Progress Report 1:心中切支丹

 ちょうど150枚で終章突入。の前に、息抜きでこの記事を書いています。
 秋津国の時代劇は何本も書いてきましたが、女囚物が圧倒的多数――という印象を持っていたのですが。
 ビブリオグラフィを整理してみると。

 NOT女囚物は
 槍姫千本突き
 全裸縄付道中縄禿初潮水揚陰間寺出世菊 :「非情と淫虐の上意」4作中の3本 
 真剣裸勝負
 売姫三日晒


これに対し女囚物は
 偽りの殉難~香世裸責め
 女囚双虐
 女囚永代吟味 :「非情と淫虐の上意」4作中の1本
 裸囚姫弄虐譚
 濡墨
 くノ半試し


 見事に6対6のイーブンでした。「裸囚姫淫虐譚」は罪人ではないのですが、投獄されるので女囚扱いです。
 その他、PIXIVリクエストでロリくノ一が捕らえられて拷問されるのも、女囚扱いでいいかな。未発表だから数えてませんが。


 以上は、これまでの創作を振り返ると見せかけて、販売サイトへのリンクを張ったPRだったりします。

 さて、本題。
 時代劇中の拷問となると、筆者の浅学故にバリエーションが限られてきます。今回の目玉は、重たい鎖で緊縛しての市中引き回しですが、これは製品版をお読みください――などと、しつこくPR。
 今回ご紹介する章では、女信者八人のうち三人は棄教して。残りの五人をひとまとめにして、さまざまな拷問に掛けようという趣向です。五人を同じ拷問に掛けないのは、穿鑿所にはいろんな拷問器具があるけれど、すべて一点物だからです。ということにしてあります。決して読者サービスではありません。しかし、本人の愉しみではあります。


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   拷問絵巻

 麻女を牢へ入れてすぐに医師の手配をしたが、特別に金創医を呼ぶのは難しく、夕刻になってやって来たのは、いつもの藪。とはいえ、縫うほどの傷でもないので傷口を焼酎で洗って、あとは蝦蟇の脂か鼠のフンか分かったものではない膏薬を塗り油紙を乗せて晒布を巻くだけだから、藪で事足りるといえば足りる。
 まず半月は牢問を控えるべきというのが藪の見立だったが、なに、万々一を恐れての鯖読み。実のところ半分でも多いくらいだろう、とはいえ大事を取って中五日は養生させると、菱橋が決めた。
 その間ずっと押込牢へ入れっ放しにはしなかった。いよいよ説伏は苛烈を増して、その場を穿鑿所すなわち拷問部屋へ移した。ここで責められるのは、敲責めに屈しなかった強情者を責めるときのみ。目下のところ、切支丹しかいない。その様子を隣の小部屋から麻女に覗かせるのである。傷の上に縄を掛けるのは治りを遅くしかねないので後ろ手に手鎖を嵌め、正座した足首と手鎖を縄でつないで動けなくする。説伏されている者に励ましの言葉など掛けられぬよう口をふさぐのは、二日目の吊敲責めで使った褌。都度に水で洗ってやるのは、里弥の心尽くしではあった。
 麻女は目の前で仲間が厳しく責められるのを見て、憐憫を抱くか殉難を羨望するか。責めに屈して棄教した者には同情か軽蔑か。
 そう。すでに男は六人中四人、女は八人中三人が、説伏を受け容れて改心していた。残るは、座主の惣兵衛と、里弥の掛である佐吉、静乃と糸乃の母娘、小間物屋三五郎妻の栄、そして里弥が掛の清と麻女だった。ちなみに、惣兵衛の孫の万太と栄の亭主は改心した四人の男に含まれている。昔に比べて信仰心が薄れているのか、あるいは太平の世に狎れて心がひ弱になっているのか、八年前と比べてもずいぶんとはかが行っている。
 しかし、残る七人は手古摺りそうな気配だった。
 そして、穿鑿所での拷責の六日目。新たな試みがはじまろうとしている。
 穿鑿所へ引き出されたのは五人。惣兵衛、佐吉、静乃と糸乃、そして、傷が落ち着いてきた麻女。これまでは一人ずつを説伏してきたが、今回はこの五人を一時(いちどき)に責めてみようという試みだった。信者同志が互いに励まし合うから宜しくないとは考えられてきたが、果たしてほんとうにそうなのか。ことに母娘はどうなるか。あってはならぬことだが、この先に切支丹が見つかったときの説伏への道標ともなろう。
 五人のうち、庄兵衛と母娘の掛が久寺、佐吉と麻女は里弥であるが、井路が佐吉を引き受け、ふだんは手を下さぬ与力の菱橋も加わって母娘を受け持つ。どう見ても役得だ。
 下人も今日は四人。穿鑿所は石畳三間四方と大牢並みの広さがあるが、さまざまな拷問具が置かれていれば、十三人では狭い感さえあった。
 ちなみに役人は着流しに羽織、下人は六尺褌に腹掛けと法被、囚人はいうまでもなく全裸である。
 それぞれが拷責に取り掛かる。
 庄兵衛は、水を張った大桶の上で逆さ吊りにされる。佐吉は、三角の材木を並べた十路盤の上に正座させられて、後の柱に上体を縛り付けられる。静乃は結跏趺坐を組まされ、背中にのしかかる下人の尻で顎と足首がくっつくまで上体を折り曲げられて、首と足、肩と膝を縄で緊縛されてから仰向けに転がされた。通常の海老責めとは裏表が逆である。そして静乃の娘の糸乃は、四本の脚で支えられた幅一尺二寸高さ一尺五寸長さ三尺の木材、いわゆる三角木馬に乗せられた。
 この四人は後ろ手に縛られ男縄と女縄を掛けられている。麻女だけは縄を解かれて穿鑿所の中央で俯せに捻じ伏せられた。腰を踏んづけられ手足を引っ張られて逆海老に反らされ、手首と足首を一括りにして天井の梁から吊られた。不自然に捻じられた肩と股関節に己れの目方すべてが掛る。これだけでもじゅうぶんに苛烈な拷責、いわゆる駿河問である。
 がららら……滑車で吊られている庄兵衛が、胸のあたりまで水に浸けられた。
「ぐうう……デウス様、我に勇気を与えてください……」
 佐吉は一枚目の石板を載せられて、早くも顔を歪ませている。
「ひいいい……痛い、痛い……キリエレイソン、クリステイソン……」
 三角形の稜線に深々と淫裂を割られて、糸乃が歯を食いしばってオラショを唱えている。
「この女にも伊豆石を載せるぞ」
 里弥は勇造に手伝わせて、十路盤責めに使う石板を麻女の背中に乗せた。長さ三尺幅一尺厚み九寸。石板の重さは十貫を超える。小柄な女にとっては、己れの目方が倍になったにも等しい。
「あううう……キリシト様……御降臨くださいませ……」
 それを聞いて里弥は、石板がずり落ちぬように縄で裸身に縛り付けながら、内心で首を傾げる。バイブルによれば、古には神が人の前に顕現したというが、信者がそれを求めたという記述は、調書にも書留にも見当たらない。
「麻女。まだまだ責めは厳しくなるぞ。転んでくれ、教えを棄ててくれ。おまえを我が手で苦しめねばならぬなど、俺には耐え難い」
 麻女は驚いた色を一瞬浮かべたが、きっぱりとかぶりを振った。
「この強情者め。勇造、ゆっくりと回せ」
 勇造が麻女の股間と乳房に手を掛けて回す。吊り縄は二重になっているから、見る見る撚りが懸って、次第に吊り上がっていく。
「よし、ぶん回せ」
 それまでとは反対の向きに、勇造が麻女の裸身を突き放した。縄の撚りが解ける力に助けられて、吊り敲きのときよりもずっと凄まじい速さで回りだした。
「ああああっ……」
 悲鳴が起こって、すぐに途絶える。頭に血が上って正気を保っていられないのだろう。
 里弥の目の隅に、菱橋が切支丹の道具を持って静乃の横にしゃがむ姿が映じた。
「これは、隠し拝み所にあった、マリアという女神の像とクルスじゃ。斯様に責められても転ばぬほどに信心が篤ければ、御神体と一体になるのは法悦であろうな」
 菱橋がクルスの頂部を握って、静乃の尻穴にあてがった。
「おやめくださいっ」
 静乃が驚愕を叫んだ。
「クルスを穢すなど、あまりに畏れ多いことです。すぐにやめないと、あなたは雷に打たれることでしょう」
「そうか。では、腹巻をしておくんだったな」
 薄嗤いを浮かべながら、菱橋がぐいとクルスを押し込んだ。
「いやあああっ……痛い、痛い……お願い……やめてください」
 哀訴には耳を貸さず、胡麻を擦るようにクルスを捏ねくりながら、十字架の横木がつかえるまで深々と押し込んで――そのままにした。
「母上っ……」
 四人はそれぞれ穿鑿所の四隅で責められているから、互いの様子がつぶさに見て取れる。母へのあまりな狼藉に、糸乃が声を上げた。
 それを聞きとがめて菱橋が立ち上がる。
「おまえは、おまえの心配をしておれ。木馬を跨ぐだけでは不足かな」
 糸乃の腰をつかんで、ぐいぐいと揺する。
「ぎゃあああっ……やめて、やめて……母様、助けてええ」
 木馬の木肌に鮮血が伝う。オラショを唱える裕りも失せ、神にではなく母親に助けを求める。それも母上ではなく、子供に還ったかのように母様と。
「銀太。餓鬼の敲きは、おまえに任せるぞ。折弓なぞ使わんでも良い」
 さすが与力の旦那は話せる御人だと、下人の勇造は素手で糸乃の横に立った。
「転びたくなったら、いつでも申し出なよ」
 いちおうは説伏の言葉を掛けはするが。
「出来れば、転ばずにいてくれよな」
 バチン、バチンと平手で頬を張ってから。斜め後ろへ動いて、パアン、パアンと尻を叩く。
「ひぎっ……痛いっ……」
 尻を叩かれるのが痛いのではない。叩かれる衝撃で身体が揺れて、そのたびに三角木馬の稜線が淫裂の奥まで切り裂く。腰をつかんで揺すられるよりもましとはいえ、跨がされているだけでも耐え難い激痛に、さらに痛みが上乗せされるのだから、堪ったものではないだろう。
 勇造は木馬を回り込んで反対側の尻臀(しりたぶ)も叩き。双丘ともに真っ赤に腫らさせてから、狙いを乳房に変えた。ただ平手を張るだけでなく、両手を打ち合わせて双つの乳房をひしゃげさせ、ついでに捏ねくってみたりもする。
「いやっ……汚い。下賤の身で私を辱めるつもりですか」
「糸乃」
 母親が叱りつけた。
「キリシト様の下では、誰もが同じなのです。その人もデウス様に作られた人間なのですよ」
「ずいぶんと余裕があるな。やはり尻穴だけでは物足りぬか」
 菱橋がマリア像を静乃の淫裂に擦り付ける。
「これなら亭主の魔羅よりも大きかろう。たっぷりと善がらせてやるぞ」
「後生ですから、斯様なことはおやめください。娘の代わりに、私をあの三角の台に乗せてください」
 切支丹として聖なるイコンを穢すことを畏れ、母として娘を救いたいと願っての懇願だったが、宗門改方役人にさらなる残酷な責めを思いつかせる役にしか立たなかった。
「ほう。では、二人を入れ替えてやろうか。娘はまだ未通女ではなかったかな。マリア様に新鉢を割られれば、喜びに泣き叫ぶであろうな。それとも、おまえの女淫(ほと)に台座を挿れて、娘には頭を挿れるか。我が子に身を以て媾合いの所作を教えてやれるぞ」
 静乃が絶句する。
「拙い、引き上げろ」
 久寺の狼狽した声に菱橋が顔を上げた。
 庄兵衛への水責めを差配していた久寺が、どうせ女が甚振られるのに気を取られていたのだろう。水に沈めたまま目を離して、溺れる寸前に引き上げるその時期を失したらしい。
 さいわいに――庄兵衛にとっては残念なことだったかもしれないが、石畳の上に降ろされた庄兵衛は、平助が背後から腹を抱きかかえて活を入れると息を吹き返した。激しく咳き込みながら水を吐いて。転べ転ばぬの問答の後に、ふたたび逆吊りにされた。水責めが再開される。
 里弥も静乃と糸乃の様子に幾分は気を取られているが、麻女への責めを忘れてはいない。
 用意しておいた一間半の荒縄を水に浸してから四重にする。端を握れば長さ二尺余の縄鞭となる。麻女の身体を静止させてから、あらためてゆっくりと回す。
 背中には石板を載せているから敲いても効き目はない。ほとんど傷ついていない四肢を狙う。
 ぶうん、バヂャアン。
 ぶうん、バヂャアン。
 重い打擲の音は、しかし母娘の悲鳴に掻き消されがちになった。
 佐吉は三枚目の石板を積み上げられ、全身は脂汗にまみれ、顔は蒼褪めている。身を藻掻けば、いっそう脛の激痛が増す。痛みに耐えかねてのけぞり、もごもごとオラショを呟くのみ。
 庄兵衛は息があるのか無いのかさえ、里弥の目には定かではない。短い間隔で水に突っ込まれては引き揚げられている。
 糸乃は銀太に左手で乳房をつかまれて上体を動けなくされたうえで、腹を拳で突かれていた。殴りつけるほどではないが、じゅうぶんに痛いだろう。
 母親の静乃は、ついにマリア像を女淫深くまで抉り挿れられ、クルス共々抽挿されて、身裡に湧く必ずしも激痛ではない感覚に歯を食い縛って耐えている。しかし、その表情に殉難の法悦など欠片も窺えない。
 そして麻女は。駿河問が苦しいのだろう、オラショを唱えるでもなく低く呻き続け、縄鞭で打たれる度にしゃっくりのように引き攣った息を吐いている。これも、六日前に見せた恍惚からは程遠かった。責めが厳しすぎて法悦境どころではないのか、生ぬるくてそこまで達していないのか――里弥には判別できない。
「二人を入れ替えるぞ」
 菱橋が、先ほどの思い付きを実行に移そうとして、静乃からマリア像とクルスを抜き取ったのだが。
「異国の邪神に新鉢を割らせるのも癪にさわるな。儂が引導を渡してやろう」
 里弥を呼び寄せて二品を渡した。
「これは、あちらの女に使ってやれ。それとも、自前の道具を使うか」
 咄嗟のことに、里弥は返答に詰まった。
 なろうことなら、麻女を最初に貫くのは己れでありたかった。しかし。どれほど酸鼻を極めた場面であろうと、これは宗門改方としての役儀である。女淫を責めるのも、棄教を促す手立てのひとつであらねばならぬ。己れが麻女を抱けば、公私混同も甚だしい。菱橋様は糸乃に懸想してはおらぬ故に、かろうじて役儀――いや、役得ではあろうが、役人の本分から大きくは逸脱していない。強いてそう考えることで、里弥は上役への反発とも羨望ともつかぬ感情を抑えた。
「己れが信じる神に純潔を奪われた娘がどう振る舞うか、糸乃と比べてみるのも、向後の役に立ちましょう」
 断腸の想いで、里弥は二品を受け取った。縄を浸した手桶で汚れを洗い落としたのが、麻女へのせめてもの誠意であった。
 クルスは勇造に渡し、マリア像を持って麻女の前に立った。
「聞いておったであろう。不憫ではあるが、教えを棄ててくれぬ限りは、このマリア像でおまえの新鉢を割らねばならぬ。どういうことかは、菱橋様の静乃へのなさり様を見ていて分かったであろう」
 良家の娘であれば、男と女の営みがどのようなものであるか知るのは、祝言を間近に控えて母親から内々に渡される絵草子の類を見てのことになる。麻女もまるきり知らないのではないかと、懸念しての言葉だった。いたわりではあるが、知らないものは怖がりようがないという、責め手としての計算も無くはなかった。
「イコンに神は宿っておりません。祈りをデウス様にお伝えする拠り所に過ぎません」
 偶像を拝むべからずというバイブルの教えは、里弥も知っている。なのに、なぜ切支丹はクルスに祈るのか釈然としなかったのだが――麻女の言葉を聞いて、その矛盾が解けたように思った。では、クルスやマリア像は、神社でいえば鈴にでも当たるのかと。神社では必ず鈴を鳴らしてから拝むが、鈴に神が宿っているとは誰も考えていない。
「もしも、里弥様がそのイコンで私を犯すのでしたら……それは、貴方様に犯されたも同じことです」
 つまりは俺を憎むということか。そのように、里弥は解した。どれほど恨まれようと憎まれようと構わぬ。どれほど恥辱を与え苦痛を与えようとも、迷妄を棄てさせてやることが麻女のためになるのだ。非情の拷責吏に徹しようと、里弥はあらためて決意する。
「申しておくが。これは並の男の魔羅よりずっと大きいぞ。それが、身体の内からおまえを引き裂くのだぞ」
 駿河問に掛けられている麻女は、顔をのけぞらせて里弥を見詰めた。
「何事もデウス様の御計画です。里弥様は、与力様の命を受けてご自分のお考えで私に危害を加えていると思っていらっしゃるでしょうが、それは大きな誤りです。デウス様、大いなる試練をお与えくださることに感謝いたします」
 恍惚の兆しを顔に浮かべて、麻女は目を閉じた。
 一瞬、里弥は迷った。このまま、マリア像を使って麻女を辱めても、それがデウスの意図したことだという信念を覆すことはできない。しかし、やめれば――デウスに護られているからだと考えるだろう。マリア像を己れの魔羅に替えても同じことだ。
 しかし、そのような衒学的な想念に沈潜する男ではなかった。殴られれば痛い。それが理不尽な仕打であれば、殴り返すまでだ。腹が減れば飯を喰う。父に詰め腹を切らせたお情けで同心に取り立てていただけるのなら、つべこべ言わずに有り難くお受けする。そのようにして二十二年間を過ごしてきたのだ。
 殉難に恍惚となるのであれば、それを上まわる苦痛を与えるまでのことだ。
 里弥は意を決して、麻女の身体を半回転させた。逆海老に吊られて自然と開いている脚をさらに押し広げて、太腿の間に身体を割り込ませた。マリア像の頭部を麻女の淫裂に押し当てた。せめて唾で濡らしてやろうかと考え、いささかも仏心を起こしてはならぬと己れを戒めたのだが。
 なんとしたことか。すでに女淫は絖っているではないか。信心で病が治ることもあるのだから、女淫が潤うくらい不思議ではない。そうとでも考えるしかない。
 ならば――せいぜい痛くしてくれるわとばかりに。里弥は一気にマリア像を押し込んだ。ぐうっと押し返されて、いっそう力を込めて。
「ぎゃあああああっ……」
 麻女が吠えた。しかし、それがすぐに譫言に変じる。
「あああ……デウス様、キリシト様……麻女は幸せです。里弥様の手で……道を付けていただけました」
 ずぐん……心の臓が引き付けを起こした感があった。俺の手で、だと……。それはつまり……俺のことを憎からず思っているという、女としての則(のり)を越えたあからさまな恋慕の告白ではないだろうか。そうとしか考えられない。
 好かれた女を痛めつけている。女はそれを受け容れている。
 全身がかあっと熱くなる想いだった。そして、その熱は腰のまわりに集まってきて――拷責に臨んで初めて、里弥は勃起したのだった。同時に、凶暴が芽生えた。
 いっそう強く、マリア像を押し込む。あまりにきつく、マリア像に突かれて麻女の裸身が前へ動いて、ずぐっと突き進んだ瞬間に後ろへ戻る。それを二度繰り返すと、奥に突き当たる手応えがあった。
 気づけば。大きく拡げられた淫裂にぎっちりとマリア像が嵌まり込んで、その境目から血が滴っている。麻女の股間は朱に染まり、灰色の石畳には鮮血が花びらのように散っていた。
「まだまだ、こんなものでは済まんのだぞ」
 それは、己れをさらに凶暴に駆り立てるための台詞だった。
 マリア像から手を離しても抜け落ちないのを確かめてから、里弥は尻臀を両手で割り広げた。谷底にひっそりと息づく菫色の蕾。尻穴というものを、里弥は生まれて初めて目の当たりにした。己れの穴も似たようなものであろう。この小さく閉じたところからあのように太い物がひり出されるとは、信じがたい思いだった。
 いや、そんな感慨はどうでもいい。このままでは、両手がふさがっている。くそ、こやつを麻女の肌に触れさせねばならんのか。歯噛みする思いで、横合いから勇造に尻臀を広げさせた。
 クルスを小さな蕾に押し付けて。とうてい挿入できなさそうに見える。しかし、静乃という先例がある。里弥はクルスを左右にねじりながら圧迫を強める。今度は勇造に尻を抑えられているから、前へ揺れない。ぐぽっと突き抜けた。
「い゙ぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーっっ」
 マリア像よりも切迫した咆哮。しかし、それでもなお……
「あああ、ああ……里弥様、麻女は幸せです」
 蕩けきった声に、里弥は耳を疑った。デウス様ではなく里弥様だと。いったいに、この女は何を考えているのか。いや、考える余裕などなかろう。思わず出た本心か。とすれば、それはいったいどういう本心なのだろう。単純に考えれば。切支丹にとって、殉難は殉教に次ぐ法悦であるから――それを与えてくれた者に感謝を捧げるということだろう。あるいは。デウスにせよキリシトにせよマリアにせよ、それでは己れの穢れた部分に突っ込まれている物に呼び掛ける行為になりかねないから、無意識裡にも忌避したと考えられなくもない。しかし、この推察には途轍もなく大きな穴があるような気がする……。
 拷責吏に斟酌など不要。転ぶ兆しを見逃さず、転ばないと分かればいっそう厳しく責めるだけのこと。里弥は疑念を振り捨てて。両手を使って、マリア像とクルスを交互に(同時だと手の動きがぎこちない)抽挿し始めた。
「ひいいっ……痛い痛い……もっと、もっと痛くしてください。ああ……パライソが目の前に……」
 里弥は徒労を感じながらも、魔羅だけはいっそう怒張激しく、絡繰人形さながらに単調な動作を続けるのだった。

 正巳の刻から始められた拷責は、昼の中休みを挟んで責め口を変え、未の下刻まで続けられた。もっとも、庄兵衛だけは初老に加え水責めで何度も溺れたので、午後の責めは赦されたのだが。
 麻女は三角木馬に乗せられ、里弥に揺すぶられ縄鞭で体幹を打擲されて、瘡蓋になっていた傷口がまた裂けた。全身血みどろになりながら、それでも殉難の恍惚から醒めることはなかった。
 糸乃の悲惨は麻女を上まわっていた。午前中だけでそれぞれ半分ずつの時間だったとはいえ、三角木馬と海老責めに掛けられ、しかも菱橋の手ではなく魔羅で新鉢を割られたばかりか、下人の銀太に尻穴まで犯された。そして、午後からは駿河問。三角木馬とは相容れないので麻女から抜かれたクルスを、まだ未通の尻穴に使われた。
 静乃は麻女よりも軽かったと評して差し支えなかろう。海老責めと三角木馬に加えて午後からはもっとも苛酷な水責めに掛けられたのだが、人の妻であってみれば、新鉢を割られるという女にとって致命的な辱めは受けずに済んだのだから。水責めの最中にもマリア像で不本意な感覚を呼び起こされて、そのせいもあって庄兵衛よりも消耗させられたのだが、それはつまり――麻女には遠く及ばないにしても、殉難の恍惚を垣間見たのではないだろうか。
 蛇足の感もあるが、佐吉は午後から海老責めに掛けられた。しかし男であるから、裏返しにされて陵辱を追加されることもなく、一時いっときほど真っ当に苦しんでいただけであってみれば、女三人の地獄絵図とは比ぶべくもない。
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心中切支丹こうず2

 上の画像は表紙絵イラストの構図です。
 背景はいろんな女囚の拷問シーンで、手前のイラストは『
女囚双虐』からの使い回し。どうもクロール(抜き手)ですね。

 さて、今夜は早々に脱稿プレ祝賀会として、明日は気を逸さない(逸機)ように、一気に終章を書きましょう。

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