Progress Report 7:昭和集団羞辱史『売春編:女護ヶ島』



 フルタイム妄想人になったのに破瓜どらないと嘆いていましたが、前のレポートではピンク宴会実況中継をして、それから「売れっ娘」28枚、「初の絶頂」68枚、「駆け落ち」30枚と合計126枚を4日ほどで書き進めました。
 「初の絶頂」では、濃厚なレズビアンの媾合が繰り広げられます。たとえば、こんなのです。

レズ69a
 あとは本編をお買い上げのうえで愉しんでいただくこととして。
 今回は「駆け落ち」の章を御紹介。延々260枚書いてきて、次章からようやく鬼畜SMシーンに突入です。


 あ、本編の上電は11/1を目標にしています。表紙絵も紹介文も完成して、残るはあとは本文の残り(100枚くらい?)だけという、変則的な進捗状況です。



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   駆け落ち


 ホテルのレストランは午前八時から開く。ふつうのホテルに比べてずいぶん遅いが、宿泊客のほとんどは夜更かしをしているから、これくらいでちょうど良い。ちなみにチェックアウトは正午までで、チェックインは他のホテル同様に午後三時からである。ワタルは午前九時から十一時まで、ショートに六十分の延長をつけて美冬を独占した。といっても、さらに媾合(こうごう)を重ねたのではない。服を脱ぐことさえせずベッドに腰掛けて、ただ抱き合い、ときおり思い出したようにキスを交わしていただけだった。
 それは、美冬が生まれて初めて味わった、至福の二時間だった。
 もっとも、ワタルがチェックアウトしてからは、ちょっとした地獄が待っていた。ほとんど夜通しであまりに激しく腰を使っていたので、背筋を伸ばしていられないほど腰が痛かったのだ。そのせいで午後からのショートは断わったのだが、ロングまで拒むと変に思われかねないので、しぶしぶ客を取った。
 そして、客がたじろぐほどに美冬は乱れた。ワタルとの媾合の余韻が、そうさせたのだ。しかし美冬にとってみれば、きわめた絶頂はあまりに低かった。エベレストに登頂した登山者がハイキングコースの山頂に立つようなものだった。

 そのハイキングコースの山頂も、翌日からは到達しにくくなった。ワタルの繊細で執拗な指技や腰使いに比べれば、男たちのそれは稚拙で乱暴で、しかも熔岩を滾らせるだけの持続もなかった。
 美冬の接客態度は日を追って変わっていった。快感への過度な期待なんかしないで、うわべだけは客に甘え、心を切り離した媚びを売って、仕事として客に抱かれ、客が本気に受け取るくらいに喘いだり善がり声をあげて、時間がくれば淡々と客の跡始末までして営業を終える。ようやく落ち着いた、娼婦としての自覚を身に着けたと――そんなふうに美冬を見る女子従業員も少なくはなかったが、少女時代は上流階級に属し、戦後の没落でRAAを経て一時は街娼を仕切っていたこともある女将は、美冬の変貌に隠されている真相を薄々は察知していたのかもしれない。
 ワタルと別れて三日経ち、五日経ち、一週間が経った。
 午後二時の船で着いた客のうち五人を、サザンホテルの客引きが引っ張ってきた。三人連れは予約客で、あとの二人はフリの客。美冬は三時半の便で到着予定の団体客につくことが決まっていたが、賑やかしの意味で、名札のかわりに『予約済』の札を帯に挟んで客を出迎えた。
 フリの客の一人が、美冬に目をつけた。
「案内はお嬢さんに頼みたいんだが――予約済ねえ。それじゃ、こっちも予約といこうか。そうだな、明朝の九時半からショートをお願いできるかな」
 九時半から一時間となると、その前にも後にも別口を入れづらい。以前の美冬だったら時間をずらしてほしいと注文をつけていたところだが、今ではむしろありがたい。どうせ、今月の給料は捨てるのだ。
「はい。野島さん、お願いしますね」
 フロントに立っている副支配人に、声を掛けておいた。
 その日は八人の団体客の世話をして、その宴席にも侍って、きっちり三時間のロングをこなすと、未練そうな客を振り切って自分の部屋で寝た。ワタルの甘い体臭に比べると、どんな男の臭いも今ではうっとうしいだけだった。以前は、その獣じみた匂いが性的興奮にもつながっていたというのに、たった一夜で美冬の嗜好はすべてがワタルを基準にしたものとなっていた。
 翌朝はレストランで壁の花にならず、たっぷり朝寝坊した。厨房で朝食を摂って、部屋で身支度を整えているところに、くだんの予約客が訪れた。連れがレストランから仲居を連れて来てしまったので、こちらですることになったと、客が説明した。よくあることなので、美冬は気にも留めない。
「それでは、お相手をさせていただきます」
 きちんと正座して三つ指を突いて。帯を解きにかかったところで、客がとんでもないことを言った。
「いや、そういうつもりで来たんじゃない」
 わけのわからないことを言う客だ。変態的な要求をするつもりだったら――と身構えかけた美冬だったが。
「神月ワタルさんからの使いです。これで、十一時の船に乗ってください」
 客はポケットから乗船券を取り出した。言葉づかいもあらたまっている。
「神月さんは別の旅館に泊まっていて、同じ便で島を出ます」
 美冬は、差し出された乗船券に手を伸ばしかけて、ふと止めた。
「あなたも乗船券がないと困るのでしょ?」
 やだなあ――と、客はもう一枚の乗船券を取り出して見せた。
「三人で別々に乗船券を買って、一人は急用が出来て船に乗らなかったんですよ」
 一人で二枚買うと買うと怪しまれると思っての計略だろう。さすがはワタルさんだと思ったのは、惚れた欲目とも限らない。見知らぬ人間の誘いに乗って島から逃げ出したら、全然違う悪人が待っていた――なんて心配をしなくてすむように、わざわざ島まで来てくれたのだ。美冬はまた『まぼろし探偵団』を思い出してクスッと笑った。
「わかりました。ありがとうございます」
 美冬は乗船券を押し頂いた。
「時間までこの部屋にいないと疑われますから、申し訳ないが、こちらは気にせずに支度をしてください」
「そうですね」
 美冬は、まず置手紙を書いた。
社長様、女将さん
 いきなり逃げてしまって、すみません。
 貯金通帳は残していきますので、返済の一部にあててください。残りの借金は、月すこしずつでも現金書留で送ります。ですから、両親には談判をしないでください。前借のお金で田んぼを買い取ったので、手元には残っていません。
 受けた恩を仇で返して申し訳ありません。
かしこ
北野ユキ
 
 紙を二つに折って、そのうえに貯金通帳を置いた。印鑑は女将が持っている。
 美冬はクローゼットを開けて、十着ほどもある服に未練の一瞥をくれた。ちょっとそこまで外出するのに、鞄を持っていくのはおかしい。まだ一度もしか着ていない秋物のツーピースも置いていかなければならない。
 普段着にしているブラウスとカーディガンとふんわりした膝丈のスカートを取り出した。シュミーズの上にペチコートを重ねてスカートを膨らませたのが、精一杯のお洒落だった。
 いちばん迷ったのが化粧だった。あまり濃くすると、船に乗るときにホテルの従業員だと見破られるかもしれない。薄化粧だと、ホテルの人間に怪しまれる。ほどほどに化粧をして、ちょっと古臭いけれど、美冬が子供の頃に流行った真知子巻きを真似てスカーフで顔を包んだ。
 十時半過ぎに、美冬はチェックアウトする客に同伴する態を装ってホテルを出た。
「ちょっとお客様をお土産屋さんに案内してきます」
 その客をほんとうに土産物屋に案内して、そこで別れた。
「それじゃ、あとはごゆっくり。こっちは、次の便まで様子を見届けて、今夜にでも神月さんに連絡します」
 連絡はワタルの住処へだろうか、それとも今夜の宿を教えてあるのだろうか。そういえば、彼がどこに住んでいるのかも、ユキは知らなかった。が、そんなことはどうでもよかった。北海道だろうが鹿児島だろうが八丈島(まさか)だろうが、ワタルの居る場所がユキの棲む場所なのだ。
 顔見知りに声を掛けられないか、切符を怪しまれないかと内心で怯えながら、訪問客用のゲートから波止場に降りて、ふたりを約束の地へ運んでくれる船に乗り込んだ。ワタルは船室で待っているはずと教えられていた。半年間働いていたホテルを振り返りもせず、船室にはいった。
 そこに、ワタルがいた。革ジャンパーにハンチング帽と、見た目は様変わりしているが、彼のまわりだけはっきりと空気が違っている――というのは、ユキの感想だが。
 ユキは高鳴る鼓動を追うように足早にワタルのところまで歩いて、隣の席に座った。買春に訪れて宿泊した客の多くは十二時半の便に乗る。がら空きの船内で、見知らぬ(はずの)男女が並んで座るというのは不自然な行動だったが、ユキはそこまで考えなかった。ワタルも、乗ってしまえば関門通過と思っていたのだろう。
 もっとも。どれだけ二人が用心していたところで、この駆け落ちは最初から失敗していたのだ。
 二人が並んで座るとほとんど同時に、すぐ後ろの席と、三つ前の席、そして斜め横の席から三人の男が立ち上がった。そして、ユキとワタルを取り囲んだ。
「現行犯てやつだな。二人とも船を降りてもらおうか」
 顔を引き攣らせながら、ワタルが立ち上がった。三人に囲まれてみると、いかにもワタルは華奢に見えた。
「誰がどこに行こうと自由だろう。公衆の面前で誘拐でもするつもりか」
 三人のなかで年長の男が薄嗤いを浮かべた。
「語るに落ちたな。それは、こっちの台詞だ。皆さん、こいつは借金を抱えた女を騙して連れ出しては他所に売り飛ばしている悪人です」
 数少ない船客を味方につけようと、周囲に語りかける。
「借金で縛りつけるのは、労働基準法第十七条に違反している。それくらい知らないのか」
 ワタルは法律で対抗しようとしたが、相手のほうが上手だった。
「この娘と両親は、前借のときに一年間の労働契約を承諾している。駆け落ちなんざあ、やむを得ない自由には当たらないぜ」
 借用書には細かい字でそんなことが書かれていたような記憶が、無いこともなかった。そうだ、思い出した。一年間というのは、それが法律で決められているからで、来年の三月には借用書を書き換えることになるとか、即日採用社の林課長が言っていた。
 ワタルは論破されて言葉を失っている。
「納得したところで、一緒に来てもらおうか」
 法律論でいえば、連れ戻されるのはユキだけで、ワタルを無理強いに連行するのは犯罪行為だろう。しかしワタルは、三人に逆らわなかった。愛する者を悪漢(?)の手にゆだねて逃げ出すようでは、恋人の資格、いや人間の資格は無い。
 ワタルはユキを護るように肩を抱いて、三人に囲まれて船を降りた。いや、ワタルがユキに抱きすがっていたのかもしれない。膝が震えて立っているのがやっとだというのが、ユキにはわかった。
 無理もないという思いと、まさかという思いとが、ユキの胸中で交錯する。ワタルは女性なのだ。その事実が露見したら、ただでは済まないだろう。しかし、この人たちはホテルの関係者に決まっている。法の網をくぐるような娼売をしているが、堅気の人たちだ。ヤクザみたいな真似はしない――と、期待していいのだろうか?
 二人が連れて行かれたのは、『サザンドリーム』の地下にあるゴミ集積所だった。ホテルから出るすべてのゴミは、ここに運ばれて大きなコンテナに貯留される。週に二回、空のコンテナと入れ替えられる。雑役夫の出入りはあるが、それも出入口に面したコンテナの投棄口までで、不潔な環境の奥まで踏み込んでくる物好きもいない。リンチに掛けるにしろマワシに掛けるにしろ、山奥よりもよほど人目につかない。
「こんな所へ連れ込んで、僕たちをどうするつもりなんだ」
 ワタルは虚勢を張っているが、顔面は蒼白になっていた。
「さてね。それは、ここの社長とも相談するが――おまえは、ここから無事に出られないのは確かだな」
「この人を殺すつもりなんですか!」
 とんでもない言葉に、ユキが金切り声で叫んだ。
「まさか。しかし、どこへ引き渡したってコンクリ詰めだろうな。それとも、薬漬けにされて廃人になるまで変態客に弄ばれるか、案外と外国へ売られてハーレムで優雅な生活ができるかもな。なんたって、おまえは女だからな。ええ、神田京子ちゃんよ?」
「神田……」
「それが、こいつの本名だ。神月ワタル、明石カオル、那智ヒカル――さまざまに偽名を使い分けているがな」
「そして、どの名前にもどこかしらからか手配書が回ってるってわけだ」
 この島は地理的な条件と協業組合の結束でヤクザを締め出しているが、ほとんどの売春地帯はヤクザが絡んでいる。そのヤクザ組織の複数から、ワタルは目の敵にされているのだった。
 しかし、三人の男たちはワタルとユキを取り囲んだまま、すぐには危害を加えるふうでもなかった。
 そこに、五人の男女が現われた。このホテルの社長と女将のほかはユキの知らない顔だったが、島内の売春旅館の支配人や持ち主――協業組合の幹部連中だった。
「よくも、後足で砂を掛けてくれましたね。厳しくお灸を据えてあげますから、覚悟しておきなさい」
 女将の指図で、ユキはワタルから引き離された。
「あたくしたちを舐めたらどうなるか、よく見て胆に銘じておきなさいね」
 二人を連行した三人のうちの一人が、ユキを羽交い絞めにした。しただけで、悪戯を仕掛けてきたりはしない。そんな桃色めいた雰囲気は、この場に一欠けらもない。
 三人のうちの残る二人がワタルに取っついて――革ジャンパーを脱がそうとする。
「やめろ!」
 言葉はきついが、身を庇おうとする仕種は女性そのものだった。
 二人のうちの若いほうがワタルを羽交い絞めにして、年長者は――
 ガシン! ガシン!
 ワタルの頬桁に拳骨をくれた。
「ぐうう……」
 虚勢なのか憎悪なのか。ワタルは相手を睨みつけた。
「この期に及んで、まだ男の真似をしたいのか?」
 ボスン!
 腹に拳骨を叩き込まれて、ワタルの膝が砕けた。羽交い絞めにされているので、倒れることも出来ず半ば宙吊りになった。
 男がさらに腹を殴りつける。
「やめて……! 人殺し!」
 悲鳴をあげるユキ。その口を掌でふさがれて、咬みつく。
「痛てっ……この阿媽」
「おい。売り物に瑕をつけるんじゃないぞ」
 ワタルを殴っていた男が機先を制して叱咤する。
「かまいません。どうせお灸を据えるのですから」
「いやいや。美冬でしたかね。この子も考えようによっては被害者です。手荒な真似は可哀そうでしょう」
 支配人だか亭主だかが取り成した――のではなかった。
「要は、この子をおとなしくさせればいいのでしょう。おい、とにかくそいつを引ん剝いてしまいなさい」
 年長者は拳骨を引っ込めて、ワタルのシャツを引き千切った。
 ワタルは抵抗を諦めて、されるがままになっている。
 胸を潰していた晒し布がほどかれると、支配人がそれをひったくった。
 ワタルのズボンがずり下ろされ、ブリーフも脱がされる。支配人はそれを小さく丸めてユキの前に立った。
「手をどけなさい」
 ユキの口許に丸めたブリーフを突きつける。
 男の意図は明白だったが、それに逆らう気力などユキには無い。口にブリーフを詰め込まれ、その上から晒し布を巻かれて完全に言葉を奪われた。
 支配人はユキの両手を背中にねじ上げさせて、晒し布で縛った。さらに、床に転がして脚を『く』の字に折り曲げて足首を縛った。
 ユキは言葉だけでなく一切の行動まで封じられた。ユキにできることは、ただ床に転がって横倒しの風景の中でワタルが辱しめられるのを眺めるだけだった。
 ワタルは全裸にされて(ユキよりは、よほど女として性熟した身体つきだった)、まだ羽交い絞めにされていた。
 その前で、五人が鳩首談合を始める。ほんとうにワタルの処分を決めていなかったのか、それとも引導を渡す猿芝居なのか。
「やはり、どこかの組に引き渡すのが筋ですかな」
「でも、他の組織が黙っていないと思いますわ」
「いっそ、競売にでも掛けるか」
「いや、それではうちらが深くかかわることになる」
「厄介だな。ここで始末してしまうか」
「もったいない。生かしておいて、何度も半殺しにするというのは面白いと思わないか」
「手間暇かけて、阿呆らしい」
「そうでもないぞ。女を甚振って興奮するという変態は、結構いる。それも、先生とか御大なんて呼ばれる連中が多いとか」
「わしには、そんな趣味は無い」
「いや。そういった連中を呼び集めて、秘密ショーを開くのだ。さいわい、ここにはストリップ小屋がある。もちろん、招待客限定だ。入場料をいつもの百倍くらいにすれば、儲かるぞ。さいわい俺はその手のサークルを幾つか知っている」
「あんたは、その会員か」
「黙秘権というやつだ。この女を助けてやることにもなるぞ」
「助けたくもないが……どういうことだ?」
「ショーの上がりで、それぞれの組織に手配を取り消してもらうんだ。こっちに(親指と人差し指で輪を作って額に当てた)口を利いてもらえば話はつくんじゃないかな」
「女を助けて――最後まで生きていれば、だがな。ヤクザの面子も立てて。わしらは只働きか。くそつまらん」
「いや、三方一両得といこう。なにも、上りのすべてを身代金に充てなくてもかまわんだろう。わしらも、たっぷり儲けさせてもらうさ」
「あら、素敵なお話になってきましたわね。あたくしも森田さんの意見に賛成いたします」
「では、決まりですな」
 女将に森田と呼ばれた初老の男が、ワタルを振り返った。
「聞いての通りだ。たっぷり稼いでもらうぞ」
「断わる!」
 当然の拒絶だった。生きている限り無限に半殺しのリンチに掛けられるくらいなら、あっさり殺されたほうがずっと楽だ。
「断わるのは勝手だ。そうだな。ショーに出すとき以外は縛り上げておいて、舌を咬めないよう竹筒でも突っ込んで、そこから流動食でも流し込んでやれば、一年でも二年でも生かしておける」
 がくりと、ワタルの頭が垂れた。死刑よりも過酷な宣告には、心が折れて当然だろう。
「とりあえずは、ふん縛っておくか」
 森田はあたりを見回して――奥の棚にある荒縄を見つけた。
「女をここへ連れて来てくれ。そこにおあつらえ向きの木箱がある。ここに入れておけば、誰にも見つかるまい。見つかったところで、問題は無いがな」
「あああ……」
 羽交い絞めのまま奥へ歩かされながら、ワタルがユキを振り返った。
「ごめんよ、美冬……さようなら!」
 ぼろぼろと涙をこぼすワタルは、男装の麗人の面影もなく、凶暴な男どもに囲まれた哀れな小娘でしかなかった。
 社長がユキの縛めをほどいた。
「おまえは、うちのやつに折檻させてやる。なに、可愛い顔にも玉の肌にも痕が残らないように手加減は……あ、こら!」
 ユキは手足が自由になるなり、社長を突き飛ばして立ち上がると奥へ駆けて行って、荒縄で縛られようとしているワタルに抱きついた。
「んんん、むうう!」
「邪魔をするな。いくらサザンの妓でも容赦はせんぞ」
「むぶうっ! ん゙ん゙ん゙……」
 男が二人掛かりでユキを引き剥がそうとするが、ユキは床に座らされているワタルの背中に渾身の力でしがみついている。
「この……痛い目に遭わんとわからんのか」
「お待ちなさい。この子にも言い分があるのでしょう」
 女将が、ユキの猿轡をほどくように言いつける。
「あたしもワタルさんと一緒に半殺しにしてください!」
 言葉を取り戻すなり、ユキは絶叫した。
「ほんとうに悪いのは、あたしなんです。どうしてもワタルさんと一緒になりたかったから……」
 ユキの両眼からも大粒の涙がこぼれた。ワタルと違って、大声で泣きじゃくる。
「いやだ……ワタルさんを助けて……それが駄目なら、一緒に殺してください」
「美冬……」
 ワタルが身をよじってユキに向き直った。すでに手首は後ろ手に縛られている。肩をこじて、身を振りほどこうとする。
「馬鹿なことを言うんじゃない。これは、僕の身から出た錆なんだ。きみを巻き込みたくない」
 ユキは泣きじゃくりながら、ひたすらにしがみつくばかり。
(駆け落ちをしようとしたあたしがいけないんだ)
 実際にはワタルから持ち掛けられた話だが、ユキの頭の中では逆になっている。いや、二年も待てないという想いは二人とも同じだった。だから、どちらが先に言い出したなんて、関係ない。この人がいなければ、生きている意味が無い。この人と一緒なら、どんな生き地獄だろうと耐えられる。希望から絶望への落差がユキの心を打ち砕いていた。その精神の破片の中に残った最後の望みは、肉体の快楽を超克していた。
「参りましたわね」
 女将が溜め息とともに匙を投げた。
「もう、この妓(こ)は使い物になりません。いずれは諦めるでしょうけど、そのときには魂の抜け殻になっています。まさか、南極一号をお客に抱かせるわけにもいかないでしょうよ」
 南極一号については『ちょんの間』で説明したので、ここでは省く。
「その妓の願いを聞き届けてやりましょう」
「へ……?」
 その場にいる七人の男が一斉に怪訝な顔をした。
「二人まとめてか、代わり番こかはともかく。森田さんのおっしゃる変態ショーに二人して演(だ)してやれば、二倍は長持ちするでしょうよ。この妓の売り上げは、うちが六割で組合が四割。もちろんヤクザには渡しません。これで、あたくしたちだけは三両得ということになるんじゃありませんか」
「さすがは、アメリカさん仕込み……」
 ジロリと睨まれて、森田は口を閉ざした。女将がRAA出身だということは公然の秘密ということらしい。
「いや、二人となると、別の演し物もありますな」
 森田はめげずに、儲けを二倍ではなくさらに膨らまそうと企む。
「この夏に、ストリップでやった本番シロシロ・ショー。あれは、すごい人気でしたね。この二人に演らせれば、大評判間違い無しでしょう。まあ、せいぜい五割増しくらいしか暴利(ぼれ)ませんがね」
 森田が、床にうずくまって抱き合っているユキとワタルを、熱のこもった冷ややかな目で見下ろした。
「お前たちも本望だろう。毎日毎日、心行くまで乳繰り合えるんだから」

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 さて、この後は。
「公開折檻」
 さすがに今回は作品中では名前を伏せますが、「古武術研究会」のメンバーとか、草創期のSM雑誌での公募とかで、鬼畜マニアを呼び集めての「ストリップショーの百倍の料金」にふさわしい責めがストリップ小屋を貸し切りにして繰り広げられます。どれだけ凄まじい鬼畜折檻かというと……書きながら考えます。
 なんと、PLOTでは


6:公開折檻
ホテルの従業員室に監禁(2人1室)。三日間、劇場で本番レズ・ショー。
きちんと勤めれば、ヤクザに引き渡さない。
これを最後と熱演。今生の別れ。
深夜の劇場で手加減無し折檻。
伝統のブリブリ。休憩は三角木馬。〆はギロチン磔の2穴連姦か?
もすこし趣向を凝らしましょ。

 これだけしか決めていませんもの。ああ、短時日ではSM雑誌の広告は打てませんね。ヤクザの幹部さんを特別招待して、彼らが納得(辟易)するような内容にする。公開折檻であるとともに、代理折檻でもあるわけです。うん、そうしましょう。
 おそらく10/8は本番レズ・ショーだけを書くでしょうから。


「こういう責めを読みたい」というリクエストがあれば、10/8 24時必着で、メールなりコメントなりをください。必ず採用するとは限りませんが、濠門長恭ワールドにふさわしければ、(読者数から考えて)かなりの高確率でリクエストにお応えできるでしょう。

アフィリンクは「羽交い締め リョナ」がキーワードです。
 
追記
アイデアの応募/リクエストはありませんでした。
まあ、読者数とかこれまでの傾向から予想はしていましたが。
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