Progress Report 3:昭和集団羞辱史『売春編:ちょんの間』

 昨日30枚、今日40枚。ちょっと本気を出せば、こんなもんさ。本気を出して執筆時間が長くなればなるほど、時給が下がっていく不思議。
 グッチもアルマーニ。

 最初は予定していなくて、でもSMシーン書きたいので、先輩たちからのリンチを挿入して、でもストーリイの流れが阻害されるので結局やめて。
 明日は最終章(せいぜい20枚)を一揆加勢で終わる予定です。
 帰す彼方で『女護ヶ島(売春島)』には明後日着手予定。

 今回はアイキャッチの先出。有名な「飾り窓」です。

飾り窓

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「いちおう、これを参考にして。あたいも教えるけど、実際に経験した揚羽がいちばん勘所をわかってると思うよ」
 店ごとに仕切った狭い控室ではなく、二階の座敷を使って『緊縛講座』が開かれていた。腰巻一枚の半裸になった勝江が座敷の中央で膝立ちになって、二つ折りにした綿ロープを持った明美が後ろに立っている。脇に置かれた座卓には、縛る手順をイラストで解説したエロ雑誌の見開き。壁に沿って八人の女子従業員が並んで見守っている。男性は立入禁止。女将にも遠慮してもらっている。
 勝江が両手を後ろにまわして、腰骨の上で手首を重ねる。
 縄の折り返し部分ができるだけ短くなるように手首をひと巻きして、さらに縄が十文字になるようにもうひと巻き。縄尻を折り返しに通して引き絞る。
「あ……」
 勝江が呻く。
「ごめんなさい。きついですか?」
 勝江が頭を横に振った。
「だいじょうぶ。他人に縛られるのってこんな感じなんだなあって……」
 なんだか舌がもつれているような喋り方だった。
「気にしないで続けて」
 縄を斜めに引き上げるような感じで乳房の上を巻く。
「もすこし下。おっぱいの根元に食い込ませるくらいに」
 勝江が要点を指導する。
「縄を巻いてからすこしだけ引き絞る感じで。途中の縄留めは、しっかりとね」
 胸を巻いた縄を手首から伸びる縄に絡ませて軽く引き絞る。勝江の手首が縄に引かれて吊り上がる。いったん縄を片輪結びで留める。その輪に縄尻を通して引っ張ると輪が縮まるが、輪が縄を締めつけるので摩擦がはたらいて、そんなにきつくはならない。二の腕の肘に近いあたりから縄を前へまわして下乳を縛る。こちらは縄で乳房を持ち上げるような感じにする。最後に、手首から伸びる縄に絡めて、これも勝江の指導で、ごく軽く堅結びにする。
「あああああ……」
 なまめかしい声で喘いで、勝江が明美の胸に頭をもたせかけた。
(あたしとは、ずいぶん違う)
 縄酔いという言葉を明美は知らなかったし、勝江もそこまで知っているのかどうか。
「あの……続けてもいいですか?」
 上下の胸縄を腋の下で(適度に)絞らないとすぐ緩んでくるのは、自分の体験でわかっている。
「いいの。お金を返さなかった父が悪いんです。揚羽さんになにをされても文句は言いません」
 見世に出る前から、勝江はヒロインに感情移入しきっている。
 二人の役どころは入れ替わったが『ごっこ遊び』の設定は同じだった。父の借金の肩代わりをさせられるヒロインと、彼女を客に取り持つ姐御。姉御がヒロインより幼くては筋立てに無理がありそうだが、そこはちゃんと補強してある。組長に男の子はいなくて、いずれは姐御が幹部の誰かを婿に迎えて組を引き継ぐ。どこかで聞いたような話だ。
 組長が後見に就くとしても、自分より年長の荒くれ男どもを顎で使えるだけの器量が無ければ組は危うい。この歳上の娘をきっちり仕切ってみろ。それが修行の第一歩だ。架空の設定というよりも、勝江の本心の吐露といったほうが当たっているだろう。
 そこまでは明美も察して、悪役になりきった。
「文句を言いたければ、いくらでもいいなよ。俺の手に負えなきゃあ、親父に折檻してもらうまでのことさ」
「ああっ……それだけは赦してください。鞭は、もう厭です」
「ふたりとも、よくやるわねえ」
 勝江が素の表情に戻って、声の主に顔を向けた。
「あら。それじゃ網代さんの善がり声は本気なの?」
 隣の座敷まで響き渡ると評判が立っている。それが、むしろ彼女の売りにもなっている。演技を見抜けないほとんどの客には、娼売抜きで乱れまくる妓として好評だった。
「そりゃあ……半分くらいは本気だけどさあ」
「あたいだって、半分は成り切ってるよ。オマンコを食わせてオマンマを食べてるんだからね。チャランポランじゃ駄目よ」
 なんだかよくわからない理屈だが、勝江の気組だけは伝わったようだ。
「たしかに、ねえ」
 八人がそれぞれにうなづいた。
 明美は気を取り直して二本目の縄を手にした。脇の下をくぐらせて上下の胸縄を絞り、手首の縄に絡ませて縄尻を長く余した。
「もう四時を十五分も過ぎてるよ。支度はまだかい」
 階下からの声で、勝江が立ち上がった。
「それじゃ、揚羽さん。どうかよろしくお引き回しのほどをお願いします」
 そして、小声で付け加える。
「遠慮なんかしないで。あたいに虐められた仕返しをするくらいの気持ちでお願いね。物差も思いきり叩いてね」
「え、あ……はい」
 自分とは『お仕事』に対する気構えが、まるきり違う。そんなふうに考えた明美だった。
「さあ、たっぷりと稼いでもらうよ」
 明美は着物の片肌を脱いだ。まるきり子供の浴衣にしか見えなかった着物姿も、それなりに妖しくなった。わずか一週間だが、明美も男の汁で磨かれて性長を遂げていたということなのだろう。
 ――いよいよ明美の出番と待ちかまえていた二人組の客が、怪訝な顔をした。
「あれ? 揚羽ちゃんが営業さん? その縛られてるのは誰?」
 イチゲン客がほとんどの『ちょんの間』だが、馴染客も少しはいる。ことに、この『ごっこ遊び』は、それまで一度もこの界隈に足を運んだことはないが噂を聞きつけて訪れた客と、他所ではできない遊びに嵌って二度三度と通う客とが入り混じっている。そして口開けにつくのは馴染客が多い。あけみも、この二人連れの一方には見覚えがあった。
「こいつは理非(リイ)っての。昨日までさんざん俺を虐めてくれたからね。今日はたっぷり仕返しをしてやるんだ」
 馴染客を相手に新しい設定を説明するよりも、現実を持ち込んでしまったほうがどっちも演(や)りやすいのではないかと、咄嗟に考えた明美だった。けれど、一人称だけは『ごっこ遊び』でいくことにした。
「お願いです。あたいを買ってください。買ってもらえないと、この場で折檻されるんです」
 明美の意図を悟って勝江も演出を切り替えたのまではいいけれど、とんでもないことを言い出した。
 果たして。客も悪乗りしてしまう。
「へええ。店先で折檻ねえ。こりゃあ、いいや。見せてもらおうじゃないか」
 数秒、明美は考えて。
「やだね。こいつを買いたいってお客は幾らでもいるんだ。冷やかしなら、とっとと帰ってよ」
「ちょっと待てよ」
 馴染客のほうが、ズボンに手を突っ込んで千円札を取り出した。
「どうも、五百円はキリが悪い。見物料を上乗せして四枚でどうだい?」
 予想とは違う展開に、明美は返答に詰まった。
 すかさず、勝江が助け舟を出す。
「あたいを素っ裸に引ん剝いて人前で折檻させて、それで五百円だなんて、あんまりです。せめて、総額で五枚にしてください」
「なんだよ。因業なところは、変わってねえなあ」
 客は鼻白みながらも、さらに千円札を引っ張り出した。
「これで、文句はねえよな」
 戸惑いながらも、明美は五千円を受け取った。
「ああああ、ひどい。人前で、こんな羞ずかしい姿にされるなんて」
 明美がなにも言わないうちに、勝江は床に肩を押しつけて尻を高く突き上げた。
「ああああ、素っ裸にされて、お尻を物差でぶたれるんだ」
 悲嘆にくれた口調で、その実、明美に芝居の振り付けをしている。
(勝江さん、どういうつもりなんだろう)
 すこしでもお金をたくさん稼いで――自分にまわしてくれようとしているのだろうか。
 そうだとしても、いきなり型から外れたことをしたら、控室で見学している人たちが混乱しないだろうか。
「殊勝な態度だね」
 それでも指示されたとおりの芝居をして、勝江の腰巻を剥ぎ取った。背中に差していた二尺の竹尺を右手に握り締める。
「覚悟しな」
 中途半端に振りかぶって、勝江の白い尻に向けて振り下ろす。
 びしゃ……
「……悔しい」
 小さな声でつぶやく勝江。
 もっと本気で叩けというふうに、明美には聞こえた。思い切り振りかぶって、腕に力を込めて叩いた――つもりだったが、どうしても委縮してしまう。
 ピシャッ……
「平気だ。借金を返すまでは、どんなにつらくても我慢するんだ」
 もっと強く叩けと催促している。
 今度こそ明美は、力一杯に竹尺を打ちつけた。
 ビシャアン!
「きひいいいっ……」
 勝江がか細い悲鳴をあげた。演技だと、明美は直感する。
(本気で叩いているのに)
 悔しくて、それが腕に伝わった。
 ビッシャアンン!
「あがっ……」
 悲鳴が喉につかえたような苦鳴。演技ができないところまで追い込まれたのだろう。
 そのとき。明美の背筋に、冷たい快感とでもいうような感覚が生じた。じいんと膣奥が熱く疼いた。
 ビッシャアアン!
 ビッシャアアン!
 ビッシャアアン!
 立て続けに三発を叩いた。視界の隅に動きを感じて暖簾を振り返ると。十人ほども人の壁ができていた。
 これ以上やると収拾がつかなくなる。豆を刺激されたときの忘我の快感と違って、冷静な判断がはたらいた。
「とりあえずは、これくらいで赦してやるよ。もっとも、お客さんがお望みなら座敷でもたっぷり折檻してやるからね」
 不思議なくらいすらすらと台詞が口を衝いて出た。
 勝江が芝居がかって、のろのろと立ち上がる。
「縄尻を前に……」
 客に聞こえない声でつぶやいた。
 自分がされたのだから仕返して当然。そんなふうに思いながら、長い縄尻を股間から前へ通して、淫裂に食い込ませて引き上げる。
「さあ、お務めだよ」
 縄尻を引いても、勝江は動かない。
 今さら何をためらうこともないだろうにと訝しんで。思い当って、グイと縄尻を引いてみた。縄がますます股間に食い込んで。
「あううう……」
 雲を踏むような足取りで歩きだした。
 まさしく雲を踏んでいるのだと、明美は理解した。縄が股間に食い込んで、痛いのだけれど痺れるような快感がそこに潜んでいる。悦虐という言葉を知らない明美だったが、言葉に表わせない漠とした理解が明美に生じた。
「お客さん。理非が立ち止まったりしたら、遠慮なくお尻を叩いてやってくださいね」
 それは客へのサービスなのか理非へのサービスなのか、明美自身にもわからなくなっていた。
 ――二人の客を座敷に揚げて。勝江の手順に倣って盆を取りに下へ戻る。隣の座敷の襖がわずかに開いてすぐに閉じたのに気づくだけの心の余裕があった。すでに『一新』と『縁奇』は最初の客を座敷に揚げているだろうし、顔見世の場にもそれぞれ誰かが就いていれば、隣の座敷で見学をしているのは多くても三人。そう計算したのだが。
 他店はともかく『江楼』は、顔見世の場に女性従業員の姿がなかった。遣手婆のマツだけが所在なげに煙草を吹かしていた。
 考えてみたら当然かもしれない。浮橋と牡丹が休みで鳴門が生理中だから、明美と勝江のコンビを除くと営業中の女子従業員は七人。『一新』と『縁奇』に三人ずつの配置になっているが、見学にまわる者もいるから、実質的には二人か。『江楼』でふつうに営業しているのは巴だけだから、今は接客の真っ最中なのだろう。
 自分たちの『お仕事』を先輩たちに見られていると、あらためて意識して。目覚まし時計とゼリーと茶菓子の三点セットを持って二階に――お客が勝江をゆっくり感傷なり悪戯なりできる時間を計算してゆっくりと戻った。
 座敷にはいって、あらためて挨拶をする。
「このたびは理非(リイ)をお買い上げいただきありがとうございます。すぐお使いになりますか。それとも、折檻の続きをいたしましょうか」
 いつもとは違う流れになったから、挨拶も即興になった。
「すぐでいこうや。時間が余ったら折檻ショーでも見せてもらうか」
 十五分なら(童貞が暴発でもさせないかぎり)時間の余りようもないが、三十分ならお義理程度の前戯をする客もあるし、寝物語の真似もできる。たいていの女子従業員は前者を嫌がるが。
「そうですか。では、さっそくに」
 布団の上に横座りしてそれらしく顔をうつむけている勝江を押し倒して、指の腹に絞り出したゼリーを塗り込めたのだが。
(勝江さんたら、すごい淫乱なのかしら)
 潤滑の必要がないほどに、膣穴はぬかるんでいた。
「それじゃ失礼します」
 すでにズボンを脱いでいる客の前にひざまずいてゴムを装着するのだが。ひさしぶりのことなので手間取ってしまった。
「ご所望の形はありますか?」
 勝江との打ち合わせでは、座卓に腹這いの姿勢で縛りつけての鵯越え(後背位)と決めてあったが、馴染客となれば前回とかぶっているかもしれない。変態的な刺激を求めて通ってくれるのだから、それでは申し訳ない。
「そうだなあ。押し車で尺八てのを考えてたんだけど。できるかな?」
 尺八とはフェラチオのことだ。勝江がしばしば口にする四十八手のひとつではない。四十八手は体位を細かく分類したものだが、尺八は行為そのものを指す。言ってみれば『挿入』と同じ普通名詞だった。しかし『押し車』は知らなかった。『御酒車』とは違うのだろうか。
「あの……折檻を赦してくださるんでしたら、初めてですけど頑張ってみます」
 勝江さんも大変だなあと、明美は感心した。受け身で虐められているように見せかけて、明美に代わって場を仕切っている。
 勝江の(それとない)指示で、縄をほどいた。縛り直すのが手間だなあと、心の中でぼやきつつ。
 勝江は四つん這いになって、言い出しっぺの客に尻を向けた。
「虐めてください」
 可愛がっての反語表現だろうが、『ごっこ遊び』の設定にふさわしい言い方かもしれない。
「お、おう」
 客は膝立ちになって勝江を貫いた。
「よし、立つぞ」
 両手で太腿を抱えて、客が立ち上がった。勝江は脚を伸ばして客の胴を挟み、両手を突っ張る。
「へえええ。なんか運動会を思い出すなあ」
 連れの客が口にした感想で、明美も気づいた。この姿勢(もちろん挿入は無し)で十メートルくらい先の旗まで進んで、Uターンして戻って来るリレー競技だ。男女ペアで、そういえば必ず女子が押され役だった。男子に人気で女子には不評だった。男子のほうが力があるから仕方ないと思っていたが、もしかしたらオトナはこっちを連想していたのだろうか。とんでもない競技だ。
「揚羽姐さん、ゴム」
 小声でうながされて、慌てる明美。
「ごめんなさい。ゴムを着けさせていただきます」
 意馬心猿の客に取りついて、大急ぎでゴムを着けた。
「なんだよ。口で妊娠するわけねえだろ」
「いえ……口の中って、けっこうバイ菌がいるんです。尿道炎とかの予防ですから」
 こう言えば拒む客はいない。
 そうして、押しても引いても動かない『押し車』が始まった。
 ぱんぱん、ぱんぱん、ぱんぱん……
 淫嚢が勝江の淫埠を打つ音が響いて、勝江の裸身が前後に揺れる。その動きで、口に咥えている淫茎も勝手に出入りする。
「んん、んん、んんん、んんんんん」
 鼻声がだんだん艶めかしくなってくる。淫嚢が豆をつついているのだと、明美が気づく。
(だけど……エロっぽいだけだなあ)
 ずっと『ごっこ遊び』ばかりさせられてきた明美には、縄の無い光景が、なんだか物足りなく思える。
 しかし、男には具合の良い体位なのかもしれない。女性が自分でしっかり身体を支えているし、男性は立っているだけだから、自由に腰を使える。女性の上体が前後に揺れるから、抽挿の動きが増幅される。
「んぶうう……」
 後ろの客の動きで切迫の度合いがわかるのだろう。ずぢゅううと淫茎をすすったり、顔の角度を変えて裏筋をしごいたり。後ろから追い上げられて、前を追い上げる。
 明美は部屋の隅に座って、三人の痴態を眺めるばかり。裸の女性を下半身だけ脱いだ二人の男性が前後から『H』の字に挟んで、米搗きバッタみたいに腰を振っている。馬鹿々々しいしつまらない。こんなことに大金を払うなんてなにを考えているんだろうと思う。もっとも。豆を刺激されて全身を稲妻に貫かれ空中高く翔けるような、あの感覚。まだ瞬間的だし『お仕事』のたびに感じるわけでもない。けれど、あれが癖になったら――むしろ、こっちからお金を払ってでもしてもらいたくなるかもしれない。それくらいには、SEXに対して肯定的になってきていた。
 勝江の身体が布団に投げ出されて。客がほとんど同時に埒を明けたのだと、恵は気づいた。目覚まし時計を見ると、あと十五分も残っていた。
(どうしよう)
 客が早めに終わるのは、これまでにもたびたびあった。その後は勝江がうまく間を持たせていたのだが――雑談で時を稼いだり、明美が指技で追い上げられるところを見せたり、二人の身の上話を(あれこれと脚色して)打ち明けたり。客に応じて違っていたから、いざ参考にしようとしても、どれを選べばいいかわからなかった。
 しかし、それも勝江が取り仕切ってくれた。
「ああああん。あたい、まだ逝ってないのにい。揚羽姐さん、なんとかしてください」
 勝江の指示は理解したが。『お仕事』を忘れているんじゃないかと疑った。女が女を弄るところなんか見せても仕方ないのに。明美はレズビアンという言葉を知らなかったし、たいていの男にとっては、男と女が絡み合う構図より女同士が絡み合う構図に興奮するなど、たとえ教えられても理解できなかっただろう。けれど。それを言えば、女が折檻されるところだって、なにが面白いんだろうとは思うのだけど。代案を思いつかない以上、勝江の判断に従うしかない。
「なんだよ。お客さん二人に可愛がられて、まだ足りないってのかい。とんだ淫乱女だねえ」
 役柄に成り切って勝江の口調を真似たのだが、藁半紙に書かれていた悪口を思い出したせいもあった。
 立ち上がって勝江の横に行き、これも勝江の真似をして、裾をわざと乱して立膝で座った。
「ゴム……」
 ささやかれて、失態に気づく。が、『ごっこ遊び』でつないだ。勝江の股間を指で穿って、メリーの混じった分泌物を客に見せつける。
「こんなざまですよ」
 勝江い顔を戻して。
「もうちょい待ってな。先にお客さんを片さなくちゃね」
 枕元の桜紙をわしゃっとつかんで客ににじり寄り、桜紙で包みながらゴムを抜き取り汚れを拭う。それをまとめて屑籠に捨てて、勝江に向き直ったのだが。
「思いきりつねって」
 また囁かれて面食らった。自分でちょっと触れただけでも腰がぴくんと跳ねるくらいに敏感な部分だ。刺激されたら甘い稲妻に貫かれる。そこをつねったら――どうなるのだろう。乳首だって、強くつまめば痛いのだから……
「なんだよ、こんなに尖らせちゃって。お望みどおりに虐めてやるよ」
 半ばは莢から顔を覗かせている豆を親指の腹と人差し指の第一関節とで挟んで――手加減して文句を言われた竹尺を思い出して、力いっぱいにつねった。コリッとした手ごたえがくにゃっとひしゃげて。
「ぎゃわああああっ!」
 聞いたことも、もちろん自分で叫んだこともないような凄絶な悲鳴だった。慌てて手を引っ込めた。
「痛い、痛い痛い……」
 勝江は両手で股間をかばって、布団の上で身体を『く』の字に折っている。しかし。その鳴き声に陶酔を聞きつけてしまったのは――明美の素質ゆえだったろうか。
(痛いのはほんとうだろうけど……)
 激痛に匹敵するほどの快感もあるのではないだろうか。確かめてみたい誘惑に駆られた。
「なんだい。お望みどおりに、どうにかしてやったんじゃないか。もっとしてやるよ。あお向けになって、股を開きな」
 果たして。勝江は素直に身体を伸ばして脚を開いた。最初の頃の明美のように、両手で顔を隠した。
(絶対に愉しんでる……ううん)
 陶酔しているのだと、明美は確信した。
 ふたたび豆を指の間に挟んで、今度は半回転ほども力まかせにつねった。
「ひゃぎゃわああああああっ……!」
 凄絶な悲鳴が尾を引いて、空中に溶け込んだ。
 それでも、つねったまま明美は力を緩めない。
「うああああ……痛い。痛い……」
 勝江はうわ言のようにつぶやいて、びくんびくんと腰を震わせた。オーガズムに達したと、明美にはわかった。が、客はそこまで女の生理にも心理にも通じていない。
「おい、もう赦してやれよ。芝居にしても、やり過ぎだぜ」
 客に肩を叩かれて、ようやく明美は指の力を緩めた。
 勝江が糸の絡まった操り人形みたいにぎくしゃくと上体を起こした。
「ひさしぶりに気を遣れました。ありがとうございます」
 客に向かって頭を下げた。
 明美も芝居をやめて、勝江と並んで頭を下げた。
「礼を言うのはこっちだよ。この街にもずいぶんと通い詰めたけど、今日みたいなのは初めてだ。五千円分、きっちり愉しませてもらったよ」
「つぎは一万円分なんて言っちゃあ厭ですよ。こっちが壊れちまいます」
 アハハハと、毒気を抜かれた笑いが返ってきた。

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 こっちは、いわゆる「立ちんぼ」です。さすが西洋先進諸国です。
街娼

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