Making of "Saducation 2084":3

 前の記事では『獄房』の8割ほどを御紹介しました。この後は……
 ベッドにパイルドライバーポジション(マングリ返し)で拘束されて。
    ┌─ボールギャグ(マ リ ア)カテーテル─┐
    └─カテーテル(ンザース)ボールギャグ─┘
 というふうに連結されて一夜を過ごすのです。

 そして、翌日は『講習』なのですが。物議をかもしそうな「架空の論議」その実、筆者はある程度本気で思っていることを書き散らしています。まるきりエロでもSMでもありません。二本突起の椅子に座って、学習中に「良く出来ました」みたいに御褒美バイブレーションとかはありますが。
 ともかく。販売数よりも多いだろう読者の目に晒して good tea gate(いい茶門)をつけられるのもアレですので割愛。


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作業

 翌日は力仕事をさせられた。あるいは一種の作業療法かとも思ったが。
 昨日と同じらしい四人のボランティアに建物の外へ連れ出されて、そこは荒野だった。道路一本走っていない。
 マリアとスーザンは六つの環を外され、方向指示のクリップも着けず、大きなシャベル(shovel)を持たされた。
 野外で全裸というのは、羞恥だけでなく後ろめたさも伴なっていた。それに引き換えボランテイアの四人は、まちまちな初秋のラフなファッション。長方形のゴーグルだけが不気味だった。
 ボランテイアが、運んできた二枚の板を五メートルの間隔で地面に置いた。
「この板は幅が一メートルで高さが五十センチだ。この断面になるように溝を掘り進めろ。特にノルマは課さないが、おまえたち二人で競争だ。日没まで作業を続けて、より長く掘り進めたほうの勝ちだ」
「勝ったら褒美でもくれるっていうの?」
「罰を半分にしてやる」
「罰ですって……!?」
 スーザンは、怒りを隠そうとしない。
「なんの罰だというのよ」
「ここではすべてが連帯評価であると同時に、減点法を採り入れている」
 二人のうちどちらかが怠ければ、それは連帯で罰せられる。分かり易く言えば、スーザンの減点が五でマリアが七だった場合、二人に与えられる罰は合計で十二点分。ただしマリアが勝てば、彼女に与えられる罰は四点分だけで、敗者のスーザンには八点分が与えられる。
「そんなのって不合理だわ」
「実社会は不合理に満ちあふれている。それに慣れなければ、社会復帰は難しいぞ」
 スーザンは、さらに抗議を重ねそうな様子だったが――はっとしたように黙り込んだ。ボランティアのゴーグルに覆われた顔をじっと見つめる。
 知った顔なのだろうかとマリアは疑ったが、まさかそんなはずはないだろう。二人が知人だなんてあり得ない。そういった偶然はAIが排除するはずだ。それとも、敢えてそういう組み合わせを選んだのか。
「分かりました。日没まで溝を掘っていれば良いのですね」
 スーザンはボランティアに背を向けて、シャベルを地面に突き立てた。シャベルの縁に足を掛けて押し込もうとしたが、顔をしかめた。半分ほども突き刺さらないうちに、わずかな土を掬い取って、脇へ捨てた。
「掘った土は、それぞれで一か所へ積み上げておけ。それも評価の対象になる」
「はい、分かりました( yes sir )」
 打って変わったように素直で丁寧な言葉づかいで、スーザンは作業を続ける。
「おまえも、早く取り掛かれ。減点一だ」
 ボランティアはそう言いながら、マリアを引き寄せてシャベルを取り上げ、その三角形になっている柄を淫裂にこじ入れた。
「くっ……」
 元よりマリアには抵抗する意思など無かったが。逆らったら減点されてスーザンまで巻き込むという意識が、彼女をまったくの無抵抗にさせていた。
 さいわいにも、ボランティアはすぐにシャベルを返してくれた。ので、マリアも溝を掘りに掛かった。競争なのだから距離を空けろと言われて、五メートルほど離れた場所で。
 シャベルを地面に突き立てて押し込もうとして、スーザンが顔をしかめた理由が分かった。裸足でシャベルの縁に体重を乗せなければならない。縁は折り曲げられていても、容赦なく足の裏に食い込んでくる。うっかりこじったりしたら、皮膚が破れるかもしれない。減点を覚悟で、少しずつ土を掘り起こすしか出来なかった。
 そして、大切なことを訊き忘れていたのに気づいた。手を止めて、ボランティアを振り返った。
「減点で受ける罰というのは、何をされるのでしょうか?」
 食餌抜きなのか鞭打ちなのか、もっと残酷なことなのか。
「そのときになってみなけれな分からないことも、実社会には幾らでもあるぞ」
 というのが、返ってきた答だった。これでは、何が減点の対象になるかも答えてもらえそうにない。質問自体が減点の対象になるかもしれない。
 マリアは諦めて、作業を再開した。きっと、どういう行動が何点の減点になって、どういう罰を与えるかも、ちゃんと基準があるはずだ。まさか、ボランティアの気分次第で罰が決められるなんてことはないだろう。少なくとも、ボランティアの恣意はAIが制限してくれる。マリアは、そう信じていた。
 しばらくの間、二人のボランティアは作業の様子を監視するでもなく眺めていたが、特に問題は無いと判断したのか単純に飽きてしまったのか、百メートルほども離れた施設の建物へと戻って行った。地上に空にもモニターの姿は見えない。
 草もまばらな荒野に、百数十メートル先にぽつんと佇む施設の建物。それと――喉が渇いたら好きなだけ飲めと言って、それぞれに与えられた飲料の二リットル容器。それだけが自然の中で異質な人工物だった。

 一時間も作業を続けると、手も足も痛くなってくる。ことに、足の裏と手の平。シャベルを押し込む足を左右替えてみたり、柄を持ち替えてみたり。ますます作業効率が悪くなるだけだった。
 すでにマリアは全身を汗で濡らしている。それでも、掘り進めた長さは二メートルにも満たない。
 マリアは――と、限定したのは。スーザンはマリアの半分ほどしか掘っていないからだった。明らかに手を抜いている。
 わざと負けるつもりなのかと尋ねたかったが、どうにもマリアは彼女が苦手だった。差別意識を露骨に表わして、振舞も自分勝手。負けて罰を増やされるのを覚悟で手を抜いているのなら、何を言っても無駄だろう。手抜きを減点の対象にされると自分にも被害は及ぶのだけれど、作業中に不毛のおしゃべりをしたり言い争うのも減点につながりそうだ。
 それを分かっているのかいないのか、スーザンのほうから話しかけてきた。
「そんなに頑張っても、サディストどもを悦ばせるだけね」
「どういうことでしょうか?」
 マリアも手を止めざるをえない。
「ここが社会不適応者の矯正施設だなんて、とんでもない。社会的には許されないレベルの性的虐待を公然とサディストどもに提供する施設だわ。そりゃ、私たちのほううにも幾らかは落ち度があるんでしょうけれど、やつらの嗜好に合わせて選ばれた生贄なのよ。真面目に作業をしようとしまいと、勝とうと負けようと、やつらが満足するまで虐められるでしょうね」
 そんな馬鹿な。あり得ない。だいいち、AIそれもAZが、そんな犯罪に手を貸すどころか、主犯になるなんて。
 しかしスーザンは、彼女なりの、突飛もない論理を組み立てていた。
「もしも、世界の指導者的な立場にあるVIPが、サディストだとしたら。彼らのフラストレーションを解消しなければ、彼らが正常な判断を下せなくなるとしたら――第ゼロ原則ね。AZは少数の男女を犠牲にしてでも、人類の繁栄を選ぶでしょうね」
「…………」
 あまりに飛躍した妄想に、マリアは呆れるばかり。反論する気力も起きなかった。
 スーザンは肩をすくめて、のろのろと作業を再開した。マリアも倣う――能う限りてきぱきと。
 それにしても。彼女は(妄想の中で)死を覚悟しているのだろうかと、マリアは疑った。彼女の妄想に従えば――そんな『トップシークレット』に気づいたスーザンは存在を抹消されるのではないだろうか。少なくとも、生きてこの施設からは出られない。それとも。子山羊を盗むのも親山羊を盗むのも同じだとAZが判断して――禁断の記憶操作や人格改変を施すとでも考えているのだろうか。
「指導者の立場にある人間の大半が聴者(listner)ですらないことは、あなたも知っているでしょう」
 わずかに十センチばかりを掘り進むと、スーザンが再び語りかけてきた。
 マリアは、今度は手を休めない。モニターらしい影が見えないからといって、ほんとうに野放しにされているとでも、スーザンは考えているのだろうか。
「馬鹿げた妄想に付き合っている暇はありません」
 突き放すように言ったのは、こんな妄想に耳を貸すだけで、ますます社会不適応と見なされかねないと危惧したからだ。
「特定個人の言葉に耳を傾けると、大局的判断を誤る。彼らには、大衆の意見を集約してくれるスタッフが居るからね」
 スーザンはしつこく続ける。
「スポークスマンが公的な発言を伝えるから、話者(talker)である必要もないわね。話者でなければ視者(gazer)にはなれないし、彼らがAIを疑うようでは社会が混乱する」
 マリアが作業に没頭する(ふりをしている)のを見て、スーザンは溜息をついた。そして、囁くように、いっそう途方もないことを口にした。
「もしも、かれらが聴者の資格を放棄したのではなく、最初から認定されていなかったら?」
 足の裏が悲鳴をあげるのもかまわずにシャベルを土に深く突き刺して、マリアはスーザンの言葉を断ち切った。
 とうとう論理に明白な破綻を来たした。そう考えた。指導者は、最初から指導者だったのではない。聴者の資格すら持たないものが、政界や財界で頭角を現わせるはずがない。事実、名の知れた政治家はほとんどが話者だし、視者の比率も桁が違っている。
 マリアはスーザンを黙らせるために、AIに間違った判断を下されないために、ごく短い言葉で、それを指摘した。
 スーザンは、また溜息をついた。
「まともな論理なら、そうなるでしょうね」
 しかし、誤りを認めたのではなかった。
「でも、証拠がある。きわめて主観的で、客観的な検証には耐えないでしょうけど」
 マリアはもう、わずかでも関心を持たなかった。妄想を抱いた人間には、空に浮かぶ雲の形にだって大いなる存在それとも自己の意思が反映しているのだ。
「あなたに、その証拠を教えたりはしないから、安心して。巻き添えにはしないから」
 その証拠を知れば、マリアも消される。そういう論理なのだろう。
「ありがとう。感謝するわ」
 マリアは、掘って捨てた土をシャベルに掬って、これから掘り進める先まで移動させ始めた。柔らかい土なら大量に掬えるので、ちまちまと一か所に集積するよりも、このほうが効率的だった。
 太陽の高度から推測して正午ぴったりに、昼食休憩が与えられた。四人のボランティアが、茹でトウモロコシを笊に山盛り運んで来た。二人は、朝のボランティアと同一人物だった。目のまわりをゴーグルで覆っていても、それくらいの見分けはつく。
「好きなだけ食べていいぞ」
 とは言われても。ここ数日は一日に一食か二食で量も少なかった。満腹になるまで食べたら腹痛を起こすかもしれない。それに、塩味は利いていても、獄房で与えられる食餌よりも味が単純で――ふたりとも二本がせいぜいだった。
「なんだ。もう食べないのか」
 笊には、まだ四本が残っていた。
「フードロスは反社会的行為だ。見逃せないぞ」
「後でいただきます」
 真っ当な申し出だが、スーザンが横で首を振った。果たして。
「食事時間も守れないようでは、社会復帰は難しい」
 しかし、満腹なのにそれ以上を食べるのも、フードロスにつながる。効率的に食べさせてやろう。
 ふたりは、手足を地面に突いて膝を伸ばした四つん這いの姿勢を取らされた。
 ボランティアがトウモロコシを持って後ろに立って。
「くううう……」
 ぐりぐりとトウモロコシをねじ挿れられる鈍い痛みを、マリアは歯を食い縛って耐えた。まさかという思いよりは、やはりという諦めが強かった。
 まさか二本目は――という恐怖は、さいわいにも外れた。口に突っ込まれたのだ。軸にロープを巻いて頬を縊られた。
「無駄なおしゃべりをしないで作業に集中できるな」
 やはり、スーザンの長広舌はモニターされていたのだ。
 これで笊は空っぽになった――と安心したのは早計だった。
「あとは、食べ滓の始末だな」
 トウモロコシの芯は肛門に突っ込まれた。
「…………」
 腸洗滌で挿入されたディルドよりも細いくらいだし表面も軟らかいので、苦痛を訴えるほどではなかったのだが。
「んんっ……?!」
 二本目をを押し付けられて、マリアは驚きと戸惑いの声を漏らした。終わったと思ったところへの不意打ちだった。
「む゙ゔううう……」
 すでに挿入されている芯をこじられ、無理矢理に作られた隙間に二本目をねじ込まれる。
 ざりざりと粘膜を擦り上げながら押し挿ってくる。肛門が裂けるのではないかと慄くほどの鈍痛。
 マリアは歯を食い縛って――ぼきりと、トウモロコシを噛み切ってしまった。
「…………!」
 噛み切った部分が喉に飛び込んで、マリアは息を詰まらせた。
 マリアの口からトウモロコシが引き抜かれたが、それは根元から三分の一だけだった。三分の二は、喉の奥に詰まっている。
 マリアは口に指を突っ込んでつまみ出そうとするが、届かない。
「…………!!」
 まったく息が出来ない。頭が割れるように痛み、目の前が赤く染まり、すうっと溶暗していく。誰かに背中を叩かれている。
 突然に立ちはだかった死の恐怖――は、しかし速やかに取り除かれた。
 腋を抱え上げられ、強い力で背中を突き上げられた。喉の奥に鋏のような物が突っ込まれて、トウモロコシを引っ張り出す。
 地面に投げ出されて――股間をトウモロコシに抉られる痛さなど物の数ではなかった。人心地がついて、咳込みながら見上げると、白衣の職員が二人、すぐそばに浮かんでいるエアバイクに向かって歩く背中が見えた。
 エアバイクはゆっくりと走り始めて、それでも数秒で建物へ吸い込まれて行った。
「トウモロコシを一本、無駄にしたな。減点だ」
 マリアは抗議する気にも命を救われて感謝する気にもなれなかったが――言葉を発する猶予も与えられず、トウモロコシの残った部分を口に押し込まれて、歯を割ってロープで頬を括られた。太い円筒状になっているから、喉の奥へ滑り落ちる心配は……おそらく無いだろう。
「昼休みは終わりだ。作業を始めろ」
 ボランテイアのひとりがマリアの髪をつかんで立ち上がらせ、もうひとりが股間に突っ込まれているトウモロコシを膝で蹴り上げた。
「む゙ゔっ……」
 それでも、スーザンへの仕打ちよりは優しかった言えるだろう。二人の職員に押しのけられて、おろおろと様子を見守っていた彼女は、前後のトウモロコシと芯を同時にこねくられ、マリアの二倍くらいはボリュームのある乳房を、まさか激励のつもりでもあるまいが、二度三度と往復ビンタされたのだから。
 逆らっても無駄と、ようやく学習したスーザンは、おとなしくシャベルを手に取って溝を掘り始めた。四人のボランテイアが見ている目の前で、あからさまにのろのろとした動作で。
 四人はそれ以上のちょっかいを掛けたりはせずに全裸の女が肉体労働に従事するさまを眺めていたが、じきに飽きたようで、こちらは徒歩で建物へと引き返して行った。
 ――午前中は二時間か三時間足らずで五メートルは掘り進めたのに、午後はその二倍近い時間を掛けて、同じくらいしか捗らなかった。
 身体を動かすたびに、極限まで拡張された二つの穴で痛みがうねくる。ことに、掘った溝の形状を確認するために板のゲージを使うときは深く身体を曲げなければならなかったし、掘り出した土を運ぶために溝から出るときは足を高く上げて、みずからの動きで股間をこねくる破目になった。
しかし、ほんとうに始末が悪いのは疼痛ではなかった。痛みに耐えて身体を動かしているうちに、膣だけでなく肛門さえもなんらかの粘液を分泌して――そうなると、苦痛の奥から妖しい疼きが芽吹いてくる。性的な快感は――すくなくとも女にとっては、苦痛に耐えるよりも困難だった。
 もっともスーザンは、午後に一メートル半ほどしか掘らなかったのだから、苦痛はマリアほどには感じず、その向こう側にある快感までは到達しなかったかもしれない。
 日没と共に四人のボランテイアが戻って来て、板のゲージを使って溝の寸法を調べたのだが。マリアの掘った溝は広すぎる箇所が多いという理由で減点を宣告された。いちゃもんとしか言いようがない。
 あらためて六つの環を装着させられて。二人は異物に二穴を貫かれたまま、建物までの百メートルを歩かされた。行進歩調や駈足を命じられなかったから――スーザンも、抜いてくれとまでは我儘(と、マリアは思う)を言わなかった。

 獄房へ戻されて。四人のボランティアと二人の職員に見られながら、ふたりは順番に身体を洗わされた。
 獄房の隅に設けられている排泄コーナーで、肛門ではなく膣に一本棒を挿入されて固定され、天井から降り注ぐシャワーと壁面から噴き出るエアジェットで、汗でこびり付いている土を洗い落とされた。一本棒が二本棒になって肛門も貫き、それぞれの内部も洗滌された。
 肌の汚れはすっかり落ちて。一昨日(?)に受けたバラ鞭の痣もすでに消えている。けれど、マリアとスーザンの心には、癒しようのない傷がびっしりと刻まれていた。その傷が、さらに増やされる。
 ベッドにパイルドライバーポジションに拘束されて。肛門に太いパイプを挿入された。肛門の手前でパイプがバルーン状に膨らむ。と同時に、直腸にも凄まじい膨満感。つまりパイプは二か所で膨張して、バルーンで形成される8の字の交点に肛門がある。パイプは絶対に抜けないし排泄も出来なくされた。
「*作業中の減点はM78が八点、S69が三十一点。したがって、溝掘り競争の敗者であるS69には二十六デシリットル、勝者のM78には十三デシリットルの浣腸を罰として与える。明朝七時までの十二時間、排便を禁止する」
 それがどれほどの苦行なのか、出産経験もハードSMプレイの経験も無いマリアには、ぴんとこなかった。おそらくスーザンも同じだろう。
「…………!」
 AIの声柄が終わるとすぐに、注入が始まった。噴出するような勢いではなく、じわじわと注入されていく。じきに、腸がぐるぐると鳴り始める。
「*五デシリットル注入」
 数秒、注入が中断される。すでにマリアは、下腹部に膨満感を覚えている。
 さらに八デシリットルも注入されるとどうなるのか――それを戦慄させられる数秒だった。
 十デシリットルの注入で、明白な便意に迫られた。数秒の中断を経て最後の三デシリットルを注入されると、下腹部がぽっこりと膨らんでいるのが、厭でも見えてしまう。
 しかし、スーザンはさらに同量を注入される。
 AIが十五デシリットルの注入を終えたとき、スーザンが抗議の声を上げた。発語は封じられていないらしい。それとも、警告の電撃に逆らっているのか。
「減点の基準を事前に教えられていなかった。一方的に三十一点だなんて、無効です」
「*基準を示さないのはアンフェアという見方もあるが、実社会では許容されている。たとえばドマゾンが公表しているアカウント凍結処置の基準は、実質上何も語っていないに等しい。それを、ユーザーもAIも受け入れている」
「私は受け入れ……くっ……」
 肛門につながっているチューブが脈動して、スーザンは言葉を詰まらせた。それきり黙り込んだ。抗議の虚しさを感じたのか、首環に発語を禁じられたのか。
「*二十六デシリットル注入完了」
 AIが告げたのは、わずか五秒後だった。一気にスーザンの腹が、妊娠中期くらいにまで膨れ上がった。
「ここに突っ立って何時間も鑑賞するのも退屈ですな。食事をしながらモニターしましょう」
 白色系のボランティアが提案すると、褐色系の男も同意した。
「そうだな。他の患者への施術も控えていることだし。この二人は、反省に専念させてやろう」
 白衣の職員二人は、黙って小さく頷いた。
 そうして、マリアとスーザンは獄房に放置される。絶対に解消できない便意に悶え苦しみながら。
 ――突き上げるような便意。けれど、意識して肛門を緩めて力んでみても、かえって苦しさは膨れ上がるばかり。
「くうう……ううう」
 自然と呻いてしまう。マリアもスーザンも、日中の作業時よりも夥しい脂汗に全身を濡らしている。
「ねえ、スーザ……あなた」
 喉に警告を受けて、個人名を人称代名詞に換えた。
「ここが矯正施設ではない証拠があるって言ってたけれど」
「馬鹿!」
 鋭く制してから、スーザンは溜息をついた。
「もう手遅れね。聞かれてしまった」
 マリアは呆れた。荒野だったら監視されていない盗聴されていないとでも信じていたのだろうか。マリアがトウモロコシを喉に詰まらせたときの迅速な救命処置は、ボランテイアのゴーグル経由だった可能性もあるけれど――人間が監視していないということは、それでも逃亡されないし自傷行為も阻止できるという自信の表われだ。
「AIは常にすべてを見聞きしている。明白な危険行為以外には干渉しないだけ。それは、あなたも知っているでしょうに」
 警告の電撃は無かった。それは、反社会的なスーザンの発言についても同じらしかった。
「AIね」
 吐き捨てるように言って、低い声で付け加えた。
「……人工無能(Artificial Idiot)どころか人工悪意(Aritficial Ill-will)だわ」
「あなたが言った証拠って、なんなの?」
 馬鹿げた問題についてディスカッションやディベートをしたかったのではない。苦しみを紛らわすために――個人情報を明かしたくはなかったし、趣味について語る雰囲気でもない。それに……スーザンとは明確に反対の立場であることをAIに訴えておきたかった。
「あなたを巻き添えには……」
「とっくに巻き込まれています。短剣が誰に手に握られているか、殺される者には知る権利があります」
 過激な表現だが……スーザンに見えない側の人差指と中指をクロスさせておいた。
 果たして。この子もアンチAIだと判断したのか。スーザンの口調が柔らかく、そしてささやくように変わった。もちろん、マイクには拾われるに決っているけれど。
「私はジャーナリストなの。担当分野の関係で、FDA長官には生インタビューをしたことがある。あの褐色系の男は、彼だわ」
 馬鹿らしい。彼はメディアにしょっちゅう登場しているから、マリアでさえ顔も体格も知っている。褐色系という以外、まったく似ていないし、その肌の色合いも異なっている。
 それを指摘されても、スーザンは自説を枉げなかった。
「生インタビューをしたって言ったでしょ。ディープネイクではない、生身の彼にね」
 Deep Nake。もう手が付けられないと感じた。形容詞のNaked(裸の、生の)を過去分詞と見做した造語それとも先祖返り。Fakeの対義語。こういう悪意ある言葉を使う人たちは、こうも言っている。本人の本人による本人のためのディープフェイク。
 彼女の論法でいけば、政府の要職にある人物が二日も三日も行方をくらまして無力な庶民の女性を性的に虐待しているとしても、メディアには、ちゃんと公務に勤しんでいる彼の映像が提供されるのだろう。
 実際のところ、善意のディープフェイクとプライバシーの保護は紙一重。ハイスクールではディベートの教材にもなっている。現場の『実況中継』にコンマ秒のタイムラグを設けて、画面に映り込んでいる群衆の顔に、個人を特定できないようボカシを入れるのは真実を毀損するのか。リモート会議でパジャマ姿や寝癖の付いた髪を見せるのと、きちっとしたスーツ姿のフェイクとは、どちらがマナーに適っているのか。当事者が合意の上で、リモート出席したメンバーの『臨席』映像をメディアに公開するのは、その延長線上にある。
 今さら学生時代のディベートを、それも極端なバイアスに囚われた人物を相手に繰り返す気にはなれなかった。
 けれど。もしもスーザンの妄想に幾分かでも真実が含まれているとしたら……AIの判断だから大局的な間違いは無いだろうという自分の考えよりも、現在の状況を適確に説明できるのではないだりうか。
 しかし。そんな、世界観を根底から覆してしまうようなテーマを考えるには、あまりに(絶対に満たされない)生理的欲求が切迫していた。
「くううう……もう、赦して」
 マリアは一切の思考を放擲して、叶えられない便意に悶えるのだった。

 何時間が経過したのか、まったく分からない。便意は限界を超えて募る一方とはいえ、ふっと軽減する瞬間が訪れることもあった。張り詰めていた糸が切れたようにマリアは気を失い……すぐに揺り返した便意に意識を取り戻し、悶絶すら不可能な苦しみの中でもがいて、また意識を手放す。
 それを何十度も繰り返して――ついに、獄房の出入口が開いた。二人の職員だけが入ってきた。
 マリアとスーザンを拘束から解放して、バルーンは膨らませたまま、ひとまとめに排泄コーナーへ追い立てる。
「*立ったまま抱き合え」
 スーザンもAIの指示に逆らわない。そのままディープキスをしろと命令されても従っただろう。
 二人が固く抱き合うと――バルーンが一気にしぼんで、パイプが引き抜かれた。と同時に、二条の凄まじい水流が床を叩いた。
 ブジャアアアアア……
 コーナーを示す赤い円弧がせり上がって、おびただしい飛沫を遮った。
「あああっ……ごめんなさい」
 マリアが泣き声を漏らした。括約筋が緩み切って、尿も噴出させたのだった。
「私もだから……」
 スーザンも力無く返した。飛沫はどちらのともいわず下腿を濡らし、さらに尿を掛け合う。これ以下は無いというほど惨めな絆で結ばれた二人だった。
 これで、スーザンの妄想は完全に否定された。マリアは、ぼんやりとそんなことを思った。サディストたちを満足させるのが目的なら、これほどの『ショー』にボランティアが立ち会わないわけがない。モニター越しに見物するよりは生で見るほうが興奮(それとも辟易だろうか)するに決まっている。
 それをスーザンに指摘するつもりは無かったけれど。
 シャワーで全身を洗われエアジェットで乾かされて。乳首とクリトリスに、いつものクリップではなく、細い鎖につながれた金属環を着けられた。食餌も休息も与えられず、二人は獄房から引き出された。ほとんど眠っていないので、頭の芯が重たい。けれど、三点を引っ張られているので、職員の早足にあわせてたゆまず足を踏み出さねばならない。
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 この後は、昨日掘ったスーザンの溝をマリアが、マリアが掘った溝をスーザンが埋め戻すのです。今度は小さなスコップしか持たされなかったので、掘って集積している土を、四つん這いになって胸で押して運ぶという。そして、前日の野放しと違って、ボランティアが監視督励します。手を休めるとバラ鞭で背中と尻をビシバシ、精一杯頑張っていると後ろから笞の先で「よしよし」と割れ目をつついてもらえます。
 そして、作業後は。獄房で宙吊りにされて傷の手当とか。睡眠剤を注射されて、鞭傷が綺麗に治るまで絶対安静。何日が経過したのか、マリアとスーザンには分かりません。


work06.jpg

 埋め戻しの作業中に、前日に頑張ってたくさん掘ったマリアは、スーザンの短い溝を簡単に終わらせて。スーザンがマリアを逆恨みするとか、あるいはマリアがスーザンを手伝ってそれが後の評価につながるとか――考えていたのですが、午前中の作業だけにしたので、一切無しにしました。
 数日の治療期間が終わったあとは『遊戯』です。スーザンをポニーにして、馭者をマリアにして、マリアは強制されtスーザンに厳しい追い鞭とか。それで終わらせるか、二人の立場を入れ替え「強くてニューゲーム」にするか。これまた、考えながら書き進めます。これを小説作法用語でイキアタリバッタリといます。


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