Progress Report 4:『特別娼学性奴』
とんでもない状況になっています。
ヒロインがSSS(Sexpert Scholarship Student / Sex Slave Student)に堕とされてから1か月。枚数にして320枚。なんと、未だに処女です。
そして、実質全14章のうち、まだ7章が終わったところです。
これは……500枚突破はおろか、600枚いくのではないでしょうか。受注からの納期が2か月しかないと分かってるのに、そのうち最初の10日は別の作品を仕上げるのが分かっていたというのに。
妄想竹を構想竹しているうちに暴走竹しちまった筆者が悪いんですけどね。
SCINARIO
Spiteful・・・・・・- 3 -
Substitute ・・・- 19 -
Subsidence・・・- 27 -
Shame・・・・・・・・- 61 -
Scorn・・・・・・・・ - 90 -
Suppression・・- 104 -
Service・・・・・・- 114 -
Sexperience・・- 139 -
Study
Submission
Skill
Sodomy
Showtime
以下は分量的に1章?
Sequel
Succession/Success
Succession/Session
SCRIPT AFTER これは「後書」
さて、今回はServiceのうち前半の補習は割愛して、かつての男子親衛隊員2名との『デート』の様子をお送りします。
キスをしながら、胸の疼きとか腰の奥の熱い潤いとか、これまでは憤激と屈辱に身体が震えていると思っていたのと同じ反応が生じて、セエラアイリスが「え……?」と思うシーンがあります。後に悦虐に目覚める伏線になるかもしれない、そもそも最後まで(自覚的には)目覚めさせないかもしれませんが。
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さいわいに、補習を受けさせられたのは、この二回だけでした。わたくしが二度とゼロ点に抗議しなかったからですが、教師がその気になれば何とでも口実は設けられたはずです。どの教師も、わたくしをまともな生徒としては扱ってくれませんが、セキスパート奨学生あるいは性奴隷として扱う教師も、今のところは少数だということでしょう。
全教科の試験が(生徒からの異議も吟味した後に)確定してから、学年ごとの順位が掲示されました。わたくしとチャーリイとジニアの名前はありませんでした。
Y7男子の上位四人は、わたくしかジニアかどちらかとの一日デートの権利を獲得しました。夏休みが始まる二日前からは、授業が午前中だけ。午後からが、権利の行使に充てられました。
最初は、同じクラスのハーディ・リンクスとです。彼も、オッターに負けないくらいに献身的なわたくしの崇拝者で僕(しもべ)でした。わたくしが落ちぶれてからは、彼のほうから近づいてくることはなくなりましたが、それは大半のクラスメイトと同様です。近づいてくる男子は、女子の目を盗んでわたくしに置換紛いの行為を仕掛けてくる者ばかりでしたから、近づいてこないことが最大の好意だと、わたくしは解釈していました。
校長からは事前に、デートの相手はわたくしの御主人様(Master)であり顧客(Customer)なのだから、丁重に振る舞えとは指導されていました。わたくしが性奴隷なら彼が御主人様だし、売春婦なら顧客です。でも、まさか、彼がわたくしに対してそのようなことを要求するなど、考えられないことです。
だから、二人きりで校内を散策したり、単独では出入りを禁止されているカフェテリアに連れて行ったりしてもらえるのかなと、楽しみになんかしていませんが、軽く考えていました。
ところが、彼がわたくしをエスコートしてくれた先は、彼の所属しているレスリング部の部屋でした。三人の上級生がわたくしたちを出迎えました。三人とも、シングレットというのでしたかしら、半袖膝丈のレオタードを身に着けています。
ははん。スパーリングとかして、格好いいところをアピールしたいのね――と、わたくしは独り合点しました。
案の定、ハーディは服を脱いで――え? 女性の目の前で着替えるつもりですか。
着替えるどころか、彼は全裸になりました。
「きゃ……」
わたくしは、顔を背けて両手で目をおおいました。清純ぶったのではないです。男の人に裸を見られるのは慣れっこになっても、男の人の裸には免疫が付いていません。
「ファウルカップを忘れてるぞ」
「無理だよ。だって、これだもの」
げらげら笑う声に興味が湧いて、指の隙間からちらっとのぞきました。
彼の男性器が勃起していました。チャーリイに比べても可愛い、訂正します――小さいです。それをお腹に貼り付けるようにして、彼はユニフォームを着ました。
「きみも準備しろよ」
え……?
「貸してあげられるシングレットはないから、裸でやれよ」
「女のパンクラチオンだな。ルールはCACCだけど」
何を言っているのか、理解できません。
「さっさと脱げよ」
上級生のひとりが、わたくしに近寄りました。
他の二人もそれに倣って――包囲された形です。
わたくしはおびえたりなんかしません。上級生の目を見詰めて、静かな声で尋ねました。
「それは、わたくしへの命令なのですか?」
上級生は目を反らしかけましたが、自分が絶対的に優位であることを思い出したのでしょう。にらみつけてきました。
「そうだ、命令だ。裸になって、ぼくたちとレスリングをしろ」
「わたくし、ルールを知りません」
「さっきも言ったろ。CACC、Catch as catch can――つかめるところはどこをつかんでもかまわないし、関節技、キック、パンチ、なんでもあり。まあ、きみは女性だから、顔面への攻撃はしないであげる」
「それと、レイフもしないよ。出来ないからね」
もうひとりの上級生が苦笑しています。つまり。レスリングにかこつけて、か弱い乙女を男が四人掛かりで痛めつけようというのです。
「なぜ……わたくしに恨みでもあるのですか」
「無いとでも思ってたのか」
ハーディです。
「いつも女王様気取りで、ぼくたちを見下しててさ。しょっちゅう荷物持ちをさせるし、カフェテリアではこっちの都合も考えずに呼びつけるし、去年の誕生日にあげたハンカチなんかジニアに投げ与えたし……」
わたくしは、ただあきれて、ハーディの恨み言を聞くばかりです。彼はオッターと競うようにしてチャーリイの仕事を横取りしていたのだし、それでもたまには彼の献身に報いてあげようとして陪食の機会を与えてやったのです。ハンカチは、あんな安物を身のまわりに置くなんて、わたくしの品位を損ないます。でも、好意は分かっていましたから、捨てたりなんかせず、ジニアに下賜したのです。
そのひとつひとつを、彼に説明する気にはなれません。しょせん愚民には高貴な者の考え方など理解できないでしょう。それに……今さら言い聞かせたところで、虐められるのが怖くて言い逃れをしていると勘繰らるだけでしょう。
よろしいです。わたくしを痛めつけて満足するのであれば、お好きになさい。今日を耐えれば、それで終わるのです。この先何年も性奴隷としての辱しめを受けることを思えば、なにほどのことがありましょう。
わたくしは、四人に取り囲まれたまま、制服のジャンパースカートを脱ぎました。求められて、靴も脱ぎます。
部室は広くて、部屋の中央には五ヤード四方くらいのマットが敷かれています。印象としては、マットのまわりのわずかな空間が、ロッカールームとミーティングルームになっています。
その広いマットの上で、わたくしはハーディと向かい合いました。
彼は姿勢を低くして両手を前に突き出して、まるでへっぴり腰です。もちろん、これがレスリングの構えだということくらいは知っています。
猿真似をしたところで、その後の体さばきを知りません。どうやったって敵いっこないのですから、棒立ちですけれど座り込んだアヒル(Sitting duck)です。
「ファイティング・ポーズを取れよ」
「それは命令ですか」
「いいから、やっちまえよ」
上級生にけしかけられて、それでもハーディは慎重に近づいてきて……腕をつかまれたと思ったら。
「きゃっ……?!」
マットの上に引き倒されていました。とっさに突いた手がずるっと滑って、お腹をマットに打ちつけました。このまま転がっていれば、そんなに酷いことはされないで済むかなとずるいことも考えましたけど。
「立てよ」
命令されたうえに腕を引っ張られては、立ち上がるしかありません。よろめきながら立ち上がると。
「きゃあっ……!」
足を払われて、尻餅をつきました。
ハーディは正面で片足を上げて。
「痛いっ……!」
股間を踏んづけられました。鎖が陰裂に食い込んで、すごく痛いです。本能的に股間を護ろうとして、背中を丸めてうずくまります。その背後から……
「いてえっ……」
小さく叫んだのは、ハーディのほうでした。背後から股間を蹴りあげようとして、つま先を鎖にぶち当てたのでしょう。
良い気味ですと言いたいところですが、ハーディはつま先、わたくしは鎖のせいで尾底骨から陰裂までのダメージです。割りに合いません。
「こいつめ!」
腹を立てたハーディが髪をつかんで、わたくしをマットから引き抜きました。そのまま前へ回り込んで。
ぼぐっと、鈍い衝撃がお腹に広がります。
「ぐふっ……」
重たい痛みが腹全体に広がって、吐き気が込み上げてきます。
「思い知ったか」
ぼぐっ……二発目は腹筋を固めたので、苦痛も小さかったし吐き気もしませんでした。
「腹はやめておけよ」
三人の上級生の誰かが、ハーディを止めてくれました。
「なんだよ。顔は殴るな、レイフは禁止、そのうえ腹も駄目って、どうすればいいんですか」
「交替しろ。お手本を見せてやるよ」
ハーディがしぶしぶを顔に貼り付けてマットの外へ出ると、いちばん年長らしい男子がわたくしの前に立ちはだかりました。同級生の数年後の姿というより、若い教師の数年前といった印象です。けれど、せいぜいY10くらいだと思います。延長教育の生徒は、SSSと関り合いにならないようにしている感じですし、Y11は卒業と進学とを控えて、それどころではないはずです。Y10だろうとY13だろうと、わたくしよりずっと大きくて腕力も強いことに変わりはないです。
わたくしがうずくまったままでいると、その人はわたくしにおおいかぶさるようにして。腰の鎖を握って、わたくしを持ち上げました。
「痛いいっ……!」
体重がもろに鎖に乗って、食い込むなんてものではないです。切れ味の悪い刃物で股間を切り裂かれるような激痛です。
わたくしは、足を伸ばして立とうとしました。ところが、彼は腰の横に手をまわして、両側から引き上げます。
「やめて……ください!」
突きのけようとすると、ますます鎖が食い込んできます。進退窮まって、彼の肩にしがみつきました。鎖の圧迫が消えて、ほっとする間もなく。
ぐらっと部屋が傾いたと思ったら、彼に浴びせ倒されました。どすんと、彼の体重が全身を押し潰しました。
「ぐぶふっ……!」
カートゥーンだったら、人形(ひとがた)のパイ生地を描くところです。冗談を言っている場合ではありません。
全身を打って、痛みで動けないわたくしに、彼が手足を絡ませてきました。どういう体勢なのかうまく説明できませんけど、肘を外側へねじ曲げられるような激痛です。ぐききっと関節がきしみます。
「痛い……腕が折れます!」
わたくしの訴えを無視して、いえ、面白がるかのように、彼は身体を揺すって、その動きがますます肘をきしませます。
「どうだ、降参か?」
「降参です。降参します!」
わたくしが(半泣きになんか、なっていません)叫ぶと、彼は赦してくれました。
彼はわたくしを横向きに転がして、添い寝するような形になりました。わたくしの手足を自分の手足に絡めてから、わたくしを腹の上に乗せるようにして、あお向けになります。そして――ぐんっとわたくしを突き上げました。
「いやああっ……」
そんなに痛くはないです。けれど、空中でブリッジの姿勢に固められました。ブリッジよりも開脚の角度が大きいです。直角を超えています。他の三人もマットに上がってきて、わたくしの股間をのぞき込みます。
「可愛らしい陰唇(lips)だな。こんなのでセキスパートになれるのかな?」
「マンコ(cunt)は……鎖が邪魔で、よく分からないや」
「ケツ穴(ass hole)も色が薄くて小さいね」
ひわいな単語の連発です。可愛いというのも、否定的な評価なのでしょう。肯定的な評価をされたって恥ずかしいですけれど。
正面から見られるのと、開脚しているところをのぞき込まれるのとでは、恥ずかしさが百倍も違います。腰の奥が羞恥に燃え盛っています。
「降参します。やめてください」
「まだ早いよ」
取り合ってくれません。ハーディが鎖をつかみました。正確には、腰を巻いている鎖と股間を割っている鎖との交点を、南京錠とまとめてつかみました。下へも手を突っ込んで、腰の後ろの交点もつかみます。
「これって、女のセンズリ(jerk)になるのかな」
鎖を前後にしごき始めました。元から淫裂に食い込んではいますが、ぎちぎちではありません。わずかな余裕はあります。そのせいで、鎖が淫裂と会淫と肛門とを擦ります。のこぎりで引かれているような痛みが走ります。
「それはマンズリ(beaf flicking)っていうんだぜ」
「牛肉ほど分厚くないよ」
痛みに耐えているうちに、陰核への刺激が稲妻を呼び寄せました。膣口と肛門にも、むずがゆいようなくすぐったいような感覚が生じました。
「くうっ……んん」
「よがりだしたな」
わたしの苦鳴に混じる別の響きを、耳ざとく聞きつけられてしまいました。けれど、苦痛はそのままに快感のほうは次第に強くなっていって、うめき声を止められません。
腰の奥で燃え盛る恥ずかしさと浅い部分にたまっていく快感とが絡みあって、全身に広がっていきます。
もっと虐めてほしい。そんな思いが浮かんできて、あわてて打ち消しました。虐めてほしいだなんて……わたくしはマゾヒストではありません。「虐めて」ではなく「可愛がって」なら問題は……大ありです。同じことです。肉体の快感と苦痛に心の恥辱とが混然一体となって、何も考えられなくなっていきます。
でも、わたくしは負けません。快感に囚われては、麻薬中毒患者と同じです。
「くううっ……まだ、降参させてくれないのですか」
気力を振り絞った訴えは聞き届けてもらえました。鎖の動きが止まって、同時にわたくしはマットの上にたたきつけられたのです。
「あれだけマンズリしてやってアクメに達しないなんて――こいつ、不感症じゃないのか」
「前も後ろも未開通だから、まだガキなんだよ」
「Y7だものな」
「ぼくはガキじゃないよ」
「でも、まだ童貞(cherry)だろ」
好き勝手なことを言い合っています。
酷い目に遭いました。でも、大怪我をさせられずに終わった――のでは、ありませんでした。
二人目の上級生がマットに立って、ボクシングのファイティングポーズを取ったのです。しゅっしゅっと、ジャブを繰り出す真似をしています。
「アイリス、立てよ。おれにぶちのめされるために立て。顔は勘弁してやる」
命令には従わなければなりません。泣いて赦しを乞うなんてみっともない真似はできません。でも、身体が動きません。
「しょうがないな。ハヴェント、立たせてやれ。倒れないように、羽交い締めにしておけ」
「自分の足で立ちます!」
名前を呼ばれた三人目の上級生が動く前に、わたくしは宣言しました。両手を突いて上体を起こし、両足を踏ん張って、よろよろと立ちました。強制されるよりはみずからの意思で命令に従う――という自尊心だけではありません。羽交い締めにされていては、殴られた瞬間によろめいて衝撃を和らげることすら出来ません。
「形だけどもファイティングポーズを取れよ。か弱い女の子を一方的に虐めるみたいで後ろめたいよ」
まさに言葉通りのことをしているくせに。でも、命令ですから――肘を曲げて両手を拳にして顔の前で構えました。
「きみも攻撃していいんだよ」
フットワークは使わず、彼は無造作に近づいてきて――パンチを繰り出しました。胸を狙われていると分かったときには心臓のあたりに、どすんと衝撃を受けていました。
オレンジの輪切りが潰れて、ぷるんと跳ね返るのが分かりました。乳房をもぎ取られたような激痛が走ります。机の角にぶつけただけで息が詰まるほど痛いというのに、拳骨で思い切り殴られたのです。両手で胸を抱えて前のめりになりました。
「ほら、ファイト、ファイト!」
命令に従おうと思っても、身体が動きません。とうとう羽交い締めにされてしまいました。ブリッジのポーズで空中にさらされるよりも屈辱です。
正面の上級生は、さっきよりもわたくしに近づくと、両手を使って乳房を連続して横に殴り始めました。
「ワンツウ、ワンツウ」
殴られるたびに、ささやかな乳房が左右にひしゃげます。さっきほど激烈ではありませんが、鈍い痛みが蓄積していきます。
「ワンツウ、ワンツウ……フィニッシュ!」
また正面からパンチをたたき込まれて、乳房が破裂したような激痛です。
「うわあ。だいぶん赤くなったな。腫れた分だけ、おっぱいが大きくなったんじゃないかな」
そんなことは分かりませんけれど、ずきずきとうずいています。
「先輩、交替してください。ぼくは、まだスパーリングをしてない」
わたくしを羽交い締めにしていた上級生との対戦(?)です。サンドバッグにされていた間、ずっと支えてくれていたおかげで、自分の足で立てるようになりました。驚きました。まだ、皮肉を考えられる余裕があります。口にする蛮勇はありませんけれど。
「それじゃ、ぼくはね……」
目の前に立って、両肩をつかむと……
「あがっ……!」
股間が爆発したような激痛が、腰を砕きました。
「…………?!」
両手で股間を押さえて、その場に崩折れました。
「玉(ball)が無いから、金蹴り(nuts crushing)ほどは効かない感じだね」
男の人が睾丸を蹴られる痛みは分かりませんけれど、女性器を蹴られたって、物凄く痛いです。教鞭でたたかれるよりも。それに、局所的な痛みではなく、股間全体が痛いです。でも、彼が言うように男性はもっと痛いのかもしれません。すくなくともわたくしは、もん絶したり跳びはねたりはしませんでしたから。
「ひと通りは試したけど、あまり面白くないな」
わたくしをサンドバッグにした上級生が、つまらなさそうに言いました。
「恋の駆け引きをするわけじゃなし。穴を使えないビッチなんて、何の役にも立たないや」
「それじゃ、もう赦してやるんですか?」
ハーディは不満そうです。
「そうだな。おい、アイリス」
「はい、なにかご用でしょうか、御主人様(My master)」
この言葉遣いは、校長からの命令です。赦してもらえそうな雰囲気になって、やっと思い出したのです。我ながら現金です。
「そこにひざまずけ。そして、こう言え――父親の権威を我が物と勘違いし、高慢ちきに皆様を見下してきて、申し訳ありませんでした。わがままな振る舞いで皆様に迷惑ばかり掛けて、申し訳ありませんでした。深く反省しています。両手を組んで謝罪してから、最後に、おれたち一人ひとりの足にキスしろ。それで、おれたち四人はおまえを赦してやるよ」
また、四人に取り囲まれました。わたくしが謝罪するのが当然といった顔です。
これも命令には違いないのだから、服従しなければならないのでしょうね――と、弱気が頭をもたげました。言われた通りにすれば、それで『デート』はおしまいにしてもらえそうです。
けれど。たとえ不服従の厳しい――これまで以上となると、厳しいのではなく残虐です。その残虐な罰をこうむっても、譲れない一線があります。高潔です。誇りです。わたくしが高慢ですって?! 貴族としての品位を保って、平民であるクラスメイトに接していたのを、そのように曲解するのですか。
わたくしには、この四人にも他の生徒にも、謝罪する必要など断じて有りません。
これ以上の暴力から逃れる方便だとしても、わたくしの口から出た言葉は、わたくしを縛ります。何をされても仕方がない、そういう契約です。けれど、無実の罪を認めるわけにはいきません。
「お断わりします」
わたくしは勇気を振り絞って、敢然と拒否しました。どんなに残酷な罰でも、潔く受ける覚悟でした。誇らしさに、胸がねじ切れそうです。悲壮が腰の奥で熱くたぎります。
「ちぇ、頑固だな。もうちょっと遊んでやるか」
これまでの延長なら、もう少しの間は耐えられる……かもしれません。
わたくしは立たされて――頭から袋をかぶせられました。男の体臭がこもっています。ユニフォームを入れる袋かもしれません。分厚い生地で、袋の口を首のところで閉じられると真っ暗になるだけでなく、息も苦しく感じられます。
どんっと斜め後ろから突かれて、前へよろめきました。すぐに受け止められて、真後ろへ突き飛ばされます。それを真横へ押されて……倒れる暇もないくらい、あちこちへ小突き回されます。肩をつかんで向きを変えられたりもします。
こんなことをして、何が面白いんだろう。そう思っていると――不意に足払いを掛けられました。
「きゃっ……?!」
身体を支えようと前へ手を伸ばしましたが、背中から落ちて頭を打ちました。視界を奪われて身体を動かされているうちに、三半規管の平衡が狂ったみたいです。
「痛いいっ……」
鎖をつかんで持ち上げられて、身体が宙に浮きました。くるんと裏返しにされて、そのままマットにたたきつけられました。腕に力が入らず、ささやかな乳房がまた潰れました。
それからは……いちいち覚えていないです。脇腹や股間を蹴られたり胸やお腹を踏んづけられたりお尻を蹴られたり。腕をつかんで引きずり起こされてすぐ押し倒されるのなんてまだ優しいです。足をつかんで逆立ちにされて、そこに股をクロスする形でのしかかられてぐりぐり擦りつけられたり。あお向けに寝かされて四人掛りで手足を引っ張られたり。
もしもわたくしがぬいぐるみ人形だったら、ばらばらにされていたに違いありません。生身の身体だから、どこも千切れたり裂けたりしなかったのです。
最後は、袋を取ってもらえたのですけれど。
「おまえのデートだからな。一番乗りをしろよ」
ハーディがユニフォームを脱いで裸になりました。男性器は勃起しています。ずっとだったのかもしれません。あお向けに転がったわたくしの足を大きく開かせると、上からおおいかぶさって、男性器をわたくしの股間に押しつけました。正確には、そけい部です。太腿と大陰唇とのくぼみに、包皮から顔を出している亀頭を、腰を激しく動かして、擦りつけます。そして、ラテン語教師のカビンより多量の白濁をわたくしの下腹部にぶちまけました。
次は最年長の上級生でした。両足をそろえて、わたくしに抱えさせました。そして、わたくしの足を折り曲げて、のしかかってくると、男性器を太腿の間に突っ込みました。みずからもわたくしの膝頭をつかんできつく閉じ合わせて、腰を激しく振りました。さっきよりも、刺激が微妙です。快不快ではなく、ぬるぬるした感触が気色悪いです。この人もすぐに射精して、胸のあたりまでわたくしを汚しました。
三人目はボクシングの人でした。先の二人の精液をロールペーパーで拭ってから、わたくしの上体を起こさせ、自分は中腰になって。両手でわたくしの乳房を中央に寄せて、男性器を挟んだ――つもりかもしれませんが、北緯三十度のオレンジでは無理です。陰茎の両側に触れさせるのが、やっとでした。それでも、激しく腰を動かしてオレンジを側面からすり潰すみたいにして(そういえば、陰茎とすり粉木は形が似ています)目的を果たしました。
手の甲で拭おうとしたら、その手をハヴェントにつかまれて、剥き出しの陰茎を握らされました。湯煎したサラミソーセージの感触です。しごくように命令されたので、手を動かしました。
「もっと強く、もっと早く!」
サラミでなくフランクフルトだったら折れるくらいに強く握って、一秒に二往復どころか四往復くらい、五分も続けていたらけんしょう炎になっていたかもしれませんが、二分くらいで終わりました。亀頭のすぐ下のあたりを握って、しごくというよりも包皮を剥いたりかぶせたりといった感じに動かしていたので、手には(あまり)掛かりませんでした。その代わりマットを汚して、ハヴェントは他の二人から叱られていました。
このあたりになると、意識もだいぶんしゃっきりしていました。
射精してしまうと、わたくしへの関心は薄れたようでした。まだ足元がおぼつかないわたくしをうつ伏せにすると手足を持って宙づりにして、物置小屋まで運んでくれました。四人掛りで虐めるのを『デート』というのなら、これはエスコートでしょうね!
――翌日は全身が痛くて、まだ乳房も女性器も腫れていましたが、授業には出ました。わがままだ身勝手だと昨日はけなされましたが、Y5から学園で学ぶようになって以来、こう見えても無遅刻無欠席です。名誉ある記録を、これしきのことで中断してたまるものですか。
一時限目の授業は欠席しました。校長に呼びつけられたからです。いわば公式行事ですから、欠席扱いにはならないでしょう。
校長からは、昨日のデートで何が無かったかを詳しく尋ねられました。鎖の防護が侵されなかったことと、フェラチオ(または類似の行為)は無かったと証言したら、それでおしまいでした。
後になって、フェラチオをさせられたと証言しておけば、彼らが叱られたのかなと思い返しましたけれど。わたくしのうそが暴かれて、結局罰せられるのはわたくしでしょうから、正直に答えておいて正解だったと思います。
さて――今日の放課後は、オッター・デアリングとの『デート』です。指定された通りに昼食は取らないで小屋で待っていると、彼が迎えに来ました。
「良かったら、これを使ってください」
差し出された紙包み(リボンでラッピングされています)を開けると、もう何十日もわたくしとは縁の無かった品々が出てきました。おそろいのブラジャーとパンティ、そして半袖のブラウスです。
「え……?」
「デートのときくらい、まともな格好を……あ、ごめんなさい。普段は目に余る格好をしてるとか、そういう意味ではなくて……」
疑問符がどんどん増えていきます。彼は、いったい何を目論んでいるのでしょうか。
「これを身に着けろという命令なのですね」
「命令じゃないよ。フッド嬢(Miss Hood)が今のファッションが好きなのなら、それでもかまいません」
すねたような物言いです。
わけが分からないまま、彼の言葉に従うことにしました。わたくしが制服を脱ぎかけると、彼があわてます。
「ちょ、ちょっと……ぼく、外に出ているから」
物置小屋のドアが閉められました。てっきり、わたくしが性奴隷にふさわしくない格好になるところを見たいのだと思っていたのに。ますます調子が狂います。チャーリイとジニアが、まだ食事から戻っていなくて良かったです。からかわれるのは目に見えていますから。
とにかく。何十日ぶりにブラジャーとパンティを身にまといます。身体を拘束されたように感じました。ブラウスは普通に着ると、裾が超ミニスカートからはみ出てしまいます。おへその上で裾を結んでみます。男性向けの雑誌のグラビアで見かける着こなしです。もちろん、ボタンはきちんと掛けましたよ。
下着のサイズはちょっと窮屈ですが、胸元をのぞき込まれてもスカートが翻っても、防備は完璧です。騎士が全身よろい(full plate armor)を身に着けたときも、こんな気分になったのではないでしょうか。
わたくしがドアを開けてオッターの前に立つと、彼ははにかんだような微笑を浮かべました。
「すごく似合ってるよ」
下着は見えないし、ブラウスはフリルも付いていない簡素なものです。どこがどう似合っているのか分かりません。儀礼的な言葉なのでしょうが、性奴隷に対して御主人様がおべっかを使う意味が分かりません。
「もし、よかったら――だけど」
またも儀礼的な言葉と共に、左腕を曲げました。彼の魂胆は分かりませんけれど、意図的に気分を損ねさす必要も無いでしょう。わたくしは彼に寄り添って、左腕に右腕を絡めました。
「それでは、行くよ」
どこへでも連れて行ってください。好きにしてください。運命に身を任せます。
彼に(本来の意味で)エスコートされて行った先は、学園内のあちこちに配置されている東屋(pavilion)のひとつでした。環境を変えて勉強をする(人は、あまりいませんけれど)のも善し、ひとり思索にふけるも善し、小人数でお茶会を開くのにも使えます。人目につきにくい場所に設けられているので、愛を語らう(それ以上のことをしてはいけません)のにも向いています。
デートだというのに、テーブルを挟んで向かい合って座って。
彼は持って来たバスケットの中身を、いそいそとテーブルの上に広げました。小ぎれいなクロスの上に紙皿と紙コップを並べて、サンドイッチとフルーツと、ワインの小瓶に炭酸水。まるきり、ピクニックです。
ここに至ってようやく。もしかしたら、オッターは本気でまともなデートをしているつもりなのかもしれないと思いました。
わたくしは勧められるままにサンドイッチを食べ、炭酸水で薄めたワインも飲みました。カフェテリアのコックに特別注文で作らせたのだろうサンドイッチは、とても美味でした。ワインを炭酸水で割るなんてと、フランシュ人なら顔をしかめるでしょうけれど。オッターには精一杯の背伸びでしょう。わたくしも、これくらい薄ければ平気です。
「ええと……フッド嬢(Miss Hood)……」
「アイリスと呼んでください」
「え、いいの?」
以前のわたくしでしたら、彼がおずおずとお伺いを立ててくるまで待っていたでしょうけれど。今はわたくしのほうが彼を御主人様(My master)と呼ばなければならない身分なのですから。いつまでも過去の権威を引きずっているほどわたくしは愚かではありません。
「それじゃ……ミ……アイリス」
ミスを付けかけて、それが伯爵令嬢以上への呼び掛け、子爵令嬢に対しては非礼に当たると気づいて言い直しました。顔が真っ赤です。
うふ、可愛い……同い年の男性に、失礼な感想ですね。でも、男性を可愛いなんて思う感情が、まだ残っていたのには驚きました。今のわたくしにとっては、男性とは迫害者の言い換えに等しいのですから。
「ねえ、アイリス?」
呼び掛けられて、あわてました。彼は何事かを話していたようですが、ちっとも耳に入っていなかったのです。
「ごめんなさい……」
素直に謝ります。
「久しぶりに人間扱いされたので、うれしくてぼおっとしていました」
口にしてから、皮肉に聞こえたのではないかと、不安になりました。昨日、わたくしの振る舞いについてあれこれ言われたのが、まったく平気なわけでもないのです。けれど、無用の懸念でした。
「と、とんでもない。あなたを、あんなふうに扱うほうが間違っているんです。あなたが、今でも子爵令嬢であるという事実は揺るぎません。あなたは、ぼくにとって、今も……あ、憧れの女性です」
言ってから、彼の顔はますます赤くなりました。
「エスコートさせてもらって、ぼぼくのほうこそ舞い上がっています」
こんなに率直に告白をされたのは、初めてです。
「お世辞でもうれしく思います」
ああ、もう。もうちょっと気の利いた返事を出来ないものでしょうか。
彼は、それから――自分のこと(生い立ちまで)とか、伯父が一代騎士爵を賜っているとか、一年以上も前に観た映画の感想とか、好きな食べ物とか、趣味のFlyable paper solid airplaneのこととか、いろんなことを話してくれました。気を遣ってデリケートな話題、学園生活とかナイフランド紛争とかは避けていました。一時間も(そんなに長く、彼は話し続けたのです)すると、わたくしは彼のことを世界でおそらく三番目くらいには詳しく知っている人間になっていました。一番と二番は、彼の御両親です。
普通のデートみたいに(学園内ですけど)あちこちへ行かなかったのも――性奴隷を連れて歩くのはみっともないと、そんなふうに考えたのではなく、さらし者にされるわたくしのみじめさを思ってくれたのでしょう。
とはいえ、彼の話を聞いているだけでは退屈です。ですけど、わたくしの話など、過去の自慢か現在への嘆きにしか聞こえないでしょう。
まだ残っていたフルーツに彼が手を伸ばしたとき、わたくしは思い切って自分の手を重ねました。
「わたくしを、あなたのお好きなようになさってもよろしいのよ?」
性奴隷が御主人様に気に入られようとして、こびているのではありません。一途な男の子に恩恵を与えようと思ったのです。
「な、なな、なんでもいいの?」
彼の声が上ずってきました。しょせんは男。女を自由に出来ると分かれば、女性器は封鎖されているから、胸かお尻か、それとも手に握らせるつもりかもしれません。
「それじゃ、これなんだけど……」
彼がバスケットから取り出したのはビスケットの箱でした。ドイッチュ原産のスティックプレッツェルです。マッチ棒を十倍くらいに拡大した感じです。それを一本だけ取り出しました。
「チャーパンに交換留学してた友達から教わったんだ。二人で両端から食べていくんだ」
「それで、どうなるの?」
どちらも降りなければ、二人の唇と唇とがくっつきます。チキンレースかなと思ったのですけれど。
「あの……ええと……」
もじもじする様子が、いっそう可愛らしく思えます。わたくしになら「キスさせろ」で済むのに。
ファーストキスは、この子にあげよう。そう決めました。体育教師の女性器へのキスは、あれがキスなら、わたくしは何百回も何千回もリンゴやマフィンやソーセージとキスしています。喩えが偏ってしまいました。
「いいわよ。これをくわえるのね」
顔を近づけて、彼が手にしていたスティックの端をくわえました。
オッターもあわてて(折ってしまわないように慎重に)反対側の端をくわえました。
顔と顔は五インチと離れていません。視線をそらすのは不可能に近いです。なんだか、本当に恋人同士になったようなくすぐったさがあります。
ぽりっ。端っこを四分の一インチほどかじりました。くわえ続けているには、かじった分だけくわえ込んで、顔を近づけなければなりません。
ぽりっ。オッターのかじったかすかな振動が、わたくしの歯に伝わります。ますます顔がくっつきます。
それでも、またかじって。彼もかじって。鼻と鼻がぶつからないよう、互いに顔を傾けます。本当に、完全に、キスの体勢です。
あと一口で唇がくっつく。そのまま五秒くらいが何事も無く過ぎて。不意にオッターが顔を寄せてきました。唇と唇とが、ついに触れ合いました。
そこからはオッターが、が然と情熱的になりました。残りのスティックはかまずに飲み込んでから――ちゅううと、音を立てて唇を吸ってきて。それから舌を入れてきました。
そういうのが大人のキスだというのは知っていました。舌と舌とを絡めたり、口の中をなめまわしたり。くすぐったいのではないかしらとおもっていましたけれど、全然そんなことはありませんでした。でも、口の中で生の肉がうごめいていると思うと、あまり気色は良くないです。あ、でも。交接というのも、女の人の体内で男の人の生の肉が動くのですよね。つまり、キスとは男女の営みの代償行為。そう考えると、むねがきゅうんとねじれて、腰の奥が熱く潤ってきました。
あれ……?
この感覚。恥ずかしいことを強いられて、怒りと屈辱に震えているときと、とてもよく似ています。本当の意味で――強制されるくらいならという意味ではなくて、みずからの意思に基づいた行為だというのに、なぜ憤慨しなければならないのでしょう。
身体の反応に対応する自身の感情に疑問を持ったのは、これが初めてでした。けれど、それを深く考えられる状況ではありません。ファーストキスなのです。これよりも一大事なのは初体験でしょうか。こちらは、わたくしの意思に反して強制されるのではないかと――鎖で封じられていることからも、容易に想像できます。その日が少しでも遅くなりますように。なんて、デートの最中に考えることではないですね。
テーブルを挟んで顔を寄せ合っていましたけれど、不自然な姿勢です。その思いはオッターも同じだったらしくて、わたくしたちは自然と立ち上がって、テーブルの横に立って、抱き合いました。男の人にしがみつくって、何もかも彼に委ねた気分で、無防備だけれど安心できます。男の人に抱き締められるって、何もかも彼に支配されているけれど守られているって気分で、すごく幸せです。この時間が、いつまでも続けば良いのに。
けれど、何事にも終わりはあります。SSSの境遇だって、そうに決まっています。いえ、それを考えるとシャボン玉が弾けてしまいます。
オッターは、わたくしを抱き締めている手を下へずらしていって、腰……に達したときに、あわてたように手を放しました。
「あ……身体を触ってごめんなさい」
本当はお尻も触りたかったんだなと思います。最初のデートで、それはやり過ぎだと思い直したのでしょう。紳士的過ぎます。昨日、ハーディたちに何をされたか教えて、たきつけてやりたくなりました。けれど、オッターの前ではSSSアイリスではなく子爵令嬢として振る舞うべきだと思いましたので、ふしだらな言動は慎みました。
こうして、オッターとのデートは、シャボン玉が弾けることもなく終わりました。それは、地平の果てまで広がるしゃく熱の砂漠の中で見つけた、貴重な湧き水のような時間でした。わたくしは、心ゆくまで喉の渇きを潤せたのです――その瞬間だけは。
ジニアとオットーも二人ずつの異性と『デート』をしました。
ジニアは、ものすごく露骨に、その様子を自慢っぽく話して聞かせてくれました。詳しいことは断固として省略しますけれど。彼女の鎖の貞操帯はY字形をしています。裏口からの訪問(ソドムの罪がどういうものかくらい、わたくしだって知っています)は無理でも、玄関からの訪問は可能なのです。彼女は、その可能性を十二分に活用して――デートの相手に、未来の花嫁に対する不実を働かせたのです。
チャーリイは、対照的に不機嫌でした。きっと、金網で男性器を封じられていることと関係があるのでしょう。
「ぼくは猫じゃないんだ」
それが、デートについての感想のすべてでした。きっと、マフィンを振る舞われたのだろうと思います。
学年末のテスト明けから五日後には、新学年に向けての長い夏休みが始まります。チャーリイとジニアは、他の生徒と同様に、親元へ帰省しました。わたくしには、帰る場所がありません。学園の物置小屋で、バカンスも娯楽も無く過ごさなければならないのです。カフェテリアも休業ですから、乾パンと缶詰とドライフルーツを食料として。あ、軍隊のいわゆる野戦食(field ration)を一ダース(十二日分)だけ与えられました。パスタに各種のスプレッドにシリアルバーにナッツ類と粉末飲料。以前のわたくしだったら顔をしかめていたでしょうけれど、今となってはフルコースの御ちそうに匹敵します。
――チャーリイとジニアが帰省する前夜のことは、あまり思い出したくありません。
ミルダ・フォーブスにワックス脱毛を施されてひと月近くが経っていました。
「ぼつぼつ無精ひげが目立ってきたな。帰る前にきれいにしておいてやるよ」
そう言われたのは、いつものように全裸になって手足を長机ベッドの脚に手錠で拘束されてからでした。
「……ありがとう。お願いしますね」
横柄な口調をたしなめても、手荒く扱われるだけです。あまり(元来の)上下関係を際立たせない言葉遣いで、相手の行為(going)を好意(goodwill)として受け容れるようにしています。だいてはbadwillですけれど。
このときも、そうでした。チャーリイは昼のうちにミルダから借りていた鍵で鎖を外して、教わった手順通りにワックスをわたくしの股間に塗り込めました。必要よりも熱く溶かして、必要よりも分厚く。それくらいなら、どうということもありません。熱いのをちょっと我慢するだけです。
ところが彼は、ジニアにピンセットを使わせて淫核の包皮を剥き下げました。彼の意図が分かると――冷たい空気にさらされた乳首と同じことです。実核が固く大きくなってしまいました。その、いっそうびんかんになった神経の塊に、彼はワックスを垂らしたのです。へらに乗せて塗りつける必要がないほどに熱く溶けたワックスを。
「くううっ……」
わたくしは歯を食い縛って、彼の好意(goodwill)ではない行為(going)に耐えました。さいわいに、ワックスはすぐに固まり始めたので、激熱は一分と続きませんでした。
ワックスは鼠蹊部から会陰にまで塗りつけられて、ある程度固まってから、さらに重ね塗りされました。ミルダが使った量の三倍以上を股間に塗られたのです。
覚悟していたのとは違って、彼は優しく――ワックスがその形を保つように注意しながら剥がしてくれたので、毛を引き抜かれる痛みは、ミルダのときよりも小さかったのですけれど。それは彼の親切ではありませんでした。
彼は剥がし取ったワックスの塊を額に入れて、物置小屋の壁に掛けたのです。わたくしの女性器の形がくっきりと写し取られた――反転レプリカを。
わたくしへの意地悪(と、せいぜい軽く考えるようにします)は、まだ続きます。
「乳首のあたりにも、ちょこっと産毛か生えてるわね。ついでだから、きれいにしときましょうよ」
乳房にも、ことに乳首は念入りにワックスを垂らされて、これには声を出さずに耐え抜きました。
それが、ジニアには面白くなかったのでしょう。前にされたように、手首と足首を重ねて手錠を掛けられました。身体は深いV字形に折れ曲がって、肛門が屋根裏を向きます。屋根裏と表現したのは、簡素なプレハブですから天井板が張られていないからです。どうでも良いことです。
肛門のまわりにも産毛があるとジニアは主張して――熱いワックスを高い位置から糸のように細く垂らして、多弁花のつぼみの中芯を狙ったのです。まさか中にまでは入り込みませんでしたけれど、わたくしはちょっぴりだけ痩せ我慢を緩めて悲鳴を上げました。それで、ジニアは満足したようです。
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ポッキーゲームは健全着衣ですし。絵としては、やはりこちらですね。

さて。本日(6月19日)は天気晴朗なれど風速4mとの予報です。紙飛行機は飛ばせなくありませんが、競技用機の調整には向いていません。ので、さあ……午前中は10枚でしたが、午後はセキスパートでなくスパートで、せめて20枚にはしときますか。
(参考記事:健全ブログ→)
ヒロインがSSS(Sexpert Scholarship Student / Sex Slave Student)に堕とされてから1か月。枚数にして320枚。なんと、未だに処女です。
そして、実質全14章のうち、まだ7章が終わったところです。
これは……500枚突破はおろか、600枚いくのではないでしょうか。受注からの納期が2か月しかないと分かってるのに、そのうち最初の10日は別の作品を仕上げるのが分かっていたというのに。
妄想竹を構想竹しているうちに暴走竹しちまった筆者が悪いんですけどね。
SCINARIO
Spiteful・・・・・・- 3 -
Substitute ・・・- 19 -
Subsidence・・・- 27 -
Shame・・・・・・・・- 61 -
Scorn・・・・・・・・ - 90 -
Suppression・・- 104 -
Service・・・・・・- 114 -
Sexperience・・- 139 -
Study
Submission
Skill
Sodomy
Showtime
以下は分量的に1章?
Sequel
Succession/Success
Succession/Session
SCRIPT AFTER これは「後書」
さて、今回はServiceのうち前半の補習は割愛して、かつての男子親衛隊員2名との『デート』の様子をお送りします。
キスをしながら、胸の疼きとか腰の奥の熱い潤いとか、これまでは憤激と屈辱に身体が震えていると思っていたのと同じ反応が生じて、
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さいわいに、補習を受けさせられたのは、この二回だけでした。わたくしが二度とゼロ点に抗議しなかったからですが、教師がその気になれば何とでも口実は設けられたはずです。どの教師も、わたくしをまともな生徒としては扱ってくれませんが、セキスパート奨学生あるいは性奴隷として扱う教師も、今のところは少数だということでしょう。
全教科の試験が(生徒からの異議も吟味した後に)確定してから、学年ごとの順位が掲示されました。わたくしとチャーリイとジニアの名前はありませんでした。
Y7男子の上位四人は、わたくしかジニアかどちらかとの一日デートの権利を獲得しました。夏休みが始まる二日前からは、授業が午前中だけ。午後からが、権利の行使に充てられました。
最初は、同じクラスのハーディ・リンクスとです。彼も、オッターに負けないくらいに献身的なわたくしの崇拝者で僕(しもべ)でした。わたくしが落ちぶれてからは、彼のほうから近づいてくることはなくなりましたが、それは大半のクラスメイトと同様です。近づいてくる男子は、女子の目を盗んでわたくしに置換紛いの行為を仕掛けてくる者ばかりでしたから、近づいてこないことが最大の好意だと、わたくしは解釈していました。
校長からは事前に、デートの相手はわたくしの御主人様(Master)であり顧客(Customer)なのだから、丁重に振る舞えとは指導されていました。わたくしが性奴隷なら彼が御主人様だし、売春婦なら顧客です。でも、まさか、彼がわたくしに対してそのようなことを要求するなど、考えられないことです。
だから、二人きりで校内を散策したり、単独では出入りを禁止されているカフェテリアに連れて行ったりしてもらえるのかなと、楽しみになんかしていませんが、軽く考えていました。
ところが、彼がわたくしをエスコートしてくれた先は、彼の所属しているレスリング部の部屋でした。三人の上級生がわたくしたちを出迎えました。三人とも、シングレットというのでしたかしら、半袖膝丈のレオタードを身に着けています。
ははん。スパーリングとかして、格好いいところをアピールしたいのね――と、わたくしは独り合点しました。
案の定、ハーディは服を脱いで――え? 女性の目の前で着替えるつもりですか。
着替えるどころか、彼は全裸になりました。
「きゃ……」
わたくしは、顔を背けて両手で目をおおいました。清純ぶったのではないです。男の人に裸を見られるのは慣れっこになっても、男の人の裸には免疫が付いていません。
「ファウルカップを忘れてるぞ」
「無理だよ。だって、これだもの」
げらげら笑う声に興味が湧いて、指の隙間からちらっとのぞきました。
彼の男性器が勃起していました。チャーリイに比べても可愛い、訂正します――小さいです。それをお腹に貼り付けるようにして、彼はユニフォームを着ました。
「きみも準備しろよ」
え……?
「貸してあげられるシングレットはないから、裸でやれよ」
「女のパンクラチオンだな。ルールはCACCだけど」
何を言っているのか、理解できません。
「さっさと脱げよ」
上級生のひとりが、わたくしに近寄りました。
他の二人もそれに倣って――包囲された形です。
わたくしはおびえたりなんかしません。上級生の目を見詰めて、静かな声で尋ねました。
「それは、わたくしへの命令なのですか?」
上級生は目を反らしかけましたが、自分が絶対的に優位であることを思い出したのでしょう。にらみつけてきました。
「そうだ、命令だ。裸になって、ぼくたちとレスリングをしろ」
「わたくし、ルールを知りません」
「さっきも言ったろ。CACC、Catch as catch can――つかめるところはどこをつかんでもかまわないし、関節技、キック、パンチ、なんでもあり。まあ、きみは女性だから、顔面への攻撃はしないであげる」
「それと、レイフもしないよ。出来ないからね」
もうひとりの上級生が苦笑しています。つまり。レスリングにかこつけて、か弱い乙女を男が四人掛かりで痛めつけようというのです。
「なぜ……わたくしに恨みでもあるのですか」
「無いとでも思ってたのか」
ハーディです。
「いつも女王様気取りで、ぼくたちを見下しててさ。しょっちゅう荷物持ちをさせるし、カフェテリアではこっちの都合も考えずに呼びつけるし、去年の誕生日にあげたハンカチなんかジニアに投げ与えたし……」
わたくしは、ただあきれて、ハーディの恨み言を聞くばかりです。彼はオッターと競うようにしてチャーリイの仕事を横取りしていたのだし、それでもたまには彼の献身に報いてあげようとして陪食の機会を与えてやったのです。ハンカチは、あんな安物を身のまわりに置くなんて、わたくしの品位を損ないます。でも、好意は分かっていましたから、捨てたりなんかせず、ジニアに下賜したのです。
そのひとつひとつを、彼に説明する気にはなれません。しょせん愚民には高貴な者の考え方など理解できないでしょう。それに……今さら言い聞かせたところで、虐められるのが怖くて言い逃れをしていると勘繰らるだけでしょう。
よろしいです。わたくしを痛めつけて満足するのであれば、お好きになさい。今日を耐えれば、それで終わるのです。この先何年も性奴隷としての辱しめを受けることを思えば、なにほどのことがありましょう。
わたくしは、四人に取り囲まれたまま、制服のジャンパースカートを脱ぎました。求められて、靴も脱ぎます。
部室は広くて、部屋の中央には五ヤード四方くらいのマットが敷かれています。印象としては、マットのまわりのわずかな空間が、ロッカールームとミーティングルームになっています。
その広いマットの上で、わたくしはハーディと向かい合いました。
彼は姿勢を低くして両手を前に突き出して、まるでへっぴり腰です。もちろん、これがレスリングの構えだということくらいは知っています。
猿真似をしたところで、その後の体さばきを知りません。どうやったって敵いっこないのですから、棒立ちですけれど座り込んだアヒル(Sitting duck)です。
「ファイティング・ポーズを取れよ」
「それは命令ですか」
「いいから、やっちまえよ」
上級生にけしかけられて、それでもハーディは慎重に近づいてきて……腕をつかまれたと思ったら。
「きゃっ……?!」
マットの上に引き倒されていました。とっさに突いた手がずるっと滑って、お腹をマットに打ちつけました。このまま転がっていれば、そんなに酷いことはされないで済むかなとずるいことも考えましたけど。
「立てよ」
命令されたうえに腕を引っ張られては、立ち上がるしかありません。よろめきながら立ち上がると。
「きゃあっ……!」
足を払われて、尻餅をつきました。
ハーディは正面で片足を上げて。
「痛いっ……!」
股間を踏んづけられました。鎖が陰裂に食い込んで、すごく痛いです。本能的に股間を護ろうとして、背中を丸めてうずくまります。その背後から……
「いてえっ……」
小さく叫んだのは、ハーディのほうでした。背後から股間を蹴りあげようとして、つま先を鎖にぶち当てたのでしょう。
良い気味ですと言いたいところですが、ハーディはつま先、わたくしは鎖のせいで尾底骨から陰裂までのダメージです。割りに合いません。
「こいつめ!」
腹を立てたハーディが髪をつかんで、わたくしをマットから引き抜きました。そのまま前へ回り込んで。
ぼぐっと、鈍い衝撃がお腹に広がります。
「ぐふっ……」
重たい痛みが腹全体に広がって、吐き気が込み上げてきます。
「思い知ったか」
ぼぐっ……二発目は腹筋を固めたので、苦痛も小さかったし吐き気もしませんでした。
「腹はやめておけよ」
三人の上級生の誰かが、ハーディを止めてくれました。
「なんだよ。顔は殴るな、レイフは禁止、そのうえ腹も駄目って、どうすればいいんですか」
「交替しろ。お手本を見せてやるよ」
ハーディがしぶしぶを顔に貼り付けてマットの外へ出ると、いちばん年長らしい男子がわたくしの前に立ちはだかりました。同級生の数年後の姿というより、若い教師の数年前といった印象です。けれど、せいぜいY10くらいだと思います。延長教育の生徒は、SSSと関り合いにならないようにしている感じですし、Y11は卒業と進学とを控えて、それどころではないはずです。Y10だろうとY13だろうと、わたくしよりずっと大きくて腕力も強いことに変わりはないです。
わたくしがうずくまったままでいると、その人はわたくしにおおいかぶさるようにして。腰の鎖を握って、わたくしを持ち上げました。
「痛いいっ……!」
体重がもろに鎖に乗って、食い込むなんてものではないです。切れ味の悪い刃物で股間を切り裂かれるような激痛です。
わたくしは、足を伸ばして立とうとしました。ところが、彼は腰の横に手をまわして、両側から引き上げます。
「やめて……ください!」
突きのけようとすると、ますます鎖が食い込んできます。進退窮まって、彼の肩にしがみつきました。鎖の圧迫が消えて、ほっとする間もなく。
ぐらっと部屋が傾いたと思ったら、彼に浴びせ倒されました。どすんと、彼の体重が全身を押し潰しました。
「ぐぶふっ……!」
カートゥーンだったら、人形(ひとがた)のパイ生地を描くところです。冗談を言っている場合ではありません。
全身を打って、痛みで動けないわたくしに、彼が手足を絡ませてきました。どういう体勢なのかうまく説明できませんけど、肘を外側へねじ曲げられるような激痛です。ぐききっと関節がきしみます。
「痛い……腕が折れます!」
わたくしの訴えを無視して、いえ、面白がるかのように、彼は身体を揺すって、その動きがますます肘をきしませます。
「どうだ、降参か?」
「降参です。降参します!」
わたくしが(半泣きになんか、なっていません)叫ぶと、彼は赦してくれました。
彼はわたくしを横向きに転がして、添い寝するような形になりました。わたくしの手足を自分の手足に絡めてから、わたくしを腹の上に乗せるようにして、あお向けになります。そして――ぐんっとわたくしを突き上げました。
「いやああっ……」
そんなに痛くはないです。けれど、空中でブリッジの姿勢に固められました。ブリッジよりも開脚の角度が大きいです。直角を超えています。他の三人もマットに上がってきて、わたくしの股間をのぞき込みます。
「可愛らしい陰唇(lips)だな。こんなのでセキスパートになれるのかな?」
「マンコ(cunt)は……鎖が邪魔で、よく分からないや」
「ケツ穴(ass hole)も色が薄くて小さいね」
ひわいな単語の連発です。可愛いというのも、否定的な評価なのでしょう。肯定的な評価をされたって恥ずかしいですけれど。
正面から見られるのと、開脚しているところをのぞき込まれるのとでは、恥ずかしさが百倍も違います。腰の奥が羞恥に燃え盛っています。
「降参します。やめてください」
「まだ早いよ」
取り合ってくれません。ハーディが鎖をつかみました。正確には、腰を巻いている鎖と股間を割っている鎖との交点を、南京錠とまとめてつかみました。下へも手を突っ込んで、腰の後ろの交点もつかみます。
「これって、女のセンズリ(jerk)になるのかな」
鎖を前後にしごき始めました。元から淫裂に食い込んではいますが、ぎちぎちではありません。わずかな余裕はあります。そのせいで、鎖が淫裂と会淫と肛門とを擦ります。のこぎりで引かれているような痛みが走ります。
「それはマンズリ(beaf flicking)っていうんだぜ」
「牛肉ほど分厚くないよ」
痛みに耐えているうちに、陰核への刺激が稲妻を呼び寄せました。膣口と肛門にも、むずがゆいようなくすぐったいような感覚が生じました。
「くうっ……んん」
「よがりだしたな」
わたしの苦鳴に混じる別の響きを、耳ざとく聞きつけられてしまいました。けれど、苦痛はそのままに快感のほうは次第に強くなっていって、うめき声を止められません。
腰の奥で燃え盛る恥ずかしさと浅い部分にたまっていく快感とが絡みあって、全身に広がっていきます。
もっと虐めてほしい。そんな思いが浮かんできて、あわてて打ち消しました。虐めてほしいだなんて……わたくしはマゾヒストではありません。「虐めて」ではなく「可愛がって」なら問題は……大ありです。同じことです。肉体の快感と苦痛に心の恥辱とが混然一体となって、何も考えられなくなっていきます。
でも、わたくしは負けません。快感に囚われては、麻薬中毒患者と同じです。
「くううっ……まだ、降参させてくれないのですか」
気力を振り絞った訴えは聞き届けてもらえました。鎖の動きが止まって、同時にわたくしはマットの上にたたきつけられたのです。
「あれだけマンズリしてやってアクメに達しないなんて――こいつ、不感症じゃないのか」
「前も後ろも未開通だから、まだガキなんだよ」
「Y7だものな」
「ぼくはガキじゃないよ」
「でも、まだ童貞(cherry)だろ」
好き勝手なことを言い合っています。
酷い目に遭いました。でも、大怪我をさせられずに終わった――のでは、ありませんでした。
二人目の上級生がマットに立って、ボクシングのファイティングポーズを取ったのです。しゅっしゅっと、ジャブを繰り出す真似をしています。
「アイリス、立てよ。おれにぶちのめされるために立て。顔は勘弁してやる」
命令には従わなければなりません。泣いて赦しを乞うなんてみっともない真似はできません。でも、身体が動きません。
「しょうがないな。ハヴェント、立たせてやれ。倒れないように、羽交い締めにしておけ」
「自分の足で立ちます!」
名前を呼ばれた三人目の上級生が動く前に、わたくしは宣言しました。両手を突いて上体を起こし、両足を踏ん張って、よろよろと立ちました。強制されるよりはみずからの意思で命令に従う――という自尊心だけではありません。羽交い締めにされていては、殴られた瞬間によろめいて衝撃を和らげることすら出来ません。
「形だけどもファイティングポーズを取れよ。か弱い女の子を一方的に虐めるみたいで後ろめたいよ」
まさに言葉通りのことをしているくせに。でも、命令ですから――肘を曲げて両手を拳にして顔の前で構えました。
「きみも攻撃していいんだよ」
フットワークは使わず、彼は無造作に近づいてきて――パンチを繰り出しました。胸を狙われていると分かったときには心臓のあたりに、どすんと衝撃を受けていました。
オレンジの輪切りが潰れて、ぷるんと跳ね返るのが分かりました。乳房をもぎ取られたような激痛が走ります。机の角にぶつけただけで息が詰まるほど痛いというのに、拳骨で思い切り殴られたのです。両手で胸を抱えて前のめりになりました。
「ほら、ファイト、ファイト!」
命令に従おうと思っても、身体が動きません。とうとう羽交い締めにされてしまいました。ブリッジのポーズで空中にさらされるよりも屈辱です。
正面の上級生は、さっきよりもわたくしに近づくと、両手を使って乳房を連続して横に殴り始めました。
「ワンツウ、ワンツウ」
殴られるたびに、ささやかな乳房が左右にひしゃげます。さっきほど激烈ではありませんが、鈍い痛みが蓄積していきます。
「ワンツウ、ワンツウ……フィニッシュ!」
また正面からパンチをたたき込まれて、乳房が破裂したような激痛です。
「うわあ。だいぶん赤くなったな。腫れた分だけ、おっぱいが大きくなったんじゃないかな」
そんなことは分かりませんけれど、ずきずきとうずいています。
「先輩、交替してください。ぼくは、まだスパーリングをしてない」
わたくしを羽交い締めにしていた上級生との対戦(?)です。サンドバッグにされていた間、ずっと支えてくれていたおかげで、自分の足で立てるようになりました。驚きました。まだ、皮肉を考えられる余裕があります。口にする蛮勇はありませんけれど。
「それじゃ、ぼくはね……」
目の前に立って、両肩をつかむと……
「あがっ……!」
股間が爆発したような激痛が、腰を砕きました。
「…………?!」
両手で股間を押さえて、その場に崩折れました。
「玉(ball)が無いから、金蹴り(nuts crushing)ほどは効かない感じだね」
男の人が睾丸を蹴られる痛みは分かりませんけれど、女性器を蹴られたって、物凄く痛いです。教鞭でたたかれるよりも。それに、局所的な痛みではなく、股間全体が痛いです。でも、彼が言うように男性はもっと痛いのかもしれません。すくなくともわたくしは、もん絶したり跳びはねたりはしませんでしたから。
「ひと通りは試したけど、あまり面白くないな」
わたくしをサンドバッグにした上級生が、つまらなさそうに言いました。
「恋の駆け引きをするわけじゃなし。穴を使えないビッチなんて、何の役にも立たないや」
「それじゃ、もう赦してやるんですか?」
ハーディは不満そうです。
「そうだな。おい、アイリス」
「はい、なにかご用でしょうか、御主人様(My master)」
この言葉遣いは、校長からの命令です。赦してもらえそうな雰囲気になって、やっと思い出したのです。我ながら現金です。
「そこにひざまずけ。そして、こう言え――父親の権威を我が物と勘違いし、高慢ちきに皆様を見下してきて、申し訳ありませんでした。わがままな振る舞いで皆様に迷惑ばかり掛けて、申し訳ありませんでした。深く反省しています。両手を組んで謝罪してから、最後に、おれたち一人ひとりの足にキスしろ。それで、おれたち四人はおまえを赦してやるよ」
また、四人に取り囲まれました。わたくしが謝罪するのが当然といった顔です。
これも命令には違いないのだから、服従しなければならないのでしょうね――と、弱気が頭をもたげました。言われた通りにすれば、それで『デート』はおしまいにしてもらえそうです。
けれど。たとえ不服従の厳しい――これまで以上となると、厳しいのではなく残虐です。その残虐な罰をこうむっても、譲れない一線があります。高潔です。誇りです。わたくしが高慢ですって?! 貴族としての品位を保って、平民であるクラスメイトに接していたのを、そのように曲解するのですか。
わたくしには、この四人にも他の生徒にも、謝罪する必要など断じて有りません。
これ以上の暴力から逃れる方便だとしても、わたくしの口から出た言葉は、わたくしを縛ります。何をされても仕方がない、そういう契約です。けれど、無実の罪を認めるわけにはいきません。
「お断わりします」
わたくしは勇気を振り絞って、敢然と拒否しました。どんなに残酷な罰でも、潔く受ける覚悟でした。誇らしさに、胸がねじ切れそうです。悲壮が腰の奥で熱くたぎります。
「ちぇ、頑固だな。もうちょっと遊んでやるか」
これまでの延長なら、もう少しの間は耐えられる……かもしれません。
わたくしは立たされて――頭から袋をかぶせられました。男の体臭がこもっています。ユニフォームを入れる袋かもしれません。分厚い生地で、袋の口を首のところで閉じられると真っ暗になるだけでなく、息も苦しく感じられます。
どんっと斜め後ろから突かれて、前へよろめきました。すぐに受け止められて、真後ろへ突き飛ばされます。それを真横へ押されて……倒れる暇もないくらい、あちこちへ小突き回されます。肩をつかんで向きを変えられたりもします。
こんなことをして、何が面白いんだろう。そう思っていると――不意に足払いを掛けられました。
「きゃっ……?!」
身体を支えようと前へ手を伸ばしましたが、背中から落ちて頭を打ちました。視界を奪われて身体を動かされているうちに、三半規管の平衡が狂ったみたいです。
「痛いいっ……」
鎖をつかんで持ち上げられて、身体が宙に浮きました。くるんと裏返しにされて、そのままマットにたたきつけられました。腕に力が入らず、ささやかな乳房がまた潰れました。
それからは……いちいち覚えていないです。脇腹や股間を蹴られたり胸やお腹を踏んづけられたりお尻を蹴られたり。腕をつかんで引きずり起こされてすぐ押し倒されるのなんてまだ優しいです。足をつかんで逆立ちにされて、そこに股をクロスする形でのしかかられてぐりぐり擦りつけられたり。あお向けに寝かされて四人掛りで手足を引っ張られたり。
もしもわたくしがぬいぐるみ人形だったら、ばらばらにされていたに違いありません。生身の身体だから、どこも千切れたり裂けたりしなかったのです。
最後は、袋を取ってもらえたのですけれど。
「おまえのデートだからな。一番乗りをしろよ」
ハーディがユニフォームを脱いで裸になりました。男性器は勃起しています。ずっとだったのかもしれません。あお向けに転がったわたくしの足を大きく開かせると、上からおおいかぶさって、男性器をわたくしの股間に押しつけました。正確には、そけい部です。太腿と大陰唇とのくぼみに、包皮から顔を出している亀頭を、腰を激しく動かして、擦りつけます。そして、ラテン語教師のカビンより多量の白濁をわたくしの下腹部にぶちまけました。
次は最年長の上級生でした。両足をそろえて、わたくしに抱えさせました。そして、わたくしの足を折り曲げて、のしかかってくると、男性器を太腿の間に突っ込みました。みずからもわたくしの膝頭をつかんできつく閉じ合わせて、腰を激しく振りました。さっきよりも、刺激が微妙です。快不快ではなく、ぬるぬるした感触が気色悪いです。この人もすぐに射精して、胸のあたりまでわたくしを汚しました。
三人目はボクシングの人でした。先の二人の精液をロールペーパーで拭ってから、わたくしの上体を起こさせ、自分は中腰になって。両手でわたくしの乳房を中央に寄せて、男性器を挟んだ――つもりかもしれませんが、北緯三十度のオレンジでは無理です。陰茎の両側に触れさせるのが、やっとでした。それでも、激しく腰を動かしてオレンジを側面からすり潰すみたいにして(そういえば、陰茎とすり粉木は形が似ています)目的を果たしました。
手の甲で拭おうとしたら、その手をハヴェントにつかまれて、剥き出しの陰茎を握らされました。湯煎したサラミソーセージの感触です。しごくように命令されたので、手を動かしました。
「もっと強く、もっと早く!」
サラミでなくフランクフルトだったら折れるくらいに強く握って、一秒に二往復どころか四往復くらい、五分も続けていたらけんしょう炎になっていたかもしれませんが、二分くらいで終わりました。亀頭のすぐ下のあたりを握って、しごくというよりも包皮を剥いたりかぶせたりといった感じに動かしていたので、手には(あまり)掛かりませんでした。その代わりマットを汚して、ハヴェントは他の二人から叱られていました。
このあたりになると、意識もだいぶんしゃっきりしていました。
射精してしまうと、わたくしへの関心は薄れたようでした。まだ足元がおぼつかないわたくしをうつ伏せにすると手足を持って宙づりにして、物置小屋まで運んでくれました。四人掛りで虐めるのを『デート』というのなら、これはエスコートでしょうね!
――翌日は全身が痛くて、まだ乳房も女性器も腫れていましたが、授業には出ました。わがままだ身勝手だと昨日はけなされましたが、Y5から学園で学ぶようになって以来、こう見えても無遅刻無欠席です。名誉ある記録を、これしきのことで中断してたまるものですか。
一時限目の授業は欠席しました。校長に呼びつけられたからです。いわば公式行事ですから、欠席扱いにはならないでしょう。
校長からは、昨日のデートで何が無かったかを詳しく尋ねられました。鎖の防護が侵されなかったことと、フェラチオ(または類似の行為)は無かったと証言したら、それでおしまいでした。
後になって、フェラチオをさせられたと証言しておけば、彼らが叱られたのかなと思い返しましたけれど。わたくしのうそが暴かれて、結局罰せられるのはわたくしでしょうから、正直に答えておいて正解だったと思います。
さて――今日の放課後は、オッター・デアリングとの『デート』です。指定された通りに昼食は取らないで小屋で待っていると、彼が迎えに来ました。
「良かったら、これを使ってください」
差し出された紙包み(リボンでラッピングされています)を開けると、もう何十日もわたくしとは縁の無かった品々が出てきました。おそろいのブラジャーとパンティ、そして半袖のブラウスです。
「え……?」
「デートのときくらい、まともな格好を……あ、ごめんなさい。普段は目に余る格好をしてるとか、そういう意味ではなくて……」
疑問符がどんどん増えていきます。彼は、いったい何を目論んでいるのでしょうか。
「これを身に着けろという命令なのですね」
「命令じゃないよ。フッド嬢(Miss Hood)が今のファッションが好きなのなら、それでもかまいません」
すねたような物言いです。
わけが分からないまま、彼の言葉に従うことにしました。わたくしが制服を脱ぎかけると、彼があわてます。
「ちょ、ちょっと……ぼく、外に出ているから」
物置小屋のドアが閉められました。てっきり、わたくしが性奴隷にふさわしくない格好になるところを見たいのだと思っていたのに。ますます調子が狂います。チャーリイとジニアが、まだ食事から戻っていなくて良かったです。からかわれるのは目に見えていますから。
とにかく。何十日ぶりにブラジャーとパンティを身にまといます。身体を拘束されたように感じました。ブラウスは普通に着ると、裾が超ミニスカートからはみ出てしまいます。おへその上で裾を結んでみます。男性向けの雑誌のグラビアで見かける着こなしです。もちろん、ボタンはきちんと掛けましたよ。
下着のサイズはちょっと窮屈ですが、胸元をのぞき込まれてもスカートが翻っても、防備は完璧です。騎士が全身よろい(full plate armor)を身に着けたときも、こんな気分になったのではないでしょうか。
わたくしがドアを開けてオッターの前に立つと、彼ははにかんだような微笑を浮かべました。
「すごく似合ってるよ」
下着は見えないし、ブラウスはフリルも付いていない簡素なものです。どこがどう似合っているのか分かりません。儀礼的な言葉なのでしょうが、性奴隷に対して御主人様がおべっかを使う意味が分かりません。
「もし、よかったら――だけど」
またも儀礼的な言葉と共に、左腕を曲げました。彼の魂胆は分かりませんけれど、意図的に気分を損ねさす必要も無いでしょう。わたくしは彼に寄り添って、左腕に右腕を絡めました。
「それでは、行くよ」
どこへでも連れて行ってください。好きにしてください。運命に身を任せます。
彼に(本来の意味で)エスコートされて行った先は、学園内のあちこちに配置されている東屋(pavilion)のひとつでした。環境を変えて勉強をする(人は、あまりいませんけれど)のも善し、ひとり思索にふけるも善し、小人数でお茶会を開くのにも使えます。人目につきにくい場所に設けられているので、愛を語らう(それ以上のことをしてはいけません)のにも向いています。
デートだというのに、テーブルを挟んで向かい合って座って。
彼は持って来たバスケットの中身を、いそいそとテーブルの上に広げました。小ぎれいなクロスの上に紙皿と紙コップを並べて、サンドイッチとフルーツと、ワインの小瓶に炭酸水。まるきり、ピクニックです。
ここに至ってようやく。もしかしたら、オッターは本気でまともなデートをしているつもりなのかもしれないと思いました。
わたくしは勧められるままにサンドイッチを食べ、炭酸水で薄めたワインも飲みました。カフェテリアのコックに特別注文で作らせたのだろうサンドイッチは、とても美味でした。ワインを炭酸水で割るなんてと、フランシュ人なら顔をしかめるでしょうけれど。オッターには精一杯の背伸びでしょう。わたくしも、これくらい薄ければ平気です。
「ええと……フッド嬢(Miss Hood)……」
「アイリスと呼んでください」
「え、いいの?」
以前のわたくしでしたら、彼がおずおずとお伺いを立ててくるまで待っていたでしょうけれど。今はわたくしのほうが彼を御主人様(My master)と呼ばなければならない身分なのですから。いつまでも過去の権威を引きずっているほどわたくしは愚かではありません。
「それじゃ……ミ……アイリス」
ミスを付けかけて、それが伯爵令嬢以上への呼び掛け、子爵令嬢に対しては非礼に当たると気づいて言い直しました。顔が真っ赤です。
うふ、可愛い……同い年の男性に、失礼な感想ですね。でも、男性を可愛いなんて思う感情が、まだ残っていたのには驚きました。今のわたくしにとっては、男性とは迫害者の言い換えに等しいのですから。
「ねえ、アイリス?」
呼び掛けられて、あわてました。彼は何事かを話していたようですが、ちっとも耳に入っていなかったのです。
「ごめんなさい……」
素直に謝ります。
「久しぶりに人間扱いされたので、うれしくてぼおっとしていました」
口にしてから、皮肉に聞こえたのではないかと、不安になりました。昨日、わたくしの振る舞いについてあれこれ言われたのが、まったく平気なわけでもないのです。けれど、無用の懸念でした。
「と、とんでもない。あなたを、あんなふうに扱うほうが間違っているんです。あなたが、今でも子爵令嬢であるという事実は揺るぎません。あなたは、ぼくにとって、今も……あ、憧れの女性です」
言ってから、彼の顔はますます赤くなりました。
「エスコートさせてもらって、ぼぼくのほうこそ舞い上がっています」
こんなに率直に告白をされたのは、初めてです。
「お世辞でもうれしく思います」
ああ、もう。もうちょっと気の利いた返事を出来ないものでしょうか。
彼は、それから――自分のこと(生い立ちまで)とか、伯父が一代騎士爵を賜っているとか、一年以上も前に観た映画の感想とか、好きな食べ物とか、趣味のFlyable paper solid airplaneのこととか、いろんなことを話してくれました。気を遣ってデリケートな話題、学園生活とかナイフランド紛争とかは避けていました。一時間も(そんなに長く、彼は話し続けたのです)すると、わたくしは彼のことを世界でおそらく三番目くらいには詳しく知っている人間になっていました。一番と二番は、彼の御両親です。
普通のデートみたいに(学園内ですけど)あちこちへ行かなかったのも――性奴隷を連れて歩くのはみっともないと、そんなふうに考えたのではなく、さらし者にされるわたくしのみじめさを思ってくれたのでしょう。
とはいえ、彼の話を聞いているだけでは退屈です。ですけど、わたくしの話など、過去の自慢か現在への嘆きにしか聞こえないでしょう。
まだ残っていたフルーツに彼が手を伸ばしたとき、わたくしは思い切って自分の手を重ねました。
「わたくしを、あなたのお好きなようになさってもよろしいのよ?」
性奴隷が御主人様に気に入られようとして、こびているのではありません。一途な男の子に恩恵を与えようと思ったのです。
「な、なな、なんでもいいの?」
彼の声が上ずってきました。しょせんは男。女を自由に出来ると分かれば、女性器は封鎖されているから、胸かお尻か、それとも手に握らせるつもりかもしれません。
「それじゃ、これなんだけど……」
彼がバスケットから取り出したのはビスケットの箱でした。ドイッチュ原産のスティックプレッツェルです。マッチ棒を十倍くらいに拡大した感じです。それを一本だけ取り出しました。
「チャーパンに交換留学してた友達から教わったんだ。二人で両端から食べていくんだ」
「それで、どうなるの?」
どちらも降りなければ、二人の唇と唇とがくっつきます。チキンレースかなと思ったのですけれど。
「あの……ええと……」
もじもじする様子が、いっそう可愛らしく思えます。わたくしになら「キスさせろ」で済むのに。
ファーストキスは、この子にあげよう。そう決めました。体育教師の女性器へのキスは、あれがキスなら、わたくしは何百回も何千回もリンゴやマフィンやソーセージとキスしています。喩えが偏ってしまいました。
「いいわよ。これをくわえるのね」
顔を近づけて、彼が手にしていたスティックの端をくわえました。
オッターもあわてて(折ってしまわないように慎重に)反対側の端をくわえました。
顔と顔は五インチと離れていません。視線をそらすのは不可能に近いです。なんだか、本当に恋人同士になったようなくすぐったさがあります。
ぽりっ。端っこを四分の一インチほどかじりました。くわえ続けているには、かじった分だけくわえ込んで、顔を近づけなければなりません。
ぽりっ。オッターのかじったかすかな振動が、わたくしの歯に伝わります。ますます顔がくっつきます。
それでも、またかじって。彼もかじって。鼻と鼻がぶつからないよう、互いに顔を傾けます。本当に、完全に、キスの体勢です。
あと一口で唇がくっつく。そのまま五秒くらいが何事も無く過ぎて。不意にオッターが顔を寄せてきました。唇と唇とが、ついに触れ合いました。
そこからはオッターが、が然と情熱的になりました。残りのスティックはかまずに飲み込んでから――ちゅううと、音を立てて唇を吸ってきて。それから舌を入れてきました。
そういうのが大人のキスだというのは知っていました。舌と舌とを絡めたり、口の中をなめまわしたり。くすぐったいのではないかしらとおもっていましたけれど、全然そんなことはありませんでした。でも、口の中で生の肉がうごめいていると思うと、あまり気色は良くないです。あ、でも。交接というのも、女の人の体内で男の人の生の肉が動くのですよね。つまり、キスとは男女の営みの代償行為。そう考えると、むねがきゅうんとねじれて、腰の奥が熱く潤ってきました。
あれ……?
この感覚。恥ずかしいことを強いられて、怒りと屈辱に震えているときと、とてもよく似ています。本当の意味で――強制されるくらいならという意味ではなくて、みずからの意思に基づいた行為だというのに、なぜ憤慨しなければならないのでしょう。
身体の反応に対応する自身の感情に疑問を持ったのは、これが初めてでした。けれど、それを深く考えられる状況ではありません。ファーストキスなのです。これよりも一大事なのは初体験でしょうか。こちらは、わたくしの意思に反して強制されるのではないかと――鎖で封じられていることからも、容易に想像できます。その日が少しでも遅くなりますように。なんて、デートの最中に考えることではないですね。
テーブルを挟んで顔を寄せ合っていましたけれど、不自然な姿勢です。その思いはオッターも同じだったらしくて、わたくしたちは自然と立ち上がって、テーブルの横に立って、抱き合いました。男の人にしがみつくって、何もかも彼に委ねた気分で、無防備だけれど安心できます。男の人に抱き締められるって、何もかも彼に支配されているけれど守られているって気分で、すごく幸せです。この時間が、いつまでも続けば良いのに。
けれど、何事にも終わりはあります。SSSの境遇だって、そうに決まっています。いえ、それを考えるとシャボン玉が弾けてしまいます。
オッターは、わたくしを抱き締めている手を下へずらしていって、腰……に達したときに、あわてたように手を放しました。
「あ……身体を触ってごめんなさい」
本当はお尻も触りたかったんだなと思います。最初のデートで、それはやり過ぎだと思い直したのでしょう。紳士的過ぎます。昨日、ハーディたちに何をされたか教えて、たきつけてやりたくなりました。けれど、オッターの前ではSSSアイリスではなく子爵令嬢として振る舞うべきだと思いましたので、ふしだらな言動は慎みました。
こうして、オッターとのデートは、シャボン玉が弾けることもなく終わりました。それは、地平の果てまで広がるしゃく熱の砂漠の中で見つけた、貴重な湧き水のような時間でした。わたくしは、心ゆくまで喉の渇きを潤せたのです――その瞬間だけは。
ジニアとオットーも二人ずつの異性と『デート』をしました。
ジニアは、ものすごく露骨に、その様子を自慢っぽく話して聞かせてくれました。詳しいことは断固として省略しますけれど。彼女の鎖の貞操帯はY字形をしています。裏口からの訪問(ソドムの罪がどういうものかくらい、わたくしだって知っています)は無理でも、玄関からの訪問は可能なのです。彼女は、その可能性を十二分に活用して――デートの相手に、未来の花嫁に対する不実を働かせたのです。
チャーリイは、対照的に不機嫌でした。きっと、金網で男性器を封じられていることと関係があるのでしょう。
「ぼくは猫じゃないんだ」
それが、デートについての感想のすべてでした。きっと、マフィンを振る舞われたのだろうと思います。
学年末のテスト明けから五日後には、新学年に向けての長い夏休みが始まります。チャーリイとジニアは、他の生徒と同様に、親元へ帰省しました。わたくしには、帰る場所がありません。学園の物置小屋で、バカンスも娯楽も無く過ごさなければならないのです。カフェテリアも休業ですから、乾パンと缶詰とドライフルーツを食料として。あ、軍隊のいわゆる野戦食(field ration)を一ダース(十二日分)だけ与えられました。パスタに各種のスプレッドにシリアルバーにナッツ類と粉末飲料。以前のわたくしだったら顔をしかめていたでしょうけれど、今となってはフルコースの御ちそうに匹敵します。
――チャーリイとジニアが帰省する前夜のことは、あまり思い出したくありません。
ミルダ・フォーブスにワックス脱毛を施されてひと月近くが経っていました。
「ぼつぼつ無精ひげが目立ってきたな。帰る前にきれいにしておいてやるよ」
そう言われたのは、いつものように全裸になって手足を長机ベッドの脚に手錠で拘束されてからでした。
「……ありがとう。お願いしますね」
横柄な口調をたしなめても、手荒く扱われるだけです。あまり(元来の)上下関係を際立たせない言葉遣いで、相手の行為(going)を好意(goodwill)として受け容れるようにしています。だいてはbadwillですけれど。
このときも、そうでした。チャーリイは昼のうちにミルダから借りていた鍵で鎖を外して、教わった手順通りにワックスをわたくしの股間に塗り込めました。必要よりも熱く溶かして、必要よりも分厚く。それくらいなら、どうということもありません。熱いのをちょっと我慢するだけです。
ところが彼は、ジニアにピンセットを使わせて淫核の包皮を剥き下げました。彼の意図が分かると――冷たい空気にさらされた乳首と同じことです。実核が固く大きくなってしまいました。その、いっそうびんかんになった神経の塊に、彼はワックスを垂らしたのです。へらに乗せて塗りつける必要がないほどに熱く溶けたワックスを。
「くううっ……」
わたくしは歯を食い縛って、彼の好意(goodwill)ではない行為(going)に耐えました。さいわいに、ワックスはすぐに固まり始めたので、激熱は一分と続きませんでした。
ワックスは鼠蹊部から会陰にまで塗りつけられて、ある程度固まってから、さらに重ね塗りされました。ミルダが使った量の三倍以上を股間に塗られたのです。
覚悟していたのとは違って、彼は優しく――ワックスがその形を保つように注意しながら剥がしてくれたので、毛を引き抜かれる痛みは、ミルダのときよりも小さかったのですけれど。それは彼の親切ではありませんでした。
彼は剥がし取ったワックスの塊を額に入れて、物置小屋の壁に掛けたのです。わたくしの女性器の形がくっきりと写し取られた――反転レプリカを。
わたくしへの意地悪(と、せいぜい軽く考えるようにします)は、まだ続きます。
「乳首のあたりにも、ちょこっと産毛か生えてるわね。ついでだから、きれいにしときましょうよ」
乳房にも、ことに乳首は念入りにワックスを垂らされて、これには声を出さずに耐え抜きました。
それが、ジニアには面白くなかったのでしょう。前にされたように、手首と足首を重ねて手錠を掛けられました。身体は深いV字形に折れ曲がって、肛門が屋根裏を向きます。屋根裏と表現したのは、簡素なプレハブですから天井板が張られていないからです。どうでも良いことです。
肛門のまわりにも産毛があるとジニアは主張して――熱いワックスを高い位置から糸のように細く垂らして、多弁花のつぼみの中芯を狙ったのです。まさか中にまでは入り込みませんでしたけれど、わたくしはちょっぴりだけ痩せ我慢を緩めて悲鳴を上げました。それで、ジニアは満足したようです。
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ポッキーゲームは健全着衣ですし。絵としては、やはりこちらですね。

さて。本日(6月19日)は天気晴朗なれど風速4mとの予報です。紙飛行機は飛ばせなくありませんが、競技用機の調整には向いていません。ので、さあ……午前中は10枚でしたが、午後はセキスパートでなくスパートで、せめて20枚にはしときますか。
(参考記事:健全ブログ→)
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