Progress Report 1+:寒中座禅(転がし)修業
中断前のレポート→
紆余曲折して閑話休題で。結局、書き直しです。
「座禅」は通俗表記で「坐禅」が正しいのだそうですが、だからこそ、タイトルは「座禅」にしましょう。
最初から書き直しています。
ここでは抑えて、だんだん盛り上げて――とか、計算しないでもないですが。それでは、書いていてつまらない。売れ筋(NTRとか催眠とか)無視して、書きたいものを書くという本道(?)に立ち返って。
すると、過去作と同じシーンになったりします。というか、過去作と強引に連携させてしまったり。
書き直しの冒頭部です。
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「ここは、かつて、女人禁制の修験場であった」
釈覚が奇妙なことを言いだした――と思った者は、ひとりもいない。SOSツアー客も予備知識を教えられていたし、二組のカップルも古武術研究会の会員だった。
「この石段を上がろうと試みる女は――」
急角度に立ち上がった石段を釈覚が振り返った。一段ずつの高さが五十センチほどもある。駅など公共の場の階段なら、三段飛ばしにも相当する。
「縄で胸をつぶし、股間に疑似陽根を作らねばならなかった」
疑似陽根がWディルドを意味するのなら、ツアー参加者の君島芽美には途方もない試練になると、蕾は懸念した。彼女は、まだ在校中の処女なのだ。
「さすがに、女性の人権も多少は配慮されるようになってきた昨今では、そんな無茶も要求できん。俗世の穢れさえ落とせば、それで善しとしておる」
麻凛と蕾を含めてSOSの六人は、釈覚の言葉の意味がわからなかった。全裸で座禅をさせられて、姿勢を正すという名目で緊縛されて座禅転がしにかけられて、野外でも修業させられるとしか教えられていなかった。あとは、現地での(マゾ女性にとっては)お愉しみということだ。
カップルで参加している二人の女性が、それぞれに服を脱ぎ始めた。三十路前後のぽっちゃりした女性は、目の前に居並ぶ男たちに正面を向けたまま、ゆっくりと。二十代半ばのスリムなショートボブは、パートナーに向き直ってから、テキパキを超える早さで。
「なにをしておる。なんじらも、俗世の穢れを落とすのだ」
釈覚に叱られて、蕾はいそいでコートを脱いだ。股下ゼロcmのミニワンピを寒風が吹き抜けて、パンストなんて野暮なものは穿いていない生足に鳥肌が立った。
「覚悟を決めましょう」
麻凛にうながされて、SOSの四人も脱ぎ始めた。
そうか。常に顧客のことを考えなければいけないんだ――と、そこに気づくだけの余裕は、まだ蕾には残されている。短大を卒業して就職したばかりの蕾には、自分の被虐を悦虐に変えるのが、やっとだった。今の麻凛と同じ歳になる三年後には、先輩に追い付いているだろうか。いや、こんな『仕事』をそんなに長く続ける自信すら無かった。
蕾と麻凛は気合のはいった露出服を着ているが、四人はまちまちだった。
図抜けて最年長の木島菜穂子は地味なパンツルックで、防寒対策もじゅうぶんだったが――ショーツを落とすと、見物している男性陣がどよめいた。
「あれ、タトゥか。ずいぶん目立つな」
「いや、焼き印じゃないのか?」
菜穂子の下腹部には、SLAVEの文字が刻まれていた。文字を囲んで、ショーツでぎりぎり隠れる大きさの逆三角形。薄赤い線刻が、はっきりと盛り上がっている。この夏にポニーガール牧場で使役ロバとして酷使され、最後の日に本人の希望で刻まれた焼き印だった。
個別企画のツアーで女囚性務所に服役していた林円花は、ごくふつうに膝上十センチのツーピースだったが、その下にはなにも着けていなかった。
SOSに初めて参加した二十五歳の小室ゆかりは、蕾以上に大胆なコスチュームだった。膝丈のファーコートの下は素裸だったのだから。
最年少の君島芽美へのどよめきが、じつはいちばん大きかった。なにしろ、コートの下から現われたのはセーラー服だったのだから。しかも、ほかの女性たちが全裸になっても、ようやくスカートを脱いだところだった。男たちの視線を一身に集めて、芽美は指先を震わせながら、それでもためらったり羞ずかしがったりは、内心はともかく素振りには表わさずに脱衣を終えた。
「ふむ……」
身をこごめて両手で自分を抱いて寒さに震えている八人の女性たちを、釈覚が見回して、ことに蕾と麻凛に目を留めた。
この二人がガイド役として、みずから率先して被虐に身を晒す立場にあると、主催者側は知っている。
「どうじゃ。なんじらは、古法に則った試練を受けてみるか?」
いくらツアーコンダクターでも、そこまで『お手本』を示す気にはなれない。グルメツアーだって、添乗員やガイドは別室で質素な食事ですますことも多い。
「お願いします」
それなのに、麻凛は躊躇しなかった。となると、蕾としても志願せざるをえない。
「よい覚悟じゃ。では妙覚殿、お願い致す」
マイクロバスの運転をしていた男が、縄束を手にして麻凛の後ろに立った。釈覚と同年代で、髪を凍頂で短いポニーテールのように結っている。
妙覚と呼ばれた男が、麻凛の両手を後ろにねじ上げて、手首を縛った。
「手を縛るんですか?」
縄は乳房をつぶすためのものだと思っていた蕾は、予想外の展開に驚いた。
「縄を掛けるときに手首を縛るのは、緊縛の常識だ」
たしか、高山社長もそんなことを言っていた。緊縛の第一の目的は、相手の自由を奪うことだ。そのうえで、苦痛を与えたり見栄えをよくするための縄を存分に掛ける。手が自由なままで拮抗縛りなど、本末転倒だ。それは、蕾にも納得できる理屈というか、緊縛の美学だった。けれど、今は乳房をつぶすことだけが目的のはずだ。
もちろん、蕾も麻凛も抗議はしない。なにかと口実をもうけて女性を甚振るのが、サディストの常套手段であり、マゾ女性としても、そのほうが受け容れやすい。
「さあ、プレイを始めよう。縛るよ」
では、まさしくプレイでしかない。そんなものを、SOSの参加客は求めていない。
妙覚は、あっというまに麻凛を高手小手に縛り、上下の胸縄で乳房を絞り出しておいてから、縦横に縄をめぐらせて、乳房をつぶした――というか、ボンレスハムのようにしてしまった。
「くうううう……苦しい」
呻く麻凛の声には、すでに悦虐の恍惚がひそんでいる。
麻凛の腰に縄が巻かれた。上体を縛った麻縄ではなく、毛羽立った荒縄だった。蕾が予想したとおりに、二重にした荒縄で大きな結び玉が作られて、麻凛の股間に埋め込まれた。
「きひいいいい……」
股間に通された縄を後ろへ引き上げられて、食いしばった歯のあいだから悲鳴が漏れる。しかしそこにも、陶酔が紛れていた。
「あの……ペニスは作らないのですか?」
釈覚は疑似陽根と言っていた。
「これが睾丸に相当する」
股間を深く割っている結び玉を妙覚が揺すって、麻凛を呻かせた。
「陽根は睾丸の上にある」
妙覚は縦縄を左右に割って、クリトリスを摘まみ出した。すでに尖っている小さな器官の包皮を剥けば、ミニサイズの亀頭に見えないこともない。それをタコ糸で縛って引き伸ばし、根元を二本の荒縄で挟みつけた。最後に、クリトリスを縛ったタコ糸で荒縄を巻いて、引っ込まないようにした。
「生身の女体から男根を引き出す秘術は、古武術研究会百年の伝統だ」
妙覚が蕾を振り返った。
「さて、つぎはきみの番だよ」
被虐の場でサディストから『きみ』と呼ばれることに、蕾は軽い違和感を覚えた。釈覚の時代劇めいた物言いは、おなじ違和感でも修業の場にふさわしい気もするのだが。
両手を背中に高くねじ上げられて、手首を十文字に縄が巻いた。
(え……!?)
きつく締めつけられているのに痛くなかった。胸縄も同様だった。息が苦しいほど締め付けられ、乳房を上下から縊り出されて、それが心地良かった。
「あう……くうううう……」
麻凛と同じに、快感混じりの声が自然と口から洩れた。
古武術研究会というのが、実は捕縄術と拷問術に特化していると、これも高山社長からのブリーフィングだが。たしかに、社長とは比べものにならない手際の鮮やかさだった。まるで縄に抱き締められているようだった。
しかし、縦縄には蕩けている余地などなかった。結び玉に淫裂を割り開かれ、粘膜を荒々しくこすられて、びくんっと反射的に腰を引いた。赤く焼けた無数の針を突き立てられたとでも形容したくなる激痛だった。
逃げた腰は、縦縄をつかんで引き戻された。
「痛い……すこしでいいから、緩めてください」
「甘ったれるんじゃないわよ」
蕾は麻凛先輩に叱られた。
「クリちゃんを縛られたら、こんなものじゃすまないんだから」
「……ごめんなさい」
内勤のときに優しく(ふつうの事務仕事を)指導してくれたときとは、まるで雰囲気が違っていた。もちろん、ふたり一緒にこういう『仕事』をするのは、これが初めてだったが。
クリトリスを縄の間から引き出されて包皮を剥かれて。乱暴に扱湧荒れても、そこまではマゾヒスティックな快感のあったのだけれど。本物の陽根なら雁首にあたるくびれた部分をタコ糸で括られると、痛みと快感とが拮抗して腰の奥まで沁み込んできたのだけれど。
タコ糸がクリトリスの上下で縦縄を結束すると、また灼熱した針で貫かれる激痛が甦った。
「そこに縦一列で並べ」
そのわずかな移動が、蕾にとっては生まれて初めての試練だった。
「く、くううううう……」
わずかに足を動かしただけで、敏感な粘膜が荒縄にしごかれる。こんな状態では、段差の大きな石段を登るどころか、平地を歩くのさえ拷問に等しかった。小刻みなすり足で動いて、蕾は列の最後尾にならばされた。
麻凛が先頭に立たされて、その左右に二人の男が並んだ。男の腰にトラロープが巻かれて、二メートルほど伸ばして結び玉を作ってから、麻凛の腰に巻き付けられる。緩く二回巻いてから後ろで結び玉が作られて、一メートル半ほど空けて、麻凛の後ろに立つ菜穂子も同じようにつながれた。
誰かが転んだときに転落を防ぐ命綱だと、蕾も理解した。
添乗員ふたりが前後に配されて中の六人は――木島菜穂子、畑田美咲、島野乃花、小室ゆかり、林円花、君島芽美。歳の順に並ばされていた。
「では『試練の石段』に挑んでもらおう。どんなことがあっても落伍などさせぬから、そのつもりでおれ」
ジャララン、バシンッ!
「きゃあっ……痛いっ!」
不意に尻を叩かれて、蕾が悲鳴をあげた。振り返ると、浅黄色の僧衣をまとった若い男が、先端に金属環の装飾(?)を施した杖を手にしていた。
「このように、まさしく鞭撻してやる」
同じ姿をしたもう一人が、列の横に立った。同じように、杖を持っている。
「さあ、前へ進め」
「あの……荷物は持たなくていいんですか?」
木島菜穂子が尋ねた。何百キログラムもあるリヤカーを膣だけで牽引していた彼女なら、スーツケースを持って石段を上がるくらい、苦にもならない――すくなくとも本人は、そう思っているのだろう。
「まとめて運んでやる」
釈覚が駐車場の隅を指差した。
駐車場には蕾たちが乗ってきたマイクロバスのほかに、他県ナンバーの自家用車が二台と、地元ナンバーの軽トラックがあった。そして釈覚の指差した先には、オートバイに牽引された細長いリヤカー。その荷箱に、全員の荷物が積み込まれていた。
五泊六日とはいえ、替え上着も下着もメーク用品も不要なのだから、女性たちは小さなスーツケースがひとつだけという身軽さだった。むしろ、二人の荷物のほうが大きく、畑田美咲のパートナーだか御主人様だかにいたっては、スーツケースのほかに大型のトランクまで持ち込んでいた。どうせ中身は自前の縄とか鞭とかがぎっしりなんだろうと、蕾は想像した。
麻凛と蕾を緊縛した妙覚が、駐車場奥の、一見しただけではそれとわからない出入口を開けて、オートバイで(ゆっくりと)走り去った。防寒作務衣を着た男のひとりが、出入口を閉めると、そこはどう見ても、ただの鉄柵でしかなくなった。
ふたたび釈覚にうながされて、麻凛が石段に向かう。麻凛は前に並んだ二人の男に引っ張られる形で、いやおうなく――小さな歩幅でちょこまかとついていく。
「く、くうう……」
呻きながら大きく足を上げて、最初の一段を上がった。そこで両足をそろえてから、つぎの一段に挑む。
後ろの女性たちは、背を丸めた姿勢で両手で胸を抱きながら、こちらは苦も無く五十センチ以上の段差を踏み上がっていく。
そして、蕾も石段に直面した。
ぐっと足を上げると、股間に灼熱が奔った。クリトリスに突き立った毛羽が、粘膜を引っ掻く。
「ぎいいいい……」
脳天まで激痛が突き抜けて、目の前がかすみ、ふらあっと後ろへ倒れかかった――のを、横についていた作務衣姿の男が抱きとめてれた。
ジャラン、バシンッ!
杖で尻を叩かれて、おもわず腰を前へ逃げて、そうするとクリトリスにいっそうの激痛が奔った。
蕾が見上げると、麻凛はゆっくりとだが、一段ずつ踏みしめて登り続けている。苦痛系が苦手だと言っていたけど、それならわたしは超絶に苦手だ――そんなふうに思った。
が、立ち止まっていることは許されない。腰に巻かれたトラロープがぴいんと張って。すぐ前にいる君島芽美が立ち止まって、心配そうに振り返った。
添乗員が顧客に迷惑をかけるなんて、あってはならないことだと自分を励まして、蕾は激痛に呻きながら、つぎの一段を上がった。
「くうう……ふう……くうう……」
一段上がっては両足をそろえて一息ついて、それから次の段を上がる。
「きひいいい……痛い痛い痛い」
麻凛の艶めいた悲鳴が聞こえた。蕾にとっては快感の余地などない女性器への激烈な刺激にも、麻凛は悦虐を味わっている。
石段に目を落として、一段また一段と、蕾は登っていった。五十センチ以上の段差を乗り越えるために足を大きく上げると、結び玉がこねくられ毛羽がクリトリスを突き刺して、激痛が脳天まで突き抜ける。踏ん張って身体を引き上げるときも、脚の動きが縦縄を引っ張る。
じきに、蕾は呻き声をあげなくなっていた。繰り返される劇痛に、神経が麻痺したような感じだった。と同時に。頭の奥がじいんと痺れてきた。自分が自分でないような、かといって別の視点から自分を観察している離人感とも違う――不思議な感覚だった。性的な快感は伴っていないが、この状態がずっと続いてもかまわない気分になっていた。
「よおし。みな『試練の石段』を登りきったな。得度を許すぞ」
釈覚の大声で、蕾は我に還った。山の中腹を切り拓いたにしては広い境内に立っていた。
ほんとうに凄まじい試練だった――と自分を褒めかけて、ほんとうの修業(被虐)は、これから始まるのだと思い出した。恐れおののいたのでは、ない。その証拠に――クリトリスがいっそう凝って、タコ糸が食い込む痛みが、もはや快感になりかけていた。
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この『善羅参禅会』を主宰しているのは「古武術研究会」ですが、この会は明治末期から連綿とではなく断続的に続いているのです。同じく、古武術研究会が、この寺(物語の最後まで無名でしょう)を舞台に百年の昔に繰り広げた少女虐待絵巻もご紹介しときます。
『大正弄瞞~義理の伯父と継母と異母兄に淫虐三穴調教される箱入り娘』の終局近い章です。
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山伏姿の中年男が二人とジャンパーを着た若い男とが、佐江たちを迎えに来ていた。
彼らに案内されて山道を一時間も歩くと、注連縄で結界の張られた場所に着いた。
「ここで素裸になって、足元も履き替えてもらおう」
それが佐江だけに向けられた言葉だと、すぐ理解した。
(どうせ、こんなことだと思っていた……)
また、見知らぬ男たちに辱められる。でも、お腹の赤ちゃん、ほんとうにどうするつもりなんだろう?
コートのボタンをはずすと、全身が寒気に晒された。たちまち鳥肌が立つ。脱いだ服は本郷に取り上げられた。通学にも使う革靴を脱いで、山伏に教わりながら草鞋に履き替えた。
「本来ならば、この先は女人立入禁制の場である。せめて、形だけでも男性に作ってもらおう」
山伏が荒縄を取り出しても、佐江は驚かなかった。胴に縄を巻かれて、息が苦しくなるほど乳房をつぶされた。縄は四重に巻かれて、乳首がそのあいだに挟まれた。寒さと毛羽のせいで、痛いほどに乳首が勃起した。胴を厳しく縛されながら両手は自由というのが、佐江にはひどく不自然に感じられた。
山伏は荒縄を二重に折って、佐江の腰に巻きつけた。佐江はじっとしている。山伏の意図を察して、軽く脚を開いた。
「ふむ、馴れたものだな」
山伏はへその下で結び留めると、まだ長い縄の途中に大きな結び玉を作った。
佐江は両手で股間をくつろげて、花弁を左右に分けた。変な形に圧迫されると、内側の粘膜を刺激されるよりつらい。
結び玉が股間に埋められて、縄が尻の谷間を引き上げられる。
「これが金玉の代わりじゃ。そして、これが――」
山伏は、二本の荒縄のあいだから淫核を引き出した。縄に圧迫されて、自然と実核が突出する。荒縄の上下を凧糸で引き結ばれると、毛羽が粘膜に突き刺さってくる。
「くう、うん……」
佐江は、初めて声を出した。最初からなまめかしかった。
「これが、魔羅の代わりじゃ。なかなか立派な魔羅じゃな」
「名前からして、『りっぱなサネ』ですからね」
本郷の言葉に、佐江を除く全員が声をあげて嗤った。
「では、お嬢さん――ではなく、下女でしたな。下女一匹、たしかにお預かりしますぞ」
「厳しく仕込んでやってください」
こうして、初めての土地で初対面の男たちに陵辱される一週間が始まったのだった。
歩き始めて、佐江は股間の刺激の鋭さに困惑した。結び玉の圧迫には馴れていたが、荒縄の毛羽先に刺されながら歩くのは初めての感覚だった。脚の動きで花弁も毛羽に刺されたまま前後にこねくられる。ふつうの女だったら、その鋭い痛みに悲鳴をあげていただろうが――佐江にとっては受容の限界に収まるどころか、くすぐったさが混じり、実核への同じような刺激が重なって、蜜を結び玉に吸い込ませているのだった。
山道をさらに登ると、周囲は白一色になった。佐江は寒さに震えながら歩いた。せめて両腕で身体を抱いてすこしでも寒さをしのぎたかったが、後ろを歩く男に錫杖で尻を打たれた。
「姿勢が悪い!」
小さな鉄の輪が幾つもついた頭部は、鞭や棒とは違う痛さがあった。
山伏が佐江の手を縛らず、身体を抱くことも禁じたのには、まっとうな理由があった。山伏の履く一本歯の高下駄は、歯を支点にして前か後ろを地に着け、斜面でもまっすぐに立てる。雪道でも滑りにくく、歯の間に雪が詰まることもない。けれど草鞋を履かされた佐江は、何度も足を滑らせた。とっさに手をつける体勢でなかったら、怪我をしていただろう。
注連縄からさらに三十分ほど歩くと、見上げる首が痛くなるほどの階段で道が終わっていた。
「これを試練の石段という。女子供や、男でも身体の弱い者は登れぬ」
山伏の言葉には説得力があった。石段のひとつひとつが、並の階段の三、四段分はあった。
「僕のすぐ後ろについて来なさい」
ジャンパー姿の青年が先に立った。よっこらしょという掛け声とともに足を高く上げて、最初の段を上がった。青年は高下駄でも草鞋でもない、靴底の凹凸が大きな頑丈そうな靴を履いていた。これなら足を滑らしそうもない。
(ずるいな……)
羨みながら、佐江は最初の段に右足を掛けた。グリンと結び玉が食い込んで、毛羽先が小淫唇の裏側を引っ掻いた。
「あ……ん」
佐江は苦痛と快感とに同時に襲われて、足を引っ込めて腰を引いた。
「さっさと上れ」
ジャランと鉄環が鳴って、バシンと尻に叩きつけられた。
「ひいっ……」
佐江はもういちど試みて、身体を引き上げた勢いで左足を二段目に乗せた。最初に倍する足の動きで、苦痛と快感も倍増した。
「はあ……ん」
「そこで足場を固めてから、つぎの段にかかれ」
佐江の後ろから登る山伏に教わった。けれど三段目で両足をそろえたら、錫杖で今度は太腿を叩かれた。
「子供みたいな上り方はするな」
佐江は右足を上げて四段目を踏み、足首を左右にひねって雪を払ってから身体を引き上げて左足を五段目に乗せた。そこで、また雪を払う。
白い息を吐きながら一段ずつ上るうちに、佐江は陶然としてきた。苦痛は依然として股間を苛んでいた。けれど快感は、それが薄れる前につぎの快感が積み重なっていく。錫杖で叩かれて仕方なくではなく――佐江はみずから望んで石段を上り続けた。
ほとんど忘我の境で……足を滑らせた。横倒しになりながら、フワッと身体が浮いた。
「きゃああっ……!!」
これまでに上ってきた高さが、佐江の脳裡をかすめた。転げ落ちたら大怪我、運が悪ければ死ぬ。
ドン……背中が硬い物に突き当たり、軟らかく支えられた。山伏が二人とも佐江の後ろから上ったのには、こういう理由があったのだ。
「あ、ありがとうございます」
山伏の腕に支えられながら、佐江は感謝の言葉を述べた。
「苦行を続けると、自我というものが消えて天地の心理に開眼する。早くもその一端に達するとは、良い素質を持っておるな」
真面目くさった顔だが、山伏がからかっているのは間違いなかった。佐江の実核を指の腹で転がしながら喋っているのだから。さっさと上れと――佐江の身体をまっすぐ立たせてから、掌でポンと尻を叩いた。
理性を保つために頭の中でAからZまでの英単語を順番に思い出しながら、股間の刺激はできるだけ意識から締め出して、佐江は残りの石段を上りきった。平らな地面を両足で踏みしめると同時に、佐江はクタッと腰を抜かした。
山伏のひとりが佐江を立たせて、縄をほどきにかかった。
「女人禁制ではなかったのですか?」
皮肉を言ってやったが、屁理屈で返された。
「試練の石段を上りきったのだから、おまえの修験場入りは神仏から認められたのだ」
乳房の縄をほどいてから、山伏がニヤリと嗤った。
「しかし、おまえが気にするのなら、魔羅と金玉は残しておいてやろう」
(こういうのを、墓穴を掘るっていうんだわ)
佐江は後悔したが、すぐに思いなおした。
(でも、少しでも隠しているほうが、ましかな?)
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同工異曲どころか、クリソツです。
同じ作者が同じ妄想に駆られて書いているのですから、当然ですね。
しかし。あの作品とこの作品。いろいろ絡み合わせられるのも、50本も書いてきた積み重ねでしょうか。
新天地。未開拓の処女地――も、まだまだ視野に入れていますけれど。

ふううう。久しぶりに書いた「進捗状況報告」でした。
しかし。
得度式(剃毛)とか、中二病的妄想に駆られて参加した処女の「修業の妨げになる障壁」を破るエピソードとか。
70枚を超えて、まだ座禅を一回も組んでいないのです。
まあ、座禅の前に滝行(寒中水責め)が始まったりしますけど。

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