Progress Report Final:公女巡虐

 終章は賞味期限付きで記事にしていますから、締め括りは後書でも掲載しておきましょう。

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後書き

 いやはやナントモ永井豪。
 TRPGのエピソード(ではないが、似たようなモン)で、マッピングしてたら方眼紙からはみ出して、やっと転位の罠に掛かったと気づいても after festival てエピソードがありましたが。そんな気分です。
 いえ、罠ではなくCGです。恣意にして自意。
 修道院パートは皿っと流す。むしろ救出劇を、浮浪児盗賊団の夜討ちとか派手にしてアカルイミニマムにする予定でしたが。それでは『生贄王女と簒奪侍女』の二の馬脚だと思い直したのが発端ですかしら。
 PLOTの段階では、継母は修道院パートで登場せずフィクサーに徹する案もありましたのに。被虐名まで授かって、継母の奇妙な愛情 MamaMother strange love by Stanley Kublic まで吐露するとは。
 しかもしか、『へのへのもへじ』のはずの父親まで土壇場で登場。おいしい役回り。まさに、デウス・エクス・ヒョウタン新造語。直訳すれば「瓢箪から神」。
 最近は、前半で責めのあれこれを出し尽くして息切れするパターンが多かったのですが、久し振りの、だんだん良く鳴るホッケとシシャモ。いつもいつもFw190は飽きたので。
 ええ、いつものように、終章に向けて全力疾走中に『後書き』ならぬ『途中書き』をしてるので、ハイテンション・プリーズなのです。教官、私はドジでのろまな亀です!
 こほん。すこし下げてンション。
 ともあれ、ブログで吹いた五百枚になりました(時制は未来)。
 ケツのでかい安産型になりました。尻は大きい方がよろしい。シバキ甲斐があります。胸は小ぶりがよろしい。鞭ビシバシで腫れたビフォーアフターが一目燎原の火です。
 どうも、テンションサーマルです。上昇気流に乗って降りてこない。
 ので、MAC。Manual Wadai Change。
 実は、この話。無実の罪とか罠とかではなく、ちゃんと(?)悪いことをしたヒロインが正義の名の下に拷問される話を書きたかったんですけどね。そういうのが濠門長恭クンの作品にはなかったので。つまり、盗賊パートがメイン。
 の筈だったんだけどな。結局は義賊になっちゃうし。ヒロインは、全作品中ぶっ千切りのハードなドMになっちゃうし。
 ドロンジョ征伐の話は、またいずれということで。

[後書きの後書き]
 さてさて。今回の後書きは、いつもに輪を掛けて駄洒落地口のヒッパレーでした。まあ、これが作風にも反映して「淫惨な内容の割に明るく安心して読める」と、極一分からは好評です。爺が自慰惨でした。では、オーラス一本場の執筆を続けます。

2023年11月

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公女巡虐/紹介画像

 修道院パートは、プロット拡張というか、カッコ良くいうと作中人物に好き勝手にさせた、別の言い方だと、思いつくままアレコレぶち込んだわけです。修道院だけで3章、3万9千文字は120枚です。
 書き殴ったおかげで、あちこちツジの奥さんが合わなかったりして、修正におおわらわ。
 まあ、今日・明日の休日で、ダウンロード販売用のあれこれ準備までいくかしら。
 それから、実質的には章の途中で中断した『宿題を忘れたらお尻たたき、水着を忘れたら裸で泳ぐと、HRの多数決で決めました。』の17章(おまたコンダラ)の続きを18章(ふたりコンダラ)としてちょこっと書いて。
 今度こそ、三度目の電気掃除機で『昭和集団羞辱史/物売編(夜)』にかかりましょう。こやつは200枚程度の中編2本立てなので、年末までには前半が仕上がれば、 2023年もめでたく3千枚突破です。


テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

お気に入りの写真(お灸1)

☆最近、オキニ紹介が絶えていたので☆


 ソフト拷問にもハード折檻にも使える責にお灸があります。
 昭和前半期までは、お灸は万能でした。爺さん婆さんの肩凝りはもちろん、子供のおねしょにも(罰としてではなく)使われていました。今現在でも効能として自律神経を調整とか謳われてますから、まあ、効かなくもないんでしょうね。
 しかし、子供にお灸となると、お仕置ですね。
「熱い熱い、おかあ様、ごめんなさい」この場合は継母がテンプレ。実の親子となると、母親の目の色とかによりますかな。我が子のために心を鬼にするのは駄目で、淫欲にぎらついているのが宜しい。
 泣き叫ぶのを、押さえ込むのも好し。暴れないように縛ってしまうも好し。
 しかし、お灸には致命的な欠陥があります。繰り返し同じ所に据えていると、痕が半永久的に残ります。かといって、千年灸みたいなのは、個人的には興醒めです。
 まあ。亀頭に据えれば、女殺しの出来上がり?
 これは「非情と淫虐の上意」第二巻『陰間寺出世菊』で使いました。
 乳首とか栗と栗鼠に据えたいところですが、痕が残るし、多分感度も落ちるでしょうから……どこかで書いたような気もしますが、すぐには思い出せません。つまりは、使いにくいのです。
 ただし、見る分にはとても使えます。G線上のアレヤコレヤでは、しばしばお世話になっております。
ないし
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 全体像のほうは、ちょっと年齢が高いですな。それはそれで、趣もありますが。
 モノクロ写真は、時代は知りませんが、いずれはマニアの流出物でしょう。
 商業用となると、下の画像くらいになっちゃいます。


3d155019.jpg




 ポーズとか据える部位とか以前に、もぐさが下まで燃えていません。たいして熱くないし、(撮影後にすぐ取り除けば)痕も残らないし。これをヤラセといわずして南都雄二。古いギャグで氷点下37℃。

 しかし。最近の濠門長恭クンはハードに走り過ぎている感が無きにしも非ずですから。いずれは、昭和情緒豊かな、ほのぼのお仕置も書いてみようかしら?


テーマ : エロ画像
ジャンル : アダルト

Progress Report 9:公女巡虐(賞味期限付)

 夫魚おっとおとと
 伊太利語には男性名詞と女性名詞がありました。ので、修道女の語尾をそれっぽく訂正します。娼婦のほうは花の名前なので、すべて女性名詞らしいですね。ああ、よかった。

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継母の嗜虐愛

 でも、まだ続きがありました。
 皆が一斉に肩衣を脱ぎました。へええ、です。というのは、誰も月の障りが訪れていないらしいのです。算数は苦手ですが、月のうち一割くらいは出血しますから、一人くらいは当日の筈です。
「今日の当直を言い渡します」
 多分いちばん年嵩の牝馬(カヴァラ)という名の寮長が、声を張りました。
「猫(ガッタ)と烏(コルヴァ)は、反省しなさい。何を反省するのか分からなければ、辛子の懲罰を追加します」
 修道女は聖職者ではないので、他人に祝福は与えられません。どんなに言葉の意味を捻じ曲げても、それは同じなのでしょう。
「マイアーレは引き続きフランカの訓練。ガリーナは新人のエレナを担当しなさい。残りの者は、自己研鑽に励むこと」
 最初に名指しされた二人は、それぞれの寝床で“V”字形の姿勢になります。他の女性(最年少の私が先輩を『娘』と表現するのは失礼です)が、二人を鎖と枷で拘束しました。
 傷だらけの女性は、寝台で俯せになりましたけれど、他の人たちは……カヴァラさんが比較的に若い人を二人、自分の寝台へ呼び付けました。隣り合った寝台を動かして、三つをひとつにしています。
 後に残ったのは五人。特に相談するでもなく、二人と三人に分かれました。同じように寝台を寄せ合って。
 なんてことでしょう。男と女がするみたいに、くんずほぐれつを始めました。
「わたくしたちも始めますわよ。さあ、手伝ってくださいな」
 まるでどこかの令嬢みたいな口調で、ガリーナさんが私に話し掛けます。
 言われるがままに寝台をくっ付けました。縄も鎖も枷も着けられていない身体は、なんと自由に動かせることでしょう。でも、衣服を身に着けていないみたいに不安です。いえ、実際に素裸なのですけど。
 要領の分からない私がもたもたしているうちにも、あっちでもこっちでも、くんずほぐれつが激しくなっています。
 カヴァラさんたちの三人組は横臥して三角形になっています。カヴァラさんの割れ目を舐めている女性は、カヴァラさんが割れ目を(舐めるどころか)頬張っている人に割れ目を啜られています。『踊る花の館』でも、こんな遣り方は誰もしなかったと思います。でも、これって……何人でも何十人でも出来ますね!
 もうひとつの三人組は、もっととんでもないことをしています。開いた脚を交差させて股間を近づけ、三方に突き出した張形の中心を一人が握って、臼を挽くみたいに捏ね回しています。前戯も無しに。
 二人の組は、これはお馴染みの形です。脚を交差させて股間を互いに擦り着けながら、固く抱き合い乳首を触れ合わせて接吻を交わしています。あれでは女の芽への刺激が足りません。のけぞって後ろへ手を突く形が最適です。事の始めの挨拶なのでしょう。
 そしてマイアーレさんは、俯せになったフランカのお尻に顔をうずめています。鞭傷を舐めてあげているようです。
「驚いたでしょうね」
 ガリーナさんが、私を背後から抱きしめながら、耳元で囁やきました。
「女と女で淫らな真似をするなんて。でも、これは姦淫ではないのよ。だって女は、挿入できるオチンポを持っていないんですもの」
 それは、そうですけど。
「聖書ではソドムの行ないを厳しく禁じているけれど、女同士の戯れについては、一文字も書かれていません。つまり、禁じてはいませんことよ」
 もう、聖書の話はたくさんです。
「ふふ……怖いの? すぐに気持ち良くなりますことよ。ほら……」
 ガリーナさんの手が肩から前へ滑って、乳房を撫で下ろし、乳首にちょんと触れてから指が通り過ぎました。くすぐったくさえありません。滑り下りた手は、今度は下から上へ動きます。
 それを何度か繰り返しながら、私を寝台へ腰掛けさせて。掌で乳房を押し上げるようにして、指の腹で乳首を転がします。
 ああ、もう……じれったい。
 ガリーナさんは私を、まさか処女とは思っていないでしょうが、ろくに性の歓びも知らない素人娘として扱っています。おまえは伯爵令嬢なんかじゃなくて娼婦だと言われるよりも、もっと自尊心が傷付きます。
 いいわよ。ダリア姐さんの実力を見せてあげる。
 私は手を伸ばして、右に座っているガリーナさんの核心をいきなり襲いました。
「あっ……?」
 ぴくんとガリーナさんが腰を震わせました。ここぞとばかりに、指でくにゅくにゅくちゅくちゅ。身体をひねって左手で肩を抱き、唇も奪います。
「んむう……?!」
 舌を絡められて、ガリーナさんは戸惑っています。その戸惑いを官能に変えてあげましょう。息が苦しくなるまで口中を貪って、口を合わせたまま、ガリーナさんの鼻に息を吹き込みます。もちろん右手の指は五本とも動かして、莢をしごき雌しべをつつき、とどめにきゅるんと剥き下げてあげました。
「ぷはあっ……」
 私が身を引いても、ガリーナさんはとろんとした眼差しで余韻に浸っています。
「あなた……誰に、こんなことを教わりましたの?」
 心底不思議そうに私の顔を見ます。
「ローザ、ジーグリ、クリサンテ、カメリア……みんな『踊る花の館』の売れっ妓だよ。あたいはダリアって舞台名で踊って、男に抱かれて、お客様の求めに応じて朋輩たちとも絡んでたのさ」
 言葉遣いは、盗賊団の姐御にしました。ガリーナさんが妙に上品ぶった物言いをしていることへの反発です。
「そうでしたの。わたくしは、てっきり、あなたも貴族の出かと思っていました」
 それも当たっていますけどね。でも……「も」ということは、この人「も」貴族令嬢? そして、それを隠す必要も無い?
 『踊る花の館』とは、ずいぶん勝手が違います。それは、この修道院の真の姿を知ったときから分かっていたことです。金で縛られているとはいえ『お仕事』をちゃんと勤めて日中の雑務も少しだけしていれば後は自由な娼婦ではなく、実際に縄や鎖で縛られ鞭打たれ日中も自由を奪われている女囚それとも性奴隷なのです。
 そんなことは、後で考えましょう。今は……
「それじゃ遠慮はいりませんわね。凡俗を相手の娼婦ごときに後れを取ったとあらば、わたくしの矜持が許しませんことよ」
 ガリーナさんが私の腰を抱きかかえるようにして、右手を股間へ差し入れてきました。
「ひゃああっ……?!」
 甘い稲妻が腰を貫きました。女の芽を虐められてそうなるのは慣れっこですが、すごく甘いのに太くなくて、無数の針が雌しべの奥まで突き刺さってくるような感じです。
「あっ……いやあっ!」
 女の穴を穿たれて、中で指を曲げて、どこかしらをつつかれると、腰が砕けました。
「ああっ……駄目! 恐い……」
 快感が立て続けに腰を砕けさせて、半分は嘘、半分は本心を私に叫ばせました。私は、もうガリーナさんを虐めるどころではなくなっています。
 ガリーナさんが私を遥かに凌いでいるのは、考えてみれば当然です。私の娼婦経験は、たった三月です。しかも、女同士は座興。何年も(夜毎に?)経験を積んできた人に勝てるわけがないです。
 でも……物足りないです。マセッティ様の刷毛責めより甘くて、ふわふわして、それだけに砕けやすい砂糖菓子。快感が凄まじいだけに、もっとしっかりと噛み締めたいです。
「つねって……雌しべに爪を立てて……うんと痛く虐めてください!」
 快感ではなく苦痛を、素直におねだりするのは、これが初めてです。それだけ、かつてない高みが見えているのです。その頂上から翔び立ちたい。
「なんてことでしょう。見習の初日から仕上がっているなんて……」
 驚きながらも、ガリーナさんは望みを叶えてくれました。腰を抱いていた手も股間へ滑らせて、芽が千切れるくらいにきつく爪を立てながらひねってくれました。しかも、乳首に噛みつきながら。
「ぎびい゙い゙い゙……死んじゃうよおお!」
 目くるめく飛翔、目くるめく墜落。マセッティ様の拷問にも比すべき絶頂を、私は極めました。
 ここまで乱れたのは、第一にはガリーナさんの指ですけれど。ひと月以上も御無沙汰だったことと、聖書の勉強で頭が混乱していたせいもありそうです。
「凄いわね、この娘」
 自分のことを言われたと分かって、私は余韻から頭をもたげました。
 声の主はカヴァラさんです。
「どこまで仕上がっているか、試してあげましょう」
 修道女の間での力関係も分からないうちから寮長に逆らうのは得策ではありません。それに、もっと快感か苦痛を与えてもらえそうです。
 なので、指定された寝台におとなしく“V”字形に拘束されました。
「ガッタ、コルヴァ。あなたたちは、自分が犯した罪を理解していますか?」
 カヴァラさんは、最初に指名した二人に反省を求めます。
「ガッタ。あなたは罪を自覚していまか?」
「妾(わらわ)は、何も罪を犯しておらぬ。罰したければ好きにするが良い」
 この一人称は高貴な女性、それも人妻が使います。三十歳前後に見受けられますから、かつては夫のある身だったのでしょう。では、何故こんなところに。死別でしょうか。まさか、夫の手で?
「そうですか。では、あなたは外面だけではなく身体の内面でも反省なさい」
「これしきのことで妾が泣くと思ったら、大間違いですわよ」
 負け惜しみを聞き流して、カヴァラさんはコルヴァさんにも同じ質問を繰り返します。
「教えてください。悪いところがあれば直します。辛子だけはお赦しください……」
 コルヴァさんはすすり泣き始めました。
「では、あなたの悪いところを教えてあげます。そのように懲罰や祝福を本気で拒むこと――それが、ここでは最大の罪なのですよ」
「でも、ほんとうに厭なのです。つらいのです。恐いのです」
 コルヴァさんは私より五つ六つ年上ですが、ここへ入れられてから日も浅いのかもしれません。
「まったく……それで、よくも誓願を立てたものですね。ガッタのように、いっそう過酷な懲罰をそそのかせとまでは求めませんけれど。そんなでは、じきに心が死んでしまいますよ」
 カヴァラさんは、コルヴァさんにも『外と内からの反省』を命じました。そして、私に振り向きました。
「エレナ。もちろん、あなたもですよ」
 私を見下ろす眼差しは、ブルーノ様やマセッティ様、そして院長様や司祭様とそっくりです。付け加えるなら、お継母様とも。カヴァラさんの心は、今は女ではなく、男性に同化しているのです。
「ありがとうございます。うんと虐めて可愛がってください」
 ここでの作法は知らないので、心のままに返事をしました。私にとって「虐める」と「可愛がる」は同義なので、それもきちんと伝えました。
 カヴァラさんが、淫戯の相手に選んだ二人に命じて、反省だか懲罰だかの準備をさせました。蓋付きの壺、箆、羊皮紙、そして三本の張形。
 最初はガッタさんです。壺から箆で掬い取られたのは、黄色く粘っこい辛子です。良く練られていて、粒は混じっていません。それだけ刺激が強いです。予想していた通り、それを割れ目に塗り込めていきます。ガッタさんは天井を見上げて無表情。
「強情ですね。これでもですか」
 カヴァラさんの指が割れ目の上端あたりで微妙に動きました。
「ああああ……痛い、熱い。妾は無実の罪で罰されておるのじゃ」
 甘ったるい悲鳴です。私の悲鳴も、他人の耳にはあのように聞こえるのでしょうか。
 カヴァラさんは箆を襤褸布で三度拭い、三度辛子を掬いました。ガッタさんの股間には黄色い辛子が盛り上がっています。そこに羊皮紙が被せられました。辛子は放置すると辛味が揮発します。それを防ぐ――ひと晩ずっと反省させるための処置でしょう。
 そして張形です。壺に浸けられて真っ黄色になったそれが、無雑作に股間へ突き刺さされました。
「きひいいいっ……」
 純粋の悲鳴です。
「あああああ、ひどい……妾は悪くないのに……酷い仕打ちじゃ」
 恨んでいるふうではありません。悲運を嘆いている――いえ、酔っています。
 張形の末端に革紐を巻いて、それを太腿に巻き付けて絶対に抜けないようにしてから。カヴァラさんはコルヴァさんに取り掛かります。
「いやあっ……熱い、沁みる! 赦してください!」
 最初から大騒ぎです。今度は指の微妙な動きも見えました。
「ぎひいいいっ……死ぬううう!」
 女の芽に塗り込められると、寝台を軋ませてもがきます。悲鳴もガッタさんの十倍くらいの大きさです。
「うるさいですね」
 フランカが噛まされていたのと同じ猿轡が、コルヴァさんに着けられました。寝台の側面にある枷で腰の動きも封じられて。最後に辛子まみれの張形が挿入されました。
 コルヴァさんは、くぐもった呻き声をあげながら、ぼろぼろ涙をこぼしています。きっと、その涙は甘くないと思います。
 そして、いよいよ私の番です。
「望むなら、あなたも声を封じてあげます。まだ見習なのですから、すこしは甘やかしてあげましょう」
 本来なら熟考するところですが、「甘やかす」という言葉に反発しました。コルヴァさんみたいに見苦しい様を晒したくないです。ガッタさんみたいな負け惜しみも性に合いません。
「要りません。もしも私の悲鳴がお耳障りでしたら、寮長様の判断で封じてください」
 もしもカヴァラさんに嗜虐心があるなら、きっと心地良い音楽になるだろうという自信があります。
「そうなの。後悔しなければ良いのですけれど」
 最初のひと掬いが、割れ目の周辺に塗られました。冷たいけれど、たいした刺激ではありません。そしてふた掬い目は花弁の裏側へ。
「くううっ……」
 傷口に塩を擦り込まれるよりは柔らかですが、じんわりと沁み込んでくる痛さがあります。塩は傷口から滲む体液で薄まり流れていきますが、辛子はそうもいかないでしょう。それとも、淫らな汁が洗い流すでしょうか。
 つるんと莢を剥かれました。そして……
「きひいいいっ……いい!」
 最後は歓喜の悲鳴です。女の芽が燃え上がっているようです。激痛で縮こまるのが分かります。なのに、最大に勃起したところを粗い刷毛で擦られるよりも強い快感が腰を貫きます。
「あらあら。蜜があふれてきますね。ガッタよりも激しい」
 念のためにと、四掬い目が割れ目を封じるように盛り上げられました。そして、羊皮紙をかぶせられます。縦に切り込みがあるのが見えました。張形を通すためです。
 その張形は――女の穴の入口を先端で捏ね回してから。奥に突き当たるまで一気に押し込まれました。
「くっ……」
 もっと太い張形を捻じ込まれたことだって何度もあります。たいしたことはない――と高を括っていたのはひと呼吸の間だけ。股間全体がじわじわと熱くなって、ついには燃え上がりました。
「あああああ……熱い、痛い……もっと虐めてください!」
 本心です。割れ目を鞭打たれる鮮烈な痛みには遠いのです。前後の穴を同時に貫かれる膨満感もありません。
「ふふ、頼もしいですね。明日の朝も同じことを言えたら、院長様に申し上げて、祝福を与えていただきましょう」
 中途半端な激痛(と快感)の中に私を放置して。他の皆さんも就寝の支度に掛かりました。半数の人が寝台にX字形に仰臥して、残った人に手足を拘束してもらいお腹を枷で押さえ付けてもらいます。それを繰り返して、最後にカヴァラさんだけが残りました。
 カヴァラさんは同じ形でも俯せになりました。手足は自由ですが、そのまま動きません。やがて、ひとりの若い男性が部屋へ入ってきました。聖職者の身なりですから、二人の助祭様のどちらかでしょう。
 彼はカヴァラさんの手足を拘束してから――下半身を露出して(どちらの穴かまでは分かりませんが)彼女にのしかかりました。
 羨ましいなと思いました。もしも、私の修道院入りが決まったとき囁かれていた通りに、将来は修道院の女としての筆頭、つまり寮長になって。年下の娘を虐めて可愛がりたくなる心裡は、なんとなく分かります。権力のある者が弱者を甚振るのは快感でしょう。
 唐突ですが――私に、将来の目標が出来ました。

 カヴァラさんの言葉通り、熱く沁み込んでくる痛みは一晩中続きました。それでも、私は――痛みに目を覚ますことはあっても、微睡みました。苦痛の中の睡眠には慣れっこですから。
 翌日は、また告解室で司祭様から聖書の真実をいろいろと教わりました。聖書には、独特の暗喩が鏤められています。
「誰某は彼女を知った」というのが性の交わりを意味するというくらいは、すこし教養のある大人なら知っています。実際には、もっと淫微で分かりにくい表現がたくさんあります。たとえば「差し出した」というのは、女性の行為であれば「みずからを」という言葉を補えば意味が明白になります。行為者が男性の場合は、「彼の娘」「彼の妻」「彼の姉妹」あるいは「彼の女奴隷」です。
 聖書に良く出てくる葡萄や無花果や柘榴も、実に意味深です。ことに無花果と柘榴は何に似ているかというと……聖書に倣って、明言は避けます。ただ、女性がそういう果実を捧げる場面では「彼女の」という言葉を補えば、意味が明確になるのは確かです。
 司祭様の(ということは、この修道院の)解釈では、近親姦も男が女に向ける嗜虐も大いに奨励されているのです。
 強引な解釈だなと思う部分もありますし。そもそも、巻物に聖なる言葉で書かれている内容を司祭様が正しく翻訳してくださっているかも怪しいのですが、反論できるだけの素養が私にはありません。拝聴しているうちに、だんだん真実に思えてきました。辛子で腫れている女の穴も花弁も芽も、ますます熱く火照って涙を流します。
 そうして。私の悦虐は神様の定めた摂理に反するどころか適っているのだと、そうも思うようになりました。これが、皆さんのおっしゃる「仕上がった」というものなのでしょうか。
 先輩見習修道女のフランカは、すでに幾度も講義を受けているので、日常の作業、ことに重労働を割り当てられました。背中で祈りを捧げる姿に縛られたまま、腰に鎖を巻いて前から後ろへ回して鋤をつないで曳かされたり、同じ要領で荷車を曳かされたり。
 私は明後日には入会の誓願を立てて、性隷として第二の洗礼を受ける予定になっている――その資格があると、院長様に申し渡されています。そして新米修道女として、結局はフランカと同じ重労働に従事させられます。
 先々のことは考えても仕方がありません。
 午後からは、賓客が私たち修道女に祝福を与えてくださるところを見学しました。賓客は俗人であっても、司教である院長様から聖別の儀を受けて、一時的に資格を与えられる――ずいぶんと勝手な理屈です。
 私とフランカはお継母様、いえファジャーノ様に引率されて『祝福の間』へ入りました。世俗的な言い方をすれば拷問の間です。
 そこには、上半身は裸ながら、どこかで見た肖像画に似ているようないないような殿方が、院長様直々の助言を受けながら、修道女に祝福を与えておられました。助祭さまと警備兵が一人ずつ隅に控えています。
 ファジャーノ様は貴賓に向かって、花弁の片方を横へ引っ張りながらそちら側の膝を外へ曲げて、変則的な屈膝礼を執りました。フランカは両膝を着いて頭を垂れます。私は迷いましたが、フランカは平民の出だろうと判断したので、ファジャーノ様に倣って、もっと変則的な屈膝礼にしました。ただ片脚を横へ曲げて膝を折っただけです。だって、花弁を摘まもうにも、両手を背中へ捩じ上げられています。
「こちらは、元修道女で、還俗してクリスタロ侯爵の養女となり、ラメーズ伯爵の後妻に迎えられたファジャーノです。その隣が、彼女の継娘にして見習修道女のエレナ。もう一人の見習がフランカです。見習の二人、ことにエレナは、いずれ殿下に祝福を与えていただくこともございましょう」
 フランカは付け足しみたいな院長様の紹介です。
 殿下はたいして興味も無さそうに、大きな鉄の箱に向き直りました。
「おまえたちもご相伴に与りなさい――よろしいですわね、殿下」
 私とフランカは、殿下の左右に並ぶ形で水槽の窓に顔を寄せました。
 中では私より二つ三つ年上の修道女が首まで水に浸かりながら、梯子のような物を登っています。両手は太い鎖で後ろ手に縛られ、両足には短い鎖で鉄球を引きずりながら。まだ全員の名前を覚えていませんが、たぶん兎(コニーギャ)さんです。
 登り続けているのに、いっこうに水から出られません。梯子の踏桟が下へ動いているのです。踏み桟は梯子の裏表に並んでいて、上と下でつながって大きな歯車で折り返しています。そして踏桟は細長い飼葉桶のようになっていて、コニーギャさんが(結局は)その場で足踏みをするごとに水を汲み上げています。汲み上げた水は鉄の水槽の上に吊るされた大きな桶に貯まるのですが、桶の横からは二本の湾曲した太い筒が伸びていて、彼女の頭上から水を浴びせています。
 もし足を止めたら水底まで沈むし、水槽の水も増えて溺れ死ぬのです。命懸けの不毛の重労働です。
「こんなの……見たことがない」
 フランカがつぶやきました。
「これは殿下が発明なさって、王都で作らせた物を寄進してくださったのだ」
 殿下とも呼ばれるお方なら、国政にも関わっておられましょう。その叡智を国民のために使っていただきたいものです。
「ふむ、限界のようじゃの」
 覗き窓の向こうで、コニーギャさんが足を踏み外しました。後ろ手の鎖に引っ張られて仰向けに倒れて、立ち上がろうともがいていますが、起き上がれません。
「レミジオ!」
 院長様の声に、助祭様が水槽に駆け寄り、素早く半裸になって脇の梯子から水槽に飛び込みました。兵士が天井の滑車から垂れている鎖を下ろします。
 助祭様は鎖の先端の大きな鈎をコニーギャさんの後ろ手鎖に引っ掛けて。兵士が一人で軽々と釣り上げました。滑車は大小が組み合わさっているので、梃子みたいに働くのでしょう。
 でもコニーギャさんは、たまったものではありません。後ろ手のまま吊り上げられるのは肩が脱臼しそうになります。足の錘で、なおさらです。
「ああああ……痛い……」
 この人も仕上がっています。苦悶の中に気怠い響きが混じっています。それとも、ただ疲れ果てているだけでしょうか。
「水位を下げろ」
 殿下のご命令で大桶が水槽に沈められて、かなりの量の水が汲み出されました。
「あの女は、しばらく踊らせておけ。余は、この若き未熟な二人に洗礼の手ほどきをしてやりたい――これじゃ」
 殿下は左右の手を交互に上げ下げしました。それだけで、院長様に意味は通じたようです。
 私とフランカはいったん拘束を解かれて、コニーギャさんと同じに太い鎖で後ろ手に縛られました。ずうんと重たくて、踏ん張っていないと転びそうです。
 私たちの前に大きな鉄塊が置かれました。真ん中に環が取り付けられていて、もっと太い鎖が通されています。私たちは首に鉄枷を嵌められて、鎖の両端につながれます。鎖が短いので、二人のうちどちらかがしゃがむか、二人とも中腰でいなければなりません。
 院長様と殿下が私たちの身支度(?)を調えている間にコニーギャさんは、突き出た棒の先に“L”字形の腕が生えた台の上に、別の滑車で吊り降ろされて――予想していた通り、股間を“L”の上向き部分で突き刺されました。手足には軽く装飾性の強い環を嵌めているだけで、まったく拘束されていませんけれど、串刺しから逃れるには、張形が抜けるまで高く跳び上がるか、台もろともに倒れるかしかありません。腰が伸びた姿勢から跳ぶなんて無理ですし、重たい台を倒すのも難しいでしょう。倒れたら倒れたで、穴の奥を突き破られるかもしれません。
 兵士が分厚い鉄の円盤を手で回し始めました。コニーギャさんの腰がゆっくりとくねります。
 女の穴は常に、“L”の垂直な部分の真上です。台から突き出ている支柱を躱すために、支柱に近い側の脚を上げなければなりません。回転につれて足を踏み換える必要があります。
 回転が速くなってくると、自然と手を振って身体の釣合を取ります。
 しゃん、しゃん、しゃん、しゃん……軽やかな鈴の音が石壁に響きます。熱した鉄板の上で踊らされたときと似ています。けれどコニーギャさんの顔に浮かんでいるのは、苦痛の奥から滲み出る悦虐ではありません。淫らに腰を振らされる恥辱の火照りと、女の穴を抉られ捏ね繰られる純粋の快感です。恍惚です。
 もっとも。重たい鉄球を引きずりながら無限に梯子を登らされた疲労が溜まっていますから、そう長くは続かないでしょう。続けさせられても、じきに倒れて台から転落するかもしれません。うまく受け止めてもらえれば良いのですけど。
 他人の心配をしているどころではありません。鉄の塊が滑車で吊り上げられ、私とフランカの腋にも縄が巻かれて、もろともに宙吊りです。
 兵士が素裸になって、水槽に立て掛けられた梯子の上に立っています。彼の股間はそっくり返っています。さすがは施虐修道院の一員です。
 フランカが耳元に囁やきます。
「あたいも祝福を受けるのは初めてだけど、一度だけ見たことがあるよ。ゆっくり十(とお)数えてから、あたいの真似をしなよ」
 盗賊団の姉御顔負けの言葉遣いです。とにかく、小さく頷いておきます。
 私たちは水槽の上へ押し出されて。
 がらら……ざぶん。一気に水中へ沈められました。鉄塊に首を引っ張られ、両手を縛る鎖に押さえ付けられて、二人とも水底にへばり着きます。
 すぐに兵士が飛び込んできて、錘に引っ掛かっている鎖の鈎と私たちを吊っていた縄を抜き取り――助け起こしたりはしてくれずに上がっていきました。
 娼館の女将さんに逆さ吊りにされて水に浸けられたときよりはつらくないですが、立ち上がって水面から顔を出さなければ、いずれ溺れ死にます。
 ところが、立ち上がるどころか。鎖を横に引っ張られて、胸が鉄塊に押し付けられました。さらに鎖が強く引っ張られます。
 水でぼやけた視界の中で、フランカが立っているのが見えました。そうです。鎖が短いので、ふたり一緒には立てないのです。
「十(とお)数えてから」フランカの言葉を思い出しました。
 ゆっくりと、九つまで数えたところで、フランカがしゃがんで、さらに顔を鉄塊の環に押し付けました。
 私の番です。鎖の重さに逆らって身体を起こし、両足を踏ん張って……どうにか立てました。
「ぶはっ……はあ、はあ、はあ」
 空気を貪ります。
 フランカが肩で足をつつきました。替われという合図です。
 私は大きく息を吸い込んでからしゃがみ込んで、フランカの真似をして鉄の環に顔というよりは喉を押し付けて、少しでも鎖を伸ばしてあげます。
 フランカが、よたよたと立ち上がって。私が十を数え終わるか終わらないうちに、私に譲ってくれました。
 上から吊るされている大桶には、大量の水が汲まれています。もしも、あれを流し込まれたら……ふたりとも溺れ死ぬでしょう。
 そんなことは殿下も院長様も絶対になさらないだろうと信じて、とにかく次のひと息を何回も何十回も繰り返して――無事に引き上げてもらえました。
 殿下と院長様に対する絶対の信頼と忠誠の礎石が、私の心の底に置かれました。と同時に、フランカとは生死を共にした仲間といった紐帯で結ばれたのです。これは、私だけの思い入れかもしれませんけれど。
 ――殿下の最後の祝福は、疲れ果てた身体をほんとうに鞭打たれながら、恍惚として踊り続けたコニーギャさんに与えられました。拷問台に磔けられて、恍惚に恍惚を重ねる彼女の乱れっぷりをしっかりと見学させてもらってから、私たちは祝福の間を後にしました。私は太腿にまで淫らな汁で濡らしてファジャーノ様に褒められたのですが、フランカはそれほど感銘を受けたようには見えませんでした。
 それにしても。以前のお継母様だったら、きつくお叱りになって鞭のお仕置きをくださっていたところを、今は褒めてくださるのですから……戸惑うばかり。と、控え目に表現しておきます。
 寮へ戻って。昨夜と同じ要領で夕食を摂って。今夜は誰も反省を命じられず、私も昔懐かしい“X”字形の姿勢で眠りに就きました。

 そうして、施虐修道院で三日目の朝を迎えました。
 今夜の私は『内省の夜』だから粗相があってはいけないという理由で、断食をさせられます。水分もできるだけ我慢しなければなりません。それなのに。誓願の前に必須の儀式なのに、その内容は誰も教えてくれません。まあ、半日後には分かるのですから、気には病みませんけれど。
 もう見習修道女の正装もせず、略装つまり全裸で寮に籠もって、聖書を読んで過ごしました。もちろん、聖なる言語ではなく日常語に翻訳されたものです。
 そんじょそこらの教会だと、主要な部分の抄訳があれば良いほうなのに、ここでは原典も翻訳も全巻が揃っています。王族や諸侯の庇護を受けているだけのことはあります。この様子では花代、こほん、お布施の額も高級娼館である『踊る花の館』の何倍なのか何十倍なのか、とにかく桁違いでしょう。
 それはさて措くとして。司祭様に教わった『裏読み』をすると、聖書ではなく性書、それも近親姦と嗜虐に満ち溢れた物語になります。ほんとうに、これは原典の正確な翻訳なのでしょうか。おそらく、ここの原典に照らせば正しいでしょう。でも、世界にひとつしか無い原本と一致している保証はありません。
 私は神学者ではありません。女です。ですから「女は男に虐げられることに悦びを見い出せ」という巻物の記述を素直に信じます。
 それでも、聖書なんて退屈です。修道女の皆様は生活に必要なお仕事をしているか祝福を受けていて、祝福の傷を養生していた椋鳥(ストルナ)さんも助祭様の(どの方面かは分かったものではありませんが)お手伝いです。だだっ広い部屋の中に、私ひとり。せめてファジャーノ様がいらっしゃれば、今なら打ち解けていろいろとお話もできるでしょうに。どこにおいでなのかすら分かりません。
 退屈と『内省の夜』への好奇心と不安とを持て余すうちに陽も落ちて。私はマルコ助祭様に案内されて、略装で(しつこいけれど全裸です)礼拝堂へ赴きました。
 そこには院長様と司祭様、そしてファジャーノ様がお待ちでした。
 床に大男用の棺(ひつぎ)みたいな箱が安置されています。蓋は開けられていて、黒い鞠のような物が敷き詰められています。
 その前で、私は奇妙な形に拘束されました。腕は柔らかな布帯で緩めに体側へ縛り付けられ、太腿と足首も縛られました。そして、両手に革袋をかぶせられました。口に詰物をされて布で口を覆われ、耳を粘土でふさがれます。そして最後に、真っ黒な分厚い目隠しです。見ることも話すことも聞くことも、身体に触れることすら出来ません。
 そして抱きかかえ上げられて、柔らかな物の上に寝かされました。棺に入れられたのです。
 不意に、心臓が早鐘のように拍ちだしました。正体の分からない不安に包まれました。
 ごとん……蓋の閉じる響きを、微かに肌に感じました。
 コン、コン、コン……釘を打つ響き。
「んむううううっっ……!」
 生き埋めにされた恐怖が蘇りました。凄まじい恐慌に襲われました。
 なんとしてでも脱出しなければ!
「む゙も゙お゙お゙お゙お゙お゙っっっ!!」
 身体を起こそうとして頭を蓋にぶつけました。身体を捻って肩で押し上げます。膝で蹴り上げます。蓋は動きません。
 全身でもがいて、身体を棺に打ち当てます。がたんがたんと揺れて、床を打ちます。
 不意に揺れなくなりました。いよいよ、土をかぶせられたのです。
 嫌だ! 死にたくない……誰か助けて!
 誰かの手が私に触れました。目隠しが外され、口の詰物を抜き取られました。
「うわあああん……」
 小さな子供のように泣きじゃくりました。
「こわいよお、しにたくないよお……!」
 耳が聞こえるようになりました。
「いったい、どうしたというのだ?」
 院長様が困惑を浮かべて、私の目を覗き込まれました。
 それで、すこし落ちつきました。私は、まだ生きています!
「あの、あの……」
「エレナ、落ち着きなさい。ここには、あなたに……致命的な危害を加える人なんていないのよ」
 お継母様が抱き締めてくださいます。
 ああ、そうだった。思い出しました。私は『内省の夜』という儀式に望んでいたのです。
「私……口封じで生き埋めにされて殺されかけたことがあるんです。その恐怖が押し寄せて来て……それで……」
 お継母様の腕が手が、強く優しく私を包んでくださいます。
「種明かしは禁じられているのだけれど……明日の朝には終わるのよ。耐えなさい」
「いやあっ……!」
 理性ではなく感情でもない、魂の叫びです。
「もう、修道女になんか、なりたくない。戻して……処刑台に戻して!」
 闇の中で痛みも感じずに、暗闇で独りでじわじわと死んで行くくらいなら、衆人環視の中、槍で刺し殺されるか焼き殺されるほうが、ずっとましです。そんなことにはならないと分かっているのに、全身の震えが止まりません。
 皆様、困り果てた顔で私を見下ろしています。
「院長様」
 お継母様が院長様を振り仰ぎました。
「私も一緒に閉じ込めてください。この子は、改めて自身と向き合うまでもなく、被虐による肉と魂の悦びを知っています。絶対的服従への安堵を知っています」
「いや、伝統を破るべきでは……」
「面白いかもしれぬな」
 司祭様の言葉を院長様が遮りました。
「母親が娘を導くのは珍しいことではないが、『内省の夜』を……うむ、『訣別の夜』……いや、十八で生んだ娘が十五。でなくとも継娘なら、二十幾つもあり得るか。よし、この試みがうまく運べば『双照の夜』と名付けよう」
 院長様は独り合点に頷くと、私の拘束のすべてを解いてくださいました。
 急遽、葡萄酒が用意されて、それを水で薄めたものを、何杯も飲まされました。お継母様もです。喉の渇きが潤されるとともに、断食のせいで、お腹が熱く燃え上がります。
 革帯が床に並べられて、そこに私が仰臥します。お継母様が逆向きに覆いかぶさってきました。これは淫らな戯れの形です。
 神聖な儀式のさいちゅうに不謹慎な――とは思いません。この施虐修道院に、淫らで残虐ではない生活も祈りも存在しないのですから。
 固く抱き合う形でふたりをひとまとめにして、革帯でぐるぐる巻きにされました。顔を股間にうずめて、頭を上げられないように縛られました。さしずめ、お継母様の太腿が目隠しで、口は女性器でふさがれます。手で自分の身体に触れられないのも、前と同じです。
 そうして、横臥の姿勢で棺に入れられました。今度は蓋をされても釘付けにされても、心は落ち着いています。
 暗闇の中で、お継母様の形が、しっかりと温かいです。甘酸っぱい乾酪の匂いが心を掻き乱しますけれど。
 一昨日みたいにご奉仕しても良いのかしらと、迷っていると。
 ぞろりと、割れ目の内側を舐められました。
「み゙ゃんっ……」
 不意打ちに悲鳴をくぐもらせると、お継母様の腰がぴくんと跳ねました。吐息が女の芽を直撃したのでしょう。
 お継母様は我が意を得たりとばかりに、舌も唇も歯も使って、鼻先まで動員して、私を虐めに掛かりました。
 感動です。あんなに(私には)傲慢で厳しかったお継母様が、私の淫らな部分を食べてくださるなんて。
 私も負けていられません。三か月の娼婦生活で得た経験と一昨日にガリーナさんから教わった遣り方を総動員して、お返しします。どちらが先に逝かされるか勝負です。それとも、先に達っしたほうが勝ちでしょうか。どちらにしても、引き分けになれば素敵です。
 手を使えないのがもどかしいのですが。背中をぎゅっと抱き締めて、そして抱き締められているのも、なんだか普通の恋人同士みたいで悪くありません。世間一般の常識では、二重に背徳的ですけれど。
 乳首もなんとか刺激できないかなと、身体を揺すってみましたが、お継母様のお腹に密着しているので無理でした。
 そんなことはしなくても、お継母様の舌技は素敵です。私は、たじたじです。でも、お継母様は坂道を登りながら、私が遅れそうになると立ち止まって手を引いてくださったので――なんとか同時に断崖絶壁から手を取り合って墜落できました。
 飛翔とまではいきませんでした。生さぬ仲とはいえ母娘という薬味も、太い男根には敵いません。鞭も無いし、お尻の穴も置いてけぼりですもの。淡い砂糖菓子でしかありません。
 でも、それは肉の悦びについての感想です。魂の悦びについては、これまでとは異なる充足がありました。もっとも、以前の厳しいお継母様を懐かしむ気持ちもあります。
 あまり長く余韻にたゆたうこともなく、いつしか私たちはおしゃべりを始めていました。といっても、相手の下のお口に話しかけるのですから、勝手が違います。顔が見えない分だけ、素直になれたと思います。
「院長様が十八と十五とか、まして継娘とかおっしゃってたでしょ。お腹を痛めて産んだ娘でも、生贄に差し出すって意味なの?」
 こりっと、女の芽を噛まれました。甘噛みではなく、お仕置きめいた痛みです。
「生贄ではありません。娘の幸せを願ってのことです。腕力があって権力もあって逞しい祝福の棒をお持ちの殿方に、虐げられ庇護される幸せをエレナは知っているでしょうに」
 お継母様のおっしゃることは分かりますが、大切な部分が欠けているように思います。魚のような目をした人には、虐められても恨みが募るだけです。媾合えば身体は反応しますが、官能はありません。そして、瞳に淫欲と嗜虐の焔が燃えていれば、私はその方が男であろうと女であろうと、心を揺さぶられます。お継母様、いえファジャーノ様や寮長様に可愛がっていただいて、それを確信しました。『踊る花の館』の女将さんは駄目です。保身のために、花を枯らそうとしたのですから。
「……あればねえ」
 一瞬の物思いの裡に、言葉を聞き漏らしました。
「なんて、おっしゃったの?」
「ベルタに、すこしでも被虐への憧れがあったら――そう言ったのです」
 割れ目に向かって囁くのですから、聞き漏らしても不思議はないと思ってか、咎める口調ではありません。
「おまえときたら、十になるやならずの頃から兆していましたから――つい、我が子を差し置いて躾けてしまいました」
 では、独り遊びへの厳しいお仕置きも、恥辱の“X”字磔も、私の悦虐を育むためだったのですね。もちろん、恨んだりはしません。だって、お継母様のおっしゃる通り、女の真実の幸せを得たのですから。
「あの……まさか、私が誘拐されたのも?」
「いいえ」
 言下に否定なさいました。
「もしも、あの子の目論見通りにお前が殺されていたら、婚約を解消して、ここへ送り込むところでした。まったく素質の無い女など存在しませんから……たとえ見習期間が三か月を超えようとも」
 裏を読めば、素質に欠けるように見える娘でも三か月もあれば悦虐に目覚めるということです。
「お継母様は、そこまでお考えだったのですね」
「それが義務でもあるのです」
 王族は畏れ多いですし、常日頃から手厚い庇護を受けていますから例外ですが、修道女を落籍させるには数千グロッソもの寄進を求められます。侯爵だろうと大商人だろうと、身代が傾きます。ただし、その家の娘を将来に入会させると誓約すれば、良家の子女を闇売買する程度の金額まで下がります。大抵は、身請けした修道女に産ませた娘か幼い養女を迎えて、その家の娘にふさわしい教育を施します。私のように後妻に直った修道女が、前妻の娘を――という例は珍しいそうです。
「誰だって、自分が産んだ子供がいちばん可愛いものです」
 つまり、修道女は皆が仕上がっていて、悦虐の幸せを信じて、いえ、体感しているのです。
「フランカは、やっつけ仕事ですけれどもね」
 予定していた娘が病没して、やむを得ず適当に見繕った身替りを差し出したのだとか。娘を簡単に売るような下層民なら、あの言葉遣いも納得です。
 知れば知るほど驚くことばかりです。その中でいちばん驚いたのは――お継母様がほんとうに私の幸せを願っていてくださったことです。
 それも、一時ではなく生涯に渡って、です。というのも、花の命は短いのですが、修道女は娼婦と違って、落籍されることなく引退した者には、聖エウフェミア基金からじゅうぶんな年金が支給されるのです。十数年に及ぶ祝福で痛め付けられた身体で、どれだけ長生きできるかは分かりませんが、誰であれ寿命は神様しかご存知ないのです。
その他にもいろいろとお話をうかがい、私も、お継母様が放った密偵でも承知していない冒険の詳細をあれこれと語りました。お母様は、とても羨ましそうな相槌を(私の下のお口に向かって)打ちながら、聞いていてくださいました。
 ふっと話が途切れたとき。私は当然の疑問に行き当たりました。
「ねえ、お継母様。お父様とは……?」
 さすがに気恥ずかしくて、語尾が立ち消えました。
「旦那様が私を見初めてくださったのは、ここ聖エウフェミア女子修道院です」
 それだけで答えになっています。
「私も、世間一般では旦那様とは別の寝床に就く歳ですけれど……私のここでの振る舞いが旦那様に対するそれとはまったく異なっているというわけではないのですよ」
 つまり現役だということです。
「真夏にも、私が胸元も手首も隠れる服しか着ないのは、そのためです」
 これを、世間一般ではお惚気と呼ぶのでしょう。
 しばらく安らかな沈黙が続いて。だんだんと、私は安らかではなくなってきました。薄めた葡萄酒をたくさん飲んだ結果が差し迫ってきたのです。とても、朝までは我慢できそうにありません。
 牢獄では、日常的に垂れ流していました。でも、ここは仮初にも神様の御前です。それ以前に、私の割れ目はお継母様の口でふさがれているのです。
「催してきたの?」
 私が腰を文字尽かせていたので察したのでしょ。お継母様が、「喉が渇いたの」みたいな口調で尋ねます。
「あの……我慢します」
 出来もしないことを約束するなんてつらいです。
「かまわないのよ。全部飲んであげます。零したりしたら、大変なことになりますから」
 棺に詰められている黒い丸い球は、海綿を絹布で包んだものだそうです。高価な海綿と絹を台無しにするだけではありません。水を吸って玉が膨れると、棺の底に何十か所も開けてある空気穴をふさぎかねません。そうなると、二人揃って窒息します。
 殿方のお小水を飲まされたことはありますけれど、その反対はありません。まして、相手はお継母様です。
「出しなさい。私も出します。全部飲み干してちょうだいね」
 言葉が終わると、生温かい水がちょろちょろっと口の中に注がれました。殿方とは微妙に味も舌触りも違っています。すこしだけしょっぱいのに、甘く感じられます。これは、お継母様への親近感からくる錯覚かもしれません。微妙に粘っこいのは、淫らな蜜が混じっているせいでしょう。
 ちっとも嫌悪を感じずに。支配されているという辱悦も無く、飲まされているのではなく飲んであげているという歓びの裡に、私は一滴余さず飲み干したのです。
 いよいよ、私の番です。お腹の力を緩めて……いるつもりですが、どうしても流れが生じません。なのに、出そうと決心したので、尿意だけが急速に高まっていきます。つらいです。苦しいです。悦びのない苦しみです。
 お継母様の舌が割れ目に押し挿ってきて、女の穴より上のあたりをつつきました。と同時に堤防が決壊して、お継母様のせせらぎとは違って、何もかもを押し流すような奔流が生じました。
「あああ……ごめんなさい」
 お継母様は言葉を返すことも出来ず、割れ目をぴたりと唇でふさいで、本流を飲み干してくださいます。
 互いに互いを辱めた――いえ、男根で貫くよりも深い契りを交わした。そんな気分になりました。
 私とお継母様はきつく抱き合って、闇の中へ溶け込んでいったのです。


三位一体の典

 棺から出されたときは、生まれ変わったような心持ちでした。私だけが寮へ戻されました。
 晴れの洗礼典ということで、必要最小限の仕事を除いて、修道女の過半数がまだ寮にとどまっています。
 私は朝食として、汁にふやかした少量の麺麭と果物だけをいただきました。断食の後で普通の食事を摂ると戻してしまうそうです。
 食事の後は身支度です。大きな盥で身体を清めて、それから叢を剃ってもらいました。
 修道女は『踊る花の館』の娼婦と同じように手入れはしていますが、無毛の人はいません。ごく短い生えかけの人は少なくありません。それは賓客にそいう祝福を与えていただいたからです。軽い火傷を負っている人もいます。焼鏝や蝋燭を使うか剃刀を使うかは人それぞれですが、手入れの行き届いた芝生よりは不毛の丘陵を望まれる賓客のほうが多く、それも御手ずからなさる方が大半だそうです。
 豪奢な庭園をお望みの賓客もいらっしゃいますが、問題はありません。高い地位にある殿方は、相応に多忙です。ひと月もふた月も前から予定を組んで、万障繰り合わせてのご訪問ですから、準備に怠りはありません。
 そういう次第で、洗礼を受ける娘は「自然のまま」にあるのが通例ですが。私だけは、素敵な飾りを下腹部に焼き付けています。見栄えを良くするために無毛で礼典に望むことになったのです。
 けっこう煩わしい作業です。というのも、焼印の文字と枠が盛り上がっているので、剃刀では傷付けかねません。蝋燭で火傷をしても宜しからぬということで、その部分には毛抜を使いました。お陰様で、新しい種類の痛みを堪能できました。毛根の大半が焼き潰されているのが残念でした。
 一本ずつ抜いていくのは退屈な作業です。それをしてくれた牛(ムーロラ)さんと金糸雀(カナリーナ)さんは、修道院の日常のあれこれについて教えてくれました。私がいちばん興味を持ったのは、冬の過ごし方です。
 真冬でも、裸同然の服装は変わらないのです。ちっとも興奮しない虐待です。もっとも、この地の西は地平線のすぐ向こうが海になっているので、そんなには冷え込まないのだとか。そして、修道院の建物のほとんどは壁が二重になっていて、その隙間を暖炉の熱い空気が巡るようになっているから、室内では震えるほど寒くはないそうです。床は冷たいのですが、冬だけは裸足でなくて木靴を許されます。どうしても戸外での作業が必要なときは、これこそ修道院での本来の修行なのだと諦めるしかありません。
 中には、酔狂で残忍な賓客がいらっしゃって。ご自分は外套にくるまりながら、寒風の中で修道女に祝福を与えるのがお好きだという鬼畜……失礼しました。凍えた肌を打つ鞭の痛みは、格別に厳しいとか。さすがの私も、体験してみたいとは……思わないとしても、体験させられることでしょう。
 そんなことを妄想ではなく予感したせいで、二人にからかわれるほど濡らしてしまいました。
 そうして準備万端調って。私は見習修道女の正装――全裸ですが、昨日までの私のための枷と鎖ではなく、フランカと同じに後ろ手に祈りを捧げる形に縄で縛られた姿で、先輩修道女に両側から乳首を引っ張られて、礼拝堂へ赴きました。フランカを除いて皆さん、被り物で髪を隠しているので修道女らしく見えます。視線を下げると台無しですけれど。
 礼拝堂へ足を踏み入れて。先輩方が左右へ分かれる中、乳首に導かれて祭壇へ歩みます。
 そこに待ち受けているのは、院長様を始めとする四人の聖職者とお継母様、そして……
「お父様?!」
 ほとんど悲鳴です。
「しっ……」
 乳首をつねられました。
 昨夜のお継母様のお話では、お父様もここがどういうところかご承知の上で、私を送り込もうとなさっていたのですから、実の娘の晴れ舞台を我が目でご覧になりたいのでしょう。ですが……司祭様に教わった聖書の真実が気に掛かります。近親姦を忌むどころか推奨しているのですから。
 まして、お父様は腰布一枚となれば、なおさらです。
 私の懸念(期待かもしれません)をよそに、儀式が始まります。
 十字架も絵画も聖書すら取り払われて白い敷布だけが掛けられた聖壇から二歩ほど離れて、私は縛られたままで跪きます。先導の二人が他の修道女の列へ戻って。
「ラメーズ伯爵マッキ・コルレアーニが長女、エレナ。この者は、隷従の安らぎを知り、恥辱を誉れと成し、苦痛の悦びを知り、姦淫の愉しみを知る女として、今まさに生まれ変わらんとする。よって、ここに洗礼の秘蹟を授ける」
 院長様とお父様が、私の前に向かい合って立ちました。お父様が腰布を取りました。神様の御前だからなのか、実の娘には淫欲を催さないのか、うなだれています。
 お父様のそこを見るのは初めてですが、娼婦として評価するなら、人並みです。もちろん、ちゃんと勃起するという前提で。
 ですが、これがお母様を耕して私の種を植え付けた鋤かと思うと、感慨もひとしおです。
 院長様がお父様(の股間)に向かって十字を切り、美術品として貴族の客間に飾っておくのがふさわしい水差しに指を浸して聖水(でしょうね)を振り掛けました。
「汝は聖別された。この娘に聖水を注いでやりなさい」
 お父様が男根を手で捧げ持つ――までもありません。太く長くなりながら鎌首をもたげます。むしろ手で押さえて、筒先を私に向けようと苦労なさっています。
 昨夜はお継母様の小水を飲み、今日はお父様のを浴びるのです。私は頭を垂れて、受洗を待ちました。
 ほどなくして――ちょろちょろっと頭に生温かい聖水が注がれました。髪を濡らし顎を伝って、腿に雫が垂れます。
「頭(こうべ)を上げよ。口を漱(すす)げ」
 院長様のお言葉にしたがって顔を上げ口を開けました。
 ところがお父様は……
「わ゙、ら゙……」
 ほんとうに嗽(うがい)をしたみたいになって、口を開けたまま目を閉じました。だって、お父様は筒先を振って、顔一面に浴びせてきたのです。顔だけでなく、全身に浴びせます。
 私には何であれ、口に放出された殿方のものを吐き出す習慣がありません。娼館では、そういうふうに躾けられ、牢獄では強制されています。まして礼拝堂の中では非礼です。かといって、飲み下す勇気もありません。お継母様のが平気だったのは、暗闇の中で二人きりでしたし、切羽詰まっていたからでもありました。今は数多くの目があります。ここの修道女は誰しも同じような洗礼を受けているのでしょうが、それでも恥ずかしいです。
 全身ぐしょ濡れになって。そこで儀式が停滞しています。
「聖水を飲み干しなさい」
 院長様に𠮟られて、ようやく決心がつきました。お父様のだと思わなければ、むしろ平気でした。
 お父様が退き、院長様が私の前にお立ちになりました。
「この女は、ここに生まれ変わり、新しい名を得た。すなわち、蛙(ラーナ)である」
 私は、ひどく落胆しました。他の人たちは家畜や鳥の名前なのに。
 失望の裡に、私は立ち上がりました。院長様が十字架の先端で、私の左右の乳首と口と股間に触れて十字を切りました。わたしは、その十字架に接吻しなければなりません。
 先輩方が寄って来て、桶に何倍もの水を頭から浴びせます。水は石床に落ちて、外へと流れます。牢獄と同じで、目には見えない傾斜が付けられているのでしょう。
 最後に見習修道女の正装を、つまり縄をほどいてもらって、濡れた髪も簡単に拭ってもらって。私は院長様の前に跪きます。
「では、ラーナよ。汝は祝福に満ちあふれた聖エウフェミア女子修道院での暮らしを望むや?」
 ここからは誓願の儀です。誓いの言葉は、今朝から何度も繰り返して、大筋は覚えています。一言一句も間違えてはならないのではなく、覚悟の程を披瀝すれば良いのです。自分で工夫してもかまいません。
 では、誓いを立てます。
「私、ラーナは、以下の如くに誓願致します。
「私は、主が創り給いしアダムの息子たちに隷従してそれを安寧と為し、彼らに与えられる苦痛を悦び、恥辱を誉れとし、すべての穴に彼らを迎え容れて淫らに悶えたく、ここ聖エウフェミア女子修道院への入会を望みます。
「私は、この心と身体を、すべてのアダムの息子たちに捧げます。彼らが私を愛でる限りは、ここに留まります。彼らのうちの誰かに強く望まれるか、誰にも愛でられなくなったときには、速やかにこの地を去り、この地で行なわれた秘蹟については固く口を閉ざして余生を送ります。
「私が誓願に違背することあれば、主よ、直ちに私を滅ぼしてください。
「アーメン」
 先ほど十字架が触れた順番で女の敏感な部分を使って十字を切りました。
「汝の誓願は受け入れられた。向後は、聖エウフェミア女子修道会の一員として清貧と淫乱と隷従の日々を過ごせ」
 こうして、私はいわば女囚兼娼婦となりました。これで儀式は終わったのでしょうか。お継母様は、ただの立会人だったのでしょうか。
 いいえ、やはりそうではありませんでした。
「秘蹟にふた親のいずれかが立ち会うのは珍しくないが、父と子と性隷とが揃うのは稀である。せっかくの機会であるから、これより至高の秘蹟たる三位一体の典礼を執り行なうものとする。神の子を祭壇へ」
 二人の助祭様に、また乳首を引かれて、私は祭壇に横向きに仰臥しました。頭は端からはみ出てのけぞり、お尻宙に浮いています。
 頭の側に、お継母様が立ちました。私の目の前には、妖しく絖る亀裂があります。それが私の顔に押し付けられました、昨夜よりもずっと強く。
 私は促されなくても、舌を伸ばします。お継母様は私の双つの乳首を優しく転がしたり厳しくつねってくださいます。左右別々にそれをされると、惑乱してしまいます。
 あ……女の芽にも指が。これは……お父様です。実の父親に女として可愛がっていただく。数日前まででしたら、如何に私でも、おぞましく思っていたかもしれません。やはり、司祭様の教育で、私は変わっています。私は背徳の甘い蜜の味を知ったのです。
 ああ、そうかと――三位一体の真の意味を悟りました。文字通りに、父と娘と性の奴隷とが一体となるのです。
 その至高の瞬間へ向けて、お父様とお継母様の指が、私を追い上げていきます。
「ん゙む゙ゔ……んんんっ」
 禁忌の蜜は濃厚です。たちまちに、全身が燃え上がります。頭に官能の霞が立ち籠めます。
「ん゙も゙お゙お゙お゙っ……!」
 二人が示し合わせて、同時に三つの突起をつねりました。私はいきなり宙に投げだされて。そしてすぐに引き戻され、さらに追い上げられます。
 不意に、お父様の指が消えました。お継母様も手を止めました。お父様が私の脚を肩に担ぎました。
 いよいよです。
 すっかり馴染んだ、でも初めての感触が、ずぐうっと押し入ってきます。根元まで突き挿さりました。私が濡れ過ぎているので、ちょっと物足りないです。でも、心は満足しています。
 お父様がお継母様を引き寄せているのが気配で分かります。きっと接吻をなさるのでしょう。
 これで、三人は閉じた三位一体となりました。
 あっ……大切なことを忘れています。院長様もお父様も、その必要を認めなかったのかもしれませんけれど。お父様は羊の腸を使っていません。私も酢で洗っていません。お父様の子を授かってしまったら、どうしましょう。
 まだ、私の悦虐の旅は始まったばかりです。早々に還俗なんてしたくないです。
 そうだ。お父様に実の娘(には違いありません)として引き取っていただいて。じゅうぶんに世間の常識とか道徳を教え込んでもらいましょう。背徳と禁忌の蜜を味わうには、良識にまみれていなければなりません。そして、年頃になったらここへ入れて。私の手で(だけでなく全身を使って)仕込んであげましょう。
 そんな遠い将来の妄想に耽っているどころではなくなりました。お父様が女の芽に爪を立てながら激しく腰を打ちつけてきます。私は苦痛と快感の坩堝にほうりこまれました。
 お継母様も割れ目でお口を蹂躙しながら乳首を虐めてくださいます。
「ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ……」
 私は至福に包まれながら、かつてない高みへと、どこまでも追い上げられていくのでした。

[完]

========================================

 はい、脱稿しました。ので、「ダッコちゃん」です。
ダッコウちゃん

 とりあえずご報告まで。
 祝杯あげたり、紙飛行機作ったり、ゲームしたりと忙しいので、クロールです。微妙に違いますが「抜き手」とも言います。

テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Progress Report 8':公女巡虐

登場人物の名前変更です。
普通の家名を洗礼名に変更しました。 
修道院長 オスティ→ドミニコ
司祭   アルフィオ→サバス


修道女も大幅に入れ替えましたが、これはまだblogの記事にしていないので関係ありませんが。
継母(OG)のファジャーノは、そのまま。あとの19人も、ご紹介。

寮長女:カヴァラ(牝馬)
修道女:マイアーレ(豚)、ガッタ(猫)
    アシノ(驢馬)、カーニャ(牝犬)
    ムッカ(牛)、ペコラ(羊)
    ムーロ(騾馬)、コニーギョ(兎)
    ピッショーネ(鳩)、クワーギア(鶉)
    ストルノ(椋鳥)、コルヴォ(烏)
    アキローネ(鳶)、パッセロ(雀)
    ガリーナ(雌鶏)、カナリーノ(金糸雀)
    シーノ(白鳥)
見習娘:アナトラ(家鴨) 受洗後に名付けられる。

ちなみにヒロインの伯爵令嬢元娼婦元盗賊元死刑囚であるエレナ・コルレアーニはラーナ(蛙)になります。他の修道女がすべて家畜や鳥なのに、ただ一人だけ「それ以下」の名前。類稀なる悦虐資質への称賛です。

アイキャッチがないと寂しいので。
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テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Progress Report 8:公女巡虐

 最終章……の筈でしたが。ここら辺はPLOTをきっちり立てずに、書きながら固めていく予定でした。そしたら双胴船(カタマラン)になっちまいました。ていうか、思いつくまま、あれもこれも闇鍋にしちゃいまして。1万5千文字を超えても終わらない。ので、オーラスの連チャン。2本場までもってくことにしました。

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淫虐の修道院

 聖エウフェミア女子修道院は、ものものしい煉瓦の壁に囲まれていました。壁の端から端までは百歩を超えています。聞くところによりますと、三十人ちかい人たちが、ほぼ自給自足の生活を営んでいるとのこと。中には畑や家畜小屋もあるのですから、これくらいの広さは当然でしょう。
 馬車は正門の前に止まりました。お継母様が前の馬車から降り立ち、私も護衛の騎士に促されて、鎖に足を取られないよう身体を横にして馬車を降りました。
 固く閉ざされている正門が、歴史の重みを感じさせる軋みとともに細く開かれました。お継母様が案内も待たずに歩み入るので、私も続きます。聖職者以外は男子禁制ですから、護衛の人たちはその場にとどまっています。入ると同時に、また門が閉ざされました。
「え……?」
 門を開閉している人を見て、驚きました。男性です。動きやすい服装をして腰に短剣を帯びていますから、兵士でしょうか。塀に囲まれていても女性だけでは物騒ですから、警備の兵士が少数居てもそんなに不思議ではありませんけれど、ちょっと意外でした。
 正面の建物から姿を現わした二人も男性です。二人とも、聖職者が身にまとう黒い長衣ですから、こちらはちっとも不思議ではありません。女性は聖職者になれませんし、ミサには聖職者が欠かせないのですから。お二方は、胸に提げている十字架の大きさが違います。
 お継母様が、大きな十字架の人の前に跪きました。
「お久しぶりでございます、オスティ院長様。そして、アルフィオ司祭様」
 お継母様は、お父様の後妻となる前は、この修道院に入っていられたのです。もう十五年以上の昔です。オスティ院長様は五十を過ぎてらっしゃるようですから分かりますが、アルフィオ司祭様は三十そこそこ……ああ、そうでした。つい先年も、お継母様は訪れてらっしゃいました。でしたら「お久しぶり」ですね。
「おいでなさい、エレナ」
 お継母様が、私をお二方に紹介してくださいました。
 私もお継母様を真似て跪き、胸に十字を切りました。
「私のような者を、由緒ある修道院に迎えてくださって、感謝しております」
 嬉しくない好意に感謝なんかしたくありませんけれど、ラメーズ伯爵令嬢としては、こう振る舞うしかありません。
 オスティア院長様は鷹揚に頷かれると、無言で踵を返しました。
「ついて来なさい」
 アルフィオ司祭様がそっけなくおっしゃいます。
 私はお継母様の後ろに従って、正面の建物に入りました。層煉瓦造りの二階建てです。真っ直ぐな廊下の奥にある部屋へ招じ入れられて、そこは院長様の執務室のようです。
「ファジャーノからの手紙によれば、おまえにはくだくだしい説明は不要だそうだな」
 院長様の言葉遣いは、これが聖職者かと疑うほど横柄です。
「見れば信じるという格言があったな」
 院長様が、執務机の上に垂れている長い房を引っ張りました。チリンチリンと鐘の音がして。すぐに三人の女性が入って来ました。
「まあっ……?!」
 三人の姿を見て、私は驚愕を叫んでいまいました。
 三人のうち二人は、修道女が衣服の上に着用する肩衣を――素肌にまとっています。長い布に首を出す穴を明けて襟を着けた、衣服というよりは縦の帯です。この人たちの肩衣は極端に幅が狭くて、乳房の間にたくれています。膝丈ですから女性器は隠れていますが、太腿は剥き出しなので、どんなにお淑やかに歩いても見えてしまうでしょう。
 そして、もう一人は……全裸です! 後ろ手に縛られています! 猿轡まで噛まされています! 全身に鞭の跡が刻まれています!
 肩衣の二人はわずかに頭を下げて、けぶるような眼差しを机のあたりにさまよわせています。全裸で縛られている――私と同い年くらいの娘は、はっきりと頭を垂れて、睫毛が涙に濡れています。
「紹介しておこう。マイアーレとガリーナだ」
 肩衣の二人が、軽く頷きました。
 ほんとうに二人の名前なのでしょうか。豚(マイアーレ)と雌鶏(ガリーナ)だなんて。そう言えば、先ほどは雉(ファジャーノ)がどうとか。
「これはフランカ。まだ見習で肩衣は許されておらん。俗名のままだ。被虐の愉悦を覚えるべく、日々、苦行に励んでおるところだ。今は無言の行の最中だ」
 猿轡のことを言っているのでしょう。
「未だ信仰が足りぬゆえ、つねに神への祈りを捧げられるようにしてある。フランカ、後ろを向け」
 私と同い年くらいの娘は、顔を伏せたまま後ろ向きになりました。
「…………?!」
 見たこともない拘束の仕方です。腕は真上へ捩じ上げられて、掌を合わせる形にされ、向かい合う指を紐でくくられています。これが、つまり神様への祈りということでしょうか。肩が水平よりもせり上がって、見た目に痛々しいです。
「院長様。私もファジャーノの形に改めさせてください」
「そう言うと思って、用意してあるぞ」
 私は、さらにひとつ、有りうべからざる光景を目の前にしました。お継母様が、殿方の前で衣服を脱ぎ始めたのです。それも、下着も腰布も脱ぎ捨てて……全裸になったのです。
 四人目の女性が、平たい箱を持って来ました。この人も、全裸に肩衣です。箱を机に置くときに私の前に立ったのですが……肩衣の後ろ側は腰までしかありません。お尻が丸出しです。そして、そこには数日前のものと思われる無数の鞭痕が浮かんでいます。
 そんなありふれた(?)光景に驚いている場合ではありません。
 お継母様が、箱から肩衣を出して身に着けたのです。それは他の修道女(?)たちと同じ色ですが、後ろ側はもちろん、前側もおへそまでしか丈がありません。下半身は丸出しです。それだけでも、淑女なら身に着けるのはもちろん見ただけで卒倒するでしょう。ところが、お継母様は平然と――なぜか「嫣然と」という表現が頭に浮かびました。箱から十字架を取り出して、首から下げたのです。身に着けるには、極端に大きな十字架です。横木の両端の装飾には小さな穴が明いていて――そこに乳首を嵌めたのです。金色の小さな留め金具で十字架の上から乳首を締め付けて、抜けなくしました。そして、十字架の下端にある同じような穴に、女の芽を嵌め込んだのです。
「おまえは、すでに人の妻。貞操を守る装身具も誂えておいたぞ」
「ありがとうございます、院長様」
 お継母様が取り上げたのは、“V”字形をした銀の……何と呼べば良いのでしょうか。とにかく、“V”字形の交点には男根が屹立しています。お継母様はがに股になって、それを女の穴へ挿入しました。そして、手を放すと――“V”字形は勝手に(ではなく、お継母様が筋肉を引き締めたのでしょう)内側へ動いて、浅く湾曲した装身具は、ぴったりと股間に張り付きました。
「エレナ。母が正装しているというのに、その姿はなんとしたことです。神様の御前(みまえ)に一切を曝け出しなさい」
 言葉の意味は分かりますし、殿方の前で裸を曝すくらい慣れっこです。でも、出鱈目な言葉に従いたくはありません。
「無闇に肌を曝すことを、神様は禁じておいでです。まして、ここは修道院の中……?」
 語尾が立ち消えたのは、こんな修道院があるはずも無いからです。
「神がご自身に似せて人を創られたとき、人は衣を着ておらなかった」
 院長様が、たしなめるように言いました。
「人が身を包むようになったのは、神の教えに背いて禁断の果実を食べたからだ。いわば、衣服は原罪の象徴。疾く罪を脱ぎ捨てよ」
 もっともらしく聞こえます。私には反駁できません。でも、詭弁だと思います。
「そうか。おまえは脱ぐよりも脱がされるのが好みなのだな」
 どきりとしました。そんなふうに言われたのは初めてですが、私の本性を暴く言葉です。お会いして、まだ半時間と経っていないのに、ほとんど言葉を交わしていないのに。院長様は手紙がどうとかおっしゃってましたが、仮にお継母様が密偵を使って私の行状の逐一を調べたとしても、私の心の裡までは分からないはずです。
 瞬時の物思いに囚われている間に、私は左右から腕を摑まれていました。院長様が、抜き身の短剣を手に、息が吹き掛かるほど間近に迫ります。
 左手で私の衣服を摑んで……
 ぴいいいいっ。上から下まで一気に切り裂きました。上着の下はお継母様と違って腰布一枚です。それと、足を束縛する鉄環と鎖。
「ふむ。ファジャーノは、年下相手だと祝福を与える側か」
「この娘は、私の娘よりも素質がある――いえ、生まれながらに悦虐の性(さが)を備えておりますもの」
「だから、生さぬ仲の娘に実の娘とは異なる愛情を注いでおるわけだ」
「ベルタには素質がありません。出来れば実の娘にこそ、残虐に愛でられる悦びを知ってほしかった――これは本心ですのよ」
 遠回しな言い方をしていますけれど。お継母様も、虐められる悦びを知っておいでのようです。縛られている娘のように、無理強いに教え込まれたのかもしれません。でも、たしかに……『素質』がなければ目覚めることもないでしょう。
「女であれば、誰しも素質を秘めておる。しかし――この娘のようにみずから目覚めるとは、稀有のことかな」
 長話の間、私は両腕を掴まれて腰布一枚の裸で立ち尽くしているしかありまでんでした。
 その最後の一枚も剥ぎ取られました。
 無毛の股間に刻まれた焼印を見ても、院長様には驚いた様子もありません。
「類稀なる素質を持ち、ラメーズ伯爵夫人の推薦があっても、特別扱いは出来ぬ。入院の誓願を立てておらぬ娘として扱う」
 ただし、男の味も鞭の痛みも知り尽くしている点は考慮してやる――と、付け加えました。並みの娘よりは過酷に扱うという意味でしょう。
 私は修道女の手で、鉄の首輪を嵌められました。この人たちが修道女かはすこぶる怪しいのですが、他に適切な呼び方も思いつきません。院長様は、紛れもなく院長です。ここが修道院であろうと施虐院(今思いついた造語です)であろうと。
 首輪には、後ろではなく前から鎖が垂れています。それが股間を割って後ろへ引き上げられ、首輪の後ろにある環で折り返されました。腕を背中へ捩じ上げられて手首が交叉する形にされて、二つの環が組み合わさった十字形の枷を嵌められました。
 首輪も手枷も半割になっていて、小さなボルトで合体させます。縄と違って、手が使えなければ絶対に自分では外せません。
 鎖がいっそう引っ張られて、割れ目にきつく食い込みます。並みの娘だったら、処女でなくても悲鳴を上げるでしょう。もちろん私だって痛いのですが、久しぶりの虐待に、腰が砕けそうになっています。
 腕もさらに捩じ上げられて、手枷が鎖につながれました。腕を掴んでいた手が放されると、自然と手首が下がろうとして、さらに鎖が割れ目を抉ります。そんなに細くないですから切れたりはしないでしょうが、私でも歩くのはつらいです。
 それなのに。院長様と司祭様が部屋から出て行かれると。
「おいでなさい」
 お継母様が鎖の前を引っ張ります。
「痛い……引っ張らないでください」
 私をお仕置きするのが趣味みたいなお継母様ですが、原因は私にあるのですから、憎いとは思ったことがありません。こんな嗜虐者の巣窟みたいな所へ私を連れて来たのがお継母様であっても――です。むしろ感謝したいくらいです。
 いえ、そういう話ではなく。だから、つい甘えてしまったと言いたかったのです。
「あら、そう」
 拍子抜けするくらいにあっさりと、お継母様は鎖から手を放してくださいました。お願いして、それを聞いてくださったのですから、感謝するべきでしょうが……落胆は早計でした。お継母様は、私の乳首を摘んで、思い切りつねったのです。
「ひいい……痛い」
 私の泣き言には耳もかさず、さらに引っ張ります。私は前へ歩むしかありません。
 ちゃりん、ちゃりりん。足を束縛する鎖を鳴らさないようお淑やかに――なんて気を配る余裕はありません。股間の痛みを和らげるよう、へっぴり腰のがに股で、お継母様について行きます。
 先を行くのは院長様と司祭様。四人の女性は姿を消しました。
 表口へと戻る途中で、廊下は右へ一本、左へは二本の枝分かれがあります。その二本の向こうには幾つもの扉があります。
 そのひとつが開けられて……とても見覚えのある室内です。煽情的で淫猥な赤っぽい色調の壁紙、男女の絡みや女性の受難を描いた卑猥な絵画、そして三人でも四人でも取っ組み合いが出来そうな(実際にするに決まっています)広くて豪奢な寝台。これはそのまま『踊る花の館』の貴賓室です。
 ここは、修道院を隠れ蓑にした売春宿なのでしょう。そして、フランカという見習娘の装い(?)を見るところ、ブルーノ様のような性癖の殿方を積極的に迎え入れているのでしょう。
 私の推測は当たっていました。分かれ道を引き返して、反対側の廊下の突き当りは、さっきの複数あった貴賓室をひとつにまとめたくらいの広い部屋になっていました。石畳の床と剥き出しの壁、手の届かない高さにある鉄格子を嵌めた明かり取りの窓。
 アンブラの牢獄を彷彿とします。いえ、遥かに恐ろしいです。三角木馬も、磔柱も、手足を引っ張る拷問台も、針を植えた拷問椅子もあります。天井には十を超える滑車が吊るされ、複雑な組滑車まであります。大きな鉄の箱には、中央を向いた面に幾つものガラスが嵌められています。水色がガラスの色でないとすれば、これは水責めの仕掛です。水責めの目的は拷問ではなく、中で苦しみ藻掻く女を『お客様』が鑑賞するのです。だから覗き窓が設けられているのです。
 その他にも、三角木馬をさらに残酷にした四角錐の台とか、棺のような箱とか。
 火桶もありますし、壁に掛けられた鞭や枷や焼床鋏(やっとこ)も種類が豊富です。
 明らかに、苦痛よりも女体に快楽を(心に屈辱を)与えるのを目的とした責め道具もあります。たとえば前後に揺れる橇を備えた首の有る木馬。背中は丸みを帯びていますが、怒張した男根の五割以上も太くて長い張形が二本、そびえ立っています。木馬の首には小さな巻取機から三筋の細い鎖が垂れています。鎖の先の小さな摘み金具を女性の突起に付けて木馬を揺らすのだと思います。
 もっと凄いと、見ただけで分かる道具もあります。平たい大きな箱から太い棒が突き出ていて、先端には“L”字形の角材が取り付けられています。箱の端からも短い棒が立っていて、こちらは弾み車らしい分厚い鉄の円盤で終わっています。私が目を奪われているとお継母様が、その円盤をゆっくりと回しました。円盤が三回転ほどもすると、角材が一回転します。“L”の横棒の先端が垂直の棒とつながっているのですから、“L”の縦棒は円を描きます。つまり――箱の上に立って“L”の縦棒を前後どちらかに挿入していれば、腰が淫らにくねるのです。角材の縁で穴を抉られながら。円盤を自分で回すという使い方も出来ます。手で回すのでしたら、程良い加減に出来るしょうが、逆に腰をくねらせて回すとなると、穴を角材に押し付けるのですから――私だったら絶頂に達してしまうかもしれません。試してみたいです。
 小道具も同じように、快楽と恥辱を目的とした物が揃えてあります。羽箒とか張形とか。
 けれど、最も肝腎な鉄格子の独房がありません。代わりに、小さな檻が四つ置かれています。そのひとつには、裸の女性が手足を広げて鎖につながれています。
「こやつは驢馬(アシノ)だ。これは懲罰でも拷問でもなく、みずからに望ませた信仰に基づく苦行だ」
 乳房にこびり付いた無数の小さな赤い斑点は、みずから望ませるための針による説得の痕跡でしょうか。
「本来は自分で身体を動かして転がらねばならないのだがな」
 その檻は他の三つと違って、球形をしています。司祭様が軽く押すと転がり始めました。周辺を囲った浅い枠にぶつかると、反対側へ転がります。たいした苦痛ではないのでしょう。女性は微かに呻いただけでした。
 こんなのが苦行なら、私だって説得されなければ望まないでしょう。それとも、こうやって転がされ続けるのは、経験豊富な(?)私でも想像できない苦痛なのでしょうか。
「本来なら、ここで軽く苦行をさせて当院についての理解を深めさせるのだが、おまえには、その必要は無いな。むしろ、苦行を体験させないのが、いちばんの苦行になるのではないかな」
 院長様のお言葉に、お継母様がくすりと嗤いました。何もかも見透かされているようで、落ち着きません。こんな光景を眼前にして、こんなふうに拘束されていて、落ち着くもあったものではありませんけれど。
 院長様と司祭様が、球形の檻に錘を取り付けました。閉じ込められているアシノの胴回りに当たる部分です。アシノは上下逆さにされて――両手はさっきよりも垂れています。拘束している鎖に余裕があるのです。たしかに、自分で転がるには身体を動かす余裕が必要です。
 檻の周囲六か所に錘を付け終わると、お二方は檻を回し始めました。司祭様が鉄格子をつかんで押しやり、院長様はあちこちへ動いて、檻がひとつ所で回るように突き戻しています。
「あああああ……お赦しください。目が回ります!」
 お二方は、檻が回るままにして、手を放しました。
「苦行の間も先ほどの貴賓室も、おまえたちが暮らす場所ではない。寮も案内しておこう」
 私はまたも、乳首を引っ張られて拷問いえ苦行の間から連れ出されました。
 表口から外へ連れ出されて、ぐるっと建物を半周して。そこには狭い裏庭を挟んで、石造りの平屋が建っていました。すべての窓に鉄格子が嵌まっていて、なんとなく牢獄を連想しました。事実、そこは修道女たちの獄舎でした。雑居房です。
 建物を強固にするために間仕切りの壁はありますが、扉の無い大きな開口部で、全体が大広間となっています。
 そこには五人の修道女が居ました。皆、素裸の上に幅の狭い肩衣です。お尻は剥き出しです。五人とも、真新しいか数日を経ているかの違いはあっても、鞭痕を刻まれています。仕事は――二人が糸を紡ぎ、二人が轆轤(ろくろ)を回して、残る一人は裁縫をしています。
 五人は一斉に立ち上がって、院長様たちを迎えます。十字を切ってから、肩衣の裾をつまんで横に引っ張り(股間が丸見えになります)腰を屈めて屈膝礼を執りました。院長様が頷いて横柄に手を振ると、五人は仕事に戻りました。ご主人様と女奴隷――そんな印象です。
 大広間の一画を三十ほどの寝台が占めています。殿方と二人で寝るには狭い寝台です。寝台には薄汚れた感じの敷布が掛けられていますが、すぐ下は簀子です。つまり、布団は許されていないのです。そして、寝台の四隅と両側に、鎖でつながれた枷が置かれています。
 寝台のひとつだけが使われています。首輪でつながれた全裸の娘が、片手を寝台から垂らして俯せになって……気絶しているのでしょうか。背中とお尻を生々しい鞭傷がびっしりです。緑色の膏薬が薄く塗られています。
「牝犬(カーニャ)、鳩(ピッショーネ)。ここへ来い」
 糸を紡いでいた二人が呼び付けられました。もう間違いはありません。ここの女性たちは、犬とか猫とか豚とかの蔑称で呼ばれているのです。お継母様の雉(ファジャーノ)は、むしろ優雅でさえありますけれど。
「それぞれの寝台に寝ろ。カーニャは安眠の姿勢、ピッショーネは反省の姿勢だ」
 二人は肩衣を脱ぎ全裸になって、隣り合った寝台に仰臥しました。そして、カーニャは手足を“X”字形に広げました。ものすごく覚えのある姿勢です。お継母様は、ここでの体験を私に反映させていたのです。
 ピッショーネは両手で足首をつかんで、お尻の穴まで天井に向かって晒す“V”字形です。間近に見ると、全身に様々な痕が鏤められています。鞭だけでなく、鎖、枷、そして焼鏝。どれも、いずれは消える程度にとどまっています。
 私は安心が九分と失望が一分です。ここでは真正の拷問は行なわれていないのでしょう。自白しなければ責め殺すのもやむなし――ではなく、末長く虐めて愉しむのです。
 司祭様が、それぞれの手足に枷を嵌めていきます。胴の下には鎖につながれた鉄板を敷いて、浅く曲げた鉄棒を反対側からお腹の上に載せ、ボルトで留めました。
「犯した罪によっては、さらに祝福を追加するときもある」
 院長様が胸の十字架を外して、ピッショーネの股間に突き立てました。
「ありがとうございます、院長様」
 ピッショーネの声は、本気で悦んでいるように聞こえました。
 院長様は十字架をしばらく抜き差ししてから、その部分をピッショーネの口に挿れました。彼女は熱心に、まるで男根に対するように舐めて、みずから零した滴りで汚れた十字架を綺麗にしました。
「もちろん、もっと厳しい祝福もある」
 司祭様も十字架を外しました。それを手に持って。
 バチャン!
「きひいいっ……!」
 細い鎖で割れ目を叩きました。
「乳首に祝福を与えることもあるし、尻穴を清めることもある。それは――おまえが入院の誓願をしてから、自身の身体で知れば良かろう」
 また、外へ引き出されました。もう必要はないと思ったのか、ただ飽きてしまったのか、お継母様は乳首で引き回すのをやめてしまいました。鎖すら引っ張ってくれません。私は自分の意思で歩かなければならないのです。駄々をこねてみようかなとも思いましたが、先々にも愉しみ(並みの娘なら恐怖)が待っているに違いないので、せめて股間の鎖の強烈な刺激を堪能しながら、素直に歩みます。
 しばらくは退屈でした。畑や畜舎の見学です。それぞれ数人ずつの修道女が、さほどの屈託も無さそうに働いています。ありふれた農村の光景です。全員が素裸という点を除けば。いえ、訂正します。二人だけは拷責――ここでは祝福と言うのですね。明らかにそれと分かる装具を身に着けて、つらそうに身体を動かしていました。
 奴隷労働を監督する役目の人は見当たりませんでした。決められた課業を達成できなければ連帯責任で祝福を与えられるのか、これを悦びとするまでに仕込まれているのか、それは分かりません。いずれ身を以て知ることになるのですから、もっと興味のあることに関心を向けます。
 それは年齢です。いちばん若い修道女は、私より一つかせいぜい二つくらい下です。それより若いと、殿方の淫欲をそそらないのでしょうか。それとも、この施虐院の過酷な祝福に耐えられないからでしょうか。いずれにせよ、院長様(あるいはお客様たち)は、それなりの節度をお持ちらしいです。
 誰しも今よりは若くなれないのですから、ほんとうに関心があるのは『上限』です。ざっと見たところでは三十半ば、せいぜい四十手前でしょうか。化粧も無しで、乳房やお尻の弛みも隠せないのですから、小娘の見立ても、そうは外していないでしょう。
 お継母様のよう幸運に恵まれなくても……二十年から先のことなど、今から気に病んでも仕方のないことです。
 退屈な見学が続いた後には、久しぶりの官能が待っていました。
 礼拝堂へ連れて行かれて。
「おまえには、これくらいは虐めてやらんと引導を渡してやれぬだろうて」
 手枷と首輪を外されました。何がこれくらいなのか、どきどきします。
 院長様と司祭様が、衣服をすべて脱ぎ去りました。年配の院長様も勃起させています。お若い司祭様はいうに及ばずです。うわあ、そっちです。
 あれ、でも……?
 お二人は向かい合って床に座りました。互いに、相手の左の太腿に右足を乗せて、さらににじり寄りました。
 ああ、そうか。二本の男根が並んで(年齢相応の角度で)勃っています。
 お二人は細長い袋を男根にかぶせて、その上から油のようなものを垂らしました。
「娼婦の技を見せてもらおう」
 お安い御用です――とも言えません。前後の穴を同時に使っていただくことに異存はありません(むしろ大歓迎です)が、奇妙な仕掛が薄気味悪いです。
「あの……それは、何なのでしょうか?」
 司祭様が不思議そうな顔をしました。
「娼婦のくせに知らんのか」
「いや、娼婦だから知らんのだろう。そうそう使い心地の良い物ではないからな。客が怒る」
 院長様が教えてくださったところによると――これは羊の腸だそうです。これをかぶせていれば、子種が女の穴に入るのを防げる。つまり妊娠の心配が無いのです。油を垂らしたのは、ごわごわした袋の滑りを良くするためだとか。
 それと、もう一点。事前にお尻の中を綺麗にしておかなくても良いのです。少なくとも、殿方に不都合はありません。
 納得はしましたけれど、使い心地が悪いというのが気がかりです。張形には張形の良さがあるのですから、生身と張形の中間みたいなこれが良くないとも思えません。悪いというのは、殿方のほうです。快感を犠牲にしてまで女と媾合う意味が分かりません。私の気持ちまで重くなります。
 でも、久しぶりの媾合いです。お継母様の眼の前だからといって、ためらいはありません。かつてどころか今でさえ、お継母様は被虐修道女そのもののようですから。同類の先輩です。
 では、気を取り直して……そこで、二本を同時に挿入しなければならないと、気づきました。木馬の背中に生えた木の棒ならまだしも、肉の棒はどんなに硬くても動いてしまいます。うまく出来るでしょうか。
 どちらをどちらへ挿れろとは、言われませんでした。それなら、天を衝いている司祭様が後ろです。それだけ硬いでしょうから。お偉い院長様にお尻を向けて礼を失する恐れもありません。
 私はお二方を跨いで中腰になり、背中から右手をまわして司祭様の怒張を握りました。腰を沈めていって、お尻の穴にあてがいます。同時に、左手で院長様を女の穴へ導きます。
「うんっ……」
 穴のまわりから力を抜いて、さらに腰を沈めました。
 ずぶっ……にゅるん……
「あはああっ……」
 油の滑りが良く効いて、至極簡単に嵌まりました。ひと月以上も御無沙汰していた感触です。愉悦の吐息が漏れました。
 この形では、お二方が下から突き上げるのは難しいでしょう。私が動かなくては。でも、すぐには動けませんでした。これまでずっと傍観者だったお継母様が、“V”字形の貞操帯(でしょうか?)を抜き取ったのです。赤く絖った割れ目と、それを取り巻く……極端に細長い繁みです。娼婦みたいに手入れをなさっているのでしょう。そういえば――それくらいはちっともたいしたことではないように思えるくらいに衝撃の連続でしたので、目にしても心が動くどころではありませんでしたが。修道女も様々に手入れをして(されて?)いました。狭く短く刈り込んだ股間もありましたし、無毛もありました。そこに焼鏝の跡も。さすがに消えない焼印は見かけませんでしたけれど。
「私の失礼には、後ほど祝福をお与えください」
 後で罰してくださいという意味でしょう。お継母様は院長様の頭を跨いで、私の眼前に股間を突き付けました。
「二本だけだと、お口が寂しいでしょ」
 何を求められているかは明白です。娼館で経験も積んでいます。でも、でも……相手はお継母様です。血のつながりがないとはいえ、母として十五年に渡って接してた人なのです。
「厭です……いえ、あの……畏れ多いです」
 拒否の言葉に、ためらいと譲歩が交じってしまいます。
「儂からも命じる。ファジャーノに奉仕せよ」
 院長様までが、当然のようにけしかけます。
「神よ。この淫売に祝福を与え給え」
「きひいっ……」
 司祭様が、私の女の芽をつねりました。莢を剥いて雌しべに爪を立ててひねくります。
「儂からも祝福を与えよう」
 院長様が二つの乳首を同じようにつねって、思い切り引き伸ばしました。
「くううううっ……痛い!」
 私は歯を食い縛って、甘い激痛に酔い痴れました。ところが、私が降参しないうちに三つの突起から指が離れました。
「ああっ……もっと虐めて、いえ、祝福を……」
「ならば、ファジャーノに奉仕せよ」
 私は禁忌の念をかなぐり捨てて、目の前の割れ目に接吻をしました。
「みずから祝福を求めるとは……まったく、いつもとは逆ですな」
 司祭様の声には苦笑いが混じっています。ええ、そうですとも。私は並みの娘とは正反対で――虐められると悦ぶのです。でも、あなた方は、そういうふうに修道女を仕込もうとしているのではないですか。
 余計なことを考えただけ、奉仕がおろそかになっていたようです。お継母様がじれたように私を叱ります。
「子供の遊びではありません。もっと真剣になりなさい」
 院長様が乳首を軽く摘まんで、すぐに指を離します。司祭様が女の芽をくすぐります。こんなじれったい愛撫は厭です。もっと鮮烈な激痛を……
 私は割れ目にかぶりついて、本気で奉仕を始めました。割れ目の縁を何度も舐めて、内側の花弁を甘噛みして、鼻まで割れ目にうずめて舌をうんと伸ばして、女の穴を掻き回します。女の芽を虐めれば簡単なのですが、装身具の留め金で蓋をされています。
「ああっ……上手だわ。いったい、どこまで仕込まれているのかしら。淫らな娘ね」
 かつては、そう蔑まれることに恥辱を感じていましたが、今では誉め言葉にしか聞こえません。三か月の娼婦生活で仕込まれたすべてで、お継母様を追い上げてみせます。
 ずちゅうう、ずぞぞぞ……花弁が震えるように息を吸ったり、穴を膨らますように吹き込んだり、また啜り込んだり。
 私の熱心さを愛でて、院長様も司祭様も祝福を与えてくださいます。
「きひいいいいっ……痛い……」
 わざと悲鳴を上げます。それで、お継母様の割れ目も震えるのです。
「いい加減で腰を遣わんか」
 女の芽を引っ張られました。腰を浮かすと、乳首を下へ引っ張られます。それで腰を落として、縮れ毛で肌が擦れるまで深く咥え込みます。こんなふうに支配され操られるのが、私には似合っています。でも、じきに――突起を引っ張られて動いているのか、突起で指を引っ張っているのか分からなくなって、どんどん動きが速くなっていきます。
 お継母様も私の頭を押さえこんで、股間に密着させてくださいます。
 羊の腸の袋のせいで、殿方は射精の気配もありません。私が先頭に立って坂を駆け登り、同時にお継母様を引き上げている。でも、お継母様は遅れ気味です。
 そして、とうとう。私だけが目もくらむ断崖絶壁から宙に身を投げたのです。
 ほんとうに性の狂宴を愉しむつもりなら、私を余韻に浸らせたりせずに、いっそうの祝福を与えてくださるのでしょうけれど……お継母様は身を引いて、院長様は私を横へ突き飛ばしました。
「さて……この娘は、もはや見習を経ずとも誓願をする資格を有しておる」
 院長様が身繕いをしながらおっしゃいます。
「されど、そこまでの例外を認めるのもよろしからぬ。よって、ただいまより明後日の夕刻までを見習として遇する。そして爾後を『内省の夜』とする」
 『内省の夜』とは何なのかは誰も教えてくれませんが、見習の意味は直ちに我が身で知りました。
 裏庭へ連れ出されて井戸水(聖別されているそうです)で身体の汚れ――主にお尻まわりを清められて。フランカと同じような姿にされました。腕を背中高く捩じ上げられて、掌を合わせた形で縛られたのです。指も一本ずつを紐で縛られました。丸い革の袋に詰め物をした猿轡を噛まされ、革紐で頬を縊られました。これでフランカと同じになりましたが、私にはさらなる苦行が追加されました。
 まず、乳房の根元を首から垂らした縄でぎちぎちに縛られました。お継母様に比べると同じ乳房という言葉を使うのが恥ずかしくなるくらいですが、形としてはお継母様より美しかった膨らみが、小さな鞠みたいに無様になりました。縄はそのまま下へ向かい、大きな結び瘤が作られて、それが割れ目に埋め込まれました。お尻をくぐって縄が引き上げられ、二の腕の高さで左右に分けられ、乳房を外へ引っ張ります。
「これが、おまえに与える十字架だ」
 そう見えなくもないのでしょう。
 私としては十字架よりも、背中で手を祈りの形に捻られているせいで、肩が脱臼しそうなくらいに痛いです。
 まさしく苦行の姿で、礼拝堂に付属する告解室へ入れられました。硬い丸椅子に座ると、ますます縄が股間に食い込んできます。お尻の穴も擦られます。苦痛が増して、垂れる蜜も濃くなってきます。
 私と向かい合うのは司祭様。顔を隠す仕切などありません。代わりに小机がふたりを隔てています。
「ここで暮らせばすぐに分かることだが、いちおう説明はしておこう」
 修道院の成り立ちについて、ひと通りの説明をしてくださいました。
 在籍している修道女は見習のフランカを含めて十九人。私で二十人になる予定です。これに対して殿方は八人。院長様(司教様です)と司祭様と二名の助祭様。そして雑用を兼ねた衛兵が四人。
 売春宿にしては大きいな――くらいに思っていたら、大間違いでした。歩いて半時間と掛からないところに小さな村があって、そこの数少ない村人は、すべて修道院が雇っているのだそうです。そこは、修道院を訪れる賓客の従者が宿泊する場所でもあります。娼館にこそこそ通うのではなく、護衛兵と小姓や小間使い、人によっては料理人まで引き連れて、堂々の訪問あるいは視察だそうです。滞在も数日に渡ります。『踊る花の館』とは桁が違います。
 その賓客ですが。基本的には、この修道院の庇護者と援助者(どう違うのかは教えてもらえませんでした)、ときにはその貴顕たちからの紹介者だそうです。身元はしっかりしています。
 だから、院内の様子は絶対に壁の外には(配下の村も含めて)知られないだけの配慮が払われています。万一にも修道女が脱走しようものなら、たとえ近衛騎士団を動員してでも探し出して、即時の密殺です。
 さいわいに、そういった不祥事は創設以来三十六年間、一度も起きていないそうですが――私にはどうでも良いことです。それよりも。王侯貴族や大商人であれば変な病に罹っていないでしょうから、とても安心です。
 ここまでは雑談めいたお話でした。司祭様も四角四面に座ってばかりではおられずに、私の背後から身をかぶせて乳房を弄ったり、縦に股間を割っている縄を揺すったりして、遊んでくださいました。先程は、引導を渡されたのは私だけで、院長様も司祭様も埒を明けておられませんから、そのせいかもしれません。
 けれど、講義といいますか本格的な勉強(?)が始まると、司祭様が席を立つことはなくなりました。
 最初に教わったのは、この修道院に名を冠している聖エウフェミア様の殉教についてでした。
 彼女は異教の神への供物を拒んで投獄され、十九日にも及ぶ拷問にも屈さず信仰を捨てませんでした。その様子を写した絵画を見せられ、微に入り細を穿つった説明もいただきました。爪を剥ぎ指を折り女性器まで破壊するという、アンブラで私か受けた拷問など児戯に類する凄まじいものでした。最期は闘技場の中で異教の群衆の見世物にされながら、熊に強されて絶命したそうです。
 そんな彼女を、私は羨ましいとは思いません。死刑の恐怖から救出されたとき――実は私を非公式に解放するための狂言だったと、今では理解していますが――私はすこしだけ変わったのです。死んだり不具になったりしない程度に末長く虐めていただくのがいちばんの幸せではないかと。
 聖エウフェミア様の事績の次は聖書の勉強です。小机に巻物が展げられましたが、私には読めません。同じ文字を使い綴りも似ていますが、聖なる言語を理解できるのは聖職者と一部の学者だけです。司祭様は巻物の文字を読み下しながら、順に翻訳してくださいました。そして、適宜に注釈とか解説を補ってくださったのですが……まさに、目から鱗が落ちる驚天動地の思いになりました。
 聖書の始めの方に、アダムとイブの息子たちが妻を得る話があります。
「神はアダムを造り給い、その肋骨から伴侶たるイブを造り給うた。他には人間をお造りになっていない。では、二人の間に産まれた息子たちは、どこから妻を娶ったのだろうか」
 そんなことは考えたこともありません。
「答はここに書いてある」
 巻物の中ほどが開かれました。アダムとイブの息子たちは、彼らの姉妹と結ばれたのだそうです!
 教会の教えでは、近親姦は殺人にも匹敵する罪です。それを全人間の始祖が犯していたなんて。世界の表と裏、上と下がひっくり返ったような衝撃です。
 でも、世界の始まりにはアダムとイブしか居なかったのですから……筋道立てて考えれば、そうとしかなりません。
 司祭様は別の巻物を展げて、追い打ちを掛けてきます。
 すべての動物がひとつがいずつしか生き延びなかったノアの方舟も同じこと。それどころか、ソドムに降り注ぐ硫黄の火から逃れて山に隠れた父娘は――娘が父を酒に酔わせて、みずから父に乗ったのです。
 茫然自失です。何が正しいか分からなくなりました。並みの娘なら、女は男から苦痛を与えられることこそ真の悦びだと説かれれば、そのまま受け容れるかもしれません。
 でも、私はそこまで自己を見失いません。苦痛が悦びなのではなく、女を苦しめることで淫らな悦びに浸る男を得て、自分がその男にとって肋骨以上の存在であると実感できる。それが女の悦びなのです。すくなくとも私は、そうなのだと思っています。
 肩の痛みも乳房を搾る縄も股間への食い込みも忘れてしまうほどの衝撃の裡に、この日の勉強は終わりました。
 見習修道女の装いのまま寮へ連れ戻されて、そこで縄をほどいてもらえました。
「おまえは見習の身であるから、神の御前に一切を曝し出しておれ」
 全裸のままで過ごせという意味です。フランカも私と同じ姿です。
 すぐに夕食の時刻になりました。寮の横にある粗末な厨房で、当番の修道女が作った食事です。
 寝台の敷布に小さな布が重ねられて、そこに皿が置かれます。修道女は床に跪いて――囚人なら当たり前の手掴みではなく、きちんと食器を使って食べます。私とフランカ、そして過酷な祝福の傷で静養していた鶉(クワーギア)さんの三人だけは全裸で、残りの十二人は肩衣を着けたままです。
 私を含めて二十人にまったく満たないのは――あの広い拷問の間で泣き叫んでいるか、それが終わって賓客の豪勢な食事のご相伴(彼女の食卓は床だと思います)に与っているかのどちらかに決まっています。
 娼売が出来る十七人のうち十二人もがお茶を引くなんて、大赤字もいいところと思いましたが、すぐに考え違いに気づきました。『踊る花の館』でも、娼婦の身体を傷付けるような遊びをするお客からは数日から一週間分の花代を取っていました。ここの賓客はそういう遊びをする人ばかりでしょうから、これ以上は娼婦(ではありませんでした。修道女)の身が保たないでしょう。
 清貧を旨とする修道院(というのが、ここでも当てはまるかすこぶる怪しいですが)にしては、この食事は豪勢ではないのはもちろんですが、貧しくない平民の食卓よりは豊かなくらいです。ほとんどが自家製ですから、とても新鮮です。
 考えようによっては、何年も拷問ではなく祝福に耐える体力を維持して、しかも嗜虐者の眼鏡に適う女体でなければならないのですから、少しくらいの贅沢は必然でしょう。
 食事が終わって、皆で後片付けをして。部屋の隅の蓋付きの桶で用を済ませて。就寝前のお祈りも済ませました。これまでの生涯でも十指に入る波乱万丈の一日も、ようやく終わろうとしています。私は疲れ果てた気分です。


継母の嗜虐愛

 でも、まだ続きがありました。

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 なのです。修道院での第1日はまだ続きます。
 ちなみに、1本場の章題を英訳すると……MamMother Strange Love by Stanley Kublic になります?
 でもって、2本場は『三位一体の日』です。
 父と娘と性隷の3Pです。
 1本場と2本場は「賞味期限付」にしますので、お見逃し無きよう。
bound nun



テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Progress Report 6:公女巡虐


盗賊への拷問

 あまり派手にやらかすと、役人も本気で取り締まるようになるので、じゅうぶんに気をつけていたつもりです。こちらの狙い目を感づかれないために、娼館帰りを狙うのは新月の前後に限らず、小雨の日も張り込んだりしました。高額な盗品を売りさばくときは、アンブラの故買屋だけでなく、アガータやブロンゾにまで出向きます。王都は警備が厳しいので近づきませんが、その北東(アガータからは南東)にあるギアダまで遠征することだってあります。美人局の場所も一回ずつ変えました。乞食や浮浪者まで含めれば五千人以上が防壁の中に住んでいる街ですから、尻尾をつかまれることもないだろうと楽観していたのですが、思わぬ見落としがありました。私娼です。
 その日は、中央の広場に近いあたりで網を張っていました。広場の一画には、常に数人の私娼がたむろしています。そこは避けて、これから女を買いに行こうとする、あるいはめぼしい女を見つけられずに引き返す男を狙ったのです。十年後はどうか分かりませんが、今の私なら簡単に客を捕まえられます。
 では、なぜ素直に娼売をしないかというと、ひとつにはせいぜい二百ラーメという相場です。しかも、安物買いをするような連中は、どんな病気を持っているか知れたものではありません。でも私の都合は、大きな理由ではありません。盗賊団を名乗るペピーノたちの自尊心を傷つけたくなかったのです。私としても、食べるに困らず小金で欲望を満たそうという連中の鼻を明かしてやりたい――貴族令嬢とは真反対の地に立っていました。
 さっそくに鴨が来ます。スカートを片方、太腿のあたりまでたくし上げて。
「ご主人様、私を買ってください」
 場末の私娼は、もっと蓮っ葉な物言いをしますが、若さを純朴と卑屈に置き換えて、こんなふうに誘います。この鴨も、ころりと引っ掛かりました。
「幾らだい?」
「できますなら一グロッソで」
 この三か月で十回『狩り』に出て、獲物は六人。六人とも値切ってきたのですが、今日の鴨は、すっと金袋を取り出しました。
 しめた――と、ガイオが物陰から飛び出して、私を鴨に向かって突き飛ばしながら金袋をひったくりました。
「きゃああっ!」
 鴨に抱き着いて、一緒に転びます。鴨は慌てて、私を突き飛ばし……ません。逆に、私を抱き締めてきました。
「わああっ! どけよ!」
 ガイオの叫び声。そちらを振り向くと、四、五人の人影が行く手をふさいでいました。
 ガイオはその一人に肩からぶち当たって、転びはしたもののすぐに立ち上がり、一目散に逃げて行きます。人影はガイオを追い掛けようとはせず、私を取り囲みました。
「へへん。捕まえたよ。小娘のくせに、とんだ悪党だね」
 私は鴨と思っていた男の手で石畳に押さえつけられて、縄で後ろ手に縛られました。
 何が起こっているのか、理解できません。とんだドジを踏んだということだけは分かっています。
「おれらの娼売を荒らしやがって。役人に突き出してやる」
 前々から目をつけられていて、罠に掛かったようです。
「ごめんなさい。もう二度と、こんなことはしません」
 謝るだけでは赦してもらえないのは分かっています。とっさに考えて。
「これからは、皆さんと同じ稼ぎをさせてください。もらったお金は、全部差し上げます」
 返事は、脇腹への痛烈な蹴り込みでした。
「てめえのほうが稼げると自惚れてるんだろ。役人に突き出す前に、ちっとばかり焼きをいれてやろうか」
「おい、ちょっと待て」
「なんだよ。おれらに意見しようってのかい。紐のくせに」
「そうじゃねえよ」
 私を捕まえた男が、顔を近づけてじっと見つめます。
「ここじゃ分からねえ。もっと明るいところ……あそこだ」
 男は私を引きずり起こして、広場の中央へ引っ張ります。
 私はされるがままです。救けを求めても、やって来るのは夜警の下役人でしょう。ガイオが聞きつけて戻ってきたら、大人にちかい腕力があっても、これだけの人数には適いません。おそらく、この男は短剣くらい隠しているでしょうし。
 広場の中央にある小さな人造の池。その水面に顔を近づけさせられました。月明かりが反射して、私の顔が浮かび上がっているはずです。
 男が、あらためて私の顔を観察して。
「長い金髪ってだけじゃねえ。年恰好も、聞いてる通りだ。こいつは……餓鬼どもを束ねて掻っ払いをさせてる女だぜ」
 うまく立ち回っていたつもりです。街では噂にも立っていないはずです。でも、裏の社会ではそうでなかったのかもしれません。もしかしたら、ペピーノたちが知らないだけで、盗っ人にも職人組合があって、そちらではここ三か月の荒らしぶりを不愉快に思っていたのかもしれません。
 こうなったら観念しましょう。一生を幽閉されて過ごすのも、致し方ありません。
 この三か月で慣れていた蓮っ葉な物言いを、淑女のそれに改めて。
「私が悪事に身を染めているのは、焉むに止まれぬ事情があっての故です。私はラメーズ伯爵、マッキ・コルレアーニの長女です。ラメーズに使いを遣ってください。十分な恩賞を与えられるでしょう」
 池の中へ蹴り落されました。
「うわっ……ぷ?!」
 慌てて立ち上がろうとしましたが、スカートが足に絡みついて、手は縛られていますから、上体を起こすのさえ困難です。藻掻いていると、髪の毛をつかんで引き起こされました。
「正気に還ったか?」
「嘘ではありま……」
 また水に沈められました。
「たわ言を真に受けて命を落とすほど、こちとらも馬鹿じゃないぜ」
 まあ……苦し紛れのその場しのぎと思われても当然でしょう。真実であれば、下手をすると誘拐犯と断じられかねない。そうも考えるでしょう。この男を説得するのは諦めます。役人なら半信半疑、いえ、わずかでも疑義が生じれば、問い合わせくらいはしてくれるでしょう。ラメーズまで早馬で使いを出して、真偽の確認に誰かがやって来る。それまでの数日間は囚人と同様に扱われるかもしれませんけれど。
 私はずぶ濡れのまま引き立てられて、夜警の詰め所へ連れて行かれて。また縄付のまま歩かされて、倉庫が立ち並ぶ一画に設けられた牢獄へ入れられました。
 どうせ取り調べは明るくなってからです。下っ端の牢番に訴えたところで、さっきの男と同じ結果になるでしょう。然るべき役人に申し開きをします。
 縄はほどかれましたが、乾いた衣服は与えられませんでした。ずぶ濡れのままでいると、どんどん身体が冷えてきます。さいわいに独房でしたので、鉄格子の向こうから他の囚人に見られてはいますけれど、素裸になりました。衣類は絞って鉄格子に干して。身体を丸めて一夜を明かしました。これが冬だったら凍え死んでいたことでしょう。

 明け方の冷え込みで目を覚ましました。牢に入れられて衣服も着られず、裸でうずくまっているというのに眠りこけるとは、私も図太くなったものです。
 もう乾いたかしら――と、鉄格子を見ると。そこに掛けておいたはずなのに、見当たりません。牢内にも。盗まれたのかもしれません。でも、誰に?
 他の囚人から手が届くはずもないし。
「誰かいませんか?」
 小声で呼ばわってみましたが。
「うるせえ。牢番に言いつけるぞ」
 その牢番が来ないのは、眠りこけているからでしょう。大声を出せば、寝起きの不機嫌でやって来るかもしれませんが、得策ではありません。向こうから来てくれるまで待ちます。
 身体が冷えれば、小水も近くなります。牢獄の奥には、砂を半分ほど入れた小さな桶が準備されています。まわりの囚人が目を覚まさないうちに済ませておきます。朽縄も枯葉も無いので不潔ですけれど。
 徐々に牢獄の中が明るくなって、全体の様子がはっきり見えるようになりました。
 たったひとつしかない扉の向かい側の壁は、街の防壁そのもののようです。牢獄自体の壁は三方。その壁に沿って、十四個の独房がびっしりと並べられています。真ん中は広く開けられて、おどろおどろしい拷問道具が置かれています。防壁の部分にも、囚人を拘束する鉄枷や鉄鎖が植え込まれています。
 防壁の天井に近いあたりには、鉄格子を嵌めた明り取りの穴が四か所あります。その小窓から見える空がすっかり青くなってから。牢番がやって来て、がんがんと鉄格子を叩いて回ります。そして、黴の臭いのする小さな固いパンとを三つと小さな桶を差し入れます。桶には泥臭い水が満たされています。
「新入りに言っとくが、これが一日分だからな」
「あの……ここに掛けていた私の服をご存じないでしょうか?」
 牢番は私の裸身を眺めながら、にたりと嗤いました。
「囚人には余計な物をもたせちゃいけないからな。没収したぜ」
「濡れたから乾かしていただけです。返してください」
 牢番は肩をすくめて背を向けました。
「どうせ、拷問のときは素っ裸に剥くんだ。手間が省けるってもんだぜ」
 まわりの囚人たちも、含み笑いのような吐息を漏らしました。
 あらためて、彼らの様子を観察します。男が三人と女が一人。男は襤褸布のような衣服を身にまとっていますが、女は腰布一枚です。女は私の倍までは行っていない、おそらく三十前でしょう。その裸身は、鞭傷や痣で埋め尽くされています。私は戦慄しました。全身が冷たく重たい鉛のように感じられます……けれど、その内奥に灼熱した石炭がぽつんと生じて。じわじわと鉛を熔かしていく感覚も、たしかに存在するのです。けれど。娼館での折檻で、懲りているはずです。罪人への拷問は、それ以上に凄まじいでしょう。一粒の砂糖を圧し潰す塩の山です。
 牢番くらいでは話にならないと判断して。尋問までは騒ぎ立てないことにしました。
 ――食事が配られてから一時間も経った頃、ついにその時が訪れました。
 黒い長衣に身を包み頭に四角い布の帽子を頂いた役人が、三人の拷問吏を引き連れて牢獄に姿を現わしたのです。なぜ後ろの三人が拷問吏と分かるかというと。
 素肌に革の胴衣という出で立ちよりも。目と口だけを出した黒い頭巾で顔を隠しているからです。拷問を受けた囚人が釈放されたら、その囚人が善良な民ではなく悪党の一味だったとしたら。拷問吏に復讐を企んでもおかしくはありません。顔を知られるのは、拷問吏にはきわめて不都合なのです。それは役人も同じでしょうが、彼は護衛も無しで外を歩いたりはしません。
「そこの官吏に物申します」
 私は立ち上がって、淑女に許される範囲で声を張りました。もちろん、両手で要所を隠す仕種も忘れません。
 場違いな物言いに、役人が私を振り返ります。
「私は、ラメーズ伯爵、マッキ・コルレアーニの長女、エレナです。悪党に拐わかされ、よんどころない仕儀にて売笑婦の真似事をせざるを得ず、それゆえに投獄さました。罪は賠償金にて償います。至急、ラメーズへ遣いを出してください。裁判所の命じる賠償金と併せて、あなたにも多大な恩賞が下されるでしょう」
 役人の返事は、ただ一言でした。
「黙らせろ」
 拷問吏が一人、牢のカギを開けて入ってきました。
「私に手を触れるのを……」
 ばしん。
 頬に痛烈な平手打ちを食いました。目の前で星が飛び交い、頬が焼けるように熱くなり、耳がキインと鳴りました。痛みを感じたのは、その後でした。
 拷問吏は片手で私を羽交い絞めにして、縄を私に噛ませました。頭の後ろできつく結びます。
「あいをうう……?!」
 何をするのですか。そう詰問したくても、奇妙な呻き声にしかなりません。
「もうすこし懲らしめてやれ。後ろ手吊るしで立たせておけ」
 後ろ手に縛られて、鉄格子の外へ引き出されました。手首の縄が鉄格子のいちばん上に通されて、引き上げられます。垂れていた腕がだんだん吊り上げられ、肩が捻じられます。自然と上体が前へ倒れていきます。やがて、これ以上は身体が傾いても手首は上がらない位置にまで達して……身体が吊り上げられそうになります。つま先立ちになったところで、ようやく止めてくれました。縄尻が鉄格子に結び付けられて、私は不自然な姿勢で立ち続けねばなりません。
「女だからといって容赦はせんと教えてやる。リタを引き出せ。今日は焼鏝だ」
「いやあああああっ! あんだけ酷いことをしたのは一昨日じゃないか。まだ傷がふさがってないんだよっ!」
「だから、焼いてふさいでやろうというのだ」
「あああ……どうか、お赦しください!」
「白状するか?」
「あたしじゃない。金庫の開け方だって知らないんだ!」
 リタという女が訴えている間にも。彼女は枠に簀子を張っただけの寝台のような物に、鎖と枷でYの字形に俯せで拘束されました。その横では火桶に石炭がくべられ、鞴で白熱させられています。先端が平たくなった鉄棒が、何本も火桶に突っ込まれました。
「やめてください! 死んじゃうよ!」
「安心しろ、死にはせん。いや、醜い引き攣れなども残らん。あまり深く焼いては、かえって痛みを感じぬからな」
「俺たちだって、醜い女にゃ勃つ物も勃たねえや」
 拷問吏のひとりがうそぶきました。
「できれば、こっちの伯爵令嬢は肌がきれいなうちに……」
 びしっ!
 役人が手にしている鞭で拷問吏をたたきました。
「余計なことを言うな。叱られるのは儂だぞ」
 役人は鞭を灼熱した鉄棒に持ち替えて、私に近寄りました。
「どうせ、おまえは貴族が物事をどのように考えるから知らんだろうから、教えておいてやる」
 鉄棒の先を、私の折れ曲がった上体すれすれに近づけます。熱気で肌がチリチリします。
「もしも、おまえが詐称する通りの身分だったとしよう。それでも、ラメーズ伯爵だったかな。彼は問い合わせを受けても否定するに決まっている」
 娘が娼婦に堕ちているなど、家門の名誉を木っ端微塵に粉砕するほどの不祥事。爵位を剥奪されかねない。娘は見殺しにするしかない。隠密裏に解決しようとしても、アンブラ子爵に致命的な弱みを握られるのは避けられない。しかもラメーズ家とアンブラ家は、それほど友好的な関係にはない。
 言われてみれば、至極当然のことです。私は自分可愛さのあまり、そんなことも見えていなかったのです。身分がばれれば連れ戻されて、一生を幽閉されて過ごさねばならない。そのことだけしか考えていなかったのです。
「つまりだ。儂が上に報告すれば、囚人のたわ言を真に受けた大馬鹿者。まかり間違って、ほんとうに使者など立てようものなら、免職で済めば行幸。儂が投獄されかねんわ」
 私が切札と信じていたのは、ただの鉋屑だったのです。
「だから、もうつまらぬことは言わずに、殊勝に罪を認めて――仲間の居場所も白状することだな。そうしたら、おまえだけは命を救けてやってもいいぞ」
 つまり、ペピーノもガイオも、もしかしたら若い衆も……死刑。
 あまりの衝撃に、否定の身振りすら忘れていたと気づいたのは、リタへの焼鏝による拷問が始まってからでした。この役人は、私を捕らえた男の申し立て――美人局だけではなく、子供たちを使った盗賊団の女頭目だという申し立てを信じている。少なくとも疑いを持っているのです。
 拷問吏のひとりが灼熱した鉄棒を持って、リタの横に立ちました。役人は、みずからの手は汚さない主義のようです。
「金庫から金を盗んだのは、おまえだな?」
「違います! あたしじゃない。奥様は、あたしだって決めつけてるけど……あたしが憎いからなんです!」
「それは何度も聞いた。なぜ、奥方はおまえを憎んでいるんだ」
「それは……」
 役人が拷問吏を振り返ると、拷問吏は鉄棒の焼け具合を見てから頷きました。先端の平たい部分も、すでに陽の明かりの中では黒くなっています。
「やれ」
 鉄棒の平たい部分がリタのお尻に押し当てられて……じゅっと肉の焼ける音と煙が上がって。
「ぎゃあああっ……!」
 悲鳴が途切れるよりも早く、鉄棒が肌から離れました。細長い四角がお尻に刻まれています。きっと、ひどい火傷が残ります。きれいな肌に戻るという役人の言葉は信じられません。
「次……」
「待って、待ってください。言います……あたしが旦那様に可愛がっていただいてるのを、奥様がお知りになったんです。だから……」
「なんと。不義密通を働いておったのか。これは斬首ではすまんな。罪を償う十字架に磔けて火焙りだ」
 この言葉は、いっそう私を打ちのめしました。三か月間の娼婦暮らしは、それだけでも火刑に値するのです。
「もっとも……主人の金を盗んだと白状するなら、新たな罪の自白は聞かなかったことにしてやっても良いぞ?」
「…………」
「しゃべりたくないのか。ならば、そうしてやろう」
 別の拷問吏が襤褸布を持って来て、リタの口に押しこみました。布の端を頭の後ろで結んで、吐き出せないようにしました。
「自白したくなっても出来ない。これは、どんな拷問よりも苦しいぞ」
 私に向かって言っています。こんなふうに脅されれば、実際に拷問される前に白状してしまう者もいるでしょう。
 でも、それが目的なのかと――疑念が生じました。望む通りの自白をさせて、次の囚人の尋問に取り掛かったほうが手っ取り早いのではないでしょうか。
 私は顔を上げて、役人の目を直視しました。とたんに、鉛の中で立ち消えそうになっていた石炭が、かあっと熾りました。彼の目はぎらついていたのです。毒蛇や蝦蟇の瞬きしない冷たい瞳ではなく、ブルーノ様と同じような、群衆がニナに向けたと同じような、嗜虐の眼差し。
 もしかすると、私は……妄想の中にしかなかった被虐に、今まさに直面しているのでしょうか。自身の命を代償として。
 リタの反対側のお尻に二本目の鉄棒が押し当てられて、くぐもった悲鳴が牢獄を満たしました。
「そう言えば、こっちの娘は面白い趣味をしておるな。いささかむさ苦しくなってはおるが」
 役人の視線は、私の股間に向けられています。
 下生えを剃るなんて、まともな女性はけっしてしません。淫らです。なので、私は気に入ってしまって、その必要が無くなった今でも、十日に一度くらいは剃っていたのです。
「火焙りだけは免罪してやっても良いが、相応の償いはさせてやろう」
 枠と簀子の寝台の端に付いている大きな車輪を拷問吏が回すと、寝台も一緒に回って――リタは仰向けにされました。
「これは拷問ではなく贖罪だからな」
 我慢できないといった残忍で好色な(ブルーノ様とそっくりな)表情を浮かべて、役人が焼鏝を握りました。
「む゙ゔゔっ……ま゙め゙え゙え゙!」
 これまでと違って、焼鏝の平たい部分は真っ赤に灼けています。
 役人は、押し付けるのではなく平たい部分を肌に滑らせました。じゅうっと肉の焼ける音がして、ぱっと縮れ毛が燃え上がりました。
「ま゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
 耳をふさぎたくなります。でも……私もあんなふうにされたら。腰の奥深くに埋没した石炭が、鉛を熔かし始めます。焼鏝の火桶よりも、もっと熱くなっています。
 役人は焼鏝を数度、下腹部の丘に滑らせてから、ようやく火桶に戻しました。すでに縮れ毛は燃え尽きて、一昨日の拷問で傷ついている肌の上には黒い燃え滓が散らばるばかりです。
 リタは口の詰め物を引き抜かれると、嗚咽しながら自白を始めました。
「もう、焼鏝は厭です……火焙りもお赦しください。旦那様の金庫からお金を盗んだのは、あたしです」
「しかし、鍵が掛かっておったはずだぞ。どうやって開けたのだ?」
「それは……」
 リタは途方に暮れた目で役人を見上げました。
 この人は犯人じゃない。私は直感しました。罪を認めたのですから、金庫の開け方を隠す必要は無いはずです。実は開け方を知らない――犯人ではないと考えるのが、筋道が通っています。
「もしかすると、鍵は掛かっていなかったのかな?」
「そうです。旦那様が鍵を掛け忘れて……それで、出来心が湧いたのです」
 役人が満足そうに頷きました。
「なるほど。では、傷が癒えてから、あらためて尋問しよう。今と寸分違わぬ供述をすれば良し。さもなくば、一切は嘘ということだから、さらに拷問をしてくれるぞ」
「あああっ……そんな非道な!」
 リタは泣き崩れました。
 拷問吏は心を動かされた様子もなく、火傷の部分に泥のような(おそらく)膏薬を塗ってから、リタを独房へ戻しました。
 それから、私を拷問の場に引き出したのです。
 私はいったん手首の縄を解かれて、あらためて天井の滑車から垂れる鎖に吊るされました。さらに、左右の離れた位置にある滑車で両足を吊り上げられました。Vの字の真ん中を上体が真っ直ぐに立てられている――まるで下向きの矢印です。
 もしも鞭打ちなら、この形では股間ばかりを責められます。九尾鞭でしょうか。もっと残酷な鞭でしょうか。
 そうではありませんでした。
「ウーゴ。きれいな肌のうちに愉しんでおきたいと言っておったな」
「えへへ……聞き流してやっておくんなさい」
 これから残虐な拷問を始めようという雰囲気ではありません。
「おまえらは、良く働いてくれておる。褒美として望みを叶えてやるぞ」
「へ……?」
「このような形で女を吊るしたのは、そのためだ。ただし、並みの形で犯すのではないぞ。罪人への懲らしめだということを忘れるな」
 拷問吏たちが三人、頭を寄せ合って何事か相談を始めて。ウーゴと呼ばれた男と、いちばん図体の大きな男とがズボンを脱ぎました。大男は身体に比例して、怒張もウーゴの五割増しくらいはありそうです。
「あまり気乗りはしねえが、マゼッティ様のご命令とあっちゃ仕方ねえ。嬢ちゃんよ、ちいっと我慢しな」
 唾を吐いて男根にまぶすと――私を後ろから抱えるようにして蕾のほうへ突き挿れてきました。
「ん゙む゙ゔゔゔーっ!」
 娼館では、こちらを所望されるお客様もいらっしゃいましたが、こんなに太いのは初めてです。みちみちと穴の縁が軋みます。初めてここを犯されたときよりも、熱くて痛いです。その熱で、腰の奥の鉛がさらに熔かされていきます。
 大男が挿入し終えると、ウーゴの番です。大男が腰を沈めて、私を引き下げます。腕を鎖で吊られたままなので、肩に痛みが奔ります。そこへ突き挿れてきます。別種の苦痛を与えられながら犯されるなんて、初めてだと思います。
「む゙み゙い゙い゙い゙……!」
 ウーゴが腰を突き上げるようにして抽挿を始めました。肩の痛みと蕾の灼熱に苛まれながら、局所的な快感が芽吹いてきます。女の芽を虐めてもらわなくても、穴だけで感じるように、娼館での三か月で徐々に仕込まれています。苦痛と快感とが綯い交ぜになる感覚は、久しぶりです。
 でも、それは長く続きませんでした。ウーゴが果ててしまったのです。大男は私を抱えるだけで腰を遣わなかったので、蕾はまだ張り裂けそうな痛みに苛まれてます。
 ウーゴの後を、すぐに三人目が埋めました。彼も動こうとはしません。
「んんっ……?」
 ずぬううっと引き抜かれる感触があって、お尻が楽になりました。物足りないなんて感じている場合ではないです。そして、予想していなかった凄まじい責めが始まりました。
 すでに埋まっている穴に、大男が背後から割り込もうとするのです。
「む゙い゙、む゙い゙……ま゙あ゙あ゙あ゙っ!」
 とうてい挿入るはずがないです。それでも、しつこく突き上げてきます。とうとう、私の腰をつかみ直して、前後左右にゆすりながら、私を押し下げようとします。肩がびききっと攣って、穴がみしみし軋みます。
 ついに、ずぶっと突き抜ける激痛が奔りました。
 大男は、ますます力を込めて、私を揺すぶります。ずぐぅ……ずぐぅ……小刻みに押し挿ってきます。そして、とうとう、根元まで挿入ってしまいました。お尻に彼の縮れ毛が擦れます。これまで味わったことのない膨満感です。
「はああ……」
 思わず息を吐きました。でも、ほんとうの責めは、ここから始まったのです。二人が同時に腰を遣い始めました。限界を超えて押し広げられた穴が軋み、激痛がうねくります。それなのに、膨満感が充足感にすり替わっていきます。熔けた鉛が腰の奥を灼きます。
 いっそ、蕾まで三人目に貫かれたら……それは体位として不可能ですが、せめて張形を突っ込んで欲しい。そんなことをされれば、穴も蕾も壊されてしまうかもしれないというのに……本気で願ってしまうのです。
「あ゙え゙っ……! む゙ゔゔゔゔゔゔっ!」
 呆れたことに、私は雲を突き抜けて宙に放り出されたのでした。

 余韻に浸る贅沢など与えられず。ついに拷問が始まりました。
 今度は天上の滑車を使って、鉄格子の前で吊られていたのと同じ姿にされました。つま先立ちではなく、足は床から浮いています。全体重が、捻じ上げられた肩に掛かります。
 役人のマセッティが、私の肌に横から目を近づけて、ためつすがめつします。
「ふうむ……九尾鞭か」
 驚きを通り越して、ぞっとしました。娼館で受けた折檻の鞭傷の痕は、ほとんど残っていません。明るい陽の下で目を近づけて透かし見るようにすると、肌の色と区別がつかないくらいの薄い筋が見えます。鞭に編み込まれた鉤による短い木の枝のような傷痕は、それがあると知っていなければ見分けられません。それを薄暗い牢獄の中で、こうも正確に見破るとは。
「おまえは、いったい何をしたのだ?」
「私が拐わかされて売り飛ばされた先は娼館でした。酷い扱いを受けて逃げようとしたのですが、捕まって折檻されました」
 もっともらしい嘘を考える暇も無く、事実を曖昧に答えるしか思いつきませんでした。
「ふむ。だから、二本挿しも愉しんでおったのか」
 気を遣ることをそう言うのなら、たしかにそうでしょう。
「娼館を摘発するのは儂の役儀ではない。しかし、苛酷な折檻を受けたという事実は考慮せねばならんな」
 どういう意味なのでしょう。
「さて……まだ、おまえの名前すら訊いていなかったな」
「ダリアです」
 本名のエレナは、すでに名乗って否定されていましたから、娼館での名前を答えました。
「どこのダリアだ? 親の名前は?」
「ラメーズです。父はデチモ、母はザイラ。姉のジーナは伯爵家の女中です」
 後で同じことを聞き返されても間違えないよう、侍女の家族を騙りました。
「ふむ、伯爵家にな……ジルド。娘の胸の裡を探れ」
 いちばんの大男が私の背後に覆いかぶさるようにして、双つの乳房を握りました。太い指を食い込ませながら、ぎりぎりと握り潰しにかかります。
「くううう……」
 巨漢だけあって、凄まじい力です。乳房がひしゃげ、紫色に染まっていきます。体重をのし掛けられているので、肩が抜けそうです。
「名前は、なんといったかな?」
「ダリアです」
 乳房が左右反対向きに捻じられていきます。このまま捥ぎ取られるのではないかと恐怖するほどの激痛です。
「親兄弟の名前は? 父親の職業は?」
「デチモ、ザイラ、ジーナ……父はやはり伯爵家に仕えていましたが隠居して、代わりに姉が奉公しています」
「うむ」
 マセッティが頷くと、ジルドは手を放してくれました。
「おまえは通りすがりの男に、金を対価に股を開くともちかけて、情夫にその財布をひったくらせたそうだが――そやつの名前はなんという?」
 これは、答えてはいけません。職業や住処に嘘を重ねていくうちに、必ず見破られるでしょう。
 私が沈黙を続けていると、マセッティが含み笑いを漏らしました。
「初っ端から愉しませてくれるな。ウーゴ、鞭の用意を」
 ウーゴが房鞭を持って、私の横に立ちました。
 私は、ほっとしました。長く鋭い一本鞭でも、殺人の凶器にもなる九尾鞭でもありません。
 ウーゴは鞭を垂らしたまま、打つ気配がありません。ジルドが横合いから腰をつかみました。そのまま引っ張ります。
「いくぜ、兄貴」
 掛け声とともに、ぶん回しながら突き放しました!
 牢獄の壁が斜めに走ります。肩にいっそうの激痛が奔ります。私は独楽のように回されながら振り子のように揺られているのです。
 視界の片隅でウーゴが鞭を振りかぶって。
 しゅっ、バッジイイン!
「きひいいっ……!」
 脇腹に当たっただけですが、拳骨で殴られたような衝撃でした。回転しながら揺られている勢いで、みずから鞭を迎えに行く形になったのもありますが、やはり腕なのでしょう。毎日のように拷問を繰り返している男の鞭は、娼館のへなちょこ野郎とは大違いです。
 しゅっ、バッジイイン!
「ぎゃはあっ……!」
 しゅっ、バッジイイン!
「あうっ……!」
 しゅっ、バッジイイン!
「ひいいいっ……!」
 乳房、お尻、太腿、背中、お腹……所かまわず滅多打ちです。打たれる部位ごとに悲鳴が強弱高低長短さまざまに変化します。
 生きた心地もありませんが、それなのに、いつの間にか腰の奥の鉛はすっかり熔けて、ぐつぐつと煮え滾っています。
 お遊びでも躾でもない、ずっと憧れてきた本物の拷問を受けているという想いが、鞭の激痛を切なく甘美なものに変えてくれます。
 しゅっ、バッジイイン!
「きひいっ……あ、あああ……」
 しゅっ、バッジイイン!
「あああっ……はああん……」
 悲鳴に吐息が混じるだけでなく、いっそうの被虐を求めて、拷問吏を挑発するような言葉まで口にしていました。
「言うもんですか! 命を懸けても、私の情夫(おとこ)は守り抜きます!」
 至福が全身を貫きました。身体を張って命を懸けて、愛しい男を庇う。なんて素敵な悲劇なのでしょう。ペピーノやガイオを、そんなに愛しく想っていのかしら――疑問は蹴飛ばしてやります。ふたりとも、私が男にしてやったのですから。
「やめろ」
 マセッティが苛立った声で命じました。ぴたっと鞭が焉んで。正面に回り込んだジルドが、まだ揺れている私のお腹に拳を突き入れました。
「ごぶふっ……うえええ!」
 お腹が破裂したような衝撃。私は口から苦い水をあふれさせました。
 私は床に下ろされ、剥き出しの防壁の手前に据えられている椅子のところへ連れて行かれました。間近にみると、拷問のためだけに拵えられた椅子です。
 肘掛にも背もたれにも座面にも、短い針が植えられています。そんなに沢山ではありませんが、それがかえって恐ろしいです。座れば、針は確実に肌を貫くでしょう。身体の各部を拘束するための鉄枷と革帯がいたるところに取り付けられています。
 それよりも不気味なのは、座面から屹立した金属の棒です。先端は細く丸められていて、根元も細くなっています。先端から三分の一くらいのところがもっとも膨らんでいて、ジルドの怒張よりも太いでしょう。なぜ、そんな比較を連想したかというと――その椅子に座れば、ちょうど女の穴の位置になるだろうからです。男は女より大柄ですから、お尻の蕾が真上に来るでしょう。
「ふふん。娼婦だけあって、察しがいいな」
 マセッティが、初めて私の肌に触れました。股間に掌を当てて、指を三本まとめて挿れてきたのです。その指を中で閉じたり開いたりします。
「締まりは良いほうだな。しかし、こいつには敵うまいぞ――カルロ」
 ウーゴとジルドの陰に隠れている感じの三人目の拷問吏はカルロというらしいです。彼は腰を屈めて、拷問椅子の横にある小さな環を回しました。
「…………?!」
 座面の棒が三つに割れて、花弁のように開いていきます。中には芯棒が通っていて、そこから梃子で花弁を押し出しているのです。もしも、この椅子に座らされて女の穴にこの棒を挿れられて……
 足が震えて立っていられなくなり、思わず椅子の肘掛に手を突いて――チクッと痛みを感じて、あわてて手を引きました。
「座れ」
 マセッティが冷酷に言います。いえ、愉しんでいる声音です。
 あああ……この椅子に座らされて、再び立ち上がることは出来るのでしょうか。いえ、この仕掛が開いたまま無理やりに立ち上がらされたら、確実に女の機能は破壊されます。頭に靄が掛かって、一瞬ごとに濃くなっていきます。
 それを逡巡と見て取るのが普通でしょう。カルロが正面に立って私の手首をつかみました。ウーゴとジルドが、両側から私を抱え上げます。私は椅子の真上に運ばれて、閉じた金属の花弁に向かって下ろされていきます。
 花弁の先端が女の割れ目を押し開きます。私は左右に揺すぶられて、花弁の先端が穴に嵌まり込みました。
「くっ……」
 ちょっと挿入っただけで、つっかえます。ウーゴとジルドはさらに激しく私を揺すって、強引に沈めていきます。
「くううう……痛い!」
 みちみちと穴が押し広げられていくのが、強まる苦痛で分かります。
「へえええ、驚いたね。やめてくれって泣き叫ばなかったのは、この娘がはじめてだぜ。それに、手を振りほどこうともしない」
「黙っておれ。小娘をつけあがらせるだけだ」
 マセッティに叱られて。三人は無言で職務を果たします。
 閉じた花弁の最も太い部分が穴に収まると、あとはむしろ呑み込むようにして挿入っていきます。そして、お尻から太腿に掛けて鋭い痛みが突き刺さってきます。
 つぷっ、つぷっ……と、針が肌を突き通していく感触が、痛いよりも気味悪いです。
 そうして、ついに。私は拷問椅子に深々と座らされました。分厚い革帯が腰を巻き首を絞めます。うんと開脚した形で太腿も拘束されました。鉄枷が手首と足首を針に押し付けます。
 次は、いよいよ……私の中で閉じている花弁が開花するのでしょう。それとも鞭打ちでしょうか。苦痛に身悶えれば、全身に突き刺さっている針が肉を引き裂きます。
 どちらでもありませんでした。鉄板の両端を脚で支えた台が、胸元に差し込まれました。鉄板で乳房を下から持ち上げる高さに、台が調整されました。さらに、同じ大きさの鉄板が乳房の上に載せられて、四隅が太いボルトで下の鉄板とつながれました。
「さて。おまえの情夫の名前を教えてくれぬかな?」
「…………」
 私は沈黙を貫きます。
 この二枚の鉄板がどのように私を苛むか、およその見当はつきます。これまで想像したこともない、ちょっとでも似た体験もしていない――まったく新しい苦痛でしょう。恐怖に心を塗り潰されながらも、腰の奥では鉛が煮え滾っています。
「指で回せ」
 ウーゴとジルドが、ゆっくりと四本のボルトを指で摘まんで回していきます。それにつれて乳房が圧迫されて――痛みが生じます。乳房は平らに押し潰されていき、それにつれて痛みも強くなってきます。
「く……」
 呻き声を漏らしたときには、乳房は膨らまし損ねたパンみたいに潰れていました。
「これ以上は回せませんです」
 ウーゴが手を放すと、ジルドも倣いました。
「では、ボルト回しを」
 細長い棒です。先端は平たくて、ボルトの頭を型抜きしたような穴が開いています。
「指で回す百倍の力で締め付けられるぞ」
「…………」
「強情な娘だな。よろしい、質問を変えよう。おまえは、どこに住んでいる?」
 何を訊かれても沈黙で答えるのみです。堤防は水漏れが始まれば、じきに決壊するのです。
「二回転」
 マセッティの短い言葉に続いて、ボルトがゆっくりと回されていきます。
「ぐううう……」
 予期していたことですが。鞭打たれる爆発的な鋭い痛みとも、針を突き通されるおぞましい痛みとも、まったく違う激痛です。手で握り潰される鈍く重たい苦痛と似ているところもありますが、こんなに乳房全体が軋むほどの激痛ではありません。
「マセッティ様。おいら、手持無沙汰なんですがね?」
 カルロは、花弁を開く環に手を掛けています。
「おお、そうだったな。では、三回転だ」
 キチキチと歯車の噛み合う音が穴の縁をくすぐって、そのかすかな音からは想像もつかない凶暴な花弁が開く――のを、股間に感じます。苦痛も花開きます。
「女性器は鍛え抜いているようだな。もう三回転」
「……ぐううう」
 乳房と股間の両方を、これまでに味わったことのない激痛に咬まれて、全身に脂汗が滲みます。苦痛に身をよじることも出来ません。わずかでも身体を動かせば、椅子に植えられた針が肉を抉りります。
「自白の真実性を増すために、そろそろ猿轡を噛ませてはいかがでしょうか」
 ウーゴが進言しましたが、マセッティは不要と断じました。
「情夫の名前、隠れ家。どうせ二人きりではあるまい。最後の一人まで仲間の名前と素性を吐かせねばならん。その間、苦痛は増える一方だぞ。どうだ。白状することは幾らでもあるのだから、ひとつやふたつは教えてくれぬか」
 マセッティは私に語り掛けながら。手にしている笞の先で、わたしのおへそをくじります。どうということもないはずなのに、女の穴を犯されているような心持ちになってしまいます。
 もう、今でさえも限界を超えていると思うのに……意識を保っています。いっそ、ひと思いに責められて安らぎの中へ逃げ込みたい。そういう想いは、たしかにありました。ですが、それと同じくらいに……この男を怒らせたら、どいういことになるのか。恐怖への好奇心もありました。嘘です。極限まで虐められてみたいと思ったのです。自白させることが沢山あるのなら、殺したりはしないでしょう。
 私は顔を上げて唇だけを動かしました。
「うん……?」
 狙い通りに、彼は顔を寄せてきました。
 私は、唾を吐き掛けてやりました。
 案に相違して、彼は怒りませんでした。手の甲で唾をふき取ると、私の頬に叩きつけたのです。そして……
「悲鳴が途絶えるまで、回し続けろ」
 三人は困惑したように顔を見合わせて――結局は上役の命令に従いました。
 ぎりっ……きりっ……小刻みにボルトが捻じ込まれていきます。穴の奥で花弁が開いていきます。
「ぐうううう……!」
 私は歯を食い縛って、意地でも悲鳴を上げまいと耐え抜きます。
 そして、私は根競べに勝ったのです。
「手を止めろ」
 マセッティが溜息交じりに命令しました。
 私としては、勝利のささやかな快感よりは、安息へ逃げ込めなかった失望のほうが強いです。そして、なおも腰の奥では、被虐への想いが煮え滾っています。
「押しボルトを持ってこい」
 マセッティは、拷問を中断するのではなく、新たな責めを目論んでいるようです。
 十本ほどのボルトが、胸の上の鉄板に並べられました。鉄板同士を締め付けるボルトよりも短く細く、先端が尖っています。
 このときになって気づいたのですが、鉄板には、このボルトに合いそうな穴が二列に並んでいます。
 その穴のひとつに、マセッティが押しボルトを捻じ込みました。
 圧迫されて感覚が失せた乳房に、はっきりと鋭い痛みを感じました。鉄板の厚みを超えてボルトが捻じ込まれ、乳房を突き通そうとしているのです。
「さすがに、この傷は九尾鞭よりも深く醜く残るぞ」
 女にとっては、命を奪われるよりも、顔を傷つけられ乳房を醜く抉られるほうが、ずっと深刻です。
 ふっと、ブルーノ様の顔が浮かびました。乳房をこよなく虐めてくださったお方。ぺちゃんこに圧し潰されて醜い穴を穿たれた乳房でも、虐めてくださるのかしら――と。
 二本目のボルトが、反対側の同じ位置に捻じ込まれました。マセッティは両手にボルトの頭を摘まんで、じわじわと捻じります。
 ぶつっ、ぶつっと……ボルトが皮膚を破る激痛が乳房を揺すぶりました。
「いぎゃああああっ……!」
 その衝撃で、ついに堤防にひびが入りました。そして、一気に決壊したのです。
「痛いいたいいたい……!」
 マセッティは、なおも捻じ込んできます。ぐりっ、ぐりっと、肉が抉られまし。
「ひいいいいい……負けるもんか!」
 それがペピーノたちを庇う想いなのか、いっそうの残虐を我が身に加えてほしいからなのか、自分でも分かりません。叫んでいないと、激痛に気が狂いそうです。
「虐めてください。もっともっと……絶対にしゃべるものですか!」
 頭に真っ赤な霞が掛かってきました。激痛に苦しみながら、腰が疼いています。
 ボルトが左右の乳房に一本ずつ追加されて、全部で四本。
 マセッティが二本ずつ交互に捻じ込みます。鉄板の隙間から血がにじみます。その鉄板も、ウーゴとジルドがさらに締め付けます。花弁は、いまにも穴を引き裂きそうです。
「チッ……この娘には、まともな拷問は通用せぬな」
 舌打ちをした割りには、朦朧とした意識でも判別できるくらいに愉しそうな声です。
「これ以上の責めは、せっかくの逸材を台無しにしてしまう。いったん中止だ」
 マセッティの言葉の意味は分かりませんでしたが……私は拷問に耐え抜いたという満ち足りた気分のまま、意識を失ったのです。

 気がついたときには独房へ戻されていました。手足に鉄環を嵌められ、鎖で宙吊りにされていました。両手は開いて天井の隅に、両足は床の隅に。つまり、斜めの仰向けです。慈悲ではなくて。部屋が狭いので、水平には吊れないのでしょう。
 火酒の強い臭いがするのは、全身に塗られている泥のせいです。薬草を煎じた臭いも混じっています。そうしてみると、この膏薬はそれなりに高価なのではないでしょうか。
 さすがは、商都アンブラです。銅山を有して比較的に裕福なラメーズでも、囚人が怪我をしたときは水で洗ってやるだけと聞いています。
 リタも吊るされていましたが、両手を別々に鎖で引き上げられているだけで、膝立ちという楽な姿勢でした。自白した褒美なのかもしれません。
 弱々しい陽射しは、夕暮れが近いと告げています。すでに牢獄の中央、拷問の間には人影がありません。そして、男の人が囚われていた斜め向かいの独房が空っぽです。
 マセッティは拷問の職人ですから、誤って殺すようなヘマは打たないでしょう。裁きの場に引き出されて処罰されたのでしょう。投獄されて拷問に掛けられるような罪人は十のうち九までが死刑ですけれど。
 死刑。私もその運命に直面しているのだと、今さらながらに思い至りました。自分の身体さえ見えない触れない闇の中に放り出されたような恐怖が込み上げてきます。天も地も無い闇の中で、自身も闇に溶け込んで行くような恐怖。
 その一方で、悔いは無いという想いも兆しています。修道女、いえ伯爵令嬢として然るべき貴族と結婚したとしても。そして百年生きたとしても、けっして体験できないであろう冒険を幾つもしたのです。妹の姦計に陥って誘拐されて犯されて。娼婦として三か月を暮らして。盗賊団の姉御として三か月を過ごして。百人にちかい男たちと肌を合わせて。普通の女性なら生涯未通の穴まで開発されて。しかも、二人の童貞を奪ったのです。世の中に男女の数が同じなら、他の女性の取り分まで奪った計算になります。
 それはもちろん。人並みに子供を産み育てるという穏やかな幸せを得られなかったという未練は残りますが、贅沢というものです。波乱万丈の悲劇と穏やかな幸福とは両立しません。子供を育てるというだけなら、この三か月にちょっぴり味わいましたし(ちっとも、穏やかではなかったです)。
 そして何よりも……拷問の末に責め殺されるか、衆人環視の中を引き回されて処刑されるか。妄想さえも凌駕する被虐の死を遂げるのです。人は必ず死ななければならないのなら、恍惚の死は最大の幸福のはずです。
 それにしても、なぜ……想念は、そこで中断されました。外に通じる扉が開いて、三人のうちではいちばんの下っ端らしいカルロが入って来ました。扉のすぐ横の仕切から牢番が現われて、ぺこぺこしています。
 二人は、私の独房へ入って来ます。
 足の鎖を床から外して、私を俯せに回転させてから、天井へ吊り上げました。
「くっ……」
 背骨が逆海老に反って、みしみし軋みます。すぐに手首の鎖を床につなぎ直されたので、頭に血が下がって不快ですが、背中はすこし楽になりました。
「なんだって、こんな面倒なことをするんですかい」
 牢番は不平たらたらです。
「おまえは、まだ日が浅かったな。拷問に掛けた囚人は翌日まで宙吊り。それも一日に三度は吊り方を変えるのが、ここの決まりだぜ」
 吊って床から離しておくのは、拷問の傷に土毒が忍び込んで悪化するのを防ぐためだが、無理な姿勢を長く続けさせると鬱血が生じて手足が腐るから、適宜に吊り直すのだと――どうせ、マセッティから受け売りでしょう。
「そんでもって、これは仕事じゃなくて、おいらの趣味だがな」
 そう断わってから、牢番に手伝わせて、足の鎖を縮めました。全身がぴんと引き伸ばされて、手足に鉄環が食い込みます。肩と股の関節が軋みます。
 カルロが、床に転がっているパンを拾い上げました。
「腹が減ったろう。喉も乾いてるんじゃねえか?」
 言われたとたんに空腹と、それ以上の渇きを覚えました。朝のうちは食欲がなくて、そのまま拷問に引き出されて。夕方まで気を失っていたのですから。
「食わせてやろうか。それとも、先に水が欲しいか?」
 言葉に合わせて、鼻先にパンと水桶を近づけては遠ざけます。
 まさか、囚人に慈悲を垂れるのが、この男の趣味ではないでしょう。
「お願いです。水を飲ませてください」
 カルロの思惑に乗ってやります。しゃべるのも困難なほどに喉が渇いているのは事実なのですし。
「パンと水が欲しけりゃ、先にこっちを食べな」
 予想した通りです。カルロは膝を突いて怒張をひり出し、私の顔にぺちぺちと打ち付けます。
 口を使うなど、お安い御用です。でも、鎖に逆らって背中を反らし腕を宙で突っ張って顔を上げなければ――自らに苦痛を強いなければ、男根に届きません。それに、わずかなパンと水のために(かつてはひと晩に五グロッソも稼いでいたのに)股を開くよりも淫らな振る舞いをしなければならないなんて。私は胸を締め付けられ腰を疼かせながら、カルロを咥えました。
 無理な体勢ですから、首を動かせません。雁首を舐めまわし鈴口を舌先でつつき、唇を震わせて亀頭を刺激しました。
「売女だけあって、すげえな。でも、おいらはこういうのが好きだぜ」
 私の頭をつかんで、激しく腰を動かし始めました。口の中をこねくられ、喉の奥を突かれます。
 早く終わってほしいとは思いませんが、売女の凄さを披露したくなって、舌も唇も動かしました。売女は蔑みの言葉ですが、なぜか誉め言葉に聞こえたのです。
 カルロはすぐに終わりました。今日は少なくとも二回目だというのに、一週間も溜め込んでいたかと思うほどの量でした。
「水が欲しけりゃ、こいつも飲めよ」
 言われるまでもありません。そんな失礼な真似をしたら、女将さんに叱られます……て、ここは娼館ではありませんでした。でも、躾けられた習性を無理に変える必要もないでしょう。
 私が厭がる風情も見せずに飲み込んだので、カルロは満足したようです。でも、まだ水は飲ませてもらえません。
「あんたもやれよ」
 牢番をけしかけます。
「いや……マセッティの旦那に叱られるから」
「ばあか。逆だよ」
 マセッティは、男女を問わず囚人をもっとも辱めるのは口淫だと信じているのだそうです。
「だから、二か月前――ああ、あんたは知らねえか。歳を偽ってるとしか見えねえ男の餓鬼がぶち込まれたときなんざ……まあ、いいや」
 マセッティは、口だけは初物に拘るそうですが、娼婦に初物もないです。それなら、下賤の者にどんどん犯させるのが、もっとも効果的だ。そういう考えなのだと、カルロは牢番を安心させます。
「それによ。旦那はけっこう臆病なんだぜ。この女は絶対に噛まないって確信するまで手――いや、チンポは出さねえんだ。おいらたちゃあ、闇夜に先頭を突っ走る損な役回りさ」
 こんな無学な輩でも反語を使うのだと、それを驚きました。
「そんじゃ、まあ……えへへ。嬢ちゃん、頼むわ」
 牢番なんて、他に使い道のなくなった老人の仕事です。この男も、五十はとっくに過ぎているでしょう。咥えてみると、カルロが骨付き肉なら、こいつは上質のパンです。味ではなく硬さを言っています。簡単に噛み千切れそうです。そんなことは、しませんけれど。
「激しく腰を遣うと、痛めかねないんでね」
 尻の下に短い丸太を敷いて腰を浮かし、太腿の上に私の肩を乗せました。
「娼売で鍛えた技で頑張ってくれや」
 首を動かせるようになったので、お望みの通りに――しゃぶって舐めて啜って、前後にしごいてやりました。それでも逝く気配を見せなかったので、雁首を歯の裏側でこすってやって、どうにか射精に漕ぎ着けました。カルロの十倍くらいは時間が掛かりましたが、けっこう私も夢中になっていたみたいです。お仕事に励んでいる間は、そんなに背骨の痛みを感じませんでしたから。
 首も顎も疲れ果て、舌も痺れて。せっかくカルロが口元にあてがってくれた水桶から水を啜るのも、思うにまかせませんでした。
「面倒くせえな」
 カルロは水を口に含んで寝そべって、口移しで飲ませてくれました。親切からの行為でないことは、舌を挿し入れてきたことでも分かります。
 さすがにパンまで口移しにはしませんでしたが。わざわざ噛み千切ってから指ごと口に挿れてくれたので、そういうのも彼の趣味なのでしょう。三つあるうち二つを食べただけで、お腹がいっぱいになりました。男汁を飲んだ後は食欲が失せるのです。それでも、苛酷な拷問に耐え抜くためにも体力をつけておこうと、頑張って三つめも食べました。
 食べ終わると、カルロは私を斜めに吊っている鎖を緩めてくれました。かえって背中は反ってしまいますが、強く引っ張られないから、差し引きではすこし楽になりました。
 その姿で、私は一夜を明かさなければならないのです。
 リタは膝立ちで吊られたまま、姿勢は変えられませんでした。鬱血の恐れがないのでしょう。
 私は、鬱血なんかどうだっていいです。鉄板に圧し潰されボルトで貫かれた乳房の傷が脳天にまで突き抜けてきますし、肌を切り裂かれはしなかったものの、全身の鞭傷も疼きます。金属の花弁で拡張された女の穴も悲鳴を上げています。
 とても眠れるものではありません。
 カルロが来る直前に湧いた疑問が、また頭をもたげます。
 なぜ、私はマセッティの残虐な拷問に胸をときめかせてとまでは言いませんが締め付けられ、腰を熱く疼かせたのでしょうか。これに比べたら、よほど生ぬるい女将さんたちの折檻には、全身が鉛になったかと思うほどに心が死んでいたのに。
 女将さんのときには、私が妄想していたよりも責めが過激で、あたかも一粒の砂糖が塩の山に圧し潰されたのだと考えたのですが。その理屈なら、今日はもっともっと心を凍てつかせていたはずなのに。
 その答を私は知っているように思います。
 目です。マセッティの目は、加虐の欲望にぎらついていました。同時に、淫欲に燃え上がっていました。ブルーノ様と、まったく同じです。
 それに対して女将さんの目は冷たくて――折檻を愉しむのではなく、それが必要であり効果的だと考えていただけです。娼売に差し支えがなければ、入手できるなら、喉を潰す毒を私に服ませていたかもしれません。文字も書けないように指を切り落とすことだって、してのけたでしょう。
 私は、加虐者の悦びを写す鏡だったのです。
 では、ニナの処罰は……群衆です。強盗や火付け人殺しのような凶悪な罪人には石を投げつけ声高に罵る彼らは、ただただニナの裸身を目で貪るばかりでした。今にして思えば、彼らの目も熱く燃えていました。処刑としての公開輪姦は、言うに及ばずです。
 そうです。性欲の対象として扱われ虐げられることに、私は悦びを見い出していたのです。なぜなら、劣る存在である女が、そのときだけは、男にとって掛け替えのない存在になれる……いえ、それはどうでしょうか。子を生むことだって、女にしか出来ません。すべての女は、すべての男にとって掛け替えのない……分からなくなってきました。こんな苦しい形で宙吊りにされ拷問の余韻に呻吟しながら、まともに考えられるはずもありません。
 今もなお腰の奥で埋もれ火が熱を発しているという事実――それが、私なのです。
 ……しばらくすると、別の疑問が浮かびました。私はなぜ、こうも平然と運命を、おそらく死刑に処せられるという間近に迫った未来を受け容れられるのかという。
 けっして、心穏やかではありません。恐怖に心が凍りつきます。けれど。取り乱す気配もありません。究極の妄想が現実になろうとしている悦び……とは違うように思います。だって、死んでしまっては、そこから先の悦びは得られませんもの。
 そういう欲望は捨てて、実現しようとしている悲劇の果実で満足しているのでしょうか。
 根を詰めて考える気力も無く、しばらくは全身の痛みに埋没していました。
 そのうちに、水を貪り飲んだ報いが訪れました。泥臭いとは思っていましたが、実際に腐っていたようです。お腹が痛いとかではなく、いきなり蕾を押し破られそうになりました。小水のほうも切迫しています。
 これまでの私でしたら、決壊してしまうまで我慢を続けていたでしょう。苦しみから悦びを得るためではなく、ただ羞恥の故にです。
 でも、今は。あっさりと努力を放棄しました。
 派手な音を立てて、前後の穴から小水と汚物が噴出しました。斜め下向きに吊られているので、生温かい汚物が背中を伝います。おぞましいという感覚はあまり無くて、楽になった心地よさに脱力しました。
 そして、第二の疑問への答が閃いたのです。
 私は犯罪者なのです。子供たちの飢えを満たすためとはいえ、盗みは犯罪です。しかも、後々に備えてとか、柔らかいパンを与えてやりたいとか、いわば贅沢のために盗みを重ねました。その首謀者は私なのです。拷問されるのも当然なら、処刑されるのも当然なのです。
 つまり、十のうち十まで、私が悪いのです。マセッティ様は清廉潔白。職務としての拷問に『愉しみ』を交えても非難されるべきではありません。厭々お仕事をするよりは、愉しみながらのほうが良いに決まっています。
 私はマセッティ様に愉しんでいただきながら、安心して(?)泣き叫んでいれば良いのです。そう簡単に悲鳴を上げたり、まして慈悲なんか乞いませんけど。
 考えがまとまって心が落ち着いたのでしょう。いつの間にか私は、浅い微睡みに痛みを憩わせていました。

 翌日は朝一番に、全身に水をぶっ掛けられて汚れを洗い流されました。牢屋の床は良く考えられて作られています。水はわずかな傾斜に沿って部屋の中央へ流れ、そこからは浅い溝で防壁まで導かれて、せいぜい鼠が出入りできるくらいの小窓から外へ流れ出るのです。
 後始末の後は、宙吊りにされたまま一日を過ごしました。カルロが言っていた通り、早朝と正午と夕暮れとに、吊り方を変えられました。
 午前中は右手と右足、左手と左足を一緒に括られて直角以上に開脚させられ、V字形に。
 午後は手足四本を背中でひとまとめに括られて、一本の鎖で吊るされました。手足は伸び切り、腰も背骨も逆海老に折れ曲がって、拷問椅子よりも苦しいくらいでした。
 夜になって、いったんは床に下ろされ手足も自由にしてもらって、自分の手でパンを食べました。水はやはり変な臭いがしたので、喉を潤すだけにとどめました。
 わずかに人がましい扱いを受けた後、ごく普通に頭上で両手を縛られて真っ直ぐに吊るされたときは、これでようやく休めると安堵したものです。
 この日は、私は土毒(そんなものがあればですが)から絶縁されて宙吊りで過ごしただけですが、牢獄ではいろんなことがありました。
 一人残っていた男の囚人が、老婆殺しを自白したのです。女の私には痛さも恐ろしさも実感できない拷問でした。
 先端が四本の鋭い爪になっていて、途中が丸く膨れている大きな鋏のような器具で、男根と玉袋をひと掴みにされたのです。爪は根元に食い込んでいました。
「このまま捻じ切ってしまうぞ」
 脅しではなく、実際に半回転もさせたのです。肉が引き裂かれて血まみれになりました。男は野獣のように吠えました。
 そこへマセッティ様が猫撫で声で囁いたのです。
「強盗と殺人でも死刑とは決まっておらんぞ。悔い改めて、二度とアンブラに近づかぬと誓うなら、百鞭と三日晒しだけで済むように、儂が裁判官に嘆願してやるぞ?」
 この言葉で、男は落ちました。
 冷静に考えれば、平民の中級役人の言葉を騎士階級の裁判官が容れるはずもありません。だからマセッティ様も嘆願してやるとしか言わなかったのです。
 午後早くに三人の新たな囚人が連れて来られましたが、拷問の仕掛でさんざん脅しつけられ、重罪犯(私とリタのことです)への過酷な扱いを遠目に見せつけられてから、外へ連れ去られました。
 ここには牢獄が二つあるのです。ひとつは、拷問道具を揃えた重罪犯の独房。もうひとつは広さは同じくらいですが、男女別に仕切られただけの雑居房です。
 雑居房には、常に四、五人の男女が入れられているそうです。周辺の村と合わせてもアンブラの領民は二万人くらいでしょう。ラメーズは半分くらいですが、囚人の数は滅多に十人を下回らないと聞いた覚えがあります。
 だからといって、ラメーズのほうが治安が悪いとは言えません。銅山は伯爵家の直轄ですから、職人組合がありません。組合なら内々で処理する小さな罪を犯した者まで厳格に処罰されるという事情もあります。
 政治向きの話は、女には興味がありません。身近な出来事が大切です。
 リタがいきなり釈放されたことは、私にも大きな喜びでした。訴えが取り下げられたのだそうです。彼女が不貞を働いていたのはその雇い主でしたし、彼女を訴えたのはその妻らしいです。拷問の様子でも、彼女は(盗みに関しては)無実のように思えました。奥さんが冷静になったか、旦那様に叱られたか、彼を謝らせたか――そういうことなのでしょう。
 とにかく。重罪犯の牢獄には、私ひとりだけになったのです。偶然かもしれませんが、マセッティが意図的に仕組んだような気がしないでもありません。むくつけき男を拷問するよりも、簡単に嘘の罪まで認めるような女よりも、若いくせに強情な娘を甚振るほうが、彼の好みに合うでしょうから。
 どんな残酷な拷問をされるか、そしてマセッティがどれほど興奮するか。私は、冷たくて重たい鉛と化した身体の内奥に石炭を赤く熾しながら、牢獄での二夜目を過ごしたのでした。吊りからは解放されても、マセッティの『格別の慈悲』で、五つの穴がある板枷に手足を拘束されて、膝を曲げてうずくまった姿勢で。真ん中の穴には首を嵌めるのでしょうが、板枷が床に着いているときには、真正面から股間を嬲るのに好都合です。牢番も三人の拷問吏も、可愛がってくれませんでしたけれど。

 入牢して三日目も、拷問はされませんでした。水を全身に浴びせられて、まだこびりついている膏薬を洗い流されてから板枷を外されて、両手は鉄格子から鎖で吊り上げられましたが、足を投げ出して座っていられる高さでした。それではお行儀が悪い――男の目を愉しませないのではないかと考えて、横座りで過ごしました。忘れたのかわざとなのか、汚物入れの桶は壁際に放置されたままでした。立ち上がって身体を斜めにしながら足を伸ばせば届くのですが、引き寄せるのは難しく、倒してしまったら悲惨なことになりますから、使いませんでした。どうせ、水を浴びせてもらえます。
 四日目には、新しい重罪犯が投獄されたのですが。マセッティは昼から夕方まで拷問を続けて、あっさりと白状させてしまいました。そうしてみると、やはりマセッティは、軽罪犯への尋問とかいった『雑務』を片付けてから、私への拷問に専念するつもりなのです。
 そして五日目。怯えながらも心待ちにしていた拷問が始まりました。その日の朝は水は飲ませてもらえましたが、食事を与えられませんでした。腐りかけの水にもすこしは慣れて、お腹をくだしたりはしなくなっています。けれど、パンを与えてもらえなかった理由が、恐ろしいものでした。
「せっかく食った物を吐き出しちゃもったいないだろ」
 お腹を殴られるのでしょうか。それとも水責めにされて、大量の水を吐くことになるのでしょうか。
 まったく違いました。
 リタが焼鏝で責められたときと同じ、骨格だけの寝台に、鎖と枷で仰向けに拘束されました。リタのときは手を広げて脚は閉じたYの字形でしたが、私はX字形です。
「痛いばかりが拷問ではないぞ」
 三人の拷問吏が私を取り囲みました。両手に小さな刷毛を持っています。腋の下や足の裏をくすぐり始めました。
 くすぐったくて、身をよじります。
 筆は腋の下から二の腕。足の裏から内腿へと進んでは、また元に戻ります。拷問で受けた傷の上を刷毛先がくすぐると、痛いような痒いような感覚が混じって、いっそうくすぐったく感じます。
「くふっ……あっ……」
 どうしても声が漏れてしまいます。悲鳴には程遠い、およそ場違いな高い声です。
 どうせ、刷毛は三点の突起と割れ目に集中するのだろうと予測していましたが、なかなかそこまで到達しません。
「あっ……んんん」
 ついに乳房の麓をくすぐられたときは、蕩けるような声になってしまいました。
 乳房と腋の下、割れ目の花弁と太腿。六本の刷毛が忙しく、けれど繊細に動きまわります。これまでに男から受けたどんな愛撫よりも、ピエトロでさえ足元にも及ばないような、繊細さとしつこさです。
 私は乳首も女の芽も触れられていないというのに、穴にも挿入どころか刺激すらされていないというのに――快楽の坂をじりじりと押し上げられていきます。
「もう……もう……」
 赦してではありません。焦らさないでと訴えたいのです。言葉にしないのは、私が悦んでこの責め(?)を受けているとは思われたくないからです。どうせ、いつかは刷毛先が頂点に達するでしょう。焦らされれば焦らされるだけ、快感は爆発的になるはずです。
「何かしゃべる気になったかな?」
 マセッティの冷酷な声。もしも私が沈黙を貫けば、刷毛は私の身体から遠ざかるのでしょう。けれど、快感を得たいがために仲間を売るなんて真似は絶対にしません。私は、そこまで愚かではありあません。
「そうか……」
 刷毛の動きは止まりませんでした。それどころか、今度はあっさりと三つの頂点を攻略してくれたのです。
「あああっ……すご……何か来る……お、墜ちちゃう……!」
 私は全身を反り返らせました。手足に鉄枷が食い込んできますが、その痛みさえスパイスです。
 私の身体も魂も宙に浮いて、それでも刷毛先は執拗に私を責め続けます。
「あああああ……もう……いやああああ!」
 反語を絶叫した瞬間、不意に刷毛が消え去りました。と同時に。
 ひゅん、バチイン!
 ひゅん、バチイン!
 ひゅん、バチイン!
 三点に激痛が奔りました。
「いぎゃあああああっ……!」
 笞で打たれたのです。
 宙を彷徨っていた私は、文字通りに叩き落されました。高く昇っていただけに、落下の勢いは凄まじく、どれだけ落ちても地面にぶつかりません。無限の奈落をどこまでも落ちていく……それは、凄絶な快感でした。
 ひゅん、バチイン!
 ひゅん、バチイン!
 ひゅん、バチイン!
 さらに笞を叩き込まれます。乳房を太腿を股間を滅多打ちにされて、ようやく私は地面に叩きつけられました。
「仲間の名前を言うだけでいいのだぞ?」
 私は顔をそむけました。顎をつかんで引き戻されます。
 反射的に――というのは嘘で、くすぐるよりも残酷な拷問をされたくて、マセッティの顔を目掛けて唾を吐いたのですが、予期していたらしく簡単にかわされました。
 刷毛の愛撫による快感は凄まじいのですが、砂糖を練り込んで膨らませ過ぎたお菓子に感じられます。ふわふわしていて、物足りないのです。硬く焼けすぎていても、骨付き肉が好きです。噛んでいるうちに香ばしい肉汁が口いっぱいに拡がります。
 マセッティが身を引くと、今度は三本の刷毛によるくすぐりが再開されました。同時に、私が昂ぶりを示すと笞も襲い掛かります。さっきよりも軽い打擲です。私にしてみれば荒々しい愛撫と変わりありません。
 じきに三本の笞は三人の片手に替わりました。乳房を握り潰しながら乳首をくすぐる。穴をこねくりながら芽を愛撫する。苦痛と快感とが、まったく同時です。私はさっきよりも高く押し上げられていきます。
 これは拷問なのだろうかという疑問が、朦朧とした意識の中に生じました。最高の快楽を与えられているのですから。それとも、絶頂からさらに高みへと押し上げ続けられれば、いずれは極限の苦痛に変じるのでしょうか。鞭打たれて悦ぶのと正反対ですが、逆転という意味ではまったく同じです。
 結局、そんな逆転は起こらずに、私はどんどん高く押し上げられて行って、また突き落とされて。今度は一本鞭で全身を鞣し上げられました。
「しぶとい小娘だ。ここまでとする」
 正午を告げる鐘の音が聞こえてくると、マセッティは拷問の終了を宣しました。おそらく、三時間は責め続けられていたと思います。
 マセッティと三人の部下が牢獄を去り、私は拷問台に磔けられたまま、地べたに叩きつけられた、その余韻にたゆたいます。
 ――けれど。マセッティが「ここまで」と言ったのは、午前の拷問は、という意味でした。晩春の長い陽が傾く前に、四人は戻ってきました。
 私は三つ穴の板枷で、肘を曲げた両手を顔の高さに固定されました。そして、四本の脚で支えられた三角形の材木の前に立たされました。
 大人の胴まわりほどもある材木は鉋で整形されています。稜線は、ちょうど仔馬の背中くらいの高さです。首のない木馬といった趣です。ですが、楔のような稜線から垂れているどす黒い血痕が、これは遊具ではなく拷問台だと、雄弁に語っています。
 ウーゴとジルドが二人がかりで私を抱えあげて、木馬を跨がせました。
「痛いいっ……!」
 割れ目の奥まで切り裂かれるような激痛に、私は悲鳴を上げました。
 腰を浮かそうにも、足は宙に浮いています。もがいたら、板枷の重みで身体が傾いて転げ落ちそうになって、太腿で木馬を挟みつけて立て直しました。ますます稜線が食い込んできます。
 午前中のお遊びみたいな拷問どころか、初日に座らされた拷問椅子よりも遥かに激越で鋭い痛みです。腰の奥が熱くなるどころではないです。それなのに……胸は苦しみや悲しみとは違う感情に締め付けられています。
 魂の喜悦とでもいうのでしょうか。囚人を残虐に拷問することに悦びと興奮を覚えるマセッティの手で虐められている。彼の悦びが、私の魂に写し出されているのです。
 もっともっと虐めてください。もう厭だと私が本気で泣き叫ぶまで、手を触れずともあなたが射精してしまうほどに、残虐に嬲って弄んで甚振ってください。
 もとより、マセッティ様はそのおつもりでした。マセッティ様が直々に房鞭を手に私の横に立たれ、ジルドは彼の体格に似つかわしい木の大鎚を持って木馬の真後ろに立ちました。
 ぶゅん、バッヂイイン!
「ひぎいいいっ……!」
 たかが房鞭に悲鳴を上げたのではありません。背中を打たれて、反射的にのけぞって、股間を稜線に押し付けてしまったのです。
 ぶゅん、バッヂイイン!
「きゃああっ……!」
 ゴンンッ!
「がはあっっ……!」
 鈍い衝撃と鋭い痛みとがひとつになって、脳天まで突き抜けました。ジルドが大木槌で木馬の端を叩いたのです。
「きひいいい……」
 これは肉まで切り裂かれたでしょう。こんなことを繰り返されては、女の道具が壊されてしまいます。マセッティ様は、口さえ使えれば他には用が無いのでしょうか。
 さらに十発ばかり、背中から腰にかけて鞭打たれ、木槌も二回木馬を揺すぶりました。そこでようやく、マセッティ様が後ろへ下がりました。
 これで赦されるのだと、ほっとしました。残酷に虐めていただきたいと思っていても、加虐者が満足してくだされば、それ以上に責められたいとは思わない――そうとでも自分の心を推し量るしかない、不思議な感情です。
 でもマセッティ様は、ちっとも満足なさっていませんでした。
 火桶が持ち出されて、石炭に火が点じられました。鞴の風で、たちまち白熱します。
「これのために、尻は無傷で残しておいたのだからな」
 無傷でなんか、あるものですか。今日は責められていなくても、五日前の拷問椅子で穴だらけにされた傷は癒えていません。
 リタのときと同じように、火桶から引き抜いた焼鏝を宙ですこし冷まして、赤味が消えてからお尻に近づけます。押し付けられる前から、熱気で肌がチリチリします。
「動くなよ。火傷が広がると、瘢痕が残るぞ」
 そんなこと、どうでもいです。瘢痕になるより先に処刑されるでしょう。
 ジュッッ……!
「ぐうううっ……」
 お尻に灼熱が襲い掛かったと同時に、股間にも激痛が走りました。反射的に腰を跳ねたのだと思います。
 焼鏝はすぐに肌から離されましたが、凄まじい熱痛は、そこに居座っています。
 ジュッッ……!
 太腿も焼かれました。今度は事前に全身の筋肉を引き締めていたので、股間の激痛だけはまぬがれました。
 三回四回とお尻に焼鏝が押し付けられましたが、もう冷めているのでしょう。最初ほどの灼熱は感じませんでした。
「あああ……」
 悲鳴の余韻に快感が……いえ、快い感覚ではありません。充足感といえば近いでしょうか。虐められて苦しんでいる私を見てマセッティ様が悦んでいるという、それ。ひどく惨めですが、そんな私を私が憐れんでいるのです。
 マセッティ様は二本目の焼鏝に替えて、木馬の反対側に移りました。そして、まだ焼かれていないお尻と太腿にも火傷を与えてくださったのです。
「これほど責めても、白状もせず赦しも乞わず……強情にも程がある」
 嘆きと怒りの言葉ですが、深い満足の響きを、私は聞き取りました。
「焼印を持って来い」
 カルロが鉄棒を何本も抱えて来て、一本ずつを私に見せつけてから火桶に挿します。鏡文字です。
 13、17、666、ladr、prst、pcct、oscn。アルファベットは、母音を足してやれば――泥棒(ladro)、娼婦(prostituta)、罪人(peccatore)、淫乱(osceno)と読めます。他にも該当する単語はありますが、私に恥辱を与えるという目的なら、これしかないはずです。
「これは、ひと撫ででは済まさんぞ。主の御前に立つときもくっきりと残るように、肌の奥の肉まで焼き付けてやる」
 あああ……死体になってまで恥辱が続くのです。それを享受できる私は消滅しているというのに。私は心の底から震え上がりました。
「今日のところは、取りやめても良いぞ」
「…………」
 それでも、ペピーノとガイオを売ることは出来ません。子供たちを路頭に迷わすなんて、擦り切れかけている良心でさえも許さないでしょう。
「何もしゃべる必要はないぞ。しゃべれなくなるのだから」
 私は三角の木馬から降ろされて、床に跪かされました。木枷は外されましたが、すぐに後ろへ手を捻じられて小さな板枷を嵌められました。
 マセッティ様はズボンをずり下げて、萎びた男根を私の顔に突き付けます。裸の若い娘を目の前にして、お好みの嗜虐も堪能されたというのに……侮辱です。
「どうすれば良いか、分かっているな」
 元娼婦に愚問です。私は根元まで咥えました。舐め回し、舌先でつつき、歯に唇をかぶせてしごきます。すこしは大きくなりましたが、あまり硬くないです。頭がくらくらしても堪えて前後に揺すり続けても、効き目がありません。
 ペピーノやガイオなら続けて相手に出来るくらいの時間を掛けても、進展はありません。顎が疲れてきました。目まいがして気分が悪くなりかけています。もしかすると、マセッティ様は不能なのでしょうか。まだ白髪も生えていないというのに。
「出すぞ。しっかり飲め。こぼせば焼印だぞ」
 え……だって?
 じょろろろろ……口中に水があふれます。なんということを!
 娼婦を蔑んで便器と呼ぶ男もいますが、マセッティ様は文字通りに私を便器にしているのです。
「んん……ぐふ……」
 飲むしかありません。小水独特の饐えた臭いはしないです。でも、しょっぱいのとも苦いのともちがうえぐみがあります。なによりも、排泄物を飲まされているという屈辱感が強いです。でも、これでマセッティ様が満足されるのなら……腰の奥が、きゅうんとよじれます。
 飲み終わって頭を引こうとしたら、髪の毛をつかんで引き戻されました。何もしていないのに、口の中で男根が怒張します。といっても、せいぜいペピーノくらいです。成人男性としては「稍小」です。
 マセッティ様は腰を遣わず、私の頭を激しく揺さぶります。
「んぐ……むうううう」
 髪を引っ張られて痛いです。馬車に揺られるより気分が悪いです。それでも、出来る限りは舌を動かして、マセッティ様の求めに応じます。
 努力の甲斐あって、今度は速やかに射精してくださいました。言われる前に、ごくんと呑み込みました。口直しです。
 今度こそ本当に満足なさったマセッティ様は、約束通り焼印は赦してくださいました。火傷には拷問吏に例の泥膏薬を塗らせて、傷口に土毒が入らないよう宙吊りにしてくださいました。
 でも、これまでと一二を争う厳しい吊り方でした。俯せにされて、独房の四隅から手足を強く引っ張られました。そして、ぴんと伸び切った背中に大きな石の板を括り付けられました。背骨が軋み、腕も脚も引き抜かれそうな苦痛です。これは、私が何か粗相をした罰なのか、ただマセッティ様のお遊びなのか、それとも穏やかに継続する拷問なのか、マセッティ様は何もおっしゃいませんでした。
 夜遅くなってから、単純な逆さ吊りに変えてもらって、ずいぶんと楽になりました。頭に血が下がって激しい頭痛と目まいに襲われますし、内臓が胸を圧迫して息苦しくなります。でも、マセッティ様は慈悲深くていらっしゃいます。両手は自由にしてくださいましたので、身体をうんと折り曲げて腿にしがみついていれば、しのげます。腕と腹筋が疲れたら、また逆さ吊りに戻れば良いのです。
 こんな状態では、いかに私が図太くても安眠はできません。逆さ吊りでとろとろっと微睡んでは苦痛に目を覚まして身体を折り曲げる。この繰り返しで翌朝を迎えたのでした。
 翌日は夜まで、様々な姿勢で宙吊りにされて。私は生まれて初めて、空中で月に一度の穢れを迎えたのでした。
========================================

  一挙3万文字です。ハイライトシーンです。しかも。
 拷問は続くよ、どこまでも~♪
 翌日からは傷を癒して。『犠牲者の恍惚』でHard Torture Again! なのであります。
 苛酷な拷問というPLOTは不変ながら、捕まるシーケンスはブッツケ大変更。こういうことを商業誌でやらかすと、大目玉なら救いがあるというもの。切られますね。ふん、こちとら同人作家だもんね。しかし。あれこれ(見当外れもあるにせよ)アドバイスをくれる担当者/編集者がいないってのは……しんどいですな。まあ、売れ行きから出来を判断するしかないです。

Wheel of terror 2
上の画像。 似たようなシーンはあるけど、ドンピシャではないです。


 これは楽屋裏の話ですが。仕出人物の名は、ちょこまか変更しています。うっかり同じ名前を使ったり、AとBは字面が似てるとか、まあ、製品版までにはきちんとします。キッチンは使わずにコンビニ弁当。
 いや、まあ。
 なお、西洋各国の人名については、こちらのサイトでお世話になっております。小説に使うのは自由という、ありがたいサイトです。
「ヨーロッパ、男性、名前」とか検索するとトップに出てきます。
 欧羅巴人名録


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『幼なマゾの契り』本日発売!

 PIXIVリクエスト第4弾です。
 サブタイトルが「闇に葬られた戦災孤児の淫虐体験」
 主人公は男の子と女の子のペア。これだけで、内容の想像はつきますね。


幼なマゾ_紹介画像


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DLsite FANZA
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今回の特記事項は、表紙絵についてはDよりも甘いFで発禁を食らったこと。
(楽天はU18御法度なので、そもそも申請していません)
まあ、全般にはFのほうが厳しいですが。
その理由が

====================
第4条(倫理規定における一般原則)
当社は、販売するコンテンツに対し、以下の通り一般原則を定めるものとします。
(1)人種、民族、あらゆる国の習慣、風俗や国民感情を尊重する
(2)民主主義の精神を尊重する
(3)基本的人権を尊重し、特定の個人や団体の名誉を傷つけるような表現はしない
(4)法と社会秩序、道徳を尊重し、法律で禁止されている行為については、肯定的表現はしない
(5)暴力、犯罪を肯定したり、軍国主義、戦争等を正当化しない
(6)身体障害者や知的障害者等の表現は極力抑制する
(7)人命を軽視しない
(8)特定の地域を中傷した表現はしない
(9)信教の自由を尊重し、これを不当に中傷、愚弄、侮蔑、憎悪したりしない
(10)宗教、宗教家、宗教儀式の尊厳を傷つけないように留意する
(11)法律上、未成年に禁じられている行為を正当化しない
(12)わいせつ物の表現は一切しない
====================
 第3条(満18歳以上対象コンテンツの判断基準)ではなく、一般原則のほうです。
 おそらく、(1)か(5)でしょう。
 進駐軍の将校(白人)が、敗戦国の子供(黄人)を性的玩具にするのが後半のメインですし、その将校はオキナワで捕虜にした兵士と女性に同じことをしたときはどうこうとか言ってますし。
 このサイトは、以前にも、作品の時代を匂わすために『オリンピック』と書いたところ、商標権がどうたらで拒否られました。これは単語を変えれば済むことですので、そうしましたけど。そんじゃなにかい。「五輪の書」もいかんのかい。古代オリンピヤードもあかんのかいと、Abdomen stands upでしたがね。なんといいますか。FANZAは海の向こうに対して
日曜Sonntagがあるように思いますな。

 これからも、自主規制という名前のメディア自信による首絞め行為が強まっていくでしょうから。発表できるサイトで発表するしかないですね。金$のウマシカ。

追伸
 最終校訂をして、伏字に換えました。
 12歳→●2歳、子供→●供、チルドレン→チル●レン
 Dサイトは逆DLして商品を(ざっと)チェックしましたが、追加の修正は無さそうです。
 駄菓子瑕疵。紹介画像など、では 幼な→○な と、なっています。体験版の表紙は伏字になっていませんが。
 これは、ある意味不思議ですね。というのは、『幼な妻甘々調教』はパスしています。「幼な妻」というのは、全体で1単語として確立しているのでしょうか。
 まあ、公開できるなら後悔はしません。


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