えた男の中に投げ入れる。
猫の場合は、耳の先っぽに切れ込みをいれるのですけど。
少女の場合は、耳にタトゥーとか?
これ、民族浄化とかに絡ませると、かなりヤバイ方向へ行っちゃいます。
しかし。他に、こういうシチュエーションを(小説上で)合理化するパターンがなさそうです。
ちなみに。
クローン(記憶植え付け)少女を「人工的生産物だから人間ではない=やりたい放題」というネタは、漫画で見たことがあります。クローンの耳の後ろにはバーコードのタトゥ。娘のクローンを作って、アレコレ。最後には、オリジナルとクローンが(父親の手で)掏りかえられて、実の娘が実の父親にアレコレされて、クローンが「パパに首ったけの愛娘」になるという。バーコードの描写で一発ネタ明かし。
なので。二番煎じ回避で、なにか作れないかと思案中です。
男に対する処置ですが。性長途上の少年なら、玉抜きして男の娘にしてしまえば、劣等民族のDNAが撒き散らされる懸念はなくなりますね。
オッサンとかは……豚の餌にするのは、可哀そう。なにか考えましょうか。
とりあえずは。NTRぢゃなくてTNRという、アナグラムに触発されたネタでした。
追伸
動物を人間に置き換える妄想で、世間一般はともかく、筆者が昔から痺れているのが競馬ですね。
人間の年齢で十歳になるかならずのうちから、「馴致」と呼ばれる調教が開始されます。素っ裸にするだけでは物足りず、猿轡をはじめとするハーネスで拘束して、鞭で追い回す。そして、人間なら十二歳になるやならずで大勢の観衆の前に引き出されて、重荷を背負って走らされる。怠けると、容赦なく鞭です。くううう……御飯、三杯目おかわり!
こちらは『TNR』をキーワードにした(AIが引っ掛けた)作品
こちらは『NTR』ををキーワードにした(AIが引っ掛けた)作品

通勤途中にあるポスター。何か月も目にしていました。
野良猫を捕獲して不妊手術を施してリリースする。手術施行済のマーキングとして、耳の先を桜の花びら形にカットする。
ずっと見ていて。ふうん、そんな取り組みもあるんだと。
ところが。本日。ふと、気になるローマ字が目について。
NTRでなくて、TNR。Trap Neuter Relase。
捕まえて、不妊手術をして、解き放つ。
一気に妄想が膨らみました。
男の場合は、後述。
妊娠の心配がなくなった娘を、野放しにする。視点を変えれば、飢えた男の中に投げ入れる。
猫の場合は、耳の先っぽに切れ込みをいれるのですけど。
少女の場合は、耳にタトゥーとか?

これ、民族浄化とかに絡ませると、かなりヤバイ方向へ行っちゃいます。
しかし。他に、こういうシチュエーションを(小説上で)合理化するパターンがなさそうです。
ちなみに。
クローン(記憶植え付け)少女を「人工的生産物だから人間ではない=やりたい放題」というネタは、漫画で見たことがあります。クローンの耳の後ろにはバーコードのタトゥ。娘のクローンを作って、アレコレ。最後には、オリジナルとクローンが(父親の手で)掏りかえられて、実の娘が実の父親にアレコレされて、クローンが「パパに首ったけの愛娘」になるという。バーコードの描写で一発ネタ明かし。
なので。二番煎じ回避で、なにか作れないかと思案中です。
男に対する処置ですが。性長途上の少年なら、玉抜きして男の娘にしてしまえば、劣等民族のDNAが撒き散らされる懸念はなくなりますね。
オッサンとかは……豚の餌にするのは、可哀そう。なにか考えましょうか。
とりあえずは。NTRぢゃなくてTNRという、アナグラムに触発されたネタでした。
追伸
動物を人間に置き換える妄想で、世間一般はともかく、筆者が昔から痺れているのが競馬ですね。
人間の年齢で十歳になるかならずのうちから、「馴致」と呼ばれる調教が開始されます。素っ裸にするだけでは物足りず、猿轡をはじめとするハーネスで拘束して、鞭で追い回す。そして、人間なら十二歳になるやならずで大勢の観衆の前に引き出されて、重荷を背負って走らされる。怠けると、容赦なく鞭です。くううう……御飯、三杯目おかわり!
こちらは『TNR』をキーワードにした(AIが引っ掛けた)作品
こちらは『NTR』ををキーワードにした(AIが引っ掛けた)作品