Progress Report 5:SMX358
はい、リクエストの目玉の「針刺し」です。
魔女は体表に悪魔との契約の刻印を隠している。そこは痛覚を持たないから針で刺して調べる。実に好都合です。しかも。
「淫魔が契約の印を刻むのは、淫らな部位に限られているのですよ」
とはいえ。魔女なら、痛くなくても「痛い!」って叫ぶんじゃないかしら?
その答えは、本文をお読みください。とはいえ、針を刺されても分からないように目隠しをするのはパス。一人称ですから、いちいち「何をされた」かをヒロインの触覚から推測するのでは面倒ですので。
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魔女の嫌疑
月曜日。数日ぶりの爽やかな目覚めでした。もう、淫魔が囁き掛けてくることもないでしょう。生まれ変わったつもりで、新たな一週間に臨みます。
……でも、だめでした。淫魔の囁きは聞こえてこないけれど、まだ続いているヴァギナの疼きが、聖礼典のことばかり思い出させます。儀式の意義を考えるのではなく、父様のペニスが私のヴァギナに突き刺さったという外形的な事実と、それに伴なう激痛と、にじみ出てきた悦びと。そんな淫らなことばかりが。
気もそぞろに一日を過ごしました。レース編みは、今日も手に付きませんでした。
そして夜はベッドの中で……またしても淫魔の囁きに負けてしまったのです。
それも、これまでのようなおいたではすみませんでした。父様によってつけていただいた道には、指が三本も入ってしまったのです。きついし痛みもありましたけれど、快感のほうが上回っていました。
肉棒を中で動かされながら淫魔のペニスを抓られたときの甘い激痛を思い出して……右手の人差し指から薬指までを挿入して、親指で淫魔のペニスを刺激しました。左手が空いているので、指をうんと広げて左右の乳首を同時に擦りました。
「ああああっ………だめえええっ!」
慌ててシーツを口に詰め込みましたが、時すでに遅しです。父様もジャックも熟睡していることを願うしかありませんでした。
もしも父様の耳に届いていなかったとしても、知らん顔で通すほど、私は自堕落ではありません。牧師様にお願いして、礼拝堂での朝のお祈りに立ち会っていただきました。
牧師様は私を責めるでも諭すでもなく、けれど赦しの言葉も掛けてくださいませんでした。その代わり、予想外の――本来なら喜ばなければならないことをおっしゃいました。
「もう思い悩むことはありませんよ。今日の午後にも、教区長のアンディ・ノートン牧師が来てくださいます。これまでの経過は電話で報告してきたのですが、私ひとりでは困難だろうと判断されて、直々に悪魔祓いをしてくださることになったのです」
牧師様の顔にも声にも悔しさがにじんでいます。牧師でありながら娘を淫魔から護ってやれなかった無念でしょうか。
私にも父様の憂鬱が伝染したのでしょう。ちっとも安心出来ずに不安が募るばかりでした。
ノートン教区長様がいらっしゃったのは午後二時でした。大きな馬無し馬車で、教区長様は(聞くところによるとご自分のお歳の半分の)若い奥様を同伴なさっていました。助手の牧師様と馬無し馬車の運転手さんも一緒です。
御挨拶もそこそこに、父様を含む四人の男性は、馬無し馬車のに積んできた様々な道具を礼拝堂に運び入れる作業に取り掛かりました。私と(付け足しに)ジャックは、奥様の接待です。といっても、コーヒーとクッキーをお出しした後は、居間の隅っこに控えて、奥さまが読書をなさる邪魔にならないようにおとなしくしているだけでしたけれど。
奥様は社交的でないのか、子供(悔しいけれど、奥様からみたら、私はじゅうぶんに子供でしょう)の相手が苦手なのか、私たちにあまり話しかけてはくださいませんでした。
ただ、いくつか教えていただいたひとつが、奥様も悪魔祓いに立ち会われるとのことでした。
私は、とても心強く思いました。だって、これまでにされたことといえば、羞ずかしいことばかりでした。女性が立ち会えば、そんなにひどいことはされないでしょう。でもそれでは、悪魔祓いの霊験も薄れるのではないかしらと――矛盾した不安に苛まれたりもします。
夕食の支度は六人分しか調えなかったので、ぎりぎりテーブルに載りました。
「ジュリアは食事をせず、礼拝堂でお祈りをしていなさい」
罰でも信仰の証でもなく……夜になってから、教区長様によって行なわれる私への悪魔祓いは肉体的にとても厳しいので、嘔吐などをして場を穢さないための予防処置だそうです。
そう聞かされただけで、私は心の底から震え上がってしまいました。でも……どんなふうに虐められる/訂正します/清められるのだろうと、想像すら出来ない事柄を想像すると、腰の奥に熱い疼きが生じます。この不合理な感情は、淫魔がもたらすのでしょうか。苦しむのは私の肉体であって、淫魔ではありません。
そんな得体の知れない恐怖は、礼拝堂に入るなり、具体的な恐怖に変わりました。そして、腰の奥の疼きがいっそう熱を帯びてきました。
馬無し馬車の大きな荷台に積まれていた荷物が、すべて礼拝堂に運び入れられたのでしょう。
実際に人間を磔に掛けられる大きな十字架が、聖壇の前に立てられています。天井には大きな滑車が幾つも吊り下げられて、太い鎖が垂れています。一本の鎖の下には、行水桶ほどの差し渡しで、立ったまま腰まで浸かれそうな桶が据えられています。ベッドの幅ほどもある梯子が、床からニフィートの高さで水平に支えられています。断面が三角形をした太い木材が、四本の脚で支えられています。
これは………父様の本棚にある、聖書研究の専門書の挿絵とそっくりです。中世の魔女裁判、あるいは異端審問の拷問道具です。
そう思ってさらに見回すと、肉を挟んで引き千切る大きなペンチとか、火桶と焼鏝とか、いろんな大きさと形の木枷や鉄枷も、幾つかの木箱に収められています。隅へ寄せられた信者席の上には、長短様々な鞭や笞が置かれています。
なんてことでしょう。これらの拷問道具はすべて、私に使うために持ち込まれたのです。
私は恐慌に陥って、出入口へ駆け寄りました。でも、そこで立ち止まりました。ここから逃げ出しても、私には行くべき場所がありません。家へ戻って問いただしても(何を問いただすというのでしょう)どうにもなりません。むしろ、ジャックまで何らかの形で巻き込んでしまいます。
逃げてどこかへ隠れてみても、狭い町です。簡単に見つかって連れ戻されるでしょう。町の人たちにも知られてしまいます。それよりも。私の周囲から淫魔を退ける聖礼典を拒んで逃げるなんて、淫魔をみずから進んで迎え入れるようなものです。
私はこの場に留まって。可能な限り厳しい試練を与えてくださるよう、神様にお願いするべきなのです。そう決心しました。でも、怖い……腰の奥に熱い疼きなんか、まったく生じません。
どうしようもないので聖壇の前に跪いて両手を胸の前で組みました。でも、お祈りの言葉を唱えるどころか、頭に浮かんですらきません。
そのうちに、怖いもの見たさの好奇心が頭をもたげてきます。
まずは、すぐ後ろに立ててある十字架。犠牲者の足を載せるための手前に傾斜した踏台がありません。その代わりと言ってはなんですが、ずっと高い位置に、Fの文字を左へ倒したような棒が突き出ています。腕木の位置から推測して、腰のあたりです。
一昨日の私だったら、上向きに突き出ている二本の棒の意味に気づくとしても、しばらくは考え込んだことでしょう。でも今は、見た瞬間に理解しました。と同時に、アヌスもヴァギナと同じ用途に使えるらしいという新たな知見も得ました。男女共通の器官。ソドムの罪とはこういうものだったのですね。
十字架にはいたるところに、開閉式の半円形の金属の環が取り付けられています。これなら、手足に釘を打ち込まなくても犠牲者を固定できます。十字架に磔けられても、命には係わらない。そして上向きの棒は二本。つまり、女性を辱める/訂正します/清めるための聖具なのです。
それでも、ずいぶんと苦しいでしょう。背筋を氷水が流れ落ちます。なのに、腰のあたりに溜まった水が熱くなってきました。
別の大道具を観察しましょう。ずっと気になっていた三角の材木。作業台には使えないし、刈り取った麦を乾燥させるには風通しが悪そうです。
あら……中程の先端にどす黒い染みが。まさか、血痕?
今後は背筋が凍りつきました。淫魔封じの針金と、一昨夜の出血からの連想です。もしも、これに跨ったりしたら。鐙は無いし、馬の腹よりもつるつるしていますから腿で締め付けても体重を支え切れないでしょう。
「きゃっ……?!」
無意識に後ずさっていたのでしょう。つまずいて転びかけました。
もう、好奇心なんか消え失せました。それに……これらは私に使うために、教区長様がわざわざ持ち込まれた道具類です。観察して推測しなくても、すぐにでも使い方と恐ろしさとを、私自身の身体で知ることになるでしょう。
私は聖壇の前へ逃げ戻って、全身全霊でお祈りをしました。
神様。私をお護りください。
でも……神様が加害者ではないでしょうか。絞首刑の執行者に命乞いをしても無駄なのではないでしょうか。
絶望です。それなのに……十字架に磔けられてヴァギナもアヌスも串刺しにされたら、苦しいだけだろうかなんて、とんでもない妄想が湧いてきます。三角の材木に乗せられたら激痛に泣き喚いて、さすがの淫魔も辟易して逃げるのではないかしらなんて、ちょっぴり期待したりもします。
ああ……住居に通じるドアの開く音です。いよいよ、私への凄絶な聖礼典が始まるのです。
父様が先導する形で、教区長様と奥様、助手の牧師様。その後ろは運転手さん――でもボブさんでもありませんでした。町長のディーラーさん、銀行頭取のギャレットさん、保安官のハーベイさん。町の名士様ばかりが三人も。
それにしても、奥様はなんという服装をしてらっしゃるのでしょう。長袖のブラウスに細身の乗馬ズボン。乗馬ズボンとすぐに分かったのは、歯車状の拍車が付いたブーツを履いているからです。ズボンはぴっちり肌に密着して、脚もお尻も生の輪郭が浮き彫りになっています。淫らです。もっと淫らなのがブラウスです。ボタンを留めずに、裾をおへその上で結んでいます。余った端がリボンみたいでお洒落ですが、おへその露出くらいは、この服装の中では些末事です。胸元が開いて、乳房が半分くらいは見えています。
男性の皆様は、それぞれの職業にふさわしいセミフォーマルな装いです。
その皆様が、父様と奥様を除いて、私を取り囲みました。私は立ち上がるタイミングを失って、跪いたままです。
「これより、ジュリア・コバーニの魔女審問を行なう」
教区長様が厳かな声で、とんでもないことをおっしゃいました。
「魔女審問って……悪魔祓いではないのですか?」
抗議の意味を込めて尋ね返しながら、心のどこかでは――ああ、やっぱりと思いました。それで、ここにある恐ろしい拷問道具の説明がつきます。
「これまでの魔封じの失敗は、すでにお前の体内に淫魔が巣食っているからではなかろうか――というのが、ノートン先生のお見立てなのだよ」
父様が優しい声で、これも恐ろしいことをおっしゃいます。
どうでもいいことですけど。ここには牧師様が三人もいらっしゃいます。区別するために、牧師としての発言であっても父様と考えることにします。
「立て。立って、衣服を下着まですべて脱いで全裸になるのだ」
教区長様が、懇切丁寧に無慈悲なことをお命じになります。
「あの……この方たちは?」
魔女審問だろうと悪魔祓いであろうと、町長さんたちは部外者でし。
「魔女審問は、私と妻のフェビアンヌ、ベルケン牧師とヒュンケル牧師の四人で執り行ないます。他の三人は証人です」
これから行なわれることは、外形的には暴力行為であり強奻だと、教区長様は明言なさいました。ですが、それは神様の絶対的正義の下に行なわれる私の救済なのです。だから犯罪ではないという証明のために立ち会うのだそうです。
私としては羞恥が募るだけです。
「もっとも。彼らにも幾分かは手伝ってもらって、いずれはヒュンケル牧師と彼らだけで魔女審問や悪魔祓いを出来るようになってもらいます」
つまり、この場にいる全員が私を拷問に掛けるという意味です。
「納得できたところで、さっさと全裸になりなさい」
納得なんて出来ません。でも、拒んだらどんな目に遭わされるか、身体を張って確かめる蛮勇などありません。それに、奥様はグラマラス過ぎて、むしろ私のほうが/なんでもありません。
私は立ち上がって、取り囲んだ人たちの視線に怯えながら、晴着のワンピースを脱ぎました。シュミーズもドロワーズも。最後に、胸の布をほどきます。
「そこの台に仰臥しなさい」
そこの台というのは、両端と真ん中を脚に支えられて水平に寝かされた梯子のことです。今さら恥部を隠しても無意味ですから、両手を使って足も大胆に動かして、床からニフィートの高さにある台に上がりました。
教区長様とベルケン牧師様とが、台の両端に立たれて――私の手足をニフィートほど広げて、そこに置かれてある、二本の長い鎖につながれた木枷に嵌めました。そして、ベッドの端に取り付けられているハンドルを回すと――木枷が引っ張られて、私の身体も引き伸ばされます。でも、両手で木からぶら下がった(初潮を迎えてからは、そんなお転婆は慎んでいます)くらいまで引っ張られたところで、ハンドルは止まりました。
「このまま引っ張り続けると、肩を脱臼して股関節まで破壊されますが、拷問が目的ではないので、身動きできなくなったところで止めます」
拷問ではないというお言葉に、ほっとしました。では、そんなに痛いことはされずにすみそうです。羞ずかしいのさえ我慢すれば良いのです。
「さて。悪魔は人間の身体に契約の印を刻むことで、その身体を乗っ取ります。それが無いうちは一時的に憑りつかれたとしても、悪魔祓いによって、その者を救えるのです」
教区長様が立会人の皆様に講釈されます。
「契約の印は痣や黒子、疣などに偽装されていますが、そこは痛みを感じなくなっています。したがって……」
ベルケン牧師様が、皮革で装丁された薄い本のような物を開きました。立会人と父様に見せてから、私にも見せ付けます。
太いのや細いの、長いのや短いの――何十本もの針が、びっしり並べられています。
「この針を怪しい箇所に突き刺して、痛みを訴えない箇所があれば、即ちそこが、契約の印なのです」
「全身にですかい?」
うんざりしたような声で尋ねたのは、保安官のハーベイさんです。
私はうんざりどころか、恐怖に震え上がっています。
「そうするときもありますが、ヒュンケル牧師の観察で、相手は淫魔だと判明しています。淫魔が契約の印を刻むのは、淫らな部位に限られているのですよ」
「つまり、股座とか乳房かね」
これは町長様の質問ですが、保安官とは反対に、声が弾んでいます。手間が省けて嬉しいのでしょう。
もっとも敏感な部分ばかりに針を刺される……私は気が遠くなりそうです。
「では、私が手本を示します。もっとも怪しい箇所からです」
教区長様が、淫魔のペニスを掘り起こしました。
「待ってください!」
誤って指先に針を突き刺しただけでも痛いのに。こんな敏感な突起に刺されたら……
「そこは淫魔のペニスだと、父様は教区長様から教わったそうです。針で確かめなくても、証拠は明白なのではないでしょうか」
「おや。おまえは自らが魔女であると認めるのか。町中を素っ裸で引き回され、人々に誹られ石打たれた挙げ句に、炎に焼き尽くされたいと望むのか?」
「あああ、そんな……」
そうでした。それはリンチではなく、神様の御名の下に行なわれる正義なのです。そして私は、復活の日にも甦ることはなく、地獄の劫火で永遠に焼き続けられるのです。
神様が「誤審」をなさるとは思えません。ならば……ほんとうに私は、すでに淫魔に憑りつかれているのでしょうか?
「安心なさい。この疣は、善良で清純な乙女にさえ生えている場合もあります」
そのお言葉だけで、劫火が地平線の彼方まで遠ざかりました。
見せてあげなさいと声を掛けられて、奥様がズボンをずり下げました。たぶん下着も一緒だったのでしょう。いきなり下半身が露わになりました。もっと驚いたことには、脱毛症のようです。
奥様はラビアに指を当ててV字形に開くと、父様の前に立って腰を突き出しました。
「彼女にも淫魔のペニスが生えているのが見えますね?」
父様が腰を屈めて覗き込みます。
「ううむ……たしかに」
奥様はそうやって、立会人の皆様にも見せて回りました。
「ただし……」
教区長様が、私の淫魔のペニスをくにゅくにゅとくじります。
「ひゃうんっ……」
莢を剥いたり戻したり。中身の先っぽをくすぐったり。
立て続けに電気が奔って、硬くしこっていくのが自分で分かります。
「このように、あたかも男性のペニスの如く勃起するのは淫魔の悪行です。この娘がすでに憑りつかれているのか、まだ救えるのか、慎重に判断しなければなりません」
私ひとりを除いて皆が納得したところで、審問が再開されます。
淫魔のペニスをつままれて、きゅっと引き伸ばされます。上体をわずかでも曲げられないので、顎を引いても下腹部は見えません。かえって幸いです。
チクッと冷たい感覚に続いて鋭い痛みが貫きました。反射的に腰を引きました。梯子の踏み桟がお尻を押し戻します。
「きひいいっ……」
悲鳴が後から追い掛けてきます。でも、鞭打たれたよりは痛くなかったです。
「おや。それほど痛くはなさそうですね」
教区長様も首を傾げます。
「ほんとうに、ここが契約の刻印かもしれません。もっと詳しく調べましょう」
また引き伸ばされて、今度はチクッが根本のほうへきました。
ぶつっ……と、針が肉に突き刺さる音を肌で聞きました。
「がゃわ゙あ゙あ゙あ゙っっ……!!」
痛いと感じた瞬間に絶叫していました。
「ひいいいいい……」
悲鳴が止まりません。
針を引き抜かれて、ようやく止まりました。
「今度は芝居掛かっていますね」
教区長の助手のベルケン牧師様が、私が穿いていたドロワーズをずたずたに引き裂いて丸めました。それを私の口に押し付けます。
口をふさがれるというのも怖いですが、その詰め物が私のドロワーズだというのがすごく厭です。でも、牧師様に逆らうのはいけないことです。素直に口を開けて、声を封じていただきました。
「悲鳴に惑わされることなく、全身の反応を見て判断するのです」
教区長様はそうおっしゃって、淫魔のペニスの根元をつまみました。そして、針を真上から突き刺したのです!
「ま゙ゃわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!!」
これまででいちばんの激痛が腰で爆発して脳天まで噴き上げました。
「も゙お゙お゙お゙、お゙お゙お゙お゙お゙……」
ずぐずぐと針が淫魔のペニスの奥深くまで肉を引き裂いて突き進むのが感じられます。腰はよじれますが、そうすると激痛がさらに跳ね上がるので……腰を突き上げた形で凍りつくしか出来ません。
針が引き抜かれても、激痛が居座っています。手首と足首もずきずきと痛むのに気づきました。木枷に逆らってもがいたのでしょう。
「ここには、悪魔の刻印は無いようですね」
ああ、良かった。神様、ありがとうございます。
しかし、感謝の祈りを捧げるのは早計でした。
「次は乳房です」
そうでした。罪深い女の身体には、悪魔に狙われやすい部分が幾つもあるのです。
「もしも淫魔がすでにこの娘に憑りついているとすれば、体内の奥深くへ逃げ込まないようにしておかなくてはなりません」
父様が名指しされました。
「この娘の乳房にこれを嵌めて、淫魔の逃げ道を断つのです」
これというのは、8の字を半割りにした鉄枷です。それが、乳房の上下にあてがわれて、両端をボルトで締め付けていきます。ぎりぎりと鉄枷が乳房に食い込んできます。
「むううう……」
すごく痛いのですが、淫魔のペニスに針を刺されることを思えば、ちょっと強く揉まれているくらいでしかないです。
乳房の根元をきつく縊られて、中ほどから先の部分が、針で刺せば破裂しそうなくらいに膨れました。
「淫魔が潜んでいると仮定して、じわじわと追い込んでいきましょう」
あなたたちも経験しなさいと――教区長様は三人の立会人と父様に針を持たせました。淫魔のペニスに使ったのより、ずっと太くて長い針です。
最初は父様です。昨日までは、いえ、この瞬間にも敬愛している父様に拷問される/違います/検査していただくのです。これは形を変えた祝福だと……思うようにします。
父様が左の乳房をわしづかみにして、ますますぱんぱんに張り詰めさせます。鉄枷で縊られているすれすれのところに針が突き立てられました。
「ん゙む゙うううう……!」
三十分前の私だったら、口をふさがれていなかったら、喉から血を吐くほどに絶叫していたでしょう。でも、淫魔のペニスへの針刺しを体験してしまっては、颶風に対する強風でしかありません。ですが、乳房の中をぐずぐずと針が突き進んでいく感触は、蜈蚣に食い荒らされるみたいな気色悪さです。
ぷつっと、針が乳房を突き抜けました。針を残したまま、父様が引き下がりました。
父様と反対の側に町長のディーラーさんが立ちました。右の乳房を、父様の倍以上の力で握り潰します。そして、三倍くらいの勢いで、一気に乳房を貫きました。
「も゙お゙お゙おおおっ……!」
二人を比べれば、やはり父様の刺し方には、娘へのいたわりがあふれています。
三人目は銀行頭取のギャレットさんです。先の二人とは違って、左の乳房を上から下へ縦に刺し通しました。
最後が保安官のハーベイさんです。父様よりも若い三十二歳です。いえ、意味はありません。修道女に準じた生涯を送ると決めているのですから、どんなに若くても恋愛対象にはなりません。ボブさんは、家族に次ぐ親密さですから……こんなときに、なにを浮ついたことを考えているのでしょう。でも、若い男性(といっても、私の倍以上ですし、父様と三つしか違いません)に乳房をつまかれるのは、四十や五十の男性にそうされるのとでは、感じ方が違います。
などと、あれこれ考えてしまうのは。ハーベイさんが乳房をつかんだきり、固まっているからです。
「どうしても、やらなきゃ駄目ですかね?」
やってください。どんなに痛くてつらくても、淫魔を追い祓うためです。
「この娘が魔女だとしたら、町にとんでもない災厄をもたらします。治安を預かる者の義務でもあるのです」
教区長様に優しく強く諭されて、ハーベイさんも覚悟を決めたようです。
「む゙ゔうう、うううう、ゔゔうう……」
ためらいながらゆっくり突き刺すので、四人のうちではいちばん痛かったです。
「よろしい。とどめは私がとどめを刺しましょう」
教区長様が、それまでのよりは短い針を持って、私の横に立ちました。淫魔のペニスへの仕打ちから、その針がどんなふうに刺されるか予測できてしまって、口の中の布を強く噛み締めました。
それでも、淫魔のペニスに垂直に突き立てられるよりは痛くないでしょう。せいぜい嵐くらいではないかしら。それよりも、左の乳首を正面から突き刺されたら、心臓に達するのではないかしら。そちらが心配でした。
同じような描写の繰り返しになりますから端折りますけど。絶叫は詰め物に吸い込まれて、乳房が爆発したと錯覚するまでの激痛ではありませんでした。
今度こそ終わった。魔女の嫌疑は晴れたと喜んだのですが。教区長様はとても慎重なお方でした。
「狡猾な淫魔は、目の届きにくい部分に印を刻むものです。フェビアンヌ。この娘の腋と股間の縮れ毛を剃り落としてやりなさい」
「…………」
私は、ただ諦めるだけでした。
毛を剃られてしまうなんて、とても羞ずかしいことです。でも、女性器の中まで晒しているのですから、それよりも羞ずかしいなんてことはありません。それに、剃られた毛はじきに元に戻ります。とにかく。徹底して魔女の嫌疑を晴らしていただくことだけを願います。
父様は髭を蓄えてらっしゃいますが、もちろんお手入れは(つるつるの顔よりも入念に)必要です。父様の泡立て皿と剃刀が用意されました。いつもは父様の顎に泡を塗っている刷毛で私の股間を撫でられると考えると、股間にリンパ液がにじみ出てきます。それとも、淫らな汁なのでしょうか。
まず股間が真っ白に塗りつぶされて、剃刀が当てられました。
ぞりっ、ぞりっ……縮れ毛が剃られていくかすかな感触が肌を震わせます。くすぐったくて気持ちいいです。こんな楽しみが毎朝あるなんて、男の人って得だな。そんなことまで考えてしまいました。
立会人の皆様も、私と同じように手持無沙汰なのでしょう。私が剃られていくのを見物しながら、とりとめのない雑談をしています。
「あらかた剃ってしまったな」
「恥毛を剃ってしまうと、ますます幼く見えるな。さすがに良心がとがめるぞ」
「いや。使えるなら、女は若ければ若いほどよろしい」
耳をふさぎたくなりますが、それも出来ません。
「剃り残しが無いようにしなさい。ああ、アヌスのまわりは後回しです」
教区長様が、あからさまな指示をなさいます。
「これからは百マイルも遠征せずにすみますな」
「ストーンのやつ、石っころだけあって融通が利かん」
「ティムの餓鬼なんか、ケツ穴に突っ込みかけただけで出入禁止を食らったからな」
「俺は宣教師スタイルだけで満足ですぜ。女の顔が見えなきゃ、つまらんでしょうが」
意味が分かりませんが、ストーンさんというのはサロンの経営者です。ケツ穴がどうこうというのは、私が得た最新の知見に照らせば、ソドムの罪を……市長様ともあろうお方が、そんなことを望んでらっしゃるなんて、信じられません。私の聞き違いです。
「ホステスが若すぎるビッチ一匹では、ちと物足りんが……」
「いや、あの乳はじゅうぶんに鞣し甲斐がある。若いのだから、わしらの好みに調教できるというものだ」
私としても、彼らの冗談話を本気で解読するつもりはありません。それでも、聞き耳を立てているうちに、腋毛まで一本残さずつるつるに剃り上げられてしまいました。
そして、今度はピンポイントではなく雨が平野に降り注ぐように、下腹部と腋を何十本もの針で突き刺されたのです。時間は掛かりましたけれど、淫魔のペニスや乳首に比べたら微風でしかありませんでした。
「それでは、最後の一か所を調べるとしましょう」
教区長様のお言葉を、今の私は理解できます。
私を引き伸ばしていた鎖がわずかに緩められたした。父様とベルケン牧師様とが手足の木枷を持ち上げて、私を俯せにしました。改めて鎖が巻き縮められます。
お尻の肉に熊手のような道具が食らいついて、左右に引っ張られます。そこにひんやりとした空気が触れて、アヌスを剥き出しにされたのが分かりました。
フェビアンヌさんがお尻を覗き込んで――そこの産毛(縮れ毛なんか生えていません)を剃りました。
ファビエンヌさんが下がると、六人の男性が私のお尻を取り囲みました。皆さん、長い針を一本ずつ持っています。
「では、私から」
教区長様の声と同時に――ぷつっと針がアヌスに突き刺されました。
「む゙も゙お゙お゙お゙お゙っ……!」
ラビアに刺されるより、よほど厳しい激痛でした。
ぷつっ、ぷつっ、ぷつっ……続けざまに突き刺されて、そのたびに私はくぐもった悲鳴を上げさせられました。
「ふむ。ここにも印は刻まれていないようです」
そのお言葉を聞きながら、ふっと疑問が生じました。
乳房を調べるときは、淫魔が奥深くへ逃げ込まないようにと、鉄枷で縊られました。でも、ラビアやアヌスを調べるときにはそんな処置は取れません。それで構わないのでしょうか。でも、教区長様に尋ねる勇気はありません。淫魔の逃げ道を封じるために、どんな恐ろしい処置を追加されるか分かりませんから。
木枷を外す前に、ファビエンヌさんが傷の手当てをしてくれました。アルコール消毒をしてヨードチンキを塗るというより針で開けられた穴に擦り込むという、乱暴な手当てです。針で刺されるよりは痛くありませんが、痛みが何分も続くし、乳房も女性器もアヌスも同時に痛いので、とろ火で焼かれるようなつらさでした。
これで、私の魔女嫌疑は晴れたと安堵したのですが。
「念には念を入れて調べましょう。せっかく、その用意もしてあることですし」
まさか、ここにある恐ろしい拷問毒具をすべて私に使うおつもりなのでしょうか。「準備をし過ぎるということは無い」という格言はありますが、「それをすべて活用しろ」とは言いません。
それでも、私は抗議をできません。魔女審問を拒否すれば、それが魔女である何よりの証拠にされます。
「魔女は自然に逆らった存在です。水に沈めようとしても、水に拒まれるのです」
あの大きな桶に水を張って、私を沈めて確かめるのだとおっしゃいます。でも。水に沈めば魔女でないという証しを立てられるのでしょうが、沈んでしまえば溺れ死にます。
父様も加わっているのです。ぎりぎりのところで引き上げてもらえますよね?
水に浸けるといっても、大桶は空です。直径二フィート半、深さ三フィートもの桶に水を満たすには何時間も掛かります。せめて、その間は休ませてもらえる――なんていうのは、甘い考えでした。裏の井戸から水を汲んでくるのは、私ひとりの仕事にされてしまいました。
「みずからの潔白を証明するための仕事です」
元気なときでも、気が遠くなるような重労働です。それを、急所ばかり何十本もの針を突き立てられた満身創痍の肉体でやり遂げなければならないのです。
全裸のままで働くようにと、教区長様はおっしゃいます。それどころか。
「礼拝堂から外へ出れば、それだけ淫魔の付け込む隙も増えるのではないでしょうか」
教区長様から教えていただいた魔封じをしておきましょうと、父様が提案しました。日曜礼拝のときのあれは、やはり父様がご自分で考えたものではなかったのです。
乳首を針金の輪で締め付けて乳房もぐるぐる巻きにして、針金の束で股間を封印したうえで、淫魔のペニスからは十字架を吊り下げる。ただ歩くだけでも、自分で自分を痛めつけるに等しいというのに、その姿で水を汲んで運ぶのは――ほとんど不可能事です。けれど、教区長様は大きく頷かれたのです。
「おお、そうでしたね。あなたの娘さんを案じる気持ちは良く分かります」
私も、父様と教区長様に感謝しないといけないのでしょうが……どうしても、その気になれませんでした。それなのに、厳重に身体を締め付けられ突起を虐められると……頭に靄が掛かって、腰の奥が熱く潤ってしまうのです。
何も知らない信者の皆様に見られる懸念が無いのですし、全裸でお淑やかもあったものではありませんけれど、がに股にならないよう気を付けて、胸を張って仕事をしました。だって、そのほうが刺激が強くて/なんでもありません。
二ガロンのバケツを同時に二つ持って、裏庭と礼拝堂を何十回と往復しました。十字架を膝で蹴りながら歩きました。最初のうちは痛いのがずっと強いのですが、その中でかすかな快感がだんだんと蓄積していきます。水を汲んでいる間は股間の揺れが止まっていますが、腋を締めてポンプのレバーを動かすと乳房がこねくられて、やはり一定した苦痛の中に快感が蓄積していきます。
十往復くらいまでは回数を覚えていましたが、あとは霞の中を雲を踏みながら歩いているみたいになって――皆様が夕食をとっている間も、私は働き詰めでした。お昼も食べていないのに、ちっとも空腹は感じませんでした。というか、淫魔に憑りつかれようとしている罪深い娘には、人並みに食事をすることなど許されていない。そんなふうにも思うのです。
水は大桶一杯に満たすのではなく、六インチ手前で止めるように言われていました。それでも、二十往復以上です。自分自身を拷問に/ではないです!/魔女審問に掛けていただくための準備が調ったときには、精根尽き果てて床に伏してしまいました。俯せになって自分の体重で乳房をこねくり乳首を虐め、十字架を太腿で押さえて腰をくねらせて……桃色の霞が薄れないようにしていました。これは魔女審問のための準備なのですから、淫魔の囁きにそそのかされた自涜行為ではありません。神様に祝福していただいているのです。なにかとんでもない考え違いをしているのかなとも思いましたけれど、三匹の鶏と二匹の牛で脚が何本あるかさえ計算できない状態ですから、そんな神学上の問題を考えられるわけがありません。
わずか数十分でしたが――ある意味で、これまでの生涯の中でいちばん幸せな時間を過ごしていたのではないでしょうか。苦痛と快感とがせめぎ合って、互いが互いを押し上げていくような恍惚。それが、決して淫魔にそそのかされたものではなく、神様に与えていただいているという、心の充足。
その一方で。なにかがひどく間違っているという予感もありました。
もしや、私ではなく……教区長様や父様こそが悪魔に魅入られて、私を生贄に捧げようとしているのではないだろうかという疑問。もちろん、私よりもずっと神様のおそばに居る人たちが悪魔の手先であるなんて、馬鹿げた妄想です。そんな疑いを持つことこそ、私が淫魔に憑りつかれよとしている証拠ではないでしょうか。
「床に身体を擦りつけてオナニーとは、淫魔に支配された魔女の嫌疑がますます深まったな」
教区長様の声で、私は我に還りました。
「しかし、そうではない可能性もあります。どうか、娘のためにも厳正に取り調べてください」
「言われるまでもありません。我が教区に魔女が現われるなど、あってはならないことです。この娘が魔女でないことを皆で祈りましょう。アーメン」
起き上がって床にへたり込んでいる私に向かって、教区長様が十字を切ってくださいました。そして父様の手で、天井の滑車から垂れている太い鎖が、揃えた両足に巻きつけられました。
そのまま立たされて。短い鎖でつながれた手錠が股間に通されました。私は右手を前で拘束され、左手は後ろです。手を動かせば、鎖がスリットに食い込んで――ごつごつした快感を強いられます。
立会人の皆様が、鎖の端を引っ張ります。そのままだと転んでしまうので、自発的に床に仰臥しました。脚が吊り上げられ、腰が持ち上がって――身体が宙に浮きました。水を張った大桶の真上です。
じわじわと吊り下げられていきます。ほつれたお下げが水に浸かり、目も水面下に沈もうとしています。そんなことをしても、せいぜい一分かそこらの違いでしょうが、急いで深呼吸をして肺に空気を溜めます。
すうっと顔が水に没して、肩から乳房……股間に水の冷たさを感じた直後に、頭が底に着きました。そこでは止まらずに鎖が緩められていって、脚が手前へ折れていって、桶の縁に掛かりました。それを、誰かが押し戻して――鎖の重みに負けてつま先が沈んでいきます。二つに折り畳まれた姿勢で、私の身体は完全に水没しました。
苦しい。顔が上下逆さになっているせいでしょう。息をしていなくても、鼻の中に水が入ってきます。くしゃみが出そうになるので、わずかずつ息を吐いて水抜きをします。
まさか、最初に懸念したように、水から浮かび上がって魔女の正体を現わすか溺れ死んで潔白を証すかの二者択一ではないでしょうね。
そんなはずは絶対にありません。教区長様にはそこまでの信頼を置けませんけれど、父様が娘を見殺しにする、どころか積極的に危害を加えるなんて、絶対にあり得ません。
それでも……これまでと違って、直截に命の危険を感じます。恐怖で急速に息苦しくなりました。
引き上げてもらえるまで堪え抜く。それしか、私に出来ることはありません。せいぜい、あと三十秒で引き上げてもらえるでしょう。
一、二、三、四、五……
……二十八、二十九、三十!
まだ気配もありません。あと三十秒……も、息が続きそうにないです。それでも、引き上げてもらえると信じます。
……もう、駄目。
苦し紛れに息を吐きました。ぼごごっと音を立てて、大きな泡が沈んでいきます。間違えました。頭が下になっています。泡は水面へ向かって浮かび上がっています。
息を吐き出せば、どうしても吸いたくなります。それを渾身の気力で我慢します。水が肺へ入ってしまえば溺れ死にます。
痛い……?!
断末魔の痙攣でしょうか。身体が海老のように跳ねて、桶にぶつかったのです。
お願いです、神様。こんなのは厭です!
身体の芯まで苦しいだけで、救いとなる快感がひと欠けらもありません。ああ、こんなことを考えるのも、私の身体に淫魔が巣食っているせいなのでしょうか。
身体の下のほうできらきら光っている水面が、すうっと暗くなっていきます。頭に霞が――真っ黒な霞が掛かっていきます。
神様の下に召されるのでしょうか。もしも、神様にまで魔女だと断罪されたら……
がくんと、脚に衝撃が加わりました。誰かの手が、いえ複数の手が、私の身体を押したり脚を伸ばしたりしています。ぐうっと脚が引っ張られて。
「ぶはあっ……げふっ……!」
一気に空中へ引き上げられて、私は咳き込みながら空気を貪りました。
冷たくて甘い空気。全身に酸素が沁み通る感覚が、快感を超越して生きている実感です。
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これで、今夜はおしまい――ではありません。尺が長くなったので、章を追加して『三穴の魔封じ』が続きます。
詳しくは次回ですが、こんな感じです。清めていただくのですから、喜んで自発的に――です。

魔女は体表に悪魔との契約の刻印を隠している。そこは痛覚を持たないから針で刺して調べる。実に好都合です。しかも。
「淫魔が契約の印を刻むのは、淫らな部位に限られているのですよ」
とはいえ。魔女なら、痛くなくても「痛い!」って叫ぶんじゃないかしら?
その答えは、本文をお読みください。とはいえ、針を刺されても分からないように目隠しをするのはパス。一人称ですから、いちいち「何をされた」かをヒロインの触覚から推測するのでは面倒ですので。
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魔女の嫌疑
月曜日。数日ぶりの爽やかな目覚めでした。もう、淫魔が囁き掛けてくることもないでしょう。生まれ変わったつもりで、新たな一週間に臨みます。
……でも、だめでした。淫魔の囁きは聞こえてこないけれど、まだ続いているヴァギナの疼きが、聖礼典のことばかり思い出させます。儀式の意義を考えるのではなく、父様のペニスが私のヴァギナに突き刺さったという外形的な事実と、それに伴なう激痛と、にじみ出てきた悦びと。そんな淫らなことばかりが。
気もそぞろに一日を過ごしました。レース編みは、今日も手に付きませんでした。
そして夜はベッドの中で……またしても淫魔の囁きに負けてしまったのです。
それも、これまでのようなおいたではすみませんでした。父様によってつけていただいた道には、指が三本も入ってしまったのです。きついし痛みもありましたけれど、快感のほうが上回っていました。
肉棒を中で動かされながら淫魔のペニスを抓られたときの甘い激痛を思い出して……右手の人差し指から薬指までを挿入して、親指で淫魔のペニスを刺激しました。左手が空いているので、指をうんと広げて左右の乳首を同時に擦りました。
「ああああっ………だめえええっ!」
慌ててシーツを口に詰め込みましたが、時すでに遅しです。父様もジャックも熟睡していることを願うしかありませんでした。
もしも父様の耳に届いていなかったとしても、知らん顔で通すほど、私は自堕落ではありません。牧師様にお願いして、礼拝堂での朝のお祈りに立ち会っていただきました。
牧師様は私を責めるでも諭すでもなく、けれど赦しの言葉も掛けてくださいませんでした。その代わり、予想外の――本来なら喜ばなければならないことをおっしゃいました。
「もう思い悩むことはありませんよ。今日の午後にも、教区長のアンディ・ノートン牧師が来てくださいます。これまでの経過は電話で報告してきたのですが、私ひとりでは困難だろうと判断されて、直々に悪魔祓いをしてくださることになったのです」
牧師様の顔にも声にも悔しさがにじんでいます。牧師でありながら娘を淫魔から護ってやれなかった無念でしょうか。
私にも父様の憂鬱が伝染したのでしょう。ちっとも安心出来ずに不安が募るばかりでした。
ノートン教区長様がいらっしゃったのは午後二時でした。大きな馬無し馬車で、教区長様は(聞くところによるとご自分のお歳の半分の)若い奥様を同伴なさっていました。助手の牧師様と馬無し馬車の運転手さんも一緒です。
御挨拶もそこそこに、父様を含む四人の男性は、馬無し馬車のに積んできた様々な道具を礼拝堂に運び入れる作業に取り掛かりました。私と(付け足しに)ジャックは、奥様の接待です。といっても、コーヒーとクッキーをお出しした後は、居間の隅っこに控えて、奥さまが読書をなさる邪魔にならないようにおとなしくしているだけでしたけれど。
奥様は社交的でないのか、子供(悔しいけれど、奥様からみたら、私はじゅうぶんに子供でしょう)の相手が苦手なのか、私たちにあまり話しかけてはくださいませんでした。
ただ、いくつか教えていただいたひとつが、奥様も悪魔祓いに立ち会われるとのことでした。
私は、とても心強く思いました。だって、これまでにされたことといえば、羞ずかしいことばかりでした。女性が立ち会えば、そんなにひどいことはされないでしょう。でもそれでは、悪魔祓いの霊験も薄れるのではないかしらと――矛盾した不安に苛まれたりもします。
夕食の支度は六人分しか調えなかったので、ぎりぎりテーブルに載りました。
「ジュリアは食事をせず、礼拝堂でお祈りをしていなさい」
罰でも信仰の証でもなく……夜になってから、教区長様によって行なわれる私への悪魔祓いは肉体的にとても厳しいので、嘔吐などをして場を穢さないための予防処置だそうです。
そう聞かされただけで、私は心の底から震え上がってしまいました。でも……どんなふうに虐められる/訂正します/清められるのだろうと、想像すら出来ない事柄を想像すると、腰の奥に熱い疼きが生じます。この不合理な感情は、淫魔がもたらすのでしょうか。苦しむのは私の肉体であって、淫魔ではありません。
そんな得体の知れない恐怖は、礼拝堂に入るなり、具体的な恐怖に変わりました。そして、腰の奥の疼きがいっそう熱を帯びてきました。
馬無し馬車の大きな荷台に積まれていた荷物が、すべて礼拝堂に運び入れられたのでしょう。
実際に人間を磔に掛けられる大きな十字架が、聖壇の前に立てられています。天井には大きな滑車が幾つも吊り下げられて、太い鎖が垂れています。一本の鎖の下には、行水桶ほどの差し渡しで、立ったまま腰まで浸かれそうな桶が据えられています。ベッドの幅ほどもある梯子が、床からニフィートの高さで水平に支えられています。断面が三角形をした太い木材が、四本の脚で支えられています。
これは………父様の本棚にある、聖書研究の専門書の挿絵とそっくりです。中世の魔女裁判、あるいは異端審問の拷問道具です。
そう思ってさらに見回すと、肉を挟んで引き千切る大きなペンチとか、火桶と焼鏝とか、いろんな大きさと形の木枷や鉄枷も、幾つかの木箱に収められています。隅へ寄せられた信者席の上には、長短様々な鞭や笞が置かれています。
なんてことでしょう。これらの拷問道具はすべて、私に使うために持ち込まれたのです。
私は恐慌に陥って、出入口へ駆け寄りました。でも、そこで立ち止まりました。ここから逃げ出しても、私には行くべき場所がありません。家へ戻って問いただしても(何を問いただすというのでしょう)どうにもなりません。むしろ、ジャックまで何らかの形で巻き込んでしまいます。
逃げてどこかへ隠れてみても、狭い町です。簡単に見つかって連れ戻されるでしょう。町の人たちにも知られてしまいます。それよりも。私の周囲から淫魔を退ける聖礼典を拒んで逃げるなんて、淫魔をみずから進んで迎え入れるようなものです。
私はこの場に留まって。可能な限り厳しい試練を与えてくださるよう、神様にお願いするべきなのです。そう決心しました。でも、怖い……腰の奥に熱い疼きなんか、まったく生じません。
どうしようもないので聖壇の前に跪いて両手を胸の前で組みました。でも、お祈りの言葉を唱えるどころか、頭に浮かんですらきません。
そのうちに、怖いもの見たさの好奇心が頭をもたげてきます。
まずは、すぐ後ろに立ててある十字架。犠牲者の足を載せるための手前に傾斜した踏台がありません。その代わりと言ってはなんですが、ずっと高い位置に、Fの文字を左へ倒したような棒が突き出ています。腕木の位置から推測して、腰のあたりです。
一昨日の私だったら、上向きに突き出ている二本の棒の意味に気づくとしても、しばらくは考え込んだことでしょう。でも今は、見た瞬間に理解しました。と同時に、アヌスもヴァギナと同じ用途に使えるらしいという新たな知見も得ました。男女共通の器官。ソドムの罪とはこういうものだったのですね。
十字架にはいたるところに、開閉式の半円形の金属の環が取り付けられています。これなら、手足に釘を打ち込まなくても犠牲者を固定できます。十字架に磔けられても、命には係わらない。そして上向きの棒は二本。つまり、女性を辱める/訂正します/清めるための聖具なのです。
それでも、ずいぶんと苦しいでしょう。背筋を氷水が流れ落ちます。なのに、腰のあたりに溜まった水が熱くなってきました。
別の大道具を観察しましょう。ずっと気になっていた三角の材木。作業台には使えないし、刈り取った麦を乾燥させるには風通しが悪そうです。
あら……中程の先端にどす黒い染みが。まさか、血痕?
今後は背筋が凍りつきました。淫魔封じの針金と、一昨夜の出血からの連想です。もしも、これに跨ったりしたら。鐙は無いし、馬の腹よりもつるつるしていますから腿で締め付けても体重を支え切れないでしょう。
「きゃっ……?!」
無意識に後ずさっていたのでしょう。つまずいて転びかけました。
もう、好奇心なんか消え失せました。それに……これらは私に使うために、教区長様がわざわざ持ち込まれた道具類です。観察して推測しなくても、すぐにでも使い方と恐ろしさとを、私自身の身体で知ることになるでしょう。
私は聖壇の前へ逃げ戻って、全身全霊でお祈りをしました。
神様。私をお護りください。
でも……神様が加害者ではないでしょうか。絞首刑の執行者に命乞いをしても無駄なのではないでしょうか。
絶望です。それなのに……十字架に磔けられてヴァギナもアヌスも串刺しにされたら、苦しいだけだろうかなんて、とんでもない妄想が湧いてきます。三角の材木に乗せられたら激痛に泣き喚いて、さすがの淫魔も辟易して逃げるのではないかしらなんて、ちょっぴり期待したりもします。
ああ……住居に通じるドアの開く音です。いよいよ、私への凄絶な聖礼典が始まるのです。
父様が先導する形で、教区長様と奥様、助手の牧師様。その後ろは運転手さん――でもボブさんでもありませんでした。町長のディーラーさん、銀行頭取のギャレットさん、保安官のハーベイさん。町の名士様ばかりが三人も。
それにしても、奥様はなんという服装をしてらっしゃるのでしょう。長袖のブラウスに細身の乗馬ズボン。乗馬ズボンとすぐに分かったのは、歯車状の拍車が付いたブーツを履いているからです。ズボンはぴっちり肌に密着して、脚もお尻も生の輪郭が浮き彫りになっています。淫らです。もっと淫らなのがブラウスです。ボタンを留めずに、裾をおへその上で結んでいます。余った端がリボンみたいでお洒落ですが、おへその露出くらいは、この服装の中では些末事です。胸元が開いて、乳房が半分くらいは見えています。
男性の皆様は、それぞれの職業にふさわしいセミフォーマルな装いです。
その皆様が、父様と奥様を除いて、私を取り囲みました。私は立ち上がるタイミングを失って、跪いたままです。
「これより、ジュリア・コバーニの魔女審問を行なう」
教区長様が厳かな声で、とんでもないことをおっしゃいました。
「魔女審問って……悪魔祓いではないのですか?」
抗議の意味を込めて尋ね返しながら、心のどこかでは――ああ、やっぱりと思いました。それで、ここにある恐ろしい拷問道具の説明がつきます。
「これまでの魔封じの失敗は、すでにお前の体内に淫魔が巣食っているからではなかろうか――というのが、ノートン先生のお見立てなのだよ」
父様が優しい声で、これも恐ろしいことをおっしゃいます。
どうでもいいことですけど。ここには牧師様が三人もいらっしゃいます。区別するために、牧師としての発言であっても父様と考えることにします。
「立て。立って、衣服を下着まですべて脱いで全裸になるのだ」
教区長様が、懇切丁寧に無慈悲なことをお命じになります。
「あの……この方たちは?」
魔女審問だろうと悪魔祓いであろうと、町長さんたちは部外者でし。
「魔女審問は、私と妻のフェビアンヌ、ベルケン牧師とヒュンケル牧師の四人で執り行ないます。他の三人は証人です」
これから行なわれることは、外形的には暴力行為であり強奻だと、教区長様は明言なさいました。ですが、それは神様の絶対的正義の下に行なわれる私の救済なのです。だから犯罪ではないという証明のために立ち会うのだそうです。
私としては羞恥が募るだけです。
「もっとも。彼らにも幾分かは手伝ってもらって、いずれはヒュンケル牧師と彼らだけで魔女審問や悪魔祓いを出来るようになってもらいます」
つまり、この場にいる全員が私を拷問に掛けるという意味です。
「納得できたところで、さっさと全裸になりなさい」
納得なんて出来ません。でも、拒んだらどんな目に遭わされるか、身体を張って確かめる蛮勇などありません。それに、奥様はグラマラス過ぎて、むしろ私のほうが/なんでもありません。
私は立ち上がって、取り囲んだ人たちの視線に怯えながら、晴着のワンピースを脱ぎました。シュミーズもドロワーズも。最後に、胸の布をほどきます。
「そこの台に仰臥しなさい」
そこの台というのは、両端と真ん中を脚に支えられて水平に寝かされた梯子のことです。今さら恥部を隠しても無意味ですから、両手を使って足も大胆に動かして、床からニフィートの高さにある台に上がりました。
教区長様とベルケン牧師様とが、台の両端に立たれて――私の手足をニフィートほど広げて、そこに置かれてある、二本の長い鎖につながれた木枷に嵌めました。そして、ベッドの端に取り付けられているハンドルを回すと――木枷が引っ張られて、私の身体も引き伸ばされます。でも、両手で木からぶら下がった(初潮を迎えてからは、そんなお転婆は慎んでいます)くらいまで引っ張られたところで、ハンドルは止まりました。
「このまま引っ張り続けると、肩を脱臼して股関節まで破壊されますが、拷問が目的ではないので、身動きできなくなったところで止めます」
拷問ではないというお言葉に、ほっとしました。では、そんなに痛いことはされずにすみそうです。羞ずかしいのさえ我慢すれば良いのです。
「さて。悪魔は人間の身体に契約の印を刻むことで、その身体を乗っ取ります。それが無いうちは一時的に憑りつかれたとしても、悪魔祓いによって、その者を救えるのです」
教区長様が立会人の皆様に講釈されます。
「契約の印は痣や黒子、疣などに偽装されていますが、そこは痛みを感じなくなっています。したがって……」
ベルケン牧師様が、皮革で装丁された薄い本のような物を開きました。立会人と父様に見せてから、私にも見せ付けます。
太いのや細いの、長いのや短いの――何十本もの針が、びっしり並べられています。
「この針を怪しい箇所に突き刺して、痛みを訴えない箇所があれば、即ちそこが、契約の印なのです」
「全身にですかい?」
うんざりしたような声で尋ねたのは、保安官のハーベイさんです。
私はうんざりどころか、恐怖に震え上がっています。
「そうするときもありますが、ヒュンケル牧師の観察で、相手は淫魔だと判明しています。淫魔が契約の印を刻むのは、淫らな部位に限られているのですよ」
「つまり、股座とか乳房かね」
これは町長様の質問ですが、保安官とは反対に、声が弾んでいます。手間が省けて嬉しいのでしょう。
もっとも敏感な部分ばかりに針を刺される……私は気が遠くなりそうです。
「では、私が手本を示します。もっとも怪しい箇所からです」
教区長様が、淫魔のペニスを掘り起こしました。
「待ってください!」
誤って指先に針を突き刺しただけでも痛いのに。こんな敏感な突起に刺されたら……
「そこは淫魔のペニスだと、父様は教区長様から教わったそうです。針で確かめなくても、証拠は明白なのではないでしょうか」
「おや。おまえは自らが魔女であると認めるのか。町中を素っ裸で引き回され、人々に誹られ石打たれた挙げ句に、炎に焼き尽くされたいと望むのか?」
「あああ、そんな……」
そうでした。それはリンチではなく、神様の御名の下に行なわれる正義なのです。そして私は、復活の日にも甦ることはなく、地獄の劫火で永遠に焼き続けられるのです。
神様が「誤審」をなさるとは思えません。ならば……ほんとうに私は、すでに淫魔に憑りつかれているのでしょうか?
「安心なさい。この疣は、善良で清純な乙女にさえ生えている場合もあります」
そのお言葉だけで、劫火が地平線の彼方まで遠ざかりました。
見せてあげなさいと声を掛けられて、奥様がズボンをずり下げました。たぶん下着も一緒だったのでしょう。いきなり下半身が露わになりました。もっと驚いたことには、脱毛症のようです。
奥様はラビアに指を当ててV字形に開くと、父様の前に立って腰を突き出しました。
「彼女にも淫魔のペニスが生えているのが見えますね?」
父様が腰を屈めて覗き込みます。
「ううむ……たしかに」
奥様はそうやって、立会人の皆様にも見せて回りました。
「ただし……」
教区長様が、私の淫魔のペニスをくにゅくにゅとくじります。
「ひゃうんっ……」
莢を剥いたり戻したり。中身の先っぽをくすぐったり。
立て続けに電気が奔って、硬くしこっていくのが自分で分かります。
「このように、あたかも男性のペニスの如く勃起するのは淫魔の悪行です。この娘がすでに憑りつかれているのか、まだ救えるのか、慎重に判断しなければなりません」
私ひとりを除いて皆が納得したところで、審問が再開されます。
淫魔のペニスをつままれて、きゅっと引き伸ばされます。上体をわずかでも曲げられないので、顎を引いても下腹部は見えません。かえって幸いです。
チクッと冷たい感覚に続いて鋭い痛みが貫きました。反射的に腰を引きました。梯子の踏み桟がお尻を押し戻します。
「きひいいっ……」
悲鳴が後から追い掛けてきます。でも、鞭打たれたよりは痛くなかったです。
「おや。それほど痛くはなさそうですね」
教区長様も首を傾げます。
「ほんとうに、ここが契約の刻印かもしれません。もっと詳しく調べましょう」
また引き伸ばされて、今度はチクッが根本のほうへきました。
ぶつっ……と、針が肉に突き刺さる音を肌で聞きました。
「がゃわ゙あ゙あ゙あ゙っっ……!!」
痛いと感じた瞬間に絶叫していました。
「ひいいいいい……」
悲鳴が止まりません。
針を引き抜かれて、ようやく止まりました。
「今度は芝居掛かっていますね」
教区長の助手のベルケン牧師様が、私が穿いていたドロワーズをずたずたに引き裂いて丸めました。それを私の口に押し付けます。
口をふさがれるというのも怖いですが、その詰め物が私のドロワーズだというのがすごく厭です。でも、牧師様に逆らうのはいけないことです。素直に口を開けて、声を封じていただきました。
「悲鳴に惑わされることなく、全身の反応を見て判断するのです」
教区長様はそうおっしゃって、淫魔のペニスの根元をつまみました。そして、針を真上から突き刺したのです!
「ま゙ゃわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ……!!」
これまででいちばんの激痛が腰で爆発して脳天まで噴き上げました。
「も゙お゙お゙お゙、お゙お゙お゙お゙お゙……」
ずぐずぐと針が淫魔のペニスの奥深くまで肉を引き裂いて突き進むのが感じられます。腰はよじれますが、そうすると激痛がさらに跳ね上がるので……腰を突き上げた形で凍りつくしか出来ません。
針が引き抜かれても、激痛が居座っています。手首と足首もずきずきと痛むのに気づきました。木枷に逆らってもがいたのでしょう。
「ここには、悪魔の刻印は無いようですね」
ああ、良かった。神様、ありがとうございます。
しかし、感謝の祈りを捧げるのは早計でした。
「次は乳房です」
そうでした。罪深い女の身体には、悪魔に狙われやすい部分が幾つもあるのです。
「もしも淫魔がすでにこの娘に憑りついているとすれば、体内の奥深くへ逃げ込まないようにしておかなくてはなりません」
父様が名指しされました。
「この娘の乳房にこれを嵌めて、淫魔の逃げ道を断つのです」
これというのは、8の字を半割りにした鉄枷です。それが、乳房の上下にあてがわれて、両端をボルトで締め付けていきます。ぎりぎりと鉄枷が乳房に食い込んできます。
「むううう……」
すごく痛いのですが、淫魔のペニスに針を刺されることを思えば、ちょっと強く揉まれているくらいでしかないです。
乳房の根元をきつく縊られて、中ほどから先の部分が、針で刺せば破裂しそうなくらいに膨れました。
「淫魔が潜んでいると仮定して、じわじわと追い込んでいきましょう」
あなたたちも経験しなさいと――教区長様は三人の立会人と父様に針を持たせました。淫魔のペニスに使ったのより、ずっと太くて長い針です。
最初は父様です。昨日までは、いえ、この瞬間にも敬愛している父様に拷問される/違います/検査していただくのです。これは形を変えた祝福だと……思うようにします。
父様が左の乳房をわしづかみにして、ますますぱんぱんに張り詰めさせます。鉄枷で縊られているすれすれのところに針が突き立てられました。
「ん゙む゙うううう……!」
三十分前の私だったら、口をふさがれていなかったら、喉から血を吐くほどに絶叫していたでしょう。でも、淫魔のペニスへの針刺しを体験してしまっては、颶風に対する強風でしかありません。ですが、乳房の中をぐずぐずと針が突き進んでいく感触は、蜈蚣に食い荒らされるみたいな気色悪さです。
ぷつっと、針が乳房を突き抜けました。針を残したまま、父様が引き下がりました。
父様と反対の側に町長のディーラーさんが立ちました。右の乳房を、父様の倍以上の力で握り潰します。そして、三倍くらいの勢いで、一気に乳房を貫きました。
「も゙お゙お゙おおおっ……!」
二人を比べれば、やはり父様の刺し方には、娘へのいたわりがあふれています。
三人目は銀行頭取のギャレットさんです。先の二人とは違って、左の乳房を上から下へ縦に刺し通しました。
最後が保安官のハーベイさんです。父様よりも若い三十二歳です。いえ、意味はありません。修道女に準じた生涯を送ると決めているのですから、どんなに若くても恋愛対象にはなりません。ボブさんは、家族に次ぐ親密さですから……こんなときに、なにを浮ついたことを考えているのでしょう。でも、若い男性(といっても、私の倍以上ですし、父様と三つしか違いません)に乳房をつまかれるのは、四十や五十の男性にそうされるのとでは、感じ方が違います。
などと、あれこれ考えてしまうのは。ハーベイさんが乳房をつかんだきり、固まっているからです。
「どうしても、やらなきゃ駄目ですかね?」
やってください。どんなに痛くてつらくても、淫魔を追い祓うためです。
「この娘が魔女だとしたら、町にとんでもない災厄をもたらします。治安を預かる者の義務でもあるのです」
教区長様に優しく強く諭されて、ハーベイさんも覚悟を決めたようです。
「む゙ゔうう、うううう、ゔゔうう……」
ためらいながらゆっくり突き刺すので、四人のうちではいちばん痛かったです。
「よろしい。とどめは私がとどめを刺しましょう」
教区長様が、それまでのよりは短い針を持って、私の横に立ちました。淫魔のペニスへの仕打ちから、その針がどんなふうに刺されるか予測できてしまって、口の中の布を強く噛み締めました。
それでも、淫魔のペニスに垂直に突き立てられるよりは痛くないでしょう。せいぜい嵐くらいではないかしら。それよりも、左の乳首を正面から突き刺されたら、心臓に達するのではないかしら。そちらが心配でした。
同じような描写の繰り返しになりますから端折りますけど。絶叫は詰め物に吸い込まれて、乳房が爆発したと錯覚するまでの激痛ではありませんでした。
今度こそ終わった。魔女の嫌疑は晴れたと喜んだのですが。教区長様はとても慎重なお方でした。
「狡猾な淫魔は、目の届きにくい部分に印を刻むものです。フェビアンヌ。この娘の腋と股間の縮れ毛を剃り落としてやりなさい」
「…………」
私は、ただ諦めるだけでした。
毛を剃られてしまうなんて、とても羞ずかしいことです。でも、女性器の中まで晒しているのですから、それよりも羞ずかしいなんてことはありません。それに、剃られた毛はじきに元に戻ります。とにかく。徹底して魔女の嫌疑を晴らしていただくことだけを願います。
父様は髭を蓄えてらっしゃいますが、もちろんお手入れは(つるつるの顔よりも入念に)必要です。父様の泡立て皿と剃刀が用意されました。いつもは父様の顎に泡を塗っている刷毛で私の股間を撫でられると考えると、股間にリンパ液がにじみ出てきます。それとも、淫らな汁なのでしょうか。
まず股間が真っ白に塗りつぶされて、剃刀が当てられました。
ぞりっ、ぞりっ……縮れ毛が剃られていくかすかな感触が肌を震わせます。くすぐったくて気持ちいいです。こんな楽しみが毎朝あるなんて、男の人って得だな。そんなことまで考えてしまいました。
立会人の皆様も、私と同じように手持無沙汰なのでしょう。私が剃られていくのを見物しながら、とりとめのない雑談をしています。
「あらかた剃ってしまったな」
「恥毛を剃ってしまうと、ますます幼く見えるな。さすがに良心がとがめるぞ」
「いや。使えるなら、女は若ければ若いほどよろしい」
耳をふさぎたくなりますが、それも出来ません。
「剃り残しが無いようにしなさい。ああ、アヌスのまわりは後回しです」
教区長様が、あからさまな指示をなさいます。
「これからは百マイルも遠征せずにすみますな」
「ストーンのやつ、石っころだけあって融通が利かん」
「ティムの餓鬼なんか、ケツ穴に突っ込みかけただけで出入禁止を食らったからな」
「俺は宣教師スタイルだけで満足ですぜ。女の顔が見えなきゃ、つまらんでしょうが」
意味が分かりませんが、ストーンさんというのはサロンの経営者です。ケツ穴がどうこうというのは、私が得た最新の知見に照らせば、ソドムの罪を……市長様ともあろうお方が、そんなことを望んでらっしゃるなんて、信じられません。私の聞き違いです。
「ホステスが若すぎるビッチ一匹では、ちと物足りんが……」
「いや、あの乳はじゅうぶんに鞣し甲斐がある。若いのだから、わしらの好みに調教できるというものだ」
私としても、彼らの冗談話を本気で解読するつもりはありません。それでも、聞き耳を立てているうちに、腋毛まで一本残さずつるつるに剃り上げられてしまいました。
そして、今度はピンポイントではなく雨が平野に降り注ぐように、下腹部と腋を何十本もの針で突き刺されたのです。時間は掛かりましたけれど、淫魔のペニスや乳首に比べたら微風でしかありませんでした。
「それでは、最後の一か所を調べるとしましょう」
教区長様のお言葉を、今の私は理解できます。
私を引き伸ばしていた鎖がわずかに緩められたした。父様とベルケン牧師様とが手足の木枷を持ち上げて、私を俯せにしました。改めて鎖が巻き縮められます。
お尻の肉に熊手のような道具が食らいついて、左右に引っ張られます。そこにひんやりとした空気が触れて、アヌスを剥き出しにされたのが分かりました。
フェビアンヌさんがお尻を覗き込んで――そこの産毛(縮れ毛なんか生えていません)を剃りました。
ファビエンヌさんが下がると、六人の男性が私のお尻を取り囲みました。皆さん、長い針を一本ずつ持っています。
「では、私から」
教区長様の声と同時に――ぷつっと針がアヌスに突き刺されました。
「む゙も゙お゙お゙お゙お゙っ……!」
ラビアに刺されるより、よほど厳しい激痛でした。
ぷつっ、ぷつっ、ぷつっ……続けざまに突き刺されて、そのたびに私はくぐもった悲鳴を上げさせられました。
「ふむ。ここにも印は刻まれていないようです」
そのお言葉を聞きながら、ふっと疑問が生じました。
乳房を調べるときは、淫魔が奥深くへ逃げ込まないようにと、鉄枷で縊られました。でも、ラビアやアヌスを調べるときにはそんな処置は取れません。それで構わないのでしょうか。でも、教区長様に尋ねる勇気はありません。淫魔の逃げ道を封じるために、どんな恐ろしい処置を追加されるか分かりませんから。
木枷を外す前に、ファビエンヌさんが傷の手当てをしてくれました。アルコール消毒をしてヨードチンキを塗るというより針で開けられた穴に擦り込むという、乱暴な手当てです。針で刺されるよりは痛くありませんが、痛みが何分も続くし、乳房も女性器もアヌスも同時に痛いので、とろ火で焼かれるようなつらさでした。
これで、私の魔女嫌疑は晴れたと安堵したのですが。
「念には念を入れて調べましょう。せっかく、その用意もしてあることですし」
まさか、ここにある恐ろしい拷問毒具をすべて私に使うおつもりなのでしょうか。「準備をし過ぎるということは無い」という格言はありますが、「それをすべて活用しろ」とは言いません。
それでも、私は抗議をできません。魔女審問を拒否すれば、それが魔女である何よりの証拠にされます。
「魔女は自然に逆らった存在です。水に沈めようとしても、水に拒まれるのです」
あの大きな桶に水を張って、私を沈めて確かめるのだとおっしゃいます。でも。水に沈めば魔女でないという証しを立てられるのでしょうが、沈んでしまえば溺れ死にます。
父様も加わっているのです。ぎりぎりのところで引き上げてもらえますよね?
水に浸けるといっても、大桶は空です。直径二フィート半、深さ三フィートもの桶に水を満たすには何時間も掛かります。せめて、その間は休ませてもらえる――なんていうのは、甘い考えでした。裏の井戸から水を汲んでくるのは、私ひとりの仕事にされてしまいました。
「みずからの潔白を証明するための仕事です」
元気なときでも、気が遠くなるような重労働です。それを、急所ばかり何十本もの針を突き立てられた満身創痍の肉体でやり遂げなければならないのです。
全裸のままで働くようにと、教区長様はおっしゃいます。それどころか。
「礼拝堂から外へ出れば、それだけ淫魔の付け込む隙も増えるのではないでしょうか」
教区長様から教えていただいた魔封じをしておきましょうと、父様が提案しました。日曜礼拝のときのあれは、やはり父様がご自分で考えたものではなかったのです。
乳首を針金の輪で締め付けて乳房もぐるぐる巻きにして、針金の束で股間を封印したうえで、淫魔のペニスからは十字架を吊り下げる。ただ歩くだけでも、自分で自分を痛めつけるに等しいというのに、その姿で水を汲んで運ぶのは――ほとんど不可能事です。けれど、教区長様は大きく頷かれたのです。
「おお、そうでしたね。あなたの娘さんを案じる気持ちは良く分かります」
私も、父様と教区長様に感謝しないといけないのでしょうが……どうしても、その気になれませんでした。それなのに、厳重に身体を締め付けられ突起を虐められると……頭に靄が掛かって、腰の奥が熱く潤ってしまうのです。
何も知らない信者の皆様に見られる懸念が無いのですし、全裸でお淑やかもあったものではありませんけれど、がに股にならないよう気を付けて、胸を張って仕事をしました。だって、そのほうが刺激が強くて/なんでもありません。
二ガロンのバケツを同時に二つ持って、裏庭と礼拝堂を何十回と往復しました。十字架を膝で蹴りながら歩きました。最初のうちは痛いのがずっと強いのですが、その中でかすかな快感がだんだんと蓄積していきます。水を汲んでいる間は股間の揺れが止まっていますが、腋を締めてポンプのレバーを動かすと乳房がこねくられて、やはり一定した苦痛の中に快感が蓄積していきます。
十往復くらいまでは回数を覚えていましたが、あとは霞の中を雲を踏みながら歩いているみたいになって――皆様が夕食をとっている間も、私は働き詰めでした。お昼も食べていないのに、ちっとも空腹は感じませんでした。というか、淫魔に憑りつかれようとしている罪深い娘には、人並みに食事をすることなど許されていない。そんなふうにも思うのです。
水は大桶一杯に満たすのではなく、六インチ手前で止めるように言われていました。それでも、二十往復以上です。自分自身を拷問に/ではないです!/魔女審問に掛けていただくための準備が調ったときには、精根尽き果てて床に伏してしまいました。俯せになって自分の体重で乳房をこねくり乳首を虐め、十字架を太腿で押さえて腰をくねらせて……桃色の霞が薄れないようにしていました。これは魔女審問のための準備なのですから、淫魔の囁きにそそのかされた自涜行為ではありません。神様に祝福していただいているのです。なにかとんでもない考え違いをしているのかなとも思いましたけれど、三匹の鶏と二匹の牛で脚が何本あるかさえ計算できない状態ですから、そんな神学上の問題を考えられるわけがありません。
わずか数十分でしたが――ある意味で、これまでの生涯の中でいちばん幸せな時間を過ごしていたのではないでしょうか。苦痛と快感とがせめぎ合って、互いが互いを押し上げていくような恍惚。それが、決して淫魔にそそのかされたものではなく、神様に与えていただいているという、心の充足。
その一方で。なにかがひどく間違っているという予感もありました。
もしや、私ではなく……教区長様や父様こそが悪魔に魅入られて、私を生贄に捧げようとしているのではないだろうかという疑問。もちろん、私よりもずっと神様のおそばに居る人たちが悪魔の手先であるなんて、馬鹿げた妄想です。そんな疑いを持つことこそ、私が淫魔に憑りつかれよとしている証拠ではないでしょうか。
「床に身体を擦りつけてオナニーとは、淫魔に支配された魔女の嫌疑がますます深まったな」
教区長様の声で、私は我に還りました。
「しかし、そうではない可能性もあります。どうか、娘のためにも厳正に取り調べてください」
「言われるまでもありません。我が教区に魔女が現われるなど、あってはならないことです。この娘が魔女でないことを皆で祈りましょう。アーメン」
起き上がって床にへたり込んでいる私に向かって、教区長様が十字を切ってくださいました。そして父様の手で、天井の滑車から垂れている太い鎖が、揃えた両足に巻きつけられました。
そのまま立たされて。短い鎖でつながれた手錠が股間に通されました。私は右手を前で拘束され、左手は後ろです。手を動かせば、鎖がスリットに食い込んで――ごつごつした快感を強いられます。
立会人の皆様が、鎖の端を引っ張ります。そのままだと転んでしまうので、自発的に床に仰臥しました。脚が吊り上げられ、腰が持ち上がって――身体が宙に浮きました。水を張った大桶の真上です。
じわじわと吊り下げられていきます。ほつれたお下げが水に浸かり、目も水面下に沈もうとしています。そんなことをしても、せいぜい一分かそこらの違いでしょうが、急いで深呼吸をして肺に空気を溜めます。
すうっと顔が水に没して、肩から乳房……股間に水の冷たさを感じた直後に、頭が底に着きました。そこでは止まらずに鎖が緩められていって、脚が手前へ折れていって、桶の縁に掛かりました。それを、誰かが押し戻して――鎖の重みに負けてつま先が沈んでいきます。二つに折り畳まれた姿勢で、私の身体は完全に水没しました。
苦しい。顔が上下逆さになっているせいでしょう。息をしていなくても、鼻の中に水が入ってきます。くしゃみが出そうになるので、わずかずつ息を吐いて水抜きをします。
まさか、最初に懸念したように、水から浮かび上がって魔女の正体を現わすか溺れ死んで潔白を証すかの二者択一ではないでしょうね。
そんなはずは絶対にありません。教区長様にはそこまでの信頼を置けませんけれど、父様が娘を見殺しにする、どころか積極的に危害を加えるなんて、絶対にあり得ません。
それでも……これまでと違って、直截に命の危険を感じます。恐怖で急速に息苦しくなりました。
引き上げてもらえるまで堪え抜く。それしか、私に出来ることはありません。せいぜい、あと三十秒で引き上げてもらえるでしょう。
一、二、三、四、五……
……二十八、二十九、三十!
まだ気配もありません。あと三十秒……も、息が続きそうにないです。それでも、引き上げてもらえると信じます。
……もう、駄目。
苦し紛れに息を吐きました。ぼごごっと音を立てて、大きな泡が沈んでいきます。間違えました。頭が下になっています。泡は水面へ向かって浮かび上がっています。
息を吐き出せば、どうしても吸いたくなります。それを渾身の気力で我慢します。水が肺へ入ってしまえば溺れ死にます。
痛い……?!
断末魔の痙攣でしょうか。身体が海老のように跳ねて、桶にぶつかったのです。
お願いです、神様。こんなのは厭です!
身体の芯まで苦しいだけで、救いとなる快感がひと欠けらもありません。ああ、こんなことを考えるのも、私の身体に淫魔が巣食っているせいなのでしょうか。
身体の下のほうできらきら光っている水面が、すうっと暗くなっていきます。頭に霞が――真っ黒な霞が掛かっていきます。
神様の下に召されるのでしょうか。もしも、神様にまで魔女だと断罪されたら……
がくんと、脚に衝撃が加わりました。誰かの手が、いえ複数の手が、私の身体を押したり脚を伸ばしたりしています。ぐうっと脚が引っ張られて。
「ぶはあっ……げふっ……!」
一気に空中へ引き上げられて、私は咳き込みながら空気を貪りました。
冷たくて甘い空気。全身に酸素が沁み通る感覚が、快感を超越して生きている実感です。
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これで、今夜はおしまい――ではありません。尺が長くなったので、章を追加して『三穴の魔封じ』が続きます。
詳しくは次回ですが、こんな感じです。清めていただくのですから、喜んで自発的に――です。

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