Progress Report A5:性少年包弄記

 脱稿しました。345枚。いつも通りに、終わりは脱兎の如しもしくは竜頭蛇尾。いや、5章だけが100枚を超えていますから、大ネズミを丸呑みした蛇?
終章の10.は短いので、そのまえの9.を紹介します。


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9.ブリーフ

 実力テストが終わった日の放課後、教頭先生にこっそり耳打ちされて、校長室に呼び出された。
(やば……ばれた?)
 それくらいしか、心当たりはない。先生は懲戒免職かな。僕は……退学はないはずだから、自宅謹慎? パパにしかられるのも悲しいけど、後妻さんに見下されるのは耐えられない。そんなことを内心でジクジク考えながら、出頭。待っていたのは校長先生だけだった。
 教員室の机より立派なデスクに、薄っぺらい雑誌が乗せられた。『政界異聞』というタイトルで――写真もイラストも無い表紙に、赤いゴシック文字が躍っている。
「あの与党幹部の三男はサディストの少年愛好者?!」
「教職にあるまじき醜行/父親も黙認か?」
 校長先生が雑誌を開いた。
 ドキン! じゃなくて。いきなり引力が10倍にもなった錯覚。
 1ページまるごとのカラー写真は、銀色のシートにあお向けの僕と、その横に座って僕の肌をなでている(多分、日焼けシールを貼っている)先生。右のページには、僕の正面からのアップ。黒の目線もモザイクも無し。ムチや縄の痕跡が鮮明。
「…………」
 棒然自失。懲戒免職と自宅謹慎の文字ばかりが、頭の中でぐるぐる回っている。
「これは、戸坂先生と畑山薫くん――で、間違いないね」
 否定のしようがない。
「戸坂先生は、担任の立場を悪用して、まあ、なんというか……性的なイタズラをしたと言っているが、それで間違いないね?」
 あれ……なんか、風向きが違ってる? 僕が被害者のように聞こえる。たしかに、そういう見方もできなくはないけど。もしかしたら、先生が僕をかばってくれてるのかな。とっさにそう考えて。うかつなことは言えないと気がついた。
「どんなふうにイタズラをされたのか、打ち明けてくれないかな」
「……恥ずかしくて、言いたくないです。戸坂先生に聞いてください」
 とっさに思いついた。これなら『証言』が食い違うこともない。あとは、強貫された女の子みたいに、顔をうつむけて……勝手に身体が震えてきた。
「そうか。では、このマンションに何度も連れ込まれてイタズラをされたというのも、事実なんだね」
 ページがめくられて、いくつかの白黒写真。先生の後ろについてマンションまで歩いているところとか、ホットパンツに花柄のランニングシャツというボーイッシュな女の子みたいな姿で、先生に肩を抱かれて映画館にはいるところとか。
「はい……」
 なにもかもあばかれた。その恥ずかしさで、返事の声も震えている。
「つらいことを思い出させて、申し訳ない。しかし、安心しなさい。このことがスキャンダルになることはない……はずです」
 校長先生の説明によると。この薄っぺらい雑誌は、一般には売られていないそうだ。ごく一部の関係者(なんの関係者かしらないけど)にしか配布されない。先生が辞表を出せば、あとはオトナ同士の話し合いでケリがつくとか。
 つまりネゴとか談合とか、そういったオトナ同士の話し合いなんだろう。雑誌に政界の文字があったから――先生のお父さんである偉い政治家(初めて知ったよ)を失脚させるための陰謀なのかもしれない。
「学校の立場としては、ご両親に報告だけはしておかなければならないが。畑山くんは、これまで通りに学校生活を送れます。この件は、この場限りで打ち切りです」
 学校では噂になることもなかった。パパには厳しくしかられたけど、僕が変態のマゾだとまでは知られずに済んだ。
「どうせ万引きかカンニングでもして、弱みをにぎられたんだろう」
 校長先生からどんなふうに聞かされたのかは知らないけど、決めつけられた。下手に言い訳したら、痛い腹を探られるどころか、持ち物検査とかされかねない。改造サポーターだけじゃない。先生にもらったコックリングとかアナルプラグとか、ぞろぞろ出てくる。正座して、パパのお説教にひたすら耐えるしかない。
「いくら脅されたからといって、ホモ行為にふけるとは情けない」
 もしも僕が女の子を妊娠させたとかでも、こんなふうには激怒しないんじゃないかって思うくらいに、パパはうろたえてる。
「こんなことが世間に知れたら、パパも会社にいられなくなる。勇斗の受験にも影響する」
 僕自身への心配は、そっちのけ。なので、僕としても反省する気持ちが冷えてしまう。
「二度と、あの男に近寄るんじゃないぞ。もしも、あいつがしつこく言い寄ってくるようなら、パパに言いなさい。話をつけてやるから」
 パパの心配は無用だった。先生は速攻で辞職しただけじゃなく、僕を見捨ててしまった。二度と顔を合わせることはなかった。だから、僕は連絡先も知らない。もちろんアパートは引き払っているし、調教マンションへ行っても会えなかった。暗証番号が変わっていたし、部屋の番号を打ち込んでも知らない人の声が返ってきた。もしかすると先生のSM仲間かなと期待して名前を告げてみたけど、駄目だった。
 そんなふうにして、人生最大の(と、そのときは思っていた)台風が過ぎ去って。見つかるとやばいので変態チックな小道具は全部捨てて、ちゃんとブリーフを履いて学校に通う日々が戻ってきた。

 でも、つまらない。男子のガキっぽい話には付き合う気にもなれない。
 女子は。この夏にロストバージンしたらしい子も何人かいる。友美ちゃんなんて、わざと男子に聞こえるようなヒソヒソ話をしたりするけど、内容が可愛らしいね。最初は痛かったけど、デート(=SEX)するたびにだんだん気持ち良くなってきたとか、一人前に吹いているけど。ムチも縄も乱交も野外露出も未体験。ていうか、ほんとにロストバージンしたのかな、レディースコミックの受け売りじゃないのかな――なんて、疑ってしまう。男と女、バギナとアナルの違いはあるけど、経験豊富(だよね)な僕には、その微妙なニュアンスがなんとなく分かってしまう。
 1学期のときよりも、みんなとの距離が広がった感じで。ふと気がつくと、調教のこととか、捨ててしまった小道具のことばかりかんがえてたりする。
 中間テストではクラス45人中39位と、自己ワースト記録を塗り替えてしまった。
 このままじゃ、いけない。次第に、そう思うようになってはきてる。このままじゃいけない。きちんと変態チックな性欲を発散させて、勉強に打ち込まなくちゃ。スポーツで性欲を発散させるなんてのは、大昔の道徳の教科書。きちんとご飯を食べる代わりに水ばかり飲むようなもの(だとは、今の教科書にも書いてないけど)。最低でも、オナニーは必須。だけど、オナニーのオカズが、先生との思いでばかりになっちゃう。縄も捨てたし、新しく買っても見つかると言い訳できない。パパの口ぶりだと、SMまでは知らないみたいだけど、知っていて触れないだけかもしれない。もちろん、僕から尋ねるなんてヤブ蛇もいいとこ。
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 某国の娼売少年だそうです。

 さて。本作品は『悦辱編』と『怨辱編』とで構成される予定ですが。続編を書くのは、かなり先になりそうです。
 令和短編集で
 Extra Sensory Pentration
 売姫三日晒
 The tragedy of XXY
 とくに横文字の作品は、鬱勃たるパトスにロゴスに蓄音機です意味不明。
 もちろん、『昭和集団羞辱史:物売編』、『SMツアー:裸族の性人儀式』なんかも装填完了発砲号令待ちですし。







 とにもかくにも、限りある人生。グイン・サーガみたいにならないよう、釈迦力に書いていきましょう。
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