Progress Report Final:昭和集団羞辱史『湯女』

  一揆加勢で脱稿しました。
 今回の御紹介は、ここでENDにしてもおかしくないという、そして、本編で最も過激な責め場……が、これですもの。甘っちょろくて、どうにも興が乗りませんでした。


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 秋になって客足が戻り、湯女も大車輪。といっても、ひとり一時間の接客だから、一日でせいぜい八人くらいだが。それでも、一時間に四人から五人の湯女が帳場に出入りしてバンドの清算をするのだから、にぎやかで艶やかな光景ではあった。
 そんな忙しい一日が終わったある日。
 火を落として静まり返った厨房に、亭主と女将が五人の湯女を呼び集めた。
「大変に困った問題が起きました」
 五人を壁際にならんで座らせて、亭主がその前に立って腕を組む。
「ゴムバンドの帳尻が合わないのですよ」
 客は旅館に金を預けて、預かり証の代わりにゴムバンドを受け取る。客が後でゴムバンドを戻せば、旅館は預り金を返す。旅館側のあずかり知らぬ事情で湯女がゴムバンドを持ち込めば、半額で引き取る。客と湯女との間で現金授受は行なわれていないという、法の網を潜り抜けるための方便であると同時に、湯女に勝手な値段交渉をさせない意味もあるのだが。結果として旅館側には、湯女に払ったのと同じ金額が残る。
 それが四百五十円足りないというのだった。
「お客がよそからゴムバンドを持ち込んだんじゃないですか」
 京子の当てずっぽうには無理があると、梢枝にもわかっている。ゴムバンドには、旅館ごとの刻印を捺した一センチ角のゴムが接着されている。もっとありそうなのは――帳場からゴムバンドを盗み出して、知らん顔で換金するという手口だ。
「本来なら、ちょろまかした人だけを呼びつけて、内々に済ませるところですがね。それでは、ますます当人を付け上がらせるだけだと思って、集まってもらったのです」
 亭主の視線が自分に向けられていると、梢枝は気づいた。
「今日のお客様は三十八人で、帳面に付けている赤バンドの出入りも三十八本。皆さん、お盛んなことですね。問題は白バンドと青バンドです。これは、ほとんどが梢枝の持ち込みだね」
 疑われている――いや、決めつけられていると梢枝は気づいた。亭主にしろ女将にしろ、湯女を呼び捨てにすることは、ほとんどない。
「あたし、ちゃんとお客からもらっています」
「梢枝は今日、青バンドを六本換金しているが、お客様から返還が無かったのは三本だけ。一本百五十円だから、辻褄の合わない三本分でちょうど四百五十円だね」
 濡れ衣、それとも言いがかり。今日は九人の洗体で、六人を岩山の裏へ誘い込んでいる。
「あたし、ちゃんと六人のお客から青バンドをもらいました」
「しかし、青バンドを持ち込んだのは梢枝だけだからね。言い逃れはできないよ」
「そんな……」
 なんだって、急にこんなことを――そこで、ふと気づいた。さっきの京子の言葉。なんだか、狂言回しみたいだった。
 ここ一か月ほど、梢枝とほかの湯女との間には、ぎくしゃくした反目が続いている。接客はもちろん、旅館にも迷惑を掛けていないと思っていたけれど。小さな世界の中では、どんな小さな不協和音でも耳障りなのかもしれない。
 もちろん。亭主さんはともかく、女将さんに注意されたら素直に聞き入れていただろうけれど――そうは思われていなかったのだろうか。もしかしたら。梢枝の過剰なお色気サービスが客を呼んでいた一面はある。あまりおとなしくされても、旅館としては痛し痒しなのだ。といって、反目を放置もできない。
 だから、まったく別の口実でお灸を据えておこう――とでも、考えたのだろうか。
「素直に罪を認めるなら、事を荒立てたりせずに内々で済ませてあげる」
「あんたのしたことは、立派な犯罪なんだよ」
 京子の口出しで、梢枝は推測が間違っていないと確信した。
 してもいないことを認めるのは厭だ。事を荒立てるのなら、そうしてください。警察に届ければ、実際には旅館が湯女に売春をさせていたことが公になって、困るのはそちらじゃないんですか。そういうふうに反論も出来たけれど。同輩はともかく、雇い主を敵にまわしたら困るのは梢枝だ。梢枝のおかげで繁昌しているのは事実だが、梢枝が来る前から温泉郷はそれなりにまわっていたのだ。
 あっさりと首にされるかもしれないと、初めて梢枝は思い至った。そのときには、支度金の五万円を返せと言われるだろう。店の都合で首を切るんだから返さなくてもいいように思うけれど。貯金通帳を取り上げられて、身ひとつで追い出されたら――そこまで先走って考えてしまった。
 旅館や先輩の理不尽な仕打ちに屈するのは厭だけど、尻尾を巻いて実家に逃げ戻るのは、もっと厭だ。
「あたし……してもいない罪を認めるなんて、絶対にしません」
 それは反発ではなかった。
「だから、好きなようにしてください」
 首を切られるというのは考えすぎだろうと、思い直した。四百五十円を弁償させられたって蚊に刺されたほどの痛みにもならない。謹慎なんか、一週間でも一か月でも骨休めみたいなもの。どうせ旅館だって、出るところには出られない事情を抱えている。
 まさか、寄ってたかってのリンチもできないだろうと――これまでと同じに高を括ったのだが。
「まったく、ふてぶてしい子だね。しばらくは、おいたも出来ないくらいには懲らしめてやらなくちゃ」
 それまでは亭主に仕切らせていた女将が、梢枝の前に立った。
「それじゃ、好きにさせてもらうよ。着物を脱ぎなさい」
 梢枝は女将の顔をまっすぐに見上げて――立ち上がった。お仕着せの浴衣を黙って脱ぐ。みんな、女将さんにつくに決まっている。五対一では、逆らうだけ無駄だ。
「そこへあお向けに押さえ付けておきなさい」
 梢枝は、それにも逆らわなかった。けれど、内心では意外な成り行きに怯えている。毛を剃られたり擂粉木を突っ込まれるだけでは済まない。そう覚悟させられるほど、女将の顔は冷たかった。
 女将は黙って場をはなれて、すぐに戻って来た。小道具を幾つか抱えている。
「一か月でだいぶに生えてきたね。あんた、剃ってやって」
 梢枝は脚を大きく開かせられた。その中に、亭主が剃刀を持って座る。
「これくらいじゃ懲りないとわかってるだろうに」
 女将に向けて言った言葉だが、顔は梢枝の股間に向けたままだった。
 この人の顔、助平になってる――梢枝は、男の心裡を見抜いた。憎しみや嫉妬で剃られるよりは、女として救われる思いが湧いた。身体が目当てなんて台詞はよく聞くけれど、末永く添い遂げるわけでもない仮初めの男女の間に、ほかの何があるんだろう。
 六人の女の視線から逃れたくて、梢枝は目をつむって亭主の仕打ちを受け容れた。
 じきに剃り終わって――亭主に変わって女将が、梢枝の股座近くに座った。
「おまえはね、ここが気持ち良すぎてアレコレしてるんだろうね。しばらくは、自分で触ることもできなくしてあげるよ」
 襞の間に埋もれている肉蕾をほじくり出された。
 女将は包皮をつまんでしごき、淫核を硬くしこらせる。言っていることとしていることが反対――とは、梢枝の思い違いだった。女将は包皮を剥いて、実核を露出させた。それを左手で押さえておいて、右手は小箱を開けて茶色い綿のような物を指につまんだ。
「あ……?!」
 戦後になって廃れてきたとはいえ、まだまだお灸は庶民の中に根付いている。肩凝りや腰痛の民間療法でもあるし、寝小便の特効薬という迷信も生きている。そして、子供への折檻にも使われている。
 まさしくお灸を据えられるわけだが――どこに据えられるかは、こうなってみると明白だった。そっと触ればすごく気持ちいいけれど、それだけ敏感なのだから、お灸を据えられたらどうなるか。
「ごめんなさい。もう、二度としません。だから、赦してください」
 それまでとは打って変わって、梢枝は半泣きの声で訴えた。
「二度としませんって、何をだね?」
 返しながら、女将は艾(もぐさ)を練る指を休めない。
「…………」
 梢枝は言葉に詰まった。四百五十円は口実だと、すでに梢枝は悟っている。濡れ衣なのだから、二度でも三度でも着せることができるだろう。マッサージ室での自由恋愛は、これをやめろとは女将も言っていない。そんなことをすれば、『湯乃華』に閑古鳥が鳴く。
「もう……お客さんを裏に誘い込んだりはしません。マッサージ室でも、おとなしくします」
「うごかないように、もっと強く押さえて。フミさんも手伝いなさい」
 両手を頭上に伸ばした形にされてフミに手首をつかまれ、京子と朋美は片手で腰を押さえて片手は膝をつかんで閉じないようにした。
「珠代ちゃんも。あなたは馬乗りになりなさい。この期に及んで同情なんか駄目よ」
 ごめんねと囁いてから、珠代も梢枝を虐める側に加わった。
 実核がさらに引き伸ばされて、根元を女将の指が押さえつける。梢枝には珠代の身体に遮られて見えていないが、そこに据えられた艾は、実核と同じくらいの大きさがあった。
 亭主が線香に火を点けて女将に手渡した。そして、脇に控えて――梢枝の股間を見詰めている。
 剃られたときと同じで、梢枝には亭主の存在が、せめてもの心のよりどころに思えた。こんな酷いことをされても、それを見て興奮してくれる男がいるのなら、同性にどんなに憎まれてもすこしは救いがある。
 いよいよ火が点じられたらしい。珠代の肩越しに薄い煙が立ちのぼった。
「くううう……」
 最初に灸を据えられる熱痛を『皮切り』というが、それどころではない。熱の錐が実核を貫き通している。しかも、錐はだんだん太く鋭くなって……
「うああ……熱い! 痛い! 赦して……赦してください」
「うるさいね」
 不意に女将が立ち上がった。着物の裾を端折り腰巻もたくしあげて、珠代と背中合わせになって梢枝の顔に尻を落とした。
「んぶうう……」
 口をふさがれて、梢枝は悲鳴を封じられた。淫毛がじゃりじゃりと鼻腔をくすぐるが、それを不快に思うどころではない。このままではクリトリスが焼け落ちてしまうのではないか――そう思ったとき、この折檻の残酷さを梢枝は知った。
 クリトリスが無くなったところで、男の側にはたいして不都合はないのだ。湯女として働くことはできる。擂粉木で傷つけるよりも、旅館としてはよほど都合がよい。
 そして、梢枝は快楽を取り上げられてしまう。そうなってまで、客に過剰なサービスをする気にはなれないだろう。洗体とマッサージで三百五十円。青バンド百五十円のためだけに、傷ついたクリトリス(それとも、クリトリスのあったところ?)を弄ばれる苦痛には耐えられない。
「むぶうううううっ……ゔゔゔゔ!!」
 三人がかりで押さえ付けられている腰が、ビクンビクンと跳ねる。
「おっとっと……」
 京子が腰を押さえていた手をずらして、転げ落ちかけた艾を据え直した。
「おお、熱かった」
 声が楽しそうに弾んでいる。
 ――艾は最後までクリトリスの上で燃え尽くした。
「わたくしだって、いよいよとなれば鬼にでも夜叉にでもなりますからね」
 そう言って女将は梢枝の顔から立ち上がって、着物を整えた。梢枝にだけでなく、他の湯女にも向けられた言葉だった。
 翌日も、梢枝は仕事をした。火傷が治るまで休んで痛かったけれど、女将が許してくれなかった。もっと辛いことを命じられたとしても、梢枝は女将の言葉に従っていただろう。それほどに、灸折檻の効き目は著しかった。
 さいわいに焼けて無くなりはしなかったが。火傷で親指の先ほどにも膨れて包皮では蔽いきれなくなり、常に先端が露出するようになった。いっそ剥きっ放しにしておこうかと思ったが、それでは湯が沁みて立っていられないほどに痛む。
 梢枝は手拭いで厳重に股間を隠して、客から身を引くようにして身体を洗った。マッサージ室では、官能を追求するどころではない。腰を打ちつけられるたびにクリトリスが悲鳴をあげて――快感の無い商売の辛さを思い知らされたのだった。
 敏感な部位だけに、治りも早いのだろう。一週間もすると薄皮が張って、痛みも少なくなった。しかし、元の形には戻りそうもなかった。火傷の部分が盛り上がってきて、クリトリス全体が以前の倍ほどにも大きくなり、常に半分は露出する形になった。そして盛り上がった部分はあまり感じなくなったのに、その周辺はずっと鋭敏になってしまった。だからというべきか、しかしというべきか――梢枝はマッサージ室でもそこを刺激しないように努めるしかなかった。外にまで聞こえる嬌声を張り上げたら、今度はもっとひどい折檻をさせるかもしれない。かといって、みずから猿轡を噛んでまで快楽を追求する気にもなれない。やはり、もしも露見したらという怯えが、梢枝を縛っていた。
 梢枝がおとなしくなって、湯女のあいだの力関係は変わった。うんと歳の離れた味噌っかすという扱いに、梢枝は甘んじるしかなくなった。ある意味、それが本来の形であったかもしれない。
 梢枝の過剰サービスがなくなると、日帰りの入浴客も以前の数にまで漸減して、温泉郷全体も落ち着いてきたのだが。活況を知った後になってみると、寂れてきた感じは否めなかった。
 そのまま二年三年と過ぎていけば、梢枝への扱いもだんだんと変わって、梢枝も他の四人と変わらない娼売女へと落ち着いて行ったのだろうが。
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 画像もご覧の通り、キーワードに『湯女』を含めると、ハードなものは引っ掛かりません。
 ので、いわば商売敵のアフィリンクを張ってみたりします。こういうタイトルだと、今回の筆者作品とはまるきり趣が異なります。いえ、わざわざ購入して読んだりはしませんよ。TOYOTAの社員がニッサンの車に試乗するようなものですから。




 このサークル(というか、作者)実は、今回『湯女』で検索して初めて知りましたが、16年前にDLsiteデビューしていて、89本もUPしています。コンセプトは、筆者に言わせればだいぶん違っていますが、他人の目には似て見えるかもしれません。


 さて。次は妄想全開ハード作品にシフトしましょう。
 PLOT半完成の作品も幾つかありますが。
「何を書きたいのか」をじっくり(3日ほど)考えて、次作ではきちんとPLOTを練ってから、6月中旬あたりから書き始めましょうか。
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