Making of "Saducation 2084":2

 不思議なもので。数百枚の長編だと平日に10枚以上は書き進めるのに、こういう短編だとせいぜい7~8枚にペースダウンします。
 いや、不思議じゃないですね。短編はそれなりに圧縮するので、節目が早くきてしまって「ひと休み」となるのです。


 前回は『拘束』2900文字の校訂前を御披露目しました。

 これに続く『獄房』7100文字は
 何も説明されないままに、電気鞭で脅されて、首環・ブレスレット・アンクレット・胴枷をみずから装着させられます。首環は、無駄吠え防止電撃機能付き。その他の装具もハイテク満載。声を封じられたので指文字で意思相通しようとしたら、手首に警告電撃。しかも、本名を書こうとすると阻止されますが、この矯正収容所での番号、ヒロインはM78を書くのは許されます。手首の動きとか指を動かす筋電位とかで判断されるのですね。
 ちなみに、M78はマゾ縄の略かもしれません。
 さて、M78はワンバープリズン(one bar prison)で腸内洗滌され、似たような器具でUrineも処理されます。
 そして、乳首とクリトリスにクリップを着けられて。3点同時強烈電撃で「前進」。ソフト快感通電で「まっすぐ歩け」。左右どちらかへの強い電撃で方向を指示されます。処置室から監房までは、監視者も付かずに自発的に歩かされます。
 獄房には先客(実は、数時間の差)が居て。彼女の本名はSu?? 患者番号はS69。セックス69かもしれません。
 S69はボディタッチを試みるのですが、実はつながれているコードに高圧電流が印加されていて、二人が触れ合ったとたんに、ドン!
 M78は左足首から太腿なので、「きゃああああっ!」で済みますが、S69は心臓経由してぶっ倒れます。すかさず職員が飛んで来て、AIEDで蘇生させます。
 ああ、こういうふうに、何の説明もなくアイテムがぽんぽん出てきます。『拘束』でもクワドローンとか出しましたね。それなりの知識があれば、クワドローン=quwad+drone、AIED=AI+AEDと見当がつくでしょう。説明が無いのは、現代小説でスマホとかジェット旅客機をいちいち詳述しないのと同じです。まあ、責め道具は趣味的に詳述しますのでご安心を。
 あとは、食事は四つん這いで犬食いとか。四つん這いも、床に手形と膝頭の位置が表示されて、その姿勢を取ると、手枷足枷が床に自動連結される、なかなか便利な仕掛です。
 そうこうして、翌日から本格的な治療が始まります。


 One-bar-prisonてのは、こういうのです。もちろん、膣だけが対象ではないです。二本挿しもあり得ます。
One_bar_prison.jpg

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矯正

 照明が明るくなって、自然に目覚めた。
 AIの指示で、排泄と洗顔を順番に済ませる。壁に向かって立つし、強制排泄のときとは違って、挿入されたパイプに吸引されるから汚物を同房者に見られることもなかったので、羞恥はマリアにとっては耐え難いほどではなかった。
 しかしS69は――羞恥というよりも屈辱にまみれて。音声に督促され、おそらく電撃の警告も受けて、ようやく所定の位置に立った。フックによる足環の拘束はされなかったが、足形の外へ逃れようとしては、かなり強い電撃まで受けていたらしかった。
 他人の排泄を見物するような悪趣味は持ち合わせていなかったので、マリアはそれを呻き声だけで察した。
 朝食は、ごく少量のオートミール粥だけだった。
「*これから矯正治療を始める。両名とも施術室へ移動せよ」
 出入口が開くと、三点への強い電気刺激が始まった。立ち上がって歩き始めると、刺激は弱くなって、柔らかな快感を与える。
 廊下へ出ると左の乳首に痛みが奔ったので、そちらへ進む。
 建物の構造を知らないし、昨日歩かされた経路も覚えていないが、マリアの印象としては奥へ向かっている感じだった。
 途中で他の『患者』たちと出会った。向こうは男性が三人。マリアたちと同じ環を嵌められた全裸の男たち。方向指示器(?)は男性仕様になっている。強制的にだろう勃起させられたペニスの雁首(glans)に金属バンドが巻かれて、左右に垂れた袋をクリップが噛んでいる。ペニスの根元と淫囊をひとまとめにして、小さな七つ目の環が締め上げていた。三点の電極は、そこにつながれている。
 互いに目を伏せて、でも珍妙で惨めな姿に目を奪われながら、発声を封じられているので挨拶を交わすこともなくすれ違った。
 それから階段を上がって。すぐのところで古風なドアが開いた。そこにへ足を踏み入れて――ふたり揃って立ち竦んだ。
 何から描写したものか。
 これまでのような白一色ではなく、石造り(にしか見えない)の部屋だった。じゅうぶんな間隔を開けても、二十以上のベッドを並べられそうだった。実際にはベッドではなく、最近ではSMプレイでもまず使われることのないハードな拷問道具が壁に沿って並んでいた。それが拷問道具だと、なぜマリアに分かったかといえば――魔女狩りのような史実に関する画像までは規制されていないからだった。
 そして、二人を待ち構えていた六人の男たち。二人は、これまでに見た白ずくめで、顔の下半分をマスクで覆っている。他の四人は、昔のイヌイットが使っていたようなスノーゴーグルに似た細長い長方形の板で上半分を覆っていた。
 この四人は裸足で、イヤホンもスマートアクセサリも身に着けていないように見受けられた。しかし、ゴーグルがホロディスプレイになっているとしたら(そうに決まっている)通常のウェアラブル端末より圧倒的に多い情報量になる。
 そして、服装はまちまち。
 一人は素肌に革製らしい褐色のベストとホットパンツ。肌の色と似ているので、どうかすると(股間がのっぺらぼうの)裸形に見える。
 一人は幅の狭い布を腰に巻いてT字形に股間を包んでいる。この男の肌は黄色っぽいからアジア系だろう。
 残る二人は白人。上半身裸で、下は黒いタイツ。
「装具を外せ」
 褐色ずくめの男が命令する。部屋の隅からワゴンが動いて、二人の右横に停止した。
 マリアはおそるおそる乳首に手を近づけたが、手首に警告は来なかった。乳首のクリップを外すと、じいんと痺れるような感覚が生じた。クリトリスのクリップも外す。やはり痺れるような感覚――だけでなく、性的な疼きも生じた。
 ワゴンにクリップを置くと。カシャッと小さな音が肌に伝わって、首環と胴環がC形に開いた。
 マリアは胴環から外しにかかった。
「私はスーザン・ヘイウッド。ID421154230884615。私は視者(gazer)です。このような扱いを受ける謂れがありません!」
 怒りの声に、マリアは手を止めてS69、いやスーザンを振り返った。視者を名乗る人物に実空間で出会ったのは初めてだった。
 閉ざされたプライベートなネット空間でしか発言を許可されない聴者が、成人の九十パーセントを占める。十パーセントは話者(talker)。しかし、クラウドAIに公然と疑義を呈する権利を持つ視者(gazer)は一パーセントに満たない。そして、話者はネットでの振舞から特定されることも多いし、ステータスであるから意図的に隠す者は少ないが、視者は権利を行使する必要性がほとんど無いから、話者と区別するのは難しい。
 褐色の男が正面からスーザンに近づいた。手にしていた細い棒を下から斜め上へはね上げた。
 ピシッ!
 スーザンの右の乳房が大きく揺れた。
「きゃあっ……!」
 スーザンは両手で胸を庇って、ますます怒りに燃えた目で男をにらみつける。
「発言は許可していない。腕を下ろせ」
 男の意図は明白だから、スーザンは動かない。危害は加えられたくない。けれど、退いてなるものか――その気迫は、マリアの目にも明らかだった。
 下帯一本の男が、スーザンの後ろへ回り込んだ。そちらへ向き直りかけたスーザンの尻を褐色の男が笞打った。
「やめて……!」
 怯んだすきにスーザンは羽交い締めにされて、豊満な乳房を無防備に曝け出す。
 ビシイッ、バチイン!
 さっきよりも明らかに強い笞打ちに、乳房が左右に吹っ飛んだ。が、スーザンは歯を食い縛って悲鳴を堪えた。そして、罵る。
「この黒●ぼ(n*gger)が!」
 マリアは耳を疑った。こんな最悪の差別語を(たとえ私的な場でも)口にする人間など、聴者の中にもまず居ない。未成年だったら、学校と家庭でそれぞれ反省文を書かされる。ほんとうに、この人は視者なのだろうか。
 しかし、疑問は中断された。マリアの前に、半裸タイツのひとりが笞を持って立ったのだ。
「あ……ごめんなさい」
 慌てて胴環と首環を外してワゴンに置いた。それでも。
 もう一人のタイツ男が、マリアをスーザンと同じように羽交い締めにした。
「待って……私は指示に従っています」
「バディは連帯評価すると、最初に通達している」
 白ずくめの一人が、スーザンにもマリアにも聞こえる声で言った。
「矯正治療も個別の懲罰も、二人は同じに扱われる」
 連帯責任なんだわ――と、マリアは理解したが、納得は出来なかった。しかし、納得しようとしまいと。
 ビチイッ!
「痛いいっ……!」
 乳房の中で爆竹が爆ぜたような激痛。VRとは違って、安全限界など無い『生』の痛さだった。
「やめて。彼女は……」
 バチイン!
 バチイン!
 二人の乳房が同時に跳ねた。
 褐色の男がスーザンの目を覗き込む。スーザンは無言でうなだれる。発語を禁じられた状況で示せる最大限の恭順だった。
 羽交い締めから開放された二人は、床に表示される足形を踏んで、開脚して立たされた。並んだ二人の間隔は三メートル。
 足形の中央からディルドがせり上がってきた。腸の洗滌に使われた器具どころか、成人男性の勃起よりもさらに太い。胴部には円錐状の突起が幾つも盛り上がっている。
 ディルドは微妙に角度を変えながら、難なくマリアの股間を貫いた。
「あぐっ……くうう」
 マリアが知っている生身のペニスは、恋人の一本きり。VR連動のバイブによる事前学習など今は廃れて処女性が尊重されているし、恋人とのセックスにもそれなりに満足しているから――『異物』の挿入は初めてだった。
 それでも、直径五センチに近い逸物が、たいして苦痛を与えることもなくすんなり挿入できたのは、それだけAIのテクニックが優れているからである。セクサロイドが男女に与える空虚な幸せと実社会での挫折は、すでに四半世紀来のささやかな社会問題となっているが、それはさて措く。
 ディルドが膣奥に突き当って止まると、天井から鎖が垂れてきた。
「両手を左右に伸ばせ」
 鎖が腕環のカラビナと連結して、斜めに引き上げる。マリアとスーザンは股間を串刺しにされ、空中にX字形に磔けられてしまった。
 四人の男が、マリアとスーザンの前後に立った。それまでの細い笞ではなく、細い革バンドを何本も束ねたバラ鞭を手にしている。バラ鞭は、正常なセックスの味付けとして社会的に許容されているソフトSMギリギリのアイテムだ。ただし四人が使おうとしている得物は、市販品よりも威力が大きいのだが、それを見分ける目をマリアは持っていなかった。
「従順にしていたのに、まだ懲罰を与えるつもりなの?」
 抗議したのは、もちろんスーザンのほうだった。
「懲罰ではない。本人が自覚していない社会への不適応を自覚させ矯正するための施術だ」
 白ずくめの職員が事務的に諭す。
「ちなみに、治療の実務に携わっていただくのは、社会的地位のあるボランティアの皆さんだ。我々職員に対する以上に敬意を持って接するように」
 ずいぶんときな臭くて胡散臭い話なのだが――マリアは、そんな人たちの手を煩わせて申し訳ないと思ってしまった。
 スーザンは疑わしげな顔をしたが、抗議を重ねなかった。反抗して懲罰を受けるのは、自分だけではない。
 四人の男たちが、一斉に鞭を振りかぶった。
 バチン! バッチャン!
 バチイン! ビシイッ!
「きゃああっ!」
「くそっ……!」
 マリアは素直に悲鳴を上げたが、スーザンはあくまでも抵抗する。
 バシン! バシン! ビシイッ! バヂイン!
 乳房、太腿、下腹部、背中、尻……滅多打ち。さすがにマリアも悲鳴を上げながら、鞭から逃れようとする。
 しかし、まったく身動きできないと、マリアは思い知らされた。股間を支柱もろともに打ち据えられると、反射的に脚を閉じて急所を守ろうとするのだが、身体が傾いてディルドで内奥を抉られる。両足を同時に少しずつ内側へ移動させれば良いのだが、そんな余裕はない。かといって身をよじると――ディルドの突起が鋭い痛みを与える。
 じきにふたりとも、自分の脚で立つ努力を放棄して、広げた腕を吊っている鎖に体重をあずけて頭を垂れ、鞭に打たれるままに身体を揺らすだけになっていた。
 しかし、『施術』は残虐になる一方だった。
 ディルドが回転しながら引き抜かれて。無防備になった股間を前後からアンダースローの鞭が襲う。
 ビジイ゙ッ……バシュン!
「びゃあ゙あ゙あ゙っ……!」
 正面からのバラ鞭は淫裂を抉り、跳ね上がりながらクリトリスまで打ち据える。後ろからの鞭は会淫から肛門を鞣しあげる。
 遅ればせながら閉じ合わされた太腿を割って、再びディルドが膣を抉った。
「脚を広げていろ」
 スーザンの正面に立つ褐色の男が無慈悲な命令を口にする。マリアの正面を受け持っている半裸タイツは、無言で鼠蹊部を撫で上げた。
 びくんっと、スーザンとマリアが同時に腰を震わせてのけぞった。電撃は膣の奥で爆発したのだった。一瞬ではない。強度を下げた低周波で苦痛を与え続ける。
 マリアはさらに小淫唇を左右に引っ張られる。ぱしんと右の内腿を叩かれてから、右の小淫唇。男の意図を理解して、すこしだけ右脚を開いた。ぐうっと膣壁が左へ押されて動きを阻まれると、左の内腿を叩かれて、そちらの小淫唇を引っ張られる。
 この男は、意外と親切なのかもしれない。マリアは男に操られて、両脚を五十センチほども無事に(?)開けた。
 ディルドが引き抜かれる。次に何をされるか予想がついても、マリアは脚を閉じようとはしなかった。
 バッヂャアン!
 それまでよりも強い一撃が股間で炸裂した。
「かはっ……!」
 悲鳴をあげる裕りすらなく、マリアは息を詰まらせて激痛を受け止めた。
 しかし、スーザンは抵抗した。ディルドが引き抜かれるとすぐに脚を閉じて――股間にバラ鞭を通されてV字形に扱き上げられ、それでも降参するまで三十秒は意地を張り続けた。
 連帯責任なら自分も同じことをされるのかと怯えたマリアだったが、そこまで厳格ではなくて……スーザンには申し訳ないような気にもなった。
 しかし、すぐにそれ以上の苦痛と恥辱を味わわされる。
 股間への鞭打は(前後同時を一発として)五発で終わった。二人はディルドと鎖から開放されたが、首の後ろで交差させた手首を腕環の連結で固定された。
 広い部屋の端から端まで、二本の太いロープが床に延べられた。ロープには五十センチおきに大きな結び瘤が作られている。結び瘤ではなく、金属スポンジが巻き付けられている箇所もあった。
「ロープを跨げ」
 SMに関してはソフトなプレイの概念しか知らないマリアでも、これから何をされる或は何をさせられるか、厭というほど見当がつく。それでも、ためらいながらではあっても、命令に従った。
 スーザンは、股間をバラ鞭で吊り上げられながら、ロープを跨がせられた。
 予期していた通りに、ロープが引っ張り上げられて、淫列にきつく食い込んだ。
「前へ歩け」
 パチン。
 牧場では牛馬を追うときにこれくらいはするのだろうなという、軽い追鞭だった。それでもマリアは反射的に足を踏み出して――ぐりっと内側を擦られて動きを止めた。チリチリッと、焼け付くような痛いようなくすぐったいような感触に圧倒された。何の変哲もないロープ。その表面は目で見るよりもはるかに毛羽立っている。
「ハイッ」
 バチンと、強めに尻を叩かれたが、さすにが次の一歩は踏み出せない。
「ふむ……?」
 半裸タイツの二人が、左右からマリアに近づいて――乳首をつまんだ。つまんで爪を立てながら前へ引っ張る。
「痛い……歩くから……許して」
 股間のチリチリする痛みを堪えて小刻みに二歩を進んで。そこから足だけは半歩出たが、腰が引けている。大淫唇を隠すほど大きな結び瘤が、前進を阻んでいる。
「ぎいいいいっ……やめてっ!」
 スーザンの悲鳴にそちらを見ると――彼女は剥かれたクリトリスの先端に針金を巻き付けられて、引っ張られていた。針金は全身褐色の男が握る小箱につながっている。
 電撃を同時に受けている。けれど、もう一方の電極は……?
 そんな些細な疑問に拘っている場合ではない。半裸タイツの一人が、同じ小箱をマリアの股間に近づけた。スーザンと同じようにするという脅しか、それとも直接電撃を与えようとしているのか。
 マリアは、なるようになれとばかりに、引けていた腰を前へ運んだ。
「痛いいいっ……!」
 ザリザリッと粘膜を擦られて、無数の針に突き刺されたような痛みが腰から背骨へ突き抜けた。
 結び瘤を強引に乗り越えると、後はそれほどつらくなかった。感覚が麻痺したというよりは、結び瘤の刺激が閾値にリセットされてしまったのかもしれない。
 しかし、新たな閾値をはるかに上回る障碍が立ちはだかる。ロープに巻き付けられた金属タワシ。いや、ずれないように編み込まれている。結び瘤と同じくらいの直径で、ボールではなく長さ十五センチほどのソーセージ。
 こんな物で淫裂をしごかれたら、擦り傷くらいでは済まない。淫裂に金属タワシの端を押し当てただけで、結び瘤を乗り越えるとき以上の鋭い痛みが奔る。乳首に爪を立てて引っ張られる痛みのほうが、まだしも耐えやすい。
 二人の男が頷き合った。内言を音声に変換してコミュニケーシンを取っているのか、ゴーグルに表示されるAIの指示に従っているのか。
「後ろへ下がれ」
 乳房をわしづかみにして押し返されて。後退するのは楽だった。斜めにしたフォークを前へ押すのと後ろへ引くのとでは抵抗が違う。すでに通過したロープにはマリアの血液と膣からの分泌が付着して、潤滑の役も果たしている。
 肛門が結び瘤に突き当たったところで止められて。
「勢いをつけて、一気に突き進め」
 二人の男が協力して、クリトリスの包皮を剥き細い針金を巻き付ける。針金につながれている小箱の上を指が滑ると。
「あっ……?」
 怯えていた電撃ではなくて、柔らかく摘ままれ揉まれ捻られる――それまでの苦痛を帳消しにしてくれるほどの快感がマリアの腰を貫いた。
「指示に従わないと、こうなる」
 刺激が数十倍に跳ね上がって、受ける感覚はそのままに、激痛に変わった。
「いやああっ……!」
 激痛はすぐに消失した。
「どちらを欲しいかな?」
 柔らかく通電しながら、男が針金を引っ張った。もうひとりが後ろへ立って。
「ゴーアヘッ!」
 パチン。
 鞭に追われ快感に引っ張られて、マリアは小走りに進んだ。金属タワシが淫裂にめり込み、ガシガシと粘膜を削った。
「ぎゃわあああああっ……!」
 凄絶な悲鳴を叫びながら、マリアは障碍を駆け抜けた。
 激痛が消えた瞬間に、足をもつらせて斜め前へ倒れ込む――のは、後ろの男が抱き止めてくれた。
「良く頑張ったな」
 抱き止めている手をずらして、男が両手で乳房を揉んだ。通電は、まだ続いている。性的な快感が苦痛の中に忍び込んだ。
「だが、先は長い。とっとと歩け」
 男は手を放して――ぴんと張っているロープをさらに引き上げて、マリアから苦鳴を引き出した。
 金属タワシを乗り越えて、さらに閾値が上がったのかもしれない。マリアは、三つの結び瘤を呻き声と共に、しかし難無く乗り越えて。次の金属タワシは助走をしなくても、クリトリスへの励ましと尻への追鞭で、食い縛った歯の隙間から悲鳴を漏らしながらも通過した。
 いつか、マリアの顔は涙でぐしょ濡れになっている。それは、スーザンも同じだった。
 正面に壁が近づいてくると、あそこまで到達すれば終わるのだと、それを励みに歩み続けた。
 しかし、終わらなかった。
「もう一度だ。元の位置まで戻れ」
 バラ鞭で乳房を強く叩かれて、ついにマリアも限界に達した。
「こんなことに、何の意味があるんですか?!」
 反逆を内包した質問には、白いツナギ服の男が無慈悲に答えた。
「それをみずから気づくことに、この施術の意味があるのだ。分からないうちは、何度でも繰り返す」
「このサディストたちを満足させることが目的じゃないの?!」
 叫んだのはスーザンだった。
「見なさいよ、この黄色い●(yell*w m*nkey)の股座を。腰布がはち切れそうになってる」
 この人が矯正治療を受けさせられている原因は、これだろう。こんな治療が行われているなんて信じられないけれど、これほど人種差別をあからさまにする人物がいることも信じられない。
 スーザンの発言は、ロープをさらに高く引き上げることで報われた。
「痛い……やめて!」
 スーザンはたたらを踏みながら部屋の中央まで後退した。つま先立ちしても、ロープはV字形に張っている。だけでなく、金属タワシが股間を抉るようにロープ全体が前後へ動いた。
「いぎゃああああっ……やめて! お願い……!」
 彼女に同情しているどころではなかった。マリアの跨いでいるロープも上へ引っ張られ始める。
「ごめんなさい。もう、何も言いません!」
 後ろへ下がり始めると、股間への圧力が軽くなった。安堵とともに足を運ぶ。前進中に後ろへ下がったときよりも、ロープは緩んでいるように感じられた。淫裂を抉られてはいるが、それほどの痛みは感じない。けれど、ただ閾値が上がっただけかもしれない。
 しかし。壁に背中がついて。二度目の全身を強いられると――ロープは最初よりも高く引き上げられ途中の弛みが分からないほどきつく張られた。
 けれど、前へ進むしかなかった。スーザンも、抗議と反発を重ねる気力は奪われていた。
 マリアもスーザンも、とめどなく涙をこぼしながら、呻き声の合間に悲鳴を重ねて、二度目の『綱渡り』を終えたのだった。
 虐待される意味に気づくまでは何度でも繰り返すとの言葉に反して、そこでこの責めは終わりを告げた。二人は並んでV字開脚の逆さ吊りにされて、傷付いた女性器の治療を施された。血止めをされ、粘膜にナノファイバーの保護膜を貼られ、苦痛だけを緩和する選択的感覚遮断剤を局部に注射された。ジェットではなく、わざわざ針の付いた注射器が使われて、その鋭い激痛に再びふたりは悲鳴を上げたのだけれど。
 治療が終わると、背中で下に垂らした腕を手首で縛って吊り上げられた。上半身が前傾して、それ以上倒しても起こしても手首が下がる位置で、鎖は止められた。足が床から離れれば、全体重がねじられた肩に掛かる後ろ手一本吊り(strappado)の拷問になるが、体重の過半を脚で支えていても、苦痛はある。その形で、数時間の『休憩』を与えられた。
 六人の男たちのうち、白いツナギ服の二人は部屋から退出して、残った『ボランティア』たちは、この部屋に並べられた拷問道具にはふさわしくないソファーで、ゆったりと寛ぐ。スノーゴーグルめいたデバイスは外して、素顔を晒している。
 四人の男たちは酒類と思しき飲料をちびちびと舐めながら、マリアとスーザンの吊られている姿を鑑賞している。呆れたことに、禁制品の煙草を吸う者までいた。
 四人は会話を交わしているのだが、マリアにはまったく声が聞こえなかった。あるいは遮音システムがどこかにあるのかもしれない。
 そんな、どうでもいい思念はあれこれと湧いてくるのだが……なぜ、こんな目に遭わされているのかだけは、皆目見当もつかなかった。まさか、スーザンが口走ったサディスト云々が幾分かの真実を含んでいるとも思えない。スーザンのことは知らないが。マリアはAZから危険レベルの潜在的社会不適応者と認定されて、その矯正治療のために連れて来られたのだから。

 白ツナギ服の二人が戻って来て『休憩』は終わった。二人は俯せにされ、手足を引っ張られて、床から百五十センチほどの高さで水平に吊るされた。手足は開いて、細身のX字形。
 白衣の二人と黒タイツの二人が手分けして、マリアとスーザンの裸身に、医療具とも責具とも分からないデバイスを着けていく。
 乳房を細いベルトで縊り、乳首には乳暈がちょうど隠れる大きさのキャップを吸い付かせた。外見は金属製だが、内側は毛羽立っている。そして乳頭には冷たい金属の感触。
 クリトリスも、また包皮を剝かれて、乳首と似たキャップをかぶせられた。
 太い柱がゆっくりと走って来て、開いた脚の間で止まった。二本のディルドが伸びて、膣と肛門に挿入された。さらに、1/6フィギュアに使うようなディルドまでが淫裂に潜り込んで、尿道を貫いた。
「さて、操作はマニュアルにしましょうか」
 白衣が四人のボランティアを見回しながら尋ねた。
「いや、オートマチックで最適化してもらおう」
 褐色の男が即答した。
「ピンポイントで調子を外すのも面白い。リモコンはもらっておこう」
 アジア系が付け加えると。
「完璧な最適化は陳腐だな。BGMに同調させてはどうだろう」
 黒タイツのひとりが言い出して。他の三人の同意を取り付けてから男が提案したのは『ツァラトゥストラかく語りき』だった。不朽のSF2D映画のオープニングテーマだから、マリアもプライマリー時代の鑑賞学習で視聴した記憶をとどめている。
 四人は改めてソファーに陣取り、白服はその両側に立った。
 最初は、何も起きなかった――というのは閾値の問題で。
 オルガンの音が耳に聴こえる頃には、乳首とクリトリスに微振動が感じられるようになっていた。電気的な振動だけではない。突起が真空に吸引されて尖ってゆき、その周囲で毛羽もうねっている。
 苦痛の次は性的快感を与えるつもりだとは、マリアにも分った。けれど、その理由と目的は分からないままだった。
 通奏低音の高まりと共に三点への刺激も強まっていき……導入部のトランペットで三本のディルドが蠢き初めて。人間では不可能な微妙な動きで一気に性感を高められる。
 スーザンは知らず。マリアは、恋人とのセックスではそこまで達したことのない領域へと押し上げられていって。
 ドンデンドンデンドンデン……
 ティンパニーの響きに合わせて、ディルドが抜去されては最奥部まで突き進む。
「あっ……ああっ……」
 そして、最大音量の全楽器演奏( tutti )。乳房は激しく揉みしだかれ、乳首に太い稲妻が突き通され、クリトリスは大波に揺すられ、膣と肛門のディルドが逆位相で全身を抉る。尿道はピストン運動ではなく、こねくられる。
「あああっ……いやあっ……来る……何か来る……助けてええええええっっ!!」
 二分足らずの導入部で、これまで到達したことのない高みにまで――押し上げられたというよりは、吹き飛ばされてしまった。
 BGMは急速に落ち着いて。今度はじんわりとマリアを追い上げていくのだが。不意にティンパニーがフォルテッシモで打ち鳴らされて、アクメの彼方へ吹き飛ばす。
 駄目駄目駄目……こんなのは駄目だ。ジェットコースターのような性感に弄ばれながら、マリアは恐怖する。
 こんな凄まじい快感を知ってしまったら、彼との……だけじゃなく、生身の男とのセックスでは満たされなくなってしまう。楽曲の切れ目に差し掛かると、そんなことを考えてしまう。
 今でも、セックスで(オナニーも含めて)忘我というほどの満足を味わったことはないけれど。これから開発されていくものだと思っていた。それが、いきなり……いにしえのジェット戦闘機。アフターバーナーに液体ニトロをぶち込んだようなアクメ。
 いいえ、努力(?)次第では、生身の男とのセックスでだって、ここまで到達できるはず。そうも思う。AIはアシストするだけ。だから、肉体改造を認めない健常者パラリンピックでは、百メートル七秒の壁が生理学的に証明されている。
「あああああっっ……駄目! いい! 来る……落ちる……いやあああっ!」
 デンドンデンドンとティンパニーがなり始めて、思考は消し飛び、アクメの彼方へ蹴り上げられる。
「くそお! 見てるだけなの?! インポ野郎ども!」
 スーザンという人は、すべてに攻撃的なのだと、そういうふうにマリアは理解した。自分とは正反対の人間。こういう矯正治療を受けさせられている理由が、一パーセントくらいは分かるような気がした。けれど、その漠然とした理解は……なぜ、マリアが彼女と同じカリキュラムを課せられているのか、ますます分からなくなるさせるだけだった。
 ローカルAIが局所的で瞬間的なエラーを犯すことはあるが、それは上位AIによってミリ秒単位で修正される。すくなくとも三大AI(とAZ)は、不完全性定理の制約は受けても誤謬は犯さない。だから、この処置には正当な理由がある。マリアとしては、肉体的精神的な虐待に甘んじながら、自身の社会的不適応をみずからが気づいて、それを矯正してもらうより他に道は無いと、それは微塵も疑っていなかった。
『ツァラトゥストラかく語りき』は全九部の交響詩だが、BGMとしてのアレンジで執拗に導入部が繰り返されて――ほぼ五分に一回の割でマリアはアクメを強制された。
 アクメの余韻に浸りかけたところを、また追い上げられて、いっそうの高みまで吹き飛ばされる――凄絶な快感の積層。それは、すでに拷問と変わりなかった。
 マリアは絶頂のうちに悶絶したのだった。
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 ここまでで10700文字。このあと、獄房で意識を取り戻すと。
 ベッドにマングリ返しで拘束されています。しかも、夜間にトイレに行きたくなっても大丈夫。出口にチューブが突っ込まれていて、反対側は同房者のボールギャグに連結されています。これを永久機関と称したのは漫画家の「やまぐちみゆき」ですが。Wikiにも載ってねえな。もう過去の人なのかしら。そもそも生きているのか。
 ちなみに。マングリ返しは、piledriver(sex position)だそうです。そのまま日本語に戻すと、杭打ち位ですかね?
 One bar prisonは、言い得て妙です。「串刺し」とかで検索しても、なかなか引っ掛かりません。
 言い得て不妙なのは、strappadoですな。筆者が必死に考案した「後ろ手一本吊り」のほうが、雰囲気です。

 さて。『矯正』の最後を書いてから『講習』に取り掛かりましょう。『講習』は、SDGs幻想とか、男女平等は生物の摂理に逆らうとか、平等と公平は違うが公平は本当に正しいのかとか――「21世紀前半の誤謬と蒙昧」をぶった斬ります。SMではなくSFです。






実に、SMセレクト(東京三世社)で筆者の第5作『第五列の悲虐』が掲載され(て、引退し)たと同じ号で、荒縄工房(あんぷらぐ)さんが「仲ゆうじ」としてデビューされているという、奇しき因縁があります。
ついでに。
『ディープサウスマゾ紀行』 東都海藻だったが、編集部一存で東野苑明に変えられた。トントカイモ(system)の遊びがばれた?
『奴隷留学』 姫久寿子(姫くずし)
以下3作が藤間慎三(トーマの心臓)名義
『ハイテクひとり遊び』編集部改題『愉悦工場』
『淫海教育』
『第五列の悲虐』原題は『素人スパイ受虐譚』これは、編集部のほうが優れているので、いただきました。

なお。筆者のPNは、その後に風鴇能太(風と木の詩)を経て、電子書籍デビューにさいして濠門長恭(拷問調教)で落ち着きました。
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テーマ : 18禁・官能小説
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