Progress Report 6:『特別娼学性奴』

 7月のシフトが、ようやく決まりました。3,7が休みなので、ここらで脱稿すれば、校訂もBFも余裕。。
 今はSodomy中盤で、床屋に行ったりなんかしてると、明日に持ち越し。
 その後が、クライマックス Showtime です。以後は、2年間の点描 Sequel と、5~10枚ずつの SatisficEND と SadisticEND 。ラストは改題しました。Sに拘り韻にこだわっています。
 ま、レポートはさっさと片付けて、本日執筆枚数18を25くらいにしておきますか。平日15とか行くくせに、休日はブログ更新したりちょこまかゲームしたり(;^_^A
 ちなみに、本章(Skill)終わりで480枚。現在は505枚目を執筆中です。


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Skill

 午前中は各教室で見世物になって、午後はせいぜいY6までの学習内容を、わたくしとチャーリイとジニアが手分けして、二期生の四人にほとんどマンツーマンです。四人の成績がかんばしくないときに責任者として半分の罰を受けるのは、わたくしだけですけれど。
 放課後は、SS生徒としての課外活動です。ずいぶんとポルノビデオ(ほとんどは国内では非合法の代物だと思います)を鑑賞して、わたくしの実用的な知識も二期生に負けないくらい豊富になってきました。でも、知識だけです。
 特別奨学生契約書の4項に書かれてある『就職に必要な技能を習得する為の講習』が始まったのは、十月の中旬からでした。
 外部から講師が招かれました。チャーパンでソープランドのコンパニオンをしているカガリ・アカギ嬢です。ランドといっても国家とか大規模な遊園地のことではなく、ビルの一画くらいです。それでも国(land)という名前がついているからでしょうか、コンパニオン嬢のことは泡姫(soap princess)と呼ぶのだそうです。
その国では入浴と特殊なマッサージを提供して、ほとんど百パーセントの確率でお客とお姫様は電撃の恋に落ちて――SS生徒が来賓と『歓談』するようなものですね。違うのは、コンパニオン嬢はお客から個人的に(現金の)プレゼントをもらうことくらいでしょうか。
 入浴してリラックスする習慣の無い西欧社会では定着しそうもないサービスですが、ソープランドで行なわれる特殊マッサージは、あまりにも特殊で、『就職に必要』というよりも『きわめて有利な』技能ではないかと、学園つまり理事長は考えたのでしょう。だから、最初から広すぎるシャワールームに大きなバスタブまで設置されていたのです。
 講習は、全員が首輪だけの完全な全裸で受けました。『完全な全裸』は、重言ではありません。鎖の貞操帯も外してもらって――という意味です。
 実技講習の最初の段階では、SS生徒同士がペアを組みました。チャーリイとジニア、ヌビアンとアビリア。ウラニアとフュリーは、女の子同士です。わたくしは、カガリ嬢の相手役に指名されました。最初だけです。途中からペアの組み合わせは変わりましたし、最終段階では教師や延長教育生徒にお客役を務めていただきました。
「さいしょにいっておきますが、おとこもおんなも、えろちっくなきもちよさをかんじるばしょは、おなじなのです――さおとくりとりす、たまとらびあがにているというだけでなく、ゆびさきとか、みみとかもふくめて、です」
 だから、女性が女性を練習台にして身に着けたテクニックは、そのまま男性にも応用できるのだと――初耳です。わたくしは、陰茎と陰核が発生学的には同一部位だという知識を持っていましたけれど、あらためて指摘されるまで、そんなふうに考えたことがなかったので、目からうろこが落ちる思いでした。カガリ嬢のレッスンをマスターして、セキスパートとして他の六人に抜きん出てみせましょうと、心に誓いました。
 性奴隷も売春婦も、つまりはSEXを商品にすることに変わりはないです。そして、わたくしは不覚にも、そういう契約を(半ばだまされてとはいえ)結んでしまったのです。逃れられない運命ならば、前向きになりましょう。常に学年主席を争っていたわたくしです。この道でもトップになってみせます。処女を喪失してから、そういうふうに考えるようになってきました。
 それにしても、なんて卑わいな『マッサージ』なのでしょう。最初にお客の指を洗うのですが、それには膣を使うのです。指を一本ずつ入れていただいて。それから、女性器をお客の腕や太腿に擦りつけて、女性器をブラシ代わりにするのです。
 もっとも、このテクニックを教えてくれるとき、カガリ嬢は苦笑していました。
「ほんとうは、けのブラシであらうのですが、みなさんはパイパンですね」
 パイパンというのはチャーパンの言葉で、絵柄が印刷されていないゲーム札という意味だそうです。だから『ブラシ洗い』ではなく『スポンジ洗い』だと、名付けてくれました。
 卑わいといえば。お客の身体を洗うための椅子も、想像を絶して卑わいです。分厚いアクリル板を長方形に曲げて、両端は六インチ開いています。隙間のある側が座面です。殿方が腰掛けると、男性器は隙間から下に垂れます。だから、ていねいに洗えるのです。応用技としては、コンパニオン嬢があお向けになって長方形の中に頭を突っ込んで――洗った後ですから、パンツを脱いだばかりの陰茎をくわえるよりは、ずっと衛生的です。肛門までなめるのが常識だそうです。
 この特殊な椅子を使うよりも、さらに桁違いに卑わいな洗い方もあります。それには、大きなエアマットを使うのです。プールに浮かべたら三人くらいは乗って遊べそうな大きさです。お客はマットに寝ていただいて――全身を石けんの泡まみれにしたコンパニオン嬢が抱き着いて、身体をくねらせて全身を洗うのです。泡踊り(bubble dance)というそうです。
 最初にカガリ嬢がわたくしをお客に見立てて模範演技を披露したのですけれど。わたくしのほうが小柄なので、勝手が違って苦労しているようでした。それでも、ダンスの神髄を余すところなく体験させていただきました。
 ひと言でいえば、くすぐったいです。でも、乳房や股間を背中に押しつけられても、ちっともエロチックには感じませんでした。実のところ、身体の背面は(お尻も含めて)神経の分布が疎らなので、性感には乏しいのだそうです。そうかしらと、疑う気持ちはあります。背中をそっとなでられると、ぞわあっとします。くすぐったいです。お尻については言を待ちません。もしかすると、やはり、男性と女性とでは性感帯が違うのではないでしょうか。
 ですけれど。カガリ嬢は月に(自身の手取で)五千ポンド以上を稼いでいる売れっ子だそうです。一流の専門家の言葉を素人が疑うのは間違っています。彼女に劣らないだけのテクニックを身に着けて、それから自身の経験に基づいて判断すべきだと思います。
 彼女の言によると、男性が泡踊りを喜ぶのは、そこまで女性に奉仕をさせているという――支配欲が満たされるからだそうです。これは、俗説の言い換えに過ぎません――男は女を支配したがる存在であるという。ですけれど、真実でもあると思います。女は男に支配されたがる存在であるという対偶命題と共に。
 理屈は、ベッドに張り付けられているときでも考えられます。今は、とにかく実践です。
 攻守所を入れ替えて、カガリ嬢をステージにして、わたくしが踊る番になりました。男の人に比べれば狭いステージですが、それでもわたくしよりは広いです。
 そのステージに乗っているだけでも、テクニックを要求されるのだと思い知りました。とにかく、石けんの泡のせいで、背中から滑り落ちそうになります。といって、ステージにしがみついては、お客を不快にさせるだけです。うまくバランスを取って、身体をくねらせて、意識して乳房を背中に押しつけなければなりません。マーコットでは難しいです。カガリ嬢のメロンまでは望みませんけれど、ジニアのリンゴは欲しいです。ないものねだり(cry for the moon)はやめます。
 お客にあお向けになっていただいたら、勃起した陰茎に淫裂をこすりつけます。けれど、この段階では挿入してはいけないのです。それでいて、じゅうぶんに『女性』をアピールするのです。乳首と乳首を擦り合わせたり、上下逆さになって、いわゆる69の体勢で口を使っての奉仕もします。この部分は、必要なポールがステージに備わっていないので、省略しました。ただし、さり気なく石けんを洗い流してから出ないと、自身の健康にも良くないし、求められてディープキスをするときに、お客に不快な思いをさせます。
 カガリ嬢に及第点をもらうまでに、一時間以上も踊り続けて、腕も足も腰も痛くなりました。社交ダンスより、よほど難しく体力も要求されます。
 ちなみに、その日の講習で及第点に達したのは、わたくしの他にはフュリーだけでした。
 実際の接客では、たとえば四十五分とか百八十分といった時間の制約があります。短いのは大衆向けのお店で、カガリ嬢が勤めているお店では百二十分が最短だそうです。いずれにしても、最後は電撃の恋を成就させるのですが、それまでには時間の長短によって、いろんなプレイが組み込まれます。ああ、タフな男性ですと二ラウンドまれに三ラウンドということもあるのですけれど、それは事前にお客の希望を確かめておく必要があります。
 わたくしとしては、そういう打ち合わせはしたくないです。お客に自由に振る舞っていただきたいと思います。けれど、ことにこの国ではなじみのないスタイルですから、プロフェッショナルとしてわたくしがリードしなければならないでしょう。今から気が重いです。
 それはともかく。最初の講習で教わった応用プレイは、ひとつだけでした。潜望鏡といいます。お客にバスタブに浸かっていただいて、腰を浮かせて、勃起した陰茎を湯面から突き出してもらうのです。それを潜水艦の潜望鏡に見立てて――真上からくわえてフェラチオをするという理屈が分かりません。潜望鏡を発見したら爆弾をたたきつけるか爆雷を放り込むのが常識だと思います。これは、他の六人も同意見でした。
 夕食までみっちり三時間の講習を受けて。全身が湯でふやけ切った感じになりました。身体の節々が悲鳴を上げています。みんな疲れ切って早めに就寝したのですが、チャーリイとジニアは、わたくしをX字形に拘束する手間だけは惜しみませんでした。
 連日の講習。週末なんか、午前中に三時間、午後からは二期生へのマンツーマン補習、それが終わってから、また泡姫の実技講習が三時間。凄まじいハードスケジュールですが、これ以上をカガリ嬢は月に十五日も繰り返しているのだそうです。尊敬します。
 売春婦なんて、股を開いてベッドに寝ていればいい――なんて、心の奥では見くびっていた自分が恥ずかしいです。もっとも、わたくしだけは性奴隷ですから、サディストにいろいろ痛めつけられるんだろうなと、それは覚悟していましたけれど。それだって、男に好き勝手されるだけのことです。能動的に振る舞って、持ち時間の配分まで考えなければならないなんて、肉体労働者であると同時に管理職でもあるのです。
 わたくしには務まりません。泡姫としての技能は身に着けても、それを主体的に発揮するのは間違っていると――講習が進むにつれて、思い直すようになりました。というよりも。驚異的なテクニックを見せつけられて、思考停止に陥っていたのでしょう。
 魂を高潔に保つということと、みずから進んで男に身体を売るという行為は、両立するはずがないのです。契約に縛られて、命令されて、心ならずも男に(とは限りませんけれど)犯される――それが、青い血をおとしめない唯一の身の処し方です。そして、たとえ命令されたって譲れない部分は……苛酷な懲罰に甘んじるしかありません。
 もちろん、そういった決意は言葉にも態度にも表わしませんでした。カガリ嬢に同情されたくなかったからです。わたくしたちセキスパート奨学生は、将来の高収入のためにみずから進んで特殊技能を学んでいると、カガリ嬢は信じているようです。わたくしの事情については、かなり詳しく知っているようでしたけれど、それも。父の借金を返済しながら、貴族令嬢にふさわしい名門学園を卒業するために、この道を選んだ。そんなふうに校長から聞かされて、それを信じているようでした。ええ、大筋は間違っていませんとも!
 その誤解を訂正するつもりはありません。込み入った内容を理解するほど、彼女の語学力は高くないでしょうし。有色人種に同情されるなんて、それだけでプライドがずたずたに引き裂かれます。いえ、カガリ嬢本人を見下しているのではありません。ただ、彼女が属する人種がコーカソイドに劣っているという、普遍的な真実を言っているだけです。白人奴隷は、それでも有色人種よりは身分が上なのです。
 ――講習の最終段階の、教師や上級生を相手にした実習については、語りたくありません。どうせ、来賓を相手にした本番のお話をしなければならないのですから。
 ただ、本番の『接待』をするにあたって、わたくしはじゅうぶんな自信を持っていました。二週間の集中講習を終えてイングルを去る(のか、しばらくは観光をしてまわるのかまでは知りませんけれど)にあたって、カガリ嬢は全員にトリプルAの評価をくれたのです。
「みんな、ソープランドではたらけば、すぐにナンバーワンになれます。チャーリイとヌビアンにも、しょくばはあります。でも、いますぐはだめです。Y13をそつぎょうしてからですね」
 カガリ嬢の言葉は法律面での無知を露呈しています。売春婦に就労ビザは発給されませんから、それでもチャーパンで働こうとするなら、非合法な手段しかありません。それなら、Y13だろうとY8だろうと関係はないのです。
 もっとも、わたくしはそういったことを考える必要はありません。特別奨学生契約書の3項に従って、わたくしは学園を卒業したら売り飛ばされるのですから。もしかしたら、母様が借金を返済し終えて、なおかつわたくしを買い戻せる(契約書1項の但し書きです)だけの資金を蓄えて卒業までに迎えに来てくださるかもしれませんけれど――無駄な希望は抱かないようにします。
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江戸レズ1

 ま、さらっと流しました。
 実技講習は、他にも花電車、カーマスートラ、ポールダンスなどなどありますが、これは Sequelで数行ずつ(で済むかなあ?)触れるくらいにしておきます。


テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Progress Report 5:『特別娼学性奴』

 どうにか峠は越したかな。
 只今、Submissionの後半です。キャティ・ストック(虐められラビニア)の仇討に父上が大西洋を越えて乗り込んできて、渾身会心痛恨の十連撃くらいでメコ筋縦打ちを食らわせて。それでは足りずに、PLOTで予定していなかった、濠門長恭劇場定番の後ろ手錠強制騎乗位をさせているところです。まだピストンを始めていませんが、当然クリを摘まんで、スクワットをしたら自分で自分のクリ虐め――の予定です。
 この後、同じ章でキャティ自身によるヘアブローチ復讐(
Progress Report 0 参照→)が、やっぱり20枚はいくかな。
 その後のSkillは、これまた定番のソープ講習です。講師は本場チャーパンから呼び寄せた現役嬢のカガリ・アカギ(加賀、赤城)です。
 ヒロインは「実技講習を受けるという契約ですから、ちゃんと守りますわ」で、常に学年トップを争っていたプライドに懸けて、こちらも頑張るとか? まあ、尺は短いでしょう。気分的には『ママと歩むSlave Road』何頁から何頁 および 『昭和集団羞辱史:浴場編』何頁から何頁を参照――てなものですから。
 Sodomyもカルメン77に流す予定。
 元々は終章のはずだった Showtimeはじっくりねっちりの予定ですが。
 以後は点描。最後のデュアル・エンドもそれぞれ20枚くらいでしょうか。
 さいわい、6/29、30が連休ですので、ここでShowtimeに突入できれば、遅くとも7/10までには脱稿。間に合いそうですね。
 しかし、現在で440枚。とんでもないことになったものです。


 さてさて。今回は、ずううううっと引っ張ってきた除膜式です。
 強制騎乗位破瓜も大好物なのですが、ヒロインは、あくまでpassiveにアレコレされてきたので、activeに動くのは絶対に嫌! と抵抗してしまって。そこで厳罰拷問で命令に服従させると尺がとんでもなくなるし爾後の展開が破茶目茶るので、あっさりと――今回は1982年のユナイテッド・キンガム・オブ・イングルが舞台なので現代日本のエロ用語は控えておるのですが、書いてるときもそういう意識は無かったのですが、読み返してみたら、つまりはマングリ返しです。実に淡々と破瓜がいきました。そして、お掃除フェラで締めくくり。
 ということで、Sexperienceを一挙公開先に立たず。


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Sexperience

 バカンスも娯楽も無く勉強も出来ず、貧しい食事で過ごした夏休みでしたが、無理に捻り出したような雑務をあれこれとさせられた五週間でした。そのうちの一日には、人生でただ一度きりの女の一大事も経験させられました。
 順を追ってお話しします。
 八月に入ってすぐ、わたくしは大変な重労働を押しつけられたのです。
 父様が寄付をしたフッド記念小講堂。こけがはびこって、すこし見苦しくなっています。このまま十年も放置すれば、むしろ風格になるのでしょうけれど。これを洗い落としてきれいにしろと、校長に言いつけられました。高圧水を噴き付けて汚れを吹き飛ばすのです。水浸しになって地面に落ちたこけは、シャベルですくって一輪車で運んで一か所に集めておけば、後で清掃業者が回収に来るそうです。
 高圧放水が建物に侵入しないよう、すべてのよろい戸を締めて、それでも光が漏れている部分は内側からガムテープで目張りをします。この仕事だけで、丸一日かかりました。閉めきった中での作業でしたから、汗びっしょり。コインランドリーの使用までは禁止されていませんが、わたくしはコイン一枚持ち合わせていません。校長は貸してくれません。とりあえずは制服を水でぬらしたタオル(これも、学園からの貸与です)で汗を拭いて陰干しにしました。
 二日目からは、エンジン付きの高圧洗浄機で(窓は狙いを外して)建物に放水です。ずどどどどとエンジンが小タンクに蓄圧して、それで大タンクに貯めた水道水を噴き付けるのです。
「また汗をかくし、その前に放水でびしょぬれになるから」
 そんな理由で、全裸での作業を命じられました。夏休みでも、運動部の生徒の一部は、新シーズンに向けたトレーニングで学園に残っています。それに、普段は出来ない大規模なメンテナンスでいろんな業者も出入りします。教室内で全裸になるより、百倍は恥ずかしいです。
 それでも。人目のない時間帯にはチャーリイとジニアに強いられて、全裸で小屋からガレージまで往復していたのですから、昼間だってへっちゃらだと自分に言い聞かせたのですけれど。学園としては不都合もあるのでしょう。タオル一枚だけは局部を隠すのに使っても良いという寛大なお許しをいただきました。皮肉です。
 でも、フェイスタオルです。腰に巻いても、どこかしらが露出してしまいます。わたくしとしては、腰の横で結んで太腿の片方を露出させておきた(くな)かったのですが、なぜか後ろで結ぶように命令されました。お尻が丸見えになってしまいます。そんなわたくしの都合は、逆らう理由にはなりません。そして、従う理由は幾らでもあります。
 そうして、外壁の洗浄作業を始めたのですが。水鉄砲で遊ぶのとは、根本的に違います。放水の圧力が凄まじいのです。両手でしっかりとホースを抱えて、両足で踏ん張っていないと後ろへ倒れてしまいます。
 そんな激しい勢いでも、なかなかこけは剥がれてくれません。飛び散る汚泥は、離れていても全身に浴びてしまいます。半日かかって、全身泥まみれになって、正面の壁の三分の一もきれいになりませんでした。放水が激しいので、蛇口を開けっ放しにしていても、じきにタンクは空になります。タンクが満たされるまでの時間は、洗い落とした汚泥の回収です。汚泥をシャベルですくって集めて一輪車へ移し、いっぱいになったら十メートルほど離れた場所に設けられた集積所へ運びます。貯水に要する時間よりも、こちらのほうが長くかかります。つまり、ひと時たりとも作業現場から離れられないのです。
 そのうち、困難な問題が生じました。炎天下での労働です。喉が渇きます。けれど、飲み水が近くにないのです。手元にはあふれるほど「水」はありますが、上水道の質は悪いし、タンクの中でさらに汚染されています。ずらっと連なっている校舎を横切ってガレージの洗車場へ行くくらいなら、物置小屋へ戻ったほうが早いです。ミネラルウォーターもあります。
 休み休みの作業(と、校長は決めつけました)だから、あらためて休憩は取るなと厳命されていましたけれど、十分とかからずに戻って来れるのだからと、持ち場を離れたのですが。空気を圧縮するエンジンの音が止まりっぱなしになったので、校長に気づかれてしまいました。
「隙を盗んでは怠けようとする。きみは、心まで奴隷根性に染まってしまったのかね」
 教鞭で女性器をたたかれるよりも、ずっと厳しい鞭でした。日射病で倒れるまで、絶対に持ち場を離れまいと、自分に固く誓いました。
 そうして、作業の三日目を迎えたのです。朝のうちに出来るだけ多量にミネラルウォーターを飲んでおこうと思いましたけれど、それはそれで、汗が追いつかずにトイレに行きたくなるのではないかと心配になって、結局は適当なところで妥協してしまいました。
 作業の時間帯は授業と同じですが、準備がその前にあるので、実際には午前八時から外に出ます。八時半から作業を始めて、十一時を回る頃には喉の渇きが強くなってきました。正午からは一時間の昼休みがあります。それまでの我慢だと思っていたのに。
 校長が進捗状況を見回りに来て、命にかかわるような無慈悲な命令を下しました。
「これでは、期限の五日間では終わりそうにないね。昼も休まずに働きなさい」
 期限だなんて、今初めて聞きました。進み具合を見て、間に合いそうもない期限を後出しに押しつける。そうとしか思えません。それでも、そのこと自体には抗議しませんでした。
「分かりました。でも、十分だけでよろしいですから、水を飲みに行く時間をください」
 ここまで卑屈になるなんて、子爵令嬢の軽蔑の眼差しが、どこかから突き刺さってきます。それなのに、校長はわたくしの哀願を聞き届けてくれません。
「駄目です。この一面が終わるまで、夜になっても続けなさい」
 実行不可能な命令を残して、校長は校舎へ戻って行きました。
 お腹の底のほうに、冷たい氷塊が生じました。これまで、悔しさが腰の奥で熱くたぎることは幾度もありましたが、これは初めての感覚ではないかと思います。けれど……
 よろしいですわ。御命令の通りに働き続けます。日射病になろうと過労で倒れようと、お好きなように虐めてください。そう覚悟を決めると、いつもの憤激と屈辱のない混ざった熱い感覚がよみがえってきました。氷の塊と炎の塊。相反する感情が同時に……あれ?
 どちらも怒りと悔しさのはずです。なぜ、相反するなどと考えたのでしょうか。なんて、哲学的思索にふけっている場合ではありません。一切手を抜かず、ぶっ倒れるまで働いてやりますとも。入院させてもらえれば、その期間はたっぷり休めます!
 なんて決心した時点で、わたくしはすでに正気を失っていたのかもしれません。
 しばらく作業を続けていると、自分がとんでもない愚かなことをしているように思えてきました。だって、水は目の前にたっぷりとあるのです。たくさん飲めば、お腹を壊すかもしれませんけれど――ちょっと喉の渇きを潤すくらいなら、平気ではないのかしら。
 その考えは、すごく魅力的でした。本当に、ちょっと試してみるだけだから。
 わたくしはノズルをぎりぎりまで絞って、ちょろちょろとあふれる水に口をつけてみました。
 おいしい。金臭いし舌がぴりぴり刺激されるけれど、それすらも芳純に感じられます。ちょっとだけ、もうひと口だけ――喉の渇きが潤されて正気を取り戻すまでに、コップ三杯分くらいは飲んだのではないかと思います。
 天罰はてき面でした。飲んですぐに、お腹がごろごろ鳴り始めました。これはいけない。すぐに吐きださなければ。けれど、飲むと同時に水は身体に吸収されてしまったのでしょう。喉に指を突っ込んでも、空えずきばかりです。
 仕方がないので作業を再開しました。けれど、お腹のごろごろは大きくなるばかりです。痛くなってきました。それだけなら、耐えられたかもしれませんけれど。致命的な感覚が、お腹のいちばん底のあたりに生じました。今すぐトイレに駆け込まなければ、粗相をしでかしてしまいます。
 けれど、絶対に持ち場を離れないと、他の誰でもない自分自身に誓ったのです。校長に知られたら、今度こそ罰を受けるでしょうが、それはたいした問題ではありません。奴隷根性と言われようと、わたくし自身が心を強く持っていれば、わたくしの高潔は揺るぎません。けれど……お漏らしを、それも小さな子どもですら滅多にしない粗相をするなんて、それもわたくしの尊厳を踏みにじります。
 どうしよう……その迷いが、ついにわたくしを破滅させました。
「ああっ……だめえええええ!」
 ぶじゃあああっと、半固形物の混じった水流が地面をたたきました。
「いやあああ……」
 地面にうずくまってしまいたいところですが、汚物の中にしゃがみ込むなんて、それも出来ません。ぼう然と立ち尽くして、わたくしは泣きじゃくりました。
 それでも。十分も経ってから、ようやく気を取り直して。高圧洗浄機のノズルを調節して、お尻の汚れを洗い流しました。股間の鎖を左右にずらしたり前後に引っ張ったり、その刺激で生じる感覚になど、かまっていられません。絶対に汚物が付着していないと確信できるまで、入念に洗いました。それからノズルを全開にして、地面がえぐれるほど粗相の痕跡を洗い流しました。
 もしかして、誰かに見られていたかもしれないと気づいたのは、すべての証拠隠滅が終わってからでした。あたりを見回して、近くに人影はありませんでしたが、今さらですよね。
 開き直って、何食わぬ顔で作業を続けて。夜遅くなって陽が沈んでも(夏の夜は午後九時を過ぎます)指示されていた正面の壁は終わっていませんでしたけれど、暗くては汚れが落ちたか分からないだろうということで、ようやく赦してもらえました。
 小屋へ戻ると、お昼を抜いたのに夕食を取る気にもなれず、そのまま床に転げ込んですぐに眠ってしまいました。チャーリイとジニアがいないから、どんな姿勢で寝てもかまわないのです。
 ――さんざんな三日目でしたけれど、四日目はもっとひどい――人生で最悪な日になりました。
 大きな被害を食い止めるためには小さな被害に甘んじよう。そう決意して、お腹がちゃぷちゃぷ鳴るくらいに、わたくしはミネラルウォーターをたっぷり飲んでから作業に取り掛かりました。
 陽射しが昨日よりもきつく、飲んだ水が胃袋から汗腺へ直行しているみたいでした。これなら、小さな被害も食い止められそうです。今日は昼休みを取らせてもらいたいな。それだけを念じながら、懸命に作業を続けていると。また、校長が姿を見せました。今日はひとりではありません。薄いクリーム色のスーツ(たぶんリネン製でしょう)を着こなした、父様と同じくらいの年輩の男性を伴なっています。
 学園の独裁者とその客人に敬意を表すべきだと判断しました。作業を中断して、二人を迎えました。
「こちらにいらっしゃるのは、本学園の理事長であらせられる、スマーポッツ子爵ドレッド・ノートンです」
 わたくしは軽く膝を折って目を伏せました。
「それが、われに対する挨拶なのかね?」
 ドレッドきょうが嘲りました。
「膝折礼(curtsey)もろくに出来んとは、校長、仕付がなっていませんな」
 膝折礼は、相対的に身分の低い者から高貴な方への儀礼です。子爵令嬢から他家の子爵に対しては、まあ、もうすこし丁重であってもよろしいでしょうけれど、わたくしの事情もあります。こんな腰布一枚では、はっきり裾を持ち上げるのも膝をきちんと曲げるのも、卑わいなだけです。
「いや、わたくしの不徳のいたすところ。性奴隷の膝折礼を仕込んでいませんでした」
 そうでした。今(だけです!)のわたくしは、子爵令嬢である以前に性奴隷生徒でした。
 今すぐに覚えてノートンきょうにお披露目しなさいと言って、校長は――とんでもない作法を伝授しました。
「裾は腰までまくり上げなさい。引いた足のつま先は、前側のかかとに着けるのです。そして、バレエのプリエのように、膝を大きく左右に開きなさい」
 そんなのって、膝折礼ではありません。女性器の露出、いえ開陳です。
 けれど、命令には絶対服従というのが特別奨学生契約(の、後付けの細則)です。わたくしは恥辱にまみれながら、伝授されたとおりの仕種をしました。悔しさに子宮がむせび泣いています。腰を沈めたので鎖が膣口に食い込んできて、その物理的な刺激が熱い涙をこぼさせます。
「ふむ。さすがは元子爵令嬢だな。奴隷嬢(Lady Slave)のマナーも覚えが早い」
 褒められた(おとしめられた)のですから、言葉を返すのが礼儀です。
「お褒めにあずかり、恐悦至極にございます」
 結び目より高く裾をまくり上げ、直角を越えて膝を曲げてやりました。皮肉のつもりでしたが、みずから進んで破廉恥に振る舞ったことに変わりはありません。腰の奥で羞恥が大きな炎となって燃え上がりました。
 ノートン(この人にも敬称は無用と判断しました)が、くくっと含み笑いを漏らしました。
「なかなかに礼儀正しい性奴隷だな。よろしい、陪食の栄誉を与えてやろう。正午になったら、校長、どこだったかな?」
「延長教育(6th form)校舎のカフェテリアです」
「うむ、そこに来い」
 仕事を続けなさいと命じて、けれど二人は立ち去りません。小柄なわたくしがホースに振り回され汚泥を浴びる姿を、愉快そうに見物したのです。
 それでも、十一時には作業をやめ、機械を片付けてから身なりを調えてるように言われました。機械を片付けるとは、午後の作業を免除されるという意味です。
 ちっともうれしくありません。ますます期限に間に合わなくなります。そして……
「今日は、いや明日の朝まで、きみがノートンきょうのお相手をするのです」
 とうとう、恐れていたことが現実になろうとしているのです。素直に返事が出来るはずもありません。すると校長は、わたくしが事態を理解していないと思ったのか、露骨な表現で付け加えたのです。
「性奴隷としての最初の実習です。彼に処女をささげるのです。もちろん他のことでも、どんな命令にも従うのです」
 そう言ってから、股間の鎖の封印を解いたのです。Y1の生徒だって理解したでしょうね。その年令で可能かどうかは、ともかくとして。
 ――機械を片付けるのは、簡単です。小型自動車を一人で押すくらいの重労働ですけれど。洗車場へ行って全身を洗うほうが、よほど手間取りました。身体はすぐに乾きますけれど、腰に達そうとしているブルネットは始末に負えません。言葉を飾れば、しっとりと潤ったままで会食に望まなければなりませんでした。
 ああ、装いですか。いつも通りに十秒で完了です。学校の制服は、もっともフォーマルな服装です。たとえ女王陛下とのディナーにだって参列できますとも。もしとがめられるとしたら、このようなデザインを採用した学園でしょうね!
 ノートンは、とがめたりはしませんでした。にやにや笑いながら褒めてくださいましたとも。
「しかし、もっと趣向を凝らしてもらえんかね。たとえば、アナン・ラミリーズみたいに、上着から乳房を突き出すようなのとか」
 テーブルには校長も着いています。わたくしとノートンが向かい合って、校長は下座です。当然の待遇に、わたくしはむしろ屈辱すら感じています。子爵令嬢でなく性奴隷(実習生?)の立場を考えれば、お買上げいただく前の商品展示に等しいのですから。ああ、こんなことを考えてしまうまでに、わたくしは卑屈になってしまったのでしょうか。心の気高さを忘れてはなりません。
 心を高く保つには、まず振る舞いからです。気楽なカフェテリアでの昼食とはいえ、わたくしは完璧なテーブルマナーを心がけました。ノートンはそれに気づいたらしく、ときどき手を休めては、面白そうにわたくしを眺めています。
 校長は何かとノートンに話題を提供していましたけれど。わたくしが全裸にされて股間を教鞭でたたかれたとか、全身の無駄毛処理を義務付けられているとか、寝るときは手足を広げて拘束されているとか補習でクンニリングスを仕込まれたとか――わたくしの惨めな学園生活ばかりです。
 それをノートンは満足そうに聞いています。ただ、『デート』で間違いが起きなかったことだけは、しつこく確認をしていました。
 さいわいに感想を求められたりはしなかったので、雑音を耳に入れないよう、食事に専念しました。なのに、紙束をかんで粘土をかじっているみたいで、ちっとも味が分かりませんでした。
 食事の場所はカフェテリアでも、料理は順番に配膳されました。その一皿ずつは、おままごとかと思うくらいに少量でした。重労働でお腹は空いていましたから、紙束でも粘土でも、もっと食べたかったです。校長だけは量が多くて、ノートンはわたくしと同じくらいでしたから――社交ダンスだって乗馬だって他のスポーツだって、満腹では差し障ります。男女の交接も運動には違いありませんから、そういうことなのでしょう。
 食事が終わると、腹ごなしに散歩をしようと提案、いえ、命令されました。たしかに散歩でしたとも。大型犬を散歩させるような鎖を首輪につながれて、二人に学園のあちこちを引き回されたのですから。しかも、何も持っていないのは手の遣り場に困るだろうからと、両手の親指を背中でひとまとめに太い糸で括って――布ベルトに結びつけてくださいました。遠目には、破廉恥な格好を誇らしげにさらしてかっ歩しているように見えたことでしょうね。
 何十日ぶりかで、股間に鎖が通っていない状態での歩行です。異物に侵されない心地好さよりも、すうすうすかすかする頼り無さが物足りない……のではなく、心細かったです。だって、陰裂を隠している鎖を見られるのと、陰裂の奥まで見えてしまうのとでは、やはり恥ずかしさが違いますもの。だから、人の目があろうとなかろうと、腰の奥では羞恥の炎が渦巻いていました。子宮が熱を帯びると膣口に粘っこい分泌がにじむのは、そういう生理的反応だと思います。
 わたくしもそうでしたけれど、理事長の顔を知らない生徒は多くても校長を知らない生徒は居ません。校長への生徒の対応は、敬して遠ざける(respect away)です。しかも、後ろにはSSSというデリケートな問題が文字通りにひも付けられています。三人の散歩、あるいは二人による引回しは、誰にも邪魔されませんでした。
 広い敷地を気紛れに散策して、最終的に連れ込まれたのは女子寮でした。女子寮の、以前のわたくしの部屋です。
 最後に見たときには、荷物を一切合財持ち去られた空虚な空間でしたが、今は妖しい雰囲気に充ち満ちています。壁紙はどぎついピンク一色。窓は同色のカーテンで目隠しをされて、ミラーボールの七色の光点が天井から床まで踊り狂っています。そして、部屋の真ん中に、どかんと置かれた正方形の(キングサイズよりも大きな)ベッド。
 そういう目的のための部屋だと、経験の無いわたくしにも分かります。
「何をしておる。こういう場面では率先して裸になるのが、SS生徒の務めだろう。教わらなかったのか」
 反論する気力もありませんが、事実を誤解されたままだと、いわれのない罰を受けるかもしれません。
「せ、セキスパートとしての授業は受けていないのです。新学年度からだそうです。もし、よろしければ……いろいろと教えてくださ」
 わたくしの、馬鹿。馬鹿ばか馬鹿。なぜ、こびるようなことを言ってしまったのでしょう。処女膜を破られるのが痛いのは、ジニアで目の当たりにしています。すこしでも優しく扱ってほしい――それが、奴隷根性というものです。むしろ、乱暴に扱われて、必要以上に痛くされたほうが、単純に相手を憎めます。
 結果として、わたくしの言動は、強女3者を付け上がらせただけのようです。
 命じられるまま、男の目の前で彼に正面を向けて十秒で制服を脱ぎました。もはや、指が震えることもなくなりました。
 それから、男の上着とシャツを脱がせて。彼の前にひざまずいて、ズボンを脱がせます。そして最後に、これは彼の事情で脱がせにくくなっているパンツをずり下げました。
「では、おまえが奉仕する相手に挨拶をしてもらおう」
 会った最初に屈辱的な膝折礼をさせられています。今さら何を――という疑問は、ありませんでした。彼は勃起した男性器を指差しながら、そう言ったのですから。さらに、醜悪(ugly style) で臭悪(ugly stench)なそれで、ぺちぺちと頬をたたきます。
 こんな屈辱的な命令には従いたくありません。不服従がどれほどの罰になるのか、身を持って体験してみようかとさえ思いました。
 けれど、そんな破滅的な考えはすぐに捨てました。鎖の貞操帯は、この日を迎えるために使われていたのです。この人は理事長。奨学金制度の創設者。
 もしも奨学金を取り消されて、無一物で学園から放逐されたら。もっとも幸運に恵まれたとしても、公的機関の保護を受けることになるでしょう。子爵令嬢が、です。スキャンダルです。父様が爵位を剥奪されるのは必然です。母様が我が身を犠牲にした意味が無くなります。
 わたくしは覚悟を決めて、目の前にある、水平射撃くらいまで勃起している男性器に口づけをしました。
「それから、どうするのだね?」
 質問形ですが命令です。わたくしは閉ざしていた唇を(出来るだけ小さく)開けて、亀頭のあたりだけを口に入れました。フェラチオについては、ごく初歩的な知識くらいはあります。大衆向けの女性雑誌には、いろいろと書いてあります。平民がどのようなことに興味を持っているかを知るのも、現代の貴族にとっては大切なことです。決して衆愚に迎合するという意味ではありません――などと性奴隷が言っても虚しいだけですね。
 初歩的な知識を実践に移して。亀頭をなめたり、冠状に盛り上がっている部分を唇でしごいたり。昼食と同じで、味はさっぱり分かりませんでした。敢えていうなら、生臭いしょっぱさでしょうか。フランクフルト・ソーセージみたいだったのが、たちまちボロニアくらいに太く、サラミみたいに硬くなります。
 不意に突き倒されました。
「このビッチめが。どこで、そんなテクニックを覚えた? 誰かに仕込まれたのか? ケリーの大間抜けが!」
「違います。女性向けの通俗雑誌で得た知識です。実際にしたのは、これが初めてです」
 わたくしは誇らしく思いながら、彼の思い違いを訂正しました。ただの知識を経験と勘違いされたのですから……でも、これって誇るべきことでしょうか。
 それはともかく。
「ふん、信じるとしよう。では、どこまで知っているか、試してやろう」
 ノートンが、巨大なベッドの中央であお向けになりました。水平射撃ではなく、対空射撃になっています。
「おまえが上になって、自分で挿入するのだ」
 墓穴を掘ってしまいました。いえ、前向きに考えるようにしましょう。どこにどういうふうに挿れれば良いのかは、ジニアでの実験で分かっています。ならば――自分で具合を加減出来るのですから、痛みを減らせるのではないでしょうか。好きな人に処女をあげるのなら、激痛も大切な思い出になるでしょうが、不本意に、こんな中年男に奪われるのです。せめて肉体の苦痛だけでも和らげたいと願って当然でしょう。
 わたくしは背を向けてノートンにまたがりました。
「失礼しますのひと言くらい断わらんか」
 ぺちんとお尻をたたかれました。ちっとも痛くないです。
「ごめんなさい。気をつけます」
 素直に謝っておきます。ちっとも悔しくないです。
 腰を浮かして。ドライバーを使ったときを思い出しながら、陰茎の根本を右手で握って陰裂にあてがいました。小陰唇が蓋をしているので、左手の指をV字形にして――手と手がぶつかります。右手はお尻の後ろへまわして持ち替えました。
 じわっと腰を落として、亀頭を陰裂に埋めました。膣前庭(でしょう)に亀頭が押しつけられるのが感じ取れます。腰をちょっとだけ前後に動かしてみたら、明らかに感覚の異なる点があります。ここが膣口でしょう。
 このまま膝の力を抜いて腰を落とせば、それで処女は破られて、わたくしは娘から『女』になるのです。
 けれど。ふっと迷いが生じました。このまま、みずからの意思で処女を失って良いのでしょうか。性奴隷に成り下がりセキスパートの道へ足を踏み入れて良いのでしょうか。
 これまでだって、わたくしはみずからの意思で罰を受け辱しめられて……そうではなかったのだと、かつ然として悟りました。
 罰を受けざるを得なかったから、縄目の恥辱を重ねないために、敢えてみずからの意思で手の動きを封じたのです。なぶられるしか選択肢が無かったから、抵抗して押さえつけられてなぶられる恥辱だけは回避したのです。クンニリングスは、あれは奉仕です。つまり、もっとも尊厳を保てる形での受身(passive)でした。
 ですが、騎乗位で処女を失うのは――能動(active)です。それはもちろん――命令されてそうするのですから、大局的には受身(passive)かもしれませんけれど。
 女が男に押さえ込まれて処女を失うのは、もっともありふれた状況でしょう。そのこと自体は、ちっとも恥ではないと思います。強女3されるのは屈辱ですが、性奴隷の宿命でしょう。
 なのに、敢えて能動的(active)に振る舞うのは、みずからの意思で恥辱を求める破廉恥な行為ではないでしょうか。
 わたくしはベッドから飛び下りて、床にひざまずきました。
「わたくしには出来ません。どうか、御主人様(My master)のたくましいおチンポ(dick)でわたくしを貫いてください」
 可能な限り卑屈に卑わいに懇願しました。クイーンを護るためにはポーンを犠牲にします。
「ふふん、無理をしおって」
 ノートンは薄く笑いながら身を起こしました。嘲笑ではなく満足のようです。
「子爵令嬢に淫売の真似は出来ぬか」
 彼は手を伸ばして、再びわたくしをベッドの上へ引き入れました。
「小柄な娘には、こういうのも面白いな」
 あお向けになったわたくしの両足をつかんで高々と持ち上げ、さらに頭のほうへ折り曲げました。この形でチャーリイとジニアに何度拘束されたことか。手足に冷たい手錠が食い込んでいないのが不思議に感じられます。
 ノートンは手を添えることなく、亀頭を陰裂に埋め込み――ぐいと腰を突き出しました。
 びききっと股間に亀裂が生じたのが、はっきりと分かりました。
「痛いいいっ……!」
 悲鳴を抑える理由は無いと思うので、自分に素直になります。
 唇の両端に指を引っ掛けて力一杯に引っ張られて――唇の中央が裂けたら、きっとこんな痛みだと思います。ジニアと違って痛みを的確に描写できます。
「見ろ、マイティ。おまえの娘の純潔は、われが散らしてやったぞ」
 ノートンが雄叫びを上げました。
 男爵まで含めても、世襲貴族は八百家くらいのものです。狭い社会です。父様とノートンが知己であっても不思議はありません。けれど、父様に恨みがあるような口振りです。
 そのことについて彼に尋ねるのは、新たな災厄を招き寄せるのではないかと恐れました。そして、尋ねるどころではなくなりました。
 彼が動き始めたのです、わたくしの中で。
 ずぐうっ、ずぐうっと、お腹の奥まで、熱した太い鉄棒を押し込まれているような激痛です。鉄棒が途中まで抜かれるときには、傷口を引きむしられるような痛みです。彼の動きで、激痛がうねくります。
「ひぐっ、ひぐっ、きひいい……」
 歯を食い縛っていても、うめき声を抑えられません。こんなのを何度も繰り返せば、本当に痛みが無くなって、通俗雑誌に書いてあるみたいに他では替えられないほどの快感を得られるようになるのでしょうか。信じられません。
 足を持ち上げていると、動きを制限されるのでしょう。じきに彼はわたくしの足を開いて膝を曲げた形にして、ベッドへ戻しました。そして、いっそう激しくいっそう深く腰を動かします。
 わたくしは、ただただ激痛に身を委ねているしかありません。
 やがて、激痛が常態となって、わたくしのうめき声も治まった頃、彼は腰全体をわたくしの股間に打ちつけるほど荒々しく動き始めた――と思ったら、不意に動きを止めました。そして、わたくしから身を引きました。その瞬間は分かりませんでしたけれど、射精したのだと思います。
 股間の汚れを指ですくって確かめる気にはなれませんでしたし、その暇もありませんでした。わたくしは、床に引きずり下ろされたのです。
「跡始末をするのも、セキスパートの務めだ」
 彼はベッドに腰掛けてわたくしを引き寄せ、股間に向けて頭を押しつけます。フェラチオをして汚れをなめ取れという意味でしょう。男の白い精液とわたくしの赤い血に染まった陰茎を。
 すでに開け放っているドアをもぎ取るような仕打ちです。いいでしょう。ハンマーでたたき壊してやります。
 わたくしは目をつむって、威勢を失っている陰茎を頬張りました。ねとっとしたおぞましさが舌にへばり着きます。生臭くて鉄臭て、吐き気が込み上げてきます。それでも堪えて、陰茎全体をなめます。命令されて、太いストローの中に残っている汁まで吸い出しました。
「おまえの娘はここまで堕ちたのだぞ、メアリー。見せてやれぬのが残念だ」
 父様だけでなく母様にまで遺恨があるようです。たとえ災厄を招こうとも、尋ねずにはいられませんでした。
「母のことも御存知なのですか?」
 言葉は選んだつもりですが、軽々しく他人の妻に言及した非礼をとがめるニュアンスは隠しません。
「なんだ、知らなかったのか。われとやつとは同学年で――三つ年下の伯爵令嬢をめぐって決闘紛いのことまでしたかな」
 初耳です。そんな激しいラブロマンスがあったなんて。
「勝ったのは、われだった。ところがメリーときたら、怪我をしたマイティに同情する余りに、われを野蛮だのひきょうだのと……」
 わたくしだって。わたくしを争って一方が怪我をしたら、その方に肩入れするでしょう。まして……父様とノートンとでは、風格もハンサムも段違いです。これは、父親に溺愛されている娘の水増しもあるでしょうけれど。
「あ……」
 わたくしは素晴らしいアイデアを思いつきました。そのように錯覚しました。処女を奪われた衝撃で、冷静な判断が出来なくなっていたのでしょう。ノートンのことを、今も母様に未練があるなどと勘違いしてしまったのです。いえ、勘違いではありませんでした。けれど、好意と悪意を読み違えていたのです。
「わたくしの母が、父の借金まで背負ってしまったのを御存知でしょうか。幾らかでも扶けていただけるなら、どのようなことでも致します」
 冷静に考えれば。わたくしは、どのような命令にでも従わなければならないのですから、無意味なお願いです。けれど、ノートンはそれを指摘しませんでした。
「メリーが好きでやっていることだ」
 それは違いますと反論しかけたのですが、彼の次の言葉を聞いて、声を失いました。
「新大陸の連中は貴族に弱いから、一晩に三千ドルは稼げるものを――合法性にこだわって、ドイッチュで飾り窓の女だ。十年経っても五十万ポンドは無理だな」
 まさかと疑っていた『出稼ぎ』の真実が明かされました。なぜ、ノートンはそれを知っているのでしょう。私立探偵を雇えば可能でしょうけれど、それにしては話しぶりが主観的に過ぎるように思えます。
「まさか、あなたが……母にお金を貸してくださった……?」
「御主人様(My master)だ。我が君(My lord)でも苦しくないぞ」
 誰が。とにかく、言い直して尋ねましたけれど。
「三十を過ぎた婆あに、五十万ポンドの価値は無い」
 否定のようですが、思い入れは経済的に評価できないのではないでしょうか。
「それよりも、アイリス――おまえの処遇だ」
 いきなりの話題転換です。それとも、つながっているのでしょうか。
「おまえは、われにどのように扱われたいかな。われがほれたメリーの娘として可愛がられたいか。それとも、われが憎むマイティの娘として虐げられたいか?」
 本気の質問とは思えません。わたくしの処遇はとっくに決めていて、言葉でなぶっているのです。
 なんと答えれば良いか、わたくしには分かります。それは、こうです――御主人様(My master)のお好きなように可愛がってください。
 ですけれど、これだけは言えません。ドアはすでにたたき壊されていますが、それでも、象を通すほどの広さは無いのです。
 そして。わたくしがこれからこの男にたたきつける言葉は、母様にも迷惑を掛けるかもしれません。それを思うと、お腹の奥深くに大きな氷塊が生じます。けれど母様もすでに、奈落の底に堕とされているも同然なのです。
 わたくし自身は、この台詞がどれほどの迫害を招こうとも、青い血に懸けて、父様と母様の名誉に懸けて、言わなければならないのです。
「あなたを拒んだ母の娘としてあなたを拒み、あなたが憎む父の娘としてあなたを憎みます」
 言いました。恐怖に乳房を握り潰される思いです。熱い戦慄が腰を貫きます。
「そして、アイリス・フッドとして、わたくしを汚したあなたを絶対に許しません」
 不安の氷塊と恐怖のしゃく熱とが、ひとつの大きな渦巻となって、わたくしはほとんどこうこつの思いです。熱くにじむのは、溶けた氷塊でしょうか。
「くくく……」
 ノートンが愉快そうに(でしょうか?)笑っています。
「喜んで被虐を選ぶのか。ケリーの見立て通りだな。天性のマゾヒストだ」
 違います! 虐められることを望み、そこに性的な愉悦を覚えるような、わたくしはそんな変態ではありません。
 青い血筋のこの男が、わたくしの尊厳を懸けた決意を理解しないなんて……いいえ、理解して、その上でわたくしをおとしめているのです。
 けれど。抗議をすればするほど、この男を喜ばせることになるでしょう。わたくしは、SF映画のように目から殺人光線が出てくれることを祈りながら、ノートンをにらみつけてやりました。
 もちろん、彼はけろりとしています。
「よかろう。おまえの望み通りになるよう、ケリーに念を押しておこう。楽しみにしているが良い」
 こうして、わたくしの人生最悪の一日は……ようやく始まったのでした!
 ピンク一色の強女3部屋に校長と、個人的な研究とか単純にバカンスのスケジュール調整で居残っていた四人の教師が呼び集められたのです。
 さまざまな体位で、わたくしは犯されました。一大決心で拒絶した騎乗位も強いられました。六人もの男に取り囲まれて、か弱い少女に何が出来ましょう。強制的なフェラチオ(イラマチオというのだそうです)のあげく、飲精までさせられました。
 悔しいことに、行為を繰り返されるたびに痛みは小さくなっていきました。屈辱と憤激が腰の奥で燃え狂っていましたが、もちろんそれは快感ではありません。陰核を刺激されたときの稲妻とは、まったく異質の『感覚』という言葉が果たして適切なのかも分からない、感情の渦巻でした。
 校長は「明日の朝まで」と言っていましたが、その通りになりました。いえ、夜を徹して犯されていたという意味ではありません。
 ノートンはわたくしに、物置小屋からピンク一色の部屋まで、ベッド代わりの長机を運ばせました。鎖の貞操帯も着けていない全裸で――というのは、大した問題では(あるのですけれど)ありません。処女膜を破られ膣口を拡張されて、ずきずき痛いのです。まだ太い陰茎を挿入されている感覚が強く残っていて、まともに歩けません。それなのに、重たくて脚を折り畳んでもかさばる長机をひとりで運ぶのは、ことに階段では重労働です。打ちのめされてなんかいませんけれど正常でもない精神状態ですから、いっそうつらく感じられます。わずかに救いだったのは、運ばされたのが二台だけだったことでしょうか。それでも、二往復もさせられたのです。
 そしてわたくしは、間隔を開けて並べた長机に手錠でX字形に張り付けられて夜を迎えたのです。チャーリイとジニアが帰省してからの数日間はのびのびと(それまでの反動で)身を丸めて寝ていられたのに、また逆戻りです。それでも、ふかふかのじゅうたんに身を横たえるのは快適でした。
 ノートンにベッドの上から見下ろされるのは不快でした。
 開脚を強いられていても、股間に巨大な異物を突っ込まれているような違和感がしつこく残っています。これまでは裸にされて教鞭でたたかれたり、補習という名目で悪戯をされたり、一対四でCACCとか称して痛めつけられたり、無意味な重労働を押しつけられたり――さんざんに身体の表面に対する虐待(abuse)をされてきましたが、とうとう女の核心を身体の内側を暴行されてしまったのです。それも輪姦(gangbang)という最悪の形で。
 ついに決定的に、性奴隷(Sex Slave)にされてしまったのです。それでも――心を高潔に保っていれば、わたくしの体内に流れる青い血の尊厳を侵すことなど出来ないのです。ええ、そうですとも。
 物事があるべき形に定まってしまったという思いは、心に安らぎさえもたらします。もちろん、午前中の重労働のせいもありますし、深く傷つけられた魂が回復する時間も必要だったのでしょう――契約書に署名してからは絶えて無かったことですが、不安にさいなまれながら夜半に目を覚ますこともなく、わたくしは朝まで熟睡したのです。
 ――脇腹を蹴られて、わたくしは目を覚ましました。まぶしいです。昨日とは打って変わって、ピンクの色彩が軟らかです。カーテンが引き開けられて、朝の陽光が部屋に満ちていました。
 きわめて狭い意味での『女』にされて初めて迎える朝でした。恥辱にまみれた感慨にふける暇もなく、わたくしは部屋を追い出されて――そのまま、昨日の重労働の続きをさせられました。
 その日のうちに、校長からアフターピルを与えられました。それでようやく、強女3には妊娠のリスクまで伴っているのだと思い至りました。けれど、アフターピルを服用し、翌日からは継続的に低用量ピルを使えば、その心配も無くなります。しかも、わたくしを犯したのは、身持ちの固い貴族と教師。性感染症の恐れもありません。まったく、性奴隷としては申し分のないデビューでした!
 五日後には、性器からの出血を見ました。つまり、きわめて狭い意味での『女』になった後に、もうすこし一般的な意味での『女』になったのです。順序があべこべですけれど、セキスパートとしては誇るべきことなのでしょうね!
 実は、この出血は初潮ではなかったらしく、さらに二週間後に、もっと多量で黒っぽい出血が三日ほど続きました。こちらが通常の生理で、最初のはアフターピルの副作用だと、夏休みから戻ったミルダに教わりました。ちなみに、どちらの出血もタンポンで過ごしました。ひもが股間から垂れるのは陰裂を直視されるよりも恥ずかしかったです。
 こういったことを思い出すだけで、怒りで子宮が熱くなります。けれど、考えずにはいられません。どころか――こういったこと以上のことが、夏休みの最後には立て続けに起きたのです。
 小講堂の外壁の洗浄作業は、校長が後出しで決めた五日の期限を四日も超過してしまいました。そのこと自体には、覚悟していた罰則もありませんでした。けれど、いっそう無意味な労働を次々と押しつけられました。ふたつの教室の机を入れ替えたり、歯ブラシを使ってトイレの床と便器を磨かされたり、もはや詳述する気力もありません。
 けれど、そんな馬鹿げた単純労働のほうが、八月も下旬になってからさせられた仕事よりは百倍もましでした。

 新学年度は九月から始まりますが、実際に授業が始まるのは中旬からです。それでも、寮生活のリズムを取り戻すために、八月の末頃からは生徒がぼつぼつと戻って来ます。余暇を利用して勉学に勤しめば良いものを――仲良しグループが集まって、ピクニックに遠出してみたり敷地の一画でキャンプをしてみたり。
 ピクニックはわたくしへの実害がありませんが、学内でのキャンプは被害甚大でした。わたくしが遊び道具として、彼らに貸し出されたのです。
 ノートンに処女を奪われた翌日からは、わたくしはジニアと同じ形の貞操帯に改められていました。股間を割る鎖が無くなって、そけい部をY字形に通るのです。つまり、女性器が無防備です。しかもジニアと違って、わたくしは私物のパンティを持っていません。
 そうなると、男子生徒がどのようにわたくしで遊ぶかは分かり切ったことです。
 最初は、九月からY8とY9になる五人のグループが相手でした。Y8はわたくしと同学年ですし、一学年の男子は二十数人ですからY9の全員も知っています。
 レビー・ブロックス、アル・ブライトン、エド・フォーグス、ウォルター・デライト、フォーグ・シェブラン。いえ、名前なんかどうでもいいです。こういったプライベートな催しには珍しく、キャンプファイヤーもしないのに教師のジャス・レイカーが監督として付いていたのが不可解でしたけれど、すぐに彼の役目が分かりました。五人の生徒は、全員が童貞(cherry boys)だったのです。わたくしは、ひと晩で五粒のさくらんぼ(cherries)を食べさせられました。残念ながら(ではないです)レイカーの指導では、さくらんぼは美味しくなかったです。
 これで、わたくしの経験人数は両手では足りなくなってしまいました。セキスパートのレッスンを受ける前に、一人前以上になってしまったのです――などというのは、まったくの勘違いと思い上がり(?)でしたが、それは後日のお話です。
 二日空けて、Y13ばかり四人のグループに貸し出されました。二人が経験済みだった(さんざん自慢していました)せいでしょう、指導教官は付きませんでした。おかげで、酷い目に遭いました。
 彼らは、わたくしがあまり反応しないことに自尊心を傷つけられたみたいです。
 身体を不本意に弄ばれて、強女3されて、それで性的に興奮するとでも、彼らは思っているのでしょうか。
 乳首をくすぐられれば、稲妻の影くらいは走ります。陰核をつままれれば、どうしても稲妻が腰を貫きます。けれど、わたくしは強い意志の力で、腰の奥の火種を押さえ込んだのです。わたくしは性奴隷です。女を搾取されるのです。喜んで与えるのではありません――これが心得違いだと悟るのも、後日のお話です。
 彼らは焦れて。わたくしの性感を開発にかかりました――遊び半分で。授業が始まれば(本当は始まる前から取り組むべきですけれど)、学年末の全国統一試験を目指して、一日の半分は勉強漬けになるのです。後の半分は睡眠時間と食事などです。だから、一日じゅう遊んでいられるのは、あとわずかだという思いが、遊びを過激に走らせたのでしょう。四人のリーダー格のゼラス・ソールベイという男が、性的に倒錯した趣向の持ち主だったのが、いちばんの原因と思います。五歳も離れていると、もはや男子生徒ではなく大人の男と変わりありません。これは、どうでも良くはないことです。わたくしへの加虐の度合いが、教師やノートンと同じくらいに残酷になるのですから。
 彼らはわたくしたちの寮舎である物置小屋から長机を持ち出して、裏返しにして並べた間に、わたくしをX字形に張り付けました。夜は手錠でその形にされていることは、いつの間にか広く知れ渡っています。
 ソールベイが幾つかの日用雑貨を机の上(裏側)に並べました。電線をまとめたりキャンプでもペグの補助に使える結束バンド、長短のヘアピン、小さな輪ゴムと太い糸。
「一度実験してみたかったんだ。まさかロザリンドには頼めないもんな」
 ガールフレンドには出来ないことでも、性奴隷になら出来るということです。
 彼は、わたくしの乳房の根本を結束バンドで縛りました。以前の北緯三十度オレンジだとバンドがすっぽ抜けたでしょうが、『女』にされた下半身に追いつこうとしているのかピルの副作用か分かりませんけれど、北緯二十度まで盛り上がってきたし、サイズもマーコットからマンダリンくらいに成長しました。つまり、すっぽ抜けるどころか、根本をぎちぎちにくびられて、丸ごとの(小ぶりの)オレンジにされてしまったのです。圧迫されたせいで、乳首も硬くしこって突き出しています。
 その乳首をヘアピンで挟まれました。それでしごかれるのはちょっと痛かったのですが、髪を安定させるために湾曲している部分に乳首がはまり込むと、適度の刺激で気持ち好く……なるはずもないですけど、痛くはないです。
 ところが。彼はヘアピンの一端に指を引っ掛けて回し始めたのです。ゴム動力の模型飛行機がありますよね。飛ばす前にゴムを巻く。あんな感じです。乳首も引っ張られますけれど、硬くなっているし乳房もぱんぱんに張り詰めているし、ヘアピンが外れる気配はありません。
 くすぐったいのですが、何回も回されているうちに、ごろごろと雷鳴がとどろいてきました。
「あんっ……」
 なまめかしい声を漏らしてしまいました。
 すると、指がぴたりと止まりました。続けてほしいという思いが、ちらっと頭をかすめましたけれど、もちろん口にはしません。
 ソールベイは二本目のヘアピンをつまんで――もう一方の乳首もヘアピンで挟みました。両手をつかって、左右のヘアピンを同時に回します。
 雷鳴が左右の乳首から乳房にまで伝わって、心臓まで震わせます。
「あんっ……あんっ、あああ……」
 雷鳴とか稲妻とか、比喩表現をしている余裕がなくなってきました。快感が乳首を貫き乳房を震わせるのです。
 そこまでわたくしを追い込んでも、ソールベイは不服のようです。仲間に枕を持って来させると、わたくしの腰を持ち上げてお尻の下に押し込みました。そして、天に向かって突き上げた股間をから陰核をほじくり出しました。
 包皮を剥かれる感触に続いて冷たく細い感覚が……
「ひゃうんっ……!」
 実核までヘアピンに挟まれたのです。けれど乳首みたいな純粋の快感は生じませんでした。ヘアピンが回転すると、それに引きずられて陰核がぐにょんと変形します。すぐにヘアピンが抜けてしまいます。
 ああ、良かった。乳首だけでこの有り様です。何倍(何十倍?)も敏感な陰核、それも剥き身の実核に同じことをされたら、アリスにされて、もうすこしでどうかなるところだった、その先へ達していたでしょう。そこは足を踏み入れてはならない禁断の地だと、わたくしの本能が告げています。
「これを使ったら、どうかな。ニリッサは、白目を剥いて気を遣るていうか、気を失うんだぜ」
 もう一人の経験者であるガース・ルドロウが歯ブラシを手に持って、わたくしを挟んだ反対側にしゃがみ込みました。そして、包皮を剥き下げられてヘアピンで固定されている実核に歯ブラシで触れたのです。
「ひゃあっ……?!」
 ちくっとブラシの先が突き刺さってきて、凄まじい稲妻が走りました。痛みはあったのですが、その何倍もくすぐったくて、それよりも……快感なのでしょうか。びくんっと腰が跳ねました。みずから実核をブラシに押しつけた形になって、一瞬さらに刺激が強くなったのですが。そんなのは序奏でした。
 歯ブラシが、さわさわっと小さく動いて……
 「いやあああああああっっ……!」
 叫びました。
 無数の針に刺されたような鋭い痛みと、腰全体が砕け散るような、混じりっけ無しの、恐怖の塊のような快感……なのでしょう。
 びくんびくんと跳ね続ける腰。ルドロウは馬乗りになって腰を押さえつけ、しつこく歯ブラシを動かします。
 上からのぞき込む二人の顔もその後ろの景色もはっきりと見えているのに、すうっと視界そのものが遠ざかるような奇妙な錯覚。
「やめて、やめて……分からない、分からなくなっちゃいますううう!」
 無意味な言葉を叫ぶうちにも、さらに快感が膨れていって……不意に止まりました。
 ソールベイの顔が小さくなって、向きを変えて……膣口が拡張される感覚。ずぐうっと、怒張した陰茎が膣に押し入ってきました。すうっと、訳の分からない快感が引いていって、目の前にはソールベイの顔。あり得ないほどに鼻が膨らんでいます。
 ただ目をそらすだけでは気が収まらず、露骨に顔を背けてやりました。
「なんだよ。そんなにぼくが気に食わないのか。ひと晩に五人も六人もはめ狂うビッチのくせに」
「気に入らないのは、あなたではありません。こういうことをされるのが嫌なのです」
 言うだけ無駄と分かっていても、信じられないほどの快感を台無しにされた腹立ち紛れです。
「うそつけ。あんなに激しく善がってたじゃないか」
 彼も腹を立てたのでしょう。腰を激しく打ちつけてきて――すぐに果ててくれました。
 三日前のときは、ひとり終わる都度にレイカーが携帯ビデで洗浄してくれたのですが、今日は次の人のセルフサービスです。コーラの瓶を激しく振ってから、泡を吹き出している口を膣に挿入されました。性交よりも、よほど気色悪いです。
 手錠でX字形に張り付けられているから、自分で手加減することも出来ません――ではなくて。たとえ両手が自由で、携帯ビデを持たされたとしても、命令で強制されるまでは決して自発的に使ったりはしなかったでしょう。陵辱される準備を自分でするなんて真っ平です。そういう意味では、拘束されているのがありがたかったくらいです。
 ソールベイの後は童貞の二人が、彼に負けないくらいのスピード記録を達成しました。しんがりのルドロウは、三人を合わせた時間の倍くらいは粘りました。
 童貞五人のキャンプでは、用済みになってすぐにキャンプから追い出されたのですが、今日はさらに遊ばれました。張り付けからは解放されたのですけれど、三点の突起に着けられたヘアピンをそのままにされたのです。詳しくいうと、乳首のヘアピンは水平に、陰核のヘアピンは垂直にされました。外れないように、ピンの先端を小さな輪ゴムで縛られたので、圧迫が強まりました。
 自分では決して触るなと命令されました。だから、もしも(仮定法過去ですよ)乳首のヘアピンを回してみたくなっても出来ません。
 それから、『サイモンの命令(Simon says)』という遊びをさせられました。本来の遊び方は、大勢の中で一人がサイモンになって単純な動作をしながら「サイモンの命令、○×をしろ!」と指示します。みんなは、言われた通りにするのですが、「サイモンの命令、右手を上げろ!」と言いながらサイモン役は左手を前に突き出したりします。動作を真似たら間違いです。あるいは「ぼくの命令、ジャンプ!」とか「頭に触れ」とか、キイワード「サイモンの命令」がない指示にも従ってはいけません。
 間違えた人から抜けていって、最後まで残った人が次のサイモンになるという、ただそれだけの遊びです。低学年の子ならともかく、Y13にもなってするような遊びでは――あったのです。
 四人がサイモンになって、指示に従うのはわたくしだけという変則的な遊び方です。そして、間違えたらズボンのベルトでたたかれるのです。
「サイモンの命令、おっぱいをもめ」
「サイモンの命令、マンコに指を挿れろ」
「サイモンの命令、乳首のヘアピンを回せ」
「サイモンの命令、もっと速く回せ」
 自分で自分を刺激するなんて、四人に見られながら自慰をするに等しい行為です。そう思うと、胸いっぱいに羞恥があふれ、腰の奥で憤怒がうねります。
「回し続けろ」
 バチン!
「きゃあっ……?!」
 お尻をたたかれました。
「ただ『回し続けろ』って言ったんだから、止めなきゃ駄目だろ」
 そうでしょうか。論理的に考察すると、「回し続けろ」の命令は無視して、「サイモンの命令、もっと速く回せ」を継続していると――解釈したって無駄ですね。わたくしに恥ずかしいことをさせて、口実を設けて虐めるというのが、この遊びの目的なのですから。
 二人から矛盾する命令を出されたり、単純にわたくしが間違えたりして。お尻に六発、乳房に二発、股間に三発のベルトを受けて、ようやくゲームは終わりました。最初みたいな不意打ちは少なくて、「サイモンの命令、右手で右手をつかめ」なんて不可能な指示を実行できなかった罰として股間をたたかれる前には「サイモンの命令、足を開いて腰を突き出せ」なんて言われたりしました。
 言葉のどんな意味においても玩具として弄ばれている。そう思うと、頭がくらくらして、全身が屈辱で火照りました。膣からこぼれた熱い滴りは、きっと涙です。
 ――キャンプは他にも何組かありましたけれど、わたくしが貸し出されたのは、この二回きりでした。
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 それは、そうと。大きな見落としをしていました。日本でなら、それ系の私学でない限りスルー出来る宗教。
 大急ぎで、大講堂に教会が付属しているとか、悲劇の始まりを6/14の勝利の日ではなく、戦勝の翌日、神に感謝を捧げる全学集会(プロテスタントでは、ミサとはいいません)の直後にして。Sodomy(大罪です)あたりで、神への懺悔を考えて、いいえ、わたくしは被害者ですと思い直して、ついでに、最初の頃に破廉恥な(ノーパン超ミニ裸ジャンスカ)を神に懺悔しなさいと神父に諭されて、以来、教会には足を踏み入れていないとか――いやあ、ワープロって便利ですねえ。


 さて。6/23は大いなる骨休めでしたが、今日6/26は夕方から飲み会。まあ、午後1時時点で18枚は書いてますけど。
 英気を養って月末に向けてニトロ注入メタノール噴射と参りましょう。


テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Progress Report 4:『特別娼学性奴』

 とんでもない状況になっています。
 ヒロインがSSS(Sexpert Scholarship Student / Sex Slave Student)に堕とされてから1か月。枚数にして320枚。なんと、未だに処女です。
 そして、実質全14章のうち、まだ7章が終わったところです。
 これは……500枚突破はおろか、600枚いくのではないでしょうか。受注からの納期が2か月しかないと分かってるのに、そのうち最初の10日は別の作品を仕上げるのが分かっていたというのに。
 妄想竹を構想竹しているうちに暴走竹しちまった筆者が悪いんですけどね。


SCINARIO
Spiteful・・・・・・- 3 -
Substitute ・・・- 19 -
Subsidence・・・- 27 -
Shame・・・・・・・・- 61 -
Scorn・・・・・・・・ - 90 -
Suppression・・- 104 -
Service・・・・・・- 114 -
Sexperience・・- 139 -
Study
Submission
Skill
Sodomy
Showtime
以下は分量的に1章?
Sequel
Succession/Success
Succession/Session
SCRIPT AFTER これは「後書」

 さて、今回はServiceのうち前半の補習は割愛して、かつての男子親衛隊員2名との『デート』の様子をお送りします。
 キスをしながら、胸の疼きとか腰の奥の熱い潤いとか、これまでは憤激と屈辱に身体が震えていると思っていたのと同じ反応が生じて、セエラアイリスが「え……?」と思うシーンがあります。後に悦虐に目覚める伏線になるかもしれない、そもそも最後まで(自覚的には)目覚めさせないかもしれませんが。

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 さいわいに、補習を受けさせられたのは、この二回だけでした。わたくしが二度とゼロ点に抗議しなかったからですが、教師がその気になれば何とでも口実は設けられたはずです。どの教師も、わたくしをまともな生徒としては扱ってくれませんが、セキスパート奨学生あるいは性奴隷として扱う教師も、今のところは少数だということでしょう。
 全教科の試験が(生徒からの異議も吟味した後に)確定してから、学年ごとの順位が掲示されました。わたくしとチャーリイとジニアの名前はありませんでした。
 Y7男子の上位四人は、わたくしかジニアかどちらかとの一日デートの権利を獲得しました。夏休みが始まる二日前からは、授業が午前中だけ。午後からが、権利の行使に充てられました。
 最初は、同じクラスのハーディ・リンクスとです。彼も、オッターに負けないくらいに献身的なわたくしの崇拝者で僕(しもべ)でした。わたくしが落ちぶれてからは、彼のほうから近づいてくることはなくなりましたが、それは大半のクラスメイトと同様です。近づいてくる男子は、女子の目を盗んでわたくしに置換紛いの行為を仕掛けてくる者ばかりでしたから、近づいてこないことが最大の好意だと、わたくしは解釈していました。
 校長からは事前に、デートの相手はわたくしの御主人様(Master)であり顧客(Customer)なのだから、丁重に振る舞えとは指導されていました。わたくしが性奴隷なら彼が御主人様だし、売春婦なら顧客です。でも、まさか、彼がわたくしに対してそのようなことを要求するなど、考えられないことです。
 だから、二人きりで校内を散策したり、単独では出入りを禁止されているカフェテリアに連れて行ったりしてもらえるのかなと、楽しみになんかしていませんが、軽く考えていました。
 ところが、彼がわたくしをエスコートしてくれた先は、彼の所属しているレスリング部の部屋でした。三人の上級生がわたくしたちを出迎えました。三人とも、シングレットというのでしたかしら、半袖膝丈のレオタードを身に着けています。
 ははん。スパーリングとかして、格好いいところをアピールしたいのね――と、わたくしは独り合点しました。
 案の定、ハーディは服を脱いで――え? 女性の目の前で着替えるつもりですか。
 着替えるどころか、彼は全裸になりました。
「きゃ……」
 わたくしは、顔を背けて両手で目をおおいました。清純ぶったのではないです。男の人に裸を見られるのは慣れっこになっても、男の人の裸には免疫が付いていません。
「ファウルカップを忘れてるぞ」
「無理だよ。だって、これだもの」
 げらげら笑う声に興味が湧いて、指の隙間からちらっとのぞきました。
 彼の男性器が勃起していました。チャーリイに比べても可愛い、訂正します――小さいです。それをお腹に貼り付けるようにして、彼はユニフォームを着ました。
「きみも準備しろよ」
 え……?
「貸してあげられるシングレットはないから、裸でやれよ」
「女のパンクラチオンだな。ルールはCACCだけど」
 何を言っているのか、理解できません。
「さっさと脱げよ」
 上級生のひとりが、わたくしに近寄りました。
他の二人もそれに倣って――包囲された形です。
 わたくしはおびえたりなんかしません。上級生の目を見詰めて、静かな声で尋ねました。
「それは、わたくしへの命令なのですか?」
 上級生は目を反らしかけましたが、自分が絶対的に優位であることを思い出したのでしょう。にらみつけてきました。
「そうだ、命令だ。裸になって、ぼくたちとレスリングをしろ」
「わたくし、ルールを知りません」
「さっきも言ったろ。CACC、Catch as catch can――つかめるところはどこをつかんでもかまわないし、関節技、キック、パンチ、なんでもあり。まあ、きみは女性だから、顔面への攻撃はしないであげる」
「それと、レイフもしないよ。出来ないからね」
 もうひとりの上級生が苦笑しています。つまり。レスリングにかこつけて、か弱い乙女を男が四人掛かりで痛めつけようというのです。
「なぜ……わたくしに恨みでもあるのですか」
「無いとでも思ってたのか」
 ハーディです。
「いつも女王様気取りで、ぼくたちを見下しててさ。しょっちゅう荷物持ちをさせるし、カフェテリアではこっちの都合も考えずに呼びつけるし、去年の誕生日にあげたハンカチなんかジニアに投げ与えたし……」
 わたくしは、ただあきれて、ハーディの恨み言を聞くばかりです。彼はオッターと競うようにしてチャーリイの仕事を横取りしていたのだし、それでもたまには彼の献身に報いてあげようとして陪食の機会を与えてやったのです。ハンカチは、あんな安物を身のまわりに置くなんて、わたくしの品位を損ないます。でも、好意は分かっていましたから、捨てたりなんかせず、ジニアに下賜したのです。
 そのひとつひとつを、彼に説明する気にはなれません。しょせん愚民には高貴な者の考え方など理解できないでしょう。それに……今さら言い聞かせたところで、虐められるのが怖くて言い逃れをしていると勘繰らるだけでしょう。
 よろしいです。わたくしを痛めつけて満足するのであれば、お好きになさい。今日を耐えれば、それで終わるのです。この先何年も性奴隷としての辱しめを受けることを思えば、なにほどのことがありましょう。
 わたくしは、四人に取り囲まれたまま、制服のジャンパースカートを脱ぎました。求められて、靴も脱ぎます。
 部室は広くて、部屋の中央には五ヤード四方くらいのマットが敷かれています。印象としては、マットのまわりのわずかな空間が、ロッカールームとミーティングルームになっています。
 その広いマットの上で、わたくしはハーディと向かい合いました。
 彼は姿勢を低くして両手を前に突き出して、まるでへっぴり腰です。もちろん、これがレスリングの構えだということくらいは知っています。
 猿真似をしたところで、その後の体さばきを知りません。どうやったって敵いっこないのですから、棒立ちですけれど座り込んだアヒル(Sitting duck)です。
「ファイティング・ポーズを取れよ」
「それは命令ですか」
「いいから、やっちまえよ」
 上級生にけしかけられて、それでもハーディは慎重に近づいてきて……腕をつかまれたと思ったら。
「きゃっ……?!」
 マットの上に引き倒されていました。とっさに突いた手がずるっと滑って、お腹をマットに打ちつけました。このまま転がっていれば、そんなに酷いことはされないで済むかなとずるいことも考えましたけど。
「立てよ」
 命令されたうえに腕を引っ張られては、立ち上がるしかありません。よろめきながら立ち上がると。
「きゃあっ……!」
 足を払われて、尻餅をつきました。
 ハーディは正面で片足を上げて。
「痛いっ……!」
 股間を踏んづけられました。鎖が陰裂に食い込んで、すごく痛いです。本能的に股間を護ろうとして、背中を丸めてうずくまります。その背後から……
「いてえっ……」
 小さく叫んだのは、ハーディのほうでした。背後から股間を蹴りあげようとして、つま先を鎖にぶち当てたのでしょう。
 良い気味ですと言いたいところですが、ハーディはつま先、わたくしは鎖のせいで尾底骨から陰裂までのダメージです。割りに合いません。
「こいつめ!」
 腹を立てたハーディが髪をつかんで、わたくしをマットから引き抜きました。そのまま前へ回り込んで。
 ぼぐっと、鈍い衝撃がお腹に広がります。
「ぐふっ……」
 重たい痛みが腹全体に広がって、吐き気が込み上げてきます。
「思い知ったか」
 ぼぐっ……二発目は腹筋を固めたので、苦痛も小さかったし吐き気もしませんでした。
「腹はやめておけよ」
 三人の上級生の誰かが、ハーディを止めてくれました。
「なんだよ。顔は殴るな、レイフは禁止、そのうえ腹も駄目って、どうすればいいんですか」
「交替しろ。お手本を見せてやるよ」
 ハーディがしぶしぶを顔に貼り付けてマットの外へ出ると、いちばん年長らしい男子がわたくしの前に立ちはだかりました。同級生の数年後の姿というより、若い教師の数年前といった印象です。けれど、せいぜいY10くらいだと思います。延長教育の生徒は、SSSと関り合いにならないようにしている感じですし、Y11は卒業と進学とを控えて、それどころではないはずです。Y10だろうとY13だろうと、わたくしよりずっと大きくて腕力も強いことに変わりはないです。
 わたくしがうずくまったままでいると、その人はわたくしにおおいかぶさるようにして。腰の鎖を握って、わたくしを持ち上げました。
「痛いいっ……!」
 体重がもろに鎖に乗って、食い込むなんてものではないです。切れ味の悪い刃物で股間を切り裂かれるような激痛です。
 わたくしは、足を伸ばして立とうとしました。ところが、彼は腰の横に手をまわして、両側から引き上げます。
「やめて……ください!」
 突きのけようとすると、ますます鎖が食い込んできます。進退窮まって、彼の肩にしがみつきました。鎖の圧迫が消えて、ほっとする間もなく。
 ぐらっと部屋が傾いたと思ったら、彼に浴びせ倒されました。どすんと、彼の体重が全身を押し潰しました。
「ぐぶふっ……!」
 カートゥーンだったら、人形(ひとがた)のパイ生地を描くところです。冗談を言っている場合ではありません。
 全身を打って、痛みで動けないわたくしに、彼が手足を絡ませてきました。どういう体勢なのかうまく説明できませんけど、肘を外側へねじ曲げられるような激痛です。ぐききっと関節がきしみます。
「痛い……腕が折れます!」
 わたくしの訴えを無視して、いえ、面白がるかのように、彼は身体を揺すって、その動きがますます肘をきしませます。
「どうだ、降参か?」
「降参です。降参します!」
 わたくしが(半泣きになんか、なっていません)叫ぶと、彼は赦してくれました。
 彼はわたくしを横向きに転がして、添い寝するような形になりました。わたくしの手足を自分の手足に絡めてから、わたくしを腹の上に乗せるようにして、あお向けになります。そして――ぐんっとわたくしを突き上げました。
「いやああっ……」
 そんなに痛くはないです。けれど、空中でブリッジの姿勢に固められました。ブリッジよりも開脚の角度が大きいです。直角を超えています。他の三人もマットに上がってきて、わたくしの股間をのぞき込みます。
「可愛らしい陰唇(lips)だな。こんなのでセキスパートになれるのかな?」
「マンコ(cunt)は……鎖が邪魔で、よく分からないや」
「ケツ穴(ass hole)も色が薄くて小さいね」
 ひわいな単語の連発です。可愛いというのも、否定的な評価なのでしょう。肯定的な評価をされたって恥ずかしいですけれど。
 正面から見られるのと、開脚しているところをのぞき込まれるのとでは、恥ずかしさが百倍も違います。腰の奥が羞恥に燃え盛っています。
「降参します。やめてください」
「まだ早いよ」
 取り合ってくれません。ハーディが鎖をつかみました。正確には、腰を巻いている鎖と股間を割っている鎖との交点を、南京錠とまとめてつかみました。下へも手を突っ込んで、腰の後ろの交点もつかみます。
「これって、女のセンズリ(jerk)になるのかな」
 鎖を前後にしごき始めました。元から淫裂に食い込んではいますが、ぎちぎちではありません。わずかな余裕はあります。そのせいで、鎖が淫裂と会淫と肛門とを擦ります。のこぎりで引かれているような痛みが走ります。
「それはマンズリ(beaf flicking)っていうんだぜ」
「牛肉ほど分厚くないよ」
 痛みに耐えているうちに、陰核への刺激が稲妻を呼び寄せました。膣口と肛門にも、むずがゆいようなくすぐったいような感覚が生じました。
「くうっ……んん」
「よがりだしたな」
 わたしの苦鳴に混じる別の響きを、耳ざとく聞きつけられてしまいました。けれど、苦痛はそのままに快感のほうは次第に強くなっていって、うめき声を止められません。
 腰の奥で燃え盛る恥ずかしさと浅い部分にたまっていく快感とが絡みあって、全身に広がっていきます。
 もっと虐めてほしい。そんな思いが浮かんできて、あわてて打ち消しました。虐めてほしいだなんて……わたくしはマゾヒストではありません。「虐めて」ではなく「可愛がって」なら問題は……大ありです。同じことです。肉体の快感と苦痛に心の恥辱とが混然一体となって、何も考えられなくなっていきます。
 でも、わたくしは負けません。快感に囚われては、麻薬中毒患者と同じです。
「くううっ……まだ、降参させてくれないのですか」
 気力を振り絞った訴えは聞き届けてもらえました。鎖の動きが止まって、同時にわたくしはマットの上にたたきつけられたのです。
「あれだけマンズリしてやってアクメに達しないなんて――こいつ、不感症じゃないのか」
「前も後ろも未開通だから、まだガキなんだよ」
「Y7だものな」
「ぼくはガキじゃないよ」
「でも、まだ童貞(cherry)だろ」
 好き勝手なことを言い合っています。
 酷い目に遭いました。でも、大怪我をさせられずに終わった――のでは、ありませんでした。
 二人目の上級生がマットに立って、ボクシングのファイティングポーズを取ったのです。しゅっしゅっと、ジャブを繰り出す真似をしています。
「アイリス、立てよ。おれにぶちのめされるために立て。顔は勘弁してやる」
 命令には従わなければなりません。泣いて赦しを乞うなんてみっともない真似はできません。でも、身体が動きません。
「しょうがないな。ハヴェント、立たせてやれ。倒れないように、羽交い締めにしておけ」
「自分の足で立ちます!」
 名前を呼ばれた三人目の上級生が動く前に、わたくしは宣言しました。両手を突いて上体を起こし、両足を踏ん張って、よろよろと立ちました。強制されるよりはみずからの意思で命令に従う――という自尊心だけではありません。羽交い締めにされていては、殴られた瞬間によろめいて衝撃を和らげることすら出来ません。
「形だけどもファイティングポーズを取れよ。か弱い女の子を一方的に虐めるみたいで後ろめたいよ」
 まさに言葉通りのことをしているくせに。でも、命令ですから――肘を曲げて両手を拳にして顔の前で構えました。
「きみも攻撃していいんだよ」
 フットワークは使わず、彼は無造作に近づいてきて――パンチを繰り出しました。胸を狙われていると分かったときには心臓のあたりに、どすんと衝撃を受けていました。
 オレンジの輪切りが潰れて、ぷるんと跳ね返るのが分かりました。乳房をもぎ取られたような激痛が走ります。机の角にぶつけただけで息が詰まるほど痛いというのに、拳骨で思い切り殴られたのです。両手で胸を抱えて前のめりになりました。
「ほら、ファイト、ファイト!」
 命令に従おうと思っても、身体が動きません。とうとう羽交い締めにされてしまいました。ブリッジのポーズで空中にさらされるよりも屈辱です。
 正面の上級生は、さっきよりもわたくしに近づくと、両手を使って乳房を連続して横に殴り始めました。
「ワンツウ、ワンツウ」
 殴られるたびに、ささやかな乳房が左右にひしゃげます。さっきほど激烈ではありませんが、鈍い痛みが蓄積していきます。
「ワンツウ、ワンツウ……フィニッシュ!」
 また正面からパンチをたたき込まれて、乳房が破裂したような激痛です。
「うわあ。だいぶん赤くなったな。腫れた分だけ、おっぱいが大きくなったんじゃないかな」
 そんなことは分かりませんけれど、ずきずきとうずいています。
「先輩、交替してください。ぼくは、まだスパーリングをしてない」
 わたくしを羽交い締めにしていた上級生との対戦(?)です。サンドバッグにされていた間、ずっと支えてくれていたおかげで、自分の足で立てるようになりました。驚きました。まだ、皮肉を考えられる余裕があります。口にする蛮勇はありませんけれど。
「それじゃ、ぼくはね……」
 目の前に立って、両肩をつかむと……
「あがっ……!」
 股間が爆発したような激痛が、腰を砕きました。
「…………?!」
 両手で股間を押さえて、その場に崩折れました。
「玉(ball)が無いから、金蹴り(nuts crushing)ほどは効かない感じだね」
 男の人が睾丸を蹴られる痛みは分かりませんけれど、女性器を蹴られたって、物凄く痛いです。教鞭でたたかれるよりも。それに、局所的な痛みではなく、股間全体が痛いです。でも、彼が言うように男性はもっと痛いのかもしれません。すくなくともわたくしは、もん絶したり跳びはねたりはしませんでしたから。
「ひと通りは試したけど、あまり面白くないな」
 わたくしをサンドバッグにした上級生が、つまらなさそうに言いました。
「恋の駆け引きをするわけじゃなし。穴を使えないビッチなんて、何の役にも立たないや」
「それじゃ、もう赦してやるんですか?」
 ハーディは不満そうです。
「そうだな。おい、アイリス」
「はい、なにかご用でしょうか、御主人様(My master)」
 この言葉遣いは、校長からの命令です。赦してもらえそうな雰囲気になって、やっと思い出したのです。我ながら現金です。
「そこにひざまずけ。そして、こう言え――父親の権威を我が物と勘違いし、高慢ちきに皆様を見下してきて、申し訳ありませんでした。わがままな振る舞いで皆様に迷惑ばかり掛けて、申し訳ありませんでした。深く反省しています。両手を組んで謝罪してから、最後に、おれたち一人ひとりの足にキスしろ。それで、おれたち四人はおまえを赦してやるよ」
 また、四人に取り囲まれました。わたくしが謝罪するのが当然といった顔です。
 これも命令には違いないのだから、服従しなければならないのでしょうね――と、弱気が頭をもたげました。言われた通りにすれば、それで『デート』はおしまいにしてもらえそうです。
 けれど。たとえ不服従の厳しい――これまで以上となると、厳しいのではなく残虐です。その残虐な罰をこうむっても、譲れない一線があります。高潔です。誇りです。わたくしが高慢ですって?! 貴族としての品位を保って、平民であるクラスメイトに接していたのを、そのように曲解するのですか。
 わたくしには、この四人にも他の生徒にも、謝罪する必要など断じて有りません。
 これ以上の暴力から逃れる方便だとしても、わたくしの口から出た言葉は、わたくしを縛ります。何をされても仕方がない、そういう契約です。けれど、無実の罪を認めるわけにはいきません。
「お断わりします」
 わたくしは勇気を振り絞って、敢然と拒否しました。どんなに残酷な罰でも、潔く受ける覚悟でした。誇らしさに、胸がねじ切れそうです。悲壮が腰の奥で熱くたぎります。
「ちぇ、頑固だな。もうちょっと遊んでやるか」
 これまでの延長なら、もう少しの間は耐えられる……かもしれません。
 わたくしは立たされて――頭から袋をかぶせられました。男の体臭がこもっています。ユニフォームを入れる袋かもしれません。分厚い生地で、袋の口を首のところで閉じられると真っ暗になるだけでなく、息も苦しく感じられます。
 どんっと斜め後ろから突かれて、前へよろめきました。すぐに受け止められて、真後ろへ突き飛ばされます。それを真横へ押されて……倒れる暇もないくらい、あちこちへ小突き回されます。肩をつかんで向きを変えられたりもします。
 こんなことをして、何が面白いんだろう。そう思っていると――不意に足払いを掛けられました。
「きゃっ……?!」
 身体を支えようと前へ手を伸ばしましたが、背中から落ちて頭を打ちました。視界を奪われて身体を動かされているうちに、三半規管の平衡が狂ったみたいです。
「痛いいっ……」
 鎖をつかんで持ち上げられて、身体が宙に浮きました。くるんと裏返しにされて、そのままマットにたたきつけられました。腕に力が入らず、ささやかな乳房がまた潰れました。
 それからは……いちいち覚えていないです。脇腹や股間を蹴られたり胸やお腹を踏んづけられたりお尻を蹴られたり。腕をつかんで引きずり起こされてすぐ押し倒されるのなんてまだ優しいです。足をつかんで逆立ちにされて、そこに股をクロスする形でのしかかられてぐりぐり擦りつけられたり。あお向けに寝かされて四人掛りで手足を引っ張られたり。
 もしもわたくしがぬいぐるみ人形だったら、ばらばらにされていたに違いありません。生身の身体だから、どこも千切れたり裂けたりしなかったのです。
 最後は、袋を取ってもらえたのですけれど。
「おまえのデートだからな。一番乗りをしろよ」
 ハーディがユニフォームを脱いで裸になりました。男性器は勃起しています。ずっとだったのかもしれません。あお向けに転がったわたくしの足を大きく開かせると、上からおおいかぶさって、男性器をわたくしの股間に押しつけました。正確には、そけい部です。太腿と大陰唇とのくぼみに、包皮から顔を出している亀頭を、腰を激しく動かして、擦りつけます。そして、ラテン語教師のカビンより多量の白濁をわたくしの下腹部にぶちまけました。
 次は最年長の上級生でした。両足をそろえて、わたくしに抱えさせました。そして、わたくしの足を折り曲げて、のしかかってくると、男性器を太腿の間に突っ込みました。みずからもわたくしの膝頭をつかんできつく閉じ合わせて、腰を激しく振りました。さっきよりも、刺激が微妙です。快不快ではなく、ぬるぬるした感触が気色悪いです。この人もすぐに射精して、胸のあたりまでわたくしを汚しました。
 三人目はボクシングの人でした。先の二人の精液をロールペーパーで拭ってから、わたくしの上体を起こさせ、自分は中腰になって。両手でわたくしの乳房を中央に寄せて、男性器を挟んだ――つもりかもしれませんが、北緯三十度のオレンジでは無理です。陰茎の両側に触れさせるのが、やっとでした。それでも、激しく腰を動かしてオレンジを側面からすり潰すみたいにして(そういえば、陰茎とすり粉木は形が似ています)目的を果たしました。
 手の甲で拭おうとしたら、その手をハヴェントにつかまれて、剥き出しの陰茎を握らされました。湯煎したサラミソーセージの感触です。しごくように命令されたので、手を動かしました。
「もっと強く、もっと早く!」
 サラミでなくフランクフルトだったら折れるくらいに強く握って、一秒に二往復どころか四往復くらい、五分も続けていたらけんしょう炎になっていたかもしれませんが、二分くらいで終わりました。亀頭のすぐ下のあたりを握って、しごくというよりも包皮を剥いたりかぶせたりといった感じに動かしていたので、手には(あまり)掛かりませんでした。その代わりマットを汚して、ハヴェントは他の二人から叱られていました。
 このあたりになると、意識もだいぶんしゃっきりしていました。
 射精してしまうと、わたくしへの関心は薄れたようでした。まだ足元がおぼつかないわたくしをうつ伏せにすると手足を持って宙づりにして、物置小屋まで運んでくれました。四人掛りで虐めるのを『デート』というのなら、これはエスコートでしょうね!
 ――翌日は全身が痛くて、まだ乳房も女性器も腫れていましたが、授業には出ました。わがままだ身勝手だと昨日はけなされましたが、Y5から学園で学ぶようになって以来、こう見えても無遅刻無欠席です。名誉ある記録を、これしきのことで中断してたまるものですか。
 一時限目の授業は欠席しました。校長に呼びつけられたからです。いわば公式行事ですから、欠席扱いにはならないでしょう。
 校長からは、昨日のデートで何が無かったかを詳しく尋ねられました。鎖の防護が侵されなかったことと、フェラチオ(または類似の行為)は無かったと証言したら、それでおしまいでした。
 後になって、フェラチオをさせられたと証言しておけば、彼らが叱られたのかなと思い返しましたけれど。わたくしのうそが暴かれて、結局罰せられるのはわたくしでしょうから、正直に答えておいて正解だったと思います。
 さて――今日の放課後は、オッター・デアリングとの『デート』です。指定された通りに昼食は取らないで小屋で待っていると、彼が迎えに来ました。
「良かったら、これを使ってください」
 差し出された紙包み(リボンでラッピングされています)を開けると、もう何十日もわたくしとは縁の無かった品々が出てきました。おそろいのブラジャーとパンティ、そして半袖のブラウスです。
「え……?」
「デートのときくらい、まともな格好を……あ、ごめんなさい。普段は目に余る格好をしてるとか、そういう意味ではなくて……」
 疑問符がどんどん増えていきます。彼は、いったい何を目論んでいるのでしょうか。
「これを身に着けろという命令なのですね」
「命令じゃないよ。フッド嬢(Miss Hood)が今のファッションが好きなのなら、それでもかまいません」
 すねたような物言いです。
 わけが分からないまま、彼の言葉に従うことにしました。わたくしが制服を脱ぎかけると、彼があわてます。
「ちょ、ちょっと……ぼく、外に出ているから」
 物置小屋のドアが閉められました。てっきり、わたくしが性奴隷にふさわしくない格好になるところを見たいのだと思っていたのに。ますます調子が狂います。チャーリイとジニアが、まだ食事から戻っていなくて良かったです。からかわれるのは目に見えていますから。
 とにかく。何十日ぶりにブラジャーとパンティを身にまといます。身体を拘束されたように感じました。ブラウスは普通に着ると、裾が超ミニスカートからはみ出てしまいます。おへその上で裾を結んでみます。男性向けの雑誌のグラビアで見かける着こなしです。もちろん、ボタンはきちんと掛けましたよ。
 下着のサイズはちょっと窮屈ですが、胸元をのぞき込まれてもスカートが翻っても、防備は完璧です。騎士が全身よろい(full plate armor)を身に着けたときも、こんな気分になったのではないでしょうか。
 わたくしがドアを開けてオッターの前に立つと、彼ははにかんだような微笑を浮かべました。
「すごく似合ってるよ」
 下着は見えないし、ブラウスはフリルも付いていない簡素なものです。どこがどう似合っているのか分かりません。儀礼的な言葉なのでしょうが、性奴隷に対して御主人様がおべっかを使う意味が分かりません。
「もし、よかったら――だけど」
 またも儀礼的な言葉と共に、左腕を曲げました。彼の魂胆は分かりませんけれど、意図的に気分を損ねさす必要も無いでしょう。わたくしは彼に寄り添って、左腕に右腕を絡めました。
「それでは、行くよ」
 どこへでも連れて行ってください。好きにしてください。運命に身を任せます。
 彼に(本来の意味で)エスコートされて行った先は、学園内のあちこちに配置されている東屋(pavilion)のひとつでした。環境を変えて勉強をする(人は、あまりいませんけれど)のも善し、ひとり思索にふけるも善し、小人数でお茶会を開くのにも使えます。人目につきにくい場所に設けられているので、愛を語らう(それ以上のことをしてはいけません)のにも向いています。
 デートだというのに、テーブルを挟んで向かい合って座って。
 彼は持って来たバスケットの中身を、いそいそとテーブルの上に広げました。小ぎれいなクロスの上に紙皿と紙コップを並べて、サンドイッチとフルーツと、ワインの小瓶に炭酸水。まるきり、ピクニックです。
 ここに至ってようやく。もしかしたら、オッターは本気でまともなデートをしているつもりなのかもしれないと思いました。
 わたくしは勧められるままにサンドイッチを食べ、炭酸水で薄めたワインも飲みました。カフェテリアのコックに特別注文で作らせたのだろうサンドイッチは、とても美味でした。ワインを炭酸水で割るなんてと、フランシュ人なら顔をしかめるでしょうけれど。オッターには精一杯の背伸びでしょう。わたくしも、これくらい薄ければ平気です。
「ええと……フッド嬢(Miss Hood)……」
「アイリスと呼んでください」
「え、いいの?」
 以前のわたくしでしたら、彼がおずおずとお伺いを立ててくるまで待っていたでしょうけれど。今はわたくしのほうが彼を御主人様(My master)と呼ばなければならない身分なのですから。いつまでも過去の権威を引きずっているほどわたくしは愚かではありません。
「それじゃ……ミ……アイリス」
 ミスを付けかけて、それが伯爵令嬢以上への呼び掛け、子爵令嬢に対しては非礼に当たると気づいて言い直しました。顔が真っ赤です。
 うふ、可愛い……同い年の男性に、失礼な感想ですね。でも、男性を可愛いなんて思う感情が、まだ残っていたのには驚きました。今のわたくしにとっては、男性とは迫害者の言い換えに等しいのですから。
「ねえ、アイリス?」
 呼び掛けられて、あわてました。彼は何事かを話していたようですが、ちっとも耳に入っていなかったのです。
「ごめんなさい……」
 素直に謝ります。
「久しぶりに人間扱いされたので、うれしくてぼおっとしていました」
 口にしてから、皮肉に聞こえたのではないかと、不安になりました。昨日、わたくしの振る舞いについてあれこれ言われたのが、まったく平気なわけでもないのです。けれど、無用の懸念でした。
「と、とんでもない。あなたを、あんなふうに扱うほうが間違っているんです。あなたが、今でも子爵令嬢であるという事実は揺るぎません。あなたは、ぼくにとって、今も……あ、憧れの女性です」
 言ってから、彼の顔はますます赤くなりました。
「エスコートさせてもらって、ぼぼくのほうこそ舞い上がっています」
 こんなに率直に告白をされたのは、初めてです。
「お世辞でもうれしく思います」
 ああ、もう。もうちょっと気の利いた返事を出来ないものでしょうか。
 彼は、それから――自分のこと(生い立ちまで)とか、伯父が一代騎士爵を賜っているとか、一年以上も前に観た映画の感想とか、好きな食べ物とか、趣味のFlyable paper solid airplaneのこととか、いろんなことを話してくれました。気を遣ってデリケートな話題、学園生活とかナイフランド紛争とかは避けていました。一時間も(そんなに長く、彼は話し続けたのです)すると、わたくしは彼のことを世界でおそらく三番目くらいには詳しく知っている人間になっていました。一番と二番は、彼の御両親です。
 普通のデートみたいに(学園内ですけど)あちこちへ行かなかったのも――性奴隷を連れて歩くのはみっともないと、そんなふうに考えたのではなく、さらし者にされるわたくしのみじめさを思ってくれたのでしょう。
 とはいえ、彼の話を聞いているだけでは退屈です。ですけど、わたくしの話など、過去の自慢か現在への嘆きにしか聞こえないでしょう。
 まだ残っていたフルーツに彼が手を伸ばしたとき、わたくしは思い切って自分の手を重ねました。
「わたくしを、あなたのお好きなようになさってもよろしいのよ?」
 性奴隷が御主人様に気に入られようとして、こびているのではありません。一途な男の子に恩恵を与えようと思ったのです。
「な、なな、なんでもいいの?」
 彼の声が上ずってきました。しょせんは男。女を自由に出来ると分かれば、女性器は封鎖されているから、胸かお尻か、それとも手に握らせるつもりかもしれません。
「それじゃ、これなんだけど……」
 彼がバスケットから取り出したのはビスケットの箱でした。ドイッチュ原産のスティックプレッツェルです。マッチ棒を十倍くらいに拡大した感じです。それを一本だけ取り出しました。
「チャーパンに交換留学してた友達から教わったんだ。二人で両端から食べていくんだ」
「それで、どうなるの?」
 どちらも降りなければ、二人の唇と唇とがくっつきます。チキンレースかなと思ったのですけれど。
「あの……ええと……」
 もじもじする様子が、いっそう可愛らしく思えます。わたくしになら「キスさせろ」で済むのに。
 ファーストキスは、この子にあげよう。そう決めました。体育教師の女性器へのキスは、あれがキスなら、わたくしは何百回も何千回もリンゴやマフィンやソーセージとキスしています。喩えが偏ってしまいました。
「いいわよ。これをくわえるのね」
 顔を近づけて、彼が手にしていたスティックの端をくわえました。
 オッターもあわてて(折ってしまわないように慎重に)反対側の端をくわえました。
 顔と顔は五インチと離れていません。視線をそらすのは不可能に近いです。なんだか、本当に恋人同士になったようなくすぐったさがあります。
 ぽりっ。端っこを四分の一インチほどかじりました。くわえ続けているには、かじった分だけくわえ込んで、顔を近づけなければなりません。
 ぽりっ。オッターのかじったかすかな振動が、わたくしの歯に伝わります。ますます顔がくっつきます。
 それでも、またかじって。彼もかじって。鼻と鼻がぶつからないよう、互いに顔を傾けます。本当に、完全に、キスの体勢です。
 あと一口で唇がくっつく。そのまま五秒くらいが何事も無く過ぎて。不意にオッターが顔を寄せてきました。唇と唇とが、ついに触れ合いました。
 そこからはオッターが、が然と情熱的になりました。残りのスティックはかまずに飲み込んでから――ちゅううと、音を立てて唇を吸ってきて。それから舌を入れてきました。
 そういうのが大人のキスだというのは知っていました。舌と舌とを絡めたり、口の中をなめまわしたり。くすぐったいのではないかしらとおもっていましたけれど、全然そんなことはありませんでした。でも、口の中で生の肉がうごめいていると思うと、あまり気色は良くないです。あ、でも。交接というのも、女の人の体内で男の人の生の肉が動くのですよね。つまり、キスとは男女の営みの代償行為。そう考えると、むねがきゅうんとねじれて、腰の奥が熱く潤ってきました。
 あれ……?
 この感覚。恥ずかしいことを強いられて、怒りと屈辱に震えているときと、とてもよく似ています。本当の意味で――強制されるくらいならという意味ではなくて、みずからの意思に基づいた行為だというのに、なぜ憤慨しなければならないのでしょう。
 身体の反応に対応する自身の感情に疑問を持ったのは、これが初めてでした。けれど、それを深く考えられる状況ではありません。ファーストキスなのです。これよりも一大事なのは初体験でしょうか。こちらは、わたくしの意思に反して強制されるのではないかと――鎖で封じられていることからも、容易に想像できます。その日が少しでも遅くなりますように。なんて、デートの最中に考えることではないですね。
 テーブルを挟んで顔を寄せ合っていましたけれど、不自然な姿勢です。その思いはオッターも同じだったらしくて、わたくしたちは自然と立ち上がって、テーブルの横に立って、抱き合いました。男の人にしがみつくって、何もかも彼に委ねた気分で、無防備だけれど安心できます。男の人に抱き締められるって、何もかも彼に支配されているけれど守られているって気分で、すごく幸せです。この時間が、いつまでも続けば良いのに。
 けれど、何事にも終わりはあります。SSSの境遇だって、そうに決まっています。いえ、それを考えるとシャボン玉が弾けてしまいます。
 オッターは、わたくしを抱き締めている手を下へずらしていって、腰……に達したときに、あわてたように手を放しました。
「あ……身体を触ってごめんなさい」
 本当はお尻も触りたかったんだなと思います。最初のデートで、それはやり過ぎだと思い直したのでしょう。紳士的過ぎます。昨日、ハーディたちに何をされたか教えて、たきつけてやりたくなりました。けれど、オッターの前ではSSSアイリスではなく子爵令嬢として振る舞うべきだと思いましたので、ふしだらな言動は慎みました。
 こうして、オッターとのデートは、シャボン玉が弾けることもなく終わりました。それは、地平の果てまで広がるしゃく熱の砂漠の中で見つけた、貴重な湧き水のような時間でした。わたくしは、心ゆくまで喉の渇きを潤せたのです――その瞬間だけは。

 ジニアとオットーも二人ずつの異性と『デート』をしました。
 ジニアは、ものすごく露骨に、その様子を自慢っぽく話して聞かせてくれました。詳しいことは断固として省略しますけれど。彼女の鎖の貞操帯はY字形をしています。裏口からの訪問(ソドムの罪がどういうものかくらい、わたくしだって知っています)は無理でも、玄関からの訪問は可能なのです。彼女は、その可能性を十二分に活用して――デートの相手に、未来の花嫁に対する不実を働かせたのです。
 チャーリイは、対照的に不機嫌でした。きっと、金網で男性器を封じられていることと関係があるのでしょう。
「ぼくは猫じゃないんだ」
 それが、デートについての感想のすべてでした。きっと、マフィンを振る舞われたのだろうと思います。

 学年末のテスト明けから五日後には、新学年に向けての長い夏休みが始まります。チャーリイとジニアは、他の生徒と同様に、親元へ帰省しました。わたくしには、帰る場所がありません。学園の物置小屋で、バカンスも娯楽も無く過ごさなければならないのです。カフェテリアも休業ですから、乾パンと缶詰とドライフルーツを食料として。あ、軍隊のいわゆる野戦食(field ration)を一ダース(十二日分)だけ与えられました。パスタに各種のスプレッドにシリアルバーにナッツ類と粉末飲料。以前のわたくしだったら顔をしかめていたでしょうけれど、今となってはフルコースの御ちそうに匹敵します。
 ――チャーリイとジニアが帰省する前夜のことは、あまり思い出したくありません。
 ミルダ・フォーブスにワックス脱毛を施されてひと月近くが経っていました。
「ぼつぼつ無精ひげが目立ってきたな。帰る前にきれいにしておいてやるよ」
 そう言われたのは、いつものように全裸になって手足を長机ベッドの脚に手錠で拘束されてからでした。
「……ありがとう。お願いしますね」
 横柄な口調をたしなめても、手荒く扱われるだけです。あまり(元来の)上下関係を際立たせない言葉遣いで、相手の行為(going)を好意(goodwill)として受け容れるようにしています。だいてはbadwillですけれど。
 このときも、そうでした。チャーリイは昼のうちにミルダから借りていた鍵で鎖を外して、教わった手順通りにワックスをわたくしの股間に塗り込めました。必要よりも熱く溶かして、必要よりも分厚く。それくらいなら、どうということもありません。熱いのをちょっと我慢するだけです。
 ところが彼は、ジニアにピンセットを使わせて淫核の包皮を剥き下げました。彼の意図が分かると――冷たい空気にさらされた乳首と同じことです。実核が固く大きくなってしまいました。その、いっそうびんかんになった神経の塊に、彼はワックスを垂らしたのです。へらに乗せて塗りつける必要がないほどに熱く溶けたワックスを。
「くううっ……」
 わたくしは歯を食い縛って、彼の好意(goodwill)ではない行為(going)に耐えました。さいわいに、ワックスはすぐに固まり始めたので、激熱は一分と続きませんでした。
 ワックスは鼠蹊部から会陰にまで塗りつけられて、ある程度固まってから、さらに重ね塗りされました。ミルダが使った量の三倍以上を股間に塗られたのです。
 覚悟していたのとは違って、彼は優しく――ワックスがその形を保つように注意しながら剥がしてくれたので、毛を引き抜かれる痛みは、ミルダのときよりも小さかったのですけれど。それは彼の親切ではありませんでした。
 彼は剥がし取ったワックスの塊を額に入れて、物置小屋の壁に掛けたのです。わたくしの女性器の形がくっきりと写し取られた――反転レプリカを。
 わたくしへの意地悪(と、せいぜい軽く考えるようにします)は、まだ続きます。
「乳首のあたりにも、ちょこっと産毛か生えてるわね。ついでだから、きれいにしときましょうよ」
 乳房にも、ことに乳首は念入りにワックスを垂らされて、これには声を出さずに耐え抜きました。
 それが、ジニアには面白くなかったのでしょう。前にされたように、手首と足首を重ねて手錠を掛けられました。身体は深いV字形に折れ曲がって、肛門が屋根裏を向きます。屋根裏と表現したのは、簡素なプレハブですから天井板が張られていないからです。どうでも良いことです。
 肛門のまわりにも産毛があるとジニアは主張して――熱いワックスを高い位置から糸のように細く垂らして、多弁花のつぼみの中芯を狙ったのです。まさか中にまでは入り込みませんでしたけれど、わたくしはちょっぴりだけ痩せ我慢を緩めて悲鳴を上げました。それで、ジニアは満足したようです。
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 ポッキーゲームは健全着衣ですし。絵としては、やはりこちらですね。

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 さて。本日(6月19日)は天気晴朗なれど風速4mとの予報です。紙飛行機は飛ばせなくありませんが、競技用機の調整には向いていません。ので、さあ……午前中は10枚でしたが、午後はセキスパートでなくスパートで、せめて20枚にはしときますか。
(参考記事:健全ブログ→


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Progress Report 3:『特別娼学性奴』

 いやはや、困ったものです。まだ零落(Subsidence)して1か月も経たないというのに、240枚です。後半でいつものように加速したりワープするかもしれませんが、予定しているエピソードをきっちり書き込んでいくと500枚を超えるかもです。
 しかも。これだけS尽くしなのに、基本的なServiceが無いのはおかしいと。性奴隷としての初仕事、学年末成績上位者との「デート」を予定していますから、これぞServiceです。それと、赤点(強制ゼロ点)の補習と。でも、膝の上に座らせてモミモミモギュモギュだけでは弱いな――ということで、女教師による保健衛生の補習も追加。レズ奉仕です。尺が伸びる一方です。
 まあ、学校でのアレコレは、大昔からドツボでした。『奴隷留学』とか『淫海教育』とか。小昔でも『鞭と縄の体育補習』がありますし。
 妄想竹が暴走竹になってきました。


 ということで。今回はSuppression(抑圧)です。縄は登場しませんが、予定調和のツインテ利用後ろ手縛りです。
 アイリスちゃんは、屈辱に胸をねじられたり、クリに奔った細い稲妻が腰の奥で疼いている屈辱と合体したり。本人は、あくまで不快だと主張しています。小さな水(こういう表現ならfc2に引っ掛からないよね?)ではない粘っこい体液の分泌に戸惑ったり。
 今の予定では。肉体的な性感を教え込まれても虚しさが募ったりして、精神的な要素(屈辱)と止揚されてこそ充足を得られるのだと――さて、どこで悟らせるか。未定です。


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Suppression

 七月になって早々に、わたくしは誕生日を迎えました。誰からも祝福されることのない誕生日でした。
 性奴隷などという惨めな肩書ですが、そんなにわいせつな悪戯はされずに済んでいます。やはり、男子生徒は女子の目を恐れています。耳もです。
 すれ違いざまにお尻をなでるどころか、追い抜きながら胸元に手を入れてきたり、はなはだしいのは正面に立ちはだかって股間をまさぐる男子までいましたが、じきに少なくなりました。わたくしが黙っていなかったからです。いえ、抵抗したのではありません。
「今、お尻を触りましたね。先に、触らせろと命令してください」
 大声でそんなことを言われては、退散するしかないでしょ?
 ただ。わたくしの機転では切り抜けられない困難に直面したことがありました。特別奨学生徒は、言いつけられた雑用もこなさなければなりません。普段(こんな日々が普段になってはたまりませんけれど)は、こきつかわれることもありません。寮の自室以外は専門の業者が掃除しますし、洗濯してくれるハウスメイドも居ます。まさか、代わりにノートを取ってくれなんていう生徒はいません。
 それでも、寮に忘れ物をしたから大急ぎで取って来いとかいうのはあります。そのときが、それでした。ところが、校舎を出たところで、Y11の男子生徒に呼び止められました。同じような依頼、いえ命令でした。男子寮と女子寮は正反対の方角です。二つの命令を同時には果たせません。事情を説明しても、彼はこっちを優先しろと主張します。全国統一試験を控えているぼくのほうが忙しいのだし、上級生なのだし、男だから――と。
 言い争う(ことを、わたくしが許されていたとしても)時間が惜しかったので、彼の命令を先に片付けました。当然ですが、最初の命令を果たしたときは授業が始まっていて、無駄足になってしまいました。彼女は怒り狂って――授業の後で受けた罰は、スカートをまくってお尻をたたかれるよりも生ぬるいものでしたけれど。
 放課後すぐに、わたくしは校長に訴えました。悪意を持って、こんな両立不可能な命令を出されたら、対抗のしようがありません。
 校長の返事は単純明快で、とうてい受け容れられるものではありませんでした。
「どちらか一方の命令にだけ従えばよろしい」
 当然ですが、続きがありました。
「それから、もう一方の命令に従わなかった罰をうけるのです」
 礼儀正しく辞去の挨拶をして校長室を出てからも、わたくしの肩は怒りに震えていました。
 幸いに二律背反の命令は、今までのところ、その一回きりです。男子生徒からの性的な悪戯も、一日に数回だけだし、ほとんど一瞬です。
 むしろ、女子生徒からの嫌がらせが多いくらいですが、ほとんどが面と向かっての嫌味ですから、心を強く持っていれば、へっちゃらです。
 むしろ、わたくしたちと接する機会のある使用人たちのほうが、だんだん図に乗ってきました。食事を提供するコックは、わたくしとジニアを抱き締めたり何十秒かは堂々と身体を触るようになりました。といっても、被害はもっぱらジニアに集中して、わたくしにはお義理といった扱いでした。ちっとも悔しくはありません。ジニアのほうがグラマーですし、鎖の貞操帯も前を防御していませんものね。
 休日だけ出勤するスクールバスの運転手は、バスの運行を始める何時間も前から洗車場のすぐ横に椅子を持ち出して、そこで待機するようになりました。コックと違って身体に触ったりはしませんけれど、水で股間を洗うわたくしとジニアをじっくりと観賞するのです。そして、こちらの被害はわたくしにが受け持つ破目になりました。夕食を終えて小屋へ戻るとすぐに制服を取り上げられ、朝食が始まる直前まで返してもらえなくなったのです。ジニアの発案です。
「もっと、身体をくねらせながら洗うとかしたら、彼は喜んでくれるわよ。チップの一ポンドも張り込んでくれるんじゃないかな。あなた、一文無しなんでしょ」
 もちろん、死んだって――もっと現実的な喩えなら、(昼食時には物置小屋に拘束は出来ませんから)朝食と夕食を取り上げられたって、そんなことはしません。

 そうこうするうちに、学年末の試験が始まりました。特別奨学生徒になってから、勉学の機会は奪われていたに等しいですが、わたくしには一年分以上の貯金があります。とくに国語やラテン語は、ケアレスミスでも無い限り満点の自信がありました。
 ところが。テスト明けの授業で、最初にラテン語のテストが返されたとき、わたくしは目を疑いました。答案用紙には、正解のチェックマークも誤答を指摘する赤線も入っていないのです。それなのに、右肩には二重線のうえに大きくゼロの数字が書かれています。
「採点漏れがあります」
 特別奨学生の身分を弁えて、ずいぶんと控えめな言葉で、教師の怠慢を指摘しました。ところが、カビン氏から返って来た言葉は耳を疑うものでした。
「ゼロ点のことかね。マイナスの点は付けられないので、そうしておいたのだ」
 採点漏れではなく故意だったのです。
「なぜ、そんなことをなさるのですか?!」
「きみは、チャーリイとジニアがテストで取っていた点数を知っているかね」
 大体は知っています。使用人が落第点を取ったりしたら、主人の管理能力を疑われます。二人とも平均点に届いたことはありませんが、落第点を取ったこともありません。
「きみは、今回の全教科がゼロ点でも、嘆かわしいことに平均点をはるかに越えてしまうのです」
 分かってきました。チャーリイもジニアも、きちんと(わたくしの父が)学費を納めていた生徒とはいえ、わたくしの使用人でもありました。そんな者が優秀な成績を修めれば、良く思う者は、生徒にも教師にもいないでしょう。まして今は――学園のお情けで養われて(辱しめられての間違いです)いる身です。
 それでも。裸の上に超ミニスカートも、女性器に食い込む鎖も、電気も無い物置小屋も、さらし台の机も、乞食のような扱いも、屈辱的な命令への絶対服従も、いやらしく身体を触られることも――すべて甘受するとしても、これだけは我慢出来ません。財産も爵位も青い血さえも関係なく、わたくしの個人としての能力を全否定されるのですから。
「公式に保存される学業記録にまでとは望みません。せめて、この答案用紙には、正当な点数を記入してください」
 今の身分を弁えて、ぎりぎりまで譲った要求です。
「思い上がるのも、たいがいにしろ」
 怒鳴りつけられました。
「財産と身分を鼻に掛けて、教師までないがしろにしてきたのだから、それを失えばしっぺ返しを食らうのは当然だろうが。三倍返し、いや十倍返しは覚悟しておけ」
 授業内容でも道徳的な問題でも、間違っている部分は教師に対してもきっちり指摘してきました。それを曲解して、そんなふうに思っていたなんて……でも、言い返しても、ますます怒らせるだけでしょう。
「そういえば、この授業では、まだおまえに懲罰を与えたことがなかったな。いい機会だ――服を脱げ。制服だけでいいぞ。下着まで脱がすほど、私は無慈悲ではない」
 わたくしを除く全員が笑いました。
 もう慣れてしまいました。わたくしはき然とした態度で――内心では羞恥にもだえながら、それを押し隠して、制服を脱ぎました。直ちに、わたくしは全裸。正確には、一本の鎖で陰裂を隠しているのか際立たせているのか。
 半ば埋もれている乳首を無理矢理に摘ままれて、教壇の中央へ引きずり出されました。これしきのことで、痛いだの恥ずかしいだの、いちいち反応するのは面倒です。私も図太くなったものです。
 後ろ向きにされたので、ほっとしていると。腕を背中へ捻じ上げられました。ツインテールのお下げを引っ張られて、それで手首を縛られました。
「やめてください。おっしゃってくだされば、手を後ろで組みます」
 問答無用で縛られてしまいました。右手首は左のお下げで、左手首は右のお下げで。左右の手首が肩甲骨の下で交差しました。後ろから見れば、腕はW字形に折れ曲がっているでしょう。
「SSSアイリス……」
 くすくす笑いが起きました。
「軍艦みたいだな」
「それはHMS、Her Magesty Shipだよ」
「SSSはナチスの親衛隊だろ」
 コホンとせき払いをして、カビン(わたくしにこのような辱めを与えるやつに敬称は不要です)が続けます。
「彼女は、ずいぶんとラテン語が得意のようですから、その実力を見せてもらいましょう」
 すでにY7の履修範囲は終えているから授業に差し障りはないと、生徒を安心させてから、わたくしに命じました。
「私は、すべての教師と生徒との如何なる命令にも服従します――これを、ラテン語で黒板に書きなさい」
 いちいち翻訳などしなくても、ラテン語が頭に浮かびます。けれど……
「手を自由にしてください」
 ケビンは肩をすくめてから、チョークをわたくしの唇に押しつけました。
「これは懲罰です。口にくわえて書きなさい」
 一瞬の憤慨と教師への軽蔑。そして、すぐに諦めました。チョークを口にくわえて黒板に向かいます。
「もっと上のほうに書きなさい」
 足をそろえて伸ばして、顔を上向けます。髪の毛を下へ引っ張られているので、容易なことです。書くべき言葉も分かっています。
Omnibus magistris et scolaribus mandatis obediam.
 顔を動かして文字を書き始めましたが、思うようにチョークが動きません。それに、すごく薄くしか書けません。
「汚い字だね。これで点数をくれというのだからあきれる」
 からかいの言葉は無視します。でも、せめて濃く書こうと思って、二度三度となぞりました。
 強くかんだせいで、チョークを折ってしまいました。口の中に残った切れ端は、 ひどく苦い味がしました。粉薬と一緒ですね。
「チョークひとつ、まともに持てんのか」
 わたくしの口にチョークを突っ込みながら、カビンは半割りオレンジを、もぎゅっとつかみました。この人は、乳房が好みなんでしょう。小さくてごめんなさいね――皮肉です。
「あれ? magesirisだっけ?」
 書き終えようとしたとき、誰かが言いました。男子生徒の声ですが、誰なのか分かりませんでした。すでに三年間、一緒に学んできたというのに。
 私は後ろへ下がって、書いたところを見直しました。
 スペルミスです。magistrisです。
「消して書き直しなさい」
 またしても無理難題を言われました。いえ、簡単なことです。黒板消しを使うのは無理難題ですが、黒板の字は簡単に消せます。私は横向きになって背伸びをして、右肩を持ち上げるようにして黒板に押しつけ、前後に動かしました。
 文字は――消そうと思った範囲以上に消えてしまいました。チョークの粉が広がって、全体的に白くなっています。もう一度、ずっと慎重に肩を揺すって粉を拭き取りました。それから、消した部分を書き直しました。ずいぶんと手間取りました。
「ふむ。間違ってはいないね。しかし、もっと早く書くようにしなさい」
 言葉だけを聞いていると、まともな授業を受けているように錯覚します。
「よろしい。その下に、こう書きなさい――私は決して教師にも生徒にも逆らいません」
 これも易しい問題です。書いた言葉が、そのままわたくし自身の宣言になるのだろうという確信さえなければ。でも、どうせ――契約書の内容の言い換えに過ぎません。
Numquam magistros aut discipulos detestor.
 今度はスペルミスも格変化の間違いもなく書けました。
「よろしい。次は、こうです――私は従順な性奴隷です。短い文章ですから、右上に書きなさい」
 ますます簡単に、そして困難になってきました。わたくしは右へ動いて、また背伸びをして書き始めました。心の動揺が文字にも表われて、今度は自分で間違いに気づきました。
 さっきは、高い位置に書いた文字を無理して当てずっぽうに消そうとしたのが失敗の理由です。わたくしは横を向いて、目は黒板の文字を見詰めながら、頬を擦り付けて消しました。
 なぜ、こんな道化めいたことをしなければならないのでしょうか。正しく採点してくださいと要求するのは、そんなに罪なのでしょうか。チョークの粉が目に灰って、涙がにじみます。泣いてなんかいませんとも。
 書き終えて、その文字を眺めると、ますまづチョークの粉が目に染みます。
Ego sum servus sexus submissi.
「よろしい、次はこうです――私は自分の無毛のマンコが自慢です」
 これまでは客観的事実(?)の記述でしたが、これはわたくしの心を直接に踏みにじる語句です。
 自慢どころか。有るべき物が有るのを見られるのはじゅうぶんに恥ずかしいのですが、無いのを見られるのがそれ以上に恥ずかしいとは、知りませんでした。
 それでも、書かなければならないのです。
Ego cor meum genitalia feminina glaber.
 マンコに相当する下品な単語なんて知らないので、女性器と上品(ではないかも知れませんが、正しい医学用語です)に表現しました。
 からかわれるのも覚悟していましたが、カビンは寄り道をせず、最初に定めていた(のだと思います)コースを進みました。
「よろしい。では、最後にこう書くのです――私は淫乱なビッチです」
 もう、チョークの粉が目に入ることもなくなりました。
 二行の文章の下に書こうとして、腰をかがめました。ぴりぴりっと、陰核に小さな稲妻が走りました。
「あっ……?!」
 わずかな刺激だったのに、腰全体に雷鳴がとどろいたような感じになりました。屈辱にまみれていたことろへの不意打ちで、心の準備が出来ていなかったせいでしょう。
 わたくしは(可能な限り)気取られないように素早く体勢を立て直して、淡々と書き進めます。けれど、文字には内心が表われてしまいます。震えて、スペルミスだらけで……
 間違ったところを消そうとしたら、止められました。
「もっとピンポイントで消しなさい」
「……?!」
 意味が分かりませんでした。
「鉛筆の尻に付いているのと同じ消しゴムを、きみは二つも持っているではないですか。それを使いなさい」
 言いながら、わたくしの胸元を指差しました。
 理解せざるを得ません。でも、わたくしの乳首は半ば埋もれ……意識すると、途端に硬くしこって、飛び出してきました。それは、近くに立っているカビンにも見えたのです。
「何を期待して乳首を立てているんだね、この淫乱娘は」
 命令は含まれていませんから、雑言は無視して、黒板と向かい合いました。書いていたときよりも腰が高い位置に来ますから、刺激が少し減って楽になりました。物足りないなんて、これっぽっちも思いません。
 下目遣いに文字を見ながら乳首を近づけて。黒板に軽く押しつけると、ひんやり心地好いです。上体を慎重に動かして、乳首でチョークをこすり取ります。無数の細い稲妻が乳首から乳房の奥まで飛び散りました。かろうじて声は押さえましたが、身体がびくんっと跳ねるのまでは、どうしようもありませんでした。
 体勢を立て直して。乳首を消しゴムにして、間違えた文字を消していきます。ぴりぴりぴりっと、立て続けに細い稲妻が走ります。今度は予期していたので、平気ではないけれど、耐えられます。
 電撃を心地好いと思う人はいないでしょう。でも、これは本当の電撃ではなくて……心地好くはないけれど、乳房全体がうずいて、腰の奥に奇妙なうねりを感じます。いつまでも続けていたくなります。
 でも、しつこくは続けません。消したい文字を消し終わると、少し深く腰をかがめて、文字を書き直しました。
 書き終わって足を伸ばすと、陰裂からにじみ出た体液で腿がぬれているのが分かりました。
 書いた文字をあらためて眺めると、そんなに屈辱的な文章でもありません。
Ego sum nymphomanis femina canis.
 nymphomanisという形容詞は妖精(nymph)が語源ですから幻想的です。ビッチは雌犬(femina canis)のことですが、侮蔑のニュアンスが――ラテン語にあるかどうかは知りません。
 わたくしが書き終えて、カビンが何か言いかけたとき、終業のチャイムが鳴り始めました。思っていたよりも時間が経過していました。
「アイリス。放課後、私の部屋へ来なさい。落第点を取ったのだから補習です」
 どんな補習か、想像がつきます。でも、受けなければならないのです。年間を通じての点数は及第ですが、今のは絶対に無条件に服従しなければならない命令だからです。
「誰か、アイリスの髪をほどいてやってください」
 そう言って、カビンは教室から出て行きました。生徒も、次の教室へと移動します。わたくしの手首を縛っている髪の毛をほどいてくれる親切な人は――ひとりだけ居ました。
 最後まで教室に残っていたオッター・デアリングが、なぜかそっぽを向きながら近づいてきて。
「すぐ、ほどくから――身体に手が触れたらごめんね」
 まるで普通の女の子に断わるみたいな物言いをして、わたくしの後ろへ回り込むと、ちっとも身体には手を触れずにほどいてくれたのです。
 こういうときは、きちんとお礼を言うべきなのかしら。だとすると、どんなふうに言えば良いのだろうとためらっているうちに、彼はそそくさと立ち去ったのです。
 わたくしがためらったのは。触り放題虐め放題の性奴隷としては、ひざまずいて、なんだったら彼の靴にキスでもしなくてはいけないかしらと、一割くらいは本気で考えたからです。それとも、子爵令嬢としてなら、軽くうなずいて一言だけが適切かしらと、こちらは二割くらい本気でした。残りの七割は、単純に戸惑っていました。
 男子は、全員がわたくしの崇拝者か僕(しもべ)か、少なくともファンでしたけれど、彼は特に熱心な崇拝者であり僕でした。四月のキャティ・ストックとのいさかいのときも、彼はチャーリイ以上の献身をしてくれました。
 もしかすると、今もまだ、わたくしを崇拝しているのでしょうか。首輪をはめられ、鎖で女性器を虐められ、下着さえ与えられずに超ミニの制服一枚を着せられて、屈辱の文字を書かれたボロ靴を履かされている、このわたくしの中に、彼には青い血が見えているのでしょうか。
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17.jpg

 最後に出てくるオットー君は、Spitefulで登場した親衛隊員です。頑張って、見事デート権を獲得して。下着をプレゼントしたり、ポッキーゲームでキスしたりと。純愛可憐一直線。ああ、その前日にはもう一人の親衛隊員であるハーディ君およびその先輩たちと、楽しくガチレス(CACC)をやらされて痛めつけられているので、なおさらオママゴトデートが心に沁みるのです。
 まあ。オットー君はデートの後で「下着をつけてたら叱られるんじゃないのか」なんて言って臭い付き染み付きを回収しますから、そうそう純情でもないかな。



テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

描写に優れた小説との御墨付?

  BOOTHの修正依頼ですが。
 編集・登録で、こういう註記が表示されます(赤線は筆者)。

御墨付
 だいたいが、テキストで引っ掛かってます。紹介画像で引っ掛かるのは、文字を入れているやつ。
 ということは。筆者の小説は(紹介文に至るまで)、写実性が高くて、「もしかすると実話か?」と思わせるということなんですかね?

   「ということは~ということ」の反復は、
    小説では戒めておりますが、
    放言までは知ったこっちゃねえ。
 筆者の描写力を高く評価していただき光栄至極感謝のいったりきたりでございますヨ!

テーマ : 日記
ジャンル : アダルト

明るく健全な和姦

しか、認めんちゅうんかい。この屋台(BOOTH)は?!

最近、ちまちまと、イチャモンが来てまして。都度、適宜適切適当に対応していたのですがね。
このたび、ズドドドドドーンと。ほぼ全作品についてイチャモンが来たのですよ。

画像参照

BOOTH.png

まあ、商品内容そのものはOKなのかオメコ干しなのか知りませんが。商品紹介ページは、明るく健全を装えってんでしょ。
年間数万円の売上しかないのです。専用の文章とか紹介画像を丁稚揚げる気力もございません。
でも、年間数万円あれば、大衆ソープ1回は行けます。



要修正と指摘された商品紹介ページ。
雷跡改悪前

これならOKの筈の改悪商品紹介ページ。
雷跡改悪後

十年後には、このサイトは斯くの如く評価されるでしょうな。

ガス抜きの道をふさいで、性犯罪の増加をもたらしたサイトのひとつ。

テーマ : 日記
ジャンル : アダルト

Progress Report 2:『特別娼学性奴』

 どうも、平日というやつはいけません。勤務中にぼけっとしてると(出来る環境なのです)、どんどん妄想が膨らんでいって……
 まあ、ゲームと一緒ですけどね。立ち上がりが、もっとも楽しめて(ゲームと違ってS/Lはしませんけど)。後半は作業ゲーになっていく。小説だと、序盤あたりを書き込んで、途中からどんどん走り出す。頭デッカチ尻スボミ。いや、読者を最終ページに向けて疾走させるベクトル感覚(Ⓒ平井和正)とも言えるかもしれないのではないかと思わぬこともないのであろうか。


 ええと。
 Spiteful (意地悪な)は、紹介済み。
 Substitute (代用品)で、ドライバーの柄でスクールメイドの処女膜を破って。でも、陰茎を挿入したのではないから(太いタンポンと同じだから)処女を奪ったのではありませんことよ。労働者階級の娘の処女にはなんの価値もありませんけれど。
 Subsidence (没落は意訳だな)で、パパは行方不明、ママはジャマゆきさん。
 裁判所に申し立てて死亡宣告をしてもらうと、嗣子(直系男子のみ)無き子爵家は廃絶。破産宣告しても同じ。というわけで、家屋敷からパンティ一枚に至るまで処分しても残る50万ポンド(話の都合で増減します)を、親切な人物から借りて、その返済方法も親切な人物から斡旋してもらって。さらに、娘が学ぶメイスレッド学園の新理事長の好意で、新しく設けられた奨学制度の第1号。実は、親切な人物と新理事長は同一人物で、かつて伯爵家令嬢メリーをフッド子爵と競ったドレッド・ノートン子爵。ママはノートンに騙されたのか、ママが娘を(ノートンの名を伏せることで)騙したのかは、書き進むうちに決まるでしょう。作者が決めるのではなく、話の流れで決まるのです。
 この章で、ヒロインはパパの顧問弁護士にパンティ一枚まで没収されて、特別奨学生契約を結ぶしかなくなって。股下ゼロcmの裸ジャンスカ制服(制服は貸与するが下着は契約範囲外)で、そんな格好でうろつけば襲われるぞと貞操鎖を装着させられて。SchoolMale、SchoolMaidともども物置小屋を新しい宿舎に与えられて。二人からの仕返しが、じわじわと始まって。


 画像は、ちょっと違うけれど、鎖貞操帯のイメージです。
貞操鎖

 ようやく1日が終わって。次の日が
 Shame(恥辱)です。


 その途中までを御紹介。書き立てのほやほや。

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Shame

 環境が激変して。チャーリイとジニアも、熟睡できるはずがありません。二人とも夜明け前には目を覚ましました。けれど、すぐには手錠を外してくれません。高い所から見下ろしているくらいなら、まだしも。
 チャーリイは床まで下りてきてわたくしの横にしゃがみ込みました。ばかりか。不届きにも、わたくしの乳房を撫でたりつかんだりし始めました。
「やめなさい、チャーリイ」
 たしなめましたけれど、彼の手は止まりません。わたくしは、重ねて叱ったりはしません。絶対に従わないだろうと、予測できたからです。叱れば叱るほど、主人としての威厳が損なわれます。
 今のチャーリイは、小さな子供と同じです。珍しい物をあれこれいじっているのです。
「ひゃんっ……」
 乳首をつままれて、不快な電撃が走りました。ええ、不快なのです。
「へえ。こんなちっこい胸でも感じてるんだ」
 チャーリイは調子に乗って、指の腹で乳頭をくすぐったり、あるいは半割りのオレンジを胸板から引き剥がすみたいにつかんだり。
 そのたびに、細く鋭い不快感や、乳房全体に染み通るような不快感に襲われます。うっかり声を漏らした結果がこれなのですから――わたくしは声を出すまいと、懸命に堪えました。
 ぼぐっ……お腹に重たい衝撃を受けました。
「ぐぶふっ……」
 また、バッグを落とされたのです。それも、昨夜よりずっと高い位置から。
「そんな平らな胸が、あなたの好みなの? それじゃ、わたしのは二度と触らせてやらないからね」
 女同士です。声に含まれている嫉妬の響きは、容易に聞き分けられます。なんとしたことでしょう。あれだけ厳しく管理していたのに、いつの間にか二人は(どこまでかは分かりませんが)通じていたのです。
「怒らないでくれよ。ちょっと、お嬢様をしつけていただけさ」
「そんなのは、先生方に任せておけばいいのよ。そんな平原で遊んでいないで、わたしの丘で遊んでよ。なんだったら、密林を探検……あ、そうか。出来ないんだっけ」
「勘弁してくれよ。前が突っ張らかるのは痛いんだから」
 状況が状況ですから、そんな換喩(metonimy)だらけの会話も、およそは分かります。わたくしの胸が平原ですって? 平原にオレンジは生りません――この修辞はねじれています。
 それ以上の悪戯はされずに、張り付けから解放してもらえました。わずか十秒で制服を着て、隣のブースで恥辱をかみ締めながら用を足して、校舎の裏伝いにガレージへ行き、もう目覚めて男子寮の窓から外を眺めている顔が無いのを確かめてから大急ぎで股間を洗いました。
 物置小屋まで戻って、ずいぶんと迷いましたが、中に入りました。使用人が中でのんびり過ごして主人が外で待つなんて不自然ですし、さっきの会話から察するに、二人だけにしておくと良からぬことをしでかしそうです。使用人の不始末は主人の責任でもあるのですから、きちんと監督しなければなりません。分かっています。もはや、二人ともわたくしの言うことなんか聞く耳をもたないのでしょう。けれど、だからといって責任を放棄するわけにはいきません。それに、彼らがわたくしを主人と思わないにしても、『第三者』の目の前で不純異性交遊(illicit sexual relations)に耽ったりはしないでしょう。
 はなはだしく居心地の悪い二時間が過ぎて、朝食の時間になりました。また、二人について行く形でカフェテリアの裏手へ行って、昨日と同じコックから朝食を恵んでもらいました。
「え……?」
 思わず疑問の声を漏らしたのは、二人に比べて明らかに食事の量が少なかったからです。絶対的な量の不足が不満だったのではありません。差異をつけられたことに納得がいかなかったのです。
「おまえさんは食が細いから、それでじゅうぶんだろ」
 昨夜は半分くらいを残した、そのことを言っているのです。
 たかだか食事の量くらいのことで、労働者といさかいを起こすなんて、わたくしの誇りが許しません。
「ありがとうございます(Thank you,sir)」
 昨夜よりは滑らかに、感謝の言葉を言えました。誇りを失ったのではありません。事務的手続き、あるいは呪文みたいなものだと、割り切っただけです。
 食事の途中で、わたくしたちのグループの担任(advisor)であるレイカー氏が来て、教室ではなくフッド記念講堂へ行くようにと告げました。二人は心得顔。何事だろうといぶかしく思ったのは、わたくしだけのようです。
 フッド記念小講堂へ行くと、担任に関係者通用口へ案内されました。通用口から控室を通って袖へ行き、そこで待機です。
 袖からは座席が見えませんが、収容人数と聞こえてくる私語から推察すると、セカンダリーの生徒が集められているようです。
 一時限目のチャイムが鳴ると、わたくしたちとは反対側の袖から、校長が姿を現わしました。
「おはよう、生徒諸君。本日は、当学園で初めて試みる奨学制度(Scholarship System)について説明します」
 生徒の皆さんはお行儀よく校長の話を聞いていますが、きっと何の関心も持っていないでしょう。学費の心配なんて無縁ですものね――わたくしたち三人を除いては。
「近世までは学僕という制度がありました」
 校長が後ろの黒板に大きく“Scool Servant”と書きました。
「学校の雑役夫として働きながら、その合間に無償で授業を受ける生徒のことです。新しく設ける奨学制度も、この仕組みと似ています。在学中の生徒で、学費を工面できなくなった三人に、この新しい制度を適用することにしました」
 レイカー氏に引率されて、わたくしたちは演壇の中央へ進みます。進みたくなくても、進まざるを得ません。生徒たちと向かい合って立っても、ひとりひとりの顔なんか見分けがつきません。とにかく、スカートの裾が気になって仕方がありません。下から見上げられているのです。
「奨学生の三人も、こちらを向きなさい」
 ほっとした気分になって、まわれ右をします。股間を見上げられるよりは、お尻を見られるほうが、まだしもです。もっとも、六つと半ダースの違いですけれど。
「新しい奨学制度は、公式には特別奨学制度と称します」
 最初に書いた文字の下に“Special Scholarship Sysytem”の文字が加わりました。
「しかし、生徒も教師も心得ておいてもらいたいのは、その制度の運用形態です」
 校長が三行目に“expert Scholarship Student”と書きました。何かの分野の専門家を養成する目的の奨学金制度という意味でしょう。だから、学園が就職先を世話してくれるのだと、理解しました。
 ところが。校長は三行目の左端に“S”の文字を書き加えて、最初の三文字にアンダーラインを引きました。“Sexpert”
「あっ……」
 わたくしは息を飲みました。昨日の校長の発音は、聞き違いではなかったのです。こんな単語は初めて見ましたけれど、容易に想像がつきました。SEXのエキスパート。
 娼婦です!
 それで、この破廉恥極まりない制服の意味が明白になりました。娼婦は客を引くために、ずいぶんと露出的な服装をするのだと、男性向けのいかがわしい雑誌に書いて……あると、噂に聞いたことがあります。こんな超ミニスカートとか、裸身に毛皮のコートだけをまとうとか。
 わたくしは、この場から逃げ出そうかと考えました。大声で校長に抗議しようかとも考えました。けれど、どちらも危うく思いとどまりました。
 ひとつには、学園を逃げ出しても、身を寄せる所が無いのです。こんな破廉恥な服装で外を歩かなければならないという事実は無視するとしても。
 二つ目には、他の二人が平然としているのに、わたくしひとりが取り乱すことへの羞じらいです。
 この二つは、実際的な困難と個人的な見栄の問題です。けれど、それ以上にわたくしを縛るものがあります。契約書への署名です。うかつに署名してしまったとはいえ、契約が成立したことに変わりはありません。契約をやぶるなど、ならず者のすることです。貴族の名誉に懸けて、そんな真似は出来ません。
 それに、セキスパートが娼婦だというのは、わたくしの勘違いでしょう。伝統と格式を誇るメイスレッド学園が娼婦を養成するはずがありませんもの。
「……さて、ここで諸君に覚えておいてもらいたいのは、アイリス・フッドと他の二人は明確に事情が異なっているということです」
 自分の考えにかまけて、校長の話を聞いていませんでした。
「チャーリイ・アクティとジニア・コルベットには、労働者階級とはいえ両親が健在です。親元から若干の金銭的援助を受けられます。しかし、アイリス・フッドは事実上の孤児となり、まったくの無一文となったのです。彼女は、学園の慈悲と生徒諸君の善意とによってのみ生きていけるのです。したがって、彼女に対してその見返りを求める権利が学園と生徒諸君にはあるのです」
 酷い言われようです。けれど、ここまでの長広舌は、わたくしにとどめの一撃を加えるための前準備に過ぎなかったのだと、思い知らされました。
「したがって……」
 校長は、チャーリイとジニアに、袖へ引っ込むように命じました。わたくしひとりが壇上に立たされています。
 校長はチョークでわたくしを指し示してから黒板に向き直り――四行目に、それまでより大きな文字で、すべてを大文字で書き記しました。
 “SEX SLAVE STUDENT”
 講堂全体がどよめきました。
 わたくしは――立ったまま卒倒したのでしょう。気がついてみると、グループが集まる教室に居たのです。
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 尺が伸びてきたので、最後の一行で、Warpします。

テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Progress Report 1.01:『さんすう』レベルのミス!

あわててててて!
ひでえ!
ミスはすでに直してある。


 何がどうしたかというと。
 某国を参考にした学制です。
 Y1。こう書けば(グルグルで)某国は一目燎原の火ですが。Y1で5歳なら、ヒロインはY7で、5+7=12だな、と。
 阿保か。手をグウにして「1」。一本ずつ開いていって、「2、3、4……」。小1レベル。はい、「7」まで数えたら、親指一本だけが再度折られていますね。今日になって気づきました。
 リクエストの12±xの範囲ですが、筆者の感覚としては、恋足(こいたす)にはちょい早い。かといってY8にすると、いろいろ不都合で一括置換は犯罪ですから面倒です。
 ので。7月生まれ(誕生日の1か月半後に入学)から10月生まれ(入学は誕生日の11か月後)に変更。
 やれやれでした。
 せっかく、6th formなる制度を見つけて、Sexpertと聞かされたアイリスが、6th partのことかしらと勘違いするという天の配剤的エピソードが丁稚揚がったのです。オジャンにして貯まるもんか、俺の貯金。


 しつこく、同じ画像。今度はラージサイズの一点物。

小公女1

 うん、これは使いましょう。ていうより、教鞭で全裸メコ筋縦打ちがあるのですから。お仕置の前に甘やかしてやりましょう。ちなみに、画像の如く後ろ手に縛ったりはしませんし、開脚させましょう。
 青い血のプライドに掛けて、アイリスは(目に入ったゴミのせいで涙をあふれさせながら)不本意な快感に翻弄され、恥辱に胸をねじられながら、激痛には腰の奥を痺れさせるのです。


 今はまだ、裸股下0cm袖繰エヴァ風ジャンスカの恥辱に悶えているところ。
 この後、下僕下女ともども寮舎から追い出され、物置小屋をあてがわれ、二人はベッド、アイリスはベッドの間で、これまで二人に使っていた手錠で大の字にされて、それ以上の悪戯はされずに朝まで眠れず、母様の特別なお仕事ってなんだろうと薄々気づいて……さて、翌朝は登校ぎりぎりまで放置されるか。連帯責任を恐れて、あっさり解放されるか。尺次第?
 いずれにしても。フッド記念小講堂にY7からY9を集めて。あれこれ説明するシーンとか万由旬を経て兜率天に至るのです。百億の恥と千億の辱。

Progress Report 1:特別娼学性奴

 初っ端から、あれこれ変更です。
 Sadistin は、長くなってきたので、2章に分割。Spiteful と Substitute です。スクールメイドの処女を興味本位で(substitute=代用品)で破るのを独立させました。
 次に名前。
  スクールメイル(下僕)ラック・ワンブス→チャーリイ・アクティ
  虐められるアメリカ娘 ケイティ・アーズ→キャティ・ストック
 元の名前がアングロ・サクソンぽくないので。ワンブスについては、そのままにして、有色人種のクォーターあたりにすれば、ますますクラスメートから孤立するかと思ってもみましたが。メイスレッド学園はパパ上のマイティ・フッドとママ上のメリー・レパルス(旧姓)の母校です。たとえ娘の下僕とはいえ、有色人種を入学させるなんて、とんでもない。
 まあ、チャンティクリアはブラックスワンの姉妹艦だから、いいか。


 ここで、豆知識。
 その昔。大英帝国海軍では、戦列艦>フリゲイト>スループ(3檣はシップ・スループ、2檣をブリッグ・スループ)でしたが。フリゲイトが大型化してスループとの間に空隙ができたので、そこを埋めるためにフランスあたりで採用されていた名称のコルベットを入れたのです。コルベット・スティングレイとの関係は知りません。
 ところが。第2次大戦中だっけ。駆逐艦の下位バージョンとしてスループの名称が復活し、さらに日本でいうところの駆潜艇相当としてコルベットも復活しました。この場合は、帆船時代と逆で、コルベットのほうが小さいです。
 さらに蛇の後足。江戸時代末期の開陽丸(新選組が蝦夷地脱出に使った船)は甲鉄コルベット、舷側に鉄(鋼ではない)を張ったコルベットでした。
 相変わらず遊んでいます。

 さて、肝心の本文紹介。冒頭からいきましょう。

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Spiteful

 チッ……
 目覚まし時計の針が重なる音で目を覚まして、ベルが鳴り始める前にスヌーズしました。
 春の朝の柔らかな陽光が満ちるベッドルーム。快適な目覚めです。わたくしはすぐにベッドを出て、隣の寮室へ行きました。
 わたくしの部屋と違って、ベッドが二つと机も二つ。それだけでも狭いのに、ベッドとベッドの間にはカラーボックスが並べられています。寝るときまでお互いの顔を見るのが恥ずかしいとかで、三か月前にチャーリイ・アクティが買って来たのですけれど。四つのボックスを足元へ寄せて、顔が見交わせる配置で落ち着きました。考え無しですね。
「おはようございます、お嬢様(My lady)」
 ベッドの中からわたくしを見上げて、チャーリイが挨拶をします。致し方のないことです。だって、彼の右手と右足は手錠でベッドの脚につないであるのですから。
「おはようございます、お嬢様」
 ジニア・コルベットも挨拶を寄越します。彼女は、左手と左足をベッドにつないであいます。
「おはよう」
 挨拶を返してやりながら、二人の手錠を外してやりました。朝晩面倒な儀式ですけど、これも高貴な者の務(Noblesse oblige)めです。だいいち、使用人が間違いをしでかしたら、わたくしの落ち度になります。
 あら。使用人ではありませんでした。二人はわたくしの学友――スクールメイルとスクールメイドです。同じY7ですけど、実はチャーリイは二つ年上。レディの護衛ですから、たくましくなくてはなりませんものね。
 だから、チャーリイには性的欲求が兆していると思います。ジニアも、ぼつぼつそういう年頃でしょう。三年ちかくも一緒の部屋に住んでいながら、今さらのようにパーティションを欲しがったりするのは、そのせいだと思います。
 もっとも、間違いなんて起きるはずがありません。二人を拘束するのは就寝のときだけですけれど、廊下への出入口はドアを取り払ってあります。男女が二人きりで同室のときはドアを開けておくのがマナーですから、いちいち開閉する手間を省いてあるのです。廊下のいちばん奥とはいえ、いつ他人にのぞき込まれるかわかったものではない環境で、いやらしいことなんか出来っこないですね。女子寮に男子を住まわせる特例を認めてもらうには、これくらい徹底する必要があるのです。
 わたくしはベッドルームへ戻って、仕切りのドアを閉めました。それから、元は廊下だった部分に通じるドアを出て、向かい側のセクションにあるサニタリールームへ行きます。そうです。わたくしの寮室には、専用のリビングルームとサニタリールームがあるのです。男女合わせて七百八十名の生徒の中で、わたくしひとりだけの特権です。
 当然のことですわ。学園には男爵を親に持つ生徒が三人と、準男爵や騎士は二十何人かおりますけれど、子爵はわたくしだけ。しかも、この学園はわたくしの父母の母校ということもあり、有象無象の成金連中など足元にも及ばないほど多額の寄付をしているのです。フッド記念講堂もありますの。別に自慢するつもりはございませんけれど。
 わたくしは朝の生理的欲求を満たしてから、シャワーを浴びました。腰まで届くブルネットは、ざっと水気を拭っただけで、バスタオル一枚でベッドルームへ戻ります。
「ジニア」
 声を掛けると、ジニアが礼儀正しく部屋へ入って来ます。わたくしが猶予をあげている間に、自身の身支度は整えています。
 ジニアはわたくしの髪をドライヤーで乾かしながらブラッシングをして、ていねいに編み下ろしてくれます。
「これでよろしいでしょうか」
 ブルネットに映えて、かつ学生らしく清そな白のリボンを差し出します。
「よろしいわ。あなたのセンスも、洗練されてきたわね」
 使用人を褒めてやるのも、主人の心得です。
 わたくしが立ち上がると、ジニアはかいがいしく着替えを手伝います。子供っぽくはないけれどけっしてセクシーではない、おそろいのブラジャーとパンティ。淑女のたしなみのスリップ。ハイソックス。きれいに洗って、ふわっとした感じにアイロンを掛けたブラウス。校章を左胸に刺しゅうした水色のジャンパースカート。真っ赤な紐ネクタイ。
 身支度が調うと、ドレッサーの小さな鏡ではなく、壁にはめてある姿見で全身をチェックします――けれど、着付けの具合よりも身体の輪郭に目が行ってしまいます。
 チビってほどではないですが、わたくしは同級生の中では小柄なほうです。でも、胸の膨らみはY8の先輩にだって負けていません。目下の悩みは、バストよりもヒップの数字が(少しだけです)大きいことですけれど。母様みたいにほっそりしていると、結婚してから苦労することになります。なにしろ、二人目を授かるために、スポーツジムに通って体質改善に励んでいるんですもの。
 でもまあ。私の後ろに控えているジニアを鏡の隅っこに見ると、わたくしの自慢も悩みもぺちゃんこになってしまいます。わたくしより頭半分背が高くて(女性で長身は如何なものかと思いますけど)、わたくしとジニアが並ぶと、クラスの男子の視線はわたくしの顔ではなくジニアのバストとヒップに集中するんですから。将来はきっと、殿方を悩殺するような下司な女性になることでしょうよ。
 あら、いけない。朝ご飯を食べている時間がなくなります。カフェテリアでは皆さんが順番を譲ってくださるから、長い行列に並ぶ必要はありませんし、そんなにたくさん食べるわけでもないです。けれど、淑女のマナーを守ってお食事をするには、相応の時間がかかるものなのです。
「学校へ行きます」
 ジニアに声を掛けて、わたくしは廊下へ出ました。ジニアは、わたくしのバッグを持って、自分のバッグを取りに、あたふたと自分の部屋へ戻ります。わたくしの斜め後ろには、ちゃんとチャーリイがついています。
「おはようございます、ミス・フッド」
 部屋から出てきた上級生が、立ち止まって挨拶をします。身分を弁えて、なれなれしくアイリスなんて呼び掛けたりはしません。
「おはようございます。良い朝ですわね」
 この人はY12のネリッサ・グラフトン。ほとんど毎朝、出会います。顔なじみの方には、それなりの言葉を掛けて差し上げるべきでしょう。
 挨拶を交わしている間に、ジニアも追いついて来ました。三人で階段を下ります。この様子を『お姫様の出陣』なんておっしゃる方々も、何人かはいらっしゃいます。Y7以上の女子だけで百四十人もいるのですから、わたくしを良く思っていない方だっていないことはないでしょう。身分高き者を崇拝せず富める者を嫉妬する輩は、どこにだっているものです。もちろん、下級生は皆さん、わたくしの崇拝者に決まっていますけれど。

 朝食を終えて教室に入ると、十二人のクラスメートのうち一人を除いて、起立して朝の挨拶をしてくださいます。椅子に座ってそっぽを向いているのは、キャティ・ストックだけです。
 彼女の頭に飾られているヘアブローチが、わたくしの目を引きました。細長い花の形をした金色は、彼女の金髪に埋もれて、ちっとも見映えがしていません。
 わたくしはキャティの前に立ちました。彼女はわたくしを見上げただけで、何も言いません。わたくしから挨拶されるのを待っているのでしょう。
「素敵なヘアブローチね。もっと良く見せてくださらないかしら」
 キャティが立ち上がりました。ジニアと同じくらいに背が高いです。
「いやよ。髪が乱れるわ」
 けんか腰です。この人は、いつもこうなのです。石油のほうが青い血よりも貴いとでも思っているのでしょう。
「ジニア」
 キャティをにらみ返したまま、低いけれどしっかりした声で命じました。でも、他のクラスメートが素早く動きました。マリー・デストンが斜め後ろから、ヘアブローチを素早くむしり取ったのです。
「痛いっ、なにするのよ」
 マリーはキャティを無視して、ヘアブローチをわたくしに差し出します。
 手に取って見ると、やはり意匠はアイリスでした。
「返しなさいよ」
 キャティが右手を突き出しました。
 先程からの数々の無礼に、腹が立ちました。それよりも、このわたくしを髪飾りにするなんて。きっと、分かってやってて、得意満面なのでしょう。
 わたくしは、指の力を抜きました。
 カツン。ヘアブローチが床に落ちます。それを、靴のかかとで踏んづけてやります。
 ぐじゃっと潰れる感触が小気味良いです。
 バチイン!
 目から火花が飛び散りました。ほほが熱いです。
「なにするのよ。五百ドルもするのよ。パパからのプレゼントなのよ!」
 やはり成金の娘です。真っ先にお金のことを言います。しかも、アメリカドル。ポンドだと、二百五十くらいかしら。子供の玩具としては高価ですし、大人の装身具としては安物ですわ。
「赦さない!」
 キャティが、また手を振り上げます。
 わたくしは顔をかばいかけて、その手を止めました。わたくしは貴族の娘です。困難にも真正面から立ち向かいます。でも、取っ組み合いのけんかなんてはしたない真似は御免です。こういうときのために、チャーリイを学友にしてあるのです。
 ところが、チャーリイがキャティを取り押さえる前に、男子のオッター・デアリングがキャティを羽交い締めにしました。
「放してよ!」
「もう暴れるなよ」
「暴れてなんかない。先に手を出したのは、向こうでしょ」
 キャティは、オッターから逃れようと、もがきます。そうなると、オッターも意地になって、ますますキャティを――あら、背中から抱き締めるみたいな形になりました。わざとかしら。キャティも、発育が早いほうですから。
 もみ合って(もまれて、かしら)いるところに、ヴィクター・トリアス先生が来られました。
「これは、なんの騒ぎだ。オッター、女の子を虐めるんじゃない」
「違います。キャティが、ミス・フッドを殴ったので、オッターが止めていたところです」
 マリーが事情を説明します。
「なんと。淑女にあるまじき蛮行。しかも、貴族令嬢に暴力を――植民地の平民ごときが」
 そうです。たとえ世界一の軍事力と財力を誇ろうと、所詮は本国に反旗を翻した連中なのです。すくなくとも、上流社会の人たちは、腹の底ではそう思っています。
「手を出しなさい」
 トリアス先生 (Mr.Trious)が厳しい声でおっしゃって、脇に抱えていた教鞭を右手に持ち替えられました。手の平をたたくなんて、授業中に騒いだ子へのお仕置きと同じです。
「先生(Sir)。そんな罰じゃあ軽すぎると思います」
 マリーがわたくしの内心を代弁してくれました。
「ふむ……」
 トリアス先生はわたくしに視線を向けます。わたくしは、微妙にそっぽを向いて知らん顔。こういうときは、言葉で表わさない限り、どんな仕種でも肯定の意味になるでしょう。
 トリアス先生は、キャティに向き直って、いっそう厳しい声でおっしゃいました。
「教壇に上がって、黒板に向きなさい」
 けげんな表情を浮かべて、それでも言われた通りにしたキャティは、次の言葉に驚いたようです。わたくしも、びっくりしました。
「スカートをまくって、尻を出しなさい」
 うわわわわ、です。お尻たたきなんて、せいぜいY3までです。それも、座っている先生の膝の上です。ズボンやスカートをめくったりはしません。立たせておいてお尻をじかにだなんて、このメイスレッド学園では、戦後初めてではないでしょうか。いえ、そんな大昔のことは知りませんけど。
 キャティはトリアス先生を振り返って。それから、なぜかわたくしをにらみつけてから。黒板に向き直ると、スカートをたくし上げました。裾を握る手が震えています。いい気味です。
 キャティは、学生にあるまじきひわいなパンティを身に着けています。浅い二等辺三角形で、ヒップの上半分が露出しています。
 トリアス先生は、教鞭を持っていないほうの手を伸ばして……
「きゃあっ……?!」
 キャティが両手でお尻を押さえてしゃがみ込みました。
「しゃんと立っていなさい」
 トリアス先生は落ち着き払っています。
「いやです。なぜ、パンティを脱がそうとするんですか」
「わたしは、尻を出せと言ったぞ」
 戦後初めてどころか、ウィンザー朝始まって以来かもしれません。
「いやですっ!」
 金切り声です。
「チャーリイ」
 トリアス先生は、わたくしのスクールメイルに声を掛けました。
「彼女を押さえておきなさい」
 右隣の席に座っているチャーリイが、目顔で問い掛けてきました。ちなみに、左隣はジニアです。わたくしが軽くうなずいて承認を与えると、しぶしぶといった感じで立ち上がって、教壇へ行きました。
 ジニアと同じくらいの背があるキャティも、ふたつ年上の男子と比べると、まるで大人と子供――というのは言い過ぎですが、肩を押さえ付けられると、身動き取れないようです。
 トリアス先生は、キャティの脇腹に手を差し込むと、ジャンパースカートの布ベルトを抜き取りました。両腕を背中へねじ上げて、そのベルトで手首を縛ります。
「いやああっ! なにするんですか?!」
「静かにしなさい。隣の教室に迷惑です」
 スカートをまくり上げて、手首を縛っている布ベルトに絡めました。
 ぎゃんぎゃん喚いているキャティのパンティをずり下げて、お尻を丸出しにしました。
「いい加減に黙らないと、この布を引き千切って口に詰めますよ」
 ひぐっと、しゃっくりを飲み込んで、キャティがおとなしくなりました。
 トリアス先生がチャーリイに命じて、キャティを立たせました。あらためて教鞭を手に取りました。
「お願いです。たたかないでください」
 キャティが、泣きながら訴えます。
「そんなに嫌なら、校長先生のところへ連れて行きましょう。直ちに退学の手続をしなさい」
「いやですっ!」
 またヒステリックが、ぶり返しました。
「いやです。絶対に辞めません!」
「ならば、素直に罰を受けるのです」
「いやです、絶対にいやですっ!」
 トリアス先生がため息をつきました。
 わたくしもあきれてしまいます。パンティを履いていてもお尻の半分は露出しているのに、残り半分をさらけ出すのは、なぜ嫌なのでしょうか。もっとも――どうしても退学したくないというほうは、理屈の上では理解できます。
 庶民にとっては、寄宿学校(Boarding school)に入るのは、大変に名誉なことです。あ、庶民といっても、労働者のことではないですよ。寄宿学校の学費は労働者の年収以上なのですから、子弟を入学させられるはずがありません。わたくしが言っている庶民とは、お金はたくさんあるけれど身分の無い――当人一代限りの騎士叙任すら賜っていない、キャティの父親みたいな人のことです。入学が大変な名誉であれば、退学なんて、それを上まわる不名誉です。
 わたくしなどは、有り得ないことですけれど、退学しても――父様に無理をしていただいて上位の学校へ転入するか、子爵令嬢の名前に傷が付くのに甘んじて下位の学校(大歓迎してくれるでしょうね)へ行くか、なんとでもなります。それも一時のこと。本当に大切なのは出身校の格ではなく、Y11とY13の学年末に行なわれる全国統一試験の成績なのです。
 けれど、植民地ではそうではないのでしょう。学校の格付けを重視するとなると――栄誉あるメイスレッド学園を追い出されたキャティを受け入れてくれる同格の寄宿学校なんて、ありますでしょうか。
 キャティはわがままを飲み込んでおとなしくなりました。トリアス先生が教鞭の先をお尻に当てると、ぴくっと全身を震わせました。
 トリアス先生が教鞭を後ろへ引いて。
 びしっ!
 豊満なヒップに教鞭の先が食い込みました。
「きゃああっ!」
 本当に両隣のクラスまで壁を突き抜けて届くような悲鳴です。教鞭は細いプラスチックの棒ですけど、先端が団栗のように膨らんでいます。きっと、団栗を投げつけられるよりも痛いことでしょう。
 びしっ!
「痛いっ!」
 びしっ!
「くっ……」
 だんだん痛みに慣れてきたみたいです。
 びしいっ!
 肉を打つ音が大きくなりました。
「きゃああっ!」
 悲鳴も一発目以上に大きいです。
 びしいいっ!
「いやああああっ!」
 悲鳴に泣き声が混じっています。最初の三発では、横長の丸い小さなあざが残っただけでしたが、この二発では、左右のお尻に一本ずつの赤い線が刻まれました。
 わたくしは、ちょっぴりだけ、キャティが可哀想になってきました。
「トリアス先生。早く授業を始めてください」
 彼は、教鞭を持つ手を止めました。キャティのスカートを下ろしてやり、手も解いてやりました。
「では、席に戻りなさい」
 キャティはパンティをずり上げてから正面に向き直って――泣き腫らした目で、またわたくしをにらみつけました。
 わたくしの心の中から、ちょっぴり可哀想が消えうせました。
「トリアス先生。わたくし、まだストックさんから謝罪を受けていません」
 先生が何か言う前に、キャティが言い返します。
「あなたに謝ることなんか、これっぽっちも無いわよ!」
 わたくしはトリアス先生に向かって、はっきりと首を横に振りました。
「キャティ、フッド嬢(Miss Hood)に謝りなさい」
「先生は事情を御存知ないから、あたしが悪いと決めつけてらっしゃいますけど……」
「フッド嬢は、きみをたたいたのかね?」
「それは……でも」
「反省していないのだね」
「だって、あたしのヘアブローチを……」
「授業が終わるまで、教壇の隅に立っていなさい」
 トリアス先生が彼女の背後へまわって、また手首を縛りに掛かります。
「やめてっ……」
 彼女は抵抗しましたけれど、トリアス先生の次の言葉でおとなしくなりました。
「では、校長室へ行きましょう」
 乾きかけていた彼女の目から、大粒の涙がこぼれます。
 トリアス先生は、手を縛っただけでなく、スカートをまくり上げ、パンティも膝まで引きずり下ろしました。そして、キャティにとっては屈辱きわまりない指導をします。
「きみも、そこで授業を受けるのです。黒板に向き直りなさい」
 つまり、むき出しのお尻をクラスメートの目にさらしていなさいという意味です。
 キャティは、もう文句を言いませんでした。わたくしを物凄い形相でにらみつけてから、後ろ向きになりました。
 涙を流しているのかは見えませんでしたが、授業中ずっと、キャティの全身が小刻みに震えていました。膝の震えを見ていると、よくもあれで立っていられるものだと、妙な関心をしたほどでした。
 ――授業が終わると、キャティは教室から逃げ出しました。
 お昼休みに、わたくしは父様に電話をしました。簡単な挨拶と近況報告(楽しく学んでおりますわ。クラスメートも教師の皆様も、本当に良くしてくれています)を済ませると、おねだりです。
「クラスメートのキャティ・ストックを御存知でしょうか。彼女にヘアブローチをプレゼントしたいの。生徒名鑑を見てください。長い金髪に映えるような、エメラルドがいいかしら。どんなのにするかは父様におまかせしますけど、一千ドルより高くても安くても困ります」
 五百ポンドなら、貴族令嬢のわたくしが身に着けても見劣りはしませんでしょう。それよりも大切なことは、わたくしが、うっかり壊してしまったキャティのヘアブローチの倍の値段だということです。
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 この後、寮へ戻って。チャーリイが護衛の役目を果たせなかった罰で、キャティと同じに下脱ぎさせて。キャティのお尻を盗み見してたときにはエベレストだったのに、いまはチョモランマ。
 とっくにY7履修範囲を済ませて先に進んでいるアイリスは、図書室でいろんな本を読んでいます。上の学年で習う性教育の副読本とか、家庭の医学百科とか、6th formの生徒向けの医学書とか。とうぜん、勃起現象も知っていて。直に触れるのは汚らわしいから、長い柄の靴ベラとかで、つんつん。
 そして。男の子は女の子より頑丈だから、お尻ペンペンでは足りない。
 男性って、睾丸をたたかれるとすごく痛がるそうだけど、どんなになるのかな?
 靴ベラでバチイン。
 ここまでが、Spitefulの章です。


お尻懲罰1

 実は、このシーンでアイリスが思ったあれこれが、後に彼女を呪縛するのです。
  縛られなくても、命じられた姿勢を崩したりしません。
  キャティみたいに無様に悲鳴をあげたりしないわよ。
  泣くもんですか。わたくしは、誇り高い貴族なのよ。
  などなどなど。
  いっそのこと、章題を Boomerang にしようかと思うくらいです。でも、Sで始まらないので。



 さて、今日(OFF)は Subsitituteくらいは書き上げましょう。


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