Progress Report Final:心中切支丹

 とっとと脱稿しました。169枚です。ラストへ強引に持って行き過ぎて、まあ、破綻まではしていないと思いたいのですが。
 それは、2023年1月にリリースしますので、製品版で読者各位にてご確認ください。PR、PR。


 ひさしぶりに、縛りも敲きも辱めもない、ノーマルな濡れ場を書きました。筆者の経験不足が躍如として面目ございませんです。

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   絶頂指南

 早くも翌日には二十五両を携えて、里弥は『縁妓楼』を訪れた。売った刀は三十二両になった。七両余る。麻女を転ばせて嫁に迎えるときの諸掛に充てようなどと、考えるのは勝手だ。
「お早いお越しで」
 楼主は、時刻ではなく日にちのことを言っている。ただの挨拶といったおもむきで、揶揄の響きはなかった。
「つかぬことを伺いますが、最後に精を放ってから何日になりましょうか」
「女と媾合ったのではなく、精を――だな。七日になるか」
「つまり、引き回しの水責めがあった夜に、ですな」
 里弥は動揺を表に出すまいと表情を引き締めた。
 あの、疲労困憊しながらも裸身を誇らしげに晒して恍惚と歩む麻女の姿。水車に磔けられてゆっくりと回る麻女の裸身。獲られた狸でさえも、もっと丁寧に扱われる開帳押送のむごたらしさ。それらを瞼の裏に甦らせながら激しく己れを扱いた――と、楼主に見透かされたのではないか。
「男なれば誰しも、女人を辱めたい甚振りたいという想いを心の裡に秘めております。それに呼応するように女人も亦、男に辱められ甚振られることに悦びを見い出すもの」
 言われてみれば、女のことは知らず。確かに己れの裡にはそういった衝動がある。拷責の場で、それが噴出したことも――顧みれば、確かに何度もあった。
「昨日のお話を伺うに、本庄様はともかく、麻女殿にはそのさがが濃いように思えます。殉難とやらへの法悦境も、そこと深く結びついておりましょう」
 それだけに、常法の閨事で気を遣らせるのは難しいでしょう。しかし、適度の堪振りを交えれば――いや、この先は口伝など畳水練、実地に体得していただきましょう。
「実地にとは、つまり拙者が、実際にこの場で……楼主殿の指南を受けながら……」
「剣術も道場で稽古なさるでしょう」
 何を当たり前のことを――という口振り。
「もっとも、この座敷は道場ではありませんし、稽古をつけるのも師範代ですが。ともかく、お支度ください」
 支度とは何をすれば良いのか分からぬままに、遣手婆にしては若すぎ娼妓にしてはずい分な女に湯殿へ案内された。当然のように素裸にされる。掛け湯をして湯には浸からず、湯船の縁に腰掛けさせられる里弥。の前に、湯文字ひとつになった女が跪き、脚の間に身を割り入れた。手には鋏と櫛を持っている。
「失礼致しますね」
 淫毛を櫛で梳いて鋏を当てる。
「お……」
 おい、何をする――という言葉を、里弥は呑んだ。剣術でも、そうではないか。理屈抜きで、まず木刀を振らされて、それから脇の締めとか指の絞りを教えられていくのだ。
 いざ覚悟を決めると。なにしろ、色っぽい年増女に触れられているどころか妖し気なことをされているのだ。たちまちにいきり勃ってしまう。
「あらま。元気のよろしいですこと」
 さすがにこういった場所の女だけあって、余裕綽々にくすりと笑って。てきぱきと、里弥の下腹部を稲刈りが終わった田圃のようにしてしまった。
「小半時ほどお待ちください。支度が調いましたら、お迎えに参ります」
 女が去って、里弥は手持ち無沙汰に湯へ浸かるしかなかった。

 用意されていた新しい褌を締めて、小袖を着る。二日目の無精髭みたいな短い淫毛が褌の布地に引っ掛かって、歩くとチクチクくすぐったい。元服前後の少年なら、それだけで鎌首をもたげているだろう。
 案内されたのは、二階の客座敷。膳などは出ておらず、若い娘が年嵩の牛太郎に引き据えられる形で横向きに座り、上座には楼主が居るばかり。里弥は下座に、娘と向かい合って座らされた。
「このは四日前にうちで買い取った、まったくの生娘で地女です。名前はスエ」
 固い表情で座っている娘が、わずかに頭を下げた。およそ、娼妓の仕種ではない。楼主が敢えて地女というのだから、まだ閨の所作はおろか、廓の仕来りも教えていないのではなかろうか。
「今宵ひと晩、本庄様のお相手をして気を遣らなければ、借金を棒引きにして親元まで送り届けてやると、約束しました。気を遣るとはどういうことか、口で教えるのには苦労しましたがね」
 娘の借金は二十両。里弥の持参した二十五両を充てる。差額の五両だけが、座敷代と束脩だと言う。もっとも、里弥が上首尾に終われば、五両が二十五両に跳ね上がる。
「野暮な話は、これまでと致しまして――豪太、後は頼んだよ」
 牛太郎に仕切を任せて、楼主は座敷を出て行った。豪太と呼ばれた男が、いっそうの下座、二人の中間に座を移した。
 膳などは出ていないと書いたが、正確に云えば座敷の隅に大きな盆があって、そこに五合徳利と三つの平盃、そして小皿に味噌が盛られていた。
 豪太が三人の真ん中に味噌を置き、まわりに平盃を配して酒を注いだ。
「この手の話は、素面じゃあ耳がくすぐったいでしょうからね」
 耳がくすぐったければ、言葉が頭に染み込まないという意味だろう。
「スエちゃんは酔っ払っちまってもいいけど、旦那は駄目ですぜ。勃つ物が眠りこけちゃあ、指南もへったくれもありやせんからね」
 豪太が、一気に盃を空けた。里弥とて、酒豪ではないが人並みには呑める。一気に干して二杯目を受ける。スエだけは、おっかなびっくりに盃を舐める。
「さて……何からお話していいものやら。女が、アレアレイイワとかアアモウシニソウとか言うのは、小高い丘に登ったようなものでしてね。そこで勘違いなさっちゃいけません。九浅一深も『の』字もへったくれもなく、優しく激しく――ここらが、言葉で説明出来ねえ、スエで会得できたとしても、麻女ってえお人に通じるかも実は分からないんですがね。万事ママを尽くして天命を待つって言えばもっともらしいが、出たとこ勝負。それでも、勝負勘を磨かないことには、どうにもなりませんから」
 百聞は一見に如かず、百見は一験に如かず。とにもかくにも、スエを抱いてごらんなさい――となった。
 隣の続き間には、手回し良く布団が延べてある。もちろん一床しょう
 遊廓の作法には拘らず、同心が女囚を犯す場合に近づけてみようとなって。まずは芝居でいうなら幕開け前の仕込み。里弥は小袖を着たまま、隅に控えて。スエが着物を脱ぐ。娼妓としての躾を受けていない割には平然と素裸になる――と、里弥は訝しんだが、すぐに思い当たる。親の許に居たときだって肌を晒して女衒に値踏みされ、こちらへ来てからも同じようにされているはずだった。
 スエが湯文字を落として。きちんと畳む心の裕りも無く、里弥に正面を向ける。手で隠しもしない。
 おや、と里弥はまた訝しんだ。楼主はまったくの地女と言っていたが、股間が無毛だった。
「麻女さんを抱くときも、毛はすっぱり剃ってやっておくんなさい。なに、火傷さえさせなきゃ燃やしちまっても構いませんがね」
 旦那も今の無精髭で接してくださいと、豪太は言い添えた。
 まったく無毛の肌に無精髭を擦り付ければ、かなりの刺激になる。そういうことだろうと里弥は推測して、楼主も豪太も事情を弁えているのかと不安になった。麻女は、その部分を折弓や縄鞭で敲かれ、淫裂は三角木馬に痛め付けられている。今さら無精髭など、チクリとも感じまい。
 それでも。早呑込みに極め付けてはいかぬと、豪太の指南に従う。
「御存じとは思いますが。女の一番の急所はここ――淫核です」
 六尺褌一本になった豪太が、スエの脚を割って淫裂の上端を左右にめくる。
「この小さな出っ張りは、まあ、皮をかぶった魔羅のようなもので、剥けば亀頭にあたる実核さねが出てきます」
 淡い鮭肉色に絖る小豆よりも小さな突起。
「魔羅の百倍も敏感で、そっと触るだけで――男にゃ女の真の感じ具合なぞ分かりませんが、身も世もあらぬ風情になる女も珍しくありません。その分、痛みにも敏感です。女郎への折檻の一番きついのは何だと思いますか。吊って敲く『ぶりぶり』でも水責めでもなく、ここへお灸を据えるんでさ」
 たいていの男は穴さえあれば満足するから、折檻の直後に客を取らせるのも――きつい仕置になると、豪太は付け加えた。
「もっとも、淫核は御城にたとえるなら本丸。出城を落とし堀を埋め城郭を崩し、それからでなきゃあいけません。まあ、ちょいちょい物見を出す手間も惜しんじゃいけませんがね」
 女体の二の丸にあたるのが乳首。乳房はその石垣。尻穴さえも三の丸か物見櫓。女によっては文字通りに搦手門ということもある。では堀とは――身体のすべてだという。ことに――指の股、腋、首筋、耳の裏、臍、脚の付け根は言うに及ばず、腿も脹脛も、あまねく攻めねば本丸を力押しに責めても、女は落とせない。。
 では、肝心の女穴はというと。
「穴の奥から発する善がりは、実のところ実核に倍する凄まじさがありますが――一朝一夕で攻略できるものではありません。同じ男と何度も媾合い、じわじわとそうなっていくもの。旦那は、それでは間に合わないのでしょう」
 その代わり。麻女さんは拷責で恍惚となる。
「そういった女は稀に居ります。信心とは関係ありません。主人も申していたと思いますが、女は男に辱められ甚振られたいという想いを――当人が気づいているかいないかはありますが、秘めております。だいたい、穴に魔羅を突っ込まれることが辱めであり甚振りですから。それが穴だけではなく魔羅だけではない。そういう女です」
 なるほどと、里弥は合点する。麻女も――乳房を敲かれ女淫を甚振られたときこそ、恍惚となっていた。急所だから痛みが甚だしい、ただそれだけが理由と思っていたのだが。そういう見方もあるのか。
「スエに、そういった素質があれば手っ取り早いですが、おそらくは、真剣勝負の場で手探りで試みるしかないでしょう」
 そのためにも、まずは稽古で。生娘を善がらせることから始めましょうと――いよいよ里弥も素裸になって、スエと向かい合った。
 豪太が長広舌を振るう間は所在無げに突っ立っていたスエの肩に手を掛けて。それだけで、スエは小刻みに全身を震わせる。肩を押して布団へ導こうとして。
「肩よりも腰です。それで柔らかく動くようなら、尻もいいでしょう。それも拒まないようなら、指で谷底をくすぐっても良ござんす。尻穴は時期尚早ですが」
 左手を腰に添えてみたが、スエの震えは増すばかり。尻は無理と、里弥は判断した。
 スエを布団に仰臥させて。
「好きおうた男女なら、おおいかぶさって抱き締めてやるのがよろしいが、頑な心を鎖している女子には逆効果。口を吸うておやんなさい。これからそういうことをされるのだと、悟らせるのです」
 口吸い、接吻。里弥は愕然とした。女淫を異物で抉り尻穴に魔羅を突き立て、乳房など幾度も捏ねくり回してはきたが、口に触れるのは猿轡を噛ますときだけ。それを云えば、肌に触れていた時よりも肌を敲いていた時のほうがずっと多い。
 それを想ったとき。萎縮していた魔羅が鎌首をもたげた。麻女を想ったからか、嗜虐を想起したからかは――多分、どちらもだろう。
 思いをこの場へ引き戻して。里弥はスエに唇を重ねた。豪太の指南で、唇を割って舌を挿し込み中を舐めスエの舌を絡め取る。
 左手で支えて身体の重みをスエに掛けぬようにしながら、右手で肌を撫でる。掌を浮かして五本の指でくすぐり、ときにはべったりと掌で擦る。乳房の裾野から肩、肩から乳房に戻って、乳首に物見を出す。
 スエが無言のまま、ぴくんと身体を震わせた。
 無理攻めはせず、上体を起こして両手で腋の下から腰をくすぐり、尻の下に掌を差し入れてあわあわと揉み、返す手刀で膝の裏から股の付け根へ攻め登り、女淫の唇をなぞってから、本丸にこれも物見。
「ひゃあっ……」
 初めて出したスエの声は裏返っていた。しかし、まだまだ。正中線をなぞって臍の穴をくじり、麻女の半分くらいしかない稚い乳房の谷間から左右に軍勢を分ける。
 再びおおいかぶさって。左の肘で上体を支えながら、手は首の裏をくすぐり、耳たぶを経て口唇を指でなぞる。
 ここまでで、線香一本が燃え尽きるほどの時間が経っている。スエの息がせわしなくなってきた。
 身体を起こして、両手で乳房の本攻めに取り掛かる。麓からじわじわと攻め登って、いよいよとスエが身を固くすると手前で引き返す。それを幾度も繰り返して、ついに乳首に達すると、もはや抵抗はない。
 指で摘まみ転がし、口に含んで舌先でつつく。
「あっ……そんな……」
 生まれて初めて知る異様な感覚に、スエが翻弄される。
 ここも執拗に、しかし手を滑らせて他への愛撫も交えながら。滑らせる動きを次第に股間へ集中させていき、主攻を鼠径部から淫唇へと移す。
「いやっ……そこは……」
 拒絶の響きが交じると口で口をふさぎ、ついでに中を弄ぶ。
 そうして。ついに本丸の攻略に取り掛かる。包皮の上から、そおっと摘まんで、きゅるんと実核を滑らせる。
「きゃああっ……」
 甲高い悲鳴に苦痛の響きはない。
「なにしたんですか。こんなの……ひゃんんっ、やめてくだんせ」
 訴えは口でふさいで。何度もしごいて悲鳴を上げさせるうちに――それが、次第に鼻へ甘く抜けていく。
「旦那は、そのまま続けていておくんなさい」
 里弥は左手でスエの裸身をあちこち愛撫しくすぐりながら、右手は強弱をつけて淫核を攻め続ける。
 その横で豪太が足元のほうから、淫裂に指を挿入した。
「中は洪水ですぜ。旦那は中々に筋が良ござんすね」
 それを確かめるのが豪太の目的ではない。
「未通でも、小さな穴は開いてるんでさ。そうじゃないと、月毎の血が下りてきませんや」
 今は指一本よりも小さな穴だが、蕩けて柔らかくなっているときなら、だんだんと広げて――魔羅を受け挿れられるようになる。新鉢を割らずに生娘を女に出来るのだという。破瓜の痛みがなければ、それだけ絶頂を究めさせ易い。
「麻女さんにゃ必要のないことですがね」
 だから指南はせずに助るという理屈だ。
 里弥は生娘を追い上げる困難に全神経を集中させる。
「そろそろ頃合いですかね」
 豪太がそう言ったのは、スエを布団に押し倒してから一時を過ぎた時分だった。
「けど、まあちょっと、曲舞くせまいもやっときましょうか。いえ、扇子は要りやせんがね」
 指ではなく舌を使って女淫を攻めろという。
「もし、お厭でなければ――ですが」
 仮にも武士。身分の低い、しかも女子の不浄の箇所を舐めるなど、真っ当な男なら激怒していただろう。しかし、溺れていれば藁をもつかむ。
「こ、こうか……」
 後ろに下がって、顔を女淫に近づけて。ぺろっと淫唇を舐めた。
「ひゃうっ……」
 指と舌と。感触の違いにスエは気づき、そこを見て。
「いやあああ。やめてください、お武家様」
 正気づかせてしまった。これでは逆効果と顔を上げかける里弥を豪太が制する。
「そこでやめちゃあ、意味がありやせん。毒を食らわば皿まで。実核も女淫の中も、ねぶりつくしてやっておくんなさい。吸ってもよござんす。そうっと噛んでやるのも効きますぜ」
 言いながら豪太は、身体を起こそうとするスエを押さえつけている。脚を閉じさせないようにしている。
 里弥は、師範代の言葉をなぞって――固く尖がっている淫核を吸い、必然に顔を覗かせる実核を甘噛みして。
「いやあああっ……やめ、やめて。怖い……怖いよおおお」
 怖いというのが気持ち好いだとは、里弥にも分かった。それほどに、スエの声は蕩けていた。
「山でいえば七合目あたりです。いよいよ、スエを女にしてやっておくんなさい。おっと、その前に」
 隣の座敷から五合徳利を持ってくる。
「女が気を遣っても、旦那は精を漏らしちゃいけやせんぜ。ちっと、坊やを宥めてください」
 里弥は二十三。大人の分別も着いてはきたが、まだまだ坊やは利かん気である。怒張は腹にへばり付いて、先走り汁も滲んでいる。
 里弥は徳利に直に口を付けて、一合ばかりを一気に呷った。空きっ腹が、かあっと熱くなって、そのすぐ下はいささかの落ち着きを取り戻した――のは、気の持ちようか。瞬時に酔いの回るはずがない。
 ともかくも。里弥はスエの脚の間に位置を占めて。スエにのし掛かって。左手で上体を支えながら、右手は怒張の付け根を握って淫裂に導いて――ずぐうっと、はっきり突き抜ける感触があった。
「ひいいっ、痛い……」
 スエが小さく悲鳴を上げた。可憐な声音だった。駿河問に吊られたまま魔羅の倍ほどもあるマリア像で新鉢を砕かれた麻女の絶叫に比ぶべくもない。
 しかし。豪太の指で拡げられていたにも係わらず、なんという締め付けであることか。もしも酒で感覚を麻痺させていなければ、おそらく貫通の瞬間に精を放っていたのではないだろうか。
 返すがえすも、我が手で為したこととはいえ、異国の邪神像などに麻女の純潔を奪われたことに痛恨を思うのだった。
 いかん。今は、この女をあの恍惚よりも高く深く追い詰めることに没頭せねば。里弥は己れを叱咤する。それに――麻女が他の男に穢されたのは尻穴だけだ。生身では、俺が一番槍を突くのだ。
 豪太が何も言わないので、里弥は己れの流儀で腰を遣い始めた。初めてなら荒腰は苦痛を与えるだけと、ゆっくり抜き差しする。
 スエは――麻女に比べれば取るに足りない痛みに耐えているのか、それとも女になった悲哀と感慨を噛み締めているのか。いずれにしても、先ほどまでの稚い喘ぎは消えて、木偶人形のように仰臥している。
「女の道具にゃ、上付きと下付きがありやす。スエは上付きと覚えておいてください」
 言われてみれば。仰臥していても淫裂がはっきり見えていた。麻女はどうだったか。大の字磔とか海老責めの股間とかばかりが思い出されて、きちんと脚を揃えて仰臥している姿など――そもそも、目にした覚えがなかった。
本手正常位のままじゃあ、旦那の毬栗も利きません。スエを押し潰しても構わねえ。下腹を押し付けてやってください」
 押し潰しては可哀想というよりも、ますます冷めるだろうと。反り身になって下腹部を押し付けた。
「身体の下に手を入れて腰を持ち上げれば、もっと効きます」
 その形で、抜き差しというより腰をスエの身体に沿って上下に揺する。無精髭が、ざりざりとスエの無毛の肌を擦る。
「ひゃああっ……」
 スエの裏返った悲鳴。
「やだ……痛い……くすうったい……や、やめ……なに、これ……」
 スエの狼狽ぶりに動きを止めると、豪太が叱咤する。
「続けなせえ。本丸は目の前。鳴き声を聞き分けて緩急を付けて、追い込んでやんなさい」
 そうか。これが並の女の普通の気持ち好がり様なのかと、里弥も察して。冷静にスエの顔を見下ろせば、苦しそうに眉根を寄せて必死に何かを耐えている風情。麻女の恍惚とは、まるきり違う。この表情を麻女と同じに出来るのかと、不安に思いつつも腰を動かす。
 こういうときにも、腰で文字を書くのは効くだろうと――単純な上下の動きに『の』の字や『○』や『一』を加える。そのたびに、毛先が淫核を引っ掻く手応えが変わって。
「ひいっ……やめ……おかしく……こわい……ああっ……やああっ」
 鳴き声も千変万化する。
 そうして、ついに。
「もう、遠慮は要りやせん。がんがん突いてやっておくんなさい。毬栗を擦り付けるのも忘れずに。それと、精を漏らしちゃいけませんぜ」
 無理な注文というものだ。荒腰を遣えば、どうしても下腹部が離れる。これだけの締め付けに抗して激しく抽挿すれば暴発してしまう。
 それでも。腰をぐいと押し付けながら左右へも動かして淫核を刺激しながら、腰を引いた倍ほども強く押し付ける。気を逸らそうとして、イロハの逆順など頭の中で追うのは不可能事まで里弥も切迫しているので。
 かんじーざいぼさつ(突き挿れながら横一文字に)
「いやあっ……」
 ぎょうじんはんにゃー(奥まで突いて、さらに突く)
「あんんっ……」
 はらみったーじー(突いてから円を描く)
「ああああっ……」
 スエが大きく口をあけてのけぞった。
 しょーけんごーうんかいくうっ
 ここぞと里弥にも分かったので、子袋を突き破る勢いで腰を打ち付け、そのままぐりぐりと下腹部で淫核を蹂躙した。
「だめえええっ……こわい、こわいよおおっ」
 大声で叫びながら、スエの裸身が弓反りになった。そのまま、数瞬。どさっとスエが崩れた。蕩け切った静謐な満足の笑みが顔に浮かんでいる。
「やりなさったね」
 我が事のように豪太が微笑んでいる。ずいぶん遠くに離れているなと思ったのは一瞬。スエは里弥の腰に押されて布団からずり落ち、里弥もそれを追って、ふたりして寝間の端まで動いていたのだった。
 里弥は放心しているスエを抱き上げて、布団に寝かせてやった。
「旦那は優しいね」
 豪太に揶揄の色は無い。
「ですが、女の躾はこういうときが大事でさ」
 スエを引き起こして、里弥の腰と正対させる。
「ちゃんと旦那の跡始末をしな」
 どうやれば――と、スエが振り返るのへ。
「口に咥えて、おまえの淫ら汁を舐め取るんだよ。中に男汁が残ってるかも知れねえから、それは吸い出せ。どっちも吐き出すんじゃねえぞ。呑み込め」
 スエは里弥の腰を透かして遠くを眺める目付きで。まだ精を放っていない怒張を口にふくんだ。愛おしそうに里弥の腰にしがみついて、言われた通りに舐め啜った。
「厭がらずにしゃぶってくりゃあ、つまりは本気で惚れちまったてえことです」
 里弥には、スエへの慕情など無い。己が魔羅で女にして初めての絶頂まで究めさせたのだから、それなりに愛おしいとは思うが。所詮は二十五両の稽古台である。
「女郎の作法じゃ枕紙を使いますが、麻女さんにはこれを試すのも一法かと思いやしてね」
 しかし、女に魔羅を舐めさせるのは――如何にもこの女を支配しているという愉悦があった。排泄の部位に口付けるのも、男と女とでは自ずから意味合いが違うのだと、感得する里弥だった。
ぬしさんは、まだ元気です。もう一度、可愛がってくださんせ」
 跡始末を終えたスエが、怒張に頬擦りした。
 へええっと、豪太が驚く。
「女郎を張ってくと、覚悟を決めたようです。聞きかじりの里言葉まで使っておねだりたあ、旦那も罪なお人ですぜ」
 溜まったまま真剣勝負に臨めば思わぬ不覚を取るかも知れません。スエに今一度のお情けを掛けてやっておくんなさいと、豪太にも言葉を添えられて。
 まだ絶頂の余韻にたゆたっているスエを、今度は小半時も掛けずに二の舞を舞わせて、己れも精を放ったのだった。

 濃密な情事の跡形を風呂で洗い流して。里弥は楼主と対面した。末座には、スエと豪太も控えている。スエの里弥に注ぐ眼差しが熱い。
此度こたびは、お世話になりました。これで、麻女をデウスから取り返す自信がつきました」
 楼主は黙って頷いて。袱紗包みを里弥の前に置いた。
「二十両をお返し致します」
 突然のことに戸惑っていると。
「これは、スエの前借分です。賭けに負けて女郎として勤めると本人も得心したのですから、不要になりました」
「いや、それでは……」
「刀屋には三月の猶予を約させました。利鞘は三両。つまり、手前どもが頂戴した五両に加えてもう三両を三月のうちに都合できれば、お刀を買い戻せます」
 八両なら、他に金策の手立ても無くはない。それよりも。家宝の刀を売って金子を工面したと、あっさり突き止められたところに、里弥は『縁妓楼』といわず遊廓あるいは裏世界の恐ろしさを知った。のは、瑣末事。
 生涯ただ一度の決断を今さらひっくり返すなど、武士として、いや男、否人として、出来るはずもなかった。
「左様ですか。では、ご厚意を有り難くお受けする」
 里弥は袱紗を懐に納めて。すぐに取り出した。包みをほどいて、まず五両を楼主の前に押し出した。
「これは揚がり代とは別に、楼主殿への祝儀です」
 楼主が何か言いかけるのにかぶせるようにして、左右にも五両ずつを並べた。
「こちらは、スエ殿と豪太殿へ」
 五両を手許に残すのだから、楼主の行為を無碍にする訳でもない。
 結局、楼主は口を閉ざして五両を押し頂いた。豪太も膝行しっこうして頂戴し、スエは楼主に促されて頂戴した後は里弥に向かって平伏した頭をなかなか上げようとしなかった。
「世話になりました。では」
 立ち上がって座敷から下がろうとする里弥。その背中に、豪太が声を掛けた。
「御無礼を承知でひと言だけ申し上げておきやす。貴方様みたいに、女に一途な御方は店から用心されやす。いつ何時、女郎と心中するか知れたもんじゃありやせんから」
「心に留めておきます」
 里弥は止めていた足を座敷の外へ踏み出した。

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背景


 ここで稽古をつけてもらって、麻女をノーマルな絶頂に導いて、デウスから取り戻そうという試みです。
 無駄な試みと知っているのは、筆者と読者です。なんたって、麻女=マゾですもの。


 実は。この作品を150枚以上で仕上がれば年間最多執筆枚数を更新と書きましたが、間違っていました。まだ20枚ほど足りません。まあ、返す刀で『宿題を忘れたらお尻たたき、水着を忘れたら裸で泳ぐと、HRの多数決で決めました。』の第11話を書きますから、年末までにはクリアできるはずですが。
 それにしても。通算執筆枚数は2万2千枚を超えています。よくぞ書いてきたなと思う反面、『グインサーガ』の半分にも達していないと。「書いたSMゴマン枚♪」は無理かなあ。まあ、フルタイム・サラリーマンをやりながらでしたし、今現在も月に20日はジェダイの騎士をやっておりますもの。
 少しは実入りのある趣味――と、自分を納得させるしかないでしょうね。


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