Progress Report 1ver.1.01:SMX358

 冒頭をかなり変えたので、Ver1.01として公開します。
 ストーリイ的には、何も変わっていません。
 筆者の不勉強を糊塗糊塗こっとん、ファミレドシドレミファ♪


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自涜と反省

 神様はお眠りにはならないと思いますが、人の子は眠ります。ですから、朝のお祈りは目覚めの挨拶から始めます。聖壇の前に跪いて、声に出してきちんと唱えます。
「神様、おはようございます。安らかな眠りから満ち足りた目覚めを迎えられたことを感謝します……」
 こうやって毎朝礼拝堂でお祈りを捧げるのは私だけです。父様は牧師ですが、朝は起きてすぐにベッドから出て、その場でお祈りをしています。神様は教会にいらっしゃるのではなく、祈りを捧げる者のそばに、あるいは信者が集まっている場所に降臨されるのです。それがプロテスタントの教えです。
 ですから、日曜礼拝のとき以外に、わざわざ教会まで来てお祈りを捧げる信者は、ほとんどいません。
 でも私としては、神様に来ていただくのではなく、人の子が神様の前へ足を運ぶべきだと思っています。これは信仰ではなくて気分の問題ですけれど。
 かすかな足音が背後に聞こえました。珍しく私より先に起きて外へ出ていると思ったら、ここに隠れていたのですね。
「今日も一日、精一杯に働いて……」
 すぐ後ろまで気配が迫りました。
「こらっ!」
 振り返りざま、叱りつけました。
「わっ……?!」
 跪いている私に合わせて腰をかがめていたのでしょう。ジャックは見事に尻餅をつきました。
「礼拝堂でふざけてはいけないって、何度も言ってるでしょう」
 クリームたっぷりのコーヒーにうんと砂糖を入れたみたいな顔が、はにかんだように笑っています。
「ごめんなさい……」
 しおらしく謝って立ち上がると……
 ぺちん。私のお尻を(かなり強く)叩いて、そのまま掌を上へずり上げました。私にしてみれば、強い力で撫でられた感じです。
「へっへーん。姉ちゃんのおけつ、いい音がするね」
 憎まれ口を叩きながら礼拝堂から駆け出て行きました。礼拝堂で走るな騒ぐな――注意する暇もありませんでした。
 ジャックの悪戯には手を焼きます。でも、私より二つ年下――ようやく十二星座を巡り終えようとしている弟には、男の子が女の子のお尻とか胸を触るのは淫らな行為だという自覚はないのです。お姉ちゃんがうろたえるから面白がっているだけなのです。
 私? もちろん、淫らな行為だと分かっているから、ジャックを叱るのです。
 そういう行為が性的な意味を持つとはっきり知ったのは――半年前に女性器から出血して父様に相談したら、雑貨屋ドラッグストアのスーザン小母さんが代わりに教えてくださって、そのときにあからさまなことも少し教わりました。
 神様の目の前で淫らなことを考えるのは不敬です。もうお祈りを続ける気分ではありません。
「アーメン」
 お祈りは端折って、朝の日課に向かいます。礼拝堂と住居は棟続きで通用口もありますが、神様と正しく向かい合うには正面から出入りするべきだというのが、私の信条です。
 ああ。私はこれから礼拝堂とか住居とか教会とかを使い分けてお話しするでしょうから、最初に説明しておきますね。教会の敷地の中はすべて教会です。同語反復ですね。
 敷地の中に、信者が集まる礼拝堂と、牧師の家族の住居があります。小さな事務室もくっついています。小人数の集会に使う小綺麗で頑丈な「掘立小屋」もあります。あと、家畜小屋とか納屋とかも。畑は建物ではないので、常識として教会とは言いません。これは冗談でした。

 真面目な話をします。今日は月曜ですから、助手のボブさんは来ません。食事の用意は三人分だけです。支度が出来たら、フライパンをレイドルおたまで打ち鳴らして合図をします。三人で食卓に就いて、神様に感謝の祈りを捧げてから、私と父様は食事を始めます。弟は、食事を終えかけるところ――といいたいぐらい、ぱくつきます。
 これまで、父様とか弟と紹介してきましたけれど、実の家族ではありません。
 父様はオットー・ヒュンケル。ここ、人口千人ほどのコッパーベルタウンにある唯一の教会を司る牧師様です。三十五歳です。カウボーイたちと喧嘩をしても(しませんけれど)二人くらいならまとめて相手に出来そうなくらいに頑丈です。年上の人に説法をしてもなめられないようにと、髭もじゃです。髪も髭も赤茶色です。生涯独身の誓いを立てておられます。
 父様は法律的には養父(Adoptive father)なのでしょうが、私としては義父(Fathe in law)をもじって心父(Fathe in heart)がふさわしいと思っています。
 弟はジャック・ヒュンケル。教会の前に捨てられていた黒人との混血です。黒い縮れ毛を短く刈っています。甘ったるい顔つきだと思うのは白人の美的基準からだけらしいです。
 そして私、ジュリア・コバーニ。父様とも弟とも違って、銀髪シルバーブロンドです。瞳も碧いので、北欧系かもしれません。でも、母様の姓はコバーニですから、ラテン系かもしれません。血統が不明なのは、母様はロマの民ジプシーで、事情は知りませんが仲間からはぐれたか追い出されたかして、やはり教会の前で行き倒れたからです。身の上を語る暇もなく私を産み落として、すぐに亡くなりました。私の名前は、母様に付けていただきました。
 私は生粋の白人なので出自がロマの民でも、町の人たちからあまり差別は受けていません。
 ああ、ジャックだって表立った差別は受けていませんよ。なにしろ、父様が牧師様なのですから。奴隷の子供たちからは半分白人と思われています。友達と呼べる子はひとりもいなくて、だから私に甘えたり悪戯を仕掛けたりするのです。
 ジャックは、将来のことを考えるのは早すぎますが、私には確固たる目標があります。ほんとうは父様の後を継いで牧師になりたいのですが、世間の人たちは女がしゃしゃり出ることを望みません。聖書にもはっきりと、女は男に劣ると書かれています。ですから、私は将来は修道女となって、神様に一生を捧げるつもりです。私たちはプロテスタントですから、カソリックのような厳密な組織としての修道院はありませんけれど、熱心な信者が同性で集まって清貧な集団生活を営むという意味での集団は、この州にも幾つか存在します。
 父様も賛成してくれています。でも、責任ある社会人として誓約できる年齢には達していないので、受け入れてもらえません。今は教会のお仕事を出来るだけ手伝いながら、生活態度だけでも修道女と同じように、敬虔に清く勤勉であろうとしています。
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 つまり、プロテスタントに関する知識不足です。
 教会といえば頭に浮かぶのは聖堂ばかりで、実務空間とかも抜けていました。

 しかし、まあ。プロテスタントでは、ごく一部の宗派にしか修道院は存在しませんが、篤志家の奉仕活動の拠点とか結構あるそうな。
 ううむう。いっそ、クリスチャンにしちまえば楽だった。しかし、アメリカと言えば清教徒ですメイフラワーですプロテスタントです。
 それに、そういう環境で修道女(に準じる生活)を目指すヒロインの信仰の篤さが表現できるという。in front of MISOです。
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No title

こういう細かいところがしっかり描写されると、やはりぐっと作品にのめり込めるようになりますね
情景が目に浮かぶようです
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