Interrupt Report 2:幼なマゾの契り

 どうも、今回はペースが遅いです。気が乗らないんじゃなくて機が乗っているからです。
 どういうことかというと、リンク先の記事の末尾を参照→
 それはさて措き。
 今回の御紹介は前回の続きとなる章です。


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訓練と調教

 裏庭の一画に、細長い屋根が建っている。というのも、おかしな表現だけど。かべが無いんだから、小屋じゃない。その屋根の下にほられたミゾが、生徒の便所。教官の宿舎になってるカマボコのほうにはアメリカ式の立派なトイレがあるけど、生徒は使用禁止だ。
 使用禁止といえば、フロもそうだ。古株の生徒の話だと、カマボコにはシャワー室というのもあったそうだ。だけど、水道も電気もガスもないんだから、宝の持ちぐされ。つぶして、しん室や広間を広げたそうだ。
 じゃあ、フロはどうしてるかというと、裏庭のすみにドラムかんの五エ門ブロがある。入れるのは教官だけで、俺たちは残り湯で身体のアカをこすって落とすだけ。
 さらに残った水が、ミゾに落ちた大きいやつを流すのに使われるんだ。だから、時間も回数も制限されてる。
 年長の男子から十二三人がいっせいにしゃがんで用を足す。終わったやつはぬけて、そこを、年少者、女子の順でつめていく。
他の連中は女子も平然とシャアシャアブリブリやってるけど、おれたち新入りは悪戦苦とう。そりゃ、昨日も昼と夕方とねる前に使ってるけど、小のほうだけだったから。
 その小も、おれ以外の三人は大変だったんだぞ。野ションはだれだって経験してるけど、オトナの男に見られながらってのは初めてだもんな。
 コンクリに竹刀で下腹部をつつかれたり、ソノより年上の貞女なんか、割れ目の中にある(らしい)おし●この穴をコヨリでくすぐられて、ようやくだった。
 おれはU字輪っかで針金をつっこまれてても、わりあい簡単に出来た。焼けるようなくすぐったいような痛みがあって、そのし激のせいで固くなって、そこからは簡単じゃなくなったけど。
 大きいのは朝だけで、昼間は木の棒(おれだけスリコギ)でふさがれるから、うんと力んで、なんとか出せた。
 それから、男子はチンぶくろ、女子は縄フンドシを自分の手で着けて。おれはU字輪っかも。これを自分で装着するのは、結構むずい。いじってるうちに固くなったりすると、必死に九九を唱えなきゃ。
 教官が点検して、特に女子はフンドシがゆるかったりすると、結びこぶが割れ目に食いこむまでしめ上げられる。そうされると一日じゅう大変なんだと、これは後からソノに聞いた。ただ痛いだけじゃないらしいけど、それ以上の具体的なことは教えてくれなかった。
 身支度(?)が整ったら、すい事係の女子三人を除く生徒全員が、鉄条もうの外にある畑で農作業。半裸で野良仕事はそ開先でさんざんやらされたことだけど、チンチンに太い針金をつっこまれて、こう門にはスリコギなんてのは、もちろん初めてのくつじょくだし痛いし。
 おれは身体を動かしながら、ずっとソノを目で追いかけてた。あいつが女の子だったなんて、まだ信じられない。まして、イガグリ頭だもんな。でも、日本一可愛いイガグリ頭だと思うぞ。
 そうそう。野良仕事で一番きついのが、野外便所で流した先にある肥ツボからの肥くみ。オケに入れて畑まで運んで、ヒシャクでまく。力仕事ってわくじゃなく、とにかくばっちい。裸で作業してるから、服は汚れないけどな(皮肉)。
 きついと言えば、山水を引いた貯水そうから台所やドラムかんブロへの水運びのほうが重労働だけど、水が飲み放題だから、生徒には人気がある――わけ、ないだろ。バッ直制で、他のやつがのんびりしてるときまでこき使われるっていうのに。
 農作業が終わったら、黄変米と食料えん助物資のオートミールとかいうやつとカボチャとそこら辺の雑草(としか思えない)と、ちょっぴりのニボシとを混ぜたおかゆ。

ほんとうに朝から夕方までふつうに学習だった。といっても、教師は帆針教官だけ。全員がひとつの教室で学年に応じた教科書をくり返し読んで、ノートなんて貴重品だからねん土を固めた石板に細いロウ石で書く。石板はノートよりすこし大きいだけだから、いっぱいになったらボロ布で消す。そ開前の学校と同じだ。
 自習してて分からないことがあったら、帆針教官のところへいって教えてもらう。この人は、生徒をいじめたりはしない。他の教官からかばってもくれないけど。
 昼に休けいが一時間あるけど、空きっ腹を抱えて外で遊ぶのは、年少者の一部だけ。勉強してるやつも少なくない。
 みんな、すごく真けん。なのも当然だった。月末ごとにテストがあって、六十点以下だったらチョウバツを受ける。ふつうの学校だったら、チョウバツといってもビンタとかろう下バケツとか、厳しくてもホウキ正座(ひざの裏にホウキをはさむ)だけど、ここでは竹刀がいちばん軽くて、革ベルトだったり、チンチンにオキュウとか、樹にひと晩縛り付けるとか。冬だったらこごえるし、夏は全身を虫に射される。
 だから、おれも必死に教科書をにらみつけるんだけど、そ開してるときはろくに授業を受けてないし、一年前からはまったく勉強してないから、チンプンカンプンだ。ふろう児になってから身に着けた世間知ってやつは、通用しない。
 そうそう。ずっと気になってたスリコギを立てたイスだけど。すくなくともこの日は、だれも座らされなかったし、革バンドで縛り付けられることもなかった。これはチョウバツとか特別な場合にだけ使うんだそうだ。それを教えてくれたのは 織倍勝介おりべかつすけって同い年のやつだけど、どういうのが特別かというのは「そのときなれば分かるよ」だとさ。
 教室で半日を過ごせるのがどんなに幸せかというのを、翌日に思い知らされた。

 収容所での三日目は、教室での自習じゃなくて、広い庭で職業訓練を受けさせられた。男子はほぼ全員だけど、女子は半数の七人だけ。かん別所から来た二人は除外されて、ソノは入っていた。
「ふろう児をやとってくれる所など、金のわらじでも見つからん。芸人になってサーカスや見世物小屋で客に笑われながら生きていくのが精いっぱいだ。だから、そういう芸を仕こんでやる」
 親方にしぼり取られるクツみがきだって路上立売だって、これ以上増えたって客は増えないし、新聞配達なんかは身元保証人がいないとダメだし。女の子は夜の商売があるって聞くけど、どうやらオマンコと関係あるらしいと、おれにも分かってきた。やりたがらない子も多いよな。
 でも、だからといって。おれたちが仕こまれた芸ってのは、大道で演じたら一発でけいさつにしょっ引かれるだろうくらいは、つばなれしてない子にだって分かるぞ。
 おれたちは、チンぶくろや縄フンドシを外して、ほんとうの全裸にされた。U字輪っかもスリコギも無くなって、それは快適なんだけど。
 最初に仕こまれたのは犬芸。チンチンとオテを裸の子供にやらせて、何が面白いんだろうって、最初は思ってたけど。とにかくヒワイでくつじょく的だというのが、次第に分かってきた。
 基本姿勢はオスワリ。尻を地面に着けて、軽く開いた足の間に両手をついて。
 それからチンチン。これも犬と同じ。口を半開きにして舌を出して、ハッハッハッとうれしそうに息をはかなきゃならない。中腰になって、しっぽの代わりに尻をふらされる。
 その後が、人間犬にしか出来ないマンマン。オスワリと同じ姿勢になって、足は筋肉がけいれんしそうになるまで開く。そして、女子は両手で割れ目を左右に引っ張って、おくの院(というんだと、初めて知った)まで『ご開帳』しなきゃならない。
 他の子は何回もやらされて手慣れたものだけど、それでもはずかしそうにしている。
 ソノは、うすい乳房を竹刀の先でぐりぐりこじられて、泣きそうな顔になって、『ご開帳』した。
 男子にはマンマンが無いけれど。マンマンをしてる女子とななめに向かい合って(正面は観客に開けておく)、両手を後ろについて腰をうかして――『ご開帳』を見ながら、チンチンを固く大きくしなくちゃならない。犬だから、手を使えない。女子は手を使わないとマンマンが出来ないんだから、こういうのをご都合主義というんだな。
 チンチンなんて、自分の思い通りにならない。なるんだったら、九九を覚える必要が無い。とは思ったんだけど。西司照代にしつかさてるよのマンマンを見せつけられたら、これ以上はないってくらいになっちゃった。
 割れ目の内側にビラビラがあって、そのおくのつき当たりに開いてる穴がチンチンを入れる所らしい。上のほうにある小さな穴からは、おし●こが出るんだろう。小さビラビラが上で合わさってるとこが盛り上がってて、小豆よりも小さいけれどチンチンの先っぽ見たいのが顔をのぞかせてる。何だろう、これ?
「なんだぁ……おまえ、ぬらしてるのか?」
 コンクリのすっとんきょうな声。ソノの股間をのぞきこんでる。
 しゃがみこんで、『ご開帳』に指をつき差した。
「動くな」
 後ずさろうとするソノをしかりつけて、指を中で動かす。
「ますますぬれてくるな。いん乱なガキだ」
 いん乱てのは、ヒワイでミダラなことが好きって意味だよな。ソノが、そんなこと、あるもんか。
「いや、いん乱というのは当たっておらんだろう」
 所長の意見に賛成したのは、これが初めてだった。
「ろ出きょうか、あるいはマドかもしらん」
 コンクリんが、きょとんとする。
「ガラスをはめた窓ですか?」
「いやいや。男に痛いことやはずかしいことをされて喜ぶ女のことをマドイストというのだ」
「へええ。そんな女がいるんですかね」
「物の本には、そう書いてあるがね。女をいたぶって興奮する男をサゾイストという。これはいくらでも実例がある。そうだろう、薄野教官」
「所長は男女を問わずじゃないですか」
 コンクリの半じょうには取り合わずに、所長が持説を続ける。
「サゾイストが存在するのだから、マドイストだって居るだろうさ」
「そうですかねえ。こいつだって、ぶったたいたら、他のガキと同じ――いや、それ以上に泣きわめきますよ」
「女のいやよいやよは好きのうちというやつかもしらんな。表情や声にだまされず、マンコを良く観察することだな。舌の口は、うそをつかんよ」
 こいつらの話はチンプンカンプンだけど、ソノがぶじょくされているのはわかった。でも、どう反論していいか分からないし、どんな悪口だって、竹刀でたたかれるよりはマシだから……ソノの目をじっと見つめてはげましてやるだけにしておいた。
 ひとしきりサゾマド談議が終わって職業訓練の再開。訓練てよりも、調教だ。
 ここからは、男子が二組に分けられた。女子といっしょに芸を覚える組と、教官の代理を務める連中と。
 覚えさせられたのは、オアズケ、ヨシ、アムアム、ゴックン。胸くそ悪い。
 教官の前にオスワリして、「クウン」とか鳴いて。ヨシと言われたら、目の前のチンチンをくわえる。射ち方用意ヨシのもあれば射ち方ヤメのもある。女子の前の大ホウは用意ヨシで、男子の前にあるのは、おおむね垂れてる。例外は、おれの前に立った所長くらい。
 チンチンを口に入れるなんて、男としてがまんできないくつじょくだ。女だって同じだと思う。なのに。
「ますます下の口からよだれが垂れているな」
 ソノの正面に立ったコンクリが片足を上げて、股間をつま先でつついてる。
 自分がぶじょくされたみたいで腹が立ったんだけど――ソノには聞こえていないのか、目を閉じてひたすら頭を前後にゆすっている。コンクリのチンチンが口を出入りしている。腰をこんなふうに動かせと、おれが若ババに言われた通りの動き方を頭でしている。ソノは頭の動きに合わせるように、腰も左右にくねらせている。コンクリは足を動かしていないから、割れ目を自分からこすり付けているってことだ。
「よそ見するな」
 所長に金玉を軽くけられて、おれは目の前の射ち方用意ヨシに向き直った。やればいいんだろ、やれば。
 口を開けて顔を近づけ、ぱくんとくわえた。むわあっと、オトナの男の体しゅうが鼻にあふれた。なんだか、きゅろんとした歯ざわり、舌ざわり。
「かむんじゃない」
 チンチンをふんづけられた。
「もっと舌をからませろ。ていねいにしゃぶれ。頭を前後にゆすれ。くちびるをすぼめて全体をすすりこめ」
 あれこれ言われて、頭がこんぐらかる。とにかく、口の中の棒こんにゃくみたいなやつを、あむあむぺろぺろずぞぞぞ……。
「手は後ろで組んでおれ」
 手を使ってしごいたり金玉をもんだりすると、白いおし●こ(精液というんだそうだ)が早く出るって――後でソノか言ってた。どうして、そんなことを知ってるんだ。そんなことまで、あのウソ親せきの医者に仕こまれてたのか。は、置いといて。
「ええい、下手くそめ」
 所長は両手でおれの頭をおさえつけて、激しくゆすぶりながら自分でチンチンを出し入れしはじめた。鼻がめりこむほど激しく腰を打ちつけてくる。
「んぶぶぶぶ……」
 脳しんとうを起こしそうだ。
 棒こんにゃくがいっそう太く固くなって……びゅくびゅくっとふるえたと感じたと同時に、のどのおくに水鉄ぽうを射ちこまれたような感覚があった。
「うげ……うっぷ……」
「はき出すんじゃない。そら、ゴックン」
 カルキとスルメを混ぜたようなにおいが鼻に広がる。こんなえぐいのを飲めっていうのかよ。でも、飲まないと何をされるか分からない。口の中につばをためて、のどのおくに引っかかっているやつを飲み下した。
これで、オアズケ、ヨシ、パックン、アムアム、ペロペロ、ガシガシ、ゴックンがひと通りは終わった。ふた通り目は無し。
 犬芸の調教が終わっても、職業訓練は続けられる。次はブタ競争。
202-002_1.jpg  太い二またのつり針みたいのを鼻の穴に引っかけられて、頭に巻いたハチマキに輪ゴムでつながれた。ハチマキの後ろからもひとつだけつり針を付けた輪ゴムが左右に引きのばされて、鼻の穴に引っかけられた。鼻が上下左右にひしゃげて、たしかにブタ顔だ。
 それから、四つんばいになって。手首を二の腕に、足首は太腿に縛り付けられた。ひじとひざでハイハイしなきゃならない。短い四つ足は、ますますブタそっくり。
 太くて長い針金の付いた小さめのスリコギが、男女ともこう門につっこまれた。針金は視力検査の輪っかみたいに曲がっていて、反対のはしには先たんが丸められたパイプがかぶせてある。
 男子は、それをチンチンにつき差さされた。要するに、おれが着けさせられていたスリコギとU字輪っかだ。
 男子のパイプは直径が一センチくらいなのに対して、女子のはスリコギくらいに太い。それを割れ目のおくのチンチンを入れる穴におしこまれた。だれもそんなに痛がらなかった。
 最後にひとりずつ、針金の底が地面をこするように曲げ具合を調節された。
 庭一面に、レンガやら丸太やらが並べられた。それを乗りこえて庭のはしからはしまで四つんばいで進む障害レースだ。
 女子は七人で一組。男子は二十六人もいるので、八人と九人で三組。それぞれの組の一等には、夕食に玉子焼きを追加してもらえる。逆に、ビリは夕食ぬき。そりゃあ、真けんになるよな。ただし、競争は一回じゃない。三回やって、その結果を紙に書いておく。全部の競争が終わってから、折り返されている紙のはしを開くと、どれが本番だったか分かるという、あみだクジみたいなやり方だ。
 最初は女子の組からだったけど。
「おまえはぼう主頭だから、男子と競争しろ」
 ソノが外されて、おれのいる組に入れられた。まあ、年下の子も混じってるから、そいつにはかわいそうだけど、ソノはビリをまぬがれるだろう。
「ヨーイ、ドン!」
 六人の女子がいっせいにかけ出した――んじゃなく、よちよち進み始めた。
 ブタ顔にされた女の子がブタみたいによたよた進むのはコッケイだけど、なぜかチンチンが固くなってきて、針金のせいですごく痛い。
 並べられた丸太を乗りこえるところで、六人が同じように立ち止まった。顔をしかめたり息をつめたり。なかなか進まない。針金がつかえてるんだ。無理に進もうとすると、スリコギとパイプで二つの穴をこじられる。それがつらいみたいだ。
 最初に通過したのは、木津芽子きづめいこという、おれと同い年の子。二番手が、マンマンのときにおれに見せてくれた照代だった。この子、四つんばいになると、腹がぷっくりつき出ている。
「照代も、なかなかがんばるな」
「もう五か月でしょ。こういう遊びは、お腹の赤ちゃんに良くないですわ」
「なあに、これくらいで流れるひ弱な子は要らん」
 所長と若ババの会話で、照代がにんしんしてるというきょうがくの事実が判明した。あいつだって、まだ子供だぞ。
 おどろいたのは、おれとソノだけらしい。会話は聞こえてるはずなのに、だれも知らん顔をしている。
「ああああん……」
 苦しそうなうめき声をあげたのは、 武水蘭子たけみずらんこだった。照代と同じ最年長者だ。丸太に輪っかをのし上げて、腰を前後にゆすっている。そんなことをしたら、穴をこじられていっそう苦しくなるだろうに。
「いい、いいよおおお……きもちいいよおお」
 ええっ……?!
 気持ち好いって聞こえた。
 今度は、おどろいてるのは、おれひとりみたいだ。ソノはうつむいて顔を赤くしている。ああいうふうにしたら、ほんとに気持ち好いんだろうか??
 三分くらいで、蘭子をのぞく五人は丸太を乗りこえた。身体を横向きにして輪っかを丸太に沿わせて転げ落ちたり、後ろ向きに背中でずり上がったり。
 散らばっているレンガはよけて通れるから、丸太みたいな苦労はなかった。
 五人がゴールインしても、蘭子だけは丸太でつっかえている。
「いい加減にしろ。腹の子が流れるまでなぐられたいのか」
 コンクリにどなられて、蘭子も丸太を乗りこえた。正面からのし上げて、わざと手足を宙にうかせて――針金が体重でひしゃげてしまった。ので、そこから先はレンガなんか無視して一直線に進めた。ううむ……その手があったか。でも、なんで最初からそうしなたったんだろう。気持ち好いってのは、負けおしみじゃなかったんだ。
 ずいぶん時間がかかったけど、とにかく二組目の競争。ぼくとソノの組だ。
「ヨーイ、ドン」
 スタートラインに並ぶまでに分かっていたけど、前へ進むだけなら針金もたいしたさまたげにはならない。チンチンにびみょうなしん動が伝わって痛くすぐったいけど、それだけのことだ。
 でも、ソノはしん動がつらいらしい。丸太に取り付くのがひとりだけおくれた。
 丸太だって、乗りこえるのが困難な障害というほどじゃない。いきなり、これをやらされていたら、ずいぶんと苦しんだかもしれないけれど。高圧放水を浴びせられたり、焼印をおされたり、ひと晩じゅう大股開きで二つ折りにされていたり、変ちくりんな装具を着けさせられたり、竹刀でたたかれ金玉をけられ……苦痛とかくつじょくには、ずいぶんとめんえきが出来ている。
 男子八人が一団となってコースの半ばに差しかかったとき、ソノはやっと丸太をこえたことろだった。このままだと、確実にビリだ。今回が本番とは限らないけど、本番だったら食事ぬきだ。一回ぬかれたからって、命に係わることじゃないし。でも、ソノの目の前でおれだけが飯を食うのは……おれが、つらい。
 なんて迷いながら、のろのろ進んでたら。前をよくみてなかったので、レンガの角に輪っかを引っかけちまった。ずにゅっと、チンチンから針金がぬけかけて……痛くすぐったい中に、はっきりと快感があった。
 そうだ。蘭子の前例があることだし。おれは、すこしバックして、また輪っかをレンガに引っかけてみた。ずにゅ……気持ち好い。またバックして、姿勢を低くして針金をチンチンにおしこんで、またレンガに引っかけて。チンチンが固くなってくると、ますます気持ち好い。
「真三。おまえは、ベッドにこう束した後で竹刀を五発くれてやる。十発にされたくなかったら、さっさと進め」
 コンクリにどなられて、我に返った。ソノの尻が三メートル先にあった。ので、真後ろからついて行った。
 短くされた足がぴょこぴょこ動いて、そのたびに尻が左右にくねる。割れ目からのぞく太いパイプも、すごくエロチックだ。あまり見つめ過ぎるとチンチンが固く痛くなってくる。でも、見続けてしまった。
 残り二組も競争が終わったところで、おれと蘭子は列外にされた。
「真面目に競争をしなかったから、残りの競争には関係なく飯ぬきだ」
「はい、ありがとうございます」
 後出しジャンケンみたいなコンクリの宣告に、蘭子はすぐに返事をした。どんなひどいことを言われても、この返事しか許されていない。
 おれも、何秒かおくれて同じ返事をした。三分の一の確率でしかないけど、ソノを護ってやれたというほこらしさが混じっていた。
 蘭子は、さらに追加のチョウバツを課された。頭の後ろで手を組んで上体を垂直に保ったままでの、ひざのくっしん運動を百回。それだけでも厳しいと思うけど、丁字形のくいを両足でふんで、その上でやらされる。くいの垂直に立った部分は先細りになっていて、長さが五十センチで直径は四センチ。ひざをいっぱいに曲げると、こう門がくし差しになる。
「マンコはたん能しただろうから、ケツ穴でも遊ばせてやろうという親心だ」
「はい、ありがとうございます」
 さっきの返事は不満たらたらが顔に出ていたけど、今度はほんとにうれしそうにも見えた。まあ、こいつは十四人の女子の中で飛び切りのブスだから、うれしそうな顔もオニがアカンベエをしてるみたいだけどな。
 なんて、他人のことをどうこう言ってる場合じゃない。
「おまえは苑子と仲が良いから、二人には所長どのに特別の芸を仕こんでいただくとしよう」
 結局、ソノまで巻きこんじまった。
 おれとソノはブタ競争の列から引きはなされて、裏庭へ連れて行かれた。コンクリはその場で思いついたような言い方をしたけど、特別の芸のための準備は、すでに整っていた。バケツと火ばしと縄と赤いチャンチャンコと兵隊ぼうと鞭。鞭は細長い一本の革。六年くらい前に見たサーカスで、もうじゅう使いがふり回していたのとそっくりだった。
 チャンチャンコはソノが着て、おれが兵隊ぼうを後ろ前にかぶる。長い縄はソノの首に巻いて、おれが反対のはしを持つ。鞭は使わないと知って、ひと安心。
 そして、ひっくり返したバケツの底をおれが火ばしでたたきながら、所長から口移しで口上を述べる。
 カンカンカンカン……
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい。サルまわしでござーい」
 サルの仕種を真似ながら、ソノが飛んだりはねたり。
 おれはアホらしいだけで済むけど、ソノがかわいそうだ。
「はい、ソノちゃん。でんぐり返り。今度は後ろ向き」
 ソノは後ろでんぐり返しが出来なかった。
「ね転がったまま、足を開いて顔をかくせ」
 所長は、とにかくヒワイな形にさせようとする。
「はーい。頭かくして尻かくさずならぬ、頭かくしてマンコかくさずでござーい」
 かくした手の間から、ソノがくちびるをかみしめているのがうかがえた。
 宙返りをしろだの、番がさの上でボールを回せだの、所長は次々と無理難題をふっかけてくる。おれだって出来ない。
「サルには、身体で芸を覚えさせるのだ」
 所長が鞭をおれに持たせた。
「それで存分にたたいてやれ」
 おれは鞭を投げ捨てた。
「仲間をたたくなんて、出来ない。たたくんだったら、おまえがおれをたたけよ」
「そうか」
 所長のやつ、おこったふうでもなく鞭を拾い上げて――いきなり、ソノをたたいた。
 ぶゅんん……バチイン!
「きゃああっ……!」
 不意打ちに胸をたたかれて、ソノは胸をかかえてしゃがみこんだ。
「やめろ!」
 所長はソノをけって転がして、背中をふんづけた。身動きできなくしておいて。
 ぶんっ、バチイン!
 ぶんっ、バチイン!
 ぶんっ、バチイン!
 立て続けにを尻を打ちすえる。
「くそっ……やめろ!」
 所長の腰にしがみついて引きはなそうとしたけど、力でかなうはずがない。
 おれをつき飛ばして、また鞭をふり上げる。
「お願い、兄ちゃん。あたしをたたいて!」
 ソノがさけんだ。
「ええっ……?!」
 いろいろと、おれはびっくりした。
 ソノに『兄ちゃん』なんて呼ばれたのは初めて。しかも『ぼく』じゃなくて『あたし』。ほんっとに、ソノは女の子になっちまった。なんてのは、いろいろの付け足し部分。おれに自分をたたいてくれってのが、一番のびっくり。
 だけど冷静に考えると――所長に目茶苦茶にたたかれるよりは、おれに手加減されながらのほうが、ずっといいかな。
「小ぞう、どうする? 好きな女の願いをかなえてやるか?」
「……はい、ありがとうございます」
 所長は満足そうにうなずいて、おれに鞭をにぎらせた。
 ソノは実は女の子だったけど、おれの弟分に変わりはない。好きな女なんかであるもんか。でも反論したって、おこらせるだけだ。それに、言われてみると……おれはソノが好きだし、ソノは女の子だ。
「何をしている。さっさとたたけ……いや、その前に」
 所長はソノを立たせ、頭をかかえる姿勢を取らせた。
「よし、しょげているサルを存分にセッカンしろ」
 ごめんよ。心の中で謝りながら、おれはソノの尻をたたいた。
 ペチン。
「何をしておる。本気でたたかんか。これくらいだ」
 ぶううん、バッヂイイン!
「あぐっ……」
 所長のやつ、ズボンの革ベルトを鞭の代わりにして、おれの尻をたたきやがった。
 ぶううん、バッヂイイン!
「まごまごしとると、こいつで愛しい女房をたたいてやるぞ」
 ソノは女房なんかじゃないやい。けど、音から判断すると、鞭よりも革ベルトのほうが痛そうだ。なにより、わん力がちがう。
「ソノ、がまんしろよ!」
 おれは力一ぱいに鞭をふるった。
 しゅん、バチン!
「きゃあっ、痛い……」
 ソノは悲鳴を上げたけど、ウソだとは思わないけど、余ゆうのある悲鳴だった。
「ガキは非力だから、しょうがないか。数を打て」
 しゅん、バチン!
 しゅん、バチン!
 しゅん、バチン!
 所長にたたかれた太く赤い筋の上に、ぼやけた細い筋が何本も重なっていく。所長は焼印の火傷をさけてたたいてたけど、おれにはそんな器用な真似はできない。火傷が治って肉が盛り上がったとき、形がくずれないだろうか。不名よ極まりない刻印だけど、ぐちゃぐちゃになってるよりはきれいなほうが、まだしもだと思う。
「よかろう。サルらしい真っ赤なケツになったな」
 所長が満足そうに言ったのは、二十発ちかくもたたいてからだった。でも、まだ終わりじゃなかった。
「ついでだ。鞭打ちの指導をしておいてやろう」
 さすがに、かんにんぶくろのオが切れた。
「ソノがちゃんと芸を出来ればいいんだろ。そっちを指導して……ください、所長どの」
 最後は、切れたオをあわてて結び直した。
「メスザルが泣きさけぶのも芸のうちだ」
「そんなの、おれには出来ない!」
 やっぱり切れちゃったぜ。
「では、こうしよう。わしがおまえを一発たたく。同じことを、おまえが女房に三回くり返すのだ」
「…………」
 損得かん定で言えば、おれがたたかれるだけ損だ。でも、ソノが感じる痛みをおれも感じるとしたら、オアイコって考え方もできる。
「所長どの。お兄ちゃんをたたかなくても、お兄ちゃんはあたしをたたいてくれます」
「サルは口を利くな」
 所長がソノに向かって鞭をふり上げたので、あわててソノの前に立った。
「おれをたたいてください。ソノは、おれがたたきます」
「ふふん。なかなか素直になったな。愛しい女房のためか。それとも、案外におまえもマドイストかな」
 なんとでも言え。おれはたたかれるために、所長に尻を向けた。
「そうではない。こっちを向いて、鞭は置いておけ」
 正面をたたかれると分かっても、命令に従うしかない。さらに、両手を頭の後ろで組んで、足も開かされた。すごく不きつな予感しかしない。
 ぶううん、バッヂイイン!
「ぐっ……!」
 胸を水平にたたかれて息がつまった。
 ぶううん、バッヂイイン!
 ぶううん、バッヂイイン!
 立て続けに五発たたかれた。ということは、おれはソノを十五発もたたかなきゃならない。
「これからが本番だぞ」
 所長が革ベルトを下に垂らした。
 不きつな予感が当たった。ひざがガクガクふるえる。
 ぶううん、バッヂイイン!
「うあああっ……!」
「お兄ちゃんっ……」
 ベルトは太腿をかすめて股の付け根の右側に当たったけど、金玉にもすこし当たった。だけで、もん絶寸前。両手で股間をおさえて、おれはのたうち回った。
「情けないやつだ。直げきしたら玉が破れつして殺しかねないから、わざと外してやったのだぞ。さっさと立て。それともけりつぶされたいのか」
 股間をかばっている手を後ろからつま先でつつかれて、おれは歯を食い縛って立ち上がった。でも、すぐに元の姿勢にはもどれず、何回かケンケンをして、やっと痛みはがまんできるくらいまで治まった。
 ぶん、バチン!
「…………!!」
 軽い打ち方だったけど、今度は直げきされた。おれは、また地面に転がった。
「女には金玉が無いから、手加減はするな」
 おれは片手で金玉をおさえながら、片手はひざに当てて、よろよろと立ち上がった。あまりに痛くてケンケンもできない。
「ひとつ、大切なことを教えておいてやろう」
 背中をたたくときは、背骨に当たらないように気をつけろ。せきずい神経を傷つけると、手足が動かなくなってカタワになる。下手をすると殺してしまう。しかし、それ以外は安全だし広い面積があるから、鞭を水平かななめにふるえば、たくさんたたいてもだいじょうぶだ――という、ぞっとする教えだった。
「なんなら、今から身体で体験してみるか。それとも、今すぐ女房をたたくか」
 ソノをたたかなくて済むのなら、背中を百発たたかれたって平気だ。でも、そうしたらソノを三百発も鞭打たなければならない。
 おれは腹綿をにえくらかしながら、鞭を拾い上げた。
「貧相な乳房に十五発、中古ちゅうぶるいん乱マンコに六発だぞ」
「…………」
 ソノがおれに向かって、鞭を正面から受ける姿勢を取った。
「ソノ、ごめんよ……」
「余計なことは言うな。おまえは、出来の悪いメスザルをしつけている太夫だ。それらしい言動をしろ」
「うきいい……」
 ソノがサルの鳴き真似をした。おれをかばってくれたんだろう。ソノの心配りに応えるためには……おれは、ソノを鞭打たなければならないんだ。
 おれは心をオニにして鞭をふるった。
 しゅん、バチン!
「うっきゃああっ……!」
 サルの泣き声に似ているけど、たしかに悲鳴だった。この悲鳴を、あと二十回も聞かなきゃならないい。
 しゅん、バチン!
「うっきゃああっ……!」
 しゅん、バチン!
「きいい……」
 しゅん、バチン!
「きひっ……」
 だんだんとソノの悲鳴は小さくなって、五発目からは声を出さなくなった。
 そのぶん、おれは罪悪感がうすれて、ソノのささやかな乳房を機械的に鞭打ち続けた。ささやかでも、鞭が当たるたびにぷるんとはずむ。
「ちょっと待て」
 十三発目に制止された。
 所長はソノの足をふんづけるんじゃないかってくらいに近づいて、曲げた中指をソノの割れ目に差し入れた。
「あ……」
 ソノが、びくんと身をふるわせた。
 所長はごにょごにょと手を動かしてから指を引きぬき、目の前にかざした。ねとっとぬれている。所長が親指と中指をくっつけてはなすと、糸を引いた。
「これだけ鞭打たれて、ぬらしておるとは。まさしくマドイストだな。そんなに痛いのが好きなのか」
「ちがいます!」
 ソノがもう然と否定した。これまでは何を言われても悲しそうにうつむいてなみだをうかべるだけだったのに。
「痛いのはいやです。お兄ちゃんが、あたしのために受けなくてもいいセッカンをされて……うまく言えないけど、あたしと痛みを分かち合ってくれてるのが、うれしいんです」
「では、これはうれしなみだか」
 所長は指を二本にして、またソノの割れ目をえぐった。親指で下腹をおさえるようにして、手全体をぐりぐりと動かした。
「くうう……」
 ソノはまゆをぎゅっと寄せてたえている。チンチンをねじられたら痛いよな。それと同じなんだろう。
「おや……おまえはおっ立てているじゃないか」
 えっ……?
 下を見ると、チンチンが固くなって、腹にくっつきそうになってる。おれは、ソノがいじめられるのを見て、それともおれ自身がソノをいじめて、それで……興奮してるんだろうか。そんなばかな。
「さてはサゾか。いや……サゾとマドが一人の中に同居しているとも読んだ記おくがあるぞ。おまえは、まさしくそれだな」
 決めつけるな。いじめるにしてもいじめられるにしても、それで興奮するなんて変態だ。おれもソノも変態なんかじゃない。
「よかろう。まだ乳房に二発、とっておきのマンコには六発が残っている。思い切りマド女房をなかせてやれ」
 何度も女房なんて言われてると、心の中ですら反発する気力が失せてくる。さっさと終わらせないと、どんな無理難題をふっかけられるか分からない。
 ソノ、ごめんよ。また心の中で謝って、おれは鞭を水平に構えた。
 ソノは両手を頭の後ろで組んで足を開いて、しゃんと立っている。なみだでぬれているんだろう、きらきら光るひとみが、まっすぐおれを見ている。
 しゅん、バチン!
「…………」
 ソノは身体をゆるがせもせずに無言でたえてくれた。可愛い乳房だけが横にひしゃげて、ぷるんともどった。
 しゅん、バチン!
 ようやく十五発を打ち終えた。でも、まだ六発も残っている。胸とは比べものにならない激痛を、ソノにあたえなければならないんだ。
 おれのためらいに気づいたんだろう。ソノが、ぐっと腰をつき出した。
「お兄ちゃん、ちょうだい。ソノのオマンコに鞭をちょうだい」
 すこし開いた割れ目からは、あのとろっとした液が垂れている。だけど、おれも……チンチンが立ったままだ。
 それぞれの心の中は、他人には分からない。仲の良い女の子を鞭打って興奮している男の子と、男の子に鞭打たれて喜んでいる女の子――他人の目には、そうとしか見えないだろう。
 そんなこと、あるもんか。そう思いながら、おれは……下に垂らした鞭を手加減無しではね上げてしまった。
 しゅんん、バヂイン!
「きゃああああっ……!」
 胸を打たれていたときとはまったくちがう、はき出すような悲鳴だった。
 背筋が、ぞくっとした。それは快感とか興奮じゃない。すりガラスをつめで引っかいたときのような気味の悪さだった。チンチンもしょげ返った。
 そうか……胸を鞭打っていたときは、ソノに余ゆうがあるのが分かってたから、いけない遊びをしているようなさっ覚にとらわれていたんだ。でも、ここまでソノが痛がると、さっ覚はふっ飛んでしまう。
「さっきまでの勢いはどうした。ちょっと大声でさけばれただけで委縮しおって」
 そういう所長も、ズボンの前はぺちゃんこ。サドイストなら、興奮してるんじゃないかな。それとも、大人が本気で子供をたたいたら大け我をさせてしまうから、冷静を保って限界を見極めようとしてるのかな。
 だとしても、こいつにソノをたたかせたくなはい。だったら、おれがたたかなくちゃ。おれは二発目をソノの割れ目に打ちこんだ。
「いぎゃああああっ……!」
 ごめん、ごめんよ……おれは、ぼろぼろなみだをこぼしながら、さらに三発を打った。打ち終えると同時に、その場にへたりこんだ。
 ソノも頭の後ろで組んでいた手をほどいて、股間をおさえてひざをついている。
「すこし痛めつけすぎたかな。これでは芸を仕こむのは無理だろう」
 ようやく、バカバカしい限りの残こくきわまりない調教が終わった。だけどソノには、まだ次の苦痛が残っていた。縄フンドシだ。鞭打たれてはれあがった割れ目に結びこぶを食いこませてしめ付けなければならない。痛いから自分ではきつく結べないのだろう。所長に不合格を食らい、ぎりぎりにしめ上げられて、また悲鳴をあげた。
 おれは、もう平気だぞ。スリコギもU字輪っかも、慣れてしまった。だから、チンぶくろだって、チンチンと金玉をひとまとめにねじったらもげてしまいそうなくらい、ヒモをきつく結んだ。それでも、ソノの受けている苦しみの百分の一にもならないだろうけど。


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現在は『鬼畜米軍人』を執筆中。ここは今日中に終わって。次の休日までに『東西獅子舞』をやっつければ、あとは一車千里日本縦断往復、かな?

恒例のDLsite Affiliate キーワードは「犬芸 or 猿回し」です。「豚芸」は無かった。

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Interrupt Report 1:幼なマゾの契り

やっぱり、予定枚数では納まりませんね。

       予定/実績
その日暮し: 5枚/10枚
浮浪児狩込:10枚/ 5枚
弟分の正体: 5枚/15枚 (PLOTでは「弟は美少女)
全裸に焼印:15枚/ 8枚
空砲の恥辱: 無し/12枚 (追加シーケンス)
夜通し拘束: 無し/ 8枚 (追加シーケンス)
訓練と調教:20枚/30枚を超えて執筆中

「夜通し拘束」以後が本格的虐待のパートですから、以降も尺は伸び放題でしょう。
それは、さておき。今回は追加シーケンスの「夜通し拘束」を御紹介。


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夜通し拘束

 朝のおかゆに小さな干物が一枚加わったのが、夕食。おかゆってのは、あんまり腹持ちがしないんだよな。
 夕食後は自由時間で、教室としん室は行き来できるけど、外へ出るドアは外からカギをかけられてるし、窓には鉄格子。二つの部屋で遊ぶしかない。おれもソノも、ここの連中とはまだ打ち解けてないし、勉強もおくれてるから、みんなのじゃまにならないよう、教室のすみっこで二人くっつきあって、うす暗がりの中で教科書を読んでた。
 ソノが女の子だとわかってから、みょうに意識しちまう。しかも、おたがいに裸。いや、裸よりもはずかしい格好をさせられてる。胸がドギマギして、チンチンがピクピクしちまう。こいつの割れ目の中に、おれのチンチンをつっこめるんだよな。
 もしかして、こういうのを初こいって……いうわけねえよな。
 そんなあまったるいドギマギは、就しんの時刻が来たらふっ飛んじまった。
 教室でチンぶくろと縄フンドシを外して、自分の席に置く。木の棒もぬいて、これは水を張ったバケツに放りこんどいて。しん室へ移動。
 ベッドはカマボコ形のかべの両側から中央に向かって置かれ、左右は密着して大きなベニヤ板がしかれている。ベッドにはさまれた中央の通路に整列して、コンクリブロックに名前を呼ばれた順に、かべに頭を向けてあお向けにねる。男子と女子がとなり合うようにされた。
 おれの右側がソノで、左側は梅屋楠美>うめやくすみという最年長の女子。ソノとは二つしかちがわないのに、見た目は大ちがい。モジャモジャとツルツル、おわんとお皿。よくよく見たらソノの身体も女の子っぽい曲線をしてるけど、楠美はきれいなヒョウタン形だ。一番のちがいは、イガグリとオカッパだけど、それは本人の責任じゃない。
 半分の者がねたら、両手を広げて頭の側にある鉄パイプのわくに革ベルトで、残り半分の者がつないでいく。ここまでは予測していたんだけど。
 大章のやつ、おれの両足をつかんで開きながら持ち上げようとする。
「何するんだ。ふざけるなよ」
「そこ、うるさい」
 バシン!
 竹刀がゆかをたたく。しかられたのはおれのほうだった。
「やめろよ。やめろったら!」
 ソノはおれより非力だから、男子の手で両足を開かれて百八十度に折り曲げられ、まくら元のパイプわくの下におしこまれた。別の革ベルトが足首を巻いた。
「いやだ、はずかしい。やめてよお……」
 男言葉が弱々しい女言葉になってきた。
 ソノはベッドの上で、深く折れ曲がった『く』の字にされてる。きっと、割れ目もこう門も丸見えだろう。おれからは見えないのが残念だなんて、これっぽっちも思ってないからな。
ソノはなんとか内股にして、すこしでもかくそうとしている。
 ソノがもがくのに気を取られているうちに、おれも同じ姿にされちまった。
「くそお。なんだって、こんなことするんだよ。男のおれだってはずかしいぞ。ほどいてくれよお!」
 おれだけなら、がまんしていいけど――ソノは女の子だぞ。
「やかましい!」
 ぼぐっ……腹に垂直に竹刀をつき入れられた。
「うべええ……げふっ、ごふふっ!」
 胃液がのどにこみ上げて、それが気管支に逆流して、おれはちっ息しかけた。
「おまえらは、だまって教官の命令にしたがっておれば良いのだ」
「まあまあ、薄野教官」
 若ババが取りなして――くれてねえな。ベッドの上でおれのチンチンを見てたときと同じ目の色だ。
「きちんと教えてやれば、納得して素直に従うでしょうよ」
 若ババが生徒たちってよりも、おれとソノを見下ろしながら長広舌をふるい始めた。
「年ごろの男女が同じ部屋でねるでしょ。しかも素裸で」
 そうさせているのは、お前たちじゃないか。
「もし男女を分けても、同性同士でモモ色遊ぎにふけらないともかぎらないし……」
 男同士でもヒワイなことをするって意味だろうか。どんなふうに……こう門にスリコギを入れるんだから、チンチンだって出来るよな。でも、割れ目とこう門は同じじゃないぞ。だいいち、女同士はどうするんだ?
「たとえ一人ずつにかくりしても、ジトクこういをする不道徳者も出るでしょうしね」
 だから自分で股間をさわれないように、太腿をこすり合わせられないようにするんだってさ。めいわくってより、この姿勢をひと晩中なんてゴウ問だ。
 身体を二つに折れば面積の節約になって、少ないベッドを大勢で使えるから合理的だと、自まんして、やっと若ババは説明を終えた。
 分からないことだらけだけど。ジトクってのは自分だけが得をするって意味だろうから、人数分は無いベッドをみんなで使って他人にも得をさせてやろうってことかな。
 納得は出来なかったけど、説得されたのかな。あきらめたと言うほうが適切だけど。ソノも文句は引っこめて、しくしく泣き出した。こいつ、女だってばれてから、どんどん女々しくなってきてるぞ。
 おれたち十七人をベッドに縛り付けた(男子ばかり)十七人も八人が同じ要領で縛られて――最後の一人はコンクリが手を下した。
 おれの向かい側は曽野太一そのたいちって、つばなれしたばかりの子だ。あごを引けば、かぱっと開いた股間が丸見え。小さいチンチンと縮かんだ金玉。こう門も上向いてる。おれが見てるのに気づいて、そいつも頭を上げておれを見た。でも、無関心そうにすぐ目をそらした。
 これ、女の子でもヒワイとかじゃなくてコッケイなだけだな。
 毎晩こうされてると何も感じなくなるのか、左となりの楠美は静かに目を閉じている。右側のソノは顔が赤い。泣いてはいない。無表情なんだけど、ぼうっとしてるようにも見えた。
 教官が出て行って電気が消されて、部屋が静まり返った。就しん中の私語は禁止されてる。教官がいないんだから、すこしくらい、いいじゃないか。
「なあ、ソノ……」
「…………」
「ひどい所へ来ちゃったな。なんとかしてにげ出そうぜ」
「はずかしいよお……」
 ソノがつぶやいた。おれの声なんか耳に入ってないらしい。
 女の子だもんな。まわりを男子に囲まれて、こんな格好をさせられたんじゃ、はずかしくて他のことなんか考えられないんだろう。
 ソノ以外のやつに話しかける気にはなれなくて、おれは眼も口も閉じた。
 にげる算段とか、若ババの部屋での出来事とか、高圧放水のうらみとか――そんなことを、あれこれ考えているうちに、いつの間にかねむりに落ちて行った。

 翌朝はうす暗いうちからたたき起こされた。
 昨夜の手順の巻きもどしでこう束を解かれた。腰が痛いし、手足がガチガチ。でも、すぐに全員整列で直立不動。
「教官どの!」
 勝介が挙手をして、コンクリの発言許可を得ると。
「昨夜、塩田が実浜に話しかけていました。実浜はだまって答えませんでした」
 おれは列外に引き出されて、尻を竹刀で六発たたかれた。それくらいは、への河童だけど。
「整列休メッ」
 足を真横に三十センチ開いて、両手は腰の後ろで組む。竹刀が足の間に差しこまれて、金玉をぴたぴたたたかれても、姿勢はくずしちゃいけない――というのを、ビンタ二発で教えられた。そして……竹刀をはね挙げられて、もん絶。
 常に全員が全員を看視してるんだって思い知らされた。
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 今回は、すべての人名を遊び倒す方針です。この章では以下の2名。
 梅屋楠美(バイヤクズミ)、曽野太一(ソノタイチ)
 あと、小山大章(オヤマタイショウ)、織倍勝介(オベッカツカイ)、西司照代(ニシシテルヨ)、武見水蘭子(ブスイラン)、会鉄和子(カイテツカズ)、木津芽子(キズメコ)、石関貞女(セッカンサダメ)などなど。

夜間拘束

 は、さておき。夜間拘束はこういう形ですね。
 1946年には「マングリ返し」なんて便利な言葉はなかったから、説明が大変。
 無かったといえば「エッチ」だって1960年代からです。「ヒワイ」とか「ビロウ」とかではニュアンスが違いますし。ツバナレして2年のガキが知っている言葉は限られますし。
 まあ、出来上がってからのお楽しみということです。


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『くノ半試し』本日発売!

 わずか86枚に拷問シーンのてんこ盛りです。
 「くノ一」は女忍者。「くノ半」は半人前の女忍者です。
 「くノ一」は「「女」を一画ずつに分解した謂です。女を串刺しにすれば「くノ十」です。
 「くノ米」というのもあります。過去記事→


紹介画像
 この作品では「暗号」が味付けです。筆者新案特許です(かしら?)。

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Progress Report 4:悦虐へのエチュード~スケバンにリンチをねだる未通マゾ

 タリホー! アフターバーナー全開!
 といったところです。
 書きかけの章を仕上げました。この24時間(平日=ジェダイの騎士)で、6400文字です20枚です。


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   さまざまな激痛

 素股で中途半端に押し上げられたり、三重苦(短小包茎早漏)の相手をさせられたり、不完全燃焼のまま日が暮れた希美だったが、楚葉の真骨頂はここからだった。
 希美を除く八人はTシャツにミニスカートかホットパンツかスラックスといった気楽な服装に着替えて、夕食は定番のカレー(くらいはスケバンでも作れる)をわいわいきゃいきゃい食べて。希美は平ゴム二本の水着姿で開脚正座をし続けて、夕食はカレー鍋にぶち込まれた残飯を犬食いさせられて。
 約束どおりにアルバイトの学生たちが、大量の花火とアルコールを含む清涼飲料を携えてバンガローを訪れた。
 希美の身体をちょっとだけ味見した海の家の二人と、貸しボート屋で割りを食った二人と、見知らぬ三人と。七人はキャンパスの先輩後輩友人の関係だそうだ。さすがに、こちらの人数に合わせるのは無理だったようだ。
 八人だけでも女の子が一人余るというのに、希美も参加させられた。過剰露出の水着をTシャツ(だけ)に着替えさせられたのだから、全員で希美を嬲るという趣向ではなさそうだった。
 バンガローの近くでは他の小屋に泊まっている人たちに迷惑を掛けるから、五十メートルほど離れた広場へ移動した。簡単なバーベキューの設備があるので、そこのテーブルで、まずは乾杯。
 大所帯なので三つに分かれた。二年生の薬世、詠子、綺麗が同じテーブルで、男性も三人。希美は二年生の麻紀と向かい合って左右に海の家の二人。麻紀には見知らぬ三人組のうちの一人。三年生は四人がひとかたまりになって、男性は一人だけ。
 幹部の三年生が後輩に花を持たせた形だなと、希美は思った。
 乾杯は缶ビール。二十歳未満だからと遠慮するものなんかいない。希美も楚葉に命令されれば、拒めない。
「へえ。百合香学園なんだ、お嬢様なんだね」
「御令嬢が多いのは確かだけど、おれらはスケバンだぜ。ああ、そこのパンツ穿いてないやつはウリ専な」
 続きをしようと言っていた二人を楚葉が仕切って希美の両側に座らせたときから、そんな予感はしていたし覚悟もできていたけれど、何もけしかけるようなことは言わなくていいのに。これから、もっともっと辱しめられるんだなと、期待する諦める希美だったのだが。
「またまたあ。こんな可愛い子がスケバンなら、是非ともタイマンをお願いしたいね」
「おまえな。酔ってもいないうちから、そういうアブナイ発言はやめとけ」
 男性陣が最初からアクセル全開なのに対して、色恋には免疫のないスケバンはブレーキに足を掛けて戸惑い気味――だったのだが。全員が輪になって花火を始めると、空気も次第に溶け合ってくる。
 楚葉が人差し指をくいくいと曲げて地面を示したので、希美はしゃがみ込んで見物する。Tシャツの裾は股下五センチとないから、立っている者でも正面からは股間を覗けてしまう――のに、まったくとは言わないけど、見てくれない。テーブルで隣り合った子を口説くか、いい雰囲気になろうと懸命になっている。そして、希美についた二人は。
「花火なんてガキの遊びだよ。僕らは、もっと楽しい火遊びをするぜ」
 早々に希美をグループから引っ張り出そうとする。
「おれも飽きたな。先に帰ってるぜ。希美も用事が済んだら、早く帰って来いよ」
 楚葉は希美の股間に視線を注いで、言外に意味を含ませる。三人の三年生も、リーダーと行動を共にして。バーベキュー広場は、希美を含めて五人の女の子と七人の男になった。さらに。
「おいら、どうも男は苦手だ。五お、抜けたっと」
 麻紀まで逃げてしまった。
 希美は二人の相手をするが、それでも男が二人余ってしまう。麻紀とカップルになる予定だった青年は、俺も仲間に入れろと、希美のグループに割り込んできて。三年生四人の世話係みたいになっていた青年は、明日は早番だからとか口実を設けて自分たちの宿舎へと引き上げて行った。
 こうして、三組のカップルと一組のカルテットが成立する。
 すぐに希美はバーベキュー広場の奥へ連れ込まれる。ヘアバンドに一万円札二枚を挟んで、替わりにコンドームを取り出す。
 目の前で別の火遊びを始められたカップルは、刺激されたのか辟易したのか、思い思いの方角へと消えて行った。
 希美は順番待ちの二人に見物されながら、最初の相手に抱かれた。昼間の三重苦の中年男との青姦よりも、ずっと興奮した。三十分ほどで海の家の二人を片付けて、最後の一人はとあたりを見回したのだが、どこにも居なかった。
「ゴムを着けてても、他人の後には違いないものな」
「一万円が惜しくなったのかな。日当の二日分だし」
「あの人、彼女持ちかもな」
 二人は勝手に納得して、精液の切れ目が縁の切れ目とばかり(多分、円も切れたのだろう)、それでも希美をバンガローまで送り届けてから、帰って行った。昼間の様子も見ているから、楚葉たちがほんとうにスケバンだと信じて、危ない橋は引き返したといったところが案外と真実かもしれない。
 バンガローには火遊びをしなかった五人だけが居た。三人は朝帰りになるかもしれない。
「それじゃ、おれらも火遊びのやり直しといこうか」
 希美の顔を見ると、すぐに楚葉が立ち上がった。紙袋を希美に持たせる。
 ビニール電線やスプレー缶、他にもごちゃごちゃと入っている。もしかすると、あたしを可愛がってくれる小道具だろうか。かき氷と身体との物々交換よりも、乗るために乗せたときよりも、さっきのウリよりも――希美の胸は妖しくときめいた。
 火遊びに付き合うのは、市代と二年生の麻紀。市代は昼休みの旧校舎でも、楚葉に次いで希美を甚振っていたから分かるが、麻紀は以外だった。年上の青年との一夜のロマンスより年下の女の子を虐めるほうを選ぶなんて、この人もサディスチンなんだろうか。
 月明りに照らされたバーベキュー広場には、一時間ほど前の花火のゴミが散らかっているだけで、誰も居なかった。楚葉は黙ってゴミを集め始めた。リーダーにならって全員で手伝ったから、すぐ綺麗になったのはいいけれど。ゴミを希美が持っている紙袋に入れられた。集めたゴミの中には、まだ使っていない花火も混じっていた。
 希美に花火のゴミと希美への責め道具を持たせたまま、楚葉は広場の奥へ行って。
「どうせだから、まだ残っている花火を遊ばんじまおうぜ」
 子供の遊びなんて、どうでもいいのに。もどかしく思う希美だったが、とんだ勘違いだった。希美は楚葉の命令で、たったひとつ身体を隠しているTシャツを脱いで、地面に大の字になった。
 希美の裸体の上に、楚葉がネズミ花火を乗せた。双つの乳首にひとつずつ、腹の上にも二つ。最後の一つを縦にして淫裂にあてがったが。
「まあ、ここは勘弁しといてやらあ」
 希美の脚を閉じさせて、淫埠の上に置いた。
 柄付ライターは二つあったので、楚葉と麻紀が点火係。
「…………」
 希美は純粋の恐怖につかまれていた。肌の上で花火を燃やされたら、火傷をするに決まっている。なのに、じっと我慢していなければならない。
 カチッ……楚葉がライターを点火する。麻紀もリーダーにならう。
「熱っ……」
 ライターの炎が肌を舐めるのは一瞬だが、それでも熱いのに。
 シュウウ、シュシュシュシュッ……
 ネズミ花火が小さな炎を吐いて回り始めた。
「きゃあああっ……熱い!」
 チリチリチリッと、腹の上で鋭い熱痛が奔り回った。乳房に激痛が渦巻く。希美は全身を突っ張って耐えるしかなかった。払い落とすなんて、考えなかった。
 腹の上のネズミ花火はすぐに転げ落ちたのだが、乳房の二つは乳首に絡みついて、外れるまでに数秒は回っていた。
 パン、パンッ! パン、パパン!
 ネズミ花火が激しく回転しながら乳首から飛び上がった直後に、五つのネズミ花火が爆発した。小さな爆発だから、もし乳首に絡まったままでも、そんなにひどい火傷まではしなかったかもしれないが――恐怖のどん底で経過した数秒だったのはたしかだ。
「さすがはパイパンの御加護だな。けがねえな」
 楚葉が紙袋から取り出したビニール電線で、希美の肌にこびり付いている燃え滓をはたき落とした。
 ああ、次はこれが鞭になるんだなと、火傷にひりひり痛む肌よりも、希美はそちらが気になった。しかし、ビニール電線の出番は、まだだった。
 バーベキュー広場の奥は雑木林になっている。その立ち木を指差して、楚葉が命令する。
「そこで逆立ちをしな。脚を開いて二本の木で支えるんだよ」
 足を付ける倒立ならできる。開脚ということは――まさか股間を打ち下ろされるんだろうか。いつものように、恐怖が八割と二割のときめきと。
 楚葉が紙袋を漁って取り出したのは、円筒形の花火だった。打ち上げ花火らしい太いのもあれば、手に持って星の連発を楽しむ細長いのもある。それを楚葉は、開脚して上向きに開いている二つの穴に挿し込んだ。
「…………」
 打ち上げ花火は高く上がるし、連発花火は手で持つ代わりに股間で支えるだけだから、派手かもしれないけどネズミ花火よりも安全だ――希美は強く自分に言い聞かせた。本格的に痛い責めは、売春を承知させられたときの緊縛と針責めから二か月ちかく、してもらっていない。これは、あたしが心の中で望んでいたことなんだ。そうも自分を説得してみる。それでも、飛び散る火花への恐怖は――ネズミ花火を体験した直後だけに大きかった。
 ヴァギナには太い打ち上げ花火、アヌスには細い連発花火を三本。
 いよいよ点火――となったところで、楚葉が舌打ちした。
「こりゃあ駄目だ。打ち上げ花火は、根元に導火線があるんだっけ」
 すでにヴァギナの中に埋もれている。外で点火して素早く突っ込めば――燃えている火薬が粘膜に押し付けられるのだから、ネズミ花火の火傷くらいでは済まない。
 結局、連発花火をヴァギナに二本とアヌスに一本の配分になった。
「物足りないだろうが、我慢しな」
「はい……」
 希美が返事をしたのは、沈黙を続けると不貞腐れていると難癖をつけられるかもしれないと、楚葉におもねったからだった。花火を突っ込まれること自体が物足り過ぎている。
 アヌスの一本は、マッチ箱の紙ヤスリで頭を擦って着火させるタイプ。ヴァギナの二本は紙縒りを燃やすタイプ。三本同時に火を点けられて。
 シュウウ……ポンッ、ポポン。まずアヌスの花火が噴火し始めて、紙縒りの二本が数秒遅れで燃え出す。
 ボボボボボウウッ。股間から火の噴水が噴き上がった。
 樹に寄りかかって逆立ちしているから、身体はわずかに後ろへ傾いている。剥き出しの腹と乳房に、まだ熱い火薬の燃え滓が降り注ぐ。
「ひいいいっ……」
 希美はぎゅっと目を閉じた。目に入ったら、失明するかもしれない。
 五秒か十秒か。ヴァギナとアヌスが熱くなってくる。突っ込まれている紙の筒の中では火薬が燃えているのだから当然だった
「たあまや~」
「かぎやあ~」
 けらけら嗤っているのは市代と麻紀だけで、楚葉は花火の燃え具合と希美の反応を注意深く観察している。
 楚葉の判断では、それほどの危険は無かったのだろう。花火は無事に燃え尽きた。
「お遊びは終わりだ」
 倒立を赦されて地べたにぺたんと座り込み、肌をあちこちさすっている希美を見下ろして、楚葉が愉しそうに意地悪い笑みを浮かべた。
「痛いことをしてもらえないとか、親父に愚痴ってたよな。今夜は、たっぷり可愛がってやるぜ」
 何日も全身に傷が残っても差し障りのない夏休みになるのを、おれも待っていたんだ。そう言って、楚葉はトラロープを取り出す。
「手を出しな」
 両手を揃えて前で縛られた。ロープが太い枝に投げ掛けられて、希美は両手を引き上げられる。手首は引っ張られるが、ロープが食い込むほどではなく、希美は自分の足で立っている。
 いよいよ本番と、楚葉がビニール電線を取り出したとき。
「姐さーん」
 サブリーダーの妙子が広場に駆け込んで来た。
「綺麗が輪姦(まわ)されました。泣きながら帰って来て、怪我は……マンコが血まみれってだけですが、いきなり三人にやられたんだ。今、亜香里が手当てしてやってます」
「よし、すぐに戻る」
 楚葉は吊られている希美はそのままに捨て置いて、バンガローへ続く道に向かった。
「希美は、おれらが戻って来るまで放置プレイを愉しんでろ」
 ずいぶんな扱いだけど、手下とオモチャなら、手下を大切にするよね。虐められるときの、ときめきが綯い混ざった悲哀ではなく、悔しさの滲む悲哀を希美は噛み締めた。
 けれど、感傷に浸っていられる状況ではなかった。花火の煙が消えたせいか、薮蚊が肌にたかってくる。手を縛られているから、叩き潰すことも払い除けることもできない。身体を揺すり足を跳ね上げ頭を振って、必死に追い払った。
 希美の主観では二時間くらいだが、頭上の満月がそんなに位置を変えないうちに、楚葉は戻って来た。市代と麻紀だけではなく、綺麗も引き連れていた。
 綺麗は瞼を泣き腫らしているのと、花火をしていたときと服装が替わっている二点を除けば、とくに変わった様子は見られない。輪姦されただけで、縛られたり殴られたりしたのでなければ、当然ではあるが。
「おまえがちゃんと三人を相手にしてれば、綺麗が姦(や)られることはなかったんだ」
 きつい口調で楚葉に詰られて、希美は何のことか分からなかった。
「綺麗も百合枝会の一員だ。男の一人や二人、金玉を蹴飛ばして逃げるくらいはできるさ。けど、三人掛かりで押さえ込まれちゃ、おれだってどうにもならねえ」
 言い掛かりもいいところだった。けれど、楚葉に言い返すなんて、希美にはできない。
「気が済むまで、こいつに詫びを入れさせな」
 楚葉がビニール電線を綺麗の手に握らせた。
 綺麗は戸惑っているようだったが、楚葉の屁理屈に納得したのか、ただの鬱憤晴らしか。ビニール電線を二つ折りにして握り直した。長さは一メートル余。
「待ってください。あたしにも責任があるとしても、悪いのは三人組じゃないですか」
 いくらなんでも理不尽だ。ほんとうは希美に責任は無いけれど、そこまでは言えなかった。
「他人の頭の蝿を追える身分じゃねえだろが」
 楚葉が決めつける。綺麗には、優しく声を掛ける。
「もちろん、三人には落とし前をつけさせるさ。出陣前の血祭りってやつだ。遠慮するこたあねえ。希美をぶちのめしてやりな」
 綺麗が頷いて、ビニール電線を振りかぶった。
 反射的に、希美は後ろ向きになった。
 ひゅんんっ、パッシイン!
「痛いっ……!」
 尻に叩きつけられたビニール電線は、肌を切られるような激痛だった。しかし、軽い。ピッチャーの投げる球を重いとか軽いという、その軽さだった。トラロープ四本の鞭は、骨にまで響く重たさがあった。
 ひゅんんっ、パッシイン!
 ひゅんんっ、パッシイン!
 ひゅんんっ、パッシイン!
 ひゅんんっ、パッシイン!
 軽いから、楚葉に比べれば非力な綺麗でも立て続けに鞭を振るえる。
 日焼けしてヒリヒリしている肌への激痛に悲鳴を上げた希美だったが、二発目からは「うっ」と息を詰めるような小さい呻き声を漏らすだけで耐えている。鋭いU字形に始まる細長い鞭痕が尻に何条も刻まれていった。
 楚葉が綺麗を止めて、希美に非情の命令を下す。
「おれたちにケツを向けるんじゃねえ。こっちを向け」
 やっぱり、おっぱいも叩かれるんだ。希美は、のろのろと向きを変えた。
 ひゅんんっ、パッシイン!
「きゃああっ……!」
 尻とは痛みが桁違いだ。
 ひゅんんっ、パッシイン!
「きひいいっ……!」
 希美は乳房を震わせながら、一打ちごとに悲鳴を噴きこぼした。
 乳房も赤い線条で埋め尽くされた。
「ぼつぼつ仕上げといこう。希美、がばっと股を開きな」
 いずれはその命令が来ると、希美は覚悟していたが。いざ実行しようとすると、膝が震える。
「あああ、あ……」
 希美は目に涙を浮かべながら、じりじりと脚を左右に開いていった。
 麻紀が電線をアンダースローに構えた。そのまま、ちろっと楚葉をふり返って。
「ええいっ」
 掛け声とは裏腹に、ソフトボールだったらキャッチャーまで届きそうにない勢いで腕を振り上げた。
 パチン……
「あぐっ……?」
 痛いことは痛いが、期待覚悟していた激痛ではなかった。
「僕、もういいです。こいつを虐めたところで、憂さ晴らしにもなりゃしない」
 麻紀が電線を楚葉に返した。
「そうかい。それじゃ、市代と先に帰ってな。おれは、こいつの欲求不満を解消してやってから戻る」
 二人を追い返して。楚葉が、あらためて希美と向かい合う。
「これで、おまえが望む以上に可愛がってやれるぜ。子分の中にゃ、おれの遊びを良く思わないやつもいるからな」
 敵対しない者をリンチに掛けるのは百合枝会のポリシーに反するし、どれほど過激でもSMプレイは性的遊戯に過ぎないから硬派が耽る行為ではない――といったところか。
 楚葉がポケットから剃刀を取り出した。ビニール電線の両端をライターで炙ってから、剃刀で被覆を切り取って、銅線を五センチほども露出させた。極細の銅線を数本ずつ撚り合わせる。
 綺麗と同じようにビニール電線を二重にして、しかし端ではなく曲げた部分を手に握った。鞭の先端は、針のように尖った銅線の束。
「そんなに怯えた顔をするなよ。せいぜい二週間もすれば治るくらいの傷で勘弁してやるよ」
 銅線をべろりと舌で舐めて、サディスチンの笑みを浮かべる楚葉。
「おれも女だが、女っやつは身勝手でいけねえや。返す金は無ねえのに、死んだって風呂に入るのが厭って女を説得するときに、こいつを使うんだそうだ。まあ、一年に一人、いるかいないかだが」
 裸商売だから、傷は残さない。ただし、治療費で借金は百万ばかり増えるがな――と、希美を怖がらせるんだか安心させるんだか、分からないようなことを言ってから。一転して凄みの利いた声で叱りつける。
「誰が足を閉じていいと言った。おれは麻紀のピンチヒッターだからな。同じ場面からプレイボールだぜ」
 さっきよりずっと凶悪になった鞭で、女の子のいちばんの急所を、たぶん麻紀の何倍もの強さで打ち据えられる。希美は、頭がくらくらするほどの恐怖に捕らわれた。けれど、そのくらくらの一パーセントくらいには、胸がねじれ腰が熱くなる妖しいときめきが紛れ込んでいた。
 全身を震わせながら脚を左右に開く希美。
 楚葉は腕を大きく後ろへ引いて……
 びゅんんんっ、バッジイイン!
「ぎゃわ゙あ゙あ゙あ゙っ……!!」
 股間で火の玉が爆発したような激痛。希美は野獣のように吼えた。
「うあああ、ああ……」
 膝が砕けて、全体重が吊られている手首に掛かった。その痛みを、希美はほとんど感じていない。股間を見下ろすと、無毛の丘に何本もの細い切り傷が刻まれていた。
「しゃんと立て。一発や二発で終わると思うなよ」
 言いながら、肘から先だけで希美の乳房を水平に薙ぎ払った。
 しゅっ、パシン。
「きひいいっ……」
 軽い一撃でも、麻紀に同じところを叩かれたときよりも痛いくらいだった。軽いが、ずっと鋭い。
 しゅっ、パシン。
 しゅっ、パシン。
 希美は乳房に鞭の往復ビンタを食らいながら、膝に力を入れて懸命に脚を開いた。残酷な一撃を股間に受けるために。
 びゅんんんっ、バッジイイン!
「ぎゃわ゙あ゙あ゙あ゙っ……!!」
 反射的に希美は身をよじり片脚を引き付けて股間を庇った――ときには、股間を抉った鞭先がそのまま上に振り抜かれて、下腹部から胸の谷間まで深紅の線条を刻み、顔の手前で後へ跳ねた。さらに斜め下に振り下ろされて、乳房から脇腹を切り裂く。
「ぎびい゙い゙い゙っ……!」
 激痛に身悶えしながらも、希美は足を踏ん張って、鞭を受ける姿勢に戻った。
 さらにもう三回。下から上、斜め上から下へと鞭先が希美の肌を切り刻む。麻紀が付けた細い線刻が、滲んだ血で隠される。
「これくらいで勘弁しといてやる――マンコはな。後ろを向け」
 お尻なら耐えられるだろうと、ほっとした思いで希美は後ろ向きになった。
 びゅんんんっ、バッジイイン!
「きゃああっ……!」
 股間よりはましだったが。背中を鞭打たれて、やはり希美は悲鳴を上げた。
 びゅんんんっ、バッジイイン!
「ぎひいっ……」
 びゅんんんっ、バッジイイン!
「きひい……」
 びゅんんんっ、バッジイイン!
「きゃああっ……」
 立て続けに背中を斜めに切り裂かれて、希美は悲鳴を抑えられない。叫んでいるうちに、頭に霞が掛かってきて――腰の奥に痺れがわだかまっていく。もう赦してほしいという願いと、もっと虐めてくださいという悦虐とが拮抗する。
 尻にも五発の鞭を与えて、ようやく楚葉は手を止めた。
「今日は二か月分の遊び道具をいろいろ持って来てるんだぜ」
 楚葉が次に取り出した責め具は洗濯バサミだった。決して楽な責めではないが、銅線剥き出しのビニール電線に比べれば、どうってことはない――という希美の楽観は、目の前で洗濯バサミの嘴を開閉させられて吹っ飛んだ。先端から五ミリのあたりに、釘が打ち込まれていた。反対側の嘴には小さな穴が空いていて、斜めに切り落とした釘先が突き抜けている。
「洗濯バサミなんて生ぬるいし、針がほんとに痛いのは突き刺すときだけだからな。ちょいと工夫してみたんだ」
 これなら、洗濯バサミと針の両方を同時に味わえるんだぜと、とことん希美に恐怖を与える。
「釘をペンチで斜めに切ってあるんだ。待ち針より痛いぜ。とは言っても……」
 半日くらいは着けっ放しにしても大丈夫なのは実証済みだと、安心させながら言外に長時間の責めを匂わせる。
「順番としては、こっちからだな」
 楚葉は希美の乳首を摘まんで引き伸ばして、くわっと嘴を開けた洗濯バサミを近づける。いっぱいに洗濯バサミを開いて乳首を挟み込んだ。
 パチン!
 楚葉は指を滑らせて洗濯バサミを手から放した。
 ブツッ……と、釘が乳首を突き抜ける音を、希美は身体で聞いた。
「びぎひいいいっ……!」
 激痛が脳天まで突き抜けて。甲高い悲鳴。希美は今日一日だけで、これまでの三か月分以上の絶叫を絞り出されているのではないだろうか。
 反対側の乳首にも着けられて、再びの悲鳴。洗濯バサミの圧痛と釘の貫痛との区別なんか、つかない。両者が絡み合って、ネズミ花火のほうが百倍ましに思えた。
 楚葉が三つ目の洗濯バサミを手に取った。
「あ、あああ……それだけは……赦してくださいい」
 唇をわななかせながら懇願する希美。このときばかりは、無理強いに虐められたいとは、さすがに一欠片も思っていなかった。股はきつく閉じ合わされて、つま先立ちするほどに腰は後ろへ引かれている。
「打ち上げ花火を上下逆さに突っ込まれたいのか。子宮目掛けてドッカーンだぜ」
 脚を閉じていれば、並みのペニスよりも太い花火を挿入などできないのだが――ヴァギナの中で火薬が(比喩表現ではなく)爆発する恐怖に、希美は打ちのめされた。
 お姉様は、ほんとはそんな大怪我をさせるようなことはしない。心の底では信頼している。それを裏返せば――クリトリスを釘付き洗濯バサミで挟まれても、想像を絶する激痛だろうけど、大怪我はしないのだろうと、責めを受け容れる覚悟につながる。
「怖い……」
 希美はしゃくり上げながら、さすがに腰は引いたまま、おずおずと脚を開いた。
 楚葉が手を伸ばしてクリトリスを摘まんで引っ張る。わずかな痛みだが、無自覚のうちに希美の腰が突き出される。楚葉は横に回り込んで身体を密着させて腰を動かせなくさせてから、親指と薬指でクリトリスの根本を摘まんだまま、残る二本の指で器用に包皮を剥き下げて、素早く洗濯バサミに実核を咬ませる。
 パチン!
「ぎゃわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!」
 喉から血しぶきが飛び散るような絶叫。
「ひいいいいいいい……」
 吐き続ける悲鳴が、次第に弱々しくなって、希美は半失神状態に陥った。
 しかし、楚葉は許さない。バチンバチンと、頭が激しく揺れるほど強く往復ビンタを張って、希美を束の間の安息から引きずり出す。
「乳首とクリトリスへの愛撫だけじゃあ、満足できねえよな。やっぱり、マンコに太いのを咥え込まなくちゃな」
 希美は、目の前にかざされた物を見て、もはや絶望の吐息を吐くしかなかった。
 それは擂粉木を短く切断したものだった。ただし、何本もの木ネジが埋め込まれていて――浅い円錐形の頭と鋭く尖った先端が数ミリずつ露出している。こんな物をヴァギナに突っ込まれたら……凄く痛いのは当然だけど、二度と使い物にならなくなってしまいはしないだろうか。
「こいつは、名器養成ギプスでもあるんだぜ。マンコの中の襞々が増えて、蚯蚓千匹か数の子天井か、そんな感じに……なるかもしれねえな。こいつは、さすがに試したことが無えからな」
 お姉様は、あたしの心を読めるんだろうか。希美の疑問は、そちらへ向かった。銅線剥き出しの電気コードはヤクザが実際に使うと言っていたが、釘付き洗濯バサミもは楚葉自身が工夫したと言わなかっただろうか。それなら、いつ誰に試したのか――そこへは考えが及ばなかった。
 楚葉が擂粉木を股間に近づける。もはや希美には、脚を閉じて抗う気力も無い。だいいち、クリトリスを咬む洗濯バサミをこねくって、自分でいっそう激痛を増す結果になる。
 こんな苛酷な責めを受けて、希美はなおヴァギナを濡らしている――のではない。鞭傷から滴り釘に貫かれたクリトリスからも垂れている血が潤滑となって、擂粉木の頭部は容易に貫入した。
「痛い……」
 擂粉木をじわじわと押し込まれて、希美は小さく呻いただけだった。数時間前の希美だったら絶叫していたかもしれないが、立て続けの想像を絶する激痛に馴致され、叫び過ぎて喉も涸れている。
 楚葉は擂粉木を完全に埋没させた。小淫唇で擂粉木の後ろを包み込むようにして、大陰唇までぴっちり閉じ合わせた。そして、最後の責め道具を取り出す。幅が五センチ以上もある特大の目玉クリップだった。
 目玉クリップで大淫唇を閉ざされても、希美はほとんど無反応だった。全身の激痛に比べれば、幅のある金属板で強く挟まれるくらい、どうということもないのだった。
「おれの遊びは、これでおしまい。おまえは、朝まで余韻を楽しんでいな」
 楚葉の言葉は、このまま放置するという意味だ。
「と言っても、このままじゃ虫に刺されて、鞭よりも酷いことになるな。それは可哀相だから」
 楚葉が紙袋からスプレーを取り出した。
「虫除けスプレーを噴いといてやるよ」
 しゅううううっ……背中から尻へ噴き付ける。
「ひいい……沁みる……」
 肌が冷感に包まれて、それが無数の針となって突き刺さるような感覚。
 腕と脚にも噴き付けられたが、傷ついていないので、幾らかの冷感があっただけ。
 希美を動かすより自分で動くほうが手っ取り早いと、楚葉が希美の正面へ回り込んで。
 しゅううううっ……
「ぎひいいいっ……!」
 乳房に噴霧されて、激痛に身悶える希美。
 こうなると、目玉クリップで淫裂を閉ざされている――内奥にまで噴き込まれずに済むのだけが、わずかな救いだった。
 全身の激痛にのたうつ希美を残して、楚葉はバーベキュー広場から立ち去った。
 数分としないうちに、それまでの冷感が失せて、替わりに燃え上がるような熱感が襲ってきた。
 冷感から熱感への転換。この感覚に、希美は心当たりがあった。臭いもそっくりだ。虫除けスプレーというのは嘘で、筋肉消炎剤だろう。もっとも、ハッカには虫除けの効果もあるから、そういう目的にも使える――としても。虫除けだろうと筋肉消炎剤だろうと、傷口に噴霧は厳禁だ。
 鞭の余韻どころではない。洗濯バサミに咬まれた三つの突起が、絶え間ない激痛を送り込んでくる。封印された擂粉木がだんだん膨れてくるような錯覚。これからが、何時間も続くほんとうの責めだとさえ言えるのだった。
 リンチされたいだなんて馬鹿なことを妄想したのが、間違いだった。妄想に留めておけば良かったのに、土壇場でも逃げられるチャンスをお姉様は与えてくださったのに……あたしって、救いようのない馬鹿だ。希美は激痛に身をよじり涙を流しながら、後悔した。その一方で……
 馬鹿なんじゃない、マゾなんだ。この地獄のような苦しみも、明日とは言わないけど明後日くらいには、思い出しながらオナニーに耽るんだわ。そこまで想いが至ると――激痛はそのままに、甘い陶酔が頭を浸食し始める。

 その一夜は希美にとって、それまでの生涯で(物心ついてからわずかに十年とちょっとではあるが)もっとも長い一夜だった。
 激痛にも馴致され、筋肉消炎剤の効果も薄れてくると、物思いに耽る余裕さえ生まれる。
 お姉様に、あたしは大きく変えられた――のではない。それまで心の奥で渦巻いていた妄想を、お姉様が現実のものにしてくださったんだ。悪い方向への変化だと、自分でも思う。素行も勉強も。けれど、誰かが言っていた。世の中には、言っていいことと、言ったら面白いことがあるって。
筆者註:SF作家の鏡明がSFマガジン掲載の短編小説の中で、横田順彌に仮託した人物に言わせた台詞だったと記憶している。他の人物だったかもしれないし、作者が鏡明だったかすら自信が無い。しかし、埋もれさすにはもったいない名言であるので、紹介しておく。
なお、作中には不条理作家ではなくゴム草履作家だ、という迷言もあった。
 悪い子になって、あたしは後悔していない。 だけど、今日のこれは……後悔してる。どうやったって、お姉様のオモチャなんだから、避けようは無かったけど。
 こんなに痛いのは、二度と御免だ。でも、卒業までずっと、二度とこんなことをしないってお姉様が約束してくださったら……それも淋しいかな。つまり、心の底では、こんなことやもっと非道いことを……されたいんだろうか。
 鞭打ちの余韻と釘付き洗濯バサミの激痛とヴァギナの中の木ネジ擂粉木の圧倒的な違和感と筋肉消炎剤の刺激とに悶えながらも、夜が更けていくにつれて希美は睡魔に襲われていた。日焼けは肉体を消耗する。晴天下の露出が著しい興奮の反動をもたらしているし、二か月半ぶりの苛酷な責めは心身の両面にダメージを与え続けている。
 希美は微睡んでは、吊られた手首に加わる体重の痛みで引き戻され、立っているうちにまた睡魔に襲われて――ついには浅い眠りの中へと漂い出ていった。

「ちょっと、きみ……大丈夫か?」
 身体を揺すぶられて、希美はぼんやりと瞼を開けた。見知らぬ男性の顔が、目の前にあった。ひどく戸惑っている。男性の後ろ、かなり離れたところに、若い(といっても、希美より十は上だろう)女性も立っている。
「何をして……されたの? 誰かに乱暴されたのか?」
 この人たちもバンガローに泊まっていたのか、それとも地元のアベックかもしれない。朝の散歩に出掛けて……裸で傷だらけで変な飾りを着けて木から吊られている女の子を発見して。あたしが、ロマンスをサスペンスにしちゃったんだ。
 希美は、男性よりも激しくうろたえた。騒ぎになっては、自分も楚葉も困る。このまま静かに二人に立ち去ってもらうには……
「SMプレイなんです。あたしが望んで……ご主人様に調教してもらっているんです」
 こう言うしかなかった。プレイなんて軽い気持ちではないけれど。自分にだってうまく説明できないことを、他人に理解してもらうのは不可能だ。その必要も無い。
「だから、言ったじゃない。放っとけばいいって」
 静かな早朝の、希美とアベックしかいない広場。希美の声は後ろの女性にまで聞こえていた。
「まだ十五六でしょ。とんでもない変態だわ」
 同性からの軽蔑しきった罵声は、何よりもつらい。売春をしているときに男性から投げ掛けられた言葉は、たとえ侮辱が含まれていても腰の奥に響いてきたが、今は胸を突き刺すだけだった。
「何を熱心に見てるのよ。いやらしい。あなただけ、そうしているといいわ」
 女性が踵を返して、大股にずんずん歩き出した。男が、慌てて後を追って――希美は、また独り取り残される。
 ――楚葉が来て希美を解放したのは、午前七時過ぎだった。
========================================
パイパン淫唇クリップ

  最後の目玉クリップでの大淫唇封鎖。これは、この画像がインスパイア元です。
 短い動画もあります。細いビニール紐で下腹部をピシピシしています。縦でなく横に敲いているのが残念。合意プレイの限界ですかしら。
 動画ではすぐにダブルクリップを外してしまいますが、蜜がとろ~りと垂れているのが映っています。画像も動画も、幾たびとなくG線上のアレヤコレヤに活用させていただきました。短い動画が切り出しなら、是非ともフルバージョンを有償で構わないので入手したいものです。
 うん。ネットでは無料DLできるあれこれが氾濫しています。金を払ってまでとなると、よほどの余程です。


 なので。よほどの余程を決断されたWILL様のリクエストに、ト連送です。


注記)
 旧海軍の急降下爆撃手順(隊長からのモールス信号)。
 ・・-・・ ・--・ ---  トツレ:突撃隊形作れ。
   一列縦隊です。後に、第二突撃隊形が工夫されて、これは「トツレ2」
 ・・-・・ ・・-・・ ・・-・・  ト連送:突撃!
   指揮官先頭で急降下に移ったポイントで、順次急降下。
 真珠湾攻撃で奇襲成功して発信されたのが、この日の為に作られた、トラ連送です。
 ・・-・・ ・・・ ・・-・・ ・・・ ・・-・・ ・・・
   ト連送に簡単な符号(・・・)を付け加えたというのが、一目燎原の火。

 ちなみに。特攻のときは各機がト連送の後で電鍵を押しっぱなしにして(――――――)、基地で受信した符号が長ければ突入成功、短ければ撃墜されたと判断していたそうです。合掌。

テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Interrupt Report 0:(仮題)幼なマゾの契り

 筆者の他作品の執筆ペースを考慮して、1月/4月/7月とPIXIVでリクエストをくださっていたWILL様。
 次は10月かなと身構えていたら、10月123……と過ぎて、音沙汰無し。さすがに3食で満腹かしらと思っていたら。
 来ましたねえ。こういうの。

========================================
*ストーリイのリクエスト
→戦災孤児となった少年少女が「刈り込み」により施設に入れられ、弄ばれ嬲られうちにマゾに目覚めていく
*時代設定のリクエスト
→終戦直後の日本
*シチュエーションのリクエスト
 →時代や大人たちに翻弄される少年と少女
*キャラ設定(外見、性格)
 ・少年
  11~12歳の戦災孤児達のリーダー。良い意味でのガキ大将気質で面倒みがよい
  子供達(後述)に家族を重ねており、特に弟分(後述)のことは文句を言いながらも可愛がっている
  未だに剥けておらず生えてないのが悩み
  マゾの素質があり、嬲られる内に快楽を感じていく
 ・弟分
  少年より1歳年下で、兄貴と慕う薄汚れた子供。孤児達のムードメーカー
  実は身を守るために男装した美少女。やはりマゾであり、少年ともに快楽に落ちていく
 ・子供達
  面倒を見ている孤児達。年上の二人を慕っている
 ・役人
  施設の管理者。閑職に回された不満を孤児達をいたぶることで晴らしている
  生意気な少年や美少女の弟分を嬲ることを気に入っている
 ・進駐軍の士官
  施設にやってきた軍人。サディストのバイで、接待により孤児達を痛めつけ犯す
*人間関係のリクエスト
 →少年と弟分はやがて男女として惹かれあう
*特定の責めのリクエスト
 ・収容施設に隔離された孤児達。脱走防止のために衣服をすべて剥ぎ取られ、さらに焼印まで押される。
 ・手に職をつける体で、犬芸や豚芸を強いられる孤児達。屈辱的な行為のはずが、少年と弟分は興奮していく
 ・進駐軍の士官にSMプレイを強要される少年と弟分。家族の仇から責められるという行為にさえ快楽を感じるようになった二人はマゾの雄雌として落ちていく
 ※可能であれば、戦災孤児をかばって責められる(そして快楽を感じてしまう)少年や弟分を描写していただけると嬉しいです
 ※歴史的におかしいと思われた箇所は修正していただいて構いません

#R-18 #SM #ロリ #ショタ #焼印 #恥辱
========================================

 戦災孤児(浮浪児という、あたかも当人の非行のような呼称が使われるようになりましたが)の保護収容施設は、当時の経済事情もあって食事が不十分とか、戦前の感覚(人権意識の欠如)そのままで職員による虐待とかも横行していたようですが、さすがにこのリクエストほどは酷くなかったでしょう。
 とはいえ、戦後の混乱期。「記録が無い」からといって「事実が無かった」とも限りません。
 戦時中は、御国のために頑丈な身体を作るために、真冬の乾布摩擦、女児を含めて半裸での授業も、新聞で報道推奨されていたのですから。

4nippon

 それにしても。この時代設定は、盲点というより「宿題」でした。
 大正時代は『大正弄瞞』があります。戦前は『赤い冊子と白い薔薇』ですし、戦時中は『非国民の烙淫』です。「ヒロイン戦記シリーズ」は別腹としても。
 昭和20年代終わりごろから30年代初頭にかけて(不詳)が『少女博徒
 昭和35年から40年なら、『集団羞辱史』が4作。とか、シリーズではないけれど「昭和ノスタルジー」の『未通海女哭虐』、『幼な妻甘々調教』。
 つまり、昭和20年代というか終戦直後の混乱は未踏だったのです。
 そこへ投げ込まれた剛速球。
 リクエストを読んで半日で。ジェダイの騎士を務めながら。ここまで出来ちまいました。
 数字は予定原稿枚数です。まず納まらないと思っていますけど。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
幼なマゾの契り

塩田真造 しおだしんぞう/ショタマゾ
12歳

実浜園子(園生)みはまそのこ/ジツハマゾノコ
11歳

県立木竹(もくたけ/キチク)学園
濃閉宇佐治 のとじうさはる コイジメウサバラシ
薄野譲二 すすきのじょうじ ジョジスキ
道庭好子 みちにわよしこ ドウテイスキコ
帆針丈夫 ほはりたけお ホシンダケヨ

ペドフィル・ビサード Pedfil Bisaad ぺドフィリアでバイでサド


出会い(背景エピソード)

章立て
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その日暮し/ 5

浮浪児狩込/10

弟は美少女/ 5

全裸に焼印/15

訓練と調教/20

接待穴奉仕/15

身代り折檻/10

残虐米軍人/20

絶望の日々/ 5

養子の焼印/ 5

新たな絶望/ 5
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∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 なんというか、『超光速の香織』後藤俊夫(星群)ですな。タイトルと作者は筆者ウロオボエス。違ってたらごめんちゃい。たしか、少年マガジンで単発コミカライズされてます。ネット検索で引っ掛からんけど。
 余談はさておき。
 WILL様の妄想が見事に屹立しているので、そのままPLOTにつながります。筆者のストライクゾーンと相当に重なっています。筆者のほうが、ちょっと年齢高めのゾーンです。U15かU13かはたまたU11か。わずか730日の違いでは有馬温泉。生理・精通の有無、微かな盛り上がりの差異。13は刑法における性交合意年齢という絶対分水嶺でもあるのです。


 20度焼酎220ml+ほろよいサワー(3%)350mlなので、結論を急ぎます。

 現在執筆中の、昭和ノスタルジー@1980年『悦虐へのエチュード~スケバンにリンチをねだる未通マゾ』は、現在執筆中の「さまざまな激痛」を明日くらいに終わらせてから中断。こっちに着手しましょう。
 これまでの実績から考えてリクエストの納品期限12/7には、11月初頭から着手しても間に合いそうですが、夏休みの宿題を8/31から始める習慣はありませんでしたので。〆切のあるやつを最優先です。





テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Progress Report 3:悦虐へのエチュード~スケバンにリンチをねだる未通マゾ

 あわわわ。「爽」が名付けに使えるようになったのは、1990年からでした。
 ので、悪役令嬢(ジャンルが違う)の名前を変更。
楚葉そよにしますた。
 爽子→苑子→爽香→楚葉
 こんなにコロコロしたのは初めてです。
 ついでに(ではないですが)タイトルも変更。副題部分が五七五になって座りがよろしい。
 未通は「おぼこ」と読みます。『未通海女哭虐』でも使いましたね。


 というわけ(記事冒頭)で、あわわわのシーンを御紹介。初期PLOTには無いエピソードです。「梅雨は濡れ透け」と「海水欲情荒らし」の間に入ります。

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   泡踊りと三輪車

 外部入学の希美は内部進学組よりも成績優秀なはずだったのに、中間テストは軒並み平均点を下へ突き抜けて。ちらほらと赤点も取ってしまった。もしも期末テストで同じことを繰り返せば、一学期早々に進級が怪しくなってくる。楚葉に何をどう遊ばれようと、勉強を頑張らなくては。そう決心して、二週間前から復習に精を出していたのだけれど。楚葉はそんなことを斟酌してくれない。
「たまには息抜きも必要だぜ」
 休日に朝から呼び出された。遠くの街へ遊びに行くから、いつもとは違う服装で来いと指示されて、あれこれ服を選んでコーディネイトするという女の子の愉しみを久しぶりに味わった希美だったが。あまりおとなしい服装では楚葉に気に入ってもらえないだろうと思うと、三か月前の希美だったら絶対にしないだろう装いになってしまった。
 まだ処分していなかった古いデニムのミニスカートは、背が伸びているから膝上二十センチ。悩んだ末にノーパン。上はノーブラにノースリーブのサマーセーター。去年のだけど、BカップがCカップになっているので、胸の膨らみが強調される。さすがに三点責めのアクセサリーはやめたけれど、外出のときには必ずといっていいほど付けていたから物足りない――という想いは、強く打ち消した。
 本物の変態になっちゃう。お嫁に行けなくなる。でも……もうじゅうぶんに変態じゃないのかしら。マゾ願望を隠しての結婚生活なんて、我慢できるんだろうか。そんな先のことより。お姉様は来年の三月には卒業する。内部進学ならキャンパスは隣り合っているけれど……スケバンも卒業して、もう構ってくれなくなるんじゃないだろうか。
 考えだすとどんどん不安になってくる。けれど希美の年令では半年先は遥か未来でもある。来年になってから悩めばいいことだと、気持ちを切り替えて希美は家を出た。
 待ち合わせ場所というか呼び出され場所へ行ってみると、今日の楚葉はひとりも子分を連れていなかった。いつものスケバン制服ではなくて、大人びたツーピースを着ている。紫色のアイシャドウとルージュも無し。長髪は元から染めていないので、大学生を通り越して清楚な美人OLといった趣だった。
「今日のおまえは、これだからな」
 名刺大のプラスチックカードと三つ折りの紙を渡された。カードはどこかの会社の社員証で、三つ折りの紙はそこの健康保険証だった。社員証には、希美の顔写真が貼ってある。そして保険証に記された生年月日によると、希美は二十一歳ということになっていた。偽造だ。
「あたし小柄で童顔だから、●学生に間違えられたりするんです」
 楚葉が希美の口真似をした。つまり、今日は二十一歳で押し通せということだ。
「にしても、娼売慣れした格好で来たもんだな。好都合だぜ」
 楚葉が何を企んでいるか分からないままに、希美は電車に乗せられた。
 降りたところは、隣接県の大都市だった。タクシーで(運転手へのサービスとかは無しで)歓楽街へ向かう。
「おまえはここのトルコ風呂で働く――ということにして、新人研修を受けるんだ」
 トルコ風呂がどういう場所かくらいは、希美も知っている。ただ、楚葉の「ということにして」の意味が分からなかったのだが。これからも売春をさせるという楚葉の言葉は覚えていたから、例によってときめきと悲哀を同時に感じただけだった。
 ずらっと並んだ店舗のひとつに、楚葉は迷わず裏口から入って行った。
「先日お話させていただいた角島楚葉です。働きたいって子を連れてきました」
 事務室に通されて、店長という四十くらいの男の面接を受けた。店長と希美がデスクを挟んで向かい合って、楚葉は希美の斜め後ろ、付き添いといったところか。
「きみ、ほんとうに二十歳以上なの?」
 法律では水商売で働けるのは十八歳以上だが、トルコだけは各地で自主規制をしている。地方によっては二十二歳以上とか二十五歳とかもある。この当時、十八歳でトルコ嬢になれるのは、札幌のすすき野だけだった。
 希美は身分証明書を机に並べて、教えられた通りの言い訳をしたのだが、店長は納得しない。
「確かに間違いは無さそうだけど……通報されて痛くもない腹を探られないとも限らないしねえ。残念だが、うちで働いてもらうのは……」
「何が不服だってんだよ」
 スケバンの地金を剥き出しにして、楚葉が凄んだ。身を乗り出して、右の襟を裏返した。
「ここらはシマリじゃねえが、これは知ってるだろ」
 葛島組の金バッジを見せつける。
 店長の顔色が変わった。
「それはもちろん……いったい、貴女はどういった……」
 ヤクザは実力本位の世界ではあるが、同時に漢(おとこ)の世界でもあった。楚葉はどう見ても姐御(幹部の妻)という風格ではないし、だいいち女房(バシタ)が金バッジを持てるはずもない。
「銅じゃねえ、金だよ。で、下手に出てのお願いだけど。とにかく新人研修をさせてやって、今日すぐに客の二三人も付けてやっちゃくれねえか。ずっと働かせろとまでは言わねえからよ」
「は、はあ……そういうことでしたら」
 身分証のコピーだけは取ったものの、システム(取り分)の説明もそこそこに、すぐに研修の運びとなった。葉桜というベテランのトルコ嬢と、三川というボーイが呼び出される。
「俺、いや私なんかが相手役でいいんですか?」
 ボーイは助平顔で驚いている。新人研修の相手役は(よほどの年増かブスでない限り)店長が受け持ってきたのだ。
「こんなに若い子に、中年のおっさんでは可哀そうだろ」
 というのは口実。得体の知れない娘と関わるのは願い下げ。しょっ引かれるにしろ指を詰めるにしろ、損な役回りは押し付けてしまえという腹積もりだった。
 とは知らない三川は張り切って客の代役を務める。希美の倍以上の年齢で、今日はまだ客の付いていない葉桜も、楚葉にこっそりとチップ(ヤクザの世界に一万円未満の通貨は存在しない)をもらったのだから、手は抜かない。
「こっちから待合室へ出向くお店もあるけど、うちはお客様に来ていただくシステムね」
 個室に入るなり、客に見立てたボーイの前に座って、葉桜は三つ指を突いた。ボーイの後ろには楚葉がくっついて来ているが、彼女は無視するというのが事前の取り決めだった。
「本日のお相手を務めます葉桜です」
筆者註:恋人感覚とかの接客が取り入れられるのは世紀末以降であり、この時代のトルコ嬢はプロ意識が強かった。
ついでに随所で述べるべき説明をひとまとめにしておくと――今日の高級店で常識の即尺即生は未開発で、生本番もまず無かった。そもそも、この物語の数年前までは手コキ(スペシャル)やせいぜい指挿れ(ダブル)までの店が大半だったのである。
なお、章題にもなっている泡踊りであるが、近年はローションを使って即物的にマットプレイと称している。筆者の個人的感想を述べれば、滑り過ぎて女体で遊んでいる気がしない。客の転倒事故もあるとか。やはり、適度の滑りで泡まみれになりながらのくんずほぐれつが、ヴィジュアル的にも(モザイク的にも)好ましい。こういうのをノスタル爺というのかもしれないが。
 挨拶が終わると、まず客の衣服を世話女房みたいに付きっきりで脱がす。客をベッドに腰掛けさせておいて、事務的にならないよう適度の含羞を交えて自分も全裸になる。
 脱いだのだが。葉桜と三川を呆れさせてしまった。
「うへえ。ノーパンノーブラか。それって……?」
「天然じゃないわよね。剃ってるんでしょ」
 二人とも希美にではなく楚葉に目顔を向ける。
 楚葉は、部屋の隅の形ばかりの応接セット(これは、最後に五分間だけ客をまったりさせるまで出番が無い)にちょこんと収まって、知らん顔。
 葉桜も三川も、それぞれに希美と楚葉の関係を想像して、それで自分を納得させる。金バッジのことは知らないが、葉桜にとっては気前の良い一見の客だし、三川としても、現役生徒にしか見えない美少女に本番研修できるのだから、裏があろうとなかろうと気にはしない。二人とも、楚葉に見られる気恥ずかしさを感じながらも研修を進めていった。
 衣服をハンガーに掛けてから、個室の半分を占める浴場へ客を案内して、座面が大きく窪んだ俗称スケベ椅子に座らせて。まずは股間というかペニスを素手で洗う。爛れていたり客が痛がったりしたら病気の疑いが濃厚なので、粘膜つまり唇とか性器を接触させないように注意する。できればその日のうちに医者に頼んで抗生物質を注射してもらう。
 説明を聞いて、希美はぞっとした。売春で病気をもらわなかったのは、幸運以外の何物でもない。
 希美の内心とは関係なく講習は進む。
 ペニスを洗い終えたら、客はバスタブに放り込んでおいて、六十分コースまでなら即座にトルコの花、泡踊りの準備にかかる。ロングコースの場合は、客と一緒に入湯して、膝に乗ったり指挿れで愉しんでもらってから潜望鏡プレイ。
 三川がバスタブに肩を預けて身体を水平に延べると――勃起したペニスが湯面から顔を出す。潜水艦の潜望鏡みたいなのを、真上から咥える。ゴムは着けない。
 葉桜がお手本を示してから、希美も実習。フェラチオは売春のときに二回だけ客の求めに応じたが、きちんとテクニックを教わるのはこれが始めてだった。
 面倒くさくて顎も舌も疲れるというのが、希美の感想だった。本番行為は、ただ脚を開いて寝転がっていればいい。
 潜望鏡遊びで魚雷を発射させるのは、若い男性だけ。次発装填に時間がかかる(軍事用語を使って教えてくれたのは、ボーイの三川)三十歳以上は、暴発させないように嬢が適切に判断しなくてはならない。
 潜望鏡遊びが一段落着いてからは、ショートコースと同じ。
 壁に立て掛けてあるセミダブルベッドと同じくらいに大きなエアマットを洗い場に延べて。洗面器に湯を入れてたっぷりシャンプーを垂らして。小さい子の遊びの『カイグリカイグリ』みたいに(もっと早く)手を動かして、チョチチョチ泡泡にする。
 エアマットをシャワーの湯で温めてから客を腹這いにさせて。その上におおいかぶさって。くねくねと身体を擦り付けて背中を洗う。脚を開いて股間を男の太腿に滑らせたり、もちろん乳房もスポンジ代わり。
 見て聞くだけでは分かりにくいだろうと、希美が男と入れ替わって、葉桜のテクニックを身体で受けてみる。
「ひゃんっ……く、くすうったい」
 のを我慢していると。全身が性感帯といわれる女体の性(さが)、乳首やクリトリスといった局部ではなく、背中も尻も太腿も、ぴくんぴくんと震えてくる。
 さらに。仰向けになった希美に葉桜が馬乗りになって、股間を腹の上で往復させる。
「これが、タワシ洗いだけど。あなたはタワシが無いから、何て言えばいいのかしらね」
 マンコ洗いでいいじゃないの――なんてはしたないことを、希美は思っても言わない。
「洗い方の体位にもひとつひとつ名前があるの。シャチホコとか鯉の滝登りとか。いきなりあれこれしても覚えられないだろうから、セックスの四十八手を応用するってことだけ知っておけばいいかな」
 と言われても。正常位とワンワンしか経験は無いし、知識としても騎乗位と座禅転がし(時代劇画で覚えた)くらい。騎乗位は向かい合っての泡踊りで葉桜さんが実演してくれたけど、その他の体位はどう応用すればいいんだろう。
 戸惑いながらも、三川を相手に基本技だけは習得した希美だった。
 泡踊りの後は、いよいよ本番なのだが。
「ゴムをすぽっとかぶせちゃう娘(こ)も多いけど、とっておきのテクニックを教えてあげるね」
 一万円へのサービスというより、三川に体感させてフリの客に自分を推薦させようという下心かもしれない。
 ベッドに腰掛けた三川の前に跪くと、葉桜はコンドームの精液溜まりを唇で咥えて、垂直に聳え立つペニスに、ちょこんと乗っけた。そして口を開けて、輪ゴムのようになっている縁を唇であむあむあむと巻き下げていく。
「こういうサービスを男は悦ぶのよ」
 葉桜の言葉どおり、すでに美川は一触即発の体勢になっている。それくらいは、希美も分かるようになっていた。
「ああっ……」
 三川が情けない声を上げたのは、せっかく着けてもらったコンドームを巻き上げられたからだったが。希美が新しいコンドームを咥えて跪くと、葉桜のときよりも勢いを増して聳え立つ。
 それから延々十五分。コンドームを三個、噛み破ったり唾液まみれで滑りが良くなり過ぎて巻き下げられなくなったりしながら、希美はどうにか技を習得したのだった。
 そうして、いよいよ本番は。葉桜がベッドに上がったので、三川は期待外れの顔をしたが。
「店一番のテクニシャンが相手で、何が不満なのさ」
 葉桜は希美に向き直って。
「さっき体位のことを言ったら、きょとんとしてたね。四十八手とは言わないけど二十手くらいは教えてあげるから、良く見といてよ」
 正常位で三川を迎え挿れてから、葉桜はさまざまな変形を繰り広げた。腰を高く突き上げる、足を男の胴に絡ませる、逆に足を伸ばしてペニスを挟むように閉じ合わせる。男が足を肩に担げば深く挿入できるし、男は視覚的にも興奮する。
 いったん結合を解いて。くるりと向きを変えて、指を組み合わせるようにして挿入する松葉崩しは、お口直しといった感じで快感は乏しいらしい。
 もっとも、挿入による腟性感そのものは、希美はあまり開発が進んでいない。学校では常にペニスバンドを挿入しているけれど、「いけないことをお姉様に強いられている」というマゾとしての陶酔はあっても、抽挿も振動も身体の動きの反映だけなので、絶頂の体験はなかった。
 松葉崩しの後は、男が下になって騎乗位。大まかに分ければ、対面騎乗位と背面騎乗位。男が仰臥して女が対面で抱きつくのが本茶臼、女がのけぞれば時雨茶臼。男が足を伸ばして上体を起こしているところに女が後ろ向きに腰を沈めるのが本駒掛け。これは座位になる。
 後背位、いわゆるバック、あるいはワンワン・スタイルも、四つん這いだけではなく、体操の前屈みたいなのもあれば、女が俯せに寝る形もある。
 さらに、男女ともに横向きに寝る形や立ったままの挿入。これも対面と背面がある。女の足を一本持ち上げるだけで結合感が違ってくる。
 見ているうちに、希美はパースペクティブがおかしくなってきた。そして、げっぷが出そうになる。
 あたしには関係が無いことだとも思った。女はセックスでは受け身でいるべきだと思う。男の人がいろんな体位を望むのなら、あたしを好きなように扱ってください――というのが、希美のマゾ願望だった。
 あたしにはトルコ嬢は務まらない――と、希美は思ったけれど。お姉様の命令で、そのように振る舞わされるとしたら、それはそれで素敵かも知れないとも思い直す。
 葉桜が体位を披露し終わった時点で、研修が始まってから二時間半が過ぎていた。最長のプレイコース百二十分を超えている。葉桜の提案でひと休みとなったのだが。楚葉がアンタッチャブルというのは、葉桜も三川も店長の態度から察していたし、希美も身の上話なんかしない。楚葉にいたっては、部屋に入ってから一言も喋っていなかった。
 結局――三川が店の料金システムとかを説明して、葉桜は面倒な客のあしらい方のレクチャーなど。無難で(トルコ嬢として働くなら)有用な話に終始した。
 一戦(プレイ時間と客の精力によっては二戦三戦)した後は、時間の五分前までまったり歓談したり。各種の銘柄を揃えてある煙草を勧めたり。客の煙草への火の点け方と、自分は勧められても吸うべきではないことも教わった。
 最後は客の着付けをさりげなく手伝って、三つ指で送り出す――というのは口頭での説明だけで。
 せめて騎乗位と立ちバックくらいは覚えておきなさいという葉桜のアドバイスで、希美は体位の講習も受けることに(楚葉に顎をしゃくられて)した。ディルドでない本物を挿入されるのは二か月ぶりだった。
 三川は本気で逝かそうと張り切り、葉桜は逝く振りの演技指導――の最中に、壁の電話が鳴った。
 葉桜がしばらく電話で話し込んで。
「いきなりだけど、三輪車のお客様よ」
 三輪車というのは、一人の客を二人でサービスすることをいうのだと、葉桜が説明する。
「それでね、サービス料の分配で相談したいから、角島さんだけ事務室に戻ってほしいそうよ」
 後輪は二つあってもハンドルは一つだから、どうしても二人の嬢は本指名とヘルプの関係になる。
「面倒だな。葉桜姐さんがみんな取ったって構やしないのに」
 やはり楚葉の目的は金ではなく、希美を辱しめることにあったようだ。
「どっちみち、きっちり服を着た女の子に見物されるのを悦ぶ客は――いないこともないけどね」
 楚葉は、やんわりと追い出された格好。三川は希美に未練たらたら接客の仕事に戻り、葉桜は希美に手伝わせて部屋の清掃に取り掛かった。バスルームをざっと湯で流し、バスタブの湯は張り替える。ベッドはシーツを交換。たいていの店は、一人の嬢に一つの個室を割り当てている。嬢は一日交代の一国一城の主というわけだが、その分、部屋の切り盛りをしなければならない。
 清掃が終わると身なりを整える。この店には制服とかは無くて、カジュアル系なら何でもいい。葉桜は、素肌にノースリーブのジャケットと膝上十五センチくらいのフレアーミニ。十年以上前に流行ったファッションだ。葉桜よりも小柄な希美の膝上二十センチとノースリーブのニットセーターは、下着無しだとカジュアルではなくてビジュアルだが、セーラー服よりはTPOに敵っているだろう。
 準備が整って、葉桜が事務室へ電話を入れる。楚葉が戻って来ないのは分かっているので、心細くなる希美だが――最初の売春だって独りだったんだ(覗き穴のことは忘れている)から、葉桜さんと一緒なんだからと、自分を落ち着かせる。
 すぐに客が、三川ではないボーイに案内されて、個室の前に立った。希美は葉桜と並んで三つ指で出迎える。
 迎えた客は四十半ばくらいか。アロハシャツの半袖から、ちらちらと模様が覗いている。二対一なんて贅沢で変態っぽい遊びをする人は、やっぱり堅気じゃないんだと思った希美だったが。アロハシャツの下には、背中一面に極彩色の模様。初めて接する本職のヤクザだった。
 研修の続きなら希美に主要な仕事を任せるべきだが、粗相があっては一大事とばかりに、葉桜が正面を担当して、希美は背中を流す。それでも、肩越しに客の股間は覗けてしまう。
 まだ垂れているというのに、すでに三川が最大に勃起しているくらいのサイズだった。しかも、雁首のまわりと竿の中間に幾つもの疣(いぼ)が浮かび上がっている。病気ではないかと希美は疑ったが、葉桜に握られても客は平然としている。
「真珠入りを知っているようだな」
「そりゃ、こういう娼売をしてますもの。私、腰が抜けるかもしれません。失礼があっても赦してくださいね。でも、ちゃんと逝かせてくれなきゃ恨みますよ」
 二人の会話から、その疣は病気ではなく、女を哭かせるための人工的な細工だと分かって――希美は安心したり呆れたり。そんな凶器を体験してみたいとは思わなかった。
 戦場をバスタブに移しての遊びは、指揮官が葉桜で戦闘員は希美。バスタブに身を沈めた葉桜が客を下から(乳房を背中に押し付けタワシを尻に擦り付けながら)支えて、浮上した望遠鏡に希美がアタック。
「んぶぶ……」
 口いっぱいに頬張って、それで精いっぱい。最初から喉の奥につかえてしまって、舌を絡めたり上下運動をしたりの余裕が無い。
「手がお留守になってるわ。玉を揉んで差し上げなさい」
 慌てて手を動かすと。
「痛いぞ。金玉は胡桃じゃねえんだ」
 やんわりと叱られた。それが痩せ我慢だとは、希美には分からない。けれど、仕返しをされた。
「急速潜航」
 客は希美の頭を両手で押さえて腰を沈めた。当然、希美の顔は水の中。客は片手を希美の乳房にまわして、乳首を抓る。爪を立てたり強く引っ張ったりはされなかったが、指の腹で押し潰されて、じゅうぶんに痛い。
 希美はしばらくのあいだ、客のしたいようにさせていたが、息が苦しくなってくる。両手を客の太腿で突っ張ると――あっさり赦してもらえた。
「ぷはっ……はあ、はあ」
 大袈裟にしたほうがいいだろうと考えて、わざと荒い息遣いをした。
「わしが初めての客と聞いているが――なかなか肝が据わっているな」
 客が手を伸ばして股間をまさぐり、穴をくすぐった。
「ありがとうございます」
 希美の返事も客を満足させたようだった。
 バスタブの次は、いよいよ泡踊り。これも変則で、最初は客を側臥位にして前後からサンドイッチ。葉桜と希美が上下(寝ているから前後)に動いて、これはもう、身体を洗うとかではなく、女体密着プレイ。
 これはすぐおしまいにして。本格的な踊りは希美が舞台になった。つまり、エアマットに仰臥する希美の上に客が寝て、その上で葉桜が動く。
「む……」
 ぎゅううっと二人、体重の差を考えれば希美の三人分にのしかかられて、希美は息ができないくらいに圧し潰される。客としては、まさしく肉布団に寝て肉スポンジに擦られるのだから法悦境だろうが。
 客は俯せになっているから、顔と顔とが向かい合う。目の焦点が合わない睨めっこなんかしててもしょうがないし。葉桜さんなら、きっとこうするだろうと――希美は頭をもたげて、客と唇を重ねた。それ以上は積極的になる必要もなく――客は舌を差し挿れてきて。希美の口中を貪りながら、両手で乳房を弄びにかかる。
 客は肘をエアマットにめりこませて体重を支え、乳房をつかんで希美の乳首と自分のとを擦り合せる。
「あ……くすぐったいです……くううんん」
 指で弄られるのとはまるきり違う触感だった。背筋が粟立つ。
「いい声で鳴くな。とても十五やそこらの小娘とは思えないぜ」
 それどころではなかったから、客の言葉を希美は聞き流した。客も間違ったことは言っていない。希美はここでは二十一歳ということになっているのだから、十五歳に思えなくて当然だ。しかし、希美は実際の年齢を店長にも明かしていない。この客は誰から間違った年齢を聞き出したのか、疑問に思うべきだったろう。
 客は、さらに手を下へずらして、トルコでいうところの壺洗いまでして、絶妙の指遣いで希美を蕩けさせた。プレイの手順を飛ばして、そのまま本番に突入してもおかしくない展開だったが――寸前で主導権を葉桜に返した。ので、さらに十分ほどの間、希美は二人分の体重に押し潰されていなければならなかった。
 泡踊りが終わって、対一のプレイなら後で片付けるエアマットを葉桜が先に片付けている間に、希美が覚えたばかりのテクニックを駆使してコンドームを装着。
「こっちじゃないと無理かな」
 Lサイズを葉桜から渡されて、コンドームにも各種サイズがあると、初めて知った希美だった。客の怒張は、これまでに希美が相手をした八人(売春の三日間と、今日の三川)のどれよりも大きかった。そのうえ竿の途中に疣まであるのだから、Lサイズでも苦労させられたのだった。
 いよいよ本番となったとき。
「ガキの相手は御免だな。葉桜姐さんだったね、あんたに頼むとしよう」
 客の求めを拒む理由は無い。こんな大物を相手にしなくて良かったと、希美はほっとしたのだが。この場を仕切っているのが楚葉お姉様だったら、絶対に体験させられていただろうなと、それを残念には思っていないと自分に言い聞かせなけれなならなかったのも事実だった。
 本番が終わると、客はさっさと身繕いを始めた。
「まだ時間はありますわ。三人でお話でもしませんか」
 時間前に客を帰すと、トルコ嬢の面目に係わる――よりも。あの嬢は時間いっぱいのサービスをしないとか、悪評につながりかねない。
「いや、ちょっと店長に話があるんでね。葉桜姐さんのことじゃない。こっちの、希美ちゃんのことだ。ああ、これじゃないから心配しなくていいぞ」
 客は指で丸を作って額に当てた。警察ではないという意味だ。
 年齢のことだろうかと、希美は不安になった。そういえば、パイパンを見て動じなかった人も初めてだ。けれど、あれこれ考えている暇は無かった。客に急かされて服を着て(すっぽんぽんにスカートとサマーセーターだから手っ取り早い)、客に連れられて個室を出た。
 店長室に入ってというか押し込まれて。希美は目を疑った。部屋の隅で楚葉が正座していた。希美が仕込まれている屈辱的な開脚ではなく、両膝をきっちり揃えて、両手を太腿の上に置いている。
「少しは反省したか」
 教師ほどにも威厳のない穏やかな声だったが、楚葉は両手を床に突いて土下座した。
「組のバッジを勝手に使ったこと、誠に申し訳ありませんでした。組とは関係の無いお店に迷惑を掛けたことも反省しています。ごめんなさい――親父様」
 二重三重のショックで、希美は呆然自失。
 こともあろうに、楚葉お姉様のお父様と……本番まではしていないから、ニアミスかしら。あのツッパリの怖いもの知らずのお姉様が土下座して謝るのも、考えられないことだった。こんなに早くお父様が現われたのは――すぐに店長が葛島組に電話して金バッジの真偽を問い合わせて、間髪を入れずに飛んで来たとすれば、時間的には不可能じゃないけれど。職員会議とか多数決とは無縁の社会だからこその疾風迅雷だ。
 楚葉が顔を上げて、しかし目は伏せている。左右の頬がうっすらと赤いのに気づいて希美は、見てはいけないものを見てしまったように感じた。お姉様はビンタをする人で、される人じゃない。それにしても――ビンタを食らったのは一時間半よりも前のはず。それが、まだ痣が残っているなんて、よほど強くぶたれたんだ。
 だけど――親父様だなんて、まるで時代劇。でも、ヤクザの父親にスケバンの娘が呼び掛けるとしたら、パパではおかしいしお父様では、どこかのお嬢様になっちゃう。父上だって時代劇だ。ヤクザ映画なら親父だろうけど、この場面にはそぐわない。
「二つも三つも年下の堅気の娘をオモチャにするのも、どうかと思うが――希美ちゃん、ほんとうにきみは楚葉に甚振られて悦んでいるのかね?」
 突然に話を振られて、呆然自失どころではなくなった。
「あの……ええと……」
 お姉様に迷惑を掛けないような返事をしなくちゃ。希美は、それしか考えなかった。だけど、咄嗟に話を作れるものでもない。数秒のためらいがあって、希美は自分に嘘をつかないと決めた。
「自分から望んでお姉様にリンチをしていただいたときは、すごく痛くて後悔しました。でも、そのときのことを思い出すと――オナニーしちゃうんです。あれから一度も本格的に虐めてくださらないのが、不満です。でも、羞ずかしいことはいろいろとご命令してくださるので、それは……悦んだりはしませんけど、死にそうなくらいにときめいちゃいます」
 ふうう。楚葉の父親は、長い溜息を吐いた。
「野郎のサディストは珍しくもないが、本物のマゾ女てのは、初めてお目に掛かったな。楚葉に捨てられたら、わしを頼って来い。そういう特殊な店を紹介してやる。トルコより稼げるぞ」
「捨てるもんかよ」
 楚葉が割って入った。
「希美は生涯、おれのオモチャだ」
 希美は感動して、自分はまともな結婚なんかしなくていいとも思ったけれど。お姉様だって、いずれは結婚するんじゃないかしら。そうしたら、あたしはどうなるんだろうか。ふと心配にもなるけれど――卒業さえ遠い未来の話なのに、そのさらに先のことなど、実感を伴なうはずもなかった。
「まあ、スケ一人の人生をあれこれ考えてちゃヤクザは務まらねえわな」
 男は海に沈め女は風呂に沈める。それくらいのことは平然としてのける男であれば、それは本音だろう。
「それじゃ、希美ちゃんよ。ふつつかな娘だが、よろしく頼むぜ」
 こちらは冗談に決まっている。
========================================
 「泡踊り」は石鹸(ボディシャンプー)を使います。洗面器で泡立てる仕草は、まさしく「カイグリカイグリ」です。これは現在のローションを使った「マットプレイ」にも引き継がれています。残念なことに、「ちょちちょちアワワ」にはなりませんけど。カイグリのシーンは『昭和集団羞辱史:浴場編』と『幼な妻甘々調教』でも書いています。


$こうず4

 この『独奏』パートはモジュール式と申しますか、エピソードの羅列です。その気になれば、なんぼでも増やせます。「梅雨は濡れ透け」の前にも「夏制服はスダレ」を入れました。
 画像は「夏制服はスダレ」のイメージです。


 今は「海水欲情荒らし」を昼の部と夜の部に分けて、後半は「さまざまな苦痛」として執筆中。
 他の章題は具体的なのに、これだけは抽象的です(『協奏』パートでは抽象ぽいのもあります)。なんとかしたかったのですが。「花火と鞭打ち」では6文字「花火と鞭と洗濯挟み」では9文字。7文字に納まらないので苦衷の章題ではあります。


 ともあれ。全31章のうち14章執筆途中段階で230枚/7万7千文字。このペースだと、やはり500枚ですな。

DLsite affiliate キーワードは「制服 切り裂き」


こちらはズバリ「泡踊り」

テーマ : 18禁・官能小説
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濠門長恭

Author:濠門長恭
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