Progress Report 1:公女巡虐
今回も、すべて掲載するけど、冒頭とアカルイミニマムは残して、途中は「消費期限有り」の順次非公開でいきます。
その暴投。『巨人の星』じゃあるまいし。
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育まれた悦虐
「エレナお嬢様、就寝の時刻でございます」
教会の鐘が鳴るとすぐに、侍女のジーナが告げました。
私は無言で立ち上がります。ジーナが衣服を脱がせてくれて、私は腰布一枚の姿になります。亜麻布ですが、形はひどく変わっています。股間を隠す逆三角形の布と三本の紐だけ。下生えこそ隠せますが、尻は剥き出しです。これは、男に身体を売る女が「仕事」のとき身に着ける下着だと、お継母様はおっしゃいました。このような破廉恥な下着を身に着けることで、己れの淫乱な性格を常に意識していなさいと。
私の性格を矯正しようとしての処置なのですが、どう考えても逆効果です。
私は寝台に仰臥して、手足をX字形に広げます。手首と足首そして膝の上に、寝台の隅から伸びた鎖につながれた枷が嵌められていきます。枷の内側にはベルベットが張られていますから、夜毎に拘束されても肌に痕は残りません。もちろん、枷を外そうとして私が藻掻いたりしなければ――ですが。
私を拘束し終えるとジーナは、腰布というよりも股隠しの布の紐をほどいて、女性器を剥き出しにしました。腰布も布団も、身体に熱がこもって淫らな気分を誘われるから、この姿で寝なければならないのです。冬には、毛布を掛けてもらえますけど、今はまだ初秋です。
すべての処置を終えると、ジーナは慇懃に挨拶をします。
「では、お嬢様。お休みなさいませ」
ランプの明かりを消して、ジーナが退出します。
月明かりの部屋に独り、寝返りも打てず仰臥して。すぐには寝付けるものではありません。日常生活では、むしろお父様よりも身近な絶対的支配者であるお継母様の指図で、このような羞ずかしい形にされているのだと思うと……お継母様への反感が胸にわだかまっているにも係わらず、腰の奥にじれったい感覚が募っていきます。
侍女の監視の目を盗んで自らを慰めたのが十日前。割れ目の上端に隠れている実核が、刺激を求めて硬く凝っています。
そう――そういう悪戯が出来ないようにと、私は夜毎に四肢を拘束されているのです。
私が浅墓でした。でも、こんな気持ちの良いことは、妹のベルタにも教えてあげたくて……まさかお継母様に告げ口されるなんて。お継母様が、あれほどにお怒りになるなんて。
事の発端は、ちょうど一年前でした。お継母様がお嫁入りのときに持参された宝石箱を、侍女の一人が盗んで売り払ったのです。ニナは逃亡を図りましたが、悪運尽きて捕らえられ、処刑されることになりました。
換金すれば千銀貨(グロッツ)以上にもなる財宝を盗んだのです。首切りか、火刑に処されても当然です。けれどお継母様は慈悲の心を発露なさって、彼女を助命したばかりか賠償の機会さえ与えられたのです。もちろん、まったくの放免ではありません。
私たちラメーズ伯爵家の者も、処罰に立ち会いました。
彼女は短い腰布一枚の裸身にされて、首と両手を一枚の板枷で拘束されました。そんな羞ずかしい不名誉な姿で引き回されて、街を一周するのです。
「ああ、お赦しください。せめて、裸なりとも隠させてください」
ニナは泣いて懇願しましたが、返事は痛烈な鞭でした。ニナは悲鳴を上げ、それから泣きじゃくりながら、縄に曳かれて歩き始めました。
裸になえうという行為は、どれ自体が神様の摂理に反する行為です。裸身を他人の目に晒すなど、殿方でさえ羞恥を覚えます。まして、ニナは未婚の乙女。もしも選択が許されるなら、裸で引き回されるよりは着衣のまま首を切られるほうを選ぶでしょう。
その、死にもまさる恥辱の光景を眺めていて、私は胸がふさがりました。同情でも憐憫でもありません。ニナの拘束された裸身、数条の鞭痕に彩られた裸身。それを美しいと思ったのです。
あらかじめ布告されていたので、道筋には大勢の見物人が集まっていました。罪人の引き回しには付き物の野次も飛ばず、彼ら(数は少ないですが、女性も居ました)は固唾を呑んで、ニナの裸身を見つめています。無数の視線に突き刺されて、ニナの全身が薄桃色に染まっていきます。
それが、いっそう美しく見えました。私も、あんなふうに引き回されてみたい。自分がそう思っていることに、不意に気づきました。もちろん、伯爵家令嬢たる私は――お父様が謀反を企てでもしない限りは、そんな目に遭わされることはないでしょうけれど。
街を一周したニナは、広場で晒し者にされました。
処刑台上には二本の柱が立てられています。そこへ木枷が載せられて、太い釘で打ち付けられました。ニナは、上体を不自然に折り曲げた姿勢です。さらに、両脚を無理強いに開かせられて、柱の根元に縛り付けられました。滑稽なほど後ろに突き出された尻。重みで垂れ下がった乳房。
そして。羞恥の根源をかろうじて隠していた布片すら剥ぎ取られたのです。女にとって、これ以上は無い辱め。けれどそれは、処罰の下準備でしかなかったのです。
彼女には、五十発の鞭が与えられました。尻や背中はもちろん、下から掬い上げるようにして乳房も打ち据えられました。どころか。ニナの真後ろから鞭を跳ね上げて、股間まで打たれたのです。
手加減はされていたのでしょう。肌に赤い条痕は刻まれるものの、派手な音の割には、肌が裂けて流血したりはしませんでした。それでも、ニナは大声で泣き叫びました。
わたしは、もう……ニナから目を放せませんでした。いいえ。あそこに磔けられているのが自分だったらと――そんな妄想に耽っていたのです。
鞭打ちが終わった後も、ニナは赦されません。処刑台の四隅を守っていた兵隊が、これ見よがしに散っていきます。
「これより一週間、この女を晒し者にする。憐れんで水や食べ物を与えても、あるいは他の事をしても、咎めたりはせぬ。また、夜に篝火は焚かぬ」
兵士長が大声で布令ました。ざわめきが見物人の間に広がります。夜陰に紛れて良からぬことをしても咎めない。いえ、良からぬことをしろと、けしかけているも同然です。
「一週間後になお、この女が生きていれば、広場の片隅に小屋を設けて住まわせるものとする。五十銅貨(ラーメ)を払えば、誰でも小屋を訪れて構わぬ」
当時、私はすでに子を産める年齢でした。男女がひとつ寝台で何をするか、およその知識としては知っています。つまり、そういうことです。それにしても――千グロッツは五十万ラーメです。お母様の宝石を償うには、一万回以上のそういうことをしなければならないのです。衣食住の費えを考えれば、何万回になることでしょう。ひと晩に何回くらい、女はそういうことを受け入れられるのかまでは知りませんけれど、十回としても十年以上です。
十年以上も、最下級の娼婦、いえ奴隷として扱われる。それを思うと、腰の奥が疼いてしまいました。
――家に戻っても、妖しい興奮は続いていました。それをどう処理して良いものか、見当もつかないまま夜になって。腰のもやもやをなんとかしたいと思って、両脚を突っ張り腿を引き締めたのです。
「あっ……?!」
声が出てしまいました。もやもやしている、もうちょっと上のあたりに稲妻が奔ったのです。神様の怒りではありません。もっと繊細で甘美な……これまでに感じたことのない純粋な快感でした。二度三度と繰り返してみました。同じように稲妻が奔ります。だんだん太くなって。
これはどういうことなのでしょうか。私は、はしたなくも寝間着の中に手を入れて、稲妻が奔ったと思しき個所を探ってみました。
そうして、見つけてしまったのです。女の子の割れ目が上端で閉じ合わさっているあたりに、小さな疣のようなものがありました。そこに指を触れると、もっともっと太くて甘美な稲妻が奔ります。雷鳴が轟きます。
私は好奇心と快感に任せて、その疣をいろんなふうに弄りました。小さな疣の中には、もっと小さな実核があります。それが皮膚に包まれているのです。皮だけを摘まむと、きゅるんと実核が動きます。
「ああっ……ああああっ……?!」
本能的に、これは貪ってはいけない快感だと悟りました。声を殺すために、敷布を咥えました。そして、さらに弄ります。
弄っているうちに、硬く尖ってきます。皮を剥き下げると実核が露出します。それを直に触ると……甘美な稲妻と同時に、鋭い痛みが奔りました。でも、それがスパイスとなって、さらに快楽が増すのです。
弄っているうちに、それでも物足りなくなって。胸につかえている感情もどうにかしたくて――左手で乳首も弄っていました。そこにも稲妻が奔ります。
股間の疣から発する稲妻が背骨を駆け登って、乳首から乳房全体に広がる稲妻とひとつになって……
「むうううっ……んんん!」
身体が宙に投げ出されたような感覚。私は、幼い絶頂を知ったのです。
――翌朝。私は満ち足りた目覚めを迎えました。と同時に、昨夜の所業は背徳に通じるのではないかという惧れも生じました。
できれば共犯者を作りたいという心理と。こんな気持ち良いことを独り占めにしてはいけないという気持ちと。なんとなく疎遠な妹と仲良くなりたいという想いと。それらが綯い合わさって。妹のベルタに教えてあげたのです。
「ふうん。じゃあ、今夜にでも確かめてみようかな」
無邪気な返事でした。無邪気過ぎて――このことをお継母様(ベルタにとっては産みの母親です)に告げたのです。
「エレナ! なんという恥知らずな行ないに耽っているのですか」
お継母様はこれまでに見せたことのない形相で、私を叱りました。後ろにはベルタを連れています。さらに、私の侍女のジーナとエルザも呼び付けました。
「おまえのしたことは、神様の教えに背くことです。厳しく罰さねばなりません」
お継母様は、私に衣服をすべて、下着まで含めて脱ぐように命令なさいました。
独りで裸になるのさえ恥ずかしいのに、継母様と妹、さらに侍女の眼の前で……
「お継母様、ごめんなさい。もう決して誤ちは繰り返しません。赦してください」
ぱしん!
お継母様は、手に持ってらした乗馬鞭で、私が前で組み合わせていた手をお叩きになりました。ごく軽い叩き方でしたし、婦人用の軽い乗馬鞭です。でも、この十三年間で初めて叩かれたのです。
私は驚愕とともに、お継母様の怒り、己れが犯した罪の重さに打ちひしがれました。私は、おろおろしながら衣服を自分の手で脱ぐしかありませんでした。侍女も手伝ってはくれません。
「まあ、もう生えているのね。色気づくのも無理はないわね」
前の年に初潮を迎えましたが、そのしばらく前から、下腹部の産毛が次第に縮れてきていました。髪の色と同じ淡い金色ですが、それでも肌に紛れたりはしません。それはそれで羞ずかしいことでもあり、いつでも結婚できる身体になったのだという誇らしさもありましたけれど。
お継母様の言葉で、昨夜の悪戯は男女の交わりと、どこかでつながっているのだと知りました。
お継母様は、私を寝台に仰臥させて、脚を開くように命じられました。
いくらなんでも、そんなはしたない真似はできません。赦してくださいと懇願すると、二人の侍女に命じて、私の脚を強引に開かせました。私付きの侍女でもコルレアーニ家の奉公人であることに変わりはありません。そして、屋敷内の一切は女主人が取り仕切って、お父様でも滅多なことでは口を差し挟めません。
お継母様は寝台の横に立って、乗馬鞭先で私の股間を――疣の部分をつつきます。
「ふん。おまえのこれは大きいね。淫乱の証拠だわ」
罵られているのに、鞭の先は冷たくて硬いのに、稲妻が奔ってしまいます。声は抑えても、腰がひくつきます。
「こんな目に遭っても、まだ淫らなことを考えているのね。反省なさい!」
声と同時に鞭が引かれて、股間に打ち下ろされました。
ひゅっ、パシン!
「きゃあああっ……!」
神様の怒りの稲妻です。股間を真っ二つに切り裂かれたような鋭い痛みでした。
「あうううう……」
でも。痛みが薄れるにつれて、腰の奥に甘い痺れが湧いてきました。
ひゅっ、パシン!
「きゃああっ……!」
ひゅんっ、バッチイン!
「いぎゃあああっ!」
それまでの二発とは比べ物にならない強い打擲に、私は絶叫していました。
お継母様は、冷ややかに私を見下ろしています。
「これで、少しは懲りたことでしょう」
その場は赦してもらえましたが、お仕置はそれで終わりではありませんでした。
その日から、朝から晩まで、必ず侍女のひとりが私の部屋で待機――実は監視するように取り計らわれました。そして夜も。寝ているときに悪戯ができないようにと、両手を布団の上に出して、手首を絹のハンカチで括られたのです。
でも、禁止されればされるほど、いけないことをしてみたくなります。それに……妹の見ている眼の前で、全裸にされて侍女に押さえ付けられて、お継母様に鞭打たれるなんて、ニナほどではないにしても屈辱ですし。鞭の痛みを追って湧いてくる甘美は、自分でする悪戯よりも、毒を含んでいるだけに濃厚です。
三日ほどはいい子にしていましたけれど。ハンカチで括られているだけですから、その気になればほどけます。でも、自分で結ぶのは難しいです。
両手が自由なまま寝ているところを侍女に見つかってしまい、今度は五発の鞭でした。手首は縄で縛られるようになりました。
それでも。手を縛られたままでも、寝間着の下に(両手もろともに)入れられます。細かな指遣いは難しくても、刺激はできます。もどかしさが、むしろスパイスにもなりました。
これも、あっさりと見破られました。お継母様に指先の臭いを嗅がれたのです。
鞭は七発でした。ひと打ちごとが、前よりも厳しいものでした。私は泣き叫びましたが、これまでとは違って、悪戯をやめるとは誓いませんでした。絶対にやめられないと悟ったからです。
そうして、とうとう……両手を広げた頭の上で鉄枷につながれてしまいました。
でも、まだ脚が残っています。最初に快感を感じたときのように、両脚を突っ張って腿をこすり合わせて。指で弄るような深い快感は得られませんが、軽く宙に浮くくらいにまではなります。
これも、数日で発覚しました。腰布に、言い逃れようのない染みが着いているのですから。
お継母様は、乗馬鞭をお使いになりませんでした。細い木の枝で、私の股間を打ち据えたのです。乗馬鞭より痛くないと不満に思ったのですが、とんでもない考え違いでした。乗馬鞭の先端は馬の肌を傷つけないように配慮されていますが、木の枝にはそんな工夫がありません。鋭く尖った先端は股間の疣を切り裂き(は、しませんでしたが)割れ目の奥にまで届きました。
そんなことが繰り返されて――半年ほどで、全裸を寝台でX字形に磔けられるという、今の形に落ち着いたのです。これでは、さすがに何もできません。昼間に、同じ部屋で見張っている侍女の目を盗んで、ほんのちょっとだけ指で弄って、それで我慢するしかありません。
ですけれど。自分で自分を弄って快感を得たいのか、それをお継母様に見つかって厳しくお仕置されて激痛とその後に続く(指で弄るよりもささやかですけれど、胸の奥に沁み込みます)快感を得たいのか、どちらなのか分からなくなってしまいました。というのも――半年前にお継母様が聖エウフェミア女子修道院にひと月ほど滞在されていたときは、悪戯をしたいという欲求は、そんなに起こらなかったのです。
聖エウフェミア女子修道院というのは、王都の近郊にある小さな施設ですが、王族や諸侯の庇護を受けています。お継母様は、そこの出身です。もちろん、修道女がいきなり結婚はできませんから、還俗してクリスタロ侯爵の養女となってから、お父様と結婚なさったのです。
お継母様がいわば里帰りされたのは、お父様の名代として、何かの式典に参列なさるため――ということになっていますが、そうでなかったのだろうと推測しています。
お継母様は、私を修道院へ入れようとなさっているのです。こんな淫らな娘は、どこへ嫁いでも伯爵家の名を貶める。ベルタの嫁ぎ先のブロンゾ子爵家に聞こえでもしたら破談になりかねないと――面と向かって私に言い放つのです。
まともな貴族の娘なら、十代の半ばで結婚するのが普通です。なのに、私には婚約者すら居ないのです。お継母様のせいです。
お継母様の思い通りになんかなりたくないです。修道院だなんて、絶対に厭です。清貧な生活に甘んじるのは構いませんが、神様の花嫁なんて真っ平です。だって、神様は生身の女性を肉体的に可愛がってはくださいませんから。
それくらいなら、お父様より年上どころか私の年齢の四倍もある(半世紀近い隔たりです)お爺様や、私の体重の三倍もある醜男と政略結婚させられるほうが、悲惨なだけに、悲劇の主人公でいられます。あ、数字が具体的なのは――そういう人物が実在しているからです。
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やっぱりですね。初っ端から読者を惹きつけるということは意識しております。ので、いきなり全裸ベッド磔です。
あ、今回は「地中海の東端に突き出た半島」が舞台ですので、そう簡単には英語を使いません。固有名詞はともかく、普通名詞では横文字を極力避けます。
まあ。人名とか架空の地名とかで、見当はつくでしょうけどね。
初っ端の回想シーンは、縄吉さんのフォトコラでも、特にお気に入りのやつの西洋バージョンです。この画像には、ブログ記事でも体感型バーチャル性活(つまりは自家発電)でも、何度もお世話になっております。

実際のところ、10/22現在は、第3章執筆中です。PLOTでは「娼婦への折檻」でしたが、尺が長くなるので、前半を「娼館での生活」に分割しました。それは、いずれ股の奇怪に。
その暴投。『巨人の星』じゃあるまいし。
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育まれた悦虐
「エレナお嬢様、就寝の時刻でございます」
教会の鐘が鳴るとすぐに、侍女のジーナが告げました。
私は無言で立ち上がります。ジーナが衣服を脱がせてくれて、私は腰布一枚の姿になります。亜麻布ですが、形はひどく変わっています。股間を隠す逆三角形の布と三本の紐だけ。下生えこそ隠せますが、尻は剥き出しです。これは、男に身体を売る女が「仕事」のとき身に着ける下着だと、お継母様はおっしゃいました。このような破廉恥な下着を身に着けることで、己れの淫乱な性格を常に意識していなさいと。
私の性格を矯正しようとしての処置なのですが、どう考えても逆効果です。
私は寝台に仰臥して、手足をX字形に広げます。手首と足首そして膝の上に、寝台の隅から伸びた鎖につながれた枷が嵌められていきます。枷の内側にはベルベットが張られていますから、夜毎に拘束されても肌に痕は残りません。もちろん、枷を外そうとして私が藻掻いたりしなければ――ですが。
私を拘束し終えるとジーナは、腰布というよりも股隠しの布の紐をほどいて、女性器を剥き出しにしました。腰布も布団も、身体に熱がこもって淫らな気分を誘われるから、この姿で寝なければならないのです。冬には、毛布を掛けてもらえますけど、今はまだ初秋です。
すべての処置を終えると、ジーナは慇懃に挨拶をします。
「では、お嬢様。お休みなさいませ」
ランプの明かりを消して、ジーナが退出します。
月明かりの部屋に独り、寝返りも打てず仰臥して。すぐには寝付けるものではありません。日常生活では、むしろお父様よりも身近な絶対的支配者であるお継母様の指図で、このような羞ずかしい形にされているのだと思うと……お継母様への反感が胸にわだかまっているにも係わらず、腰の奥にじれったい感覚が募っていきます。
侍女の監視の目を盗んで自らを慰めたのが十日前。割れ目の上端に隠れている実核が、刺激を求めて硬く凝っています。
そう――そういう悪戯が出来ないようにと、私は夜毎に四肢を拘束されているのです。
私が浅墓でした。でも、こんな気持ちの良いことは、妹のベルタにも教えてあげたくて……まさかお継母様に告げ口されるなんて。お継母様が、あれほどにお怒りになるなんて。
事の発端は、ちょうど一年前でした。お継母様がお嫁入りのときに持参された宝石箱を、侍女の一人が盗んで売り払ったのです。ニナは逃亡を図りましたが、悪運尽きて捕らえられ、処刑されることになりました。
換金すれば千銀貨(グロッツ)以上にもなる財宝を盗んだのです。首切りか、火刑に処されても当然です。けれどお継母様は慈悲の心を発露なさって、彼女を助命したばかりか賠償の機会さえ与えられたのです。もちろん、まったくの放免ではありません。
私たちラメーズ伯爵家の者も、処罰に立ち会いました。
彼女は短い腰布一枚の裸身にされて、首と両手を一枚の板枷で拘束されました。そんな羞ずかしい不名誉な姿で引き回されて、街を一周するのです。
「ああ、お赦しください。せめて、裸なりとも隠させてください」
ニナは泣いて懇願しましたが、返事は痛烈な鞭でした。ニナは悲鳴を上げ、それから泣きじゃくりながら、縄に曳かれて歩き始めました。
裸になえうという行為は、どれ自体が神様の摂理に反する行為です。裸身を他人の目に晒すなど、殿方でさえ羞恥を覚えます。まして、ニナは未婚の乙女。もしも選択が許されるなら、裸で引き回されるよりは着衣のまま首を切られるほうを選ぶでしょう。
その、死にもまさる恥辱の光景を眺めていて、私は胸がふさがりました。同情でも憐憫でもありません。ニナの拘束された裸身、数条の鞭痕に彩られた裸身。それを美しいと思ったのです。
あらかじめ布告されていたので、道筋には大勢の見物人が集まっていました。罪人の引き回しには付き物の野次も飛ばず、彼ら(数は少ないですが、女性も居ました)は固唾を呑んで、ニナの裸身を見つめています。無数の視線に突き刺されて、ニナの全身が薄桃色に染まっていきます。
それが、いっそう美しく見えました。私も、あんなふうに引き回されてみたい。自分がそう思っていることに、不意に気づきました。もちろん、伯爵家令嬢たる私は――お父様が謀反を企てでもしない限りは、そんな目に遭わされることはないでしょうけれど。
街を一周したニナは、広場で晒し者にされました。
処刑台上には二本の柱が立てられています。そこへ木枷が載せられて、太い釘で打ち付けられました。ニナは、上体を不自然に折り曲げた姿勢です。さらに、両脚を無理強いに開かせられて、柱の根元に縛り付けられました。滑稽なほど後ろに突き出された尻。重みで垂れ下がった乳房。
そして。羞恥の根源をかろうじて隠していた布片すら剥ぎ取られたのです。女にとって、これ以上は無い辱め。けれどそれは、処罰の下準備でしかなかったのです。
彼女には、五十発の鞭が与えられました。尻や背中はもちろん、下から掬い上げるようにして乳房も打ち据えられました。どころか。ニナの真後ろから鞭を跳ね上げて、股間まで打たれたのです。
手加減はされていたのでしょう。肌に赤い条痕は刻まれるものの、派手な音の割には、肌が裂けて流血したりはしませんでした。それでも、ニナは大声で泣き叫びました。
わたしは、もう……ニナから目を放せませんでした。いいえ。あそこに磔けられているのが自分だったらと――そんな妄想に耽っていたのです。
鞭打ちが終わった後も、ニナは赦されません。処刑台の四隅を守っていた兵隊が、これ見よがしに散っていきます。
「これより一週間、この女を晒し者にする。憐れんで水や食べ物を与えても、あるいは他の事をしても、咎めたりはせぬ。また、夜に篝火は焚かぬ」
兵士長が大声で布令ました。ざわめきが見物人の間に広がります。夜陰に紛れて良からぬことをしても咎めない。いえ、良からぬことをしろと、けしかけているも同然です。
「一週間後になお、この女が生きていれば、広場の片隅に小屋を設けて住まわせるものとする。五十銅貨(ラーメ)を払えば、誰でも小屋を訪れて構わぬ」
当時、私はすでに子を産める年齢でした。男女がひとつ寝台で何をするか、およその知識としては知っています。つまり、そういうことです。それにしても――千グロッツは五十万ラーメです。お母様の宝石を償うには、一万回以上のそういうことをしなければならないのです。衣食住の費えを考えれば、何万回になることでしょう。ひと晩に何回くらい、女はそういうことを受け入れられるのかまでは知りませんけれど、十回としても十年以上です。
十年以上も、最下級の娼婦、いえ奴隷として扱われる。それを思うと、腰の奥が疼いてしまいました。
――家に戻っても、妖しい興奮は続いていました。それをどう処理して良いものか、見当もつかないまま夜になって。腰のもやもやをなんとかしたいと思って、両脚を突っ張り腿を引き締めたのです。
「あっ……?!」
声が出てしまいました。もやもやしている、もうちょっと上のあたりに稲妻が奔ったのです。神様の怒りではありません。もっと繊細で甘美な……これまでに感じたことのない純粋な快感でした。二度三度と繰り返してみました。同じように稲妻が奔ります。だんだん太くなって。
これはどういうことなのでしょうか。私は、はしたなくも寝間着の中に手を入れて、稲妻が奔ったと思しき個所を探ってみました。
そうして、見つけてしまったのです。女の子の割れ目が上端で閉じ合わさっているあたりに、小さな疣のようなものがありました。そこに指を触れると、もっともっと太くて甘美な稲妻が奔ります。雷鳴が轟きます。
私は好奇心と快感に任せて、その疣をいろんなふうに弄りました。小さな疣の中には、もっと小さな実核があります。それが皮膚に包まれているのです。皮だけを摘まむと、きゅるんと実核が動きます。
「ああっ……ああああっ……?!」
本能的に、これは貪ってはいけない快感だと悟りました。声を殺すために、敷布を咥えました。そして、さらに弄ります。
弄っているうちに、硬く尖ってきます。皮を剥き下げると実核が露出します。それを直に触ると……甘美な稲妻と同時に、鋭い痛みが奔りました。でも、それがスパイスとなって、さらに快楽が増すのです。
弄っているうちに、それでも物足りなくなって。胸につかえている感情もどうにかしたくて――左手で乳首も弄っていました。そこにも稲妻が奔ります。
股間の疣から発する稲妻が背骨を駆け登って、乳首から乳房全体に広がる稲妻とひとつになって……
「むうううっ……んんん!」
身体が宙に投げ出されたような感覚。私は、幼い絶頂を知ったのです。
――翌朝。私は満ち足りた目覚めを迎えました。と同時に、昨夜の所業は背徳に通じるのではないかという惧れも生じました。
できれば共犯者を作りたいという心理と。こんな気持ち良いことを独り占めにしてはいけないという気持ちと。なんとなく疎遠な妹と仲良くなりたいという想いと。それらが綯い合わさって。妹のベルタに教えてあげたのです。
「ふうん。じゃあ、今夜にでも確かめてみようかな」
無邪気な返事でした。無邪気過ぎて――このことをお継母様(ベルタにとっては産みの母親です)に告げたのです。
「エレナ! なんという恥知らずな行ないに耽っているのですか」
お継母様はこれまでに見せたことのない形相で、私を叱りました。後ろにはベルタを連れています。さらに、私の侍女のジーナとエルザも呼び付けました。
「おまえのしたことは、神様の教えに背くことです。厳しく罰さねばなりません」
お継母様は、私に衣服をすべて、下着まで含めて脱ぐように命令なさいました。
独りで裸になるのさえ恥ずかしいのに、継母様と妹、さらに侍女の眼の前で……
「お継母様、ごめんなさい。もう決して誤ちは繰り返しません。赦してください」
ぱしん!
お継母様は、手に持ってらした乗馬鞭で、私が前で組み合わせていた手をお叩きになりました。ごく軽い叩き方でしたし、婦人用の軽い乗馬鞭です。でも、この十三年間で初めて叩かれたのです。
私は驚愕とともに、お継母様の怒り、己れが犯した罪の重さに打ちひしがれました。私は、おろおろしながら衣服を自分の手で脱ぐしかありませんでした。侍女も手伝ってはくれません。
「まあ、もう生えているのね。色気づくのも無理はないわね」
前の年に初潮を迎えましたが、そのしばらく前から、下腹部の産毛が次第に縮れてきていました。髪の色と同じ淡い金色ですが、それでも肌に紛れたりはしません。それはそれで羞ずかしいことでもあり、いつでも結婚できる身体になったのだという誇らしさもありましたけれど。
お継母様の言葉で、昨夜の悪戯は男女の交わりと、どこかでつながっているのだと知りました。
お継母様は、私を寝台に仰臥させて、脚を開くように命じられました。
いくらなんでも、そんなはしたない真似はできません。赦してくださいと懇願すると、二人の侍女に命じて、私の脚を強引に開かせました。私付きの侍女でもコルレアーニ家の奉公人であることに変わりはありません。そして、屋敷内の一切は女主人が取り仕切って、お父様でも滅多なことでは口を差し挟めません。
お継母様は寝台の横に立って、乗馬鞭先で私の股間を――疣の部分をつつきます。
「ふん。おまえのこれは大きいね。淫乱の証拠だわ」
罵られているのに、鞭の先は冷たくて硬いのに、稲妻が奔ってしまいます。声は抑えても、腰がひくつきます。
「こんな目に遭っても、まだ淫らなことを考えているのね。反省なさい!」
声と同時に鞭が引かれて、股間に打ち下ろされました。
ひゅっ、パシン!
「きゃあああっ……!」
神様の怒りの稲妻です。股間を真っ二つに切り裂かれたような鋭い痛みでした。
「あうううう……」
でも。痛みが薄れるにつれて、腰の奥に甘い痺れが湧いてきました。
ひゅっ、パシン!
「きゃああっ……!」
ひゅんっ、バッチイン!
「いぎゃあああっ!」
それまでの二発とは比べ物にならない強い打擲に、私は絶叫していました。
お継母様は、冷ややかに私を見下ろしています。
「これで、少しは懲りたことでしょう」
その場は赦してもらえましたが、お仕置はそれで終わりではありませんでした。
その日から、朝から晩まで、必ず侍女のひとりが私の部屋で待機――実は監視するように取り計らわれました。そして夜も。寝ているときに悪戯ができないようにと、両手を布団の上に出して、手首を絹のハンカチで括られたのです。
でも、禁止されればされるほど、いけないことをしてみたくなります。それに……妹の見ている眼の前で、全裸にされて侍女に押さえ付けられて、お継母様に鞭打たれるなんて、ニナほどではないにしても屈辱ですし。鞭の痛みを追って湧いてくる甘美は、自分でする悪戯よりも、毒を含んでいるだけに濃厚です。
三日ほどはいい子にしていましたけれど。ハンカチで括られているだけですから、その気になればほどけます。でも、自分で結ぶのは難しいです。
両手が自由なまま寝ているところを侍女に見つかってしまい、今度は五発の鞭でした。手首は縄で縛られるようになりました。
それでも。手を縛られたままでも、寝間着の下に(両手もろともに)入れられます。細かな指遣いは難しくても、刺激はできます。もどかしさが、むしろスパイスにもなりました。
これも、あっさりと見破られました。お継母様に指先の臭いを嗅がれたのです。
鞭は七発でした。ひと打ちごとが、前よりも厳しいものでした。私は泣き叫びましたが、これまでとは違って、悪戯をやめるとは誓いませんでした。絶対にやめられないと悟ったからです。
そうして、とうとう……両手を広げた頭の上で鉄枷につながれてしまいました。
でも、まだ脚が残っています。最初に快感を感じたときのように、両脚を突っ張って腿をこすり合わせて。指で弄るような深い快感は得られませんが、軽く宙に浮くくらいにまではなります。
これも、数日で発覚しました。腰布に、言い逃れようのない染みが着いているのですから。
お継母様は、乗馬鞭をお使いになりませんでした。細い木の枝で、私の股間を打ち据えたのです。乗馬鞭より痛くないと不満に思ったのですが、とんでもない考え違いでした。乗馬鞭の先端は馬の肌を傷つけないように配慮されていますが、木の枝にはそんな工夫がありません。鋭く尖った先端は股間の疣を切り裂き(は、しませんでしたが)割れ目の奥にまで届きました。
そんなことが繰り返されて――半年ほどで、全裸を寝台でX字形に磔けられるという、今の形に落ち着いたのです。これでは、さすがに何もできません。昼間に、同じ部屋で見張っている侍女の目を盗んで、ほんのちょっとだけ指で弄って、それで我慢するしかありません。
ですけれど。自分で自分を弄って快感を得たいのか、それをお継母様に見つかって厳しくお仕置されて激痛とその後に続く(指で弄るよりもささやかですけれど、胸の奥に沁み込みます)快感を得たいのか、どちらなのか分からなくなってしまいました。というのも――半年前にお継母様が聖エウフェミア女子修道院にひと月ほど滞在されていたときは、悪戯をしたいという欲求は、そんなに起こらなかったのです。
聖エウフェミア女子修道院というのは、王都の近郊にある小さな施設ですが、王族や諸侯の庇護を受けています。お継母様は、そこの出身です。もちろん、修道女がいきなり結婚はできませんから、還俗してクリスタロ侯爵の養女となってから、お父様と結婚なさったのです。
お継母様がいわば里帰りされたのは、お父様の名代として、何かの式典に参列なさるため――ということになっていますが、そうでなかったのだろうと推測しています。
お継母様は、私を修道院へ入れようとなさっているのです。こんな淫らな娘は、どこへ嫁いでも伯爵家の名を貶める。ベルタの嫁ぎ先のブロンゾ子爵家に聞こえでもしたら破談になりかねないと――面と向かって私に言い放つのです。
まともな貴族の娘なら、十代の半ばで結婚するのが普通です。なのに、私には婚約者すら居ないのです。お継母様のせいです。
お継母様の思い通りになんかなりたくないです。修道院だなんて、絶対に厭です。清貧な生活に甘んじるのは構いませんが、神様の花嫁なんて真っ平です。だって、神様は生身の女性を肉体的に可愛がってはくださいませんから。
それくらいなら、お父様より年上どころか私の年齢の四倍もある(半世紀近い隔たりです)お爺様や、私の体重の三倍もある醜男と政略結婚させられるほうが、悲惨なだけに、悲劇の主人公でいられます。あ、数字が具体的なのは――そういう人物が実在しているからです。
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やっぱりですね。初っ端から読者を惹きつけるということは意識しております。ので、いきなり全裸ベッド磔です。
あ、今回は「地中海の東端に突き出た半島」が舞台ですので、そう簡単には英語を使いません。固有名詞はともかく、普通名詞では横文字を極力避けます。
まあ。人名とか架空の地名とかで、見当はつくでしょうけどね。
初っ端の回想シーンは、縄吉さんのフォトコラでも、特にお気に入りのやつの西洋バージョンです。この画像には、ブログ記事でも体感型バーチャル性活(つまりは自家発電)でも、何度もお世話になっております。

実際のところ、10/22現在は、第3章執筆中です。PLOTでは「娼婦への折檻」でしたが、尺が長くなるので、前半を「娼館での生活」に分割しました。それは、いずれ股の奇怪に。
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