Progress Report 6:公女巡虐
盗賊への拷問
あまり派手にやらかすと、役人も本気で取り締まるようになるので、じゅうぶんに気をつけていたつもりです。こちらの狙い目を感づかれないために、娼館帰りを狙うのは新月の前後に限らず、小雨の日も張り込んだりしました。高額な盗品を売りさばくときは、アンブラの故買屋だけでなく、アガータやブロンゾにまで出向きます。王都は警備が厳しいので近づきませんが、その北東(アガータからは南東)にあるギアダまで遠征することだってあります。美人局の場所も一回ずつ変えました。乞食や浮浪者まで含めれば五千人以上が防壁の中に住んでいる街ですから、尻尾をつかまれることもないだろうと楽観していたのですが、思わぬ見落としがありました。私娼です。
その日は、中央の広場に近いあたりで網を張っていました。広場の一画には、常に数人の私娼がたむろしています。そこは避けて、これから女を買いに行こうとする、あるいはめぼしい女を見つけられずに引き返す男を狙ったのです。十年後はどうか分かりませんが、今の私なら簡単に客を捕まえられます。
では、なぜ素直に娼売をしないかというと、ひとつにはせいぜい二百ラーメという相場です。しかも、安物買いをするような連中は、どんな病気を持っているか知れたものではありません。でも私の都合は、大きな理由ではありません。盗賊団を名乗るペピーノたちの自尊心を傷つけたくなかったのです。私としても、食べるに困らず小金で欲望を満たそうという連中の鼻を明かしてやりたい――貴族令嬢とは真反対の地に立っていました。
さっそくに鴨が来ます。スカートを片方、太腿のあたりまでたくし上げて。
「ご主人様、私を買ってください」
場末の私娼は、もっと蓮っ葉な物言いをしますが、若さを純朴と卑屈に置き換えて、こんなふうに誘います。この鴨も、ころりと引っ掛かりました。
「幾らだい?」
「できますなら一グロッソで」
この三か月で十回『狩り』に出て、獲物は六人。六人とも値切ってきたのですが、今日の鴨は、すっと金袋を取り出しました。
しめた――と、ガイオが物陰から飛び出して、私を鴨に向かって突き飛ばしながら金袋をひったくりました。
「きゃああっ!」
鴨に抱き着いて、一緒に転びます。鴨は慌てて、私を突き飛ばし……ません。逆に、私を抱き締めてきました。
「わああっ! どけよ!」
ガイオの叫び声。そちらを振り向くと、四、五人の人影が行く手をふさいでいました。
ガイオはその一人に肩からぶち当たって、転びはしたもののすぐに立ち上がり、一目散に逃げて行きます。人影はガイオを追い掛けようとはせず、私を取り囲みました。
「へへん。捕まえたよ。小娘のくせに、とんだ悪党だね」
私は鴨と思っていた男の手で石畳に押さえつけられて、縄で後ろ手に縛られました。
何が起こっているのか、理解できません。とんだドジを踏んだということだけは分かっています。
「おれらの娼売を荒らしやがって。役人に突き出してやる」
前々から目をつけられていて、罠に掛かったようです。
「ごめんなさい。もう二度と、こんなことはしません」
謝るだけでは赦してもらえないのは分かっています。とっさに考えて。
「これからは、皆さんと同じ稼ぎをさせてください。もらったお金は、全部差し上げます」
返事は、脇腹への痛烈な蹴り込みでした。
「てめえのほうが稼げると自惚れてるんだろ。役人に突き出す前に、ちっとばかり焼きをいれてやろうか」
「おい、ちょっと待て」
「なんだよ。おれらに意見しようってのかい。紐のくせに」
「そうじゃねえよ」
私を捕まえた男が、顔を近づけてじっと見つめます。
「ここじゃ分からねえ。もっと明るいところ……あそこだ」
男は私を引きずり起こして、広場の中央へ引っ張ります。
私はされるがままです。救けを求めても、やって来るのは夜警の下役人でしょう。ガイオが聞きつけて戻ってきたら、大人にちかい腕力があっても、これだけの人数には適いません。おそらく、この男は短剣くらい隠しているでしょうし。
広場の中央にある小さな人造の池。その水面に顔を近づけさせられました。月明かりが反射して、私の顔が浮かび上がっているはずです。
男が、あらためて私の顔を観察して。
「長い金髪ってだけじゃねえ。年恰好も、聞いてる通りだ。こいつは……餓鬼どもを束ねて掻っ払いをさせてる女だぜ」
うまく立ち回っていたつもりです。街では噂にも立っていないはずです。でも、裏の社会ではそうでなかったのかもしれません。もしかしたら、ペピーノたちが知らないだけで、盗っ人にも職人組合があって、そちらではここ三か月の荒らしぶりを不愉快に思っていたのかもしれません。
こうなったら観念しましょう。一生を幽閉されて過ごすのも、致し方ありません。
この三か月で慣れていた蓮っ葉な物言いを、淑女のそれに改めて。
「私が悪事に身を染めているのは、焉むに止まれぬ事情があっての故です。私はラメーズ伯爵、マッキ・コルレアーニの長女です。ラメーズに使いを遣ってください。十分な恩賞を与えられるでしょう」
池の中へ蹴り落されました。
「うわっ……ぷ?!」
慌てて立ち上がろうとしましたが、スカートが足に絡みついて、手は縛られていますから、上体を起こすのさえ困難です。藻掻いていると、髪の毛をつかんで引き起こされました。
「正気に還ったか?」
「嘘ではありま……」
また水に沈められました。
「たわ言を真に受けて命を落とすほど、こちとらも馬鹿じゃないぜ」
まあ……苦し紛れのその場しのぎと思われても当然でしょう。真実であれば、下手をすると誘拐犯と断じられかねない。そうも考えるでしょう。この男を説得するのは諦めます。役人なら半信半疑、いえ、わずかでも疑義が生じれば、問い合わせくらいはしてくれるでしょう。ラメーズまで早馬で使いを出して、真偽の確認に誰かがやって来る。それまでの数日間は囚人と同様に扱われるかもしれませんけれど。
私はずぶ濡れのまま引き立てられて、夜警の詰め所へ連れて行かれて。また縄付のまま歩かされて、倉庫が立ち並ぶ一画に設けられた牢獄へ入れられました。
どうせ取り調べは明るくなってからです。下っ端の牢番に訴えたところで、さっきの男と同じ結果になるでしょう。然るべき役人に申し開きをします。
縄はほどかれましたが、乾いた衣服は与えられませんでした。ずぶ濡れのままでいると、どんどん身体が冷えてきます。さいわいに独房でしたので、鉄格子の向こうから他の囚人に見られてはいますけれど、素裸になりました。衣類は絞って鉄格子に干して。身体を丸めて一夜を明かしました。これが冬だったら凍え死んでいたことでしょう。
明け方の冷え込みで目を覚ましました。牢に入れられて衣服も着られず、裸でうずくまっているというのに眠りこけるとは、私も図太くなったものです。
もう乾いたかしら――と、鉄格子を見ると。そこに掛けておいたはずなのに、見当たりません。牢内にも。盗まれたのかもしれません。でも、誰に?
他の囚人から手が届くはずもないし。
「誰かいませんか?」
小声で呼ばわってみましたが。
「うるせえ。牢番に言いつけるぞ」
その牢番が来ないのは、眠りこけているからでしょう。大声を出せば、寝起きの不機嫌でやって来るかもしれませんが、得策ではありません。向こうから来てくれるまで待ちます。
身体が冷えれば、小水も近くなります。牢獄の奥には、砂を半分ほど入れた小さな桶が準備されています。まわりの囚人が目を覚まさないうちに済ませておきます。朽縄も枯葉も無いので不潔ですけれど。
徐々に牢獄の中が明るくなって、全体の様子がはっきり見えるようになりました。
たったひとつしかない扉の向かい側の壁は、街の防壁そのもののようです。牢獄自体の壁は三方。その壁に沿って、十四個の独房がびっしりと並べられています。真ん中は広く開けられて、おどろおどろしい拷問道具が置かれています。防壁の部分にも、囚人を拘束する鉄枷や鉄鎖が植え込まれています。
防壁の天井に近いあたりには、鉄格子を嵌めた明り取りの穴が四か所あります。その小窓から見える空がすっかり青くなってから。牢番がやって来て、がんがんと鉄格子を叩いて回ります。そして、黴の臭いのする小さな固いパンとを三つと小さな桶を差し入れます。桶には泥臭い水が満たされています。
「新入りに言っとくが、これが一日分だからな」
「あの……ここに掛けていた私の服をご存じないでしょうか?」
牢番は私の裸身を眺めながら、にたりと嗤いました。
「囚人には余計な物をもたせちゃいけないからな。没収したぜ」
「濡れたから乾かしていただけです。返してください」
牢番は肩をすくめて背を向けました。
「どうせ、拷問のときは素っ裸に剥くんだ。手間が省けるってもんだぜ」
まわりの囚人たちも、含み笑いのような吐息を漏らしました。
あらためて、彼らの様子を観察します。男が三人と女が一人。男は襤褸布のような衣服を身にまとっていますが、女は腰布一枚です。女は私の倍までは行っていない、おそらく三十前でしょう。その裸身は、鞭傷や痣で埋め尽くされています。私は戦慄しました。全身が冷たく重たい鉛のように感じられます……けれど、その内奥に灼熱した石炭がぽつんと生じて。じわじわと鉛を熔かしていく感覚も、たしかに存在するのです。けれど。娼館での折檻で、懲りているはずです。罪人への拷問は、それ以上に凄まじいでしょう。一粒の砂糖を圧し潰す塩の山です。
牢番くらいでは話にならないと判断して。尋問までは騒ぎ立てないことにしました。
――食事が配られてから一時間も経った頃、ついにその時が訪れました。
黒い長衣に身を包み頭に四角い布の帽子を頂いた役人が、三人の拷問吏を引き連れて牢獄に姿を現わしたのです。なぜ後ろの三人が拷問吏と分かるかというと。
素肌に革の胴衣という出で立ちよりも。目と口だけを出した黒い頭巾で顔を隠しているからです。拷問を受けた囚人が釈放されたら、その囚人が善良な民ではなく悪党の一味だったとしたら。拷問吏に復讐を企んでもおかしくはありません。顔を知られるのは、拷問吏にはきわめて不都合なのです。それは役人も同じでしょうが、彼は護衛も無しで外を歩いたりはしません。
「そこの官吏に物申します」
私は立ち上がって、淑女に許される範囲で声を張りました。もちろん、両手で要所を隠す仕種も忘れません。
場違いな物言いに、役人が私を振り返ります。
「私は、ラメーズ伯爵、マッキ・コルレアーニの長女、エレナです。悪党に拐わかされ、よんどころない仕儀にて売笑婦の真似事をせざるを得ず、それゆえに投獄さました。罪は賠償金にて償います。至急、ラメーズへ遣いを出してください。裁判所の命じる賠償金と併せて、あなたにも多大な恩賞が下されるでしょう」
役人の返事は、ただ一言でした。
「黙らせろ」
拷問吏が一人、牢のカギを開けて入ってきました。
「私に手を触れるのを……」
ばしん。
頬に痛烈な平手打ちを食いました。目の前で星が飛び交い、頬が焼けるように熱くなり、耳がキインと鳴りました。痛みを感じたのは、その後でした。
拷問吏は片手で私を羽交い絞めにして、縄を私に噛ませました。頭の後ろできつく結びます。
「あいをうう……?!」
何をするのですか。そう詰問したくても、奇妙な呻き声にしかなりません。
「もうすこし懲らしめてやれ。後ろ手吊るしで立たせておけ」
後ろ手に縛られて、鉄格子の外へ引き出されました。手首の縄が鉄格子のいちばん上に通されて、引き上げられます。垂れていた腕がだんだん吊り上げられ、肩が捻じられます。自然と上体が前へ倒れていきます。やがて、これ以上は身体が傾いても手首は上がらない位置にまで達して……身体が吊り上げられそうになります。つま先立ちになったところで、ようやく止めてくれました。縄尻が鉄格子に結び付けられて、私は不自然な姿勢で立ち続けねばなりません。
「女だからといって容赦はせんと教えてやる。リタを引き出せ。今日は焼鏝だ」
「いやあああああっ! あんだけ酷いことをしたのは一昨日じゃないか。まだ傷がふさがってないんだよっ!」
「だから、焼いてふさいでやろうというのだ」
「あああ……どうか、お赦しください!」
「白状するか?」
「あたしじゃない。金庫の開け方だって知らないんだ!」
リタという女が訴えている間にも。彼女は枠に簀子を張っただけの寝台のような物に、鎖と枷でYの字形に俯せで拘束されました。その横では火桶に石炭がくべられ、鞴で白熱させられています。先端が平たくなった鉄棒が、何本も火桶に突っ込まれました。
「やめてください! 死んじゃうよ!」
「安心しろ、死にはせん。いや、醜い引き攣れなども残らん。あまり深く焼いては、かえって痛みを感じぬからな」
「俺たちだって、醜い女にゃ勃つ物も勃たねえや」
拷問吏のひとりがうそぶきました。
「できれば、こっちの伯爵令嬢は肌がきれいなうちに……」
びしっ!
役人が手にしている鞭で拷問吏をたたきました。
「余計なことを言うな。叱られるのは儂だぞ」
役人は鞭を灼熱した鉄棒に持ち替えて、私に近寄りました。
「どうせ、おまえは貴族が物事をどのように考えるから知らんだろうから、教えておいてやる」
鉄棒の先を、私の折れ曲がった上体すれすれに近づけます。熱気で肌がチリチリします。
「もしも、おまえが詐称する通りの身分だったとしよう。それでも、ラメーズ伯爵だったかな。彼は問い合わせを受けても否定するに決まっている」
娘が娼婦に堕ちているなど、家門の名誉を木っ端微塵に粉砕するほどの不祥事。爵位を剥奪されかねない。娘は見殺しにするしかない。隠密裏に解決しようとしても、アンブラ子爵に致命的な弱みを握られるのは避けられない。しかもラメーズ家とアンブラ家は、それほど友好的な関係にはない。
言われてみれば、至極当然のことです。私は自分可愛さのあまり、そんなことも見えていなかったのです。身分がばれれば連れ戻されて、一生を幽閉されて過ごさねばならない。そのことだけしか考えていなかったのです。
「つまりだ。儂が上に報告すれば、囚人のたわ言を真に受けた大馬鹿者。まかり間違って、ほんとうに使者など立てようものなら、免職で済めば行幸。儂が投獄されかねんわ」
私が切札と信じていたのは、ただの鉋屑だったのです。
「だから、もうつまらぬことは言わずに、殊勝に罪を認めて――仲間の居場所も白状することだな。そうしたら、おまえだけは命を救けてやってもいいぞ」
つまり、ペピーノもガイオも、もしかしたら若い衆も……死刑。
あまりの衝撃に、否定の身振りすら忘れていたと気づいたのは、リタへの焼鏝による拷問が始まってからでした。この役人は、私を捕らえた男の申し立て――美人局だけではなく、子供たちを使った盗賊団の女頭目だという申し立てを信じている。少なくとも疑いを持っているのです。
拷問吏のひとりが灼熱した鉄棒を持って、リタの横に立ちました。役人は、みずからの手は汚さない主義のようです。
「金庫から金を盗んだのは、おまえだな?」
「違います! あたしじゃない。奥様は、あたしだって決めつけてるけど……あたしが憎いからなんです!」
「それは何度も聞いた。なぜ、奥方はおまえを憎んでいるんだ」
「それは……」
役人が拷問吏を振り返ると、拷問吏は鉄棒の焼け具合を見てから頷きました。先端の平たい部分も、すでに陽の明かりの中では黒くなっています。
「やれ」
鉄棒の平たい部分がリタのお尻に押し当てられて……じゅっと肉の焼ける音と煙が上がって。
「ぎゃあああっ……!」
悲鳴が途切れるよりも早く、鉄棒が肌から離れました。細長い四角がお尻に刻まれています。きっと、ひどい火傷が残ります。きれいな肌に戻るという役人の言葉は信じられません。
「次……」
「待って、待ってください。言います……あたしが旦那様に可愛がっていただいてるのを、奥様がお知りになったんです。だから……」
「なんと。不義密通を働いておったのか。これは斬首ではすまんな。罪を償う十字架に磔けて火焙りだ」
この言葉は、いっそう私を打ちのめしました。三か月間の娼婦暮らしは、それだけでも火刑に値するのです。
「もっとも……主人の金を盗んだと白状するなら、新たな罪の自白は聞かなかったことにしてやっても良いぞ?」
「…………」
「しゃべりたくないのか。ならば、そうしてやろう」
別の拷問吏が襤褸布を持って来て、リタの口に押しこみました。布の端を頭の後ろで結んで、吐き出せないようにしました。
「自白したくなっても出来ない。これは、どんな拷問よりも苦しいぞ」
私に向かって言っています。こんなふうに脅されれば、実際に拷問される前に白状してしまう者もいるでしょう。
でも、それが目的なのかと――疑念が生じました。望む通りの自白をさせて、次の囚人の尋問に取り掛かったほうが手っ取り早いのではないでしょうか。
私は顔を上げて、役人の目を直視しました。とたんに、鉛の中で立ち消えそうになっていた石炭が、かあっと熾りました。彼の目はぎらついていたのです。毒蛇や蝦蟇の瞬きしない冷たい瞳ではなく、ブルーノ様と同じような、群衆がニナに向けたと同じような、嗜虐の眼差し。
もしかすると、私は……妄想の中にしかなかった被虐に、今まさに直面しているのでしょうか。自身の命を代償として。
リタの反対側のお尻に二本目の鉄棒が押し当てられて、くぐもった悲鳴が牢獄を満たしました。
「そう言えば、こっちの娘は面白い趣味をしておるな。いささかむさ苦しくなってはおるが」
役人の視線は、私の股間に向けられています。
下生えを剃るなんて、まともな女性はけっしてしません。淫らです。なので、私は気に入ってしまって、その必要が無くなった今でも、十日に一度くらいは剃っていたのです。
「火焙りだけは免罪してやっても良いが、相応の償いはさせてやろう」
枠と簀子の寝台の端に付いている大きな車輪を拷問吏が回すと、寝台も一緒に回って――リタは仰向けにされました。
「これは拷問ではなく贖罪だからな」
我慢できないといった残忍で好色な(ブルーノ様とそっくりな)表情を浮かべて、役人が焼鏝を握りました。
「む゙ゔゔっ……ま゙め゙え゙え゙!」
これまでと違って、焼鏝の平たい部分は真っ赤に灼けています。
役人は、押し付けるのではなく平たい部分を肌に滑らせました。じゅうっと肉の焼ける音がして、ぱっと縮れ毛が燃え上がりました。
「ま゙あ゙あ゙あ゙っ……!」
耳をふさぎたくなります。でも……私もあんなふうにされたら。腰の奥深くに埋没した石炭が、鉛を熔かし始めます。焼鏝の火桶よりも、もっと熱くなっています。
役人は焼鏝を数度、下腹部の丘に滑らせてから、ようやく火桶に戻しました。すでに縮れ毛は燃え尽きて、一昨日の拷問で傷ついている肌の上には黒い燃え滓が散らばるばかりです。
リタは口の詰め物を引き抜かれると、嗚咽しながら自白を始めました。
「もう、焼鏝は厭です……火焙りもお赦しください。旦那様の金庫からお金を盗んだのは、あたしです」
「しかし、鍵が掛かっておったはずだぞ。どうやって開けたのだ?」
「それは……」
リタは途方に暮れた目で役人を見上げました。
この人は犯人じゃない。私は直感しました。罪を認めたのですから、金庫の開け方を隠す必要は無いはずです。実は開け方を知らない――犯人ではないと考えるのが、筋道が通っています。
「もしかすると、鍵は掛かっていなかったのかな?」
「そうです。旦那様が鍵を掛け忘れて……それで、出来心が湧いたのです」
役人が満足そうに頷きました。
「なるほど。では、傷が癒えてから、あらためて尋問しよう。今と寸分違わぬ供述をすれば良し。さもなくば、一切は嘘ということだから、さらに拷問をしてくれるぞ」
「あああっ……そんな非道な!」
リタは泣き崩れました。
拷問吏は心を動かされた様子もなく、火傷の部分に泥のような(おそらく)膏薬を塗ってから、リタを独房へ戻しました。
それから、私を拷問の場に引き出したのです。
私はいったん手首の縄を解かれて、あらためて天井の滑車から垂れる鎖に吊るされました。さらに、左右の離れた位置にある滑車で両足を吊り上げられました。Vの字の真ん中を上体が真っ直ぐに立てられている――まるで下向きの矢印です。
もしも鞭打ちなら、この形では股間ばかりを責められます。九尾鞭でしょうか。もっと残酷な鞭でしょうか。
そうではありませんでした。
「ウーゴ。きれいな肌のうちに愉しんでおきたいと言っておったな」
「えへへ……聞き流してやっておくんなさい」
これから残虐な拷問を始めようという雰囲気ではありません。
「おまえらは、良く働いてくれておる。褒美として望みを叶えてやるぞ」
「へ……?」
「このような形で女を吊るしたのは、そのためだ。ただし、並みの形で犯すのではないぞ。罪人への懲らしめだということを忘れるな」
拷問吏たちが三人、頭を寄せ合って何事か相談を始めて。ウーゴと呼ばれた男と、いちばん図体の大きな男とがズボンを脱ぎました。大男は身体に比例して、怒張もウーゴの五割増しくらいはありそうです。
「あまり気乗りはしねえが、マゼッティ様のご命令とあっちゃ仕方ねえ。嬢ちゃんよ、ちいっと我慢しな」
唾を吐いて男根にまぶすと――私を後ろから抱えるようにして蕾のほうへ突き挿れてきました。
「ん゙む゙ゔゔゔーっ!」
娼館では、こちらを所望されるお客様もいらっしゃいましたが、こんなに太いのは初めてです。みちみちと穴の縁が軋みます。初めてここを犯されたときよりも、熱くて痛いです。その熱で、腰の奥の鉛がさらに熔かされていきます。
大男が挿入し終えると、ウーゴの番です。大男が腰を沈めて、私を引き下げます。腕を鎖で吊られたままなので、肩に痛みが奔ります。そこへ突き挿れてきます。別種の苦痛を与えられながら犯されるなんて、初めてだと思います。
「む゙み゙い゙い゙い゙……!」
ウーゴが腰を突き上げるようにして抽挿を始めました。肩の痛みと蕾の灼熱に苛まれながら、局所的な快感が芽吹いてきます。女の芽を虐めてもらわなくても、穴だけで感じるように、娼館での三か月で徐々に仕込まれています。苦痛と快感とが綯い交ぜになる感覚は、久しぶりです。
でも、それは長く続きませんでした。ウーゴが果ててしまったのです。大男は私を抱えるだけで腰を遣わなかったので、蕾はまだ張り裂けそうな痛みに苛まれてます。
ウーゴの後を、すぐに三人目が埋めました。彼も動こうとはしません。
「んんっ……?」
ずぬううっと引き抜かれる感触があって、お尻が楽になりました。物足りないなんて感じている場合ではないです。そして、予想していなかった凄まじい責めが始まりました。
すでに埋まっている穴に、大男が背後から割り込もうとするのです。
「む゙い゙、む゙い゙……ま゙あ゙あ゙あ゙っ!」
とうてい挿入るはずがないです。それでも、しつこく突き上げてきます。とうとう、私の腰をつかみ直して、前後左右にゆすりながら、私を押し下げようとします。肩がびききっと攣って、穴がみしみし軋みます。
ついに、ずぶっと突き抜ける激痛が奔りました。
大男は、ますます力を込めて、私を揺すぶります。ずぐぅ……ずぐぅ……小刻みに押し挿ってきます。そして、とうとう、根元まで挿入ってしまいました。お尻に彼の縮れ毛が擦れます。これまで味わったことのない膨満感です。
「はああ……」
思わず息を吐きました。でも、ほんとうの責めは、ここから始まったのです。二人が同時に腰を遣い始めました。限界を超えて押し広げられた穴が軋み、激痛がうねくります。それなのに、膨満感が充足感にすり替わっていきます。熔けた鉛が腰の奥を灼きます。
いっそ、蕾まで三人目に貫かれたら……それは体位として不可能ですが、せめて張形を突っ込んで欲しい。そんなことをされれば、穴も蕾も壊されてしまうかもしれないというのに……本気で願ってしまうのです。
「あ゙え゙っ……! む゙ゔゔゔゔゔゔっ!」
呆れたことに、私は雲を突き抜けて宙に放り出されたのでした。
余韻に浸る贅沢など与えられず。ついに拷問が始まりました。
今度は天上の滑車を使って、鉄格子の前で吊られていたのと同じ姿にされました。つま先立ちではなく、足は床から浮いています。全体重が、捻じ上げられた肩に掛かります。
役人のマセッティが、私の肌に横から目を近づけて、ためつすがめつします。
「ふうむ……九尾鞭か」
驚きを通り越して、ぞっとしました。娼館で受けた折檻の鞭傷の痕は、ほとんど残っていません。明るい陽の下で目を近づけて透かし見るようにすると、肌の色と区別がつかないくらいの薄い筋が見えます。鞭に編み込まれた鉤による短い木の枝のような傷痕は、それがあると知っていなければ見分けられません。それを薄暗い牢獄の中で、こうも正確に見破るとは。
「おまえは、いったい何をしたのだ?」
「私が拐わかされて売り飛ばされた先は娼館でした。酷い扱いを受けて逃げようとしたのですが、捕まって折檻されました」
もっともらしい嘘を考える暇も無く、事実を曖昧に答えるしか思いつきませんでした。
「ふむ。だから、二本挿しも愉しんでおったのか」
気を遣ることをそう言うのなら、たしかにそうでしょう。
「娼館を摘発するのは儂の役儀ではない。しかし、苛酷な折檻を受けたという事実は考慮せねばならんな」
どういう意味なのでしょう。
「さて……まだ、おまえの名前すら訊いていなかったな」
「ダリアです」
本名のエレナは、すでに名乗って否定されていましたから、娼館での名前を答えました。
「どこのダリアだ? 親の名前は?」
「ラメーズです。父はデチモ、母はザイラ。姉のジーナは伯爵家の女中です」
後で同じことを聞き返されても間違えないよう、侍女の家族を騙りました。
「ふむ、伯爵家にな……ジルド。娘の胸の裡を探れ」
いちばんの大男が私の背後に覆いかぶさるようにして、双つの乳房を握りました。太い指を食い込ませながら、ぎりぎりと握り潰しにかかります。
「くううう……」
巨漢だけあって、凄まじい力です。乳房がひしゃげ、紫色に染まっていきます。体重をのし掛けられているので、肩が抜けそうです。
「名前は、なんといったかな?」
「ダリアです」
乳房が左右反対向きに捻じられていきます。このまま捥ぎ取られるのではないかと恐怖するほどの激痛です。
「親兄弟の名前は? 父親の職業は?」
「デチモ、ザイラ、ジーナ……父はやはり伯爵家に仕えていましたが隠居して、代わりに姉が奉公しています」
「うむ」
マセッティが頷くと、ジルドは手を放してくれました。
「おまえは通りすがりの男に、金を対価に股を開くともちかけて、情夫にその財布をひったくらせたそうだが――そやつの名前はなんという?」
これは、答えてはいけません。職業や住処に嘘を重ねていくうちに、必ず見破られるでしょう。
私が沈黙を続けていると、マセッティが含み笑いを漏らしました。
「初っ端から愉しませてくれるな。ウーゴ、鞭の用意を」
ウーゴが房鞭を持って、私の横に立ちました。
私は、ほっとしました。長く鋭い一本鞭でも、殺人の凶器にもなる九尾鞭でもありません。
ウーゴは鞭を垂らしたまま、打つ気配がありません。ジルドが横合いから腰をつかみました。そのまま引っ張ります。
「いくぜ、兄貴」
掛け声とともに、ぶん回しながら突き放しました!
牢獄の壁が斜めに走ります。肩にいっそうの激痛が奔ります。私は独楽のように回されながら振り子のように揺られているのです。
視界の片隅でウーゴが鞭を振りかぶって。
しゅっ、バッジイイン!
「きひいいっ……!」
脇腹に当たっただけですが、拳骨で殴られたような衝撃でした。回転しながら揺られている勢いで、みずから鞭を迎えに行く形になったのもありますが、やはり腕なのでしょう。毎日のように拷問を繰り返している男の鞭は、娼館のへなちょこ野郎とは大違いです。
しゅっ、バッジイイン!
「ぎゃはあっ……!」
しゅっ、バッジイイン!
「あうっ……!」
しゅっ、バッジイイン!
「ひいいいっ……!」
乳房、お尻、太腿、背中、お腹……所かまわず滅多打ちです。打たれる部位ごとに悲鳴が強弱高低長短さまざまに変化します。
生きた心地もありませんが、それなのに、いつの間にか腰の奥の鉛はすっかり熔けて、ぐつぐつと煮え滾っています。
お遊びでも躾でもない、ずっと憧れてきた本物の拷問を受けているという想いが、鞭の激痛を切なく甘美なものに変えてくれます。
しゅっ、バッジイイン!
「きひいっ……あ、あああ……」
しゅっ、バッジイイン!
「あああっ……はああん……」
悲鳴に吐息が混じるだけでなく、いっそうの被虐を求めて、拷問吏を挑発するような言葉まで口にしていました。
「言うもんですか! 命を懸けても、私の情夫(おとこ)は守り抜きます!」
至福が全身を貫きました。身体を張って命を懸けて、愛しい男を庇う。なんて素敵な悲劇なのでしょう。ペピーノやガイオを、そんなに愛しく想っていのかしら――疑問は蹴飛ばしてやります。ふたりとも、私が男にしてやったのですから。
「やめろ」
マセッティが苛立った声で命じました。ぴたっと鞭が焉んで。正面に回り込んだジルドが、まだ揺れている私のお腹に拳を突き入れました。
「ごぶふっ……うえええ!」
お腹が破裂したような衝撃。私は口から苦い水をあふれさせました。
私は床に下ろされ、剥き出しの防壁の手前に据えられている椅子のところへ連れて行かれました。間近にみると、拷問のためだけに拵えられた椅子です。
肘掛にも背もたれにも座面にも、短い針が植えられています。そんなに沢山ではありませんが、それがかえって恐ろしいです。座れば、針は確実に肌を貫くでしょう。身体の各部を拘束するための鉄枷と革帯がいたるところに取り付けられています。
それよりも不気味なのは、座面から屹立した金属の棒です。先端は細く丸められていて、根元も細くなっています。先端から三分の一くらいのところがもっとも膨らんでいて、ジルドの怒張よりも太いでしょう。なぜ、そんな比較を連想したかというと――その椅子に座れば、ちょうど女の穴の位置になるだろうからです。男は女より大柄ですから、お尻の蕾が真上に来るでしょう。
「ふふん。娼婦だけあって、察しがいいな」
マセッティが、初めて私の肌に触れました。股間に掌を当てて、指を三本まとめて挿れてきたのです。その指を中で閉じたり開いたりします。
「締まりは良いほうだな。しかし、こいつには敵うまいぞ――カルロ」
ウーゴとジルドの陰に隠れている感じの三人目の拷問吏はカルロというらしいです。彼は腰を屈めて、拷問椅子の横にある小さな環を回しました。
「…………?!」
座面の棒が三つに割れて、花弁のように開いていきます。中には芯棒が通っていて、そこから梃子で花弁を押し出しているのです。もしも、この椅子に座らされて女の穴にこの棒を挿れられて……
足が震えて立っていられなくなり、思わず椅子の肘掛に手を突いて――チクッと痛みを感じて、あわてて手を引きました。
「座れ」
マセッティが冷酷に言います。いえ、愉しんでいる声音です。
あああ……この椅子に座らされて、再び立ち上がることは出来るのでしょうか。いえ、この仕掛が開いたまま無理やりに立ち上がらされたら、確実に女の機能は破壊されます。頭に靄が掛かって、一瞬ごとに濃くなっていきます。
それを逡巡と見て取るのが普通でしょう。カルロが正面に立って私の手首をつかみました。ウーゴとジルドが、両側から私を抱え上げます。私は椅子の真上に運ばれて、閉じた金属の花弁に向かって下ろされていきます。
花弁の先端が女の割れ目を押し開きます。私は左右に揺すぶられて、花弁の先端が穴に嵌まり込みました。
「くっ……」
ちょっと挿入っただけで、つっかえます。ウーゴとジルドはさらに激しく私を揺すって、強引に沈めていきます。
「くううう……痛い!」
みちみちと穴が押し広げられていくのが、強まる苦痛で分かります。
「へえええ、驚いたね。やめてくれって泣き叫ばなかったのは、この娘がはじめてだぜ。それに、手を振りほどこうともしない」
「黙っておれ。小娘をつけあがらせるだけだ」
マセッティに叱られて。三人は無言で職務を果たします。
閉じた花弁の最も太い部分が穴に収まると、あとはむしろ呑み込むようにして挿入っていきます。そして、お尻から太腿に掛けて鋭い痛みが突き刺さってきます。
つぷっ、つぷっ……と、針が肌を突き通していく感触が、痛いよりも気味悪いです。
そうして、ついに。私は拷問椅子に深々と座らされました。分厚い革帯が腰を巻き首を絞めます。うんと開脚した形で太腿も拘束されました。鉄枷が手首と足首を針に押し付けます。
次は、いよいよ……私の中で閉じている花弁が開花するのでしょう。それとも鞭打ちでしょうか。苦痛に身悶えれば、全身に突き刺さっている針が肉を引き裂きます。
どちらでもありませんでした。鉄板の両端を脚で支えた台が、胸元に差し込まれました。鉄板で乳房を下から持ち上げる高さに、台が調整されました。さらに、同じ大きさの鉄板が乳房の上に載せられて、四隅が太いボルトで下の鉄板とつながれました。
「さて。おまえの情夫の名前を教えてくれぬかな?」
「…………」
私は沈黙を貫きます。
この二枚の鉄板がどのように私を苛むか、およその見当はつきます。これまで想像したこともない、ちょっとでも似た体験もしていない――まったく新しい苦痛でしょう。恐怖に心を塗り潰されながらも、腰の奥では鉛が煮え滾っています。
「指で回せ」
ウーゴとジルドが、ゆっくりと四本のボルトを指で摘まんで回していきます。それにつれて乳房が圧迫されて――痛みが生じます。乳房は平らに押し潰されていき、それにつれて痛みも強くなってきます。
「く……」
呻き声を漏らしたときには、乳房は膨らまし損ねたパンみたいに潰れていました。
「これ以上は回せませんです」
ウーゴが手を放すと、ジルドも倣いました。
「では、ボルト回しを」
細長い棒です。先端は平たくて、ボルトの頭を型抜きしたような穴が開いています。
「指で回す百倍の力で締め付けられるぞ」
「…………」
「強情な娘だな。よろしい、質問を変えよう。おまえは、どこに住んでいる?」
何を訊かれても沈黙で答えるのみです。堤防は水漏れが始まれば、じきに決壊するのです。
「二回転」
マセッティの短い言葉に続いて、ボルトがゆっくりと回されていきます。
「ぐううう……」
予期していたことですが。鞭打たれる爆発的な鋭い痛みとも、針を突き通されるおぞましい痛みとも、まったく違う激痛です。手で握り潰される鈍く重たい苦痛と似ているところもありますが、こんなに乳房全体が軋むほどの激痛ではありません。
「マセッティ様。おいら、手持無沙汰なんですがね?」
カルロは、花弁を開く環に手を掛けています。
「おお、そうだったな。では、三回転だ」
キチキチと歯車の噛み合う音が穴の縁をくすぐって、そのかすかな音からは想像もつかない凶暴な花弁が開く――のを、股間に感じます。苦痛も花開きます。
「女性器は鍛え抜いているようだな。もう三回転」
「……ぐううう」
乳房と股間の両方を、これまでに味わったことのない激痛に咬まれて、全身に脂汗が滲みます。苦痛に身をよじることも出来ません。わずかでも身体を動かせば、椅子に植えられた針が肉を抉りります。
「自白の真実性を増すために、そろそろ猿轡を噛ませてはいかがでしょうか」
ウーゴが進言しましたが、マセッティは不要と断じました。
「情夫の名前、隠れ家。どうせ二人きりではあるまい。最後の一人まで仲間の名前と素性を吐かせねばならん。その間、苦痛は増える一方だぞ。どうだ。白状することは幾らでもあるのだから、ひとつやふたつは教えてくれぬか」
マセッティは私に語り掛けながら。手にしている笞の先で、わたしのおへそをくじります。どうということもないはずなのに、女の穴を犯されているような心持ちになってしまいます。
もう、今でさえも限界を超えていると思うのに……意識を保っています。いっそ、ひと思いに責められて安らぎの中へ逃げ込みたい。そういう想いは、たしかにありました。ですが、それと同じくらいに……この男を怒らせたら、どいういことになるのか。恐怖への好奇心もありました。嘘です。極限まで虐められてみたいと思ったのです。自白させることが沢山あるのなら、殺したりはしないでしょう。
私は顔を上げて唇だけを動かしました。
「うん……?」
狙い通りに、彼は顔を寄せてきました。
私は、唾を吐き掛けてやりました。
案に相違して、彼は怒りませんでした。手の甲で唾をふき取ると、私の頬に叩きつけたのです。そして……
「悲鳴が途絶えるまで、回し続けろ」
三人は困惑したように顔を見合わせて――結局は上役の命令に従いました。
ぎりっ……きりっ……小刻みにボルトが捻じ込まれていきます。穴の奥で花弁が開いていきます。
「ぐうううう……!」
私は歯を食い縛って、意地でも悲鳴を上げまいと耐え抜きます。
そして、私は根競べに勝ったのです。
「手を止めろ」
マセッティが溜息交じりに命令しました。
私としては、勝利のささやかな快感よりは、安息へ逃げ込めなかった失望のほうが強いです。そして、なおも腰の奥では、被虐への想いが煮え滾っています。
「押しボルトを持ってこい」
マセッティは、拷問を中断するのではなく、新たな責めを目論んでいるようです。
十本ほどのボルトが、胸の上の鉄板に並べられました。鉄板同士を締め付けるボルトよりも短く細く、先端が尖っています。
このときになって気づいたのですが、鉄板には、このボルトに合いそうな穴が二列に並んでいます。
その穴のひとつに、マセッティが押しボルトを捻じ込みました。
圧迫されて感覚が失せた乳房に、はっきりと鋭い痛みを感じました。鉄板の厚みを超えてボルトが捻じ込まれ、乳房を突き通そうとしているのです。
「さすがに、この傷は九尾鞭よりも深く醜く残るぞ」
女にとっては、命を奪われるよりも、顔を傷つけられ乳房を醜く抉られるほうが、ずっと深刻です。
ふっと、ブルーノ様の顔が浮かびました。乳房をこよなく虐めてくださったお方。ぺちゃんこに圧し潰されて醜い穴を穿たれた乳房でも、虐めてくださるのかしら――と。
二本目のボルトが、反対側の同じ位置に捻じ込まれました。マセッティは両手にボルトの頭を摘まんで、じわじわと捻じります。
ぶつっ、ぶつっと……ボルトが皮膚を破る激痛が乳房を揺すぶりました。
「いぎゃああああっ……!」
その衝撃で、ついに堤防にひびが入りました。そして、一気に決壊したのです。
「痛いいたいいたい……!」
マセッティは、なおも捻じ込んできます。ぐりっ、ぐりっと、肉が抉られまし。
「ひいいいいい……負けるもんか!」
それがペピーノたちを庇う想いなのか、いっそうの残虐を我が身に加えてほしいからなのか、自分でも分かりません。叫んでいないと、激痛に気が狂いそうです。
「虐めてください。もっともっと……絶対にしゃべるものですか!」
頭に真っ赤な霞が掛かってきました。激痛に苦しみながら、腰が疼いています。
ボルトが左右の乳房に一本ずつ追加されて、全部で四本。
マセッティが二本ずつ交互に捻じ込みます。鉄板の隙間から血がにじみます。その鉄板も、ウーゴとジルドがさらに締め付けます。花弁は、いまにも穴を引き裂きそうです。
「チッ……この娘には、まともな拷問は通用せぬな」
舌打ちをした割りには、朦朧とした意識でも判別できるくらいに愉しそうな声です。
「これ以上の責めは、せっかくの逸材を台無しにしてしまう。いったん中止だ」
マセッティの言葉の意味は分かりませんでしたが……私は拷問に耐え抜いたという満ち足りた気分のまま、意識を失ったのです。
気がついたときには独房へ戻されていました。手足に鉄環を嵌められ、鎖で宙吊りにされていました。両手は開いて天井の隅に、両足は床の隅に。つまり、斜めの仰向けです。慈悲ではなくて。部屋が狭いので、水平には吊れないのでしょう。
火酒の強い臭いがするのは、全身に塗られている泥のせいです。薬草を煎じた臭いも混じっています。そうしてみると、この膏薬はそれなりに高価なのではないでしょうか。
さすがは、商都アンブラです。銅山を有して比較的に裕福なラメーズでも、囚人が怪我をしたときは水で洗ってやるだけと聞いています。
リタも吊るされていましたが、両手を別々に鎖で引き上げられているだけで、膝立ちという楽な姿勢でした。自白した褒美なのかもしれません。
弱々しい陽射しは、夕暮れが近いと告げています。すでに牢獄の中央、拷問の間には人影がありません。そして、男の人が囚われていた斜め向かいの独房が空っぽです。
マセッティは拷問の職人ですから、誤って殺すようなヘマは打たないでしょう。裁きの場に引き出されて処罰されたのでしょう。投獄されて拷問に掛けられるような罪人は十のうち九までが死刑ですけれど。
死刑。私もその運命に直面しているのだと、今さらながらに思い至りました。自分の身体さえ見えない触れない闇の中に放り出されたような恐怖が込み上げてきます。天も地も無い闇の中で、自身も闇に溶け込んで行くような恐怖。
その一方で、悔いは無いという想いも兆しています。修道女、いえ伯爵令嬢として然るべき貴族と結婚したとしても。そして百年生きたとしても、けっして体験できないであろう冒険を幾つもしたのです。妹の姦計に陥って誘拐されて犯されて。娼婦として三か月を暮らして。盗賊団の姉御として三か月を過ごして。百人にちかい男たちと肌を合わせて。普通の女性なら生涯未通の穴まで開発されて。しかも、二人の童貞を奪ったのです。世の中に男女の数が同じなら、他の女性の取り分まで奪った計算になります。
それはもちろん。人並みに子供を産み育てるという穏やかな幸せを得られなかったという未練は残りますが、贅沢というものです。波乱万丈の悲劇と穏やかな幸福とは両立しません。子供を育てるというだけなら、この三か月にちょっぴり味わいましたし(ちっとも、穏やかではなかったです)。
そして何よりも……拷問の末に責め殺されるか、衆人環視の中を引き回されて処刑されるか。妄想さえも凌駕する被虐の死を遂げるのです。人は必ず死ななければならないのなら、恍惚の死は最大の幸福のはずです。
それにしても、なぜ……想念は、そこで中断されました。外に通じる扉が開いて、三人のうちではいちばんの下っ端らしいカルロが入って来ました。扉のすぐ横の仕切から牢番が現われて、ぺこぺこしています。
二人は、私の独房へ入って来ます。
足の鎖を床から外して、私を俯せに回転させてから、天井へ吊り上げました。
「くっ……」
背骨が逆海老に反って、みしみし軋みます。すぐに手首の鎖を床につなぎ直されたので、頭に血が下がって不快ですが、背中はすこし楽になりました。
「なんだって、こんな面倒なことをするんですかい」
牢番は不平たらたらです。
「おまえは、まだ日が浅かったな。拷問に掛けた囚人は翌日まで宙吊り。それも一日に三度は吊り方を変えるのが、ここの決まりだぜ」
吊って床から離しておくのは、拷問の傷に土毒が忍び込んで悪化するのを防ぐためだが、無理な姿勢を長く続けさせると鬱血が生じて手足が腐るから、適宜に吊り直すのだと――どうせ、マセッティから受け売りでしょう。
「そんでもって、これは仕事じゃなくて、おいらの趣味だがな」
そう断わってから、牢番に手伝わせて、足の鎖を縮めました。全身がぴんと引き伸ばされて、手足に鉄環が食い込みます。肩と股の関節が軋みます。
カルロが、床に転がっているパンを拾い上げました。
「腹が減ったろう。喉も乾いてるんじゃねえか?」
言われたとたんに空腹と、それ以上の渇きを覚えました。朝のうちは食欲がなくて、そのまま拷問に引き出されて。夕方まで気を失っていたのですから。
「食わせてやろうか。それとも、先に水が欲しいか?」
言葉に合わせて、鼻先にパンと水桶を近づけては遠ざけます。
まさか、囚人に慈悲を垂れるのが、この男の趣味ではないでしょう。
「お願いです。水を飲ませてください」
カルロの思惑に乗ってやります。しゃべるのも困難なほどに喉が渇いているのは事実なのですし。
「パンと水が欲しけりゃ、先にこっちを食べな」
予想した通りです。カルロは膝を突いて怒張をひり出し、私の顔にぺちぺちと打ち付けます。
口を使うなど、お安い御用です。でも、鎖に逆らって背中を反らし腕を宙で突っ張って顔を上げなければ――自らに苦痛を強いなければ、男根に届きません。それに、わずかなパンと水のために(かつてはひと晩に五グロッソも稼いでいたのに)股を開くよりも淫らな振る舞いをしなければならないなんて。私は胸を締め付けられ腰を疼かせながら、カルロを咥えました。
無理な体勢ですから、首を動かせません。雁首を舐めまわし鈴口を舌先でつつき、唇を震わせて亀頭を刺激しました。
「売女だけあって、すげえな。でも、おいらはこういうのが好きだぜ」
私の頭をつかんで、激しく腰を動かし始めました。口の中をこねくられ、喉の奥を突かれます。
早く終わってほしいとは思いませんが、売女の凄さを披露したくなって、舌も唇も動かしました。売女は蔑みの言葉ですが、なぜか誉め言葉に聞こえたのです。
カルロはすぐに終わりました。今日は少なくとも二回目だというのに、一週間も溜め込んでいたかと思うほどの量でした。
「水が欲しけりゃ、こいつも飲めよ」
言われるまでもありません。そんな失礼な真似をしたら、女将さんに叱られます……て、ここは娼館ではありませんでした。でも、躾けられた習性を無理に変える必要もないでしょう。
私が厭がる風情も見せずに飲み込んだので、カルロは満足したようです。でも、まだ水は飲ませてもらえません。
「あんたもやれよ」
牢番をけしかけます。
「いや……マセッティの旦那に叱られるから」
「ばあか。逆だよ」
マセッティは、男女を問わず囚人をもっとも辱めるのは口淫だと信じているのだそうです。
「だから、二か月前――ああ、あんたは知らねえか。歳を偽ってるとしか見えねえ男の餓鬼がぶち込まれたときなんざ……まあ、いいや」
マセッティは、口だけは初物に拘るそうですが、娼婦に初物もないです。それなら、下賤の者にどんどん犯させるのが、もっとも効果的だ。そういう考えなのだと、カルロは牢番を安心させます。
「それによ。旦那はけっこう臆病なんだぜ。この女は絶対に噛まないって確信するまで手――いや、チンポは出さねえんだ。おいらたちゃあ、闇夜に先頭を突っ走る損な役回りさ」
こんな無学な輩でも反語を使うのだと、それを驚きました。
「そんじゃ、まあ……えへへ。嬢ちゃん、頼むわ」
牢番なんて、他に使い道のなくなった老人の仕事です。この男も、五十はとっくに過ぎているでしょう。咥えてみると、カルロが骨付き肉なら、こいつは上質のパンです。味ではなく硬さを言っています。簡単に噛み千切れそうです。そんなことは、しませんけれど。
「激しく腰を遣うと、痛めかねないんでね」
尻の下に短い丸太を敷いて腰を浮かし、太腿の上に私の肩を乗せました。
「娼売で鍛えた技で頑張ってくれや」
首を動かせるようになったので、お望みの通りに――しゃぶって舐めて啜って、前後にしごいてやりました。それでも逝く気配を見せなかったので、雁首を歯の裏側でこすってやって、どうにか射精に漕ぎ着けました。カルロの十倍くらいは時間が掛かりましたが、けっこう私も夢中になっていたみたいです。お仕事に励んでいる間は、そんなに背骨の痛みを感じませんでしたから。
首も顎も疲れ果て、舌も痺れて。せっかくカルロが口元にあてがってくれた水桶から水を啜るのも、思うにまかせませんでした。
「面倒くせえな」
カルロは水を口に含んで寝そべって、口移しで飲ませてくれました。親切からの行為でないことは、舌を挿し入れてきたことでも分かります。
さすがにパンまで口移しにはしませんでしたが。わざわざ噛み千切ってから指ごと口に挿れてくれたので、そういうのも彼の趣味なのでしょう。三つあるうち二つを食べただけで、お腹がいっぱいになりました。男汁を飲んだ後は食欲が失せるのです。それでも、苛酷な拷問に耐え抜くためにも体力をつけておこうと、頑張って三つめも食べました。
食べ終わると、カルロは私を斜めに吊っている鎖を緩めてくれました。かえって背中は反ってしまいますが、強く引っ張られないから、差し引きではすこし楽になりました。
その姿で、私は一夜を明かさなければならないのです。
リタは膝立ちで吊られたまま、姿勢は変えられませんでした。鬱血の恐れがないのでしょう。
私は、鬱血なんかどうだっていいです。鉄板に圧し潰されボルトで貫かれた乳房の傷が脳天にまで突き抜けてきますし、肌を切り裂かれはしなかったものの、全身の鞭傷も疼きます。金属の花弁で拡張された女の穴も悲鳴を上げています。
とても眠れるものではありません。
カルロが来る直前に湧いた疑問が、また頭をもたげます。
なぜ、私はマセッティの残虐な拷問に胸をときめかせてとまでは言いませんが締め付けられ、腰を熱く疼かせたのでしょうか。これに比べたら、よほど生ぬるい女将さんたちの折檻には、全身が鉛になったかと思うほどに心が死んでいたのに。
女将さんのときには、私が妄想していたよりも責めが過激で、あたかも一粒の砂糖が塩の山に圧し潰されたのだと考えたのですが。その理屈なら、今日はもっともっと心を凍てつかせていたはずなのに。
その答を私は知っているように思います。
目です。マセッティの目は、加虐の欲望にぎらついていました。同時に、淫欲に燃え上がっていました。ブルーノ様と、まったく同じです。
それに対して女将さんの目は冷たくて――折檻を愉しむのではなく、それが必要であり効果的だと考えていただけです。娼売に差し支えがなければ、入手できるなら、喉を潰す毒を私に服ませていたかもしれません。文字も書けないように指を切り落とすことだって、してのけたでしょう。
私は、加虐者の悦びを写す鏡だったのです。
では、ニナの処罰は……群衆です。強盗や火付け人殺しのような凶悪な罪人には石を投げつけ声高に罵る彼らは、ただただニナの裸身を目で貪るばかりでした。今にして思えば、彼らの目も熱く燃えていました。処刑としての公開輪姦は、言うに及ばずです。
そうです。性欲の対象として扱われ虐げられることに、私は悦びを見い出していたのです。なぜなら、劣る存在である女が、そのときだけは、男にとって掛け替えのない存在になれる……いえ、それはどうでしょうか。子を生むことだって、女にしか出来ません。すべての女は、すべての男にとって掛け替えのない……分からなくなってきました。こんな苦しい形で宙吊りにされ拷問の余韻に呻吟しながら、まともに考えられるはずもありません。
今もなお腰の奥で埋もれ火が熱を発しているという事実――それが、私なのです。
……しばらくすると、別の疑問が浮かびました。私はなぜ、こうも平然と運命を、おそらく死刑に処せられるという間近に迫った未来を受け容れられるのかという。
けっして、心穏やかではありません。恐怖に心が凍りつきます。けれど。取り乱す気配もありません。究極の妄想が現実になろうとしている悦び……とは違うように思います。だって、死んでしまっては、そこから先の悦びは得られませんもの。
そういう欲望は捨てて、実現しようとしている悲劇の果実で満足しているのでしょうか。
根を詰めて考える気力も無く、しばらくは全身の痛みに埋没していました。
そのうちに、水を貪り飲んだ報いが訪れました。泥臭いとは思っていましたが、実際に腐っていたようです。お腹が痛いとかではなく、いきなり蕾を押し破られそうになりました。小水のほうも切迫しています。
これまでの私でしたら、決壊してしまうまで我慢を続けていたでしょう。苦しみから悦びを得るためではなく、ただ羞恥の故にです。
でも、今は。あっさりと努力を放棄しました。
派手な音を立てて、前後の穴から小水と汚物が噴出しました。斜め下向きに吊られているので、生温かい汚物が背中を伝います。おぞましいという感覚はあまり無くて、楽になった心地よさに脱力しました。
そして、第二の疑問への答が閃いたのです。
私は犯罪者なのです。子供たちの飢えを満たすためとはいえ、盗みは犯罪です。しかも、後々に備えてとか、柔らかいパンを与えてやりたいとか、いわば贅沢のために盗みを重ねました。その首謀者は私なのです。拷問されるのも当然なら、処刑されるのも当然なのです。
つまり、十のうち十まで、私が悪いのです。マセッティ様は清廉潔白。職務としての拷問に『愉しみ』を交えても非難されるべきではありません。厭々お仕事をするよりは、愉しみながらのほうが良いに決まっています。
私はマセッティ様に愉しんでいただきながら、安心して(?)泣き叫んでいれば良いのです。そう簡単に悲鳴を上げたり、まして慈悲なんか乞いませんけど。
考えがまとまって心が落ち着いたのでしょう。いつの間にか私は、浅い微睡みに痛みを憩わせていました。
翌日は朝一番に、全身に水をぶっ掛けられて汚れを洗い流されました。牢屋の床は良く考えられて作られています。水はわずかな傾斜に沿って部屋の中央へ流れ、そこからは浅い溝で防壁まで導かれて、せいぜい鼠が出入りできるくらいの小窓から外へ流れ出るのです。
後始末の後は、宙吊りにされたまま一日を過ごしました。カルロが言っていた通り、早朝と正午と夕暮れとに、吊り方を変えられました。
午前中は右手と右足、左手と左足を一緒に括られて直角以上に開脚させられ、V字形に。
午後は手足四本を背中でひとまとめに括られて、一本の鎖で吊るされました。手足は伸び切り、腰も背骨も逆海老に折れ曲がって、拷問椅子よりも苦しいくらいでした。
夜になって、いったんは床に下ろされ手足も自由にしてもらって、自分の手でパンを食べました。水はやはり変な臭いがしたので、喉を潤すだけにとどめました。
わずかに人がましい扱いを受けた後、ごく普通に頭上で両手を縛られて真っ直ぐに吊るされたときは、これでようやく休めると安堵したものです。
この日は、私は土毒(そんなものがあればですが)から絶縁されて宙吊りで過ごしただけですが、牢獄ではいろんなことがありました。
一人残っていた男の囚人が、老婆殺しを自白したのです。女の私には痛さも恐ろしさも実感できない拷問でした。
先端が四本の鋭い爪になっていて、途中が丸く膨れている大きな鋏のような器具で、男根と玉袋をひと掴みにされたのです。爪は根元に食い込んでいました。
「このまま捻じ切ってしまうぞ」
脅しではなく、実際に半回転もさせたのです。肉が引き裂かれて血まみれになりました。男は野獣のように吠えました。
そこへマセッティ様が猫撫で声で囁いたのです。
「強盗と殺人でも死刑とは決まっておらんぞ。悔い改めて、二度とアンブラに近づかぬと誓うなら、百鞭と三日晒しだけで済むように、儂が裁判官に嘆願してやるぞ?」
この言葉で、男は落ちました。
冷静に考えれば、平民の中級役人の言葉を騎士階級の裁判官が容れるはずもありません。だからマセッティ様も嘆願してやるとしか言わなかったのです。
午後早くに三人の新たな囚人が連れて来られましたが、拷問の仕掛でさんざん脅しつけられ、重罪犯(私とリタのことです)への過酷な扱いを遠目に見せつけられてから、外へ連れ去られました。
ここには牢獄が二つあるのです。ひとつは、拷問道具を揃えた重罪犯の独房。もうひとつは広さは同じくらいですが、男女別に仕切られただけの雑居房です。
雑居房には、常に四、五人の男女が入れられているそうです。周辺の村と合わせてもアンブラの領民は二万人くらいでしょう。ラメーズは半分くらいですが、囚人の数は滅多に十人を下回らないと聞いた覚えがあります。
だからといって、ラメーズのほうが治安が悪いとは言えません。銅山は伯爵家の直轄ですから、職人組合がありません。組合なら内々で処理する小さな罪を犯した者まで厳格に処罰されるという事情もあります。
政治向きの話は、女には興味がありません。身近な出来事が大切です。
リタがいきなり釈放されたことは、私にも大きな喜びでした。訴えが取り下げられたのだそうです。彼女が不貞を働いていたのはその雇い主でしたし、彼女を訴えたのはその妻らしいです。拷問の様子でも、彼女は(盗みに関しては)無実のように思えました。奥さんが冷静になったか、旦那様に叱られたか、彼を謝らせたか――そういうことなのでしょう。
とにかく。重罪犯の牢獄には、私ひとりだけになったのです。偶然かもしれませんが、マセッティが意図的に仕組んだような気がしないでもありません。むくつけき男を拷問するよりも、簡単に嘘の罪まで認めるような女よりも、若いくせに強情な娘を甚振るほうが、彼の好みに合うでしょうから。
どんな残酷な拷問をされるか、そしてマセッティがどれほど興奮するか。私は、冷たくて重たい鉛と化した身体の内奥に石炭を赤く熾しながら、牢獄での二夜目を過ごしたのでした。吊りからは解放されても、マセッティの『格別の慈悲』で、五つの穴がある板枷に手足を拘束されて、膝を曲げてうずくまった姿勢で。真ん中の穴には首を嵌めるのでしょうが、板枷が床に着いているときには、真正面から股間を嬲るのに好都合です。牢番も三人の拷問吏も、可愛がってくれませんでしたけれど。
入牢して三日目も、拷問はされませんでした。水を全身に浴びせられて、まだこびりついている膏薬を洗い流されてから板枷を外されて、両手は鉄格子から鎖で吊り上げられましたが、足を投げ出して座っていられる高さでした。それではお行儀が悪い――男の目を愉しませないのではないかと考えて、横座りで過ごしました。忘れたのかわざとなのか、汚物入れの桶は壁際に放置されたままでした。立ち上がって身体を斜めにしながら足を伸ばせば届くのですが、引き寄せるのは難しく、倒してしまったら悲惨なことになりますから、使いませんでした。どうせ、水を浴びせてもらえます。
四日目には、新しい重罪犯が投獄されたのですが。マセッティは昼から夕方まで拷問を続けて、あっさりと白状させてしまいました。そうしてみると、やはりマセッティは、軽罪犯への尋問とかいった『雑務』を片付けてから、私への拷問に専念するつもりなのです。
そして五日目。怯えながらも心待ちにしていた拷問が始まりました。その日の朝は水は飲ませてもらえましたが、食事を与えられませんでした。腐りかけの水にもすこしは慣れて、お腹をくだしたりはしなくなっています。けれど、パンを与えてもらえなかった理由が、恐ろしいものでした。
「せっかく食った物を吐き出しちゃもったいないだろ」
お腹を殴られるのでしょうか。それとも水責めにされて、大量の水を吐くことになるのでしょうか。
まったく違いました。
リタが焼鏝で責められたときと同じ、骨格だけの寝台に、鎖と枷で仰向けに拘束されました。リタのときは手を広げて脚は閉じたYの字形でしたが、私はX字形です。
「痛いばかりが拷問ではないぞ」
三人の拷問吏が私を取り囲みました。両手に小さな刷毛を持っています。腋の下や足の裏をくすぐり始めました。
くすぐったくて、身をよじります。
筆は腋の下から二の腕。足の裏から内腿へと進んでは、また元に戻ります。拷問で受けた傷の上を刷毛先がくすぐると、痛いような痒いような感覚が混じって、いっそうくすぐったく感じます。
「くふっ……あっ……」
どうしても声が漏れてしまいます。悲鳴には程遠い、およそ場違いな高い声です。
どうせ、刷毛は三点の突起と割れ目に集中するのだろうと予測していましたが、なかなかそこまで到達しません。
「あっ……んんん」
ついに乳房の麓をくすぐられたときは、蕩けるような声になってしまいました。
乳房と腋の下、割れ目の花弁と太腿。六本の刷毛が忙しく、けれど繊細に動きまわります。これまでに男から受けたどんな愛撫よりも、ピエトロでさえ足元にも及ばないような、繊細さとしつこさです。
私は乳首も女の芽も触れられていないというのに、穴にも挿入どころか刺激すらされていないというのに――快楽の坂をじりじりと押し上げられていきます。
「もう……もう……」
赦してではありません。焦らさないでと訴えたいのです。言葉にしないのは、私が悦んでこの責め(?)を受けているとは思われたくないからです。どうせ、いつかは刷毛先が頂点に達するでしょう。焦らされれば焦らされるだけ、快感は爆発的になるはずです。
「何かしゃべる気になったかな?」
マセッティの冷酷な声。もしも私が沈黙を貫けば、刷毛は私の身体から遠ざかるのでしょう。けれど、快感を得たいがために仲間を売るなんて真似は絶対にしません。私は、そこまで愚かではありあません。
「そうか……」
刷毛の動きは止まりませんでした。それどころか、今度はあっさりと三つの頂点を攻略してくれたのです。
「あああっ……すご……何か来る……お、墜ちちゃう……!」
私は全身を反り返らせました。手足に鉄枷が食い込んできますが、その痛みさえスパイスです。
私の身体も魂も宙に浮いて、それでも刷毛先は執拗に私を責め続けます。
「あああああ……もう……いやああああ!」
反語を絶叫した瞬間、不意に刷毛が消え去りました。と同時に。
ひゅん、バチイン!
ひゅん、バチイン!
ひゅん、バチイン!
三点に激痛が奔りました。
「いぎゃあああああっ……!」
笞で打たれたのです。
宙を彷徨っていた私は、文字通りに叩き落されました。高く昇っていただけに、落下の勢いは凄まじく、どれだけ落ちても地面にぶつかりません。無限の奈落をどこまでも落ちていく……それは、凄絶な快感でした。
ひゅん、バチイン!
ひゅん、バチイン!
ひゅん、バチイン!
さらに笞を叩き込まれます。乳房を太腿を股間を滅多打ちにされて、ようやく私は地面に叩きつけられました。
「仲間の名前を言うだけでいいのだぞ?」
私は顔をそむけました。顎をつかんで引き戻されます。
反射的に――というのは嘘で、くすぐるよりも残酷な拷問をされたくて、マセッティの顔を目掛けて唾を吐いたのですが、予期していたらしく簡単にかわされました。
刷毛の愛撫による快感は凄まじいのですが、砂糖を練り込んで膨らませ過ぎたお菓子に感じられます。ふわふわしていて、物足りないのです。硬く焼けすぎていても、骨付き肉が好きです。噛んでいるうちに香ばしい肉汁が口いっぱいに拡がります。
マセッティが身を引くと、今度は三本の刷毛によるくすぐりが再開されました。同時に、私が昂ぶりを示すと笞も襲い掛かります。さっきよりも軽い打擲です。私にしてみれば荒々しい愛撫と変わりありません。
じきに三本の笞は三人の片手に替わりました。乳房を握り潰しながら乳首をくすぐる。穴をこねくりながら芽を愛撫する。苦痛と快感とが、まったく同時です。私はさっきよりも高く押し上げられていきます。
これは拷問なのだろうかという疑問が、朦朧とした意識の中に生じました。最高の快楽を与えられているのですから。それとも、絶頂からさらに高みへと押し上げ続けられれば、いずれは極限の苦痛に変じるのでしょうか。鞭打たれて悦ぶのと正反対ですが、逆転という意味ではまったく同じです。
結局、そんな逆転は起こらずに、私はどんどん高く押し上げられて行って、また突き落とされて。今度は一本鞭で全身を鞣し上げられました。
「しぶとい小娘だ。ここまでとする」
正午を告げる鐘の音が聞こえてくると、マセッティは拷問の終了を宣しました。おそらく、三時間は責め続けられていたと思います。
マセッティと三人の部下が牢獄を去り、私は拷問台に磔けられたまま、地べたに叩きつけられた、その余韻にたゆたいます。
――けれど。マセッティが「ここまで」と言ったのは、午前の拷問は、という意味でした。晩春の長い陽が傾く前に、四人は戻ってきました。
私は三つ穴の板枷で、肘を曲げた両手を顔の高さに固定されました。そして、四本の脚で支えられた三角形の材木の前に立たされました。
大人の胴まわりほどもある材木は鉋で整形されています。稜線は、ちょうど仔馬の背中くらいの高さです。首のない木馬といった趣です。ですが、楔のような稜線から垂れているどす黒い血痕が、これは遊具ではなく拷問台だと、雄弁に語っています。
ウーゴとジルドが二人がかりで私を抱えあげて、木馬を跨がせました。
「痛いいっ……!」
割れ目の奥まで切り裂かれるような激痛に、私は悲鳴を上げました。
腰を浮かそうにも、足は宙に浮いています。もがいたら、板枷の重みで身体が傾いて転げ落ちそうになって、太腿で木馬を挟みつけて立て直しました。ますます稜線が食い込んできます。
午前中のお遊びみたいな拷問どころか、初日に座らされた拷問椅子よりも遥かに激越で鋭い痛みです。腰の奥が熱くなるどころではないです。それなのに……胸は苦しみや悲しみとは違う感情に締め付けられています。
魂の喜悦とでもいうのでしょうか。囚人を残虐に拷問することに悦びと興奮を覚えるマセッティの手で虐められている。彼の悦びが、私の魂に写し出されているのです。
もっともっと虐めてください。もう厭だと私が本気で泣き叫ぶまで、手を触れずともあなたが射精してしまうほどに、残虐に嬲って弄んで甚振ってください。
もとより、マセッティ様はそのおつもりでした。マセッティ様が直々に房鞭を手に私の横に立たれ、ジルドは彼の体格に似つかわしい木の大鎚を持って木馬の真後ろに立ちました。
ぶゅん、バッヂイイン!
「ひぎいいいっ……!」
たかが房鞭に悲鳴を上げたのではありません。背中を打たれて、反射的にのけぞって、股間を稜線に押し付けてしまったのです。
ぶゅん、バッヂイイン!
「きゃああっ……!」
ゴンンッ!
「がはあっっ……!」
鈍い衝撃と鋭い痛みとがひとつになって、脳天まで突き抜けました。ジルドが大木槌で木馬の端を叩いたのです。
「きひいいい……」
これは肉まで切り裂かれたでしょう。こんなことを繰り返されては、女の道具が壊されてしまいます。マセッティ様は、口さえ使えれば他には用が無いのでしょうか。
さらに十発ばかり、背中から腰にかけて鞭打たれ、木槌も二回木馬を揺すぶりました。そこでようやく、マセッティ様が後ろへ下がりました。
これで赦されるのだと、ほっとしました。残酷に虐めていただきたいと思っていても、加虐者が満足してくだされば、それ以上に責められたいとは思わない――そうとでも自分の心を推し量るしかない、不思議な感情です。
でもマセッティ様は、ちっとも満足なさっていませんでした。
火桶が持ち出されて、石炭に火が点じられました。鞴の風で、たちまち白熱します。
「これのために、尻は無傷で残しておいたのだからな」
無傷でなんか、あるものですか。今日は責められていなくても、五日前の拷問椅子で穴だらけにされた傷は癒えていません。
リタのときと同じように、火桶から引き抜いた焼鏝を宙ですこし冷まして、赤味が消えてからお尻に近づけます。押し付けられる前から、熱気で肌がチリチリします。
「動くなよ。火傷が広がると、瘢痕が残るぞ」
そんなこと、どうでもいです。瘢痕になるより先に処刑されるでしょう。
ジュッッ……!
「ぐうううっ……」
お尻に灼熱が襲い掛かったと同時に、股間にも激痛が走りました。反射的に腰を跳ねたのだと思います。
焼鏝はすぐに肌から離されましたが、凄まじい熱痛は、そこに居座っています。
ジュッッ……!
太腿も焼かれました。今度は事前に全身の筋肉を引き締めていたので、股間の激痛だけはまぬがれました。
三回四回とお尻に焼鏝が押し付けられましたが、もう冷めているのでしょう。最初ほどの灼熱は感じませんでした。
「あああ……」
悲鳴の余韻に快感が……いえ、快い感覚ではありません。充足感といえば近いでしょうか。虐められて苦しんでいる私を見てマセッティ様が悦んでいるという、それ。ひどく惨めですが、そんな私を私が憐れんでいるのです。
マセッティ様は二本目の焼鏝に替えて、木馬の反対側に移りました。そして、まだ焼かれていないお尻と太腿にも火傷を与えてくださったのです。
「これほど責めても、白状もせず赦しも乞わず……強情にも程がある」
嘆きと怒りの言葉ですが、深い満足の響きを、私は聞き取りました。
「焼印を持って来い」
カルロが鉄棒を何本も抱えて来て、一本ずつを私に見せつけてから火桶に挿します。鏡文字です。
13、17、666、ladr、prst、pcct、oscn。アルファベットは、母音を足してやれば――泥棒(ladro)、娼婦(prostituta)、罪人(peccatore)、淫乱(osceno)と読めます。他にも該当する単語はありますが、私に恥辱を与えるという目的なら、これしかないはずです。
「これは、ひと撫ででは済まさんぞ。主の御前に立つときもくっきりと残るように、肌の奥の肉まで焼き付けてやる」
あああ……死体になってまで恥辱が続くのです。それを享受できる私は消滅しているというのに。私は心の底から震え上がりました。
「今日のところは、取りやめても良いぞ」
「…………」
それでも、ペピーノとガイオを売ることは出来ません。子供たちを路頭に迷わすなんて、擦り切れかけている良心でさえも許さないでしょう。
「何もしゃべる必要はないぞ。しゃべれなくなるのだから」
私は三角の木馬から降ろされて、床に跪かされました。木枷は外されましたが、すぐに後ろへ手を捻じられて小さな板枷を嵌められました。
マセッティ様はズボンをずり下げて、萎びた男根を私の顔に突き付けます。裸の若い娘を目の前にして、お好みの嗜虐も堪能されたというのに……侮辱です。
「どうすれば良いか、分かっているな」
元娼婦に愚問です。私は根元まで咥えました。舐め回し、舌先でつつき、歯に唇をかぶせてしごきます。すこしは大きくなりましたが、あまり硬くないです。頭がくらくらしても堪えて前後に揺すり続けても、効き目がありません。
ペピーノやガイオなら続けて相手に出来るくらいの時間を掛けても、進展はありません。顎が疲れてきました。目まいがして気分が悪くなりかけています。もしかすると、マセッティ様は不能なのでしょうか。まだ白髪も生えていないというのに。
「出すぞ。しっかり飲め。こぼせば焼印だぞ」
え……だって?
じょろろろろ……口中に水があふれます。なんということを!
娼婦を蔑んで便器と呼ぶ男もいますが、マセッティ様は文字通りに私を便器にしているのです。
「んん……ぐふ……」
飲むしかありません。小水独特の饐えた臭いはしないです。でも、しょっぱいのとも苦いのともちがうえぐみがあります。なによりも、排泄物を飲まされているという屈辱感が強いです。でも、これでマセッティ様が満足されるのなら……腰の奥が、きゅうんとよじれます。
飲み終わって頭を引こうとしたら、髪の毛をつかんで引き戻されました。何もしていないのに、口の中で男根が怒張します。といっても、せいぜいペピーノくらいです。成人男性としては「稍小」です。
マセッティ様は腰を遣わず、私の頭を激しく揺さぶります。
「んぐ……むうううう」
髪を引っ張られて痛いです。馬車に揺られるより気分が悪いです。それでも、出来る限りは舌を動かして、マセッティ様の求めに応じます。
努力の甲斐あって、今度は速やかに射精してくださいました。言われる前に、ごくんと呑み込みました。口直しです。
今度こそ本当に満足なさったマセッティ様は、約束通り焼印は赦してくださいました。火傷には拷問吏に例の泥膏薬を塗らせて、傷口に土毒が入らないよう宙吊りにしてくださいました。
でも、これまでと一二を争う厳しい吊り方でした。俯せにされて、独房の四隅から手足を強く引っ張られました。そして、ぴんと伸び切った背中に大きな石の板を括り付けられました。背骨が軋み、腕も脚も引き抜かれそうな苦痛です。これは、私が何か粗相をした罰なのか、ただマセッティ様のお遊びなのか、それとも穏やかに継続する拷問なのか、マセッティ様は何もおっしゃいませんでした。
夜遅くなってから、単純な逆さ吊りに変えてもらって、ずいぶんと楽になりました。頭に血が下がって激しい頭痛と目まいに襲われますし、内臓が胸を圧迫して息苦しくなります。でも、マセッティ様は慈悲深くていらっしゃいます。両手は自由にしてくださいましたので、身体をうんと折り曲げて腿にしがみついていれば、しのげます。腕と腹筋が疲れたら、また逆さ吊りに戻れば良いのです。
こんな状態では、いかに私が図太くても安眠はできません。逆さ吊りでとろとろっと微睡んでは苦痛に目を覚まして身体を折り曲げる。この繰り返しで翌朝を迎えたのでした。
翌日は夜まで、様々な姿勢で宙吊りにされて。私は生まれて初めて、空中で月に一度の穢れを迎えたのでした。
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一挙3万文字です。ハイライトシーンです。しかも。
拷問は続くよ、どこまでも~♪
翌日からは傷を癒して。『犠牲者の恍惚』でHard Torture Again! なのであります。
苛酷な拷問というPLOTは不変ながら、捕まるシーケンスはブッツケ大変更。こういうことを商業誌でやらかすと、大目玉なら救いがあるというもの。切られますね。ふん、こちとら同人作家だもんね。しかし。あれこれ(見当外れもあるにせよ)アドバイスをくれる担当者/編集者がいないってのは……しんどいですな。まあ、売れ行きから出来を判断するしかないです。

上の画像。 似たようなシーンはあるけど、ドンピシャではないです。
これは楽屋裏の話ですが。仕出人物の名は、ちょこまか変更しています。うっかり同じ名前を使ったり、AとBは字面が似てるとか、まあ、製品版までにはきちんとします。キッチンは使わずにコンビニ弁当。
いや、まあ。
なお、西洋各国の人名については、こちらのサイトでお世話になっております。小説に使うのは自由という、ありがたいサイトです。
「ヨーロッパ、男性、名前」とか検索するとトップに出てきます。
欧羅巴人名録
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