Inturrupt Reoprt 3:檻の中の野生児(仮題)

 ええ、まずはこちらをご覧ください。

表記に関する注意
 この小説では、先住民族であるヒロインが使う言語と侵略者である開拓民が使う言語を、共に日本語で表記します。両者の区別をつけるために、原稿ではWORDのフォント機能を利用しています。

・先住民族の言語は、明朝体を使います。台詞は「鍵括弧」でくくります。
・開拓民の言語は、ゴシックを使います。台詞は『二重鍵括弧』にします。
・開拓民の台詞でヒロインが理解できない部分は、文字を薄く表示します。

 PIXIV小説では再現できないので、以下のように簡略化(複雑化?)します。
・フォントの使い分けはしません。
・文字を薄くする代わりに、その部分の前後を{半角波括弧}で閉じます。

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森の中の罠

 森の手前には見渡すかぎり杭が立てられて、杭と杭の間には棘の生えた鉄の線が張り巡らされている。東の方で牛をたくさん飼っている白い人たちが、精霊の住まう森を自分達のものだと言って、勝手に囲ったんだ。ところどころに木の板が掛けてあって
“Keep Out”なんて大きな模様が描かれてる。
 おれたちズンナック族の大人が白い人達と掛け合ったんだけど、火を噴く棒で脅されて引き下がった。森はここだけじゃないし、白い人達はどんどん増えているから、森の分け前もたくさん入り用なんだろうって、大人は白い人達の言い分を受け入れてしまったけど。
 おれは、この森じゃなきゃ駄目なんだ。
 白い人達は、森を囲っただけで、木の枝を拾いにも来ない。もちろん、手入れもしない。森の精霊は悲しむだろうけど、おれには都合が良い。
 大人の腰の高さしかない囲いなんて、簡単に跳び越えられる。
 森に入ると、さっそく兄弟を見つけた。木の枝にちょこんと座って、団栗をかじってる。
「見るなよ、恥ずかしいじゃないか」
 もちろん、おれの言うことなんか分かっちゃないけど、声を掛けられてびっくりしたんかな。すささっと隠れやがんの。そんなにはっきりと見分ける自信はないけど、たぶん初めての顔合わせだ。兄弟だなのに初めて会うなんて――なんだか笑っちゃうな。なんて、後ろめたさをごまかしてる。
 あ。栗鼠と兄弟ってのは、おれの名前も栗鼠ハゼッイイだから。女のしるしが訪れて一本目の赤い羽根飾をもらったのがこないだの冬だから、まだ二つ目の名前はもらってない。けど、生まれが近い男の子たちは、おれのことを平原の栗鼠ハルガイ・ハゼッイイなんて呼ぶんだぜ。平原てのは、山や丘と違って真っ平らだろ。
 まったく失礼なやつらだ。一巡り前の夏だって、低い丘くらいにはなってたし、生まれてから十五回も夏を迎えた(全部は覚えてないけど)今じゃ、手を丸めても掌の底で乳首を押し潰せるんだぞ。そりゃまあ、ひと巡り後に生まれた女の子たちと比べても……いいや、他人と比べても意味はないさ。同じ数だけ季節を巡った仲間のうちで、いちばん背が低いってことも、意味はない。おれはひと巡り先に生まれた男の子よりも速く走れるし、高く跳べる。これは男の子なら、すごく意味があるんだけどなあ。女は狩もしないし、外敵とも戦わない。男の子みたいに筋肉が引き締まってても、女の子らしくないなんて、からかわれるし。それでも、おれはおれだ。煌めく朝露ディニスクォス・ダァトッオさんをうらやましく思ったりしない。
 なんて、どうでもいい(よくない!)ことを考えながら歩いてたけど。木の精霊チジッディ・アブレが見えてくると、他のことは頭から消え失せた。
 見通しの悪い森の中で、じっくりと辺りを見回して耳を澄まして。うん、人の気配はない。
「今日も、おれと遊んでくれよな」
 倒れている大きな樹にお願いをしてから。おれは着ているものを全部脱いで下帯まで取り去り、靴も脱いで裸になった。頭の羽根飾だけは、魂みたいなものだから着けたまま。
 服を着てなきゃいけない場所で、男なら狩をしたり、女なら木の実を採ったり枯れ枝を集めたり、仕事をする場所で真っ裸になるなんて、すごくいけないことをしてるんだから――胸がどきどきして、腰の奥がきゅうんとねじれてくる。木の精霊が目の前に居るもんだから、この春に春を迎えた(生えてきたなんて、羞ずかしくて口にできない)おれの割れ目が、じゅんって粘ついてくる。
 樹が裂けたちょっと上には、大人の男棒と同じくらいの太さと長さの枝が突き出ている。縮かんでるときのじゃなくて、女の人とつがうときのやつ。おれだって、見たことくらいあるし、季節が幾つも巡らないうちに、三つか四つくらい季節をたくさん巡ってる素敵な男の人に求められて、割れ目の奥の女穴に挿れてもらって、彼から二本目の羽根をもらうんだ。
 男とそんなことをするなんて絶対に厭だって言う娘もいるけれど。おれはちっちゃい頃から、その日がくるのを待ち遠しく思ってる。だって、男は強くて女は弱い。強い者が弱い者を(いろんな意味で)組み敷いて当然だ。その代わり、弱い者は強い者に甘えて、護ってもらう。
 だから、その日のために今のところは、こっちの枝は我慢しとく。チジッディ・アブレは羽根をくれないもんな。
 その太い枝から一歩半離れたところに、瘤が盛り上がってて指一本より少し長くて倍くらいに太い枝が立っている。瘤も枝も、ちょこっと樹皮が剥がれてきたけど、そのささくれが凄いんだから。
 おれはチジッディ・アブレに跨がった。さすがに、組み敷いてくれないもんな。男と女でも、こういう形があるのも知ってるから、それは不満じゃない。
 跨がると割れ目が自然と開く。その内側を瘤のところに押しつけた。割れ目からはみ出たちっちゃいびらびらが樹皮にこすれて。
「あんんっ……」
 腰がびくんっと震えた。その動きが、さらにびらびらと樹皮をこすり合わせて、ちょっとくすぐったくて、ちょっと痛くて、滅茶苦茶に気持ち好い。尻から脳天まで、鋭いそよ風が駆け昇る。
 おれは腰を前へ突き出した。割れ目の端っこにある小さな肉の蕾が枝に押しつけられて、そよ風が強い風に変わる。
「あああっ……いいよお」
 熱い強風が、おれの全身を揺すぶる。だけど、もっともっと風を強く煽れるんだ。枝にこすり付けたまま、くいっと腰を浮かすと――肉の蕾がきゅるんと綻びて、中に隠れてた芽が剥き出しになって、それが樹皮に触れると――もう、強風でも疾風でも颶風でもない。夏の暑い日に大雨を呼ぶ激しい雷。
 ぐわららら、ずっどーん! 頭が真っ白になって、身体が砕け散るような、わけの分からない感覚が、おれを吹っ飛ばした。
「ふわああああ……」
 ばらばらになった身体を、後ろへ倒して――人影に気づいて、幹から転げ落ちた。
「誰だ?! 今の……見てたのか?!」
 うろたえて、分かりきったことを尋ねちまった。見れば、白い人だって分かるし。二人の男は、にやにや嗤ってる。
『{言っただろ。集落に警告なんかせずに、こっそり見回ろうぜって}」
「{さすがにジェスは策士だな。面白い獲物が掛かったもんだ}』
 白い人たちの言葉を言い交わしながら、おれに近づいてきた。ひとりは片手で持てる短い火を噴く棒を、もうひとりは縄束を持っている。
『{オーケイ。おまえは私有地に無断侵入した。州法第三十五条を適用して、私人による現行犯逮捕を執行する。これでよかったっけな}?』
『{いいんじゃねえか}』
 縄束を持ってるほうのやつが腰を曲げて、おれに向かって手を差し伸べた。親切で引き起こしてくれるんじゃないくらい、羽根飾のない子供だって分かる。それに、白い人とは関わるなって言われてるし。なんてことよりも――おれ、男の前で真っ裸なんだぜ!
 なんて、一瞬のうちに考えるよりも早く身を起こして、脱ぎ捨てた服に向かって突進した。服を拾い上げようとしたとき。
 だあん!
 目の前で、服から生地の破片と土煙が飛び散った。
『{動くな。次は脚を射つ}』
 もうひとりのやつが、火を噴く短い棒をおれに向けている。火だけじゃなく小さな硬い団栗が飛び出て、それは矢と同じくらいに人や物を傷つける。言葉は分からなくても、動けば二発目がおれに向かって火を噴くだろうとは分かる。
 おれに手を差し伸べた男が、目の前に立って。
『{せっかく裸になってくれてるんだ。何もせずに連れてくってのは、ビッチに失礼じゃねえかな}』
『{違いねえ。ダニー、背中を頼むぜ}』
『{やっぱりかよ}』
 目の前の男が何歩か下がり、火を噴く短い棒を腰の鞘から抜いて、おれに向けた。それまで火を噴く短い棒を構えていたやつは、それを腰の鞘に納めて。帯と鞘を、おれのチジッディ・アブレの上に置いた。そして、股の部分が大きく開いている革の袴も脱いでから、おれの前に立った。
『{おとなしくしてりゃ、ちっとは優しくしてやるぜ}』
 おれたちのと似た袴を脱いで――へえ、袴を重ねて着てる。おい、ちょっと待てよ。それも脱いじまうのかよ。脱がなきゃおしッこもできないんて……うわわ、むくむく大きくなった。
 冗談じゃない。こいつ、おれと番う気なんだ。やだよ。まだ(ほんのちょっぴり)早いってだけじゃない。こいつの羽根なんか、もらいたくない。おれは、ズンナックから出るつもりはない。
 逃げるために、おれは横に跳んで火を噴く棒の狙いを外した……つもりだったけど。下半身丸出しの男が横に蹴り出した足につまずいて、無様につんのめっちまった。ふだんなら絶対にしない失態だ。おれ、動転してる。
 男は、俯せに転がったおれを馬乗りになって押さえ込んで、両手を背中にねじ上げた。
『{ダニー、縄をくれ}』
 こいつら、飼っている牛を投げた縄で捕まえて、牛が厭がっても囲いの中へ引きずり込む。だから、いつも縄を携えている。
「やめろ! おれは家畜じゃないぞ!」
 文句を言ったけど、通じない。しかも、こいつはおれより重たいし力も強い。ろくに抵抗もできず、後ろ手に縛られちまった。
『{いい子にしてたら、すぐ終わらせてやる。それとも、じっくり可愛がってほしいか}?』
 見物してるほうが、げらげら嗤う。くそ、何がおもしろいんだよ?!
 馬乗りになっているやつが、おれを仰向けにひっくり返して、おおいかぶさってくる。
 くそ。やめろったら。おれは、思い切り膝を蹴り上げた。
 がしんと、骨と骨とがぶつかり合う硬い衝撃の中に、軟らかい何かが潰れるような感触が混じった。
 馬乗りになってたやつが、もんどり転げる。
 おれは跳ね起きて、森の奥へ逃げ込もうとした――けれど、手が使えないと身体の平衡が取りづらいし、顔に当たりそうになる木の枝は身体全体でかわさないといけない。栗鼠ハゼッイイともあろうものが、あっさり屍肉啖いテーレーチャアッイに捕まっちまた。
 引きずり戻されると。両手で股ぐらを押さえてぴょんぴょん跳びはねていた男が、ものすごい形相で詰めよってきた。
『{このくそビッチが}!』
 がしん!
 拳骨で頬桁を殴られた。目の前が真っ赤に染まって黄色い星が飛び交った。
『{チンポの代わりに鉛玉を食らわせてやってもいいんだぞ}』
 もう一発頬桁を殴られ、腹にも拳骨を突き入れられた。身をかわそうにも、後ろから二の腕をつかまれているから、動けないどころか、ぶっ倒れることすらできない。
「うぶっ……ぐええええ」
 二発三発と腹を殴られて、激痛といっしょに苦い水が口にあふれる。
 それでも男の怒りは治まらずに――仕返しとばかりに、股ぐらに膝頭を蹴り込まれた。
 二の腕をつかんでいる手を放されると、おれは自分の重みを足で支えられなくて、地面に崩折れた。
『{くそ、手間をかけさせやがって}』
男はおれを見下ろしながら、男棒を手でしごいた。なかなか大きくならない。ちっと舌打ちして、おれの胸に靴をこじ入れて仰向けに転がした。靴の裏でおれの太腿を蹴って、脚を開かせる。手で隠そうとしたら、その手を踏んづけられた。
『{まだ餓鬼だな。乳は薄いし、毛もろくに生えちゃいねえや}』
 目の動きと声の調子で、おれがぼろくそにけなされているのが分かった。くそ、ぺったんこでもつるつるでもないぞ。季節があと一巡りもしてみろ。大人の女と同じくらいになる……かもしれないじゃないか。
 さんざんけなしたくせに、ちゃん男棒がおっ勃ちやがった。また、おれにのしかかってくる。
「やめろ! やめろったら……」
 また蹴ってやろうとしたけど、今度は足首をつかまれた。
「くそ! 手を放せよ!」
 もがいても、つかまれている足をひねりそうになって、激痛が走る。それでも、おれは諦めない。こんなやつに、他部族どころか肌の色が違う連中の仲間になんか、なりたくない。
『{これじゃ埒が明かねえ。}ダニー、{ちょっと押さえといてくれ}』
 ダニーってのは、名前らしい。おれのことはビッチていうみたいだ。二人が入れ替わって。ダニーじゃないやつは、おれの服を拾い上げると、おれの小刀で切り裂いた。
 おれは、また裏返しにされて。縄をほどかれて、服の切れっ端で縛り直された。また仰向けにされて、両足をうんと広げられてから、片足を縄で縛られた。縄尻がそばの木の幹に巻きつけられ、背丈の倍くらい離れている木の幹を通してから、もう片方の足首に巻かれた。
 ダニーが手を放しても、おれは脚を閉じられないばかりか、縄が頭の高さくらいで張られているので、おれの足も宙に浮いてる。
 その脚の間に、ダニーじゃないやつが立った。
「くそお……見るな! 見るなったら……!」
 見られるのを羞ずかしがってるどころじゃ済まない。
 そいつは、掌に唾を吐いて、それを男棒にまぶして。おれの割れ目に先っぽを押し当てて。
 うわわわ……男棒が入ってきた。腰が浮いてるので、自分でもよく見えてしまう。
 割れ目の縁と中のびらびらが男棒の先っぽに擦られて、ちょっとくすぐったい。と思ったのは、心臓が二つか三つ拍つ間だけだった。
 割れ目の奥をぐうっと押されて、次の瞬間――身体が縦に割られるような凄まじい痛みが、股間を奔った。初めてのときは痛いって聞かされてたけど……こんなに鋭く激しい痛みとは思ってなかった。
「ひいいいっ……痛い! やめてくれ。抜いてよおお!」
抜いてくれるどころか。さらに、めりめりと押し挿ってくる。
『{血まみれだ。脱いでおいて正解だったな}』
『{へえ。インディアンなんて、餓鬼のうちから親兄弟も見境なく交尾してるもんだと思ってたけどな}』
『{いやいや。けっこう貞操観念てやつだ。ことに初めてとなると……}』
『{初めてとなると、何だってんだよ}』
『{そのうち分かるさ。それよりも……さんざ手こずらせてくれたんだ。たっぷり泣かせてやらんけりゃな}』
 二人がしゃべっている間に、だんだん痛みは小さく(はないけど、我慢できるくらいに)なってたのに。話が終わると、ものすごい勢いで腰を前後に動かし始めた。
 激痛が跳ね上がる。ずん、ずん、ずん……穴の奥に突き当たる。
「痛い痛い痛い……動くな。お願いだから、動かないでくれよお!」
『{何て言ってるんだよ}?』
『{知るか。母音が撥ねまわる言葉なんざ、聞いてるだけで頭が痛くならあ。おい。ちったあ静かにしろ}』
『{だけど、インディアンのことに、やけに詳しいじゃねえか}』
『{手懐けたビッチが、おれたちの言葉を覚えたんだよ。ポーカーで負けて、持ってかれちまったがな。だから、こいつを二匹目にしてやる}』
『{そいつは、どうかな。ミスタ・セイバーが、所有権を主張するんじゃないかな。ミスタ・セイバーの所有地に侵入したんだから]]』
『{乗りこなせるなら、乗りこなしてみろってんだ}』
 おれの訴えなんか無視して、この男は荒馬を乗りこなすみたいに、おれの股ぐらの上で腰を跳ね続けた。
 男が動きを止めて抜いてくれたときには、おれは半分気を失っていた。
 だけど、陵辱は半分も終わっていなかった。

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 わかりにくいですね。
 前回のレポートでも書いたように、実はPIXIV仕様はルビを打つつもりでした。

知るか。母音が撥ねまわる言葉なんざ、聞いてるだけで頭が痛くならあ。おい。ちったあ静かにしろ・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・・・・・・・・

 しかし、英文と和文の分かち書き機能かなにかで、和文にやたら空白が生じたりします。PIXIVでちょこっと試して、投げ出しました。
 まあ、pdfでもepubでも、WORDを忠実に再現しますから。製品版/ギフト版では、こんなふうになります。



インディアン2  
 黄色の文字と下の部分との隙間調整の画像です。

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銃殺と縛首

 身体を揺すぶられて、おれは目を覚ました。目の前にミックの顔があった。ちゃんと(襤褸っちいけど)服を着ている。
 ジェスたちの姿は――と、あたりを見回したけど、誰もいなかった。と思うけど、まだ夜が明けきっていないんだろう。閉じ込められたときよりも、もっと薄暗い。
『これを、飲め』
 水を容れた椀を、ミックが口に近づけた。
『昨夜は、ごめん。親まで殺すと、言われたら、逆らえなかった。きみを、殺さないという、言葉を、信じるしかなかった
 不思議だ。ひとつずつの言葉は分からないのに、ミックの言いたいことは何となくわかる。味方だからだろうか。
『おまえ、わるい、ない。ジェス、わるい』
 けっして恨んでいなって伝えたくて、聞き覚えたばかりの言葉を、なんとか並べてみた。
『水を、飲め。僕には、これくらいしか、してあげられない』
「ありがとう」
 自分では飲めないので、口を開けた。ミックが椀を口にあてがおうとしてくれるけど、枷につっかえてしまう。無理に椀を傾けると水がこぼれてしまう。
 ミックが首をかしげて。
いやらしい、気持ちじゃない。こうしないと、飲ませられない』
 ミックが水を口にふくんで顔を近づけた。
 うわ、接吻だ。なんてうろたえかけて、もうすこしで笑うところだった。接吻よりも何百倍も淫らなことを、さんざんされてるんだものな。
 おれは(首枷が痛いけど)頷いて顔を上向けて――接吻にふさわしく、わずかに唇を開いた。ミックが横ざまに唇を重ねてきて。
 口の中に流し込まれた水は、山羊の乳よりも苺よりも甘かった。ごくごくごくと、一滴ごとに喉が鳴る。
 ミックは何度も接吻をしてくれて、あっという間に椀が空になった。
 生まれて初めてって思うくらいに、幸せな気分になった。もしかしたら、水のせいだけじゃないかもしれない。
 ばあん。
 扉が蹴り開けられて、幸せな気分は一瞬で恐怖に変わった。見知らぬ(どうせ、昨夜におれを虐めたやつのひとりだ)男が近づいて来て――ミックを蹴り飛ばした。ミックはわずかに身を護る動きをしただけで、抵抗もせず地面に転がった。
『おおい、ジェス! 来てくれ!』
 そいつが呼ばわると、待ち構えていたみたいに、ジェスともうひとりの男が駆け付けた。
この餓鬼。ミスタ・セイバーの言いつけを破ってビッチに水を飲ませてたぜ』
 ジェスが、おれとミックを交互に睨みつける。なぜか薄嗤いを浮かべてる。
こいつも素っ裸にして、ビッチと並べておけ。痛めつけなくていいぞ。活きのいいほうがミスタ・セイバーのお気に召すだろうからな
 ミックもたちまち服を脱がされる。手足を背中でひとまとめにされて縛られ、天井の横木から俯せに吊るされた。
こいつら、キスをしてやがったぜ
『けっ。アンナお嬢様の件といい、色気づきやがって。それじゃ、同じように懲らしめてやるか
 ジェスが手下(だと思う)に指図して、ミックの男棒と玉袋をひとまとめに縄で括らせた。横長の箱から角が突き出たような鉄の塊が、そこに吊るされる。ミックの顔が苦痛に歪んだ。
 背中をうんと反らせて吊るされているだけでも、ずいぶんきついだろう。そこに鉄の重みが加わっただけじゃない。玉袋が引き伸ばされて、縄から先はぱんぱんに膨らんでる。おれは男じゃないから、それがどれくらい痛いかは分からないけど。すぐに脂汗が滲み出るくらいだから、もしかしたら、尻穴を男棒に抉られるよりもつらいんじゃないだろうか。
『おまえには水を飲ませるなと言われているからな』
 ジェスがおれの斜め前に立って、片足を腹に当てた。その足が後ろへ引かれて。
「ぐぶふっ……!」
 靴のつま先を腹に蹴り入れられた。内臓が口から飛び出そうな激痛。二発三発と蹴り込まれて――せっかく飲ませてもらった水を吐き出しちまった。だけでは足りずに、腹の中の苦い水まで、口からあふれた。
なんだ、その目つきは。水を飲ましてほしければ、どう言えばいいか、教えてやっただろ。言ってみな。チンポをなめさせてくださいって』
 言うもんか。おれはジェスを睨みつけてやった――つもりだけど。こいつに二本目の羽根をもらった(押しつけられた)んだと思っちまって。すぐに目を伏せてしまった。
『けっ。揃いもそろって、強情な餓鬼どもだ。ミスタ・セイバーにたっぷり懲らしめてもらうがいいぜ
 おれとミックを閉じ込めて、三人の白人どもは小屋から出て行った。

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 ミック君は、ハゼッイイが森から牧場へ、全裸緊縛股縄連行(マンネリ的濠門長恭仕様)されて、そのまま納屋に監禁されたとき、

『チンポを見せろって言ったのはアンナお嬢様なのによ。奥様が部屋に入って来るなり悲鳴を上げて、僕が悪戯を仕掛けたって、嘘の告げ口をなさったんだ

 という事情でstrappado(当ブログでは既出。分からなければ erotic を添えて画像検索してください)されて、玉と竿を紐で縛られて煉瓦を吊るされている少年です。彼との対話で、いくらかは言葉を覚えます。その過程で、だんだんと薄字が減っていくとか、楽しんでますけど――手間が倍以上です。楽しい時間が倍になったと、前向きに駐車しときます。

 ちなみに、ミック少年は所詮味付けです。『銃殺と縛首』の章が終わると、せいぜい遠景扱いになる予定です。チョイス・ヤックナンです。ハヤック・ソノーチです。エキス・トーランです。

 今回は、味方とか淡い恋心など皆無の、徹頭徹尾、はあどぼいどど、だど?


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初っ端から苛烈な責めがいいですね、この先が非常に楽しみです!
言葉が通じていない描写も素晴らしく、書かれていない部分が非常に気になります!
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濠門長恭

Author:濠門長恭
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高々度の変態非行が可能です!

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