Progress Report 2:赤い冊子と白い薔薇
やはり、この作品は長くなりそうです。
『未性熟処女の強制足入れ婚』『大正弄瞞』『いじめられっ娘二重奏』みたいに数か月以上の時間経過があるわけでもなく、舞台も取調室と留置房だけで、リョナファイトとか強制売春とか全裸運動会とかの趣向もなく、ひたすら責め場が続くだけ。大トロばかり食べるようなものですかね。
今回紹介した部分の終わりまでで、本文80枚。
4人の少女のうち、陥落して担当取調官の嫁になる予定の2人は取調室から連れ去られました。次章(実は、すでに8割を書いています)では、いよいよヒロイン瀬田恵への拷問が始まる――のではなく、当時の言い方ではアイノコなんか嫁にしたら世間体が悪いので、壊れるまで玩具にされる予定(日独伊三国同盟で救済されます)の咬ませ牝犬である稲枝紗良への拷問ではなく拷悶シーンです。
そして、4人そろって全裸拘束のまま同じ房へ入れられて、それぞれの背景を記述するかしないか、犬食いとか、紗良への飢餓責めとかがあって。瀬田恵の取り調べは、翌朝になって章を革めて後です。そこからが、本番です。もちろんホンバンもあります。

過去画像の使い回しです。お気に入りなんだもん。
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(第二章の第二幕に位置します)
・四人の贄少女
渡り廊下の向こう側にある別棟が、留置場と取調室になっている。廊下の左右に並ぶ鉄格子は、雑居房や独房。留置されているのは男が十数人と女が三人。背広を着た男もいれば、浮浪者めいた襤褸をまとった女もいる。
男たちは、あまり驚いた様子もなく恵の裸姿を眺め
ている。
「刑事さん。こんどの子には、やけに気合を入れてますねえ」
見張りの巡査が牢の前に立って、声をかけた男の肩を六尺棒で強く突いた。
「へいへい。悪うございましたね」
男はたいして痛そうなそぶりも見せず、牢の奥へ引っ込んだ。
その場のなにもかもが、恵の頭を素通りする。一歩ごとに股間に食い込んでくる荒縄の毛羽。その刺激に耐えるだけで精いっぱいだった。
取調室は廊下の左右に二つずつと、突き当りにひとつ。その突き当りのドアが開けられて。
「んぐ……?!」
眼前の異様な光景に立ち竦む恵。どんっと背中を突き飛ばされて、たたらを踏んだ。
正面の奥で、外人の娘が細い鉄棒を跨いでいた。恵と同様に素裸で、恵よりもさらに厳しく後ろ手に縛り上げられていた。乳房と尻がどす黒く腫れて、全身に赤や紫の線条が刻まれている。
「…………?」
垂れかかる金髪に隠されてはっきりとはしないが、恵はこの娘を見知っているような気がしていた。
「わかったようだな。二月に女学院を退学した稲枝(いなえ)紗良(さら)だ」
やはりという思いと、まさかという思いが交錯した。稲枝紗良の父親はイタリア人の神父だった。教会での説教で反戦を説いた容疑で逮捕されて、本国へ強制送還された。紗良は、その間に退学している。その後の消息は聞かなかったが、まさか特高警察に逮捕されていたとは。父親の罪と関係しているのだろうか。
それにしても。ずいぶんとやつれている。恵の知っている紗良は、ふくよかと豊満を掛け合わせたみたいな体型だったのに、目の前の彼女は――体の線は細くなったのに乳房と尻は以前の面影を強く残して、性に無知な恵の目にさえ妖艶に映った。
「もっと近寄って、よく見ておけ」
肌が触れ合うほど近くまで押しやられて、恵は思わず顔をそむけた。
「よく見ろと言っておるのだ。事と次第によっては、おまえもここに座らせてやるのだからな」
ひぐっと、恵は息をのんだ。
鉄棒に跨っているように見えたのは、鋼線を編んだ太いワイヤーだった。細い鋼線が切れたりほつれたりしてささくれている。こんな物を股間に食い込まされたら、荒縄の毛羽とは比較にならない劇痛だろう。しかも、膝を折り曲げて縛られ、そこからコンクリートブロックを吊るされていた。ワイヤーが食い込む淫裂は無毛だった。しかし、白い肌ではない。赤く細い筋が斜めに何本も交差している。刃物で切られたとしか、恵には推測できない。
紗良は恵が近づいても、まったく関心を示さなかった。おのれを苛むワイヤーに虚ろな視線を落として、ぴくりとも動かない。身じろぎひとつしても、ワイヤーはいっそう紗良を傷つけるだろう。
「ひととおり、お仲間に挨拶しておけ」
言われて、ようやく。ほかにも二人の娘が、同じように素裸で、しかし別々の格好で拘束されていた。そして、恵を連行した二人だけでなくさらに四人の男たちがいた。
娘のうちの一人は、二週間前に逮捕された山崎華江。後ろ手に縛られ胡坐を組まされて、裸身を二つ折りにされていた。背中にはコンクリートブロックが四つも縛りつけられている。紗良ほどではないが尻が赤く腫れている。
そして、もう一人は椅子に、背もたれを後ろ手に抱く形で縛りつけられて、机を挟んで二人の男と向かい合っている。ひとりは五十絡みの私服で、もうひとりも私服だがせいぜい三十半ばといったところ。すこしはなれた壁際の小机に座っている若い紺サージの制服は、記録係だろうか。
「こいつも知っているはずだぞ」
恵には見覚えがなかった。学年が違えば、名前を知らないどころか顔を見たこともない生徒も少なくない。
「最上級生の川瀬(かわせ)弓子(ゆみこ)だ」
名前だけは知っていた。卒業と同時に結婚する者も少なくはないが、それでも誰某が婚約したという噂は、すぐ学校中に知れ渡る。そういえば――新学期が始まって間もない頃、婚約者に赤紙が来たのだけれど。人が人を殺すなんて悲しいことだと級友に嘆いて、教頭先生に注意されたという話も聞いていた。誰かが特高に密告したのだろう。
「反戦論者に男女同権に、あげくは主義者か。おまえの学校はアカの巣窟だな」
恵は取調官の斜め後ろに立たされた。
「おまえの尋問は明日からだ。今日のところは、強情を張るとどうなるか、よく見ておけ」
恵の左足首に、滑車を介して天井から垂れている縄の一端が縛りつけられた。反対の端を、泊という若い私服刑事が引っ張ると――左足が吊り上げられて、恵の身体が右に傾いていく。
「あ……」
恵はつま先立ちになって、身体が倒れないように踵の位置をずらした。それを何度か繰り返すうちに左足は頭よりも高く引き上げられて、意識して上体を左へ倒さないとひっくり返りそうになる。
「最初だから、すこし甘やかしてやろうか」
恵を縛った男が恵のお下げを引っ張って、左の腿に巻き付けた。おかげで、腰を突っ張っていなくても立っていられるようになったのだが。
「なんじゃ。人が親切にしてやっとるのに、礼も言わんのか」
縄で縊り出された乳房を爪が食い込むほどに握りつぶして、ぎりぎりとひねった。
「い、痛い……ありがとうございます」
「乳を虐めて礼を言われたのは初めてだな。そうか、こうされるのが好きか」
恵の言葉をわざと取り違えて、男はいっそう乳房をひねる。
「違います……転ばないようにしてくださったことに、お礼を言ったのです」
「そうだろうな。虐められて悦ぶなど、あの女くらい……」
「浜村ッ」
弓子に向かい合っていた男が、鋭く叱った。
「余計なことを言うな。それから、浅利クン。キミは下がってよろしい」
浅利と呼ばれた、これも中年の男が、軽く頭を下げて部屋から出て行った。
部屋に残った男たちも、それぞれに場所を変える。恵を逮捕した中年と若手のコンビは紗良の横に折りたたみ椅子を据えて陣取り、海老責めに掛けられている華江には別の若い男がついた。そして恵の前には、それまで部屋の隅で壁にもたれていた、これも若い男。
「そうだ。事の流れで後先になって、すまんな。おい、瀬田恵。そこにいる警部が、おまえを担当する青谷クンだ」
青谷が、恵に向かって軽くうなづいた。
「最年少と聞いていたが、まずまずの身体つきだな」
紗良先輩のように容赦なく拷問できるという意味なのだろうかと――恵は想像してしまった。
「課長殿。この者の尋問は明日からですね。僕はこれで失礼してよろしいでしょうか」
弓子と向かい合って座っている男が、ふっと小さく息を吐いた。
「まったく、キミは淡泊だな。よろしい。他の仕事を片付けておきたまえ」
「では、失礼します」
青谷も退出して。部屋に残っている男は、私服刑事が五人と制服の巡査が一人。弓子たち被疑者を数えると十人にもなるのだが、狭苦しい感じはない。この部屋は教室ほどの広さがあるのだと、恵は気づいた。様々な拷問を同時に行なうための広さだとまでは、知る由もなかったが。
実際、今現在でも――紗良への性器拷問、華江への海老責め、恵への吊り責めが、弓子への尋問と並行して進められているのだ。その、弓子への尋問も(全裸で椅子に縛りつけられているというだけでも)拷問であることに変わりはない。
「さて……どこまでだったかな。慰問の手紙は書いたが、反戦的な文言は一切含んでいない。そう言ったのだな?」
「もう何度も言いました。変なことを書いて、それが上官の目に触れでもしたら、島本が目をつけられて……非道い目に遭います」
「しかし、昨日は『何があっても、必ず生きて帰ってください』と書いたと供述しておるな。自決することなく俘虜の辱めを受けてもかまわんというのは、反戦ではないか」
「そういう意味で書いたのではありません」
「では、どういう意味だッ!」
「…………」
課長が椅子から立ち上がった。机の端に置いてあった細い竹を手にして、弓子の横にまわる。竹の先でチョンチョンと乳首をつついてから、大きく振りかぶる。
ビシイッ!
肉を打つくぐもった音が響いた。
「くうう……」
竹の笞は、膝を椅子の脚に縛りつけられて無防備になっている内腿に敲きつけられていた。
「どういう意味なのだ?」
ビシイッ!
二発目は反対側の内腿を襲った。
(あんなにひどく敲かれて、叫びも泣きもしないなんて……)
恵を吊るした男の言っていた『強情』という言葉を、恵は思い出していた。竹笞など小手調べですらないとは、思い至るはずもない。
「強情な娘だな。いいだろう。他のことを尋ねてやる」
課長は竹笞を机に戻して弓子に正対すると、両手で双つの乳房を鷲掴みにした。
「学校で反戦的な言辞を弄したとき、それに賛同した生徒はいなかったと言うが、ほんとうか?」
第一関節がめり込むまで指を食い込ませて、ぎりぎりと内側へねじっていく。
「ぐうう……弓子は、ほんとうのことしか言っていません」
同じようなことをされたばかりの恵は、弓子が耐えているのを見ても今度は不思議に思わなかったのだが。
課長は手首が返るまで乳房をねじっていった。ほとんど百八十度。見る見るうちに、乳房が赤黒く変色していく。
「つまり、おまえの言葉をたしなめることなく聞いていたわけだ。そいつらも同罪だな」
いったん手を放して掴みなおすと、今度は外側へねじっていった。
「い、痛い……アキ……呆れていただけです」
課長は右手で竹笞を握り、左手に握った乳房をピタピタと叩く。
「うん? アキと言ったな。同級生の岸辺章子のことか? それとも……浦安クン、名簿を持ってこい」
制服姿の巡査が、小机の上に積んである書類から薄っぺらい冊子を抜き出して、課長の前に広げた。
「アキ、アキ、アキ……森山秋江。こいつか?」
「違います。二人とも、いませんでした」
課長が竹笞を振りかざして、掌の上の乳房に敲きつけた。
ビッシイン!
「きひいっ……! 弓子は『呆れた』といっただけです。秋江さんも章子さんも無関係です」
「強情だな」
課長は乳房から手を放して、一歩下がった。そして。
ビシッ!
ビシッ!
ビシッ!
立て続けに乳房を打った。
「しかたがない。この二人を呼んで、当人から話を聞くか」
「やめてください! ほんとうに、二人とも無関係なんです」
「では、だれがお前の話を聞いていたんだ?」
「…………」
不意に弓子の目に涙が湧いた。まぶたにあふれて、開脚させられた股間に滴る。
痛くて泣いているのではないと、恵にもわかる。黙ってきいていただけで同罪だと、課長さんは決めつけた。話を聞いていたクラスメイトを名を明かせば、その人たちも同じように逮捕されて、こんな辱めを受けることになるのだろう。けれど黙っていたら――二人のアキさんが濡れ衣を着せられる。弓子先輩の涙は悔し涙なのだ。
「言え。さっさと白状しろ」
課長は十文字に竹笞をふるって、乳房も内腿も立て続けに打ち据え始めた。
「きひいいっ……やめて……悪いのは弓子なんです。級友は誰も悪くないんです」
一度でも涙をこぼしたら、悲鳴をあげたら、それで気持ちの張りが失われて、それまでは耐えていた痛みにも耐えられなくなる。そのことを、恵はまざまざと見せつけられたのだ。
(明日は、あたしも同じ目に遭わされる……同じ目?)
弓子先輩と同じように敲かれるのだろうか。それとも、紗良先輩みたいな残虐なことまでされるんだろうか。ただ眺めているだけで、想いは千々に乱れる。
「課長殿……」
最初の位置から動かずに、机を挟んで弓子の前に座り続けていた男が、遠慮がちに声をかけた。
「そんなに畳みかけても、答えようがないのではありませんか。しばらく考えさせてやっては如何かと思料いたします」
課長が手を止めた。
「大岩クン。キミは甘いね。しかし、担当官の意見は尊重すべきか。いいだろう。椅子から解放してやたまえ」
「ありがとうございます」
なぜ、大岩という男が礼を言うのか恵にはわからなかったが。とにかく、弓子先輩への拷問は終わったのだと、恵は安堵の息を吐いた。
大岩が弓子の拘束をほどいて、腰を抱きかかえて椅子から立ち上がらせた。
「えええっ……?!」
恵は驚愕した。自分が裸に剥かれたときよりも、よっぽど大きな悲鳴だった。
恵は、生まれて初めて目にする異様な物体と、弓子の股間とを交互に見比べていた。
弓子が座らされていた木の椅子は、座面から禍々しい二本物体が屹立している。座面の縁に近い側には、直径が二寸はあろうかという擂粉木。しかも、擂粉木の表面には不規則な凹凸が刻まれている。擂粉木から一寸ほど奥には、直径が一寸ほどの金属の棒。表面が鮫肌のようにざらついている。木工用のヤスリかもしれない。
そんな椅子に座らされたらどうなるか、どことどこを貫かれるかは、処女の恵でも容易に理解できた。椅子に座らされること自体が、乳房を握りつぶされるよりも竹笞で打ち据えられるよりも、はるかに残虐な拷問だったのだ。
恵の驚愕は、その拷問道具だけではなかった。弓子の内腿に血が伝っているのは、肛門をヤスリで抉られたせいだろう。でも、ぬらぬらと絖っているのは……ユリの愛撫に馴らされた恵には見紛いようもなかった。
「なんだ。物欲しそうに涎を垂らしおって。特製の擂粉木でも食い足りんのか」
弓子の異変に気づいていたのは恵だけではなかった。課長が、それまでの強面顔を崩して下卑た嗤いを浮かべた。
「大岩クン。遠慮はいらん。キミの抜き身で満足させてやれ」
「はいッ、本官の抜き身で容疑者を満足させてやります」
恵には意味不明な復唱をすると、大岩は弓子を床に横たえた。そして、ベルトを緩めてズボンをずり下げた。
(…………!!)
課長と大岩の言葉の意味を理解して、恵は三度(みたび)驚愕した。いや、四度になるだろうか。弓子は大岩の仕種を見上げて――諦めたように目を閉じたのだった。紗良とは違って、まだじゅうぶんに抗うこともできそうなのにもかかわらず。それとも、連日の拷問で気力を奪い尽くされているのだろうか。それにしては、最後まで尋問の言葉を否定していた。
越中褌までかなぐり捨てた大岩の股間には、椅子に突っ立っている擂粉木に似た肉の棒が聳え立っていた。男女の営みとは具体的にどういうことをするのか、恵はたった今まで知らなかった。けれど、擂粉木がどんなふうに弓子を貫いていたかを目の当たりにして、それとそっくりな物が男の股間に生えていれば、おのずと理解してしまう。生まれて初めて見る、男の禍々しい怒張に恵は恐怖さえ感じて――それでいて目をそらせなかった。
「どうした、瀬田恵。さんざっぱら男を咥え込んでおいて、なにを驚いた顔をしている」
恵を縛った刑事が、からかいの言葉を浴びせた。彼は、さらに跨がらせたワイヤーの端に手拭いを巻いて、そこに肘を突いている。
課長が訝しそうに彼を見た。
「浜村クン、それはどういう意味だね?」
「ああ、そうそう。逮捕時の様子を、まだ御報告しておりませんでした」
よいしょっと、ワイヤーをつかんで浜村が立ち上がった。手を放すと、浜村の体重で余計にたわんでいたワイヤーがピンと張って、紗良をかすかに呻かせた。
「実はですね……」
浜村が課長に長々と耳打ちを始める。
その間にも、大岩が弓子の脚を広げさせてその間に腰を落として――左肘で体重を支えておおいかぶさりながら、右手は怒張を握って弓子の濡れそぼった淫裂に導く。
「うんっ……」
ぐいっと、岩村が腰を進めた。
「あああっ……浩二さん、ごめんなさいいい」
弓子が小さく叫ぶ。
「なにが、ごめんさいだ。いとも簡単に咥え込みやがってからに」
ずんっ、ずんっと、大岩が腰を突き出しては引き戻す。
「ひっ、ひっ……」
そのたびに、弓子が小さく喘ぐ。痛みを訴える声――と、恵には聞こえた。大岩の肉棒は、擂粉木よりも細く見えた。けれど、中を掻き回されたら痛いに決まっている。
「なるほど……面白いな。しかし、なんだって、そんなことを?」
「小生にも見当がつきかねております。本人に問い質したほうがよろしいかと」
「うむ……ところで、乃木クン」
課長が思い出したように、華江の横に立っている若い男に声をかけた。
「山崎華江も、そろそろ限界じゃろう。唇が紫色に変じておる。いい加減に赦してやれ」
「そのお言葉を待っておりました」
乃木と呼ばれた男が、華江の背中からコンクリートブロックを降ろした。華江の尻の後ろに靴をあてがって、両肩をつかんでゆっくりと引き起こした。そのまま、壁にもたせ掛ける。
「ほどいてやるが、その前にひと働きしてくれよ」
大岩より年下の、まだ青年の面影を引きずっているこの男も、中年男の厚かましさを見倣うのか平然とズボンをずり下げた。越中褌の中から現われたそれは、大岩よりも細いが天を衝く角度では勝っている――というところまでは、恵には見えない。それでも、腿に縛りつけられたお下げを引っ張りながら振り返る視界の端で、乃木が怒張を華江の口に(!)押し当てているのは見えた。
華江は固く唇を引き結んで、しかし顔をそむけようとはせず、上目遣いに乃木を睨みつけている
「やれやれ、相変わらず情の強(こわ)いお嬢さんだ。男に負けまいと突っ張ったところで、力でねじ伏せられるのはわかっているだろうに」
乃木はわざとらしく嘆息してから、華江をまたうつ伏せに戻した。首と足とをつないでいる縄を、上体が半分ほど起こせるまで緩めた。そうしておいて、今度は膝がしらに靴をあてがって前へ倒す。華江は左右の膝と頭の三点で身体を支えて、尻をうんと突き上げた形にされた。
乃木が華江の後ろへ回り込んで、膝を突いた。
(まっ……!?)
いったい何度驚いたか、もう恵にはわからなくなっていた。ただ――二人の形を見た瞬間、二匹の犬がそんな形になっていて、オトナに水を掛けられていた遠い記憶が甦った。つまり、あれもこういうことだったのだ、と。
乃木が腰を華江の尻に打ち当てて、びくんと華江が前につんのめった。
「くそう……負けるものか」
食いしばった歯の間から、そんな言葉が漏れたのを恵はたしかに聞いた。
大岩と乃木は、それぞれに米搗きバッタさながらに腰を激しく衝き動かしていたが。まず大岩が、憑き物が落ちたようなさっぱりした顔で立ち上がった。壁の棚から落とし紙を取って自分の肉棒を拭い、それから弓子にも落とし紙を放ってやった。弓子はのろのろと身を起こして落とし紙を拾い、それで股間を丹念に拭った。小水の後よりは、ずっと入念な拭い方だった。
大岩が後ろに立つと、言われる前に立ち上がって、自分から手を後ろにまわす。肌にうっすらと赤みが差して頬も上気しているが、目だけは悲しそうに伏せられていた。8の字を縦二つに割ったような金具が、弓子の手首に嵌められた。蝶番で留められている金具を閉じて、そこに小さな南京錠が掛けられた。縄で縛られるよりは楽そうに見える。
腰縄を打たれて、弓子は大岩に取調室から連れ出された。
やがて乃木も華江から離れた。自分の跡始末はしたが、華江の股間は汚れたままに放置して、弓子と同じ8の字形の手枷を嵌めてから縄をほどいてやった。華江も、乃木に腰縄を引かれて取調室から姿を消した。
二人への扱いの差が、つまり従順と不服従の応報なのだろう。
あたしは華江さんよりも無下に扱われるだろうと、恵は覚悟せざるを得ない。まだ未通女なのだ。犯されそうになったら、死に物狂いで抵抗しなければならない。いよいよとなったとき、舌を噛み切って自害まではできないだろうけど――と、そこまで考えて虚しくなった。純潔を守るのは、将来の夫の為だ。でも、変態じみたゴム紐褌を他人の目に曝して、あげくに縄付で街中を引き回された。とっくに、お嫁に行けなくなっている。純潔を守って、それでどうなるというのだろう。
「ずいぶんと休ませてやったな。取り調べを再開するか」
課長の言葉で、恵は絶望の深みから現実という悪夢に引き戻された。
紗良が頭を垂れたまま課長に顔を向けていた。そこには、人形ほどにも表情が浮かんでいなかった。
「こいつも、最近はふてぶてしくなりおってな。どうだね、浜村クン。新入りのお嬢さんに覚悟を決めさせるためにも、ちと張り切ってみるか?」
紗良の顔に怯えの色が奔ったのに、恵が気づいた。この浜村という人は、課長さんよりもずっと残酷な拷問をするのだろう。
「針を使いますよ。かまいませんか?」
「もちろん、もちろん。なんだったら、焼き鏝でもかまわんぞ」
「いやあ、あれは準備が大変ですし」
浜村が、ちろっと恵に目を向けた。
「こっちは、意外とあっさり落ちるかもしれませんしね。病院送りにするのは、もっと先でもよいでしょう」
「それもそうだな」
何事か恐ろしい相談がされたらしいとはわかるが、それが何なのかは、そのときの恵にはわからなかった。
========================================
じつにネチネチとした描写が続いています。
ヒロインの心理も書き込まねばという強迫観念もあります。
このペースが、おそらく最後まで続くでしょう。
『未性熟処女の強制足入れ婚』『大正弄瞞』『いじめられっ娘二重奏』みたいに数か月以上の時間経過があるわけでもなく、舞台も取調室と留置房だけで、リョナファイトとか強制売春とか全裸運動会とかの趣向もなく、ひたすら責め場が続くだけ。大トロばかり食べるようなものですかね。
今回紹介した部分の終わりまでで、本文80枚。
4人の少女のうち、陥落して担当取調官の嫁になる予定の2人は取調室から連れ去られました。次章(実は、すでに8割を書いています)では、いよいよヒロイン瀬田恵への拷問が始まる――のではなく、当時の言い方ではアイノコなんか嫁にしたら世間体が悪いので、壊れるまで玩具にされる予定(日独伊三国同盟で救済されます)の咬ませ牝犬である稲枝紗良への拷問ではなく拷悶シーンです。
そして、4人そろって全裸拘束のまま同じ房へ入れられて、それぞれの背景を記述するかしないか、犬食いとか、紗良への飢餓責めとかがあって。瀬田恵の取り調べは、翌朝になって章を革めて後です。そこからが、本番です。もちろんホンバンもあります。

過去画像の使い回しです。お気に入りなんだもん。
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(第二章の第二幕に位置します)
・四人の贄少女
渡り廊下の向こう側にある別棟が、留置場と取調室になっている。廊下の左右に並ぶ鉄格子は、雑居房や独房。留置されているのは男が十数人と女が三人。背広を着た男もいれば、浮浪者めいた襤褸をまとった女もいる。
男たちは、あまり驚いた様子もなく恵の裸姿を眺め
ている。
「刑事さん。こんどの子には、やけに気合を入れてますねえ」
見張りの巡査が牢の前に立って、声をかけた男の肩を六尺棒で強く突いた。
「へいへい。悪うございましたね」
男はたいして痛そうなそぶりも見せず、牢の奥へ引っ込んだ。
その場のなにもかもが、恵の頭を素通りする。一歩ごとに股間に食い込んでくる荒縄の毛羽。その刺激に耐えるだけで精いっぱいだった。
取調室は廊下の左右に二つずつと、突き当りにひとつ。その突き当りのドアが開けられて。
「んぐ……?!」
眼前の異様な光景に立ち竦む恵。どんっと背中を突き飛ばされて、たたらを踏んだ。
正面の奥で、外人の娘が細い鉄棒を跨いでいた。恵と同様に素裸で、恵よりもさらに厳しく後ろ手に縛り上げられていた。乳房と尻がどす黒く腫れて、全身に赤や紫の線条が刻まれている。
「…………?」
垂れかかる金髪に隠されてはっきりとはしないが、恵はこの娘を見知っているような気がしていた。
「わかったようだな。二月に女学院を退学した稲枝(いなえ)紗良(さら)だ」
やはりという思いと、まさかという思いが交錯した。稲枝紗良の父親はイタリア人の神父だった。教会での説教で反戦を説いた容疑で逮捕されて、本国へ強制送還された。紗良は、その間に退学している。その後の消息は聞かなかったが、まさか特高警察に逮捕されていたとは。父親の罪と関係しているのだろうか。
それにしても。ずいぶんとやつれている。恵の知っている紗良は、ふくよかと豊満を掛け合わせたみたいな体型だったのに、目の前の彼女は――体の線は細くなったのに乳房と尻は以前の面影を強く残して、性に無知な恵の目にさえ妖艶に映った。
「もっと近寄って、よく見ておけ」
肌が触れ合うほど近くまで押しやられて、恵は思わず顔をそむけた。
「よく見ろと言っておるのだ。事と次第によっては、おまえもここに座らせてやるのだからな」
ひぐっと、恵は息をのんだ。
鉄棒に跨っているように見えたのは、鋼線を編んだ太いワイヤーだった。細い鋼線が切れたりほつれたりしてささくれている。こんな物を股間に食い込まされたら、荒縄の毛羽とは比較にならない劇痛だろう。しかも、膝を折り曲げて縛られ、そこからコンクリートブロックを吊るされていた。ワイヤーが食い込む淫裂は無毛だった。しかし、白い肌ではない。赤く細い筋が斜めに何本も交差している。刃物で切られたとしか、恵には推測できない。
紗良は恵が近づいても、まったく関心を示さなかった。おのれを苛むワイヤーに虚ろな視線を落として、ぴくりとも動かない。身じろぎひとつしても、ワイヤーはいっそう紗良を傷つけるだろう。
「ひととおり、お仲間に挨拶しておけ」
言われて、ようやく。ほかにも二人の娘が、同じように素裸で、しかし別々の格好で拘束されていた。そして、恵を連行した二人だけでなくさらに四人の男たちがいた。
娘のうちの一人は、二週間前に逮捕された山崎華江。後ろ手に縛られ胡坐を組まされて、裸身を二つ折りにされていた。背中にはコンクリートブロックが四つも縛りつけられている。紗良ほどではないが尻が赤く腫れている。
そして、もう一人は椅子に、背もたれを後ろ手に抱く形で縛りつけられて、机を挟んで二人の男と向かい合っている。ひとりは五十絡みの私服で、もうひとりも私服だがせいぜい三十半ばといったところ。すこしはなれた壁際の小机に座っている若い紺サージの制服は、記録係だろうか。
「こいつも知っているはずだぞ」
恵には見覚えがなかった。学年が違えば、名前を知らないどころか顔を見たこともない生徒も少なくない。
「最上級生の川瀬(かわせ)弓子(ゆみこ)だ」
名前だけは知っていた。卒業と同時に結婚する者も少なくはないが、それでも誰某が婚約したという噂は、すぐ学校中に知れ渡る。そういえば――新学期が始まって間もない頃、婚約者に赤紙が来たのだけれど。人が人を殺すなんて悲しいことだと級友に嘆いて、教頭先生に注意されたという話も聞いていた。誰かが特高に密告したのだろう。
「反戦論者に男女同権に、あげくは主義者か。おまえの学校はアカの巣窟だな」
恵は取調官の斜め後ろに立たされた。
「おまえの尋問は明日からだ。今日のところは、強情を張るとどうなるか、よく見ておけ」
恵の左足首に、滑車を介して天井から垂れている縄の一端が縛りつけられた。反対の端を、泊という若い私服刑事が引っ張ると――左足が吊り上げられて、恵の身体が右に傾いていく。
「あ……」
恵はつま先立ちになって、身体が倒れないように踵の位置をずらした。それを何度か繰り返すうちに左足は頭よりも高く引き上げられて、意識して上体を左へ倒さないとひっくり返りそうになる。
「最初だから、すこし甘やかしてやろうか」
恵を縛った男が恵のお下げを引っ張って、左の腿に巻き付けた。おかげで、腰を突っ張っていなくても立っていられるようになったのだが。
「なんじゃ。人が親切にしてやっとるのに、礼も言わんのか」
縄で縊り出された乳房を爪が食い込むほどに握りつぶして、ぎりぎりとひねった。
「い、痛い……ありがとうございます」
「乳を虐めて礼を言われたのは初めてだな。そうか、こうされるのが好きか」
恵の言葉をわざと取り違えて、男はいっそう乳房をひねる。
「違います……転ばないようにしてくださったことに、お礼を言ったのです」
「そうだろうな。虐められて悦ぶなど、あの女くらい……」
「浜村ッ」
弓子に向かい合っていた男が、鋭く叱った。
「余計なことを言うな。それから、浅利クン。キミは下がってよろしい」
浅利と呼ばれた、これも中年の男が、軽く頭を下げて部屋から出て行った。
部屋に残った男たちも、それぞれに場所を変える。恵を逮捕した中年と若手のコンビは紗良の横に折りたたみ椅子を据えて陣取り、海老責めに掛けられている華江には別の若い男がついた。そして恵の前には、それまで部屋の隅で壁にもたれていた、これも若い男。
「そうだ。事の流れで後先になって、すまんな。おい、瀬田恵。そこにいる警部が、おまえを担当する青谷クンだ」
青谷が、恵に向かって軽くうなづいた。
「最年少と聞いていたが、まずまずの身体つきだな」
紗良先輩のように容赦なく拷問できるという意味なのだろうかと――恵は想像してしまった。
「課長殿。この者の尋問は明日からですね。僕はこれで失礼してよろしいでしょうか」
弓子と向かい合って座っている男が、ふっと小さく息を吐いた。
「まったく、キミは淡泊だな。よろしい。他の仕事を片付けておきたまえ」
「では、失礼します」
青谷も退出して。部屋に残っている男は、私服刑事が五人と制服の巡査が一人。弓子たち被疑者を数えると十人にもなるのだが、狭苦しい感じはない。この部屋は教室ほどの広さがあるのだと、恵は気づいた。様々な拷問を同時に行なうための広さだとまでは、知る由もなかったが。
実際、今現在でも――紗良への性器拷問、華江への海老責め、恵への吊り責めが、弓子への尋問と並行して進められているのだ。その、弓子への尋問も(全裸で椅子に縛りつけられているというだけでも)拷問であることに変わりはない。
「さて……どこまでだったかな。慰問の手紙は書いたが、反戦的な文言は一切含んでいない。そう言ったのだな?」
「もう何度も言いました。変なことを書いて、それが上官の目に触れでもしたら、島本が目をつけられて……非道い目に遭います」
「しかし、昨日は『何があっても、必ず生きて帰ってください』と書いたと供述しておるな。自決することなく俘虜の辱めを受けてもかまわんというのは、反戦ではないか」
「そういう意味で書いたのではありません」
「では、どういう意味だッ!」
「…………」
課長が椅子から立ち上がった。机の端に置いてあった細い竹を手にして、弓子の横にまわる。竹の先でチョンチョンと乳首をつついてから、大きく振りかぶる。
ビシイッ!
肉を打つくぐもった音が響いた。
「くうう……」
竹の笞は、膝を椅子の脚に縛りつけられて無防備になっている内腿に敲きつけられていた。
「どういう意味なのだ?」
ビシイッ!
二発目は反対側の内腿を襲った。
(あんなにひどく敲かれて、叫びも泣きもしないなんて……)
恵を吊るした男の言っていた『強情』という言葉を、恵は思い出していた。竹笞など小手調べですらないとは、思い至るはずもない。
「強情な娘だな。いいだろう。他のことを尋ねてやる」
課長は竹笞を机に戻して弓子に正対すると、両手で双つの乳房を鷲掴みにした。
「学校で反戦的な言辞を弄したとき、それに賛同した生徒はいなかったと言うが、ほんとうか?」
第一関節がめり込むまで指を食い込ませて、ぎりぎりと内側へねじっていく。
「ぐうう……弓子は、ほんとうのことしか言っていません」
同じようなことをされたばかりの恵は、弓子が耐えているのを見ても今度は不思議に思わなかったのだが。
課長は手首が返るまで乳房をねじっていった。ほとんど百八十度。見る見るうちに、乳房が赤黒く変色していく。
「つまり、おまえの言葉をたしなめることなく聞いていたわけだ。そいつらも同罪だな」
いったん手を放して掴みなおすと、今度は外側へねじっていった。
「い、痛い……アキ……呆れていただけです」
課長は右手で竹笞を握り、左手に握った乳房をピタピタと叩く。
「うん? アキと言ったな。同級生の岸辺章子のことか? それとも……浦安クン、名簿を持ってこい」
制服姿の巡査が、小机の上に積んである書類から薄っぺらい冊子を抜き出して、課長の前に広げた。
「アキ、アキ、アキ……森山秋江。こいつか?」
「違います。二人とも、いませんでした」
課長が竹笞を振りかざして、掌の上の乳房に敲きつけた。
ビッシイン!
「きひいっ……! 弓子は『呆れた』といっただけです。秋江さんも章子さんも無関係です」
「強情だな」
課長は乳房から手を放して、一歩下がった。そして。
ビシッ!
ビシッ!
ビシッ!
立て続けに乳房を打った。
「しかたがない。この二人を呼んで、当人から話を聞くか」
「やめてください! ほんとうに、二人とも無関係なんです」
「では、だれがお前の話を聞いていたんだ?」
「…………」
不意に弓子の目に涙が湧いた。まぶたにあふれて、開脚させられた股間に滴る。
痛くて泣いているのではないと、恵にもわかる。黙ってきいていただけで同罪だと、課長さんは決めつけた。話を聞いていたクラスメイトを名を明かせば、その人たちも同じように逮捕されて、こんな辱めを受けることになるのだろう。けれど黙っていたら――二人のアキさんが濡れ衣を着せられる。弓子先輩の涙は悔し涙なのだ。
「言え。さっさと白状しろ」
課長は十文字に竹笞をふるって、乳房も内腿も立て続けに打ち据え始めた。
「きひいいっ……やめて……悪いのは弓子なんです。級友は誰も悪くないんです」
一度でも涙をこぼしたら、悲鳴をあげたら、それで気持ちの張りが失われて、それまでは耐えていた痛みにも耐えられなくなる。そのことを、恵はまざまざと見せつけられたのだ。
(明日は、あたしも同じ目に遭わされる……同じ目?)
弓子先輩と同じように敲かれるのだろうか。それとも、紗良先輩みたいな残虐なことまでされるんだろうか。ただ眺めているだけで、想いは千々に乱れる。
「課長殿……」
最初の位置から動かずに、机を挟んで弓子の前に座り続けていた男が、遠慮がちに声をかけた。
「そんなに畳みかけても、答えようがないのではありませんか。しばらく考えさせてやっては如何かと思料いたします」
課長が手を止めた。
「大岩クン。キミは甘いね。しかし、担当官の意見は尊重すべきか。いいだろう。椅子から解放してやたまえ」
「ありがとうございます」
なぜ、大岩という男が礼を言うのか恵にはわからなかったが。とにかく、弓子先輩への拷問は終わったのだと、恵は安堵の息を吐いた。
大岩が弓子の拘束をほどいて、腰を抱きかかえて椅子から立ち上がらせた。
「えええっ……?!」
恵は驚愕した。自分が裸に剥かれたときよりも、よっぽど大きな悲鳴だった。
恵は、生まれて初めて目にする異様な物体と、弓子の股間とを交互に見比べていた。
弓子が座らされていた木の椅子は、座面から禍々しい二本物体が屹立している。座面の縁に近い側には、直径が二寸はあろうかという擂粉木。しかも、擂粉木の表面には不規則な凹凸が刻まれている。擂粉木から一寸ほど奥には、直径が一寸ほどの金属の棒。表面が鮫肌のようにざらついている。木工用のヤスリかもしれない。
そんな椅子に座らされたらどうなるか、どことどこを貫かれるかは、処女の恵でも容易に理解できた。椅子に座らされること自体が、乳房を握りつぶされるよりも竹笞で打ち据えられるよりも、はるかに残虐な拷問だったのだ。
恵の驚愕は、その拷問道具だけではなかった。弓子の内腿に血が伝っているのは、肛門をヤスリで抉られたせいだろう。でも、ぬらぬらと絖っているのは……ユリの愛撫に馴らされた恵には見紛いようもなかった。
「なんだ。物欲しそうに涎を垂らしおって。特製の擂粉木でも食い足りんのか」
弓子の異変に気づいていたのは恵だけではなかった。課長が、それまでの強面顔を崩して下卑た嗤いを浮かべた。
「大岩クン。遠慮はいらん。キミの抜き身で満足させてやれ」
「はいッ、本官の抜き身で容疑者を満足させてやります」
恵には意味不明な復唱をすると、大岩は弓子を床に横たえた。そして、ベルトを緩めてズボンをずり下げた。
(…………!!)
課長と大岩の言葉の意味を理解して、恵は三度(みたび)驚愕した。いや、四度になるだろうか。弓子は大岩の仕種を見上げて――諦めたように目を閉じたのだった。紗良とは違って、まだじゅうぶんに抗うこともできそうなのにもかかわらず。それとも、連日の拷問で気力を奪い尽くされているのだろうか。それにしては、最後まで尋問の言葉を否定していた。
越中褌までかなぐり捨てた大岩の股間には、椅子に突っ立っている擂粉木に似た肉の棒が聳え立っていた。男女の営みとは具体的にどういうことをするのか、恵はたった今まで知らなかった。けれど、擂粉木がどんなふうに弓子を貫いていたかを目の当たりにして、それとそっくりな物が男の股間に生えていれば、おのずと理解してしまう。生まれて初めて見る、男の禍々しい怒張に恵は恐怖さえ感じて――それでいて目をそらせなかった。
「どうした、瀬田恵。さんざっぱら男を咥え込んでおいて、なにを驚いた顔をしている」
恵を縛った刑事が、からかいの言葉を浴びせた。彼は、さらに跨がらせたワイヤーの端に手拭いを巻いて、そこに肘を突いている。
課長が訝しそうに彼を見た。
「浜村クン、それはどういう意味だね?」
「ああ、そうそう。逮捕時の様子を、まだ御報告しておりませんでした」
よいしょっと、ワイヤーをつかんで浜村が立ち上がった。手を放すと、浜村の体重で余計にたわんでいたワイヤーがピンと張って、紗良をかすかに呻かせた。
「実はですね……」
浜村が課長に長々と耳打ちを始める。
その間にも、大岩が弓子の脚を広げさせてその間に腰を落として――左肘で体重を支えておおいかぶさりながら、右手は怒張を握って弓子の濡れそぼった淫裂に導く。
「うんっ……」
ぐいっと、岩村が腰を進めた。
「あああっ……浩二さん、ごめんなさいいい」
弓子が小さく叫ぶ。
「なにが、ごめんさいだ。いとも簡単に咥え込みやがってからに」
ずんっ、ずんっと、大岩が腰を突き出しては引き戻す。
「ひっ、ひっ……」
そのたびに、弓子が小さく喘ぐ。痛みを訴える声――と、恵には聞こえた。大岩の肉棒は、擂粉木よりも細く見えた。けれど、中を掻き回されたら痛いに決まっている。
「なるほど……面白いな。しかし、なんだって、そんなことを?」
「小生にも見当がつきかねております。本人に問い質したほうがよろしいかと」
「うむ……ところで、乃木クン」
課長が思い出したように、華江の横に立っている若い男に声をかけた。
「山崎華江も、そろそろ限界じゃろう。唇が紫色に変じておる。いい加減に赦してやれ」
「そのお言葉を待っておりました」
乃木と呼ばれた男が、華江の背中からコンクリートブロックを降ろした。華江の尻の後ろに靴をあてがって、両肩をつかんでゆっくりと引き起こした。そのまま、壁にもたせ掛ける。
「ほどいてやるが、その前にひと働きしてくれよ」
大岩より年下の、まだ青年の面影を引きずっているこの男も、中年男の厚かましさを見倣うのか平然とズボンをずり下げた。越中褌の中から現われたそれは、大岩よりも細いが天を衝く角度では勝っている――というところまでは、恵には見えない。それでも、腿に縛りつけられたお下げを引っ張りながら振り返る視界の端で、乃木が怒張を華江の口に(!)押し当てているのは見えた。
華江は固く唇を引き結んで、しかし顔をそむけようとはせず、上目遣いに乃木を睨みつけている
「やれやれ、相変わらず情の強(こわ)いお嬢さんだ。男に負けまいと突っ張ったところで、力でねじ伏せられるのはわかっているだろうに」
乃木はわざとらしく嘆息してから、華江をまたうつ伏せに戻した。首と足とをつないでいる縄を、上体が半分ほど起こせるまで緩めた。そうしておいて、今度は膝がしらに靴をあてがって前へ倒す。華江は左右の膝と頭の三点で身体を支えて、尻をうんと突き上げた形にされた。
乃木が華江の後ろへ回り込んで、膝を突いた。
(まっ……!?)
いったい何度驚いたか、もう恵にはわからなくなっていた。ただ――二人の形を見た瞬間、二匹の犬がそんな形になっていて、オトナに水を掛けられていた遠い記憶が甦った。つまり、あれもこういうことだったのだ、と。
乃木が腰を華江の尻に打ち当てて、びくんと華江が前につんのめった。
「くそう……負けるものか」
食いしばった歯の間から、そんな言葉が漏れたのを恵はたしかに聞いた。
大岩と乃木は、それぞれに米搗きバッタさながらに腰を激しく衝き動かしていたが。まず大岩が、憑き物が落ちたようなさっぱりした顔で立ち上がった。壁の棚から落とし紙を取って自分の肉棒を拭い、それから弓子にも落とし紙を放ってやった。弓子はのろのろと身を起こして落とし紙を拾い、それで股間を丹念に拭った。小水の後よりは、ずっと入念な拭い方だった。
大岩が後ろに立つと、言われる前に立ち上がって、自分から手を後ろにまわす。肌にうっすらと赤みが差して頬も上気しているが、目だけは悲しそうに伏せられていた。8の字を縦二つに割ったような金具が、弓子の手首に嵌められた。蝶番で留められている金具を閉じて、そこに小さな南京錠が掛けられた。縄で縛られるよりは楽そうに見える。
腰縄を打たれて、弓子は大岩に取調室から連れ出された。
やがて乃木も華江から離れた。自分の跡始末はしたが、華江の股間は汚れたままに放置して、弓子と同じ8の字形の手枷を嵌めてから縄をほどいてやった。華江も、乃木に腰縄を引かれて取調室から姿を消した。
二人への扱いの差が、つまり従順と不服従の応報なのだろう。
あたしは華江さんよりも無下に扱われるだろうと、恵は覚悟せざるを得ない。まだ未通女なのだ。犯されそうになったら、死に物狂いで抵抗しなければならない。いよいよとなったとき、舌を噛み切って自害まではできないだろうけど――と、そこまで考えて虚しくなった。純潔を守るのは、将来の夫の為だ。でも、変態じみたゴム紐褌を他人の目に曝して、あげくに縄付で街中を引き回された。とっくに、お嫁に行けなくなっている。純潔を守って、それでどうなるというのだろう。
「ずいぶんと休ませてやったな。取り調べを再開するか」
課長の言葉で、恵は絶望の深みから現実という悪夢に引き戻された。
紗良が頭を垂れたまま課長に顔を向けていた。そこには、人形ほどにも表情が浮かんでいなかった。
「こいつも、最近はふてぶてしくなりおってな。どうだね、浜村クン。新入りのお嬢さんに覚悟を決めさせるためにも、ちと張り切ってみるか?」
紗良の顔に怯えの色が奔ったのに、恵が気づいた。この浜村という人は、課長さんよりもずっと残酷な拷問をするのだろう。
「針を使いますよ。かまいませんか?」
「もちろん、もちろん。なんだったら、焼き鏝でもかまわんぞ」
「いやあ、あれは準備が大変ですし」
浜村が、ちろっと恵に目を向けた。
「こっちは、意外とあっさり落ちるかもしれませんしね。病院送りにするのは、もっと先でもよいでしょう」
「それもそうだな」
何事か恐ろしい相談がされたらしいとはわかるが、それが何なのかは、そのときの恵にはわからなかった。
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じつにネチネチとした描写が続いています。
ヒロインの心理も書き込まねばという強迫観念もあります。
このペースが、おそらく最後まで続くでしょう。
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