Progress Report(third) 3:昭和集団羞辱史/物売編(夜)

 終末にじっくり読んでください。大量1万7千文字です。400字詰め約50枚です。

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   父の身勝手

 梅雨の期間も、アーケードのある繁華街に人の足は途絶えず、露天の路地も建物の陰になって雨の影響は少なかった。梅雨が明けて盛夏ともなると、和江の売上はさらに伸びた。肩も露わなサマーワンピースの御利益である。
 ヌード写真に比べれば、エロチックでもなんでもないのに。わずかな腕や膝の露出が、こうも男を惹き付けるとは、男に接すれば接するほどに、男という生き物が分からなくなってくる。
 秋物は露出が多いのとシックなのと、週ごとに替えて、違いがあるか試してみようかな。
 季節ごとに普段着とお洒落用を買うくらいの金銭的余裕はある。和江が売子として稼いだ金はすべて父親が受け取っているが、その中から週に千円は父から小遣いとしてもらっている。
 名目賃金の一万三千円から税金だの保険だのを天引され、寮費と社員食堂の食券購入費、さらに強制の積立貯金。手取は八千円ほど。その半分を仕送しているのだから――月に四千円の臨時収入は、実感としては所得倍増どころではなかった。
 その大半は郵便貯金にしているのだし、父の借金も順調に減っているはずだから、季節ごとに吊るしの服を新調することくらい、そんなに贅沢ではないと、和江は考えるようになっている。
 だから、盆休みで帰省したときも、不審に思われない程度にはお土産を張り込んだりもした。ただ、父の消息を家族に伝えられないのが、心苦しかった。
 奇麗な身になって故郷へ戻るまでは母ちゃんにも内緒にしておいてくれという、父の懇願だけではない。父が法律すれすれ――ではなく、猥褻図画頒布というれっきとした犯罪に手を染めていることなど、しかも自分まで手を貸しているなんて、口が裂けても言えることではない。
 居心地の悪い帰省だった。それでも、和江の心は明るかった。父の平日の稼ぎが生活費(と、お酒と煙草)に消えるとしても、畑仕事が始まる来春までには借金を完済出来るはずだった。
 ところが。父の借金は減るどころか、逆に増えていたのだった。
 確かに、来春には借金を完済出来るだろう――娘におんぶと抱っこで。それだけでも忸怩たるのに、三年以上の音信不通の挙句、尾羽打ち枯らして無一文で逃げ帰る。それでは、あまりに不甲斐無い。せめて出稼ぎ二回分くらいの金は持ち帰りたい。
 動機は立派かもしれないが、その手段に競輪を選んだのでは、結果は分かり切っている。
 オケラになっても。
 荒れた日の最終レースは、ガチガチで決まる。
 関東勢と関西勢の突っ張り合いだが、どう転んでも番手にノーマークのやつが飛び込んで来る。
 本命ラインの裏表。あの予想屋はこういうときは必ず外すから、その逆目で鉄板。
 溺れる者のまわりには無数の藁が浮かんでいる。トイチの街金も網を張っている。一発逆転を目論んで引っ張った一万円が、十五分後には紙屑と化しているという、もはや喜劇が繰り返される。

「済まない。ほんとうに済まない。和江がモデルを引き受けてくれんことには、畑を取り上げられてしまうんだ」
 帰省から戻ったその夜に、昭大が寮まで訪ねて来て――近くの公園まで和江を誘い出して。地面に土下座するなり、そう言ったのだ。
「どういうこと? それより……そんな真似はやめてよ。他人(ひと)に見られちゃう」
 事情が分からず、和江は途方に暮れる。
 父をなだめるようにして、とにかくベンチに並んで腰掛けて。競輪で負けて借金が増えた顛末を聞かされて――和江は絶句するばかり。
 そもそも連帯保証人は、求められたら全財産を処分してでも返済に応じなければならない。昭大が持っている財産といえば、農地であり自宅である。
 それを残したまま細々と返済していくことで猶予してもらっていたのは、債権者――生田組の温情だった。
 ところが利払いすら滞らせたうえに、新たな借金まで重ねて、トイチでは雪だるま式に膨れるばかりだから、これも生田組に代位弁済してもらって――借金総額は三十七万円に達した。
 これではいつまで待っても完済など無理だろうと、生田組は伝家の宝刀を抜きに掛かったのだが。実のところ、農地は処分が難しい。宅地に転用するのは法律で禁じられているから、近隣の農家に買い取ってもらうしかないが、そちらも資力は無いし、増えた田畑を耕す人手が無い。生田組としても、現物を差し押さえたところで処分に困る。
 娘に借金を肩代わりさせるか、写真のモデルをやらせろ。そういう話に持って行くための脅しだった。
 ただし。娘が肩代わりしないのであれば、モデル料として十万円だけを借金と相殺してやるから、今のシノギを続けて細々と返してもらおう。土地を売れとは言わないぜ。
 和江が肩代わりするとは、毎日五千円でも稼げる仕事をさせられる――もっと直截に言えば、身体を売らされるということだ。さすがに、昭大も娘をそんな目には遭わせられない。
「それに……パンティまでは脱がないで良いと言ってくださってる。セミヌードまでだ。色付きの封筒みたいなことも無しだと約束してくれた」
 本当だろうか。和江は父の――ではなく、ヤクザの言葉を疑った。しかし、パンティを脱がないでも良いという言葉が、拒絶の一画を崩したのは確かだった。
「だって、四人のモデルさんはみんな……」
 シロクロとかエスエムをやらされてるじゃない――とは、父親に向かっては言いにくかった。
「これは口にしてはいけないんだが、あのモデルは、みんな若頭の奥さんだったんだ」
 いくらナアナアの警察でも、未成年に猥褻行為をさせたとなると目をつむってばかりもいられない。しかし、結婚した女性は、何歳であろうと二十歳以上の成人として扱われる。民法に限った話だが、顧問弁護士なら、それを根拠に警察と検察を丸め込んでくれる。
 だから、若頭は未成年の娘と結婚しては離婚を繰り返している。とは言え、愛情が無いわけでもない。大姐御と呼ばれている征子も、姐御と呼ばれている三代目も、もちろん現役の四代目も、頻度の差はあるが、今も(縛って叩いて、とまでは昭大も娘には言わなかったが)抱いている。例外は二代目だけで、これは広域に勢力を張っている組織と四分六の盃を交わす際の献上品にされた。自分の女房を差し出すのは、遠く戦国時代からの服従の証である。
 農地を取り上げられては、一家で路頭に迷う。父の懇願を聞き入れるしか、和江に選択肢は無かった。

 その週の土曜日。和江が連れて行かれたのは、いつもの組事務所ではなかった。街外れの、倉庫が立ち並んだ一画。いわゆる流通拠点だった。トラックの出入は多いが、何日もシャッターが閉ざされたままの倉庫も珍しくない。それ以上に肝心なのは、この一帯も裏向きでは生田組が仕切っているということだった。たとえ素っ裸の女が縄で縛られて外を引き回されていても、組のバッジを着けた男が付き添っていれば、彼女は透明人間も同じである。
 そんな物騒な場所とは、もちろん和江は知らないのだが。
 先に述べた、普段は使われていない倉庫。そこには若頭と征子、そして和江の知らない男たち三人が待ち受けていた。
 三人の男たちが半袖シャツに替えズボンという平凡な装いに対して、若頭はいつものことながら、ノーネクタイに派手な縦縞の背広。征子は珍しく和服――というか、浴衣姿だった。
「お手柔らかにお願いしますよ」
 昭大と和江を運んで来たタクシーは、昭大だけを乗せて走り去った。
 狼の群に取り囲まれた子羊。
「まずは、こいつに着替えてもらおう」
 手近な木箱の上に、セーラー服一式と下着が置かれた。
 セーラー服なら倍額とか若頭が言っていたのを、和江は思い出した。ますます不安が募るのを抑えて、和江は勇気を振り絞る。
「あの……ほんとうに、全部は脱がなくてもいいんですよね?」
 和江にとっては、半分だけでも気を失いそうな羞恥なのだが。身体測定と同じだと、自分に言い聞かせている。
「ああ。親父にも約束してあるが、パンティは脱がなくていいぜ。本番もさせない。ヌードでも、おまえが厭と言うポーズは強要しない」
 なぜ、そんな甘い条件で十万円なのだろうという疑問には、敢えて目をつむる。
「あの……ひとつだけ、お願いがあります。聞いてくださるなら……全部脱いだってかまいません」
 若頭は片眉をちょっと吊り上げただけで、次の言葉を待っている。
「競輪場のトイチも、生田組の息が掛かっていますよね。二度と父にお金を貸さないようにしてください」
 そこまでは分かっている和代だったが。なぜ生田組が昭大を返済不能に追い込もうとするのか、そこへの洞察は無かった。
 和代としては、セミヌードだけで構わないという約束など信じていない。パンティをずらしてみようか。もうちょっとだけ――そんなふうにして結局は『御開帳』まで撮られるかもしれない。どころか、黒封筒のようなことまでされかねないと危惧している。だから、自分から「ひとーつ、ふたーつ」と数えて歯止めを掛けると同時に、自分の犠牲が無駄にならない方途を考えたつもりでいた。
 若頭は、二つ返事で和代の申し出を受け入れた。
「なんだったら、親父に渡す日当から利息分は天引してやろうか?」
 本来は、利息分どころか元本分まで天引してもらうべきなのだが。何日も続けて坊主だってあるから、生活費に困る場面も出てくる。
「私が売った分は、半分を天引してください」
 彼女が手伝うようになってから、週末の売上は三倍くらいになっている。半分を天引されても、昭大は(競輪などしなければ)困らないはずだった。
「分かった、そうしてやるよ。さあ、始めるぞ」
 男たちは和江を取り囲んだまま、動かない。
「あの……ここで着替えるんですね」
 分かり切ってはいたが、どうしても訊いてしまう。着替えているところを見られるのは、全裸を見られるよりも羞ずかしい。若頭が黙って頷くのを見て、和江は改めて覚悟を定めた。
 用意された衣装はセーラー服の上下と、清楚なシュミーズと、ブラジャーとパンティ。
 和江はサマーワンピースを脱いで、スリップも落とした。ブラジャーは着けていない。下乳に鉛筆を挟んでも落ちないのがブラジャーの着用基準だという俗説を信じている。乳房を形良く整えるという発想は、すくなくとも/fc2/女/規制/学生にはない時代だった。
 初めて着けるブラジャーにもたついていると、征子が手伝ってくれた。背中のホックを前で留めて、ぐるりと半回転させてからカップに乳房を押し込むという、当時としても乱暴なやり方だったが――それが正しい装着法だと、和江の頭に刻み込まれた。
 シュミーズを頭からかぶって。半年前までは着ていたのだから、セーラー服の上下は手慣れたものだった。最後に、スカートの中に手を突っ込んでパンティを穿き替えた。ずいぶんと小さく、ヒップの上半分が剥き出しになる違和感に戸惑う。
 着替え終わると、木箱に腰掛けさせられた。
「征子、頼むぜ」
 征子が化粧セットを隣の木箱の上で開けた。和江は、スッピンで来るように言われている。あまりに『ばけべそ化粧』なので、それでは商品価値が下がるのだろうと、悔しいが和江は理解している。
 征子が施したのは、ごく薄い化粧だけだった。それよりも、髪をいじる。工場では精密器械を組み立てるので、髪の毛が落ちないよう、和江は長い髪を引っ詰めて後ろで丸めている。ちょっと大人っぽい雰囲気になるので、けっこう気に入っているのだが。征子はそれをほどいて、三つ編みのお下げに結い直した。赤いリボンも結んで――まるきり/fc2//規制/学生
の印象に変えてしまった。
 成熟した女が好まれる風潮に対して、セーラー服と三つ編みお下げ。若頭が狙っている写真の購買層が偏った性癖の持主、ありていに言えば変態であることは――和江には分からない。ただ、ひどく稚なくなってしまって、それも羞恥に輪を掛けた。
 支度が整った和江の後ろに、中年の男が立った。無言で手首を握って、後ろへ捻じ上げた。
「いやっ……」
 反射的に振りほどこうとしたが、びくとも動かない。もう一方の手まで捻じ上げられ、手首を重ねて縄で縛られた。
「約束が違います。ただのヌードだけです」
「プロみたいに色っぽいポーズを取れるってのか?」
「……努力します」
「素人のままごとに付き合ってる暇はねえんだよ。おまえは、誘拐されて甚振られる/fc2//規制/学生――そういう設定なら、演技もポーズも要らねえだろうがよ」
「でも……」
「安心しろ。こっちも任侠に生きるヤクザだ。約束は守る。本番はさせねえよ」
「でも……」
「デモもストもねえ。先生、続けておくんなさい」
 先生と呼ばれた中年の男が、和江の手首を縛っている縄を引っ張り上げて、首を巻いた。和江は肩が軋むほどに腕を吊り上げられ、首が絞まるので俯きもできない。
 先生が別の縄を二重にして、中間に大きな結び瘤を作った。
「ほら、あーん」
 言葉は優しげだが、顎をつかんで締め付ける。痛みに耐えかねて開けた口に縄の結び瘤が突っ込まれて、縄尻が頬を縊った。
「誘拐した獲物には、大声を出されないように猿轡を噛ますのが定石だからな。顔が変形するから、普段の髪形でスッピンのおまえとは別人だ」
 ヨツボシの人間にも写真を売ることだってある。ばれないようにしてやったんだと、恩着せがましく言う。
 和江は納得するしかない。こんなことを知られたら、会社に居られない。
「それじゃ、撮影開始だ」
 和江は壁際へ連れて行かれた。片方には木箱がピラミッドに積まれて、反対側には天井を縦横に走るクレーンの鎖が垂れている。その間に敷かれたブルーシートの上に、和江は横座り。斜め左右からスタンド式ライトで照らされ、大きなレフ板を持った男が、和江に反射光を当てる。
 本格的な撮影会に臨んだシンデレラ・ガール。不安と怯えの中にも、浮かれた気分が少しだけ交じる。
 カメラも本格的な一眼レフ。大きなレンズがいろんな角度から和江に向けられて、パシャパシャと立て続けにシャッターが切られた。
 何枚撮ろうと、実際に使われるのは一枚か二枚。すこしでも良い構図を求めて、プロはそうするのだというくらいは、和江も知っている。シンデレラ気分が強くなる。
「次は、いよいよ令嬢が誘拐魔の毒牙に掛かるシーンだ」
 セーラー服の胸当が取り去られ、脇のファスナーが開かれて、スカートも太腿までたくし上げられた。
 また、一分ばかりシャッター音が響いて。
 スカートを脱がされ、上着は鋏で切り裂かれた。
 新品なのにもったいないな。そんなつまらないことを考えて、平常心(なんか、とっくに失せているのだが)を保とうとする。
 また一分のシャッター音。そして、シュミーズは引き千切られた。
その間に、若頭が服を脱いでいた。六尺褌に背中一面の刺青。しかしよく見ると、それは肌襦袢に描かれた絵だった。
 ヤクザのくせに、変なの……
 面白がっている場合ではなかった。若頭が和江の後ろから抱きすくめてきた。
「んんんっ……?!」
 ブラジャーの中に手を突っ込まれて乳房を握られ、和江は抗議の声を上げようとしたが、猿轡で言葉は封じられている。
「どうした。厭なのか?」
 和江は何度も大きく頷いたのだが……
「言ってくれなきゃ、分からねえぜ。厭なのか?」
 尋ねるふりをしながら、若頭はねちっこく乳房を揉む。
 和江は「厭なのか」という問に答えて、また頷いたのだが。
「そうか、いいんだな」
 日本語の曖昧さを悪用して、若頭が決めつける。乳首を摘んで転がしたりもする。
 びくんっと、和江の上体が跳ねた。まったく未知の、甘い稲妻とでも形容するしかない感覚が乳首に走ったのだった。
 この時代の少女の常として、和江は自身の身体におそろしく無知だった。股間はおろか、乳房でさえ自分で弄んだ経験も無かった。だから、触発された性感は、まったく未知の領域に属していた。
 女房だけで四人も(十代の少女を)コマしてきた男が、そういった事情を見抜けぬはずがない。
「気持ち良いだろ。もっともっと気持ち良くしてやるぜ」
 今の和江には、未知の快感は新たな恐怖でしかない。必死にかぶりを振るのだが。
「厭よ厭よも好きのうち、だよな」
 若頭はブラジャーをずり上げて乳房を剥き出しにすると、両手で双つの乳房を激しく揉み立てる。
 それは圧迫であり苦痛なのだが、乳首を摘まれると、たちまち甘い稲妻が乳房を貫き背筋を駆け抜ける。それを繰り返されるうちに、乳房に食い込んでくる指にさえも、苦痛の中から淡いさざ波を掻き立てられてしまう。
 数秒おきにシャッターが切られ、新しいフィルムを詰めたカメラと交換されていくのだが、そんなことは和江の知覚の圏外に去っている。
 いつか和江は、胡座を組んだ若頭の脚の間に尻を落として両足を前へ投げ出した形になっていた。
「んん……あ゙あ゙っ、む゙ん゙ん゙……」
 言葉にならないくぐもった声が、艶を帯びて鼻に抜けている。
 つうっと、若頭の右手が下へ滑った。
「あんんっ……み゙い゙い゙っ……!」
 もどかしそうな呻き声は、すぐに小さな悲鳴に変わった。薄い生地のパンティ越しに、淫裂の中筋を指が滑り上がったのだった。パンティは撮影用に手を加えられていて、股間の裏布が無い。指が滑った跡が、稚ない汁で滲んでいた。
「へえ。一丁前に尖らしてやがるぜ」
 淫裂の上端で、布地が鉛筆の先端ほどにも盛り上がっている。
 若頭が、そこを指の腹でこすったというよりも――生地を動かして、中の突起と擦れ合うようにした。
「み゙ゃあ゙あ゙っっ……やえ゙え゙っ!」
 オクターブ高い悲鳴を噴きながら、和江の腰が大きく跳ねる。
「ふふん。生娘なら、これぐらいが合ってるんだろうな」
 若頭はパンティの中を侵そうとはせずに布地をこすり続ける。
「ああああああああああーっっ……」
 和江は歌手顔負けの長い悲鳴を吐き切って、若頭の胸板にぐたっと背中を預けた。初めて受けた弄撫に和江は、峨々と連なる峰の最初の小高い頂に達したのだった。
「ずいぶんと早い仕上がりだったな。縛られて写真を撮られているうちに感じてやがったな。征子よ、おまえの見立ても大したものだな」
 今のうちにきわどいやつを撮っておくか――と、膝の間でとろんとしている和江のパンティをずり下げた。
「約束通り脱がしゃしねえ。引き千切るだけだって、やってみたかったが、自分から脱ぐって言い出されちゃあな」
 厭と言うことはしないと約束しておきながら猿轡で言葉を封じたり――この男の性癖は許容範囲を超えて歪んでいるようだ。
 早春の萌草のように淡い淫毛は、和江の女性器をほとんど隠していない。それを接写させ、さらに小淫唇をV字形に広げた指で割り開いて、膣口を狭めている処女膜までもレンズの前に曝す。
 和江は余韻にたゆたっているだけで意識は残しているから、何をされているかの知覚はあるだろう。しかし、抵抗のそぶりは示さない。
「さて……山崎のやつ、どうやって消してやろうか」
 まるで信頼し切った恋人の胸に抱かれるようにしてぐったりしている和江の股間をまさぐりながら、物騒な言葉を若頭が独りごつ。
「エンジンが暖まったところで、乗ってみようかい」
 和江を床に突き転がした。
「み゙ゃんっ……」
 半ばは正気に還って、縛られた裸身を起こす和江。
 先生と呼ばれた男が、縄をほどきに掛かったが――いっそう厳しく緊縛するための段取だった。
「んん、んんん……?」
 呻いているうちに、きっちり高手小手に縛られ、胸の上下にも縄を掛けられて、もっと牛乳を飲みなさいよと同級生の女子にもからかわれていた乳房が、鞠のように縊り出された。鞠といってもドッジボールとかではなく、ソフトボールよりは大きいかなというところだが。
 足を掴んで胡座を組まされそうになったところで、全身に絡み付いていた快感の残滓が払拭された。
「んんんんっ……あえ゙え゙!」
 脚を閉じようと、渾身の力で抗う。小娘でも、脚の筋力は成人男性の腕力を凌ぐ。先生が手こずっているのを、カメラマンの助手が手伝おうとする。若頭がそれ押し留め、お下げを掴んで仰向かせる。
 ばしん!
 縄で縊られている頬に痛烈な平手を打ち付けた。
「どうせ、奥の院まで御開帳して、しっかりフォルムに焼き付けてあるんだ。今さらジタバタするんじゃねえ」
 現役大物ヤクザの威迫に、和江は震え上がった。それでも。
 この人の言うことに従っていたら、また、あんなふうに可愛がってくれるかな――と、そこまで明確に意識してはいないが、なんとなく甘えた気分は残っていた。さらに二発の往復ビンタで、それも吹っ飛んだけれど。
 胡座を組まされて足首を引き上げられ、曲げた膝のくぼみに足の甲が嵌まり込む形にされた。結跏趺坐。手を使わないと、自力でほぐすのは難しい。
 さらに脛を縛られ、縄尻を首に巻かれて引き絞られた。上体が四十五度にひしがれる。
 シャッターの雨が降る中で、若頭が六尺褌をほどいた。
「…………!」
 成人男性の股間を直視するのは、父と一緒に風呂へ入っていた/fc2//規制/学生のとき以来だった。そして父の股間は、当然だがうなだれていた。
 勃起した男性器の大きさに、和江は絶望的な恐怖を覚えた。いくら無知でも、女性器の穴に男性器の棒を挿入するのが性行為――子作りだということくらいは知っている。
 けれど、それは不可能事にしか思えない。若頭の股間に聳え立つ肉の棒は、擂粉木よりも太くて長い。しかも、ごつごつと節くれ立っている。
「ん゙ん゙ん゙っ、む゙ゔゔゔ……!」
 和江は全身を揺すって抗議した。シロクロもエスエムもやらなくて良いという条件だった。すでに縛られていて、これはエスエムだと思うが、縄を解いてもらって半日もすれば、元通りの身体に戻る。けれどシロクロは、処女を破られてしまう。絶対に駄目だ。
「おまえも物覚えが悪いな。厭なことは厭と、はっきり言え。そうじゃないと承諾だと受け取るぞ」
 和江を絶望に突き落としておいてから、若頭が言葉を和らげる。
「約束は守るぜ。本番はしねえ」
 言葉とは裏腹に、和江の身体を浮かせて前へ倒した。
 膝と肩で身体を支えて、尻を高く突き上げた形。まさに牝犬が牡を受け挿れる姿勢と同じだった。
「んんん、んんんんっっ……」
 なんとかして虎口を脱しようと、和江はもがく。尻を振って男を誘っているようにしか見えないとは、気づくどころではなかった。
「本番、御上の流儀で言えば、性行為だな。そいつは、ここにマラを突っ込む行為を言う」
 若頭の指が淫裂を穿った。
「み゙ひいっ……!」
 鋭い痛みが奔った。指一本で、こうだ。擂粉木なんか突っ込まれたら、股が裂けてしまう。
「それはしないと、約束しているからな。今日のところは、こっちを使ってやるよ」
 若頭の指が後ろへ動いて、肛門をくすぐった。
「み゙ゃあ゙あ゙あ゙あ゙っっ……?!」
 息を吸い込みながら叫ぶような、奇妙な悲鳴を、和江は上げた。
 指でつつかれたショックもさることながら、そんなことは擂粉木をオマンコに突っ込むよりも不可能だとしか思えない。
「ここにチンポを突っ込んでも、本番とは言わねえからな。約束は守ってるぜ」
 そんなのは詭弁だ。そうは思っても、抗議の言葉は封じられている。
「ほんとは浣腸して腸を綺麗にするんだけどな。金山寺味噌が付いたほうが、絵になる」
 若頭は何やら講釈を垂れながら、指で肛門をほじり始めた。
「力を抜け。力むと痛いぞ」
 そんなことを言われても。汚いところ恥ずかしいところを嬲られているという思いに、和江は凝り固まっている。
「しょうがねえな。もちっと暖機運転をしてやるか」
 右手で肛門をつつきながら、若頭の左手が横合いから股間をまさぐる。小さな肉芽を探り当てて、きゅるんと摘んだ。
「い゙あ゙あ゙あ゙あ゙……!」
 パンティの布地越しに刺激されてさえ凄絶な快感が奔った急所を、今度は直接に摘まれた――だけではない。包皮の中の実核を、枝豆を鞘から押し出す要領で動かされて、和江は腰全体が爆発したような感覚に襲われた。
「そらよ、逝っちまいな」
 きゅろんきゅるんと刺激されて、たちまち、先ほど到達したよりも高い頂上へと押し上げられる。つぷっと肛門を穿たれて鈍い痛みを覚えたのだが、それさえも太くて甘い稲妻を呼び寄せる。
「い゙あ゙い゙、い゙あ゙あ゙……」
 指を二本にされて、さすがに鈍痛が快感を上回った。
 苦痛だけではない。排泄物を出す穴に異物を逆方向から押し込まれて、しかも中を掻き回されるのは、不快とか違和感といった通り一遍の言葉では表わせない奇妙な感覚だった。
「もうちっとほぐしてやりたいが、クソをほじくるのも気持ち良いもんじゃねえからな」
 だったら、やめてください――和江は心の中で喚く。
 すっと指が抜かれて、痛みが遠のいた。
 若頭が身体を起こして、真後ろから迫る気配を感じた――直後。指とは比べ物にならない、太くて熱くて硬い異物が肛門に押し付けられた。
 ぐううっと肛門を圧迫される。痛みとは異なる不快感が強まっていって――ぐぼっと何かが突き抜ける感触と同時に、激痛が襲ってきた。
「ま゙あ゙あ゙あ゙っっっ……!」
 和江は声の限りに喚いた。身体を真っ二つに引き裂かれるような重たい痛み。そして灼熱。
「ううううう……やええおお……」
 嗚咽がこぼれる。
 ばちん!
 若頭が尻を思い切り叩いた。
「泣き言を言うんじゃねえ。十万円を稼ごうってんだ。俺を悦ばせてみやがれ。よがり声のひとつも啼いてみろや」
 励ますのではなく、さらに泣かせている。和江からは見えないのをさいわいに、指でカメラマンに合図して、泣き顔のクローズアップを撮らせる。
 それに気がついて、和江はレンズを睨み返した。それくらいの気力は残っている。
「ついでに、こっちもだ」
 若頭がのけぞって、結合部をレンズに曝す。
「まあ、売物にゃならねえが、記念写真ってとこだ」
 撮影は九割方終わったが、こちとらはこれからが本チャンだからなと、これはカメラマンに言ったのか。初めてだから乱暴にしてやると言わんばかりに、激しく腰を打ち付け始めた。
 ぱんぱんぱんぱん……
 がらんとした倉庫の空間に、肉と肉とがぶつかる乾いた音が吸い込まれていく。
 和江は、ただ熱痛に翻弄されるだけ。
「ん゙っ、ん゙っ、ん゙っ、ん゙っ……」
 肉の杭を打ち込まれるたびに呻き声を漏らしながら、涙をこぼす。
 そうして。恥辱と苦痛のうちに、最初の凌辱が終わった。若頭が抜去して立ち上がる。和江は緊縛されて坐禅転がしにされたまま。最後の仕上げにと、汚濁にまみれた肛門がフィルムに収められる。
 それまで離れた所から成り行きを見守っていた征子が、親切ごかしに和江に寄り添う。
「もう、これで痛いのは無しだからね――あんたが、いい子にしてればだけど」
 和江の汚濁を拭き取ってやりながら、慰めだか脅しだか分からないことを言う。
 和江は無表情に聞いているだけ。目は虚ろに死んでいる。
「おまえがあんまりにいじらしいので、ついやり過ぎちったぜ。ボーナスを五万円つけて、父親の借金は二十二万ってことにしてやるよ」
 若頭がラッキーストライクを一服しながら、和江に柔らかく声を掛けた。
 五十歩百歩じゃなくて、二十二万三十七万。それでも、月々の利払いを考えれば大きな違いだ。
 征子が和江の頬を縊っている縄をほどいた。
「……ありがとうございます」
 感謝の念は無いが、礼を言わせるために猿轡を外したのだと――和江は判断した。ヤクザを怒らせるのは怖かった。あんな痛烈なビンタは願い下げ。もちろん、ほんとうに怒らせたらあれくらいでは済まないだろうと分かっている。
「ところで、物は相談だが……先生、足をほどいてやってください」
 若頭の言葉は中断されて、中年男が和江を起こして足の縄をほどき、結跏趺坐もほぐしてやった。
 和江は、ぴたりと脚を閉じて正座した。いまさらだが、恥部は隠したい。
「もうちょい頑張るっていうんなら、借金は帳消しにしてやってもいいぜ?」
 和江の心が、大きく揺れた。すぐにでも父は郷里へ帰れる。でも、家族の幸せのために、そこまで自分を犠牲にして良いものだろうか。後悔しないだろうか。
「シロクロだと思ってやがるな」
 小娘の考えなどお見通しと、若頭が嗤う。
「フェラチオって知ってるか。チンポを口でしゃぶるんだよ。もちろん、ザーメンは良く味わってから飲むんだぜ?」
「…………?!」
 黒い封筒の写真で、それを見たことはあった。確かな証拠があるから、そういうことをする女性はいるのだけれど。もしも言葉で聞かされていたら、絶対に信じていなかっただろう。排泄器官を口に挿れるだなんて。
 男子が鉄管ビールと称して、蛇口を咥えて水を飲むのを見て、ひどく不潔だと思ったものだ。飲水が出るところを咥えるのでも、そうなのに。おし/fc2//規制/この出る部分をしゃぶるだなんて……
「本番じゃねえ。法律でいう『性交』には当たらない。おまえは、綺麗な身体のまんまだ。それでいて、三十七万の借金が帳消。悪い話じゃねえだろ」
 そうだ。どんなに不潔で破廉恥なことでも、身体に証拠が残るわけじゃない。口をつぐんで、夫になる人を騙して、幸せに……なれるだろうか。生涯、罪悪感に苛まれるのではないだろうか。
 和江の迷いは、次のひと言で叩き壊された。
「ケツマンコにチンポを咥え込んどいて、今さらどうってこたぁねえだろ。おしゃぶり一発二十二万円だぜ。おまえの給料の何年分だよ?」
 なぜ、そんな破格の金額をもらえるのか、ちらっと疑問には思ったが。その疑問さえ前提が間違っているとは気づかない。月五分の利息が無ければ、昭大はとっくに借金を返済し終えている。
 とはいえ、月五分の複利は年利で八割。この当時の法律で許容されている百九パーセントよりは低いから、そういう条件を呑まされた昭大の責任ではあるが。そういうことを言い出せば、元々の三十万円の債権も、生田組が幾らで街金業者から下取したことやら。
 いずれにせよ、三十七万円の借金など、帳面上の数時にすぎない。それを帳消しにしてもらっても、昭大も和江も、一円だって現金はもらえない。ロハでヌード写真を撮影され、肛門性交を強いられ、さらに口淫を迫られているという見方だって成り立つ。
「どうなんだよ。たいがいに腹を括れや!」
 わずかな疑問も恫喝の前に吹き飛ばされて、和江は自動人形のように頷いていた。
「やるんだな。喋れるようにしてやったんだ。俺のチンポをしゃぶっているところを写真にしてくださいと、はっきり言え。厭なら厭でいいんだぜ。おまえの親父の借金は二十二万。おっと、じきに月が替わって二十三万一千円になるな」
 追い詰められて、和江は場末の娼婦でもなければ口にしないような言葉を、その未だ穢されていない唇で紡がされてしまった。
「若頭さんの、お、オチンポを……舐めます。写真を撮ってください」
「舐めるだけじゃねえよ。喉の奥まで咥え込んで、しゃぶって、ケツマンコにされたように、今度はおまえが自分で頭を動かして出し挿れするんだ」
「…………」
「復唱しろとは言わねえ。始めてもらおう。縄は縛ったままだぜ。そのほうが絵になるからな」
 まだでろんと垂れているが、真珠を入れて節くれ立った亀頭を、和江の口に近づける。
「その前に、お願いがあります!」
 和江が勇気を振り絞って訴えた。
「この期に及んでなんだってんだよ」
「キッスしてください」
「はあ……?」
 強面のヤクザに、似合わず、ポカンと口を開けて少女の顔を見下ろす若頭。
「私、まだキッスをしたこともないんです。それなのに……」
 言葉を詰まらせたが、どうにか思いの丈を口にする。
「初キッスがオチンポなんて、厭です。せめて、まともなキッスくらい……」
「こりゃまた……くくく……」
 爆笑寸前の微苦笑――とでも形容したら、いくらかでも雰囲気を伝えられるだろうか。
「ますます気に入った。いいだろう、願いは叶えてやるよ――立ちな」
 気力のありったけを振り絞って、女のほうからキスをねだるなんてはしたない真似をして、和江はへたり込んでいる。
「世話の焼けるお嬢ちゃんだな」
 緊縛されてぴっちり閉じている腋の下に手を差し入れ、釣り上げるようにして、若頭が少女を立たせる。膝に力が入らず崩れ落ちようとするのを強く抱き締めて支えるというか、直立を強制させておいて。顎を上向かせ、おおいかぶさるようにして唇を重ねた。
「んむううう……?!」
 キスといえば唇の接触――くらいにしか考えていなかった和江は、いきなり唇の裏を舐められて仰天した。さらに押し入ってこようとするのを、歯を食い縛って拒んだ。
 口を開けろ――と、若頭は言葉で説得したりはしない。片手で和江の頭を抱え込んで逃げられなくしておいて、もう一方の手をふたりの間に滑り込ませると、和江の乳首を摘んだ。力まかせにひねる。
「んみいいっ……!」
 甘い稲妻ではなく鋭く重たい激痛に襲われて、食い縛っていた力が緩む。すかさず、舌が口中に押し入ってきた。
 これを噛んだら、ただじゃ済まない――和江は、口内を蹂躙されるに任せるしかなかった。
 舌を絡められ舌帯をつつかれ、歯の裏側を舐められる。口の中で生温かいナメクジが這いずり回っているような気色の悪さに吐き気を覚えた。
 少女が憧れるファーストキッスがこんなものだったなんて――絶対に何かが間違っているとしか思えなかった。
 しかしこれで、男性器を口に挿れる覚悟が定まったのかもしれない。
「満足したか?」
 労うように、ぽんぽんと若頭が尻を叩いた。が、中指を曲げて尻の割れ目の奥まで嬲るのを忘れてはいなかった。
 あらためて跪かされて。まだうなだれている肉棒を唇に擦り付けられると、和江は迷うことなく、その節くれ立った亀頭に口付けた。そして、しゃくり上げるようにして根本まで咥え込んだ。
 動作を描写すれば、そうなるのだが。彼女の緊縛された裸身は薄桃色に染まっていた。稚ない絶頂を教えられたときも、股座の奥までレンズに覗き込まれたときも蒼褪めていた肌が、羞恥に悶えている。
 それは、そうだろう。これまでは抗議の言葉すら封じられて、男の手で一方的に嬲られていたのだ。自身に慙じるところは無い。しかし今は、縛られているとはいえ、みずからの意志で破廉恥な真似をしてのけた。後難を恐れなければ、噛み付いて反撃も出来る。しかし和江は凌辱を積極的に受け容れてしまった。
 毒を啖わば皿まで――でもあるまいが。和江は一心に奉仕を続けている。若頭に言われた通りに、肉棒をしゃぶっている。女の本能なのか、口中を舌で蹂躙されたときに何らかのヒントを得たのか、裏筋に舌先を這わせさえした。
 和江の努力に応えて、淫茎は太さを増し硬くなり、天を衝く勢いとなって上顎に亀頭を押し付ける。
 もっと羞ずかしがると思っていた当てが外れた忌々しさか、これならもっと過激でも行けると思ったのか。
「どうも、絵柄が寂しいぜ。征子、おまえもかわいがってやれ。シロクロでもシロシロでもねえ――さしずめフェラシロかな」
 若頭の言葉は聞こえているが、今ひとつ意味を分かりかねた和江だったが。目の前で征子が浴衣を脱ぐのを見て、だいたいは察した。今さら拒む気にはなれない。征子に何をされたって、処女は護られる(と、和江は楽観した)。
 それにしても。浴衣は元々が素肌に着る物ではあったが。戦後も二十年を経てアメリカナイズされた昨今、パンティはともかく肌着さえ着けない女は珍しい。
 しかし和江が驚いたのは、そのことではなかった。征子の股間には飾り毛が無く、まったく別の極彩色で飾られていた。
 刺青だった。般若の面のようだが、口元は隠れている。
 口を止めて横目で見つめている和江に気づいて、征子が妖しく嗤った。大きく脚を開いて上体をそらす――と、真っ赤な口をクワッと開いた般若の面が出現した。女性器が図柄の一部に組み込まれているのだった。
「勝造の歴代女房のうちで、紋々を背負ってんのはあたしだけさ。なんせ、中学からの腐れ縁だからね」
 何人女房を取り替えようと、ほんとうの女房は自分だとでも言いたいのだろう。
「馬鹿野郎。てめえのは倶利伽羅紋々を背負ってんじゃなくて、倶利伽羅マンマンをへばり着けてんだろうがよ」
「誰がそうさせたのさ」
 夫婦漫才になっちまったと若頭が苦笑いして。
「おらあ。口を動かせや」
 正座している和江の膝を足でこじ開けて、つま先で股間をえぐる。和江にしてみれば、とばっちりもいいところ。
「それじゃ、あたしが馬追になってやるよ」
 征子が和江の背中に乳房を押し付けて、両手で和江の乳首を摘んだ。
「この動きに合わせて首を振るんだよ」
 イチニイ、イチニイと掛け声に合わせて乳首を引っ張る。
「こんなふうに舌を絡めな」
 引っ張る動きに捻りを加える。
 和江は――痛いか痛くないかと尋ねられれば、躊躇なく痛いと答えるだろう。しか、気持ち良いか良くないかと問われると、実のところ答に戸惑う。それくらいに、征子の手つきは繊細だった。
「もうちっと、股を閉じろや。般若が写っちまう」
「上等さ。日本全国一億人に見てもらいたいね。あんたこそ、そんなシャツは脱いで、本物を見せちゃどうだい」
「冗談じゃねえ。一家の頭がエロ写真の竿役をしてるなんて知られちゃ、親分さんたちに顔向けが出来ねえぜ」
 つまり。彼が刺青シャツを着ているのは、本物の刺青を隠すためだった。そうまでするのは、やはり彼の性癖の故だろう。
「ほらほら、また動きが止まった。歯がゆいね。おまえにゃあ、こっちのが良いかい?」
 征子は和江の閉じた太腿の間に手を突っ込んで、あっさりと肉芽を探り当てた。それを摘んで、前後上下に引っ張り始める。
「びゃんっ……もぼ、んみいいっ!」
 征子の指の動きに合わせてさまざまに呻きながら、和江は懸命に舌を動かした。
 和江を操るために摘まんでいるのか、励ましなのか懲らしめなのか、それとも褒美なのか――征子にも判然としていないのではないだろうか。
 和江は嫌悪も忘れて、征子に操られて怒張を舐め、しゃぶり、啜って、脳震盪を起こしそうなくらいに上体を揺すった。肉芽を嬲られる苦痛と快感にこぼす呻き声が微妙な振動となって、ますます怒張を猛らせる。
 さらに亀頭が膨れたと感じた直後、喉の奥に熱い衝撃があった。同時に、漂白剤のような臭いが鼻腔を刺激する。
「うぐ……げふっ!」
 とっさに頭を引こうとしたが、がっちり押さえ込まれて、吐き出すことも出来ない。
「こん畜生め。勝ちゃんの仔種汁を二回も取りやがって。ちゃんとゴックンするんだよッ」
 股間の突起を思い切りつねられ、上げた悲鳴は怒張に押し戻されて、和江は噎せた。咳を堪えて、どうにか嚥下する。
「よーし。これで撮影終了だ。先生、ありがとうございました。ヤマちゃん、フィルムは頼んだぜ」
 カメラマンと助手が機材を片付ける間に、緊縛の先生が和江の縄をほどき、手首の縄痕をマッサージする。
 三人がそれぞれに挨拶をして、倉庫から立ち去って。
「もうちょっと待ってな。おまえの親父が迎えに来るからな」
 和江は、木箱の上に置いていた自分の服をすぐに着たのだが。若頭は逆に刺青シャツを脱ぎ捨てて、偽物よりはくすんだ感じの彫物を露わにした。図柄は、まったく異なっている。
「おめえの一発は、ちゃんと残してあるぜ」
 床に放り出されている縄を取り上げて、征子を縛りに掛かった。
「畜生。あんな小娘を縛っていた縄を使い回すなんて……」
「じゃかましい」
 ばちん、ばちん!
 若頭は、乳房に往復ビンタを張った。和江の三倍はあろうかという豊満な乳房が、左右に吹っ飛んだ。
「その小娘の涙と汗を肌に擦り込めば、おまえもちったあ若返るだろうぜ」
 先生に比べれば、和江の目にも分かるほどもたつきながら、若頭は征子を坐禅転がしに掛けた。縄も左右が不均衡。さすがにヤクザ稼業が忙しく、性癖ばかりにうつつを抜かしている暇は無かったらしい。
 それでも、征子にはじゅうぶんに厳しい――のだと、和江は見て取った。息も絶えだえの征子は縄に酔っているのだとは、分かろうはずもなかった。
 若頭はたっぷりと時間を掛けて、征子を犯した。合意の上だから、可愛がったと言うべきか。
 尻を叩き髪を引っ張り、おおいかぶさって乳房を握り潰す。そのたびに征子は悲鳴を上げるのだが、苦痛と恥辱を訴えるのではなく、悦びのトーンを帯びているのが和江にも聞き取れた。
 終わったとき、淫茎は白濁にまみれていたから、女本来の穴を使ったことは、和江にも分かった。彼女はそっぽを向いていたが、ちゃっかりこっそり盗み見している。
 羨ましいな――ふっと、そう思ったのだが。何が羨ましいのかは、自分にも分らなかった。二人が相思相愛らしいことだろうか。縛られて悦んでいることだろうか。歪んだ形とはいえ、男女の営みを交わしていることだろうか。
 縄をほどかれた征子は、てきぱきと身繕いをして倉庫から出て行った。すぐに、二人の組員と昭大を連れて戻って来る。
「山崎よ、おまえの借金はチャラになったぜ。親孝行な娘を持って、果報者だな」
 昭大は困惑の態で娘に目をやって――誰もいない方角へ視線を彷徨わせて佇んでいるのを見て取ると、さすがに色をなした。
「話が違うじゃないですか!」
「誰に向かって口を聞いてやがる」
 物静かな、しかしドスの利いた声で威圧しておいてから、懐柔の口調に落とす。
「約束は破っちゃいねえぜ。シロクロどころか、マンコにゃあ何も突っ込んじゃいねえ」
 昭大は、おろおろと娘に尋ねる。
「そうなのか? 何もされちゃいないんだな?」
 ヌード写真を撮られるだけで、じゅうぶんに何かされている。どころか、若頭が言ったこと以外は何もかもされている。しかし、彼女の身体に痕跡は刻まれていない。黙っていれば、誰にも知られずに済む。父にも、未来の夫にも。
 和江は頷くという小さな動作で、生涯最大の嘘をついた。
 昭大としては半信半疑ながら、信じたい思いが心のすべてを占めている。
「ところで、物は相談だがな。あとひと月かふた月、バイを続けちゃくれまいか」
「約束が違い……」
 和江が抗議しかけて、自分の思い違いに気づいた。若頭が約束したのは借金に関することだけで、父の去就については何も言っていない。
「俺は、配下の者を無一文で放り出すほど薄情じゃねえ。それに、こいつが抜けた穴を埋める人間を都合しなきゃならねえ。どうだ、山崎?」
「願ってもないことです。ひと月なんて言わずに、来年の二月までは、やらせてください」
「……父ちゃん」
 和江には父の気持ちが理解できる。ほとんど三年間の音信不通のあげく、一季分の稼ぎも持たずに帰ったところで、家族にも隣近所にも合わす顔が無い。しかも、よその家は、これから出稼ぎに行こうという時期だ。
「よし、話は決まったな」
 生田組としては吹けば飛ぶようなちっぽけなシノギの話がまとまっただけ――にしては、ひどく上機嫌に若頭が頷いた。
「もう、父ちゃんを手伝ってくれなくていいぞ。ほんとうに、ありがとうな。これまでのことは忘れて、正業に励んでおくれ」
 それが昭大の、父親としての精一杯の言葉だった。
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 これを書きたいばっかりに、延々と下地を作って来たのです。
 実は次章も終わっていまして、こちらも1万3千文字は約40枚――は、数日以内にUPします。


昭和野外緊縛
 アイキャッチ画像は、昭和シロクロエロ写真で。


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